(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】一次電子ビームをサンプルに向ける方法及び電子光学カラム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/153 20060101AFI20231220BHJP
H01J 37/05 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534212
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021083352
(87)【国際公開番号】W WO2022135842
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オステルベルク,マンス,ヨハン,バーティル
(72)【発明者】
【氏名】金井 建一
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE08
5C101EE38
5C101EE57
5C101EE63
5C101EE68
5C101EE78
5C101FF02
(57)【要約】
一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向けるための装置及び方法について開示する。一構成では、ビームセパレータは、一次ビーム経路に沿ってサンプルから放射された二次電子ビームを一次ビーム経路からそらす。分散デバイスは、ビームセパレータのアップビームにある。分散デバイスは、ビームセパレータによって一次ビームに誘起される分散を補償する。1つ又は複数の共通電源が、ビームセパレータと分散デバイスの両方を駆動する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向けるように構成された電子光学カラムであって、
前記一次ビーム経路に沿って前記サンプルから放射された二次電子ビームを前記一次ビーム経路からそらすように構成されたビームセパレータと、
前記ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスであって、前記ビームセパレータによって前記一次ビームに誘起される分散を補償するように構成された、分散デバイスと、
前記ビームセパレータと前記分散デバイスの両方を駆動するようにそれぞれ構成された1つ又は複数の共通電源と、
を備える、電子光学カラム。
【請求項2】
前記ビームセパレータは、ビームセパレータコイルによって生成された磁場を使用して、前記二次電子ビームをそらすように構成されており、
前記分散デバイスは、分散デバイスコイルによって生成された磁場を使用して、前記分散を補償するように構成されている、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記1つ又は複数の共通電源は、前記ビームセパレータコイルと前記分散デバイスコイルの両方を駆動するように構成された共通電流源を含む、請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記ビームセパレータコイルによって生成される前記磁場は、前記分散デバイスコイルによって生成される前記磁場とは反対向きである、請求項2又は3に記載のカラム。
【請求項5】
前記ビームセパレータは、前記ビームセパレータ内の一次電子に電場を印加するように構成されたビームセパレータ電極を含み、
前記電場は、前記ビームセパレータコイルによって生成された前記磁場によって前記一次電子に加えられる力とは向きが反対の力を前記一次電子に加えるようなものである、請求項2~4の何れか一項に記載のカラム。
【請求項6】
選択された公称エネルギーを有する前記ビームセパレータ内の前記一次ビームの一部分に前記電場によって加えられる前記力は、前記磁場によって前記一次ビームの同じ部分に加えられる前記力と大きさが実質的に等しい、請求項5に記載のカラム。
【請求項7】
前記分散デバイスは、前記分散デバイス内の一次電子に電場を印加するように構成された分散デバイス電極を含み、
前記電場は、前記分散デバイスコイルによって生成された前記磁場によって前記一次電子に加えられる力とは向きが反対の力を前記一次電子に加えるようなものである、請求項5又は6に記載のカラム。
【請求項8】
選択された公称エネルギーを有する前記分散デバイス内の前記一次ビームの一部分に前記電場によって加えられる前記力は、前記磁場によって前記一次ビームの同じ部分に加えられる前記力と大きさが実質的に等しい、請求項7に記載のカラム。
【請求項9】
前記1つ又は複数の共通電源は、前記ビームセパレータ電極と前記分散デバイス電極の両方を駆動するように構成された共通電圧源を含む、請求項7又は8に記載のカラム。
【請求項10】
前記ビームセパレータと前記分散デバイスの一方又は両方は、前記ビームセパレータ電極又は前記分散デバイス電極によって印加される前記電場に対して垂直又は斜めである電場を一次電子に印加するように構成された調節電極を含む、請求項5~9の何れか一項に記載のカラム。
【請求項11】
前記調節電極を駆動するように構成された少なくとも1つの独立電源を更に含み、
各独立電源は、前記1つ又は複数の共通電源からは独立している、請求項10に記載のカラム。
【請求項12】
前記分散デバイスは、前記ビームセパレータよりも前記一次ビーム経路のより小さな部分に沿って電子に影響を与えるように構成されている、請求項1~11の何れか一項に記載のカラム。
【請求項13】
前記ビームセパレータ及び前記分散デバイスは、前記一次ビーム経路に沿って直接的に連続している、請求項1~12の何れか一項に記載のカラム。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載のカラムを備える、荷電粒子評価ツール。
【請求項15】
一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向ける方法であって、
ビームセパレータを使用して、前記一次ビーム経路に沿って前記サンプルから放射された二次電子ビームを前記一次ビーム経路からそらすことと、
前記ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスを使用して、前記ビームセパレータによって前記一次ビームに誘起される分散を補償することと、を含み、
前記ビームセパレータと前記分散デバイスの両方を駆動するために、1つ又は複数の共通電源が使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年12月22日に出願された米国特許出願第63/129,330号、及び2021年4月21日に出願された米国特許出願第63/177,563号、及び2021年5月4日に出願された欧州特許出願第21171996.8号の優先権を主張するものであり、これらの出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、一般に荷電粒子ビーム装置の分野に関し、より具体的には、シングルビーム又はマルチビーム装置におけるビームセパレータの分散を補償する方法及び電子光学カラムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 集積回路(IC)の製造プロセスでは、未完成の又は完成した回路部品を検査して、それらが設計通りに製造され、欠陥がないことを保証する。光学顕微鏡を利用した検査システムは、通常、数百ナノメートルに至る分解能を有し、この分解能は、光の波長によって制限される。IC部品の物理的サイズが100ナノメートル未満、更には10ナノメートル未満に至るまで縮小し続けているので、光学顕微鏡を利用したものよりも高い分解能を実現する検査システムが必要である。
【0004】
[0004] 走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)などの、1ナノメートル未満に至る分解能を可能にする荷電粒子(例えば、電子)ビーム顕微鏡は、100ナノメートル未満のフィーチャサイズを有するIC部品を検査するための実用的なツールとして機能する。SEMを用いて、単一の一次電子ビームの電子、又は複数の一次電子ビームの電子を、検査中のウェーハのプローブスポットに集束させることができる。一次電子とウェーハとの相互作用により、1つ又は複数の二次電子ビームがもたらされることがある。二次電子ビームには、一次電子とウェーハとの相互作用から生じる、後方散乱電子、二次電子、又はオージェ電子が含まれることがある。1つ又は複数の二次電子ビームの強度は、ウェーハの内部構造及び/又は外部構造の特性に基づいて、変化することがある。
【0005】
[0005] 二次電子ビームの強度は、検出デバイス又は検出器を使用して決定することができる。二次電子ビームは、検出器の表面上の所定の位置に1つ又は複数のビームスポットを形成することができる。検出器は、検出された二次電子ビームの強度を表す電気信号(例えば、電流、電圧、等)を生成することができる。この電気信号を、測定回路(例えば、アナログ-デジタル変換器)を用いて測定して、検出された電子の分布を取得することができる。検出時間ウィンドウ中に収集された電子の分布データを、ウェーハ表面に入射する1つ又は複数の一次電子ビームの対応する走査パスデータと組み合わせて使用して、検査中のウェーハ構造の画像を再構成することができる。再構成された画像を使用して、ウェーハの内部構造及び/又は外部構造の様々な特徴を明らかにすることができ、また、ウェーハ内に存在する可能性がある欠陥を明らかにすることができる。
【0006】
[0006] 単一の一次ビーム及び単一の二次ビームを含む検査システム(シングルビーム装置)では、装置に一次ビームを通過させる穴がある場合、装置の光軸に沿って検出器を配置することができる。しかしながら、穴が存在すると、二次ビームの検出効率が低下することがあり、場合によっては、再構成画像の中心に黒い点が生じることがある。ビームセパレータを使用して、一次ビームから二次ビームを分離し、二次ビームを軸外に配置された検出器に向けることができる。複数の一次ビーム及び複数の二次ビームを含む検査システム(マルチビーム装置)では、ビームセパレータを使用して複数の一次ビームから複数の二次ビームを分離し、複数の二次ビームを軸外に配置された検出器に向けることができる。
【0007】
[0007] ビームセパレータは、少なくとも1つの磁気偏向器を含み、従って1つ又は複数の一次ビーム上及び1つ又は複数の二次ビーム上に分散を生じさせる。分散により、一次ビームの丸いプローブスポットが楕円形に変形することがある。分散により、検出されるビームスポットが変形し、それによって、再構成画像の分解能の低下が引き起こされることがある。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 一態様によれば、一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向けるように構成された電子光学カラムが提供され、この電子光学カラムは、一次ビーム経路に沿ってサンプルから放射された二次電子ビームを一次ビーム経路からそらすように構成されたビームセパレータと、ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスであって、ビームセパレータによって一次ビームに誘起される分散を補償するように構成された分散デバイスと、ビームセパレータと分散デバイスの両方を駆動するようにそれぞれ構成された1つ又は複数の共通電源と、を備える。
【0009】
[0009] 一態様によれば、一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向ける方法が提供され、この方法は、ビームセパレータを使用して、一次ビーム経路に沿ってサンプルから放射された二次電子ビームを一次ビーム経路からそらすことと、ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスを使用して、ビームセパレータによって一次ビームに誘起される分散を補償することと、を含み、ビームセパレータと分散デバイスの両方を駆動するために、1つ又は複数の共通電源が使用される。
【0010】
[0010] 開示する実施形態の追加の目的及び利点が、以降の説明において部分的に記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は、実施形態を実施することによって学ばれることがある。開示する実施形態の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載される要素及び組み合わせによって実現され、達成されることがある。
【0011】
[0011] 前述の一般的な説明及び以降の詳細な説明の両方とも、例示的であり説明のためのみのものであり、特許請求されるような、開示する実施形態を限定するものではないことを、理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]本開示の実施形態と一致した、例示的な電子ビーム検査(EBI)システムを示す概略図である。
【
図2A】[0013]本開示の実施形態と一致した、
図1の例示的な電子ビーム検査システムの一部であり得る例示的な電子ビームツールを示す概略図である。
【
図2B】[0013]本開示の実施形態と一致した、
図1の例示的な電子ビーム検査システムの一部であり得る例示的な電子ビームツールを示す概略図である。
【
図3A】[0014]本開示の実施形態と一致する、例示的な分散デバイスを示す概略図である。
【
図3B】[0014]本開示の実施形態と一致する、例示的な分散デバイスを示す概略図である。
【
図3C】[0014]本開示の実施形態と一致する、例示的な分散デバイスを示す概略図である。
【
図4A】[0015]本開示の実施形態と一致する、例示的なシングルビーム装置を示す概略図である。
【
図4B】[0015]本開示の実施形態と一致する、例示的なシングルビーム装置を示す概略図である。
【
図5】[0016]本開示の実施形態と一致する、例示的なシングルビーム装置を示す概略図である。
【
図6】[0017]本開示の実施形態と一致する、例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
【
図7】[0018]本開示の実施形態と一致する、例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
【
図8】[0019]別個の電圧源によって駆動されるビームセパレータ及び分散デバイスを含む電子光学カラムの一部を示す概略図である。
【
図9】[0020]複数の電圧源のうちの1つに電圧変動が存在する状態の
図8の構成を示す概略図である。
【
図10】[0021]電圧変動を伴う共通電圧源によって駆動されるビームセパレータ及び分散デバイスを含む電子光学カラムの一部を示す概略図である。
【
図11】[0022]それぞれのコイルを使用して磁場を生成するように構成されたビームセパレータ及び分散デバイスを含む電子光学カラムの一部を示す概略図である。
【
図12】[0023]それぞれのコイル及び電極を使用して交差した磁場及び電場を生成するように構成されたビームセパレータ及び分散デバイスを含む電子光学カラムの一部を示す概略図である。
【
図13】[0024]それぞれのコイル及び電極を使用して交差した磁場及び電場を生成するように構成されたビームセパレータ及び分散デバイスであって、独立した電源によって駆動される調節電極及びコイルを更に含むビームセパレータ及び分散デバイス、を含む電子光学カラムの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0025] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例が、添付の図面に示されている。以下の説明は添付の図面を参照し、異なる図面中の同じ番号は、特に断りの無い限り、同じ又は同様の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明文中に記載される実装は、本発明と一致する全ての実装を表すものではない。その代わり、それらは、添付の特許請求の範囲に列挙されるような本発明に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例にすぎない。
【0014】
[0026] 本開示は、シングルビーム又はマルチビーム装置におけるビームセパレータの分散を補償するためのシステム及び方法に関する。ビームセパレータは、1つ又は複数の一次ビーム上及び1つ又は複数の二次ビーム上に分散を生じさせる。本開示の実施形態は、ビームセパレータによって生成された分散を打ち消すように設定されたビーム分散を誘起するように構成された静電偏向器及び磁気偏向器を含む分散デバイスを提供する。静電偏向器及び磁気偏向器の組み合わせを使用して、ビームセパレータによって生成される分散の変化を補償するように、誘起されるビーム分散を変更するときに、(分散デバイスに起因する)偏向角を不変に保つことができる。実施形態によっては、偏向角をゼロにするように制御することができ、分散デバイスに起因する一次ビーム軸の変化はない。実施形態によっては、分散デバイスは、一次ビームにより形成されるプローブスポットに対するビームセパレータ及び分散デバイスにより引き起こされる非点収差の影響のうちの少なくとも1つを打ち消すように四極子場を生成するように構成された、多極子レンズ(例えば、四極子レンズ)を含むことがある。
【0015】
[0027] ここで
図1を参照する。
図1は、本開示の実施形態と一致した、例示的な電子ビーム検査(EBI)システム100を示す。
図1に示すように、EBIシステム100は、メインチャンバ101、装填/ロックチャンバ102、電子ビームツール104、及び機器フロントエンドモジュール(EFEM)106を含む。電子ビームツール104は、メインチャンバ101内部に配置されている。
【0016】
[0028] EFEM106は、第1の装填ポート106a及び第2の装填ポート106bを含む。EFEM106は、追加の装填ポートを含むことがある。第1の装填ポート106a及び第2の装填ポート106bは、検査されるべきウェーハ(例えば、半導体ウェーハ、又は他の材料で作られたウェーハ)又は試料(ウェーハ及び試料は、以降ではまとめて「ウェーハ」と呼ばれる)を収容するウェーハFOUP(front opening unified pod)を受け取る。EFEM106内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)が、ウェーハを装填/ロックチャンバ102に運ぶ。
【0017】
[0029] 装填/ロックチャンバ102は、装填/ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続され、このポンプシステムは、大気圧よりも低い第1の圧力に達するように、装填/ロックチャンバ102内のガス分子を除去する。第1の圧力に達した後、1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)がウェーハを装填/ロックチャンバ102からメインチャンバ101に運ぶことができる。メインチャンバ101は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続され、このポンプシステムは、第1の圧力よりも低い第2の圧力に達するように、メインチャンバ101内のガス分子を除去する。第2の圧力に達した後、ウェーハは電子ビームツール104による検査にかけられる。
【0018】
[0030] ここで
図2Aを参照する。
図2Aは、本開示の実施形態と一致した、電子ビームツール104の例示的な構成要素を示す。
図2Aは、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放射される一次電子ビーム210、ビーム制限アパーチャ216、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、対物レンズ228、サンプルステージ(
図2Aには図示せず)、二次電子ビーム220、及び電子検出器218を含む電子ビームツール104A(本明細書では装置104Aとも呼ばれる)を示す。電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、ビーム制限アパーチャ216、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、装置104Aの光軸202と位置合わせすることができる。
【0019】
[0031] 電子源206は、カソード、抽出器又はアノードを含むことができ、一次電子は、カソードから放出され、抽出され又は加速されて、高エネルギー(例えば、8~20keV)、高い角度強度(例えば、0.1~1mA/sr)及び(仮想の又は現実の)クロスオーバー208を伴う一次電子ビーム210を形成することができる。一次電子ビーム210は、クロスオーバー208から放出されるものとして視覚化することができる。ガンアパーチャ212は、一次電子ビーム210の周辺電子を遮断して、クーロン効果を低減することができる。クーロン効果は、プローブスポット236のサイズの増加を引き起こすことがある。
【0020】
[0032] 集光レンズ214は一次電子ビーム210を集束させることができ、ビーム制限アパーチャ216は一次電子ビーム210のサイズを制限することができる。ビーム制限アパーチャ216の下流の一次電子ビーム210の電流は、集光レンズ214の集束力を調節することにより、又はビーム制限アパーチャ216の半径方向のサイズを変更することにより、変化させることができる。対物レンズ228は、一次電子ビーム210を検査のためにサンプル238上に集束させることができる。一次電子ビーム210は、サンプル238の表面にプローブスポット236を形成することができる。
【0021】
[0033] プローブスポット236における一次電子ビーム210の入射に応答して、二次電子ビーム220がサンプル238から放出されることがある。二次電子ビーム220は、二次電子(エネルギー≦50eV)及び後方散乱電子(50eVと一次電子ビーム210のランディングエネルギーとの間のエネルギー)を含むエネルギーの分布を伴う電子を含むことがある。
【0022】
[0034] ビームセパレータ222は、静電双極子場E1及び磁気双極子場B1を生成する静電偏向器を含むウィーンフィルタ型のビームセパレータとすることができる。ウィーンフィルタ型のビームセパレータの場合、一次電子ビーム210の電子に静電双極子場E1によって作用する力は、磁気双極子場B1によって電子に作用する力と、大きさが等しく、方向が反対になる。従って、一次電子ビーム210は、偏向角ゼロでビームセパレータ222をまっすぐに通過することができる。しかしながら、ビームセパレータ222によって生成される一次電子ビーム210の全分散は、ゼロではない。ビームセパレータ222の分散面224について、
図2Aは、公称エネルギーV
0及びエネルギーの広がりΔVを有する一次電子ビーム210の、エネルギーV
0-ΔV/2に対応するビーム部分230、エネルギーV
0に対応するビーム部分232、及びエネルギーV
0+ΔV/2に対応するビーム部分234への分散を示す。二次電子ビーム220の電子にビームセパレータ222によって作用する力の全体は、ゼロではない。従って、ビームセパレータ222は、一次電子ビーム210から二次電子ビーム220を分離し、二次電子ビーム220を電子検出器218に向けることができる。電子検出器218は、二次電子ビーム220を検出し、対応する信号を生成することができる。
【0023】
[0035] 偏向走査ユニット226は、一次電子ビーム210を偏向させて、サンプル238の表面領域に渡って、プローブスポット236を走査することができる。電子検出器218は、対応する二次電子ビーム220を検出し、サンプル238の表面領域の画像を再構成するのに使用される対応する信号を生成することができる。
【0024】
[0036] 対物レンズ228の対物面204は、集光レンズ214の集束力の変化に伴ってシフトすることがある。一次電子ビーム210については、ビームセパレータ222の分散面224と対物レンズ228の対物面204が一致しない場合、ビーム部分230、232、及び234は分離したままであり、プローブスポット236は分散方向に延びる。これにより、サンプル238の再構成画像の分解能の低下が引き起こされることがある。
【0025】
[0037] ここで
図2Bを参照する。
図2Bは、電子ビームツール104B(本明細書では装置104Bとも呼ばれる)を示しており、このツール104Bは、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放出される一次電子ビーム210、放射源変換ユニット252、一次電子ビーム210の複数のビームレット254、256、及び258、一次投影光学系260、サンプルステージ(
図2Bには図示せず)、複数の二次電子ビーム276、278、及び280、二次光学系282、並びに電子検出デバイス284を含む。一次投影光学系260は、対物レンズ228を含むことができる。電子検出デバイス284は、検出素子286、288、及び290を含むことができる。ビームセパレータ222及び偏向走査ユニット226は、一次投影光学系260の内部に配置することができる。
【0026】
[0038] 電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、放射源変換ユニット252、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、装置104Bの一次光軸250と位置合わせすることができる。二次光学系282及び電子検出デバイス284は、装置104Bの二次光軸292と位置合わせすることができる。
【0027】
[0039] 電子源206は、カソード、抽出器、又はアノードを含むことができ、一次電子はカソードから放出され、抽出されるか又は加速されて、(仮想の又は現実の)クロスオーバー208を伴う一次電子ビーム210を形成することができる。一次電子ビーム210は、クロスオーバー208から放出されるものとして視覚化することができる。ガンアパーチャ212は、一次電子ビーム210の周辺電子を遮断して、クーロン効果を低減することができる。ガンアパーチャ212は、クーロンアパーチャと呼ばれることがあり、そのアパーチャを規定するプレートは、クーロンアパーチャプレートと呼ばれることがある。クーロン効果は、プローブスポット270、272、及び274のサイズの増加を引き起こすことがある。
【0028】
[0040] 放射源変換ユニット252は、画像形成素子のアレイ(
図2Bには図示せず)及びビーム制限アパーチャのアレイ(
図2Bには図示せず)を含むことができる。画像形成素子のアレイは、超小型偏向器及び超小型レンズのアレイを含むことができる。画像形成素子のアレイは、一次電子ビーム210の複数のビームレット254、256、及び258を伴う、クロスオーバー208の(仮想の又は現実の)複数の平行な像を形成することができる。ビーム制限アパーチャのアレイは、複数のビームレット254、256、及び258を制限することができる。
【0029】
[0041] 集光レンズ214は、一次電子ビーム210を集束させることができる。放射源変換ユニット252の下流のビームレット254、256、及び258の電流は、集光レンズ214の集束力を調節することにより、又は、ビーム制限アパーチャのアレイ内部の対応するビーム制限アパーチャの半径サイズを変更することにより、変化させることができる。対物レンズ228は、検査用のサンプル238上にビームレット254、256、及び258を集束させることができ、サンプル238の表面上に複数のプローブスポット270、272、及び274を形成することができる。
【0030】
[0042] ビームセパレータ222は、静電双極子場E1及び磁気双極子場B1(これらは両方とも
図2Bには図示せず)を生成する静電偏向器を含むウィーンフィルタ型のビームセパレータとすることができる。それらが適用される場合、ビームレット254、256、及び258の電子に静電双極子場E1によって作用する力は、磁気双極子場B1によって電子に作用する力と、大きさが等しく、方向が反対になる。従って、ビームレット254、256、及び258は、偏向角ゼロでビームセパレータ222をまっすぐに通過することができる。しかしながら、ビームセパレータ222によって生成されるビームレット254、256、及び258の全分散は、ゼロではない。ビームセパレータ222の分散平面224について、
図2Bは、公称エネルギーV
0及びエネルギーの広がりΔVを有するビームレット254の、エネルギーV
0に対応するビームレット部分262、エネルギーV
0+ΔV/2に対応するビームレット部分264、及びエネルギーV
0-ΔV/2に対応するビームレット部分266への分散を示す。二次電子ビーム276、278、及び280の電子にビームセパレータ222によって作用する力の全体は、ゼロではない。従って、ビームセパレータ222は、ビームレット252、254、及び256から二次電子ビーム276、278、及び280を分離し、二次電子ビーム276、278、及び280を二次光学系282に向けることができる。
【0031】
[0043] 偏向走査ユニット226は、ビームレット254、256、及び258を偏向させて、サンプル238の表面領域に渡って、プローブスポット270、272、274を走査することができる。プローブスポット270、272、及び274におけるビームレット254、256、及び258の入射に応答して、二次電子ビーム276、278、及び280がサンプル238から放出されることがある。二次電子ビーム276、278、及び280は、二次電子(エネルギー≦50eV)及び後方散乱電子(50eVとビームレット254、256、及び258のランディングエネルギーとの間のエネルギー)を含むエネルギーの分布を伴う電子を含むことがある。二次光学系282は、二次電子ビーム276、278、及び280を、電子検出デバイス284の検出素子286、288、及び290に集束させることができる。検出素子286、288、及び290は、対応する二次電子ビーム276、278、及び280を検出し、サンプル238の表面領域の画像を再構成するのに使用される対応する信号を生成することができる。
【0032】
[0044] ここで
図3Aを参照する。
図3Aは、本開示の実施形態と一致する、例示的な分散デバイスを示す概略図である。
図3Aは、静電偏向器及び磁気偏向器を含む分散デバイス310を示す。静電偏向器は静電双極子場E
2を生成することができ、磁気偏向器は磁気双極子場B
2を生成することができ、E
2及びB
2は、実質的に互いに垂直に且つ光軸330に垂直に重ね合わされる。光軸330に沿って伝搬する電子ビーム210の電子に、静電双極子場E
2は力F
eを作用させ、磁気双極子場B
2はF
mを作用させる。力F
e及びF
mは、実質的に反対の方向に作用する。公称エネルギーV
0及び公称速度v
0を有する電子に対して静電双極子場E
2及び磁気双極子場B
2によって作用する力の全体は、以下の式を用いて計算することができる。
F(v
0)=F
e+F
m=e(E
2-v
0×B
2) (1)
【0033】
[0045] エネルギーV0+dV及び速度v0+dvを有する電子の場合、静電双極子場E2及び磁気双極子場B2によって作用する力の全体は、以下の式を用いて計算することができる。
F(v0+dv)=Fe+Fm=F(v0)-(e×dv×B2) (2)
【0034】
[0046] ここで
図3Bを参照する。
図3Bは、本開示の実施形態と一致する分散デバイス311を示す。分散デバイス310と同様に、分散デバイス311は、対応する静電双極子場E
2及び磁気双極子場B
2を生成することができる静電偏向器及び磁気偏向器を含む。静電偏向器及び磁気偏向器は、E
2とB
2が、実質的に互いに垂直に且つ光軸331に垂直に重ね合わされるように、配置することができる。分散デバイス311では、静電双極子場E
2及び磁気双極子B
2は、E
2及びB
2を変化させたときに力の合計(F
e+F
m)が実質的にゼロになるように制御することができる。従って、
図3Bに示すように、公称偏向角はゼロである。分散面341において分散デバイス311によって誘起される偏向分散は、偏向角をゼロに維持しながらE
2及びB
2を変化させることによって、制御することができる。
【0035】
[0047] ここで
図3Cを参照する。
図3Cは、本開示の実施形態と一致する分散デバイス312を示す。分散デバイス310及び311と同様に、分散デバイス312は、対応する静電双極子場E
2及び磁気双極子場B
2を生成することができる静電偏向器及び磁気偏向器を含む。静電偏向器及び磁気偏向器は、E
2とB
2が、実質的に互いに垂直に且つ光軸332に垂直に重ね合わされるように、配置することができる。分散デバイス312では、静電双極子場E
2及び磁気双極子B
2は、E
2及びB
2を変化させたときに力の合計(F
e+F
m)が非ゼロの定数値になるように制御することができる。従って、
図3Cに示すように、公称偏向角αは非ゼロである。分散面342において分散デバイス312によって誘起される偏向分散は、偏向角をαに維持しながらE
2及びB
2を変化させることによって、制御することができる。
【0036】
[0048] 以下の考察では、偏向分散及び分散という用語は、区別なく使用されて、偏向角のエネルギー依存性によって引き起こされる電子ビームの広がりを指すことがある。分散デバイス311又は312によって誘起される分散は、固定の偏向角(
図3B及び
図3Cの例では、ゼロ又はαに等しい)を維持しながら制御されることがある。分散デバイス311又は312が、ビームセパレータ222のアップビームに配置される場合、分散デバイス311又は312の分散を使用して、ビームセパレータ222において誘起される分散を補償することができる。分散デバイス311又は312の分散は、例えば、ビームセパレータ222において誘起される分散と等しく及び反対向きであるように構成することができる。ビームセパレータ222と、ビームセパレータ222のアップビームにある対応する分散デバイス311又は312と、を有する実施形態の例について、
図4A、
図4B、
図5~
図13を参照して以下に説明する。
【0037】
[0049] 分散補償は、分散デバイス311、312、又はビームセパレータ222に電力を供給するために使用される電圧又は電流の望ましくない変動に対して、非常に敏感であることが判明した。
図8は、分散デバイス311がビームセパレータ222のアップビームに設けられている例示的な配置を示す。この例では、ビームセパレータ222及び分散デバイス311は、ウィーンフィルタである。ウィーンフィルタは、交差した電場及び磁場を印加する電子光学コンポーネントである。電場及び磁場は、それぞれの電圧源及び電流源によってエネルギー供給されることがあるが、例示を分かりやすくするために、電圧源のみが図示されている。交差した電場及び磁場は、フィルタを通過する電子に対して調節可能な通過速度(又は通過エネルギー)を有する偏向器を提供するように構成されることがある。電子が選択された公称速度を有する場合、電気的な力と磁気的な力は打ち消し合い、電子はフィルタによって偏向されない。公称速度を下回る又は上回る速度を有する電子は、偏向される。単一のウィーンフィルタを使用して、一次電子ビームを二次電子ビームから分離することができる、というのも、一次電子と二次電子は、異なる方向でウィーンフィルタを通過するからである。従って、一次電子及び二次電子は、ウィーンフィルタによって印加される磁場により、異なる態様の影響を受ける。例えば、ウィーンフィルタが、一次電子を光軸に沿ってサンプルに向けるように構成されている場合、このウィーンフィルタは、二次電子を光軸から離れる方向に偏向する。単一のウィーンフィルタは、ビーム中の電子の速度の固有の広がりに起因して、電子ビームの分散を引き起こす。この分散は、サンプル238における、電子ビームの角度広がりにつながる。この角度広がりにより、電子ビームの焦点がぼやけ、それによって実効分解能が低下する。分散デバイス311として第2のウィーンフィルタを設けると、分散効果を補償することが可能になる。
図8に示す例では、第2のウィーンフィルタは、ビームセパレータ222のウィーンフィルタによって印加される電場及び磁場とは反対方向を向いた交差した電場及び磁場を印加するように構成されている。そのようなウィーンフィルタの対(ビームセパレータ222及び分散デバイス311によって形成される)が組み合わさった動作が、
図8に示されている。一次ビームは、分散デバイス311とビームセパレータ222の両方を通過し、サンプル238に当たる。一次ビームの部分1040は、両方のウィーンフィルタの通過エネルギーと一致する公称ビームエネルギーを有する。従って、一次ビームの部分1040は、偏向されずにウィーンフィルタを通過する。一次ビームの部分1041は、異なるビームエネルギーを有する。一次ビームの部分1041は、一方向に(分散デバイス311において右方向に)まず偏向され、その後、逆方向に(ビームセパレータ222において左方向に)戻る。その後、部分1040と1041は両方とも、サンプル238上の同じ位置に集束される。各ウィーンフィルタ内の電極に印加される公称電圧V
A及びV
B(及び/又は、各ウィーンフィルタ内のコイルに印加される公称電流)は、分散の効果がサンプル238において相殺されて鮮明な集束スポットがもたらされるように選択される。実際には、ウィーンフィルタに電力を供給するために使用される電圧及び/又は電流には、大きな変動が生じる。電圧V
Aにおける代表的な変動dVが、
図9に示されている。変動dVにより、一次ビームの部分1040が、(
図8の状況とは対照的に)ビームセパレータ222において偏向される。この偏向により、焦点が、意図された焦点位置からずれる。一次ビームの部分1041も、このずれた焦点位置に集束されるように、偏向される。従って、変動dVは、サンプル238での焦点を乱す。変動は、電圧V
B及びウィーンフィルタの片方又は両方に印加される電流中にも発生することがある。これらの変動は、サンプル238での集束を更に乱すことがある。
【0038】
[0050] 本開示の実施形態によっては、
図8及び
図9を参照して上述した焦点擾乱は、ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との両方をそれぞれが駆動する1つ又は複数の共通電源1002、1004を設けることにより、低減されるか又は除去される。共通電源は、共通電流源1002と共通電圧源1004の一方又は両方を含むことがある。例示的な例が、
図10に示されている(共通電圧源1004のみと共に示されている)。より詳細な構成例については、
図11~
図13を参照して説明する。ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312によって印加される電場及び/又は磁場は互いに反対向きであるので、共通電源における変動により引き起こされるこれらの場での変動は、少なくとも部分的に、互いに補償し合う。調節可能な電子機器(例えば、電圧分割器及び/又は電流分割器)を使用して、電圧及び/又は電流のレベルを最適化して、サンプル238における望ましくないビーム変位を取り除くことができる。
図10の例示的な例では、共通電圧源1004は、公称電圧Vを提供するように構成されており、変動dVの影響を受ける。
図9に示す構成とは対照的に、変動dVは、ビームセパレータ222と分散デバイス311の両方に印加される。従って、変動dVにより、分散デバイス311において、一次ビームの部分1040及び1041の追加の偏向が引き起こされる。この追加の偏向により、ビームセパレータ222において作用する変動dVによって引き起こされるビームセパレータ222における部分1040及び1041のそれぞれの偏向が補償され、それによって、変動dVによって引き起こされるサンプル238での焦点位置の変位が低減されるか又は除去される。
図9に示すタイプの典型的な構成では、補償がなければ、電源の変動は、SEM画像分解能に匹敵するか、又はそれよりも大きな(例えば、10nm程度の)望ましくないビーム変位を引き起こし得ることが予想される。
図10の補償スキームを使用すると、望ましくないビーム変位を、通常、SEM画像分解能をはるかに下回るまで(例えば、0.5nm以下まで)低減することができる。
【0039】
[0051]
図4A、
図4B、及び
図5~7は、ビームセパレータ222及び対応する分散デバイス311、312が、共通電源によって駆動され得る、例示的な状況を説明している。各例では、共通電流源1002と共通電圧源1004の両方が図示されている。共通電流源1002のみ又は共通電圧源1004のみを使用して、各例を実装することも可能である。共通電源と、ビームセパレータ222及び対応する分散デバイス311、312との間の接続は、分かりやすくする目的で、
図4A、
図4B、及び
図5~
図7では、示されていない。これらの接続についての例示的な構成が、
図11~
図13に示されている。
【0040】
[0052] ここで
図4Aを参照する。
図4Aは、本開示の実施形態と一致する、例示的なシングルビーム装置400を示す。シングルビーム装置400は、
図3Bの分散デバイス311を更に備える
図2Aの電子ビームツール104Aであり得る。
図4Aは、対物レンズ228の対物面204が対物レンズ228の上方にある場合の分散デバイス311の動作を示す。
図4Bは、対物レンズ228の対物面204が対物レンズ228の下方にある場合の分散デバイス311の動作を示す。以下で説明するように、開示する実施形態は、対物レンズ228の動作モードを制限することなく、ビーム分散を補償することができる。
【0041】
[0053] シングルビーム装置400は、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放出される一次電子ビーム210、ビーム制限アパーチャ216、分散デバイス311、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、対物レンズ228、二次電子ビーム220、及び電子検出器218を含むことができる。電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、ビーム制限アパーチャ216、分散デバイス311、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、シングルビーム装置400の光軸402と位置合わせすることができる。
【0042】
[0054]
図3Bを参照して上述したように、分散デバイス311に関連した公称分散角はゼロであり、一次電子ビーム210は分散デバイス311をまっすぐに通過することができる。分散デバイス311は、E
2及びB
2の値に基づいてビーム分散を誘起することができる。一次電子ビーム210は、ウィーンフィルタ型のビームセパレータ222もまっすぐに通過することができる。ビームセパレータ222は、E
1及びB
1の値に基づいてビーム分散を誘起することもできる。ビームセパレータ222によって誘起されるビーム分散は、主分散(MDS)と呼ばれることがあり、分散デバイス311によって誘起されるビーム分散は補償分散(CDS)と呼ばれることがある。分散デバイス311は、MDSと方向が逆のCDSを生成するように構成され制御されることがある。例えば、
図4Aを参照すると、エネルギー>公称エネルギーV
0を有する電子は、ビームセパレータ222によって-x方向に向けて、且つ分散デバイス311によって+x方向に向けて、偏向されることがある(ビーム経路430に対応する)。エネルギー<公称エネルギーV
0を有する電子は、ビームセパレータ222によって+x方向に向けて、且つ分散デバイス311によって-x方向に向けて、偏向されることがある(ビーム経路434に対応する)。分散デバイス311によって生成されるCDSの大きさを制御して、公称エネルギーV
0とは異なるエネルギーを有する電子(例えば、ビーム経路430及び434に対応する電子)を生成して、対物面204上に仮想的に集束させることができる。従って、対物レンズ228は一次電子ビーム210をサンプル238に集束させてプローブスポット236を形成する。
【0043】
[0055] ここで
図5を参照する。
図5は、本開示の実施形態と一致する、例示的なシングルビーム装置600を示す。シングルビーム装置600は、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放出される一次電子ビーム210、ビーム制限アパーチャ216、分散デバイス312、ビームセパレータ510、偏向走査ユニット226、対物レンズ228、二次電子ビーム220、及び電子検出器218を含むことができる。ビームセパレータ510は磁気偏向器を含み、従って、関連する偏向角642は非ゼロの値を有する。電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、ビーム制限アパーチャ216、分散デバイス312、ビームセパレータ510、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、シングルビーム装置600の光軸602を基準にして位置合わせすることができる。
【0044】
[0056]
図3Cを参照して上述したように、分散デバイス312に関連した公称分散角は非ゼロであり、一次電子ビーム210は分散デバイス312を、公称偏向角641で関連するビーム分散CDSを有して通過することができる。シングルビーム装置600の場合、公称エネルギーV
0を有する光軸602に沿って移動する一次電子ビーム210の電子は、(分散デバイス312の)偏向面342において角度641だけ偏向されることがあり、入射角641で(ビームセパレータ510の)偏向面520に入射することがある。エネルギー>V
0を有する光軸602に沿って移動する電子は、入射角<角度641でビームセパレータ510に入射することができる。エネルギー<V
0を有する光軸602に沿って移動する電子は、入射角>角度641でビームセパレータ510に入射することができる。
【0045】
[0057] ビームセパレータ510は、公称偏向角642及び関連するビーム分散MDSで一次電子ビーム210を偏向させることができる。公称エネルギーV0を有する電子は、角度642だけ偏光面520で偏向されることがある。エネルギー>V0を有する電子は、角度642より小さな角度で偏向されることがある。エネルギー<V0を有する電子は、角度642より大きな角度で偏向されることがある。
【0046】
[0058] 分散デバイス312によって生成されるCDSは、異なるエネルギーを有する電子についてCDSによって生成される入射角の変動分が、MDSによって生成される偏向角の変動分を補償できるように、制御することができる。従って、異なるエネルギーを有する電子を制御して、対物面204上に仮想的に集束させることができる。更に、対物レンズ228は、(ビーム経路630、632、及び634に対応する)異なるエネルギーを有する電子をサンプル238に集束させて、プローブスポット236を形成することができる。分散デバイス312は、静電偏向器及び磁気偏向器を含み、従って偏向角641を一定に保ちながらCDSを変化させることができる。従って、CDSを変更して対物面204の位置変動と適合させることができ、対物レンズ228の動作モードには制限はない。更に、分散デバイス312を制御して角度641と642を等しく維持することができる。よって、光軸602を、ビームセパレータ510の光軸に平行に維持することができる。これにより、シングルビーム装置600の様々な構成要素の配置及びアライメントを単純化することができる。
【0047】
[0059] ここで
図6を参照する。
図6は、本開示の実施形態と一致する、例示的なマルチビーム装置700を示す。マルチビーム装置700は、
図3Bの分散デバイス311を更に備える
図2Bの電子ビームツール104Aであり得る。
【0048】
[0060] マルチビーム装置700は、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放出される一次電子ビーム210、放射源変換ユニット252、一次電子ビーム210の複数のビームレット254、256、及び258、一次投影光学系260、複数の二次電子ビーム730、732、及び734、二次光学系282、並びに電子検出デバイス284を含むことができる。一次投影光学系260は、対物レンズ228を含むことができる。電子検出デバイス284は、検出素子286、288、及び290を含むことができる。分散デバイス311、ビームセパレータ222、及び偏向走査ユニット226は、一次投影光学系260の内部に配置することができる。
【0049】
[0061] 電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、放射源変換ユニット252、分散デバイス311、ビームセパレータ222、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、装置700の一次光軸702と位置合わせすることができる。二次光学系282及び電子検出デバイス284は、装置700の二次光軸292と位置合わせすることができる。
【0050】
[0062]
図3Bを参照して上述したように、分散デバイス311に関連した公称分散角はゼロであり、ビームレット254、256、及び258は分散デバイス311をまっすぐに通過することができる。分散デバイス311は、ビームレット254、256、及び258に対してCDSを誘起することができる。分散デバイス311は、一次投影光学系260の上方に配置することができる。
【0051】
[0063] ビームレット254、256、及び258は、ウィーンフィルタ型のビームセパレータ222もまっすぐに通過することができる。ビームセパレータ222は、ビームレットに対してMDSを誘起することができる。
図4A及び
図4Bを参照して上述したように、分散デバイス311は、MDSと方向が逆のCDSを生成するように構成され制御されることがある。分散デバイス311によって生成されるCDSの大きさを制御して、各ビームレットの分散電子(例えば、ビーム経路720及び724に対応する電子)を対物レンズ228の対物面上に仮想的に集束させることができる。従って、対物レンズ228は、ビームレット254、256、及び258の分散電子をサンプル238上に集束させて、対応するプローブスポット270、272、及び274を形成する。
【0052】
[0064] ここで
図7を参照する。
図7は、本開示の実施形態と一致する、例示的なマルチビーム装置900を示す。マルチビーム装置900は、電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、電子源206から放出される一次電子ビーム210、放射源変換ユニット252、一次電子ビーム210の複数のビームレット254、256、及び258、一次投影光学系260、複数の二次電子ビーム930、932、及び934、二次光学系282、並びに電子検出デバイス284を含むことができる。一次投影光学系260は、対物レンズ228を含むことができる。電子検出デバイス284は、検出素子286、288、及び290を含むことができる。分散デバイス312、ビームセパレータ510、及び偏向走査ユニット226は、一次投影光学系260の内部に配置することができる。
【0053】
[0065] 電子源206、ガンアパーチャ212、集光レンズ214、放射源変換ユニット252、分散デバイス312、ビームセパレータ510、偏向走査ユニット226、及び対物レンズ228は、装置900の一次光軸902と位置合わせすることができる。二次光学系282及び電子検出デバイス284は、装置900の二次光軸292と位置合わせすることができる。
【0054】
[0066]
図3Cを参照して上述したように、分散デバイス312に関連した公称分散角は非ゼロであり、一次電子ビーム210は分散デバイス312を、公称偏向角908で関連するビーム分散CDSを有して通過することができる。公称エネルギーV
0を有する光軸902に沿って移動するビームレット254、256、及び258の電子は、入射角908でビームセパレータ510に入射することができる。エネルギー>V
0を有する光軸902に沿って移動する電子は、入射角<角度908でビームセパレータ510に入射することができる。エネルギー<V
0を有する光軸902に沿って移動する電子は、入射角>角度908でビームセパレータ510に入射することができる。分散デバイス312は、一次投影光学系260の上方に配置することができる。
【0055】
[0067] ビームセパレータ510は、角度910に等しい公称偏向角及び関連するビーム分散MDSでビームレット254、256、及び258を偏向させることができる。公称エネルギーV0を有する電子は、角度910に等しい角度で偏向されることがある。エネルギー>V0を有する電子は、角度910より小さな角度で偏向されることがある。エネルギー<V0を有する電子は、角度910より大きな角度で偏向されることがある。
【0056】
[0068] 分散デバイス312によって生成されるCDSは、異なるエネルギーを有する電子についてCDSによって生成される入射角の変動分が、MDSによって生成される偏向角の変動分を補償できるように、制御することができる。従って、異なるエネルギーを有する電子を制御して、対物レンズ228の対物面上に仮想的に集束させることができる。更に、対物レンズ228は、(ビーム経路920、922、及び924に対応する)異なるエネルギーを有する電子をサンプル238に集束させて、対応するプローブスポット270、272、及び274を形成することができる。分散デバイス312は、静電偏向器及び磁気偏向器を含み、従って偏向角908を一定に保ちながらCDSを変化させることができる。従って、CDSを変更して対物面204の位置変動と適合させることができ、対物レンズ228の動作モードには制限はない。更に、分散デバイス312を制御して角度908と910が等しくなるように維持することができる。よって、光軸902を、ビームセパレータ510の光軸906に平行に維持することができる。これにより、シングルビーム装置900の様々な構成要素の配置及びアライメントを単純化することができる。
【0057】
[0069]
図11~13は、ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312を駆動するための1つ又は複数の共通電源1002、1004を有する電子光学カラムの更なる例の一部分を示す。光学カラムは、一次電子ビームを一次ビーム経路1045に沿ってサンプル238に向けるように構成される。光学カラムは、ビームセパレータ222を含む。ビームセパレータは、
図2~
図10を参照して上述した形態の何れかの形態を取ることができる。ビームセパレータ222は、一次ビーム経路1045に沿ってサンプル238から放出された二次電子のビーム1060を、一次ビーム経路1045からそらす。
図11の例では、一次ビーム経路1045からの方向転換は、ポイント1070において発生する。分散デバイス311、312は、ビームセパレータ222のアップビームに設けられる。分散デバイス311、312は、
図3~
図10を参照して上述した形態の何れかの形態を取ることができる。分散デバイス311、312は、ビームセパレータ222によって一次ビームに誘起される分散を補償する。ビームセパレータ222と分散デバイス311、312の両方を駆動するために、1つ又は複数の共通電源1002、1004が設けられる。
【0058】
[0070] 構成によっては、
図11に例示されるように、ビームセパレータ222は、ビームセパレータコイル1111によって生成された磁場を使用して、二次電子ビーム1060の方向をそらす。磁場は、カラムの光軸に対して垂直であり得る。図示した例では、磁場はページに対して垂直である。分散デバイス312は、分散デバイスコイル1110によって生成される磁場を使用して、ビームセパレータ222によって(例えば、ビームセパレータコイル1111によって)誘起される分散を少なくとも部分的に補償する。このタイプの構成では、1つ又は複数の共通電源は、ビームセパレータコイル1111と分散デバイスコイル1110の両方を駆動する共通電流源1002を含むことがある。電流がコイルを通って流れると、コイルは対応する磁場を生成する。ビームセパレータコイル1111及び分散デバイスコイル1110は、それぞれの磁心上に形成されることがある。ビームセパレータコイル1111によって生成される磁場は、分散デバイスコイル1110によって生成される磁場と反対向きである。一実施形態では、ビームセパレータコイル1111及び分散デバイスコイル1110は、接続1005によって概略的に示されるように、互いに直列に及び共通電流源1002に接続されている。ビームセパレータコイル1111及び分散デバイスコイル1110での電流の相対的な大きさを調節するために、電流分割器構成が設けられることがある。その代わりに又はこれに加えて、ビームセパレータコイル1111及び分散デバイスコイル1110での磁気励起の相対的な大きさを調節するために、一方又は両方のコイルの巻き数が変更されることがある。
【0059】
[0071] 構成によっては、
図12~
図13に例示されるように、ビームセパレータ222は、ビームセパレータ電極1121を含む。ビームセパレータ電極1121は、ビームセパレータ222内の一次電子に電場を作用させる。この電場は、ビームセパレータコイル1111によって生成された磁場によって一次電子に加えられる力とは反対向きの力を、一次電子に加えるようなものである。構成によっては、例えば
図10を参照して上記で考察し、
図13に例示するように、選択された公称エネルギーを有するビームセパレータ222内の一次ビームの一部分に電場によって加えられる力は、磁場によって一次ビームの同じ部分に加えられる力と大きさが実質的に等しい。このタイプの構成では、ビームセパレータ222は、ウィーンフィルタと呼ばれることがある。公称エネルギーを有する一次ビームの部分は、偏向されずにビームセパレータ222を通過する。他の構成では、
図12に例示されるように、電場によって加えられる力は、ビームの全ての部分において、磁場によって加えられる力とは大きさが異なっている。磁場によって加えられる力は、例えば、分散を最小にするために、電場によって加えられる力の2倍の強さであり得る。この条件は、距離lに渡り作用する交差した電場及び磁場における、質量m、電荷q、及び速度vを有する電子の偏向角が、θ=ql(vB-E)/(mv
2)によって与えられ、vB=2Eであるとき、
【数1】
であることから生じる。この状況では、磁場単独によって付与される偏向角θ
Bは、電場単独によって反対向きに付与される偏向角θ
Eの2倍の大きさであり、その結果、θ
B=-2θ
Eである。サンプル238から放出された二次電子ビーム1060は、一次ビームと反対向きに進み、ビームセパレータ222内で、磁場と電場の両方によって同じ方向に偏向される。これら2つの力の蓄積効果により、-3θ
E以上のより大きな偏向がもたらされる(というのも、二次電子は、一次電子よりもエネルギーが小さいことがあるからである)。
図3Cを参照して上記で考察したように、電場と磁場が相殺されないように構成すると、固定のゼロではない偏向を、一次ビームに施すことが可能になる。
【0060】
[0072] 実施形態によっては、分散デバイスは、分散デバイス電極1120を備える。分散デバイス電極1120は、分散デバイス311、312内の一次電子に電場を作用させる。この電場は、分散デバイスコイル1110によって生成された磁場によって一次電子に加えられる力とは反対向きの力を、一次電子に加えるようなものである。構成によっては、例えば
図10を参照して上記で考察し、
図13に例示するように、選択された公称エネルギーを有する分散デバイス311内の一次ビームの一部分に電場によって加えられる力は、磁場によって一次ビームの同じ部分に加えられる力と大きさが実質的に等しい。このタイプの構成では、分散デバイス311は、ウィーンフィルタと呼ばれることがある。公称エネルギーを有する一次ビームの部分は、偏向されずに分散デバイス311を通過する。他の構成では、
図12に例示されるように、電場によって加えられる力は、ビームの全ての部分において、磁場によって加えられる力とは大きさが異なっている。磁場によって加えられる力は、例えば、電場によって加えられる力の2倍の強さであり得る。
図3Cを参照して上記で考察したように、このようにして電場と磁場が相殺されないように構成すると、固定のゼロではない偏向を、一次ビームに施すことが可能になる。
【0061】
[0073] 実施形態によっては、
図12~
図13に例示されるように、1つ又は複数の共通電源は、ビームセパレータ電極1121と分散デバイス電極1120の両方を駆動するように構成された共通電圧源1004を含む。従って、共通電圧源1004は、ビームセパレータ電極1121と分散デバイス電極1120の両方に電圧(電位差)を印加することができる。ビームセパレータ電極1121及び分散デバイス電極1120は、
図12及び
図13に概略的に示されるように、互いに対して並列に接続されることがある。ビームセパレータ電極1121及び分散デバイス電極1120は、ビームセパレータ電極1121の両端の電圧が、分散デバイス電極1120の両端の電圧と、極性が反対になるように、接続されることがある。ビームセパレータ電極1121及び分散デバイス電極1120での電場の相対的な大きさを調節するために、電圧分割器構成が設けられることがある。その代わりに又はこれに加えて、ビームセパレータ電極1121と分散デバイス電極1120の一方又は両方の位置及び/又はジオメトリを変更して、ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312を通過する電子に対するビームセパレータ電極1121及び分散デバイス電極1120の相対的な影響を調節することがある。例えば、ビーム経路に沿って電極をより長く又はより短くして、電場が電子に作用する期間を変更することがあるか、又は、電極間の離隔距離を変更して、所与の印加電圧に対する電場を変化させることがある。
【0062】
[0074] 実施形態によっては、
図13に例示されるように、ビームセパレータ222と分散デバイス311の一方又は両方が、調節電極1130、1131を含む。調節電極1130、1131は、ビームセパレータ電極1121又は分散デバイス電極1120によって印加される電場に対して垂直な又は斜めの電場を一次電子に印加する。
図13の例では、調節電極1130、1131は、ビームセパレータ222と分散デバイス311の両方に設けられている。調節電極1130、1131は、ページの平面に対して平行であり、従って、ページの平面に対して垂直な電場を生成する。従って、調節電極1130、1131によって一次電子に加えられる力は、ビームセパレータコイル1111、分散デバイスコイル1110、ビームセパレータ電極1121、及び分散デバイス電極1120によって加えられる力に対して、垂直になる。調節電極1130、1131は、ビームセパレータコイル1111、分散デバイスコイル1110、ビームセパレータ電極1121、及び分散デバイス電極1120によって加えられる力に対して垂直な方向の偏向により、一次電子ビームを微調整するために使用されることがある。微調整を行うために必要とされる電場は、ビームセパレータ電極1121及び分散デバイス電極1120に印加される電場よりも、大幅に小さい可能性が高い。従って、調節電極に電力を供給するために使用される電源における変動に起因する誤差が、性能に及ぼす悪影響は、限定的であることがある。このタイプの実施形態では、独立電源1005及び1006が、調節電極1130、1131をそれぞれ駆動するために設けられていることがある。独立電源1005及び1006は、1つ又は複数の共通電源1002、1004からは独立している。
【0063】
[0075] 構成によっては、1つ又は複数の調節コイル1132が、ビームセパレータ222及び/又は分散デバイス311、312に設けられることがある。
図13の例では、ビームセパレータ222は、一対の調節コイル1132を含む。他の構成では、分散デバイス311、312が、1つ若しくは複数の調節コイルを含むことがあり、又は、ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312がそれぞれ、1つ若しくは複数の調節コイルを含むことがある。調節コイル1132は、ビームセパレータコイル1111又は分散デバイスコイル1110によって印加される磁場に対して垂直な又は斜めの磁場を一次電子に印加する。調節コイル1132は、ビームセパレータコイル1111、分散デバイスコイル1110、ビームセパレータ電極1121、及び分散デバイス電極1120によって加えられる力に対して垂直な方向の偏向により、一次電子ビームを微調整するために使用されることがある。微調整を行うために必要とされる磁場は、ビームセパレータコイル1111及び分散デバイスコイル1110に印加される磁場よりも、大幅に小さい可能性が高い。従って、調節コイルに電力を供給するために使用される電源における変動に起因する誤差が、性能に及ぼす悪影響は、限定的であることがある。このタイプの実施形態では、ビームセパレータ222又は分散デバイス312において1つ又は複数の調節コイル1132を駆動するために、独立電源1007が設けられることがある。独立電源1007は、1つ又は複数の共通電源1002、1004からは独立しており、また、存在する場合には、調節電極1130、1131を駆動するための電源1005、1006からも独立している。独立電源1005、1006、及び1007と調節電極1130、1131及び調節コイル1132との間の接続は、分かりやすくするために、
図13では省略されている。
【0064】
[0076] ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312が電子光学的に直列に設けられている様々な構成が、上記で説明されている。一次電子の1つ又は複数のビームは、まず分散デバイス311、312を通過し、その後、ビームセパレータ222を通過した後で、サンプル238に到達する。分散デバイス311、312は、ビームセパレータ222によって一次ビームに誘起される分散の少なくとも一部分を予め補償する。分散デバイス311、312は、フィードフォワード補正器又は補償器である。ビームセパレータ222がビーム311、312に対して動作する前に、ビームに補償が導入される。効率的に補償するためには、ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312が、一次ビーム経路に沿って直接的に連続していることが望ましい。従って、そのような構成では、ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との間には、電子に対して有意な影響を有する他の要素は存在しない。ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との間の領域には、別の電子光学要素、障害物、又はフィルタなどの、電子の軌道又はエネルギーを著しく変える可能性がある要素は存在しない。一次ビーム内の電子の軌道は、ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との間では、互いに平行であることが好ましい。軌道は、ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との間に中間焦点が形成されないようなものである。そのような電子光学設計は、ビームセパレータ222及び分散デバイスに関して非対称であると説明されることがある。ビーム経路は、ビームセパレータ222と分散デバイス311、312との間で連続的であり、中間焦点などの焦点は、一次ビーム経路に沿ってビームセパレータ222と分散デバイス311、312の両方のアップビーム又はダウンビームにある。
【0065】
[0077] ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312は、互いに対して実質的に対称的であり得る。例えば、ビームセパレータ222によって印加される電場は、分散デバイス311、312によって印加される電場と実質的に大きさが等しく方向が反対であり得る。ビームセパレータ222によって印加される磁場は、分散デバイス311、312によって印加される磁場と実質的に大きさが等しく方向が反対であり得る。電子がビームセパレータ222による影響を受ける、一次ビーム経路の部分の長さは、電子が分散デバイス311、312による影響を受ける、一次ビーム経路の部分の長さと、実質的に同じであり得る。従って、ビームセパレータ222及び分散デバイス311、312は、実質的に同じサイズであり得る。このようにして電場及び/又は磁場の影響を対称的にすると、分散の最適な補償が容易になることがある。しかしながら、本発明者らは、幾分かの非対称性が存在する場合であっても、有効なレベルの補償を達成することができることを発見した。有効なレベルの補償とは、ビームセパレータによって生成される分散の補正を含むが、完全な除去は含まないことがある。これにより、スペースの節約と分散補償との間の望ましいバランスを取ることが可能になる。例えば、構成によっては、分散デバイス311、312を、ビームセパレータ222よりも意図的に小さくして、分散デバイス311、312が配置されることになる領域のスペースを節約することができる。従って、分散デバイス311、312は、ビームセパレータ分散デバイス311よりも一次ビーム経路のより小さな部分に沿って電子に影響を与えるように構成されることがあり、それによって、分散デバイス311、312をより小型化することができる。
【0066】
[0078] 本発明は、添付の図面に図示し上述した構成に厳密に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えることができることが、理解されよう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及び条項によってのみ、限定されるべきであることが意図されている。以下の条項が提供される。
【0067】
[0079] 条項1:一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向けるように構成された電子光学カラムであって、一次ビーム経路に沿ってサンプルから放射された二次電子ビームを一次ビーム経路からそらすように構成されたビームセパレータと、ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスであって、ビームセパレータによって一次ビームに誘起される分散を補償するように構成された分散デバイスと、ビームセパレータと分散デバイスの両方を駆動するようにそれぞれ構成された1つ又は複数の共通電源と、を備える、電子光学カラム。
【0068】
[0080] 条項2:ビームセパレータは、ビームセパレータコイルによって生成された磁場を使用して、二次電子ビームをそらすように構成されており、分散デバイスは、分散デバイスコイルによって生成された磁場を使用して、分散を補償するように構成されている、条項1に記載のカラム。
【0069】
[0081] 条項3:1つ又は複数の共通電源は、ビームセパレータコイルと分散デバイスコイルの両方を駆動するように構成された共通電流源を含む、条項2に記載のカラム。
【0070】
[0082] 条項4:ビームセパレータコイルによって生成される磁場は、分散デバイスコイルによって生成される磁場とは反対向きである、条項2又は3に記載のカラム。
【0071】
[0083] 条項5:ビームセパレータは、ビームセパレータ内の一次電子に電場を印加するように構成されたビームセパレータ電極を含み、この電場は、ビームセパレータコイルによって生成された磁場によって一次電子に加えられる力とは向きが反対の力を一次電子に加えるようなものである、条項2~4の何れか一項に記載のカラム。
【0072】
[0084] 条項6:選択された公称エネルギーを有するビームセパレータ内の一次ビームの一部分に電場によって加えられる力は、磁場によって一次ビームの同じ部分に加えられる力と大きさが実質的に等しい、条項5に記載のカラム。
【0073】
[0085] 条項7:分散デバイスは、分散デバイス内の一次電子に電場を印加するように構成された分散デバイス電極を含み、この電場は、分散デバイスコイルによって生成された磁場によって一次電子に加えられる力とは向きが反対の力を一次電子に加えるようなものである、条項5又は6に記載のカラム。
【0074】
[0086] 条項8:選択された公称エネルギーを有する分散デバイス内の一次ビームの一部分に電場によって加えられる力は、磁場によって一次ビームの同じ部分に加えられる力と大きさが実質的に等しい、条項7に記載のカラム。
【0075】
[0087] 条項9:1つ又は複数の共通電源は、ビームセパレータ電極と分散デバイス電極の両方を駆動するように構成された共通電圧源を含む、条項7又は8に記載のカラム。
【0076】
[0088] 条項10:ビームセパレータと分散デバイスの一方又は両方は、ビームセパレータ電極又は分散デバイス電極によって印加される電場に対して垂直又は斜めである電場を一次電子に印加するように構成された調節電極を含む、条項5~9の何れか一項に記載のカラム。
【0077】
[0089] 条項11:調節電極を駆動するように構成された少なくとも1つの独立電源を更に含み、各独立電源は、1つ又は複数の共通電源からは独立している、条項10に記載のカラム。
【0078】
[0090] 条項10:分散デバイスは、ビームセパレータよりも一次ビーム経路のより小さな部分に沿って電子に影響を与えるように構成されている、先行する請求項の何れか一項に記載のカラム。
【0079】
[0091] 条項13:ビームセパレータ及び分散デバイスは、一次ビーム経路に沿って直接的に連続している、先行する請求項の何れか一項に記載のカラム。
【0080】
[0092] 条項14:条項1~13の何れか一項に記載のカラムを備える荷電粒子評価ツール。
【0081】
[0093] 条項15:一次電子ビームを一次ビーム経路に沿ってサンプルに向ける方法であって、ビームセパレータを使用して、一次ビーム経路に沿ってサンプルから放射された二次電子ビームを一次ビーム経路からそらすことと、ビームセパレータのアップビームにある分散デバイスを使用して、ビームセパレータによって一次ビームに誘起される分散を補償することと、を含み、ビームセパレータと分散デバイスの両方を駆動するために、1つ又は複数の共通電源が使用される、方法。
【国際調査報告】