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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】化学製品生産
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20231219BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 301J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535907
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021085145
(87)【国際公開番号】W WO2022128766
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20213846.7
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンクラー,クリスティアン・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラウテンシュトラウホ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユエン・エン
(72)【発明者】
【氏名】バンデルノート,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤクート,ナタリヤ
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA56
3C100BB05
3C100BB13
3C100BB33
3C100EE11
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF14
3C223FF15
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG03
3C223HH06
3C223HH13
3C223HH15
3C223HH23
3C223HH29
(57)【要約】
本教示は、少なくとも1つの機器を備える工業プラントにおいて少なくとも1種の投入材料を処理することによって、少なくとも1つの工業製品を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するための方法であって、本方法が、入力インターフェースを介して、機器からのリアルタイムプロセスデータを受信することと、コンピューティングユニットを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定することと、リアルタイムプロセスデータのサブセットを出力データとして提供することとを含む、方法に関する。本教示はまた、システム、使用法、及びソフトウェア製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プラントにおいて化学製品を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するための方法であって、前記工業プラントが少なくとも1つの機器を備え、前記製品が、前記機器を介して、前記生産プロセスを使用して少なくとも1種の投入材料を処理することによって製造され、前記方法が、コンピューティングユニットを介して少なくとも部分的に実行され、前記方法が、
入力インターフェースを介して、前記機器からのリアルタイムプロセスデータを受信することと、
前記コンピューティングユニットを介して、前記リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定することであって、前記リアルタイムプロセスデータの前記サブセットが、前記投入材料が処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す、ことと、
出力インターフェースを介して、前記リアルタイムプロセスデータの前記サブセットを出力データとして提供することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、
前記コンピューティングユニットを介して、前記投入材料に関連する前記化学製品の少なくとも1つの性能パラメータを計算することであって、前記計算が、前記リアルタイムプロセスデータの前記サブセット及び履歴プロセスデータに基づいて実行される、こと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力データが、前記少なくとも1つの性能パラメータを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
インターフェースを介して、投入材料データを含むオブジェクト識別子を提供することであって、前記投入材料データが、前記投入材料の1つ又は複数の特性を示す、こと
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、
前記オブジェクト識別子に、前記リアルタイムプロセスデータの前記サブセットを付加すること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
前記オブジェクト識別子に、前記少なくとも1つの性能パラメータを付加すること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記機器を介して前記処理するための前記投入材料が、少なくとも2つのパッケージに分割され、パッケージのサイズが固定される、又は投入材料の重量若しくは量に基づいて決定され、そのために、比較的一定のプロセスパラメータ又は機器動作パラメータが前記機器によって提供され得る、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つのパッケージを処理することが、対応するデータオブジェクトによって管理され、前記データオブジェクトのそれぞれが少なくともオブジェクト識別子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
データオブジェクトが、トリガ信号が前記機器を介して提供されたことに応じて生成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記トリガ信号が、前記機器の機器ユニットのそれぞれに配置された対応するセンサの出力に応じて提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記機器が、前記出力データが、機器ゾーンのそれぞれからの前記リアルタイムプロセスデータのサブセット及び/又は前記機器ゾーンのそれぞれにおいて計算された少なくとも1つの性能パラメータを含むように、複数の物理的に分離された機器ゾーンを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記出力データが時間依存データストリームを形成する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記出力データ及び/又は前記時間依存データストリームが、ヒューマンマシンインターフェース(「HMI」)システムに提供される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記HMIシステムが、少なくとも部分的に表示デバイスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記HMIシステムが、少なくとも部分的に拡張現実(「AR」)及び/又は仮想現実(「VR」)デバイスである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記HMIシステムが、少なくとも部分的に音声デバイスである、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工業プラントの生産プロセスを監視及び/又は制御及び/又は改善するための、先行する請求項のいずれか1項において生成される出力データの使用法。
【請求項18】
生産プロセスを監視及び/又は制御するためのシステムであって、前記システムが、先行する請求項のいずれか1項の方法ステップを実行するように構成される、システム。
【請求項19】
コンピュータプログラム、又は前記プログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記プログラムが適切なコンピューティングによって実行されると、前記コンピューティングユニットに先行する請求項のいずれか1項に記載の方法ステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム、又は前記プログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本教示は、一般に、コンピュータ支援化学製品生産に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
工業プラントでは、1種又は複数種の製品を製造するために投入材料が処理される。そのため、製造された製品の特性は製造パラメータに依存する。通常、製品品質又は生産安定性を確保するために、製品の少なくともいくつかの特性と製造パラメータを関係付けることが望ましい。
【0003】
プロセス工業、又は化学製品製造プラント若しくは生物学的生産プラントなどの工業プラントでは、1種又は複数種の投入材料が、1種又は複数種の化学製品又は生物由来製品を生産するための生産プロセスを用いて処理される。プロセス工業における生産環境は複雑になり得るため、製品の特性は、上記特性に影響を与える生産パラメータの変動に応じて変化することがある。通常、製造パラメータに対する特性の依存関係は、複雑であり、特定のパラメータの1つ又は複数の組み合わせに対する更なる依存と絡み合っている場合がある。場合によっては、生産プロセスは複数の段階に分割されることがあり、このことは問題を更に悪化させ得る。そのため、化学製品又は生物由来製品を一貫した品質及び/又は予測可能な品質で生産することは困難な場合がある。
【0004】
化学製品の品質を一貫した品質に保つため、品質管理が行われる場合がある。品質管理では、通常、生産プロセスの後又は途中で、化学製品の1つ又は複数のサンプルを採取することを含む。その後、サンプルは分析され、そして必要に応じて是正措置が実施され得る。効果的であるためには、サンプルは、定期的に採取される必要があり得、化学製品の統計的なばらつきを代表するものである必要がある。その生産プロセスで発生する変動の頻度に応じて、品質管理の頻度を揃える必要があり得る。そのため、品質管理は費用及び時間がかかり得る。
【0005】
更に、離散処理とは対照的に、連続処理、キャンペーン処理、又はバッチ処理などの化学的処理又は生物学的処理は、統合するのが困難であり得る膨大な量の時系列データを提供し得る。更に、機械学習における統合若しくは使用のため、及び/又はプラントのオペレータのために意味のあるデータを提供することが困難な場合がある。
【0006】
したがって、理想的にはバレルから最終製品までのバリューチェーン全体を通して品質及び生産安定性を向上させるのを助け得る手法が求められている。
【発明の概要】
【0007】
概要
従来技術に固有の問題のうちの少なくともいくつかが、添付の独立請求項の主題によって解決されることが示される。更なる有利な代替形態のうちの少なくともいくつかが、従属請求項において概要を与えられる。
【0008】
第1の観点から見ると、工業プラントにおいて化学製品を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するための方法であって、工業プラントが少なくとも1つの機器を備え、製品が、機器を介して、生産プロセスを使用して少なくとも1種の投入材料を処理することによって製造され、本方法が、コンピューティングユニットを介して少なくとも部分的に実行され、本方法が、
- 入力インターフェースを介して、機器からのリアルタイムプロセスデータを受信することと、
- コンピューティングユニットを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定することであって、リアルタイムプロセスデータのサブセットが、投入材料が処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す、ことと、
- 出力インターフェースを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを出力データとして提供することと
を含む、方法が提供され得る。
【0009】
このようにすることによって、処理されている特定の投入材料に関連するプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示すリアルタイムプロセスデータのサブセットが、出力インターフェースを介して提供され得ることに本出願人は気付いた。したがって、処理されている投入材料に関連しないリアルタイムプロセスデータは、出力データとして提供されない。出力データは、好ましくは、リアルタイムで提供、例えば送信されるが、場合によっては、本開示で論じるように、遅延を伴って、及び/又は部分的に提供され得る。
【0010】
本手法の利点は、機器が複数の物理的に分離された機器ゾーンを備える場合に更に大きくなる。このような場合、出力データは、生産プロセスに沿った材料の進行過程に応じて投入材料を追跡し得る。このように、出力データは、生産プロセスにおいて、例えば時間依存データストリームとして、投入材料を動的に追跡し得る。このことには、本開示で論じるように、複数の利点があり得る。
【0011】
一態様によれば、リアルタイムプロセスデータのサブセットが、ゾーン存在信号を使用して決定される。ゾーン存在信号は、生産プロセス中の機器における特定の場所における投入材料の存在を示し得る。例えば、場所は、機器内の特定の機器ゾーンであり得る。
【0012】
ゾーン存在信号は、コンピューティングユニットを介して、投入材料に関連する少なくとも1つの特性を特定の場所又は機器ゾーンにマッピングするゾーン-時間変換を実行することにより生成され得る。例えば、投入材料に関連する特性は、生産プロセスの知識によって、例えばリアルタイムプロセスデータを介して、投入材料又は生産プロセスの間に生産された投入材料の派生材料の存在を判定し得るような、投入材料の重量であり得る。一例として、上流の機器ゾーンにあり、ある重量を有する投入材料が生産プロセスの間に下流の機器ゾーンに移動した場合、下流のゾーンにおける、例えば予め決められた時間における又は予め決められた時間内での重量測定値が、下流ゾーンにおけるゾーン存在信号を生成するために使用され得る。同様に、投入材料又は投入材料の派生材料が生産を通して移動する際の流量値、例えば質量流量又は体積流量が、ゾーン存在信号を生成するために使用される特性であり得る。更に一例として、投入材料が場所又は機器ゾーンに沿って移動する際の速さ又は速度は、投入材料又はその対応する派生材料が所与の時間に存在する空間又は場所を判定するために使用され得る。代替的又は追加的に、投入材料に関連する特性の他の非限定的な例としては、体積、充填値、レベル、色などが挙げられる。
【0013】
本出願人は、生産環境において時間依存性データ(例えば、時系列データ)であるリアルタイムプロセスデータを空間データにマッピングして、投入材料を表すデジタル流量要素を使用して現実の生産フローをマッピングすることにより、ゾーン存在信号を生成すると有利であることを見出した。例えば、投入材料のデジタル流量が、1つ又は複数のオブジェクト識別子を介して追跡されてもよく、時間依存リアルタイムプロセスデータにおける発生が、生産プロセスに沿った材料の位置を特定するために使用され得る。オブジェクト識別子については、本開示で詳しく論じる。このようにして、材料は、既に測定されている時間及びリアルタイムプロセスデータを介して、すなわち、生産チェーンに沿った投入材料の流量の時間次元と関連するプロセスデータの時間次元を用いることによって、追跡される、又は位置特定される。
【0014】
ゾーン存在信号は、例えば、決まった時間に又は不規則な時間に計算を介して生成されるような断続的であってもよいし、連続的に生成されてもよい。このことは、材料、例えば対応するオブジェクト識別子に関連する材料が、生産チェーン内に連続的に、又は実質的に連続的に位置特定され、ひいては、材料及びその化学製品への変換に関連性の高いデータを付加することを可能にし得るという利点を有し得る。決まった時間又は不規則な時間における計算は、例えば、生産チェーン内の特定のチェックポイントにおいて材料の存在を確認するためになされ得る。このことは、例えば、以下に概説するような1つ又は複数のセンサによるリアルタイムプロセスデータにおける発生によって補完され得る。
【0015】
化学製品生産では、滞留時間及び流速のような、時間次元に関連する動作パラメータが知られているため、ゾーン-時間変換は、時間スケールでの単純なマッピングであり得る。或いは、材料流量とリアルタイムプロセスデータとの時間スケールを一致させるために、プロセスシミュレーションに基づくより複雑なモデルが使用され得る。いずれにせよ、プロセスデータパラメータをより細かく材料の流量に帰属させるために、プロセスデータの時間スケールは材料の流量よりも細かくされてもよい。
【0016】
追加的又は代替的に、ゾーン存在信号は、特定の場所又はゾーンに関連するセンサを介して少なくとも部分的に提供されてもよい。例えば、重量センサ及び/又は画像センサが、空間における、又は特定の場所若しくは機器ゾーンにおける投入材料又は派生材料の存在を検出するために使用されてもよい。
【0017】
入力インターフェースと出力インターフェースとは、同じコンポーネントであっても、異なるコンポーネントであってもよい。
【0018】
一態様によれば、本方法は、
- コンピューティングユニットを介して、投入材料に関連する化学製品の少なくとも1つの性能パラメータを計算することであって、計算が、リアルタイムプロセスデータのサブセット及び履歴プロセスデータに基づいて、又はこれらを使用して実行される、こと
を含む。
【0019】
このように、関連性の高いプロセスデータであるリアルタイムプロセスデータのサブセットは、投入材料から化学製品への変換を少なくとも部分的に担う、関連性の高いリアルタイムプロセスデータのサブセットに基づいて、投入材料から得られる化学製品に期待され得る少なくとも1つの性能パラメータを計算するために、更に活用され得る。よって、少なくとも1つの性能パラメータの計算を介した化学製品の品質の判定が改善され得る。計算はまた、履歴プロセスデータ、例えば、以前の1種又は複数種の投入材料を処理した際の履歴プロセスデータを活用し、少なくとも1つの性能パラメータの計算を更に改善する。本教示によれば、化学製品の品質を示す少なくとも性能パラメータは、投入材料が処理されている間に基本的に決定され得ることが理解されよう。このように、化学製品の品質指標が、少なくとも1つの性能パラメータを介してオンザフライで評価され得る。複数の機器ゾーンの場合、少なくとも1つの性能パラメータは更に、ゾーン固有の性能パラメータ、すなわち、特定の機器ゾーンに関係する性能パラメータを含み得る。
【0020】
一態様によれば、出力データはまた、少なくとも1つの性能パラメータを含み得る。これにより、関連性の高い出力データに品質パラメータを含めることが可能になり得る。その更なる利点は、以下の議論において更に理解されるはずである。
【0021】
追加的又は代替的に、本方法は、
- インターフェースを介して、投入材料データを含むオブジェクト識別子を提供することであって、投入材料データが、投入材料の1つ又は複数の特性を示す、こと
を含み得る。
【0022】
これにより、投入材料に関連するデータを含むオブジェクト識別子が提供されるが、このことはいくつかの利点を有することができ、例えば、入力データが、投入材料データを使用し得る少なくとも1つの性能パラメータのより良い計算のために使用され得る。したがって、化学製品を生産するために使用される特定の投入材料の特性は、上記化学製品に関連する少なくとも1つの性能パラメータのより正確な計算のために使用され得る。
【0023】
インターフェースは、入力インターフェース及び/又は出力インターフェースと同じコンポーネントであってもよいし、異なるコンポーネントであってもよい。
【0024】
一態様によれば、本方法は、
- オブジェクト識別子に、リアルタイムプロセスデータのサブセットの少なくとも一部を付加すること
を含む。
【0025】
これにより、関連性の高いプロセスデータが、例えばメタデータとして、特定の投入材料に関連する特定のオブジェクト識別子に付加される。このことにより、投入材料から化学製品への変換を少なくとも部分的に担う、投入材料データと一緒に、関連性の高いプロセスデータをカプセル化することが相乗的に可能になる。よって、基本的にオンザフライで、関連性の高いデータもオブジェクト識別子を介して取り込まれる。出力データは、リアルタイムプロセスデータのサブセットをオブジェクト識別子に付加する前、同時、又は後に提供され得る。
【0026】
例えば、出力データは更に、オブジェクト識別子を介して提供又は生成されてもよく、すなわち、サブセットがオブジェクト識別子にまず付加され、次いで出力データがオブジェクト識別子を介して提供される。このことは、コンピューティングユニットが出力データを提供するタスクから解放され得るという利点を特に有し得る。出力データは、オブジェクト識別子から直接、及び/又は仲介デバイス若しくはエージェントを介して供給され得る。この場合、出力データは、連続的に提供されてもよいし、一定の時間間隔又は不規則な時間間隔で断続的に提供されてもよい。例えば、出力データストリームは、場合によりデータのチャンク又はストリングであってもよい。出力データへのデータチャンクの提供は、オブジェクト識別子及び/又は生産プロセスの状態に依存し得る。例えば、オブジェクト識別子を介した出力データの提供は、生産工程の完了、所与の値に到達したデータチャンクのサイズ、時間幅、特定の状態又は場所に達した材料などのうちの1つ又は複数に基づいてトリガされ得る。このことは、意味のあるデータがまず蓄積され、次いで出力データとして提供されるような特定のプロセス、例えば、遅いプロセスにおいて利点を有し得る。よって、出力データは、イベントベースで提供されてもよい。
【0027】
同様に、オブジェクト識別子は、出力データを提供した後に、サブセットを付加され得る。オブジェクト識別子に付加されるデータは更に、出力データから導出され得る。例えば、出力データは、リアルタイムプロセスデータのサブセットのどの部分がオブジェクト識別子に付加されるかを決定するために使用され得る、例えばメタデータとして含まれた、特定の識別子又はIDと共に送信されてもよい。このように、オブジェクト識別子に付加されたデータは、メモリストレージ及び処理要件に合わせて更に最適化され得る。よって、オブジェクト識別子に付加されるデータの有用性が最適化され得る。
【0028】
また、リアルタイムプロセスデータのサブセットの少なくとも一部を付加されているオブジェクト識別子、すなわち付加されたオブジェクト識別子は、機械学習(「ML」)の用途にも極めて有用であり得ることが理解されよう。
【0029】
一態様によれば、本方法は、
- オブジェクト識別子に、少なくとも1つの性能パラメータを付加すること
を含む。
【0030】
これにより、少なくとも1つの性能パラメータはまた、投入材料から化学製品への変換を少なくとも部分的に担う、プロセスデータのサブセットの少なくとも一部と共に取り込まれる。よって、オブジェクト識別子は、結果として得られる化学製品の原因となる変数をより十分にカプセル化することができ、このことは、基本的に生産プロセス全体で特定の化学物質を追跡するのに有用であり得る。更に、オブジェクト識別子にカプセル化されたデータセットはまた、品質管理及びMLの用途に更に関連するようになり得る。
【0031】
一態様によれば、履歴プロセスデータは、少なくとも1つ履歴オブジェクト識別子からのデータを含む。少なくとも1つの履歴オブジェクト識別子からのデータは、リアルタイムプロセスデータのサブセットと同様の仕方で決定された履歴プロセスデータの1つ又は複数のサブセットを含み得る。追加的又は代替的に、データは、1つ又は複数の履歴すなわち過去のプロセスパラメータを含み得る。
【0032】
したがって、履歴プロセスデータは、以前に処理された投入材料に関連する1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子からのデータを含み得る。好ましくは、履歴オブジェクト識別子の少なくとも一部が、機器で処理された過去の投入材料に関連する。場合によっては、1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子は、過去の投入材料が処理された同様の生産による他の機器又はゾーンからのものであり得るため、そのようなゾーンからの履歴オブジェクト識別子も使用可能であり得る。
【0033】
よって、1つ又は複数の過去すなわち履歴オブジェクト識別子からの関連性の高いプロセスデータは、少なくとも1つの性能パラメータの計算を改善するために活用され得る。
【0034】
また、履歴オブジェクト識別子のうちの少なくとも1つが、過去の1つ又は複数の性能パラメータを付与されてもよい。履歴性能パラメータは、過去すなわち履歴プロセスデータのサブセットに基づいて計算されていてもよく、及び/又は対応する化学製品又はそのサンプルに対して行われた物理的な試験又は分析を介して決定されていてもよい。したがって、過去の試験又はサンプリングデータもまた、投入材料の性能パラメータを計算するために活用されてもよい。
【0035】
したがって、1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子はまた、対応する過去の投入材料の特性と共に、それらの性能パラメータとの関係を関連付けるために活用され得るプロセスデータのサブセットも含み得る。
【0036】
本明細書で開示されるオブジェクト識別子は、それらの投入材料データを介して、対応する過去に決定された1つ又は複数の性能パラメータと、少なくとも特定の材料特性を関連付けることを可能にし得ることが理解されよう。よって、オブジェクト識別子データは、例えば、投入材料を後に処理するための少なくとも1つの性能パラメータを計算するために、再利用可能且つ追跡可能な仕方で活用され得る。
【0037】
また、少なくとも1つの履歴オブジェクト識別子、より好ましくはいくつかの履歴オブジェクト識別子、更により好ましくはほとんどの履歴オブジェクト識別子、及びより好ましくはそれぞれの履歴オブジェクト識別子が、対応する化学製品を製造又は処理するために対応する以前の投入材料を処理した際のプロセスデータを付加されている、又はカプセル化していることが理解されよう。このように、本明細書で開示される履歴データは、関連性の高いデータセットでありながらも簡潔なデータセットであり、データセットは、生産中に1つ又は複数の性能パラメータの計算を実行するために使用され得る。このため、このことは、化学製品のトレーサビリティを改善し得るだけではなく、化学製品の品質管理又は監視を簡素化し得る。このことについては、本開示で更に詳しく論じる。
【0038】
よって、オブジェクト識別子を介して、関連プロセスデータは、これもオブジェクト識別子にある投入材料データと共に取り込まれて、リアルタイムプロセスデータのサブセット又はその最適化された部分として取り込まれた関連プロセスデータと共に、投入材料の特性との化学製品の関係も取り込まれ得るようにし得る。これにより、化学製品の任意の1つ又は複数の特性に影響を与え得る様々な依存関係の間の関係がより完全に提供され得る。別の利点は、投入材料特性及び/又はプロセスパラメータの間に存在し得る様々な相互依存関係どうしの組み合わせもオブジェクト識別子内に取り込まれることであり得る。このように、付加されたオブジェクト識別子は、化学製品及び/又は投入材料などのその特定の成分だけではなく、化学製品をもたらす原因となった特定のプロセスデータを追跡するために使用され得る情報により強化される。その結果、履歴オブジェクト識別子のそれぞれなどのオブジェクト識別子は、機械学習(「ML」)及びそのような目的のために、より容易に統合され得る。よって、オブジェクト識別子はまた、将来の生産のための履歴オブジェクト識別子としても使用され得る。
【0039】
オブジェクト識別子からのデータは、投入材料から化学製品への変換の高度に集中した概要を提供し得るため、このようなデータセットは極めて簡潔であり、このことは、高速な処理及び少ない計算能力を可能にし得る。利点としては、MLモデルの訓練時間の短縮、データ統合の高速化、エッジ処理及びクラウドコンピューティング用途への適性が挙げられる。
【0040】
性能パラメータは、化学製品の1つ若しくは複数の特性に直接関連し得る、及び/又は生産プロセスの間に生産される派生材料若しくは製品の性能パラメータに関連し得ることが理解されよう。例えば、生産プロセスの途中で投入材料が派生材料に変換される場合、そのような派生材料の品質又は性能も追跡することが必要になる場合があり得る。派生材料が投入材料から結果として得られる中間材料である場合、上記派生材料は化学製品を生産するためにその後使用されることが理解されよう。化学製品は派生材料にも依存するため、派生材料を試験し追跡することが必要になる場合があり得る。よって、「投入材料」という用語は、出発材料だけではなく、任意の派生体又は中間処理材料を包含するように使用される。
【0041】
よって、一態様によれば、性能パラメータのうちの少なくとも1つが、派生材料の1つ又は複数の特性に関連する。
【0042】
一態様によれば、機器は、機器ゾーンのそれぞれからのリアルタイムプロセスデータのサブセット及び/又は機器ゾーンのそれぞれにおいて計算された少なくとも1つの性能パラメータを出力データが含むように、複数の物理的に分離された機器ゾーンを備える。
【0043】
よって、投入材料があるゾーンから別のゾーンに移動すると、出力データは投入材料の場所に応じて動的に変化する。出力データは、生産プロセスに沿って投入材料を辿る関連データのストリームとして理解され得る。出力データが1つ又は複数の性能パラメータを含む場合、これらの1つ又は複数の性能パラメータもまた、投入材料の進行に応じて適合され得る。複数のゾーンにおけるプロセスデータのサブセットがゾーン存在信号を使用して適合されると、出力データも適合されることが理解されよう。
【0044】
投入材料の複数のバッチが進行中である生産プロセスでは、更に、バッチごとに個別の出力データ又はストリームが存在し得る。したがって、出力データは、時間依存データストリームを形成し得る。ここで、オブジェクト識別子は、バッチの対応するオブジェクト識別子を介して、望ましいストリーム又は出力データが続き得るという相乗的な利点を提供し得る。ある意味では、ストリームは、対応する投入材料の対応するオブジェクト識別子を使用することによって「調整」され得る。これにより、出力データの所望のストリームを選択したり、出力データの所望のストリームに切り替えたりすることが容易になる。
【0045】
出力データ又は時間依存データストリームは、例えば、出力データストリームをリアルタイムで取り込み、処理するために、データベース及び/又は分散型データストアなどのデータストアにおいて提供されてもよい。データストアは、上述のようなメモリストレージ要素又は少なくとも1つデータベースであってもよいし、異なるシステムであってもよい。したがって、オブジェクト識別子は更に、データストアにおいて直接提供され得る、又はデータストアとは異なるメモリにおいて提供され得る。よって、出力データはデータストアにおいて直接提供されてもよいし、出力データはデータストアの外部のメモリストレージ又はデータベースを介して提供されてもよい。
【0046】
データストアは、出力データの1つ又は複数の異なるストリームをパブリッシュすること、及び/又は出力データの1つ又は複数の異なるストリームにサブスクライブすることを可能にし得る。追加的又は代替的に、データストアは更に、1つ又は複数のバッチからの出力データを生成された順に格納し得る。追加的又は代替的に、データストアは、1つ又は複数のバッチからの出力データをリアルタイムで処理し得る。データストアは更に、出力データストリームに適合するリアルタイムストリーミングデータパイプライン及びアプリケーションを構築するために使用され得る。データストアは、メッセージング、ストレージ、及び出力データ処理を組み合わせて、履歴データ及びリアルタイムデータの両方の格納及び分析を可能にし得る。データストアは更に、1つ又は複数のアプリケーションにデータを、例えばストリームの形態で提供し得る。アプリケーションは、データのストリームを消費する任意のアプリケーションであってよい。非限定的な例としては、例えば製品の品質をリアルタイムで最適化するために、1つ又は複数の性能パラメータを追跡するためのアプリケーションが挙げられる。追加的又は代替的に、関連性の高いプロセスデータの任意の部分が追跡及び/又は最適化され得る。データストアは、APIなどの1つ又は複数のインターフェースを含み得る。例えば、Producer APIが、出力データのストリームをデータストアにパブリッシュするために使用され得る。追加的又は代替的に、Consumer APIが、出力データストリーム及び/又は履歴データの再生ストリーム(例えば、1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子からのもの)にサブスクライブするために使用され得る。更に、アプリケーションがストリームプロセッサとして振る舞うことを可能にするStreams APIが存在し得る。このようなアプリケーションは、出力ストリームのうちの1つを取り込み、アプリケーション出力ストリームに変換し得る。よって、出力データを取り込んだ後、このようなアプリケーションは、処理されたデータのストリームをアプリケーション出力ストリームとして作成することができ、アプリケーション出力ストリームは、プラントのリアルタイムの最適化及び/又は監視及び/又は制御に使用され得る。最適化とは、生産プロセスを何らかの仕方で改善することを意味する。簡単のため、「時間依存データストリームという用語」は、出力データ又はアプリケーション出力ストリームを指すと理解されるものとする。データストリームは、連続的であってもよいし、断続的であってもよいし、更にイベントベースであってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。更に、アプリケーション又はデータシステムをデータストアに追加又は接続するためのConnector APIが存在し得る。
【0047】
よって、データストアに格納されるデータ、及び/又はデータストアから提供されるデータは、異なるプラント若しくは場所における生産プロセス及び/又は動作を改善するために使用され得る、高度に集中した関連データであり得る。あるプラントのデータが別のプラントで活用され、このことにより、各プラントにおける生産プロセスが相乗的に改善され得る。このことは、新しい出力データが生成され、オブジェクト識別子を介して自動的にカプセル化され、対応する投入材料に関して追跡され、履歴データとして提供されるなどのときに同時に起こり得ることが理解されよう。
【0048】
本教示に開示される、このような出力データ又は時間依存データストリームもまた、更に有利であり得る。例えば、追加的又は代替的に、出力データ又は時間依存データストリームは、ヒューマンマシンインターフェース(「HMI」)システム又はデバイスに提供されてもよい。
【0049】
HMIシステムは、少なくとも部分的に表示デバイスであってもよいし、表示デバイスを備えてもよい。表示デバイスは、出力データ又はストリームを意味のある仕方で表示するための画面を備えた任意の適切なデバイスであり得る。例えば、表示デバイスは、画像が任意の適切な仕方で投影又は表示されるコンピュータモニタ又は画面であってもよい。表示デバイスは更に、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの形態であってもよい。これにより、オペレータは、生産されている任意のバッチを追跡することができる。出力データは、出力データのどこかに異常があった場合にオペレータからのより迅速な応答を可能にし得る関連性の高いデータを提供し得る。この関連でオペレータを更に支援するために、履歴データ、又は好ましくは履歴オブジェクト識別子からのデータ及び/又は期待値が、異常状態があれば容易に捕捉するために出力データの対応する部分に重ねて表示され得る。履歴オブジェクト識別子からのデータは、投入材料が生産プロセスで受ける変換の高度に集中した概要を少ない計算資源で提供し得るためである。よって、システムは、異常に対処するために、オペレータがより適切な是正措置を取ることを可能にし得る。出力データのどこかがそれらの対応する閾値を超えた場合など、異常があれば、例えば、アラーム及び/又はディスプレイ上の異なる色を用いて伝達され得る。オペレータはまた、概要が生産プロセスの様々な段階において処理されている複数の材料にわたって維持され得るように、より迅速に異なる出力ストリームに切り替えることを可能にされ得る。別の利点は、同じバッチを追跡する場合、オペレータが手動で出力を異なるゾーンに切り替える必要がなく、出力データが自動的に材料を追跡することであり得る。
【0050】
追加的又は代替的に、HMIシステムは、拡張現実(「AR」)及び/又は仮想現実(「VR」)デバイスなどの複合現実(「MR」)デバイスを備える。例えば、MRデバイスは、オペレータ又はユーザのためのヘッドマウントデバイスであってもよい。MRデバイスは、コンピュータプロセッサ、カメラ、及び投影レンズを含み得る複数のセンサ及びハードウェアを備え得る。MRデバイスは更に、ユーザが現実世界の周囲を見ることができるように、少なくとも1つのバイザ又はレンズを備え得る。バイザ又はレンズは更に、コンピュータで生成された画像をユーザに提供する1つ又は複数の表示要素を備え得る。したがって、バイザ又はレンズによって、ユーザは、現実世界の周囲とコンピュータ生成画像とを、例えばホログラムとして同時に見ることが可能になり得る。場合によっては、コンピュータ生成画像は更に、バイザ又はレンズを通して見ることができる現実世界の要素に重ねられても重なってもよい。センサ及びハードウェアは、ユーザの方向、例えば、ユーザの頭及び/又は眼が向いている方向の位置に応じて、MRデバイスがユーザに提供する画像を適合させ得る。画像は更に、ユーザのジェスチャ又は動き、例えば、スワイプジェスチャ又はポインティングジェスチャ又は更にはタップジェスチャに応じて適合され得る。出力データ又は時間依存データストリームをMRデバイスに提供することにより、例えば機器のうち包囲された部分の中にあるなど、上記材料が物理的に見えない場合でも、ユーザは、生産プロセスを介して投入材料を仮想的に可視化することが可能になり得る。したがって、ダクトやパイプなどの包囲体内を流れる材料が生産プロセスに沿って追跡され得る。一態様によれば、投入材料及び/又は派生材料に関して、例えば、MRデバイスの視野内にある投入材料及び/又は派生材料に関して、リアルタイムプロセスデータのサブセットの少なくとも一部及び/又は少なくとも1つの性能パラメータが、自動的に表示される。ユーザが更なる確認又は調査を必要とする特定の材料への参照に注意したり認識したりできるように、上記材料のオブジェクト識別子参照が更に表示され得る。このことにより、サンプリング及び品質管理が簡素化され得る。異常なバッチがあれば、例えば、表示デバイスに関連して説明したように、異なる色で又は点滅して、例えばホログラムとして示され得る。例えば、良好なバッチ又は正常なパラメータを有するバッチは、1つの色(例えば、緑色)で示され得る一方、不良バッチ、例えば異常な性能パラメータを有するバッチは、別の色(例えば、赤色)で示され得る。論じたのと同様に、履歴データ、又は好ましくは履歴オブジェクト識別子からのデータ及び/又は期待値が、異常状態があれば容易に捕捉するために出力データの対応する部分に重ねて表示され得る。また、他のレベルも可能であってよく、例えば、平均的なバッチは、別の異なる色(例えば、黄色)で示される。色は、本教示の一般性を逸脱することなく非限定的な例として言及されている。
【0051】
追加的又は代替的に、開放状態で、すなわちバイザ又はレンズを介して見える材料のバッチが、コンピュータ生成されたオーバーレイ又は塗りつぶし、上で論じたオプションのうちのいずれか1つ又は複数、すなわち性能パラメータ、オブジェクト識別子参照、プロセスパラメータなどを示すためのタグ又はポインタで示され得る。仮想オーバーレイ又は塗りつぶしは、例えばMRデバイスのバイザを通してユーザに見える物理的材料にコンピュータ生成画像を少なくとも部分的にオーバーレイすることによって示され得ることが理解されよう。MRデバイスは更に、例えば、連続的又は断続的に更新される出力データの部分を示す機器、及び/又はダッシュボード、及び/又はタグにおける材料の動きを示すために、時間と共に変化する画像又はホログラムなどのアクティブな要素を表示し得る。上述のように、画像又はホログラムは、現実世界の機器の包囲された部分、又は機器の仮想モデルに重ねて示され、これにより生産における材料の流れ若しくは位置を示してもよく、及び/又はバイザ若しくはレンズを通して見えるように現実世界の材料と少なくとも部分的に重ねて示されてもよい。このことは、例えば、ユーザが正しい材料を識別するのを助け得る。例えば、材料が特定の性能パラメータを満たしていない場合、このことは、MRシステムにおいて異なるオーバーレイ画像又はタグで示され得る。このことは、オペレータが材料を見つける(例えば、サンプリングのために材料を採取する)のを助け得る。
【0052】
追加的又は代替的に、HMIシステムは音声デバイスを備える。音声デバイスは、一方向であっても双方向であってもよい。例えば、音声デバイスは、ユーザからの音声入力、例えば、オブジェクト「A」の性能パラメータ「X」、又はゾーン「21」の現在の混合温度を受け付け得る。次いで、デバイスは、ユーザが求めたデータを音声出力及び/又は映像出力として、表示デバイス及び/又はMRデバイスに返し得る。また、音声デバイスは、ユーザがマウスクリック又は画面のタップを介して要求したデータを、音声出力として提供することも可能である。
【0053】
いずれの場合も、出力データは、自動的に、又は要求に応じて、例えばユーザ若しくはサーバからの要求に応じて提供され得ることが理解されよう。この目的のために、任意の適切な標準又はプロトコル、例えば、OPC統一アーキテクチャ(「OPC UA」)が使用され得る。例えば、日付ストアへの出力データは、自動的に、例えば、生成されるにつれて連続的に提供され得る。例えば、MRデバイスに対するデータは、ユーザの選択に応じて、又はユーザの場所に応じて提供され得る。使用の場所は、例えば、MRデバイス自体を介して、画像認識などの検出を行うことにより、並びに/又は測位信号(例えば、ジオロケーションシステム)及び/若しくはビーコン(例えば、無線ビーコン又は信号)、及び/又は近距離無線通信(「NFC」)及び/若しくはBluetooth(登録商標)を介して検出され得る。クリック、タップ、又は声によるクエリなど、ユーザ選択の非限定的な例のいくつかは既に提供されている。
【0054】
「機器」とは、工業プラント内の1つ又は複数の設備を指し得る。非限定的な例として、機器とは、プログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)や分散型制御システム(「DCS」)などのコンピューティングユニット又はコントローラ、センサ、アクチュエータ、エンドエフェクタユニット、コンベヤシステムなどの輸送要素、ヒータなどの熱交換器、炉、冷却ユニット、反応器、ミキサ、粉砕機、チョッパ、圧縮機、スライサ、押出機、乾燥機、噴霧器、圧力又は真空チャンバ、チューブ、ビン、サイロ、及び工業プラントにおける生産のために又は生産中に直接又は間接的に使用される任意の他の種類の装置のうちの任意の1つ若しくは複数、又は任意のこれらの組み合わせを指し得る。好ましくは、機器とは、生産プロセスに直接又は間接的に関与する設備、装置、又は構成要素を特に指す。より好ましくは、機器とは、化学製品の性能に影響を与え得る設備、装置、又は構成要素を指す。機器は、バッファを備えてもよいしバッファを持たなくてもよい。更に、機器は、混合を伴っても伴わなくてもよく、分離を伴っても伴わなくてもよい。混合を伴わず、バッファを持たない機器の非限定的な例としては、コンベヤシステム又はベルト、押出機、ペレタイザ、及び熱交換器が挙げられる。混合を伴わず、バッファ付き機器の非限定的な例としては、バッファサイロ、ビンなどが挙げられる。混合を伴うバッファ付き機器の非限定的な例としては、ミキサ付きサイロ、混合容器、カッティングミル、二重円錐型ブレンダ、キュアリングチューブなどが挙げられる。混合を伴う、バッファを持たない機器の非限定的な例としては、スタティックミキサ又はダイナミックミキサなどが挙げられる。分離を伴う、バッファ付き装置の非限定的な例としては、カラム、セパレータ、抽出、薄膜蒸発器、フィルタ、ふるいなどが挙げられる。機器は更に、オクタビン充填、ドラム、袋、タンクローリーなどの貯蔵又は包装要素であってもよいし、これを含んでもよい。また、場合により、2つ以上の機器の組み合わせが、機器とみなされることもある。
【0055】
「機器ゾーン」とは、物理的に分離されたゾーンを指し、同じ機器の一部である場合もあれば、化学製品を製造するために使用される別の設備である場合もある。このように、各ゾーンは同一ではない場所に物理的に配置される。場所は、水平方向及び/又は垂直方向に同一ではない地理的場所であり得る。よって、投入材料は、上流の機器ゾーンから開始して、上流の機器ゾーンの下流にある1つ又は複数の機器ゾーンに向かって、下流に移動する。このように、生産プロセスの様々な工程は、ゾーン間で分散され得る。
【0056】
本開示では、「機器」という用語と「機器ゾーン」という用語とは同義で使用されることがある。
【0057】
「機器動作条件」とは、機器の状態を表す特性又は値を指し、例えば、設定値、コントローラ出力、生産順序、較正状態、機器関連の警告、振動測定値、速度、温度、及びファウリング値(フィルタ差圧、メンテナンス日など)などのうちのいずれか1つ又は複数を指す。
【0058】
「上流」という用語は、生産の流れとは反対を向く方向であると理解されるものとする。例えば、生産プロセスが開始する一番最初の機器ゾーンは、上流の機器ゾーンである。ただし、この「上流」という用語は、本開示における意味の範囲内で相対的な意味で使用される。例えば、最初の機器ゾーンと最後の機器ゾーンとの間にある中間の機器ゾーンは、最後の機器ゾーンに対しては上流のゾーンと呼ばれ、最初の機器ゾーンに対しては「下流」の機器ゾーンと呼ばれ得る。したがって、最後の機器ゾーンは、最初の機器ゾーンにとっても、中間の機器ゾーンにとっても、下流のゾーンである。同様に、最初の機器ゾーン及び中間の機器ゾーンの両方とも、最後の機器ゾーンの上流にある。
【0059】
「工業プラント」又は「プラント」とは、限定されるものではないが、1つ又は複数の工業製品の製造、生産、又は処理、すなわち、工業プラントによって行われる製造又は生産プロセス又は処理の工業的目的のために使用される任意の技術的インフラストラクチャを指し得る。工業製品は、例えば化学、生物学、医薬、食品、飲料、織物、金属、プラスチック、半導体など、任意の物理的製品であってよい。追加的又は代替的に、工業製品は更にサービス財であってもよく、例えば、リサイクルなどの回収又は廃棄物処理、1つ又は複数の化学製品への分解又は溶解などの化学処理であってもよい。したがって、工業プラントは、化学プラント、プロセスプラント、製薬プラント、油井及び/又は天然ガス井などの化石燃料処理施設、製油所、石油化学プラント、分留所などのうちの1つ又は複数であってもよい。工業プラントは更に、蒸留所、処理プラント、又はリサイクルプラントのいずれであってもよい。工業プラントは更に、上記の例のいずれか、又はそれらの類似のものを組み合わせたものであってもよい。
【0060】
インフラストラクチャは、熱交換器、分留塔などのカラム、炉、反応室、分解ユニット、貯蔵タンク、押出機、ペレタイザ、沈殿器、ブレンダ、ミキサ、カッタ、キュアリングチューブ、気化器、フィルタ、ふるい、パイプライン、スタック、フィルタ、バルブ、アクチュエータ、ミル、トランスフォーマ、搬送システム、遮断器、機械(例えば、タービン、発電機、粉砕機、圧縮機、工業用ファン、ポンプなどの大型回転機器)、コンベヤシステムなどの輸送要素、モータなどのうちのいずれか1つ又は複数などの機器又はプロセスユニットを含み得る。
【0061】
更に、工業プラントは、典型的には、複数のセンサと、プラント内のプロセスに関連する少なくとも1つのパラメータ、すなわちプロセスパラメータを制御するための少なくとも1つ制御システムとを備える。このような制御機能は、通常、センサのうちの少なくとも1つからの少なくとも1つ測定信号に応じて、制御システム又はコントローラによって実行される。プラントのコントローラ又は制御システムは、分散型制御システム(「DCS」)及び/又はプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)として実装され得る。
【0062】
したがって、工業プラントの機器又はプロセスユニットの少なくともいくつかは、工業製品のうちの1つ又は複数を製造するために監視及び/又は制御され得る。監視及び/又は制御は更に、1つ又は複数の製品の生産を最適化するためになされ得る。機器又はプロセスユニットは、1つ又は複数のセンサからの1つ又は複数の信号に応じて、DCSなどのコントローラを介して監視及び/又は制御され得る。加えて、プラントは更に、プロセスの一部を制御するための少なくとも1つプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)を備え得る。工業プラントは、典型的には、監視及び/又は制御の目的で工業プラントにおいて分散され得る複数のセンサを備え得る。このようなセンサは、大量のデータを生成し得る。センサは、機器の一部とみなされてもみなされなくてもよい。そのため、化学製品及び/又はサービス財などの生産は、データ量の多い環境であり得る。したがって、各工業プラントは、大量のプロセス関連データを生成し得る。
【0063】
当業者であれば、工業プラントは、通常、異なるタイプのセンサを含み得る計装を備え得ることを理解されよう。センサは、1つ若しくは複数のプロセスパラメータを測定するため、及び/又は機器若しくはプロセスユニットに関連する機器動作条件若しくはパラメータを測定するために使用され得る。例えば、センサはパイプライン内の流量、タンク内のレベル、炉の温度、ガスの化学組成などの工程パラメータの測定に用いられてよく、いくつかのセンサは粉砕機の振動、ファンの速度、バルブの開度、パイプラインの腐食、変圧器の両端での電圧などの測定に使用され得る。これらのセンサの差異は、検知するパラメータに基づくだけでなく、更に、対応するセンサが用いる検知原理である場合もある。検知するパラメータに基づくセンサのいくつかの例としては、温度センサ、圧力センサ、光センサなどの放射線センサ、流量センサ、振動センサ、変位センサ、ガスなどの特定物質を検出するものなどの化学センサが挙げられる。採用する検知原理が異なるセンサの例として、例えば、圧電センサ、圧電抵抗センサ、熱電対、静電容量センサ及び抵抗センサなどのインピーダンスセンサなどが挙げられる。
【0064】
工業プラントは更に、複数の工業プラントの一部であってもよい。本明細書で使用される場合、「複数の工業プラント」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常且つ慣習的な意味が与えられることになっており、特別な意味又はカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、具体的には、限定されるものではないが、少なくとも1つの共通の工業的目的を有する少なくとも2つの工業プラントの複合物を指し得る。具体的には、複数の工業プラントは、物理的及び/又は化学的に結合された少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、又は更により多くの工業プラントを含み得る。複数の工業プラントは、複数の工業プラントを形成する工業プラントが、バリューチェーン、抽出物、及び/又は製品のうちの1つ又は複数を共有し得るように結合されていてよい。複数の工業プラントは、複合体、複合体サイト、フェアブント、又はフェアブントサイトとも呼ばれる場合もある。更に、様々な中間製品を介して最終製品に至る複数の工業プラントのバリューチェーン生産は、様々な工業プラントなど、様々な場所に分散されても、又はフェアブントサイト又はケミカルパークに統合されていてもよい。そのようなフェアブントサイト又はケミカルパークは、1つ若しくは複数の工業プラントであっても、又は1つ若しくは複数の工業プラントを含んでいてもよく、少なくとも1個の工業プラントで製造された製品は別の生産プラントへのフィードバックとして機能することができる。
【0065】
「生産プロセス」とは、投入材料に対して使用又は適用されると化学製品を提供する任意の工業プロセスを指す。よって、化学製品は、生産プロセスを介して、投入材料を直接、又は1種若しくは複数種の派生材料を介して変換して化学製品にすることによって提供される。したがって、生産プロセスは、化学製品を得るために使用される任意の製造プロセス又は処理プロセス、或いは複数のプロセスの組み合わせとすることができる。生産プロセスは更に、化学製品のパッケージング及び/又はスタッキングを含み得る。よって、生産プロセスは、化学的プロセスと物理的プロセスとの組み合わせであり得る。
【0066】
「製造する」、「生産する」、又は「処理する」という用語は、生産プロセスに関連して同義で使用される。これらの用語は、1つ又は複数の化学製品をもたらす投入材料に対する化学プロセスを含む工業プロセスのあらゆる種類の適用を包含し得る。
【0067】
本開示において、「化学製品」とは、化学製品、医薬品、栄養製品、化粧品、又は生物由来製品などの任意の工業製品、或いはそれらの組み合わせのいずれかを指し得る。化学製品は、天然成分のみから構成されるものであってもよいし、少なくとも部分的に1種又は複数種の合成成分を含んでもよい。化学製品の非限定的な例としては、有機組成物若しくは無機組成物、モノマー、ポリマー、発泡体、殺虫剤、除草剤、肥料、飼料、栄養補助食品、前駆体、医薬品、又は処理製品、或いはそれらの成分又は有効成分のいずれか1つ又は複数が挙げられる。場合によっては、化学製品は更に、エンドユーザ又は消費者によって使用可能な製品、例えば、化粧品又は医薬組成物であり得る。化学製品は更に、更なる1つ又は複数の製品を作るために使用可能な製品であってもよく、例えば、化学製品は、靴底の製造に使用可能な合成発泡体であっても自動車の外装に使用可能なコーティングであってもよい。化学製品は、任意の形態であってもよく、例えば、固体、半固体、ペースト、液体、乳濁液、溶液、ペレット、顆粒、ビーズ、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)粒子などの粒子、又は粉末の形態であってもよい。
【0068】
そのため、化学製品は、特に生産プロセスにおいては追跡する(trace or track)ことが困難な場合がある。製造中、投入材料などの材料は、他の材料と混合されることがあり、及び/又は投入材料は、例えば異なる仕方で処理するために、生産チェーンの先で異なる部分に分割されることがある。投入材料は、化学製品に変換される前に、複数回変換、例えば1種又は複数種の派生材料に複数回変換されることがある。場合により、化学製品は、分割されて異なるパッケージにパッケージングされることもある。場合によっては、パッケージングされた化学製品又はその部分にラベル付与することは可能であり得るが、その特定の化学製品又はその部分の製造を担った生産プロセスの詳細を添付することは困難であり得る。多くの場合、投入材料及び/又は化学製品は、物理的にラベル付与することが困難な形態であり得る。よって、本教示はまた、このような制限を克服するために、1つ又は複数のオブジェクト識別子が使用され得る仕方を提供し得る。
【0069】
生産プロセスは、キャンペーンで連続的であってもよく、例えば、回収が必要な触媒に基づく場合、バッチ化学製品生産プロセスであってもよい。これらの生産タイプどうしの1つの主な違いは、生産時に生成されるデータの発生の頻度にある。例えば、バッチプロセスでは、生産データは、生産プロセスの開始から最後のバッチまで、そのランで生産された異なるバッチに及ぶ。連続的な設定の場合、データはより連続的であり、生産の運転及び/又はメンテナンスによるダウンタイムでのシフトの可能性を伴う。本教示は、バッチプロセス又はバッチプロセスと同様のプロセスにおいて特に有利であることが判明している。
【0070】
「プロセスデータ」とは、生産プロセス中に、例えば1つ又は複数のセンサを介して測定された値、例えば、数値又は2値信号値を含むデータを指す。プロセスデータは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件のうちの1つ又は複数の時系列データであってもよい。好ましくは、プロセスデータは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件の時間的情報を含み、例えば、データは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件に関連するデータポイントの少なくとも一部についてタイムスタンプを含む。より好ましくは、プロセスデータは、時空間データ、すなわち、時間的データと、場所、又は時空間関係がデータから導出され得るように、物理的に離れて配置されている1つ若しくは複数の機器ゾーンに関連するデータとを含む。時空間関係は、例えば、所与の時間における投入材料の場所を計算するために使用され得る。
【0071】
「リアルタイムプロセスデータ」とは、特定の投入材料が生産プロセスを使用して処理されている間に測定される、又は基本的に過渡的な状態にあるプロセスデータを指す。例えば、投入材料のリアルタイムプロセスデータは、生産プロセスを使用した投入材料の処理からのプロセスデータ、又は処理と概ね同じ時間のプロセスデータである。ここで、概ね同じ時間とは、時間的な遅れがほとんど又はまったくないことを意味する。「リアルタイム」という用語は、コンピュータ及び計装の技術分野で理解されている。具体的な非限定的な例として、投入材料に対して生産プロセスが実行されている際の生産の発生と、プロセスデータが測定又は読み出されることとの間の時間遅延は15秒未満、具体的には10秒以下、より具体的には5秒以下である。高スループット処理の場合、遅延は1秒未満、又は数ミリ秒未満、又は更にはそれ未満である。このように、リアルタイムデータは、投入材料の処理中に生成される時間依存プロセスデータ又は時系列データのストリームとして理解され得る。
【0072】
「プロセスパラメータ」とは、生産プロセスに関連する変数のいずれか、例えば、温度、圧力、時間、レベルなどのうちのいずれか1つ又は複数を指し得る。
【0073】
「投入材料」は、化学製品を生産するために使用される少なくとも1つの原料又は未加工材料を指し得る。投入材料は、任意の有機物若しくは無機物であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。よって、投入材料は更に、混合物であってもよいし、更に複数の有機成分及び/又は無機成分から任意の形態で構成されてもよい。場合によっては、投入材料は更に、例えば上流の処理施設又はプラント工場からの中間の処理材料であってもよい。
【0074】
投入材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリエーテルアルコール、ポリエーテルジオール、ポリテトラヒドロフラン、アジピン酸及びブタン-1,4-ジオールに基づくようなポリエステルジオール、イソシアネート、充填材(有機若しくは無機材料のいずれか)、例えば、木粉、デンプン、亜麻、麻、ラミー、ジュート、サイザル、綿、セルロース若しくはアラミド繊維、ケイ酸塩、バライト、ガラス球、ゼオライト、金属若しくは金属酸化物、タルク、チョーク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、石英粉、アエロジル、粘土、雲母若しくは珪灰石、鉄粉、ガラス球、ガラス繊維、若しくは炭素繊維のうちのいずれか1つ又は複数が挙げられる。
【0075】
更なる非限定的な例として、投入材料は、メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)及び/又はポリテトラヒドロフラン(「PTHF」)であってよく、これは、熱可塑性ポリウレタンを得るために生産プロセスの少なくとも一部を受ける。このように、投入材料は、1つ又は複数の機器ゾーンにおいて化学的に処理されて、場合によっては派生材料となり得る熱可塑性ポリウレタンを得ることが理解されよう。派生材料は、化学製品を得るために更に処理される。例えば、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)は、1つ又は複数の更なる機器ゾーンで更に処理されて、発泡熱可塑性ポリウレタン(「ETPU」)を得てもよい。ETPUは、例えば、化学製品であり得る。しかしながら、場合によっては、TPU自体が更に、更なる処理のために下流にある顧客又は施設に送られる化学製品であり得る。
【0076】
「投入材料データ」とは、投入材料の1つ又は複数の性質又は特性に関連するデータを指す。したがって、投入材料データは、投入材料の数量などの特性を示す値のうちのいずれか1つ又は複数を含み得る。代替的又は追加的に、数量を示す値は、投入材料の充填度及び/又は質量流量であってもよい。値は、好ましくは、機器に動作可能に結合された又は含まれる1つ又は複数のセンサを介して測定される。代替的又は追加的に、投入材料データは、投入材料に関連するサンプル/試験データを含み得る。代替的又は追加的に、投入材料データは、密度、濃度、純度、pH、組成、粘度、温度、重量、体積などのうちのいずれか1つ又は複数など、投入材料の任意の物理的性質及び/又は化学的性質を示す値を含み得る。代替的又は追加的に、投入材料データは、投入材料に関連する性能データを含み得る。場合によっては、投入材料が、投入材料に関連付けられた予め生成されたオブジェクト識別子が既に存在するような仕方で生産される場合、投入材料データは、予め生成されたオブジェクト識別子からのデータの一部を含み得る。例えば、その後、投入材料データは、予め生成されたオブジェクト識別子への参照若しくはリンク、又は更には場合によっては予め生成されたオブジェクト識別子からのプロセスデータの少なくとも一部を含み得る。
【0077】
基礎となる化学製品生産環境の処理機器によって処理される投入材料は、物理的又は現実世界のパッケージ(以下、「パッケージオブジェクト」(又はそれぞれ「物理パッケージ」若しくは「製品パッケージ」)と呼ぶ)に分割されることに留意されたい。このようなパッケージオブジェクトのパッケージサイズは、例えば材料の重量若しくは材料の量によって固定され得る、又は重量若しくは量に基づいて決定され得、そのために、比較的一定のプロセスパラメータ又は機器動作パラメータが処理機器によって提供され得る。このようなパッケージオブジェクトは、供給ユニットによって、液体及び/又は固体の投入原材料から作成され得る。
【0078】
このようなパッケージオブジェクトのその後の処理は、上述のオブジェクト識別子を含む対応するデータオブジェクトによって管理され、データオブジェクトは、上述の機器と結合される、又は更には機器の一部であるコンピューティングユニットを介して、各パッケージオブジェクトに割り当てられる。基礎となるパッケージオブジェクトの対応するオブジェクト識別子を含むデータオブジェクトは、コンピューティングユニットのメモリストレージの要素に格納される。
【0079】
データオブジェクトは、機器を介して提供されたトリガ信号に応じて、好ましくは、機器ユニットのそれぞれに配置された対応するセンサの出力に応じて生成され得る。上述のように、基礎となる工業プラントは、異なるタイプのセンサ、例えば、1つ若しくは複数のプロセスパラメータを測定するため、及び/又は機器若しくはプロセスユニットに関連する機器動作条件若しくはパラメータを測定するためのセンサを備え得る。
【0080】
上述の「オブジェクト識別子」とは、より詳細には、投入材料のデジタル識別子を指す。オブジェクト識別子は、好ましくは、コンピューティングユニットによって生成される。オブジェクト識別子の提供又は生成は、機器によって、又は例えば機器からのトリガイベント若しくは信号に応じて、トリガされ得る。オブジェクト識別子は、コンピューティングユニットに動作可能に結合されたメモリストレージ要素に格納される。メモリストレージは、少なくとも1つデータベースを備えてもよいし、その一部であってもよい。したがって、オブジェクト識別子は更に、データベースの一部であり得る。このように、オブジェクト識別子は、投入材料を使用して生産された化学製品に関して引き継がれるか、又は少なくとも参照される。同様に、履歴上流オブジェクト識別子は、先に処理された特定の履歴投入材料に対応する。オブジェクト識別子は、任意の適切な仕方を介して提供されてもよく、例えば、オブジェクト識別子は、送信されてもよいし受信されてもよいし生成されてもよいことが理解されよう。
【0081】
「コンピューティングユニット」は、1つ又は複数の処理コアを有するマイクロプロセッサ、マイクロコントローラなど、処理手段又はコンピュータプロセッサを備えてもよいし、又は処理手段又はコンピュータプロセッサであってもよい。場合によっては、コンピューティングユニットは、少なくとも部分的に機器の一部であってもよく、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)若しくは分散型制御システム(「DCS」)などのプロセスコントローラであってもよく、及び/又は少なくとも部分的にリモートサーバの一部であってもよい。したがって、コンピューティングユニットは、機器に動作可能に接続された1つ又は複数のセンサからの1つ又は複数の入力信号を受信し得る。コンピューティングユニットが機器の一部ではない場合、コンピューティングユニットは、機器からの1つ又は複数の入力信号を受信し得る。代替的又は追加的に、コンピューティングユニットは、機器に動作可能に結合された1つ又は複数のアクチュエータ又はスイッチを制御し得る。1つ又は複数のアクチュエータ又はスイッチは更に、動作可能に機器の一部であり得る。
【0082】
したがって、コンピューティングユニットは、アクチュエータ若しくはスイッチ及び/又はエンドエフェクタユニットのうちのいずれか1つ又は複数を制御することによって、例えば機器動作条件のうちの1つ又は複数を操作することを介して、生産プロセスに関連する1つ又は複数のパラメータを操作することが可能であり得る。制御は、好ましくは、機器から取得された1つ又は複数の信号に応じてなされる。
【0083】
「メモリストレージ」とは、適切な記憶媒体に情報をデータの形態で格納するためのデバイスを指し得る。好ましくは、メモリストレージは、機械で読み取り可能なデジタル形式で情報を格納するのに適したデジタルストレージであり、例えば、コンピュータプロセッサを介して読み取り可能なデジタルデータである。このように、メモリストレージは、コンピュータプロセッサによって読み取り可能なデジタルメモリストレージデバイスとして実現され得る。更に好ましくは、デジタルメモリストレージデバイス上のメモリストレージはまた、コンピュータプロセッサを介して操作され得る。例えば、メモリストレージデジタルデバイスに記録されたデータの任意の部分が、コンピュータプロセッサによって、部分的又は全体的に、新しいデータで書き込まれ、及び/又は消去され、及び/又は上書きされ得る。
【0084】
これに関連して、「エンドエフェクタユニット」又は「エンドエフェクタ」とは、機器の一部である、並びに/又は機器に動作可能に接続され、したがって機器の周囲の環境と相互作用することを目的として、機器及び/若しくはコンピューティングユニットを介して制御可能であるデバイスを指す。いくつかの非限定的な例として、エンドエフェクタは、カッタ、グリッパ、噴霧器、混合ユニット、押出機先端など、又は環境(例えば、投入材料及び/又は化学製品)と相互作用するように設計されたそれらの対応する部分であってもよい。
【0085】
投入材料に関して1つ又は複数の「特性」とは、投入材料の数量、バッチ情報、純度、濃度などの品質を特定する1つ若しくは複数の値、又は投入材料の任意の性質のうちのいずれか1つ又は複数を指し得る。
【0086】
「インターフェース」は、少なくとも部分的に機器の一部である、又は別のコンピューティングユニット(例えば、これを介してオブジェクト識別子が提供されるコンピューティングユニット)の一部である、ハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネントであり得る。例えば、インターフェースは、アプリケーションプログラミングインターフェース(「API」)であり得る。場合によっては、インターフェースはまた、例えば、ネットワーク内の2つのハードウェアコンポーネント及び/又はプロトコルレイヤをインターフェースするために、少なくとも1つネットワークに接続し得る。例えば、インターフェースは、機器とコンピューティングユニットとの間のインターフェースであってもよい。場合によっては、機器は、ネットワークを介してコンピューティングユニットと通信可能に結合され得る。よって、インターフェースは更に、ネットワークインターフェースであってもよく、ネットワークインターフェースを備えてもよい。場合によっては、インターフェースは更に、接続インターフェースであってもよく、接続インターフェースを備えてもよい。
【0087】
「ネットワークインターフェース」とは、ネットワークとの動作可能な接続を可能にする1つ又は複数のハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネントのデバイス又はグループを指す。
【0088】
「接続インターフェース」とは、転送又は交換又は信号又はデータなど、通信を確立するためのソフトウェア及び/又はハードウェアインターフェースを指す。通信は、有線であっても無線であってもよい。接続インターフェースは、好ましくは、1つ又は複数の通信プロトコルに基づく、又はそれをサポートする。通信プロトコルは、無線プロトコルであってもよく、例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFiなどの短距離通信プロトコル、又はセルラネットワークやモバイルネットワークなどの長距離通信プロトコル、例えば、第2世代セルラネットワーク(「2G」)、3G、4G、ロングタームエボリューション(「LTE」)、又は5Gであってもよい。代替的又は追加的に、接続インターフェースは更に、独自の短距離又は長距離プロトコルに基づき得る。接続インターフェースは、任意の1つ又は複数の標準及び/又は独自のプロトコルをサポートし得る。接続インターフェースとネットワークインターフェースとは、同じユニットであっても、異なるユニットであってもよい。
【0089】
本明細書で論じる「ネットワーク」は、有線、無線、又はそれらの組み合わせの、任意の適切な種類のデータ伝送媒体であり得る。特定の種類のネットワークは、本教示の範囲又は一般性を限定するものではない。したがって、ネットワークは、少なくとも1つの通信エンドポイントと別の通信エンドポイントとの間の任意の適切な相互接続を指し得る。ネットワークは、1つ又は複数の配信ポイント、ルータ、又は他のタイプの通信ハードウェアを含み得る。ネットワークの相互接続は、物理的な有線配線、光及び/又は無線による高周波の方法によって形成され得る。ネットワークは、具体的には、光ファイバーネットワークなどの配線によって全体的若しくは部分的に作られた物理ネットワーク、又は導電性ケーブルによって全体的若しくは部分的に作られたネットワーク、又はそれらの組み合わせであってもよいし、これを含んでいてもよい。ネットワークは、少なくとも部分的にインターネットを含み得る。
【0090】
論じたように、プロセスデータのサブセットの少なくとも一部が、オブジェクト識別子に付加される。このように、機器において投入材料を処理することに関連したリアルタイムプロセスデータのスナップショットが、利用可能にされたり、上流オブジェクト識別子にリンクされたりする。
【0091】
「性能パラメータ」は、化学製品のいずれか1つ又は複数の特性であっても、これを示すものであってもよい。したがって、性能パラメータは、特定の用途又は使用法に対する化学製品の適合性又は適合性の程度を示す1つ又は複数の事前定義された基準を満足させるはずのパラメータである。ある場合には、性能パラメータは、化学製品の特定の用途又は使用法に対する適合性の欠如、又は不適合の程度を示し得ることが理解されよう。非限定的な例として、性能パラメータは、引張強度などの強度、色、濃度、組成、粘度、ヤング率値などのスチフネス、百万分率(「ppm」)値などの純度若しくは不純度、平均故障時間(「MTTF」)などの故障率、又は(例えば、事前定義された基準を用いた試験を介して決定された)任意の1つ若しくは複数の値若しくは値範囲のうちのいずれか1つ又は複数であり得る。よって、性能パラメータは化学製品の性能又は品質を代表する。事前定義された基準は、例えば、化学製品の品質又は性能を決定するために、化学製品の性能パラメータが比較される1つ又は複数の基準値又は範囲であり得る。事前定義された基準は、1つ又は複数の試験を用いて決定されたものであり、これにより、化学製品が1つ又は複数の特定の使用法又は用途に適合するための性能パラメータに対する要件を定義するものであってもよい。
【0092】
非限定的な例として、性能パラメータは、引張強度などの強度、ショア硬さなどの硬度、バルク密度などの密度、色、濃度、組成、溶融粘度などの年度、メルトフロー値(「MFV」)、ヤング率値などのスチフネス、百万分率(「ppm」)値などの純度若しくは不純度、平均故障時間(「MTTF」)などの故障率、又は(例えば、事前定義された基準を用いた試験を介して決定された)任意の1つ若しくは複数の値若しくは値範囲のうちのいずれか1つ又は複数であり得る。よって、性能パラメータは化学製品の性能又は品質を代表する。事前定義された基準は、例えば、化学製品の品質又は性能を決定するために、化学製品の性能パラメータが比較される1つ又は複数の基準値又は範囲であり得る。事前定義された基準は、臨床試験、信頼性試験、又は摩耗試験などの1つ又は複数の試験を用いて決定されたものであり、これにより、化学製品が1つ又は複数の特定の使用法又は用途に適合するための性能パラメータに対する要件を定義するものであってもよい。場合によっては、性能パラメータは、派生材料の特性に関連し、又は派生材料の特性から測定され得る。
【0093】
性能パラメータのうちの1つ又は複数は更に、ゾーン固有であり得る。ここでいう「ゾーン固有」とは、特定の機器ゾーン(例えば、上流の機器ゾーン)に属することを指すことが理解されよう。よって、ゾーン固有性能パラメータのうちの少なくとも1つが、上流の機器ゾーンについて計算されてもよく、及び/又はこれらのうちの1つ若しくは複数が、コンピューティングユニットによって、上流の機器ゾーンの下流にある1つ若しくは複数の機器ゾーンについて計算されてもよい。よって、予測されるパラメータは、化学製品に直接関係する、及び/又は化学製品に変換される1つ若しくは複数の派生材料に関係し得る。
【0094】
通常、性能パラメータは、生産中及び/又は生産後に採取された化学製品及び/又は派生材料のうちの1つ又は複数のサンプルから決定される。サンプルは、検査室に持ちこまれて、性能パラメータを決定するために分析され得る。サンプルの採取、処理、又は試験、そして試験結果の分析という活動全体には、かなりの時間及びリソースがかかり得ることが理解されよう。そのため、サンプルの採取と、投入材料及び/又はプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件の調整の実施との間にはかなりの遅れが存在し得る。この遅れ又は時間差により、品質が最適ではないか又は低下した化学製品を生産することもあれば、最悪の場合、サンプルが分析され、投入材料及び/又はプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を調整することにより是正措置が取られるまで、生産が停止されなければならないこともある。
【0095】
投入材料及び/又はプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を調整するためのサンプリング手法において時間差の影響を少なくとも軽減するための解決策として、提案される、少なくとも1つの性能パラメータのコンピューティングが使用され得る。
【0096】
一態様によれば、性能パラメータのうちの少なくとも1つの計算は、少なくとも一部が解析的なコンピュータモデルであるモデルを用いてなされる。追加的又は代替的に、モデルは、少なくとも部分的に1つ又は複数の機械学習(「ML」)モデルであり得る。MLモデルは、履歴データを使用して、例えば、1つ又は複数の履歴上流オブジェクト識別子からの履歴データを使用して訓練され得る。したがって、MLモデルという用語は、本開示では、少なくとも部分的に1つ又は複数の機械学習(「ML」)モデルであるモデルを指すと理解される。
【0097】
より具体的には、本教示に関連して、MLモデルは、履歴データを使用して訓練された場合、データ駆動型モデルをもたらし得る予測モデルであってもよいし、そのような予測モデルを含んでもよい。「データ駆動型モデル」とは、少なくとも部分的にデータから、この場合は履歴データから導出されるモデルを指す。純粋に物理化学法則を用いて導出される厳密なモデルとは対照的に、データ駆動型モデルは、物理化学法則ではモデル化できない関係を記述することを可能にし得る。データ駆動型モデルを使用することにより、物理化学法則に基づく方程式を解くことなく、関係を記述することが可能になり得る。これにより、計算能力の削減及び/又は速度が改善され得る。
【0098】
データ駆動型モデルは回帰モデルであってもよい。データ駆動型モデルは数理モデルであってもよい。数理モデルは、提供された入力と出力との間の関係を関数として記述し得る。例えば、サブセットがMLモデルへの入力として提供される場合、モデルは、関数を適用することにより性能パラメータのうちの少なくとも1つを出力として計算する。
【0099】
よって、ここでいうデータ駆動型モデル、好ましくはデータ駆動型機械学習(「ML」)モデル又は単にデータ駆動型モデルとは、対応する生産プロセスに関連する反応速度論的又は物理化学的プロセスを反映するために、履歴プロセスデータなどの対応する訓練データセットにしたがってパラメータ化される訓練された数理モデルを指す。訓練されていない数理モデルとは、反応速度論的又は物理化学的プロセスを反映していないモデルを指し、例えば、訓練されていない数理モデルは、経験的観察に基づく科学的一般化を提供する物理法則から導出されない。したがって、速度論的特性又は物理化学的特性は、訓練されていない数理モデルには固有のものではないことがある。訓練されていないモデルは、そのような特性を反映しない。対応する訓練データセットを用いた特徴量エンジニアリング及び訓練により、訓練されていない数理モデルのパラメータ化が可能になる。このような訓練の結果は、単にデータ駆動型モデル、好ましくはデータ駆動型MLモデルであり、これは、訓練プロセスの結果として、好ましくは訓練プロセスのみの結果として、生産プロセスに関連する反応速度論的又は物理化学的プロセスを反映する。
【0100】
モデルは更にハイブリッドモデルであってもよい。ハイブリッドモデルとは、第一原理部分である、分析モデル又はいわゆるホワイトボックスと、先に説明したようなデータ駆動型部分、いわゆるブラックボックスとを含むモデルを指し得る。モデルは、ホワイトボックスモデルとブラックボックスモデル及び/又はグレーボックスモデルとの組み合わせを含み得る。ホワイトボックスモデルは、物理化学法則に基づき得る。物理化学法則は、第1原理から導出され得る。物理化学法則は、化学運動論と、質量、運動量、及びエネルギーの保存則と、任意次元の粒子集団とのうちの1つ又は複数を含み得る。ホワイトボックスモデルは、対応する生産プロセス又はその一部を支配する物理化学法則にしたがって選択され得る。ブラックボックスモデルは、履歴データに、例えば、1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子からの履歴データに基づき得る。ブラックボックスモデルは、機械学習、深層学習、ニューラルネットワーク、又は他の形態の人工知能のうちの1つ又は複数を使用して構築され得る。ブラックボックスモデルは、訓練データセットとテストデータとの間のあてはめが良好である任意のモデルであり得る。グレーボックスモデルは、部分的な理論構造とデータとを組み合わせてモデルを完成させるモデルである。
【0101】
本明細書で使用される場合、「機械学習」又は「ML」という用語は、明示的にプログラミングすることなく、機械がデータからタスクを「学習」することを可能にする統計的手法を指し得る。機械学習技法は、「従来の機械学習」(手作業で特徴量を選択し、モデルを訓練するワークフロー)を含み得る。従来の機械学習技法の例としては、決定木、サポートベクターマシン、及びアンサンブル学習が挙げられる。いくつかの例では、データ駆動型モデルは、データ駆動型深層学習モデルを含み得る。深層学習は、人間の脳の神経回路を大まかにモデル化した機械学習のサブセットである。深層とは、入力層と出力層との間にある複数の層を指す。深層学習では、どのような特徴量が有用かをアルゴリズムが自動的に学習する。深層学習技法の例としては、畳み込みニューラルネットワーク(「CNN」)、長・短期記憶(「LSTM」)などの再帰型ニューラルネットワーク、及びディープQネットワークが挙げられる。
【0102】
本開示では、「MLモデル」及び「訓練されたMLモデル」という用語は、同義で使用されることがある。ただし、特定のMLモデルが意図された機能を実行することができるように、どの種類のデータを用いて訓練されているかは、当業者には示されている、又は明らかである。
【0103】
論じたように、化学製品生産は、機器などの様々な供給源から多量のデータを生成する、データの多い環境であり得る。また、提案される教示は、品質管理の方法又はシステムの実現を、工業プラント、特に化学プラントにおけるエッジコンピューティングに適した、より効率的なものにすることも理解されよう。よって、安全性及び/又は品質管理などの監視は、オブジェクト識別子が性能パラメータの計算のために関連データの高度に的を絞ったデータセットを提供するため、処理能力及び/又はメモリ要件などの計算資源を削減しながら、本質的にその場で、又はオンザフライで実現され得る。また、計算の遅延時間を短縮することが可能であり、これにより生産プロセスを遅くすることなく、大量の演算を行うアルゴリズムに十分な時間を確保し得る。また、MLモデルの訓練プロセスをより迅速且つより効率的にできる。
【0104】
また、同様の理由で、データセットがコンパクト且つ効率化になり得るため、本教示はクラウドコンピューティング環境又はインフラストラクチャに適する。多くのクラウドサービスプロバイダは、計算資源の利用率に基づいて従量課金モデルで運営するため、コストが削減され得、且つ/又は計算能力が効率的に利用され得る。
【0105】
よって、一態様によれば、モデル、少なくとも部分的に少なくとも1つMLモデルが、1つ又は複数の機器ゾーンからの1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子からのデータを使用して訓練され得る。また、MLモデルの訓練に使用されるデータは、履歴及び/若しくは現在の検査室試験データ、又は化学製品及び/若しくは派生材料の過去及び/若しくは最近のサンプルからのデータも含み得る。例えば、画像解析、検査機器、又は他の測定技法など、1つ又は複数の解析による品質データが使用され得る。
【0106】
このように、履歴オブジェクト識別子からのデータで訓練された少なくとも1つMLモデルは、化学製品に関連する性能パラメータのうちの1つ又は複数を予測するために使用され得る。そのため、手作業によるサンプリング及び試験の要件の少なくとも一部を取り除くことができ、よって時間及びリソースを節約できる。
【0107】
よって、少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータを計算するために、履歴データを使用して訓練されるMLモデルは、リアルタイムプロセスデータのサブセットの少なくとも一部と、任意選択で投入材料データとを入力として受け取り得る。そのため、MLモデルは、性能パラメータのうちの少なくとも1つを計算値として提供し得る。よって、このようなMLモデルは生産プロセスを監視し、品質管理の問題があれば、これに対する注意を早期に与えるために使用され得る。
【0108】
場合によっては、MLモデルなどの同じモデル又は別のモデルが、コンピューティングユニットによって、リアルタイムプロセスデータのどの部分又は成分が化学製品に最も支配的な影響を与えているかを判定するために使用され得る。したがって、コンピューティングユニットは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件のうち、少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータに与える影響が無視できるものを除外することが可能にされる。よって、プロセスデータのサブセットは、計算資源に関して更に最適化され得る。したがって、特定の化学製品に付加されたリアルタイムプロセスデータの関連性は、それらの対応するオブジェクト識別子に関して改善され得る。
【0109】
一態様によれば、機器は、製造中又は生産プロセスの間に投入材料が上流の機器ゾーンから下流の機器ゾーンに進行するように、物理的に分離された複数の機器ゾーンを備える。場合によっては、投入材料は、下流の機器ゾーンに到達する前に、分割又は削減(例えば、量を削減)され得る。よって、更なる一態様によれば、下流オブジェクト識別子が、下流の機器ゾーンにおける投入材料の少なくとも一部に提供される。また、場合によっては、投入材料の少なくとも一部が派生材料と呼ばれ得ることも理解されよう。論じたのと同様に、ゾーン存在信号は、投入材料又は派生材料が下流の機器ゾーンにあるときに、コンピューティングユニットが下流オブジェクト識別子とゾーン存在信号とに基づいてリアルタイムプロセスデータの別のサブセットを決定し得るように、検出又は計算するために使用され得る。よって、コンピューティングユニットは、リアルタイムプロセスデータの別のサブセット及び別の履歴データに基づいて、下流識別子に関連する化学製品の別の少なくとも1つの性能パラメータを計算することができ、別の履歴データは、例えば下流の機器ゾーンにおける、以前に処理された投入材料に関連する1つ又は複数の履歴下流オブジェクト識別子からのデータを含む。例えば下流の機器ゾーンにおいて、以前に処理された投入材料が処理された際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す、プロセスデータの少なくとも一部に、いずれか1つ、いくつか、又はそれぞれの履歴下流オブジェクト識別子が付加されてもよい。このように、下流オブジェクト識別子は、別の少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータを付加され得る。
【0110】
機器に関して上で論じたのと同様に、MLモデルなどのモデルはまた、機器ゾーンのうちのいずれか1つ又は複数に適用され得る。
【0111】
当業者であれば、「付加する(appending)」又は「付加する(to append)」という用語は、例えば、同じデータベース、又は同じメモリストレージ要素において、メタデータなどの異なるデータ要素を、データベース又はメモリストレージの隣接するロケーション又は異なるロケーションに保存することを含む、又は添付することを意味し得ることを理解されよう。この用語は更に、必要なときにデータパッケージ若しくはストリームを読み出し、及び/又はフェッチし、及び/又は組み合わせることができるような仕方で、同じロケーション又は異なるロケーションに1つ又は複数のデータ要素、パッケージ、又はストリームをリンクすることを意味し得る。ロケーションのうちの少なくとも1つは、リモートサーバの一部であってもよいし、更には少なくとも部分的にはクラウドサービスの一部であってもよい。
【0112】
「リモートサーバ」とは、プラントから離れて配置された1つ若しくは複数のコンピュータ又は1つ若しくは複数のコンピュータサーバを指す。よって、リモートサーバはプラントから数キロ以上離れて配置されてもよい。リモートサーバは更に、異なる国に配置されてもよい。リモートサーバは更に、少なくとも部分的に、クラウドサービス又はプラットフォームとして、例えばプラットフォームアズアサービス(「PaaS」)として実装され得る。この用語は更に、異なる場所に配置された複数のコンピュータ又はサーバを総称することもある。リモートサーバはデータ管理システムであってもよい。
【0113】
場合によっては、最初の機器ゾーン、例えば上流の機器ゾーンを通過した後の投入材料は、投入材料が上流の機器ゾーンに入ったときとは実質的に性質が異なり得ることが理解されよう。したがって、下流のゾーンなどの後続のゾーンに材料が入った時点で、投入材料は、派生材料又は中間処理材料に変換されていることがある。ただし、簡略化のため、且つ本教示の一般性を損なうことなしに、本開示では、投入材料という用語は、生産プロセス中の投入材料がこのような中間処理材料又は派生材料に変換されている場合も指すように使用され得る。例えば、化学成分の混合物の形態の投入材料のバッチは、化学反応を誘発するためにバッチが加熱されるコンベヤベルト上で上流のゾーンを通過してきていることもある。その結果、投入材料が上流のゾーンを出た直後、又は他のゾーンも移動した後に下流のゾーンに入ったとき、材料は、投入材料とは特性の異なる派生材料になっていることがある。しかしながら、上述のように、このような派生材料は、少なくとも、生産プロセスを介して、このような中間処理材料と投入材料との関係が定義され決定されるため、依然として投入材料と呼ばれ得る。更に、他の場合では、例えば、上流のゾーンが投入材料を単純に乾燥させたり、微量な不要な材料を除去するためにろ過したりする場合、投入材料は、上流のゾーン又は更には他のゾーンを通過した後でさえも、依然として本質的に同様の特性を維持する場合もある。したがって、当業者であれば、中間ゾーンの投入材料は、派生材料に変換されることも変換されないこともあることを理解されよう。
【0114】
場合によっては、上流のゾーンと下流のゾーンとの間には1つ又は複数の中間のゾーンが存在し得るが、そのようなゾーンには別個のオブジェクト識別子は提供されない。本出願人は、投入材料若しくは派生材料が他の材量と組み合わされる場合、又は投入材料若しくは派生材料が複数の部分に分割若しくは砕片化される場合に、下流オブジェクト識別子を生成することが有利であると見出した。或いは、より一般的には、オブジェクト識別子を提供した後、下流オブジェクト識別子又は任意の更なるオブジェクト識別子の生成が、材料の質量流量が変化するゾーンでのみなされてもよい。質量流量の変化は、投入材料若しくは派生材料への新しい材料の添加若しくは混合、及び/又は投入材料若しくは派生材料若しくは中間処理材料からの材料の除去若しくは分割の結果である質量の変化であり得る。例えば、水分の除去に起因する、又は生産中の化学反応によって生じるガスの放出に起因する質量の変化は、場合によっては、第2のオブジェクト識別子又は更なるオブジェクト識別子をトリガする発生から除外され得る。特に投入材料の質量に実質的な変化がないゾーンでは、更なるオブジェクト識別子が提供されないこともある。他の要因の中でも、投入材料及び/又は製造される化学製品のタイプに依存し得ることを当業者には理解されるため、ここで質量における「実質的な変化」の範囲を指定することは本質的ではない。例えば、場合によっては、20%以上の質量の変化が実質的なものと考えられるが、他の場合には、5%以上、又は場合によっては1%以上、又は更にはそれ未満の%値であってもよい。例えば、貴重な製品の場合、より貴重でない他の製品と比較して、より小さな変化が重要であるとみなされる場合がある。
【0115】
いくつかの例として、機器ゾーン、例えば上流の機器ゾーンの後の機器ゾーンにおけるオブジェクト識別子の提供又は生成の決定は、機器ゾーンにおける逆混合度が上記機器ゾーンの前のゾーンにおけるパッケージのサイズよりも小さいか又は略同じである場合に、新しいオブジェクト識別子を提供しないことと、機器ゾーンにおける逆混合度が、上記機器ゾーンの前のゾーンにおけるパッケージのサイズよりも大きい場合、新しいオブジェクト識別子を提供することと、1つ又は複数の輸送システム又は要素を含む単に輸送ゾーンである機器ゾーンにおいて新しいオブジェクト識別子を提供しないことと、機器ゾーンが上記ゾーンにおける材料の分離を含み、1つ又は複数の成分が材料の分離された成分である場合、1つ又は複数の成分のための新しいオブジェクト識別子を提供することと、機器ゾーンが少なくとも1つパッケージへの材料の充填又はパッケージングを含み、各パッケージが1つ又は複数の化学製品を含む場合、機器ゾーンにおいて少なくとも1つの新しいオブジェクト識別子を提供することとのうちのいずれかに基づき得る。
【0116】
論じたように、分析のために投入材料、派生材料、又は化学製品のサンプルが採取される場合、このようなサンプルもまた、サンプルオブジェクト識別子を提供され得る。サンプルオブジェクト識別子は、原則として、本開示で論じたオブジェクト識別子と同様であり得るため、論じたように関連する対応プロセスデータを付加される。よって、サンプルはまた、上記サンプルの特性に関連する生産プロセスの正確なスナップショットをデジタルで添付され得る。これにより、分析及び品質管理が更に改善され得る。更に、生産プロセスは、例えば、1つ又は複数のMLモデルの改善された訓練に基づいて、相乗的に改善され得る。
【0117】
別の態様によれば、生産プロセスが、例えばコンベヤシステムなどの輸送要素を用いて、投入材料がゾーン内又はゾーン間で物理的に輸送、流動、又は移動されることを含む場合、リアルタイムプロセスデータはまた、輸送要素の速度及び/又は投入材料が生産プロセス中に輸送される速度を示すデータも含み得る。速度は、センサのうちの1つ若しくは複数を介して直接提供され得る、及び/又はコンピューティングユニットを介して、例えば、ゾーンに入った時間及びゾーンから出た時間若しくはそのゾーンに続く別のゾーンに入った時間を用いて、例えば、リアルタイムプロセスデータを介して、移動タイプの測定の時間に基づいて計算され得る。このように、オブジェクト識別子は、ゾーンにおける処理時間の態様、特に化学製品の1つ又は複数の性能パラメータに影響を与えている可能性があるものによって更に強化され得る。更に、入るとき及び出るとき又は後続ゾーンに入るときのタイムスタンプを使用することにより、輸送要素のための速度測定センサ又はデバイスは必要ではなくなり得る。
【0118】
別の態様によれば、各オブジェクト識別子は、一意の識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)を含む。化学製品の各仮想パッケージにGUIDを添付することにより、少なくとも化学製品の追跡が強化され得る。GUIDを介して、時系列データなどプロセスデータのデータ管理も低減でき、仮想/物理パッケージ、生産履歴、及び品質管理履歴の直接的な相互関連付けが可能になり得る。
【0119】
MLモデルに関して論じたように、一態様によれば、MLモデルが、オブジェクト識別子からのデータを使用して訓練され得る。また、訓練データは、過去及び/若しくは現在の検査室試験データ、又は派生材料及び/若しくは化学製品の過去及び/若しくは最近のサンプルからのデータも含み得る。
【0120】
先に論じた以前のMLモデルの利点に加え、生産ラインにおけるゾーンに基づいた訓練されたモデルを有することにより、より詳細な材料の追跡とそれぞれの性能パラメータ、又は更には化学製品の性能パラメータの予測が可能になり得る。
【0121】
バッチ生産のようないくつかの生産シナリオでは、このようなモデルは、生産された化学製品だけでなく、派生材料に対しても品質管理の問題を知らせるために、オンザフライで使用され得る。
【0122】
よって、機器ゾーンのいずれか又はそれぞれが、個々のMLモデルを介して監視及び/又は制御されてよく、個々のMLモデルは、そのゾーンからの対応するオブジェクト識別子からのデータに基づいて訓練される。
【0123】
一態様によれば、投入材料の特性を示す値のいずれか1つ若しくは複数、及び/又は機器動作条件からの値のいずれか1つ若しくは複数、及び/又はプロセスパラメータの値のいずれか1つ若しくは複数が、事前定義された閾値に達する、これを満たす、又はこれを超えることに応じて、ゾーンに関する対応するオブジェクト識別子の提供が起こり得る、又はトリガされ得る。このような値は、1つ又は複数のセンサ及び/又はスイッチを介して測定され得る。例えば、事前定義された閾値は、機器において導入された投入材料の重量値に関連付けられ得る。したがって、機器で受け入れられる投入材料の重量などの数量が、重量閾値などの事前定義された量閾値に達すると、トリガ信号が発生され得る。オブジェクト識別子を提供するためのトリガとなるイベント又は発生の特定の実施例もまた本開示で先に論じている。トリガ信号に応答して、又は数量若しくは重量が事前定義された重量閾値に達したことに直接応じて、オブジェクト識別子が提供され得る。トリガ信号は、別個の信号であってもよいし、例えば、コンピューティングユニット及び/又は機器を介して検出された閾値などの事前定義された基準を満たす特定の信号のような単なるイベントであってもよい。よって、投入材料の数量が事前定義された数量閾値に達したことに応じて、オブジェクト識別子が提供され得ることも理解されよう。数量は、上記の実施例で説明したように重量として測定されてもよく、及び/又はレベル、充填度、若しくは体積などの任意の1つ若しくは複数の他の値であってもよく、及び/又は投入材料の質量流量を合計することによって、若しくは投入材料の質量流量に積分を適用することによってもよい。
【0124】
よって、例えば、上流オブジェクト識別子は、トリガイベント又は信号に応じて提供されてもよく、上記イベント又は信号は、好ましくは、機器又は上流の機器ゾーンを介して提供される。このことは、上流の機器に動作可能に結合された1つ又は複数のセンサ及び/又はスイッチのいずれかの出力に応じてなされ得る。トリガイベント又は信号は、投入材料の数量値に関連し、例えば、数量値が所定の数量閾値に達する又は満たすことの発生に関連し得る。上記発生は、コンピューティングユニット及び/又は上流機器を介して、例えば、1つ又は複数の重量センサ、レベルセンサ、充填センサ、又は投入材料の数量を測定若しくは検出し得る任意の適切なセンサを用いて検出され得る。
【0125】
オブジェクト識別子を提供するためのトリガとして数量を使用する利点は、本教示で説明したように、生産プロセス中の材料の数量に変化があれば、更なる1つ又は複数のオブジェクト識別子を提供するためのトリガとして使用し得るということであり得る。本出願人は、1種又は複数種の化学製品を処理又は生産するための工業環境において、投入材料、任意の派生材料、及び最終的に化学製品が、基本的に生産チェーン全体、及び少なくとも場合によってはそれを超えて数量又は質量流量を考慮しながら追跡され得るように、異なるオブジェクト識別子の生成を区分する最適な仕方を提供し得ることを認識した。材料の量若しくは数量が変化するポイント(例えば、新しい材料が導入される、又は投入される場合)、又は材料が分割されるポイントだけでオブジェクト識別子を提供することにより、生産終了時点だけでなく、生産中においても材料のトレーサビリティを保ちながら、オブジェクト識別子の数が最小化され得る。新しい材料が追加されない、又は材料が分割されない機器又は生産ゾーンでは、そのようなゾーン内のプロセスの知識は、隣接する2つのオブジェクト識別子内の観察可能性を維持するために使用され得る。
【0126】
別の観点から見ると、本明細書で開示される、工業プラントの生産プロセスを監視及び/又は制御及び/又は最適化及び/又は改善するための方法のいずれか1つにおいて生成される出力データの使用法も提供され得る。
【0127】
別の観点から見ると、生産プロセスを監視及び/又は制御するためのシステムであって、システムが、本明細書で開示される方法のいずれかを実行するように構成される、システムも提供され得る。或いは、少なくとも1つの機器を介して少なくとも1種の投入材料を処理することによって、工業プラントにおいて化学製品を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するためのシステムであって、システムがコンピューティングユニットを備え、システムが、本明細書で開示される方法のいずれかを実行するように構成される、システムも提供され得る。
【0128】
例えば、少なくとも1つの機器を介して少なくとも1種の投入材料を処理することによって、工業プラントにおいて化学製品を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するためのシステムであって、システムがコンピューティングユニットを備え、システムが、
- インターフェースを介して、機器からのリアルタイムプロセスデータを受信し、
- コンピューティングユニットを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定し、リアルタイムプロセスデータのサブセットが、投入材料が処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示し、
- 出力インターフェースを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを出力データとして提供する
ように構成される、システムが提供され得る。
【0129】
別の観点から見ると、プログラムが適切なコンピューティングユニットによって実行されると、コンピューティングユニットに本明細書で開示される方法のいずれかを実行させる命令を含むコンピュータプログラムも提供され得る。本明細書で開示される任意の方法ステップを適切なコンピューティングユニットに実行させるプログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体も提供され得る。
【0130】
例えば、コンピュータプログラム、又はプログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体であって、プログラムが、生産プロセスを使用して少なくとも1種の投入材料を処理することによって、工業プラントにおいて化学製品を製造するための少なくとも1つの機器に動作可能に結合された適切なコンピューティングユニットによってプログラムが実行されると、コンピューティングユニットに本明細書で開示される方法のいずれかを実行させる命令を含み、命令が、コンピューティングユニットに、
- インターフェースを介して、機器からのリアルタイムプロセスデータを受信させ、
- リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定させ、リアルタイムプロセスデータのサブセットが、投入材料が処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示し、
- 出力インターフェースを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットを出力データとして提供させる
コンピュータプログラム、又はプログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体が提供され得る。
【0131】
コンピュータ可読データ媒体又はキャリアは、本明細書で説明される方法論又は機能のいずれか1つ又は複数を具現化する1つ又は複数の命令セット(例えば、ソフトウェア)が格納された任意の適切なデータストレージデバイスを含む。また、命令は、コンピューティングユニット、メインメモリ、及び処理デバイスによるその実行中に、完全に又は少なくとも部分的に、メインメモリ内及び/又はプロセッサ内に常駐することができ、これらはコンピュータ可読記憶媒体を構成し得る。命令は、ネットワークインターフェースデバイスを介してネットワークを介して更に送信又は受信され得る。
【0132】
本明細書で説明される実施形態のうちの1つ又は複数を実施するためのコンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として供給される、光学的記憶媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体に格納されてもよく及び/又はそれらの好適な媒体で分配されてもよいが、更に、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するなど、他の形態で分配されてもよい。しかしながら、コンピュータプログラムはまた、ワールドワイドウェブのようなネットワークを経由して提示されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされてもよい。
【0133】
更に、コンピュータプログラム製品をダウンロード可能にするためのデータキャリア又はデータ記憶媒体も提供され得、このコンピュータプログラム製品は、本明細書で開示される態様のうちのいずれかによる方法を実行するように構成される。
【0134】
別の観点から見ると、本明細書で開示される方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを含むコンピューティングユニットも提供され得る。また、本明細書で開示される方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを含むメモリストレージに動作可能に結合されたコンピューティングユニットが提供され得る。
【0135】
2つ以上の構成要素が「動作可能に」結合又は接続されることは、当業者には明らかなはずである。非限定的に、このことは、結合又は接続された構成要素の間に、例えば、インターフェース又は他の適切なインターフェースを介して、通信接続が少なくとも存在し得ることを意味する。通信接続は、固定であっても取り外し可能であってもよい。更に、通信接続は、一方向であっても双方向であってもよい。更に、通信接続は、有線及び/又は無線であってもよい。場合によっては、通信接続はまた制御信号を提供するために使用され得る。
【0136】
ここでいう「パラメータ」とは、温度、方向、位置、数量、密度、重量、色、水分、速度、加速度、変化率、圧力、力、距離、pH、濃度、及び組成など、任意の物理的又は化学的性質及び/又はその測定値を指す。パラメータはまた、特定の性質の有無を指し得る。
【0137】
「アクチュエータ」とは、直接又は間接的に、機械などの機器に関連する機構を動かし、制御する働きをする役割を果たす任意のコンポーネントを指す。アクチュエータは、バルブ、モータ、駆動装置などであってもよい。アクチュエータは、電気的、油圧的、空気圧的、又はそれらの組み合わせのいずれかで動作可能であってもよい。
【0138】
「コンピュータプロセッサ」とは、コンピュータ若しくはシステムの基本動作を行うために構成された任意の論理回路、及び/又は一般に、計算若しくは論理演算を行うために構成されたデバイスを指す。特に、処理手段又はコンピュータプロセッサは、コンピュータ又はシステムを駆動する基本命令を処理するように構成され得る。一例として、処理手段又はコンピュータプロセッサは、少なくとも1つ算術論理演算装置(「ALU」)、数値演算コプロセッサ又は数値コプロセッサなどの少なくとも1つ浮動小数点演算装置(「FPU」)、複数のレジスタ、特にALUへのオペランドの供給及び演算結果の格納のために構成されたレジスタ、並びにL1及びL2キャッシュメモリなどのメモリを含み得る。特に、処理手段又はコンピュータプロセッサは、マルチコアプロセッサであってもよい。具体的には、処理手段又はコンピュータプロセッサは、中央処理装置(「CPU」)であってもよいし、CPUを備えてもよい。処理手段又はコンピュータプロセッサは、(「CISC」)複合命令セットコンピューティングマイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(「RISC」)マイクロプロセッサ、超長命令語(「VLIW」)マイクロプロセッサ、又は他の命令セットを実装するプロセッサ、又は命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってもよい。処理手段はまた、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、複合プログラム可能論理回路(「CPLD」)、デジタルシグナルプロセッサ(「DSP」)、ネットワークプロセッサなど、1つ又は複数の専用処理装置であってもよい。本明細書で説明される方法、システム、及びデバイスは、DSP、マイクロコントローラ、若しくは任意の他のサイドプロセッサ内のソフトウェアとして、又はASIC、CPLD、若しくはFPGA内のハードウェア回路として実装されてよい。処理手段又はプロセッサという用語はまた、複数のコンピュータシステムにわたって配置された処理デバイスの分散システム(例えば、クラウドコンピューティング)など、1つ又は複数の処理デバイスを指すこともあり、別段の指定のない限り、単一のデバイスに限定されないことを理解されたい。
【0139】
「コンピュータ可読データ媒体」又はキャリアは、本明細書で説明される方法論又は機能のいずれか1つ又は複数を具現化する1つ又は複数の命令セット(例えば、ソフトウェア)が格納された任意の適切なデータストレージデバイス又はコンピュータ可読メモリを含む。また、命令は、コンピューティングユニット、メインメモリ、及び処理デバイスによるその実行中に、完全に又は少なくとも部分的に、メインメモリ内及び/又はプロセッサ内に存在することができ、これらはコンピュータ可読記憶媒体を構成し得る。命令は、ネットワークインターフェースデバイスを介してネットワークを介して更に送信又は受信され得る。
【0140】
図面のいくつかの図の簡単な説明
次に、本教示の特定の態様を、上記態様を説明する以下の図面を参照しながら例として説明する。本教示の一般性は図面に依存しないため、図面は原寸に比例していない場合がある。図面に示されている特定の特徴は、理解のために、また本教示の一般性に影響を与えることなしに、物理的特徴と共に示された論理的特徴であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】本教示によるシステムの特定の態様を示す。
図2】本教示による方法態様を示す。
図3】本教示によるシステムの第1の実施形態及び対応する方法を、複合ブロック/フロー図で示す。
図4】本教示によるシステムの第2の実施形態及び対応する方法を、複合ブロック/フロー図で示す。
図5】本教示によるシステムの第3の実施形態及び対応する方法を、複合ブロック/フロー図で示す。
図6】複数の機器デバイス及び対応する複数の機器ゾーンを含む工業プラント又はプラントのクラスタのトポロジ構造を表すグラフベースのデータベース構成の第1の実施形態を示す。製造又は生産プロセス中に、複数の機器ゾーン間を投入材料が進行する。
図7図6に示すグラフベースのデータベース構成の第2の実施形態を示す。
図8】クラウドコンピューティングプラットフォームを使用する、本教示によるシステムの別の実施形態及び対応する方法を、複合ブロック/フロー図で示す。クラウドで機械学習(ML)プロセスが実装される。
【発明を実施するための形態】
【0142】
詳細な説明
図1は、工業プラントにおいて化学製品170を製造するための生産プロセスを監視及び/又は制御するためのシステム168の一例を示している。方法態様の少なくともいくつかもまた、以下の議論から理解されるはずである。工業プラントは、生産プロセスを用いて化学製品170を製造又は生産するための少なくとも1つの機器又は複数の機器ゾーンを備える。化学製品170は、任意の形態であり得、例えば、医薬品、発泡体、栄養補助食品、農産物、又は前駆体であり得る。例えば、化学製品170は、粒状の形態の熱可塑性ポリウレタンであることもある。化学製品170は更に、バッチになっていることもあり、例えば10kgずつのパッケージであることもある。そのような化学製品の性質に起因して、化学製品を生産チェーンにおいて追跡することは困難な場合がある。しかしながら、各コンポーネント、例えば各ユニット若しくはパッケージ、又は更には内部の部分が一貫して望ましい特性又は品質を有することを確保することが重要であり得る。本教示の少なくともいくつかの態様は、このことを可能にし得る。
【0143】
図1では、機器は、例えば上流の機器ゾーンの一部であり得るホッパ又は混合ポット104として、機器ゾーンを備えるものとして示されている。混合ポット104は、投入材料を受け入れ、投入材料は単一の材料であってもよいし、複数の成分、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)及び/又はポリテトラヒドロフラン(「PTHF」)を含んでもよい。ここで、投入材料は2つに分けられて受け入れられ、それぞれ第1のバルブ112a及び第2のバルブ112bを介して混合ポット104に供給されることが示されている。第1のバルブ112a及び第2のバルブ112bはまた、上流の機器ゾーンに属し得る。
【0144】
任意選択で、オブジェクト識別子、又はこの場合では上流オブジェクト識別子122が、投入材料114に関して提供される。上流オブジェクト識別子122は、他のオブジェクト識別子と区別可能な一意識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)であり得る。GUIDは、特定の工業プラントの仕様、及び/又は製造されている化学製品170の仕様、及び/又は日時の仕様、及び/又は使用されている特定の投入材料の仕様に応じて提供され得る。上流オブジェクト識別子122は、メモリストレージ128において提供されることが示されている。メモリストレージ128は、コンピューティングユニット124に動作可能に結合される。メモリストレージ128は更に、コンピューティングユニット124の一部であってもよい。メモリストレージ128及び/又はコンピューティングユニット124は、少なくとも部分的にクラウドサービスの一部であってもよい。任意選択で、メモリストレージ128は更にデータストアであってもよいし、メモリストレージ128は出力データをデータストアに提供してもよい。
【0145】
コンピューティングユニット124は、例えば任意の適切な種類のデータ伝送媒体であり得るネットワーク138を介して、上流の機器ゾーン又は上流の機器ゾーンに属する機器に動作可能に結合される。コンピューティングユニット124は更に、プラントにおける機器の一部であってもよく、例えば、少なくとも部分的に上流の機器ゾーンの一部であってもよい。コンピューティングユニット124は更に、DCS及び/又はPLCなど、少なくとも部分的にプラント制御システムであってもよい。コンピューティングユニット124は、上流の機器ゾーンの機器に動作可能に結合された1つ又は複数のセンサからの1つ又は複数の信号を受信し得る。例えば、コンピューティングユニット124は、充填センサ144及び/又は輸送要素102a~bに関連する1つ又は複数のセンサからの1つ又は複数の信号を受信し得る。上記センサもまた、上流の機器ゾーンの一部である。コンピューティングユニット124は更に、上流の機器ゾーン又はそのいくつかの部分を少なくとも部分的に制御し得る。例えば、コンピューティングユニット124は、バルブ112a、bを(例えば、対応するアクチュエータを介して)、及び/又はヒータ118を、及び/又は輸送要素102a~bを制御してもよい。図1の例における輸送要素102a、bなどは、1つ又は複数のモータと、上記モータを介して、投入材料114がベルトを介してベルトの移動方向120に輸送されるようにベルトが移動するように駆動されるベルトとを備え得るコンベヤシステムとして示されている。
【0146】
本教示の範囲又は一般性に影響を与えることなしに、コンベヤシステムの代わりに、又はコンベヤシステムと組み合わせて、他の種類の輸送要素も使用可能であり得る。場合によっては、材料の流れを伴う、例えば、1つ又は複数の材料が入り、1種又は複数種の材料が出ることを伴う任意の種類の機器が輸送要素と呼ばれ得る。よって、コンベヤシステム、ベルト、導管、又はレールの他に、押出機、ペレタイザ、熱交換器、バッファサイロ、ミキサ付きサイロ、ミキサ、混合容器、カッティングミル、二重円錐型ブレンダ、キュアリングチューブ、カラム、分離器、抽出、薄膜蒸発器、フィルタ、ふるいなどの機器も輸送要素と呼ばれ得る。このように、コンベヤシステムとしての輸送システムの存在は、少なくとも、場合によっては、材料が質量流量を介してある機器から別の機器に直接移動し得る、又はある機器から別の機器を介して通常流れとして移動し得るため、任意選択であり得ることが理解されよう。例えば、材料は直接熱交換器から分離器に移動することもあれば、又は更にはカラムやその先などへ更に移動し得る。よって、場合によっては、1つ又は複数の輸送要素又はシステムが、機器に内在し得る。
【0147】
ここで上流オブジェクト識別子122として示されたオブジェクト識別子は、投入材料の数量に関連する信号又はイベントであり得るトリガ信号又はイベントに応じて提供され得る。例えば、充填センサ144は、投入材料の充填度及び/又は重量などの少なくとも1つの数量値を検出するために使用され得る。数量が所定の閾値に達した場合、コンピューティングユニット124は、メモリストレージ128において第1の上流オブジェクト識別子122を自動的に提供し得る。上流オブジェクト識別子122は、投入材料に関連するデータ、すなわち投入材料データを含む。投入材料データは、投入材料の1つ又は複数の特性を示す。
【0148】
場合によっては、コンピューティングユニット124は、入力インターフェース介して、工業プラントにおけるすべての機器又は機器ゾーンからのプロセスデータを受信し得る。コンピューティングユニット124は、例えば、ゾーン存在信号及び/又は上流オブジェクト識別子に基づいて、リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定し得る。リアルタイムプロセスデータのサブセットは、出力インターフェースを介して出力データとして提供され得る。出力データはデータストアに提供され得る。場合によっては、データストアは、少なくとも部分的にメモリストレージ128と同じシステムであり得る。或いは、データストアは、メモリストレージ128を介して出力データを提供され得る。
【0149】
トリガ信号又はイベントはまた、上流の機器ゾーンに関するゾーン存在信号を生成するために使用され得る。したがって、ゾーン存在信号は、上流の機器ゾーンにおける投入材料114の処理に関連するプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件だけでなく、リアルタイムプロセスデータに含まれる上記プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件の時間的態様も決定するために使用され得る。
【0150】
任意選択で、コンピューティングユニット124は、上流オブジェクト識別子122に関連付けられる、化学製品170に関連する少なくとも1つの性能パラメータを計算し得る。計算は、リアルタイムプロセスデータのサブセット126に基づき、リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、この場合、上流オブジェクト識別子122に任意選択で付加されることが示されている。計算はまた、1つ又は複数の履歴上流オブジェクト識別子からのデータを含み得る履歴データに基づく。各履歴上流オブジェクト識別子は、過去に上流の機器ゾーンなどにおいて処理された対応する投入材料に関連付けられる。以前に処理された投入材料が下流の機器ゾーンなどにおいて処理された際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示すプロセスデータの少なくとも一部に、少なくとも1つの履歴上流オブジェクト識別子が付加され得る。少なくとも1つの性能パラメータは、上流オブジェクト識別子122に付加されてもよく、及び/又は少なくとも1つの性能パラメータが出力データに含まれる。
【0151】
少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータは、例えばメタデータとして上流オブジェクト識別子122に付加されることが示されている。これにより、上流オブジェクト識別子122は、化学製品170の品質に関連付けられる性能パラメータで強化される。このように、品質管理プロセスは、例えば、結果として得られる化学製品170と品質関連データを結合させることによって、トレーサビリティを向上させながら簡素化及び改善され得る。
【0152】
上流の機器ゾーンからのリアルタイムプロセスデータのサブセット126は、投入材料114が上流の機器ゾーンにあった時間窓内のデータであってもよいし、時間ウィンドウは更に短いものであって、投入材料114が混合ポット104を介して処理された時間の間だけであってもよい。リアルタイムプロセスデータは、時間窓を決定するために使用され得る。したがって、上流オブジェクト識別子122は、リアルタイムプロセスデータの時間次元を使用することにより、関連性の高いデータで強化され得る。よって、オブジェクト識別子は生産プロセスにおいて材料を追跡するために使用され得るだけでなく、エッジコンピューティング及び/又はクラウドコンピューティングをより効果的にし得る高品質なデータをカプセル化し得る。オブジェクト識別子データは、機械学習モデルの高速訓練及び再訓練に極めて適することがある。また、オブジェクト識別子にカプセル化されたデータは、従来のデータセットよりもコンパクトになり得るため、データ統合が簡素化され得る。したがって、出力データもまた、例えば1つ又は複数のアプリケーション又はデバイスにおけるデータ分析のためなどのストリーミング及び取り込みに適した関連性の高いデータになり得る。出力データは、例えばHMIシステムに提供され得る。HMIシステムは、少なくとも1つの表示デバイス及び/又は少なくとも1つの音声デバイス及び/又は少なくとも1つのMRデバイスを含み得る。
【0153】
リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、投入材料が上流の機器ゾーンにおいて処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件、すなわち混合ポット104及びバルブ112a~bの動作条件を示し、例えば、流入質量流量、流出質量流量、充填度、温度、水分、タイムスタンプ、すなわち入った時間、出た時間などのうちのいずれか1つ又は複数を示す。この場合の機器動作条件は、バルブ112a、b及び/又は混合ポット104の制御信号及び/又は設定値であり得る。リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、時系列データであってもよいし、時系列データを含んでもよい、つまり、1つ又は複数のセンサを介して取得され得る時間依存信号(例えば、充填センサ144の出力)を含み得る。時系列データは、連続的な信号を含んでもよいし、時系列データのいずれかが一定の時間間隔又は不規則な時間間隔で断続的な信号であってもよい。リアルタイムプロセスデータのサブセット126は更に、混合ポット104からの1つ又は複数のタイムスタンプ、例えば入った時間及び/又は出た時間を含み得る。よって、特定の投入材料114は、上流オブジェクト識別子122を介して、その投入材料114に関連するリアルタイムプロセスデータのサブセット126と関連付けられ得る。上流オブジェクト識別子122は、特定のプロセスデータ及び/又は機器動作条件が特定の化学製品に関連付けられ得るように、生産プロセスの下流の他のオブジェクト識別子に付加され得る。他の重要な利点は、本開示の他の部分(例えば、概要セクション)で既に説明してある。
【0154】
輸送要素102a、bと付随するベルトとを備えるコンベヤシステムは、上流の機器ゾーンの下流にある中間の機器ゾーンとみなされ得る。本実施例の中間の機器ゾーンは、ベルト上で移動する投入材料に熱を加えるために使用されるヒータ118を備える。コンベヤシステムは更に、中間の機器ゾーンにおけるプロセスパラメータ及び/又は投入材料114の特性を測定又は検出するための1つ又は複数のセンサ、例えば、速度センサ、重量センサ、温度センサ、又は任意の他の種類のセンサのうちの任意の1つ又は複数を備え得る。センサのいずれか又はすべての出力が、コンピューティングユニット124に提供され得る。
【0155】
投入材料114は、移動方向120に沿って進行すると、ヒータ118を介して熱を加えられる。ヒータ118は、コンピューティングユニット124に動作可能に結合されてもよく、すなわち、コンピューティングユニット124は、ヒータ118からの信号又はリアルタイムプロセスデータを受信してもよい。更に、ヒータ118は更に、コンピューティングユニット124を介して、例えば1つ又は複数の制御信号及び/又は設定値を介して、制御可能であり得る。同様に、輸送要素102a、bと付随するベルトとを備えるコンベヤシステムもまた、コンピューティングユニット124に動作可能に結合されてもよく、すなわち、コンピューティングユニット124は輸送要素102a、bからの信号又はプロセスデータを受信してもよい。結合は、例えば、ネットワークを介するものであってよい。更に、輸送要素102a、bは更に、コンピューティングユニット124を介して、例えばコンピューティングユニット124を介して提供される1つ又は複数の制御信号及び/又は設定値を介して、制御可能であり得る。例えば、輸送要素102a、bの速度は、コンピューティングユニット124によって観測可能及び/又は制御可能であってもよい。任意選択で、投入材料114の数量が中間の機器ゾーンにおいて一定又は略一定であるため、中間の機器ゾーンに関して更なるオブジェクト識別子は提供されなくてもよい。よって、中間の機器ゾーンからのプロセスデータ、すなわちヒータ118及び/又は輸送要素102a、bからのプロセスデータもまた、前のゾーン又は先行するゾーンのオブジェクト識別子、すなわち上流オブジェクト識別子122に付加され得る。ここで、リアルタイムプロセスデータのサブセットは、投入材料が中間の機器ゾーンで処理されているときに中間の機器ゾーンからのリアルタイムデータを指すため、出力データは生産プロセスに沿って投入材料を動的に追跡することが理解されよう。このように、出力データは、対応する投入材料をそれらの対応する化学製品に変換することに関連するプロセスデータの時間依存ストリームを形成する。同様に、性能パラメータも動的に変更され得る。このような出力データ及びストリームの利点も、概要セクションで詳しく論じてある。
【0156】
更に、リアルタイムプロセスデータの付加されたサブセット126は、したがって、中間の機器ゾーンからのプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件、すなわち、投入材料114が中間の機器ゾーンにおいて処理される際のヒータ118及び/又は輸送要素102a、bの動作条件を、例えば、流入質量流量、流出質量流量、中間ゾーンからの1つ又は複数の温度値、入った時間、出た時間、輸送要素102a、b及び/又はベルトの速度などのうちのいずれか1つ又は複数を更に示すように強化され得る。この場合の機器動作条件は、輸送要素102a、b及び/又はヒータ118の制御信号及び/又は設定値であり得る。リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、投入材料114が対応する機器ゾーンに存在する時間期間に主に関連することは明らかである。よって、特定の投入材料114に関する関連するプロセスデータの正確なスナップショットが、上流オブジェクト識別子122を介して提供され得る。投入材料114の更なる観測可能性は、中間の機器ゾーン内での生産プロセスの特定の部分若しくはパート、例えば化学反応の知識を介して引き出され得る。代替的又は追加的に、投入材料114が中間の機器ゾーンを通過する際の速度が、コンピューティングユニット124を介して、更なる観測可能性を引き出すために使用され得る。特定のタイムスタンプ、又は時系列データ、並びに/又は投入材料114が中間の機器ゾーンに入った時間及び/若しくは出た時間を有するリアルタイムプロセスデータのサブセット126と併せて、投入材料114が中間の機器ゾーンで処理される際の条件のより粒度の細かい詳細が、上流オブジェクト識別子122から取得され得る。
【0157】
上流オブジェクト識別子122からのデータは、生産プロセス及び/又はその特定の部分、例えば、上流の機器ゾーン及び/又は中間の機器ゾーン内の生産プロセスの部分を監視するための1つ又は複数のMLモデルを訓練するために使用され得る。MLモデル及び/又は上流オブジェクト識別子122は更に、化学製品の1つ又は複数の性能パラメータを、1つ又は複数のゾーンにおける生産プロセスの仕様と関連付けるために使用され得る。
【0158】
投入材料114が移動方向120に沿って進行するにつれて、投入材料114はその特性を変化させ、派生材料116に変換又は変質され得ることが理解されよう。例えば、ヒータ118が投入材料114を加熱すると、結果として派生材料116が得られる場合がある。理解を簡単且つ容易にするために、派生材料116はまた、本教示において投入材料と呼ばれることもあり得ることを当業者であれば理解されよう。例えば、論じている機器ゾーン又はコンポーネントに関連して、このようにして、投入材料が本実施例の説明で論じた生産プロセス内のどのフェーズにあるかが明らかになる。
【0159】
次に、材料が複数の部分に分割されるゾーンの一例について論じる。図1は、このようなゾーンを、カッティングミル142と第2の輸送要素106a、bとを備える下流の機器ゾーンとして示している。移動方向154に沿って移動する派生材料116は、カッティングミル142を使用して分割又は砕片化され、結果として複数の部分が得られ、これらの部分は、この実施例では第1の分割材料140a及び第2の分割材料140bとして示されている。
【0160】
よって、本教示の一態様によれば、個々のオブジェクト識別子が部分ごとに提供され得る。ただし、場合によっては、部分ごとに個々のオブジェクト識別子を提供する代わりに、部分のうちの1つ、又は部分のうちのいくつかに対してのみオブジェクト識別子が提供されてもよい。このことは、例えば、部分のどれかを追跡することに関心がない場合に当てはまり得る。例えば、オブジェクト識別子は、派生材料116の廃棄された部分には提供されない場合がある。ここで、図1を再び参照すると、第1の下流オブジェクト識別子130aが第1の分割材料140aに提供され、第2の下流オブジェクト識別子130bが第2の分割材料140bに提供される。材料のこのような分割はまた、出力データの分割をトリガしてもよく、例えばオブジェクト識別子ごとに個別のストリームをトリガしてもよい。よって、この例では、2つのストリームが提供されてもよく、これらは、例えば一意オブジェクト識別子を介して、選択可能又はサブスクライブ可能であってもよい。
【0161】
任意選択で、第1の下流オブジェクト識別子130aが下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aを付加されてもよく、第2の下流オブジェクト識別子130bが下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bを付加されてもよい。下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aは、下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bのコピーであってもよいし、部分的に同じデータであってもよい。例えば、第1の分割材料140aと第2の分割材料140bとが同じプロセスを経る場合、すなわち、実質的に同じ場所及び時間にある場合、下流オブジェクト識別子130aと第2の下流オブジェクト識別子130bとに付加されるプロセスデータは、同一又は同様であり得る。しかしながら、下流の機器ゾーン内で、下流オブジェクト識別子130aと第2の下流オブジェクト識別子130bとが異なって扱われるべきである場合、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aと下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bとは、互いに異なり得る。
【0162】
しかしながら、場合によっては、任意選択でただ1つのオブジェクト識別子がカッティングミル142において提供されてよく、次いで、カッティングミル142を介して処理される材料が複数の部分に分割される場合、複数のオブジェクト識別子がカッティングミル142後に提供されてもよいことが当業者には理解されよう。よって、特定の生産プロセスの仕様に依存して、カッティングミルは分離デバイスである場合もそうでない場合もある。同様に、場合によっては、このゾーンからのプロセスデータが先行するオブジェクト識別子に付加されるように、カッティングミルに関して新しいオブジェクト識別子が提供されないこともある。よって、新しいオブジェクト識別子が、材料が分割されるゾーン及び/又は材料が結合されるゾーンにおいて提供され得る。例えば、場合によっては、下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bは、カッティングミル142の後に、例えば、カッティングミル142に続く異なるゾーンに入るときに提供されてもよい。
【0163】
本実施例では、下流の機器ゾーンはまた、カメラ又は他の任意の種類の光学センサであり得る撮像センサ146を備える。撮像センサ146はまた、コンピューティングユニット124に動作可能に結合され得る。撮像センサ146は、下流の機器ゾーンに入る前に派生材料116の1つ又は複数の特性を測定又は検出するために使用され得る。このことは、例えば、所定の品質基準を満たす、例えば上流の機器ゾーン及び/又は中間の機器ゾーンで決定された性能パラメータのうちの少なくとも1つを満たす材料を選別又は転用するためになされ得る。下流の機器ゾーンにおいて材料の質量流量が変えられると、本教示の一態様によれば、下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bの前に、別のオブジェクト識別子(図1に示さず)が提供され得る。
【0164】
下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bの提供は、撮像センサ146を介して派生材料116が品質基準に合格したことに応じてトリガされ得る。隣接するゾーンからのデータ、又はオブジェクト識別子からのデータ、例えば中間の機器ゾーンから質量流量及び下流の機器ゾーンへの質量流量を関連付けることにより、コンピューティングユニット124は、どの特定の投入材料114又は派生材料116が後続のゾーンに入る材料が関連付けられるかを決定し得る。代替的又は追加的に、タイムスタンプのうちの2つ以上が、例えば、中間の機器ゾーンから出たときのタイムスタンプと撮像センサ146を介した検出及び/又は下流の機器ゾーンに入るときのタイムスタンプとが、ゾーン間で関連付けられ得る。センサ出力を介して直接測定されるか、又は2つ以上のタイムスタンプから決定されるかのいずれかである輸送要素102a、bの速度もまた、投入材料の特定のパケット又はバッチとそのオブジェクト識別子との間の関係を確立するために使用され得る。そのため、特定の化学製品170が、所与の時間に生産プロセス内のどこにあったかを判定することもでき、ひいては時空間関係を構築することもできる。これらの態様の一部又は全部は、化学製品170の投入材料から最終製品までのトレーサビリティを向上させるだけでなく、生産プロセスを監視及び改善し、より適合可能性及び制御可能性を高めるためにも使用可能であり得る。
【0165】
論じたように、第1の下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bは、下流の機器ゾーンからの下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132a及び下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bがそれぞれ付加され得る。下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aと下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bとは更に、上流オブジェクト識別子122にリンクされてもこれを付加されてもよい。先に論じた上流オブジェクト識別子122と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132a及び下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件、すなわち、撮像センサ146の出力、派生材料116が下流の機器ゾーンで処理される際のカッティングミル142及び第2の輸送要素106a、bの動作条件、例えば、流入質量流量、流出質量流量、充填度、温度、光学特性、タイムスタンプなどのうちのいずれか1つ又は複数を示す。この場合の機器動作条件は、カッティングミル142及び/又は第2の輸送要素106a、bの制御信号及び/又は設定値であり得る。下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132a及び下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bは、時系列データを含み得、つまり、時間依存性の信号を含み得、この信号は、1つ又は複数のセンサ、例えば、撮像センサ146の出力及び/又は第2の輸送要素106a、bの速度を介して取得され得る。
【0166】
撮像センサ146と遭遇した後、派生材料116が進行すると、第2の輸送要素106a、bによって駆動されて移動方向154にカッティングミル142に向かって移動する。第2の輸送要素106a、bは、本実施例では、輸送要素102a、bを備えるコンベヤシステムとは別個の第2のコンベヤベルトのシステムの一部として示されている。第2のコンベヤベルトシステムは更に、輸送要素102a、bを備える同じコンベヤシステムの一部であってもよいことが理解されよう。したがって、下流の機器ゾーンは、別のゾーンで使用されるいくつかの同じ機器を備え得る。
【0167】
図1から分かるように、第1の分割材料140a及び第2の分割材料140bは、後の生産において異なる道を行くとしても、それらの対応するオブジェクト識別子、すなわち下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bによって、残りの生産プロセス及び場合によってはその先まで個別に辿る、又は追跡することができる。同様に、出力データも対応する材料を追跡する。
【0168】
このように、第2の分割材料140bは、硬化装置162と第3の輸送要素108a、bとを備える3番目の機器ゾーンにおける硬化のために輸送される。図示の輸送要素108a、bは、したがって、上述のように非限定的な例である。3番目の機器ゾーンは、上流の機器ゾーン及び下流の機器ゾーンの下流にあることが理解されよう。
【0169】
第2の分割材料140bが、ベルトを介して移動方向156に移動されると、硬化装置162を介して硬化プロセスを経て、結果として、硬化された第2の分割材料160が得られる。実質的な質量変化が生じないため、一態様によれば、3番目の機器ゾーンに関して新しいオブジェクト識別子が提供されない場合がある。しかしながら、第2の分割材料140bに対応する出力データは、3番目の機器ゾーンにおける生産プロセスに応じて動的に変化し、例えば、実行中の処理から硬化装置162からのデータを流す。したがって、上で論じたように、3番目の機器ゾーンからのプロセスデータもまた、第2の下流オブジェクト識別子130bに付加され得る。上記と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの付加された第2のサブセット132bは、したがって、3番目の機器ゾーンからのプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件、すなわち、第2の分割材料140bが3番目の機器ゾーンにおいて処理される際の硬化装置162及び/又は輸送要素108a、bの動作条件を、例えば、流入質量流量、流出質量流量、3番目のゾーンからの1つ又は複数の温度値、入った時間、出た時間、輸送要素108a、b及び/又はベルトの速度などのうちのいずれか1つ又は複数を更に示すように強化され得る。この場合の機器動作条件は、輸送要素102a、b及び/又は硬化装置162の制御信号及び/又は設定値であり得る。
【0170】
同様に、第1の分割材料140aは、押出機150、温度センサ148、及び第4の輸送要素110a、bを備える4番目の機器ゾーンに進行する。ここでも、実質的な質量変化が生じないため、一態様によれば、4番目の機器ゾーンに関して新しいオブジェクト識別子が提供されない場合がある。したがって、上で論じたように、4番目の機器ゾーンからのプロセスデータもまた、出力データに含まれ得、また任意選択で下流オブジェクト識別子130aにも付加され得る。上記と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの付加された第1のサブセット132aは、したがって、4番目の機器ゾーンからのプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件、すなわち、第1の分割材料140aが3番目の機器ゾーンにおいて処理される際の押出機150及び/又は温度センサ148及び/又は輸送要素108a、bの動作条件を、例えば、流入質量流量、流出質量流量、3番目のゾーンからの1つ又は複数の温度値、入った時間、出た時間、輸送要素110a、b及び/又はベルトの速度などのうちのいずれか1つ又は複数を更に示すように強化され得る。この場合の機器動作条件は、輸送要素108a、b及び/又は押出機150の制御信号及び/又は設定値であり得る。よって、第1の分割材料140aから押出材料152への変換の特性及び依存関係も、下流オブジェクト識別子130aに含まれ得る。4番目の機器ゾーンもまた、上流の機器ゾーン及び下流の機器ゾーンの下流にあることが理解されよう。
【0171】
理解されるように、生産プロセス全体を通して材料及び製品の監視を向上させながら、個々のオブジェクト識別子の数を減らすことができる。
【0172】
押出材料152が輸送要素108a、bを介して発生する移動方向158に更に移動すると、押出材料152は回収ゾーン166において回収され得る。回収ゾーン166は、貯蔵ユニットであってもよいし、生産プロセスの更なる工程を適用するための更なる処理ユニットであってもよい。回収ゾーン166では、追加の材料が組み合わされ得、例えば、硬化された第2の分割材料160が押出材料152と組み合わされ得る。したがって、先に論じたように新しいオブジェクト識別子が提供され得る。このようなオブジェクト識別子が最後の下流オブジェクト識別子134として示されている。最後の下流オブジェクト識別子134は、最後のゾーンのリアルタイムプロセスデータのサブセット136を付加されてもよく、サブセット136は、下流オブジェクト識別子130a及び第2の下流オブジェクト識別子130bの全体又は一部を含み得る。このように、最後の下流オブジェクト識別子134は、本開示において詳細に論じたのと同様に、回収ゾーン166からプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を提供される。回収ゾーン166で行われる機能又はもしあれば更なる処理に応じて、流入質量流量、流出質量流量、回収ゾーン166からの1つ又は複数の温度値、入った時間、出た時間、速度などのうちのいずれか1つ又は複数などのデータが、最後のゾーンのリアルタイムプロセスデータ136として含まれ得る。対応する出力データは、上で論じたように適合される。
【0173】
場合によっては、回収ゾーン166からの個々のロットは、選別され、パッケージングされ、及び/又は貯蔵され得る。このような選別ロットは、製品回収ビン164aとして示されている。ここでも数量が分割されているため、個々のオブジェクト識別子がサイロのそれぞれについて、そのサイロ内の化学製品170、すなわち製品回収ビン164aの個々のオブジェクト識別子が、化学製品170がそこで曝されるプロセスデータ又は条件と関連付けられ得るように提供され得る。また、このような複数の製品に関連付けられた性能パラメータは、製品回収ビン164aに関する個々のオブジェクト識別子に付加され得る。
【0174】
理解されるように、オブジェクト識別子のそれぞれがGUIDであってもよい。それぞれが、先のオブジェクト識別子からのデータの全部又は一部を含んでいてもよいし、リンクされてもよい。このように、関連する品質データは、特定の化学製品170にスナップショット又は追跡可能なリンクとして添付され得る。
【0175】
これも論じたように、1つ又は複数のMLモデルが、1つ又は複数の性能パラメータを計算又は予測するために使用され得る。また、MLモデルのそれぞれ又はいくつかもまた、少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータに関する信頼度を示す信頼値を提供するように構成されることも可能である。警告が、例えば、性能パラメータを予測する信頼度が所定の限界値より低い場合に、実験室分析のためのサンプルの物理的テストを開始するための警告信号として生成されてもよい。また、予測の信頼度が精度閾値を下回ったことに応じて、サンプリングオブジェクト識別子がインターフェースを介して自動的に提供されることも可能である。サンプリングオブジェクト識別子は同様に提供されてもよく、コンピューティングユニット124は、ここではサンプル材料172として示されている、サンプリングオブジェクト識別子が関連する材料について、関連するプロセスデータのサブセットをサンプリングオブジェクト識別子に付加し得る。コンピューティングユニット124はまた、信頼度が低かった少なくとも1つのゾーン固有性能パラメータをサンプリングオブジェクト識別子に付加し得る。このように、サンプル材料172は、採取されて検証及び/又は分析されて、オブジェクト識別子を使用した品質管理を更に改善し得る。また、サンプリングビン164bは、サンプル材料172の目標ゾーンであってもよいことが理解されよう。これにより、サンプリング及びサンプル回収の信頼性も改善される。
【0176】
図2は、本例では第1の機器ゾーンから見た、本教示の方法態様を示すフローチャート200又はルーチンを示している。
【0177】
ブロック202において、入力インターフェースを介して、機器から、又は機器ゾーンのうちの1つ若しくは複数から、例えば上流の機器ゾーンからのリアルタイムプロセスデータが受信される。リアルタイムプロセスデータは、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を含む。ブロック204において、リアルタイムプロセスデータのサブセットが決定される。リアルタイムプロセスデータのサブセットは、投入材料114が処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す。ブロック206において、出力インターフェースを介して、リアルタイムプロセスデータのサブセットが出力データとして提供される。
【0178】
サブセットの決定は、生産プロセス中に特定の機器ゾーンにおける投入材料114の存在を示すゾーン存在信号を使用してなされ得る。
【0179】
任意選択で、ブロック208において、リアルタイムプロセスデータのサブセット及び履歴プロセスデータに基づいて、投入材料114に関連する化学製品の少なくとも1つの性能パラメータ、又は上流オブジェクト識別子が計算される。履歴プロセスデータは、好ましくは同じ機器、例えば上流の機器ゾーンにおける、以前に処理された投入材料に関連する1つ又は複数の履歴オブジェクト識別子からのデータを含み得る。好ましくは、各履歴オブジェクト識別子が、例えば同じ機器ゾーンにおいて、以前に処理された投入材料が処理された際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す、プロセスデータの少なくとも一部を付加される。
【0180】
任意選択で、ブロック210において、少なくとも1つの性能パラメータが出力データに含まれる。
【0181】
本教示による出力データは、生産中の対応する材料を追跡するデータの動的ストリームであり得る。出力データは、特に、統合、ストリーミング、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、並びに任意の適切な工業プラントにおける生産プロセスのリアルタイム監視及び/又は制御及び/又は最適化又は改善に適し得る。
【0182】
投入材料が後続のゾーンに進行すると、別のオブジェクト識別子を提供するべきか否かが判定され得る。否である場合は、後続ゾーンからのプロセスデータもまた同じオブジェクト識別子に付加され得る。別のオブジェクト識別子を提供するべきであると判定された場合、後続ゾーンからのプロセスデータが別のオブジェクト識別子に付加される。中間の機器ゾーン及び下流の機器ゾーンなど、これらのオプションのそれぞれの詳細については、本開示において、例えば概要セクションにおいて図1を参照しながら、詳細に論じている。更に、目標ゾーンの例も論じてある。
【0183】
図3に示すブロック図は、工業プラントの製品生産システムの一部を表しており、これは、本実施形態では、図示の製品処理ライン全体に沿って配置された10の製品処理デバイス若しくはユニット300~318(すなわち、それぞれ、技術機器)を備える。本実施形態では、これらの処理ユニットのうちの1つ(処理ユニット308)が、3つの対応する機器ゾーン320、322、324を含む(図3及び図5のより詳細な実施形態も参照)。
【0184】
本実施例では、投入材料としての化学製品が、液体原材料リザーバ300、固体原材料リザーバ302、及びリサイクルサイロ304を介して処理ラインに供給される原材料に基づいて生産される。リサイクルサイロ304は、例えば不十分な材料/製品特性又は不十分な材料/製品品質を含む化学製品又は中間製品があれば、これをリサイクルする。処理ライン306~318に投入される対応する原材料は、対応する処理機器、すなわち、供給ユニット306、後続の加熱ユニット308、材料バッファ310を含む後続の処理ユニット、及び後続の選別ユニット312を介して処理される。この処理機器306~312の下流には、リサイクルされる必要がある材料、例えば、生産された材料の品質が不十分であることに起因してリサイクルされる必要がある材料を、選別ユニットからリサイクルサイロ304に輸送する輸送ユニット314が配置される。最後に、選別ユニット312によって選別された材料は、出荷のための材料容器に、例えばバルク材料の場合は材料袋、又は液体材料の場合はボトルに、適切な材料を梱包する第1及び第2の梱包ユニット316、318に移送される。
【0185】
生産システム300~318は、本実施形態では、コンピューティングユニットのデータインターフェース(両者ともこのブロック図には示さず)を提供し、それを介して、対応する投入材料及び処理に起因するその変化に関するデータを含むデータオブジェクトが提供される。生産プロセス全体は、少なくとも部分的に、コンピューティングユニットを介して制御される。
【0186】
処理機器306~312によって処理される投入材料は、物理的又は現実世界のいわゆる「パッケージオブジェクト」(以下では「物理パッケージ」又は「製品パッケージ」とも呼ぶ)に分割され、これらのパッケージオブジェクトは処理ユニット306~312のそれぞれによって扱われる又は処理される。このようなパッケージオブジェクトのパッケージサイズは、例えば材料の重量(例えば、10kg、50kgなど)又は材料の量(例えば、1デシメートル、1/10立方メートルなど)によって固定され得る、又は更には重量若しくは量によって決定され得、そのために、比較的一定のプロセスパラメータ又は機器動作パラメータが処理機器によって提供され得る。
【0187】
供給ユニット306は、まず、リサイクルサイロ304によって提供された液体及び/又は固体の投入原材料及び/又は再生材料から、このようなパッケージオブジェクトを作成する。パッケージオブジェクトを作成すると、供給ユニットは、これらのオブジェクトを均質化ユニット308に輸送する。均質化ユニット308は、パッケージオブジェクトの材料を均質化する、すなわち、例えば処理された液体材料及び固体材料、又は2種の液体材料若しくは固体材料を均質化する。加熱プロセスの後、加熱ユニット308は、適切に加熱されたパッケージオブジェクトを、例えば加熱、乾燥若しくは加湿、又は特定の化学反応によって、投入されたパッケージオブジェクトの材料を異なる物理的及び/又は化学的状態に変換する処理ユニット310に輸送する。その後、適切に変換されたパッケージオブジェクトは、3つの下流梱包ユニット316、318又は上述の輸送ユニット314のうちの1つ又は複数に輸送される。
【0188】
現実世界のパッケージオブジェクトのその後の処理は、機器306~312に動作可能に結合された、又は機器の一部であるコンピューティングユニットを介して各パッケージオブジェクトに割り当てられる対応するデータオブジェクト330、332、334(又は、それぞれ、予め記述された「オブジェクト識別子」)によって管理され、コンピューティングユニットのメモリストレージ要素に格納される。本実施形態によれば、3つのデータオブジェクト330~334は、機器306~312を介して提供されるトリガ信号に応じて、すなわち、機器ユニット306~312のそれぞれに配置されている対応するセンサの出力に応じて、又は、それぞれ、適切なスイッチに応じて生成され、このようなセンサは機器ユニット306~312に動作可能に結合される。上述のように、工業プラントは、異なるタイプのセンサ、例えば、1つ又は複数のプロセスパラメータを測定するため、及び/又は機器動作条件又は機器若しくはプロセスユニットに関連するパラメータを測定するためのセンサを備え得る。本実施形態では、機器ユニット306~312の内部で処理されるバルク材料及び/又は液体材料の流量及び/又はレベルを測定するためのセンサが、これらのユニットに配置される。
【0189】
図3に示す3つの例示的なデータオブジェクト330、332、334は、本実施形態では、それぞれ、処理ユニット306~312及び314~318に基づく製品生産プロセス全体の3つの機器ゾーン320、322、324の異なるゾーンに関連する。
【0190】
最初の2つのデータオブジェクト330、332は、プロセスデータを含む製品パッケージオブジェクトを含む。プロセスデータは、関連物理パッケージがいくつかの処理ユニット内に滞留/処理される際に経た処理/処理情報を含む。プロセスデータは、関連する処理ユニット内での基礎となる物理パッケージの滞留時間中の計算された平均温度などの集約されたデータであってもよく、及び/又は、基礎となる生産プロセスの時系列データであってもよい。
【0191】
第1のデータオブジェクト330は、第1の種類のパッケージ(図3では「Aパッケージ」と呼ばれる)であり、本実施形態では、供給ユニット306及び加熱ユニット308の2つの処理ユニットを経て輸送されてきた物理パッケージに割り当てられる。第1のデータオブジェクト330は、処理時間における現在の時点において、各滞在中の両方のユニットの関連データを含む。第1のデータオブジェクトは、対応する「製品パッケージID」を含む。
【0192】
加熱ユニット308は、いくつかの機器ゾーンを含み、本実施形態では、3つの機器ゾーン320、322、324(「ゾーン1」、「ゾーン2」、「ゾーン3」)を含む。これらの異なる機器ゾーンは、関連するプロセスデータを選別又は選択するための選別グループとして利用される。このような選別は、関連物理パッケージがこの機器ゾーンの中にいる間の対応する時点内における基礎となる物理パッケージの処理に関連する、関連機器ゾーンからパッケージオブジェクトについてのデータのみを取得するのを助け得る。しかしながら、本実施形態では、物理パッケージの材料組成は、両方の処理ユニット306、308で変化しない。
【0193】
Aパッケージ330が次の処理ユニット310(本実施形態では「バッファ付き処理ユニット」)に到着すると、この処理ユニット310は物理パッケージをプラグフローモードで輸送するだけではないため、各物理パッケージの材料組成は変化する。更に、対応する物理パッケージは、元のパッケージサイズよりも大きなバッファ体積を含むため、このような物理パッケージは、定義された逆混合度を有する。結果として、この処理ユニット310を出た各物理パッケージは、図3において「Bパッケージ」と呼ばれる別の種類の物理パッケージである。
【0194】
対応する第2のデータオブジェクト332(「Bパッケージ」)もまた、対応する「製品パッケージID」を含む。データオブジェクト332は、規定された数の以前のデータオブジェクト(本実施例では、「Aパッケージ」として指定されたデータオブジェクト330)のデータ、いわゆる「関連するAパッケージからの集約データ」を規定割合で更に含む。適切な集約スキーム又はアルゴリズムは、例えば、基礎となる処理ユニット、基礎となる物理パッケージのサイズ、基礎となる物理パッケージの材料の混合能力、及び基礎となる処理ユニット内の基礎となる物理パッケージの滞留時間、又は処理ユニットの対応する機器ゾーンに依存する。
【0195】
処理された物理(製品)パッケージが、2つの梱包ユニット316、318のうちの1つによって、例えば処理された物理パッケージを容器、ドラム、又はオクタビン容器などに梱包することによって、離散的な物理パッケージに梱包されると、本実施形態では、対応する梱包された物理パッケージが、「物理パッケージ」と呼ばれる別のデータオブジェクト334を介して扱われる又は追跡される。このデータオブジェクト334は、内部に梱包された、関連する以前の物理パッケージ(本シナリオでは「Aパッケージ」及び「Bパッケージ」など)を含む。完全なデータオブジェクトを使用する代わりに、対応する「製品パッケージID」を指定することは、例えば、追跡目的には十分であり、それは、このような製品パッケージIDは、後のデータ処理、例えば、外部の「クラウドコンピューティング」プラットフォームによって実行されるデータ処理において容易に一緒にリンクされ得るためである。
【0196】
第1のデータオブジェクト(又は「オブジェクト識別子」)330は、特に、次の情報、すなわち、
- 基礎となるパッケージに関する「製品パッケージID」と、
- パッケージの基礎となる処理材料に関する情報又は仕様のような、基礎となるパッケージに関する一般情報と、
- 処理ライン306~318全体の中での基礎となるパッケージの現在の場所と、
- プロセスデータ、すなわち、基礎となるパッケージの処理材料の温度及び/又は重量の集約値と、
- 基礎となる生産プロセスの時系列データと、
- 基礎となるパッケージからのサンプルへの接続であって、製品パッケージがサンプルステーションを通過し、規定の瞬間に、オペレータがこの製品パッケージからサンプルを採取し、検査室に提供する、接続と
を含む。このサンプルでは、サンプルオブジェクト(図6の参照符号634及び638を参照)が生成され、関連する製品パッケージ(図6の参照符号626及び630を参照)にリンクされる。このサンプルオブジェクトは、特に、検査室からの対応する品質管理(QC)データ及び/又は適切な試験機からの性能データを含む。
【0197】
第2のオブジェクト識別子332は、追加的に、
- バッファ付き処理ユニット310で生成された関連するAパッケージからの集約データ
を含む。
【0198】
第3のオブジェクト識別子334は、2つの梱包ユニット316、318によって、指定及びタイムスタンプ「物理パッケージ1976-02-06 19:12:21.123」を用いて生成され、次の情報、すなわち、
- ここでも、適切なパッケージ又はオブジェクト識別子(「パッケージID」)と、
図3に示す、出荷のための2つの材料容器内に梱包される製品の名称と、
- そのように梱包される製品を注文するための注文番号と、
- そのように梱包される製品のロット番号と
を含む。
【0199】
第1及び第2のオブジェクト識別子330、332のパッケージ一般情報は、投入原材料の材料データを含み、材料データは、本実施形態では、材料の温度及び/又は重量のような、投入材料、又は処理材料の化学的特性及び/又は物理的特性をそれぞれ示し、本実施形態では、履歴試験結果などの投入材料に関連する上述の検査室サンプル又は試験データも含む。
【0200】
同様に図3に示す製品生産プロセスによれば、上述のインターフェースを介して、機器全体からプロセスデータが集められ、プロセスパラメータは、処理材料の上述の温度及び/又は重量のような、処理パラメータを示し、また、本実施形態では、上述のヒータの温度及び/又は適用された供給パラメータのような、投入材料が処理される際の機器動作条件も示す。本実施形態において、集められたプロセスデータ、本実施形態では、関連するAパッケージからの集約データのようなプロセスデータの一部のみが第2のオブジェクト識別子332に付加される。
【0201】
先に説明したように、3つのオブジェクト識別子330~334は、本実施形態では、言及された投入材料データ及び/又は特定のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を化学製品の少なくとも1つの性能パラメータに関連付け又はマッピングするために使用され、上記性能パラメータが、それぞれ基礎となる材料(例えば、それぞれ、適切な化学製品)の任意の1つ又は複数の特性であるか、又はこれを示す。
【0202】
図3に示す本実施形態によれば、2つのオブジェクト識別子330、332に含まれる(集約値としての)集められたプロセスデータは、プロセスパラメータを示す数値を含み、追加的に、生産プロセス中に測定された機器動作条件を示す数値を含む。加えて、オブジェクト識別子330、332は、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件のうちの1つ又は複数の時系列データとして提供されたプロセスデータを含む。機器動作条件は、機器の状態を表す任意の特性又は値であり得、本実施形態では、生産機械の設定値、コントローラ出力、及び機器に関連する警告(例えば、振動測定に基づくもの)であり得る。追加的に、輸送要素の速度、温度、及びファウリング値(フィルタ差圧、メンテナンス日など)が含まれ得る。
【0203】
図3に示す製品生産システムの実施形態では、生産プロセスの間、投入原材料300~304が処理ライン306~318全体に沿って移動し、本実施形態では、最初の機器ゾーン320から2番目の機器ゾーン322へ、また2番目の機器ゾーン322から3番目の機器ゾーン324へ進行するように、製品処理機器306~318全体が、上述の複数の3つの機器ゾーン320~324を含む。このような生産シナリオでは、第1のオブジェクト識別子330は、最初の機器ゾーン320において提供され、第2のオブジェクト識別子332は、投入材料が、最初の機器ゾーン320を通って処理された後、2番目の機器ゾーン322に入るときに提供される。第2のオブジェクト識別子332は、第1のオブジェクト識別子330によって提供されたデータ又は情報の少なくとも一部が付加される、又はこれを含み、追加的に、最後のデータ/情報「関連するAパッケージからの集約データ」を含む。
【0204】
注目すべきであるのは、オブジェクト識別子330~334のいずれか又はそれぞれが、生産プロセス全体において対応するパッケージへのオブジェクト識別子の確実且つ安全な割り当てを可能にするために、一意識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)を含み得ることである。
【0205】
本製品処理シナリオにおいて、第1のオブジェクト識別子330に付加される上述のプロセスデータは、第1の機器ゾーン320から集められたプロセスデータの少なくとも一部である。したがって、第2のオブジェクト識別子332は、第2の機器ゾーン322から集められたプロセスデータの少なくとも一部を付加され、第2の機器ゾーン322から集められたプロセスデータは、投入原材料300~304が第2の機器ゾーン322において処理される際のプロセスパラメータ及び/又は機器動作条件を示す。
【0206】
以下の表1では、別の例示的なオブジェクト識別子が、同様に表形式で示されている。このオブジェクト識別子は、先に説明した3つのオブジェクト識別子330~334よりもはるかに多くの情報/データを含む。
【0207】
この例示的なオブジェクト識別子は、図4に示すような、基礎となる日時タイムスタンプ「1976-02-06 18:31:53.401」を有するいわゆる「Bパッケージ」に関係し、以下に説明されるが、図4に含まれるデータより多くのデータを含む。
【0208】
本実施例における一意識別子(「一意ID」)は、一意URL(「uniqueObjectURL」)を含む。基礎となるパッケージの主な詳細(「パッケージの詳細」)は、本実施例では、2つの値「02.02.1976 18:31:53.401」を有するパッケージの作成の日時タイムスタンプ(「作成タイムスタンプ」)、及びパッケージのタイプ(「パッケージのタイプ」)であり、本実施例ではパッケージタイプは「B」である。基礎となる生産ラインに沿ったパッケージの現在の場所(「パッケージの場所」)は、「パッケージの場所のリンク」によって規定され、これは、本実施例では、生産ラインの「コンベヤベルト1」への輸送リンクである。
【0209】
コンベヤベルト1には、現在85℃の材料温度を示す平均温度(「平均値」)を測定するための測定機器(例示的な処理データ又は値を含む「測定点」を参照)と、基礎となる温度ゾーンの適切な説明(「説明」)とが提供され、この説明は、本実施例では「温度ゾーン1」である。加えて、測定機器はまた、コンベヤベルト1におけるパッケージの入った日付/時間(「入った時間」)(本実施例では「02.02.1976 18:31:54.431」)を検出するためのセンサと、コンベヤベルト1からのパッケージの出た日付/時間(「出た時間」)(本実施例では「02.02.1976 18:31:57.234」)を検出するためのセンサとを含み得る。最後に、測定機器は、生産プロセスに関する基礎となる時系列情報(「時系列」)の時系列値(「時系列値」)を検出するためのセンサ機器を含む。
【0210】
加えて、図示のオブジェクト識別子は、本実施例では、下流に配置された「コンベヤベルト2」と、下流に配置された「ミキサ1」と、下流に配置された、既処理材料を中間貯蔵する「サイロ1」とに関する情報を更に含む。
【0211】
【表1】
【0212】
図4は、工業プラントの基礎となる製品生産システムのプロセス部分の第2の実施形態を示しており、この第2の実施形態では、6つの製品処理デバイス400、402、406、410、412、416(すなわち、それぞれ、技術機器)を備える。
【0213】
パッケージオブジェクトを処理するための「上流プロセス」400が、処理されたパッケージオブジェクトを選別するための「選別ユニット」402に接続される。上流プロセス400及び選別ユニット402は、第1のデータオブジェクト404によって管理される。このデータオブジェクト404は、既に説明した「Bパッケージ」に関するものであり、基礎となる日時タイムスタンプ「1976-02-06 18:51:43.431」がその作成の日付及び時間を示す。データオブジェクト404は、現在処理中のパッケージオブジェクトの「パッケージID」(いわゆる「オブジェクト識別子」)を含む。データオブジェクト404は、現在処理されているパッケージオブジェクトに関するn個の予め記述された化学的特性及び/又は物理的特性を更に含み、これは、本実施例では「特性1」及び「特性n」である。
【0214】
投入材料、すなわち、上流プロセス400において投入される対応するパッケージオブジェクトは、本実施例では、「リサイクルサイロ」406によって提供される。一方、リサイクルサイロ406は、パッケージオブジェクトをリサイクルサイロ406に輸送する「輸送ユニット1」410から、リサイクルする必要があり、適切に選別ユニット402によって選別された基礎となるリサイクル材料を取得する。基礎となる輸送プロセスステップ410は、上述の「Bパッケージ」に関係し、上述の基礎となる日時タイムスタンプ「1976-02-06 18:51:43.431」と、現在処理されているパッケージオブジェクトの「パッケージID」と、2つの化学的特性及び/又は物理的特性「特性1」及び「特性n」とを含む第2のデータオブジェクト408によって管理される。しかしながら、基礎となる選別されたパッケージオブジェクトをリサイクルするという上述の要件に起因して、第2のデータオブジェクト408は、基礎となるパッケージオブジェクトの別の化学的特性及び/又は物理的特性(本実施例では「特性2」)を更に含み、これは、そのパッケージオブジェクトの対応する性能指標(本実施例では「低い又は不十分な材料又は製品性能」)を特に含む。
【0215】
上流プロセス400によって処理され、選別ユニット402で選別されていないパッケージオブジェクトは、選別ユニット402によって、対応するパッケージオブジェクトの性能値に応じて、第1の「梱包ユニット1」412又は第2の「梱包ユニット2」416のいずれかに提供される。梱包ユニット412、416は、対応するパッケージオブジェクトを対応する容器414、418に梱包するために使用される。2つの包装ユニット412、416によって実行される包装プロセスは、第3のデータオブジェクト420及び第4のデータオブジェクト422によって管理される。
【0216】
2つのデータオブジェクト420、422は、両方とも「物理パッケージ」に関し、上記「Bパッケージ」と同じ日付「1976-02-06」を含むが、上記「Bパッケージ」とは異なる最後のタイムスタンプ「19:12:21.123」を含む。2つのデータオブジェクト420、422はまた、基礎となるパッケージオブジェクトの「パッケージID」も含む。しかしながら、データオブジェクト420、422は、基礎となる最終製品の性能指標を更に含み、これは、本実施例では、第1の容器(又は充填袋)414に格納された製品に関する「中程度の性能」、及び第2の容器(又は充填袋)418に格納された製品の場合には「高度な性能」である。加えて、2つのデータオブジェクト420、422は、対応する最終製品の「注文番号」及び「ロット番号」を含む。
【0217】
図5は、工業プラントにおいて実装される基礎となる化学製品生産プロセス又はシステムの部分の第3の実施形態を示しており、この第2の実施形態では、9つの製品処理デバイス500~516(すなわち、それぞれ、技術機器)を備える。
【0218】
本製品処理手法は、既知の仕方でポリマー材料を製造するために、2つの原材料、すなわち「原材料液体」500と「原材料固体」502とに基づく。先に説明した図3及び図4による製造シナリオと同様に、技術機器は、先に説明したように、リサイクル材料を使用するための「リサイクルサイロ」504を備える。
【0219】
技術機器は、上述の投入原材料に基づいてパッケージオブジェクトを作成するための「供給ユニット」506を更に備え、原材料は、パッケージオブジェクトを処理するために、図示の4つの高分子反応ゾーン(「ゾーン1~4」)510、512、514、516に沿ってパッケージオブジェクトを輸送する「反応ユニット」508によって、また反応ユニット508で製造されているポリマー材料(すなわち、対応するパッケージオブジェクト)を硬化させるための「硬化ユニット」518によって処理される。
硬化ユニット518は、本実施形態では、材料バッファのみを備え、逆混合機器は持たない。硬化ユニット518はまた、適切に処理されたパッケージオブジェクトを輸送する。
【0220】
「輸送ユニット1」520は、リサイクルサイロ504によるリサイクルのために選別されているパッケージオブジェクトを輸送する。最終的に処理された、すなわち選別されていないユニットは、第1の「梱包ユニット1」522と第2の「梱包ユニット2」524とに同様に輸送される。2つの包装ユニット522、524は、対応するパッケージオブジェクトを対応する容器又は充填袋526、528に変換して輸送する。
【0221】
図5に示す生産プロセスは、第1のデータオブジェクト530及び第2データオブジェクト534によって管理される。
【0222】
第1のデータオブジェクト530は、作成日付「1976-02-06」及び作成時間「18:31:53.401」を有する「Aパッケージ」に関する。データオブジェクト530は、本製造シナリオでは、同様に、予め記述された「パッケージID」と、供給ユニット506によって実行されている供給プロセスに関するプロセス情報(「供給特性」)と、反応ユニット508によるポリマー材料の製造に関する更なるプロセス情報(「反応ユニット特性」)とを含む。供給特性は、各パッケージオブジェクトの原材料量に関する情報、すなわち「原材料1(液体)の割合」、「原材料2(固体)の割合」、及び製品温度を含む。反応ユニット特性は、4つのポリマー反応ゾーン510~516(「温度ゾーン1」、「温度ゾーン2」、「温度ゾーン3」、及び「温度ゾーン4」)の温度を含む。
【0223】
そこで、第1のデータオブジェクト530は、処理ライン506~524に沿った、基礎となるパッケージオブジェクトの現在の場所(「現在のパッケージの場所」)を含む。そのパッケージオブジェクトの現在の場所は、本実施形態では、「パッケージの場所のリンク」と対応する「ゾーンの場所」とによって管理される。最後に、基礎となるポリマー反応に関する化学的及び/又は物理的な情報、すなわち対応する「反応エンタルピー/反応度」が含まれる。これにより、所与のパッケージオブジェクトを輸送する処理ユニット506~524は、永続的に反応エンタルピー値を計算し、第1のデータオブジェクト530に書き込み/顕在化する。このことは、パッケージの位置及び対応する滞留時間に関する既存の情報、並びに適切なプロセス値(例えば、パッケージの温度)に関する既存の情報に起因して可能である。第1のデータオブジェクト530と硬化ユニット518との間の通信回線532を介して、第1のデータオブジェクト530に含まれる反応エンタルピー及び/又は反応度の現在の値に基づいて、反応エンタルピーの計算値に基づいて、硬化時間パラメータが調整される。
【0224】
第2のデータオブジェクト534は、包装ユニット522、524のうちの1つによって処理されている「物理パッケージ」に関し、対応する作成日時情報「1976-02-06 19:12:21.123」を含む。「パッケージID」、「製品」の説明/仕様、「注文番号」、「ロット番号」、並びに計算されたエンタルピー及び/又は反応度の上述の値が含まれる。
【0225】
図6は、工業プラントのクラスタ600の一部であり、複数の機器デバイスと適切な製品処理ライン604の一部である対応する機器ゾーンとを含む、基礎となる工業プラント602の階層又はトポロジ構造を表すグラフベースのデータベース構成の第1の実施形態を示している。このトポロジ構造により、基礎となる製品パッケージの処理又は計画の改善を可能にするために、工業プラント602(又は基礎となるプラントクラスタ600)の基礎となる異なる部分間の機能関係を可視化することができる。グラフベースのデータベースの図示の円形のノードは、接続線を介してリンクされているが、異なるリンクタイプが可能である。
【0226】
機器デバイスは、本実施形態では、処理ユニット606、614の一部であるセンサ/アクチュエータ608、616と、信号及び/又はデータ接続を介して接続され、且つ複数の入出力(I/O)デバイス610、612及び618、620に接続される材料処理ユニット606、614を備える。
【0227】
本実施形態では、第1の処理ユニット606は、例示的な3つの製品パッケージ(製品パッケージ1~3)622、624、626と更に接続され、第2の処理ユニット614は、更なる3つの製品パッケージ(製品パッケージ4~n)628、630、632と更に接続される。例示に過ぎないが、「製品パッケージ3」626は、製品サンプル(サンプル1)634に接続され、「製品パッケージ5」630は、別の製品サンプル(サンプルn)638に接続される。「サンプル1」634は、「検査ロット1」636と更に接続され、「サンプルn」は、「検査ロットn」640と更に接続される。最後に、両方の検査ロット636、640は「検査命令1」ユニット642に接続され、「検査命令1」ユニット642は、上述の検査ロットをどのように作成するかに関する、また対応する基礎となるサンプル634、638の分析/品質管理をどのように実現するかに関する仕様として働く。
【0228】
図6に示すトポロジ構造は、好都合なことに、図示のオブジェクト(ノード)が対応する現実世界のオブジェクトと極めて類似してモデル化されるため、図示の化学プラントの機能性及び処理について直感的且つ容易に理解することを可能にし、ひいては、ユーザ、特に機械/プラントオペレータによる化学プラント又は化学プラントのクラスタにおけるそのような複雑な生産プロセスの容易な管理を可能にするデータ構造を提供する。
【0229】
より詳細には、このトポロジ構造は、高度な状況情報を提供し、それに基づいて、ユーザ/オペレータは、各オブジェクトの技術的/物質的特性を容易に収集し得る。これにより、追加的に、ユーザはいくぶん複雑なクエリを行うことができ、例えば、オブジェクト間、特にいくつかのノード又は更にはトポロジ/階層レベルにわたるオブジェクト間の関連する生産関連の接続又は関係に関するクエリを行うことができる。これにより、図6に示すオブジェクト(ノード)は、実行時に更なるプロパティ及び/又は値によって容易に拡張され得る。
【0230】
図7は、図6に示すグラフベースのデータベース構成の第2の実施形態を、生産ライン700(「ライン1」)についてのみ示している。
【0231】
機器デバイスは、本実施形態では、対応する入出力(I/O)デバイス「I/O 1」706及び「I/O n」712に接続されているセンサ/アクチュエータ「センサ/アクチュエータ1」704及び「センサ/アクチュエータn」710と信号接続及び/又はデータ接続を介して接続されている材料処理ユニット702「ユニット1」及び「ユニットn」708を備える。これらのI/Oデバイスは、生産ライン700の動作を制御するためのPLC(図示せず)への接続を含む。
【0232】
本実施形態では、第1の処理ユニット(「ユニット1」)702は、例示的な3つの製品パッケージ(製品部分1~3)714、716、718と更に接続され、第2の処理ユニット(「ユニットn」)708は、更なる2つの製品パッケージ(「製品部分」4及びn)720、722と更に接続される。例示に過ぎないが、製品パッケージ3」718は、製品サンプル(「サンプル1」)724に接続され、製品パッケージn722は、別の製品サンプル(「サンプルn」)728に接続される。
【0233】
図6に示す実施形態とは対照的に、第1の「センサ/アクチュエータ1」704は、第1の製品サンプル(「サンプル1」)724にも接続され、第2の「センサ/アクチュエータn」710は、第2の製品サンプル(「サンプルn」)728にも接続される。これらの2つの追加的な接続は、異なるサンプルステーションで独立した時間に、又は更には同時にサンプルを独立に採取することが可能になるという利点を有する。例えば、センサ/アクチュエータ704は、サンプルステーションに配置されるプッシュボタンであり得、プッシュボタンは、サンプルが採取される瞬間にユーザ又はオペレータによって押される。
【0234】
或いは、このようなサンプルは、サンプリング機械によって自動的に生成され得る信号とすることもできる。このような自動生成信号は、例えば、図示のI/Oオブジェクト706を介してセンサ/アクチュエータオブジェクト704に到達し得、I/Oオブジェクト706は、PLC/DC(図示せず)からの上述のプッシュボタン情報を受信する。サンプルを採取する瞬間に、サンプルオブジェクト724が(例えば)作成され、その瞬間にサンプリングステーションの場所に配置された製品部分にリンクされる。
【0235】
適切に生成されたサンプル724、728に基づいて、まったく同一のサンプルのみであっても、1つ又は複数の検査ロット726、730が生成され得る。しかしながら、1つ又は複数のサンプルが、1つの処理ライン内で独立に、又は更には同時に生成されてもよい。
【0236】
最後に、図6に示す実施形態と同様に、「サンプル1」724は第1の「検査ユニット1」726に更に接続され、「サンプルn」は第2の「検査ユニットn」730に更に接続される。両方の検査ユニット726、730は、最終的に、図6に示す「検査命令1」ユニット642の場合のような仕様として、すなわち、上述の検査ロットをどのように作成するかに関する、また基礎となるサンプル724、728の分析/品質管理をどのように実現するかに関する仕様として同様に働く「検査命令1」ユニット732に接続される。「検査命令1」ユニット732は、独立して作成されてもよく、「検査ロット1」726及び更なる「検査ロットn」730によって図7に示されるように、2つ以上の検査ロットに関して検査命令732を使用しながら、1度だけ作成されてもよい。
【0237】
図8は、オブジェクトデータベース801を含み、予め記述された生産機器及び対応する原材料のための抽象化レイヤとして働く抽象化レイヤ800を示しており、予め記述された製品データは、予め記述された物理パッケージ又は製品パッケージの関連データ、すなわち適切なデジタルツインを含み得る。
【0238】
抽象化レイヤ800は、本実施形態では、外部のクラウドコンピューティングプラットフォーム804との間に双方向通信回線802を提供する。更に、抽象化レイヤ800はまた、「PLC/DC 1」806の場合のように双方向810、又は「PLC/DC n」808の場合のように一方向812で、いくつかのn個の生産PLC/DC及び/又は機械PLC806、808と通信する。クラウドコンピューティングプラットフォーム804は、本実施形態では、顧客統合インターフェース又はプラットフォーム816への双方向通信回線814を含み、これを介して、本生産プラントの所有者の顧客が、プラントの予め記述された機器ユニットに対して制御信号を伝達及び/又は送達し得る。
【0239】
オブジェクトデータベース801には、更に、本明細書に関係する他のオブジェクト、例えば、上述のサンプル、検査ロット、サンプル命令、センサ/アクチュエータ、デバイス、デバイス関連文書、ユーザ(例えば、機械又はプラントオペレータ)、対応するユーザグループ及びユーザ権、レシピ、注文、設定値-パラメータセット、又はクラウド/エッジデバイスのインボックスオブジェクトが含まれる。
【0240】
クラウドコンピューティングプラットフォーム804では、人工知能(AI)又は機械学習(ML)システムが実装され、これによって、エッジデバイス820を制御するために適切に作成又は発見されたアルゴリズムを使用するために、専用のデプロイパイプライン818を介してモノのインターネット(IoT)エッジデバイス又はコンポーネント820にデプロイされる最適アルゴリズムを見つける又は作成する。エッジデバイス820は、本実施形態では、抽象化レイヤ800と双方向に通信822する。
【0241】
抽象化レイヤ800及び含まれるオブジェクトデータベース801によって、本明細書で説明するように、予め記述された物理的又は製品パッケージが作成される。抽象化レイヤ800はまた、クラウドコンピューティングプラットフォーム804内の特定の処理及び/又はAI(又はML)コンポーネントに接続し得る。この接続では、既知のデータストリーミングプロトコル「Kafka」が使用され得る。これにより、基礎となる製品パッケージが作成された時点又はその前後で、特に、基礎となる時系列データとは無関係に、最初に空のデータパケットがメッセージとして送信され得る。その後、最終的な製品パッケージが処理された時点で、別のメッセージが送信され得る。これらのメッセージはデータパケットIDとして基礎となるパッケージのオブジェクト識別子を含むため、後でクラウドプラットフォーム側で関連するパケットどうしが同様にリンクされ得る。このことには、クラウドへの送信時に大きなサイズのデータパケットを避けることができ、これにより必要な送信帯域又は容量が最小化されるという利点がある。
【0242】
クラウドコンピューティングプラットフォーム804内では、予測される製品品質管理(QC)値など、基礎となる製品に関連する追加のデータを得るためのアルゴリズムを見つけるか作成するために、ストリームされ受信された製品データが、上述のAIの方法又はMLの方法によって使用される。この手順をクラウドコンピューティングプラットフォーム804内で行うには、QCデータ又は関連製品(又は物理)パッケージの測定された性能パラメータのような追加のデータが必要になる。これは、オブジェクトデータベース801から同様に、関連する製品パッケージに関するそのような情報を含むサンプルオブジェクト及び検査ロットオブジェクト(図6も参照)の形態で受け取ることができる。
【0243】
また、このような情報がオブジェクトデータベース以外のシステムから受信されてもよい。この場合、他のシステムは、QC及び/又は性能データをサンプル/検査ロットIDと共にオブジェクトデータベースから送信する。クラウドコンピューティングプラットフォーム804内では、このデータは結合され、MLベースのアルゴリズム/モデルなどを見つけるために使用される。これにより、クラウドプラットフォーム804内の計算能力が有効に使用され得る。
【0244】
本実施形態では、適切に発見されたアルゴリズム又はモデルは、デプロイパイプライン818を介してエッジデバイス820にデプロイされる。エッジデバイス820は、抽象化レイヤ800のオブジェクトデータベース801の近くに配置され、したがって、PLC/DC1~PLC/DCn 806、808にも近く、すなわち、低いネットワーク遅延及び直接且つセキュアな通信を可能にするネットワークセキュリティレベル及び場所という点で近い、コンポーネントであり得る。
【0245】
MLモデルの使用では、そのような計算能力は必要とされないため、エッジデバイス820は、MLモデルを使用して、上述の高度な情報を生成し、オブジェクトデータベース801に提供する。したがって、エッジデバイス820は、MLベースのアルゴリズム又はモデルを生成するためにクラウドコンピューティングプラットフォーム804で使用される、同じ情報又は情報のサブセットを必要とし、オブジェクトデータベース801は、このデータを、例えば、公知の「メッセージキューイングテレメトリトランスポート」(MQTT)プロトコルのような、マシン間通信用のオープンネットワークプロトコルを介して、エッジデバイス820に提供し得る。
【0246】
この設定により、AI/MLベースの高度なプロセス制御及び自律的な製造、それに伴う自律的に動作する機械の実現が可能となる。
【0247】
図8に示す実施形態に示されるように、予め記述されたデータオブジェクト330~334(図3)からのデータに基づいて、クラウドコンピューティングプラットフォーム804の側で、AI/MLシステム又は適切なAI/MLモデルが、そのようなデータを訓練データとして使用して訓練される。よって、訓練データは、本実施形態では、履歴及び現在の検査室試験データ、特に、過去の化学製品の性能パラメータを示すデータを含み得る。
【0248】
AI/MLモデルは、予め記述された性能パラメータのうちの1つ又は複数の予測に使用され得、上記予測は、好ましくは、コンピューティングユニットを介してなされる。追加的又は代替的に、AI/MLモデルは、生産プロセスを少なくとも部分的に制御するために使用され得、好ましくは機器動作条件を調整することを介して、より好ましくは上記制御が上述のコンピューティングユニットを介してなされる。追加的又は代替的に、AI/MLモデルはまた、例えば、コンピューティングユニットによって、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件のうちのどちらが化学製品に支配的な影響を及ぼすかを判定して、プロセスパラメータ及び/又は機器動作条件のうちの支配的な方が、それぞれデータオブジェクト、又は上述のオブジェクト識別子に付加されるようにするために使用され得る。
【0249】
当業者であれば、方法ステップ、少なくともコンピューティングユニットを介して実行される方法ステップは、「リアルタイム」又は「準リアルタイム」で実行され得ることを理解されよう。各用語は、コンピュータの技術分野で理解される。具体例として、コンピューティングユニットによって行われる任意の2つのステップ間の時間遅延は15秒以下であり、具体的には10秒以下、より具体的には5秒以下である。好ましくは、遅延は、1秒未満であり、より好ましくは数ミリ秒未満である。したがって、コンピューティングユニットは、方法ステップをリアルタイムで実行するように構成され得る。更に、ソフトウェア製品は、コンピューティングユニットに方法ステップをリアルタイムで実行させ得る。
【0250】
方法ステップは、例えば、実施例又は態様に記載したような順序で実行され得る。しかしながら、特定の状況下では、異なる順序も可能であり得ることに留意されたい。更に、方法ステップのうちの1つ又は複数を1回又は繰り返し実行することも可能である。ステップは、一定の時間間隔で繰り返されても不規則な時間間隔で繰り返されてもよい。更に、方法ステップのうちの2つ以上を同時に、又は適時重複して行うことも可能であり、具体的には、方法ステップのうちのいくつかが繰り返し実行されてもよい。本方法は、記載されていない更なるステップを含んでもよい。
【0251】
「含む」という単語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数形を除外するものではない。単一の処理手段、プロセッサ若しくはコントローラ、又は他の同様のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を満たし得る。特定の手段が互いに異なる従属請求項で言及されているという事実だけでこれらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も本発明の範囲を限定するものと解釈するべきでない。
【0252】
更に、本開示において、用語「少なくとも1つ」、「1つ又は複数」、又は特徴若しくは要素が1回又は複数回存在し得ることを示す同様の表現は、典型的にはそれぞれの特徴又は要素を導入する際に1回のみ使用されることに留意されたい。よって、場合によっては、特段の記載のない限り、それぞれの特徴又は要素に言及する際に、それぞれの特徴又は要素が1回又は複数回存在する可能性があるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」という表現は繰り返されない。
【0253】
更に、「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「更に特に」、「具体的には」、「より具体的には」という用語、又は同様の用語は、代替可能性を制限することなく、任意の特徴と共に使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意の特徴であり、特許請求の範囲の範囲を制限するものでは一切ない。当業者であれば理解するように、本教示は、代替的な特徴を使用することにより実施されてもよい。同様に、「一態様によれば」又は類似の表現によって導入される特徴は、本教示の代替形態に関する制限のない、本教示の範囲に関する制限のない、導入される特徴を本教示の他の任意の若しくは非任意の特徴と組み合わせる可能性に関する制限のない任意の特徴であることを意図するものである。
【0254】
本明細書で使用される見出しは、便宜上のものであり、したがって、そのような見出しは、主題に対していかなる限定的又は制限的な効果を有するものでもない。
【0255】
以上、生産プロセスを監視及び/又は制御及び/又は改善するための方法、使用法、本明細書で開示される方法を実施するためのシステム、生産プロセスを監視及び/又は制御及び/又は改善するためのシステム、ソフトウェアプログラム、並びに本明細書で開示される方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを含むコンピューティングユニットについて様々な実施例を開示してきた。しかしながら、当業者であれば、添付の特許請求の範囲及びその均等物の趣旨及び範囲から逸脱することなく、これらの実施例に変更及び修正を加えることができることを理解されよう。本明細書で論じた方法及び製品の実施形態からの態様は、自由に組み合わせることができることが更に理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】