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特表2023-552953アルキルメチルシロキサン液浸冷却媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】アルキルメチルシロキサン液浸冷却媒体
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20231213BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09K5/10 F ZAB
H05K7/20 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524402
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2021123732
(87)【国際公開番号】W WO2022089214
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/124314
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】タン、ジェンミン
(72)【発明者】
【氏名】ビデ、シュレヤス
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】アンセムズ バンクロフト、パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ソン
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322DA04
5E322DB12
5E322EA11
5E322FA04
(57)【要約】
プロセスは、冷却流体中にデバイスを浸漬することを含み、冷却流体は、以下の平均化学構造(I):(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH(I)を有するアルキル修飾シリコーン油を含み、式中、Rは、各出現において、6個以上かつ同時に17個以下の炭素原子を有するアルキル又は置換アルキルであり、下付き文字mは、1以上かつ同時に22未満の値を有し、下付き文字nは、1以上の値を有し、m+nの合計は、5より大きく、かつ同時に50未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体中にデバイスを浸漬する工程を含むプロセスであって、前記冷却流体が、以下の平均化学構造(I):
(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH (I)
を有するアルキル修飾シリコーン油を含み、式中、Rは、各出現において独立して、アルキル基及び置換アルキル基からなる群から選択され、各R基は、6個以上かつ同時に17個以下の炭素原子を有し、下付き文字mは、1以上かつ同時に22未満の値を有し、下付き文字nは、1以上の値を有し、m+nの合計は、5より大きく、かつ同時に50未満である、プロセス。
【請求項2】
前記デバイスが、発熱デバイス、及び/又は発熱デバイスに固定された放熱体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
構造(I)中のR基が、アルキル又はフェニル置換アルキルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記冷却流体が、冷却流体重量に基づいて、20重量パーセント未満の炭化水素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスが、前記冷却流体を冷却する工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記冷却流体が、サイクル中に、冷却ユニットを通って前記デバイスの周りを循環され、次いで前記デバイスの周りで戻される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
冷却流体中のデバイスを備える液浸冷却システムであって、前記冷却流体が、以下の平均化学構造(I):
(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH (I)
を有するアルキル修飾シリコーン油を含み、式中、Rは、各出現において独立して、アルキル基及び置換アルキル基からなる群から選択され、各R基は、6個以上かつ同時に17個以下の炭素原子を有し、下付き文字mは、1以上かつ同時に22未満の値を有し、下付き文字nは、1以上の値を有し、m+nの合計は、5より大きく、かつ同時に50未満である、液浸冷却システム。
【請求項8】
前記デバイスが、発熱デバイス、及び/又は前記発熱デバイスに固定された放熱体である、請求項7に記載の液浸冷却システム。
【請求項9】
前記システムが、前記冷却流体から熱を除去する冷却器を更に備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の液浸冷却システム。
【請求項10】
前記システムが、前記冷却流体中に浸漬された前記デバイスの周りに冷却流体の流れを生じさせる循環構成要素を更に備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の液浸冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルメチルシロキサンを含有する浸漬冷却流体を使用するプロセス及びシステムに関する。
【0002】
序論
データセンター機器がより強力になるにつれて、データセンター機器は、より多くの熱を生成し、それにより、データセンター機器の寿命及び性能を阻害する可能性がある。データセンター機器から熱を除去するために、循環空気が、使用されてきた。しかしながら、循環空気は、より新しくより強力な機器を適切に冷却するのに十分に効率的ではない。最近になって、データセンター機器を通る密閉経路内を循環する熱伝達流体が、機器から熱を除去するために使用されている。この流体は、機器に直接接触するのではなく、むしろ機器内の流体導管を通って流れる。これは、機器の「間接」流体冷却と考えられる。循環する封入流体は、循環空気よりも熱除去においてより効率的であり得るが、依然として、望まれるほど効率的ではない。
【0003】
ごく最近、データセンター機器のためのより効率的な冷却手段として、データセンター機器の「直接」流体冷却が導入されている。直接流体冷却は、機器を冷却するために、データセンター機器と直接接触する流体冷却剤を使用する。典型的には、機器は、多くの場合、機器の周り、及び機器を通って循環される流体冷却剤中に浸漬される。これは、機器を冷却するための効率的な手段である。しかしながら、電子機器を流体と直接接触させることには課題がある。直接流体冷却は、かなり特殊な冷却流体を必要とする特殊な用途である。理想的には、冷却流体は、熱伝導性であり、かつ高誘電性(すなわち、貧弱な導電体)でもある。冷却流体が、接触する機器に適合することも重要であり、すなわち、冷却流体は、接触する機器を劣化させたり、変化させたり、又は他の形で影響を与えたりしてはならない。また、例えば、低可燃性及び低毒性を有するなど、流体が、環境的に安全であることが、望ましい。
【0004】
おそらく、データセンター機器用の直接冷却流体として使用するための市場で最も支配的な流体は、3Mから3M(商標)Fluorinert(商標)Electronic Liquids及び3M(商標)Novec(商標)Engineered Fluidsの名称で販売されているものなどのフッ素化材料である。「3M」、「Fluorinert」、及び「Novec」は、3M Companyの商標である。これらのフッ素化材料は、熱除去において効率的である傾向がある。しかしながら、これらのフッ素化材料は、比較的低い沸点(摂氏200度(℃)未満、ほとんどが150℃未満)を有する。フッ素化材料の低沸点は、フッ素化材料の広告文献によれば、フッ素化材料の適用を175℃未満の温度に制限する。低沸点はまた、フッ素化材料が、比較的容易に蒸発することを意味し、それにより、作業者及び環境をフッ素化材料に曝露するという望ましくない結果をもたらす可能性がある。
【0005】
鉱物油は、データセンター機器用の直接冷却流体として使用され得る別の流体である。鉱物油は、安価であるので、望ましい。しかしながら、鉱物油も、直接冷却流体用途に関する重大な課題を有する。鉱物油は、ただ熱除去において適度に効率的であるだけで、典型的には、硫黄などの不純物を含み、それにより、データセンター機器の腐食を引き起こす可能性がある。鉱物油の可燃性、及び経時的な鉱物油の劣化に関する懸念も、指摘されている。更に、鉱物油は、エチレンプロピレンジエンモノマー(ethylene propylene diene monomer、EPDM)ゴムを膨潤させる傾向があり、それにより、コンデンサと接触する直接冷却流体として使用される場合、サーバ内のコンデンサ、及び最終的にはサーバの故障をもたらす可能性がある。したがって、直接冷却流体としての鉱物油に曝露される電子データセンター機器に損傷を与えるリスクがある。
【0006】
ポリアルファオレフィン(Polyalphaolefin、PAO)合成油は、直接冷却流体のための更に別の選択肢である。概して、鉱物油よりも少ない不純物を有する一方、PAO合成油には、可燃性及び経時劣化に関する懸念が依然として存在する。鉱物油と同様に、PAOも、EPDMゴムを膨潤させる傾向があり、そのため、直接冷却流体としてのPAO合成油に曝露される電子データセンター機器に損傷を与えるリスクがある。
【0007】
ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)は、フッ素化流体と比較して、より低コストの選択肢、データセンター機器の非シリコーン構成要素との良好な適合性、比較的低い可燃性、及び劣化に対する高い安定性を提供する、直接冷却流体としての別の選択肢である。しかしながら、PDMSは、シリコーンゴム材料を膨潤させ、シリコーンゴム粘着性物質の剥離接着強さを弱める傾向があり、シリコーンゴムで接着された構成要素のより容易な層間剥離をもたらす。シリコーン系材料は、構成要素を熱的に結合するための熱伝導性グリース及びギャップ充填剤として、電子デバイス内で使用されることが多い。これらの材料の膨潤は、熱的に結合された構成要素からのこれらの材料の層間離をもたらし、それにより、熱伝導性構成要素間の熱結合及び熱伝達を減少させる可能性がある。
【0008】
電子データセンター機器を冷却するための直接冷却流体の特殊用途のための冷却流体を特定することが、望ましい。冷却流体は、フッ素化流体、鉱物油、PAO合成油、及びPDMSの課題を回避すべきである。特に、以下の特性を有する直接冷却流体を特定することが望ましい。
・25℃及び101キロパスカル圧力(760ミリメートル水銀圧力)で液体であり、
・25℃で100平方ミリメートル毎秒(mm/s)未満の動粘度を有し、
・EPDMゴム又はシリコーンゴムを著しく膨潤させないか、又はそれらに浸透せず、
・150℃超の引火点を有し、かつ
・ハロゲンを含まなくてもよい、
【発明の概要】
【0009】
本発明は、電子データセンター機器を含むような直接冷却用途に好適な冷却流体を使用する直接接触(浸漬)冷却プロセス及びシステムを提供する。この流体は、驚くべきことに、(i)25℃及び101キロパスカル(kPa)圧力で液体であり、(ii)25℃で100mm/s未満の動粘度を有し、(iii)EPDMゴム又はシリコーンゴムを著しく膨潤させないか、又はそれらに浸透(imbibe)せず、(iv)150℃超の引火点を有し、かつ(v)ハロゲンを含まなくてもよい、という特性を同時に有する。
【0010】
本発明の冷却流体は、アルキル修飾PDMS(「アルキルメチルシロキサン」)を含む。直接冷却システムにおけるアルキルメチルシロキサンに関する懸念は、残留シリルヒドリド(SiH)及び遊離炭化水素成分であり得る。残留SiHは、シラノール(SiOH)に加水分解して、水素ガスを放出する傾向があるので、望ましくない。電子構成要素の存在下での水素ガスの生成は、望ましくない安全上のリスクである。シラノールの存在は、シロキサンの誘電特性に悪影響を与える極性基であり、シロキサンを直接冷却流体として低効率なものにする。遊離炭化水素成分は、冷却流体中の相の曇り又は相分離さえ引き起こす可能性があり、EPDMゴムの膨潤又は浸透(imbibing)を増加させる可能性がある。驚くべきことに、本発明のアルキルメチルシロキサンは、前段落で述べた流体特性を達成するだけでなく、SiH基の水素が、アルキルメチルシロキサン重量に基づいて、10重量百万分率(ppm)未満であるSiH濃度、及びアルキルメチルシロキサン重量に基づいて、20重量パーセント(重量%)未満の遊離炭化水素濃度も有する。
【0011】
第1の態様では、本発明は、冷却流体中にデバイスを浸漬する工程を含むプロセスであり、この冷却流体は、以下の平均化学構造(I):
(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH (I)
を有するアルキル修飾シリコーン油を含み、式中、Rは、各出現において、アルキル又は置換アルキルであり、R基は、6個以上かつ同時に17個以下の炭素原子を有し、下付き文字mは、1以上かつ同時に22未満の値を有し、下付き文字nは、1以上の値を有し、m+nの合計は、5より大きく、かつ同時に50未満である。
【0012】
欧州特許第0641849(B1)号は、熱伝達流体としてのアルキルメチルシロキサン流体の使用を開示している。しかしながら、この参考文献は、直接冷却流体の特殊な用途についても、PDMS若しくは他の直接冷却流体に関して、直接冷却の特殊な用途において直接冷却流体が提供する利益についても、言及していない。更に、アルキルメチルシロキサン流体全てが、欧州特許第0641849(B1)号で熱伝達流体として教示されているものでさえも全てが、直接冷却流体として好適であるわけではないことが見出された。特に、Rが1炭素のアルキルである化学構造(I)を有するポリジメチルシロキサンは、シリコーンゴムを膨潤させ、及びシリコーンゴムに浸透するので、許容可能な材料ではない。Rの短鎖アルキルは、ポリジメチルシロキサンと同様に機能する可能性が高い。本明細書の実施例は、R基が6個以上の炭素を有する場合に、実施例は許容可能な浸漬冷却流体であることを示す。
【0013】
第2の態様では、本発明は、冷却流体中のデバイスを備える液浸冷却システムであり、この冷却流体は、以下の平均化学構造(I):
(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH (I)
を有するアルキル修飾シリコーン油を含み、式中、Rは、各出現において、6個以上かつ同時に17個以下の炭素原子を有するアルキル又は置換アルキルであり、下付き文字mは、1以上かつ同時に22未満の値を有し、下付き文字nは、1以上の値を有し、m+nの合計は、5より大きく、かつ同時に50未満である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0015】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0016】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0017】
個々のポリシロキサンの「動粘度」は、特に明記しない限り、摂氏25度(℃)でガラス毛細管式キャノン-フェンスケ型粘度計を使用して、ASTM D 445により測定される。
【0018】
クリーブランド開放カップ(Cleveland Open Cup、COC)を用いて、材料の引火点を決定する。約70ミリリットルの試料で、COC測定を実行する。予想引火点を100℃に設定する。引火点が特定されるまで、25℃から約44℃まで14~17℃毎分の速度で、次いで5~6℃毎分の速度で、温度を上昇させる。
【0019】
流体が、EPDM及びシリコーンゴムを「著しく膨潤させる」又はそれらに「著しく浸透する」かどうかを、以下の実施例の節に記載される適合性試験手順を使用して決定する。
【0020】
1.0gの試料材料及び8.0ミリグラムのピラジン(内部標準として)を1.5ミリリットルの重水素化クロロホルムと組み合わせて均質な溶液を得ることによって、流体のSiH濃度を決定する。溶液の一部を5ミリメートル核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)管に添加し、Bruker AVANCE II 400メガヘルツNMR装置で、zgパルスプログラム、D1=15秒及びNS=32を用いて、25℃で1H NMRスペクトルを収集する。スペクトルにおけるSiHについてのプロトンシグナル(4.65~4.78ppmからの単一ピーク)の積分強度が、ピラジンに対するSi原子上の水素の数の比を提供する。シリコーン原子上の水素の濃度は、試料材料の総重量に対して計算され得る。
【0021】
気相クロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)を使用して、流体の遊離炭化水素濃度を決定する。約0.5gの流体試料を約4.5gのトルエン中に希釈する。化学天秤を用いて、成分の重量を測定及び記録する。炭化水素の標準化学物質、特に、較正のための1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-テトラデセンなど、試料を作製する際に反応物質として使用されるものを使用して、GC/MSによって希釈試料を分析する。DB-5msカラム(30メートル×内径0.25ミリメートル×フィルム0.25マイクロメートル)を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラフィーシステム、1.0ミリリットル/分の一定ヘリウムキャリアガス流、合計実行時間32.0分に対して40℃、6分間保持、15℃/分で280℃まで昇温、10分間保持のオーブンパラメータを使用し、オートサンプラーシステム及び10マイクロリットルシリンジを介して、1マイクロリットルの試料を注入し、入口温度は280℃、スプリット比は50:1であり、検出器は、230℃のMSソース温度、150℃のMSクォード温度、280℃のAux-2温度、及び取得モード:スキャン質量29~350を有するMSDである。
【0022】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導可能な炭化水素基を指す。アルキルは、直鎖状又は分岐状であり得る。
【0023】
「置換アルキル」は、1つ以上の水素原子の代わりに非水素基が存在することを除いて、アルキルと同様の基を指す。例えば、水素原子のうちの1以上が、芳香族基(フェニル若しくはベンジルなど)、又はフッ素などのハロゲンで置き換えられているアルキルは、置換アルキルを構成する。
【0024】
第1の態様では、本発明は、冷却流体中にデバイスを浸漬することを含むプロセスである。本明細書で使用される場合、「浸漬」は、デバイスを、冷却流体中に完全に水没させることなく部分的に水没させることを指し得るか、又は、好ましくは、冷却流体中にデバイスを完全に水没させることを指す。同様に、「浸漬する」、「浸漬」、及び類似の用語は、デバイスの完全な水没よりも少ない水没を指し得るか、又はデバイスの完全な水没を指し得る。
【0025】
本発明の最も広い範囲において、デバイスは、任意の物品であり得る。望ましくは、デバイスは、発熱物品であるか、又は発熱物品に固定された構成要素である。例えば、デバイスは、発熱物品に固定された(取り付けられた)放熱体であり得るか、発熱物品であり得るか、又は発熱物品、及び発熱物品に固定された放熱体の両方であり得る。本発明は、電子デバイスであるデバイスに特に適用可能である。デバイスは、コンピュータ、又はコンピュータの一部であり得る。本明細書において、「コンピュータ」は、データを記憶、取得、及び/又は処理することができる電子デバイスを指す。「コンピュータの一部」とは、コンピュータの2つ以上の構成要素のうちの任意の1つ、又はそれらの任意の組み合わせを指し、例えば、配電構成要素(電子トランスなど)、複数の電子構成要素が実装され、筐体内に存在する回路基板を備えるサーバ、回路基板自体、電子ランダムアクセスメモリ構成要素、メモリストレージ構成要素、中央処理装置(central process unit、CPU)、及びグラフィック処理ユニットから選択される2つ以上の構成要素のうちの任意の1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0026】
冷却流体は、アルキル修飾シリコーン油を含むか、又はアルキル修飾シリコーン油からなり得る。冷却流体は、典型的には、冷却流体重量に対して、50重量パーセント(重量%)超、好ましくは、75重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、更には99重量%以上のアルキル修飾シリコーン油を含む。冷却流体は、アルキル修飾シリコーン油からなり得る。
【0027】
アルキル修飾シリコーン油は、下記の平均化学構造(I):
(CHSiO-[(CH)SiO]-[R(CH)SiO]-Si(CH (I)
を有し、式中、Rは、各出現において独立して、アルキル基及び置換アルキル基から選択され、R基は、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、更には16個以上、一方で同時に17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、又は更には7個以下の炭素原子を含有し、好ましくは、Rは、上記で指定された数の炭素原子を有するアルキル基及び置換アルキル基からなる群から選択され、アルキル、及びアルキル上の置換基は、上記で指定された範囲内の炭素原子の合計数を有する。例えば、R基は、フェニル置換アルキルであり得、炭素原子の総数は、アルキル炭素原子及びフェニル炭素原子の数の合計である。
【0028】
下付き文字mは、1以上の値を有し、2以上、更には3以上の値を有し得、かつ同時に、典型的には、22未満であり、20以下、15以下、10以下であり得、9以下、8以下、7以下、6以下、又は更には5以下であり得る。
【0029】
下付き文字nは、1以上、好ましくは、2以上、3以上、4以上、更には5以上の値を有し、一方で同時に、典型的には、30未満であり、25以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、又は更には6以下であり得る。
【0030】
下付き文字m及びnの合計(「m+n」)は、5以上の値を有し、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上であり得、更には25以上であり得、一方で同時に、50未満の値を有し、40以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、又は更には9以下であり得る。
【0031】
標準的な方法によるH、13C、及び29Si核磁気共鳴分光法を用いて、R基の同一性を含むアルキル修飾シリコーン油の同一性、並びにm及びnの値を決定する。
【0032】
アルキル修飾シリコーン油は、100平方ミリメートル毎秒(mm/s、又はセンチストーク(centiStokes、cSt))未満の動粘度を有し、75mm/s以下、50mm/s以下、好ましくは、30mm/s以下、より好ましくは、20mm/s以下の動粘度を有し得、10mm/s以下であり得、一方で同時に、望ましくは、5mm/s超の動粘度を有する。これらの範囲の動粘度を達成するためのR、m、及びn値の選択は、容易に達成可能である。
【0033】
化学構造(I)中のR基は、望ましくは、6個以上の炭素原子を有することが見出された。Rが、6個未満の炭素原子を含有する場合、アルキル修飾シリコーン油は、シリコーンゴムを膨潤させ、シリコーンゴムに浸透するポリジメチルシロキサンに非常に類似した特性を有する可能性が高い。同時に、化学構造(I)中のR基は、Rが18個以上の炭素原子を有する場合、材料が、25℃及び101kPa圧力で流体ではなくワックスになるので、17個以下の炭素原子を有しなければならないことが見出された。R基は、置換されるか、非置換であり得る。例えば、R基は、ハロゲン化され得る(1つ又は2つ以上のハロゲンで置換される)か、又は非ハロゲン化(ハロゲンを含まない)であり得る。したがって、アルキル修飾シリコーン油は、ハロゲンを含まなくてもよく、実際、冷却流体は、全体としてハロゲンを含まなくてもよい。R基は、アルキル成分が、6個未満の炭素原子を有するが、R基中の炭素原子の総数が、6であり、上記で指定された必要とされる範囲内であるフェニル置換アルキル基であり得る。代替的に、R基は、上記で指定された必要とされる範囲の炭素数を有するアルキル基であり得る。R基は、直鎖状又は分岐状であり得る。分岐構造は、アルキル修飾シリコーン油の融点を低下させるために望ましい場合がある。
【0034】
アルキル修飾シリコーン油は、1又は2以上である下付き文字nの値を有しなければならず、さもないと、アルキル修飾シリコーン油ではなく、むしろポリジメチルシロキサンである。
【0035】
m+nの値は、アルキル修飾シリコーン油が、上述の範囲の動粘度を有することを望むことによって制限される。
【0036】
特に望ましくは、アルキル修飾シリコーン油は、化学構造(I)を有し、式中、mが3であり、nが6であり、Rが、6~16個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、mが5であり、nが3であり、Rが、10個の炭素原子を有する直鎖アルキルである、及びmが3であり、nが4であり、Rが、中央の炭素がフェニル基で置換された3炭素アルキルであるいずれか1つの、又は任意の組み合わせの、若しくは2つ以上のアルキル修飾シリコーン油からなる群から選択される。
【0037】
アルキル修飾シリコーン油は、以下の実施例の節に記載されるようなヒドロシリル化反応によって合成され得る。
【0038】
冷却流体は、アルキル修飾シリコーン油、又は更にはアルキル修飾シリコーン油のうちの2つ以上の組み合わせを含むか、又はそれらからなり得る。代替的に、冷却流体は、アルキル修飾シリコーン油と、浸漬冷却流体の要件を満たす1つ又は2つ以上の追加の流体との混合物を含むか、又はそれからなり得る。例えば、冷却流体は、フルオロカーボン流体が、150℃超の沸点を有するという条件で、アルキル修飾シリコーン油と、フルオロカーボン流体とを含み得る。
【0039】
望ましくは、冷却流体は、20重量パーセント(重量%)未満、好ましくは、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下の遊離炭化水素を含み、遊離炭化水素を含まなくてもよく、ここで、炭化水素の重量%は、アルキル修飾シリコーン油の重量に対するものである。「遊離炭化水素」とは、非炭化水素成分に化学的に結合していない炭化水素を指す(例えば、シロキサン分子上のアルキルは、「遊離炭化水素」ではないが、ヘキサン又は1-ヘキセンは、「遊離炭化水素」であろう)。遊離炭化水素は、EPDMゴムのような有機材料の膨潤に寄与する可能性があるので、遊離炭化水素を最小化することが望ましい。遊離炭化水素はまた、組成物の引火点を下げる可能性がある。
【0040】
望ましくは、アルキル修飾シリコーン油は、存在するとしても、最小限のSiH官能基を含有する。アルキル修飾シリコーン油の重量に対する、SiH官能基からのHの重量%を測定することによって、SiH官能基の程度を決定する。Hの重量%は、望ましくは、100万重量部当たり10重量部(parts per million、ppm)未満、好ましくは、9ppm以下、9ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下であり、ppmは、アルキル修飾シリコーン油の重量に対するものである。アルキル修飾シリコーン油は、SiH官能基を含まなくてもよい。
【0041】
冷却流体は、酸化防止剤などの2つ以上の任意選択の成分のうちの任意の1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含有し得る。酸化防止剤、特に、アルキル基を安定化する酸化防止剤は、冷却流体の熱安定性を増加させるために望ましい場合がある。好適な酸化防止剤は、典型的には、芳香族アミン及び/又はヒンダードフェノールである。好適な酸化防止剤の例としては、IRGANOX(商標)1076及びIRGANOX(商標)1010の商品名で入手可能なものからなる群から選択されるものが挙げられる。IRGANOXは、BASF SE社の商標である。
【0042】
本発明のプロセスは、アルキル修飾シリコーン油を含むか、又はアルキル修飾シリコーン油からなる冷却流体中にデバイスを浸漬することを含み、1つ又は2つ以上の追加の工程を更に含み得る。例えば、プロセスは、冷却流体(アルキル修飾シリコーン油)を冷却することを含み得る。例えば、容器が冷却流体を冷却する間、冷却流体は、デバイスが冷却流体中に浸漬されている状態で、容器内で静止していてもよい。冷却流体は、容器(循環浴)内の冷却流体中に浸漬されたデバイスの周りを循環され得、容器は、冷却流体を冷却する。冷却流体は、別個の冷却ユニット内で冷却されて、冷却ユニットと、容器との間で循環され得、容器内では、冷却流体中に浸漬されたデバイスは、冷却流体が、サイクル中に、冷却ユニットを通ってデバイスの周りを循環され、次いでデバイスの周りで戻されるように、存在する。
【0043】
別の態様では、本発明は、液浸冷却システムである。この文脈において、「システム」とは、特定の目的を達成するような方法で互いに関連付けられた構成要素の集合を指す。本発明では、液浸冷却システムは、冷却流体中に浸漬されたデバイスの浸漬冷却を達成する働きをする構成要素を備える。
【0044】
様々な複雑さの液浸冷却システムが、当業界で知られており、最も広い範囲本発明は、任意の液浸冷却システムを含む。
【0045】
本発明のシステムは、冷却流体中のデバイスを備え、冷却流体は、本明細書に記載のアルキル修飾シリコーン油を含むか、又はそれからなる。デバイスは、本明細書で上述されたものである。
【0046】
システムは、冷却流体から熱を除去する冷却器を更に備え得る。冷却器は、デバイスが浸漬される冷却浴を形成するように冷却流体が存在する冷蔵容器であり得る。システムは、冷却流体中に浸漬されたデバイスの周りに冷却流体を流させる循環構成要素を更に備え得る。循環構成要素は、流体及びデバイスが、冷却器であってもなくてもよい単一の容器内に存在する間、浸漬されたデバイスの周りに流体の流れを引き起こす、冷却流体中に水没されたインペラであり得る。代替的又は追加的に、循環構成要素は、冷却流体と、冷却流体中に浸漬されたデバイスとを収容している容器と、サイクル中に冷却流体を冷却する別の容器又はデバイスとの間に冷却流体を流す循環ポンプ又は他の循環構成要素であり得る。
【0047】
特に、冷却流体は、望ましくは、本発明のプロセス及びシステムの両方において、冷却流体中に浸漬されたデバイスと直接接触する。
【実施例
【0048】
表1は、以下の実施例で使用するための材料を提示する。DOWSIL、XIAMETER、及びNORDELは、The Dow Chemical Companyの商標である。SpectraSynは、Exxon Mobil Corporationの商標である。Ultra-Sは、S-Oil Corporationの商標である。
【0049】
【表1】
【0050】
SiHシロキサン及び合成方法
SiHシロキサン1:(CHSiO[H(CH)SiO]Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、70重量%のヘキサメチルジシロキサン及び30重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0051】
SiHシロキサン2:(CHSiO[(CHSi)][H(CH)SiO]Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、14.9重量%のヘキサメチルジシロキサン及び62.9重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン及び22.2重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0052】
SiHシロキサン3:(CHSiO[H(CH)SiO]17Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、10.11重量%のヘキサメチルジシロキサン及び89.89重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0053】
SiHシロキサン4:(CHSiO[(CHSi)][H(CH)SiO]Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、18.8重量%のヘキサメチルジシロキサン、31.9重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び49.3重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0054】
SiHシロキサン5:(CHSiO[(CHSi)]22[H(CH)SiO]Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、8.26重量%のヘキサメチルジシロキサン、84.91重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び6.83重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0055】
SiHシロキサン6:(CHSiO[(CHSi)]16[H(CH)SiO]38Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、1.81重量%のヘキサメチルジシロキサン、32.41重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び65.78重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン2のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0056】
SiHシロキサン7:(CHSiO[(CHSi)]35[H(CH)SiO]35Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、7.11重量%のポリジメチルシロキサン流体(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)SH 200 fluid 10 cStとして入手可能)、47.15重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び45.74重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン1のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0057】
SiHシロキサン8:(CHSiO[(CHSi)]25[H(CH)SiO]55Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、34.25重量%のジメチルシロキサン環状物(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)344 Fluidとして入手可能)、及び64.75重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン1のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0058】
SiHシロキサン9:(CHSiO[(CHSi)]84[H(CH)SiO]14Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、1.76重量%のヘキサメチルジシロキサン、85.8重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び12.44重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン1のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0059】
SiHシロキサン10:(CHSiO[(CHSi)][H(CH)SiO]Si(CH
米国特許出願公開第2006/0264602(A1)号及びその中で引用されている文献に記載されているように、25.13重量%のヘキサメチルジシロキサン、36.63重量%のオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び38.24重量%のトリメチルシロキシ末端メチル水素ポリシロキサン1のトリフルオロメタンスルホン酸触媒による平衡化によって調製する。
【0060】
アルキルメチルシロキサン試料
試料1:(CHSiO[(CHSi)][(C13)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、246.2グラム(g)の1-ヘキセン及び78.5ミリグラム(mg)のPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた混合物を蒸留して、残留1-ヘキセンを除去する。残りの材料が、試料1である。
【0061】
試料2:(CHSiO[(CHSi)][(C17)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、328.25gの1-オクテン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた混合物を蒸留して、残留1-オクテンを除去する。残りの材料が、試料2である。
【0062】
試料3:(CHSiO[(CHSi)][(C1225)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、492.7gの1-ドデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。反応生成物を100ミリリットル(mL)の石油エーテルで3回洗浄して、残留1-ドデセンを除去する。次に、得られた混合物を蒸留して、残留石油エーテルを除去する。残りの材料が、試料3である。
【0063】
試料4:(CHSiO[(CHSi)][(C1429)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、574.4gの1-テトラデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。反応生成物を100mLの石油エーテルで3回洗浄して残留1-テトラデセンを除去する。次に、得られた混合物を蒸留して、残留石油エーテルを除去する。残りの材料が、試料4である。
【0064】
試料5:(CHSiO[(CHSi)][(C1633)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、657.0gの1-ヘキサデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた材料が、試料5である。
【0065】
試料5は、250℃超の沸点、25℃で45mm/sの動粘度、15~20℃の融点、200℃超の引火点、試料流体100万重量部当たり300重量部未満の飽和吸水率を有し、無色透明、低毒性リスク、地球温暖化係数0(又は約0)、オゾン層破壊係数0(又は約0)であり、使用中、劣化のごくわずかな兆候を示す。
【0066】
試料6:(CHSiO[(CHSi)][(C1837)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、369.3gの1-オクタデセン及び65.0mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、150.0gのSiHシロキサン1を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた生成物は、25℃でワックスであり、したがって、冷却流体として適さない。このことは、化学構造(I)中のR基が、18個未満の炭素原子を含有しなければならないことを立証する。
【0067】
試料7:(CHSiO[(CHSi)]22[(C17)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、44.3gの1-オクテン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン5を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた生成物を蒸留して、残留1-オクテンを生成物組成物の2重量%未満に減少させる。
【0068】
試料8:(CHSiO[(CHSi)][(C13)(CH)SiO]4.5[(C1429)(CH)SiO]1.5Si(CH
三つ口丸底フラスコに、114.9gの1-テトラデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、2時間撹拌を続ける。次いで、196.9gの1-ヘキセンを窒素パージ下で、60℃でフラスコに滴下し、添加が完了した後、溶液を70℃に2時間維持する。得られた混合物を蒸留して、残留1-ヘキセンを除去する。残りの材料が、試料8である。
【0069】
試料9:(CHSiO[(CHSi)][(C13)(CH)SiO][(C1429)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、229.8gの1-テトラデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素ガスパージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、2時間撹拌を続ける。次いで、147.7gの1-ヘキセンを窒素パージ下で、60℃でフラスコに滴下し、添加が完了した後、溶液を70℃に2時間維持する。得られた混合物を蒸留して、残留1-ヘキセンを除去する。残りの材料が、試料9である。
【0070】
試料10:(CHSiO[(CHSi)][(C13)(CH)SiO]1.5[(C1429)(CH)SiO]4.5Si(CH
三つ口丸底フラスコに、344.6gの1-テトラデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、2時間撹拌を続ける。次いで、98.5gの1-ヘキセンを窒素パージ下で、60℃でフラスコに滴下し、添加が完了した後、溶液を70℃に2時間維持する。得られた混合物を蒸留して、残留1-ヘキセンを除去する。残りの材料が、試料10である。
【0071】
試料11:(CHSiO[(CHSi)][(C17)(CH)SiO][(C1429)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、344.7gの1-テトラデセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素ガスパージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン4を70℃で滴下する。添加が完了した後、2時間撹拌を続ける。次いで、131.3gの1-オクテンを窒素パージ下で、60℃でフラスコに滴下し、添加が完了した後、溶液を70℃に2時間維持する。得られた混合物を蒸留して、残留1-オクテンを除去する。残りの材料が、試料11である。
【0072】
試料12:(CHSiO[(CHSi)][(C1021)(CH)SiO]Si(CH
三つ口丸底フラスコに、410.6gの1-デセン及び78.5mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、300.0gのSiHシロキサン10を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。反応生成物を100ミリリットル(mL)の石油エーテルで3回洗浄して、残留1-デセンを除去する。次に、得られた混合物を蒸留して、残留石油エーテルを除去する。残りの材料が、試料12である。
【0073】
試料13:(CHSiO[(CHSi)]16[(C13)(CH)SiO]38Si(CH
三つ口丸底フラスコに、100.0gの1-ヘキセン及び36.0mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、100gのSiHシロキサン6を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた混合物を蒸留して、残留1-ヘキセンを除去する。残りの材料が、試料13である。
【0074】
試料14:(CHSiO[(CHSi)]35[(C17)(CH)SiO]35Si(CH
三つ口丸底フラスコに、109.4gの1-オクテン及び36.0mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、100gのSiHシロキサン7を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた混合物を蒸留して、残留1-オクテンを除去する。残りの材料が、試料14である。
【0075】
試料15:(CHSiO[(CHSi)]25[(C17)(CH)SiO]55Si(CH
還流冷却管、撹拌棒、温度計、及び添加漏斗を備えた1000ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、280.0gのSiHシロキサン8及び110mgのPt-47D触媒を添加する。窒素パージ下で撹拌しながら、温度を70~90℃の範囲に維持しながら、486.0gの1-オクテンを滴下する。添加が完了した後、80℃で4時間撹拌を続ける。反応生成物を真空下で、150℃で3時間ストリッピングして、過剰の1-オクテン、その異性体、及び低揮発性環状シロキサンを除去する。得られた生成物をZeta-Plusフィルターで濾過して、試料15を得る。
【0076】
試料16:(CHSiO[(CHSi)]84[(C17)(CH)SiO]14Si(CH
還流冷却管、撹拌棒、温度計、及び添加漏斗を備えた1000ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、546.0gのSiHシロキサン9及び110mgのPt-47D触媒を添加する。窒素パージ下で撹拌しながら、温度を70~90℃の範囲に維持しながら、180.0gの1-オクテンを滴下する。添加が完了した後、80℃で4時間撹拌を続ける。反応生成物を真空下で、150℃で3時間ストリッピングして、過剰の1-オクテン、その異性体、及び低揮発性環状シロキサンを除去する。得られた生成物をZeta-Plusフィルターで濾過して、試料16を得る。
【0077】
試料17:(CHSiO[(CHSi)][(CHC(CH)-Ph)(CH)SiO]Si(CH
還流冷却管、撹拌棒、温度計、及び添加漏斗を備えた1000ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、351.0gのSiHシロキサン10及び110mgのPt-47D触媒を添加する。窒素パージ下で撹拌しながら、温度を70~90℃の範囲に維持しながら、299.0gのα-メチルスチレンを滴下する。添加が完了した後、80℃で4時間撹拌を続ける。80℃に4時間維持しながら、別の135.0gのα-メチルスチレン及び330mgのPt-47D触媒を反応混合物に添加する。真空下で、150℃で3時間ストリッピングして、過剰のα-メチルスチレン及び低揮発性環状シロキサンを除去する。そのをZeta-Plusフィルターで濾過して、試料17を得る。
【0078】
試料18:試料1と試料13との80/20重量ブレンド
160gの試料1を40gの試料13と、磁気撹拌棒を用いて30分間混合して、透明な流体を得、これが、試料18である。
【0079】
試料19:試料2と試料14との80/20重量ブレンド
160gの試料2を40gの試料14と、磁気撹拌子を用いて30分間混合して、透明な流体を得、これが、試料19である。
【0080】
試料20:(CHSiO[(C17)(CH)SiO]Si(CH 注:m=0及びn=8
三つ口丸底フラスコに、175.0gの1-オクテン及び36.0mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、100.0gのSiHシロキサン3を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。得られた混合物を蒸留して、残留1-オクテンを除去する。残りの材料が、試料20である。
【0081】
試料21:(CHSiO[(C1429)(CH)SiO]Si(CH 注:m=0及びn=8
三つ口丸底フラスコに、153.0gの1-テトラデセン及び18.0mgのPt-47D触媒を25℃で、窒素パージ下で添加する。撹拌しながら、温度を70~80℃の範囲に維持するように添加を制御しながら、50.0gのSiHシロキサン3を70℃で滴下する。添加が完了した後、4時間撹拌を続ける。残りの材料が、試料21である。
【0082】
試料22:(CHSiO(C17)(CH)SiOSi(CH 注:m=0及びn=1
本材料は、GelestからTM-081として市販されている。
【0083】
試料の特性評価
上述の手順を使用して、19個の試料の各々を粘度、引火点、SiH残留物、及び炭化水素残留物について特徴付ける。試料が、25℃で液体である状態で、及び以下の適合性試験手順を使用して、シリコーンゴム及びEPDMゴムとの試料の適合性を更に特徴付ける。試料の特徴付けの結果を以下の表3に示す。
【0084】
適合性試験。各々が、長さ5センチメートル、幅0.5センチメートル、厚さ2ミリメートルである、EPDMゴム及びシリコーンゴムの試験試料を切断する。各試料材料の初期長さ及び初期重量を記録する。容器内で、試験試料を流体のうちの1つに完全に水没させる。容器を密封して、50℃に加熱する。容器を50℃に4ヶ月間保存し、次いで、試料を取り出して、吸収紙を試験試料の両側に置いて吸収乾燥する。試料の長さ及び重量を記録する。水没前に対する長さ及び重量の変化を決定する。15%を超える長さの増加(初期長さに対して115%超の最終長さ)は、「有意な膨潤」を構成する。50%を超える重量の増加(初期重量に対して150%超の最終重量)は、「有意な浸透」を構成する。著しい膨潤及び/又は著しい膨潤は、適合性試験の不合格をもたらす。
【0085】
比較のために、ポリアルファオレフィン、鉱物油、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びフルオロカーボン流体1の参照流体も、適合性試験において、表2の以下の結果を伴って特徴付けられる。
【0086】
【表2】
【0087】
全体的に見て、鉱物油及びPAO油の両方は、EPDMの著しい膨潤に起因して不合格であり、PDMSは、シリコーンゴムの著しい膨潤及び著しい浸透の両方のために、不合格である。
【0088】
表3は、試料1~22についての特性評価結果を提供する。総合判定合格を受けるためには、試料は、全ての特性評価要件を合格しなければならない。
・25℃で流体=はい
・25℃での粘度=100mm/s未満
・引火点150℃超
・SiH残留物10ppm未満
・炭化水素残留物20重量%未満
・適合性試験=シリコーンゴム及びEPDMゴムの両方について合格。
【0089】
以下の試料は、総合判定不合格を受ける。
【0090】
試料6:この試料は、25℃でワックスであり、化学構造(I)中のR基が18個未満の炭素原子を含有しなければならないことを実証している。
【0091】
試料7:この試料は、mが22未満であるべきであることを実証している。
【0092】
試料13~16:これらの試料は、下付き文字m及びnの合計(すなわち「m+n」)が54を超えると、粘度が高くなりすぎることを実証している。
【0093】
試料20~22:これらの試料は、mが0より大きくある必要があることを実証している。
【0094】
【表3】

NT=試験せず。試料が、他のパラメータを試験する前に1つのパラメータで不合格になった場合、更なる試験は必要ない。
#は、不合格の試験特性を示す。
【国際調査報告】