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特表2023-553718放射線硬化性液体組成物及びその組成物から形成された3D印刷物体
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  • 特表-放射線硬化性液体組成物及びその組成物から形成された3D印刷物体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】放射線硬化性液体組成物及びその組成物から形成された3D印刷物体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20231218BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231218BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20231218BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231218BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20231218BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20231218BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20231218BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20231218BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08F2/46
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/124
B29C64/314
B29C64/112
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536932
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021084011
(87)【国際公開番号】W WO2022128515
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/136776
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー チョン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ナー
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB04
4F213AB11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4J011AA05
4J011AC04
4J011CB02
4J011CC04
4J011CC10
4J011PA52
4J011PB07
4J011PB37
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA08
4J011QB24
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA05
4J011WA10
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD481
4J127BG181
4J127BG271
4J127CB151
4J127CC011
4J127DA47
4J127DA62
4J127DA69
4J127EA13
4J127FA06
4J127FA45
(57)【要約】
本開示は、以下の成分:(A)少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、(B)少なくとも1つの光開始剤、及び(C)少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラーを含む、放射線硬化性液体組成物に関し、その放射線硬化性液体組成物から形成された3D印刷物体、及びその3D印刷物体を形成する方法に関する。この組成物から形成された3D印刷物体は、優れたエネルギーリターン特性と良好な機械的特性を示すと共に、低密度及び発泡構造を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A) 少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む、放射線硬化性液体組成物。
【請求項2】
反応性成分(A)が、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー及び/又はモノマーを含む、請求項1に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項3】
反応性成分(A)の官能価が1~12の範囲、好ましくは1~8である、請求項1又は2に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーが、次のクラス:ウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、エポキシ、シリコーン又はこれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくは、前記少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーが、次のクラス:ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ウレタンアクリレートベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項2又は3に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーが単官能又は多官能であり、好ましくは、前記モノマーが、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、ビニル置換複素環化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2から4のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項6】
反応性成分(A)の量が、前記組成物の総質量に対して、2~97質量%の範囲、好ましくは5~95質量%、又は15~95質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項7】
光開始剤(B)の量が、前記組成物の総質量に対して、0.1~10質量%の範囲、好ましくは0.1~5質量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項8】
成分(C)の量が、前記組成物の総質量に対して、0.1~70質量%の範囲、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~50質量%、又は2~40質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの補助剤を成分(D)として、前記組成物の総質量に対して0~50質量%又は5~40質量%の量でさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物を用いることを含む、3D印刷物体を形成する方法。
【請求項11】
以下の工程:
(i) 前記放射線硬化性液体組成物の層を形成する工程、
(ii) 放射線を照射して、前記放射線硬化性液体組成物の層の少なくとも一部を硬化させ、硬化層を形成する工程、
(iii) 前記硬化層上に前記放射線硬化性液体組成物の新しい層を導入する工程、
(iv) 前記放射線硬化性液体組成物の前記新しい層に放射線を照射して新しい硬化層を形成する工程、及び
(v) 工程(iii)及び(iv)を3D物体が製造されるまで繰り返す工程
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(v)で得られた前記3D物体全体を後硬化して最終的な3D物体を形成する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の放射線硬化性液体組成物から形成された、又は請求項10から12のいずれか一項に記載の方法によって得られた、3D印刷物体。
【請求項14】
ソール、上着、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋及びシールが含まれる、請求項13に記載の3D印刷物体。
【請求項15】
前記3D印刷物体のエネルギーリターンが、成分(C)を含まないのみで他の点では同一の放射線硬化性液体組成物から形成された3D印刷物体と比較して5~30%、好ましくは7~25%増加している、請求項13又は14に記載の3D印刷物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元(以下、「3D」という)印刷用化学材料の技術分野に属するものであり、そして特に、3D印刷用の放射線(例えば光)硬化性組成物、その製造方法と使用、及びその組成物を用いて3D印刷物体を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性ポリマーを使用した3D印刷技術、例えばステレオリソグラフィ(SLA)、デジタル光処理(DLP)又はフォトポリマー噴射(PPJ)は、ラピッドプロトタイピング、及び補聴器又は歯科用部品の迅速な製造プロセスなど、多くの用途で使用されている。一方で、軽量の3D印刷部品を得ることは、その一般的な成分の有機化学成分によって課題となっている。他方では、3D印刷プロセスで均一な発泡を制御し、そして未硬化のポリマーを印刷部分から取り外すことが難しいので、硬化性ポリマーをベースとした独立多孔構造又は発泡構造を伴う印刷部品を得ることは困難である。従って、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタル光処理(DLP)又はフォトポリマー噴射(PPJ)などによる3D印刷プロセスで軽量な部品を形成することができる新しいクラスの放射線硬化性液体組成物の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、発泡性微小球及び/又は軽量フィラーを含む放射線硬化性液体組成物を提供することであり、その組成物から形成された3D印刷物体は優れたエネルギーリターン特性及び低密度を示し、且つ同時に良好な機械的特性を有する。
【0004】
本発明の別の目的は、本発明の放射線硬化性液体組成物から形成された3D印刷物体を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、本発明の放射線硬化性液体組成物を用いて3D印刷物体を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、上記目的は、以下の実施形態によって実現できることが見出された:
1. 以下の成分、
(A) 少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む、放射線硬化性液体組成物。
【0007】
2. 反応性成分(A)が、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー及び/又はモノマーを含む、項目1に記載の放射線硬化性液体組成物。
【0008】
3. 反応性成分(A)の官能価が1~12の範囲、好ましくは1~8である、項目1又は2に記載の放射線硬化性液体組成物。
【0009】
4. 少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーが、次のクラス:ウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、エポキシ、シリコーン又はこれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーが、次のクラス:ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ウレタンアクリレートベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、項目2又は3に記載の放射線硬化性液体組成物。
【0010】
5. 少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーが単官能又は多官能であり、好ましくは、モノマーが、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、ビニル置換複素環化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、項目2から4のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物。
【0011】
6. 反応性成分(A)の量が、組成物の総質量に対して、2~97質量%の範囲、好ましくは5~95質量%、又は15~95質量%である、項目1から5のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物。
【0012】
7. 光開始剤(B)の量が、組成物の総質量に対して、0.1~10質量%の範囲、好ましくは0.1~5質量%である、項目1から6のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物。
【0013】
8. 成分(C)の量が、組成物の総質量に対して、0.1~70質量%の範囲、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~50質量%、又は2~40質量%である、項目1から7のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物。
【0014】
9. 少なくとも1つの補助剤を成分(D)として、組成物の総質量に対して0~50質量%又は5~40質量%の量でさらに含む、項目1から8のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物。
【0015】
10. 項目1から9のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物を用いることを含む、3D印刷物体を形成する方法。
【0016】
11. 項目10に記載の方法であって、以下の工程:
(i) 放射線硬化性液体組成物の層を形成する工程、
(ii) 放射線を照射して、放射線硬化性液体組成物の層の少なくとも一部を硬化させ、硬化層を形成する工程、
(iii) 硬化層上に放射線硬化性液体組成物の新しい層を導入する工程、
(iv) 放射線硬化性液体組成物の新しい層に放射線を照射して新しい硬化層を形成する工程、及び
(v) 工程(iii)及び(iv)を3D物体が製造されるまで繰り返す工程
を含む方法。
【0017】
12. 工程(v)で得られた3D物体全体を後硬化して最終的な3D物体を形成する工程をさらに含む、項目11に記載の方法。
【0018】
13. 項目1から9のいずれかに記載の放射線硬化性液体組成物から形成された、又は項目10から12までのいずれかに記載の方法によって得られた、3D印刷物体。
【0019】
14. 項目13に記載の3D印刷物体であって、ソール、上着、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋及びシールが含まれる3D印刷物体。
【0020】
15. 前記3D印刷物体のエネルギーリターンが、成分(C)を含まないのみで他の点では同一の放射線硬化性液体組成物から形成された3D印刷物体と比較して5~30%、好ましくは7~25%増加している、項目13又は14に記載の3D印刷物体。
【0021】
本発明による放射線硬化性液体組成物は発泡性微小球及び/又は軽量フィラーを含み、そしてこの組成物から、印刷部品の寸法サイズを変えることなく軽量の3D印刷物体を得ることができ、そして3D印刷物体は、優れた弾性(エネルギーリターン)特性及び低密度を示すと同時に、良好な機械的特性と発泡構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例2bの硬化組成物の形態を示す。
図2図2は、実施例2bの組成物を印刷して得られた3D印刷物体の画像を示す。
図3図3は、実施例で使用した繰返し引張試験における除荷曲線下面積及び荷重曲線下面積を示す模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
不定冠詞「a」「an」「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定された1つ以上の種を意味する。
【0024】
本開示の文脈においては、特徴について言及された任意の特定の値(終点として範囲内で言及された特定の値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0025】
放射線硬化性液体組成物
本発明の一側面は、以下の成分、
(A) 少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む放射線硬化性液体組成物に関する。
【0026】
成分(A)
本発明の放射線硬化性液体組成物は、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分(A)を含む。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、放射線硬化性反応性成分(A)の官能価は、1~12の範囲、例えば1.2、1.5、1.8、2、2.2.2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、好ましくは1~8、又は1.5~6、又は1.5~4とすることができる。
【0028】
好ましい実施形態では、放射線硬化性反応性成分(A)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー及び/又はモノマーを含む。当業者は、本開示の文脈におけるエチレン性不飽和官能基が放射線硬化性基であることを理解するであろう。
【0029】
本発明の一実施形態において、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合、例えば次の官能基:アリル、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセチレニル、マレイミドなどに見られるものを含み、好ましくは、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素二重結合を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、オリゴマーは、エチレン性不飽和官能基に加えて、ウレタン基、エーテル基、エステル基、カーボネート基、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
好適なオリゴマーには、例えば、エチレン性不飽和官能基と任意の連結基を介して連結したコア構造を含有するオリゴマーが含まれる。連結基は、エーテル、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、又はカーボネート基とすることができる。ある例では、連結基はエチレン性不飽和官能基の一部、例えばアクリルオキシ基又はアクリルアミド基である。コア基は、アルキル(直鎖及び分岐鎖アルキル基)、アリール(例えばフェニル)、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン、ウレタン、又は他のコア構造及びそれらのオリゴマーとすることができる。好適なエチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素二重結合、例えばメタクリレート、アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの組み合わせを含んでよい。ある実施形態では、好適なオリゴマーは、単官能及び/又は多官能アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート又はより高次の(メタ)アクリレート、又はそれらの組み合わせを含む。任意に、3D印刷用の放射線硬化性組成物の硬化、可撓性及び/又はさらなる特性をさらに改善するために、オリゴマーにシロキサン骨格が含まれていてよい。
【0032】
ある実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下のクラス:ウレタン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するウレタンベースのオリゴマー)、ポリエーテル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエーテルベースのオリゴマー)、ポリエステル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルベースのオリゴマー)、ポリカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリカーボネートベースのオリゴマー)、ポリエステルカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルカーボネートベースのオリゴマー)、エポキシ(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマー)、シリコーン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するシリコーンベースのオリゴマー)又はそれらの任意の組み合わせから選択することができる。好ましくは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下のクラス:ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、ウレタン繰り返し単位、及び1個、2個又はそれ以上のエチレン性不飽和官能基、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アリル及びビニル基を含むウレタンベースのオリゴマーを含む。好ましくは、オリゴマーは、オリゴマー分子の骨格内に少なくとも1つのウレタン結合(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のウレタン結合)と、オリゴマー分子にペンダント状に結合した少なくとも1つのアクリレート及び/又はメタクリレート官能基(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のアクリレート及び/又はメタクリレート官能基)とを含有する。ある実施形態では、脂肪族、脂環式、又は混合脂肪族及び脂環式ウレタン繰り返し単位が好適である。ウレタンは、典型的には、ジイソシアネートのジオールとの縮合によって調製される。繰り返し単位当たり少なくとも2つのウレタン部分を有する脂肪族ウレタンが有用である。さらに、ウレタンを調製するために用いるジイソシアネート及びジオールは、同じ又は異なる二価脂肪族基を含む。
【0034】
一実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーを含む。エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合、例えばアクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなど、好ましくはアクリレート及びメタクリレートとすることができる。これらのポリエステル又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーの官能価は1以上であり、具体的にはオリゴマー分子1個あたりエチレン性不飽和官能基約2個である。
【0035】
好適なウレタンベースのオリゴマーは当技術分野で既知であり、そして多くの異なる手順によって容易に合成し得る。例えば、多官能アルコールをポリイソシアネート(好ましくは、化学量論的過剰のポリイソシアネート)と反応させてNCO末端プレ-オリゴマーを形成し、その後これをヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートと反応させてよい。多官能アルコールは、1分子当たり2個以上のOH基を含有する任意の化合物でよく、モノマーポリオール(例えば、グリコール)、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等であってよい。本発明の一実施形態におけるウレタンベースのオリゴマーは、(メタ)アクリレート官能基を含有する脂肪族ウレタンベースのオリゴマーである。
【0036】
好適なポリエーテル又はポリエステルウレタンベースのオリゴマーには、脂肪族又は芳香族ポリエーテル又はポリエステルポリオールと、(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーで官能化された脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートとの反応生成物が含まれる。好ましい実施形態では、ポリエーテル及びポリエステルは、それぞれ脂肪族ポリエーテル及びポリエステルである。好ましい実施形態では、ポリエーテル及びポリエステルウレタンをベースとしたオリゴマーは脂肪族ポリエーテル及びポリエステルウレタンをベースとしたオリゴマーであり、(メタ)アクリレート基を含む。
【0037】
一実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーの60℃での粘度は、2000~100000cPの範囲、例えば3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、10000cP、20000cP、30000cP、40000cP、50000cP、60000cP、70000cP、80000cP、90000cP、95000cP、好ましくは4000~60000cP、例えば4000~15000cP、又は20000cP~60000cPである。
【0038】
一実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、ガラス転移温度が-40℃~50℃の範囲、例えば-30℃、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、又は40℃、好ましくは-20℃~25℃である。
【0039】
モノマーは組成物の粘度を下げることができる。モノマーは単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)である。一実施形態では、モノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、及びビニル置換複素環化合物からなる群から選択することができる。
【0040】
本開示の文脈において、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、(メタ)アクリレート部分を含むモノマーを意味する。(メタ)アクリレート部分の構造は次のとおりであり:
【化1】
式中、RはH又はメチルである。
【0041】
(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)の(メタ)アクリレートモノマーとすることができる。(メタ)アクリレートモノマーの例には、C~C20アルキル(メタ)アクリレート、C~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C~C10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0042】
~C20アルキル(メタ)アクリレートの具体例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート(ISTA)が含まれる。C~C18アルキル(メタ)アクリレート、特にC~C16アルキル(メタ)アクリレート又はC~C12アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばC~Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、又は3-ヒドロキシ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0044】
~C10シクロアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートが含まれる。
【0045】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの例として、(メタ)アクリル酸エステル、及び特に多官能アルコールのアクリル酸エステル、特にヒドロキシル基以外にはさらなる官能基を含まないもの、又はそれらがいずれかを含む場合にはエーテル基を含むものが挙げられる。このようなアルコールの例は、例えば、二官能性アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及び縮合度の高いそれらの対応物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、1,2-,1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノール、1,2-,1,3-又は1,4-シクロヘキサンジメタノール、官能価3以上のアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及び対応するアルコキシル化されたアルコール、特にエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたアルコールである。
【0046】
本開示の文脈において、用語「(メタ)アクリルアミドモノマー」は、モノマーが(メタ)アクリルアミド部分を含むことを意味する。(メタ)アクリルアミド部分の構造は、CH=CR-CO-Nであり、式中、Rは水素又はメチルである。(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例には、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド及びN,N-ジエチルメタクリルアミドが含まれる。(メタ)アクリルアミドモノマーは単独で又は併用して使用できる。
【0047】
20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物の例には、例えばスチレン及びC~C-アルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン及びα-メチルスチレンが含まれる。
【0048】
20個以下の炭素原子(例えば2~20個又は8~18個の炭素原子)を有するカルボン酸のビニルエステルの例には、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートが含まれる。
【0049】
3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸の例として、アクリル酸が挙げられる。
【0050】
ビニル置換された複素環の例にはモノビニル置換された複素環が含まれ、複素環は、2~7個の炭素原子と、N、O及びSから選択される1~4個(好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環、例えば、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルホリン-2-オン、N-ビニルカプロラクタム及び1-ビニルイミダゾール、ビニルアルキルオキサゾリジノン、例えばビニルメチルオキサゾリジノンである。
【0051】
好ましいモノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、及びビニル置換複素環である。
【0052】
好ましい実施形態では、放射線硬化性反応性成分(A)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマー及びモノマーの両方を含む。オリゴマーのモノマーに対する質量比は、10:1~1:10の範囲、好ましくは8:1~1:8、又は5:1~1:5、又は3:1~1:5、又は1:1~1:4とすることができる。
【0053】
反応性成分(A)の量は、組成物の総質量に対して2~97質量%の範囲、例えば5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、92質量%、95質量%、96質量%、好ましくは5~96質量%又は10~95質量%、又は12~95質量%、又は20~95質量%、30~95質量%、40~95質量%、50~95質量%、55~95質量%、40~90質量%、50~90質量%、55~90質量%とすることができる。一般的に、反応成分(A)の量は、粘度などの要求が異なる3Dプリンターに依存する。
【0054】
光開始剤(B)
放射線硬化性液体組成物は、少なくとも1つの光開始剤を成分(B)として含む。例えば、光開始剤(B)には、少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤及び/又は少なくとも1つのイオン性光開始剤、及び好ましくは少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)のフリーラジカル光開始剤が含まれてよい。例えば、3D印刷用の組成物に使用するために、当技術分野で既知のあらゆる光開始剤を使用することが可能であり、例えば、SLA、DLP又はPPJ(フォトポリマー噴射)プロセスで使用される当技術分野で既知の光開始剤を使用することが可能である。
【0055】
光開始剤の例には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩素化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン及び誘導体(例えばベンゾインアセテート、ベンゾインアルキルエーテル)、ジメトキシベンゾイン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール及び他の芳香族ケトン、アシルオキシムエステル、アシルホスホフィンオキシド、アシルホスホナート、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネートが含まれる。
【0056】
光開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組み合わせ、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイ1-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシドの組み合わせ、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0057】
光開始剤(B)の量は、組成物の総質量に対して、0.1~10質量%の範囲、例えば0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、8質量%、又は10質量%、好ましくは0.1~5質量%、又は0.5~5質量%とすることができる。
【0058】
発泡性微小球及び/又は軽量フィラー(C)
本発明によれば、放射線硬化性液体組成物は、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラーを成分(C)として含む。
【0059】
発泡性(通常は熱発泡性)微小球は、ポリマーシェルとその中に封入された推進剤を含む微小球として広く定義することができる。このような発泡性微小球の商業的な例には、例えば、Nouryon社から市販されているEXPANCEL DU製品、例えばEXPANCEL031DU、EXPANCEL461DU及びEXPANCEL043DUが含まれる。
【0060】
発泡性微小球のポリマーシェルは、ポリマー、特に熱可塑性ポリマーから作ることができる。
【0061】
発泡性微小球の推進剤は、ポリマーシェルの軟化温度よりも低い沸点を有する液体とすることができる。熱可塑性微小球の膨張は、通常は物理的な性質のものである。発泡性微小球が加熱されると、推進剤が膨張して固有圧力が増加し、同時にシェルが軟化するため、微小球の膨張が引き起こされる。微小球中の推進剤の揮発性、ガス透過性及びポリマーシェルの粘弾性などの要因が、微小球の膨張性に影響を与える。通常、発泡性微小球は、直径が2~8倍、又は体積が30~80倍に拡張する。ポリマーシェルの厚さは、膨張後に0.1μm又はさらに薄く減少する。
【0062】
ポリマーシェルの調製に好適なモノマーは、モノエチレン性不飽和C~C-モノニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-ハロアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマル酸ニトリル、スチレン、アクリル酸エステル又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。好ましい一実施形態では、ポリマーシェルはポリアクリロニトリル又はそれらのコポリマーから作られる。ポリマーシェルの軟化温度(すなわち、ガラス転移温度(Tg))は、60℃~200℃の範囲とすることができる。
【0063】
発泡性微小球の推進剤は、通常、ポリマーシェルの軟化温度よりも低い沸点を有する。好適な推進剤には、イソブタン、2,4-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0064】
発泡性微小球(例えば熱発泡性微小球)を加熱すると、或る特定の温度で膨張が始まる。膨張が始まる温度を開始温度(T開始)と呼び、一方で最大膨張に達する温度を最大温度(T最大)と呼ぶ。T開始及びT最大は、熱膨張特性の熱力学的解析(TMA)によって測定することができる。一実施形態では、発泡性微小球は、少なくとも65℃、例えば少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、または少なくとも110℃のT開始、及び250℃未満、220℃未満、200℃未満、180℃未満、160℃未満、又は140℃未満のT最大を有する。
【0065】
1つの例において、軽量フィラーが成分(C)として使用される。軽量フィラーの具体例には、中空セラミック球、中空プラスチック球、中空ガラスビーズ、発泡プラスチックビーズ、珪藻土、バーミキュライト、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0066】
成分(C)の密度は、100kg/m未満、例えば5~100kg/mの範囲又は5~80kg/m又は5~60kg/m又は5~50kg/m、例えば6kg/m、7kg/m、8kg/m、9kg/m、10kg/m、15kg/m、20kg/m、25kg/m、30kg/m、35kg/m、40kg/m、45kg/m、好ましくは6~40kg/m又は7~35kg/mとすることができる。
【0067】
成分(C)としての発泡性微小球及び軽量フィラーの平均粒径は、1μm~400μmの範囲、例えば、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、60μm、80μm、100μm、120μm、150μm、180μm、200μm、250μm、300μm、350μm又は400μm、好ましくは2μm~300μm、より好ましくは3μm~200μm又は4μm~100μm、及び最も好ましくは5μm~50μmとすることができる。
【0068】
本発明によれば、成分(C)の量は、組成物の総質量に対して0.1~70質量%の範囲、例えば、0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、8質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、50質量%、60質量%又は70質量%、好ましくは1~60質量%、2~50質量%、2~40質量%、又は3~30質量%とすることができる。
【0069】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 2~97質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~10質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 0.1~70質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0070】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 5~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 0.1~70質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0071】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 2~97質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~10質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 0.1~60質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 5~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 1~60質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0073】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 2~97質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~10質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~50質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0074】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 5~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~50質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0075】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 2~97質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~10質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0076】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 5~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0077】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 10~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0078】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 30~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0079】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 40~95質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0080】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 5~90質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0081】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 10~90質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0082】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 30~90質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0083】
一実施形態では、本発明の放射線硬化性液体組成物は、以下の成分:
(A) 40~90質量%の、少なくとも1つの放射線硬化性反応性成分、
(B) 0.1~5質量%の、少なくとも1つの光開始剤、及び
(C) 2~40質量%の、少なくとも1つの発泡性微小球及び/又は軽量フィラー
を含む。
【0084】
補助剤(D)
本発明の組成物は、1つ以上の補助剤をさらに含んでよい。
【0085】
補助剤として、例えば、表面活性物質、難燃剤、核剤、潤滑剤ワックス、染料、顔料、触媒、UV吸収剤及び安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機フィラー、強化材料及び可塑剤が、好ましい例として挙げられる。加水分解阻害剤として、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。本発明の硬化させた材料を、老化及び損傷的な環境影響に対して安定化させるために、好ましい実施形態では安定化剤が添加される。
【0086】
本発明の組成物が使用中に熱酸化による損傷に曝される場合、好ましい実施形態では酸化防止剤が添加される。フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤、例えばBASF SE社からのIrganox(登録商標)1010は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年、第98~107頁、第116頁及び第121頁に記載されている。
【0087】
本発明の組成物は、UV光に曝される場合、UV吸収剤を用いてさらに安定化させることが好ましい。UV吸収剤は、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを放散する分子として一般に知られている。産業において使用される慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年、第116~122頁に見出される。
【0088】
上述の補助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えばPlastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年に見出される。
【0089】
可塑剤は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させるために使用できる。可塑剤は、ポリマー鎖の間に埋め込まれて間隔を空ける(「自由体積」を増加させる)ことで、ポリマーのガラス転移温度を低下させてこれをより柔らかくする作用がある。
【0090】
本発明の組成物に使用される可塑剤の例には、C~C15、好ましくはC~C10ポリカルボン酸及び直鎖又は分岐C~C30とのそれらのエステル、好ましくはC~C20、より好ましくはC~C12脂肪族アルコール、ベンゾエート、エポキシ化植物油、スルホンアミド、オルガノホスフェート、グリコール及びその誘導体、ポリマー可塑剤、ポリエーテル、ポリブテンが含まれる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明に好適な可塑剤には、限定するものではないが、C~C15、好ましくはC~C10芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸及び直鎖又は分岐C~C30、好ましくはC~C20、より好ましくはC~C12脂肪族アルコールとのそれらのエステル、例えばフタル酸及びフタレートベースの可塑剤、C~C15、好ましくはC~C10脂肪族ジカルボン酸又はトリカルボン酸及び直鎖又は分岐C~C30とのそれらのエステル、好ましくはC~C20、より好ましくはC~C12脂肪族アルコール、例えばアジピン酸及びアジペート、セバシン酸及びセバケート、マレイン酸及びマレエート、アゼライン酸及びアゼラート、環状脂肪族ポリカルボン酸及び直鎖又は分岐C~C30、好ましくはC~C20、より好ましくはC~C12脂肪族アルコールとのそれらのエステル、例えばシクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステルが含まれる。
【0091】
好ましい可塑剤は、セバシン酸、セバケート、アジピン酸、アジペート、グルタル酸、グルタレート、フタル酸、フタレート(例えば、Cアルコールと共に使用)、アゼライン酸、アゼレート、マレイン酸、マレエート、クエン酸及びその誘導体であり、例えば、参照として本明細書に組み込まれるWO2010/125009を参照されたい。可塑剤は、組み合わせて使用しても、個別に使用してもよい。
【0092】
好ましい可塑剤の具体的なクラスの1つは、フタレートベースの可塑剤、例えば水及び油に対する抵抗性に有利なCアルコールのフタレートエステルである。ある好ましいフタレート可塑剤は、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP)であり、好ましくは建設材料及び医療装置に使用され、ジイソノニルフタレート(DINP)であり、好ましくは庭用ホース、靴、玩具、及び建築材料に使用され、ジ-n-ブチルフタレート(DNBP、DBP)、ブチルベンジルフタレート(BBZP)であり、好ましくは食品コンベアベルト、人工皮革、及び発泡体に使用され、ジイソデシルフタレート(DIDP)であり、好ましくはワイヤ及びケーブルの絶縁、自動車の下塗り、靴、カーペット、プールライナーに使用され、ジ-n-オクチルフタレート(DOP又はDNOP)であり、好ましくは床材、カーペット、ノートカバー、及び爆薬(high explosives)に使用され、ジイソオクチルフタレート(DIOP)、ジエチルフタレート(DEP)、及びジイソブチルフタレート(DIBP)、ジ-n-ヘキシルフタレートであり、好ましくは床材、工具ハンドル、及び自動車部品に使用される。
【0093】
別の好ましい可塑剤のクラスは、アジペート、セバケート及びマレエート、例えばビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DEHA)、ジメチルアジペート(DMAD)、モノメチルアジペート(MMAD)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DINA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジブチルマレエート(DBM)、及びジイソブチルマレエート(DIBM)からなる群から選択できる。アジペートベースの可塑剤が好ましく、好ましくは低温用途及び紫外線に対する高い抵抗性のために使用される。
【0094】
他の好ましい可塑剤は、ベンゾエート、エポキシ化植物油、スルホンアミド、例えばN-エチルトルエンスルホンアミド(o/p ETSA)、オルト-及びパラ-異性体、N-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(HP BSA)、N-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミド(BBSA-NBBS)、有機ホスフェート、例えばトリクレシルホスフェート(TCP)、トリブチルホスフェート(TBP)、グリコール/ポリエーテル及びそれらの誘導体、例えばトリエチレングリコールジヘキサノエート(3G6、3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、ポリマー可塑剤、例えば高分子量エポキシ化油、及びポリエステル可塑剤、ポリブテン及びポリイソブチレンからなる群から選択される。
【0095】
ポリエステル可塑剤は、一般に、多価アルコール、例えば1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオールと、ポリカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、又はアゼライン酸とのエステル化によって調製される。任意に、末端アルコール基(アルコール過剰で合成する場合)が、モノカルボン酸、例えば酢酸でキャップされること、又は末端酸基(酸過剰で合成する場合)が、一価アルコール、例えば2-エチルヘキサノール、イソノナノール、2-プロピルヘプタノール又はイソデカノールでキャップされることが可能である。好適な市販のポリエステル可塑剤の例は、BASF SE社から商品名Palamoll(登録商標)638(アジピン酸、1,2-プロパンジオール及びn-オクタノールをベースとするポリエステル可塑剤)、Palamoll(登録商標)652(アジピン酸、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール及びイソノナノールをベースとするポリエステル可塑剤)、Palamoll(登録商標)654(アジピン酸、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及びイソノナノールをベースとするポリエステル可塑剤)、又はPalamoll(登録商標)656(アジピン酸、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及びイソノナノールをベースとするポリエステル可塑剤)で入手可能なものである。
【0096】
代替の実施形態において、可塑剤は生分解性可塑剤とすることができ、好ましくはアセチル化モノグリセリド(好ましくは食品添加物として用いられる)、アルキルシトレート(同じく好ましくは食品包装、医薬品、化粧品及び子供用玩具に用いられる)、例えばトリエチルシトレート(TEC)、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、トリブチルシトレート(TBC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、特にPVC及び塩化ビニルコポリマーと親和性のもの、トリオクチルシトレート(TOC)(好ましくはガム及び放出制御薬に用いられる)、アセチルトリオクチルシトレート(ATOC)(好ましくは印刷インキに用いられる)、トリヘキシルシトレート(THC)(好ましくは放出制御薬に用いられる)、アセチルトリヘキシルシトレート(ATHC)、ブチリルトリヘキシルシトレート(BTHCとも呼ばれる)、トリヘキシルo-ブチリルシトレート、トリメチルシトレート(TMC)、及びアルキルスルホン酸フェニルエステル(ASE)から選択される。
【0097】
好ましい実施形態では、可塑剤は、シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル、好ましくは1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のエステル、より好ましくは1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(例えば、BASF SE社からのHexamoll(登録商標)DINCH)からなる群から選択できる。
【0098】
本発明によれば、補助剤は、組成物の総質量に対して0~50質量%、0.01~50質量%、例えば0.5~30質量%の量で存在してよい。
【0099】
組成物の調製
本開示のさらなる側面は、組成物の成分を混合することを含む、本発明の放射線硬化性液体組成物を調製する方法に関する。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、混合は撹拌しながら室温で行うことができる。全ての成分が均一に合わせて混合されていれば、混合時間及び撹拌速度に特に制限はない。具体的な実施形態では、混合は1000~3000RPM、好ましくは1500~2500RPMで5~60分、より好ましくは6~30分行うことができる。
【0101】
3D印刷物体及びその調製
本開示の1つの側面は、本発明の放射線硬化性液体組成物又は本発明の方法によって得られた放射線硬化性液体組成物を使用することを含む、3D印刷物体を形成する方法に関する。
【0102】
放射線硬化性液体組成物は、重合又は架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する化学線によって硬化させることができる。化学線には、限定するものではないが、α線、γ線、紫外線(UV放射)、可視光線及び電子線が含まれ、UV放射及び電子線、特にUV放射が好ましい。
【0103】
具体的な実施形態では、放射光の波長は360~420nmの範囲、例えば365、385、395、405、420nmとすることができる。放射線のエネルギーは、0.5~50mw/cmの範囲、例えば1mw/cm、2mw/cm、3mw/cm、4mw/cm、5mw/cm、8mw/cm、10mw/cm、20mw/cm、30mw/cm、40mw/cm、又は50mw/cm、好ましくは1~15mw/cm又は1~8mw/cmとすることができる。放射時間は、0.5~10秒の範囲、好ましくは0.6~6秒である。
【0104】
3D印刷物体を形成する方法には、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタル光処理(DLP)、又はフォトポリマー噴射(PPJ)、及び当業者に既知の他の技術が含まれる。好ましくは、複雑な形状の硬化した3D物体の製造は、例えば、長年知られているステレオリソグラフィーによって行われる。この技術では、2つの工程(1)及び(2)の交互の連続の繰返しによって、放射線硬化性組成物から所望の成形品が組み立てられる。工程(1)において、その1つの境界が組成物の表面である放射線硬化性組成物の層を、適切な画像化放射線、好ましくはコンピュータ制御された走査レーザビームからの画像化放射線によって、形成される成形品の所望の断面積に対応する表面領域内で硬化させ、そして工程(2)において、硬化させた層を放射線硬化性組成物の新しい層で覆い、そして工程(1)及び(2)の連続を、所望の形状が完成するまで繰り返す。
【0105】
一実施形態において、該方法は以下の工程、
(i) 放射線硬化性液体組成物の層を形成する工程、
(ii) 放射線を照射して、放射線硬化性液体組成物の層の少なくとも一部を硬化させ、硬化層を形成する工程、
(iii) 硬化層上に放射線硬化性液体組成物の新しい層を導入する工程、
(iv) 放射線硬化性液体組成物の新しい層に放射線を照射して新しい硬化層を形成する工程、及び
(v) 工程(iii)及び(iv)を3D物体が製造されるまで繰り返す工程
を含む。
【0106】
本発明によれば、工程(ii)又は(iv)の硬化時間は0.5~10秒、好ましくは0.6~6秒である。硬化中の温度に特に制限はない。具体的には、硬化中の温度は、使用する材料及び3Dプリンタに依存する。
【0107】
一実施形態では、該方法は、工程(v)で得られた3D物体全体を後硬化して最終的な3D物体を形成する工程をさらに含む。後硬化は、UV照射、熱処理又はそれらの組み合わせによって行うことができる。
【0108】
通常、熱処理における温度は、90~160℃の範囲、好ましくは100~140℃である。本発明によれば、硬化後の時間は30分~500分の範囲、例えば60分、120分、180分、250分、300分、400分、好ましくは60分~250分とすることができる。
【0109】
本開示のさらなる側面は、本発明の放射線硬化性液体組成物から形成された、又は本発明の方法によって得られた3D印刷物体に関する。
【0110】
3D印刷物体には、ソール、上着、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋及びシールが含まれる。
【0111】
本発明の3D印刷物体は、優れた弾性(エネルギーリターン)特性を示す。好ましい実施形態では、3D印刷物体のエネルギーリターンは、成分(C)を含まないのみで他の点では同一の放射線硬化性液体組成物から形成された3D印刷物体と比較して、5~30%、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、20%、22%、25%、28%又は30%、好ましくは7~25%増加させることができる。
【0112】
本発明によれば、エネルギーリターンはISO527-5:2009に準拠して判定できる。エネルギーリターンを試験するための分析器は、Stable Micro Systems Texture Analyzer(TA-HD plus)とすることができ、使用されるパラメータには、次のものが含まれる:試験前速度:60.0mm/分、試験速度(負荷):100.2mm/分、試験後速度(除荷):100.2mm/分、ひずみ:50%、サイクル:6回。
【0113】
本発明の3D印刷物体は、低密度も示す。好ましい実施形態では、3D印刷物体の密度は、1.1g/cm未満、1.09g/cm未満、1.08g/cm未満、1.07g/cm未満、1.06g/cm未満、1.05g/cm未満、1.02g/cm未満、又は1g/cm未満とすることができる。
【実施例
【0114】
材料及び略称
成分(A):
Bomar(登録商標)BR-744SD:Dymax社の二官能性脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、その60℃での粘度は7000cPであり、BR-744SDのTgは-8℃である。
Bomar(登録商標)BR-744BT:Dymax社の二官能性脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、その60℃での粘度は46000cPであり、BR-744BTのTgは9℃である。
イソ-デシルアクリレート(IDA);
BASF社のビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)。
【0115】
成分(B)
光開始剤:IGM社の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)。
【0116】
成分(C)
発泡性微小球:Nouryon社のExpancel031DU40、Expancel461DU20、Expancel043DU80。これらの発泡性微小球のパラメータは以下の通りであった。
【0117】
【表1】
【0118】
補助剤(D)
可塑剤:DINCH:1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、すなわちBASF社のHexamoll(登録商標)DINCH(登録商標)
【0119】
方法
(1) 引張試験(引張強さ及び破断伸びを含む)
引張強さ及び破断伸びは、ISO527-5:2009に準拠し、Zwick社、Z050引張機器を用いて判定した。使用したパラメータには、開始位置:50mm、前負荷:0.02MPa、試験速度:50mm/分が含まれていた。
【0120】
(2) 硬度
硬度は、ASTM D2240-15に準拠し、ASKER DUROMETER(タイプA)を用いて判定した。
【0121】
(3) エネルギーリターン(周期的引張試験)
エネルギーリターンは、ISO527-5:2009に準拠し、Stable Micro Systems Texture Analyser(TA-HD plus)を用いて判定した。使用したパラメータには、試験前速度:60.0mm/分、試験速度(負荷):100.2mm/分、試験後速度(除荷):100.2mm/分、ひずみ:50%、サイクル:6回が含まれていた。
【0122】
エネルギーリターンは、負荷曲線及び除荷曲線の下の面積によって計算した:
エネルギーリターン=(除荷曲線下面積)/(負荷曲線下面積)×100%。
【0123】
図3では、エネルギーリターン=B/(A+B)×100%であり、式中、Bは除荷曲線下面積を表し、そしてA+Bは負荷曲線下面積を表す。
【0124】
(4) 密度
密度はASTM-D-792に準拠して判定した。
【0125】
実施例1、1a、2、2a、2b、2c、2d、3a、3b
1. 放射線硬化性組成物の調製
実施例1、1a、2、2a、2b、2c、2d、3a、3bの放射線硬化性組成物は、表1に示す量の全成分をプラスチック製バイアルに添加し、スピードミキサーにより2000RPMで10分間25℃で混合することにより、放射線硬化性液体組成物を得た。
【0126】
【表2】
【0127】
2. 印刷試料の試験
2.1 硬化試料の調製
実施例1、1a、2、2a、2b、2c、2d、3a、3bの手順により調製した150gの組成物を、Miicraft1503D(Pr1)又はMoonrayプリンタ(Pr2)を使用して、表2に示す特定の印刷パラメータ下25℃で層ごとに印刷した。印刷プロセス後、印刷した部品をNextDentTM LC-3Dプリントボックスで、紫外線下60分間後処理し(出力18Wのランプ12個(色番号71が6個及び色番号78が6個)を、オーブン中130℃で60分間熱処理した。
【0128】
【表3】
【0129】
2.2 試験バーの調製
上記の工程2.1から得られた硬化試料をそれぞれ切断して、40mm×4mm×2mmの寸法を有する帯形の試験バーとした。
【0130】
2.3 試験結果
試験バーは、それぞれ上記のように試験した。試験結果を以下の表3に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
実施例1及び1aの硬化試料の特性を比較すると、実施例1aに5gの発泡性微小球(Expancel031)を導入すると、エネルギーリターンが著しく増加し、硬化試料の密度が低下した。
【0133】
実施例2、2a、2b、2c及び2dの硬化試料の特性を比較すると、Expancel031の量が増えると密度は減少し、Expancel031を含むあらゆる硬化試料のエネルギーリターンは、Expancel031を含まない硬化試料(すなわち実施例2)よりも高かった。実施例2dの硬化試料の密度はわずか0.787g/cmであり、発泡性微小球を含まない硬化試料と比較して28.5%減少した。実施例3a及び3bで導入された発泡性微小球は実施例2の発泡性微小球とは異なり、実施例3a及び3bの硬化試料はすべて、より高いエネルギーリターン及び良好な機械的性質を示した。
【0134】
図1は、発泡構造を示した実施例2bの硬化組成物の形態を示す。実施例2bの組成物を印刷して得られた3D印刷物体を図2に示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】