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特表2023-553359共振器、線形加速器構成、およびトロイダル共振器を有するイオン注入システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】共振器、線形加速器構成、およびトロイダル共振器を有するイオン注入システム
(51)【国際特許分類】
   H05H 9/00 20060101AFI20231214BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20231214BHJP
   H01J 37/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H05H9/00 B
H01J37/317 Z
H01J37/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532312
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 US2021057412
(87)【国際公開番号】W WO2022119674
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】17/108,747
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, チャールズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ポール ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラニク, デーヴィッド ティー.
【テーマコード(参考)】
2G085
5C101
【Fターム(参考)】
2G085AA03
2G085BA05
2G085BC04
2G085EA08
5C101AA25
5C101BB07
5C101EE28
5C101EE63
5C101EE65
5C101EE68
(57)【要約】
装置は、イオンビームを伝導するように構成されたドリフト管アセンブリを含み得る。ドリフト管アセンブリは、第1の接地電極と、第1の接地電極の下流に配設されたRFドリフト管アセンブリと、RFドリフト管アセンブリの下流に配設された第2の接地電極とを含み得る。RFドリフト管アセンブリは三重間隙構成を画定し得る。本装置は共振器を含み得、共振器は、RFドリフト管アセンブリの第1のRFドリフト管に接続された第1の端部と、RFドリフト管アセンブリの第2のRFドリフト管に接続された第2の端部とを有するトロイダルコイルを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを伝導するように構成されたドリフト管アセンブリであって、
前記ドリフト管アセンブリは、
第1の接地電極と、
前記第1の接地電極の下流に配設され、三重間隙構成を画定するRFドリフト管アセンブリと、
前記RFドリフト管アセンブリの下流に配設された第2の接地電極とを備える、ドリフト管アセンブリと、
共振器であって、前記共振器がトロイダルコイルを備え、前記トロイダルコイルが、前記RFドリフト管アセンブリの第1のRFドリフト管に接続された第1の端部と、前記RFドリフト管アセンブリの第2のRFドリフト管に接続された第2の端部とを有する共振器と
を備える、装置。
【請求項2】
前記トロイダルコイルが第1のハーフと第2のハーフとを有し、前記第1のハーフが、前記第2のハーフの巻きの第2の数に等しい第1の数の巻きを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トロイダルコイルが楕円形断面を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記トロイダルコイルがD字形断面を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記トロイダルコイルが、一定の管径を有する導電性の管を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記トロイダルコイルが、均一でない管径を有する導電性の管を備え、前記トロイダルコイルの外側面に沿って配設された外管径が第1の寸法を有し、前記トロイダルコイルの内側面に沿って配設された内管径が、前記第1の寸法よりも小さい第2の寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記共振器がチューナーをさらに備え、前記チューナーが、それぞれ前記トロイダルコイルの第1の側面および前記トロイダルコイルの第2の側面に沿った第1の部分および第2の部分に配設されたチューナー本体を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トロイダルコイルの内側に配設されたエキサイタコイルをさらに備え、前記エキサイタコイルが、接地に接続された第1の脚と、rf電力アセンブリに結合された第2の脚とを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
イオンビームを生成するためのイオン源と、
前記イオンビームを移送し、加速する線形加速器であって、前記線形加速器が複数の加速段を備え、前記複数の加速段のうちの所与の加速段は、
RF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリと、
前記イオンビームを伝導するように構成され、前記RF電力アセンブリに結合され、ドリフト管アセンブリが三重間隙構成を画定する、ドリフト管アセンブリと、
を備える線形加速器と、
共振器であって、前記共振器がトロイダルコイルを備え、前記トロイダルコイルが、前記ドリフト管アセンブリの第1のRFドリフト管に接続された第1の端部と、前記ドリフト管アセンブリの第2のRFドリフト管に接続された第2の端部とを有する共振器と
を備える、イオン注入機。
【請求項10】
前記トロイダルコイルが第1のハーフと第2のハーフとを有し、前記第1のハーフが、前記第2のハーフの巻きの第2の数に等しい第1の数の巻きを備える、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項11】
前記トロイダルコイルが楕円形断面を画定する、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項12】
前記トロイダルコイルがD字形断面を画定する、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項13】
前記トロイダルコイルが、一定の管径を有する導電性の管を備える、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項14】
前記トロイダルコイルが、均一でない管径を有する導電性の管を備え、前記トロイダルコイルの外側面に沿って配設された外管径が第1の寸法を有し、前記トロイダルコイルの内側面に沿って配設された内管径が、前記第1の寸法よりも小さい第2の寸法を有する、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項15】
前記共振器がチューナーをさらに備え、前記チューナーが、それぞれ前記トロイダルコイルの第1の側面および前記トロイダルコイルの第2の側面に沿った第1の部分および第2の部分に配設されたチューナー本体を備える、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項16】
前記トロイダルコイルの内側に配設されたエキサイタコイルをさらに備え、前記エキサイタコイルが、接地に接続された第1の脚と、rf電力アセンブリに結合された第2の脚とを有する、請求項9に記載のイオン注入機。
【請求項17】
線形加速器のための共振器であって、
RFエンクロージャと、
前記RFエンクロージャ内に配設されたトロイダルコイルであって、前記トロイダルコイルは、
第1の方向に巻かれた第1の複数の巻きを有する、第1のコイルを形成する第1のハーフと、
前記第1の方向に巻かれた第2の複数の巻きを有する、第2のコイルを形成する第2のハーフと
を備え、
前記第1のハーフが、前記線形加速器の第1の電極に結合するための第1の端部をさらに備え、前記第2のハーフが、前記線形加速器の第2の電極に結合するための第2の端部をさらに備える、トロイダルコイルと、
前記トロイダルコイルの内側に配設されたエキサイタコイルであって、前記エキサイタコイルが、接地に接続された第1の脚と、RF電力を受信するために結合された第2の脚とを有するエキサイタコイルと
を備える、線形加速器のための共振器。
【請求項18】
前記トロイダルコイルが楕円形断面を画定する、請求項17に記載の共振器。
【請求項19】
前記トロイダルコイルがD字形断面を画定する、請求項17に記載の共振器。
【請求項20】
前記トロイダルコイルが、均一でない管径を有する導電性の管を備え、前記トロイダルコイルの外側面に沿って配設された外管径が第1の寸法を有し、前記トロイダルコイルの内側面に沿って配設された内管径が、前記第1の寸法よりも小さい第2の寸法を有する、請求項17に記載の共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、イオン注入装置に関し、より詳細には、高エネルギービームラインイオン注入機(ion implanter)に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、イオン衝撃を介して基板中にドーパントまたは不純物を導入するプロセスである。イオン注入システムは、イオン源と、一連のビームライン構成要素とを備え得る。イオン源は、イオンがそこで生成されるチャンバを備え得る。イオン源はまた、電源と、チャンバに隣接して配設された抽出電極アセンブリとを備え得る。ビームライン構成要素は、たとえば、質量分析器と、第1の加速段または減速段と、コリメータと、第2の加速段または減速段とを含み得る。光ビームを操作するための一連の光学レンズとほぼ同様に、ビームライン構成要素は、特定の種、形状、エネルギー、および/または他の品質を有するイオンまたはイオンビームをフィルタ処理し、集束させ、操作することができる。イオンビームは、ビームライン構成要素を通り、プラテンまたはクランプ上に取り付けられた基板のほうに導かれ得る。
【0003】
約1MeVまたはより大きいイオンエネルギーを生成することが可能な注入装置は、しばしば、高エネルギーイオン注入機または高エネルギーイオン注入システムと呼ばれる。高エネルギーイオン注入機の1つのタイプは線形加速器またはLINACと呼ばれ、管として構成された一連の電極がイオンビームを伝導し、電極がそこでAC電圧信号を受信する管の連続に沿ってますます高くなるエネルギーまで加速する。知られている(RF)LINACは、13.56MHz~120MHzの間の周波数において印加されるRF電圧によって駆動される。
【0004】
知られているLINAC(簡潔の目的で、本明細書で使用するLINACという用語は、イオンビームを加速するためにRF信号を使用するRF LINACを指すことがある)では、1MeV、数MeV、またはより大きいMeVなど、ターゲットにされる最終エネルギーに達するために、イオンビームが複数の加速段において加速され得る。LINACの各連続段は、ますます高くなるエネルギーにおいてイオンビームを受信し、イオンビームをさらにより高いエネルギーまで加速し得る。
【0005】
ドリフト管(加速電極)の数に応じて、知られている加速段はいわゆる二重間隙構成またはいわゆる三重間隙構成を採用し得る。三重間隙構成の利点は、所与の加速段内に3つの加速間隙が与えられ、4×イオン充電状態×電極上に生成される最大rf電圧振幅に等しい最大増加だけ、加速されたイオンがエネルギーを増加させることが可能になることである。比較のために、同じイオン種について、2間隙構成は、イオンビームを2×イオン充電状態×加速ドリフト管上の最大rf電圧振幅の最大値まで加速し得る。したがって、所与の最大の利用可能な駆動電圧について、三重間隙構成は、二重間隙構成よりも少ない加速段を使用してイオンビームをターゲットイオンエネルギーまで加速し得る。
【0006】
所与の加速段内での三重間隙構成の使用は二重間隙構成よりも効率的な構成を提示し得るが、一部は、ドリフト管(加速電極)上の高いrf電圧を生成するために必要とされる大きい共振器構成要素により、LINACのサイズは依然として比較的長い。
【0007】
これらおよび他の考慮事項に関して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、イオンビームを伝導するように構成されたドリフト管アセンブリを含む装置が提供される。ドリフト管アセンブリは、第1の接地電極と、第1の接地電極の下流に配設されたRFドリフト管アセンブリと、RFドリフト管アセンブリの下流に配設された第2の接地電極とを含み得る。したがって、RFドリフト管アセンブリは三重間隙構成を画定し得る。本装置は、トロイダルコイル(toroidal coil)を含む共振器をも含み得、トロイダルコイルは、RFドリフト管アセンブリの第1のRFドリフト管に接続された第1の端部と、RFドリフト管アセンブリの第2のRFドリフト管に接続された第2の端部とを有する。
【0009】
別の実施形態では、イオンビームを生成するためのイオン源と、イオンビームを移送し、加速する線形加速器とを含むイオン注入機であって、線形加速器が複数の加速段を含む、イオン注入機が提供される。複数の加速段のうちの所与の加速段は、RF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリと、イオンビームを伝導するように構成され、RF電力アセンブリに結合されたドリフト管アセンブリとを含み得、ドリフト管アセンブリは三重間隙構成を画定する。所与の加速段は、トロイダルコイルを含む共振器をさらに含み得、トロイダルコイルは、ドリフト管アセンブリの第1のRFドリフト管に接続された第1の端部と、ドリフト管アセンブリの第2のRFドリフト管に接続された第2の端部とを有する。
【0010】
別の実施形態では、線形加速器のための共振器が提供される。共振器は、RFエンクロージャと、RFエンクロージャ内に配設されたトロイダルコイルとを含み得る。トロイダルコイルは、第1の方向に巻かれた第1の複数の巻き(turn)を有する、第1のコイルを形成する第1のハーフと、第1の方向に巻かれた第2の複数の巻きを有する、第2のコイルを形成する第2のハーフとを含み得る。したがって、第1のハーフは、線形加速器の第1の電極に結合するための第1の端部をさらに含み得、第2のハーフは、線形加速器の第2の電極に結合するための第2の端部をさらに含み得る。共振器は、トロイダルコイルの内側に配設されたエキサイタ(exciter)コイルをも含み得、エキサイタコイルは、接地に接続された第1の脚と、RF電力を受信するために結合された第2の脚とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態による、例示的な装置を示す図である。
図2】トロイダルコイルの実施形態の詳細な正面図を提示する図である。
図3】A~Cはそれぞれ、本開示の実施形態による、加速段についての側面図、斜視図、および正面図を示す図である。
図4A】本開示の実施形態によるエキサイタコイルを示す図である。
図4B】例示的なトロイダルコイル内の図4Aのエキサイタコイルを示す図である。
図4C】本開示の実施形態による、共振器のためのチューナーの実施形態を示す図である。
図4D図4Cのチューナー構造のための共振周波数の依存性を示す図である。
図5A】本開示の実施形態による、三重間隙構成において共振器として採用されるトロイダル共振器コイルの電気的特性を示す図である。
図5B】本開示の実施形態による、三重間隙構成において共振器として採用されるトロイダル共振器コイルの電気的特性を示す図である。
図5C】本開示の実施形態による、三重間隙構成において共振器として採用されるトロイダル共振器コイルの電気的特性を示す図である。
図5D】本開示の実施形態による、三重間隙構成において共振器として採用されるトロイダル共振器コイルの電気的特性を示す図である。
図5E】本開示の実施形態に従って構成された共振器コイルの電磁特性のシミュレーションを提示する図である。
図6】AおよびBは、本開示の異なる実施形態による、共振器として使用するためのトロイダルコイルの代替実施形態を示す図である。
図7図6Bに示されているコイル実施形態についてのコイル管径対管長の依存性を示す図である。
図8】A~Cはそれぞれ、本開示の実施形態による、トロイダルコイルについての側面図、斜視図、および正面図を示す図である。
図9】AおよびBは、本開示の異なる実施形態による、トロイダル共振器の代替構成を示す図である。
図10】本開示の実施形態による、イオン注入機装置の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面は必ずしも縮尺が一定ではない。図面は表現にすぎず、本開示の特定のパラメータを描くものではない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すものであり、したがって範囲を限定するとは考えられない。図面において、同様の番号付けは同様の要素を表す。
【0013】
次に、本開示による装置、システムおよび方法について、システムおよび方法の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、以下でより十分に説明する。システムおよび方法は、多数の異なる形態で実施され得、本明細書に記載された実施形態に限定されるとは解釈されない。代わりに、これらの実施形態は、本開示が徹底的で完全なものになり、システムおよび方法の範囲を当業者に十分に伝達するように提供される。
【0014】
「上部」、「下部」、「上側」、「下側」、「垂直」、「水平」、「横方向」、および「縦方向」などの用語は、図中に現れる半導体製造デバイスの構成要素の幾何および向きに対して、これらの構成要素およびそれらの構成部品の相対的な配置および向きについて説明するために、本明細書で使用され得る。用語は、具体的に述べられる単語、それの派生語、および同様の意味の単語を含み得る。
【0015】
本明細書で使用する際、単数形で記載され、単語「a」または「an」に続く要素または動作は、潜在的に複数の要素または動作をも含むものとして理解される。さらに、本開示の「一実施形態」への言及は、記載されている特徴をも組み込んだ追加の実施形態の存在を除外するとして解釈されるものではない。
【0016】
本明細書では、ビームラインアーキテクチャに基づく高エネルギーイオン注入システムおよび構成要素、特に、線形加速器に基づくイオン注入機の改善のための手法が提供される。簡潔のために、本明細書ではイオン注入システムを「イオン注入機」と呼ぶこともある。様々な実施形態は、線形加速器の加速段内で有効なドリフト長をフレキシブルに調整する能力を与える新規の手法を伴う。
【0017】
図1は、本開示の実施形態による、第1の構成における、例示的な装置を示す。装置100は、線形加速器においてイオンビーム104を加速するための、ドリフト管アセンブリ102と、関連付けられた共振器110とを含む、加速段を表す。以下で説明する図10に示されているように、装置100は、イオン注入機300においてイオンビーム306を加速するための線形加速器314の複数の加速段において実装され得る。
【0018】
図1の実施形態では、ドリフト管アセンブリ102は、接地されたドリフト管電極102Bと同様に標示された、上流の接地されたドリフト管と、下流の接地されたドリフト管とを含む。ドリフト管アセンブリ102は、間隙によって間を分離された、RFドリフト管電極102Aとして示されている、RFドリフト管電極のペアをさらに含む。まとめて、RFドリフト管電極102Aと接地されたドリフト管電極102Bとは三重間隙構成を画定する。
【0019】
共振器110は、トロイダルコイル114を格納し、生成されたコイルエンクロージャ静電容量によって電気発振回路を形成するためのrfエンクロージャ(缶)112を含む。トロイダルコイル114および同様の共振器コイルについて、以下の実施形態において詳細に説明する。手短に、図2はトロイダルコイル114の実施形態の詳細な正面図を提示する。本明細書で使用する際、「トロイダルコイル」という用語は、トロイド形状を画定するように相互に構成された2つの別個のコイルを指すことがあり、別個のコイルの各々は、トロイドの同様のハーフなど、トロイド形状の一部を形成し得る。
【0020】
図2に示されているように、トロイダルコイル114は複数のループまたは巻きを含む。トロイダルコイル114は、それぞれN回巻きを有する2つのハーフとして構成され、銅管など、好適な導体から構築された、2つのコイルを含む。図2に示されているように、トロイダルコイル114の各ハーフの巻きは同じ方向に巻かれる。トロイダルコイル114の上側部分において、トロイダルコイル114の2つの端部は、長さlだけ延長され、rfエンクロージャ(缶)の開口に通されて、エンクロージャにおけるさらなる一体化と、上記で説明した、2つの別個の電力供給されたRFドリフト管電極への別個の接続が可能になる。下部において、トロイダルコイル114のループは、接地された缶壁に接続される。
【0021】
トロイダルコイル114は、トロイダルコイル114の接地された脚間に対称に位置するエキサイタコイル116によって電力供給される。絶縁スリーブ118は、エキサイタコイルの電力供給された脚と、接地された缶壁との間の電気絶縁を保証する。エキサイタコイル116は、RF発生器120とインピーダンス要素122とを含む、rf回路124として示されている、RF電力アセンブリの一部としてRF電力を受信するように構成される。共振器110はチューナー130をさらに含み、チューナー130は、以下で詳述するように、容量性構造として構成され得る。
【0022】
装置100は、知られている三重間隙加速器段のソレノイド(または、らせん)コイルとは反対に、共振器110がトロイダルコイル114を介してドリフト管アセンブリ102に電圧を供給する点で、知られている三重間隙加速器段とは異なる。図5A図5Dに関してより詳細に説明するように、図1のトロイダルコイル共振器構造は、磁力線がトロイダルコイル114の内側に含まれているので、トロイダルコイル114の外側への力線の漏れが回避され、したがって共振器のrfエンクロージャ112中の誘導される渦電流が少なくなることから恩恵を受ける。
【0023】
図3A図3B、および図3Cは、それぞれ、本開示の実施形態による、加速段200についての側面図、斜視図、および正面図を示す。加速段は、イオンビームハウジング126内に三重間隙構成として構成されたドリフト管電極アセンブリ、ならびに絶縁ホルダー128を含む。加速段200は、上記で説明したトロイダルコイル114を含む共振器210をさらに含む。共振器210は、チューナー130をさらに含み、チューナー130は、それぞれトロイダルコイル114の第1の側面およびトロイダルコイル114の第2の側面に沿って、第1の部分および第2の部分に配設されたチューナー本体を備える。チューナー130の実施形態の詳細は図4Cに示されており、以下で詳細に説明する。手短に、チューナー130は、示されている直交座標系のx軸として示されている、トロイダルコイル114の主軸に沿って移動可能であり得る。x軸に沿ったチューナー130の移動は、共振器210の共振周波数が調整され得るように、共振器210によって画定された電気RLC回路の静電容量を変化させ得る。
【0024】
図4Aはエキサイタコイル(an exciter coil)116を示すが、図4Bは、本開示の実施形態による、トロイダルコイル114内に配設されたエキサイタコイル116を示す。エキサイタコイル116は、接地に接続された第1の脚(右脚)と、rf電力アセンブリに結合された第2の脚(左脚)とを有し得る。図4Aに示されているように、rf電力アセンブリに結合されたエキサイタコイル116の脚は絶縁スリーブ118によってrfエンクロージャ112から絶縁され得る。
【0025】
様々な実施形態において、エキサイタコイル116は、流体冷却のための銅管など、金属管から製造された1回巻きループである。ループ直径dは、トロイダルコイル114の短半径にほぼ等しくなるように構成され得る。角開口角θは、15度と20度との間であり得、トロイダルコイル114の接地された脚へのアーク放電を防ぐために、必要な空間分離に応じて設定される。図3Aおよび図3Bにも示されているように、エキサイタコイルとトロイダルコイルとの間の相互結合係数(mutual coupling coefficient)Mを最大にするために、エキサイタコイル平面(この場合はX-Y平面)は、トロイダルコイル114によって画定されたトロイドの方位軸上に中心を有する、そのトロイドの方位軸に直角に構成され得、トロイドハーフの最後の接地された側面ループ間の中間距離に配置され得る。
【0026】
次に図4Cを見ると、トロイダルコイル114の両側にあるように構成された、クラウン130Aとして示された、第1のハーフと第2のハーフとを含む、チューナー130の実施形態が示されている。この実施形態では、クラウン130Aは、トロイダルコイル114の形状に似たトロイダルクラウンとして構成される。十字形ホルダー130Bがハーフの各々に固定されるが、ロッド130Cにも固定される。ロッド130Cは、案内段(図示せず)上に取り付けられ、rfエンクロージャ112に通され得る。ロッド130Cは、電動の直線運動段などの機構によってrfエンクロージャ112の外側から駆動され得、電動の直線運動段はx軸に沿ってロッド130Cを平行移動させることができる。一実施形態では、チューニング範囲を最大にするために、クラウン130Aの曲率半径は、トロイダルコイル114を形成するトーラスの短半径に等しく設定され得、一実施形態では、クラウン130Aの高さhは、トロイドの短半径である2rよりもわずかに大きくなり得る。チューナー130は、トロイダルコイル~トロイダルクラウンアセンブリが、並列に接続された2つのキャパシタから形成されるシステムまたは電気回路を形成するように、接地電位に設定され得る。コイルとクラウンの間の距離が増加するにつれて、静電容量が減少するので、共振周波数が増加する。
【0027】
様々な非限定的な実施形態では、トロイダル共振器の特性は、作動共振周波数が、13.56MHzなど、好適なRF電力供給またはrf発生器動作周波数に一致するように、設計される。トロイダルコイルを収容するキャビティはRLC回路を形成するので、回路は、
=1/(2π√LC)、(1)
によって与えられる共振における値を有するある周波数fで発振し、
式中、Lはコイルのインダクタンスであり、Cはシステムの静電容量である。
【0028】
図4Dを見ると、クラウン130Aの変化する位置の関数として示されている、図4Cのチューナー構造についての共振周波数の依存性が示されている。図4Dに示されているように、50mmの平行移動の場合、方位平面(Oyz)からのx=100mmからx=150mmまで、チューナー130は、13.56MHzの所望の周波数の周りに1.5MHz超のチューニング範囲を生成する。
【0029】
図5A図5Dを見ると、本開示の実施形態による、三重間隙構成において共振器として採用されるトロイダル共振器コイルの電気的特性が示されている。図5Aには、rfサイクル中の所与の瞬間における、エキサイタコイル116を通って進むrf電流(黒い矢印で示された電流)が示されている。エキサイタコイル116の入力に印加されるrf電力はrf電流152を生成し、電流は、さらに、局所的な時間的に変化する磁界を生成する。図5Bに示されているように、エキサイタコイル116とトロイダルコイル114との間の相互結合は、磁束線154がトロイダルコイル114の体積を通って閉じることを可能にする。rf電力は、rf発生器からエキサイタコイルを通って電気発振回路まで伝達されるので、
トロイダルコイル114中の磁性エネルギー
(Bはコイル中の磁界強度であり、μは真空の透磁率)は、図の上部において、静電エネルギー
(εは真空の誘電率(dielectric permittivity)であり、Eはトロイダルコイル114終端における静電界)に周期的に変わる。RFドリフト管電極102Aにおいて生成された電圧は、RFドリフト管電極102Aと接地されたドリフト管電極102Bとの間の3つの間隙中に静電等電位線156を生成し、電界ベクトル158は図5Dに示されている。知られているように、このようにして形成された電界は、印加されたRF信号の周波数に応じて発振する。加速間隙の入口におけるパルス化されたまたは束にされたイオンビームにおけるイオン到着の正しいタイミングを適用することによって、イオンは、積電荷×rf電圧振幅の最高4倍に等しいエネルギーを獲得し得る。
【0030】
図5Eは、本開示の実施形態に従って構成された共振器コイルの電磁特性のシミュレーションを提示する。図中、B(t)は、共振器コイルにおける可変磁力線を表すが、V(t)は、共振器コイルの1つの端部に結合された第1の電力供給された電極上の可変rf電圧であり、V(t)は、共振器コイルの第2の端部に結合された第2の電力供給された電極上の可変rf電圧である。磁力線および電極上のrf電圧の時間的発達は、tを経過時間として、2πftに等しいrf位相によって記述される。磁力線は、所与の瞬間においてトロイダルコイルの体積を通過する磁束を表し得る。rfサイクルのハーフについては、磁束は、1つの方向、たとえば、時計回りに配向させられ、次の半周期については、磁束は、反時計回りに配向させられる。
【0031】
見られ得るように、磁界と電極上の電圧との間には(90度に等価な)π/2ラジアンの位相差がある。式(2)および式(3)によれば、磁性エネルギーは、静電エネルギーが最大であるときに0であり、逆もまた同様である。また、電力供給された電極上の電圧間のπラジアンの位相差があり、したがって、1つの電極上の電圧が+Vmaxであるとき、他の電極上の電圧は-Vmaxである。
【0032】
図6A図6B、および図7は、本開示の異なる実施形態による、共振器として使用するためのトロイダルコイルの代替実施形態を示す。図6Aのトロイダルコイル114Aは、(変動しない管径を意味する)一定の管径を有する導電性の管から構築され得、直径は、構成を簡単にするためにφとして示されており、トロイダルコイル114Aの内側部分における隣接する巻き間のピッチはpとして定義される。トロイダルコイル114Aを通るRF電流は、13.56MHz範囲の周波数の場合、20マイクロメートル未満程度の表皮深さまで制限され得るので、導電性管の壁の厚さは、50マイクロメートル、100マイクロメートルくらいよりも厚い必要はない。しかしながら、コイルの機械的頑丈さを与え、機械的振動を防ぐために、数mmの厚さの管壁が使用される。
【0033】
図6Bのトロイダルコイル114Bは、連続的に可変な直径を有する、導電性の管から構築され得、トロイダルコイル114Bの外側面に沿った外管径φは第1の寸法を有し、トロイダルコイル114Bの内側面に沿った内管径φ’は、第1の寸法よりも小さい第2の寸法を有する。この後者の構成の結果として、pの値が図6Aの実施形態と比較して相対的に大きくなり、その結果、トロイダルコイル114Bの隣接する巻き間の電界が相対的に小さくなる。このより低い電界は、アーク放電を回避するのを助け得る。特定の実施形態では、管がトロイダルコイル114Cの内側部分に向かって曲がるにつれて、管の直径は連続的に減少し得、その結果、トロイダルコイルの内側面位置において、管は最小直径を有するようになり、その結果、ピッチがより大きい値p’まで増加する。さらに、より大きいピッチは、より小さいループ間静電容量と、発振回路の結果として生じるより高い品質(Q)係数とを意味する。
【0034】
上述の実施形態の変形態では、トロイダルコイルの個々の巻きの形状は、円形断面など、楕円形断面によって特徴づけられ得ることに留意されたい。図7に示されているように、連続的に可変な直径の管であって、管長に沿って2πrの周期性で、コイルの最も外側の位置において最大直径dmaxを有し、最も内側の位置において最小直径dminを有する管が、図6Bに示されたコイルを構築するために使用される。
【0035】
図8A図8B、および図8Cは、それぞれ、本開示の実施形態による、トロイダルコイル114Cについての側面図、斜視図、および正面図を示す。この例では、トロイダルコイルは、D字形断面を画定するコイル巻きによって特徴づけられる。同じ主直径と、同じコイル巻き直径とを仮定すると、このD字形断面は、円形断面によって画定されたコイル巻きを有するトロイダルコイルと比較して、トロイダルコイル内の全体的体積を増加させる。
【0036】
図9Aおよび図9Bは、本開示の異なる実施形態による、トロイダル共振器の代替構成を示す。方位角半対称性により、トロイダル幾何は、異なる構成において構成されるのに汎用性が高く、この汎用性は共振器設置面積の最小化を可能にする。構成250は、(Z軸に沿った)ビーム方向が図の平面に出入りする、ハウジング212を示す。構成260も、(Z軸に沿った)ビーム方向が図の平面に出入りする、ハウジング212を示す。図示のように、共振器210のトロイダルコイルの軸はX軸に沿って整合させられている。共振器がz軸に沿って整合させられているときは、図9Aに示されている構成250が望ましい(缶共振器の高さは一般に直径よりも小さい)。反対に、共振器がz方向と方位角方向の両方に分配される場合は、図9Bに示されている構成260が望ましい。
【0037】
図10は、本開示の実施形態による、装置の概略を示す。イオン注入機300は線形加速器314を含む。イオン注入機300はビームラインイオン注入機を表し得るが、いくつかの要素は説明の明快のために図示されていない。イオン注入機300は、当技術分野で知られているように、イオン源302とガスボックス307とを含み得る。イオン源302は、第1のエネルギーにおいてイオンビーム306を生成するための抽出構成要素とフィルタ(図示せず)とを含む抽出システムを含み得る。第1のイオンエネルギーの好適なイオンエネルギーの例は5keVから300keVまで及ぶが、実施形態はこのコンテキストにおいて限定されない。高エネルギーイオンビームを形成するために、イオン注入機300は、イオンビーム306を加速するための様々な追加の構成要素を含む。
【0038】
イオン注入機300は、図示のように、イオンビーム306の軌跡を変更することによって、知られている装置の場合のように、イオンビーム306を分析するように機能する分析器310を含み得る。イオン注入機300はまた、バンチャー312と、バンチャー312の下流に配設された(一点鎖線で示された)線形加速器314とを含み得、線形加速器314は、線形加速器314に入る前に、イオンビーム306のイオンエネルギーよりも大きい高エネルギーイオンビーム315を形成するために、イオンビーム306を加速するように構成される。バンチャー312は、イオンビーム306を連続イオンビームとして受信し、イオンビーム306を束になったイオンビームとして線形加速器314に出力し得る。線形加速器314は、図示のように、直列に構成された共振器110によって表される複数の加速段を含み得る。様々な実施形態において、高エネルギーイオンビーム315のイオンエネルギーはイオンビーム306のための最終イオンエネルギーまたは近似的に最終イオンエネルギーを表し得る。様々な実施形態において、イオン注入機300は、フィルタ磁石316、スキャナ318、コリメータ320など、追加の構成要素を含み得、スキャナ318およびコリメータ320の一般的な機能はよく知られており、ここではさらに詳細には説明しない。したがって、高エネルギーイオンビーム315によって表される高エネルギーイオンビームが、基板324を処理するためのエンドステーション322に供給され得る。高エネルギーイオンビーム315のための非限定的なエネルギー範囲は500keV~10MeVを含み、イオンビーム306のイオンエネルギーは線形加速器314の様々な加速段を通して段階的に増加する。本開示の様々な実施形態によれば、線形加速器314の加速段は共振器110によって電力供給され、共振器110の設計は図1図9Bの実施形態に従い得る。
【0039】
上記に鑑みて、本開示は、少なくとも以下の利点を与える。1つの利点については、本実施形態のトロイダルコイル共振器を使用して、より小さい共振器設置面積が実現され得、したがって、知られているLINACベースイオン注入機と比較してより小さいLINAC設置面積が実現され得る。本実施形態は、さらに、ソレノイドタイプの共振器と比較して発振回路のクオリティファクタQがより高いという利点を与える。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態について本明細書で説明したが、本開示は、当該技術が可能にするのと同じくらい範囲が広く、本明細書は同様に読まれ得るので、本開示はそれに限定されない。したがって、上記説明は限定的であるとは解釈されない。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲および趣旨内で他の改変を想定するであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】