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特表2023-553697グリピカン-3およびT細胞受容体を標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】グリピカン-3およびT細胞受容体を標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20231218BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231218BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231218BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536866
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021086559
(87)【国際公開番号】W WO2022129560
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,224
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20306633.7
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・ブトン
(72)【発明者】
【氏名】エヴリーヌ・ドンブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ブラム・ラウケンス
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ミオニ
(72)【発明者】
【氏名】リリー・パオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ペイプ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ショット
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・セルイス
(72)【発明者】
【氏名】アナ・ポーラ・ヴィンテム
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン・ファン・フーリック
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、がんに罹っている対象を処置するための新規のタイプの薬物を提供することを目的とする。具体的には、本技術は、1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)がTCRに結合し、少なくとも2つのISVDがGPC3に結合することを特徴とする少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドを提供する。本技術はまた、核酸、ベクターおよび組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、
少なくとも3つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかまたは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかまたは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
b)第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかまたは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかまたは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
vii.配列番号8のアミノ酸配列であるかまたは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号12のアミノ酸配列であるかまたは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDの順番は、前記ポリペプチドのN末端からC末端への方向で考えられるそれらの互いに対する相対的な位置を示し、第1のISVDは、場合により、前記ポリペプチドのN末端に配置されている、
ポリペプチド。
【請求項2】
a)前記第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)前記第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)前記第3のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
a)前記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し;
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈する、
請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
a)前記第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり;
b)前記第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり;
c)前記第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
第1のISVDおよび第2のISVDは、10未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸からなるリンカーを介して互いに連結されており、リンカーは最も好ましくは5GSリンカーである、
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の結合単位は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンのような)または血清免疫グロブリン(IgGのような)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、請求項6または7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合するISVDである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列であるかまたは配列番号9と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列であるかまたは配列番号13と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、請求項9または10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%を超える配列同一性を呈する、請求項9~11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列からなる、請求項9~12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドは、配列番号1と90%を超える配列同一性を呈するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
GPC3と特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、
を含む、ポリペプチド。
【請求項17】
少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3、または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3、
を含む、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
少なくとも1つのISVDのアミノ酸配列は:
a)配列番号3と90%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列、または
b)配列番号4と90%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むかまたはそれからなる、
請求項16または17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号3のアミノ酸配列、または
b)配列番号4のアミノ酸配列
を含むかまたはそれからなる、
請求項16~18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、
少なくとも2つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1および第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
b)第1および第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
c)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
iv.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
d)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
e)第1のISVDは、T細胞上のT細胞受容体(TCR)の定常ドメインに特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
f)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
g)第1のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
iv.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むか、または
h)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDの順番は、前記ポリペプチドのN末端からC末端への方向で考えられるそれらの互いに対する相対的な位置を示す、
ポリペプチド。
【請求項21】
a)第1および第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
b)第1および第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
c)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
d)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
e)第1のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
f)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
g)第1のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含むか、または
h)第1のISVDは、GPC3に特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
a)GPC3に特異的に結合する第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
b)GPC3に特異的に結合する第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、
c)GPC3に特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、
d)GPC3に特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
e)T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
f)GPC3に特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、
g)T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈するか、または
h)GPC3に特異的に結合する第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈する、
請求項20または21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
a)GPC3に特異的に結合する第1および第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
b)GPC3に特異的に結合する第1および第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、
c)GPC3に特異的に結合する第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、
d)GPC3に特異的に結合する第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
e)T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
f)GPC3に特異的に結合する第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、
g)T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなるか、または
h)GPC3に特異的に結合する第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなる、
請求項20~22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
ポリペプチドは、配列番号1、49~72、および78~81から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項20~23のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する、請求項16~24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる低分子量タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、請求項25に記載のポリペプチド。
【請求項27】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の結合単位は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンのような)または血清免疫グロブリン(IgGのような)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、請求項25または26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合するISVDである、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項29】
ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列であるかまたは配列番号9と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列であるかまたは配列番号13と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、請求項28に記載のポリペプチド。
【請求項30】
ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、請求項28または29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%を超える配列同一性を呈する、請求項28~30のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列からなる、請求項28~31のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項34】
請求項33に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【請求項35】
請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチドを生産するための方法であって、少なくとも:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中で、または別の好適な発現系中で、請求項33に記載の核酸を発現させる工程;場合により、それに続いて:
b)請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む、方法。
【請求項36】
請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、または請求項33に記載の核酸を含む、組成物。
【請求項37】
少なくとも1種の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/もしくはアジュバントをさらに含み、場合により、1種またはそれ以上のさらなる医薬的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
医薬としての使用のための、請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項36もしくは37に記載の組成物。
【請求項39】
がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんの処置における使用のための、請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項36もしくは37に記載の組成物。
【請求項40】
肝臓がんは肝細胞癌である、請求項39に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項41】
がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんを処置する方法であって、
医薬的に活性な量の、請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項36もしくは37に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項42】
肝臓がんは肝細胞癌である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
医薬の調製における、請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項36もしくは37に記載の組成物の使用。
【請求項44】
がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんを処置するための医薬組成物の調製における、請求項1~32のいずれか1項に記載の、好ましくは請求項1~15のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項36もしくは37に記載の組成物の使用。
【請求項45】
肝臓がんは肝細胞癌である、請求項44に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
1 本技術の分野
本技術は、グリピカン-3(GPC3)およびT細胞受容体(TCR)を標的化するポリペプチドに関する。本技術はまた、ポリペプチドをコードする核酸分子および核酸を含むベクター、ならびにポリペプチド、核酸またはベクターを含む組成物にも関する。本技術はさらに、がん細胞または感染細胞のような異常細胞が関与する疾患に罹っている対象を処置する方法における使用のためのこれらの製品に関する。さらに、本技術は、これらの製品を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2 技術背景
細胞傷害性T細胞(CTL)は、がん細胞、(特にウイルスに)感染した細胞、または、他の方法で損傷された細胞を死滅させるTリンパ球である。Tリンパ球(T細胞とも呼ばれる)は、その細胞表面上に、T細胞受容体(TCR)およびCD3受容体を発現する。αβ TCR-CD3複合体(または「TCR複合体」)は、異なる6種のI型1回貫通型膜貫通タンパク質:リガンド認識を担うTCRヘテロ二量体を形成するTCRα鎖およびTCRβ鎖、ならびに、非共有結合で会合したCD3γ、CD3δ、CD3εおよびζの各鎖で構成されるが、これらの鎖は、受容体活性化時にリン酸化されるチロシンである細胞質配列モチーフを保有し、多数のシグナル伝達成分を動員する(非特許文献1)。
【0003】
ヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)のαおよびβの両鎖は、定常ドメインおよび可変ドメインとからなる。T細胞は、自己MHC分子によって提示される同族ペプチドのTCR認識に際して活性化され、この場合、チロシンリン酸化CD3複合体によってシグナル伝達が開始され、その結果、T細胞増殖および分化がもたらされる。
【0004】
一方のアーム上に腫瘍認識部分を有し(標的結合アーム)、一方、分子の他方のアームがT細胞抗原に対する特異性を有する(エフェクター結合アーム)、多くの場合CD3であるが、二重特異性抗体が操作されてきた。こういった二重特異性抗体は、いわゆるT細胞エンゲージャー(TCE)であるが、悪性細胞に対する患者の免疫応答を増強する多標的分子である。多重特異性抗体によるT細胞と腫瘍細胞の共会合により、T細胞と腫瘍細胞の間に細胞溶解性シナプスの形成がもたらされ、このことがT細胞の活性化を誘導し、腫瘍細胞死滅をもたらす。
【0005】
T細胞活性化二重特異性抗体の大部分はT細胞上のCD3複合体を標的とするが、αβ T細胞受容体の定常ドメインを標的とするいくつかの二重特異性バインダーが特許文献1に記載されている。
【0006】
グリピカン-3(GPC3)は、ヘパラン硫酸GAG鎖およびコアタンパク質からなるGPIアンカー細胞表面糖タンパク質である。それは、細胞増殖および分化を制御して、胚形成および初期発生に関係あるとされてきた。GPC3の発現は発生過程で高いが、正常な成人組織ではその発現はほぼ存在しないが、腎近位尿細管および気管支細胞においては中度の/低い発現がある。初期発生におけるその役割と一致して、高レベルのGPC3も胎盤で発現する。
【0007】
GPC3は、Wnt、HhおよびYAPの各経路を含めて、複数のシグナル伝達カスケードを介して初期発生を制御している可能性が高い。加えて、GPC3は、FGF2などの基本的な増殖因子と相互作用して細胞増殖を調節することができる。実験設定において、GPC3の過剰発現により、FGF2誘導性の細胞増殖を阻害することができる。対照的に、GPC3はまた、阻害性増殖因子であるBMP7を負に調節する。まとめると、GPC3の活性は、細胞増殖を阻害することができるだけではなく、肝臓のがんおよびその他の形態のがんの発癌を促進する可能性もあるので、高度に前後関係に左右される可能性がある。
【0008】
GPC3の発現は、重要なアンメットニーズがある疾患、肝細胞癌(HCC)由来の腫瘍組織でとりわけ広く見られる。可溶性GPC3は、HCC患者の血清中にも検出される場合もあり、異なる病因論がある肝疾患と区別するために使用されてきた。
【0009】
二重特異性抗体構築物が複数の様式で提唱されている。例えば、二重特異性抗体様式は、2つの抗体の化学的コンジュゲーションまたはそれらの断片を含んでいてもよい(非特許文献2;非特許文献3)。
【0010】
しかしながら、このような二重特異性抗体様式の不利益は、高分子量および高濃度での高い粘性を含み、それにより例えば皮下投与は難しくなり、特異的および高い親和性結合のために、各結合単位が2つの可変ドメインの相互作用を必要とするという点で、ポリペプチドの安定性および生産効率への影響を有する。このような二重特異性抗体様式はまた、劣った生産効率および低力価ならびに/または軽鎖の誤対合もしくは重鎖の誤対合に関するCMCの問題を引き起こす可能性が潜在的にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2016/180969A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Callら、2004、Molecular Immunology 40:1295~1305頁
【非特許文献2】Brennan,Mら、Science、1985.229(4708):81~83頁
【非特許文献3】Glennie,M.J.ら、J Immunol、1987.139(7):2367~2375頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、細胞傷害性応答を誘導するのに十分な親和性で標的細胞とT細胞の両方に結合する抗体構築物のニーズがある。同時に、このような構築物は、非標的細胞に対して、すなわち標的抗原を発現しないかまたは低レベルでしか標的抗原を発現しない細胞に対して、細胞傷害性応答を誘導するものであってはならない。これにより、効能と安全性のバランスをとることができる。さらに、このような構築物が、例えば微生物宿主内で効率的に生成することができることが望ましい。このような構築物は、処置しようとする対象において、連続する処置間にうまく間隔をあけることができるように十分長い半減期を呈示することも理想的には必要である。さらに、このような構築物の反応性を、処置しようとする対象において、既存の抗体に限定することが望ましい(すなわち、抗体構築物での第1の処置の前に対象に存在する抗体)。さらに、ポリペプチドは、例えば、非標的細胞に対する細胞傷害活性によって引き起こされる、望ましくない副作用を全く発揮しないか、またはそれを最小限しか発揮しないことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
3 本発明の要約
本発明者らは、GPC3およびTCRを同時に特異的に標的とするポリペプチドが、インビトロでGPC3発現細胞の効率的なT細胞媒介性死滅をもたらすことを見出した。前記ポリペプチドは、効率的に生産することができた(例えば微生物宿主で)。さらに、このようなポリペプチドは、処置しようとする対象において、既存の抗体(すなわち、抗体構築物での第1の処置の前に対象に存在する抗体)には限定的な反応性を呈することを示すことができた。好ましい実施形態において、このようなポリペプチドは、処置しようとする対象において、連続する処置間にうまく間隔をあけることができるように十分長い半減期を呈示する。さらに、このようなポリペプチドは、GPC3を全く発現しないかまたは低レベルのそれを発現する細胞に対しては限定的な活性のみを示した。このことは、GPC3陽性がん標的細胞に対して高度に特異的なT細胞媒介性細胞傷害性応答を誘導できる可能性を示唆するが、一方、良好な安全性プロファイルを呈する。
【0015】
一態様において、ペプチドは、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなり、少なくとも2つのISVDがGPC3に特異的に結合し、1つのISVDがT細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する。好ましくは、GPC3に特異的に結合する少なくとも2つのISVDはヒトGPC3に特異的に結合し、TCRに特異的に結合するISVDはヒトTCRに特異的に結合する。より好ましくは、GPC3に特異的に結合する少なくとも2つのISVDは、別個のISVDである。別の態様において、少なくとも3つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドは、好ましくは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する。例えば、結合単位は、血清タンパク質に、好ましくはヒト血清アルブミンのようなヒト血清タンパク質に結合するISVDであり得る。
【0016】
一態様において、本技術は、GPC3に特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなるポリペプチドを提供する。さらなる実施形態において、本技術のポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなり、2つのISVDは、場合により、ペプチド性リンカーを介して連結されている。好ましくは、GPC3に特異的に結合する2つのISVDは、別個のISVDである。さらに、ポリペプチドは、好ましくは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する。例えば、結合単位は、血清タンパク質に、好ましくはヒト血清アルブミンのようなヒト血清タンパク質に結合するISVDであり得る。
【0017】
別の態様において、本技術のポリペプチドは、T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合するISVD、およびGPC3に特異的に結合する少なくとも1つのISVDを含むかまたはそれからなり、2つのISVDは場合によりペプチド性リンカーを介して連結されている。このようなポリペプチドを使用して、GPC3を発現する細胞の死滅にT細胞を向けなおすことができる。理想的には、TCRに結合するISVDは、例えばヒトT細胞に特異的に結合する前記ポリペプチドに含まれる唯一の結合部分である。さらに、実施例が示すところは、TCRに特異的に結合するISVDがそのようなポリペプチドのN末端に配置される場合、同じ抗TCR ISVDがN末端に配置されない場合と比較して、より良好なT細胞媒介性細胞傷害性が達成されること、である。したがって、TCRに特異的に結合するISVDは、GPC3に特異的に結合する少なくとも1つのISVDからN末端に配置されることが好ましい。最も好ましくは、TCRに特異的に結合するISVDは、それを含むポリペプチドのN末端に配置される。さらに、ポリペプチドは、好ましくは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する。例えば、結合単位は、血清タンパク質に、好ましくはヒト血清アルブミンのようなヒト血清タンパク質に結合するISVDであり得る。
【0018】
ポリペプチドを発現することが可能な核酸分子、核酸または核酸を含むベクター、およびポリペプチド、核酸またはベクターを含む組成物も提供される。組成物は、好ましくは医薬組成物である。
【0019】
本明細書に開示されるようなポリペプチドをコードする核酸またはベクターを含む宿主細胞または(非ヒト)宿主も提供される。
【0020】
さらに、本明細書に開示されるようなポリペプチドを生産するための方法であって、少なくとも:
a.好適な宿主細胞もしくは宿主生物中で、または別の好適な発現系中で、ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させる工程;場合により、それに続いて:
b.本技術によるポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む、方法が提供される。
【0021】
さらに、本技術は、医薬としての使用のための、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸もしくはベクターを含む組成物を提供する。好ましくは、ポリペプチドまたは組成物は、肝臓がんまたは肺がんのようながんの処置における使用のためのものである。
【0022】
加えて、がんを処置する方法であって、医薬的に活性な量の本開示によるポリペプチドまたは組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。がんは、肝臓がんまたは肺がんから選択されることが好ましい。一部の実施形態において、本方法は、1種またはそれ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む。
【0023】
さらに、がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんを処置するための医薬組成物の調製におけるポリペプチドまたは組成物の使用が提供される。
【0024】
特に、本技術は以下の実施形態を提供する:
【0025】
実施形態1.少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも3つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかまたは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかまたは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
b) 第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかまたは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかまたは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
vii.配列番号8のアミノ酸配列であるかまたは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号12のアミノ酸配列であるかまたは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDの順番は、前記ポリペプチドのN末端からC末端への方向で考えられるそれらの互いに対する相対的な位置を示し、第1のISVDは、場合により、前記ポリペプチドのN末端に配置されている、
ポリペプチド。
【0026】
実施形態2.a)前記第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)前記第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)前記第3のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、実施形態1に記載のポリペプチド。
【0027】
実施形態3.a)前記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し;
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈する、実施形態1または2のいずれかに記載のポリペプチド。
【0028】
実施形態4.a)前記第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり;
b)前記第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり;
c)前記第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなる、実施形態1~3のいずれかに記載のポリペプチド。
【0029】
実施形態5.第1のISVDおよび第2のISVDは、10未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸からなるリンカーを介して互いに連結されており、リンカーは最も好ましくは5GSリンカーである、実施形態1~4のいずれかに記載のポリペプチド。
【0030】
実施形態6.前記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する、実施形態1~5のいずれかに記載のポリペプチド。
【0031】
実施形態7.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態6に記載のポリペプチド。
【0032】
実施形態8.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の結合単位は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンのような)または血清免疫グロブリン(IgGのような)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、実施形態6または7のいずれかに記載のポリペプチド。
【0033】
実施形態9.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合するISVDである、実施形態8に記載のポリペプチド。
【0034】
実施形態10.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列であるかまたは配列番号9と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列であるかまたは配列番号13と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、実施形態9に記載のポリペプチド。
【0035】
実施形態11.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、実施形態9または10のいずれかに記載のポリペプチド。
【0036】
実施形態12.前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%を超える配列同一性を呈する、実施形態9~11のいずれかに記載のポリペプチド。
【0037】
実施形態13.前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列からなる、実施形態9~12のいずれかに記載のポリペプチド。
【0038】
実施形態14.ポリペプチドは、配列番号1と90%を超える配列同一性を呈するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態1~13のいずれかに記載のポリペプチド。
【0039】
実施形態15.ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態1~14のいずれかに記載のポリペプチド。
【0040】
実施形態16.少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、
を含む、ポリペプチド。
【0041】
実施形態17.少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3、または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3、
を含む、実施形態16に記載のポリペプチド。
【0042】
実施形態18.少なくとも1つのISVDのアミノ酸配列は:
a)配列番号3と90%を超える配列同一性、または
b)配列番号4と90%を超える配列同一性
を含む、実施形態16または17のいずれかに記載のポリペプチド。
【0043】
実施形態19.前記少なくとも1つのISVDは:
a)配列番号3のアミノ酸配列、または
b)配列番号4のアミノ酸配列
を含むかまたはそれからなる、実施形態16~18のいずれかに記載のポリペプチド。
実施形態20.少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも2つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1および第2のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
b)第1および第2のISVDは、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
c)第1のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
d)第1のISVDは、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
e)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
f)第1のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
g)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むか、または
h)第1のISVDは、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDの順番は、前記ポリペプチドのN末端からC末端への方向で考えられるそれらの互いに対する相対的な位置を示す、
ポリペプチド。
【0044】
実施形態21.a)第1および第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
b)第1および第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
c)第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
d)第1のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
e)第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
f)第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
g)第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含むか、または
h)第1のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
実施形態20に記載のポリペプチド。
【0045】
実施形態22.a)第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
b)第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、
c)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、
d)第1のISVDのアミノ酸配列は配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
e)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
f)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、
g)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号4と90%を超える同一性を呈するか、または
h)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号2と90%を超える同一性を呈する、
実施形態20または21のいずれかに記載のポリペプチド。
【0046】
実施形態23.a)第1および第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
b)第1および第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、
c)第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、
d)第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
e)第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
f)第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、
g)第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなるか、または
h)第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなる、実施形態20~22のいずれかに記載のポリペプチド。
【0047】
実施形態24.ポリペプチドは、配列番号1、49~72、および78~81から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態20~23のいずれかに記載のポリペプチド。
【0048】
実施形態25.前記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する、実施形態16~24のいずれかに記載のポリペプチド。
【0049】
実施形態26.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態25に記載のポリペプチド。
【0050】
実施形態27.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の結合単位は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンのような)または血清免疫グロブリン(IgGのような)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、実施形態25~26のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0051】
実施形態28.増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、実施形態27に記載のポリペプチド。
【0052】
実施形態29.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列であるかまたは配列番号9と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列であるかまたは配列番号13と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、実施形態28に記載のポリペプチド。
【0053】
実施形態30.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、実施形態28~29のいずれかに記載のポリペプチド。
【0054】
実施形態31.前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%を超える配列同一性を呈する、実施形態28~30のいずれかに記載のポリペプチド。
【0055】
実施形態32.前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列からなる、実施形態28~31のいずれかに記載のポリペプチド。
【0056】
実施形態33.実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0057】
実施形態34.実施形態33に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【0058】
実施形態35.実施形態1~32のいずれかにに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、少なくとも:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中で、または別の好適な発現系中で、実施形態33に記載の核酸を発現させる工程;場合により、それに続いて:
b)実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む、方法。
【0059】
実施形態36.少なくとも1つの実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態33に記載の核酸を含む組成物。
【0060】
実施形態37.少なくとも1種の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/もしくはアジュバントをさらに含み、場合により、1種またはそれ以上のさらなる医薬的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、実施形態36に記載の組成物。
【0061】
実施形態38.医薬としての使用のための、実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態36もしくは37に記載の組成物。
【0062】
実施形態39.がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんの処置における使用のための、実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態36もしくは37に記載の組成物。
【0063】
実施形態40.肝臓がんは肝細胞癌(HCC)である、実施形態39に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0064】
実施形態41.肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、好ましくは扁平上皮癌(SCC)である、実施形態39に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0065】
実施形態42.がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんを処置する方法であって、医薬的に活性な量の、実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態36もしくは37に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【0066】
実施形態43.肝臓がんは肝細胞癌である、実施形態42に記載の方法。
【0067】
実施形態44.肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、好ましくは扁平上皮癌(SCC)である、実施形態42に記載の方法。
【0068】
実施形態45.医薬の調製における、実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態36もしくは37に記載の組成物の使用。
【0069】
実施形態46.がん、好ましくは肝臓がんまたは肺がんを処置するための医薬組成物の調製における、実施形態1~32のいずれかに記載の、好ましくは実施形態1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または実施形態36もしくは37に記載の組成物の使用。
【0070】
実施形態47.肝臓がんは肝細胞癌である、実施形態46に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【0071】
実施形態48.肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、好ましくは扁平上皮癌(SCC)である、実施形態46に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC(T細胞依存性細胞傷害性)HepG2-Nuclight greenアッセイにおける、三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャーA022600027(図1A)、A022600031(図1B実線)および参照Ab1による構築物(図1B点線)の用量依存性死滅を示す図である。対照(左)は、(黒四角)化合物なし、および(黒三角)100%死滅用のBrefeldin A 1μM。
図2】播種72時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC HepG2-Nuclight greenアッセイにおける、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。図は、三重特異性3価T細胞エンゲージャー様式が抗TCR ISVDと抗GPC3 ISVDの間のリンカー長さの点で異なる場合の様式最適化の工程1を表す。対照(左)は、化合物なし(白四角)および100%死滅用の参照(白丸)である。
図3】播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC HepG2-Nuclight greenアッセイにおける、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。図は、三重特異性4価T細胞エンゲージャーの様式がバイパラトピックGPC3結合ISVDの配置およびそれらの間のリンカー長さの点で異なる場合の、様式最適化の工程2を表す。対照(左)は、化合物なし(白四角)および100%死滅用の参照(白丸)である。
図4-1】GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の工程3を示す図である。抗TCR ISVD T017000624を、3価様式および4価様式のシーケンシングされた最適化バリアントTCE01で置換した。播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC HepG2-Nuclight greenアッセイにおける(図4A)、xCELLigenceベースのヒトTDC Huh7アッセイにおける(図4B)、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅。対照(左)は、化合物なし(白四角)および100%死滅用の参照(白丸)である。
図4-2】図4-1の続き。
図5-1】播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC HepG2-Nuclight greenアッセイにおける(図5A)、xCELLigenceベースのヒトTDC Huh7アッセイにおける(図5B)、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。抗TCR ISVDの配置を抗GPC3 ISVDと変更したか、または、抗GPC3 ISVDの配置を抗アルブミンISVDと変更した場合の、GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の工程4が表されている。対照(左)は、化合物なし(白四角)および100%死滅用の参照(白丸)である。
図5-2】図5-1の続き。
図6-1】播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、IncucyteベースのヒトTDC HepG2-Nuclight greenアッセイにおける(図6A)、xCELLigenceベースのヒトTDC Huh7アッセイにおける(図6B)、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。リンカー長さを変動させる場合の、GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の工程5が表されている。対照(左)は、化合物なし(白四角)および100%死滅用の参照(白丸)である。
図6-2】図6-1の続き。
図7-1】播種60時間後に分析した、エフェクター対標的比15:1を使用する、xCELLigenceベースのヒトTDC Huh7アッセイにおける、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの細胞傷害性に対する(図7A)、ならびに、標的細胞(Huh7)の存在下(図7B)および非存在下(図7C)における三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーによるT細胞活性化に対する、可溶性GPC3(sGPC3)の影響の評価を示す図である。対照(左)は、化合物なし(白丸、図7A)およびアイソタイプ対照(白丸、図7BおよびC)である。
図7-2】図7-1の続き。
図8】37℃で、0.5時間、3時間、24時間および48時間の時点で測定された、T細胞エンゲージャー内部移行(図8A)およびGPC3発現(図8B)の時間経過を示す図である。対照(左)は、4℃での各化合物について0.5時間での測定値である。
図9-1】エフェクター対標的比15:1を使用する、GPC3の低下する発現レベルを発現する様々な腫瘍細胞株に対するxCELLigenceベースのヒトTDCアッセイにおける、三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。60時間で分析したHepG2(図9A)、75時間で分析したNCI-H661(図9B)、60時間で分析したHuh-7(図9C)、65時間で分析したMKN-45(図9D)、65時間で分析したBxPC-3(図9E)、60時間で分析した(図9F)NCI-H292。対照(左)は、(白四角)化合物なし(エフェクターおよびT細胞のみ)である。
図9-2】図9-1の続き。
図10-1】エフェクター対標的比15:1を使用し60時間で分析した、2つの腫瘍細胞株、NCI-H661(図10A)およびBxPC-3(図10B)に対するxCELLigenceベースのヒトTDCアッセイにおける、選択された5つの三重特異性GPC3 ISVDベースのT細胞エンゲージャーの用量依存性死滅を示す図である。対照(左)は、化合物なし(白四角、エフェクターおよびT細胞のみ)ならびに30nMでT017000698である(白ひし形)。
図10-2】図10-1の続き。
図11】4価(図11A)および3価(図11B)の選択されたISVDベースGPC3 T細胞エンゲージャー様式に対する96の正常ヒト血清サンプルからの既存の抗体の反応性の中央値および四分位範囲を示す図である。
図12】効能モデルの研究計画を示す図である。Huh-7腫瘍細胞をNOGマウスに皮下注射した。腫瘍は、平均腫瘍体積およそ150mmに達するまで増殖した。この時点で、インビトロで増殖させたT細胞を各マウスに腹腔内で注射した(D0)。静脈内に注射されるA022600424による処置は、T細胞注射の3時間後、0日目に開始し、3日目、6日目、9日目および12日目(q3d)に継続した。A022600424の4つの用量レベル(0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.7mg/kg、および2mg/kg)を試験した。対照T017000698を対照群に2mg/kgで0日目、3日目、6日目、9日目および12日目(q3d)に注射した。生存の血液サンプリングを、試験化合物の投与前の6日目および12日目に行った。すべてのマウスを15日目に殺処分し、血液サンプルおよび腫瘍サンプルを収集した。
図13】効能モデルの結果を示す図である。A022600424の4つの用量レベル(0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.7mg/kg、および2mg/kg)を試験した。対照T017000698を対照群に2mg/kgで注射した。
【発明を実施するための形態】
【0073】
5 本発明の詳細な説明
本技術は、肝臓がんおよび肺がんなどのがんを処置するための新規のタイプの薬物を提供することを目的とする。
【0074】
本発明者らは、GPC3およびTCRを同時に特異的に標的とするポリペプチドが、インビトロでGPC3発現細胞の効率的なT細胞媒介性死滅をもたらすことを見出した。前記ポリペプチドは、効率的に生産することができた(例えば微生物宿主で)。さらに、このようなポリペプチドは、処置しようとする対象において、既存の抗体(すなわち、抗体構築物での第1の処置の前に対象に存在する抗体)には限定的な反応性を呈することを示すことができた。好ましい実施形態において、このようなポリペプチドは、処置しようとする対象において、連続する処置間にうまく間隔をあけることができるように十分長い半減期を呈示する。さらに、このようなポリペプチドは、GPC3を全く発現しないかまたは低レベルのそれを発現する細胞に対しては限定的な活性のみを示した。このことは、GPC3陽性がん標的細胞に対して高度に特異的なT細胞媒介性細胞傷害性応答を誘導できる可能性を示唆する。
【0075】
上記とは別に、本明細書に開示されるGPC3結合ISVDは、ヒトおよびカニクイザルGPC3への高い親和性結合を提供し、したがって、GPC3への結合が必要とされる他の用途に1価または多価の形態で容易に使用するができる。
【0076】
5.1 ポリペプチド
単一特異性1価ポリペプチド
一態様において、ポリペプチドは、単一特異性であり、1価である。
【0077】
用語「単一特異性」は、1種の(特異的な)タイプの標的分子に結合することを指す。したがって、単一特異性のポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する。
【0078】
用語「1価」は、分子、例えばISVDを(特異的に)標的化する結合単位/ビルディングブロックが1つのみ存在することを示す。
【0079】
したがって、一態様において、本技術は、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含むGPC3に、好ましくはヒトGPC3に特異的に結合する1つのISVDを含むかまたはそれからなる単一特異性1価ポリペプチドを提供する。ISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるかまたは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるかまたは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3;または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるかまたは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるかまたは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVDから選択することができる。
【0080】
好ましくは、GPC3に特異的に結合するISVDは:
a)配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3;または
b)配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVDから選択される。
【0081】
本技術のこの態様のさらなる実施形態において、GPC3に特異的に結合するISVDは:
a)配列番号3と90%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、ISVD;または
b)配列番号4と90%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、ISVD、
から選択される。
【0082】
別の態様において、本技術は、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含む、T細胞上のTCR、好ましくはヒトTCRの定常ドメインに特異的に結合する1つのISVDを含むかまたはそれからなる単一特異性1価ポリペプチドを提供する。ISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるかまたは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるかまたは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含む、ISVDであり得る。
【0083】
好ましくは、TCRに特異的に結合するISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含むISVDである。
【0084】
本技術のこの態様のさらなる実施形態において、TCRに特異的に結合するISVDは、配列番号2と90%を超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含むISVDであり、好ましくは、ISVDは、配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0085】
これらの1価化合物は、多価および/または多重特異性ポリペプチドのビルディングブロックとしても機能する。
【0086】
ISVDを含む(1価または多価)ポリペプチドのN末端に配置されるISVDは、好ましくは、そのN末端にグルタミン酸(E)を呈しない。したがって、1位におけるグルタミン酸(E)が、典型的には、ポリペプチドのN末端に配置されるISVDでは、アスパラギン酸(D)で置換されている。したがって、例えば、配列番号3、4または5がポリペプチドのN末端に配置される場合、これらの配列は典型的にはE1D置換を呈することになる。逆に、配列番号2がN末端に配置されない場合、この配列は典型的にはD1E突然変異を呈することになる。したがって、一般的に、配列番号2~5の第1の位置は、これらの配列がN末端に配置されるか否かに応じて、Eの場合もありDの場合もある。好ましい実施形態において、本技術のポリペプチドに含まれる第1のISVDの第1のアミノ酸はアスパラギン酸(D)である。
【0087】
単一特異性多価ポリペプチド
別の態様において、ポリペプチドは、単一特異性であり、少なくとも2価であるが、例えば、3価、4価、5価、6価などであってもよい。
【0088】
用語「2価」、「3価」、「4価」、「5価」、または「6価」は全て用語「多価」に該当し、それぞれ2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDの存在を示す。
【0089】
したがって、一態様において、本技術は、GPC3に、好ましくはヒトGPC3に特異的に結合する2つのISVDを含むかまたはそれからなる単一特異性2価ポリペプチドであって、
2つのISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、
2つのISVDは、好ましくは、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1および第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)第1および第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み、
第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み;または
d)第1のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み、
第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含む、
単一特異性2価ポリペプチドを提供する。
【0090】
好ましくは、単一特異性2価ポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する2つのISVDを含むかまたはそれからなり:
a)第1および第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)第1および第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み;または
d)第1のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0091】
本技術のこの態様のさらなる実施形態において、単一特異性2価ポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する2つのISVDを含むかまたはそれからなり:
a)第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、第1および第2のISVDは、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列からなり;
b)第1および第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、第1および第2のISVDは、好ましくは配列番号4のアミノ酸配列からなり;
c)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、好ましくは、第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなるか;または
d)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、好ましくは、第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなる。
【0092】
これに関して、用語「第1のISVD」および「第2のISVD」は、GPC3に結合する具体的に列挙されたISVDの互いの相対的な位置のみを示し、番号付けは、ポリペプチドのN末端から開始される。したがって「第1のISVD」は、「第2のISVD」よりN末端に近い。それに応じて、「第2のISVD」はしたがって、「第1のISVD」よりC末端により近い。番号付けは、絶対ではなく、2つのISVDの相対的な位置を示すに過ぎないため、それぞれGPC3、TCRまたは血清アルブミンに結合する追加の結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDがポリペプチド中に存在し得る可能性を排除しない。さらにそれは、他の結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDがその間に配置され得る可能性を排除しない。例えば、下記でさらに記載されるように(特に、セクション「多重特異性多価ポリペプチド」および5.4「(インビボでの)半減期の延長」を参照)、ポリペプチドは、別のヒト血清アルブミンに結合するISVDをさらに含んでいてもよく、これも「第1のISVD」と「第2のISVD」の間に配置されていてもよい(そのためこのような構築物は、後続のセクションで説明されるように多重特異性と称される)。
【0093】
好ましい実施形態において、単一特異性多価ポリペプチドの、特に上述した単一特異性2価ポリペプチドの(少なくとも2つの)ISVDは、ペプチド性リンカーを介して連結されている。2またはそれ以上の(ポリ)ペプチドを接続するためのペプチド性リンカーの使用は当業界において周知である。単一特異性多価ポリペプチドと共に、特に上述した単一特異性2価ポリペプチドと共に使用できる例示的なペプチド性リンカーは、表A-5に示される。使用されることが多いペプチド性リンカーのクラスの一つは、「Gly-Ser」または「GS」リンカーとして公知である。これらは、グリシン(G)およびセリン(S)残基から本質的になるリンカーであり、通常、GGGGS(配列番号100)モチーフ(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を呈し、nは、1、2、3、4、5、6、7またはそれより多くであり得る)などのペプチドモチーフの1つまたはそれ以上の反復を含む。このようなGSリンカーの一部の使用されることが多い例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号103)15GSリンカー(n=3)および35GSリンカー(n=7)である。Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65(10):1357~1369;およびKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014)27(10):325~330が参照される。一実施形態において、単一特異性多価ポリペプチドの、特に、単一特異性2価ポリペプチドのISVDは、表A-5に記載のリンカーを介して連結されている。一実施形態において、(少なくとも)2つのISVDは、35GSリンカーまたは9GSリンカーを介して連結されている。好ましい実施形態において、(少なくとも)2つのISVDは、9GSリンカーを介して連結されている。
【0094】
多重特異性多価ポリペプチド
さらなる態様において、ポリペプチドは、少なくとも二重特異性であるが、例えば、三重特異性、四重特異性、五重特異性などであってもよい。さらに、ポリペプチドは、少なくとも2価であるが、例えば、3価、4価、5価、6価などであってもよい。
【0095】
用語「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」、「五重特異性」などは全て用語「多重特異性を有する」に該当し、それぞれ2種、3種、4種、5種などの異なる標的分子に結合することを指す。
【0096】
用語「2価」、「3価」、「4価」、「5価」、「6価」などは全て用語「多価」に該当し、それぞれ2種、3種、4種、5種、6種などの結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDの存在を示す。
【0097】
例えば、ポリペプチドは、二重特異性2価、例えば2つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドであってもよく、この場合、1つのISVDはGPC3に特異的に結合し、1つのISVDはT細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、この場合、GPC3およびTCRは、ヒトGPC3およびヒトTCRであるのが好ましい。ポリペプチドはまた、二重特異性3価、例えば3つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドであってもよく、この場合、2つのISVDはGPC3に特異的に結合し、1つのISVDはT細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合し、この場合、GPC3およびTCRは、ヒトGPC3およびヒトTCRであるのが好ましい。別の例において、ポリペプチドは、三重特異性4価、例えば4つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドであってもよく、この場合、2つのISVDはヒトGPC3に特異的に結合し、1つのISVDはT細胞上のヒトTCRの定常ドメインに特異的に結合し、1つのISVDはヒト血清アルブミンに結合する。このようなポリペプチドは、例えば2つのISVDがヒトGPC3上の2つの異なるエピトープと結合する場合、同時にバイパラトピックであり得る。用語「バイパラトピック」は、同じ標的分子の2つの異なる部分(例えば、エピトープ)に結合することを指す。好ましい三重特異性4価ポリペプチドは、例えば、ISVD構築物A022600424であり、これは、ヒトGPC3に特異的に結合する2つのISVD、T細胞上のヒトTCRの定常ドメインに特異的に結合する1つのISVD、ヒト血清アルブミンに結合する1つのISVDを含み、GPC3に結合することに関してバイパラトピックである。
【0098】
一実施形態において、本技術は、
少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなる二重特異性2価ポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、
少なくとも2つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
b)第1のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
c)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、または
d)第1のISVDは、
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
第2のISVDは、
iv.配列番号6のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号10のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列であるかもしくは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、
二重特異性2価ポリペプチドを提供する。
【0099】
好ましい実施形態において、このようなポリペプチドは、
少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなり、前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも2つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
b)第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
c)第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含むか、または
d)第1のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、第2のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0100】
したがって、このようなポリペプチドは、ポリペプチドであって:
a)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、
b)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、
c)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号4と90%を超える同一性を呈するか、または
d)第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、第2のISVDは、配列番号2と90%を超える同一性を呈する、
ポリペプチドであり得る。
【0101】
好ましくは、このようなポリペプチドにおいて、
a)第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、
b)第1のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、
c)第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなるか、または
d)第1のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなり、第2のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0102】
別の態様において、本技術は、上記の二重特異性2価ポリペプチドおよび下記(セクション5.4;「(インビボにおける)半減期の延長」)で詳細に説明されるヒト血清アルブミンに結合する第3のISVDを含む三重特異性3価ポリペプチドを提供する。
【0103】
一実施形態において、本技術は、少なくとも3つのISVDを含むかまたはそれからなる二重特異性3価ポリペプチドであって、
前記ISVDのそれぞれは、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み、少なくとも3つのISVDは、場合により、1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結されており:
a)第1のISVDは、T細胞上のTCRの定常ドメインと特異的に結合し、配列番号6のアミノ酸配列であるかまたは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるかまたは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み、
b)第2のISVDは、GPC3と特異的に結合し、配列番号7のアミノ酸配列であるかまたは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるかまたは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)第3のISVDは、GPC3と特異的に結合し、配列番号8のアミノ酸配列であるかまたは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるかまたは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3を含み、
前記ポリペプチドによって結合されるTCRおよびGPC3は、それぞれヒトTCRおよびヒトGPC3であることが好ましい、
二重特異性3価ポリペプチドを提供する。
【0104】
多重特異性多価ポリペプチドの好ましい実施形態において、
a)前記第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)前記第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)前記第3のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0105】
多重特異性多価ポリペプチドのさらなる態様において:
a)前記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%を超える配列同一性を呈し、好ましくは、前記第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列からなり;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%を超える配列同一性を呈し、好ましくは、前記第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列からなり;
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%を超える配列同一性を呈し、好ましくは、前記第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列からなる。
【0106】
これに関して、用語「第1のISVD」、「第2のISVD」、「第3のISVD」などは、ISVDの互いの相対的な位置のみを示し、番号付けは、ポリペプチドのN末端から開始される。したがって「第1のISVD」は、「第2のISVD」よりN末端に近く、それに対して「第2のISVD」は、「第3のISVD」よりN末端に近い。したがって、C末端から考える場合、ISVDの配置は逆である。番号付けは絶対ではなく、少なくとも4つのISVDの相対的な位置を示すに過ぎないため、GPC3に結合する他の結合単位/ビルディングブロック、例えば追加のISVD、または別の標的に結合するISVDがポリペプチド中に存在し得ることは排除されない。さらに、番号付けは、他の結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDがその間に配置され得る可能性を排除しない。例えば、下記でさらに記載されるように(特に、下記のセクション5.4「(インビボでの)半減期の延長」を参照)、ポリペプチドは、別のヒト血清アルブミンに結合するISVDをさらに含んでいてもよく、これも例えば「第3のISVD」と「第4のISVD」との間に配置されていてもよい。
【0107】
さらなる態様において、本技術は、したがって、上記の二重特異性3価ポリペプチド、および下記(セクション5.4;「(インビボにおける)半減期の延長」)で詳細に説明されるヒト血清アルブミンに結合する第4のISVDを含む、三重特異性4価ポリペプチドを提供する。
【0108】
好ましい実施形態において、TCRに結合する第1のISVDは、ポリペプチドのN末端に配列される。
【0109】
別の態様において、本技術は、上記(セクション5.1;「単一特異性1価ポリペプチド」)で単一特異性1価ポリペプチドに関して詳細に説明されるGPC3に特異的に結合するISVD、および下記(セクション5.4;「(インビボにおける)半減期の延長」)で詳細に説明されるヒト血清アルブミンに結合するISVDを含む二重特異性2価ポリペプチドを提供する。
【0110】
別の態様において、本技術は、上記の単一特異性2価ポリペプチド(セクション5.1;「単一特異性2価ポリペプチド」)および下記(セクション5.4;「(インビボにおける)半減期の延長」)で詳細に説明されるヒト血清アルブミンに結合するISVDを含む二重特異性3価ポリペプチドを提供する。
【0111】
本明細書に記載される前記多重特異性多価ポリペプチドの構成要素、好ましくはISVDは、1つまたはそれ以上の好適なリンカー、例えばペプチド性リンカーによって互いに連結されていてもよい。
【0112】
2またはそれ以上の(ポリ)ペプチドを接続するためのリンカーの使用は当業界において周知である。例示的なペプチド性リンカーは、表A-5に示される。使用されることが多いペプチド性リンカーのクラスの一つは、「Gly-Ser」または「GS」リンカーとして公知である。これらは、グリシン(G)およびセリン(S)残基から本質的になるリンカーであり、通常、GGGGS(配列番号100)モチーフ(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を呈し、nは、1、2、3、4、5、6、7またはそれより多くであり得る)などのペプチドモチーフの1つまたはそれ以上の反復を含む。このようなGSリンカーの一部の使用されることが多い例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号103)15GSリンカー(n=3)および35GSリンカー(n=7)である。Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65(10):1357~1369;およびKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014)27(10):325~330が参照される。本明細書に開示されるポリペプチドにおいて、ポリペプチドの構成要素を互いに連結するために、5GSリンカーおよび9GSリンカーの使用が好ましい。好ましくは、TCRに特異的に結合する第1のISVDを、GPC3に特異的に結合する第2のISVDに連結するために、10未満のアミノ酸、例えば6未満のアミノ酸のリンカー、特に5GSリンカーが使用される。
【0113】
多重特異性多価ポリペプチドの一態様において、少なくとも3つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する少なくとも2つのISVD、およびTCRに特異的に結合する1つのISVDを含む。本技術のこの態様において、TCRに結合するISVDは、5GSリンカーを介してGPC3に結合する少なくとも2つのISVDのうちの1つに連結され、それに対してGPC3に特異的に結合する少なくとも2つのISVDは、9GSリンカーを介して互いに連結されている。さらなる態様において、多重特異性多価ポリペプチドは、アルブミンに結合するISVDをさらに含み、これは、TCRに結合するISVDに連結されていないGPC3に結合するISVDに、9GSリンカーを介して、さらに連結されている(下記のセクション5.4「(インビボにおける)半減期の延長」に記載される通り)。発明者らは、驚くべきことに、このような立体配置は、T細胞媒介性細胞傷害性応答を誘発する上でポリペプチドの効率を増加させることができることを見出した。
【0114】
したがって、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から開始する順番で、以下:TCRに特異的に結合する第1のISVD、GPC3に特異的に結合する第2のISVD、GPC3に特異的に結合する第3のISVD、および本明細書で定義される増加した半減期を有するポリペプチドを提供する任意選択の結合単位、を含むかまたはそれからなることが好ましい。増加した半減期を有するポリペプチドを提供する結合単位は、好ましくは血清アルブミンに結合する、ISVDであることが好ましい。
【0115】
ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から開始する順番で、以下:TCRに特異的に結合するISVD、リンカー、GPC3に特異的に結合する第2のISVD、リンカー、GPC3に特異的に結合する第3のISVD、リンカー、およびヒト血清アルブミンに結合するISVD、を含むかまたはそれからなることがさらにより好ましく、第1および第2のISVDの間のリンカーは5GSリンカーであることが好ましく、それに対して、他方のリンカーは9GSリンカーであることが好ましい。
【0116】
ポリペプチドのこのような立体配置は、がんを処置することに関する強い効力、加えて、既存の抗体への少ない結合をもたらすことができる。
【0117】
好ましくは、多重特異性多価ポリペプチドは、ヒト血清中の既存の抗体による結合の低減を呈示する。この目的を達成するために、一実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVD(好ましくは、ポリペプチドのC末端でのISVD)中に、しかし好ましくはそれぞれのISDV中に、アミノ酸11位におけるバリン(V)およびアミノ酸89位におけるロイシン(L)(Kabatの番号付けによる)を呈する。別の実施形態において、ポリペプチドは、1~5個の(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長を呈し、例えばISVDのC末端における単一のアラニン(A)の伸長を含む。ISVDのC末端は、通常、VTVSS(配列番号116)である。別の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVD中に、110位におけるリシン(K)またはグルタミン(Q)(Kabatの番号付けによる)を呈する。別の実施形態において、ISVDは、少なくとも1つのISVD中に、112位におけるリシン(K)またはグルタミン(Q)(Kabatの番号付けによる)を呈する。これらの実施形態において、単一のアラニンを付加した後、ポリペプチドのC末端が、例えば、配列VTVSSA(配列番号125)、VKVSSA(配列番号126)、VQVSSA(配列番号127)、VTVKSA(配列番号128)、VTVQSA(配列番号129)、VKVKSA(配列番号130)、VKVQSA(配列番号131)、VQVKSA(配列番号132)、またはVQVQSA(配列番号133)、好ましくはVTVSSA(表A-7を参照)を呈するように、ISVDのC末端は、VKVSS(配列番号117)、VQVSS(配列番号118)、VTVKS(配列番号119)、VTVQS(配列番号120)、VKVKS(配列番号121)、VKVQS(配列番号122)、VQVKS(配列番号123)、またはVQVQS(配列番号124)である。別の実施形態において、ポリペプチドは、少なくともC末端ISVD中に、アミノ酸11位におけるバリン(V)およびアミノ酸89位におけるロイシン(L)(Kabatの番号付けによる)、場合により、少なくとも1つのISVD中に、110位におけるリジン(K)またはグルタミン(Q)(Kabatの番号付けによる)を呈し、1~5個の(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長を呈し、例えばC末端ISVDのC末端における単一のアラニン(A)の伸長を呈する(ポリペプチドのC末端が、例えば配列VTVSSA、VKVSSAまたはVQVSSA、好ましくはVTVSSAからなるように)。これに関するさらなる情報については、例えばWO2012/175741およびWO2015/173325を参照されたい。
【0118】
好ましい実施形態において、多重特異性多価ポリペプチドは、配列番号1と、90%を超える配列同一性、例えば95%を超える、または99%を超える配列同一性を呈するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、より好ましくは、4つのISVDのCDRは、それぞれ下記のセクション「5.2 免疫グロブリン単一可変ドメイン」および「5.4(インビボにおける)半減期の延長」に記載のAbm定義を使用する項目A~D(またはKabatの定義を使用する場合、A’~D’)で定義された通りであり、特に:
・T細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・GPC3に特異的に結合する第3のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・ヒト血清アルブミンに結合する第4のISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含むか、
または代替としてKabatの定義を使用する場合、:
・TCRに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号31のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号35のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・GPC3に特異的に結合する第2のISVDは、配列番号32のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号36のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・GPC3に特異的に結合する第3のISVDは、配列番号33のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号37のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・ヒト血清アルブミンに結合する第4のISVDは、配列番号34のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号38のアミノ酸配列であるCDR2、および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0119】
一部の態様において、ポリペプチドは、配列番号1、49~72、および78~81から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0120】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる(表A-3を参照)。最も好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0121】
ポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較した場合、ヒトTCRおよびヒトGPC3の少なくとも半分の結合親和性、より好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を呈し、この場合、結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)などの同じ方法を使用して測定される。
【0122】
5.2 免疫グロブリン単一可変ドメイン
用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(ISVD)は、「単一可変ドメイン」と同義的に使用され、これは、免疫グロブリン分子であって、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、それにより形成されるものを定義する。これは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して、抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン(例えばモノクローナル抗体)またはその断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、scFv、ジscFv)とは別に免疫グロブリン単一可変ドメインを設定している。典型的には、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(V)と軽鎖可変ドメイン(V)とが相互作用して、抗原結合部位を形成する。この場合、VとVの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与することになり、すなわち合計6つのCDRが、抗原結合部位形成に関与することになる。
【0123】
上記の定義を考慮すれば、従来の4鎖抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子;当業界において公知)の、またはFab断片、F(ab’)断片、Fv断片、例えばジスルフィドで連結されたFvまたはscFv断片、もしくはこのような従来の4鎖抗体由来のダイアボディ(全て当業界において公知)の抗原-結合ドメインは通常、免疫グロブリン単一可変ドメインとみなされないが、これは、これらの場合では、抗原のそれぞれのエピトープに結合することは通常、1つの(単一の)免疫グロブリンドメインによって起こるのではなく、一対の(会合する)免疫グロブリンドメイン、例えば軽鎖および重鎖可変ドメインによって、すなわち連帯してそれぞれの抗原のエピトープに結合する免疫グロブリンドメインのV-V対によって起こるためである。
【0124】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、追加の免疫グロブリン可変ドメインと対合せずに抗原のエピトープに特異的に結合することが可能である。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のV、単一のVHHまたは単一のVドメインによって形成される。
【0125】
したがって、単一の抗原結合単位(すなわち、機能的な抗原結合単位を形成するのに、単一の抗原結合ドメインが別の可変ドメインと相互作用する必要がないように、単一可変ドメインから本質的になる機能的な抗原結合単位)を形成することが可能である限りは、単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列)もしくはその好適な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列またはVHH配列)もしくはその好適な断片であり得る。
【0126】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、例えば重鎖ISVDであってもよく、例えばV、VHH、例えばラクダ化Vまたはヒト化されたVHHなどであってもよい。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインは、VHHであり、例えばラクダ化Vまたはヒト化VHHなどである。重鎖ISVDは、従来の4鎖抗体または重鎖抗体由来であってもよい。
【0127】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(または単一ドメイン抗体として使用するのに好適なアミノ酸配列)、「dAb」もしくはdAb(またはdAbとして使用するのに好適なアミノ酸配列);他の単一可変ドメイン、またはそれらのいずれか1つのあらゆる好適な断片であり得る。
【0128】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH、例えばヒト化VHHまたはラクダ化Vなど)またはその好適な断片であり得る。Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)およびNanoclone(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である。
【0129】
「VHHドメイン」は、VHH、VHH抗体断片、およびVHH抗体としても公知であり、これは元々、「重鎖抗体」の(すなわち、「軽鎖を欠失した抗体」の;Hamers-Castermanら、Nature 363:446~448、1993)免疫グロブリンの可変ドメインと結合する抗原として説明されていた。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体(本明細書では「Vドメイン」と称される)に存在する重鎖可変ドメインおよび従来の4鎖抗体(本明細書では「Vドメイン」と称される)に存在する軽鎖可変ドメインと区別するために選択された。VHHのさらなる説明のために、Muyldermansによる総論(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277~302、2001)が参照される。
【0130】
典型的には、免疫グロブリンの生成は、実験動物の免疫化、免疫グロブリンを生産する細胞を融合してハイブリドーマを作り出すこと、および望ましい特異性に関してスクリーニングすることを含む。代替として、免疫グロブリンは、ナイーブまたは合成ライブラリーを、例えばファージディスプレイによってスクリーニングすることによって生成してもよい。
【0131】
免疫グロブリン配列の生成は、様々な出版物で広範囲に説明されおり、そのなかでも、WO94/04678、Hamers-Castermanら、1993およびMuyldermansら、2001を例示することができる。これらの方法において、前記標的抗原に対する免疫応答を誘導するために、ラクダ科動物が標的抗原で免疫化される。前記免疫化から得られたVHHのレパートリーはさらに、標的抗原と結合するVHHに関してスクリーニングされる。
【0132】
これらの例において、抗体の生成は、免疫化および/またはスクリーニングのために精製した抗原を必要とする。抗原は、天然源から精製してもよいし、または組換え体生産の過程で精製してもよい。
【0133】
免疫グロブリン配列の免疫化および/またはスクリーニングは、このような抗原のペプチド断片を使用して実行することができる。
【0134】
本技術は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒトおよびラクダ免疫グロブリン配列を含む異なる起源の免疫グロブリン配列を使用することができる。本技術はまた、完全ヒト、ヒト化またはキメラ配列も含む。例えば、本技術は、ラクダ免疫グロブリン配列およびヒト化ラクダ免疫グロブリン配列、またはラクダ化ドメイン抗体、例えば、Wardら(例えばWO94/04678およびDaviesおよびRiechmann(1994および1996)を参照)によって記載されるようなラクダ化dAbを含む。さらに、本技術はまた、融合した免疫グロブリン配列、例えば、多価および/または多重特異性構築物(1つまたはそれ以上のVHHドメインを含有する多価および多重特異性ポリペプチドならびにそれらの調製のため、Conrathら、J.Biol.Chem.、第276巻、10.7346~7350、2001、加えて例えばWO96/34103およびWO99/23221が参照される)、ならびにタグまたは他の機能的部分、例えば毒素、標識、放射化学物質などを含む免疫グロブリン配列を形成する融合した免疫グロブリン配列も使用し、これらは本技術の免疫グロブリン配列から誘導可能である。
【0135】
「ヒト化VHH」は、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」されている、すなわち、前記天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列中の(特にフレームワーク配列中の)1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、ヒトからの従来の4鎖抗体(例えば上記で示された)からのVドメイン中の対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つまたはそれ以上によって置き換えることによってヒト化されているアミノ酸配列を含む。これは、例えば本明細書や先行技術(例えばWO2008/020079)に記載のさらなる説明に基づき、当業者には明らかであるそれ自体公知の方式で実行することができる。ここでも注目すべきことに、このようなヒト化VHHは、それ自体公知のあらゆる好適な方式で得ることができ、したがって、厳密には、出発材料として天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに限定されない。
【0136】
「ラクダ化V」は、天然に存在するVドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」されている、すなわち、従来の4鎖抗体からの天然に存在するVドメインのアミノ酸配列中の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVHHドメインにおける対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つまたはそれ以上によって置き換えることによってラクダ化されているアミノ酸配列を含む。これは、例えば本明細書や先行技術(例えばWO2008/020079)に記載のさらなる説明に基づき、当業者には明らかであるそれ自体公知の方式で実行することができる。このような「ラクダ化」置換は好ましくは、V-Vの境界を形成する、および/またはそこに存在するアミノ酸位置に、および/または本明細書で定義されるようないわゆるラクダの特徴的な残基に挿入される(例えばWO94/04678ならびにDaviesおよびRiechmann(1994および1996)、上記を参照)。好ましくは、ラクダ化Vを生成または設計するための出発材料または開始点として使用されるV配列は、好ましくは哺乳動物からのV配列、さらに好ましくはヒトのV配列、例えばV3配列である。しかしながら、注目すべきことに、このようなラクダ化Vは、それ自体公知のあらゆる好適な方式で得ることができ、したがって、厳密には、出発材料として天然に存在するVドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに限定されない。
【0137】
免疫グロブリン単一可変ドメイン配列の好ましい構造は、4つのフレームワーク領域(「FR」)で構成されるとみなすことができ、これらは、当業界および本明細書ではそれぞれ「フレームワーク領域1」(「FR1」);「フレームワーク領域2」(「FR2」);「フレームワーク領域3」(「FR3」);および「フレームワーク領域4」(「FR4」)として言及され;これらのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域(「CDR」)が途中に存在し、これらは、当業界および本明細書ではそれぞれ「相補性決定領域1」(「CDR1」);「相補性決定領域2」(「CDR2」);および「相補性決定領域3」(「CDR3」)として言及される。
【0138】
WO08/020079の58頁および59頁段落q)でさらに記載されるように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、RiechmannおよびMuyldermans、2000(J.Immunol.Methods 240(1~2):185~195;例えばこの出版物の図2を参照)の論文に記載のラクダ科動物からのVHHドメインに適用された通り、Kabatら(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、MD、Publication No.91)によって付与されるVドメインの一般的な番号付けに従って番号付けすることができる。注目すべきことに、VドメインおよびVHHドメインに関して当業界において周知の通り、CDRのそれぞれにおけるアミノ酸残基の総数は変化することがあり、Kabatの番号付けによって示されたアミノ酸残基の総数に対応していなくてもよい(すなわち、Kabatの番号付けによる1つまたはそれ以上の位置が実際の配列において占有されていなくてもよいし、または実際の配列がKabatの番号付けによって許容される数より多くのアミノ酸残基を含有していてもよい)。これは、一般的に、Kabatによる番号付けは、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際の番号付けに対応していてもよいし、または対応していなくてもよいことを意味する。VドメインおよびVHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、通常、110~120の範囲となり、112~115となることが多い。しかしながら、注目すべきことに、それより短い配列およびそれより長い配列も、本明細書に記載される目的にとって好適であり得る。
【0139】
本出願において、別段の指定がない限り、CDR配列は、KontermannおよびDubel(2010年編、Antibody Engineering、第2巻、Springer Verlag Heidelberg Berlin、Martin、第3章、33~51頁)に記載されたように、AbMの定義に従って決定された。この方法によれば、FR1は、1~25位でアミノ酸残基を構成し、CDR1は、26~35位でアミノ酸残基を構成し、FR2は、36~49位でアミノ酸残基を構成し、CDR2は、50~58位でアミノ酸残基を構成し、FR3は、59~94位でアミノ酸残基を構成し、CDR3は、95~102位でアミノ酸残基を構成し、FR4は、103~113位でアミノ酸残基を構成する。
【0140】
CDR領域の決定は、異なる方法に従って行ってもよい。KabatによるCDR決定において、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は、1~30位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は、31~35位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は、36~49位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は、50~65位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は、66~94位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は、95~102位でアミノ酸残基を構成し、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は、103~113位でアミノ酸残基を構成する。
【0141】
このような免疫グロブリン配列において、フレームワーク配列は、あらゆる好適なフレームワーク配列であってもよく、好適なフレームワーク配列の例は、例えば標準的な教本、および本明細書で述べられたさらなる開示および先行技術に基づき当業者には明らかであろう。
【0142】
フレームワーク配列は、好ましくは免疫グロブリンフレームワーク配列または免疫グロブリンフレームワーク配列から得られた(例えば、ヒト化またはラクダ化によって)フレームワーク配列(の好適な組合せ)である。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えばV配列)および/または重鎖可変ドメイン(例えばV配列またはVHH配列)から得られたフレームワーク配列であり得る。特に好ましい一態様において、フレームワーク配列は、VHH配列から得られたフレームワーク配列(それにおいて、前記フレームワーク配列が、場合により、部分的または完全にヒト化されていてもよい)であるか、または従来のラクダ化V配列(本明細書で定義される通り)であるかのいずれかである。
【0143】
特に、本技術で使用されるISVD配列に存在するフレームワーク配列は、ISVD配列が、ヒト化VHHまたはラクダ化Vを含むVHHになるように、特徴的な残基(本明細書で定義される通り)の1つまたはそれ以上を含有していてもよい。このようなフレームワーク配列の一部の好ましい、ただし非限定的な例(その好適な組合せ)は、本明細書に記載のさらなる開示から明確になるであろう。
【0144】
ここでも、本明細書において免疫グロブリン配列に関して一般的に記載される通り、また、前述のもののいずれかの好適な断片(または断片の組合せ)、例えば、好適には1つまたはそれ以上のフレームワーク配列が隣接する、および/またはそれを介して連結された1つまたはそれ以上のCDR配列を含有する断片(例えば、これらのCDRおよびフレームワーク配列は、断片がそれから得られた完全サイズの免疫グロブリン配列において生じ得る同じ順番で)を使用することも考えられる。
【0145】
しかしながら、注目すべきことに、本技術は、ISVD配列(またはそれを発現させるのに使用されるヌクレオチド配列)の起源にも、ISVD配列またはヌクレオチド配列が生成される(または生成された)または得られる方法にも限定されない。したがって、ISVD配列は、天然に存在する配列(あらゆる好適な種からの)であってもよいし、または合成もしくは半合成の配列であってもよい。具体的な、ただし非限定的な態様において、ISVD配列は、天然に存在する配列(あらゆる好適な種からの)または合成もしくは半合成の配列であり、その例としては、これらに限定されないが、「ヒト化」(本明細書で定義される通り)免疫グロブリン配列(例えば部分的または完全にヒト化されたマウスまたはウサギ免疫グロブリン配列、特に、部分的または完全にヒト化されたVHH配列)、「ラクダ化」(本明細書で定義される通り)免疫グロブリン配列、加えて、親和性成熟(例えば、合成、ランダムまたは天然に存在する免疫グロブリン配列から開始する)、CDRグラフティング、ベニアリング(veneering)、異なる免疫グロブリン配列から得られた断片を組み合わせること、オーバーラップするプライマーを使用したPCRアセンブリ、および当業者周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似の技術;または前述のもののいずれかのあらゆる好適な組合せなどの技術により得られた免疫グロブリン配列が挙げられる。
【0146】
同様に、ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列または合成もしくは半合成の配列であってもよく、例えば、好適な天然に存在するテンプレートからPCRによって単離される配列(例えば細胞から単離したDNAまたはRNA)、ライブラリー(特に、発現ライブラリー)から単離されたヌクレオチド配列、天然に存在するヌクレオチド配列に突然変異を導入すること(それ自体公知のあらゆる好適な技術、例えばミスマッチPCRを使用して)によって調製されるヌクレオチド配列、オーバーラップするプライマーを使用するPCRによって調製されたヌクレオチド配列、またはそれ自体公知のDNA合成のための技術を使用して調製されたヌクレオチド配列であり得る。
【0147】
上述したように、ISVDは、Nanobody(登録商標)またはその好適な断片であり得る。Nanobodiesの一般的な説明のために、以下のさらなる説明、加えて本明細書において引用された先行技術が参照される。しかしながら、この点において、この説明および先行技術は、主として、いわゆる「V3クラス」のNanobodies(すなわち、DP-47、DP-51またはDP-29などのV3クラスのヒト生殖細胞系配列に対して高度な配列相同性を有するNanobodies)を説明したものであることに留意すべきである。しかしながら、本技術は、その最も広い意味で、一般的にあらゆるタイプのNanobodyを使用することができ、例えば、例えばWO2007/118670に記載されたように、いわゆる「V4クラス」に属するNanobodies(すなわち、DP-78などのV4クラスのヒト生殖細胞系配列に対して高度な配列相同性を有するNanobodies)も使用することに留意すべきである。
【0148】
一般的に、Nanobodies(特にVHH配列、例えば(部分的に)ヒト化VHH配列およびラクダ化V配列など)は、フレームワーク配列(ここでも本明細書にさらに記載される通り)の1つまたはそれ以上における1つまたはそれ以上の「特徴的な残基」(本明細書に記載される通り)の存在によって特徴付けることができる。したがって、一般的に、Nanobodyは、(一般)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列と定義することができ、式中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し、特徴的な残基の1つまたはそれ以上は、さらに本明細書で定義される通りである。
【0149】
詳細には、Nanobodyは、(一般)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であってもよく、式中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し、フレームワーク配列は、さらに本明細書で定義される通りである。
【0150】
より詳細には、Nanobodyは、(一般)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であってもよく、式中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し:
Kabatの番号付けに従って11、37、44、45、47、83、84、103、104および108位におけるアミノ酸残基の1つまたはそれ以上が、以下の表A-0に記載した特徴的な残基から選択される。
【0151】
【表1-1】
【表1-2】
【0152】
本技術はとりわけ、TCRまたはGPC3の定常ドメインに結合することができるISVDを使用する。本技術に関して、特定の標的分子「に結合すること」は、抗体およびそのそれぞれの抗原に関して理解される通り当業界における通常の意味を有する。
【0153】
多重特異性多価ポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する1つまたはそれ以上のISVDを含んでいてもよい。例えば、ポリペプチドは、GPC3に特異的に結合する2つのISVD、およびTCRに特異的に結合する1つのISVDを含んでいてもよい。
【0154】
本技術で使用されるISVDは、ポリペプチドがGPC3およびTCRに特異的に結合することができるように、少なくとも2つのISVDを含むかまたはそれからなるポリペプチドの一部を形成することができる。
【0155】
したがって、本技術で使用されるISVDの標的分子は、それぞれGPC3およびTCRの定常ドメインである。TCRへの結合は、例えば、TCRアルファサブユニットおよび/またはTCRベータサブユニットに結合することによって達成することができる。その例は、哺乳類のGPC3およびTCRである。ヒトGPC3(Uniprot受託番号P51654、表A-8を参照)およびヒトTCR(表A-8を参照)が好ましいが、一方、他の種からのバージョンも本技術に適しており、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類、例えばカニクイザル(本明細書では「cyno」としても言及される)、またはラクダ科動物、例えばラマもしくはアルパカからのGPC3およびTCRが挙げられる。
【0156】
本技術で使用できるT細胞上のTCRの定常ドメインに特異的に結合するISVDの具体的な例は、以下の項目Aに記載される通りである:
A.ヒトTCRに特異的に結合し:
i.配列番号6のアミノ酸配列であるかまたは配列番号6と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列であるかまたは配列番号10と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、
を含み、
好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0157】
好ましい実施形態において、ISVDは、配列番号135のヒトTCR-αのおよび/または配列番号136のTCR-βの定常ドメイン、またはその多型バリアントもしくはアイソフォームに結合する。
【0158】
このようなヒトTCRに特異的に結合するISVDの好ましい例は、表A-2にISVD TCE01に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(前述の項目Aで定義されたCDRに加えて)、ISVD TCE01(配列番号2;表A-1およびA-2を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0159】
また、好ましい実施形態において、ヒトTCRに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と、90%を超える、例えば95%を超える、または99%を超える配列同一性を呈していてもよく、CDRは、前述の項目Aで定義された通りである。特に、TCRに特異的に結合するISVDは最も好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列である。
【0160】
このようなTCRに結合するISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目A)と比べて少なくとも1つのCDRにおいて2または1つのアミノ酸の差異を呈する場合、ISVDは、好ましくは、配列番号2に記載の構築物TCE01のように、ヒトTCRの少なくとも半分の結合親和性、より好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を呈し、この場合、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0161】
本技術で使用できるGPC3に特異的に結合するISVDの具体的な例は、以下の項目BおよびCに記載される通りである:
B.ヒトGPC3に特異的に結合し:
i.配列番号7のアミノ酸配列であるかまたは配列番号7と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列であるかまたは配列番号11と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、
を含み、
好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0162】
C.ヒトGPC3に特異的に結合し:
i.配列番号8のアミノ酸配列であるかまたは配列番号8と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列であるかまたは配列番号12と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3、
を含み、
好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0163】
好ましい実施形態において、ISVDは配列番号134のヒトGPC3に結合する。
【0164】
このようなヒトGPC3に特異的に結合するISVDの好ましい例は、それぞれ表A-2にISVD A022600351およびA022600314に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(それぞれ前述の項目BおよびCで定義されたCDRに加えて)、ISVD A022600351またはA022600314(配列番号3または4、表A-1およびA-2を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0165】
また、好ましい実施形態において、ヒトGPC3に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3または4と、90%を超える、例えば95%を超える、または99%を超える配列同一性を呈していてもよく、CDRは、それぞれ前述の項目BまたはCで定義された通りである。特に、ヒトGPC3に結合するISVDは最も好ましくは、配列番号3または4のアミノ酸配列である。
【0166】
このようなヒトGPC3に結合するISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目BまたはC)と比べて少なくとも1つのCDRにおいて2または1つのアミノ酸の差異を呈する場合、ISVDは、好ましくは、それぞれ配列番号3および4に記載の構築物A022600351またはA022600314のように、ヒトGPC3の少なくとも半分の結合親和性、より好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を呈し、この場合、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0167】
好ましくは、上記の項目A~Cで定義されるISVDのそれぞれは、ポリペプチドに含まれる。
【0168】
このような上記の項目A~Cで定義されるISVDのそれぞれを含むポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドのように、ヒトTCRおよびヒトGPC3の好ましくは少なくとも半分の結合親和性、より好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を呈し、この場合、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0169】
上記の項目A~Cおよび下記の項目Dで言及される配列番号(セクション5.4「(インビボにおける)半減期の延長」を参照)は、AbMの定義によるCDRの定義(表A-2を参照)に基づく。Kabat定義により同じCDRを定義する配列番号(表A-2-1を参照)は、同様に、上記の項目A~Cおよび下記の項目Dで使用することができることに留意する(セクション5.4「(インビボにおける)半減期の延長」を参照)。
【0170】
したがって、本技術で使用できるT細胞上のTCRの定常ドメインまたはGPC3に特異的に結合するISVDの具体的な例は、AbMの定義を使用して上述した通りであり、下記の項目A’~C’に記載の通りKabat定義を使用して記載することもできる:
A’.ヒトTCRに特異的に結合し、
i.配列番号31のアミノ酸配列であるかまたは配列番号31と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号35のアミノ酸配列であるかまたは配列番号35と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列であるかまたは配列番号14と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
好ましくは、配列番号31のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号35のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0171】
このようなヒトTCRに特異的に結合するISVDの好ましい例は、それぞれ表A-2-1にISVD TCE01に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(前述の項目A’で定義されたCDRに加えて)、ISVD TCE01(配列番号2、表A-1およびA-2-1を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0172】
B’.ヒトGPC3に特異的に結合し、
i.配列番号32のアミノ酸配列であるかまたは配列番号32と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号36のアミノ酸配列であるかまたは配列番号36と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列であるかまたは配列番号15と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
好ましくは、配列番号32のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号36のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0173】
C’.ヒトGPC3に特異的に結合し、
i.配列番号33のアミノ酸配列であるかまたは配列番号33と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号37のアミノ酸配列であるかまたは配列番号37と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列であるかまたは配列番号16と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
好ましくは、配列番号33のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号37のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0174】
このようなヒトGPC3に特異的に結合するISVDの好ましい例は、それぞれ表A-2-1にISVD A022600351およびA022600314に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(それぞれ前述の項目B’およびC’で定義されたCDRに加えて)、ISVD A022600351またはA022600314(配列番号3または4、表A-1およびA-2-1を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0175】
第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との「配列同一性」のパーセンテージは、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置におけるアミノ酸残基と同一な、第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]を掛けることによって計算することができ、この場合、第1のアミノ酸配列と比較した場合の第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の欠失、挿入、置換または付加のそれぞれは、単一のアミノ酸残基(すなわち単一の位置)における差としてみなされる。
【0176】
通常、上記で概説した計算方法に従って2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のために、最大数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列が「第1の」アミノ酸配列として取り扱われることになり、その他のアミノ酸配列が「第2の」アミノ酸配列として取り扱われることになる。
【0177】
「アミノ酸の差異」は、本明細書で使用される場合、参照配列に相対する単一のアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を指し、好ましくは置換である。
【0178】
アミノ酸置換は、好ましくは保存的置換である。このような保存的置換は、好ましくは以下のグループ(a)~(e)内の1つのアミノ酸が、同じグループ内の別のアミノ酸残基で置換されている置換である:(a)小さい脂肪族の、非極性の、またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、ProおよびGly;(b)極性の負電荷を有する残基およびその(非荷電性)アミド:Asp、Asn、GluおよびGln;(c)極性の正電荷を有する残基:His、ArgおよびLys;(d)大きい脂肪族の、非極性の残基:Met、Leu、Ile、ValおよびCys;および(e)芳香族残基:Phe、TyrおよびTrp。
【0179】
特に好ましい保存的置換は、以下の通りである:AlaからGlyへの、またはSerへの;ArgからLysへの;AsnからGlnへの、またはHisへの;AspからGluへの;CysからSerへの;GlnからAsnへの;GluからAspへの;GlyからAlaへの、またはProへの;HisからAsnへの、またはGlnへの;IleからLeuへの、またはValへの;LeuからIleへの、またはValへの;LysからArgへの、Glnへの、またはGluへの;MetからLeuへの、Tyrへの、またはIleへの;PheからMetへの、Leuへの、またはTyrへの;SerからThrへの;ThrからSerへの;TrpからTyrへの;TyrからTrpへの;および/またはPheからValへの、Ileへの、またはLeuへの置換。
【0180】
5.3 特異性
用語「特異性」、「特異的に結合する」または「特異的な結合」は、特定の結合単位、例えばISVDが十分に高い親和性で結合することができる、同じ生物からの抗原などの異なる標的分子の数を指す(下記を参照)。「特異性」、「特異的に結合する」または「特異的な結合」は、本明細書において、「選択性」、「選択的に結合する」または「選択的な結合」と同義的に使用される。結合単位、例えばISVDは、好ましくはその指定された標的に特異的に結合する。
【0181】
結合単位の特異性/選択性は、親和性に基づいて決定することができる。親和性は、分子相互作用の強度または安定性を表す。親和性は、一般的に、モル/リットル(またはM)の単位において発現されるKD、または解離定数によって示される。親和性はまた、1/KDに等しく、(モル/リットル)-1(またはM-1)の単位において発現される会合定数、KAとして表すこともできる。
【0182】
親和性は、部分と標的分子上の結合部位との間の結合強度の尺度であり:KD値が低いほど、標的分子と標的化部分との間の結合強度はより強くなる。
【0183】
典型的には、本技術で使用される結合単位(例えばISVD)は、その標的に、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満、好ましくは10-7~10-12モル/リットルまたはそれ未満、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)で(すなわち10~1012リットル/モルまたはそれより多く、好ましくは10~1012リットル/モルまたはそれより多く、より好ましくは10~1012リットル/モルの会合定数(KA)で)結合する。
【0184】
一般的に、10-4モル/リットルより大きいあらゆるKD値(または10リットル/molより低いあらゆるKA値)が、非特異的な結合を示すとみなされる。
【0185】
生物学的な相互作用のKD、例えば、特異的とみなされる免疫グロブリン配列の抗原への結合のKDは、典型的には、10-5モル/リットル(10000nMまたは10μM)~10-12モル/リットル(0.001nMまたは1pM)またはそれ未満の範囲内である。
【0186】
したがって、特異的/選択的な結合は、同じ測定方法、例えばSPRを使用した場合、結合単位(またはそれを含むポリペプチド)は、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満のKD値で、TCRおよび/またはGPC3に結合し、関連する標的に10-4モル/リットルより大きいKD値で結合することを意味する場合がある。GPC3の関連する標的の例は、GPC1、GPC2、GPC4、GPC5またはGPC6である。したがって、本技術の一実施形態において、GPC3に結合するポリペプチド中に含まれるISVDは、GPC3に、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満のKD値で結合し、同じ種のGPC1、GPC2、GPC4、GPC5およびGPC6に、10-4モル/リットルより大きいKD値で結合する。
【0187】
したがってポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較した場合、ヒトTCRおよびヒトGPC3の少なくとも半分の結合親和性、より好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を好ましくは呈し、この場合、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0188】
特定の種からの特定の標的への特異的な結合は、結合単位が、異なる種からの類似した標的にも特異的に結合する可能性があることを排除しない。例えば、ヒトTCRへの特異的な結合は、結合単位(またはそれを含むポリペプチド)が、カニクイザルからのTCRにも特異的に結合する可能性があることを排除しない。同様に、例えば、ヒトGPC3への特異的な結合は、結合単位(またはそれを含むポリペプチド)が、カニクイザル(「cyno」)からのGPC3にも特異的に結合する可能性があることを排除しない。
【0189】
ヒトTCRに結合し、本技術のポリペプチドに含まれる配列番号2を有するISVDは、WO2016/180969A1に記載されているISVD T0170056G05と比較して、改善された結合特性を呈する。より具体的には、配列番号2を有するISVDは、T017056G05に由来し、ISVD T0170056G05と比較して、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)TCRへの結合に関して改善された交差反応性をもたらすCDR1およびCDR3における特異的突然変異を含む。
【0190】
一方のISVDが別のISVDと比較して「ヒトおよび非ヒト霊長類のTCRへの結合に関して改善された交差反応性」を呈する、と言われる場合、これが意味するところは、前記ISVDに関して、ヒトTCRに対するおよび非ヒト霊長類TCRに対する結合活性の比(例えばKDまたはkoffで表した)が、同じアッセイで他のISVDに対して計算された同じ比よりも低いことである。
【0191】
ヒトおよび非ヒト霊長類のTCRへの結合に関する良好な交差反応性によって、非ヒト霊長類に対して行われた前臨床研究における多重特異性T細胞誘導ポリペプチドの傷害性の評価が可能になる。
【0192】
結合単位の、その指定された標的への特異的な結合は、それ自体公知のあらゆる好適な方式、例えば、スキャッチャード分析および/または競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫検査法(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイ、ならびにそれ自体当業界において公知のそれらの様々な改変法;加えて本明細書で述べられる他の技術で決定することができる。
【0193】
解離定数は、当業者には明らかであろうが、実際の解離定数であってもよいし、または見かけの解離定数であってもよい。解離定数を決定するための方法は、当業者には明らかであり、その例としては、下記で述べられる技術が挙げられる。この点において、10-4モル/リットルまたは10-3モル/リットルより大きい(例えば10-2モル/リットルの)解離定数を測定できない可能性があることも明らかであろう。場合により、当業者には明らかであろうが、(実際の、または見かけの)解離定数は、[KD=1/KA]という関係によって、(実際の、または見かけの)会合定数(KA)に基づき計算することができる。
【0194】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、それ自体公知の様々な技術、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術を介して測定することができる(例えばOberら、2001、Intern.Immunology 13:1551~1559を参照)。用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書で使用される場合、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイムの生体特異的な相互作用の分析を可能にする光学現象を指し、この場合、一方の分子がバイオセンサーチップに固定され、他方の分子が流動条件下で固定された分子上を通過することで、kon、koff測定値、したがってK(またはK)値が得られる。これは、例えば、周知のBIAcore(登録商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare社、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、NJ)を使用して実行することができる。さらなる説明に関しては、Jonssonら(1993、Ann.Biol.Clin.51:19~26)、Jonssonら(1991 Biotechniques 11:620~627)、Johnssonら(1995、J.Mol.Recognit.8:125~131)、およびJohnnsonら(1991、Anal.Biochem.198:268~277)を参照されたい。
【0195】
生体分子の相互作用の親和性を決定するための別の周知のバイオセンサー技術は、バイオレイヤー干渉法(BLI)である(例えばAbdicheら、2008、Anal.Biochem.377:209~217を参照)。用語「バイオレイヤー干渉法」または「BLI」は、本明細書で使用される場合、2つの表面:内部参照層(参照ビーム)およびバイオセンサーチップ上の固定されたタンパク質の層(シグナルビーム)から反射した光の干渉縞を分析する、標識なしの光学技術を指す。バイオセンサーのチップに結合した分子の数の変化は、波長シフト(nm)として報告される干渉縞におけるシフトを引き起こし、その規模が、バイオセンサーチップ表面に結合した分子の数の直接の尺度である。相互作用はリアルタイムで測定できるため、会合および解離速度ならびに親和性を決定することができる。BLIは、例えば、周知のOctet(登録商標)システム(ForteBio、Pall Life Sciences、Menlo Park、USAの一部門)を使用して実行することができる。
【0196】
代替として、親和性は、KinExA(登録商標)プラットフォーム(Sapidyne Instruments Inc、Boise、USA)を使用する反応速度論除外アッセイ(Kinetic Exclusion Assay;KinExA)(例えばDrakeら、2004、Anal.Biochem.、328:35~43を参照)で測定することができる。用語「KinExA」は、本明細書で使用される場合、改変されていない分子の真の平衡結合親和性および速度論を測定するための溶液ベースの方法を指す。抗体/抗原複合体の平衡化溶液を、抗原(または抗体)でプレコーティングされたビーズを有するカラム上に通過させることで、遊離の抗体(または抗原)をコーティングされた分子に結合させることができる。このようにして捕獲された抗体(または抗原)の検出は、抗体(または抗原)と結合する蛍光標識したタンパク質を用いて達成される。
【0197】
GYROLAB(登録商標)イムノアッセイシステムは、自動化された生物学的な分析および迅速なサンプルの回転のためのプラットフォームを提供する(Fraleyら、2013、Bioanalysis 5:1765~74)。
【0198】
5.4 (インビボにおける)半減期の延長
ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含んでいてもよく、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有さない対応するポリペプチドと比較して、増加した(インビボにおける)半減期を有するポリペプチドを提供する。インビボにおける半減期の延長は、例えば、ポリペプチドが、投与された後、哺乳動物、例えばヒト対象において増加した半減期を呈することを意味する。半減期は、例えばt1/2ベータとして表することができる。
【0199】
基、残基、部分または結合単位のタイプは、一般的に制限されず、例えば、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小タンパク質またはペプチドからなる群から選択することができる。
【0200】
より具体的には、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン、または血清免疫グロブリン、例えばIgGに結合することができる結合単位からなる群から選択することができ、好ましくはヒト血清アルブミンに結合することができる結合単位である。結合単位は、好ましくはISVDである。
【0201】
例えば、WO04/041865は、血清アルブミンに結合する(特にヒト血清アルブミンに対する)Nanobodies(登録商標)であって、前記タンパク質の半減期を増加させるために他のタンパク質(例えば望ましい標的に結合する1種またはそれ以上の他のNanobodies)に連結されていてもよいものを記載している。
【0202】
国際出願WO06/122787は、(ヒト)血清アルブミンに対する多数のNanobodies(登録商標)を記載している。これらのNanobodies(登録商標)としては、Alb-1(WO06/122787では配列番号52)およびそれらのヒト化バリアント、例えばAlb-8(WO06/122787では配列番号62)と称されるNanobody(登録商標)が挙げられる。これらもまた、治療用タンパク質およびポリペプチドならびに他の治療的な実体または部分の半減期を延長するのに使用することができる。
【0203】
さらに、WO2012/175400は、Alb-23と称されるAlb-1のさらに改善されたバージョンを記載している。
【0204】
好ましい実施形態において、ポリペプチドは、Alb-1、Alb-3、Alb-4、Alb-5、Alb-6、Alb-7、Alb-8、Alb-9、Alb-10およびAlb-23、好ましくは、WO2012/175400の7~9頁で示されるようなAlb-8もしくはAlb-23またはそのバリアント、ならびに、WO2012/175741、WO2015/173325、WO2017/080850、WO2017/085172、WO2018/104444、WO2018/134235、WO2018/134234に記載されるアルブミンバインダー、から選択される血清アルブミン結合部分を含む。一部の好ましい血清アルブミンバインダーは、表A-4にも示される。ポリペプチドの特に好ましいさらなる構成要素は、項目Dに記載される通りである:
D.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号9のアミノ酸配列であるかまたは配列番号9と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列であるかまたは配列番号13と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0205】
このようなヒト血清アルブミンに結合するISVDの好ましい例は、表A-2にISVD ALB23002に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(前述の項目Dで定義されたCDRに加えて)、ISVD ALB23002(配列番号5、表A-1およびA-2を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0206】
項目Dはまた、Kabat定義を使用して以下の通りに記載することもできる:
D’.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号34のアミノ酸配列であるかまたは配列番号34と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号38のアミノ酸配列であるかまたは配列番号38と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列であるかまたは配列番号17と2もしくは1つのアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
好ましくは、配列番号34のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号38のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
ISVD。
【0207】
このようなヒト血清アルブミンに結合するISVDの好ましい例は、表A-2-1にISVD ALB23002に関して示されるように、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)フレームワーク領域を含み(前述の項目D’で定義されたCDRに加えて)、ISVD ALB23002(配列番号5、表A-1およびA-2-1を参照)の全長アミノ酸配列からなるISVDであることが最も好ましい。
【0208】
また、好ましい実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と、90%を超える、例えば95%を超える、または99%を超える配列同一性を呈していてもよく、CDRは、前述の項目DまたはD’で定義された通りである。特に、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列である。
【0209】
このようなヒト血清アルブミンに結合するISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目DまたはD’)と比べて少なくとも1つのCDRにおいて2または1つのアミノ酸の差異を呈する場合、ISVDは、配列番号5に記載の構築物ALB23002のように、ヒト血清アルブミンの少なくとも半分の結合親和性、好ましくはそれと少なくとも同じ結合親和性を呈し、この場合、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0210】
このようなヒト血清アルブミンに結合するISVDは、C末端の位置にある場合、C末端アラニン(A)またはグリシン(G)の伸長(好ましくはA)を呈示することができ、このようなISVDは、配列番号83、85、87、89、91、93、95、96および98、最も好ましくは配列番号96から選択されるのが好ましいが、これは、単一のアラニン伸長を有する配列番号5を表す(下記の表A-4を参照)。一部の実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、C末端の位置とは別の位置にあり(すなわち、ポリペプチドのC末端のISVDではない)、配列番号5、82、84、86、88、90、92、94および97から選択される(下記の表A-4を参照)。
【0211】
5.5 核酸分子
本明細書に開示されるようなポリペプチドをコードする核酸分子も提供される。
【0212】
「核酸分子」(「核酸」と同義的に使用される)は、ヌクレオチド配列を形成するためにリン酸主鎖を介して互いに連結されたヌクレオチド単量体の鎖である。核酸は、例えばポリペプチドの発現および/または生産のために、宿主細胞または宿主生物を形質転換/トランスフェクトするのに使用することができる。生産目的のための好適な宿主または宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、あらゆる好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞株、またはあらゆる好適な真菌、原核もしくは真核生物であり得る。ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主または宿主細胞も、本技術に包含される。
【0213】
核酸は、例えばDNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであってもよいし、PNAのような(例えば化学的に)修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよい。核酸は、一本鎖であってもよいし、または二本鎖であってもよく、好ましくは二本鎖DNAの形態である。例えば、ヌクレオチド配列は、ゲノムDNAまたはcDNAであってもよい。
【0214】
核酸は、それ自体公知の方式で調製するかまたは得てもよいし、および/または好適な天然源から単離してもよい。天然に存在する(ポリ)ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列変化を有するポリペプチドをコードする核酸分子が提供されるように、部位特異的変異誘発に供してもよい。また当業者には明らかであろうが、核酸を調製するために、いくつかのヌクレオチド配列、例えば標的化部分をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、例えば1つまたはそれ以上のリンカーをコードする核酸も、好適な方式で一緒に連結されていてもよい。
【0215】
核酸を生成するための技術は当業者には明らかであり、その例としては、これらに限定されないが、自動DNA合成;部位特異的変異誘発;2つまたはそれ以上の天然に存在する配列および/または合成配列(または2つまたはそれ以上のそれらの一部)を組み合わせること、短縮化された発現産物の発現をもたらす突然変異の導入;1つまたはそれ以上の制限部位の導入(例えば、好適な制限酵素を使用して容易に消化および/またはライゲートすることができるカセットおよび/または領域を作り出すため)、ならびに/または1つまたはそれ以上の「ミスマッチ」プライマーを使用するPCR反応による突然変異の導入を挙げることができる。
【0216】
5.6 ベクター
本明細書に開示されるようなポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターも提供される。本明細書で使用されるベクターは、遺伝物質を細胞に運ぶのに好適な媒体である。ベクターとしては、裸の核酸、例えばプラスミドまたはmRNA、またはより大きい構造に埋め込まれた核酸、例えばリポソームもしくはウイルスベクターが挙げられる。
【0217】
ベクターは、一般的に、場合により、1つまたはそれ以上の調節エレメント、例えば1つまたはそれ以上の好適なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどに連結された少なくとも1つの核酸を含む。ベクターは、好ましくは発現ベクターであり、すなわち、好適な条件下で、例えばベクターが(例えばヒト)細胞に導入されたときに、コードされたポリペプチドまたは構築物を発現させるのに好適なベクターである。DNAベースのベクターの場合、これは通常、転写のためのエレメントの存在(例えばプロモーターおよびポリAシグナル)および翻訳のためのエレメントの存在(例えばコザック配列)を含む。
【0218】
好ましくは、ベクター中において、前記少なくとも1つの核酸および前記調節エレメントは、互いに「作動可能に連結」しており、これは、一般的に、それらが互いに機能的な関係にあることを意味する。例えば、プロモーターは、前記プロモーターがコード配列の転写および/または発現を開始させるかまたはそれ以外の方法でそれらを制御/調節することができる場合、コード配列に「作動可能に連結している」とみなされる(ここで前記コード配列は、前記プロモーターの「制御下」にあると理解されるべきである)。一般的に、2つのヌクレオチド配列が作動可能に連結している場合、それらは同じ方向となり、また通常は同じリーディングフレーム内にある。それらはまた通常は本質的に連続しているが、これもまたそうである必要はない場合もある。
【0219】
好ましくは、ベクターのいずれの調節エレメントも、それらが意図した宿主細胞または宿主生物においてそれらの意図した生物学的機能を提供できるようなものである。
【0220】
例えば、プロモーター、エンハンサーまたはターミネーターは、意図した宿主細胞または宿主生物において「作動可能である」はずであり、これは、例えば前記プロモーターが、ヌクレオチド配列、例えばそれに作動可能に連結したコード配列の転写および/または発現を開始させること、またはそれ以外の方法でそれらを制御/調節することが可能であるはずであることを意味する。
【0221】
5.7 組成物
【0222】
本技術はまた、少なくとも1つの本明細書に開示のようなポリペプチド、本明細書に開示のようなポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子、またはこのような核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを含む組成物も提供する。組成物は、医薬組成物であり得る。組成物は、少なくとも1種の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/もしくはアジュバントをさらに含んでいてもよく、場合により、1種またはそれ以上のさらなる医薬的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む。
【0223】
5.8 宿主生物
本技術はまた、本明細書に開示されるようなポリペプチド、本明細書に開示されるようなポリペプチドをコードする核酸、および/または本明細書に開示されるようなポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞または宿主生物にも関する。
【0224】
好適な宿主細胞または宿主生物は当業者に明らかであり、例えば、あらゆる好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞株、またはあらゆる好適な真菌、原核もしくは真核生物である。具体的には例としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌(Escherichia coli)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。最も好ましい宿主は、ピチア・パストリスである。
【0225】
5.9 ポリペプチドの方法および使用
本技術はまた、本明細書に開示されるようなポリペプチドを生産するための方法も提供する。本方法は、宿主細胞または宿主生物を、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換/トランスフェクトすること、宿主中でポリペプチドを発現させること、場合により、それに続いて、1つまたはそれ以上の単離および/または精製工程を含んでいてもよい。
具体的には、本方法は、:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中で、または別の好適な発現系中で、ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させること;場合により、それに続いて:
b)ポリペプチドを単離および/または精製すること
を含んでいてもよい。
【0226】
生産目的のための好適な宿主細胞または宿主生物は当業者には明らかであり、例えば、あらゆる好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞株、またはあらゆる好適な真菌、原核もしくは真核生物であり得る。具体的な例としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌またはピチア・パストリスが挙げられる。最も好ましい宿主は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0227】
記載されるポリペプチド、核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物は - 好ましくはポリペプチドまたはそれを含む組成物 - 医薬として有用である。
【0228】
したがって、本技術は、医薬としての使用のための、記載されるポリペプチド、核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物を提供する。
【0229】
また、がんの処置における使用のための、記載されポリペプチド、核酸分子もしくはベクター、またポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物も提供される。
【0230】
さらに、がんを処置する方法であって、医薬的に活性な量の、記載されるポリペプチド、核酸分子またはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0231】
さらに、医薬組成物の調製における、ポリペプチド、記載される核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物の使用が提供される。
【0232】
さらに、好ましくはがんを処置するための、医薬組成物の調製における、ポリペプチド、記載される核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物の使用が提供される。
【0233】
がんは、あらゆるタイプのGPC3発現がんであり得る。がんは、好ましくは肝臓がんまたは肺がんであり、好ましくは肝臓がんである。肝臓がんは、肝細胞癌であるのが好ましい。肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、最も好ましくは扁平上皮癌(SCC)であるのが好ましい。
【0234】
好ましくは、GPC3発現がん細胞は、Huh7細胞と、(平均して)少なくとも半分の量のGPC3タンパク質、好ましくはそれと少なくとも同量のGPC3タンパク質(平均して)を発現する。Huh7細胞は、例えばNational Institutes of Biomedical Innovation、Health and Nutrition、JCRB Cell Bankから受託番号JCRB0403で公的に入手可能である。
【0235】
発現されたGPC3は、好ましくは細胞表面露出のGPC3を指す。細胞上の(細胞表面露出の)GPC3の発現(およびその量)は、例えばフローサイトメトリー、免疫組織化学、または実施例に記載されるような当技術分野で普通に知られているルーチンの方法によって容易に決定することができる。
【0236】
「対象」は、本技術に関して言及される場合、あらゆる動物であってもよく、好ましくは哺乳動物であってもよい。哺乳動物のなかでも、ヒトと非ヒト哺乳動物との区別がなされる場合がある。非ヒト動物は、例えばコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコ)、家畜(例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、またはブタ動物)、または一般的に調査目的および/または抗体生産のために使用される動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類、例えばカニクイザル、またはラクダ科動物、例えばラマまたはアルパカ)であり得る。
【0237】
予防および/または治療目的に関して、対象は、あらゆる動物であってもよく、より具体的には、あらゆる哺乳動物であってもよいが、好ましくはヒト対象である。
【0238】
物質(例えばポリペプチド、核酸分子およびベクターなど)または組成物は、あらゆる好適な投与経路によって、例えば経腸(例えば経口または直腸)または非経口(例えば皮膚上、舌下、頬側、経鼻、関節内、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、真皮下、または経粘膜)投与によって対象に投与することができる。好ましくは、非経口投与、例えば筋肉内、皮下または皮内投与である。最も好ましくは、皮下投与である。
【0239】
有効量の記載されるポリペプチド、核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物は、意図した処置結果を提供するために、対象に投与することができる。
【0240】
1つまたはそれ以上の用量が投与されてもよい。1つより多くの用量が投与される場合、用量は、ポリペプチド、組成物、核酸分子またはベクターの作用を最大化するために、好適な間隔で投与されてもよい。
【0241】
【表2】
【0242】
【表3】
【0243】
【表4】
【0244】
【表5】
【0245】
【表6-1】
【表6-2】
【0246】
【表7】
【0247】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【0248】
【表9】
【0249】
【表10】
【実施例
【0250】
6 実施例
6.1 実施例1:GPC3に特異的に結合するISVDの発見
2匹のラマおよび1匹のアルパカを、ヒトグリピカン-3アイソフォーム2前駆体[NP_004475;580 AA;ヒト(Homo sapiens)]をコードする配列を含有するDNA二本遺伝子ベクターで免疫化した。その後、動物を組換えヒトグリピカン-3(R&D Systems、カタログ番号2119-GP)でブーストした。
【0251】
最後の免疫原注射の後、血液サンプルを収集し、フィコール-ハイパック(Ficoll-Hypaque)を製造元(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ、US)の説明書に従って使用して末梢血単核球(PBMC)を調製し、全RNAを抽出し保存した。
【0252】
全RNAを、ISVDをコードする遺伝子断片を増幅するためのRT-PCRの出発材料として使用した。これらの断片をファージミドベクターpAX212にクローニングした。ファージを、標準的なプロトコール(Antibody Phage Display:Methods and Protocols(第1版、2002、O’BrianおよびAitken編、Humana Press、Totowa、NJ)に従って調製し、4℃での濾過滅菌の後、さらなる使用まで貯蔵した。各免疫化動物からファージライブラリーを構築し、ライブラリーサイズ3×10、6×10および8×10cfuを得た。
【0253】
ファージディスプレイライブラリーを、組換えタンパク質を使用してプローブした。簡単に言えば、ファージ粒子をビオチン化抗原(ヒトGPC3 R&DSystems、カタログ番号2119-GP;カニクイザルGPC3 DGPI DHS-HIS、自社生産(受託番号P51654;Q3-R358;S359-H559、S495A、S509A);標準的なプロトコールを使用してすべてビオチン化)に、50nM(2%Marvelおよび0.05%Tween20を補充したPBS中で)で、添加した。ビオチン化抗原を、ストレプトアビジンまたは抗ビオチンでコーティングされた磁気ビーズ(Invitrogen)上に捕獲した。非結合ファージを洗い流した(0.05%Tween20を補充したPBSを使用);結合したファージをトリプシン(PBS中1mg/mL)の添加により溶出させた。溶出させたファージを指数関数的に増殖する大腸菌(E.coli)TG-1細胞に感染させて、後続の選択ラウンド(ヘルパーファージによるレスキュー後)のために、および/または寒天プレート上にプレーティングした後の個々のクローンのスクリーニングのためにいずれかで使用した。このために、個々のコロニーを0.5mLの培地を含有する96ディープウェルプレートに選別し、一晩増殖させた。各クローンの一晩培養物80μLを2×TY中の60%グリセロールの40μLと混合し、-80℃で保存した。
【0254】
ISVDの小さいスケールの生産のために、96ディープウェルプレート(1mL体積)に一晩培養物を接種した。IPTGを1mMの最終濃度まで添加することによって、ISVD発現を誘導した。細胞ペレットを凍結し、100μLのPBS中でそれを溶解させることによって、ペリプラズム抽出物を調製した。死細胞片を遠心分離によって除去した。
【0255】
ペリプラズム抽出物を、ELISAで、ヒトおよびカニクイザルGPC3への結合に関してスクリーニングした。384ウェル高結合SpectraPlate(PerkinElmer、6007509)を、4℃で、1μg/mLのタンパク質(PBS中)で一晩コーティングした。次いでプレートを室温で少なくとも1時間ブロックした(PBS、1%カゼイン)。ペリプラズム抽出物の1:10希釈物(PBS、0.1%カゼイン、0.05%Tween20中)を室温で1時間添加した。非結合のペリプラズム抽出物を洗い流し(0.05%Tween20を補充したPBS)、結合したISVDを、マウス抗FLAG-HRP(Sigma-Aldrich、カタログ番号A8592)および後続の基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン;STD)の存在下での酵素反応を使用して検出した。
【0256】
ELISAで陽性ヒットをDNAシーケンシングし、非重複クローンをヒトおよびカニクイザルGPC3でのオフレート、ならびにヒトおよびカニクイザルGPC3を発現する細胞への結合についてさらに分析した。
【0257】
ISVDのオフレートを、ProteOn XPR36装置(Bio-RadLaboratories,Inc.)で決定した。ProteOn GLCセンサーチップを、カニクイザルグリピカン-3 ΔGPI-HIS(自社生産;受託番号P51654;Q3-R358;S359-H559)およびヒトGPC3(R&DSystems、カタログ番号2119-GP)でコーティングした。ペリプラズム抽出物を、ProteOn PBS Tween緩衝液(PBS、pH7.4、0.005%Tween20(167-2720、BioRad))で1:10に希釈した。実験を25℃で実行した。得られたデータを、参照レーンの減算ならびにブランク緩衝液注入の減算によって二重参照した。処理した曲線を、ラングミュア解離(オフレート分析)モデルに基づくオフレート分析に使用した。
【0258】
それぞれ、ヒトGPC3(受託番号P51654;Q25-R358、S359-H580)またはカニクイザルGPC3(受託番号P51654;Q3-R358;S359-H559)のいずれかを発現するCHO Flp-In細胞(Invitrogenカタログ番号K6010)を使用して、フローサイトメトリーでペリプラズム抽出物をヒトおよびカニクイザルGPC3結合についてスクリーニングした。簡単に言うと、1×10個の細胞を1:5に希釈したペリプラズム抽出物中で4℃で30分間インキュベートし、次いで3回洗浄した。対照として、親CHO Flp-In細胞株(Invitrogenカタログ番号K6010)を含めた。次に、細胞を1μg/mLのモノクローナル抗FLAG(登録商標)M2抗体(Sigma-Aldrich、カタログ番号F1804)と共に4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄し、ヤギ抗マウスPE標識抗体(1:100;Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-115-164)と共に4℃で30分間インキュベートした。サンプルを洗浄し、5nMのTOPRO3(Molecular Probes、カタログ番号T3605)を補充したFACS緩衝液(10%FBS(Sigma)および0.05%アジ化ナトリウム(Merck)を含むD-PBS(Gibco))に再懸濁した。次いで、細胞懸濁液をFACSアレイ上で分析した。前方/側方散乱およびTOPRO3チャネル蛍光パラメーターを使用して、生で、無傷の細胞に対してゲーティングを設定した。非結合ISVDを含む対照条件について得られた値よりも高い平均PEチャネル蛍光値は、ヒットを示した。
【0259】
オフレート分析およびヒトおよびカニクイザルのGPC3発現CHO細胞への結合(表2)に基づいて、2つのISVDを選択した(表1)。
【0260】
【表11】
【0261】
【表12】
【0262】
6.2 実施例2:三重特異性GPC3 ISVDベースのT細胞エンゲージャーの生成
選択された抗GPC3 ISVD(表1の配列)を、N末端でTCRの定常ドメインに結合する固定したT細胞エンゲージャーISVD(T0170056G05、抗TCR)およびC末端で固定したアルブミン結合ISVD(ALBX00001)と共に、三重特異性構築物にフォーマット化した。構築物中のビルディングブロックは、フレキシブルな35GS(GlySerリンカー)によって遺伝学的に連結され、結果として様式抗TCR-35GS-抗GPC3-35GS-ALBX00001(表3)をもたらす。アミノ酸配列は、表A-6に示される。
【0263】
多価ISVDを、ピチア・パストリス中で発現させた。目的のISVD構築物を含有するP.パストリスNRRL Y-11430細胞をBGCM培地で増殖させた。その後、培地をBMCMに切り替え、構築物はさらに増殖させ、メタノールの段階的な添加によって誘導した。細胞を遠心分離し、上清(分泌されたISVDを含有する)を収集した。
【0264】
多価ISVDをプロテインA樹脂で精製し、続いて脱塩工程を行い、必要に応じてD-PBSで分取SECを行った。
【0265】
【表13】
【0266】
6.3 実施例3:三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーのT細胞依存性細胞傷害性
抗GPC3 ISVDを含有する三重特異性T細胞エンゲージャー(表3)を、T細胞依存性細胞傷害性アッセイ(TDC)で特徴付けた。GPC3の高発現を有する肝臓がん細胞株であるHepG2(ATCC、クローンHB8065)を、Nuclight Green(Essen Bioscience、カタログ番号4624)で標識し、A0226015A08またはA0226018C08(すなわち、それぞれ、構築物A022600031またはA022600027)を含む三重特異性T細胞エンゲージャー構築物の存在下での、様式抗TCR-35GS-抗GPC3-35GS-HLE(HLE=半減期エクステンダー)で参照GPC3結合単一抗体ドメイン(Ab1)を有する構築物の存在下での、T細胞死滅のための標的として使用した。この目的を達成するために、プレート(96ウェルF底、Greiner、カタログ番号655180)を200μL/ウェルのアッセイ培地でプレブロックした(2時間、37℃)。各アッセイ成分の同時添加を、総量200μL/ウェルで実行した:(1)50μLの希釈/滴定化合物(Nbs;Brefeldin A(Sigma-Aldrich、カタログ番号B7651));(2)25μLの希釈HSA (Sigma-Aldrich、カタログ番号A8763-10G)(最終濃度:30μM);(3)25μLの希釈Cytotox Red(Essen Bioscience、カタログ番号4632)(最終濃度:250nM)(4)15:1の比にある、50μLのヒトT細胞(T細胞は、RosetteSep T細胞濃縮カクテル(StemCell、カタログ番号15061)を使用してバフィーコート(Red Cross)から分離した)および50μLのHepG2 Nuclight green(DNEM中新鮮、高グルコース、GlutaMAX、ピルビン酸、Life Technologies-Gibco、カタログ番号31966)。全ての3つのチャンネル(位相差、緑色および赤色)での読取り向けに、4または6時間の間隔で、合計72時間、プレートをIncuCyte ZOOMの中に置いた。
【0267】
試験した三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャーは、図1に示すように、HepG2 Nuclight greenのヒトT細胞媒介性死滅を用量依存的に誘導した。IC50値および死滅の最大パーセンテージは表4に示される。
【0268】
【表14】
【0269】
6.4 実施例4:GPC3バインダーのエピトープビニング
抗GPC3 ISVDのエピトープビニングをフローサイトメトリーを介して行い、1価ISVD A0226015A08またはA0226018C08のペリプラズム抽出物が、精製した三重特異性様式のISVDと競合することを可能にした。この目的を達成するために、4×10個のヒトGPC3 CHO Flp-In細胞(参照、実施例1を参照)を、ペリプラズム抽出物の1/15および1/150の希釈物、150nMの競合物(三重特異性ISVD様式;過飽和濃度)ならびに0.2μg/mLのモノクローナル抗FLAG(登録商標)M2抗体(Sigma-Aldrich、カタログ番号F1804)およびラット抗マウスAPC(BD-Pharmingen、カタログ番号550874)と共に、室温および300rpmで5時間インキュベートした。サンプルをiQue Screenerで読み出した。A0226015A08とA0226018C08の間に競合は観察されず、したがって、これらが異なる、非重複のエピトープに結合することが明らかとなった。
【0270】
6.5 実施例5:GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーのための様式の最適化
表3に記載される様式のGPC3 ISVD T細胞エンゲージャーは、死滅の最大パーセンテージによって示されるように、T細胞依存性細胞傷害性(TDC)HepG2 Nuclight greenアッセイにおいて完全な効能に達しない(実施例3)。効力および効能を高めるために、抗GPC3 ISVDが、N末端で、抗TCR ISVD T0170056G05の配列最適化されたバリアント、すなわちT017000624と、C末端で、アルブミン結合ISVD、ALB23002-A(C末端単一のアラニン伸長を有する配列番号5)と、構築物の中央位置のGPC3結合ISVDとで、組み合わされている、三重特異性構築物を生成した(表5および6)。最適化は2つの工程を包含した:工程1 - 抗TCR ISVDと抗GPC3 ISVD(三重特異性3価様式)の間のリンカー長さの最適化;工程2 - バイパラトピックGPC3 ISVD T細胞エンゲージャー(三重特異性4価様式)の生成および2つのGPC3結合ISVD間のリンカー長さの最適化。アミノ酸配列は、表A-6に示される。
【0271】
生成された様式を、実施例3に記載されるように、TDC HepG2 Nuclight greenアッセイで試験した。工程1様式および工程2様式の分析を、それぞれ播種72時間後または60時間後に実行した。
【0272】
表5および6は、TDC HepG2 Nuclight greenアッセイにおける様式最適化の、それぞれ、工程1および工程2における様々な様式のIC50値および最大%の死滅を示す。
【0273】
工程1において、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーは、抗TCR ISVDと抗GPC3 ISVDの間のリンカーの長さを短くすることに伴い、72%(35GSリンカー)から94%(AAAリンカー)へと、向上した効能を有する細胞腫瘍死滅(向上した最大死滅)を示した(図2)。工程2において、A0226018C08とA0226015A08を、同じ構築物内で組み合わせ、2つのビルディングブロック間で異なる配置で異なるリンカー長さを用いて配置している、GPC3バイパラトピックT細胞エンゲージャーを試験した。ここで、効能に対する試験した変数の影響は観察されなかった(図3)。
【0274】
【表15】
【0275】
【表16】
【0276】
高レベルのHepG2と比較して中間レベルのGPC3を発現する肝がん細胞株を死滅させる能力を評価するために、TDC Huh7アッセイを実行した。この目的を達成するために、xCELLigence(登録商標)(Acea)システムを使用した。まず、4×濃度(120μM)のAlburex 20ヒト血清アルブミン(CSL Behring、カタログ番号2160-979)と共に50μLのアッセイ培地(最終アッセイ濃度30μM)を含有する96ウェルE-プレート(Acea、カタログ番号5232368001)を、バックグラウンド測定のためにxCELLigence(登録商標)内部に置いた。バックグラウンド測定後、各アッセイ成分の同時添加を総量200μL/ウェルまで実行した:(1)50μLの希釈/滴定化合物;(2)50μLのHuh7(HSRRB、クローンJCRB0403)の単一細胞懸濁液;(3)エフェクター:標的比15:1にマッチする、エフェクター細胞(ヒトT細胞、実施例3に記載されるように得られる)50μLの単一懸濁液。プレートを、15分間隔での400スイープの条件でxCELLigence(登録商標)中に置いた。適切な時点(約60時間)で、電気抵抗値(CI)を分析したが、この場合、0のCIは100%死滅を表した。
【0277】
GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の第3の工程において、抗TCR ISVD T017000624を、3価様式および4価様式のシーケンシングされた最適化バリアントT017000680(TCE01、配列番号2)で置換した。効力および効能を、上述した通り、HepG2およびHuh7 TDCアッセイで評価した。様式、その説明、および機能性は表7に要約される。データは図4に図示される。様式最適化の第3の工程により、構築物全体で効能のさらなるわずかな向上がもたらされた。このエクササイズから、GPC3 T細胞エンゲージャー様式A022600167およびA022600168を先に進めた。
【0278】
GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の工程4は、抗GPC3 ISVDと抗TCR ISVDの配置を変更することで構成されたが、このことは効能に関する効力に対して影響を与えた(表8、図5)。3価様式の場合、死滅効能は失われた。4価様式の場合、効力および効能が低下していようが、機能性は依然として観察することができた;死滅効能は、HepG2 Nuclight greenでは20%だけ、Huh7では40%だけ低下した。さらに、抗アルブミンISVDと抗GPC3 ISVDの配置を変更することはまた、死滅の効能に対して影響を有した。このエクスサイズから、GPC3 T細胞エンゲージャー様式A022600167およびA022600168に変更はなされなかった。
【0279】
GPC3 T細胞エンゲージャーの様式最適化の工程5は、リンカー長さを変化させることで構成された(表9、図6)。3価様式の抗アルブミンISVDの前のリンカー長さを短くすると、効能の低下がもたらされた。これは4価様式では見られず、したがってこの場合、9GS~35GSのリンカー長さを選択することができる。
【0280】
GPC3 T細胞エンゲージャー様式のセットから、A022600167およびA022600168は、TDCアッセイにおいて最も高い効力および効能を備える三重特異性の3価および4価の様式を表す。効能は匹敵するが、3価様式A022600167と4価様式A022600168とは効力が異なる。HepG2 TDCアッセイにおいて、A022600167はA022600168よりも5分の1小さい効力であるが、一方、Huh7 TDCアッセイにおいてその差は50倍に増加する。
【0281】
【表17】
【0282】
【表18】
【0283】
【表19】
【0284】
6.6 実施例6:可溶性GPC3の存在下でのT細胞活性化誘導の評価
GPC3は可溶性の形態で循環中に放出され、HCC患者の最大50%においてレベルが増加する場合がある。循環中の可溶性GPC3抗体凝集体によって、免疫複合体の沈着および関連する傷害性にいたる恐れがある。したがって、GPC3 T細胞エンゲージャーの存在下で可溶性GPC3のT細胞活性化に対する効果を評価することが重要である。
【0285】
GPC3の報告された血清レベルは、0.1~10nMに相当する10~300ng/mLの間で変動する可能性がある。評価を、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーA022600167および168の存在下で、1、10、および100nMの可溶性GPC3を使用して、3つの方法で行った:
(1)標的細胞(Huh-7)および可溶性GPC3の存在下での細胞傷害性(図7A):可溶性GPC3の非存在下と比較して、追加の死滅は観察されなかった;
(2)標的細胞および可溶性GPC3の存在下でのCD69の上方制御(図7B):可溶性GPC3の非存在下と比較して、追加のT細胞活性化は観察されなかった;
(3)標的細胞の非存在下および可溶性GPC3の存在下でのCD69の上方制御(図7C):T細胞の活性化は見られなかった。したがって、可溶性GPC3の上昇した血清レベルに起因する傷害性効果のリスクは低いと考えられる。
【0286】
Huh-7に対する細胞傷害性アッセイを、実施例5に記載されているように実行した。T細胞上のCD69発現を、抗CD69抗体(BD Pharmigen、カタログ番号557050)および抗マウスIgG1抗体(BD Pharmigen、カタログ番号556650)を使用するフローサイトメトリーによって決定した。
【0287】
6.7 実施例7:GPC3媒介性T細胞エンゲージャー内部移行
GPC3は内部移行することが知られており、その内部移行速度は化合物の効能に対して影響を有する可能性がある。A022600167およびA022600168と等価の三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの、および参照CD3-GPC3二重特異性T細胞エンゲージャー抗体(Ab2)の存在下での内部移行速度およびGPC3受容体密度を(表10)、Huh-7細胞で48時間の時間経過にわたり評価した。
【0288】
内部移行を、A022600167およびA022600168およびAb2をpHAb(Promega、カタログ番号G9841)で、これはpH>7では低蛍光および溶液のpHが酸性になると蛍光の増強を有するpHセンサー色素であるが、標識することによって、決定した。この標識に当たり、標識の単一部位挿入を有するように、C末端に外部の-GGCを備える様式を生成した(表10):A022600167-GGCはA022600370に対応し、A022600168-GGCはA022600372に対応し、対照としてGPC3 ISVDのない様式、A022600373を生成した。アッセイを、黄色レーザーを備えるBD FACSArrayで読み出した(pHAb:532nmで励起最大、560nmで発光最大)。内部移行速度を、0.5時間での4℃と比較して、37℃での様々な時点(0.5時間、3時間、24時間および48時間)での内部移行を定量化することによって決定した(表10、図8A)。
【0289】
受容体の発現を、A02260018C08およびA02260015A08とは異なるGPC3エピトープに結合する固定濃度の3×FLAG-His6タグ付きISVD(20nM)を、赤色レーザーを備えるBD FACSArray上で検出するためのAPC標識抗FLAGと組み合わせで使用して、決定した(表10、図8B)。
【0290】
内部移行速度を、任意の単位を有する反応速度論曲線のスロープとして計算した。三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーは、参照二重特異性T細胞エンゲージャーAb2よりも遅い内部移行速度を示す。GPC3結合ISVD(A022600373)のない対照様式が内部移行を示さないので、GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの内部移行は、GPC3媒介性である。48時間以内のGPC3細胞表面発現の減少はまったく観察されなかった(表10、図8)。
【0291】
【表20】
【0292】
6.8 実施例8:がん細胞株のGPC3発現プロファイリングおよびGPC3 T細胞エンゲージャーの機能性との相関
がん細胞株のパネルに関するGPC3タンパク質発現レベルを、免疫細胞化学(ICC)および製造業者の説明書に従ってQIF1KIT(登録商標)(Dako、カタログ番号K0078)を使用することの両方によって決定した(表11)。加えて、免疫組織化学(IHC)を、肝細胞癌サンプルおよび正常腎臓サンプルで実行した。
【0293】
ICCおよびIHCを、Ventana discovery XTロボット(Ventana medical system、Roche)を使用して実行した。細胞株および組織サンプルを最初に4%ホルマリンで固定し、その後パラフィン包埋した。脱パラフィン後、細胞を緩衝液CC1標準(Ventana、カタログ番号950-124)を用いて95℃の温度で48分間コンディショニングし、続いてBlocker AおよびB(Ventana、カタログ番号760-104)のそれぞれを用いて4分間のブロッキング工程を行った。マウスモノクローナルIgG2a抗GPC3抗体(Ventana、カタログ番号790-4564)を室温で60分間適用し、続いて5MのNaCl中の0.05%グルタルアルデヒド(Prolabo、カタログ番号20879-238)で4分間の固定を行った。抗体希釈剤(Ventana;カタログ番号760-108)中1/200希釈でのビオチン化ヤギ抗マウスIgG2a抗体(Southern Biotech、カタログ番号1080-080)を室温で32分間適用した。検出を、DABMap Kit(Ventana;カタログ番号760-124)を用いて実行した。切片をヘマトキシリンII(Ventana、カタログ番号790-2208)で4分間対比染色し、青味剤(Ventana、カタログ番号760-2037)で4分間色出しを行い、続いて脱水、および、Cytoseal XYL(Richard-Allan Scientific、カタログ番号8312-4)での封入を行った。細胞の染色強度(0:染色なし、1(または+):弱、2(または++):中度;3(または+++)):強として等級付け)と、あらゆる強度カテゴリーにおける陽性細胞のパーセンテージとの両方に関する半定量的評価によって、免疫組織化学的染色を評価した。ヒストスコア(Hスコア)を以下の式に従って算出した:
Hスコア=3×(等級3の細胞の%)+2×(等級2の細胞の%)+1×(等級1の細胞の%)。
【0294】
文献(Detreら、J Clin Pathol 1995;48:876~878頁およびLuiら、Journal of Latex Class filed、2015年8月、第14巻、8号)に記載されているように、あり得るスコアの範囲は0から300までであった。HCCにおけるHスコアの決定は、GPC3の膜発現の評価に基づいた。
【0295】
QIFIKIT(登録商標)で決定されているように、試験した細胞株のパネル内で、Hep-G2(ATCC、クローンHB-8065;5.2E5受容体/細胞)が最も高いレベルのGPC3発現を示し、これにNCI-H661(ATCC、クローンHTB-183;3.4E5受容体/細胞)およびHuh-7(HSRRB、クローンJCRB0403;6.8E4受容体/細胞)が続いたが、後者を中間の発現細胞株とみなした。これらの細胞株は、重要なGPC3発現固形腫瘍である肝臓がんおよび肺がんに由来した。ICCでなんら染色を示さなかった、低または極低のGPC3発現細胞株は、MKN-45(DSMZ、クローンACC409;1.5E4受容体/細胞)、NCI-H23(ATCC、クローンCRL-5800;2.6E3受容体/細胞)、BxPC-3(ATCC、クローンCRL-1687;1.5E3受容体/細胞)およびNCI-H292(ATCC、クローン)CRL-1848;6E2受容体/細胞)であった。
【0296】
がん細胞株と患者の腫瘍サンプルの間の比較の場合、両方についてHスコアを決定した。ICCにおけるGPC3陽性がん細胞株、すなわちHuh-7、NCI-H661およびHepG2は、80より優れたHスコアを示したが(表11)、これは、IHCにおけるGPC3陽性肝細胞癌(HCC)サンプルについて決定された平均Hスコア、80、75に相当する(表12)。正常な腎臓のGPC3陽性サンプルは平均Hスコア0.75を示し(表12)、一方、がん細胞株MKN-45、NCI-H23、BxPC-3およびNCI-H292はGPC3染色に関して陰性であった(表11)。これらの細胞株を、GPC3正常様発現レベルの細胞の代表とした。
【0297】
がん細胞株の同じパネルを用いる三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャーの機能性を評価するために、実施例5に記載されているように、xCELLigenceシステムを使用してTDCアッセイを実行した;結果は表13および図9に示される。GPC3高発現細胞株、Hep-G2およびNCI-H661の場合、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーA022600167およびA022600168は、二重特異性T細胞エンゲージャーAb2と比較して、同様の効力(NCI-H661)および10分の1低い効力(Hep-G2)を示す。中間の発現細胞株、Huh-7の場合、A022600168は、GPC3へのバイパラトピック結合を有する4価様式は、Ab2と同じ効力を示すが、一方、3価様式A022600167の効力は10分の1である。GPC3低発現細胞株、MKN-45およびBxPC-3の場合、Ab2はnM範囲の効力を示すが、一方、三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーは死滅効果をまったく示さない。極低のGPC3発現細胞株、NCI-H292の場合、化合物はいずれも効果を示さない。GPC3結合ISVDを欠くT細胞エンゲージャー、T017000698は、どの細胞株に対してなんら死滅効果を示さず、このことによって確認されるところは、三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャーのGPC3特異的効果である。
【0298】
結論として、Ab2は、細胞あたり1,000個の受容体およびHスコア0と低いGPC3発現レベルでがん細胞株を死滅させることができる効力のあるT細胞エンゲージャーである。それに対し、三重特異性T細胞エンゲージャー様式は、HCCサンプルおよび大細胞肺がんサンプルに類似のHスコアを有するGPC3高および中発現のがん細胞株を強力に死滅させるが、一方、細胞あたり受容体1万個未満でGPC3レベルを発現し、正常な腎臓サンプルの平均未満のHスコアを有する細胞株を、免れさせる。
【0299】
【表21】
【0300】
【表22】
【0301】
【表23】
【0302】
6.9 実施例9:A0226015A08およびA0226018C08の配列最適化
ISVD A0226015A08およびA0226018C08をさらに配列最適化した。
【0303】
配列最適化は、ISVDの1つまたはそれ以上の(望ましい)特性を改善するために、配列中の1つまたはそれ以上の特異的なアミノ酸残基を置き換えることを含む。
【0304】
このような配列最適化の一部の例は、本明細書に記載のさらなる説明で述べられており、その例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
1)ヒトVH3-JH生殖細胞系コンセンサス配列とより同一なISVD配列を得るための、親野生型ISVD配列における置換であり、これは、ヒト化と称されるプロセスである。この目的を達成するために、いわゆる特徴的な残基を除き、ISVDとヒトVH3-JH生殖細胞系コンセンサスとの間で異なるFR中の特定のアミノ酸が、タンパク質構造、活性および安定性が無傷のまま維持されるような方法でヒト対応物に変更される。
【0305】
2)ISVDの安定性を増加させるための、ラマ生殖細胞系に対する置換であり、これは、ラクダ化と定義される。この目的を達成するために、親野生型ISVDアミノ酸配列を、ISVDのラマIGHV生殖細胞系アミノ酸配列に対してアライメントする(ラマIGHV生殖細胞系に対するISVDのBlastP分析から上位のヒットとして同定された)。
【0306】
3)ここでも望ましい宿主細胞または宿主生物に応じて、貯蔵下での長期の安定性または特性を改善する置換、望ましい宿主細胞または宿主生物における発現レベルを増加させる置換、および/または(望ましくない)翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)を除去または低減する置換。
【0307】
4)11位におけるValに対する突然変異および89位におけるLeuに対する突然変異(Kabatの番号付けによる)は、あらゆる天然に存在する既存の抗体の結合を最小化する。
【0308】
A0226015A08の配列最適化は、親ISVDクローンA0226015A08と比較して13のアミノ酸置換(すなわちL11V、A14P、V23A、P40A、D52cE、N54Y、D73N、K76N、D79Y、K83R、G88A、V89L、F91Y)を含む、最終的な配列最適化されたバリアントA022600314(表14)をもたらした。
【0309】
A0226018C08の配列最適化は、親ISVDクローンA0226018C08と比較して、8つのアミノ酸置換(すなわちL11V、V23A、G54A、R60A、E81Q、T82aN、N83R、V89L)を含むA022600345と8つのアミノ酸置換(すなわちL11V、V23A、G54K、R60A、E81Q、T82aN、N83R、V89L)を含むA022600351との、2つの配列最適化されたバリアント(表14)をもたらした。
【0310】
【表24】
【0311】
親ISVDと比較した配列最適化バリアントの特性を、以下の通りに評価した:
実施例1に記載されるように、フローサイトメトリーによって、バリアントを、HepG2、Huh-7およびCHO Flip-Inカニクイザル-GPC3細胞への結合について評価した。
【0312】
バリアントの熱安定性を、Lightcycler(Roche)を使用するサーマルシフトアッセイ(TSA)で試験した。このアッセイでは、親ISVDおよびそのバリアントは、異なるpHで、SYPRO(商標)オレンジの存在下でインキュベートされ、温度勾配が適用される。ISVDが変性を開始させたら、SYPRO(商標)オレンジが結合し蛍光の上昇がもたらされ、その結果、特定のpHにつき融解温度(Tm)の決定が可能となる。
【0313】
結果は、表15および表16に要約される。
【0314】
【表25】
【0315】
【表26】
【0316】
親ISVD A0226015A08と比較して、A022600314は、ヒトGPC3またはカニクイザルGPC3を発現する様々な細胞株に対する結合効力において2分の1を下回る低下を呈した。Tmはわずかに5℃だけ、許容値内で低下した。A022600314の参照hIGHV3-23SO/IGHJ4と比較したフレームワーク領域のフレームワーク同一性%は、AbM定義に基づいて88.8%であり(KontermannおよびDubel(編)による、Antibody Engineering、第2巻、Springer Verlag Heidelberg Berlin、2010を参照)、Kabatの定義に基づいて85.1%である。
【0317】
親ISVD A0226018C08と比較して、ヒトGPC3またはカニクイザルGPC3を発現する様々な細胞株に対するバリアントA022600345およびA022600351の結合効力は、2倍上昇した。バリアントA022600345およびA022600351のTmは、それぞれ、75℃および74℃に上昇した。A022600345とA022600351の両方について、参照hIGHV3-23SO/IGHJ4と比較したフレームワーク領域におけるフレームワーク同一性%は、AbM定義に基づいて89.9%、Kabat定義に基づいて89.7%である。
【0318】
6.10 実施例10:三重特異性配列最適化GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーの生成
配列最適化GPC3 ISVDA022600314(A0226015A08の最適化バリアント)、A022600345およびA022600351(A0226018C08の最適化バリアント)を、表17に記載されるようなビルディングブロックとリンカー長さの最適な組合せの評価用の5つの三重特異性GPC3 T細胞エンゲージャー様式の生成のために使用した。
【0319】
【表27】
【0320】
実施例8に記載されているように、選択された5つの様式を、機能性について異なるがん細胞株を用いてxCELLingenceベースのTDCアッセイで試験した。結果は表18に表される。GPC3高および中発現の細胞株HepG2、NCI-H661およびHuh-7の場合、3価の様式と比較して、4価の様式についてはより高い効力が得られた。GPC3高発現の細胞株NCI-H661の場合、4価の様式A022600424およびA022600427は、A022600425およびA022600426よりも効力がある。GPC3低発現の細胞株、NCI-H23およびBxPC-3の場合、死滅効果の欠如を、すべての三重特異性GPC3 ISVD T細胞エンゲージャー様式に対して確認した。
【0321】
図10は、選択された5つのISVD様式に対して異なる3つのT細胞ドナーを使用する、細胞株NCI-H661およびBxPC-3によって例示される、xCELLingenceベースのTDCアッセイの用量依存性死滅曲線を示す。
【0322】
【表28】
【0323】
選択された5つ様式への既存の抗体の結合を、SPRベースのセットアップを使用して評価した(実施例14)。図11が示すところは、すべての様式に対して、低レベルの既存の抗体の結合のみが観察され、開発可能性の要件と適合したことである。
【0324】
ピチア・パストリスにおける成績を、5L発酵槽規模での上流処理(USP)過程の生成物力価および純度、ならびに下流処理(DSP)後の収率に焦点を合わせて、5つの様式について評価した(表19)。A022600424およびA022600426を、高分子量(HMW)種のパーセンテージが低いことと、RPC上でバリアントのパーセンテージが低いことと、高力価および最良の総合DSP収率とを兼ね備える、好ましいISVD開発候補として特定した。
【0325】
【表29】
【0326】
GPC3駆動性殺傷効力と、既存の抗体への結合の減少と、ピチアにおける成績との最良の組合せに基づいて、A022600424を開発候補として選択した。
【0327】
6.11 実施例11:GPC3、TCRabおよび血清アルブミンに対するA022600424の結合および親和性
以下に対するA022600424の、平衡解離定数(K)として表される親和性を、ProteOn XPR36を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって定量化した:ヒトおよびカニクイザルGPC3(それぞれ、R&DSystems、カタログ番号2119-GP、および自社生産(受託番号P51654、Q3-R358、S359-H559));ヒトおよびカニクイザルTCRab(どちらも自社生産、この場合、アルファ鎖およびベータ鎖の細胞外ドメインが二量体化向けにジッパーペプチドに融合されている;受託番号:ヒトアルファ鎖P01848、ヒトベータ鎖P01850;カニクイザルアルファ鎖の予測配列はヒトと同一である、カニクイザルβ鎖の予測配列は4つのaa:A125V、E136V、V167M、S177F、で異なる);ならびに、ヒト、カニクイザル、およびマウスの血清アルブミン(それぞれ、Sigmaカタログ番号A8763、動物組織由来の自社生産、DivBioScienceカタログ番号IMSA)。
【0328】
組換えGPC3タンパク質を、EDCおよびNHS化学反応(ランニング緩衝液:HBS-EP+、pH7.4)を使用して、アミンカップリングを介して、THE抗His抗体(Genscript、カタログ番号ABIN387699)を固定したGLCセンサーチップ(Biorad)上に捕獲した。精製したISVDを様々な濃度(0.3nM~1000nM)で2分間注入し(流速45μL/分)、解離を900秒間フォローした。10mMのグリシン-HCl(pH1.5)を1分間注入することによって(流速45μL/分)、再生を実行した。データを、参照リガンドレーンおよびブランク緩衝液注入を引くことにより二重参照した。処理したセンサーグラムを、ProteOn Manager3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用して、1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)に基づいて分析した。
【0329】
組換えTCRタンパク質を、EDCおよびNHS化学反応(ランニング緩衝液:HBS-EP+、pH7.4)を使用して、アミンカップリングを介してGLCセンサーチップ(Biorad)上に固定した。精製したISVDを様々な濃度(0.2nM~200nM)で2分間注入し(流速90μL/分)、解離を900秒間フォローした。3MのMgClを3分間注入することによって(流速45μL/分)、再生を実行した。データを、参照リガンドレーンおよびブランク緩衝液注入を引くことにより二重参照した。処理したセンサーグラムを、ProteOn Manager3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用して、1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)に基づいて分析した。
【0330】
血清アルブミンタンパク質を、EDCおよびNHS化学反応(ランニング緩衝液:HBS-EP+、pH7.4)を使用して、アミンカップリングを介して、GLCセンサーチップ(Biorad)上に固定した。精製したISVDを様々な濃度(0.24nM~500nM)で2分間注入し(流速45μL/分)、解離を900秒間フォローした。10mMのグリシン-HCl(pH1.5)を47秒間注入することによって(流速100μL/分)、再生を実行した。データを、参照リガンドレーンおよびブランク緩衝液注入を引くことにより二重参照した。処理したセンサーグラムを、ProteOn Manager3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用して、1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)に基づいて分析した。
【0331】
結果(表20)は、A022600424がヒトおよびカニクイザルGPC3と高い親和性で結合することを実証する。
【0332】
【表30】
【0333】
細胞発現のヒトおよびカニクイザルGPC3へのA022600424の結合を、ヒトおよびカニクイザルGPC3を過剰発現するCHO-FIp-ln細胞、ならびにHuh-7細胞についてフローサイトメトリーによって評価し、1~2nMのEC50値を得た(表21)。
【0334】
EC30の濃度で、それぞれ、TCRab結合1価ISVD T017000624およびT017000623(T0170056G05バリアント)との競合において、A022600424を、ヒトおよびカニクイザルT細胞への結合について評価した。T細胞(実施例3に記載されるように得られるヒトT細胞およびLPT laboratory、ドイツ、から購入したカニクイザルT細胞)をアッセイの当日に解凍し、計数し、1E+06個の細胞/mLの濃度に希釈し、これの後に、75μLをV底96ウェルプレート(Greiner、カタログ番号651180)のウェルに添加した。細胞を冷FACS緩衝液で1回洗浄した後、25μLのNbおよび25μLの競合物質をウェルに添加した。T017000624を、2×濃度の4E-08M(ウェル内で2E-08M)に希釈し、T017000623を、2×濃度の1E-07M(ウェル内で5E-08M)に希釈し、A022600424を、8μM~7.8nMの範囲にあるウェル中での最終濃度へと希釈した。細胞を再懸濁し、プレートを4℃で90分間インキュベートし、その後、プレートを冷FACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を、FACS緩衝液中の50μLの1/1000希釈Monoclonal ANTI-FLAG(登録商標)M2(Sigma Aldrich、カタログ番号F1804)に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。プレートを冷FACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を、FACS緩衝液中の、50μLの1/100希釈アロフィコシアニン結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fc Fragment Specific(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-135-164)に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。プレートを冷FACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を、FACS緩衝液中の、55μLの1/1000希釈ヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P4170)に再懸濁し、その後に、MACSQuant X(Miltenyi biotec)でデータを取得した。
【0335】
結果は表21に示される。A022600424は、ヒトおよびカニクイザルの両方のT細胞に、およそ200nMの親和性で、結合する。
【0336】
【表31】
【0337】
カニクイザルT細胞とのA022600424の機能性を評価するために、実施例8に記載されているように、カニクイザルT細胞(LPT laboratory、ドイツ)を使用して、Huh-7でxCELLigenceベースのTDCアッセイを実行した。カニクイザルとヒトのT細胞のIC50値は、同等であることが見出された(表22)。
【0338】
【表32】
【0339】
6.12 実施例12:GPC3への結合に対するA022600424の選択性
GPC3のファミリーメンバー、すなわちA022600424のGPC1、GPC2、GPC5およびGPC6への結合の非存在を、ELISAによって評価し、A022600424のGPC4への結合の非存在を、SPR(Proteon XPR36)によって評価した。
【0340】
ヒトGPC1(R&Dシステム、カタログ番号4519-GP)、ヒトGPC2(R&Dシステム、カタログ番号2304-GP)、ヒトGPC3(R&Dシステム、カタログ番号2119-GP)、ヒトグリピカン-5(R&Dシステム、カタログ番号2607)-G5)およびヒトグリピカン-6(R&DSystems、カタログ番号2845-GP)を、384ウェルHB SpectraPlate(PerkinElmer)上に4℃で一晩直接コーティングした(2μg/mL、1×PBS緩衝液)。翌日、プレートを6回洗浄し(AquaMaxマイクロプレートウォッシャー、Molecular devices)、1×PBS+1%カゼインを用いて室温で2時間ブロックした。追加の6回の洗浄工程の後、A022600424(1×PBS、0.1%カゼイン、0.05%TWEEN20)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。次に、サンプルを除去し、続いて6回の洗浄工程を行い、抗ISVD mAb ABH0077を、17nMの最終濃度(1×PBS、0.1%カゼイン、0.05%TWEEN20)で室温で1時間添加した。プレートを再度6回洗浄し、HRPに結合させたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Abeam、カタログ番号ab97040)(1/1250希釈;1×PBS、0.1%カゼイン、0.05%TWEEN20)を、プレートに室温で1時間適用させた。6回の最終洗浄工程の後、es(HS)TMB基質(SDT)を添加し、10分後に1MのHClの添加によって反応を停止させた。プレートの吸光度を、Clariostar装置(BMG LABTECH)で波長450nmおよび620nmで測定し、データ分析向けにOD450~OD620を計算しプロットした。
【0341】
組換えヒトGPC4/hFc(R&D Systems、カタログ番号9195-GP)を、EDCおよびNHS化学反応(使用のランニング緩衝液:HBS-EP+、pH7.4)を使用して、アミンカップリングを介して、マウス抗ヒトIgG1(GE Healthcare、カタログ番号BR-1008-39)を固定したGLCセンサーチップ(Biorad)上に捕獲した。精製したISVDを様々な濃度(4nM~1000nM)で2分間注入し(流速45μL/分)、解離を900秒間フォローした。10mMのグリシン-HCl(pH1.5)を1分間注入することによって(流速45μL/分)、再生を実行した。データを、参照リガンドレーンおよびブランク緩衝液注入を引くことにより二重参照した。処理したセンサーグラムを、ProteOn Manager3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用して、1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)に基づいて分析した。
【0342】
A022600424の試験したGPC3ファミリーメンバーのいずれへも、結合は検出されなかった。
【0343】
6.13 実施例13:A022600424に対するヒト既存の抗体の反応性
A022600424への既存の抗体の結合を、ProteOn XPR36(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を使用して正常ヒト血清(n=96)について評価した。PBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20)をランニング緩衝液として使用し、実験を25℃で実行した。
【0344】
A022600424を、チップ上に固定されたHSAへの、ALB23002ビルディングブロックの結合を介してセンサーチップ上に捕獲した。HSAを固定するために、ProteOn GLCセンサーチップのリガンドレーンをEDC/NHS(流速30μL/分)で活性化し、HSAを、pH4.5のProteOn酢酸緩衝液中の100μL/mlで注入して、およそ2900RUの固定レベルにした。固定した後、表面をエタノールアミンHCl(流速30μL/分)で不活性化した。
【0345】
その後、A022600424を、HSA表面上に45μl/分で2分にわたり注入して、ISVD捕獲レベルをおよそ800RUにした。既存の抗体を含有するサンプルを14,000rpmで2分間遠心分離し、上清をPBS-Tween20(0.005%)で1:10希釈し、その後、45μl/分で2分にわたり注入し、それに続き、後続の400秒の解離工程を行った。各サイクルの後(すなわち新しいISVD捕獲および血液サンプル注入工程の前に)、HSA表面を、HCl(100mM)の45μL/分で2分の注入を介して再生した。1)ISVD-HSA解離および2)参照リガンドレーンへの非特異的な結合を引くことによる二重の参照の後、既存の抗体結合を示すセンサーグラムを得た。125秒(会合終了から5秒後)に報告ポイントを設定することによって、既存の抗体の結合レベルを決定した。参照ISVDの125秒での結合レベルに対する既存の抗体結合におけるパーセンテージの低減を計算した。
【0346】
4価のISVD様式A022600424は、抗TCRビルディングブロックについては突然変異L11VおよびV89A、各GPC3においては突然変異L11VおよびV89Lならびに血清アルブミン結合ビルディングブロックおよびC末端アラニンの導入によって既存の抗体結合の低減のために最適化されたことから、既存の抗体への結合は、対照の最適化されていない4価のISVD様式F027301099と比較してより実質的に少ないことが示される(図11A)。
【0347】
6.14 実施例14:可溶性GPC3の存在下におけるA022600424によるT細胞活性化誘導の評価
可溶性GPC3の存在下でのA022600424によるT細胞活性化誘導を、実施例6に記載されるように評価した。A022600424は、その野生型バリアントA022600168と同じ挙動を示した(図7)。
【0348】
6.15 実施例15:インビトロ増殖T細胞を植え付けられたHuh-7腫瘍担持NOGマウスにおけるA022600424のインビボ概念実証
腫瘍担持NOGマウスにおけるインビボ効能研究において、肝細胞癌Huh-7腫瘍細胞を皮下注射し、平均腫瘍体積約150mmに達するまで腫瘍を増殖させた。この時点で、インビトロで増殖させたT細胞をマウスに腹腔内で注射した。T細胞のISVD媒介性動員による腫瘍細胞の死滅を、腫瘍体積を測定し、腫瘍増殖の速度論を分析することによって評価した。腫瘍細胞死滅に対するA022600424のインビボ効能を評価し、GPC3特異性を欠く対照T細胞エンゲージャーT017000698(配列番号74、表A-6)と比較した。
【0349】
詳細には、100μLのHBSSに再懸濁した2×l0個のHuh-7腫瘍細胞をNOGマウスに皮下注射した。腫瘍は、平均腫瘍体積およそ150mmに達するまで増殖させた。この時点で、200μLのPBSに再懸濁した10個のインビトロ増殖T細胞を各マウスの腹腔内で注射した(0日目)。T細胞のこの注射は、マウスを異なる群に無作為化して24時間後に行った。静脈内で注射されるA022600424による処置を、T細胞注射の3時間後、0日目に開始し、3日目、6日目、9日目および12日目に継続した(q3d;図12)。TCR/GPC3結合ポリペプチドの4つの用量レベル(0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.7mg/kg、および2mg/kg)を試験した。T017000698を対照群に2mg/kgで0日目、3日目、6日目、9日目および12日目(q3d)に注射した。ヘパリン含有チューブへの生存の血液サンプリングを、6日目および12日目に行って、抗体曝露を測定した。マウスを15日目に殺処分し、血液および腫瘍組織を収集した。血液を、抗体曝露の測定に使用し、腫瘍組織を標的発現の分析(GPC3)およびT細胞浸潤分析に使用した。
【0350】
腫瘍増殖速度論の結果を図13に示す。T017000698で処置したマウスを、24日目の分析用の対照群として使用したが、この場合、対照マウスはすべて、エンドポイント基準(腫瘍体積2000mm)に達していなかったので、生存していた。腫瘍停滞を誘導するための、A022600424対対照T017000698の腫瘍増殖プロファイルにおいて、用量反応パターンが見られた。A022600424の0.7mg/kg(**、p=0.0016)および2mg/kg(、p=0.0415)の用量レベルは、対照T017000698とは有意に異なった。0.1mg/kg、0.2mg/kgの用量は、腫瘍増殖の制御に対してより低い効果を有し、対照群と有意に異なってはいなかった。統計分析を、分析にダネットの多重比較検定を使用して、一元配置ANOVAを用いて実行した。
【0351】
結論として、結果は、A022600424が本モデルにおいて統計的に有意な腫瘍停滞を用量依存的に誘導できることを実証する。このことが確認するところ、T細胞をHuh-7腫瘍細胞上のGPC3に架橋することによる、GPC3 ISVD T細胞エンゲージャーを介したポリペプチド誘導性T細胞媒介性死滅の概念である。
【産業上の利用可能性】
【0352】
7 産業上の利用可能性
本明細書に記載されるポリペプチド、それをコードする核酸分子、核酸を含むベクターおよび組成物は、例えばがんに罹っている対象の処置において使用することができる。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
【配列表】
2023553697000001.app
【国際調査報告】