(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】厚膜化されたレジストパターンの製造方法、厚膜化溶液、および加工基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/38 20060101AFI20231220BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231220BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G03F7/38 511
G03F7/039 601
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521424
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021085640
(87)【国際公開番号】W WO2022129015
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020209190
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】長原 達郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 和磨
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA11
2H196FA10
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
2H197JA21
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】厚膜化されたレジストパターンを製造する方法の提供。
【解決手段】以下のステップを含んでなる厚膜化されたレジストパターンの製造方法。
(1)レジスト組成物を基板の上方に適用し、前記レジスト組成物からレジスト層を形成すること;
(2a)レジスト層を露光すること;
(2b)レジスト層に、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜化溶液を適用し、厚膜化層を形成すること;および
(3)レジスト層および厚膜化層を現像すること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含んでなる厚膜化されたレジストパターンの製造方法。
(1)レジスト組成物を基板の上方に適用し、前記レジスト組成物からレジスト層を(好ましくは加熱により)形成すること;
(2a)前記レジスト層を(好ましくはEUV光によって)露光すること;
(2b)前記レジスト層に、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜化溶液を適用し、厚膜化層を(好ましくは、加熱またはスピンドライにより)形成すること;および
(3)前記レジスト層および前記厚膜化層を現像すること(好ましくはアルカリ水溶液または有機溶媒で現像する;より好ましくはアルカリ水溶液で現像する)。
【請求項2】
ステップ(2b)において、厚膜化層を形成した後にリンスを行い、厚膜化層の上部を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2b)において、前記厚膜化層と前記レジスト層の接する近傍領域に、不溶化層が形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー(A)が、繰り返し単位中にアミノ基を含んでなるポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー(A)が、式(a1)で表される繰り返し単位(A1)および式(a2)で表される繰り返し単位(A2)のうちの少なくとも1つを含んでなるポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
ここで、
R
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立に、H、C
1-4アルキル、またはカルボキシであり(好ましくはHであり)、
L
11は、単結合またはC
1-4アルキレンであり、
R
14は、単結合、HまたはC
1-5アルキルであり、
R
15は、H、C
1-5アルキル、C
1-5アシル、またはホルミルであり、ここで、L
11のアルキル、R
14のアルキル、およびR
15のアルキルまたはアシル中の-CH
2-の少なくとも1つが、それぞれ独立に、-NH-に置換されていてもよく、R
14の単結合またはアルキルと、R
13のアルキルとが、共に結合して、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよく、
R
14のアルキルと、R
15のアルキル、アシルまたはホルミルとが、共に結合して、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよく、
m11およびm12は、それぞれ独立に、0~1の数である。
【化2】
ここで、
R
21は、それぞれ独立に、H、単結合、C
1-4アルキルまたはカルボキシであり(好ましくはHであり)、
R
22、R
23、R
24、R
25は、それぞれ独立に、H、C
1-4アルキルまたはカルボキシであり(好ましくはHであり)、
m21は0~3の数である。
【請求項6】
前記ポリマー(A)が、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマー、およびポリ(アリルアミン-co-ジアリルアミン)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒(B)が、水を含んでなる、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の方法。
好ましくは、前記水の含有量は、前記溶媒(B)の総質量を基準として、80~100質量%(より好ましくは90~100質量%;さらに好ましくは98~100質量%;よりさらに好ましくは100質量%)であり;
好ましくは、前記ポリマー(A)の含有量は、前記厚膜化溶液の総質量を基準として、1~30質量%(より好ましくは1~20質量%;さらに好ましくは2~10質量%)であり;または
好ましくは、前記溶媒(B)の含有量は、前記厚膜化溶液の総質量を基準として、70~99質量%(より好ましくは80~99質量%;さらに好ましくは90~98質量%)である。
【請求項8】
前記厚膜化溶液がさらに酸(C)を含んでなる、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の方法。
好ましくは、前記酸(C)の含有量は、前記厚膜化溶液の総質量を基準として、0~20質量%(より好ましくは0~15質量%;さらに好ましくは0.1~10質量%;よりさらに好ましくは0.1~5質量%)であり;
好ましくは、前記厚膜化溶液全体のpHが5~12であり(より好ましくは5~10であり;さらに好ましくは6~9である);または
好ましくは、前記酸(C)は、スルホン酸、カルボン酸、硫酸、硝酸、または少なくともこれらのいずれか2つの混合物である。
【請求項9】
前記厚膜化溶液がさらに界面活性剤(D)を含んでなる、請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の方法。
好ましくは、前記界面活性剤(D)の含有量は、前記厚膜化溶液の総質量を基準として、0~5質量%(より好ましくは0.001~2質量%;さらに好ましくは0.01~1質量%)であり;
好ましくは、前記厚膜化溶液がさらに添加剤(E)を含んでなり;
好ましくは、前記添加剤(E)は、可塑剤、架橋剤、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、塩基、または少なくともこれらいずれかの混合物である;または
好ましくは、添加剤(E)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、0~10質量%(好ましくは0.001~5質量%;さらに好ましくは0.01~4質量%)である。
【請求項10】
前記レジスト組成物が、化学増幅型レジスト組成物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レジスト組成物が、光酸発生剤をさらに含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる、レジスト層の現像前に適用されるレジスト層を厚膜化させるための厚膜化溶液。
【請求項13】
前記厚膜化溶液が、レジストパターン間に適用されるものではない、請求項12に記載の厚膜化溶液。
【請求項14】
以下のステップを含んでなる加工基板の製造方法。
請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載の厚膜化されたレジストパターンを形成すること;および
(4)前記厚膜化されたレジストパターンをマスクとして加工すること。
【請求項15】
請求項14に記載の方法を含んでなるデバイスの製造方法。
好ましくは、加工された基板に配線を形成する工程をさらに含んでなり;または
好ましくは、デバイスは半導体素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜化されたレジストパターンの製造方法、それに用いられる厚膜化溶液、および加工基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化のニーズが高まっており、レジストパターンの微細化が求められている。このようなニーズに対応するために、短波長の、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、極端紫外線(EUV;13nm)、X線、電子線等を用いるリソグラフィープロセスが実用化されつつある。
【0003】
より微細なパターンを得るために、従来の方法で安定的に得られる範囲で形成されたレジストパターンにポリマーを含む組成物で覆い、レジストパターンを太らせて、ホール径または分離幅を微細化させる方法がある(例えば、特許文献1)。これは、主にレジストパターンの幅を太らせることを目的としており、一度レジストパターンを現像してから、さらにポリマーを含む組成物を適用するものである。
また、より厚く、アスペクト比が高いレジストパターンが求められている中、ビニル樹脂とアミン化合物を用いる組成の開発も行われている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-170190号公報
【特許文献2】特開2017-165846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、レジストパターンの製造方法について、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる:微細なレジストパターンを厚膜化する;エッチングマスクとして有用な微細なレジストパターンを得る;開口数を上げた露光機を使用しても充分な解像度を得る;形状の良い微細なパターンを得る;アスペクト比の高いレジストパターンを得る;プロセスウィンドウを広くする;製造の歩留まりを改善する。
【0006】
本発明者らは以下のように考え、検討を行った。
DOF(Depth of Focus)は、同一露光量において、焦点を上下にずらして露光した際に、ターゲット寸法に対するずれが所定の範囲内となる寸法でレジストパターンを形成できる焦点深度の範囲のことをいう。
DOFは、以下の式で表される。
k2×λ/NA2
(式中、k2は定数、λは露光波長、NAは開口数を表す)
DOFが大きいほど、プロセスウィンドウが広くなり好ましい。しかしIC等の高精度のリソグラフィ技術において、今後は露光装置のNAが上がる傾向があり、DOFはますます狭くなると予想される。
【0007】
高精細技術として期待されるEUV露光では、薄膜で微細パターンを形成することは達成されつつある。本発明者らは、高精細パターンをマスクとして、その後の工程で用いる際に、より耐性を持たせるために、レジストパターンを厚膜化させることが好適であると考えた。レジストパターンが薄いと、例えばエッチングマスクとして使用した際に、マスクとしての耐久性を果たしきれずに、エッチング工程の終盤にマスクされる対象まで削れてしまうことが生じ得る。
【0008】
レジスト膜厚が厚いとプロセスウィンドウが狭くなる傾向にある。例えば、基板のわずかな厚さの振れによりFocusが振れると形成されるレジストパターンの形状が変化し、矩形から遠くなり、パターン倒れ等が生じやすくなる可能性がある。また別の例で言えば、露光量(Dose)が振れるとライン幅が振れることになり、パターンブリッジやパターン倒れが生じやすくなる可能性がある。高い解像度が求められる高精細技術においては、レジスト膜厚が薄い方が用いられやすい。
【0009】
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、厚膜化されたレジストパターンを製造する方法、およびそれに用いられる厚膜化溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による厚膜化されたレジストパターンの製造方法は、以下のステップを含んでなる。
(1)レジスト組成物を基板の上方に適用し、前記レジスト組成物からレジスト層を形成すること;
(2a)レジスト層を露光すること;
(2b)レジスト層に、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜化溶液を適用し、厚膜化層を形成すること;および
(3)レジスト層および厚膜化層を現像すること。
【0011】
本発明による厚膜化溶液は、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなり、レジスト層の現像前に適用されるレジスト層を厚膜化させるために用いられるものである。
【0012】
本発明による加工基板の製造方法は、以下の方法を含んでなる。
上記の厚膜化されたレジストパターンを形成すること;および
(4)厚膜化されたレジストパターンをマスクとして加工すること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
微細なレジストパターンを厚膜化する;エッチングマスクとして有用な微細なレジストパターンを得る;開口数を上げた露光機を使用しても充分な解像度を得る;形状の良い微細なパターンを得る;アスペクト比の高いレジストパターンを得る;プロセスウィンドウを広くする;製造の歩留まりを改善する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】厚膜化されたレジストパターンを製造する方法の一形態を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[定義]
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される態様もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(B)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0017】
<厚膜化されたレジストパターンの製造方法>
本発明による厚膜化されたレジストパターンの製造方法は、以下のステップを含んでなる。
(1)レジスト組成物を基板の上方に適用し、前記レジスト組成物からレジスト層を形成すること;
(2a)前記レジスト層を露光すること;
(2b)前記レジスト層に、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜化溶液を適用し、厚膜化層を形成すること;および
(3)前記レジスト層および前記厚膜化層を現像すること。
以下、各ステップについて、図を用いて、説明する。明確性のために記載すると、(3)工程の前に、(1)および(2)の工程が行われる。工程を示す()の中の数字は、順番を意味する。ただし、(2a)と(2b)は、順番は任意である。以降において同様である。
【0018】
ステップ(1)
ステップ(1)では、レジスト組成物が、基板の上方に適用され、レジスト層が形成される。
基板としては、例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板が挙げられる。
レジスト組成物は、特に限定されないが、高解像性の微細なレジストパターンを形成する観点からは、化学増幅型レジスト組成物であることが好ましく、例えば化学増幅型PHS-アクリレートハイブリッド系EUVレジスト組成物が挙げられる。レジスト組成物が、光酸発生剤を含むことも好ましい一態様である。本発明の好適なレジスト組成物は、ポジ型化学増幅型レジスト組成物である。
一般的な高解像度ポジ型レジスト組成物では、側鎖が保護基で保護されたアルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤との組み合わせを含んでなる。このような組成物から形成されたレジスト層に、紫外線、電子線、極端紫外線等を照射すると、照射された部分(露光部)で光酸発生剤が酸を放出し、その酸によりアルカリ可溶性樹脂に結合した保護基が解離される(以下、脱保護という)。脱保護されたアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液に可溶なため、現像処理によって除去される。厚膜化層がレジスト層の上に形成されている本願のケースにおいては、下のレジスト層の領域が可溶であれば、その領域の混合層とレジスト層が共に除去される。後述する。
本発明のレジスト組成物は、ネガ型レジスト組成物を使用することも可能である。公知のネガ型レジスト組成物やプロセスを用いることができる。例えば、架橋剤によりポリマーを不溶化したり、現像液に有機溶媒を用いたりすることにより、未露光部のレジスト層と混合層が共に除去される。
【0019】
基板の上方に、適当な方法により、レジスト組成物が適用される。ここで、本発明において、「基板の上方」とは、基板の直上に適用する場合および他の層を介して適用する場合を含む。例えば、基板の直上にレジスト下層膜(例えば、SOC(Spin On Carbon)および/または密着増強膜)を形成し、その直上にレジスト組成物を適用してもよい。好適には、基板の直上にレジスト組成物を適用する。また別の好適な態様では、基板の直上にSOC、SOCの直上に密着増強膜を形成し、その直上にレジスト組成物を適用する。
適用方法は特に限定されないが、例えばスピンコートによる塗布が挙げられる。
レジスト組成物が適用された基板は、好ましくは、加熱により、レジスト層が形成される。この加熱はプリベークともいい、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは100~250℃;より好ましくは100~200℃;さらに好ましくは100~160℃である。ここでの温度はホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間;より好ましくは30~120秒間であり;さらに好ましくは45~90秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われ;より好ましくは大気雰囲気にて行われる。
図1(i)は、基板1に、レジスト層2が形成されている模式図である。レジスト層の膜厚は、目的に応じて選択されるが、好ましくは10~100nmであり;より好ましくは10~40nmであり;さらに好ましくは10~30nmである。
【0020】
ステップ(2a)
ステップ(2a)では、所望によりマスクを介して、レジスト層が露光される。
露光に用いられる放射線(光)の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、およびEUV(極端紫外線、波長13.5nm)等を使用することができる。EUV光がより好ましい。これらの波長は±1%の範囲が許容される。
露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB)を行なうこともできる。PEBの温度は70~150℃;好ましくは80~120℃の範囲から選択できる。PEBの加熱時間は0.3~5分間;好ましくは0.5~2分間の範囲から選択できる。
図1(ii)は、典型的なポジ型化学増幅型レジスト組成物を用いたケースのレジスト層2が、マスクを介して露光された状態を示す模式図である。露光部4には、光酸発生剤から酸が放出されており、それによりポリマーが脱保護され、アルカリ可溶性が高くなっている。未露光部3はポリマーのアルカリ可溶性は変化していない。
【0021】
ステップ(2b)
ステップ(2b)では、レジスト層に、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜化溶液が適用され、厚膜化層が形成される。本発明において、厚膜化溶液はレジストパターン間(レジスト層が現像された後)には適用されない。
適用方法は特に限定されないが、例えばスピンコートによる塗布が挙げられる。
厚膜化溶液が適用された基板は、好ましくは加熱またはスピンドライにより(より好ましくは加熱により)、厚膜化層が形成される。加熱は、例えばホットプレートで行う。加熱温度は、好ましくは45~150℃;より好ましくは90~130℃である。加熱時間は、好ましくは30~180秒間;より好ましくは45~90秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われ;より好適には大気雰囲気にて行われる。(2b)における加熱をミキシングベークとも言う。
(2a)と(2b)は、順番は任意である。厚膜化層を透過しながら露光しなくてよいため、(2a)の後に(2b)を行う工程がより好適である。(2b)の後に(2a)を行う工程も可能であり、この場合、厚膜化層を透過する影響を制御した上で露光を行うことが好適である。
図1(iii)は、レジスト層2の上に、厚膜化層5が形成されている状態の模式図である。
【0022】
ステップ(2b)において、好ましくは、厚膜化層とレジスト層の接する近傍領域に、不溶化層が形成されている。理論に拘束されないが、厚膜化層とレジスト層が接している部分では、互いのポリマーが浸透し(インターミキシング)、混合層となっていると考えられる。混合層が、後の現像工程の現像液に可溶か不溶かは、下のレジスト層が現像液に可溶の状態か不溶の状態かに依拠する。下のレジスト層の領域が現像液に不溶であれば、混合層は不溶化層となる。下のレジスト層の領域が現像液に可溶であれば、混合層も可溶となる。
ポジ型レジスト層の例で説明する。前記レジスト層の露光部は現像液に可溶となっているため、同領域の混合層に浸透しているレジスト層(マトリックス成分、好ましくはポリマー)が溶解してしまい、混合層も溶解する。また混合層の下のレジスト層の露光部も溶解する。一方、前記レジスト層の未露光部は現像液に不溶となっている(例えば、脱保護していない)。そのため、同領域の混合層に浸透しているレジスト層が不溶であり、混合層も溶解しない。また混合層の下のレジスト層の未露光部も溶解しない。
図1(iv)は、不溶化層6が形成されている状態の模式図である。溶解する領域(ポジ型では露光部)でも混合層が形成されているが、現像の工程で溶解して除去されるため、簡便のために(iv)には記載していない。
【0023】
ステップ(2b)内において、厚膜化層を形成した後にリンスを行い、厚膜化層の上部(混合層より上の厚膜化層)を除去することも好適である。リンスは、厚膜化溶液の溶媒(B)と組成が同じものを用いることができ、好適には水(例えばDIW)を用いることができる。本発明におけるリンスは、後述する現像とは異なる。すなわち、リンスは、レジスト層の可溶領域を溶解してレジストパターンを形成するためのものではない。
【0024】
[厚膜化溶液]
本発明による厚膜化溶液は、ポリマー(A)および溶媒(B)を含んでなり、レジスト層の現像前に適用されるレジスト層を厚膜化させるために用いられる。本発明による厚膜化溶液は、現像後のレジストパターン間に適用されない。ただし、ここで言う現像後の「現像」は、既に除去されたレジスト層をパターニングした際の現像は含まない。例えば、複数回のレジストパターニングを連続して行う設計の場合、前の工程のレジストの現像後だからと言って、後の工程のレジスト層を厚膜化することに本発明の厚膜化溶液を使用することは可能である。
【0025】
(A)ポリマー
本発明に用いられるポリマー(A)は、レジストパターンとの親和性が良好であれば、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ビニル樹脂等が挙げられる。
好ましくは、ポリマー(A)は、繰り返し単位中にアミノ基を含んでなるポリマーである。ここでアミノ基は、第一級アミノ基(-NH2)、第二級アミノ基(-NHR)、および第3級アミノ基(-NRR’)をいう。ここで、アミノ基には、-N=のように窒素が二重結合を介して隣接元素に結合しているものも包含するものとする。これらのアミノ基は、繰り返し単位の側鎖に含まれていてもよいし、ポリマーの主鎖構造中に含まれていてもよい。
【0026】
ポリマー(A)は、好ましくは、式(a1)で表される繰り返し単位(A1)および式(a2)で表される繰り返し単位(A2)のうちの少なくとも1つを含んでなるポリマーである。ポリマー(A)が式(a1)で表される繰り返し単位(A1)を含んでなる態様がより好ましい。
【0027】
式(a1)で表される繰り返し単位(A1)は以下である。
【化1】
R
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立に、H、C
1-4アルキル、またはカルボキシである。R
11およびR
12は、好ましくはHである。R
13は、好ましくはHまたはメチルであり;より好ましくはHである。
L
11は、単結合またはC
1-4アルキレンであり;好ましくは単結合またはメチレンであり;より好ましくは単結合である。
R
14は、単結合、HまたはC
1-5アルキルであり;好ましくは単結合、H、メチル、n-エチル、n-プロピル、またはn-ブチルであり;より好ましくは単結合、Hまたはメチルである。R
14が単結合である場合、R
13と結合する。
R
15は、H、C
1-5アルキル、C
1-5アシル、またはホルミル(-CHO)であり;好ましくはH、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、アセチルまたはホルミルであり;より好ましくはH、メチル、n-エチルまたはn-プロピルであり;さらに好ましはHまたはn-プロピルである。
L
11のアルキル、R
14のアルキル、およびR
15のアルキルまたはアシル中の-CH
2-の少なくとも1つが、それぞれ独立に、-NH-に置換されていてもよい。好適には、R
15のアルキルまたはアシル中の-CH
2-の1つが、-NH-に置換される。前記-NH-の置換が起こらない態様も、好適である。
R
14の単結合またはアルキルと、R
13のアルキルとが、共に結合して、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよい。好適にはR
14の単結合とR
13のアルキルが、結合し飽和のヘテロ環を形成する。前記ヘテロ環を形成しない態様も、好適である。
R
14のアルキルと、R
15のアルキル、アシルまたはホルミルとが、共に結合して、飽和または不飽和のヘテロ環を形成していてもよい。好適にはR
14のアルキルとR
15のアルキルが結合し、不飽和のヘテロ環を形成する。前記結合に使われるR
14および又はR
15中の-CH
2-は、前記-NH-の置換が行われても良い。前記ヘテロ環を形成しない態様も、好適である。
m11およびm12は、それぞれ独立に、0~1の数であり;好ましくは0または1であり;より好ましくは0である。
【0028】
後述のP1:ポリビニルイミダゾールの繰り返し単位を式(a1)で説明する。m11=m12=0である。R11、R12およびR13はHである。L11は単結合である。R14はメチルである。R15はC3アルキル(n-プロピル)であり、-CH2-の1つが-NH-に置換される。さらに、R14のアルキルとR15のアルキルとが結合し、不飽和のヘテロ環(イミダゾール)を形成している。
後述のP2:ポリアリルアミンの繰り返し単位を式(a1)で説明する。m11=m12=0である。R11、R12およびR13はHである。L11はメチレンである。R14およびR15はHである。
後述のP3:ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマーの繰り返し単位を式(a1)で説明する。(A1)を有するポリマーは、2種類の繰り返し単位を有し、それぞれ式(a1)で表される。ビニルイミダゾール該当箇所は上述P1と同様である。ビニルピロリドン該当箇所について説明する。m11=m12=0である。R11、R12およびR13はHである。L11は単結合である。R14はC2アルキル(エチル)である。R15はC2アシル(CH3-CO-、アセチル)である。R14のアルキルとR15のアシルが結合し、飽和ヘテロ環(2-ピロリドン)を形成している。ビニルイミダゾール該当箇所とビニルピロリドン該当箇所の繰り返し単位が4:6に、ランダム共重合している。
【0029】
下記ポリジアリルアミンの繰り返し単位を式(a1)で説明する。m11=m12=1である。R
11およびR
12はHである。L
11はメチレンであり、R
13はメチルである。R
14は単結合であり、R
13と結合し、飽和のヘテロ環を形成する。R
15はHである。
【化2】
下記繰り返し単位を式(a1)で説明する。m11=m12=0である。R
11、R
12およびR
13はHである。L
11は単結合である。R
14はC
4アルキル(n-ブチル)である。R
15はC
2アシル(CH
3-CO-、アセチル)である。R
14のアルキルとR
15のアシルが結合し、飽和ヘテロ環を形成している。
【化3】
【0030】
(A1)を有するポリマーの例としては、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマーが挙げられる。ポリマー(A)は、2種以上の(A1)を有するコポリマーであってもよく、例えば、ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマーまたはポリ(アリルアミン-co-ジアリルアミン)が挙げられる。好適には(A1)を有するポリマーに含まれる繰り返し単位は1または2種類であり;より好適には1種類である。コポリマーを用いる場合、好適には(A1)を有するポリマーに含まれる繰り返し単位は2種類である。
【0031】
式(a2)で表される繰り返し単位(A2)は以下である。
【化4】
ここで、
R
21は、それぞれ独立に、H、単結合、C
1-4アルキルまたはカルボキシ(-COOH)であり;好ましくはH、単結合またはメチルであり;より好ましくはHまたは単結合であり;さらに好ましくはHである。R
21の単結合は、別の繰り返し単位(A2)への繰り返し単位に使用される。ポリマーの末端で使用されない単結合は、H等が結合しても良い。
R
22、R
23、R
24、R
25は、それぞれ独立に、H、C
1-4アルキルまたはカルボキシであり;好ましくはHまたはメチルであり;より好ましくはHである。
m21は0~3の数であり;好ましくは0または1であり;より好ましくは1である。
【0032】
(A2)を有するポリマーの例としては、ポリエチレンイミンが挙げられる。ポリエチレンイミンは直鎖でも分岐でもよく;直鎖がより好適である。
直鎖のポリエチレンイミンを式(a2)で説明する。m21=1であり、R21、R22、R23、R24およびR25はHである。
分岐のポリエチレンイミンを式(a2)で説明する。m21=1であり、R21はHまたは単結合である。R22、R23、R24およびR25はHである。
ポリマー(A)は、2種以上の(A2)を有するコポリマーであってもよい。好適には(A2)を有するポリマーに含まれる繰り返し単位は1または2種類であり;より好適には1種類である。ポリマー(A)は、(A1)および(A2)を有するコポリマーであってもよい。
【0033】
ポリマー(A)は、上記したようなものから適用するレジスト組成物の種類やポリマーの入手容易性などの観点から適切に選択することができ、好ましくは、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマーおよびポリ(アリルアミン-co-ジアリルアミン)からなる群から選択される。
【0034】
ポリマー(A)は、本発明の範囲を損なわない範囲でアミノ基を含まない繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコールなどを共重合単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0035】
レジスト中のポリマーとの親和性を考慮すると、アミノ基を含まない繰り返し単位は、ポリマー(A)を構成する総繰り返し単位を基準として、50モル%以下であることが好ましく;30モル%以下であることがより好ましく;5モル%以下であることさらに好ましい。アミノ基を含まない繰り返し単位が0モル%(含まれない)ことも、本発明の好適な態様である。
【0036】
ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは5,000~200,000であり;より好ましくは5,000~150,000であり;さらに好ましくは6,000~10,000である。本発明において質量平均分子量(Mw)とは、ゲル透過クロマトグラフィを用いて測定した、ポリスチレン換算平均質量分子量をいう。
【0037】
ポリマー(A)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは1~30質量%であり;より好ましくは1~20質量%であり;さらに好ましくは2~10質量%である。
厚膜化溶液はポリマー(A)を含有するが、ポリマー(A)以外のポリマー(好適にはアミノ基を含まない繰り返し単位を有するポリマー)を含有してもよい。ポリマー(A)以外のポリマーの含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは0~20質量%であり;より好ましくは0~10質量%であり;さらに好ましくは0~5質量%であり;よりさらに好ましくは0質量%(含まれない態様)である。
【0038】
(B)溶媒
溶媒(B)は、ポリマー(A)および必要に応じて用いられるその他の成分を溶解するためのものである。このような溶媒は、レジスト層を溶解させないことが必要である。溶媒(B)は、好ましくは水を含んでなる。水は、好適には脱イオン水(DIW)である。精細なレジストパターンの形成に用いられるため、溶媒(B)は不純物が少ないものが好ましい。好ましい溶媒(B)は、不純物が1ppm以下であり;より好ましくは100ppb以下であり;さらに好ましくは10ppb以下である。微細なプロセスに使用するために、溶質を溶解した液をフィルトレーションし、厚膜化溶液を調製することも本発明の好適な一態様である。
水の含有量は、溶媒(B)の総質量を基準として、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは98~100質量%であり、よりさらに好ましくは100質量%である。本発明の好適な形態として、溶媒(B)は実質的に水のみからなる。ただし、添加物が水以外の溶媒に溶解および/または分散された状態(例えば界面活性剤)で、本発明による厚膜化溶液に含有される態様は、本発明の好適な態様として許容される。
【0039】
水を除く溶媒(B)の具体例としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、またはこれらの混合液が好適である。これらは溶液の保存安定性の点で好ましい。これらの溶媒は、2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
溶媒(B)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは70~99質量%であり;より好ましくは80~99質量%であり;さらに好ましくは90~98質量%である。
厚膜化溶液全体のpHは、好ましくは5~12であり;より好ましくは7~12であり;さらに好ましくは9~12である。
【0041】
(C)酸
本発明による厚膜化溶液は、さらに酸(C)を含むことができる。理論に拘束されないが、酸(C)を含むことで、ポリマー(A)によって塩基性になる傾向がある厚膜化溶液のpHを調節することが可能であると考えられる。レジスト層の表面に存在する部分的に脱保護しているレジスト層中のポリマーの溶解を抑えることができると考えられる。
酸(C)としては、スルホン酸、カルボン酸、硫酸、硝酸、または少なくともこれらのいずれか2つの混合物が挙げられ;好適にはスルホン酸、硫酸または硝酸であり;より好適にはスルホン酸、または硝酸である。スルホン酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸が挙げられ;好適にはp-トルエンスルホン酸である。カルボン酸としては、例えば酢酸、ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、o-フタル酸、コハク酸が挙げられる。
酸(C)の添加量によって、全体のpHを制御することができる。レジスト膜を変性させるほどの強酸は、酸(C)として使用しないことが好ましい。例えば、酸(C)によってレジスト膜が脱保護されないことが好適である。
【0042】
酸(C)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは0~20質量%であり;より好ましくは0~15質量%であり;さらに好ましくは0.1~10質量%であり;よりさらに好ましくは0.1~5質量%である。厚膜化溶液が酸(C)を含まない(0質量%)ことも本発明の好ましい一形態である。
【0043】
(D)界面活性剤
本発明による厚膜化溶液は、さらに界面活性剤(D)を含むことができる。界面活性剤(D)を含むことで、塗布性を向上させることができる。本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤(例えば、フロラード(スリーエム)、メガファック(DIC)、スルフロン(旭硝子)、および有機シロキサン界面活性剤(例えば、KF-53、KP341(信越化学工業))が挙げられる。
これら界面活性剤は、単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0044】
界面活性剤(D)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは0~5質量%であり;より好ましくは0.001~2質量%であり;さらに好ましくは0.01~1質量%である。界面活性剤(D)を含まない(0質量%)ことも本発明の一形態である。
【0045】
(E)添加剤
本発明による厚膜化溶液は、上記した(A)~(D)成分以外の、添加剤(E)をさらに含むことができる。添加物(E)は、好ましくは、可塑剤、架橋剤、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、塩基、または少なくともこれらいずれかの混合物である。好適には、添加剤(E)は塩基を含んでなり;より好適には塩基からなる。塩基はアミノ基を含むポリマー(A)とは異なり、低分子化合物である。低分子化合物の分子量は50~200であり;好適には70~150であり;より好適には100~125である。
このような塩基として、第三級アミン、ジアミンおよびかご型の立体構造を有するアミン化合物が挙げられる。
ジアミン化合物として、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,2-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,3-プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,2-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,3-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,4-ブチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピル-1,4-ブチレンジアミン、およびN,N,N’,N’-テトライソプロピル-1,4-ブチレンジアミンが挙げられる。
かご型の立体構造を有するアミン化合物として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-オン、1,4-ジアザ-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン、1,5-ジアザビシクロ[3.3.2]デカン、および1,5-ジアザビシクロ[3.3.3]ウンデカンが挙げられる。添加物(E)の塩基が1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンであることが、本発明の好適な一態様である。理論に拘束されないが、添加物(E)の塩基を含むことで厚膜化溶液のレジスト層への浸透が促進され、下に存在するレジスト層がより膨張すると考えられる。
【0046】
添加剤(E)の含有量は、厚膜化溶液の総質量を基準として、好ましくは0~10質量%であり;より好ましくは0.001~5質量%であり;さらに好ましくは0.01~4質量%であり;よりさらに好ましくは0.1~3質量%である。本発明による厚膜化溶液が、添加剤(E)を含まない(0質量%)ことも本発明の好ましい形態である。
【0047】
ステップ(3)
ステップ(3)では、レジスト層および厚膜化層が現像される。
現像液の適用方法は、例えば、パドル法、ディップ法、スプレー法が挙げられる。現像液の温度は、好ましくは5~50℃;より好ましくは25~40℃である、現像時間は好ましくは15~120秒;より好ましくは30~60秒である。現像液適用後、現像液は除去される。現像後のレジストパターンは、リンス処理を行うこともできる。リンス処理は好適には水(DIW)で行うことができる。
現像液は、好ましくはアルカリ水溶液または有機溶媒であり;より好ましくは、アルカリ水溶液である。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が挙げられ;より好ましくはTMAH水溶液であり;さらに好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。
現像液には、さらに上記した界面活性剤を加えることもできる。
【0048】
図1(v)は、レジスト層および厚膜化層に現像液が適用され、現像液が除去され、厚膜化されたレジストパターン7が形成された状態を示す。
(厚膜化されたレジストパターンの高さ)-(厚膜化溶液が適用さない以外は同様に形成されたレジストパターンの高さ)を厚膜化量とすると、厚膜化量は、好ましくは2~20nmであり;より好ましくは2~15nmであり;さらに好ましくは3~10nmであり;よりさらに好ましくは3~8nmである。理論に拘束されないが、EUV露光のような高精細のリソグラフィ技術においてレジスト膜の厚さが薄いものであるのが一般的であるところ、本発明により厚膜化させることにより、後の工程で例えばエッチングマスクとして使用する際に、マスクとしての耐久性を確保することが可能になると考えられる。
【0049】
<加工基板、デバイスの製造方法>
本発明による加工基板の製造方法は、以下のステップを含んでなる。
上記に記載の厚膜化されたレジストパターンを形成すること;および
(4)厚膜化されたレジストパターンをマスクとして加工すること。
【0050】
ステップ(4)
ステップ(4)では、厚膜化されたレジストパターンをマスクとして加工が行われる。
厚膜化されたレジストパターンは、好ましくはレジスト下層膜または基板(より好ましくは基板)に加工処理を行うことに使用される。具体的には、レジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板を、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などを用いて、加工することができる。レジストパターンが厚膜化されているので、より厳しい条件においても、マスクとして機能することができるので、ドライエッチング法による加工に好適に用いられる。
厚膜化されたレジストパターンを用いてレジスト下層膜を加工する場合、段階的に加工を行っても良い。例えば、レジストパターンを用いて、密着増強膜およびSOCを加工し、SOCパターンを用いて、基板を加工してもよい。密着増強膜は、例えばSiARC(Si反射防止膜)が使用できる。
【0051】
本発明によるデバイスの製造方法は、上記の方法を含んでなり、好ましくは加工された基板に配線を形成する工程をさらに含んでなる。これらの加工は、公知の方法を適用することができる。その後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものをデバイスという。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体素子である。
【実施例】
【0052】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0053】
[厚膜化溶液1~3の調製]
表1に記載のポリマー(A)、界面活性剤(D)、および塩基(E)を、溶媒(B)に溶解させる。それぞれの配合量は、表1に記載のとおりである。表1中の数値は、厚膜化溶液の総質量を基準としたそれぞれの成分の含有量(質量%)である。
得られた溶液を常温で60分間攪拌する。溶質が完全に溶解していることを目視で確認したのち、この溶液を0.2μmのフッ化樹脂フィルターでろ過して、厚膜化溶液1~3を得る。
【表1】
表中、
・P1:ポリビニルイミダゾール(Mw 30,000)、
【化5】
・P2:ポリアリルアミン(Mw 8,000)、
【化6】
・P3:ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ランダムcoポリマー(m:n=4:6、Mw 25,000)、
【化7】
・S1:以下の構造を有するアセチレン系ジオールポリオキシアルキレンエーテル。
【化8】
【0054】
[実施例1]
シリコン基板に、90℃で30秒間、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行う。HMDS処理された基板に、化学増幅型PHS-アクリレートハイブリッド系レジスト組成物(ポジ型)をスピンコートによって塗布し、110℃60秒間ホットプレートで加熱し、膜厚35nmのレジスト層を形成する。レジスト層を、EUV露光装置(NXE:3300B、ASML)を用いて、18nm(ライン:スペース=1:1)のサイズのマスクを通して、露光量を変化させながら露光する。その後、100℃で60秒間、露光後加熱(PEB)を行う。その後、厚膜化溶液1を、レジスト層の上に、スピンコートによって塗布して、厚膜化層を形成し、130℃で60秒間加熱する。その後、現像液として2.38質量%TMAH水溶液を用いて、30秒間パドル現像を行い、現像液が基板上にパドルされている状態で水を滴下しはじめ、基板を回転させながら、水滴下を続けて、現像液を水に置換する。その後、基板を高速回転させ、実施例1の厚膜化されたレジストパターンを乾燥させる。
【0055】
比較のために、厚膜化溶液の適用が行われないレジストパターンを形成する。具体的には、厚膜化溶液の適用とその後の加熱を行わない以外は、実施例1と同様にして、レジストパターンを形成する。これを比較レジストパターンという。
【0056】
[評価]
実施例1の厚膜化されたレジストパターンと、比較レジストパターンとをそれぞれ、基板の切片を作成して、SEM(SU8230、日立ハイテクフィールディングス)にて、断面形状を観察し、パターンの高さを測定する。(厚膜化されたレジストパターンの高さ)-(比較レジストパターンの高さ)を厚膜化量として算出する。得られた結果を表2に記載する。
実施例2および3は、厚膜化溶液の種類を表2に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、厚膜化量を算出する。得られた結果を表2に記載する。
【表2】
【符号の説明】
【0057】
1.基板
2.レジスト層
3.未露光部
4.露光部
5.厚膜化層
6.不溶化層
7.厚膜化されたレジストパターン
8.厚膜化されたレジストパターンの高さ
【国際調査報告】