(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】非静止物体を撮像するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231213BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20231213BHJP
G02B 27/64 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G01N21/956 A
G02B27/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527794
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021081764
(87)【国際公開番号】W WO2022117325
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルシューレン,コーエン,アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】ゼイプ,フェリー
(72)【発明者】
【氏名】パーンデー,ニテシュ
(72)【発明者】
【氏名】コニジェンバーグ,アレクサンダー プラセティア
【テーマコード(参考)】
2G051
2H197
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB20
2G051BB01
2G051BB03
2G051BC07
2G051CB06
2H197AA05
2H197AA12
2H197CA01
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA17
2H197JA23
(57)【要約】
物体のエリアが照明ビームによって照明されるように、物体を支持するように構成されたステージモジュールと、少なくとも1つの信号ビームを収集するように構成された対物レンズであって、少なくとも1つの信号ビームが、物体の照明エリアから生じる、対物レンズと、対物レンズによって収集された少なくとも1つの信号ビームによって形成された像を捕捉するように構成された撮像センサと、像取得の間の対物レンズに対するステージモジュールの相対運動を補償するように動作可能な運動補償機構とを含む、光学撮像システム及び関連方法が開示される。運動補償機構は、上記対物レンズ又はその少なくとも1つの光学素子、上記撮像センサ、及び/又は、光学撮像システムの検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子のうちの1つ又は複数の補償運動を引き起こす。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体のエリアが照明ビームによって照明されるように、前記物体を支持するように構成されたステージモジュールと、
少なくとも1つの信号ビームを収集するように構成された対物レンズであって、前記少なくとも1つの信号ビームが、前記物体の前記照明エリアから生じる、対物レンズと、
前記対物レンズによって収集された前記少なくとも1つの信号ビームによって形成された像を捕捉するように構成された撮像センサと、
像取得の間の前記対物レンズに対する前記ステージモジュールの相対運動を補償するように動作可能な運動補償機構であって、その補償が、
前記対物レンズ又はその少なくとも1つの光学素子、
前記撮像センサ、及び/又は、
光学撮像システムの検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子
のうちの1つ又は複数の補償運動を引き起こすことによって行われる、運動補償機構と
を含む、光学撮像システム。
【請求項2】
前記運動補償機構が、前記像取得の間の前記ステージモジュールのいかなる運動にもかかわらず、前記像取得の間に前記像が前記撮像センサ上の実質的に同じ位置に維持されるように動作可能である、請求項1に記載の光学撮像システム。
【請求項3】
前記運動補償機構が、
前記補償運動を可能にする前記対物レンズの中の1つ又は複数の光学素子用のダイナミックマウントと、
前記補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、請求項1又は2に記載の光学撮像システム。
【請求項4】
前記運動補償機構が、
前記補償運動を可能にする前記撮像センサ用のダイナミックマウントと、
前記補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、請求項1又は2に記載の光学撮像システム。
【請求項5】
前記運動補償機構が、
前記補償運動を可能にする検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子並びに前記光学素子用のダイナミックマウントと、
前記補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、請求項1又は2に記載の光学撮像システム。
【請求項6】
前記照明ビームを前記物体に制御可能に伝達するように動作可能な照明ビームデリバリシステムをさらに含む、請求項1~5の何れか一項に記載の光学システムであって、像取得の間に前記物体の実質的に同じエリアを照明するために、前記照明ビームが前記ステージ運動と実質的に同期移動するように、前記照明ビームデリバリシステムが、前記物体の前記エリアに前記照明ビームを反射するように構成された照明ダイナミックミラーを含む、光学システム。
【請求項7】
前記運動補償機構に対する前記補償運動を決定するように構成された制御ユニットをさらに含む、請求項1~6の何れか一項に記載の光学撮像システム。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記ステージモジュールを制御するための少なくとも制御信号に基づいて前記補償運動を決定するように構成される、請求項7に記載の光学撮像システム。
【請求項9】
前記制御ユニットが、像取得の間に前記ステージモジュールの予測動的挙動に関する前記補償運動を決定するようにさらに構成される、請求項8に記載の光学撮像システム。
【請求項10】
光学撮像システムを使用して物体を撮像するための方法であって、
照明ビームで前記物体のエリアを照明することと、
取得時間帯の間に前記物体の前記照明エリアから生じた少なくとも1つの信号を収集することであって、その時間帯の少なくとも一部分の間は、前記物体が非静止状態である、収集することと、
撮像センサ上で前記少なくとも1つの信号ビームから像を取得することと、
前記取得時間帯の間に前記像が前記撮像センサ上の実質的に同じ位置に維持されるように、前記取得時間帯の間に前記少なくとも1つの信号を収集するために使用される対物レンズモジュールに対する前記物体の相対運動を補償するために、前記取得時間帯の間に前記光学撮像システムの光学素子の補償運動を実行することと
を含む、方法。
【請求項11】
像取得の間に前記物体の実質的に同じエリアを照明するために、前記照明ビームが前記物体運動と実質的に同期移動するように前記照明ビームを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物体を移送するために使用されるステージモジュールを制御するための少なくとも制御信号に基づいて前記補償運動を決定することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステージモジュールの前記動的挙動をモデル化することと、
像取得の間に前記ステージモジュールの前記予測動的挙動に基づいて前記補償運動を決定することと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~9の何れか一項に記載の光学システムを含むメトロロジデバイス。
【請求項15】
請求項1~9の何れか一項に記載の光学システムを含む光学検査デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、参照によって全体として本明細書に援用される、2020年12月1日に出願された欧州特許出願第20210884.1号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、非静止物体を撮像するための方法及び装置に関し、具体的には、集積回路の製造におけるメトロロジ用途に関連するそのような方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に施すように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)にあるパターン(「デザインレイアウト」又は「デザイン」と呼ばれることも多い)を、基板(例えば、ウェーハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置は、基板にパターンを投影するために電磁放射を使用し得る。この放射の波長により、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズが決まる。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。波長が4~20nmの範囲、例えば6.7nm又は13.5nmである極端紫外線(EUV)の放射を使用するリソグラフィ装置であれば、例えば、波長が193nmである放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することが可能である。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置の古典的な解像限界より小さい寸法を有するフィーチャをプロセスするために、低k1リソグラフィが用いられ得る。そのようなプロセスでは、解像度の式は、CD=k1×λ/NAで表され得、ここで、λは、使用される放射線の波長であり、NAは、リソグラフィ装置の投影光学系の開口数であり、CDは、「クリティカルディメンジョン」であり(一般には印刷される最小フィーチャサイズであるが、この場合にはハーフピッチ)、k1は、経験的な解像度ファクタである。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的な機能性及び性能を達成するために回路設計者が計画した形状及び寸法に似せたパターンを基板上に複写することが困難になる。このような困難を克服するために、高度な微調整ステップがリソグラフィ投影装置及び/又はデザインレイアウトに適用され得る。そのようなステップとして、例えば、NAの最適化、照明方式のカスタマイズ、位相シフトパターニング装置の使用、デザインレイアウトの様々な最適化、例えば、デザインレイアウトにおける光近接効果補正(OPC(「光学及びプロセス補正」と呼ばれることもある))又は他の一般的に「解像度向上技術」(RET)と定義される方法があるが、これらに限定されない。代わりに、低k1でのパターン複写を改善するために、リソグラフィ装置の安定性を管理する厳格管理ループが用いられ得る。
【0006】
[0006] IC製造プロセスの多くの態様において、例えば、露光前の基板の適切な位置決めのためのアライメントツール、並びにフォーカス制御のために基板の表面トポロジーを測定するためのレベリングツール、並びにプロセス制御において露光及び/又はエッチングされた製品の検査/測定を行うためのスキャトロメトリベースツールとして、メトロロジツールが使用される。各事例では、ポジショナ又はステージモジュールは、基板を保持する基板支持部を正確に位置決めする必要があり得る。これらの用途では、基板の2つ以上のエリアにわたる光学測定又は検査が望ましい場合が多い。例えば、典型的には、各プロセス層に対して、ウェーハ上の異なる位置に位置する複数のオーバーレイターゲット又はマークにわたって、オーバーレイが測定される。現在のオーバーレイターゲットが測定された後、ポジショナは、対物レンズの位置に対してウェーハを移動し、その結果、次のターゲットは、対物レンズの下に位置決めされ、対物レンズによってフォーカスされる照明ビームとアライメントされる。
【0007】
[0007] 移動・取得・測定時間(MAM)は、現在のオーバーレイターゲットから次のオーバーレイターゲットにウェーハを「移動」し、次のオーバーレイターゲットの像を「取得」し、オーバーレイ値を「測定」又は演算するために要する時間である。MAMは、メトロロジ又は検査ツールのスループットを決定する。現在の最先端技術によれば、例えば、高速ステージプラットホームの、サイズの増加、複雑度及びコストに関する妥協により、「移動」時間の大半は、像取得の間にツールの撮像光学機器(例えば、対物レンズ、撮像センサ)に対して完全に又は実質的に静止状態のターゲットを得るために、移動質量(例えば、重い基板支持部又は撮像センサ)の減速及び加速に費やされる。非静止ターゲットは、歪んだ(又はぼやけた)像をもたらす。取得像は、典型的には、対象のパラメータの値(例えば、オーバーレイ値)を演算又は決定するために使用されるため、質の悪い像は、測定性能の損失(例えば、低い測定精度又は再現性)を招く。高速移動状態と静止状態との間の移行に必要な時間は、MAM時間のかなりの部分を占め、したがって、これにより、スループットが制限される。本発明の目的は、所定のステージの複雑度でスループットを増加するか又は同じスループットでステージの複雑度を低減することである。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本発明の第1の態様では、物体のエリアが照明ビームによって照明されるように、物体を支持するように構成されたステージモジュールと、少なくとも1つの信号ビームを収集するように構成された対物レンズであって、少なくとも1つの信号ビームが、物体の照明エリアから生じる、対物レンズと、対物レンズによって収集された少なくとも1つの信号ビームによって形成された像を捕捉するように構成された撮像センサと、像取得の間の対物レンズに対するステージモジュールの相対運動を補償するように動作可能な運動補償機構であって、その補償が、上記対物レンズ又はその少なくとも1つの光学素子、上記撮像センサ、及び/又は、光学撮像システムの検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子のうちの1つ又は複数の補償運動を引き起こすことによって行われる、運動補償機構とを含む、光学撮像システムが提供される。
【0009】
[0009] 本発明の第2の態様では、光学撮像システムを使用して物体を撮像するための方法であって、照明ビームで物体のエリアを照明することと、取得時間帯の間に物体の照明エリアから生じた少なくとも1つの信号を収集することであって、その時間帯の少なくとも一部分の間は、上記物体が非静止状態である、収集することと、撮像センサ上で少なくとも1つの信号ビームから像を取得することと、取得時間帯の間に像が撮像センサ上の実質的に同じ位置に維持されるように、取得時間帯の間に少なくとも1つの信号を収集するために使用される対物レンズモジュールに対する物体の相対運動を補償するために、上記取得時間帯の間に光学撮像システムの光学素子の補償運動を実行することとを含む、方法が提供される。
【0010】
[00010] 本発明の他の態様は、第2の態様の光学システムを含むメトロロジデバイスを含む。
【0011】
[0011] 以下では、添付の概略図面を参照して、本発明の実施形態をあくまで例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】ホリスティックリソグラフィの概略図を示し、半導体製造を最適化するための重要な3つの技術間の協調を表す。
【
図4】本発明の実施形態による放射源を含み得る、メトロロジデバイスとして使用されるスキャトロメトリ装置の概略図を示す。
【
図5】本発明の実施形態による放射源を含み得るレベルセンサ装置の概略図を示す。
【
図6】本発明の実施形態による放射源を含み得るアライメントセンサ装置の概略図を示す。
【
図7】サンプルが完全に静止している間に像取得が実行される場合の時間の関数としてのサンプルの移動速度(上図)と、サンプルが未だ移動している間に像取得が実行される場合の時間の関数としてのサンプルの移動速度(下図)と、をそれぞれ説明する2つの図を示す。
【
図8】第1の構成のスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
【
図9】実施形態によるスキャトロメータメトロロジツールの第1の構成で実施される運動補償の動作原理を概略的に示す。
【
図10】第2の構成のスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
【
図11】第3の構成のスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
【
図12】ぼかし像から及び公知のブラーカーネルから補正像を予測するためのCNNの訓練を示すブロック図である。
【
図13】ぼかし像から及び公知のブラーカーネルからx及びyに対するオーバーレイ値を直接予測するためのCNNの訓練を示すブロック図である。
【
図14】モーションブラー入力像及びモーションブラーカーネルから非ぼかし像を予測する訓練済みのCNNの推論を示すブロック図である。
【
図15】モーションブラー入力像対及びモーションブラーカーネルからx及びyに対するオーバーレイを直接予測する訓練済みのCNNの推論を示すブロック図である。
【
図16】広帯域放射源を制御するためのコンピュータシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[00012] 本文書では、「放射」及び「ビーム」という用語は、あらゆるタイプの電磁放射を包含するように使用され、そのような電磁放射には、紫外線(例えば、365、248、193、157又は126nmの波長を有する)及びEUV(例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する極端紫外線)が含まれる。
【0014】
<レチクル>
[00013] 本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」又は「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を、入射する放射ビームに提供するために使用可能な一般的なパターニングデバイスを意味するものとして広義に解釈され得る。これに関連して「ライトバルブ」という用語も使用される場合がある。古典的なマスク(透過型又は反射型のマスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)に加えて、他のそのようなパターニングデバイスの例として、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイがある。
【0015】
[00014]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された(イルミネータとも呼ばれる)照明システムILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築されて、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたマスク支持部(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築されて、特定のパラメータに従って基板支持部を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板支持部(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば、1つ以上のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
【0016】
[00015] 稼働中、照明システムILは、放射源SOから(例えば、ビーム送達システムBDを介して)放射ビームを受ける。照明システムILは、放射の誘導、整形及び/又は制御のために様々なタイプの光学コンポーネントを含み得、例えば屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型及び/又は他のタイプの光学コンポーネント又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。イルミネータILは、放射ビームBがパターニングデバイスMAの面において所望の空間強度分布及び角度強度分布をその断面に有するように、放射ビームBを調節するために使用され得る。
【0017】
[00016] 本明細書で使用される「投影システム」PSという用語は、様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈されたい。そのようなシステムには、使用されている露光放射の必要に応じて及び/又は他の要因(例えば、液浸液の使用又は真空の使用)の必要に応じて、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁型及び/又は静電光学型のシステム又はこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用されている場合、それらは、すべてより一般的な用語である「投影システム」PSと同義であると見なされ得る。
【0018】
[00017] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を埋めるように、基板の少なくとも一部分が、屈折率が比較的高い液体(例えば、水)で覆われ得るタイプであり得、これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6952253号に示されている。
【0019】
[00018] リソグラフィ装置LAは、基板支持部WTが2つ以上あるタイプ(「デュアルステージ」とも呼ばれる)であってもよい。そのような「複数ステージ」マシンでは、それらの基板支持部WTは並行して使用されてよく、及び/又は、それらの基板支持部WTの一方に載っている基板Wが、その基板Wにパターンを露光することに使用されている間に、他方の基板支持部WTに載っている別の基板Wに対して、その別の基板Wのその後の露光の準備の手順が実施されてよい。
【0020】
[00019] 基板支持部WTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含んでよい。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニング装置を保持するように構成されている。センサは、投影システムPSの特性、又は放射ビームBの特性を測定するように構成されてよい。測定ステージは複数のセンサを保持してよい。クリーニング装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部、又は液浸液を供給するシステムの一部をクリーニングするように構成されてよい。測定ステージは、基板支持部WTが投影システムPSから離れている時に、投影システムPSの下を動いてよい。
【0021】
[00020] 稼働中は、放射ビームBが、パターニングデバイス(例えば、マスク支持物MT上に保持されたマスクMA)に入射し、パターニングデバイスMA上にあるパターン(設計レイアウト)によってパターニングされる。放射ビームBは、マスクMAを横断した後、投影システムPSを通り抜け、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上にフォーカスさせる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFの支援により、基板支持部WTは正確に動くことが可能であり、例えば、様々なターゲット部分Cが、放射ビームBの経路中のフォーカス及びアライメントされる位置に位置決めされるように正確に動くことが可能である。同様に、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めするために、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(これは
図1に明示されていない)とが使用されてよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2、及び基板アライメントマークP1、P2を使用してアライメントされてよい。基板アライメントマークP1、P2は、図示されたように専用ターゲット部分を占有するが、ターゲット部分間の空間に配置されてよい。基板アライメントマークP1、P2は、ターゲット部分C間に配置される場合には、スクライブラインアライメントマークと呼ばれる。
【0022】
[00021]
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLC(リソセル又は(リソ)クラスタと呼ばれることもある)の一部をなし得、リソグラフィセルLCは、基板Wに対して露光前プロセス及び露光後プロセスを実施するための装置も含むことが多い。従来、そのような装置として、レジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光したレジストを現像するデベロッパDE、冷却プレートCH及びベークプレートBK(これらは、例えば、基板Wの温度を調節するものであり、それは、例えば、レジスト層中の溶剤を調節するために行われる)がある。基板ハンドラ(即ちロボット)ROが基板Wを入出力ポートI/O1、I/O2からピックアップし、それらの基板Wを様々なプロセス装置間で動かし、それらの基板Wをリソグラフィ装置LAのローディングベイLBまで送達する。リソセル内のデバイスは、まとめてトラックと呼ばれることも多く、典型的にはトラック制御ユニットTCUの管理下にあり、トラック制御ユニットTCU自体は、監視制御システムSCSによって制御され得、監視制御システムSCSは、リソグラフィ装置LAも(例えば、リソグラフィ制御ユニットLACUを介して)制御し得る。
【0023】
[00022] リソグラフィ装置LAによって露光される基板Wが正確且つ確実に露光されるために、基板を検査して、パターン形成された構造の特性、例えば連続する層間のオーバーレイエラー、線の太さ、クリティカルディメンジョン(CD)等を測定することが望ましい。そのため、検査ツール(図示せず)がリソセルLCに含まれ得る。エラーが検出された場合、例えば、連続する基板の露光又は基板Wに対して実施されるべき他のプロセスステップに対する調節が行われ得、これは、特に同じバッチ又はロットの他の基板Wが引き続き露光又はプロセスされる前に検査が行われる場合に行われ得る。
【0024】
[00023] メトロロジ装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性を測定するために使用され、特に異なる基板Wの特性がどのようにばらつくか、又は同じ基板Wの異なる層に関連付けられた特性が層ごとにどのようにばらつくかを測定するために使用される。検査装置は、代わりに、基板W上の欠陥を識別するように構築され得、例えばリソセルLCの一部分であり得るか、又はリソグラフィ装置LAに組み込まれ得るか、又はスタンドアロン装置であり得る。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層内の像)に関する特性、又は半潜像(露光後ベーク工程PEB後のレジスト層内の像)に関する特性、又は現像されたレジスト像(レジストの露光部分又は非露光部分が除去されている)に関する特性、又はさらに(エッチング等のパターン転写工程後の)エッチングされた像に関する特性を測定し得る。
【0025】
[00024] 典型的には、リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法決定及び配置に高い精度を必要とする、処理のなかで最もクリティカルなステップの1つである。この高い精度を確保するために、
図3に概略的に示されるように、3つのシステムをいわゆる「ホリスティック」管理環境として組み合わせ得る。これらのシステムの1つは、リソグラフィ装置LAであり、これは、メトロロジツールMT(第2のシステム)及びコンピュータシステムCL(第3のシステム)と(仮想的に)接続される。そのような「ホリスティック」環境の鍵は、これらの3つのシステム間の協調を最適化して、プロセスウィンドウ全体を強化し、厳格管理ループを実現することにより、リソグラフィ装置LAによって実施されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまるようにすることである。プロセスウィンドウは、プロセスパラメータ(例えば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)の範囲を規定し、この範囲内で特定の製造プロセスが規定の結果(例えば、機能する半導体デバイス)を産出し、典型的には、この範囲内でリソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータが変動し得る。
【0026】
[00025] コンピュータシステムCLは、パターニングされるデザインレイアウト(の一部)を使用することにより、何れの解像度向上技術を使用すべきかを予測することが可能であり、且つ計算機リソグラフィのシミュレーション及び計算を実施して、パターニングプロセスのプロセスウィンドウ全体の最大化を達成するマスクレイアウト及びリソグラフィ装置設定を決定することが可能である(
図3において第1のスケールSC1の両方向矢印で示されている)。典型的には、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニング可能性に適合するように用意される。コンピュータシステムCLは、プロセスウィンドウ内の何れの箇所でリソグラフィ装置LAが現在動作しているかを(例えば、メトロロジツールMTからの入力を使用して)検出することにより、(例えば、準最適な処理のために)欠陥が存在する可能性があるかどうかを予測することがさらに可能である(
図3において第2のスケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0027】
[00026] メトロロジツールMTは、正確なシミュレーション及び予測を可能にする入力をコンピュータシステムCLに与えることが可能であり、(例えば、リソグラフィ装置LAの較正ステータスにおいて)起こり得るドリフトを識別するフィードバックをリソグラフィ装置LAに与えることが可能である(
図3において第3のスケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0028】
[00027] リソグラフィプロセスでは、作成された構造を(例えば、プロセスの管理及び検証のために)頻繁に測定することが望ましい。そのような測定を行うツールは、一般にメトロロジツールMTと呼ばれる。そのような測定を行うメトロロジツールMTとして様々なタイプが知られており、例えば走査電子顕微鏡又は様々な形式のスキャトロメータメトロロジツールMTがある。スキャトロメータは、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にする多目的計器であり、測定は、スキャトロメータの対物レンズの瞳若しくは瞳に対する共役面にセンサを有すること(通常、瞳ベースの測定と呼ばれる測定)により、又は像面若しくは像面に対する共役面にセンサを有すること(この場合、通常、像ベース若しくはフィールドベースの測定と呼ばれる測定)により行われる。そのようなスキャトロメータ及び関連する測定技術については、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100328655号、同第2011102753A1号、同第20120044470A号、同第20110249244号、同第20110026032号又は欧州特許出願公開第1,628,164A号に詳述されている。上述のスキャトロメータは、軟X線及び可視波長~近赤外波長の範囲の光を使用して格子を測定することが可能である。
【0029】
[00028] 第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、格子の特性を再構築又は計算する再構築方法が測定信号に適用され得る。そのような再構築は、例えば、散乱する放射線とターゲット構造の数学モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することの結果であり得る。数学モデルのパラメータは、相互作用のシミュレーションにより、実際のターゲットから観察された回折パターンと同様の回折パターンが生成されるまで調節される。
【0030】
[00029] 第2の実施形態では、スキャトロメータMTは、分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射線源から放射された放射線がターゲットに向かい、ターゲットから反射又は散乱した放射線がスペクトロメータ検出器に向かい、スペクトロメータ検出器が、鏡面反射した放射線のスペクトルを測定する(即ち強度を波長の関数として測定する)。このデータから、検出されたスペクトルを引き起こしているターゲットの構造又はプロファイルを再構築することが可能であり、この再構築は、例えば、厳密結合波理論及び非線形回帰により、又はシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により可能である。
【0031】
[00030] 第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソスキャトロメータである。エリプソスキャトロメータは、偏光状態のそれぞれについて、散乱した放射線を測定することによってリソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのようなメトロロジ装置は、偏光光(例えば、直線偏光光、円形偏光光又は楕円偏光光)を、例えばメトロロジ装置の照明セクションにおいて適切な偏光フィルタを使用して放射する。メトロロジ装置に好適な源は、偏光放射線も同様に提供可能である。既存のエリプソスキャトロメータの様々な実施形態は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第11/451,599号、同第11/708,678号、同第12/256,780号、同第12/486,449号、同第12/920,968号、同第12/922,587号、同第13/000,229号、同第13/033,135号、同第13/533,110号及び同第13/891,410号に記載されている。
【0032】
[00031] スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、反射スペクトル及び/又は検出構成の非対称性を測定することによって、2つのミスアライメントのある格子又は周期構造のオーバーレイを測定するように適応させており、非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(典型的にはオーバーラップしている)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続層というわけではない)において適用することができ、ウェーハ上の実質的に同じ位置に形成することができる。スキャトロメータは、いかなる非対称性も明確に区別できるように、例えば、共同所有する欧州特許出願公開第1628164A号において説明されるような、対称的な検出構成を有し得る。これにより、格子のミスアライメントを測定するための単刀直入な方法が提供される。ターゲットが周期構造の非対称性を通じて測定される際の、周期構造を含む2つの層の間のオーバーレイエラーを測定するためのさらなる例は、全体として参照により本明細書に援用される、PCT特許出願公開の国際公開第2011/012624号又は米国特許出願第20160161863号から入手することができる。
【0033】
[00032] 他の対象のパラメータは、フォーカス及びドーズであり得る。フォーカス及びドーズは、全体として参照により本明細書に援用される、米国特許出願第2011-0249244号において説明されるような、スキャトロメトリによって(又は代わりに走査電子顕微鏡によって)、同時に決定することができる。フォーカスエネルギーマトリックス(FEM、フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる)の各ポイントに対するクリティカルディメンジョン及び側壁角度測定値の独特の組合せを有する単一の構造を使用することができる。クリティカルディメンジョン及び側壁角度のこれらの独特の組合せが利用可能である場合は、フォーカス及びドーズ値は、これらの測定値から独特に決定することができる。
【0034】
[00033] メトロロジターゲットは、複合格子の集合体であり得、大部分がレジストにおけるリソグラフィプロセスによって形成されるが、例えば、エッチングプロセスの後にも形成される。典型的には、格子の構造のピッチ及び線幅は、メトロロジターゲットから得られる回折次数を捕捉できるように、測定光学系(具体的には、光学系のNA)に強く依存する。以前に示した通り、回折信号は、2つの層の間のシフト(「オーバーレイ」とも呼ばれる)を決定するために使用することも、リソグラフィプロセスによって生成されるようなオリジナルの格子の少なくとも一部を再構築するために使用することもできる。この再構築は、リソグラフィプロセスの質のガイダンスを提供するために使用することができ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために使用することができる。ターゲットは、ターゲットにおけるデザインレイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成された、より小さなサブセグメンテーションを有し得る。このサブセグメンテーションにより、ターゲットは、全プロセスパラメータ測定値がデザインレイアウトの機能部分に酷似するように、デザインレイアウトの機能部分に一層類似するように挙動する。ターゲットは、アンダーフィルモード又はオーバーフィルモードで測定することができる。アンダーフィルモードでは、測定ビームは、ターゲット全体より小さいスポットを発生させる。オーバーフィルモードでは、測定ビームは、ターゲット全体より大きいスポットを発生させる。そのようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することも可能であり得、したがって、それと同時に異なる処理パラメータを決定することも可能であり得る。
【0035】
[00034] 特定のターゲットを使用したリソグラフィパラメータの全体的な測定の質は、少なくとも部分的には、このリソグラフィパラメータの測定に使用される測定レシピによって決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ若しくは複数のパラメータ、測定された1つ若しくは複数のパターンの1つ若しくは複数のパラメータ又はその両方を含み得る。例えば、基板測定レシピで使用される測定が回折ベースの光学的測定である場合は、この測定のパラメータの1つ又は複数は、放射線の波長、放射線の偏光、基板に対する放射線の入射角、基板上のパターンに対する放射線の方位などを含み得る。測定レシピを選択する際の基準の1つは、例えば、プロセス変動に対する測定パラメータのうちの1つの感受性であり得る。さらなる例は、参照によって全体として本明細書に援用される、米国特許出願第2016-0161863号及び公開済みの米国特許出願第2016/0370717A1号に記載されている。
【0036】
[00035] スキャトロメータなどのメトロロジ装置が
図4に示される。それは、放射を基板6上に投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を含む。反射又は散乱放射がスペクトロメータ検出器4に送られ、スペクトロメータ検出器4は、鏡面反射放射のスペクトル10を測定する(すなわち、波長の関数としての強度の測定)。このデータから、検出スペクトルを生じさせる構造又はプロファイルが、処理ユニット(PU)によって、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって、又は
図3の下部に示されるようなシミュレーションスペクトルのライブラリとの比較によって再構築され得る。一般に、再構築のために、構造の一般形態は分かっており、幾つかのパラメータは、構造が作られたプロセスの知識から想定され、それによって、スキャトロメトリデータから決定されるべき、構造の数個のパラメータのみが残される。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成されてもよい。
【0037】
[00036] メトロロジターゲットの測定を介するリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、少なくとも部分的には、このリソグラフィパラメータの測定に使用される測定レシピによって決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ以上のパラメータ、測定された1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータ又はその両方を包含し得る。例えば、基板測定レシピで行われる測定が回折ベースの光学的測定であれば、この測定のパラメータの1つ以上は、放射線の波長、放射線の偏光、基板に対する放射線の入射角、基板上のパターンに対する放射線の方位等を含み得る。測定レシピを選択する際の基準の1つは、例えば、何れかの測定パラメータの、プロセス変動に対する感受性であり得る。さらなる例は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願第2016-0161863号及び公開済みの米国特許出願第2016/0370717A1号に記載されている。
【0038】
[00037] IC製造に使用される別のタイプのメトロロジツールは、トポグラフィ測定システム、レベルセンサ、又は高さセンサである。そのようなツールは、基板(又はウェーハ)の上面のトポグラフィを測定するためにリソグラフィ装置に組み込まれてもよい。基板のトポグラフィのマップ(高さマップとも呼ばれる)は、基板上の位置の関数として基板の高さを示すこれらの測定から生成され得る。この高さマップは、基板上の適切なフォーカス位置にパターニングデバイスの空間像を提供するために、基板上のパターンの転写中に基板の位置を補正するために後に使用され得る。この文脈における「高さ」とは、基板に対して広く面外の寸法を指す(Z軸とも呼ばれる)ことが理解されるだろう。一般的に、レベル又は高さセンサは、(それ自体の光学系に対して)定位置で測定を行い、基板と、レベル又は高さセンサの光学系の相対移動は、基板にわたる場所における高さ測定をもたらす。
【0039】
[00038] 当該技術分野で公知のレベル又は高さセンサLSの一例は、
図5に概略的に示され、
図5は、動作原理のみを示す。この例では、レベルセンサは、光学系を含み、光学系は、投影ユニットLSP及び検出ユニットLSDを含む。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRによって付与される放射ビームLSBを提供する放射源LSOを含む。放射源LSOは、例えば、偏光又は非偏光、パルス又は連続の(偏光又は非偏光レーザビームなど)スーパーコンティニウム光源などの狭帯域又は広帯域光源でもよい。放射源LSOは、異なる色、又は波長範囲を有する複数の放射源(複数のLEDなど)を含み得る。レベルセンサLSの放射源LSOは、可視放射に限定されず、追加的又は代替的に、UV及び/又はIR放射、並びに基板の表面からの反射に適した任意の波長範囲を包含し得る。
【0040】
[00039] 投影格子PGRは、周期的に変化する強度を持つ放射ビームBE1をもたらす周期構造を含む周期格子である。周期的に変化する強度を持つ放射ビームBE1は、0度~90度、一般的には70度~80度の入射基板表面に垂直な軸(Z軸)に対する入射角ANGを有する基板W上の測定場所MLOに向けて誘導される。測定場所MLOでは、パターン形成された放射ビームBE1は、基板Wによって反射され(矢印BE2によって示される)、検出ユニットLSDに向けて誘導される。
【0041】
[00040] 測定場所MLOにおいて高さレベルを決定するために、レベルセンサは、検出格子DGR、検出器DET、及び検出器DETの出力信号を処理するための処理ユニット(図示せず)を含む検出システムをさらに含む。検出格子DGRは、投影格子PGRと同じであってもよい。検出器DETは、受け取った光を示す、例えば受け取った光の強度を示す(光検出器など)、又は受け取った強度の空間分布を表す(カメラなど)検出器出力信号を生成する。検出器DETは、1つ又は複数の検出器のタイプの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0042】
[00041] 三角測量技術により、測定場所MLOにおける高さレベルを決定することができる。検出された高さレベルは、一般的に、検出器DETによって測定されるような信号強度に関連し、信号強度は、数ある中でも、投影格子PGRの設計及び(斜め)入射角ANGに依存する周期性を有する。
【0043】
[00042] 投影ユニットLSP及び/又は検出ユニットLSDは、投影格子PGRと検出格子DGRとの間のパターン形成された放射ビームの経路に沿って、レンズ及び/又はミラーなどのさらなる光学素子を含み得る(図示せず)。
【0044】
[00043] ある実施形態では、検出格子DGRは、省かれてもよく、検出器DETは、検出格子DGRがある位置に配置されてもよい。そのような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。
【0045】
[00044] 基板Wの表面を効果的にカバーするために、レベルセンサLSは、基板Wの表面上に測定ビームBE1のアレイを投影し、それによって、より大きな測定範囲をカバーする、測定エリアMLO又はスポットのアレイを生成するように構成されてもよい。
【0046】
[00045] 一般タイプの様々な高さセンサが、例えば米国特許第7265364号及び米国特許第7646471号に開示され、これらは共に援用される。可視又は赤外線放射の代わりにUV放射を使用する高さセンサが、援用される米国特許出願公開第2010233600A1号に開示される。援用される国際公開第2016102127A1号では、検出格子を必要とすることなく、格子像の位置の検出及び認識を行うために多素子検出器を使用する小型高さセンサが記載される。
【0047】
[00046] IC製造で使用される別のタイプのメトロロジツールは、アライメントセンサである。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な側面は、(同じ装置又は異なるリソグラフィ装置によって)前の層に築かれたフィーチャに関連して正しく及び正確に施されたパターンを配置する能力である。このために、基板は、マーク又はターゲットの1つ又は複数のセットを備える。各マークは、後に位置センサ(一般的に光位置センサ)を使用して、それ自体の位置が測定され得る構造である。位置センサは、「アライメントセンサ」と呼ばれることがあり、マークは、「アライメントマーク」と呼ばれることがある。
【0048】
[00047] リソグラフィ装置は、1つ以上の(例えば複数の)アライメントセンサを含んでもよく、アライメントセンサによって、基板上に設けられたアライメントマークの位置を正確に測定することができる。アライメント(又は位置)センサは、回折及び干渉などの光学現象を使用して、基板上に形成されたアライメントマークから位置情報を取得し得る。現在のリソグラフィ装置で使用されるアライメントセンサの一例は、米国特許第6961116号に記載されるような自己参照干渉計に基づくものである。例えば米国特許出願公開第2015261097A1号に開示されるように、位置センサの様々な改善及び修正が開発されている。これらの公報のすべての内容が本明細書に援用される。
【0049】
[00048]
図6は、例えば、援用される米国特許第6961116号に記載されるような公知のアライメントセンサASの一実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは、1つ又は複数の波長の放射ビームRBを提供し、放射ビームRBは、方向転換光学部品によって、照明スポットSPとして、マーク(基板W上に位置するマークAMなど)上へと方向転換される。この例では、方向転換光学部品は、スポットミラーSM及び対物レンズOLを含む。照明スポットSP(照明スポットSPによって、マークAMが照明される)は、マーク自体の幅よりも直径が僅かに小さくてもよい。
【0050】
[00049] アライメントマークAMによって回折された放射は、(この例では、対物レンズOLによって)情報伝達ビームIBへとコリメートされる。「回折される」という用語は、マークからの0次回折(これは、反射と呼ばれることがある)を含むことが意図される。例えば上述の米国特許第6961116号に開示されるタイプの自己参照干渉計SRIは、ビームIBをそれ自体と干渉させ、その後に、ビームは、光検出器PDによって受け取られる。放射源RSOによって2つ以上の波長が作られる場合には別個のビームを提供するために、さらなる光学部品(図示せず)が含まれてもよい。光検出器は、単一素子でもよく、又はそれは、必要に応じて幾つかのピクセルを含んでもよい。光検出器は、センサアレイを含んでもよい。
【0051】
[00050] 方向転換光学部品(この例では、方向転換光学部品は、スポットミラーSMを含む)は、情報伝達ビームIBがマークAMからの高次回折放射のみを含むように(これは、測定にとって必須ではないが、信号対雑音比を向上させる)、マークから反射された0次放射をブロックするようにも機能し得る。
【0052】
[00051] 強度信号SIは、処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIの光学的処理及びユニットPUの計算処理の組み合わせによって、基準フレームに対する基板上のX及びY位置の値が出力される。
【0053】
[00052] 図示されるタイプの単一測定は、マークの位置をマークの1ピッチに対応した特定の範囲内にのみ固定する。これと併せて、より粗い測定技術を使用して、正弦波のどの周期がマーク位置を含むものであるかを識別する。精度の向上のため、及び/又はマークを作る材料、並びに上及び/又は下にマークが設けられる材料を問わないマークのロバストな検出のために、より粗いレベル及び/又はより細かいレベルで同じプロセスが、異なる波長で繰り返され得る。波長は、同時に処理されるように、光学的に多重化及び逆多重化されてもよく、及び/又は波長は、時分割若しくは周波数分割によって多重化されてもよい。
【0054】
[00053] この例では、アライメントセンサ及びスポットSPは、静止したままであり、移動するのは基板Wである。したがって、アライメントセンサは、基板Wの移動方向とは反対方向にマークAMを効果的にスキャンしながら、基準フレームにしっかりと正確に取り付けることができる。基板Wは、この移動において、基板サポート上へのそれの取り付け、及び基板サポートの移動を制御する基板位置決めシステムによって制御される。基板サポート位置センサ(例えば干渉計)は、基板サポート(図示せず)の位置を測定する。ある実施形態では、1つ又は複数の(アライメント)マークが基板サポート上に設けられる。基板サポート上に設けられたマークの位置の測定は、位置センサによって決定されるような基板サポートの位置が(例えば、アライメントシステムが接続されるフレームに対して)較正されることを可能にする。基板上に設けられたアライメントマークの位置の測定は、基板サポートに対する基板の位置が決定されることを可能にする。
【0055】
[00054] メトロロジツールMT(上記のスキャトロメータ、トポグラフィ測定システム又は位置測定システムなど)及び他の多くの光学検査ツールは、光ビームに対してサンプル(例えば、半導体基板又はウェーハ)を精密に且つ正確に位置決めするためのポジショナ又はステージモジュールを使用し得る。用途に応じて、ポジショナは、複数の自由度(例えば、6自由度)での移動を可能にするように構成することができる。サイズ縮小化が進む現代の集積回路の製造の高まる需要に突き動かされ、より高い分解能及びより優れた信頼性を提供することができるメトロロジ及び検査ツールの開発が速いペースで広範にわたって行われている。既存の多くのメトロロジ及び検査ツールでは、光学分解能は、高NA対物レンズを使用することによって向上される。例えば、オーバーレイ測定用の既存のスキャトロメータメトロロジツールでは、高NA(例えば、0.7~0.97)を有する対物レンズが使用される場合が多い。サンプルの像において測定が実施される場合は、単に高解像力を有する対物レンズを使用するだけでは、必ずしも高い測定精度が保証されるとは限らない。この理由は、それらの事例では、測定精度が取得像の質にも依拠するためである。歪んだ又はぼやけた像は何れも、測定精度を著しく低下させることになる。
【0056】
[00055] 背景技術の項目で説明されるように、歪んだ又はぼやけた像の生成を回避するため、サンプル(例えば、基板又はウェーハ)を支えるポジショナは、像取得が開始できるようになる前には、完全に又は実質的に静止していなくてはならない。高速移動状態と静止状態との間の移行に必要な時間は、MAM時間のかなりの部分を占める。そのような大きな移行時間量は、像取得の間にツールの撮像光学機器(例えば、対物レンズ、撮像センサ)に対して完全に又は実質的に静止状態のサンプルを保証するため、例えば、重い基板支持部の減速及び加速に費やされる。MAM時間はメトロロジ又は検査ツールのスループット(すなわち、単位時間あたり処理されるサンプルの数)に反比例するため、スループットを押し上げるためにMAMを低減することが望ましい。
【0057】
[00056]
図7は、サンプルが完全に静止している間(
図7(a))及びサンプルが未だ移動している間(
図7(b))に像取得が実行される場合のそれぞれの時間の関数としてのサンプルの移動速度を示す2つの図を示す。
図7(b)は、光学システムの光学コンポーネント(例えば、対物)が静止サンプルに対して移動している間に像取得が実行される場合を示すためにも使用できることを理解すべきである。
図7(a)を参照すると、この特定の事例におけるMAM時間は、2つの位置(例えば、現在の位置と次の位置)の間のサンプルの移動に要する第1の持続時間ΔT1と、像の取得に要する第2の持続時間ΔT2とを含む。第1の持続時間ΔT1は、ポジショナが現在の位置から移動し始める時刻とポジショナが次の位置に完全に落ち着く(又は速度がゼロになる)時刻との間の持続時間として定義される。
図7(b)を参照すると、MAM時間は、2つの撮像エリア間のサンプルの移動に要する第1の持続時間ΔT1’と、像の取得に要する第2の持続時間ΔT2’とを含む。しかし、非静止サンプルの性質により、第1の持続時間T1’は、ポジショナが現在の撮像エリアを出る(ゼロ以外の、ある速度で)時刻と、次の撮像エリアに入る(ゼロ以外の、ある速度で)時刻との間の持続時間として定義される。上図と比べると、下図の移動時間ΔT1’は、サンプルがゼロ以外の速度で未だ移動している間にサンプルを撮像できることを理由に、低減される。取得時間が一定(すなわち、ΔT2=ΔT2’)である(同じ撮像センサを使用)と想定すると、非静止サンプルの撮像によって達成可能なMAM時間の低減は、2つの移行時間帯(すなわち、ΔT1とΔT1’)の間の差である。
【0058】
[00057] 非静止サンプルにおける撮像又は非静止撮像センサでの撮像は、像の質の劣化(例えば、ぼやけた像)をもたらす場合が多い。運動補償及び像向上のため、既存の光学システムでは、様々な技法が開発され、取り入れられている。例えば、ラップトップのデジタルビデオディスク(DVD)及びBlu-rayドライブでは、典型的には、光学ピックアップユニットが使用される。それらの光学ピックアップユニットは、高NA対物レンズ(例えば、Blu-rayの場合、NA=0.85)のラジアル、フォーカス及び傾斜の動きを正確に制御するために、線ばねと組み合わせて、非常にコンパクトなボイスコイルモータ(VCM)を使用する。
【0059】
[00058] 別個の可動レンズ素子若しくはレンズ群及び/又は撮像センサ(例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサ)を制御するために機械式X-Yボイスコイルアクチュエータが使用される多くのデジタル一眼レフ(DSLR)カメラでは、光学像安定化(OIS)技法が採用されている。ボイスコイルアクチュエータは、例えば、加速センサからの入力を使用して制御することができる。OIS技法を使用することにより、DSLRカメラは、より長いハンドヘルド露光時間の3~4ストップ(8~16倍に等しい)を可能にする。また、スマートフォンなどのモバイル電子デバイスでは、超小型化アクチュエータを含むOISベースのモジュールが運動補償及びオートフオーカス(AF)のために使用される。例えば、米国特許第9134503B2号は、Apple iPhoneカメラで使用するために開発された小型化レンズアクチュエータモジュールについて開示している。開示されるレンズアクチュエータモジュールは、フォーカス最適化のためにレンズの移動が可能なAF機構と、像安定化のためにレンズの移動が可能なOIS機構とを含む。DSLMカメラのOISと同様に、このOIS機構は、ボイスコイルモータ(VCM)技術に基づく。
【0060】
[00059] 既存のVCMベースのOIS技法は、ハンドヘルド光学撮像デバイス(例えば、カメラ)の低振幅パッシブ振動(例えば、ハンドシェイク振動)の補償に限定され、したがって、例えば、事前に定義されたウェーハサンプリング戦略に従ってスキャトロメータメトロロジツールにおいて意図的に実装されるステージモジュールのいかなるアクティブムーブメントも補償することはできない。さらなるMAM時間の低減延いてはスループットの改善を行うため、高速且つ高精度のポジショナを使用することができる。オーバーレイメトロロジなどの多くのメトロロジ用途の場合、高速ポジショナは、例えば、1マイクロメートルより高い位置決め精度を提供できることが望ましい。しかし、高速位置決めには、高速制御電子機器が必要とされ、高精度位置決めには、高精度アクチュエータが必要とされる。そのような厳しい要件を満たすことは、ポジショナが高価になり過ぎること及び大きくなり過ぎることにつながる。
【0061】
[00060] この開示では、費用効果がより高い方法でMAM時間を低減するための延いてはメトロロジ又は検査ツールのスループットを増加するための方法及び装置が提案される。読み易くするため、メトロロジにのみ言及する場合が多い。しかし、メトロロジ、検査ツール及び同様のものが意図される。提案される方法は、像取得の間、ポジショナ(延いてはサンプル)が未だ移動している(すなわち、サンプルがツールの撮像光学機器(例えば、対物レンズ、撮像センサ)に対して静止状態ではない)間に良質の像の取得を可能にすることによって、MAM時間を大幅に低減する。提案される方法及び概念は、
図8~11に示される様々な例示的なメトロロジツールにおいて具体化される。簡単にするため、すべての図は、コンポーネントの一部(例えば、提案される方法の動作原理を説明するという目的を満たすのに十分なもの)のみを示す簡略化された概略図を含むことに留意されたい。
【0062】
[00061] 実施形態は、光学撮像システムのコンポーネント用のダイナミックマウントと、コンポーネントの補償移動を作動するためのアクチュエータとを有する運動補償機構を含み得る。
【0063】
[00062]
図8は、運動補償のために高NA対物レンズが使用される光学撮像システム又はスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
図8に示されるように、放射の照明ビームIBは、折り返し鏡TMに反射して対物レンズOBに入り得る。照明ビームIBは、対物レンズOBの瞳径より小さいビーム径を含み得、対物レンズOBの中心を通過し得る。その後、照明ビームIBは、基板WAのターゲットOTにフォーカスさせることができる。フォーカスさせた照明ビームIBは、対物レンズOBのNAに反比例するスポット径を含み得る。
【0064】
[00063] 基板WAは、ステージモジュールSMによって、支持及び位置決めを行うことができ、ステージモジュールSMは、基板WAを保持するための基板支持部(図示せず)を含み得る。ターゲットOT(例えば、格子ベースのオーバーレイターゲット)は、照明ビームIBを多くの回折次数に回折させ得る。暗視野撮像を行うようにツールが構成される場合は、0次回折次数は、光学コンポーネント(図示せず)によってブロックされ得る。この実施形態では、対物レンズOBによって、2つの非0次回折次数(例えば、正の1次回折次数DB1及び負の1次回折次数DB2)を収集することができる。他の実施形態では、対物レンズOBによって、1つの非0次回折次数(例えば、正の1次回折次数DB1)のみ収集することができる。対物レンズOBは、0.7より大きい、0.8より大きい、0.9より大きい(例えば、0.7~0.97又は0.9~0.95の範囲の)高NAを含むように構成することができる。高NA対物レンズOBは、光学分解能を改善するのみならず、対物レンズOBの瞳面における回折ビームDB1、DB2(又はより一般的には信号ビーム)と照明ビームIBとの間の空間オーバーラップを回避する上でも役立ち、これは、良質の像を得るために大変望ましいものである。異なる実施形態(下記の通り)では、照明と検出は、より低いNAを有する1つ又は複数の対物レンズを使用して、別々に行うことができる。
【0065】
[00064]
図8の非限定的な実施形態では、対物レンズOBは、2つのレンズ素子又はレンズ群(すなわち、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1と第2のレンズ素子又はレンズ群OE2)を含み得る。2つのレンズ素子又はレンズ群OE1、OE2の少なくとも1つは、対物レンズOBの外部ケーシング内で移動できるように構成することができる。この実施形態では、そのような移動は、対物レンズOBの光軸に実質的に垂直な平面(例えば、x-y平面)に制限され得る。他の実施形態では、レンズ素子又はレンズ群OE1は、対物レンズOBのフォーカスの精密最適化を達成できるように、対物レンズOBの光軸に沿って移動するように追加構成することができる。他の実施形態では、対物レンズOBは、数々の(例えば、単一の又は複数の)レンズ素子又はレンズ群を含み得る。
【0066】
[00065] 結像レンズILは、ターゲットOTの像IMが形成されるように、回折ビームDB1、DB2を撮像センサISにフォーカスさせるために使用することができる。それに加えて、例えば、対物レンズOBの瞳面において、回折ビームDB1、DB2の整形及び/又は誘導を行うために、1つ又は複数の光学素子(図示せず)を使用することができる。1つ又は複数の光学素子は、例えば、撮像センサISの所望の場所に回折ビームを誘導するための1つ若しくは複数の光学ウェッジ、又は、所望の波長を選択的に伝送するための1つ若しくは複数の光学フィルタを含み得る。異なる実施形態では、結像レンズIL及び/又は他の光学素子は存在しない場合がある。
【0067】
[00066] ステージモジュールSMは、1つ又は複数のアクチュエータ(例えば、電磁アクチュエータ)を含み得、複数の(例えば、6)自由度での移動を可能にすることができる。
図8の実施形態では、対物レンズOBユニット及び撮像センサIMは、適切な位置に固定することができる。対象のパラメータ(例えば、新しいプロセス層のオーバーレイエラー)を評価するため、測定は、基板WA全体にわたって分散される様々なターゲットOTにわたって行うことができる。ステージモジュールSMは、事前に定義されたサンプリングスキームに従ってターゲットOT間で基板WAを移動させるように構成することができる。ステージモジュールSMは、x-y平面(
図8の座標系による)に実質的に平行な平面で移動することができる。提案される運動補償方法は、移動ターゲット/物体を撮像するという目的のみに限定されないことに留意されたい。それらの提案される運動補償方法は、像取得の間にターゲットと対物レンズOBユニットとの間の相対運動が存在する限り適用することができる。例えば、異なる構成では、スキャトロメータメトロロジツール800は、基板WAを定位置で支持する静止ステージと、基板WAの異なる部分に照明ビームIBを誘導するように構成された可動対物レンズOBユニットとを含み得る。他の構成では、静止サンプルに対して、スキャトロメータメトロロジツール800の撮像セクション全体(例えば、対物レンズOBユニット、照明レンズIL及び撮像センサIMを含む)を移動することができる。これらのすべての事例において、像の質及びスループットを改善するために、提案される運動補償方法を使用することができる。
【0068】
[00067]
図7(b)に戻ると、像取得時間帯ΔT2’の間、ステージモジュールSMは、最初に、中間速度V
Iから事前に定義された最小速度V
minまで減速し、最小速度V
minに達するとすぐに又はその後間もなく、加速を再開する。他の実施形態では、ステージモジュールSMは、短い時間の間、最小速度V
minを維持した後で、再び加速し始めることができる。その後、ステージモジュールSMは、事前に定義された最大速度V
maxに達するまで加速し続けることができる。次いで、ステージモジュールSMは、一定の時間(例えば、現在のターゲットOTと次のターゲットOTとの間の距離によって決定されるような)の間、最大速度で移動することができる。フォーカスさせた照明ビームIBに次のターゲットOTが近づいている際は、ステージモジュールSMは、最大速度V
maxから最小速度V
minに向けて減速し始めることができる。中間速度V
Iでは、ステージモジュールSMは、フォーカスさせた照明ビームIBが次のターゲットOTを測定することができる撮像ゾーンに入っている可能性がある。この時点では、さらなる像取得を実行することができ、その像取得には、前の像取得と同じ時間量ΔT2’を要する。ステージモジュールSMは再び、像取得が終了する前に加速し始めることができ、その結果、例えば、捕捉が完了する頃に中間速度V
Iに達するようになる。上記で言及される最小速度、中間速度及び最大速度は、メトロロジツールの構成及びその用途におけるニーズに従って決定できることに留意されたい。
【0069】
[00068] 像取得の間の移動ターゲットOTは、撮像センサISに対して回折ビームDB1、DB2をシフトさせ得、したがって、撮像センサISにおける空間シフト像が生じ得る。像露光の間、そのような空間シフト像は、運動方向におけるグローバルな「モーションブラー」アーチファクトをもたらし得、それにより、さらなる対策がなければ、演算される対象のパラメータ値の精度が低下する。この問題に対処するため、ビームシフトを誘発する運動を補償し、したがって、撮像センサIS上の像の位置を維持することができる運動補償機構を提供することが提案される。
【0070】
[00069]
図8の実施形態では、対物レンズOBは、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1が第2のレンズ素子又はレンズ群OE2に対して平行移動できる(その逆も同様)ように構成することができる。例えば、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1は、対物レンズOBの光軸に実質的に垂直な平面(例えば、
図8の座標系によるx-y平面)で平行移動することができる。第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の平行移動は、少なくとも1つのアクチュエータを使用して作動することができる。少なくとも1つのアクチュエータは、対物レンズOBの外部ケーシング内に位置し得る。少なくとも1つのアクチュエータは、例えば、少なくとも1つの小型化ボイスコイルアクチュエータ又は少なくとも1つの小型化電磁アクチュエータを含み得る。
【0071】
[00070] 第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の平行移動は、1)照明ビームIBが常に移動ターゲットOTの同じエリアを照明するように照明ビームIBをシフトすること、及び、2)ターゲットOTの移動から生じる対物レンズの瞳面における回折ビームDB1、DB2の空間シフトを補償することの一方又は両方を達成することができる。
【0072】
[00071]
図9(a)及び9(b)は、実施形態によるスキャトロメータメトロロジツールの第1の構成で実施される運動補償の動作原理をそれぞれ示す。簡単にするため、
図9(a)及び9(b)のステージモジュールSMは、+x方向にのみ移動するように示されている。実際には、ステージモジュールSMは、x-y平面(
図8の座標系による)内のいかなる方向にも移動することができる。像取得は、第1の時間インスタンスT1に開始し、第2の時間インスタンスT2に終了することができる。取得時間帯の間(すなわち、2つの時間インスタンスT1、T2間)、ターゲットOTは、+x方向に沿ってΔxの距離を移動した可能性がある。
【0073】
[00072] 上記で言及した通り、運動補償対策がなければ、取得像IMは、照明ビームIBと移動ターゲットOTとの間の相対移動から生じるモーションブラーアーチファクトを示す。したがって、同じ方向(すなわち、+x方向)に沿って第1のレンズ素子又はレンズ群OE1を平行移動することにより、少なくとも像取得時間帯の間に照明ビームIBが常にターゲットOTの同じエリア又は実質的に同じエリアを照明するように、照明ビームIBがオーバーレイターゲットOTと共に実質的に同期する方法で移動することを保証することが可能である。運動を十分に補償するために(又はターゲットOTを厳密に追うために)第1のレンズ素子又はレンズ群OE1が移動する必要がある距離+Δx’は、対物レンズOBの特定の設計に依存し得る。第2の時間インスタンスT2では、第2のレンズ素子又はレンズ群は適切な位置に固定されるため、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1のシフトにより、照明ビームIBは、オーバーレイターゲットOTに斜めに入射することになり得る。これを受けて、照明ビームIBの斜め入射により、回折ビームDB1、DB2は、異なる光学経路に沿って伝播し、その後、対物レンズOBによって収集される。対物レンズOB内のレンズ素子又はレンズ群OE1、OE2を透過する間、回折ビームの空間シフトは、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1を横方向にシフトすることによって実質的に補償することができる。
【0074】
[00073] 第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の平行移動の全体的な効果は、対物レンズOBから出次第、回折ビームDB1、DB2が、少なくとも各像取得時間帯の間、撮像センサIS上の実質的に同じ位置に至る実質的に同じ光学経路をたどることができるというようなものであり得る。言い換えれば、撮像センサ上で形成される像IMは、像が移動ターゲットOTから撮られる時でさえ、実質的に同じ位置にとどまり、実質的に同じシャープネスを有し得る。
【0075】
[00074] スキャトロメータメトロロジツール800は、ツールの可動部分又はコンポーネントのいくつか又はすべてを制御するように構成された制御ユニットCUを含み得る。制御ユニットCUは、1つ又は複数のサブ制御ユニット(図示せず)を含み得、その各々は、ツールのコンポーネントを1つずつ制御するように構成される。
図8の実施形態では、制御ユニットCUは、ステージモジュールSMのアクチュエータを制御するように構成された第1のサブ制御ユニットと、対物レンズOBのアクチュエータを制御するように構成された第2のサブ制御ユニットと、像取得のための撮像センサを制御するように構成された第3のサブ制御ユニットとを含み得る。他の実施形態では、制御ユニットCUは、異なる制御タスクを行うようにそれぞれ構成され得る1つ又は複数のサブ制御ユニットを含み得る。制御ユニットCUは、コンピュータシステムであり得、少なくとも1つのプロセッサ及び1つのメモリを含み得る。
【0076】
[00075] 事前に定義されたサンプリング戦略/スキームに従ってウェーハ又はサンプルの測定又は検査が行われる場合は、制御ユニットCUは、実行予定のサンプリングスキームにおいて詳述される情報を受信することができる。そのようなサンプリング詳細は、例えば、測定のために選択されたターゲットOTの分布、選択されたターゲットOTの各々のサンプリング順番(又はステージモジュールSMのターゲット運動軌跡)、ステージモジュールSMの最大及び最小速度、ステージモジュールSMの加速及び減速率を含み得る。サンプリング詳細は、ステージモジュールSMの時間依存動きベクトルを制御ユニットCUに提供することができる。さらに、制御ユニットCUは、事前に定義されたサンプリング詳細を予測モデルに入力することができ、その予測モデルは、制御ユニットCUのメモリに格納することができ、次の移動動作の間のステージモジュールSMの動的挙動(具体的には、像取得時間帯(例えば、
図7のΔT2/ΔT2’)の間の動的挙動)を予測するように構成することができる。ステージモジュールSMの時間依存動きベクトル及び予測動的挙動の知識を有することにより、制御ユニットCUは、フィードフォワード制御を使用してステージモジュールSMの減衰制振挙動をリアルタイムで追跡できる可能性がある。制御ユニットは、少なくとも各像取得時間帯の間に第1のレンズ素子又はレンズ群OE1がステージモジュールSMと実質的に同期移動する方法で、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の移動を制御できる可能性がある。いくつかの実施形態では、より正確且つロバストな運動補償が得られるように、追加のセンサを使用して、例えば、ステージモジュールSMのリアルタイムの位置及び移動パラメータ(例えば、速度、加速など)を測定することができる。
【0077】
[00076]
図9(a)及び9(b)に戻ると、新しいターゲットOTが撮像ゾーン(第1の時間インスタンスT1における第1のステージ位置と第2の時間インスタンスT2における第2のステージ位置との間の領域として定義することができる)に入ると、制御ユニットCUは、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1を同期する方法で移動/平行移動させるというコマンドをアクチュエータに出すことができる。第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の移動特性(例えば、移動速度、加速及び減速率、移動距離など)は、例えば、プログラムされた動きベクトル、ステージモジュールSMの予測動的挙動並びに対物レンズOBの設計(及び第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の動的挙動)に基づいて決定することができる。対物レンズOBの設計は、ステージモジュールSMの移動特性と第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の移動特性との関係を定義する運動因子を決定することができる。
【0078】
[00077] 像取得が完了した時点で、制御ユニットCUは、サンプリングスキームに従って次の移動動作を行うようにステージモジュールSMのアクチュエータを構成することができる。制御ユニットは、次のターゲットOTの測定/撮像を行えるようにステージモジュールSMを次の事前に定義された位置に移動するというコマンドをアクチュエータに出すことができる。その一方で、制御ユニットCUは、プログラムされた動きベクトル、ステージモジュールSMの予測動的挙動及び前述の運動因子に従って次の事前に定義された移動動作を行うように第1のレンズ素子又はレンズ群OE1のアクチュエータを構成することもできる。第1のレンズ素子又はレンズ群OE1は、次のターゲットOTが撮像ゾーンに入ると、平行移動又は移動される。
【0079】
[00078] 差し控える実施形態は、照明と検出の両方のために高NA対物レンズが採用される例示的な構成において説明されているが、提案される方法は、1つ又は複数の低NA対物レンズが使用される他の構成(例えば、対物レンズは、検出のためにのみ使用することができ、照明分岐では、別個のレンズ又は照明ビームデリバリシステムが使用される)に等しく適用できることを理解すべきである。
【0080】
[00079]
図10は、運動補償のために低NA対物レンズが使用される光学撮像システム又はスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
図10の実施形態では、低NA対物レンズOBは、平行移動できるように構成された及び検出のためだけに使用することができる少なくとも1つのレンズ素子又はレンズ群を含み得る。
【0081】
[00080]
図10を参照すると、実施形態では、放射の照明ビームIBを基板WAに向けて誘導する(フォーカスさせる)ために、照明回転鏡IRMを使用することができる。照明ビームIBは、基板WAのターゲットOTに斜めに入射し得る。照明ビームIBは、照明回転鏡IRMの前に位置する第2の低NA対物レンズ(ここで図示されている)によってフォーカスさせることができる。ターゲットOTとの相互作用に際し、照明ビームIBは、複数の回折次数に回折され得、そのうち、2つの1次回折次数DB1、DB2(+1次回折次数及び-1次回折次数にそれぞれ相当する)は、対物レンズOB’によって収集することができる。対物レンズOB’は、0.2~0.7、0.3~0.7又は0.3~0.5の範囲であり得る低NAを含み得る。低NA対物レンズOB’は、
図8、9(a)及び9(b)の高NA対物レンズOBと同様の方法で構成することができる。対物レンズOB’は、2つのレンズ素子又はレンズ群(すなわち、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1’と第2のレンズ素子又はレンズ群OE2’)を含み得、その少なくとも1つは、少なくとも1つのアクチュエータによる平行移動又は移動が可能であるように構成することができる。
【0082】
[00081] 第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の平行移動によって、照明ビームIBがオーバーレイターゲットの実質的に同じエリアを照明することができ、回折ビームDB1、DB2が撮像センサまで実質的に同じ光学経路をたどることができる、
図8の実施形態とは対照的に、
図10の実施形態における照明ビームIBの移動及び収集された回折ビームDB1、DB2の移動はもはや共にカップリングされない。代わりに、ターゲットOT上の照明ビームIBの移動は、例えば、照明回転鏡IRMのピッチ回転PR及びヨー回転YRを通じて別々に達成することができる。この例では、第1のレンズ素子又はレンズ群OE1’の平行移動は、収集された回折ビームDB1、DB2のシフトのみを補償して、少なくとも各像取得時間帯の間の撮像センサIS上の実質的に静止した像IMを保証するために使用することができる。回折ビームDB1、DB2の空間シフトは、照明ビームIBの移動の結果であり得、それにより、ターゲットOTに対する照明ビームIBの入射角が変化し、したがって、回折ビームDB1、DB2の伝播方向が変化する。照明回転鏡IRMの回転は、移動ターゲットOTを厳密に追うように照明ビームIBを制御することができ、その結果、照明ビームIBは、少なくとも各像取得時間帯の間、オーバーレイターゲットOTの実質的に同じエリアを照明することができる。第1のレンズ素子又はレンズ群OE’の平行移動、照明回転鏡IRMの回転、ステージモジュールSMの移動及び撮像センサISの像取得はすべて、制御ユニットCU’によって制御することができる。
【0083】
[00082]
図10の実施形態では、制御ユニットCU’は、
図8の実施形態のものと同様の方法で機能し得る。また、制御ユニットCU’は、1つ又は複数のサブ制御ユニットも含み得、その各々は、ツールのコンポーネントを1つずつ制御するように構成される。例えば、制御ユニットCU’は、ステージモジュールSMのアクチュエータを制御するように構成された第1のサブ制御ユニットと、対物レンズOBのアクチュエータを制御するように構成された第2のサブ制御ユニットと、像取得のための撮像センサISを制御するように構成された第3のサブ制御ユニットと、照明回転鏡IRMの回転を制御するように構成された第4のサブ制御ユニットとを含み得る。他の実施形態では、制御ユニットCU’は、異なる制御タスクを行うようにそれぞれ構成され得る1つ又は複数のサブ制御ユニットを含み得る。制御ユニットCU’は、少なくとも1つのプロセッサ及び1つのメモリを含み得る。
【0084】
[00083] 事前に定義されたサンプリング戦略/スキームに従ってウェーハ又はサンプルの測定又は検査が行われる場合は、
図10の制御ユニットCU’もまた、実行予定のサンプリングスキームにおいて詳述される情報を受信することができる。さらに、制御ユニットCU’は、次の移動動作の間のステージモジュールSMの動的挙動を予測するために、事前に定義されたサンプリング詳細を適切な予測モデルに入力することができる。ステージモジュールSMのプログラムされた動きベクトル及び動的挙動の知識を有することにより、制御ユニットは、照明回転鏡IRM及び第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の移動の両方ともステージモジュールSMと実質的に同期する方法で制御されるように、照明回転鏡IRM及び第1のレンズ素子又はレンズ群OE1の移動を制御できる可能性がある。
【0085】
[00084] この実施形態の照明デリバリ方法(例えば、照明回転鏡IRM)は、単なる例であり、ステージモジュールSM及び対物レンズOB’又はその素子との同期制御が可能な他の制御可能な照明デリバリ方法及び配置も採用できることに留意されたい。
【0086】
[00085] 異なる実施形態では、対物レンズOB、OB’の少なくとも1つのレンズ素子又はレンズ群を平行移動するというよりむしろ、対物レンズOB、OB’全体を平行移動することによって、回折ビームDB1、DB2の空間シフトが補償され得る。高NA構成(例えば、
図8の実施形態)及び低NA構成(例えば、
図10の実施形態)の各々は、非静止/移動微小物体を撮像するために、対物レンズOB、OB’の1つの要素のみというよりむしろ、対物レンズOB、OB’全体を同期移動するように適応させることができる。高NAと低NAの両方の構成の場合、対物レンズOB、OB’全体の平行移動は、例えば、制御ユニットCU、CU’の制御の下で、少なくとも1つのアクチュエータ(例えば、ボイスコイルアクチュエータ、電磁アクチュエータ)による対物レンズの作動によって可能にすることができる。対物レンズOB、OB’全体の平行移動は、例えば、像の質及びスループットの観点から、少なくとも1つのレンズ素子又はレンズ群の平行移動と実質的に同じ効果をもたらし得る。
【0087】
[00086] 照明と検出がカップリングされ、その両方が単一の高NA対物レンズOBによって可能である高NA構成の事例では、対物レンズOB全体の同期平行移動により、照明ビームIBは、移動ターゲットOTを厳密に追うことができ、その結果、照明ビームIBは、少なくとも各像取得時間帯の間、移動ターゲットOTの実質的に同じエリアを照明することができる。その一方で、対物レンズOB全体の同期平行移動により、収集された回折ビームDB1、DB2の空間シフトを補償することもでき、その結果、対物レンズOBから出次第、回折ビームDB1、DB2は、少なくとも各像取得時間帯の間、撮像センサIS上の実質的に同じ像位置に至る実質的に同じビーム経路をたどることができる。
【0088】
[00087] 照明と検出がデカップリングされる低NA構成の事例では、対物レンズOB全体の同期平行移動は、回折ビームDB1、DB2が、少なくとも各像取得時間帯の間、撮像センサIS上の実質的に同じ像位置に至る実質的に同じビーム経路をたどることのみを保証するように機能し得る。少なくとも各像取得時間帯の間に照明ビームIBが移動ターゲットOTの実質的に同じエリアを照明するように照明ビームIBを同期移動するには、別個の機構(例えば、
図10の照明回転鏡IRM)を採用することができる。
【0089】
[00088] 対物レンズOB’のレンズ素子又はレンズ群の平行移動又は対物レンズOB’全体の平行移動を行うというよりむしろ、回折ビームDB1、DB2の空間シフトは、対物レンズOB’と撮像センサISとの間に位置する少なくとも1つの光学コンポーネントの平行移動又は移動を行うことによって補償することができる。低NA構成のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの光学コンポーネントは、例えば、
図10の結像レンズILを含み得る。結像レンズILの平行移動は、少なくとも各像取得時間帯の間の撮像センサIS上の実質的に静止した像IMをもたらし得る。低NA構成の他のいくつかの実施形態では、回折ビームDB1、DB2の空間シフトは、能動的に補償されない場合がある。代わりに、撮像センサISは、少なくとも各像取得時間帯の間の回折ビームDB1、DB2のシフトにより生じる移動像IMを撮像センサISが厳密に追うように平行移動できるように構成することができる。これらの両方の例では、照明ビームIBは、例えば、
図10の実施形態において採用されるような照明回転鏡IRM又は別の方法によって、移動ターゲットOTを厳密に追うように構成することができる。いくつかの実施形態では、スキャトロメータメトロロジツール1000の検出分岐の2つの、それ以上の又はすべての光学コンポーネント(例えば、
図10の対物レンズOB、結像レンズIL及び撮像センサISを含む)は、非静止ターゲット又は(微小)サンプルを撮像する際、運動補償のために移動可能であり得る。
【0090】
[00089]
図11は、運動補償のために照明回転鏡及び検出回転鏡が使用される光学撮像システム又はスキャトロメータメトロロジツールの実施形態を概略的に示す。
図10の実施形態とは異なり、
図11の実施形態の検出分岐は、検出回転鏡DRMによって折り返すことができる。スキャトロメータメトロロジツール1100では、対物レンズOB”から出次第、回折ビームDB1、DB2は、検出回転鏡DRMを介して、撮像センサISに反射され得る。第3の構成のいくつかの実施形態では、撮像センサIS上の像サイズをより良く制御するため、撮像センサISと対物レンズOB”との間に結像レンズILを追加設置することができる。この実施形態では、照明ビームIBは、
図10の実施形態と同じ方法で制御及び移動を行うことができる。照明ビームIBの同期移動は、照明ビームIBがターゲットOTの実質的に同じエリアを照明することを保証することができる。
【0091】
[00090] 照明ビームIBの移動は、必然的に、ターゲットOTに対する照明ビームIBの入射角を変化させ、結果的に、回折ビームDB1、DB2の伝播方向を変化させ得る。対物レンズOB”によって収集された時点で、回折ビームDB1、DB2は、撮像センサIS上の異なる像位置に至る異なる光学経路をたどり得る。少なくとも各像取得時間帯の間、撮像センサIS上の実質的に静止した像IMを維持するためにそのような像シフトを補償するため、検出回転鏡DRMは、例えば、ピッチPR方向とヨーYR方向の両方において回転するように構成することができる。照明回転鏡IRMの動作と同様に、検出回転鏡DRMの回転もまた、ターゲットOTの移動と同期させることができる。そのような同期は、上述の事前に定義されたサンプリングスキーム及びステージモジュールSMの予測動的挙動に基づいて制御することができる。この方法では、異なる光学経路に沿って伝播している回折ビームDB1、DB2から生じる像シフトは、検出回転鏡DRMの回転によって、能動的に補償することができる。その結果、像IMは、少なくとも各像取得時間帯の間、撮像センサ上で実質的に静止するように制御することができる。照明回転鏡IRM、検出回転鏡DRM、ステージモジュールSM及び撮像センサISの移動はすべて、制御ユニットCU”によって制御することができる。
【0092】
[00091]
図11に示されるような配置において検出回転鏡DRMを使用する代わりとして、回折ビームに位相ランプを適用するため、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)デバイスを使用することができる。DMDを使用する上での不利点は、フレームレートが低いこと、及びリーホログラムの使用と関連付けられる光損失である。DMDから得られる角度偏差は、4~5度の範囲であり得るが、必要な像変位は、センサまでの距離を増加することによって得ることができる。DMDデバイスを使用する上での利点は、像安定化と同時に収差を補正できることである。レンズ下でのターゲットの移動に伴い、場依存収差が変化し得る。これは、場位置が異なる場合、ターゲットが異なるように見えることを意味する。DMDを使用することにより、これらの収差の変化を適応的に補償することができる。
【0093】
[00092] デジタルマイクロミラーデバイスを使用したノンストップメトロロジの実装形態
[00093] いくつかの実施形態では、対象のパラメータ値を演算する前に、像ぼかしアーチファクトをさらに補償するために、像処理アルゴリズムを追加適用することができ、それにより、スループットを増加しながらオーバーレイ値のオリジナルの精度を実質的に維持することができる。像処理アルゴリズムの動作原理は、以下の方程式によって説明することができる。
[00094] J(x,y)=I(x,y)*h(x,y)+n(x,y) 方程式(1)
[00095] 式中、I(x,y)は、座標(x,y)での像ピクセルの値を示し、h(x,y)は、光学点拡がり関数及び像取得の間のステージモジュールSMの運動軌跡の結果であるモーションブラーカーネルを示し、n(x,y)は、像におけるすべてのノイズ寄与の総和を示し、例えば、ポアソンショットノイズ、ダークノイズ、アナログ/デジタル変換からの量子化ノイズを含み得る。
【0094】
[00096] 総ブラーカーネルh(x,y)は、モーションブラーを伴う観察像に属する既知のターゲット運動軌跡と組み合わせて、撮像システム(例えば、スキャトロメータメトロロジツール800、1000、1100)の早い段階で測定された光学点拡がり関数から演算することができる。像処理アルゴリズムは、ブラーカーネルの運動部分及び非理想的な光学点拡がりを補正するように構成することができる。総ブラーカーネルh(x,y)が決定された時点で、観察されたモーションブラー像(x,)及びモーションブラーカーネルh(x,y)の知識から、オリジナルの非ぼかし像
【数1】
を推定することができる。推定は、例えば、ウィーナーフィルタリング、像逆畳み込み、制約付き最小二乗法及び他の反復方法など、既存の像回復手法の1つを使用することによって達成することができる。回復像
【数2】
は、(ローパス)ブラーカーネルh(x,y)の逆処理から生じる高周波数ノイズを含み得ることに留意されたい。そのような高周波数ノイズの影響を低減するため、信号抽出が対象の領域の平均値を取ることを伴うことが望ましい。
【0095】
[00097] 像処理アルゴリズムは、データ駆動方式を取り入れ、ディープ畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用するように構成することができるが、それは、そのようなネットワークがパターン認識及び像処理によく適しているためである。一手法は、観察されたぼかし入力及び公知のブラーカーネルからぼかし解除像を生成し、次いで、例えば、x及びyに対するオーバーレイ値を演算するために対象の領域におけるさらなる処理を実行することをディープCNNに行わせることである。別の手法は、例えば、x及びyに対するオーバーレイ値を同じ入力から直接演算することをCNNに行わせることである。
【0096】
[00098] 第1の手法によれば、
図12を参照すると、ネットワーク訓練に対し、大多数の例示的なクリーンな「グラウンドトゥルース」像I(x,y)が使用され、各例に対し、像は、露光の間に運動ゼロの従来の測定から得られる。次いで、例示的な像I(x,y)の各々に対し、方程式1のような信号モデルを使用するか又は異なる速度プロファイルに対して測定された実際のぼかし像エリアを使用して、モーションブラーバージョンJ(x,y)が演算される。演算された像を使用する上での利点は、大きなデータセットを容易に作成できることであり、これは、ネットワーク訓練に有益である。演算された像の場合、カメラショットノイズ、カメラダークノイズ、アナログ電子機器ノイズ及びアナログ/デジタル変換からの量子化ノイズを含む、現実的なカメラノイズモデルに基づくノイズが含まれ得る。入力例ごとに、多くの異なるランダムモーションブラーカーネルを適用し、関連するすべての使用事例をカバーすることができる。ぼかし(及びノイズが多い)像は、CNNに入力することができ、CNNは、ピクセルが存在するだけ多くの入力を有することができ、CNNは、1つ又は複数の隠れ層を有し得、CNNは、推定された補正像I’(x,y)を出力する出力層を有する。
【0097】
[00099] 或いは、第2の手法によれば、CNNは、
図13に示されるように、予測オーバーレイ値OVL’_x、OVL’_yを出力する出力層を有し得る。予測オーバーレイ値OVL’_x、OVL’_yは、予測エラーPEを得るために、実際のオーバーレイ値OVL_x、OVL_yと比較することができる。実際のオーバーレイ値は、通常の像I_n(x,y)及び補色像I_c(x,y)に基づいて演算することができる。方程式1のような信号モデルを使用して、通常の像と補色像の両方のモーションブラーバージョンJ_n(x,y)、I_c(x,y)が演算され、その後、それらのモーションブラーバージョンは、オーバーレイ値OVL’_x、OVL’_yを予測するためにCNNにおいて使用される。当然ながら、基本的な概念は、他の対象のパラメータに適用することができる。
【0098】
[000100]
図12及び13に示されるように、モーションブラーカーネルh(x,y)もまたCNNに入力され、その結果、ニューラルネットワークは、ウェーハステージの運動と像ぼかしアーチファクトとの関係を学習することができる。訓練は、予測エラーPEを最小化するために行われ、多くの周知の訓練アルゴリズム及びエラー基準のうちの1つを取り入れることができる。
【0099】
[000101] 像処理アルゴリズムは、モーションブラーカーネルh(x,y)を像取得の間の測定されたステージ速度(大きさと方向の両方)の時間サンプルを含むベクトルと置き換えるように構成することができる。或いは、ベクトルは、像取得の間の測定されたステージ位置(xとyの両方)の時間サンプルを含み得る。或いは、CNNは、いわゆる敵対的生成ネットワーク(GAN)モードで動作することができる。ここでは、CNNは、「候補」非ぼかし像を生成し、次いで、「候補」非ぼかし像は、公知のカーネルを用いてぼかし処理され、実際の観察像と比較される。ネットワークパラメータは、観察像と最も良く整合する候補像が返されるように訓練される。このモードの利点は、「グラウンドトゥルース」非ぼかし像が訓練に必要とされないことである。
【0100】
[000102] 推論(すなわち、新しい像データにおける実行)のため、第1の手法によれば、訓練済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、
図14に示されるように、推定非ぼかし像I’(x,y)を演算するために、新しく取得されたモーションブラー像J(x,y)及びウェーハステージをどのように移動したかについての知識からのブラーカーネルh(x,y)の知識を作用させる予測因子として使用される。これは、通常の像と補色像の両方に対して行われる。次いで、信号抽出モジュールによって、結果として得られる非ぼかし像対を使用して、対象のパラメータを演算することができる。
【0101】
[000103] 或いは、第2の手法による推論のため、訓練済みのCNNは、
図15に示されるように、オーバーレイ値(OVL_x,OVL_y)又はx及びyに対する他の対象のパラメータを直接演算するために、新しく取得されたモーションブラー像J(x,y)及びブラーカーネルh(x,y)の知識(例えば、ウェーハステージをどのように移動したかについての知識から得られる)を作用させる予測因子として使用される。
【0102】
[000104] また、像処理アルゴリズムは、N分の1の大きさである取得時間を使用した一続きのN個の像(上述されるような単一の像の代わりに)を取り入れ、N個の像を既知のステージ運動軌跡と組み合わせて使用して、1つの平均像を演算するように構成することもでき、N個の像の各々は、平均化の前に運動補償されている。この方法では、回復像が作成され(短い露光時間により、ぼかしがほとんどない)、その回復像を使用して、オーバーレイ/対象のパラメータに対するさらなる信号抽出を行うことができる。一連のN個の像からの個々の像は、ノイズの観点から質は低いが(非常に短い露光時間により)、回復像は、効果的には、その一連の像の総積分時間に対応するノイズレベルを有する。その上、取得時間の間の残留機械振動周波数が分かっている場合は、振動と同相になるようにN個の像を取り入れることが可能であり、それにより、N個の像の間の振動の影響がより似通ったものになる。
【0103】
[000105] 本システム及び方法のさらなる実施形態が、後続の番号が付された条項のリストに開示される。
1.物体のエリアが照明ビームによって照明されるように、物体を支持するように構成されたステージモジュールと、
少なくとも1つの信号ビームを収集するように構成された対物レンズであって、少なくとも1つの信号ビームが、物体の照明エリアから生じる、対物レンズと、
対物レンズによって収集された少なくとも1つの信号ビームによって形成された像を捕捉するように構成された撮像センサと、
像取得の間の対物レンズに対するステージモジュールの相対運動を補償するように動作可能な運動補償機構であって、その補償が、
対物レンズ又はその少なくとも1つの光学素子、
撮像センサ、及び/又は、
光学撮像システムの検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子
のうちの1つ又は複数の補償運動を引き起こすことによって行われる、運動補償機構と
を含む、光学撮像システム。
2.運動補償機構が、像取得の間のステージモジュールのいかなる運動にもかかわらず、像取得の間に像が撮像センサ上の実質的に同じ位置に維持されるように動作可能である、条項1で定義されるような光学撮像システム。
3.運動補償機構が、
補償運動を可能にする対物レンズ全体用のダイナミックマウントと、
補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、条項1又は2で定義されるような光学撮像システム。
4.運動補償機構が、
補償運動を可能にする対物レンズの中の1つ又は複数の光学素子用のダイナミックマウントと、
補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、条項1又は2で定義されるような光学撮像システム。
5.少なくとも1つのアクチュエータが、少なくとも1つのボイスコイルアクチュエータ、少なくとも1つの平衡ばね及び/又は少なくとも1つのマイクロ電気機械システム(MEMS)構造のうちの1つ又は複数を含む、条項3又は4で定義されるような光学撮像システム。
6.運動補償機構が、
補償運動を可能にする撮像センサ用のダイナミックマウントと、
補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、条項1又は2で定義されるような光学撮像システム。
7.運動補償機構が、
補償運動を可能にする検出分岐及び/又は照明分岐内に含まれる光学素子並びに光学素子用のダイナミックマウントと、
補償運動を作動するためのアクチュエータと
を含む、条項1又は2で定義されるような光学撮像システム。
8.光学素子が、撮像センサ上で像を撮像するための結像レンズを含む、条項7で定義されるような光学撮像システム。
9.光学素子が、撮像センサへの少なくとも1つの信号ビームの反射を制御することによって補償運動を可能にする検出ダイナミックミラー及びそのアクチュエータ又はデジタルマイクロミラーデバイスを含む、条項7で定義されるような光学撮像システム。
10.照明ビームが対物レンズを介して物体のエリアを照明するように構成される、条項1~5の何れか一項で定義されるような光学システム。
11.照明ビームを物体に制御可能に伝達するように動作可能な照明ビームデリバリシステムをさらに含む、条項1~9の何れか一項で定義されるような光学システム。
12.像取得の間に物体の実質的に同じエリアを照明するために、照明ビームがステージ運動と実質的に同期移動するように、照明ビームデリバリシステムが、物体のエリアに照明ビームを反射するように構成された照明ダイナミックミラーを含む、条項11で定義されるような光学撮像システム。
13.運動補償機構に対する補償運動を決定するように構成された制御ユニットをさらに含む、先行する条項の何れか一項で定義されるような光学撮像システム。
14.制御ユニットが、ステージモジュールを制御するための少なくとも制御信号に基づいて補償運動を決定するように構成される、条項13で定義されるような光学撮像システム。
15.制御ユニットが、像取得の間にステージモジュールの予測動的挙動に関する補償運動を決定するようにさらに構成される、条項14で定義されるような光学撮像システム。
16.ステージモジュールが静止状態になる前に像取得が始まるように及び/又は像取得が完了する前に賢いモジュールが運動し始めて後続の行動を実行するように、制御ユニットが、ステージモジュールを制御するように構成される、条項13~15の何れか一項で定義されるような光学撮像システム。
17.取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定することによって、運動補償機構によって補償されないステージ運動によって生じるいかなるモーションブラーアーチファクトも取り除くために、制御ユニットが、像の像処理を実行するように動作可能である、先行する条項の何れか一項で定義されるような光学撮像システム。
18.ブラーカーネルが、モーションブラーを伴う観察像に属する既知の物体運動軌跡と組み合わせて、光学撮像システムの早い段階で測定された光学点拡がり関数から決定される、条項17で定義されるような光学撮像システム。
19.制御ユニットが、ブラーカーネルの運動部分及び非理想的な光学点拡がり関数を補正するように構成される、条項18で定義されるような光学撮像システム。
20.制御ユニットが、取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定するために、反復像回復アルゴリズムを使用するように構成される、条項17~19の何れか一項で定義されるような光学撮像システム。
21.制御ユニットが、取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定するために、訓練済みの人工知能モデルを使用するように構成される、条項17~19の何れか一項で定義されるような光学撮像システム。
22.光学撮像システムを使用して物体を撮像するための方法であって、
照明ビームで物体のエリアを照明することと、
取得時間帯の間に物体の照明エリアから生じた少なくとも1つの信号を収集することであって、その時間帯の少なくとも一部分の間は、物体が非静止状態である、収集することと、
撮像センサ上で少なくとも1つの信号ビームから像を取得することと、
取得時間帯の間に像が撮像センサ上の実質的に同じ位置に維持されるように、取得時間帯の間に少なくとも1つの信号を収集するために使用される対物レンズモジュールに対する物体の相対運動を補償するために、取得時間帯の間に光学撮像システムの光学素子の補償運動を実行することと
を含む、方法。
23.光学素子の補償運動を実行することが、対物レンズモジュール又はその中に含まれる光学素子の補償移動を実行することを含む、条項22で定義されるような方法。
24.光学素子の補償運動を実行することが、撮像センサの補償移動を実行することを含む、条項22で定義されるような方法。
25.光学素子の補償運動を実行することが、
撮像センサ上で像を撮像するために使用される結像レンズ、及び、
撮像センサに少なくとも1つの信号ビームを反射するために使用される検出ダイナミックミラー
の一方又は両方の補償移動を実行することを含む、条項22で定義されるような方法。
26.光学素子の補償運動を実行することが、デジタルマイクロメートルデバイスの補償制御を実行することを含む、条項22で定義されるような方法。
27.運動補償と同時に収差を補正するようにデジタルマイクロメートルデバイスを制御することを含む、条項26で定義されるような方法。
28.対物レンズを介して照明ビームで物体のエリアを照明することを含む、条項22又は23で定義されるような方法。
29.像取得の間に物体の実質的に同じエリアを照明するために、照明ビームが物体運動と実質的に同期移動するように照明ビームを制御することを含む、条項22~27の何れか一項で定義されるような方法。
30.物体を移送するために使用されるステージモジュールを制御するための少なくとも制御信号に基づいて補償運動を決定することを含む、条項22~29の何れか一項で定義されるような方法。
31.ステージモジュールの動的挙動をモデル化することと、
像取得の間にステージモジュールの予測動的挙動に基づいて補償運動を決定することと
を含む、条項30で定義されるような方法。
32.ステージモジュールが静止状態になる前に取得時間帯が始まるように及び/又は取得時間帯が完了する前に賢いモジュールが運動し始めて後続の行動を実行するように、ステージモジュールを制御することを含む、条項30又は31で定義されるような方法。
33.取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定することによって、物体運動によって生じるいかなるモーションブラーアーチファクトも取り除くために、像の像処理を実行することをさらに含む、条項22~32の何れか一項で定義されるような方法。
34.ブラーカーネルが、モーションブラーを伴う観察像に属する既知の物体運動軌跡と組み合わせて、光学撮像システムの早い段階で測定された光学点拡がり関数から決定される、条項33で定義されるような方法。
35.ブラーカーネルの運動部分及び非理想的な光学点拡がり関数を補正することを含む、条項34で定義されるような方法。
36.取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定するために、反復像回復アルゴリズムを使用することを含む、条項33~35の何れか一項で定義されるような方法。
37.取得像及び既定のモーションブラーカーネルからぼかし解除像を推定するために、訓練済みの人工知能モデルを使用することを含む、条項33~35の何れか一項で定義されるような方法。
38.条項1~21の何れか一項で定義されるような光学システムを含むメトロロジデバイス。
39.スキャトロメータメトロロジ装置、レベルセンサ又はアライメントセンサを含む、条項38で定義されるようなメトロロジデバイス。
40.条項1~21の何れか一項で定義されるような光学システムを含む光学検査デバイス。
【0104】
[000106] 本明細書で開示される概念はすべて、移動サンプルの撮像に有益であり得るいかなるメトロロジツールにも等しく適用できることに留意されたい。そのようなサンプルは、後処理メトロロジにおいて使用されるもの(例えば、オーバーレイターゲット、フォーカスターゲット、クリティカルディメンジョン若しくは他の任意の構造ディメンジョンターゲット)及び/又は処理前に使用されるもの(例えば、アライメントマーク)など、任意のメトロロジターゲットを含み得る。そのようなターゲットは何れも、メトロロジの目的で形成される専用ターゲット及び/又は実際の製品構造であり得る。メトロロジツールは、例えば、
図4~6に概略的に示されるようなタイプのものであり得る。
【0105】
[000107]
図16は、本明細書で開示される方法及びアルゴリズムの実施を支援し得るコンピュータシステム1200を示すブロック図である。コンピュータシステム1200は、情報を伝達するためのバス1202又は他の通信機構と、情報を処理するためにバス1202と結合されたプロセッサ1204(又は複数のプロセッサ1204、1205)とを含む。また、コンピュータシステム1200は、プロセッサ1204による実行のための情報及び命令を格納するためにバス1202に結合されたメインメモリ1206(ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的記憶装置など)も含む。また、メインメモリ1206は、プロセッサ1204による実行のための命令を実行する間、一時的な変数又は他の中間情報を格納するために使用することもできる。コンピュータシステム1200は、プロセッサ1204用の静的情報及び命令を格納するためにバス1202に結合された読み取り専用メモリ(ROM)1208又は他の静的記憶装置をさらに含む。記憶装置1210(磁気ディスク又は光ディスク)が提供され、情報及び命令を格納するためにバス1202に結合される。
【0106】
[000108] コンピュータシステム1200は、バス1202を介して、コンピュータユーザに情報を表示するためのディスプレイ1212(ブラウン管(CRT)又はフラットパネル若しくはタッチパネルディスプレイなど)に結合することができる。入力デバイス1214(英数字及び他のキーを含む)は、プロセッサ1204に情報及びコマンド選択を伝達するためにバス1202に結合される。別の種類のユーザ入力デバイスは、プロセッサ1204に方向情報及びコマンド選択を伝達するため並びにディスプレイ1212上のカーソルの動きを制御するためのカーソルコントロール1216(マウス、トラックボール又はカーソル方向キーなど)である。この入力デバイスは、典型的には、2本の軸、すなわち、第1の軸(例えば、x)及び第2の軸(例えば、y)における2自由度を有し、それにより、デバイスは、平面における位置を指定することができる。また、入力デバイスとして、タッチパネル(スクリーン)ディスプレイを使用することもできる。
【0107】
[000109] 本明細書に記載の方法の1つ又は複数は、メインメモリ1206に含まれる1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスをプロセッサ1204が実行することに応答して、コンピュータシステム1200によって実行することができる。そのような命令は、別のコンピュータ可読媒体(記憶装置1210など)からメインメモリ1206に読み込むことができる。メインメモリ1206に含まれる命令のシーケンスの実行により、プロセッサ1204は、本明細書に記載のプロセスステップを実行する。また、メインメモリ1206に含まれる命令のシーケンスを実行するために、マルチプロセッシング配置の1つ又は複数のプロセッサを使用することもできる。代替の実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに又はソフトウェア命令と組み合わせて、配線回路を使用することができる。したがって、本明細書の説明は、ハードウェア回路とソフトウェアの特定の組合せに限定されない。
【0108】
[000110] 「コンピュータ可読媒体」という用語は、本明細書で使用される場合、実行のための命令をプロセッサ1204に提供することに関与するいかなる媒体も指す。そのような媒体は、これらに限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体及び伝送媒体を含む、多くの形態を取り得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶装置1210などの光学又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ1206などの動的メモリを含む。伝送媒体は、バス1202を含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバを含む。また、伝送媒体は、無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信の間に発生するものなど、音響又は光波の形態も取り得る。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の磁気媒体、CD-ROM、DVD、他の任意の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する他の任意の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、他の任意のメモリチップ若しくはカートリッジ、以下に記載の搬送波、又は、コンピュータが読み取ることができる他の任意の媒体を含む。
【0109】
[000111] 様々な形態のコンピュータ可読媒体は、実行のための1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスをプロセッサ1204に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初は、リモートコンピュータの磁気ディスク上にあり得る。リモートコンピュータは、その動的メモリに命令をロードし、モデムを使用して電話回線上で命令を送信することができる。コンピュータシステム1200にローカル接続されたモデムは、電話回線上でデータを受信し、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バスに結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されているデータを受信し、データをバス1202に載せることができる。バス1202は、メインメモリ1206にデータを搬送し、プロセッサ1204は、メインメモリ1206から命令を回収して実行する。メインメモリ1206によって受信された命令は、任意選択的に、プロセッサ1204による実行の前又は後に、記憶装置1210に格納することができる。
【0110】
[000112] また、コンピュータシステム1200は、好ましくは、バス1202に結合された通信インタフェース1218も含む。通信インタフェース1218は、ローカルネットワーク1222に接続されたネットワークリンク1220に結合される双方向データ通信を提供する。例えば、通信インタフェース1618は、対応する種類の電話回線へのデータ通信接続を提供するための総合サービスデジタル網(ISDN)カード又はモデムであり得る。別の例として、通信インタフェース1218は、互換性を有するLANへのデータ通信接続を提供するためのローカルエリアネットワーク(LAN)カードであり得る。また、ワイヤレスリンクも実装することができる。任意のそのような実装においては、通信インタフェース1218は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気、電磁又は光信号の送受信を行う。
【0111】
[000113] ネットワークリンク1220は、典型的には、1つ又は複数のネットワークを通じて、他のデータデバイスとのデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク1220は、ローカルネットワーク1222を通じて、ホストコンピュータ1224との接続又はインターネットサービスプロバイダ(ISP)1226によって操作されるデータ機器との接続を提供することができる。これを受けて、ISP 1226は、ワールドワイドパケットデータ通信ネットワーク(現在では、一般的に「インターネット」1228と呼ばれる)を通じて、データ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク1222とインターネット1228は両方とも、デジタルデータストリームを搬送する電気、電磁又は光信号を使用する。様々なネットワークを通じる信号並びにネットワークリンク1220上の及び通信インタフェース1218を通じる信号(コンピュータシステム1200に/からデジタルデータを搬送するもの)は、情報を運ぶ搬送波の例示的な形態である。
【0112】
[000114] コンピュータシステム1200は、ネットワーク、ネットワークリンク1220及び通信インタフェース1218を通じて、メッセージの送信及びプログラムコードを含むデータの受信を行うことができる。インターネットの例では、サーバ1230は、インターネット1228、ISP 1226、ローカルネットワーク1222及び通信インタフェース1218を通じて、アプリケーションプログラム用の要求コードを送信し得る。ダウンロードされるそのようなアプリケーションの1つは、例えば、本明細書に記載の技法の1つ又は複数に備えることができる。受信コードは、受信した際にプロセッサ1204が実行すること及び/又は後の実行のために記憶装置1210若しくは他の不揮発性記憶装置に格納することができる。このように、コンピュータシステム1200は、搬送波の形態でアプリケーションコードを得ることができる。
【0113】
[000115] 本明細書では、リソグラフィ装置をICの製造で使用することが具体的に参照されているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることが理解されるべきである。可能な他の用途として、一体型光学系、磁区メモリのガイダンスパターン及び検出パターン、平面パネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造がある。
【0114】
[000116] 本明細書では、本発明の実施形態をリソグラフィ装置に関連して具体的に参照している場合があるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用され得る。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置或いはウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定又はプロセスする任意の装置の一部をなし得る。これらの装置は、まとめてリソグラフィツールと呼ばれ得る。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を用い得る。
【0115】
[000117] 本発明の実施形態を光リソグラフィに関連して使用することをここまで具体的に参照してきたが、本発明は、文脈が許す限り、光リソグラフィに限定されず、他の用途で使用され得、例えばインプリントリソグラフィで使用され得ることが理解される。
【0116】
[000118] ここまで本発明の特定の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明は、説明された以外の方法で実施され得る。上述の説明は、限定的ではなく、例示的であるものとする。したがって、当業者であれば明らかなように、以下に示される特許請求項の範囲から逸脱しない限り、記載された本発明に対する修正形態がなされ得る。
【国際調査報告】