(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】中空コアフォトニック結晶ファイバに基づく広帯域放射生成器
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20231213BHJP
G02F 1/35 20060101ALI20231213BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G02F1/35
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534640
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021081952
(87)【国際公開番号】W WO2022122325
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェンスベルヘン、ヤンネケ
(72)【発明者】
【氏名】ユーベル、パトリック、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ポンゲルス、ヴィレム、リチャード
【テーマコード(参考)】
2H197
2K102
【Fターム(参考)】
2H197EA05
2H197EA15
2H197EA17
2H197HA03
2H197JA17
2K102AA05
2K102BA22
2K102BA23
2K102BB00
2K102BB03
2K102BC02
2K102BD10
2K102DA06
(57)【要約】
【解決手段】ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスは、一または複数の主部と、当該一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの構造パラメータを有する少なくとも一つの構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備える。少なくとも一つの構造変化部は、HC-PCFの長さに沿った位置の下流に配置され、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によってポンプ放射がスペクトル拡大される少なくとも第1構造変化部を備える。少なくとも一つの構造変化部は、広帯域出力放射が紫外領域における波長を備えるように構成および配置される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスであって、
少なくとも第1構造変化部および第2構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備え、
前記第1構造変化部および前記第2構造変化部のそれぞれは、前記HC-PCFの一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの前記HC-PCFの構造パラメータを有し、
前記HC-PCFの前記一または複数の主部の少なくとも一つは、前記第1構造変化部および前記第2構造変化部を分離する、
広帯域光源デバイス。
【請求項2】
前記第1構造変化部および前記第2構造変化部は、それぞれ、前記広帯域出力放射の生成を担う第1非線型光学過程および第2非線型光学過程を制御するために構成および配置される、請求項1に記載の広帯域光源デバイス。
【請求項3】
前記第1構造変化部は、前記第2非線型光学過程が前記第1構造変化部において始まらないように構成および配置される、請求項2に記載の広帯域光源デバイス。
【請求項4】
前記第1非線型光学過程は変調不安定性を備え、前記第2非線型光学過程は分散波生成を備え、
オプションで、前記第1構造変化部は、前記変調不安定性が前記ポンプ放射のスペクトルを拡大するように構成および配置され、前記第2構造変化部は、前記分散波生成がスペクトル拡大された前記ポンプ放射の短波長エッジを更に延ばすように構成および配置される、
請求項3に記載の広帯域光源デバイス。
【請求項5】
前記第1構造変化部および前記第2構造変化部は、前記ポンプ放射の実質的に基本モードの伝播をサポートするように更に構成され、
オプションで、紫外領域における波長は最小で300nmの波長を備える、または、前記広帯域出力放射は最大で2000nmの波長を備える、
請求項1から4のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項6】
少なくとも前記第1構造変化部は、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、興味のある波長範囲に亘る平均から50%より大きく変化しないように構成および配置される、請求項1から5のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項7】
少なくとも前記第1構造変化部は、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、点広がりパワースペクトル密度が前記スペクトルの点広がりパワースペクトル密度の平均の二倍より大きいピークを含まないように構成および配置される、請求項1から6のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項8】
前記ポンプ放射を生成するためのポンプ放射源を更に備える、請求項1から7のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項9】
前記ポンプ放射源は、前記ポンプ放射が1μJおよび10μJの間の範囲におけるパルスエネルギーを備えるように構成される、請求項8に記載の広帯域光源デバイス。
【請求項10】
前記HC-PCFは単一のリングHC-PCFである、請求項1から9のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項11】
前記第1構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から5cmおよび30cmの間の位置に配置される、請求項1から10のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項12】
前記第2構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から15cmおよび35cmの間の位置に配置される、請求項1から11のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
【請求項13】
ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスであって、
一または複数の主部と、当該一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの構造パラメータを有する少なくとも一つの構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備え、
前記少なくとも一つの構造変化部は、前記HC-PCFの長さに沿った位置の下流に配置され、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によって前記ポンプ放射がスペクトル拡大される少なくとも第1構造変化部を備え、
前記少なくとも一つの構造変化部は、前記広帯域出力放射が紫外スペクトル領域における波長を備えるように構成および配置され、
オプションで、前記少なくとも一つの構造変化部の一または複数が、それぞれ、前記HC-PCFの主内部コア直径に対して低減された内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備える、
広帯域光源デバイス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の広帯域光源デバイスを備え、
オプションで、散乱計測装置、レベルセンサまたはアライメントセンサを備える、
計測デバイス。
【請求項15】
紫外領域における波長を備える入力放射による励起に続いて、広帯域出力放射が中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)から生成されるように、当該HC-PCFの長さに沿った少なくとも第1構造変化部の位置を最適化する方法であって、
変調不安定性が支配的な非線型光学過程によってポンプ放射がスペクトル拡大される、前記HC-PCFの長さに沿った位置を決定することと、
決定された前記位置の下流に前記第1構造変化部を配置することと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2020年12月10日に出願された欧州出願20213013.4、2021年6月8日に出願された欧州出願21178292.5の優先権を主張し、これらの全体が参照によって本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、中空コアフォトニック結晶ファイバに基づく広帯域放射生成器、特に、集積回路の製造における計測用途に関する広帯域放射生成器に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを適用するように構成された装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造において使用されうる。リソグラフィ装置は、例えば、基板(例えば、ウェーハ)上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層上に、パターニングデバイス(例えば、マスク)におけるパターン(しばしば「デザインレイアウト」または「デザイン」とも表される)を投影してもよい。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用してもよい。この放射の波長は、基板上に形成されうるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、13.5nmである。4-20nmの範囲内の波長(例えば、6.7nmまたは13.5nm)を有する極端紫外(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が、例えば、193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置より小さいフィーチャを基板上に形成するために使用されてもよい。
【0005】
リソグラフィ装置の古典的な解像限界より小さい寸法でフィーチャを処理するために、Low-k1リソグラフィが使用されてもよい。このようなプロセスでは、解像度方程式が「CD = k1×λ/NA」と表現されてもよい。ここで、λは使用される放射の波長であり、NAはリソグラフィ装置における投影光学要素の開口数であり、CDは「臨界寸法」(一般的にはプリントされる最小のフィーチャサイズだが、この場合はハーフピッチ)であり、k1は経験的な解像度ファクタである。一般的にk1がより小さくなると、回路デザイナーによって計画された形状および寸法に似ているパターンを、特定の電気的機能およびパフォーマンスを実現するために基板上に再現するのがより困難になる。これらの困難を克服するために、リソグラフィ投影装置および/またはデザインレイアウトに対して、洗練された微調整ステップが適用されてもよい。これらは、例えば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、デザインレイアウトの各種の最適化等のデザインレイアウトにおける光近接効果補正(OPC:「光学およびプロセス補正」と表されることもある)、一般的に「解像度向上技術」(RET)と定義される他の方法を含む(但し、これらに限定されない)。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するためのタイトな制御ループが、低k1でのパターンの再現性を向上させるために使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
計測ツールは、例えば、露光前の基板の適切な位置決めのためのアライメントツール、フォーカス制御等のために基板の表面トポロジーを測定するためのレベリングツール、プロセス制御において露光および/またはエッチングされた製品を検査/測定するためのスキャトロメトリに基づくツールとして、IC製造プロセスの多くの場面で使用される。それぞれのケースで放射源が必要になる。測定のロバスト性および正確性を含む様々な理由で、広帯域または白光放射源がこのような計測用途でますます使用されている。広帯域放射生成のための本デバイスの改良を図ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の第1の側面では、ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスが提供される。この広帯域光源デバイスは、一または複数の主部と、当該一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの構造パラメータを有する少なくとも一つの構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備える。少なくとも一つの構造変化部は、HC-PCFの長さに沿った位置の下流に配置され、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によってポンプ放射がスペクトル拡大される少なくとも第1構造変化部を備える。少なくとも一つの構造変化部は、広帯域出力放射が紫外スペクトル領域における波長を備えるように構成および配置される。
【0008】
発明の第2の側面では、紫外領域における波長を備える入力放射による励起に続いて、広帯域出力放射が中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)から生成されるように、当該HC-PCFの長さに沿った少なくとも第1構造変化部の位置を最適化する方法が提供される。この方法は、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によってポンプ放射がスペクトル拡大される、HC-PCFの長さに沿った位置を決定することと、決定された位置の下流に第1構造変化部を配置することと、を備える。
【0009】
発明の他の側面では、第1側面の広帯域光源デバイスを備える計測デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下では発明の実施形態が、次の付随する模式的な図面を参照して、例示のみを目的として記述される。
図1は、リソグラフィ装置の模式図である。
図2は、リソグラフィセルの模式図である。
図3は、半導体製造を最適化するための三つの主要技術の間の協働を表すホリスティックリソグラフィの模式図である。
図4は、発明の実施形態に係る放射源を備えてもよい、計測デバイスとして使用されるスキャトロメトリ装置の模式図である。
図5は、発明の実施形態に係る放射源を備えてもよい、レベルセンサ装置の模式図である。
図6は、発明の実施形態に係る放射源を備えてもよい、アライメントセンサ装置の模式図である。
図7は、一実施形態に係る放射源の一部を形成してもよい中空コア光ファイバの横断面(すなわち、光ファイバの軸に垂直な面)における模式的な断面図である。
図8は、広帯域出力放射を提供するための一実施形態に係る放射源の模式図である。
図9(a)および(b)は、スーパーコンティニューム生成のための中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)デザインの例の横断面を模式的に示す。
図10は、30μmのコア直径を有するファイバ、20μmのコア直径を有するファイバ、より低い圧力で稼働する30μmのコア直径を有するファイバからそれぞれ生成される三つの出力スペクトルのシミュレーションを記述する、点広がりパワースペクトル密度(PSD)の波長λに対するプロットである。
図11(a)は、滑らかなスペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射の生成のために構成される単一くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。
図11(b)は、単一くびれ領域が中央くびれ部を備えない、
図11に示される単一くびれ中空コア光ファイバの他の構成を模式的に示す。
図12(a)は、ファイバ長さに沿った最適化された位置で始まる(例えば、先細り部が始まる)くびれ領域を備える単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図11(b)に示されるもの)内における入力放射のパルスのスペクトル発展を記述するシミュレーションについての、ファイバ長さに沿った位置Pに対する波長λ-エネルギー(または、信号sig(dB))スペクトル密度のプロットを示す。
図12(b)は、くびれ領域が最適化されていない位置(すなわち、MIが支配的なスペクトル拡大がテーパで始まる位置)にある時の、
図11(b)に示される単一くびれ中空コア光ファイバ内における放射のパルスのスペクトル発展のシミュレーションについての、
図12(a)と同等のプロットを示す。
図13は、
図12(a)および12(b)に示されるシミュレーションとそれぞれ同じパラメータによる、放射源の二つの出力スペクトルのシミュレーションを示す。
図14(a)は、出力放射の短波長延長およびバランスの取れたスペクトルプロファイルのためのシミュレーションを介して最適化された単一くびれ中空コア光ファイバ例の長さに沿って、ファイバコア直径が変化する様子を模式的に示す。
図14(b)は、非テーパ中空コア光ファイバおよび単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図14(a)に示されるもの)からそれぞれ放出された、二つの測定された出力スペクトルを示す。
図14(c)は、異なる中空コア光ファイバ(例えば、一様な中空コア光ファイバおよびテーパ中空コア光ファイバ)について、異なる稼働条件(例えば、異なるポンプパルス繰返し率)の下で、統合出力パワーが入力ポンプパルスエネルギーと共に変化する様子を記述する、三つの測定されたパワー伝達曲線を示す。
図15は、滑らかなスペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射の生成のために構成される、二重くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。
図16(a)は、変調不安定性過程を制御するために適用される第1くびれ領域および分散波生成を制御するために適用される第2くびれ領域の二つのくびれ領域(例えば、
図15に示されるもの)を有するテーパ中空コア光ファイバ内における放射のパルスのスペクトル発展のシミュレーションについての、
図12と同等のプロットを示す。
図16(b)は、
図16(a)に示されるシミュレーションと同じパラメータによる、放射源の出力スペクトルのシミュレーションを示す。
図17は、一実施形態に係る、分散波のソリトントラッピングのために構成される代わりの単一くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。
図18(a)および18(b)は、それぞれ70cmの距離および110cmの距離の一様な中空コア光ファイバを通って伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムを示す。
図18(c)および18(d)は、単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図17に示されるもの)を通って伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムを示す。
図19は、一実施形態に係る、分散波のソリトントラッピングのために構成される更なる代わりの単一くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。
図20(a)および20(b)は、それぞれ27cmの距離および42cmの距離の一様な中空コア光ファイバを通って伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムを示す。
図20(c)および20(d)は、それぞれ27cmの距離および42cmの距離の単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図19に示されるもの)を通って伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムを示す。
図21は、広帯域放射源を制御するためのコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本文書では、「放射」および「ビーム」の用語が、紫外放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、126nmの波長を有する)およびEUV(例えば、約5-100nmの範囲の波長を有する極端紫外放射)を含む全てのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0012】
本文で使用される「レチクル」「マスク」「パターニングデバイス」の用語は、入射ビームにパターン形成された断面(基板のターゲット部分において生成されるパターンに対応する)を付与するために使用されうる任意のパターニングデバイスを表すものと広義に解釈されてもよい。用語「ライトバルブ」が、この文脈において使用されてもよい。古典的なマスク(透過型または反射型、バイナリ型、位相シフト型、ハイブリッド型等)の他に、このようなパターニングデバイスの例はプログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイを含む。
【0013】
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射、EUV放射)を調整するために構成される照明システム(イルミネータとも表される)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するために構成され、特定のパラメータに応じてパターニングデバイスMAを正確に配置するために構成される第1ポジショナPMに接続されるマスクサポート(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持するために構成され、特定のパラメータに応じて基板サポートを正確に配置するために構成される第2ポジショナPWに接続される基板サポート(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに形成されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、一または複数のダイを含む)上に投影するために構成される投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0014】
稼働中の照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOから放射ビームを受け取る。照明システムILは、放射の方向付け、整形、および/または、制御のために、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電気型、および/または、他のタイプの光学コンポーネント、または、それらの任意の組合せ等の各種のタイプの光学コンポーネントを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの面での断面において所望の空間および角度強度分布を有するように放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0015】
ここで使用される用語「投影システム」PSは、使用される露光放射、および/または、液浸液の使用または真空の使用等の他のファクタにとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁気型、および/または、静電気型の光学システム、または、それらの任意の組合せを含む各種のタイプの投影システムを包含するものと広義に解釈されるべきである。ここで使用される用語「投影レンズ」は、より一般的な用語「投影システム」PSと同義と解釈されてもよい。
【0016】
リソグラフィ装置LAは、基板の少なくとも一部を水等の比較的高い屈折率を有する液体が覆い、投影システムPSおよび基板Wの間の空間を満たしうるタイプでもよい(液浸リソグラフィとも表される)。液浸技術に関するより多くの情報は、参照によって本書に援用されるUS6952253において与えられている。
【0017】
リソグラフィ装置LAは、二つ以上の基板サポートWTを有するタイプでもよい(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。このような「マルチステージ」装置では、基板サポートWTが並行的に使用されてもよい、および/または、他方の基板サポートWT上の他の基板Wが当該他の基板W上にパターンを露光するために使用されている間に、一方の基板サポートWT上に位置する基板Wに対して当該基板Wの次の露光のための準備ステップが実行されてもよい。
【0018】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを備えてもよい。測定ステージは、センサおよび/またはクリーニングデバイスを保持するために設けられる。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するために設けられてもよい。測定ステージは、複数のセンサを保持してもよい。クリーニングデバイスは、リソグラフィ装置の一部、例えば投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部をクリーニングするために設けられてもよい。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方を移動してもよい。
【0019】
稼働中の放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されるマスク等のパターニングデバイスMA上に入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によってパターン形成される。マスクMAを通った放射ビームBは、基板Wのターゲット部分C上にビームを集光する投影システムPSを通過する。第2ポジショナPWおよび位置測定システムIFの利用によって、例えば、放射ビームBの経路上の集光および整列位置に異なるターゲット部分Cを配置するように、基板サポートWTが正確に駆動される。同様に、第1ポジショナPMおよび必要に応じて他の位置センサ(
図1においては明示されていない)が、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に配置するために使用されてもよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して整列されてもよい。例示される基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占めるが、これらはターゲット部分の間の空間に配置されてもよい。ターゲット部分Cの間に配置される基板アライメントマークP1、P2は、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0020】
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソセルまたは(リソ)クラスタとも表されることがあり、露光前および露光後の処理を基板W上で実行するための装置を含むこともあるリソグラフィセルLCの一部を構成してもよい。従来、これらは、レジスト層を形成するためのスピンコータSC、露光されたレジストを現像するためのディベロッパDE、例えばレジスト層における溶媒を調整するために例えば基板Wの温度を調整するための冷却プレートCHおよびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、入力/出力ポートI/O1、I/O2から基板Wをピックアップし、それらを異なる処理装置の間で移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを届ける。トラックと総称されこともあるリソセルにおけるデバイスは、典型的に、例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAを制御してもよい監視制御システムSCSによってそれ自体が制御されてもよいトラック制御ユニットTCUの制御下にある。
【0021】
リソグラフィ装置LAによって露光される基板Wが正確性および一貫性をもって露光されるためには、連続する層の間のオーバーレイエラー、線厚、臨界寸法(CD)等の、パターン形成された構造の特性を測定するために、基板を検査するのが望ましい。この目的のために、検査ツール(不図示)がリソセルLCに含まれてもよい。エラーが検出された場合、特に同じバッチまたはロットの他の基板Wが露光または処理される前に検査が行われた場合、調整が、例えば、後続の基板の露光に対して施されてもよいし、基板W上で実行される他の処理ステップに対して施されてもよい。
【0022】
計測装置と表されてもよい検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性の変化や、同じ基板Wの異なる層に関する特性の層毎の変化を判定するために使用される。検査装置は、あるいは基板W上の欠陥を特定するために構成されてもよく、例えばリソセルLCの一部でもよいし、リソグラフィ装置LAに統合されていてもよいし、スタンドアローンデバイスであってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層における像)、半潜像(露光後のベークステップPEB後のレジスト層における像)、現像されたレジスト像(レジストの露光部分または未露光部分が除かれている)、エッチングされた像(エッチング等のパターン転写ステップの後)についての特性を測定してもよい。
【0023】
典型的に、リソグラフィ装置LAにおけるパターニング処理は、基板W上の構造の寸法および配置の高い精度を要求する、処理において最も重要なステップの一つである。この高い精度を実現するために、
図3に模式的に示されるように、いわゆる「ホリスティック」制御環境において三つのシステムが組み合わされてもよい。これらのシステムの一つが、計測ツールMT(第2システム)およびコンピュータシステムCL(第3システム)に(仮想的に)接続されるリソグラフィ装置LAである。このような「ホリスティック」環境の要諦は、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングをプロセスウィンドウ内に留めるように、全体のプロセスウィンドウを向上させ、タイトな制御ループを提供するために、これらの三つのシステムの間の協働を最適化することである。プロセスウィンドウは、具体的な製造プロセスが定義された結果(例えば機能的半導体デバイス)をもたらすプロセスパラメータ(例えばドーズ、フォーカス、オーバーレイ)の範囲を定める。典型的に、その範囲内であれば、リソグラフィプロセスまたはパターニングプロセスにおけるプロセスパラメータの変化が許容される。
【0024】
コンピュータシステムCLは、どのマスクレイアウトおよびリソグラフィ装置セッティングがパターニングプロセスの最大の全体のプロセスウィンドウ(第1スケールSC1における双方向矢印によって
図3に示される)を実現するかを判定するために、使用する解像度向上技術を予測し、計算的リソグラフィシミュレーションおよび演算を実行するために、パターン形成されるデザインレイアウト(の一部)を使用してもよい。典型的に、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの可能性に合うように提供される。コンピュータシステムCLは、例えば最適でない処理(第2スケールSC2において「0」を指す矢印によって
図3に示される)のために欠陥が存在するかを予測するために、プロセスウィンドウ内のどこでリソグラフィ装置LAが現在稼働しているかを検出する(例えば計測ツールMTからの入力を使用して)ために使用されてもよい。
【0025】
計測ツールMTは、正確なシミュレーションおよび予測を可能にするためにコンピュータシステムCLへの入力を提供してもよく、例えばリソグラフィ装置LAのキャリブレーションステータスにおいて起こりうるドリフト(第3スケールSC3における複数の矢印によって
図3に示される)を特定するためにリソグラフィ装置LAへのフィードバックを提供してもよい。
【0026】
リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御および検証のために、生成された構造の測定を頻繁に行うのが望ましい。このような測定を行うためのツールは、典型的に計測ツールMTと呼ばれている。このような測定を行うために、走査電子顕微鏡または各種の形態の散乱計測ツールMTを含む異なるタイプの計測ツールMTが知られている。スキャトロメータは、瞳またはスキャトロメータの対象の瞳との共役面にセンサを設ける(瞳に基づく測定と通常表される測定)ことによって、または、像面または像面との共役面にセンサを設ける(この場合の測定は像またはフィールドに基づく測定と通常表される)ことによって、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を許容する多目的な装置である。このようなスキャトロメータおよび関連する測定技術は、それぞれの全体が参照によって本書に援用される、特許出願US20100328655、US2011102753A1、US20120044470A、US20110249244、US20110026032またはEP1628164Aにおいて更に記述されている。前述のスキャトロメータは、軟X線および可視から近赤外の波長範囲からの光を使用して、格子を測定してもよい。
【0027】
第1実施形態では、スキャトロメータMTが角度分解スキャトロメータである。このようなスキャトロメータでは、格子の特性を再構成または演算するための再構成方法が測定された信号に適用されてもよい。このような再構成は、例えば、ターゲット構造の数学モデルと散乱放射の相互作用のシミュレーションおよびシミュレーション結果とそれらの測定の比較によって行われてもよい。数学モデルのパラメータは、シミュレーションされた相互作用が現実のターゲットから観測されたものと同様の回折パターンを生成するまで調整される。
【0028】
第2実施形態では、スキャトロメータMTが分光スキャトロメータMTである。このような分光スキャトロメータMTでは、放射源からの放射がターゲット上に向けられ、ターゲットからの反射または散乱放射が鏡面反射放射のスペクトルを測定する(すなわち波長の関数としての強度の測定)スペクトロメータ検出器に向けられる。このデータから、例えばRCWAおよび非線形回帰や、シミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較によって、検出されたスペクトルの基になったターゲットの構造またはプロファイルが再構成されてもよい。
【0029】
第3実施形態では、スキャトロメータMTがエリプソメトリックスキャトロメータである。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態について散乱放射を測定することによって、リソグラフィプロセスのパラメータの判定を可能にする。このような計測装置は、例えば、計測装置の照明セクションにおける適切な偏光フィルタを使用することによって、偏光された光(線形、円形、楕円形等)を放射する。計測装置に適したソースが、偏光された放射を提供してもよい。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの各種の実施形態は、それぞれの全体が参照によって本書に援用される、米国特許出願11/451599、11/708678、12/256780、12/486449、12/920968、12/922587、13/000229、13/033135、13/533110および13/891410において記述されている。
【0030】
スキャトロメータMTの一つの実施形態では、反射スペクトルおよび/または検出構成におけるオーバーレイの程度に関連する非対称を測定することによって、スキャトロメータMTが二つの正しく整列されていない格子または周期構造のオーバーレイを測定するように適合される。二つの(典型的には重複する)格子構造が、二つの異なる層(必ずしも連続する層でなくてよい)に適用されてもよく、ウェーハ上の実質的に同じ位置に形成されてもよい。スキャトロメータは、いかなる非対称も明確に識別可能となるように、例えば共有特許出願EP1628164Aにおいて記述されているような対称的な検出構成を有してもよい。これは、格子におけるミスアライメントを測定する直接的な方法を提供する。ターゲットとしての周期構造を包含する二つの層の間のオーバーレイエラーを、周期構造の非対称性を通じて測定するための更なる例は、それぞれの全体が参照によって本書に援用される、PCT特許出願公開番号WO2011/012624または米国特許出願US20160161863において記述されている。
【0031】
他に興味のあるパラメータとしては、フォーカスおよびドーズが例示される。フォーカスおよびドーズは、その全体が参照によって本書に援用される米国特許出願US2011-0249244において記述されているように、スキャトロメトリによって(あるいは走査電子顕微鏡によって)同時に判定されてもよい。フォーカスエネルギーマトリックス(FEM: フォーカス露光マトリックスとも表される)における各点についての臨界寸法および側壁角度測定のユニークな組合せを有する単一の構造が使用されてもよい。これらの臨界寸法および側壁角度のユニークな組合せが利用可能である場合、フォーカスおよびドーズの値がこれらの測定からユニークに判定されてもよい。
【0032】
計測ターゲットは、典型的にはリソグラフィプロセスによってレジスト中に形成されるが、例えばエッチング処理の後に形成されてもよい、複合格子のアンサンブルでもよい。典型的に、格子における構造のピッチおよび線幅は、計測ターゲットからの回折次数を検出可能とするために、測定光学要素(特に光学要素のNA)に強く依存する。前述のように、回折信号が、二つの層(「オーバーレイ」とも表される)の間のシフトを判定するために使用されてもよく、リソグラフィプロセスによって形成された元の格子の少なくとも一部を再構成するために使用されてもよい。この再構成は、リソグラフィプロセスの質のガイダンスを提供するために使用されてもよく、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために使用されてもよい。ターゲットは、ターゲットにおけるデザインレイアウトの機能部の寸法を擬似するために構成される、より小さいサブセグメントを有してもよい。このサブセグメントのために、ターゲットがデザインレイアウトの機能部とより同様に振る舞うため、全体のプロセスパラメータ測定がデザインレイアウトの機能部をより良く表すようになる。ターゲットは、アンダーフィルモードまたはオーバーフィルモードにおいて測定されてもよい。アンダーフィルモードでは、測定ビームがターゲット全体より小さいスポットを生成する。オーバーフィルモードでは、測定ビームがターゲット全体より大きいスポットを生成する。このようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定して、異なる処理パラメータを同時に判定することも可能である。
【0033】
具体的なターゲットを使用する全体のリソグラフィパラメータの測定品質は、このリソグラフィパラメータを測定するために使用される測定レシピによって少なくとも部分的に決定される。用語「基板測定レシピ」は、測定自体の一または複数のパラメータ、測定される一または複数のパターンの一または複数のパラメータ、これらの両方を含んでもよい。例えば、基板測定レシピにおいて使用される測定が回折に基づく光学測定である場合、測定の一または複数のパラメータは、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の方向等を含んでもよい。測定レシピの選択基準の一つは、例えば、一つの測定パラメータのプロセス変動に対する感度でもよい。より多くの例が、それぞれの全体が参照によって本書に援用される、米国特許出願US2016-0161863および公開米国特許出願US2016/0370717A1において記述されている。
【0034】
スキャトロメータ等の計測装置が
図4に示される。これは、基板6上に放射を投影する広帯域(白光)放射プロジェクタ2を備える。反射または散乱放射は、鏡面反射放射のスペクトル10を測定(すなわち、波長の関数としての強度の測定)するスペクトロメータ検出器4に届く。このデータから、検出されたスペクトルの基になった構造またはプロファイルが、例えばRCWA(Rigorous 結合される Wave Analysis)および非線形回帰や、
図3の下部に示されるようなシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較によって、処理ユニットPUによって再構成されてもよい。一般的に、再構成のためには、構造のおおよその形態が既知であり、いくつかのパラメータが構造を形成するプロセスの知識から想定され、少数の構造のパラメータのみがスキャトロメトリデータから決定されるために残る。このようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータまたは斜め入射スキャトロメータとして構成されてもよい。
【0035】
計測ターゲットの測定を介した全体のリソグラフィパラメータの測定品質は、このリソグラフィパラメータを測定するために使用される測定レシピによって少なくとも部分的に決定される。用語「基板測定レシピ」は、測定自体の一または複数のパラメータ、測定される一または複数のパターンの一または複数のパラメータ、これらの両方を含んでもよい。例えば、基板測定レシピにおいて使用される測定が回折に基づく光学測定である場合、測定の一または複数のパラメータは、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の方向等を含んでもよい。測定レシピの選択基準の一つは、例えば、一つの測定パラメータのプロセス変動に対する感度でもよい。より多くの例が、それぞれの全体が参照によって本書に援用される、米国特許出願US2016/0161863および公開米国特許出願US2016/0370717A1において記述されている。
【0036】
IC製造において使用される他のタイプの計測ツールは、トポグラフィ測定システム、レベルセンサまたは高さセンサである。このようなツールは、基板(または、ウェーハ)の上面のトポグラフィを測定するために、リソグラフィ装置に統合されてもよい。高さマップとも表される基板のトポグラフィのマップは、基板上の位置の関数としての基板の高さを示すこれらの測定結果から生成されてもよい。この高さマップは、パターニングデバイスの空間像を基板上の適切なフォーカス位置に提供するために、基板上へのパターンの転写中に基板の位置を補正するために追って使用されてもよい。本文脈における「高さ」は、基板面から外れた(Z軸とも表される)広義の寸法を表すものと理解される。典型的に、レベルまたは高さセンサは、固定位置(自身の光学システムに対する)で測定を実行し、基板およびレベルまたは高さセンサの光学システムの間の相対移動は、基板に亘る位置での高さ測定をもたらす。
【0037】
レベルまたは高さセンサLSの公知の一例が、動作の原理のみを例示する
図5に模式的に示される。この例では、レベルセンサが、投影ユニットLSPおよび検出ユニットLSDを含む光学システムを備える。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRによって与えられる放射LSBのビームを提供する放射源LSOを備える。放射源LSOは、例えば、偏光または非偏光レーザビーム等の、偏光または非偏光/パルスまたは連続のスーパーコンティニューム光源等の狭帯域または広帯域光源でもよい。放射源LSOは、異なる色または波長範囲を有する複数のLED等の複数の放射源を含んでもよい。レベルセンサLSの放射源LSOは可視放射に限定されず、加えてまたは代えて、UVおよび/またはIR放射や基板の表面からの反射に適した任意の波長の範囲を包含してもよい。
【0038】
投影格子PGRは、周期的な構造を備える周期格子であり、周期的に変化する強度を有する放射BE1のビームをもたらす。入射基板表面に直交する軸(Z軸)に対して、0度および90度の間、典型的には70度および80度の間の入射角度ANGを有する、周期的に変化する強度を有する放射BE1のビームは、基板W上の測定位置MLOに向けられる。測定位置MLOでは、放射BE1のパターン形成されたビームが基板Wによって反射され(矢印BE2によって示される)、検出ユニットLSDに向けられる。
【0039】
測定位置MLOでの高さレベルを決定するために、レベルセンサは、検出格子DGR、検出器DETおよび検出器DETの出力信号を処理するための処理ユニット(不図示)を備える検出システムを更に備える。検出格子DGRは、投影格子PGRと同じでもよい。検出器DETは、受け取られた光を示す、例えば、光検出器のように受け取られた光の強度を示す、または、カメラのように受け取られた強度の空間分布を示す、検出器出力信号を生成する。検出器DETは、一または複数の検出器タイプの任意の組合せを備えてもよい。
【0040】
三角測量技術によって、測定位置MLOでの高さレベルが決定されうる。検出された高さレベルは、典型的に検出器DETによって測定される信号強度に関連する。この信号強度は、特に、投影格子PGRのデザインおよび(斜め)入射角度ANGに依存する周期性を有する。
【0041】
投影ユニットLSPおよび/または検出ユニットLSDは、投影格子PGRおよび検出格子DGRの間のパターン形成された放射のビームの経路に沿って、レンズおよび/またはミラー等の更なる光学要素を含んでもよい(不図示)。
【0042】
一実施形態では、検出格子DGRが省略されてもよく、検出格子DGRが配置される位置に検出器DETが配置されてもよい。このような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。
【0043】
基板Wの表面を効果的にカバーするため、レベルセンサLSは、測定ビームBE1のアレイを基板Wの表面上に投影し、測定エリアMLOまたはより大きい測定範囲をカバーするスポットのアレイを生成するように構成されてもよい。
【0044】
一般的なタイプの各種の高さセンサは、例えば、共に参照によって本書に援用される、US7265364およびUS7646471に開示されている。可視または赤外の放射の代わりにUV放射を使用する高さセンサは、参照によって本書に援用されるUS2010233600A1に開示されている。参照によって本書に援用されるWO2016102127A1では、検出格子を必要とすることなく格子イメージの位置を検出および認識するための複数要素検出器を使用するコンパクトな高さセンサが記述されている。
【0045】
IC製造において使用される他のタイプの計測ツールは、アライメントセンサである。リソグラフィ装置のパフォーマンスの重要な側面は、(同じ装置または異なるリソグラフィ装置によって)前の層に配置されたフィーチャに対して、適用されたパターンを正確および精密に配置する能力である。この目的のために、マークまたはターゲットの一または複数の組が基板に提供される。各マークは、典型的には光学位置センサである位置センサを使用して、位置が後で測定されうる構造である。位置センサは「アライメントセンサ」と表されてもよく、マークは「アライメントマーク」と表されてもよい。
【0046】
リソグラフィ装置は、基板上に提供されるアライメントマークの位置を精密に測定できる一または複数(例えば、複数)のアライメントセンサを含んでもよい。アライメント(または、位置)センサは、基板上に形成されるアライメントマークから位置情報を得るために、回折および干渉等の光学現象を使用してもよい。現在のリソグラフィ装置において使用されているアライメントセンサの一例は、US6961116で記述されているような自己参照干渉計に基づく。例えば、US2015261097A1に開示されているように、位置センサの各種の改良および変更が行われている。これらの公報の全ての内容は、参照によって本書に援用される。
【0047】
図6は、例えば、参照によって本書に援用されるUS6961116において記述されているような、公知のアライメントセンサASの一実施形態の模式的なブロック図である。放射源RSOは、誘導光学素子によって基板W上に配置されるマークAM等のマーク上に照明スポットSPとして誘導される、一または複数の波長の放射のビームRBを提供する。この例では、誘導光学素子がスポットミラーSMおよび対物レンズOLを備える。マークAMを照明する照明スポットSPは、マーク自体の幅より直径が僅かに小さくてもよい。
【0048】
アライメントマークAMによって回折された放射は、情報伝達ビームIBにコリメートされる(この例では、対物レンズOLを介して)。用語「回折される」は、マークからの零次回折(反射と表されてもよい)を含む趣旨である。例えば、前述のUS6961116に開示されているタイプの自己参照干渉計SRIがビームIBを自身と干渉させた後、ビームは光検出器PDによって受け取られる。複数の波長が放射源RSOによって生成される場合、追加的な光学素子(不図示)が別のビームを提供するために含まれてもよい。光検出器は、単一のエレメントでもよいし、望ましい場合は多数のピクセルを備えてもよい。光検出器は、センサアレイを備えてもよい。
【0049】
この例ではスポットミラーSMを備える誘導光学素子は、情報伝達ビームIBがマークAMからの高次回折放射のみを含むように、マークから反射された零次放射をブロックする機能を果たしてもよい(これは測定にとって必須ではないが、信号対雑音比を改善する)。
【0050】
強度信号SIは、処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIにおける光学プロセスおよびユニットPUにおける計算プロセスの組合せによって、参照フレームに対する基板上のXおよびY位置についての値が出力される。
【0051】
図示のタイプの単一の測定は、マークの1ピッチに対応する特定の範囲内にマークの位置を固定するだけである。これと共により粗い測定技術が使用され、正弦波のどの周期にマークされた位置が含まれるかが特定される。マークが作られる材料やマークが上および/または下に提供される材料に関わらず、精度の向上および/またはマークのロバストな検出のために、より粗いおよび/またはより細かいレベルでの同じプロセスが、異なる波長で繰り返されてもよい。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化および逆多重化されてもよい、および/または、時分割または周波数分割によって多重化されてもよい。
【0052】
この例では、アライメントセンサおよびスポットSPが静止したままであり、基板Wが動く。このため、アライメントセンサは、強固および精密に参照フレームに搭載されうると共に、基板Wの移動方向と反対の方向にマークAMを効果的にスキャンできる。この移動において、基板Wは、基板サポートおよび基板サポートの移動を制御する基板ポジショニングシステム上に搭載されることによって制御される。基板サポート位置センサ(例えば、干渉計)は、基板サポート(不図示)の位置を測定する。一実施形態では、一または複数の(アライメント)マークが基板サポート上に提供される。基板サポート上に提供されるマークの位置の測定は、位置センサによって決定される基板サポートの位置の較正(例えば、アライメントシステムが接続されるフレームに対して)を可能にする。基板上に提供されるアライメントマークの位置の測定は、基板サポートに対する基板の位置の決定を可能にする。
【0053】
前述のスキャトロメータ、トポグラフィ測定システム、位置測定システム等の計測ツールMTは、測定を実行するために放射源に由来する放射を使用してもよい。計測ツールによって使用される放射の特性が、実行されてもよい測定のタイプおよび品質に影響してもよい。いくつかの用途では、基板を測定するために複数の放射周波数を使用するのが有利である。例えば、広帯域放射が使用されてもよい。複数の異なる周波数は、他の周波数との干渉が零または最小限で、伝播でき、照射でき、計測ターゲットから散乱できる。このため、異なる周波数が、例えば、より多くの計測データを同時に取得するために使用されてもよい。異なる放射周波数は、計測ターゲットの異なる特性を調べて見つけられる。広帯域放射は、レベルセンサ、アライメントマーク測定システム、スキャトロメトリツール、検査ツール等の計測システムMTにおいて有用である。広帯域放射源は、スーパーコンティニューム源でもよい。
【0054】
スーパーコンティニューム放射等の高品質広帯域放射は、生成するのが難しい。広帯域放射を生成するための一つの方法は、例えば、非線型高次効果を利用して、高パワー狭帯域または単一周波数入力放射またはポンプ放射を拡大することである。入力放射(レーザを使用して生成されてもよい)は、ポンプ放射と表されてもよい。代わりに、入力放射は、シード放射と表されてもよい。拡大効果のための高パワー放射を得るために、強く局所化された高強度放射が実現されるように、放射は小さいエリアに制限されてもよい。これらのエリアでは、広帯域出力放射を生成するために、拡大構造および/または非線型媒体を形成する材料と放射が相互作用してもよい。高強度放射エリアでは、適切な非線型媒体を提供することによって放射拡大を実現および/または改善するために、異なる材料および/または構造が使用されてもよい。
【0055】
いくつかの実装では、広帯域出力放射がフォトニック結晶ファイバ(PCF)において生成される。いくつかの実施形態では、このようなフォトニック結晶ファイバが、ファイバを伝播する放射をファイバコア内に制限する機能を有する微細構造を、そのファイバコアの周りに有する。ファイバコアは、高強度ポンプ放射がファイバコアを通過する時に広帯域放射を生成できる非線型特性を有する固体材料から作られうる。固体コアフォトニック結晶ファイバにおいて広帯域放射を生成できるものの、固体材料を使用することはいくつかの欠点を伴う。例えば、UV放射が固体コア内で生成される場合、ほとんどの固体材料によって放射が吸収されるため、この放射がファイバの出力スペクトルに存在しない恐れがある。
【0056】
いくつかの実装では、
図8を参照して以下で更に議論されるように、入力放射を拡大するための方法および装置は、広帯域放射を出力するために、入力放射を制限して拡大するためのファイバを使用してもよい。ファイバは、中空コアファイバでもよく、ファイバ内における放射の効果的な案内および制限を実現するための内部構造を備えてもよい。ファイバは、高い放射強度を実現する主にファイバの中空コアの内部における強い放射制限のために特に適切な、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)でもよい。ファイバの中空コアは、入力放射を拡大するための拡大媒体として機能するガスで満たされてもよい。このようなファイバおよびガスの配置は、スーパーコンティニューム放射源を生成するために使用されてもよい。ファイバに入力される放射は、赤外、可視、UV、極端UVスペクトルの一または複数における放射等の電磁放射でもよい。出力放射は、白光と表されてもよい広帯域放射を構成する、または、備える。
【0057】
いくつかの実施形態は、このような光ファイバを備える広帯域放射源の新しいデザインに関する。光ファイバは、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)である。特に、光ファイバは、放射の制限のために反共振構造を備えるタイプの中空コアフォトニック結晶ファイバでもよい。このような反共振構造を備えるファイバは、反共振ファイバ、管状ファイバ、単一リングファイバ、負曲率ファイバまたは結合阻害ファイバとして知られている。このようなファイバの各種の異なるデザインが知られている。代わりに、光ファイバは、フォトニックバンドギャップファイバ(カゴメファイバ等のHC-PBF)でもよい。
【0058】
それぞれ異なる物理的な案内メカニズムに基づくHC-PCFの多くのタイプが考えられる。二つのこのようなHC-PCFは、中空コアフォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF)および中空コア反共振反射ファイバ(HC-ARF)を含む。HC-PCFのデザインおよび製造についての詳細は、参照によって本書に援用される、米国特許US2004/015085A1(HC-PBF)および国際PCT特許出願WO2017/032454A1(中空コア反共振反射ファイバ)において見つかる。
図9(a)は、カゴメ格子構造を備えるカゴメファイバを示す。
【0059】
放射源における使用のための光ファイバの一例が、光ファイバOFの模式的な横断面図である
図7を参照して記述される。
図7のファイバの実施例と同様の更なる実施形態が、WO2017/032454A1に開示されている。
【0060】
光ファイバOFは、ファイバOFの他の二つの次元に比べて一つの次元が長い長尺体を備える。この長尺次元は、軸方向と表されてもよく、光ファイバOFの軸を定めてもよい。二つの他の次元は、横断面と表されてもよい面を定める。
図7は、このxy面として表される横断面(すなわち、軸に垂直)における光ファイバOFの断面を示す。光ファイバOFの横断面は、ファイバ軸に沿って実質的に一様でもよい。
【0061】
光ファイバOFはある程度の柔軟性を有するため、一般的に軸の方向は光ファイバOFの長さに沿って一様ではないと理解される。光軸、横断面等の用語は、局所的な光軸、局所的な横断面等を意味するものと理解される。更に、コンポーネントが円筒状または管状のものとして記述される場合、これらの用語は光ファイバOFが曲がると歪められる形状も包含するものと理解される。
【0062】
光ファイバOFは任意の長さを有してもよく、光ファイバOFの長さは用途に応じて異なってもよいと理解される。光ファイバOFは1cmおよび10mの間の長さを有してもよく、例えば、光ファイバOFは10cmおよび100cmの間の長さを有してもよい。
【0063】
光ファイバOFは、中空コアHCと、中空コアHCを囲むクラッディング部と、クラッディング部を囲んで支持する支持部SPと、を備える。光ファイバOFは、中空コアHCを有する本体(クラッディング部および支持部SPを備える)を備えるものと解釈されてもよい。クラッディング部は、中空コアHCを通じて放射を案内するための複数の反共振エレメントを備える。特に、複数の反共振エレメントは、光ファイバOFを通って伝播する放射を主に中空コアHCの内部に制限し、光ファイバOFに沿って放射を案内するために設けられる。光ファイバOFの軸が光ファイバOFの中空コアHCの軸も定めてもよいように、光ファイバOFの中空コアHCは光ファイバOFの実質的に中央領域に配置されてもよい。
【0064】
クラッディング部は、光ファイバOFを通って伝播する放射を案内するための複数の反共振エレメントを備える。特に、本実施形態では、クラッディング部が、六つの管状毛管CAPの単一のリングを備える。管状毛管CAPのそれぞれは、反共振エレメントとして機能する。
【0065】
毛管CAPは、チューブと表されてもよい。毛管CAPの断面は、円状でもよいし、他の形状を有してもよい。各毛管CAPは、一般的に、少なくとも部分的に光ファイバOFの中空コアHCを定め、中空コアHCを毛管キャビティCCから分離する円筒状の壁部WPを備える。壁部WPは、中空コアHCを通って伝播する放射(斜入射角度で壁部WP上に入射してもよい)のための反射防止ファブリペロー共振器として機能してもよいと理解される。壁部WPの厚さは、中空コアHC内に戻る反射が促進され、毛管キャビティCC内への伝導が抑制されることを担保できるように適切に設定される。いくつかの実施形態では、毛管壁部WPが、0.01-10.0μmの間の厚さを有してもよい。
【0066】
ここで使用される用語「クラッディング部」は、光ファイバOFを通って伝播する放射を案内するための光ファイバOFの部分(すなわち、放射を中空コアHC内に制限する毛管CAP)を意味する趣旨であると理解される。放射は、ファイバ軸に沿って伝播する横モードの形態で制限されてもよい。
【0067】
支持部は、一般的に管状であり、クラッディング部の六つの毛管CAPを支持する。六つの毛管CAPは、内側支持部SPの内表面の周りに等間隔で配置される。六つの毛管CAPは、一般的に六角形状に配置されているものと記述されてもよい。
【0068】
毛管CAPは、各毛管が他の毛管CAPと接触しないように設けられる。毛管CAPのそれぞれは、内側支持部SPと接触し、リング構造において隣り合う毛管CAPから離れている。このような配置は、光ファイバOFの伝送帯域幅を増加させるため有利である(例えば、毛管が互いに接触する配置と比べて)。代わりに、いくつかの実施形態では、毛管CAPのそれぞれがング構造において隣り合う毛管CAPと接触してもよい。
【0069】
クラッディング部の六つの毛管CAPは、中空コアHCの周りにリング構造で配置される。毛管CAPのリング構造の内表面は、少なくとも部分的に光ファイバOFの中空コアHCを定める。中空コアHCの直径d(矢印dによって示される、対向する毛管の間の最小寸法として定義されてもよい)は、10および1000μmの間でもよい。中空コアHCの直径dは、中空コアHC光ファイバOFのモードフィールド径、衝撃損失、分散、モード多様性、非線型特性に影響してもよい。
【0070】
本実施形態では、クラッディング部が、毛管CAP(反共振エレメントとして機能する)の単一のリング配置を備える。このため、中空コアHCの中心から光ファイバOFの外部への任意の径方向の線は、多くとも一つの毛管CAPを通過する。
【0071】
反共振エレメントの異なる配置を有する他の実施形態が提供されてもよいと理解される。これらは、反共振エレメントの複数のリングを有する配置や、入れ子になった反共振エレメントを有する配置を含んでもよい。
図9(a)は、径方向に沿って互いに積み重なった毛管CAPの三つのリングを有する、HC-PCFの一実施形態を示す。本実施形態では、各毛管CAPが同じリングおよび異なるリングにおける他の毛管に接触している。更に、
図7に示される実施形態は六つの毛管のリングを備えるが、他の実施形態では、任意の数の反共振エレメント(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11または12本の毛管)を備える一または複数のリングがクラッディング部に提供されてもよい。
【0072】
図9(b)は、管状毛管の単一のリングを有する前述のHC-PCFの変形例を示す。
図9(b)の例では、管状毛管21の二つの同軸リングがある。管状毛管21の内側および外側のリングを保持するために、支持チューブSTがHC-PCFに含まれてもよい。支持チューブはシリカから作られてもよい。
【0073】
図7および
図9(a)および(b)の例の管状毛管は、円状の断面形状を有してもよい。管状毛管にとっては、楕円形または多角形の断面のような他の形状も可能である。加えて、
図7および
図9(a)および(b)の例の管状毛管の固体材料は、PMA等のプラスチック材料、シリカや軟質ガラス等のガラスを含んでもよい。
【0074】
図8は、広帯域出力放射を提供するための放射源RDSを示す。放射源RDSは、パルスポンプ放射源PRSまたは所望の長さおよびエネルギーレベルの短いパルスを生成できる任意の他のタイプのソースと、中空コアHCを有する光ファイバOF(例えば、
図7に示されるタイプ)と、中空コアHC内に設けられる作動媒体WM(例えば、ガス)と、を備える。
図8では、放射源RDSが
図7に示される光ファイバOFを備えるが、代わりの実施形態では、他のタイプの中空コアHC光ファイバOFが使用されてもよい。
【0075】
パルスポンプ放射源PRSは、入力放射IRDを提供するように構成される。光ファイバOFの中空コアHCは、パルスポンプ放射源PRSから入力放射IRDを受け取り、それを拡大して出力放射ORDを提供するように設けられる。作動媒体WMは、受け取られた入力放射IRDの周波数範囲の拡大を可能にし、広帯域出力放射ORDを提供する。
【0076】
放射源RDSは、貯蔵器RSVを更に備える。光ファイバOFは、貯蔵器RSVの内部に配置される。貯蔵器RSVは、ハウジング、コンテナまたはガスセルと表されてもよい。貯蔵器RSVは、作動媒体WMを収容するように構成される。貯蔵器RSVは、貯蔵器RSV内の作動媒体WM(ガスでもよい)の組成を制御、規制および/または監視する、一または複数の公知の特徴を備えてもよい。貯蔵器RSVは、第1透明窓TW1を備えてもよい。稼働中、第1透明窓TW1が光ファイバOFの入力端IEの近くに配置されるように、光ファイバOFは貯蔵器RSV内に配置される。第1透明窓TW1は、貯蔵器RSVの壁の一部を形成してもよい。受け取られる入力放射IRD(または、少なくともその大部分)が貯蔵器RSV内に配置される光ファイバOF内に結合されてもよいように、第1透明窓TW1は、少なくとも受け取られる入力放射周波数に対して透明でもよい。入力放射IRDを光ファイバOF内に結合するための光学素子(不図示)が提供されてもよいと理解される。
【0077】
貯蔵器RSVは、貯蔵器RSVの壁の一部を構成する第2透明窓TW2を備える。光ファイバOFが貯蔵器RSV内に配置されている稼働中、第2透明窓TW2は光ファイバOFの出力端OEの近くに配置される。第2透明窓TW2は、少なくとも装置120の広帯域出力放射ORDの周波数に対して透明でもよい。
【0078】
代わりに、他の実施形態では、光ファイバOFの二つの反対の端が、異なる貯蔵器内に配置されてもよい。光ファイバOFは、入力放射IRDを受け取るように構成される第1端部と、広帯域出力放射ORDを出力するための第2端部と、を備えてもよい。第1端部は、作動媒体WMを含む第1貯蔵器内に配置されてもよい。第2端部は、同じく作動媒体WMを含んでもよい第2貯蔵器内に配置されてもよい。貯蔵器の機能は、
図8に関して前述されたものでもよい。第1貯蔵器は、入力放射IRDに対して透明に構成される第1透明窓を備えてもよい。第2貯蔵器は、広帯域出力広帯域放射ORDに対して透明に構成される第2透明窓を備えてもよい。第1および第2貯蔵器は封止可能な開口を備えてもよく、ガスが貯蔵器内に封止されうるように、光ファイバOFの一の部分が貯蔵器の内部に配置され、他の部分が貯蔵器の外部に配置されることを可能にする。光ファイバOFは、貯蔵器内に収容されない中間部を更に備えてもよい。二つの別のガス貯蔵器を使用するこのような配置は、光ファイバOFが比較的長い実施形態(例えば、長さが1mより大きい場合)に特に好適である。二つの別のガス貯蔵器を使用するこのような配置にとって、二つの貯蔵器(二つの貯蔵器内のガスの組成を制御、規制および/または監視する、一または複数の公知の特徴を備えてもよい)は、光ファイバOFの中空コアHC内に作動媒体WMを提供するための装置を提供するものと解釈されてもよいと理解される。
【0079】
この文脈では、ある周波数の窓への入放射の少なくとも50%、75%、85%、90%、95%または99%が窓を透過すれば、窓は当該周波数に対して透明といえる。
【0080】
第1透明窓TW1および第2透明窓TW2の両方は、作動媒体WM(ガスでもよい)が貯蔵器RSV内に収容されてもよいように、貯蔵器RSVの壁の内部に気密シールを形成してもよい。ガスWMは、大気圧と異なる貯蔵器RSVの圧力で貯蔵器RSV内に収容されてもよいと理解される。
【0081】
作動媒体WMは、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス、水素、重水素、窒素等のラマン活性ガス、アルゴン/水素混合物、キセノン/重水素混合物、クリプトン/窒素混合物、窒素/水素混合物等のガス混合物を含んでもよい。充填ガスのタイプに応じて、非線型光学過程は、変調不安定性(MI)、ソリトン自己圧縮、ソリトン分裂、カー効果、ラマン効果および分散波生成(DWG)を含みうる。これらの詳細は、WO2018/127266A1およびUS9160137B1(共に参照によって本書に援用される)において記述されている。貯蔵器RSR内の作動媒体WMの圧力(すなわち、ガスセル圧力)を変えることで充填ガスの分散が調整されうるため、生成される広帯域パルスのダイナミクスおよび関連するスペクトル拡大特性が周波数変換を最適化するように調整されうる。
【0082】
一実装では、少なくとも広帯域出力放射ORDを生成するために入力放射IRDを受け取る間に、作動媒体WMが中空コアHC内に設けられてもよい。光ファイバOFが広帯域出力放射を生成するために入力放射IRDを受け取っていない間、ガスWMは全体的または部分的に中空コアHCに存在しなくてもよいと理解される。
【0083】
周波数拡大を実現するために、高強度放射が望ましい。中空コアHC光ファイバOFを有する利点は、光ファイバOFを通って伝播する放射の強い空間制限を通じて、高強度放射(高い局所化された放射強度)を実現できることである。例えば、高い受け取られた入力放射強度および/または光ファイバOF内の放射の強い空間制限のために、光ファイバOF内の放射強度は高くてもよい。中空コア光ファイバの利点は、固体コアファイバより広い波長範囲を有する放射を案内できることである。特に、中空コア光ファイバは、紫外および赤外の両範囲において放射を案内できる。
【0084】
中空コアHC光ファイバOFを使用する利点は、光ファイバOF内で案内される放射の大部分が中空コアHCに制限されることでもよい。このため、光ファイバOF内の放射の相互作用の大部分が、光ファイバOFの中空コアHC内に提供される作動媒体WMとの間で起こる。結果として、作動媒体WMの放射に対する拡大効果が高められる。
【0085】
受け取られる入力放射IRDは、電磁放射でもよい。入力放射IRDは、パルス放射として受け取られてもよい。例えば、入力放射IRDは、レーザ等によって生成される超高速パルスを備えてもよい。
【0086】
入力放射IRDは、コヒーレント放射でもよい。入力放射IRDは、コリメートされた放射でもよい。これは、入力放射IRDを光ファイバOF内に結合することを容易にして効率を高めるという利点を有する。入力放射IRDは、単一の周波数または狭い範囲の周波数を含んでもよい。入力放射IRDは、レーザによって生成されてもよい。同様に、出力放射ORDは、コリメートされてもよい、および/または、コヒーレントでもよい。
【0087】
出力放射ORDの広帯域範囲は、放射周波数の連続範囲を含む連続範囲でもよい。出力放射ORDは、スーパーコンティニューム放射でもよい。連続放射は、計測用途等の多くの用途における使用にとって有利である。例えば、周波数の連続範囲は、大量の特性を調べるために使用されてもよい。周波数の連続範囲は、例えば、測定される特性の周波数依存性を判定および/または排除するために使用されてもよい。スーパーコンティニューム出力放射ORDは、例えば、100nm-4000nmの波長範囲上の電磁放射を含んでもよい。広帯域出力放射ORDの周波数範囲は、例えば、400nm-900nm、500nm-900nm、200nm-2000nmでもよい。スーパーコンティニューム出力放射ORDは、白光を含んでもよい。
【0088】
パルスポンプ放射源PRSによって提供される入力放射IRDは、パルス状でもよい。入力放射IRDは、200nmおよび2μmの間の一または複数の周波数の電磁放射を含んでもよい。入力放射IRDは、例えば、1.03μmの波長を有する電磁放射を含んでもよい。パルス放射IRDの繰返し率の大きさは、1kHzから100MHzのオーダーでもよい。パルスエネルギーの大きさは、0.1μJから100μJのオーダー、例えば、1-10μJのオーダーでもよい。入力放射IRDについてのパルス持続時間は、10fsおよび10psの間、例えば、300fsでもよい。入力放射IRDの平均パワーは、100mWから数100Wの間でもよい。入力放射IRDの平均パワーは、例えば、20-50Wでもよい。
【0089】
パルスポンプ放射源PRSはレーザでもよい。このような光ファイバOFに沿って伝達されるレーザパルスのスペクトルの振幅および位相等の時空伝達特性は、(ポンプ)レーザパラメータ、作動コンポーネントWM変動、光ファイバOFパラメータの調整を通じて変化して調整されうる。前記の時空伝達特性は、出力パワー、出力モードプロファイル、出力時間プロファイル、出力時間プロファイルの幅(または、出力パルス幅)、出力スペクトルプロファイル、出力スペクトルプロファイルの帯域幅(または、出力スペクトル帯域幅)の一または複数を含んでもよい。前記のパルスポンプ放射源PRSのパラメータは、ポンプ波長、ポンプパルスエネルギー、ポンプパルス幅、ポンプパルス繰返し率の一または複数を含んでもよい。前記の光ファイバOFのパラメータは、光ファイバ長さ、中空コアHCのサイズおよび形状、毛管のサイズおよび形状、中空コアHCを囲む毛管の壁の厚さの一または複数を含んでもよい。充填ガス等の前記の作動コンポーネントWMのパラメータは、ガスタイプ、ガス圧力およびガス温度の一または複数を含んでもよい。
【0090】
放射源RDSによって提供される広帯域出力放射ORDは、少なくとも1Wの平均出力パワーを有してもよい。平均出力パワーは、少なくとも5Wでもよい。平均出力パワーは、少なくとも10Wでもよい。広帯域出力放射ORDは、パルス広帯域出力放射ORDでもよい。広帯域出力放射ORDは、出力放射の全波長帯において少なくとも0.01mW/nmのパワースペクトル密度を有してもよい。広帯域出力放射の全波長帯におけるパワースペクトル密度は、少なくとも3mW/nmでもよい。
【0091】
広帯域出力放射ORDを必要とする前述の計測用途等の多くの用途において、広帯域出力放射ORDの短波長エッジを更に延ばすこと、特に紫外(UV)波長領域まで延ばすことへの興味が強くなっている。所望の波長領域は、例えば、最小で400nm、最小で350nm、最小で300nm、最小で200nm、最小で100nm、最小で50nmまたは最小で10nmの波長を含んでもよい。滑らかな(または、平らな)スペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射ORD(例えば、スーパーコンティニュームまたは白光)を放出できる放射源RDSは、より良い多波長性およびより高い柔軟性が求められる用途では特に望ましい。例えば、滑らかにUVまで延ばされたスーパーコンティニュームは、より小さいピッチサイズおよびより多くの層を有するターゲットを使用したいという需要を既存の光源では満たすことができないオーバーレイ計測用途で特に有用である。延ばされたUV波長は、より小さいターゲット格子を解像でき、より多くのターゲット層を貫通できる。滑らかにUVまで延ばされたスペクトルプロファイルは、異なる用途または測定パフォーマンスの最適化のための、異なるスペクトル範囲の間の正確および確実な波長スイッチングを可能にする。
【0092】
現在、いくつかの方法が、光ファイバOF内で生成される広帯域出力放射ORDの短波長エッジを更に延ばすために採用されている。これらの方法は、a)より長い光ファイバOFを使用すること、b)より小さいコア直径を有する光ファイバを使用すること、c)using より低いガス圧力を使用すること、を含む。このような方法は、個別にまたは組合せで使用されると、位相整合条件がUV領域において満たされるようにすることで、UV波長の生成を容易にする。しかし、このような方法は多くの欠点を有する。例えば、より長い中空コアHC光ファイバOF(例えば、HC-PCF)は、典型的に、より大きい貯蔵器RSVを必要とし、広帯域放射源RDSのより大きい物理的な寸法や、より高い製造コストに繋がってしまう。大きいフットプリントを有する放射源は、放射源を収容するために限られたスペースのみが提供される多くの用途にとって不適切である。中空コアHC光ファイバOFのコア直径を小さくすることは、ファイバ内における伝播損失を増加させ、より低い変換効率および望ましくない(例えば、アンバランスな、または、痩せた)スペクトルプロファイルをもたらす。加えて、より小さいコア直径を有する中空コアHC光ファイバOFの延伸タワーにおける作成は非常に難しく、より高い製造コストをもたらす。ガス圧力を下げることは、ガスが充填された中空コアHCにおける非線型性を著しく低下させ、より低い変換効率および望ましくない(例えば、アンバランスな、または、痩せた)スペクトルプロファイルをもたらす。より低いガス圧力で同じレベルの非線型性を維持するためには、より高いパルスエネルギーを有するパルスポンプ放射源PRSが必要とされる。しかし、このような高パルスエネルギーポンプ放射源PRSは非常に高価である。
【0093】
図10は、30μmのコア直径を有するファイバ、20μmのコア直径を有するファイバ、より低い圧力で稼働する30μmのコア直径を有するファイバからそれぞれ生成される三つの出力スペクトルのシミュレーションを記述する、点広がりパワースペクトル密度(PSD)の波長λに対するプロットである。
図10に示されるように、第1出力スペクトルSP1は、30μmのコア直径を有し、25.7バールの圧力のクリプトンガスの作動媒体で満たされた第1HC-PCFにおいて生成される。入力放射IRDのパルスエネルギーおよびパルス繰返し率は、それぞれ、5.3μJおよび5MHzである。第2出力スペクトルSP2は、20μmのコア直径を有し、同じ25.7バールの圧力のクリプトンガスの同じ作動媒体で満たされた第2HC-PCFにおいて生成される。入力放射IRDのパルスエネルギーおよびパルス繰返し率は、それぞれ、2.4μJおよび10.6MHzである。第3出力スペクトルSP3は、同じ作動媒体だがより低い圧力(すなわち、25.7バールより低い)のもので満たされた第1HC-PCFにおいて生成される。入力放射IRDのパルスエネルギーおよびパルス繰返し率は、それぞれ、9.7μJおよび2.7MHzである。シミュレーションでは、パルスエネルギーが変わると、入力放射IRDの一定の平均パワーを維持するためにパルス繰返し率が調整される。
【0094】
第1出力スペクトルSP1と対照的に、第2および第3出力スペクトルSP2、SP3は共に、350nmの周りの短波長側に位置する鋭いスペクトルピークを備える。ポンプパワーの大部分が鋭いスペクトルピークに転換されるため、可視および近赤外の領域等の他のスペクトル領域におけるスペクトルコンポーネントのPSDは非常に低い。滑らかな広帯域スペクトルが求められる多くの用途(例えば、スキャトロメトリに基づく計測用途)にとって、このようにアンバランスな、または、痩せたスペクトルプロファイルは問題があり、信頼性が低い。例えば、計測用途では、
図10における第2または第3出力スペクトルSP2、SP3から選択されたUVスペクトル帯(例えば、300nmおよび400nmの間の範囲)でサンプルが照明されると、測定データはスペクトルにおける小さい変化に対して非常にセンシティブになる。鋭いスペクトルピークの小さいシフトは、サンプルに対する波長および/または強度の大きな変動に繋がり、信頼性が低い測定データ(例えば、大きい測定エラー、再現性の欠如)をもたらす。
【0095】
前述されたように、広帯域出力放射ORDの生成(例えば、スーパーコンティニュームまたは白光)に関わる多くの非線型光学過程がある。どの非線型光学過程がより大きいスペクトル拡大効果を有するかは、どのように稼働パラメータが設定されるかに依存する。例えば、ポンプパルスが正常分散領域(正の群速度分散(GVD))においてファイバを通って伝播するように、ポンプ波長および/または光ファイバを選択することによって、自己位相変調が支配的な非線型光学過程になり、ポンプパルスのスペクトル拡大を担う。しかし、ほとんどの場合では、パルスポンプ放射源PRSによって提供される入力放射IRDのスペクトル拡大は、ポンプパルスが異常分散領域(負のGVD)において光ファイバOF中を伝播することを要求するソリトンダイナミクスによって主導される。これは、異常分散領域では、カー非線型性および分散の効果が互いに反対に作用するためである。異常波長分散を伴って光ファイバ(例えば、HC-PCF)内に入ったポンプパルスのパルスパラメータが、ソリトンのそれらと正確にマッチしない場合、ポンプパルスは特定のソリトン次数および分散波を有するソリトンパルスへと変わる。
【0096】
ソリトン分裂および変調不安定性(MI)が、ソリトン主導広帯域放射生成におけるスペクトル拡大についての二つの主要メカニズムであることが知られている。二つのメカニズムの間の違いは、ソリトン分裂過程は低いソリトン次数に関し、MI過程は高いソリトン次数に関する点である。MIは、非線型分散媒体における強い狭帯(MI変調周波数と比べて)ポンプパルスのスペクトル側波帯の自発的成長を表す物理的過程である。MIは、一般的に、異常分散領域において発生するが、高次分散が存在する等の特定の条件が満たされた場合、正常分散領域においても発生しうる。MI過程では、量子ゆらぎ等のためにパルスの電場(または、エンベロープ)において存在する僅かな摂動が、カー非線型性の下で指数関数的に増幅される。増幅量はMIゲインによって決定される。このようなMI過程では、時間パルスエンベロープが、複数の短い時間サブ構造または基本ソリトンに分解される。これと並行して、スペクトル側波帯がピークポンプ波長の両側で対称的に生成され、連続的に拡大するスペクトルプロファイルをもたらす。
【0097】
変調周波数は次のように表現される。
ΔωMI = √(2γP/|β2|) (式1)
そして、対応するMI周期は以下で与えられる。
TMI = 2π/ΔωMI = 2π/(√(2γP/|β2|)) (式2)
ここで、γは非線型係数を表し、Pはポンプパワーを表し、β2はファイバ伝播定数を表す。MI過程が支配的になるためには、ポンプパルスがMI周期「TMI」より十分に長くなくてはならない。しかし、ポンプパルス持続時間からだけでは、ソリトン分裂過程またはMI過程が、広帯域放射生成におけるスペクトル拡大についての支配的なメカニズムであるかは分からない。これは、ポンプパルス持続時間がポンプピークパワーと共にスケールし、非線型係数ひいては変調周期に影響するためである。
【0098】
パルス持続時間τを有する与えられたポンプパルスについて、等価ソリトン次数Nは以下で与えられる。
N = (√2)πτ0)/TMI (式3)
【0099】
式1では、「N = 1」の場合のソリトンが基本ソリトンである。「N > 1」の全ての他のソリトンは、高次ソリトンである。前述されたように、MI過程が支配的なスペクトル拡大メカニズムになるためには、ポンプパルスがMI周期「TMI」より十分に長い(または、τ0 >> TMI)必要がある。典型的に「N >> 20」の場合に、スペクトル拡大はMI過程によって支配される一方で、典型的に「N << 20」の場合に、スペクトル拡大はソリトン分裂によって支配されることが見出された。このため、MI過程を使用する配置について、高いソリトン次数Nを有する入力放射IRDを生成するのが望ましい。更に、式3から分かるように、入力放射IRDのソリトン次数は、入力放射IRDのパルス持続時間「τ0」に比例する。このため、MI過程が支配的な典型的な従来技術の配置について、入力放射IRDのパルス持続時間「τ0」は、典型的に100フェムト秒(fs)から数10ピコ秒(ps)の範囲であり、パルスエネルギーは、1マイクロジュール(μJ)から20μJの範囲である。
【0100】
なお、ラマン過程等の他の非線型光学過程も、非線型スペクトル拡大に寄与しうる。ラマン過程は、ガス媒体のタイプに依存する。例えば、希ガスまたはガス混合物(例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン)で満たされたHC-ARFにおいて広帯域出力放射ORDが生成される場合、MIがポンプパルスのスペクトル拡大のための支配的な過程となり、ラマン効果が存在しない。同様に、ラマン活性ガスまたはガス混合物(例えば、水素、重水素および窒素)が満たされたHC-ARFにおいて広帯域出力放射ORDが生成される場合、ポンプパルスが支配的な(すなわち、ゲインがより高い)分子振動の振動時間以下であれば、MIが依然として支配的な過程となり、ラマン効果はMIほど支配的ではなく、ポンプパルスのスペクトル中心の赤方偏移がもたらされる。しかし、支配的なラマン活性モードの振動時間よりポンプパルスが長い場合、ラマン効果は支配的な役割を担う。ラマン効果は、ソリトン自己周波数シフトおよびソリトン衝突を誘起する。ラマン過程およびMI過程の間の相互作用が、広帯域出力放射ORDの長波長エッジを伸ばしうることが見出された。
【0101】
初期ポンプ導入過程に加えて、分散波は後続の非線型光学過程でも生成されうる。例えば、ファイバ内における局所的損失または変更されたパラメータを有するファイバ内への遷移によってソリトンが乱されると、分散波が形成されうる。生成された分散波がソリトンと位相整合してスペクトル的にも重複する場合、ソリトンエネルギーが部分的に分散波に転換される。分散波はソリトンからシフトされた波長を有する正常分散領域において形成されるため、分散波生成(DWG)は、短波長延長に利用されうる。分散波の効率的な生成のため、ソリトンは、比較的広いスペクトルを有し、光ファイバOFの零分散波長の近くで伝播するのが望ましい。
【0102】
図10に戻って、本発明者は、第2および第3出力スペクトルSP2、SP3の両方における鋭いスペクトルピークが、制御されていないDWGに主に起因することを見出した。そこで、滑らかなスペクトルプロファイルを維持しながら、広帯域出力放射の短波長エッジを延ばすために、前述の各種の非線型光学過程をより良く制御することが提案される。提案される方法およびデバイスは、第1出力スペクトルSP1のような出力スペクトルを生成することを目的とする。特に、このような出力スペクトルは、興味のある広波長範囲(例えば、10nmおよび400nmの間の下限と1000nmおよび3000nmの間の上限を備える範囲、400nmおよび1000nmの間の範囲、400nmおよび2000nmの間の範囲または200nmおよび2000nmの間の範囲)に亘る平均から75%、50%、40%または30%(PSDについて)より大きく変化しないようなものでもよい。加えてまたは代えて、このような出力スペクトルは、スペクトルについての平均PSDの二倍、三倍、四倍または五倍より大きいPSDを有するピークを含まないようなものでもよい。
【0103】
本開示では、既存の方法に関して前述された課題を克服するための方法および装置が提案される。以下の例において具体的に提案される方法および装置は、バランスの取れたスペクトルプロファイルを維持しながら、中空コアHC光ファイバOFに基づく放射源RDSから生成される広帯域出力放射ORDをUV領域内まで更に延ばせる。これは、一または複数のくびれまたは低減された直径領域を、広帯域出力放射ORDが生成される中空コアHC光ファイバOFに適用することによって実現されてもよい。一または複数のくびれを中空コアHC光ファイバOFに適用する目的は、制御された態様で短波長延長が効果的に実現されるように、ファイバ内における一または複数の非線型光学過程(例えば、MI過程およびDWGの強度および開始)を慎重に操作するためである。
【0104】
ファイバテーパリングは、異なる光学特性が得られるように、光ファイバOFの局所的な特性を変更するための有用な技術として知られている。ファイバテーパは、光通信およびセンシング等の広範な用途で使用されている。これらの用途では、高次ガイドモードに対するモードフィルタリングを提供するため、および、非線型性を増加させるために、ファイバテーパが光導波管の間のモード整合を改善するために使用される。ファイバテーパはコア直径およびクラッディング直径を小さくするため、ファイバテーパを通過する際に同じポンプパルスが、より高いピーク強度ひいてはより制限されたファイバテーパにおけるより高い非線型性を有する。出版物「T. A. Birks et al., “Supercontinuum generation in tapered fibers”, Opt. Lett. 25 (19), 1415 (2000)」では、標準的な通信ファイバにおける非線型性を増加させるためにファイバテーパリングが適用されている。テーパ状ファイバの使用は、増幅されていないポンプパルスが、二オクターブの広さより大きいスペクトルまで拡大されることを可能にする。
【0105】
テーパ状ファイバは、ファイバ直径が減少する先細り部と、一定の直径の中央部分と、ファイバ直径が元の直径まで増加する先太り部と、を備えるくびれ領域を備えてもよい。テーパくびれ領域の長さは、例えば、数ミリメートルから数十センチメートルまで延びうる。ファイバパラメータがファイバ延伸中に変えられる場合、例えば、数十メートルの長さを有するテーパくびれ領域も可能である。典型的に、テーパ状ファイバは、両端で引力が緩やかに適用されている状態における、ファイバの加熱(例えば、ファイバの長さに沿った熱源またはオキシブタン炎のスキャン)によって作成される。延伸プロセス中の加熱エリアにおける延伸の正確な制御は、任意のテーパプロファイルおよびくびれ長さの生産を可能にする。出版物「R. Pennetta et al., “Fabrication and non-destructive characterization of tapered single-ring hollow-core photonic crystal fiber,” APL Photonics 4, 056105 (2019)」は、標準的な炎ブラシ技術を使用して、表面張力のバランスを取るために毛管外の領域から選択的に退避させることによって、単一リングHC-PCFがテーパ状になりうることを開示している。以下の実施形態では、基本モードの伝播がテーパ状ファイバを通じて実質的に維持されるように、中空コアHC光ファイバOFが断熱的にテーパ形成されてもよい。
【0106】
スペクトル拡大効果を高めるためには非線型性が高いほど有利であるが、パワースケーラビリティには上限があり、それを超えるとテーパ中空コアHC光ファイバOFにおける広帯域放射(例えば、スーパーコンティニューム)生成過程が不安定になることを発明者は突き止めた。不安定なスーパーコンティニューム生成は、パワーおよびスペクトルの不安定性によって顕在化する。パワーの不安定性を防ぎ、低いポンプパルスエネルギーを有する所望のスペクトルを与えるために、ファイバテーパを最適化するのが望ましい。
【0107】
図11は、滑らかなスペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射の生成のために構成される単一くびれ中空コア光ファイバの二つの例を模式的に示す。単一くびれ中空コア光ファイバは、単一のテーパ状 くびれ領域TP、TP’を備えてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、
図11(a)に例示されるように、くびれ領域がテーパ領域の間で実質的に一定の直径を有する中央領域を備えてもよい。このように、単一くびれ中空コア光ファイバSTFは、第1非テーパ部FU、先細り部TD、中央くびれ部CW(実質的にまたは比較的一定の直径を有する)、先太り部TU、第2非テーパ部SUの五つの部分を備えてもよい。また、単一くびれ領域または低減直径領域は、先細り部TD、中央くびれ部CW、先太り部TUを備えるファイバ部分と解釈されてもよい。
【0109】
各部分について、例えば、部分長さ、コア直径、毛管直径を定めるパラメータの対応する組があってもよい。具体的には、第1非テーパ部FUは、第1長さL1、第1コア直径D1、第1毛管直径(不図示)を備えてもよく、先細り部TDは、第2長さL2、先細り部に沿って変化する(または、減少する)第2コア直径D2、先細り部に沿って変化する(または、減少する)第2毛管直径(不図示)を備えてもよく、中央くびれ部CWは、第3長さL3、第3コア直径D3、第3毛管直径(不図示)を備えてもよく、先太り部TUは、第4長さL4、第4コア直径D4、第4毛管直径(不図示)を備えてもよく、第2非テーパ部SUは、第5長さL5、第1コア直径D1、第1毛管直径(不図示)を備えてもよい。先細り部TDおよび中央くびれ部CWが接する位置では、第2コア直径D2が第3コア直径D3と同じでもよく、第2毛管コア直径が第3毛管コア直径と同じでもよい。同様に、中央くびれ部CWおよび先太り部TUが接する位置では、第3コア直径D3が第4コア直径D4と同じでもよく、第2毛管コア直径が第4毛管コア直径と同じでもよい。
【0110】
なお、前述のファイバパラメータは、具体的にはテーパ状単一リングHC-ARFにとって適切なパラメータ例である。他の異なるタイプの光ファイバは、異なるまたは追加的なファイバパラメータを有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、光ファイバが、クラッディング構造が同心六角環の組を備えるカゴメファイバ等の異なるタイプのHC-ARFを備えてもよい。このような場合、前述の毛管直径は、六角環の二つの対向エッジの間の距離で置き換えられてもよい。
【0111】
なお、テーパ光ファイバまたはテーパにとって、中央くびれ部CWは必ずしも必要ではない。いくつかの実施形態では、光ファイバは、先細り部TDの直後に先太り部TUが設けられるテーパ状でもよい。このように、テーパ光ファイバは中央くびれ部CWを有しなくてもよい、または、中央くびれ部CWは存在が実質的に無視できる程度に非常に短くてもよい。
図11(b)は、単一くびれ領域TP’が中央くびれ部を備えなくてもよい、単一くびれ中空コア光ファイバの他の構成を模式的に例示する。
図11(b)の実施形態で使用される光ファイバOFは、
図11(a)の実施形態におけるものと同じでもよい。主な違いは、
図11(b)に示されるテーパ光ファイバSTF’の単一のくびれTP’が、中央くびれ部CWを含まない点である。先細り部TDおよび先太り部TUが接する位置(または、テーパくびれ位置)では、第2コア直径D2が第4コア直径D4と同じでもよく、第2毛管コア直径(不図示)が第4コア直径(不図示)と同じでもよい。単一くびれ中空コア光ファイバSTFの一または複数の他の部分が除かれてもよいとも理解されるべきである。例えば、他の実施形態では、単一くびれ中空コア光ファイバが、先太り部TUや第2非テーパ部SUを備えなくてもよい。異なる実施形態では、単一くびれ中空コア光ファイバが、第1非テーパ部FUや先細り部TDを備えなくてもよい。
【0112】
先細り部TDでは、ファイバの構造寸法が、軸方向または単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’の長さに沿って徐々におよび連続的に減少してもよい。例えば、第1コア直径D1および第1毛管直径は、それぞれ、第2コア直径D2および第2毛管直径まで徐々に減少してもよい。同様に、先太り部TUでは、ファイバの構造寸法が、軸方向または単一くびれ中空コア光ファイバSFT、STF’の長さに沿って徐々におよび連続的に増加してもよい。例えば、第4コア直径D4および第4毛管直径は、それぞれ、第1コア直径D1および第1毛管直径まで徐々におよび連続的に増加してもよい。コア直径等の構造寸法が増減するレートは、ファイバがテーパリング中に引かれるレート等のテーパリングプロセスに依存してもよい。
【0113】
第1非テーパ部FUは、テーパ中空光ファイバSTF、STF’の入力端でもよく、第2非テーパ部SUは、テーパ光ファイバSTF、STF’の出力端でもよい。第1非テーパ部FUは、第1ファイバ面FFを備えてもよく、第2非テーパ部SUは、第2ファイバ面SFを備えてもよい。
図8に戻って、稼働中、テーパ光ファイバSTF、STF’は、希ガスまたは希ガスが支配的なガス混合物等の適切な媒体WMによって満たされた貯蔵器RSVによって完全に囲まれていてもよい。貯蔵器RSV内に入った後、パルスポンプ放射源PRSから放出された入力ポンプパルスは、第1ファイバ面FFを通じて第1非テーパ部FU内に結合されてもよい。続いて、生成される広帯域出力放射ORDは、第2ファイバ面SFを通じて第2非テーパ部SUから出てもよい。
図8における構成は一例に過ぎないと理解されるべきである。異なる構成では、テーパ状ファイバが部分的に貯蔵器RSVによって囲まれていてもよい。他の構成では、
図8における貯蔵器RSVが使用されてなくてもよい。例えば、テーパ光ファイバSTF、STF’の中空コアは、最初に希ガスまたは希ガスが支配的なガス混合物WMによって満たされてもよい。続いて、例えば、光学ミラーを各ファイバ面(例えば、第1ファイバ面FFおよび第2ファイバ面SF)に取り付けることによって、ガスで満たされた中空コアHCが封止されてもよい。このように、貯蔵器RSVの使用は省略されうる。
【0114】
いくつかの実施形態では、非テーパ状または一様な光ファイバOFが、前述のHC-PCFの一つ(例えば、
図7に例示されるような単一のリングHC-ARF)を備えてもよい。広帯域出力放射ORDの生成のために使用される場合、単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’は、
図8に示される広帯域放射源RDSに設けられてもよい。いくつかの実施形態では、単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’が、希ガスまたは希ガスが支配的な混合物で満たされてもよい。前述されたように、希ガスまたは希ガスが支配的な混合物は、MI過程がスペクトル拡大のための支配的な非線型光学過程になることを可能にしうる。
【0115】
図12(a)は、ファイバ長さに沿った最適化された位置で始まる(例えば、先細り部が始まる)くびれ領域を備える単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図11(b)に示されるもの)内における入力放射のパルスのスペクトル発展を記述するシミュレーションについての、ファイバ長さに沿った位置Pに対する波長λ-エネルギー(または、信号sig(dB))スペクトル密度のプロットを示す。最適化された位置は、MIが支配的なスペクトル拡大が既に始まっている所でもよい。単一くびれ中空コア光ファイバは、例えば、
図8に示されるように放射源内に設けられてもよい。白線「0 GVD」は、群速度分散が零になる波長を示す。零分散波長は局所的なファイバコア直径と共に変化する(例えば、より短い零分散波長は、より小さいコア直径に対応する)ため、白線「0 GVD」は単一くびれ中空コア光ファイバSTF’の長さに沿ったファイバコア直径の変化も示す。このシミュレーションの具体例では、単一くびれ中空コア光ファイバSTF’の全長が42cmである。第1非テーパ部FU、先細り部TD、先太り部TU、第2非テーパ部SUの長さは、それぞれ、20cm、9cm、9cm、4cmである。非テーパ部FU、SUにおける中空コアの直径は30μmであり、先細り部および先太り部が接する位置での中空コアの最小直径(または、テーパくびれ直径)は20μmである。シミュレーションでは、先細り部TDにおける中空コアの直径が、30μmから20μmまで線型に減少するものとして扱われ、先太り部TUにおける中空コアの直径が、20μmから30μmまで線型に増加するものとして扱われる(これはシミュレーションの単純化のためであり、テーパが線型に変化する直径を有することは、製造プロセスのために実際にはありえない)。
【0116】
単一くびれ中空コア光ファイバSTF’の中空コアは、25.7バールの圧力のクリプトンガスの作動媒体で満たされてもよい。入力放射は、5MHzの繰返し率および1030nmの中心波長を有する一連のポンプパルスでもよい。半値全幅(FWHM)パルス持続時間は300fsでもよく、パルスエネルギーは5.3μJでもよい。単一くびれ中空コア光ファイバSTF’内に入ったパルス入力放射(または、ポンプパルス)IRDは、「N = 110」のソリトン次数を有する高次ソリトンへと変わる。ソリトン次数はコア直径と共に変化するため、コア直径が20μmまで減少すると初期のソリトン次数は「N = 75」まで減少する。前述されたように、ポンプパルスのソリトン次数は、スペクトル拡大がMIによって支配される条件と、スペクトル拡大がソリトン分裂によって支配される条件を区別するために使用されうる便利なパラメータである。ソリトン次数がMI過程の下限として解釈される「20」より大幅に高いため、第1非テーパ部FU(または、単一くびれ中空コア光ファイバSTF’の最初の20cm)において見られるスペクトル拡大は、主にMI過程によるものである。
【0117】
図12(a)に示されるように、MI過程は、単一くびれ中空コア光ファイバSTF’の第1ファイバ面FFから約13cmの距離で始まる。MI過程は、長波長エッジを約1600nmまで延ばし、短波長エッジを約500nmまで延ばす、顕著なスペクトル拡大をもたらす。スペクトル拡大されたパルスが先細り部内に入ると(すなわち、第1ファイバ面FFから20cmの距離で)、減少するコア直径が、先に確立された非線型光学過程の条件を変えて、波長シフトされた分散波の効率的な生成を容易にする。この結果、追加的な短波長延長が得られる。この追加的な短波長延長は、
図12(a)において明らかであり、スペクトルの短波長エッジが、第1ファイバ面FFから20cmの距離での約500nmから、第1ファイバ面FFから28cmの距離での300nm以下まで延ばされる。最大短波長延長は、テーパくびれ位置または先細り部TDおよび先太り部TUが接する位置の周りで実現される。
【0118】
先細りが始まる位置として定義されるテーパの位置は、最大短波長延長と、
図12(a)に示されるスペクトルプロファイル例等の滑らかな全体スペクトルプロファイルを同時に得る上で重要である。単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’の場合、シミュレーションを介してテーパ位置が精密に決定されてもよい。代わりにまたは加えて、テーパ位置は、例えば、次の四つのステップを備えてもよいカットバック法を使用して決定されてもよい:ステップ1)(例えば、長い)非テーパ中空コア光ファイバの長さで出力スペクトルおよびパワーを測定すること、ステップ2)入力端の近くの点で非テーパ状ファイバを切って短縮長さを得ること、ステップ3)非テーパ状ファイバの短縮長さに対して同じ測定を実行すること、ステップ4)MIが支配的なスペクトル拡大が起こったことが測定された出力スペクトルによって確認されるまで、ステップ2)から3)を繰り返すこと。非テーパ状ファイバの対応する残りの長さは、単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’の第1非テーパ部FUの長さを設定するために使用されてもよい。このように、単一のテーパ、より具体的には先細り部TDは、決定された長さの直後に開始してもよい。
【0119】
稼働パラメータの異なる組(例えば、入力放射IRD、光ファイバOF、作動媒体WM等のパラメータ)は、異なる非線型条件に繋がり、異なるテーパパラメータ(例えば、テーパ位置、テーパリングレート、テーパくびれ等)を要求すると理解されるべきである。例えば、稼働パラメータの異なる組では、追加的な中央くびれ部CWを備える
図11(a)の単一くびれ中空コア光ファイバSTFが、滑らかに延ばされたスペクトルプロファイルを得るために使用されてもよい。中央くびれ部CWは、伝播するパルスに対する非線型性を更に向上させ(より小さいコア直径のために)、DWGの効率を高める。
【0120】
単一のテーパによってテーパ形成された中空コア光ファイバは、滑らかにUVまで延ばされたスペクトルプロファイルを有する広帯域出力放射ORDを生成するための効果的なアプローチである。しかし、単一のテーパの主要な機能は、DWGの開始を制御することである。主に第1非テーパ部FUの十分な長さを提供することによって可能になるMI過程の開始は制御できない。稼働パラメータの与えられた組に対して第1非テーパ部FUの長さが不十分である場合、結果としての出力スペクトルは所望のスペクトルプロファイルを有しない。
【0121】
図12(b)は、単一くびれ領域が最適化されていない位置(すなわち、MIが支配的なスペクトル拡大がテーパで始まる位置)にある時の、
図11(b)に示される単一くびれ中空コア光ファイバ内における放射のパルスのスペクトル発展のシミュレーションについての、
図12(a)と同等のプロットを示す。
図12(b)に示されるシミュレーションは、
図12(a)に示されるシミュレーションで使用されたものと同じテーパ中空コア光ファイバに基づく。二つのシミュレーションの間の主な違いは、
図12(b)のシミュレーションにおける入力放射IRDのパルスエネルギーが、5.3μJではなく2.4μJであることである。第1非テーパ部FUの同じ長さは、より低いパルスエネルギーのために、MI過程の開始のトリガーとして十分ではない。
図12(b)に示されるように、MIが支配的なスペクトル拡大の開始は、パルスがテーパリング領域(例えば、先細り部TDおよび先太り部TU)に入るまで遅れる。このシミュレーション例では、MI過程の遅延によってDWGの発生が防がれ、痩せたプロファイルを有し短波長延長のない出力スペクトルがもたらされる。
【0122】
図13は、
図12(a)および12(b)に示されるシミュレーションとそれぞれ同じパラメータによる、放射源の二つの出力スペクトルのシミュレーションを示す。中空コアファイバが最適化されていない位置でテーパ形成されている放射源から生成される、最適化されていない出力スペクトルUSPは、第1出力スペクトルSP1(同じだが一様な光ファイバから生成される)と同様のスペクトル帯域幅を備え、第2出力スペクトルSP2と同様に二つの顕著な鋭いピーク(例えば、一方が450nmの周りにあり、他方が1000nmの周りにある)を備える。このようなスペクトルプロファイルは、計測用途にとって好ましくない。対照的に、中空コアファイバが最適化された位置でテーパ形成される放射源から生成される出力スペクトルOSPは、延ばされた短波長エッジおよびより滑らかなスペクトルプロファイル(または、よりバランスが取れたPSDプロファイル)を備える。
【0123】
前述されたシミュレーションに加えて、発明者は、コンセプトを証明するために実験も行った。
図14(a)は、出力放射ORDの短波長延長およびバランスの取れたスペクトルプロファイルの維持のためのシミュレーションを介して最適化された単一くびれ中空コア光ファイバ例の長さに沿って、ファイバコア直径が変化する様子を模式的に示す。なお、図示されるファイバデザインは、
図11(a)に示される中空コア光ファイバSTFの一つの具体例に過ぎない。また、ファイバデザインは、ファイバを製造するためのターゲットとして使用される。従って、最終または製造後のファイバ寸法(例えば、先細り部TD、中央くびれ部CW、先太り部TUを備えるくびれ領域の寸法)は、デザインされた値から製造許容範囲内で僅かに乖離しうる。製造許容範囲のサイズは、ファイバがテーパ形成される方法、このようなファイバテーパリング等のために使用されるツール等の多くのファクタに依存すると理解される。
図14(a)のデザインに係る単一くびれ中空コア光ファイバの製造許容範囲は、各ターゲット寸法の約±5%、約±10%、約±15%または約±20%でもよい。
【0124】
図14(a)に戻って、このデザイン例では、第1非テーパ部FU、先細り部TD、先太り部TP、第2非テーパ部SUが、それぞれ、約29cm、約4cm、約2cm、約4cm、約3cmの長さである。第1非テーパ部FUまたは第2非テーパ部SUにおけるファイバコア直径FCDは、約32μmである。先細り部TDまたは先太り部TUにおけるファイバコア直径FCDは、ファイバ長さに沿って実質的に線型に変化する。中央くびれ部CWにおけるファイバコア直径FCDは、約21.5μmである。この場合、第1または第2非テーパ部FUまたはSUのファイバコア直径FCDに対する中央くびれ部CWのファイバコア直径FCDの比として定義されるテーパリング比は、約0.67と計算される。第1非テーパ部FUの長さ(この場合は約29cm)は、稼働パラメータの与えられた組について、ポンプパルスがファイバのくびれ領域内に入る前にMIが支配的なスペクトル拡大を受けることを担保するために、意図的に選択される。
【0125】
図14(b)は、一様な中空コア光ファイバおよび単一くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図14(a)に示されるもの)からそれぞれ放出された、二つの測定された出力スペクトル「SP_REF」「SP_SW」を示す。スペクトル「SP_REF」は、与えられた中空コア光ファイバに対して稼働パラメータの組が慎重に選択されたベースライン状況に対応する。この特定の実験では、一様なファイバが、32μmのコア直径を有する単一のリングHC-ARF(例えば、
図7に例示されるもの)であった。一様なファイバの中空コアを満たした作動媒体WMは、モル比で98%のアルゴンおよび2%の水素を含むガス混合物であった。作動媒体WMの圧力は、40バールに設定された。パルスポンプ放射PRSは、1MHzの繰返し率を有する一連のポンプパルスを放出した。ポンプパルスは、約1030nmの中心波長、約300fsのパルス持続時間、約4.16μJのパルスエネルギーを有していた。図から分かるように、ベースラインスペクトルは、特に300および600nmの間の波長範囲において、非常に痩せた(または、滑らか/平らでない)スペクトルプロファイルを有する。このような痩せたスペクトルプロファイルは、実用に向かない。
【0126】
対照的に、スペクトル「SP_SW」は、スペクトル「SP_REF」を生成するために使用されたものと同じ一様なファイバ(または、同じデザインを有する異なるファイバ)から作られたテーパ中空コア光ファイバであって、
図14(a)に示されるデザインに後処理された(すなわち、テーパ形成された)ものから生成された。短波長延長およびスペクトル形状のバランスを取るように出力スペクトルを微調整するために、他の稼働パラメータは同じに保たれたままで、ポンプパルスエネルギーが調整された(例えば、4.16μJから5.36μJに高められた)。単一くびれ領域(または、単一のテーパ)の実装が、短波長エッジを更に延ばせる(例えば、約350nmから300nmまで)だけでなく、特に300および600nmの間の波長範囲において元の痩せたスペクトルプロファイルを大幅に滑らかにできる(例えば、400nmの周りの谷領域がもはや存在しない)ことが比較から明らかである。
【0127】
図14(c)は、異なる中空コア光ファイバについて、異なる稼働条件の下で、統合出力パワーが入力ポンプパルスエネルギーと共に変化する様子を記述する、三つの測定されたパワー伝達曲線「P_REF」「P_SW1」「P_SW2」を示す。具体的には、パワー伝達曲線「P_REF」は、
図14(b)に示されるスペクトル「SP_REF」を生成するために使用されたものと同じ一様な中空コア光ファイバおよび同じ稼働パラメータ(入力ポンプパルスエネルギーが本測定では意図的に変えられた点を除く)に基づいて得られた。同様に、パワー伝達曲線「P_SW1」は、
図14(b)に示されるスペクトル「SP_SW」を生成するために使用されたものと同じテーパ中空コア光ファイバおよび同じ稼働パラメータ(入力ポンプパルスエネルギーが本測定では意図的に変えられた点を除く)に基づいて得られた。パワー伝達曲線「P_SW2」は、パワー伝達曲線「P_SW1」を生成するために使用されたものと同じテーパ中空コア光ファイバおよび同じ稼働パラメータ(ポンプパルス繰返し率が1MHzから2MHzに高められた点を除く)に基づいて得られた。
【0128】
ここで、統合出力パワーは、ファイバから放出された出力放射ORDの特定の波長範囲またはスペクトル帯域幅全体に亘って積分されたパワーである。図から分かるように、三つ全てのパワー伝達曲線「P_REF」「P_SW1」「P_SW2」について、高エネルギー端での有意な反転を伴うことなく、入力ポンプパルスエネルギーが増加するにつれて出力パワーが増加する。このように、少なくとも約7μJのパルスエネルギーまでは、単一くびれ中空コア光ファイバが広帯域放射生成のために使用される放射源RDSのエネルギースケーリング能力に対する、単一くびれ領域(または、単一のテーパ)の実装による悪影響がない、または、無視できることが確認された。パワー伝達曲線「P_REF」および「P_SW1」の間の比較は、同じポンプパルス繰返し率(例えば、1MHz)では、出力放射ORDを生成するためのポンプエネルギー閾値が、一様な中空コア光ファイバより単一くびれ中空コア光ファイバにおいて低くなることを示している。更に、パワー伝達曲線「P_SW1」および「P_SW2」の間の比較は、より高いポンプパルス繰返し率が、より高いポンプエネルギー閾値およびより高いスロープ効率(曲線の傾き)をもたらすことを示している。
【0129】
図12(b)に示されるシミュレーションによれば、ファイバテーパリングはMI過程の開始をトリガーする上で有益である。このように、第1非テーパ部FUにおいて受動的にトリガーされるMI過程に依存するのではなく、MI過程(例えば、MI過程の開始)に対する能動的なより良い制御を提供するために、追加的なくびれ領域または低減直径領域が単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’に適用されてもよい。追加的なくびれ領域の使用は、MIが支配的なスペクトル拡大が低いパルスエネルギーでも始まることを可能にする点でも有利である。このように、高いパルスエネルギーに関する前述のパワーおよびスペクトルの不安定性が回避されうる。
【0130】
図15は、滑らかなスペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射の生成のために構成される二重くびれ中空コア光ファイバを模式的に例示する。二重くびれ中空コア光ファイバDTFは、それぞれファイバに沿った二つの異なる位置に配置される、第1くびれ領域または低減直径領域TP1および第2くびれ領域または低減直径領域TP2を備えてもよい。
【0131】
二つのテーパのそれぞれは、
図11(a)に示される単一のテーパ(すなわち、ここで例示されるように中央くびれ部を備えるもの)、
図11(b)に示される単一のテーパ(すなわち、中央くびれ部を有しないもの)またはこれらの組合せ(例えば、第1くびれ領域は中央くびれ部を有してもよく、第2くびれ領域は中央くびれ部を備えなくてもよい、またはその逆)として構成されてもよい。いくつかの実施形態では、非テーパ中空コア光ファイバが、前述のHC-PCFの一つ(例えば、
図7に例示されるような単一のリングHC-ARF)を備えてもよい。広帯域出力放射ORDの生成のために使用される場合、
図15に示される二重くびれ中空コア光ファイバDTFは、
図8に示される放射源RDSに設けられてもよい。二重くびれ中空コア光ファイバDTFは、希ガスまたは希ガスが支配的な混合物で満たされてもよい。前述されたように、希ガスまたは希ガスが支配的な混合物は、MI過程がスペクトル拡大のための支配的な非線型光学過程になることを可能にする。
【0132】
図15の実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバDTFが、第1非テーパ部UT1、第1先細り部TD1、第1中央くびれ部CW1、第1先太り部TU1、第2非テーパ部UT2、第2先細り部TD2、第2中央くびれ部CW2、第2先太り部TU1、第3非テーパ部UT3の九つの部分を備えてもよい。各部分について、例えば、部分長さ、コア直径、毛管直径を定めるパラメータの組が存在してもよい。具体的には、第1非テーパ部UT1は、第1長さL1’、第1コア直径D1’、第1毛管直径(不図示)を備えてもよく、第1先細り部TD1は、第2長さL2’、 先細り部に沿って変化する(または、減少する)第2コア直径D2’、 先細り部に沿って変化する(または、減少する)第2毛管直径(不図示)を備えてもよく、第1中央くびれ部CW1は、第3長さL3’、第3コア直径D3’、第3毛管直径(不図示)を備えてもよく、第1先太り部TU1は、第4長さL4’、第4コア直径D4’、第4毛管直径(不図示)を備えてもよく、第2非テーパ部UT2は、第5長さL5’、第1コア直径D1’、第1毛管直径を備えてもよく、第2先細り部TD2は、第6長さL6’、第6コア直径D6’、第6毛管直径(不図示)を備えてもよく、第2中央くびれ部CW2は、第7長さL7’、第7コア直径D7’、第7毛管直径(不図示)を備えてもよく、第2先太り部は、第8長さL8’、第8コア直径D8’、第8毛管直径(不図示)を備えてもよく、第3非テーパ部UT3は、第9長さL9’、第1コア直径D1’、第1毛管直径を備えてもよい。異なる実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバDTFが、二つの中央くびれ部TW1、TW2のいずれかを備えてもよい。他の実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバDTFが、中央くびれ部を備えなくてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、第1ファイバ面FF’の近くの第1テーパTP1がMI過程の開始をトリガーするために使用され、第1テーパTP1の下流および第2ファイバ面SF’の近くに配置される第2テーパTP2がDWGの開始をトリガーするように構成されてもよい。用語「下流」は、ファイバの出力端に近い位置を記述し、「上流」はファイバの入力端に近い位置を記述する。単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’に適用可能な放射源RDSの前述の構成は、二重くびれ中空コア光ファイバDTFにも同様に適用可能である。
【0134】
図16(a)は、変調不安定性過程を制御するために適用される第1くびれ領域および分散波生成を制御するために適用される第2くびれ領域の二つのくびれ領域(例えば、
図15に示されるもの)を有するテーパ中空コア光ファイバ内における放射のパルスのスペクトル発展のシミュレーションについての、
図12と同等のプロットを示す。白線「0 GVD」は、零分散波長および二重くびれ中空コア光ファイバDTFの長さに沿ったファイバコア直径の変化を示す。このシミュレーション例では、二重くびれ中空コア光ファイバDTFの全長が、例えば、
図11(a)および11(b)に示される単一くびれ中空コア光ファイバSTF、STF’と同じ42cmである。第1非テーパ部UT1、第1先細り部TD1、第1先太り部TU1、第2非テーパ部UT2、第2先細り部TD2、第2中央くびれ部CW2、第2先太り部TU2、第3非テーパ部UT3の長さは、それぞれ、4cm、5cm、7cm、5cm、5cm、5cm、4cm、5cm、2cmである。非テーパ部UT1、UT2、UT3における中空コアの直径は30μmであり、第1中央くびれ部CW1および第2中央くびれ部CW2における中空コアの最小直径(または、テーパくびれ直径)は20μmである。シミュレーションでは、先細り部TD1、TD2における中空コアの直径が、30μmから20μmまで線型に減少するものとして扱われ、先太り部TU1、TU2における中空コアの直径が、20μmから30μmまで線型に増加するものとして扱われる。
【0135】
二重くびれ中空コア光ファイバDTFの中空コアは、25.7バールの圧力のクリプトンガスの作動媒体で満たされてもよい。入力放射は、10.6MHzの繰返し率および1030nmの中心波長を有する一連のポンプパルスでもよい。半値全幅(FWHM)パルス持続時間は300fsであり、パルスエネルギーは2.4μJである。二重くびれ中空コア光ファイバDTF内に入ったパルス入力放射(または、ポンプパルス)IRDは、「N = 80」のソリトン次数を有する高次ソリトンへと変わる。ソリトン次数はコア直径と共に変化するため、コア直径が20μmまで減少すると初期のソリトン次数は「N = 54」まで減少する。この高いソリトン次数は、入力放射IRDがMI領域でスペクトル拡大されることを担保する。
【0136】
図16(a)に示されるように、MI過程は、第1くびれ領域TP1の第1先太り部TU1で始まる。第1くびれ領域TP1は、第1ファイバ面FF’(または、入力ファイバ端)から約16cmの距離で、MIが支配的なスペクトル拡大を開始させる(または、少なくとも支援する)。これは、2.4μJの同じパルスエネルギーを有する入力放射IRDが25cmの距離でもMIが支配的なスペクトル拡大を起こさない
図12(b)に示される場合と対照的である。このように、第1くびれ領域TP1は、MI過程の開始を促進する。第2くびれ領域TP2内に入る前に、入力放射のスペクトルは約450nmおよび1700nmの間のスペクトル範囲をカバーするまでに大幅に拡大される。
【0137】
DWG誘起短波長延長は、パルス入力放射IRDが第2くびれ領域TP2(より具体的には、この第2くびれ領域の第2中央くびれ部CW2)に到達すると始まる。この結果、スペクトルの短波長エッジが約450nmから最小で約300nmまで延ばされる。第1テーパくびれ領域によって、DWG誘起短波長延長が効果的に得られる。これも、2.4μJの同じパルスエネルギーを有する入力放射IRDが、MI過程の開始の遅れのためにDWG誘起短波長延長自体を提供しない
図12(b)に示される場合と対照的である。
【0138】
図16(b)は、
図16(a)に示されるシミュレーションと同じパラメータによる放射源の出力スペクトルのシミュレーションを示す。
図13に示される最適化されていない生成された出力スペクトルUSPと対照的に、同じポンプパルスエネルギーでも、二重くびれ中空コア光ファイバDTFは、格段に滑らかなスペクトルプロファイル(または、よりバランスの取れたPSDプロファイル)を維持しながら、スペクトルDSPの短波長エッジを大幅に延ばせる。
【0139】
広帯域放射生成のための二重くびれ中空コア光ファイバDTFをデザインするために、第1くびれ部の位置およびパラメータが、MI誘起スペクトル拡大の開始および強度を制御するために最適化されており、第2くびれ領域の位置およびパラメータが、DWGの開始および強度を制御するために最適化されていることを担保するのが重要である。MI誘起スペクトル拡大は、二重くびれ中空コア光ファイバDTFの第1面FF’から5cmおよび30cmの間の位置で開始しうる。例えば、MI開始位置は、第1面FF’から10cmおよび20cmの間、14cmおよび16cmの間、15cmおよび35cmの間、20cmおよび30cmの間または24cmおよび28cmの間でもよい。例えば、第1くびれ領域TP1の第1中央くびれ部CW1が不適切に長い場合、第1くびれ領域内で分散波が生成される。このような場合、所望の短波長延長は得られるが、出力スペクトルプロファイルのバランスが崩れ、第2出力スペクトルSP2と同様に鋭いUVピークが現れる。そこで、各過程のために各くびれ領域を最適化することに加えて、第1くびれ領域がDWGの開始前に終わることを担保することも重要である。いくつかの実施形態では、第1先太り部TU1が、MI過程の開始から短距離内に配置されてもよい。このような短距離は、例えば、-10から10cmの間、-5から5cmの間、-2.5から2.5cmの間または-1から1cmの間の範囲内でもよい。
【0140】
なお、先の実施形態において使用された用語「テーパ」は、ファイバの構造寸法(例えば、内部コア直径、内部および/または外部毛管直径)がファイバ長さに沿って変わる光ファイバの部分を表すものと広義に解釈されるべきである。このように、テーパは、光ファイバOFの構造変化部と解釈されてもよく、光ファイバOFの非テーパ部は、一または複数の主部を備えるものと解釈されてもよい。くびれ領域は、必ずしも先細り部TD、中央くびれ部CW、先太り部TUの三つの部分を全て備えなくてもよい。二重くびれ中空コア光ファイバDTFは一例に過ぎないと理解されるべきである。他の実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバDTFの一または複数の部分が除かれてもよい。例えば、一実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバが、第3非テーパ部UT3を備えなくてもよい。異なる実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバが、第1非テーパ部UT1および第1先細り部TD1を備えなくてもよい。この場合、入力放射IRDは第1中央くびれ部CW1内に直接的に結合されてもよい。二つ以上のくびれ領域が中空コア光ファイバに適用されうるとも理解されるべきである。より多くのくびれ領域は、各種の異なる非線型光学過程を効果的に制御するための追加的な柔軟性をもたらしうる。なお、広帯域放射生成を改善するための二つ以上のくびれ領域の中空コア光ファイバへの適用は、MI過程およびDWGを制御するためのものに限定されない。二つ以上のくびれ領域は、ガスで満たされた中空コア光ファイバにおける他の非線型過程を制御するためにも適用されうる。
【0141】
先の実施形態で記述されたように、広帯域出力放射ORDが生成される中空コアHC光ファイバOFに一または複数のくびれまたは低減直径領域を適用することは、制御された態様で短波長延長が効果的に実現されるように、ファイバ内における一または複数の非線型光学過程(例えば、MI過程およびDWGの強度および開始)の慎重な操作を可能にする。短波長延長の程度または出力スペクトルの短波長エッジの位置は、関連するソリトンおよび分散波の間の位相整合条件によって主に決定される。中空コアHC光ファイバOFに適用されるくびれのサイズを更に低減することによって、更なる短波長延長が得られうる。しかし、より小さいテーパくびれサイズは、光伝達の低減および製造難易度の高まりに繋がるため、このようなアプローチには限界がある。
【0142】
そこで、広帯域出力スペクトルの短波長エッジがUV領域まで更に延ばされることを可能にするだけでなく、テーパくびれを更に低減することを回避できる方法が望ましい。本発明者は、中空コアHC光ファイバOF内で生成される広帯域出力放射ORDの短波長限度を延ばすために、分散波のソリトントラッピングが使用されうることを特定した。出版物「J C Travers, “Blue extension of optical fiber supercontinuum generation”, Journal of Optics, 12 (2010) 113001」によれば、異常領域における適切な強度のソリトンが、同じ群速度を有する正常分散領域における分散波と時間的に重複する時に、ソリトントラッピング過程が始まる。このような場合、パルス内の四波混合が、分散波を僅かに青方偏移させ、ソリトンを僅かに赤方偏移させうる。この結果、分散波およびソリトンはより低い群速度の領域内にシフトし、両方とも減速される。ソリトンおよび分散波の間の時間的オーバーラップが維持される場合、分散波は連続的に青方偏移しながらソリトンによって捕獲される。一方、波長シフトがソリトンおよび分散波の間の群速度のミスマッチをもたらし、このような群速度ミスマッチが十分に大きい場合、二つの波は結果的に時間的に分離してソリトントラッピング過程が停止する。このため、ソリトンおよび分散波の群速度を整合させることによって、または、ソリトンおよび分散波の間の群速度ミスマッチを最小化することによって、ソリトントラッピング過程が維持されうる。
【0143】
本発明者は、広帯域出力放射ORDが、ラマンフリー作動媒体WM(例えば、希ガスまたはガス混合物)を有する非テーパ状または一様な中空コアHC光ファイバOF(例えば、一様なHC-PCF)において生成され、MIが支配的なスペクトル拡大を可能にするように稼働パラメータ(例えば、ポンプレーザパラメータ)が選択される場合に、ソリトンが分散波より高い群速度を有することを認識した。このように、一旦生成された分散波はソリトンを捕まえられず、分散波のソリトントラッピングが起こらない。
【0144】
本発明者は、広帯域出力放射ORDが生成される中空コアHC光ファイバOFに、少なくとも一つの群速度制御メカニズムを適用することによって、ソリトントラッピング過程を開始および維持できることを認識した。これは、群速度制御メカニズムがソリトンおよび分散波の群速度を可変制御し、これらの時間分離を最小化でき、これらの時間的オーバーラップを維持できるためである。
【0145】
いくつかの実施形態では、群速度制御メカニズムが、特定のテーパ勾配を有する少なくとも一つのテーパを備えてもよい。各テーパのテーパ勾配は、ソリトンおよび分散波の群速度を異なる程度で変えるように慎重に最適化されてもよい。例えば、最適化されたテーパ勾配を有するテーパは、ソリトンを分散波より大きく減速してもよい。これは、テーパ内に入る前にソリトンおよび分散波の間の時間分離を効果的に補償または最小化し、それらがファイバを通って伝播する間に良好な時間的オーバーラップを維持することを可能にする。対照的に、
図11(a)、11(b)および15に示されるテーパまたはくびれ領域TP、TP’、TP1、TP2の主な目的は、MI過程およびDWGの強度および開始を制御することである。このため、テーパ勾配の分散波のソリトントラッピングに対する影響は、これらのテーパを実装する時に考慮されない可能性がある。
【0146】
図17は、一実施形態に係る、分散波のソリトントラッピングのために構成される更なる単一くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。図示されるように、単一くびれ中空コア光ファイバTOF1は、入力放射IRDを受け入れるための第1ファイバ面FF11と、広帯域出力放射ORDを出力するための第2ファイバ面SF11と、を備えてもよい。単一くびれ中空コア光ファイバTOF1は、三つのファイバ部分、すなわち、第1長さL11を有する一様なまたは非テーパ部UT11、第2長さL12を有する先細り部TD11、第3長さL13を有する中央くびれ部CW11を備えてもよい。一様部UT11は、部分の長さに沿って一定の第1中空コア直径D11を有してもよい。対照的に、先細り部TD11は、部分の長さに沿って連続的および実質的に線型に減少する第2中空コア直径D12を有してもよい。第3部分、すなわち、中央くびれ部CW11は、先細り部TD11の直後に開始してもよく、第1コア直径D11に対して低減されるが部分の長さに沿って一定の第3中空コア直径D13を有してもよい。先細り部TD11および中央くびれ部CW11は、先の実施形態において定義されたようなくびれ領域またはテーパTP11を形成してもよい。
【0147】
本実施形態では、第2中空コア直径D12が所定のテーパ勾配TG11で減少してもよい。テーパ勾配TG11は、ファイバの長さに沿って中空コアのサイズが変わる速度を記述するために使用されてもよく、次のように定義されてもよい。
TG = ΔR/ΔL (式4)
ここで、ΔRは先細り部TD11の任意の与えられた部分における中空コア半径の変化を表し、ΔLは中空コア半径の変化ΔRが起こるファイバ長さを表す。本発明者は、テーパ勾配が、例えば、0.01μm/cmおよび10μm/cmの間、0.05μm/cmおよび5μm/cmの間、0.1μm/cmおよび1μm/cmの間または0.1μm/cmおよび0.5μm/cmの間の範囲内に入ってもよいことを特定した。
【0148】
図18(a)および18(b)は、一様な中空コア光ファイバ内で70cmおよび110cmの距離を伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムである。横軸は時間分布または入力放射のスペクトルコンポーネントの間の遅延時間を表し、縦軸は入力放射のスペクトル分布を表す。グレイスケールプロットのコントラストは、最弱エネルギー(dB)の黒から最強の白まで及ぶ。
【0149】
このシミュレーション例では、一様な中空コアHC光ファイバOF(例えば、
図7に例示されるような単一のリングHC-ARF)が、110cmの長さおよび30μmのコア直径(または、15μmのコア半径)を有してもよい。位置「Pos = 70cm」は、第1ファイバ面F11から70cmの距離のファイバにおける位置に対応し、位置「Pos = 110cm」は、第2ファイバ面SF11の位置に対応する。中空コアHCは、25.7バールの圧力のクリプトンガスの作動媒体WMで満たされてもよい。パルス入力放射IRDは、150fsのポンプパルス持続時間τ、0.5μJのパルスエネルギーEp、1030nmの中心波長λを有する。パルス入力放射IRDは、第1ファイバ面FF11を介してファイバ内に受け入れられてもよく、第2ファイバ面SF11を介してファイバから出てもよい。この構成は、異常分散領域におけるポンピングを可能にする。単一くびれ中空コア光ファイバTOF1内に入ったパルス入力放射(または、ポンプパルス)IRDは、MIが支配的な非線型光学過程を担保する「N = 23」のソリトン次数を有する高次ソリトンへと変わる。
図18(a)において見られるように、580nmの周りの分散波および1380nmの周りのソリトンの間の遅延時間は100fsより小さく、これらは依然として部分的に時間的に重複している。しかし、更に40cmの距離を伝播すると、分散波およびソリトンの間の遅延時間が300fsより大きくなる。このように大きい遅延時間は、分散波およびソリトンの間の完全な時間分離をもたらし、結果的にソリトントラッピング過程の発生を阻害する。
【0150】
図18(c)および18(d)は、単一くびれ中空コア光ファイバ内(例えば、
図17に示されるもの)で、それぞれ70cmの距離および110cmの距離を伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムである。このシミュレーションは、
図18(a)および18(b)に示されるシミュレーションにおいて使用されたものと同じ稼働パラメータに基づく。単一くびれ中空コア光ファイバTOF1は、110cmの長さを有してもよい。
図17に示されるように、くびれ領域は、ファイバの第1ファイバ面FF11から70cmの距離の直後に開始してもよく、第2ファイバ面SF11で終了してもよい。第1中空コア直径D11は30μmでもよく、テーパ勾配TG11は0.2μm/cmでもよい。この場合、先細り部TD11の端で中空コア直径(例えば、第3中空コア直径D13)が24μmまで低減される。このように低減された中空コアサイズは、中央くびれ部CW11の長さに沿って実質的に一定でもよい。
【0151】
図18(c)において見られるように、単一くびれファイバTOF1の非テーパ部UT11が
図18(a)に示されるシミュレーションにおいて使用される一様なファイバ(不図示)と同じ構造寸法(長さを除く)を有するという単純な事実のために、入力放射IRDの時間的および分光的な分布は
図18(a)に示されるものと同じである。
図18(d)では、くびれ領域の使用がソリトンを遅くし、分散波およびソリトンの間の良好な時間的オーバーラップが、第2ファイバ面SF11を介してファイバから出るまで実質的に維持されることが確認できる。良好な時間的オーバーラップは、例えば、50fsより小さい、20fsより小さい、10fsより小さい遅延時間に対応してもよい。このような良好な時間的オーバーラップは、分散波のソリトントラッピングを可能にし、
図18(b)に示されるように580nmから、
図18(d)に示されるように500nm以下への短波長エッジの更なる青方偏移をもたらす。
【0152】
図19は、一実施形態に係る、分散波のソリトントラッピングのために構成される他の異なる単一くびれ中空コア光ファイバを模式的に示す。単一くびれ中空コア光ファイバTOF2は、入力放射IRDを受け入れるための第1ファイバ面FF22と、広帯域出力放射ORDを出力するための第2ファイバ面SF22と、を備えてもよい。ファイバは、二つの部分のみ、すなわち、第1長さL21を有する非テーパ状/一様部UT22および第2長さL22を有する先細り部TD22を備えてもよい。一様部UT22は、部分の長さに沿って一定の第1中空コア直径D21を有してもよい。先細り部TD22は、部分の長さに沿ってテーパ勾配TG22で連続的および実質的に線型に減少する第2中空コア直径D22を有してもよい。先細り部TD22は、先の実施形態において定義されたようなくびれ領域またはテーパTP22を形成してもよい。
【0153】
図20(a)および20(b)は、一様な中空コア光ファイバ内で、それぞれ27cmの距離および42cmの距離を伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムである。このシミュレーション例では、一様な中空コアHC光ファイバOF(例えば、
図7に例示されるような単一のリングHC-ARF)が、42cmの長さおよび30μmのコア直径(または、15μmのコア半径)を有してもよい。位置「Pos = 27cm」は、第1ファイバ面F11から27cmの距離のファイバにおける位置に対応し、位置「Pos = 42cm」は、第2ファイバ面SF22の位置に対応する。中空コアHCは、25.7バールの圧力のクリプトンガスの作動媒体WMで満たされてもよい。パルス入力放射IRDは、280fsのポンプパルス持続時間τ、5.3μJのパルスエネルギーEp、1030nmの中心波長λを有する。パルス入力放射IRDは、第1ファイバ面FF11を介してファイバ内に受け入れられてもよく、第2ファイバ面SF11を介してファイバから出てもよい。この構成は、異常分散領域におけるポンピングを可能にする。単一くびれ中空コア光ファイバTOF2内に入ったパルス入力放射(または、ポンプパルス)IRDは、MIが支配的な非線型光学過程を担保する「N = 104」のソリトン次数を有する高次ソリトンへと変わる。
【0154】
図20(a)において見られるように、400nmの周りの分散波および1800nmの周りのソリトンの間の遅延時間は100fsより小さく、これらは依然として部分的に時間的に重複している。しかし、更に15cmの距離を伝播すると、分散波およびソリトンの間の遅延時間が500fsより大きくなる。このように大きい遅延時間は、分散波およびソリトンの間の完全な時間分離をもたらし、結果的にソリトントラッピング過程の発生を阻害する。
【0155】
図20(c)および20(d)は、単一くびれ中空コア光ファイバ内(例えば、
図19に示されるもの)で、それぞれ27cmの距離および42cmの距離を伝播した後の、入力放射のパルスの時間的および分光的な分布を記述するシミュレーションの二つのスペクトログラムである。このシミュレーションは、
図20(a)および20(b)に示されるシミュレーションにおいて使用されたものと同じ稼働パラメータに基づく。単一くびれ中空コア光ファイバTOF2は、42cmの長さを有してもよい。
図19に示されるように、くびれ領域は、ファイバの第1ファイバ面FF22から27cmの距離の直後に開始してもよく、第2ファイバ面SF22で終了してもよい。第1中空コア直径D21は30μmで一定でもよく、テーパ勾配TG22は0.5μm/cmでもよい。この場合、第2ファイバ面SF22で中空コア直径(例えば、第2ファイバ面SF22における第2中空コア直径D22)が15μmまで低減される。
【0156】
単一くびれのファイバ TOF2の非テーパ部UT22が
図20(a)に示されるシミュレーションにおいて使用される一様なファイバ(不図示)と同じ構造寸法(長さを除く)を有するという事実のために、
図20(c)に示される入力放射IRDの時間的および分光的な分布は、
図20(a)に示されるものと同じである。
図20(d)では、くびれ領域の使用がソリトンを遅くし、分散波およびソリトンの間の時間的オーバーラップが、第2ファイバ面SF22を介してファイバから出るまで実質的に維持されることが確認できる。これは、分散波が時間的およびスペクトル的にソリトンによって捕獲される状況をもたらし、
図20(b)に示されるように400nmから、
図20(d)に示されるように300nm以下への短波長エッジの更なる青方偏移をもたらす。
【0157】
いくつかの実施形態では、群速度制御メカニズムが、ラマン活性作動媒体WMを備えてもよい。ラマン活性作動媒体は、少なくとも一つのラマン活性ガスを含む充填ガスまたはガス混合物でもよい。ラマン活性ガスは、例えば、水素、重水素、窒素でもよい。前述されたように、ラマン活性作動媒体のみで、ソリトンを分散波に対して減速でき、テーパ状ファイバにおいてではなく、非テーパ中空コア光ファイバにおいて、分散波のソリトントラッピングが得られることを本発明者は認識した。いくつかの実施形態では、ラマン活性作動媒体は、分散波およびソリトンの間の時間分離を最小化し、両者の間の良好な時間的オーバーラップを担保するように構成されてもよい。良好な時間的オーバーラップは、例えば、50fsより小さい、20fsより小さい、10fsより小さい遅延時間に対応してもよい。
【0158】
異なる実施形態では、二つ以上の群速度制御メカニズムが一緒に使用されてもよい。例えば、一実施形態では、
図17または
図19に示されるテーパ状ファイバTOF1、TOF2等の単一くびれ中空コア光ファイバが、ラマン活性作動媒体で満たされてもよい。この場合、ファイバのくびれ領域およびラマン活性作動媒体(例えば、少なくとも一つのラマン活性ガスを含む充填ガスまたはガス混合物)は、分散波およびソリトンの間の時間分離が最小化され、ソリトントラッピング過程が維持されるという両方の影響を入力放射IRDに対して及ぼすように構成されてもよい。
【0159】
なお、前述された分散波のソリトントラッピングのために構成される単一くびれ中空コア光ファイバTOF1、TOF2は、非限定的な例である。二つ以上のくびれ領域を有する他の中空コア光ファイバも、同様に適用可能である。また、単一くびれ中空コア光ファイバTOF1、TOF2の単一くびれ領域TP11、TP22は、DWGの開始をトリガーするだけでなく、ソリトントラッピング過程を有効化および維持するためにも構成および配置されうる。好ましい実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバ(例えば、
図15に示されるもの)が、第1くびれ領域がMI過程を開始するために最適化され、第2くびれ領域TP2がDWGおよびソリトントラッピング過程の両方を開始するために最適化されるように構成されてもよい。 他の好ましい実施形態では、二重くびれ中空コア光ファイバがラマン活性充填ガスで満たされてもよい。ラマン活性充填ガスの使用は、ソリトントラッピング過程の最適化に関する追加的な自由度を加えうる。他の実施形態では、一または複数の群速度制御メカニズム(例えば、テーパ中空コア光ファイバおよび/またはラマン活性充填ガス)が、滑らかなスペクトルプロファイルおよび延ばされた短波長エッジを有する広帯域出力放射の生成のために構成される単一くびれまたは二重くびれの中空コア光ファイバ(例えば、
図11(a)、
図11(b)、
図15に示されるもの)に適用されてもよい。
【0160】
図21は、ここで開示される方法およびフローの実施を支援しうるコンピュータシステム2100を例示するブロック図である。コンピュータシステム2100は、バス2002または情報を通信するための他の通信メカニズム、情報を処理するためにバス2002に接続されるプロセッサ2104(または、複数のプロセッサ2104および2105)を含む。コンピュータシステム2100は、情報およびプロセッサ2104によって実行される命令を格納するためにバス2002に接続される、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的ストレージデバイス等のメインメモリ2106も含む。メインメモリ2106は、プロセッサ2104によって実行される命令の実行中の一時的な変数または他の中間の情報を格納するために使用されてもよい。コンピュータシステム2100は、静的な情報およびプロセッサ2104のための命令を格納するためにバス2002に接続されるリードオンリーメモリ(ROM)2108または他の静的ストレージデバイスを更に含む。磁気ディスクまたは光学ディスク等のストレージデバイス2110も提供され、情報および命令を格納するためにバス2002に接続される。
【0161】
コンピュータシステム2100は、バス2002を介して、コンピュータのユーザに対して情報を表示するためのブラウン管(CRT)またはフラットパネルまたはタッチパネルディスプレイ等のディスプレイ2112に接続されてもよい。アルファベット/数字および他のキーを含む入力デバイス2014が、情報およびコマンド選択をプロセッサ2104に通信するためにバス2002に接続される。他のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ2104に通信するため、および、ディスプレイ2112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、カーソル方向キー等のカーソル制御2116である。この入力デバイスは、典型的に、第1軸(例えば、x)および第2軸(例えば、y)の二つの軸における二つの自由度を有し、デバイスが面における位置を指定できるようにする。タッチパネル(スクリーン)ディスプレイが入力デバイスとして使用されてもよい。
【0162】
ここで記述される方法の少なくともいずれかは、メインメモリ2106に含まれる一または複数の命令の一または複数のシーケンスを実行するプロセッサ2104に応じて、コンピュータシステム2100によって実行されてもよい。このような命令は、ストレージデバイス2110等の他のコンピュータ読取可能媒体からメインメモリ2106に読み込まれてもよい。メインメモリ2106に含まれる命令のシーケンスの実行は、ここで記述される処理ステップをプロセッサ2104に実行させる。マルチプロセッサ構成における一または複数のプロセッサが、メインメモリ2106に含まれる命令のシーケンスを実行するために利用されてもよい。代替的な実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに、または、ソフトウェア命令と組み合わされて、ハードウェア実装回路が使用されてもよい。このように、ここでの記述は、ハードウェア回路およびソフトウェアのいずれの具体的な組合せにも限定されない。
【0163】
「コンピュータ読取可能媒体」の用語は、実行のためにプロセッサ2104に命令を提供することに関与する任意の媒体を表す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体を含むが、それらに限定されない多くの形態を取りうる。不揮発性媒体は、例えば、ストレージデバイス2110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ2106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス2002を構成するワイヤを含む同軸ケーブル、銅線および光ファイバを含む。伝送媒体は、高周波(RF)および赤外線(IR)によるデータ通信中に生成される音または光の波等の形態も取れる。コンピュータ読取可能媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、ホールパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、後述されるような搬送波、またはコンピュータが読み取り可能な任意の他の媒体を含む。
【0164】
各種の形態のコンピュータ読取可能媒体は、一または複数の命令の一または複数のシーケンスを、実行のためにプロセッサ2104に搬送することに関与してもよい。例えば、命令は、最初は遠隔のコンピュータの磁気ディスク上に保持されていてもよい。遠隔のコンピュータは、その動的メモリに命令をロードでき、モデムを使用して電話線上で命令を送信できる。コンピュータシステム2100のローカルモデムは、電話線上のデータを受信でき、赤外線送信器を使用してデータを赤外線信号に変換できる。バス2002に接続される赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信でき、バス2002上にデータを送信できる。バス2002は、データをメインメモリ2106に伝送し、そこからプロセッサ2104が命令を取得および実行する。メインメモリ2106によって受け取られた命令は、オプションで、プロセッサ2104による実行の前または後にストレージデバイス2110上に格納されてもよい。
【0165】
コンピュータシステム2100は、好ましくはバス2002に接続される通信インターフェース2118も含む。通信インターフェース2118は、ローカルネットワーク2122に接続されるネットワークリンク2120との双方向データ通信接続を提供する。例えば、通信インターフェース2118は、対応するタイプの電話線とのデータ通信接続を提供するためのサービス総合デジタル網(ISDN)カードまたはモデムでもよい。他の例として、通信インターフェース2118は、互換性のあるLANとのデータ通信接続を提供するためのローカルエリアネットワーク(LAN)カードでもよい。無線リンクが実装されてもよい。任意のこのような実装では、通信インターフェース2118が、各種の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気、電磁気または光学信号を送信および受信する。
【0166】
ネットワークリンク2120は、典型的に一または複数のネットワークを通じた他のデータデバイスへのデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク2120は、ローカルネットワーク2122を通じたホストコンピュータ2124またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)2126によって運用されるデータ設備への接続を提供してもよい。ISP2126は、今日では一般的に「インターネット」2128と表される全世界パケットデータ通信ネットワークを通じてデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク2122およびインターネット2128は共に、デジタルデータストリームを搬送する電気、電磁気または光学信号を使用する。コンピュータシステム2100への/からのデジタルデータを搬送する各種のネットワークを通る信号、ネットワークリンク2120上および通信インターフェース2118を通る信号は、搬送波伝送情報の例示的な形態である。
【0167】
コンピュータシステム2100は、ネットワーク、ネットワークリンク2120、通信インターフェース2118を通じて、メッセージを送り、プログラムコードを含むデータを受け取ってもよい。インターネットの例では、インターネット2128、ISP2126、ローカルネットワーク2122、通信インターフェース2118を通じて、サーバ2030がアプリケーションプログラムについて要求されたコードを送信してもよい。一つのこのようなダウンロードされたアプリケーションは、例えば、ここで記述される一または複数の技術を提供してもよい。受け取られたコードは、それを受け取ったプロセッサ2104によって実行されてもよいし、および/または、後の実行のためにストレージデバイス2110や他の不揮発性ストレージに格納されてもよい。このように、コンピュータシステム2100は、アプリケーションコードを搬送波の形で取得してもよい。
【0168】
更なる実施形態が、番号が付された項目の以下のリストにおいて開示される:
1.ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスであって、
一または複数の主部と、当該一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの構造パラメータを有する少なくとも一つの構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備え、
前記少なくとも一つの構造変化部は、前記HC-PCFの長さに沿った位置の下流に配置され、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によって前記ポンプ放射がスペクトル拡大される少なくとも第1構造変化部を備え、
前記少なくとも一つの構造変化部は、前記広帯域出力放射が紫外スペクトル領域における波長を備えるように構成および配置される、
広帯域光源デバイス。
2.前記少なくとも一つの構造変化部の一または複数は、それぞれ、前記HC-PCFの前記一または複数の主部に関する主内部コア直径に対して低減された内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備える、項目1に記載の広帯域光源デバイス。
3.前記少なくとも一つの直径低減部の各直径低減部は、第1方向にテーパ状である第1テーパ部を備え、
前記内部コア直径は、前記第1テーパ部の長さに亘って、前記主内部コア直径から当該主内部コア直径より小さい第2内部コア直径まで低減する、
項目2に記載の広帯域光源デバイス。
4.前記少なくとも一つの直径低減部の一または複数は、前記第1方向と反対の方向にテーパを有する第2テーパ部を備え、
前記内部コア直径は、前記第2テーパ部の長さに亘って、前記第2内部コア直径から前記主内部コア直径まで増加する、
項目3に記載の広帯域光源デバイス。
5.前記少なくとも一つの直径低減部の一または複数は、前記第1テーパ部および前記第2テーパ部の間に中央くびれ部を備え、
前記中央くびれ部は、その長さに沿って前記第2内部コア直径を有する、
項目4に記載の広帯域光源デバイス。
6.前記少なくとも一つの構造変化部の一または複数は、それぞれ、前記HC-PCFの前記一または複数の主部に対して前記HC-PCFの内側クラッディング構造の異なる構造寸法を備える、項目1から5のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
7.前記HC-PCFの前記内側クラッディング構造の前記異なる構造寸法は、異なる毛管チューブ直径である、項目6に記載の広帯域光源デバイス。
8.前記第1構造変化部の始点は、変調不安定性が支配的な非線型光学過程によって前記ポンプ放射がスペクトル拡大される、前記HC-PCFの長さに沿った位置の下流に配置される、項目1から7のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
9.前記第1構造変化部は、第2非線型光学過程を制御するように構成される、項目1から8のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
10.前記第2非線型光学過程は、分散波生成を備える、項目9に記載の広帯域光源デバイス。
11.前記少なくとも一つの構造変化部は、前記第1構造変化部の上流に配置される第2構造変化部を更に備え、
前記第2構造変化部は、前記MI(変調不安定性)が支配的な非線型光学過程を制御するように構成および配置される、
項目10に記載の広帯域光源デバイス。
12.前記第2構造変化部は、前記第2非線型光学過程が前記第1構造変化部において始まらないように構成される、項目11に記載の広帯域光源デバイス。
13.前記第2構造変化部は、前記分散波生成が前記広帯域出力放射の短波長限界を更に延ばすように構成および配置される、項目12に記載の広帯域光源デバイス。
14.共に前記MIが支配的な非線型光学過程によって生成される、少なくとも一つのソリトンおよび少なくとも一つの分散波の間の時間分離を最小化するように構成される、少なくとも一つの群速度制御メカニズムを更に備え、
前記広帯域出力放射の短波長限界が、ソリトントラッピング過程を介して更に延ばされる、
項目10から13のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
15.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成されるテーパ勾配と共に減少する内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備える、項目14に記載の広帯域光源デバイス。
16.前記少なくとも一つの直径低減部は、前記第1構造変化部内に設けられる、項目15に記載の広帯域光源デバイス。
17.前記テーパ勾配は、0.01μm/cmおよび10μm/cmの間の範囲内にある、項目15または16に記載の広帯域光源デバイス。
18.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記HC-PCFを満たすように構成され、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成される、ラマン活性ガスまたはガス混合物を備える、項目14から17のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
19.ポンプ放射を受け取った際に広帯域出力放射を生成するために構成される広帯域光源デバイスであって、
少なくとも第1構造変化部および第2構造変化部を備える中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備え、
前記第1構造変化部および前記第2構造変化部のそれぞれは、前記HC-PCFの一または複数の主部に対して変化する、少なくとも一つの前記HC-PCFの構造パラメータを有し、
前記HC-PCFの前記一または複数の主部の少なくとも一つは、前記第1構造変化部および前記第2構造変化部を分離する、
広帯域光源デバイス。
20.前記第1構造変化部および前記第2構造変化部のそれぞれは、前記HC-PCFの前記一または複数の主部に関する主内部コア直径に対して低減された内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備える、項目19に記載の広帯域光源デバイス。
21.前記少なくとも一つの直径低減部の各直径低減部は、第1方向にテーパ状である第1テーパ部を備え、
前記内部コア直径は、前記第1テーパ部の長さに亘って、前記主内部コア直径から当該主内部コア直径より小さい第2内部コア直径まで低減する、
項目20に記載の広帯域光源デバイス。
22.前記少なくとも一つの直径低減部の一または複数は、前記第1方向と反対の方向にテーパを有する第2テーパ部を備え、
前記内部コア直径は、前記第2テーパ部の長さに亘って、前記第2内部コア直径から前記主内部コア直径まで増加する、
項目21に記載の広帯域光源デバイス。
23.前記少なくとも一つの直径低減部の一または複数は、前記第1テーパ部および前記第2テーパ部の間に中央くびれ部を備え、
前記中央くびれ部は、その長さに沿って前記第2内部コア直径を有する、
項目22に記載の広帯域光源デバイス。
24.前記少なくとも一つの構造変化部の一または複数は、それぞれ、前記HC-PCFの前記一または複数の主部に対して前記HC-PCFの内側クラッディング構造の異なる構造寸法を備える、項目19から23のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
25.前記HC-PCFの前記内側クラッディング構造の前記異なる構造寸法は、異なる毛管チューブ直径である、項目24に記載の広帯域光源デバイス。
26.項目25に記載の広帯域光源デバイス。
前記第1構造変化部および前記第2構造変化部は、それぞれ、前記広帯域出力放射の生成を担う第1非線型光学過程および第2非線型光学過程を制御するために構成および配置される、請求項1に記載の広帯域光源デバイス。
27.前記第1構造変化部は、前記第2非線型光学過程が前記第1構造変化部において始まらないように構成および配置される、項目26に記載の広帯域光源デバイス。
28.前記第1非線型光学過程は変調不安定性を備え、前記第2非線型光学過程は分散波生成を備える、項目27に記載の広帯域光源デバイス。
29.前記第1構造変化部は、前記変調不安定性が前記ポンプ放射のスペクトルを拡大するように構成および配置され、前記第2構造変化部は、前記分散波生成がスペクトル拡大された前記ポンプ放射の短波長エッジを更に延ばすように構成および配置される、項目28に記載の広帯域光源デバイス。
30.共に前記MIが支配的な非線型光学過程によって生成される、少なくとも一つのソリトンおよび少なくとも一つの分散波の間の時間分離を最小化するように構成される、少なくとも一つの群速度制御メカニズムを更に備え、
前記広帯域出力放射の短波長限界が、ソリトントラッピング過程を介して更に延ばされる、
項目29に記載の広帯域光源デバイス。
31.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記少なくとも一つの直径低減部の長さに亘るテーパ勾配と共に前記主内部コア直径から減少する内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備え、
前記テーパ勾配は、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成される、
項目30に記載の広帯域光源デバイス。
32.前記少なくとも一つの直径低減部は、前記第2構造変化部内に設けられる、項目31に記載の広帯域光源デバイス。
33.前記テーパ勾配は、0.01μm/cmおよび10μm/cmの間の範囲内にある、項目31または32に記載の広帯域光源デバイス。
34.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記広帯域出力放射が生成される前記HC-PCFの中空コアを満たすように構成され、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成される、ラマン活性ガスまたはガス混合物を備える、項目30から33のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
35.前記第1構造変化部および前記第2構造変化部は、前記ポンプ放射の実質的に基本モードの伝播をサポートするように更に構成される、項目1から34のいずれかに記載の広帯域光源デバイス
36.紫外領域における波長は最小で300nmの波長を備える、項目1から35のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
37.紫外領域における波長は最小で200nmの波長を備える、項目1から36のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
38.前記広帯域出力放射は最大で2000nmの波長を備える、項目1から37のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
39.前記広帯域出力放射は最大で3000nmの波長を備える、項目1から38のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
40.少なくとも前記第1構造変化部は、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、興味のある波長範囲に亘る平均から50%より大きく変化しないように構成および配置される、項目1から39のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
41.前記興味のある波長範囲は、少なくとも400nmおよび1000nmの間の波長を含む、項目40に記載の広帯域光源デバイス。
42.前記興味のある波長範囲は、少なくとも400nmおよび2000nmの間の波長を含む、項目40に記載の広帯域光源デバイス。
43.前記興味のある波長範囲は、少なくとも200nmおよび2000nmの間の波長を含む、項目40に記載の広帯域光源デバイス。
44.少なくとも前記第1構造変化部は、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、点広がりパワースペクトル密度が前記スペクトルの点広がりパワースペクトル密度の平均の二倍より大きいピークを含まないように構成および配置される、項目1から43のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
45.前記ポンプ放射を生成するためのポンプ放射源を更に備える、項目1から44のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
46.前記ポンプ放射源は、前記ポンプ放射が1μJおよび10μJの間の範囲におけるパルスエネルギーを備えるように構成される、項目45に記載の広帯域光源デバイス。
47.前記HC-PCFは単一のリングHC-PCFである、項目1から46のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
48.前記第1構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から5cmおよび30cmの間の位置に配置される、項目19から47のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
49.前記第1構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から10cmおよび20cmの間の位置に配置される、項目19から47のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
50.前記第1構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から14cmおよび16cmの間の位置に配置される、項目19から47のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
51.前記第2構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から15cmおよび35cmの間の位置に配置される、項目19から50のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
52.前記第2構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から20cmおよび30cmの間の位置に配置される、項目19から50のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
53.前記第2構造変化部の始点は、前記HC-PCFの入力端から24cmおよび28cmの間の位置に配置される、項目19から50のいずれかに記載の広帯域光源デバイス。
54.項目1から53のいずれかに記載の広帯域光源デバイスを備える、計測デバイス。
55.散乱計測装置、レベルセンサまたはアライメントセンサを備える、項目54に記載の計測デバイス。
56.紫外領域における波長を備える入力放射による励起に続いて、広帯域出力放射が中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)から生成されるように、当該HC-PCFの長さに沿った少なくとも第1構造変化部の位置を最適化する方法であって、
変調不安定性が支配的な非線型光学過程によって前記ポンプ放射がスペクトル拡大される、前記HC-PCFの長さに沿った位置を決定することと、
決定された前記位置の下流に前記第1構造変化部を配置することと、
を備える方法。
57.前記配置ステップは、前記第1構造変化部の始点の位置を最適化する、項目56に記載の方法。
58.前記決定ステップは、前記HC-PCF内における前記広帯域出力放射の生成過程のシミュレーションによって実行される、項目56または57に記載の方法。
59.前記決定ステップは、
a)構造変化部を備えない中空コア光ファイバの長さからの出力スペクトルおよびパワー出力を測定することと、
b)短縮長さを得るために、この中空コア光ファイバの長さを前記入力端に近い点で切ることと、
c)前記変調不安定性が支配的な非線型光学過程が起こったことが測定された前記出力スペクトルによって確認されるまで、各短縮長さに対してステップa)およびb)を繰り返すことと、
によって実行される項目56から58のいずれかに記載の方法。
60.前記配置ステップは、最小で300nmの波長を備える前記広帯域出力放射をもたらす、項目56から59のいずれかに記載の方法。
61.前記配置ステップは、最小で200nmの波長を備える前記広帯域出力放射をもたらす、項目56から59のいずれかに記載の方法。
62.前記配置ステップは、最大で2000nmの波長を備える前記広帯域出力放射をもたらす、項目56から61のいずれかに記載の方法。
63.前記配置ステップは、最大で3000nmの波長を備える前記広帯域出力放射をもたらす、項目56から61のいずれかに記載の方法。
64.前記配置ステップでは、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、興味のある波長範囲に亘る平均から50%より大きく変化しない、項目56から63のいずれかに記載の方法。
65.前記興味のある波長範囲は、少なくとも400nmおよび1000nmの間の波長を含む、項目64に記載の方法。
66.前記興味のある波長範囲は、少なくとも400nmおよび2000nmの間の波長を含む、項目64に記載の方法。
67.前記興味のある波長範囲は、少なくとも200nmおよび2000nmの間の波長を含む、項目64に記載の方法。
68.少なくとも前記配置ステップでは、前記広帯域出力放射のスペクトルの点広がりパワースペクトル密度が、点広がりパワースペクトル密度が前記スペクトルの点広がりパワースペクトル密度の平均の二倍より大きいピークを含まない、項目56から67のいずれかに記載の方法。
69.前記最適化は、前記入力放射の位置およびエネルギーを共最適化することを備える、項目56から68のいずれかに記載の方法。
70.前記配置ステップは、第2非線型光学過程を制御するために前記第1構造変化部を最適化する、項目56から69のいずれかに記載の方法。
71.前記最適化ステップは、前記HC-PCFの長さに沿った第2構造変化部の位置を最適化することを備える、項目56から70のいずれかに記載の方法。
72.前記第2位置を最適化することは、前記MIが支配的な非線型光学過程を制御するために前記第2構造変化部の位置を最適化することを備える、項目71に記載の方法。
73.前記最適化ステップは、前記第2非線型光学過程が前記第1構造変化部において始まらないように、前記第1構造変化部の位置および前記第2構造変化部の位置を最適化することを備える、項目72に記載の方法。
74.前記分散波生成が前記広帯域出力放射の短波長限界を更に延ばすように、前記第2構造変化部の位置を最適化することを備える、項目73に記載の方法。
75.前記第2非線型光学過程は分散波生成を備える、項目70から74のいずれかに記載の方法。
76.前記最適化は、共に前記MIが支配的な非線型光学過程によって生成される、少なくとも一つのソリトンおよび少なくとも一つの分散波の間の時間分離を最小化するための、少なくとも一つの群速度制御メカニズムを適用することを更に備え、
前記広帯域出力放射の短波長限界が、ソリトントラッピング過程を介して更に延ばされる、
項目56から75のいずれかに記載の方法。
77.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成されるテーパ勾配と共に減少する内部コア直径を備える少なくとも一つの直径低減部を備える、項目76に記載の方法。
78.前記少なくとも一つの直径低減部は、前記第1構造変化部内に設けられる、項目77に記載の方法。
79.前記テーパ勾配は、0.01μm/cmおよび10μm/cmの間の範囲内にある、項目77または78に記載の方法。
80.前記少なくとも一つの群速度制御メカニズムは、前記広帯域出力放射が生成される前記HC-PCFの中空コアを満たすように構成され、前記少なくとも一つのソリトンを前記少なくとも一つの分散波に対して減速し、これらの時間分離を最小化するように構成される、ラマン活性ガスまたはガス混合物を備える、項目76から79のいずれかに記載の方法。
【0169】
本記述において、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用への具体的な参照がなされたかもしれないが、ここで記述されるリソグラフィ装置は他の用途を有してもよいと理解されるべきである。可能な他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造を含む。
【0170】
本記述において、リソグラフィ装置の文脈における発明の実施形態への具体的な参照がなされたかもしれないが、発明の実施形態は他の装置において使用されてもよい。発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、ウェーハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)等のオブジェクトを測定または処理する任意の装置の一部を構成してもよい。これらの装置は、一般的にリソグラフィツールと表されてもよい。このようなリソグラフィツールは、真空条件または大気(非真空)条件を使用してもよい。
【0171】
光学リソグラフィの文脈において発明の実施形態の使用への具体的な参照がなされたかもしれないが、文脈が許す限り、発明は光学リソグラフィに限定されず、例えばインプリントリソグラフィ等の他の用途において使用されてもよいと理解される。
【0172】
具体的な発明の実施形態が前述されたが、発明は記述されたものと異なる態様で実施されてもよいと理解される。以上の記述は、例示を目的としており、限定する趣旨ではない。従って、以下の請求項の範囲から逸脱することなく、記述された発明に変更が加えられてもよいことは、当業者にとって明らかである。
【国際調査報告】