(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】酸感受性溶媒のための膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/82 20060101AFI20231220BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20231220BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231220BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20231220BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20231220BHJP
B01D 39/04 20060101ALI20231220BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20231220BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20231220BHJP
B01J 39/20 20060101ALI20231220BHJP
B01J 39/22 20060101ALI20231220BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20231220BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20231220BHJP
【FI】
B01D71/82 500
B01D61/14 500
B01D69/02
B01D71/26
B01D71/30
B01D39/04
B01D39/16 C
B01J39/05
B01J39/20
B01J39/22
B01J45/00
B01J47/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535348
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021062032
(87)【国際公開番号】W WO2022125452
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハムズィク, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイバー, ジャド アリ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA71
4D006MA13
4D006MC11
4D006MC16
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC26
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC37
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC54
4D006MC55
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4D006NA64
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4D006PB13
4D006PB20
4D006PB70
4D019AA03
4D019BA02
4D019BA03
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4D019BA12
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB08
4D019BB12
4D019BC04
4D019CA02
4D019CB06
(57)【要約】
本開示は、流体組成物中の金属及び金属イオン夾雑物の除去を実施するのに有用な特定の強カチオン改質イオン交換樹脂及び膜を提供する。フォトレジストを除去するための液体等のマイクロ電子製造プロセスでは、金属の量が著しく減少した濾過された液体組成物が使用され得る。本開示のカチオン改質イオン交換樹脂及び膜は、マイクロ電子製造システムで使用するように構成することができ、これはシステムに入る液体のための使用点金属除去機構としてシステムで利用することができる。有利には、本開示のフィルタ材料及び方法は、望ましくない金属イオンを除去するフィルタ材料の能力を損なうことなく、液体組成物中のケトン(例えば、シクロヘキサノン)からの劣化及び着色体並びにダイマー及びオリゴマー材料の形成の防止においてかなりの改善を示した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H
+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜。
【請求項2】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
強酸官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物をもたらす、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
ポリオレフィン又はハロゲン化ポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
少なくとも1つのケトンを含む液体組成物から1つ又は複数の金属又は金属イオンを除去する方法であって、
(i)フィルタ材料を、少なくとも1つのケトン及び1つ又は複数の金属又は金属イオンを含む液体組成物と接触させることであって、フィルタ材料が、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、フィルタ材料を液体組成物と接触させることと、
(ii)液体組成物中の1つ又は複数の金属又は金属イオンの量を減少させ、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む方法。
【請求項7】
フィルタ材料が膜を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィルタ材料が樹脂ビーズの形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記精製された液体組成物が、不活性雰囲気中での貯蔵時に、最大7日間、無色透明の外観を維持する、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物をもたらす、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
液体組成物が、シクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択されるケトンを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
液体組成物が、酢酸n-ブチル、イソプロピルアルコール、酢酸2-エトキシエチル、キシレン、乳酸エチル、イソペンチルエーテル、メチル-2-ヒドロキシイソブチレート、メチルイソブチルカルビノール、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び(7:3)の混合比及び27.7mN/mの表面張力を有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液のうちの1つ又は複数を更に含む、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
液体組成物がイソプロピルアルコールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1つ又は複数の金属又は金属イオンが、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPb金属又は金属イオンから、個別に又はそれらの2つ以上の組み合わせで選択される、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属イオンが、鉄、クロム、マンガン、アルミニウム、及びニッケルカチオンから選択される、請求項6から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
H
+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を含むフィルタ。
【請求項18】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項17に記載のフィルタ。
【請求項19】
強酸官能基がスルホン酸基及び/又はホスホン酸基から選択される、請求項17又は18に記載のフィルタ。
【請求項20】
フィルタ材料を更に含み、フィルタ材料は膜と接触し、フィルタ材料は膜とは異なる、請求項17から19のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項21】
ビーズの形態の強酸カチオン交換樹脂を含むフィルタであって、前記樹脂が、C
1~C
6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択されるカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、フィルタ。
【請求項22】
濾過ケトンを含む液体組成物であって、
a.金属イオンの合計が約1000部/1兆未満の、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから選択される少なくとも1つの金属イオン、及び
b.約2:1未満である、前記ケトンのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種::モノマーケトンの比
を含む液体組成物。
【請求項23】
Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンからなる群からの金属イオンの量の合計が、約1000部/1兆分未満である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ケトンがシクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択される、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
比が約1.3:1未満である、請求項22から24のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明は、改質されたフィルタ材料、及びケトン等の酸感受性溶媒を含む液体組成物から金属を除去するための材料の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタは、有用な流体の流れから望ましくない材料を除去するために使用され、多種多様な産業技術において重要な特徴となっている。望ましくない材料を除去するために処理される流体には、水、液体の工業用溶媒及び処理流体、製造又は処理に使用される工業用ガス、並びに医療又は医薬用途を有する液体が含まれる。流体から除去される望ましくない材料には、粒子、微生物、及び溶解化学種等の不純物及び夾雑物が含まれる。フィルタ用途の具体例としては、半導体及びマイクロ電子デバイス製造のための液体材料とのそれらの使用が挙げられる。
【0003】
フィルタは、サイズ排除によって、又は材料との化学的及び/又は物理的相互作用によって等、様々な異なる方法によって望ましくない材料を除去することができる。いくつかのフィルタは、フィルタに多孔質構造を提供する構造材料によって画定され、フィルタは、細孔を通過することができないサイズの粒子を捕捉することができる。いくつかのフィルタは、フィルタの構造材料、又は構造材料に関連する化学物質が、フィルタを通過又は通る材料と会合及び相互作用する能力によって定義される。例えば、フィルタの化学的特徴は、フィルタ上を通過する流れからの望ましくない材料との会合を可能にし、イオン性、配位性、キレート化、又は水素結合相互作用等によってそれらの望ましくない材料を捕捉することができる。いくつかのフィルタは、サイズ排除及び化学的相互作用の両方の特徴を利用して、濾過された流れから材料を除去することができる。
【0004】
場合によっては、濾過機能を実行するために、フィルタは、通過する流体から望ましくない材料を除去する役割を果たすフィルタ膜を含む。フィルタ膜は、必要に応じて、平らなシートの形態であってもよく、巻き取られてもよく(例えば、螺旋状)、平らであってもよく、プリーツ状であってもよく、又は円盤状であってもよい。あるいは、フィルタ膜は中空糸の形態であってもよい。フィルタ膜は、濾過されている流体が濾過入口を通って入り、濾過出口を通過する前にフィルタ膜を通過する必要があるように、ハウジング内に収容されるか、そうでなければ支持され得る。
【0005】
溶解したアニオン又はカチオン等のイオン性材料を溶液から除去することは、イオン性夾雑物及び非常に低い濃度の粒子がマイクロプロセッサ及びメモリデバイスの品質及び性能に悪影響を及ぼし得るマイクロエレクトロニクス産業等の多くの産業において重要である。特に、デバイス製造に使用される液体組成物から金属イオン等の金属含有材料を除去することが望ましい場合がある。金属含有材料は、マイクロ電子製造に使用される異なる種類の液体に見出され得る。
【0006】
流体から金属含有材料を除去するための様々な未解決の技術的課題が残っている。光化学物質、特に溶媒、レジストポリマー、クエンチャー、界面活性剤、及び光酸発生剤(PAG)を含有する複雑な多成分組成物の精製の場合、製剤中のそのような他の成分の存在下で特定の金属夾雑物を除去するためのより大きな選択性が必要とされるが、同時に、そのような溶媒としてのシクロヘキサノン等のケトン溶媒の分解又はオリゴマー化に寄与しないことは、強酸官能性カチオン交換樹脂及び膜に曝露すると、着色体を発達させるか、又はダイマー及びオリゴマー等の高分子量縮合種を形成する傾向がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、流体からの金属夾雑物の除去、並びにそのような方法を実施するのに有用な強カチオン改質イオン交換樹脂及び膜に関する様々な本発明の実施形態を提供する。フォトレジストを除去するための液体等のマイクロ電子製造プロセスでは、金属の量が著しく減少した濾過された液体組成物が使用され得る。本開示のカチオン改質イオン交換樹脂及び膜は、マイクロ電子製造システムで使用するように構成することができ、これはシステムに入る液体のための使用点金属除去機構としてシステムで利用することができる。一般に、本開示のフィルタ材料は、スルホン酸等の強カチオン交換官能基を含み、その後、水酸化アンモニウム等のカチオン源と反応して、アンモニウム官能性イオン交換樹脂を提供する。有利には、本開示のフィルタ材料及び方法は、望ましくない金属イオンを除去するフィルタ材料の能力を損なうことなく、以下「ダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種」と呼ぶ液体組成物中のケトン(例えば、シクロヘキサノン)からの劣化並びに着色体及びオリゴマー材料の形成の防止においてかなりの改善を示した。
【0008】
一態様では、本開示は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を提供する。別の態様では、本開示は、液体組成物から1つ又は複数の金属又は金属イオンを除去する方法を提供し、方法は、
(i)フィルタ材料を、少なくとも1つのケトン及び1つ又は複数の金属又は金属イオンを含む液体組成物と接触させることであって、フィルタ材料が、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、ことと、
(ii)液体組成物中の1つ又は複数の金属又は金属イオンの量を減少させ、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む。
【0009】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態の以下の説明を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に記載のフィルタ製品の一例を示す図である(概略的であり、必ずしも縮尺通りではない)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0012】
用語「約」は、一般に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含み得る。
【0013】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0014】
本開示のフィルタ材料及び方法の特定の実施形態では、フィルタは、膜を形成する材料に結合したイオン交換又はキレート化官能基(例えば、スルホン酸)を有する不織繊維の形態の多孔質フィルタ膜を含む。本明細書で使用される場合、「多孔質フィルタ膜」は、膜の一方の表面から膜の反対側の表面まで延在する多孔質(例えば、微孔性)相互接続通路を含む多孔質固体である。通路は、一般に、濾過される液体が通過しなければならない曲がりくねったトンネル又は経路を提供する。膜の細孔を通過するのに十分小さいサイズの金属種は、官能基と金属との間のキレート化相互作用等によるイオン交換官能基との相互作用によって膜上に捕捉され得る。これを「非ふるい分け濾過機構」と呼ぶ。
【0015】
本開示のフィルタ材料及び方法はまた、細孔よりも大きい液体内に存在する任意の粒子(例えば、金属含有粒子)が微多孔膜に入るのを防ぐように機能することができ、又は微多孔膜の細孔内に粒子を捕捉するように機能することができる(すなわち、ふるい分け型濾過機構により粒子が除去される)。処理される液体は膜を通過することができ、その結果、イオン性金属種の量の減少、金属含有微粒子の量の減少、又はその両方等の金属の量の減少したフロースルーをもたらす。
【0016】
したがって、本開示の多孔質ポリマー膜は、膜を通過する溶液中の金属及び金属イオン夾雑物、並びに膜の細孔を通過するには大きすぎるサイズの任意の材料を除去することができる。本開示は、流体から金属夾雑物を除去する方法の様々な実施形態を示し、フィルタ材料は、H+型(例えば、スルホン酸又はホスホン酸)からNH4
+等のカチオン型に変換されたカチオン交換樹脂からなる。これに関して、H+型フィルタ材料を水酸化アンモニウム(及びハロゲン化物)、C1~C6アルキルアンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、C1~C6アルキルホスホニウム水酸化物、C1~C6イミダゾリウム水酸化物、及びピリジニウム水酸化物と反応させることによって、他の有効なカチオン型を形成することができる。例えば、Protego(登録商標)Plus DI(Entegris,Inc.)フィルタ等の市販の強カチオン交換フィルタは、例えば14%NH4OHで処理され(すなわち、フラッシングされ)、続いて水ですすぎ、湿潤又は乾燥させて利用することができる。したがって、一態様では、本開示は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を提供する。
【0017】
あるいは、本開示の方法では、Lewatit(登録商標)S100 NH4ゲル型カチオン交換樹脂(Lanxess)等のフィルタ材料を利用して、ケトンを含有するこのような液体組成物中の着色体並びにダイマー及びオリゴマー種の形成を最小限に抑えながら、液体組成物から望ましくない金属カチオンを除去することができる。
【0018】
流体組成物は、本開示のフィルタ材料を通過又は超えて、所望の用途に適したレベルまで金属夾雑物を効果的に除去することができる。本開示のフィルタ材料及び方法を使用することができる1つの用途は、半導体材料のエッチング及び洗浄に使用される溶液からの金属の精製のため等の半導体製造である。それらの精製能力の選択性を考慮すると、本開示のフィルタ材料及び方法は、一般にフォトリソグラフィにおいて特に有用である。有利には、本開示のフィルタ材料及び方法は、シクロヘキサノン等のケトンを含むそのような流体から望ましくない量の金属夾雑物を効果的に除去すると同時に、かなりの量の着色体及びそのダイマー/オリゴマー縮合種の形成を引き起こさず、その結果、強酸性イオン交換樹脂及び膜の現在の欠点である。
【0019】
一実施形態では、本開示のフィルタ材料及び方法を使用して除去される金属夾雑物は、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンを個別に又はそれらの2つ以上の組み合わせで含む。
【0020】
一実施形態では、除去される金属イオンは、鉄、クロム、マンガン、アルミニウム、及びニッケルカチオンから選択される。
【0021】
フィルタ材料は、任意の適切な材料又は材料の組み合わせで作製され得る。例えば、例示的なフィルタ材料は、ポリマー、金属、セラミック、又は天然材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。更に、いくつかの態様では、フィルタの材料は、キレート化又はイオン交換の機能性を有するコーティングの付着に適した化学的性質を有し得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「フィルタ」は、フィルタ材料を含む構造を有する物品を指す。例えば、フィルタは、多孔質不織膜、ビーズ、チューブ等の形態を含む濾過プロセスに有用な任意の形態とすることができ、フィルタは、合成及び天然ポリマーを含むポリマー、合金、天然材料、セラミック、炭素繊維等の金属含有材料等の1つ又は複数のフィルタ材料から作製される。
【0023】
フィルタは、フィルタリング用途に適した任意の所望の形態とすることができる。フィルタを形成する材料は、フィルタ自体の構造的成分であってもよく、フィルタに所望の構造を提供する。フィルタは、多孔質又は非多孔質であってもよく、任意の所望の形状又は構成であってもよい。フィルタ自体は、不織繊維等の単一の物品であってもよく、又は粒子(例えば、樹脂ビーズ)等の複数の個体物品によって表されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、フィルタ材料は、ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、又はポリマー材料及び非ポリマー材料から形成される。特定の実施形態では、ポリマー材料は、膜を形成する不織繊維の形態である。特定の実施形態では、フィルタ材料はビーズの形態である。フィルタを形成するポリマー材料を一緒に架橋して、所望の完全性を有するフィルタ構造を提供することができる。このようなポリマー材料は、金属イオン夾雑物を能動的に濾過するのに役立つイオン交換官能基の骨格を形成する。
【0025】
本開示のフィルタのフィルタ材料を形成するために使用することができるポリマー材料は、様々なポリマーを含む。いくつかの実施形態では、フィルタ材料は膜であり、ポリオレフィン又はハロゲン化ポリマーを含む。例示的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ポリイソブチレン(PIB)、並びにエチレン、プロピレン及びブチレンのうちの2つ以上の共重合体が挙げられる。更なる特定の実施形態では、フィルタ材料は、超高分子量ポリエチレン(UPE)を含む。UPE膜等のUPEフィルタ材料は、典型的には、約1×106~9×106Da、又は1.5×106~9×106Daの範囲等、約1×106ダルトン(Da)を超える分子量(重量平均分子量)を有する樹脂から形成される。ポリエチレン等のポリオレフィンポリマー間の架橋は、過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド又はジ-tert-ブチルペルオキシド)、シラン(例えば、トリメトキシビニルシラン)、又はアゾエステル化合物(例えば、2,2’-アゾ-ビス(2-アセトキシ-プロパン)等の熱又は架橋化学物質の使用によって促進され得る。例示的なハロゲン化ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン、及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)が含まれる。
【0026】
他の実施形態では、フィルタ材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ナイロン、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、又はそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含む。
【0027】
他の実施形態では、フィルタは、第1のフィルタ膜とは異なるフィルタ膜と組み合わせて使用される、本開示の第1のフィルタ膜からなる複合フィルタであり得る。
【0028】
カチオン交換官能基(複数可)は、コーティング技術を介してフィルタ材料に結合され得る。例えば、0.3%Irgacure2959(UV触媒)、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)、メチレンビスアクリルアミド(MBAm)架橋剤、メタノール、及び水を含むモノマー溶液の混合物に材料を浸漬し、その後、このようにコーティングされたフィルタ材料を紫外線照射に曝露してコーティングの硬化(すなわち、架橋)を行うことによって、スルホン酸官能基をフィルタ材料(例えば、フィルタ膜)の表面に導入することができる。したがって、そのように調製されたフィルタ材料はスルホン酸官能基を有し、次いで、これを例えば水酸化アンモニウム又は塩化アンモニウムと反応させて(すなわち、交換される)、本開示のフィルタ材料料を提供することができる。ホスホン酸基を有するフィルタ材料は、ビニルホスホン酸を利用して同様に調製することができる。
【0029】
上記のように、第1の態様では、本開示は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を提供する。
【0030】
第2の態様では、本開示は、液体組成物から1つ又は複数の金属又は金属イオンを除去する方法を提供し、方法は、
(i)フィルタ材料を、少なくとも1つのケトン及び1つ又は複数の金属又は金属イオンを含む液体組成物と接触させることであって、フィルタ材料が、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、ことと、
(ii)液体組成物中の1つ又は複数の金属又は金属イオンの量を減少させ、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む。
【0031】
上記のように、ケトン溶媒等の特定の酸感受性材料は、強酸官能性樹脂及び膜への曝露後にダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種を形成する傾向があるが、そのような酸官能性樹脂及び膜を様々なカチオンと交換すると、金属アニオンを除去する能力は悪影響を受けず、これらの望ましくない副生成物の生成は大幅に低減される。一実施形態では、この結果は、ケトンを含む液体組成物が、本開示に従って濾過された場合、本開示のフィルタ材料への曝露後7日間まで透明又は無色透明の外観を示す限り、経験的観察において明らかであり、したがって、この結果は、強酸官能フィルタ材料に曝露された場合のこのような液体組成物の場合の結果とは全く対照的であり、これらのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の形成のために、数日間にわたって暗くなる傾向がある。更に、そのようなケトンを含む液体組成物は、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)によって、濾過前にそのようなダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の存在について測定してベースライン濃度(すなわち、本明細書で言及される「対照」)を提供し、次いで、本開示のフィルタ材料に曝露した後の液体組成物中のそのような種の存在を以下の比の形態で比較することができる。
(ダイマー+オリゴマー):対照。
【0032】
ダイマー及びオリゴマー(シクロヘキサノン)縮合種の存在についてこの決定を行う場合、GC-MSスペクトルから観察された複数のピークは、シクロヘキサノン「ダイマー」がシクロヘキサノンダイマー(2Xモノマー分子量及びその誘導体、例えば2つのプロトンを失ったダイマー又はH2O分子を失ったダイマー)と一致する化合物であると同定される。
【0033】
シクロヘキサノン「オリゴマー」として同定される観察された複数のピークは、シクロヘキサノンに関連し、シクロヘキサノンダイマーよりも高い保持時間を有する化合物である。
【0034】
したがって、一実施形態では、本開示は、本明細書に記載の膜を提供し、膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物を導く。
【0035】
この比の決定に関する更なる詳細は、以下の実施例に記載される。
【0036】
特定の実施形態では、この比は、約2:1、約1.5:1、約1.3:1、約1.1:1又は約1.01:1であり得る。
【0037】
上述したように、修飾フィルタ材料は、有機溶媒から金属及び金属イオン夾雑物を除去するために使用することができる。記載されるようなフィルタ膜を使用して濾過することができる溶媒のいくつかの特定の非限定的な例には、酢酸n-ブチル(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、イソペンチルエーテル、メチル-2-ヒドロキシイソブチレート、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及び(7:3)混合比及び27.7mN/mの表面張力を有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液が含まれる。
【0038】
例えば、いくつかの実施態様では、集積回路を形成するための、洗浄溶媒、又はリソグラフィにおけるレジスト剥離用途のための溶媒等の、目的の用途に望ましいよりも高い量の金属イオン及び/又は不純物を含有する金属を有する溶媒を得る可能性がある。例えば、金属不純物は、溶媒中に0.001μg/L(1000ppt(1兆当たりの部))超、0.005μg/L(5000ppt)超、0.01μg/L(10,000ppt)超、又は0.05μg/L(50,000ppt)超の総量で存在し得る。次いで、溶媒を本開示のフィルタ材料に通して、金属夾雑物を除去し、出発溶媒中の金属の量よりも少ない金属の量を有する濾過された溶媒を提供する。特定の実施態様では、本開示のフィルタは、約25%(wt)以上、約30%(wt)以上、約35%(wt)以上、約40%(wt)以上、約45%(wt)以上、約50%(wt)以上、約55%(wt)以上、約60%(wt)以上、約65%(wt)以上、約70%(wt)以上、約75%(wt)以上、約80%(wt)以上、約85%(wt)以上、約90%(wt)以上、又は約95%(wt)以上、任意の1つ又は複数の金属の量を出発溶媒から除去することができる。
【0039】
上記のように、本開示のフィルタ材料は、ケトンが存在する場合、ダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の形成を制限しながら、様々な金属の優れた除去を提供する。したがって、別の態様において、本開示は、少なくとも1つのケトンを含む液体組成物を提供し、前記組成物は、
a.Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから個々に又はそれらの2つ以上の組み合わせで選択される合計約1000部/1兆未満の金属イオン;及び
b.約2:1未満である、(前記ケトンのダイマー+オリゴマー):モノマーケトンの比
を含む。
【0040】
この態様では、比率の分母は、本開示のフィルタ材料に曝露されていない少なくとも1つのケトンを含む液体組成物を表すことが理解されよう。換言すれば、この分母は、濾過前の出発物質組成物の純度を表す。
【0041】
金属夾雑物を除去するために処理される溶媒は、流体流からの金属夾雑物の除去を促進するもの等の所望の条件下でフィルタを通過することができる。いくつかの実施態様では、溶媒は、約160℃以下、120℃以下、又は80℃以下の温度でフィルタを通過する。
【0042】
本開示のフィルタ膜を通る溶媒の通過は、本質的にフラックスに依存しない金属不純物除去が達成され、用途に有用な圧力降下が提供される限り、いかなる特定の流量にも限定されない。使用される多孔質膜の面積は、本出願の流量及びプロセス要件に対して許容可能な圧力降下及び本質的にフラックス非依存性のキレート結合を装置に提供するように選択することができる。様々な実施形態では、膜面積は約0.25cm2以上であり得、特定の又は固定された面積は、用途の要件を満たすために各膜の圧力降下を決定するために使用される。
【0043】
いくつかの実施態様では、本開示の多孔質膜を含むフィルタは、流体流から微粒子、含有金属又はその他を除去することができる。粒子保持は、流体流中に配置された膜によって流体流から除去された試験粒子の数を測定することによって評価することができる。1つの方法では、8ppmのポリスチレン粒子(0.025μm緑色蛍光性ポリマーミクロスフェア、Fluoro-Max(ThermoFisher SCIENTIFICから入手可能))を含有する0.1%Triton(商標)X-100(DOW)の十分な量の水性供給溶液を通過させて、毎分7ミリリットルの一定流量で膜に0.5、1、及び2%の単層被覆率を達成し、透過液を収集することによって、粒子保持率を測定することができる。透過液中のポリスチレン粒子の濃度は、透過液の吸収度から算出することができる。次いで、以下の式を使用して粒子保持率を計算する。
粒子保持率=[供給]-[濾液]/[供給]×100%
【0044】
更に、記載されるようなフィルタ膜は、フィルタ膜を通る液体の流れの流量又は流束によって特性決定され得る。流量は、フィルタ膜が、フィルタ膜を通る流体の流れを濾過するのに効率的かつ効果的であることを可能にするのに十分に高くなければならない。流量、又は代替的に考えられるように、フィルタ膜を通る液体の流れに対する抵抗は、流量又は流動時間(流量の逆数である)に関して測定することができる。ポリカルボキシルリガンドを含む本明細書に記載のフィルタ膜は、特定の実施形態では、例えば比較的高いバブルポイントと組み合わせて、比較的低い流動時間及び良好な濾過性能(例えば、粒子保持によって測定される場合)を有し得る。有用な又は好ましい流動時間の例は、約8,000秒/500mL未満、例えば約4,000/500mL未満、約2,000秒/500mL未満、約1,000秒/500mL未満、約500秒/500mL未満、又は約200秒/500mL未満であり得る。
【0045】
膜水流時間は、膜を47mmの円板に切断し、水で濡らした後、一定量の水を保持するためのリザーバに取り付けられたフィルタホルダに円板を入れることによって決定することができる。リザーバは圧力制御因子に接続されている。水は、14.2psi(ポンド/平方インチ)の差圧下で膜を通って流れる。平衡に達した後、500mLの水が膜を通って流れる時間を記録する。
【0046】
一例として、
図1は、プリーツ状円筒形成分10及びエンドピース22と、他の任意選択の成分との製品であるフィルタ成分30を示す。円筒形成分10は、本明細書で説明するように、フィルタ膜12を含み、プリーツ状である。エンドピース22は、円筒形フィルタ成分10の一端15に取り付けられる(例えば、「ポッティングされる」)。エンドピース22は、好ましくは溶融加工可能なポリマー材料で作製され得る。円筒形フィルタ成分10の内部開口部24にコア(図示せず)を配置することができ、円筒形フィルタ成分10の外側の周りにケージ(図示せず)を配置することができる。第2のエンドピース(図示せず)を円筒形フィルタ成分10の第2の端部に取り付ける(「ポッティングする」)ことができる。次いで、2つの対向するポッティングされた端部並びに任意選択のコア及びケージを有する得られたプリーツ状円筒形成分は、入口及び出口を含み、入口に入る流体の全量が出口でフィルタを出る前に必ずフィルタ膜12を通過しなければならないように構成されたフィルタハウジング内に配置され得る。
【実施例】
【0047】
実施例1)負に帯電した表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜の調製
この実施例は、スルホン酸イオン交換基を有する安定な表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜の調製を実証する
【0048】
0.3%Irgacure2959、5.6%アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2.5%メチレンビスアクリルアミド(MBAm)架橋剤、10%メタノール、及び81.6%水を混合し、完全に溶解した均一な溶液が得られるまで撹拌することによって、モノマー溶液を調製した。10%のヘキシレングリコール及び90%の水を含む交換溶液を調製した。
【0049】
代表的な実験では、UPE多孔質膜(IPA中28psiの平均気泡点及び80umの厚さ(Entegris,Inc.))の47mm円板をイソプロパノール溶液で25秒間湿らせた。IPA湿潤膜円板を直ちに交換溶液に入れ、イソプロパノールを10%ヘキシレングリコールと交換するために60秒間浸漬したままにした。次いで、膜円板にモノマー溶液を吸収させるために、交換した膜円板を直ちにモノマー溶液に入れ、60秒間浸漬したままにした。次に、モノマーを吸収した膜円板を直ちにポリエチレンシートの間に入れ、テーブル上に平らになるようにゴムローラをポリエチレン/膜円板/ポリエチレンサンドイッチの上に転がすことによって過剰な溶液を除去した。次いで、ポリエチレンサンドイッチを、200nm~600nmの波長で放射するFusion Systems広帯域UV曝露実験室ユニットを通してアセンブリを搬送する輸送ユニットにテープで留めた。曝露時間は、アセンブリがUVユニットを通って移動する速さによって制御した。この例では、アセンブリは、10フィート/分でUVチャンバを通って移動した。UVユニットから出た後、膜をサンドイッチから取り出し、直ちにDI水中に置き、そこで膜を5分間旋回させることによって洗浄した。次に、処理した膜試料をメタノール中で5分間洗浄した。この洗浄手順にしたがって、膜を60℃で10分間動作する対流式オーブン内のホルダ上で乾燥させた。膜イオン交換基を酸/塩基(HCl/NaOH)滴定を使用して滴定し、4.04meqH+/m2であると決定した。
【0050】
実施例2)スルホン酸イオン交換基を有する不織布の特徴づけ
この実施例は、スルホン酸イオン交換基を有する市販の不織布ポリエチレン材料の特徴づけを実証する。
【0051】
スルホン酸イオン交換基を有する不織ポリエチレン材料(Entegris,Inc.)を得、47mmの円板に切断した。不織イオン交換材料の円板は、約200umの厚さであると測定された。円板のイオン交換性基を酸/塩基(HCl/NaOH)滴定を使用して滴定し、100meqH+/m2より大きいと判断した。
【0052】
実施例3)スルホン酸イオン交換基を有するPE不織布及びUPE0.2um膜への曝露によるシクロヘキサノンの純度及び色に対する有害な影響
この実施例は、スルホン酸イオン交換基を有する不織布及びUPE膜にシクロヘキサノンを曝露することによる純度及び色に対する有害な影響を実証する。この曝露は、不織布及び膜材料の望ましくない変色、曝露されたシクロヘキサノンの変色、並びにダイマー及びオリゴマーとして同定された不純物の形成を引き起こす。
【0053】
H+形態のスルホン酸イオン交換基を有する安定な表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜を実施例1と同様に調製し、円板に切断した。実施例2と同様のH+形態のスルホン酸イオン交換基を有する不織布ポリエチレン材料を得、円板に切断した。40mLのガラスシンチレーションバイアルに高純度シクロヘキサノンを充填し、スルホン酸イオン交換基をそのH+形態で有する不織ポリエチレン材料の二枚の円板をバイアルに入れた。別のバイアルに高純度シクロヘキサノンを充填し、スルホン酸イオン交換基を有する安定な表面コーティングを有する0.2um孔径のUPE膜の2枚の円板をバイアルに入れた。別個に、40mLのガラスシンチレーションバイアルに高純度シクロヘキサノンを充填し、不織布円板を添加しなかったが、この試料は負の無曝露対照として機能する。試料を室温で7日間浸漬させ、その時点で、溶液が確実に均一に混合されるように試料を数回反転させ、シクロヘキサノンのアリコート試料を採取した。目視検査すると、不織布が明褐色に変化し、不織布露出シクロヘキサノン溶液が透明な黄色に変化し、UPE膜が無色溶液で黄褐色に変化したのに対して、不織布に露出していないシクロヘキサノンは元の透明な無色溶液のままであったことが分かる。スルホン酸イオン交換基を有する不織布へのシクロヘキサノン曝露の影響を決定するために、曝露シクロヘキサノン及び非曝露シクロヘキサノンの試料アリコートを直ちにGC-MSで分析した。GC-MSからの結果は、不織布及び膜への曝露によるダイマー及びオリゴマーの形成を定量することができる。シクロヘキサノンモノマー、ダイマー及びオリゴマーは、処理された試料のシクロヘキサノンダイマー及びオリゴマーピーク面積の合計で表し、ボトルから直接の未処理シクロヘキサノンからのダイマー及びオリゴマーピーク面積の合計で割ることができる。この分析では、シクロヘキサノンダイマー+オリゴマーの比数(処理/対照)が高いほど、ダイマー不純物及びオリゴマー不純物が溶液中により多く存在する。このようにして、GC-MSによって示されるように、フィルタ膜への曝露の結果として形成されたダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の相対量は、試料をガスクロマトグラフィー-質量分析及び各種に関連するピークの積分に供することによって定量することができる。結果については、表1を参照されたい。
表1)スルホン酸イオン交換基を有するPE不織布及びUPE0.2um膜への曝露によるシクロヘキサノンの純度及び色への影響
【0054】
上記の表1に示す結果は、シクロヘキサノン溶液への曝露後に膜が変色し、シクロヘキサノンダイマー及びオリゴマーの有意な増加ももたらしたことを示した。
【0055】
実施例4)膜の前処理及び水酸化アンモニウムによる不織布によるスルホン酸イオン交換基を有するPE不織布及びUPE0.2um膜への曝露によるシクロヘキサノンの純度及び色に対する有害な影響の緩和
この実施例は、スルホン酸イオン交換基を有する不織布及びUPE膜にシクロヘキサノンを曝露することによる純度及び色に対する有害な影響を緩和する能力を実証する。緩和は、膜を前処理し、水酸化アンモニウムによる不織布によって達成される。
【0056】
水酸化アンモニウムで処理し、シクロヘキサノンに浸漬する前に乾燥した膜及び不織布円板を除いて、以下の方法によって実施例3と同じ実験を行った。最初に、膜及び不織布担持スルホン酸イオン交換基を円板に切断し、イソプロパノール中で予め湿らせ、脱イオン水に交換し、直ちに14%水酸化アンモニウムに浸した。円板を14%水酸化アンモニウムに1時間浸漬させた。1時間曝露した後、円板を脱イオン水ですすぎ、対流式オーブン中60℃のホルダで15分間乾燥させた。これらの水酸化アンモニウム前処理円板を乾燥オーブンから取り出し、実施例3と全く同様に実施したシクロヘキサノン浸漬実験の残りの部分に使用した。結果を以下の表2に示す。
表2)スルホン酸イオン交換基を有するPE不織布及びUPE0.2um膜への曝露によるシクロヘキサノンの純度及び着色への影響
【0057】
上記の表2に示す結果は、表1に示す結果と比較して、水酸化アンモニウムで膜を処理すると、シクロヘキサノン溶液への曝露により膜の色が変化せず、シクロヘキサノン溶液中のシクロヘキサノンダイマー及びオリゴマーの増加も減少したことを示している。実際、シクロヘキサノン対照溶液と比較してUPE膜のシクロヘキサノンダイマー及びオリゴマーの合計は10%しか増加せず、シクロヘキサノン溶液と比較して不織布ポリエチレン材料のシクロヘキサノンダイマー及びオリゴマーの合計は30%しか増加しなかった。したがって、この実施例は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を有するように本明細書に記載されるように処理された膜が、膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることで、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲で増加した液体組成物が導かれるという特徴を有することを実証している。
【0058】
実施例5)水酸化アンモニウムで前処理した負に帯電した表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜によるシクロヘキサノン中の金属の低減
この実施例は、以下の表3に示すように、膜をHCl又はNH4OHのいずれかで処理した場合に、負に帯電した0.2umのUPE膜がシクロヘキサノン中で金属低減能力を維持する能力を実証する。
【0059】
負に帯電した0.2umのUPE膜を実施例1と同様の方法を用いて調製し、47mmの膜円板に切断した。これらの膜円板を、10%HClで数回洗浄し、続いて10%HClに一晩浸漬することによってコンディショニングし、脱イオン水で平衡化した。円板のいくつかを実施例4と同様に14%水酸化アンモニウムで処理した。高純度シクロヘキサノン(TOK America,Inc.)に、CONOSTAN Oil Analysis Standardを目標金属濃度1.5ppb/金属で添加し、20mLを清浄な25mLPFAジャー(Savillex)に分注した。金属添加シクロヘキサノンを含む1つのジャーに、47mmのHCl円板の洗浄及び乾燥した負に帯電した0.2umのUPE膜を入れた。金属添加シクロヘキサノンを含有する別のジャーに、洗浄し、47mmのHCl円板の洗浄及び水酸化アンモニウム処理し、乾燥した負に帯電した0.2umのUPE膜を入れた。膜が金属添加溶媒との16時間の接触時間を有するように、両方の試料を16時間穏やかに回転させた。16時間後、PFAジャーのキャップを外し、膜を慎重に取り出し、廃棄した。金属添加シクロヘキサノン及び各膜曝露試料の金属濃度は、ICP-MSを使用して決定した。結果を表3に示す。
表3)水酸化アンモニウムで前処理した負に帯電した表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜によるシクロヘキサノン中の金属の低減
【0060】
実施例6)正に帯電した表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜の調製
この実施例は、第4級アミンイオン交換基を有する安定な表面コーティングを有する0.2umの孔径のUPE膜の調製を実証する。
【0061】
0.3%Irgacure2959、5.0%(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、2.25%メチレンビスアクリルアミド(MBAm)架橋剤、10%メタノール、及び82.45%水を混合し、完全に溶解した均一な溶液が得られるまで撹拌することによって、モノマー溶液を調製した。10%のヘキシレングリコール及び90%の水を含む交換溶液を調製した。
【0062】
代表的な実験では、UPE多孔質膜(IPA中28psiの平均気泡点及び80umの厚さ、Entegris,Inc.)の47mm円板をイソプロパノール溶液で25秒間湿らせた。IPA湿潤膜円板を直ちに交換溶液に入れ、イソプロパノールを10%ヘキシレングリコールと交換するために60秒間浸漬したままにした。次いで、膜円板にモノマー溶液を吸収させるために、交換した膜円板を直ちにモノマー溶液に入れ、60秒間浸漬したままにした。次に、モノマーを吸収した膜円板を直ちにポリエチレンシートの間に入れ、テーブル上に平らになるようにゴムローラをポリエチレン/膜円板/ポリエチレンサンドイッチの上に転がすことによって過剰な溶液を除去した。次いで、ポリエチレンサンドイッチを、200nm~600nmの波長で放射するFusion Systems広帯域UV曝露実験室ユニットを通してアセンブリを搬送する輸送ユニットにテープで留めた。曝露時間は、アセンブリがUVユニットを通って移動する速さによって制御した。この例では、アセンブリは、10フィート/分でUVチャンバを通って移動した。UVユニットから出た後、膜をサンドイッチから取り出し、直ちにDI水中に置き、そこで膜を5分間旋回させることによって洗浄した。次に、処理した膜試料をメタノール中で5分間洗浄した。この洗浄手順にしたがって、膜を60℃で10分間動作する対流式オーブン内のホルダ上で乾燥させた。膜イオン交換基を酸/塩基(HCl/NaOH)滴定を使用して滴定し、3.7meq OH-/m2であると決定した。
【0063】
実施例7)水酸化アンモニウムで前処理した負に帯電した表面コーティング及び正に帯電した表面コーティングを有する二重層0.2um細孔径UPE膜によるシクロヘキサノン中の金属の低減
この実施例は、以下の表4に示すように、膜をHCl又はNH
4OHのいずれかで処理した場合に、シクロヘキサノン中の金属低減能力を維持するための、1つは負に帯電し、1つは正に帯電した0.2umの二重層UPE膜の能力を実証する。負に帯電した0.2umのUPE膜を実施例1と同様の方法を用いて調製し、47mmの膜円板に切断した。正に帯電した0.2umのUPE膜を実施例6と同様の方法を用いて調製し、47mmの膜円板に切断した。これらの膜円板を、10%HClで数回洗浄し、続いて10%HClに一晩浸漬することによってコンディショニングし、脱イオン水で平衡化した。円板のいくつかを実施例4と同様に14%水酸化アンモニウムで処理した。高純度シクロヘキサノン(TOK America,Inc.)に、CONOSTAN Oil Analysis Standardを目標金属濃度1.5ppb/金属で添加し、20mLを清浄な25mLPFAジャー(Savillex)に分注した。金属添加シクロヘキサノンを含む一方のジャーに、47mmのHCl円板の洗浄及び乾燥した負に帯電した0.2umのUPE及び同様に洗浄した正に帯電した0.2umのUPE膜の両方を入れた。金属添加シクロヘキサノンを含む別のジャーに、水酸化アンモニウム処理され、乾燥した負に帯電した0.2umのUPE、及び同様に洗浄及び水酸化アンモニウム処理された正に帯電した0.2umのUPE膜の洗浄された47mm円板の両方を入れた。膜が金属添加溶媒との16時間の接触時間を有するように、両方の試料を16時間穏やかに回転させた。16時間後、PFAジャーのキャップを外し、膜を慎重に取り出し、廃棄した。金属添加シクロヘキサノン及び各膜曝露試料の金属濃度は、ICP-MSを使用して決定した。結果を表4に示す。
表4)水酸化アンモニウムで前処理した負に帯電した表面コーティング及び正に帯電した表面コーティングを有する二重層0.2um細孔径UPE膜によるシクロヘキサノン中の金属の低減
【0064】
実施例8)シクロヘキサノンダイマー+オリゴマーの比率(処理/対照)の決定例
シクロヘキサノン(CHN)について、溶液中に存在するダイマー及びオリゴマーの相対量を以下のように決定した:
1.CHNダイマーのピーク面積は、「ダイマー」として特定された全ての化合物の合計であり、CHNオリゴマーのピーク面積は、「オリゴマー」として特定された全ての化合物の合計である。
2.総ピーク面積は、CHNダイマーとCHNオリゴマーの合計である。
3.希釈係数は、GCMS分析の前に試料がどの程度希釈されたかである。
4.補正されたピーク面積は、総ピーク面積×希釈係数である。
5.CHN対照の補正されたピーク面積を1として正規化し、比率は、CHN対照の補正されたピーク面積に対する試料の補正されたピーク面積である。
シクロヘキサノン(CHN)ダイマー+オリゴマー対対照の比の例示的な計算を、実施例3の表1の対照及びスルホン酸基を有するUPE膜を使用して以下の表5に示す。
表5)対照及び表1の「スルホン酸基を有するUPE膜」からの計算例
【0065】
態様
第1の態様では、本開示は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を提供する。
【0066】
第2の態様では、本開示は、カチオン性対イオンが、アンモニウム、C1~C6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C1~C6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、第1の態様の膜を提供する。
【0067】
第3の態様では、本開示は、強酸官能基がスルホン酸及び/又はホスホン酸基から選択される、第1又は第2の態様の膜を提供する。
【0068】
第4の態様では、本開示は、膜を、少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物を導く、第1~第3の態様のいずれかの膜を提供する。
【0069】
第5の態様では、本開示は、少なくとも1つのケトンを含む液体組成物から1つ又は複数の金属又は金属イオンを除去する方法であって、
(i)フィルタ材料を、少なくとも1つのケトン及び1つ又は複数の金属又は金属イオンを含む液体組成物と接触させることであって、フィルタ材料が、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、ことと、
(ii)液体組成物中の1つ又は複数の金属又は金属イオンの量を減少させ、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む方法を提供する。
【0070】
第6の態様では、本開示は、フィルタ材料が膜を含む、第5の態様の方法を提供する。
【0071】
第7の態様では、本開示は、フィルタ材料が樹脂ビーズの形態である、第5の態様の方法を提供する。
【0072】
第8の態様では、本開示は、前記精製された液体組成物が、不活性雰囲気中での貯蔵時に最大7日間にわたって無色透明の外観を維持する、第5~第7の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0073】
第9の態様では、本開示は、膜を、少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物を導く、第5~第8の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0074】
第10の態様では、本開示は、液体組成物がシクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択されるケトンを含む、第5~第9の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0075】
第11の態様では、本開示は、液体組成物が、酢酸n-ブチル、イソプロピルアルコール、酢酸2-エトキシエチル、キシレン、乳酸エチル、イソペンチルエーテル、メチル-2-ヒドロキシイソブチレート、メチルイソブチルカルビノール、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び(7:3)の混合比及び27.7mN/mの表面張力を有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液のうちの1つ又は複数を更に含む、第5~第10の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0076】
第12の態様では、本開示は、液体組成物がイソプロピルアルコールを含む、第11の態様の方法を提供する。
【0077】
第13の態様では、本開示は、カチオン性対イオンが、アンモニウム、C1~C6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C1~C6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、第5~第12の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0078】
第14の態様では、本開示は、1つ又は複数の金属又は金属イオンが、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPb金属又は金属イオンから、個別に又はそれらの2つ以上の組み合わせで選択される、第5~第12の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0079】
第15の態様では、本開示は、金属イオンが鉄、クロム、マンガン、アルミニウム、及びニッケルカチオンから選択される、第5~第14の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0080】
第16の態様では、本開示は、膜が、H+以外のカチオン対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、強酸カチオン交換膜を含むフィルタを提供する。
【0081】
第17の態様では、本開示は、カチオン対イオンが、アンモニウム、C1~C6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C1~C6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択される、第16の態様のフィルタを提供する。
【0082】
第18の態様では、本開示は、強酸官能基がスルホン酸及び/又はホスホン酸基から選択される、第16又は第17の態様のいずれかのフィルタを提供する。
【0083】
第19の態様では、本開示は、ビーズの形態の強酸カチオン交換樹脂を含むフィルタであって、前記樹脂が、C1~C6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C1~C6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択されるカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、ビーズの形態の強酸カチオン交換樹脂を含むフィルタを提供する。
【0084】
第20の態様では、本開示は、
第1のフィルタ材料及び第2のフィルタ材料であって、第1のフィルタ材料の出口対向面が第2のフィルタ材料の入口対向面と接触する、第1のフィルタ材料及び第2のフィルタ材料を含み、
第1のフィルタ材料又は第2のフィルタ材料は、H+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を有し、
第2のフィルタ材料は、第1のフィルタ材料とは異なる、
複合フィルタを提供する。
【0085】
第21の態様において、本開示は、組成物が、
a.個々に又は累積的に、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから選択される合計約1000部/1兆未満の金属イオン;及び
b.約2:1未満である、前記ケトンのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種:モノマーケトンの比
を含む、濾過ケトンを含む液体組成物を提供する。
【0086】
第22の態様において、本開示は、組成物が、
a.個々に又は累積的に、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから選択される合計約500部/1兆未満の金属イオン;及び
b.約2:1未満である、前記ケトン:モノマーケトンのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の比
を含む、
濾過ケトンを含む液体組成物を提供する。
【0087】
第23の態様において、本開示は、組成物が、
a.個々に又は累積的に、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから選択される合計約100部/1兆未満の金属イオン;及び
b.約2:1未満である、前記ケトン:モノマーケトンのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の比
を含む、濾過ケトンを含む液体組成物を提供する。
【0088】
第24の態様において、本開示は、ケトンがシクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択される、第21~第23の態様のいずれか1つの組成物を提供する。
【0089】
第25の態様において、本開示は、比率が約1.3:1未満である、第21~第24の態様のいずれか1つの組成物を提供する。
【0090】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で更に他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によって網羅される本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H
+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜。
【請求項2】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
強酸官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物をもたらす、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項5】
ポリオレフィン又はハロゲン化ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項6】
少なくとも1つのケトンを含む液体組成物から1つ又は複数の金属又は金属イオンを除去する方法であって、
(i)フィルタ材料を、少なくとも1つのケトン及び1つ又は複数の金属又は金属イオンを含む液体組成物と接触させることであって、フィルタ材料が、H
+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、フィルタ材料を液体組成物と接触させることと、
(ii)液体組成物中の1つ又は複数の金属又は金属イオンの量を減少させ、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む方法。
【請求項7】
フィルタ材料が膜を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィルタ材料が樹脂ビーズの形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記精製された液体組成物が、不活性雰囲気中での貯蔵時に、最大7日間、無色透明の外観を維持する、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
膜を少なくとも1つのケトンを含む液体組成物と7日間接触させることが、膜と接触する前の液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計と比較して、液体組成物中のダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種の合計が0%超~100%未満の範囲内で増加した液体組成物をもたらす、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
液体組成物が、シクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択されるケトンを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
液体組成物が、酢酸n-ブチル、イソプロピルアルコール、酢酸2-エトキシエチル、キシレン、乳酸エチル、イソペンチルエーテル、メチル-2-ヒドロキシイソブチレート、メチルイソブチルカルビノール、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び(7:3)の混合比及び27.7mN/mの表面張力を有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液のうちの1つ又は複数を更に含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
液体組成物がイソプロピルアルコールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1つ又は複数の金属又は金属イオンが、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPb金属又は金属イオンから、個別に又はそれらの2つ以上の組み合わせで選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属イオンが、鉄、クロム、マンガン、アルミニウム、及びニッケルカチオンから選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
H
+以外のカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む膜を含むフィルタ。
【請求項18】
カチオン性対イオンが、アンモニウム、C
1~C
6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択される、請求項17に記載のフィルタ。
【請求項19】
強酸官能基がスルホン酸基及び/又はホスホン酸基から選択される、請求項17又は18に記載のフィルタ。
【請求項20】
フィルタ材料を更に含み、フィルタ材料は膜と接触し、フィルタ材料は膜とは異なる、請求項17又は18に記載のフィルタ。
【請求項21】
ビーズの形態の強酸カチオン交換樹脂を含むフィルタであって、前記樹脂が、C
1~C
6アルキルアンモニウム、ホスホニウム、C
1~C
6アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、及びピリミジニウムから選択されるカチオン性対イオンを有する少なくとも1つの強酸官能基を含む、フィルタ。
【請求項22】
濾過ケトンを含む液体組成物であって、
a.金属イオンの合計が約1000部/1兆未満の、Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンから選択される少なくとも1つの金属イオン、及び
b.約2:1未満である、前記ケトンのダイマー縮合種及びオリゴマー縮合種:モノマーケトンの比
を含む液体組成物。
【請求項23】
Li、B、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、及びPbイオンからなる群からの金属イオンの量の合計が、約1000部/1兆分未満である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ケトンがシクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンから選択される、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
比が約1.3:1未満である、請求項22又は23に記載の組成物。
【国際調査報告】