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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ガスを用いた自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/148 20060101AFI20231218BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61M5/148 500
A61M5/20 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536865
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021086127
(87)【国際公開番号】W WO2022129300
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20315496.8
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ラムゼイ・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ダスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ティミス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD02
4C066EE03
4C066FF04
4C066FF05
4C066LL13
(57)【要約】
本発明は、自動注射器(100)であって、- 外部に対して気密であるハウジング(170)と、- 流体を有する流体リザーバ(110)であって、可撓性材料を含む流体リザーバ(110)と、- ガスを含むかまたはガスに変換できる第1の物質を収容するように構成された少なくとも1つの第1のセクションを含む、容器(140)とを含み、●容器(140)は、異なる2つの状態、●少なくとも第1の物質が第1のセクションに収容されるように第1のセクションが封止されている、第1の状態と、●少なくとも第1の物質が第1のセクションからハウジング(170)中に解放されて、ハウジング(170)内のガス圧力の上昇を引き起こし、その圧力上昇が流体リザーバ(110)に作用して、流体リザーバ(110)内の流体が流体リザーバ(110)を通って自動注射器(100)の出口(230)に向かってかつ出口(230)を通って動く、第2の状態とをとるように構成されている、自動注射器(100)に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注射器(100)であって、
外部に対して気密であるハウジング(170)と、
流体を有する流体リザーバ(110)であって、可撓性材料を含む流体リザーバ(110)と、
ガスを含むかまたはガスに変換できる第1の物質を収容するように構成された少なくとも1つの第1のセクションを含む、容器(140)と
を含み、
該容器(140)は、異なる2つの状態、
少なくとも第1の物質が第1のセクションに収容されるように該第1のセクションが封止されている、第1の状態と、
少なくとも第1の物質が第1のセクションからハウジング(170)中に解放されて、該ハウジング(170)内のガス圧力の上昇を引き起こし、その圧力上昇が流体リザーバ(110)に作用して、該流体リザーバ(110)内の流体が流体リザーバ(110)を通って自動注射器(100)の出口(230)に向かってかつ出口(230)を通って動く、第2の状態と
をとるように構成されている、前記自動注射器。
【請求項2】
容器(140)は、ガスに変換できる第2の物質を収容するように構成された第2のセクションを含み、第1のセクションと第2のセクションとは、分離部材によって分離されており、分離部材が開かれると、ガスに変換できる物質を含む第1の物質が第2の物質と混ざり、ガスを発生させるようになっている、請求項1に記載の自動注射器。
【請求項3】
容器(140)はガス封止部(130)を含み、該ガス封止部は、第1および/または第2のセクションを封止し、第1の状態から第2の状態に切り替わるときに開かれる、請求項1または2に記載の自動注射器。
【請求項4】
長手方向軸(y)に沿って第1のトリガ位置から第2のトリガ位置に可動である、トリガ(300)を含み、
第1のトリガ位置では、トリガ(300)はガス封止部(130)から分離されており、
第2のトリガ位置では、トリガ(300)はガス封止部(130)と機械的に接触し、それによりガス封止部(130)を開き、その結果、ガスが容器(140)からハウジング(170)中に解放可能になり、それによりハウジング(170)内のガスの圧力を上昇させて、その結果、流体リザーバ(110)が圧搾され、流体リザーバ(110)内の流体が出口(230)に動かされる、請求項3に記載の自動注射器。
【請求項5】
トリガばね(260)を含み、該トリガばねは、トリガ(300)が第1の位置から第2の位置に動くときにトリガがトリガばね(260)を第1の位置から第2の位置に動かすように、トリガ(300)に機械的に連結されている、請求項4に記載の自動注射器。
【請求項6】
トリガ(300)はハウジング(170)に組み込まれている、請求項4または5に記載の自動注射器。
【請求項7】
トリガ(300)は、ガス封止部(130)を開くように構成された要素(310)を含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項8】
トリガ封止部(180)を含み、該トリガ封止部は、ハウジング(170)とトリガ(300)との間のインターフェースを封止して、ハウジング(170)が気密になるように働く、請求項4から7のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項9】
分離部材は、自動注射器の組立て中またはツールによって開かれるように構成されている、請求項2に記載の自動注射器。
【請求項10】
送達チューブ(150)を含み、該送達チューブは、流体リザーバ(110)と流体連絡するように構成されており、また出口(230)と流体連絡するように構成されており、その結果、流体リザーバ(110)の流体が流体リザーバから送達チューブ(150)を通って出口(230)に可動になる、請求項1~9のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項11】
出口インターフェース(270)を含み、該出口インターフェースは、長手方向軸(y)に対して第1のインターフェース位置から第2のインターフェース位置に可動であり、出口(230)と流体連絡しており、
第1のインターフェース位置では、出口インターフェース(270)は、送達チューブ(150)と流体連絡しておらず、
第2のインターフェース位置では、出口インターフェース(270)は、送達チューブ(150)と流体連絡している、請求項4または10に記載の自動注射器。
【請求項12】
出口は、長手方向軸(y)に沿って第1の針位置から第2の針位置に可動である針(230)を含み、
第1の針位置では、針(230)は、ハウジング(170)に完全に収容されており、
第2の針位置では、針(230)の少なくとも一部分は、ハウジング封止部(250)を通して動かされている、請求項1~11のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項13】
ハウジング(170)は、長手方向軸(y)に沿って延びる高さよりも直径が大きいベースを有する形状を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の自動注射器(100)。
【請求項14】
流体リザーバ(110)は薬剤または薬物を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の自動注射器(100)。
【請求項15】
単回用量を供給するための、使い捨てまたは単回使用のデバイスである、請求項1~14のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項16】
流体リザーバ(110)は、円弧に沿ってハウジング(170)のベース(175)に配置されており、
容器(140)は、ハウジング(170)内に配置され、流体リザーバ(110)によって周方向に少なくとも部分的に囲まれている、請求項1~15のいずれか1項に記載の自動注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の薬物送達デバイスでは、カートリッジ、シリンジ、またはアンプルに収容された薬物をデバイスから投薬するために、薬物送達デバイスのハウジングに単一の駆動機構を収納でき、その駆動機構を複数のカートリッジ、シリンジ、またはアンプルと併せて使用する。
【0003】
しかし、この種のデバイスは、カートリッジまたはシリンジを収納するように設計されており、それらが剛体の構成要素であるため、それらの構成要素の形状のため、デバイスの全体的な形状が、シリンジ、カートリッジ、またはアンプルに適用されている。そのことは、通常、デバイスのフォームファクタにとって決定要因になるかまたは少なくとも制約要因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一目的は、代替的な自動注射器を提供することである。その目的は、本開示によって、特に、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態および改良は従属請求項に従う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、自動注射器であって、外部に対して気密であるハウジングと、流体を有する流体リザーバであって、可撓性材料を含む流体リザーバとを含む、自動注射器に関する。ハウジングはさらに、ガスを含むかまたはガスに変換できる第1の物質を収容するように構成された少なくとも1つの第1のセクションを含む、容器を含む。その容器は、異なる2つの状態、少なくとも第1の物質が第1のセクションに収容されるように第1のセクションが封止されている、第1の状態と、少なくとも第1の物質が第1のセクションからハウジング中に解放されて、ハウジング内のガス圧力の上昇を引き起こし、その圧力上昇が流体リザーバに作用して、流体リザーバ内の流体が流体リザーバを通って自動注射器の出口に向かってかつその出口を通って動く、第2の状態とをとるように構成されている。このように、出口に向かう流体の動きは、自動注射器のハウジング内のガス圧力の上昇によってトリガされる。そのとき、ハウジング内のガス圧力の上昇は、容器の第1の状態から第2の状態への変化がトリガする。
【0006】
第1の物質は、加圧ガス、または高い蒸気圧を有する液化ガスでよく、液化ガスは、ある温度、たとえば室温でガスに変化する。
【0007】
可撓性の流体リザーバを使用することは、ある程度はリザーバの形状を選択する自由があるという利点を有する。たとえば、シリンジとは異なる形状を有することができる。
【0008】
一実施形態において、流体リザーバは、長手方向軸の周りで周方向に配置されており、リザーバは円弧に沿って向けられている。一実施形態において、リザーバは、パウチまたは別の中空形状の本体を含み、それを通して流体を動かすように構成されている。パウチは潰れ可能とすることができる。
【0009】
可撓性のリザーバを採用することは、具体的には壊れやすく破損の恐れのあるガラスシリンジと比べて、頑強性が改善されるという利点を有する。さらに、封止の必要がある開口部をリザーバが注射側に1つしか含まないので、薬物の完全性が改善され、汚染のリスクが低下される。シリンジを有する自動注射器では、たとえば、さらにストッパ側を封止しなければならない。
【0010】
別の利点は、デバイスの形態に合わせてリザーバを調節できるので、操作性の利益を伴う異なる形態に対応できることである。そのコンパクト性および整合性によって充填済みシリンジ(PFS:pre-filled syringe)公差が大きくなることを避けて、注射のばらつきを低減させる。具体的には、リザーバには、ガラスの代わりに、ガラスに比べて高い正確さで製造できるプラスチックを採用することが可能である。さらに、ストッパが必要とされないので、失速するリスクが低く、ストッパの摩擦がない。リザーバは、たとえば、空気があればそれをなくす真空充填または容器を閉じる前の蒸気パージによって充填できる。真空充填の場合、パウチは、(たとえば真空によって)引き離すことができ、これがパウチ内に真空を生み出す。これは、連結された容器からパウチに液体を引っ張る。
【0011】
一実施形態において、リザーバは先細部分を含み、その先細部分は、リザーバと送達チューブとを連結する。先細部分は、流体が送達チューブに押し込まれ、リザーバから解放されない流体の量が最小限に低減されることを保証する。
【0012】
一実施形態において、容器はガスベッセルを含み、そのガスベッセルは、長手方向軸がその主軸である、中空の筒セグメントの形状を有し、その周囲に長手方向軸に沿った切欠きを有する。このような形状は、筒の内壁の径方向内側に配置された利用可能かつアクセス可能な空間をさらなる構成要素を配置するために使用でき、そのため、デバイスの全体的なサイズを小さく維持できるという利点を有する。
【0013】
一実施形態において、容器は、ガスに変換できる第2の物質を収容するように構成された第2のセクションを含み、第1のセクションと第2のセクションとは、分離部材によって分離されており、分離部材が開かれると、ガスに変換できる物質を含む第1の物質が第2の物質と混ざり、ガスを発生させるようになっている。第1の物質は液体でも固体でもよい。同様に、第2の物質は液体でも固体でもよい。第1および第2の物質を混合できることと、それらが混合されるとガスが発生することを保証する必要がある。たとえば、第1の物質はクエン酸でよく、第2の物質は重炭酸ナトリウムでよい。
【0014】
液化ガスは蒸気圧を含むことができ、そのため、ある温度、たとえば室温で、流体は沸騰し、少なくとも部分的にガスに変化する。
【0015】
一実施形態において、容器はガス封止部を含み、そのガス封止部は、第1および/または第2のセクションを封止し、第1の状態から第2の状態に切り替わるときに開かれる。ガス封止部は、プラスチック材料または溶着金属の蓋を含むことができる。本開示による封止部は、ベッセルと比べてより簡単に開くことができ、そのため、ガスが流出してハウジング内の圧力を上昇させることができるという利点を有する。
【0016】
一実施形態において、分離部材は、自動注射器の組立て中またはツールによって開かれるように構成されている。好ましくは、分離部材は、ガス封止部が開かれる前に開かれ、そのため、ガス封止部が開かれたときにはガスが既に発生しており、ガスがハウジング中に解放される。
【0017】
一実施形態において、自動注射器は、長手方向軸に沿って第1のトリガ位置から第2のトリガ位置に可動である、トリガを含み、
- 第1のトリガ位置では、トリガはガス封止部から分離されており、
- 第2のトリガ位置では、トリガはガス封止部と機械的に接触し、それによりガス封止部を開き、その結果、ガスが容器からハウジング中に解放可能になり、それによりハウジング内のガス圧力を上昇させて、その結果、流体リザーバが圧搾され、流体リザーバ内の流体が出口に動かされる。トリガは、第1の位置から第2の位置にユーザ、具体的には患者によって押すことができる。このように、ユーザは、ハウジング内のガス圧力が上昇するとき、およびその後流体が出口に動かされるときを決定することができる。
【0018】
一実施形態において、自動注射器はトリガ封止部を含み、そのトリガ封止部は、ハウジングがガス封止されるようにハウジングとトリガとの間に配置されている。封止部は、トリガが第1の位置から第2の位置に動く間もハウジングがガス封止されたままになることを保証する。
【0019】
一実施形態において、自動注射器はトリガばねを含み、そのトリガばねは、トリガが第1の位置から第2の位置に動くときにトリガがトリガばねを第1の位置から第2の位置に動かすように、トリガに機械的に連結されている。
【0020】
トリガばねは、トリガが第1の位置から第2の位置に動くときにトリガがトリガばねを伸長状態から圧縮状態に動かし、それによりトリガばねの力に抗して作用するように、長手方向軸に沿って伸長可能かつ圧縮可能でよい。
【0021】
トリガばねは、トリガが押されない限り、トリガをハウジングの外面に位置合わせし、連続的なハウジング外面をもたらすその開始位置にトリガが保持されることを保証する。そのときに、トリガを第1の位置から第2の位置に動かすためには、トリガばねに抗する何らかの力が必要である。
【0022】
トリガばねは、圧力ばね、圧縮ばね、ねじりばね、または引張ばねを含むことができる。トリガばねは金属を含むことができる。
【0023】
一実施形態において、自動注射器は送達チューブを含み、その送達チューブは、流体リザーバと流体連絡するように構成されており、また出口と流体連絡するように構成されており、その結果、流体リザーバからの流体が流体リザーバから送達チューブを通って出口に可動になる。これは、送達チューブとして可撓性が高いことが所定の方向に流体の流れを案内できることを保証する。送達チューブは、エラストマーなどの可撓性材料またはプラストマーもしくは薄い金属などの硬質材料を含むことができる。
【0024】
一実施形態において、自動注射器は出口インターフェースを含み、その出口インターフェースは、長手方向軸に対して第1のインターフェース位置から第2のインターフェース位置に可動であり、出口と流体連絡している。第1のインターフェース位置では、出口インターフェースは、送達チューブと流体連絡しておらず、第2のインターフェース位置では、出口インターフェースは、送達チューブと流体連絡している。出口インターフェースを動かすことによって、流体リザーバと出口との間に流体連絡が確立されているかどうかを制御できる。こうした流体連絡は、封止部が開くようにトリガが押され、ガスがハウジング内の圧力を上昇させる場合にのみ確立される。
【0025】
一実施形態において、自動注射器はインターフェースばねを含み、そのインターフェースばねは、出口インターフェースに機械的に連結されている。
【0026】
インターフェースばねは、第1のチューブ位置にある場合よりも第2のチューブ位置にあるときにより圧縮されるように、長手方向軸に沿って伸長可能かつ圧縮可能とすることができる。これは、圧力によって出口インターフェースがインターフェースばねの力に抗して、ハウジングのベースに向かって流体リザーバと流体連絡している位置まで動かない限り、出口インターフェースが流体連絡しないことを保証する。
【0027】
一実施形態において、出口は、長手方向軸に沿って第1の針位置から第2の針位置に可動であり針を含み、第1の針位置では、針は、ハウジングに完全に収容されており、第2の針位置では、針の少なくとも一部分は、長手方向軸の周りでハウジングに配置されたハウジング封止部を通して動かされている。
【0028】
一実施形態において、ハウジングの外面の一部分がトリガを含むように、トリガはハウジングに組み込まれている。このように、注射プロセスを開始する機能はハウジングに組み込まれている。
【0029】
一実施形態において、ハウジングは、長手方向軸に沿って延びる高さよりも直径が大きいベースを有する形状を有することができる。一実施形態において、その形状は、筒、具体的には、縁部の丸い筒を含む。
【0030】
一実施形態において、流体リザーバは薬剤または薬物を含む。
【0031】
一実施形態において、自動注射器は、単回用量を供給するための、使い捨てまたは単回使用のデバイスである。
【0032】
一実施形態において、流体リザーバは、円弧に沿ってハウジングのベースに配置されている。流体リザーバは、本質的にトーラスセグメントの形状を有することができる。たとえば、流体リザーバは、円弧に沿って少なくとも180°または少なくとも200°または少なくとも270°延びる。たとえば、流体リザーバは、長手方向軸の周りで周方向に少なくとも部分的に配置される。長手方向軸は、円弧の円の中心を通って延びることができる。
【0033】
一実施形態において、容器は、ハウジング内に配置されている。容器は、流体リザーバによって周方向に少なくとも部分的に囲まれるように配置することができる。たとえば、長手方向軸が容器を通って延びるか、または容器が径方向において長手方向軸と流体リザーバとの間に配置される。
【0034】
容器は、側面が中空の筒形状を有することができる。したがって、容器の内部は、径方向では容器の対向する2つの壁によって範囲が限定され、それらの壁は、半径の異なる筒の側面形状を有する。
【0035】
容器は、トリガばねおよび/または出口インターフェースおよび/または針を周方向に囲むことができる。容器は、径方向において、流体リザーバと、それぞれトリガばねまたは出口インターフェースまたは針との間に配置することができる。
【0036】
ここで、添付の図面を参照しながら単なる例として実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】自動注射器の上面断面斜視図を示す。
図2】自動注射器の側面断面図を示す。
図3】ハウジング封止部を示す。
図4A】ボタンの上面斜視図を示す。
図4B】ボタンを3D側面図に示す。
図5】一般的な冷媒に関する蒸気圧に対する温度の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図および以下の説明の全体を通して同じ参照番号は同じ構成に該当する。
【0039】
図1は、自動注射器の上面断面斜視図を示す。円形の断面形状を有するハウジング170およびベース175が示されている。もちろん、他の形状が可能である。
【0040】
ハウジング170内では、パウチ110が、円要素の断面に配置された長手方向軸yの周りでベース175に配置されている。パウチ110は、流体材料、たとえば液体薬剤または薬剤製剤を収容する。パウチ110の一方の終端部は、針230と流体連絡している。その終端部は先細部分120を含み、その先細部分120は、送達チューブ150と流体連絡している。送達チューブ150は、針230と流体連絡するように構成されている。送達チューブ150と先細部分120とを連結する付加的なスパウト160を設けることができる。スパウト160は、パウチ110と送達チューブ150との間の連結を有効にする。スパウト160は、パウチ110とは異なる材料特性を有する。たとえば、ハウジング170内のパウチ110のアライメントがスパウト160の位置および向きに基づくようにより硬い。
【0041】
長手方向軸yの周りにガスベッセル140が配置されている。ガスベッセル140は、ハウジング内で、径方向においてパウチ110と長手方向軸yとの間に配置されており、断面が円弧を含むように中空の筒セグメントの形状を有する。中空の筒セグメントは、内壁および外壁を含み、それらは加圧ガスが収容される空所を形成する。開口部も長手方向軸yに沿って軸方向に延びる。ガスベッセル140はガス封止部130を含み、ガス封止部130は、中空の筒セグメントの一方の終端部に、その断面領域をカバーするように配置されている。その終端部は、長手方向軸yに対してベース175にある終端部の反対側にあってよい。ガス封止部130は、プラスチック材料または溶着金属の蓋を含むことができる。ガス封止部130は、円弧の断面全体をカバーすることができる。中空の筒セグメントの内壁に沿って長手方向軸yの周りにボタンばね260が配置されており、そのボタンばね260は、長手方向軸yに沿って伸長可能かつ圧縮可能であり、ボタン300に機械的に連結されている(ここでは図示せず、たとえば図2参照)。
【0042】
ガスベッセル140は、圧力が40~60バール、特に50バールのガスを収容できる、ポリマーベッセル、たとえばフルオロポリマーを含むことができる。ベッセルは、0.5~1.5ml、特に1ml程度の非常に小さいサイズを含むことができる。
【0043】
さらに、長手方向軸yの周りにニードルキャリア190が配置されている。ニードルキャリア190は、ガスベッセル140に対して径方向内側に配置されている。ニードルキャリア190には針230が取り付けられている。送達チューブ150は、先細部分120に傾斜して配置され、長手方向軸yに向けられており、それによりガスベッセル140の円弧の開放部分を通って、ハウジング170の内面に対向するガスベッセル140の外面から、ガスベッセル140の内面によって区切られた領域に至る。内面および外面は反対方向を向くことができる。ガスは、内面と外面との間に画成された空間に保持することができる。
【0044】
図2は、自動注射器100の側面断面図を示す。保持部分210が、長手方向軸yの周りに配置されており、筒状部分を含む。保持部分210は、ハウジング170のベース175に固定されている。ニードルキャリア190は保持部分210の筒状部分の内側に配置されている。ハウジング170には、ボタン300が配置されており、ボタン300は、長手方向軸yに沿ってガスベッセル140のガス封止部130、保持部分210、およびニードルキャリア190に向かって可動である。保持部分210とガスベッセル140とは、長手方向軸yの周りを延びるブリッジ290によって機械的に連結されている。ボタンばね260は、径方向において、保持部分210とガスベッセル140の中空の筒セグメントの内壁との間に配置されている。ボタンばね260は、長手方向軸yに沿ってブリッジ290とボタン230との間で伸長可能かつ圧縮可能である。トリガばねは、圧力ばね、圧縮ばね、ねじりばね、または引張ばねを含むことができる。トリガばねは金属を含むことができる。
【0045】
保持部分210はさらに、チューブインターフェース280を含み、そのチューブインターフェース280は送達チューブ150と流体連結している。チューブインターフェース280は、軸方向においてブリッジ290とベース175との間に配置されている。ニードルキャリア190の径方向外側には、ニードルキャリア封止部220が配置されており、ニードルキャリア封止部220は、保持部分210の径方向内側と接触している。
【0046】
ニードルキャリア190はニードルチューブ270を含み、そのニードルチューブ270は送達チューブ150に流体連結可能である。針230は、ニードルキャリア190に機械的に固定されており、ニードルチューブ270と流体連絡している。
【0047】
ニードルチューブ270も針230と流体連絡しており、針230は、長手方向軸yに沿って配置されている。
【0048】
チューブばね240が、保持部分210の筒状部分の内側で長手方向軸yに対してニードルキャリア190とハウジング170のベースとの間に軸方向に配置されている。チューブばね240は、長手方向軸yに沿って伸長可能かつ圧縮可能である。
【0049】
ボタン300は、穿孔スパイク310を少なくとも1つ含み、その穿孔スパイク310は、ガス封止部130に向かってハウジング170の内側に向けられている。1つまたはそれ以上の穿孔スパイク310の代わりにまたはそれに加えて、ボタン300は、ガス封止部130を開くように構成された他の鋭利な要素を含むことができる。ハウジング170は、互いに接合される2つの部材を含むことができる。その場合、ハウジングは、たとえば接着またははんだ付けによって2つの部材が互いに接合される位置に、付加的な封止部材200を含むことができる。封止部材200は、2つの部材が互いに接合される領域に、全体的な安定性を向上させる厚さの大きい領域を含むことができる。ボタン300は、ボタンばね260の力に抗して長手方向軸yに沿ってハウジング170内で可動である。ボタン封止部180が、軸方向においてハウジング170とボタン300との間に配置されており、ボタン300が長手方向軸yに沿って動くときにもハウジング170が外部に対して気密のままであることを保証する。ハウジング170は、ガス封止部130に不具合があったとしても気密のままであるように設計する必要がある。ハウジング170のベース175では、ハウジング封止部250が長手方向軸yの周りに配置されている。
【0050】
以下で自動注射器100の機能を説明する。
【0051】
ユーザは、軸方向において、ボタン300を長手方向軸yに沿ってハウジング170に向かう方向に押すことができる。動く間のある時点で、穿孔スパイク310はガス封止部130を壊し、そのため、加圧ガスがガスベッセル140から流出できる。ガスは、外部に対して気密のハウジング170内で分散する。ハウジング170内の全体的なガス圧力が上昇する。これがパウチ110の圧搾を引き起こし、そのため、パウチ110内の流体が先細部分120を通して動かされて、送達チューブ150を通ってチューブインターフェース280に至る。
【0052】
ハウジング170内のガス圧力の上昇によって、ニードルキャリア190は長手方向軸yに沿ってハウジング170のベース175に向かって押される。ニードルキャリア190と一緒に、ニードルチューブ270および針230がベース175に向かって動く。ニードルキャリア190がベース175に向かう方向にそれ以上動くことができなくなるときに、ニードルチューブ270とチューブインターフェース280とは、それらが流体連絡するように位置合わせされる。チューブインターフェース280は、ニードルチューブ270と同じ断面を含む。そのとき、送達チューブ150を通って動く流体は、チューブインターフェース280を通して動かされて、ニードルチューブ270を通って針230に至る。やはりニードルキャリア190と一緒に下向きに動かされた針230は、注射のためにハウジング封止部250を通ってハウジング170の外に部分的に前進している。
【0053】
ハウジング170の内部容積がパウチ110の容積よりも大きいので、流体に向かう駆動圧力は、注射の過程全体で比較的一定である。
【0054】
ガスは、低圧から中圧のCO(57バールを超える圧力で、凝縮して液体になり、飽和混合物として働く)、N、空気、または亜酸化窒素を含むことができる。ガスは、無毒性、不燃性、かつ低コストで利用可能であるべきである。
【0055】
パウチ110は2つ以上の材料から構成することができ、それらの材料は、化学的および/または機械的要件に従ってその内側および外側に特に適用可能でよい。たとえば、パウチ110の外側に関しては、ガスベッセル140内のガスとの化学反応に関与せず、ガスベッセル140の流出するガスによってパウチ110に加えられる圧力に対して機械的に安定している材料が必要とされる。パウチ110の内側に関しては、パウチ110に収容された流体との化学反応に関与しない材料が必要とされる。
【0056】
別の実施形態(ここでは図示せず)では、ガスベッセルの代わりに容器140が用いられ、その容器140は2つのセクションを含み、それらのセクションはそれぞれ、混合されたときにガスを発生させる液体または固体の物質を収容する。それらのセクションは分離部材によって分離されている。分離部材が開かれると、物質が混合し、それによりガスを発生させる。ガスが容器140からハウジング170中に解放されると、ガスがパウチ110に作用する。加圧ガスは先に記載したようにパウチ110の圧搾を引き起こす。混合されてガスを発生できる例示的な物質は、重炭酸ナトリウムおよびクエン酸であり:好ましくは、安全な生成物を生成する無毒性の反応物質が使用され、生成されるガスはCOである。流体の選択基準は、反応物質および生成物とのパウチの化学的適合性、一定の反応速度(粒子サイズの影響を受ける)を実現するための反応物質および生成物の温度依存性、無毒性であること、および有意に発熱性でも吸熱性でもないことでよい。
【0057】
図3は、円形の形状を有するハウジング封止部250を示す。中央に針孔330が示されており、針230は注射動作中にそこを通って前進できる。さらに、窓320が示されており、たとえば、その窓320を通して、不鮮明な領域または色の薄い領域に対して薬物を視覚的にチェックするために、注射プロセスを追跡するために、および全用量が送達されたことを視覚的に確認するために、注射の前にその完全性に関して容器を視覚的に見ることができる。
【0058】
図4Aは、ボタン300およびそれが一体化されるハウジング170の部材の上面斜視図を示す。ボタン300は、円形の形状を有するが、矩形または正方形など、別の形状を有してもよい。
【0059】
図4Bはボタン300を3D側面図に示す。ボタン300は、筒形に形成されたフレームを含み、その内側に穿孔スパイクが配置されている。
【0060】
別の実施形態(ここでは図示せず)では、ガスベッセルの代わりに容器140が用いられており、その容器140は、一定の温度に到達すると容器140内にガスが発生するように高い蒸気圧を有する液体を収容するように構成されている。図5は、本実施形態で使用できるR134a、R32、R402A、またはR404Aなどの一般的な冷媒に関して、蒸気圧に対する温度の図を示す。一定の温度でガスになるそれらの冷媒を容器140に収容できる。それらは、必要な駆動圧力に近い蒸気圧を有するべきである。容器140はガス封止部130を含む。そのときに、図2に示されているようにガス封止部130を開くことによって、ガスを容器140からハウジング170中に解放できる。本実施形態では、ガスの例としては、R134aなどの冷媒、高圧のCO、またはプロパンもしくはブタンなどのアルカンがある。ガスの選択基準は、室温などのデバイスが使用される温度における蒸気圧、温度に対する蒸気圧の感度、拡散性(分子サイズに関係する)でよい。
【0061】
デバイスは、10~40mmの高さ、特に、15~30mmの高さを有することができる。デバイスのベースは、45~90mmの直径、特に、50~70mmの直径を有することができる。具体的には、デバイスの高さは、シリンジを含む典型的な自動注射器と比べて3分の1未満の大きさにできる。そのことは、皮膚からデバイスがトリガされる位置までの距離がずっと小さくなるため、患者のようなユーザにとって有利である。
【0062】
保護の範囲は、本明細書で先に与えた例に限定されるものではない。本明細書に開示されている本発明はいずれも、新規の各特徴および特徴の各組合せにおいて具現化され、それらは、特に、特許請求の範囲に記載されている任意の構成のあらゆる組合せを、その構成またはその構成の組合せが特許請求の範囲または実施例に明示的に示されていないとしても含む。
【0063】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0064】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0065】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0066】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0067】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0068】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0069】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0070】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0071】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0072】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0073】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0074】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0075】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0076】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0077】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0078】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0079】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0080】
本発明の全範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載されているAPIの様々な成分、処方、装置、方法、システムおよび実施形態の修正(追加および/または省略)を行うことができ、本発明がこのような修正およびそのあらゆる等価物を包含することを当業者は理解するであろう。
【0081】
本特許出願は、欧州特許出願第20315496.8の優先権を主張するものであり、その開示内容を参照によって本明細書に組み入れる。
【符号の説明】
【0082】
100 自動注射器
110 パウチ
120 先細部分
130 ガス封止部
140 ガスベッセル
150 送達チューブ
160 スパウト
170 ハウジング
175 ベース
180 ボタン封止部
190 ニードルキャリア
200 封止部材
210 保持部分
220 ニードルキャリア封止部
230 針
240 チューブばね
250 ハウジング封止部
260 ボタンばね
270 ニードルチューブ
280 チューブインターフェース
290 ブリッジ
300 ボタン
310 穿孔スパイク
320 窓
330 針孔
y 長手方向軸
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】