(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電極システム、電子システム、薬物送達デバイス、および電子システムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20231220BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20231220BHJP
A61M 5/20 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
A61M5/315
A61M5/31 520
A61M5/315 550N
A61M5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536360
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021085890
(87)【国際公開番号】W WO2022129170
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アラディングス
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ジェイソン・ドレイク
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・チャールズ・ガゼレイ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066LL21
4C066QQ48
4C066QQ72
4C066QQ82
(57)【要約】
本開示は、電子システム(1000)のセンサ電極システム(1345)であって:電気的に絶縁した可撓性導体キャリア(1350)と;可撓性導体キャリアに沿って延び、導体キャリアに沿って相互に電気的に分離された少なくとも2つの導電性電極トラック(1362、1364、1378)を含む電極構成(1360)と、を含み、導電性電極トラックのうちの1つは、可撓性導体キャリアの検知領域(1310、1320)において延びた検知電極(1366、1376)を形成する、センサ電極システムに関する。さらに、電子システム、薬物送達デバイス、および方法が開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子システム(1000)のセンサ電極システム(1345)であって:
- 電気的に絶縁した可撓性導体キャリア(1350)と;
- 可撓性導体キャリアに沿って延び、導体キャリアに沿って相互に電気的に分離された少なくとも2つの導電性電極トラック(1362、1364、1378)を含む電極構成(1360)と、
を含み、
導電性電極トラックのうちの1つは、可撓性導体キャリアの検知領域(1310、1320)において延びた検知電極(1366、1376)を形成する、前記センサ電極システム。
【請求項2】
センサ電極システム(1345)は、弾性変形可能である、請求項1に記載のセンサ電極システム。
【請求項3】
電極構成の導電性電極トラック(1362)のうちの1つは、可撓性導体キャリア(1350)の検知領域(1310、1320)において、検知電極(1366、1376)に沿って延びた基準電極(1368)を形成し、ここで、基準電極および検知電極(1366、1376)は、センサ電極システムが作動する際に、異なる電位が与えられるように構成されている、請求項1または2に記載のセンサ電極システム。
【請求項4】
検知領域(1310)において、基準電極(1368)は、複数の基準電極部(1371)を有し、検知電極(1366)は、複数の検知電極部(1369)を有し、ここで、検知電極部および基準電極部は、交互に配設されている、請求項3に記載のセンサ電極システム。
【請求項5】
少なくとも1つの検知電極部(1369)の端部は、基準電極(1368)側を向き、ここで、少なくとも1つの基準電極部(1371)の端部は、検知電極(1366)側を向いている、請求項4に記載のセンサ電極システム。
【請求項6】
検知領域(1310)は、電子システム(1000)のユーザインターフェース部材(1600)の周方向配設検知面に対して適合する、および/または周方向配設検知面に沿って延伸するように構成され、ここで、センサ電極システムは、該センサ電極システム(1345)が電子システムに設けられた場合に、1つの基準電極部(1371)および1つの検知電極部(1369)が対向箇所に配設されるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ電極システム。
【請求項7】
検知電極(1366)は、第1の検知電極であり、検知領域(1310)は、第1の検知領域であり、ここで、電極構成(1360)の導電性電極トラック(1378)のうちの1つは、可撓性導体キャリア(1350)の第2の検知領域(1320)において延びた第2の検知電極(1376)を形成し、ここで、可撓性導体キャリアは、第1の検知領域および第2の検知領域が相互に可動となるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ電極システム。
【請求項8】
基準電極(1368)は、第1の検知領域(1310)において第1の検知電極(1366)に沿って延び、第2の検知領域(1320)において第2の検知電極(1376)に沿って延びている、請求項3、4、5、および7ならびに請求項3に従属する場合の請求項6のいずれか1項に記載のセンサ電極システム。
【請求項9】
可撓性導体キャリア(1350)は、接点連結領域(1352)を含み、ここで、基準電極(1368)、検知電極(1366)、および/または第2の検知電極(1376)は、接点連結領域において電気的に接触されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサ電極システム。
【請求項10】
導電性電極トラック(1378)のうちの1つは、可撓性導体キャリア(1350)のコネクタ領域(1386)において延びたコネクタ電極(1388)を形成し、ここで、コネクタ領域は、別個の検知電極(1390)を電極構成に導電連結するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ電極システム。
【請求項11】
薬物送達デバイスの電子システムであって、
- ドーズ作動のためユーザにより操作されるように配置された少なくとも1つの外部作動面(1610、1620)を有するユーザインターフェース部材(1600)と、
- 請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ電極システム(1345)と、該センサ電極システムに導電連結された電子センサコントローラ(1340)と、を含み、ユーザが外部作動面に接近または接触したかを検出するように配置および構成されたユーザ近接検出ユニット(1330)と、
を含む、前記電子システム。
【請求項12】
検知領域(1320)は、外部作動面(1620)に向かって付勢され、検知領域を外部作動面に向かって付勢する付勢部材(1381、1520)が電子システム(1000)に設けられ、ここで、好ましくは、付勢部材(1520)は、電子システムおよび/またはセンサコントローラ(1340)の電源(1500)に導電連結されている、請求項11に記載の電子ステム。
【請求項13】
センサコントローラ(1340)は、ユーザインターフェース部材(1600)のユーザインターフェース部材部品(1605、1670)に固定されたキャリア(3000)、たとえば剛性導体キャリア上に配置され、ここで、検知領域(1310)は、ユーザインターフェース部材部品の外面に沿って延び、接点連結領域(1352)は、内方、たとえばキャリアに向かって延び、センサコントローラに導電連結されている、請求項11または12に記載の電子システム。
【請求項14】
電子システムは、キャリア(3000)とユーザインターフェース部材部品(1670)に固定された可撓性導体キャリア(1350)の一部との間に配置された電源(1500)を含み、ここで、可撓性導体キャリアの連結領域(1382)は、キャリアの遠隔の電源側の可撓性導体の一部からキャリアに向かって延び、連結領域は、機械的および/または電気的にキャリアに連結されている、請求項13に記載の電子システム。
【請求項15】
検知電極(1366)は、ユーザインターフェース部材(1600)の設定面(1610)に割り当てられ、および/または、検知電極(1376)は、ユーザインターフェース部材の送達面(1620)に割り当てられている、請求項11~14のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項16】
センサ電極システムは、請求項7に記載のセンサ電極システムであり、第1の検知電極(1366)は、ユーザインターフェース部材(1600)の設定面(1610)に割り当てられ、第2の検知電極(1376)は、ユーザインターフェース部材の送達面(1620)に割り当てられている、請求項11~14のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項17】
センサ電極システムは、請求項7に記載のセンサ電極システムであり、第1の検知領域および第2の検知領域は、異なる方向を向いた外部作動面に割り当てられるように構成されている、請求項11~16のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項18】
外部作動面は、ドーズ設定作動のための設定面であり、半径方向を向いている、請求項11~17のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項19】
外部作動面は、該外部作動面に容易には適合しない堅固または剛性の導電性物体よりも外部作動面に適合する柔軟または可撓性の導電性物体に対して、ユーザ近接検出ユニット(1330)がより高い感度を有するように構成されている、請求項11~18のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項20】
薬物送達デバイス(1)であって、請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ電極システム(1345)および/または請求項11~19のいずれか1項に記載の電子システム(1000)を含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項21】
薬物送達デバイスの電子システム(1000)、たとえば請求項11~19のいずれか1項に記載のシステムを製造する方法であって:
- 電気的に絶縁した可撓性導体キャリア(1350)と、可撓性導体キャリアに沿って延びた少なくとも1つの導電性電極トラック(1362、1364、1378)を含む電極構成(1360)と、を含む電極システム(1345)、たとえば請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ電極システムを用意する工程と、
- 部品(1670)、たとえばユーザインターフェース部材部品を用意する工程と、
- 可撓性導体キャリアの表面が部品、たとえば部品の外面に沿って延びるように電極システムを変形させる工程と;
- 少なくとも1つの導電性電極トラックを電子ユニット(1340)と導電連結することにより、たとえば電子システムを形成する工程と、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極システム、電子システム、薬物送達デバイス、および電子システムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスを利用した薬物送達デバイスが業界内のみならず、患者またはユーザにもますます普及してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、薬物送達デバイスの電子システムと関連付けられた改善を促進することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の主題により達成される。有利な実施形態および改良は、従属請求項の対象である。本開示は、現行の特許請求の範囲に係る主題に限定されない。むしろ、本開示は、当業者には容易に認識されるように、特許請求の範囲の改良の提供および/または特許請求の範囲の対象化が可能な現行未請求の主題も網羅することができる。
【0005】
本開示の一態様は、薬物送達デバイスまたは電子システムの電極システムに関する。別の態様は、電子システム、好ましくは、電極システムを含む電子システムに関する。電子システムは、薬物送達デバイスの電子システムとすることができる。さらに別の態様は、薬物送達デバイスに関し、このデバイスは、好ましくは電極システムまたは電子システムを含む。最後に、本開示は、薬物送達デバイスの電子システムの製造または組立ての方法に関する。
【0006】
一実施形態において、電極システムは、可撓性導体キャリアを含む。可撓性導体キャリアは、電気的に絶縁することができる。可撓性導体キャリアは、当該可撓性導体キャリアに沿って延びた1つまたはそれ以上の導電性電極トラックのベースを提供するように構成される。それぞれの電極トラックはまた、領域内のみまたは領域全体に可撓性とすることができる。可撓性導体キャリアおよび/または電極システムは、電子システムにおける適用の場合、変形(たとえば、折り畳み、屈曲、または湾曲)が施される。このため、電子システムにおいて、電極システムおよび/または導体キャリアは、たとえば第1の構成または非変形構成とは対照的に、第2の構成または変形構成を有することができる。第1の構成においては、導体キャリアを平坦なものとすることができる。可撓性導体キャリアを有することにより、導体キャリアおよび/または電極システム全体は、使用される電子システムの特定の要件に合わせて容易に調整することができる。たとえば、可撓性導体キャリアは、円筒面などの非平面状(たとえば、湾曲)表面に容易に適合される。導体キャリアのさまざまな領域は、電子システムにおいて異なる方向を向くように、異なる方向に偏向される。可撓性導体キャリアを有することは、注射デバイスおよび/またはペン型デバイスなどの薬物送達デバイスの電極システムにおいて特に好適である。このようなデバイスは通例、利用可能な空間が限られるため、可撓性導体キャリアを有することは特に都合が良い。
【0007】
一実施形態において、電極システムは、電極構成を含む。電極構成は、可撓性導体キャリアの電極面に沿って延びることができる。電極面は、可撓性導体キャリアの主面とすることができる。電極構成は、電極面に限定される。電極面と反対の表面または電極面の反対を向いた表面を電気的絶縁面とすることができる。絶縁面は、可撓性導体キャリアにより与えられる。このように、電子システムの電極機能は、1つの表面である電極面に設けられ、反対の表面は、電極構成から電気的に絶縁されており、それにより、可撓性導体キャリアの絶縁性およびそれが提供する絶縁面によって、電極面の反対を向いた導体キャリアの面に配置された要素による短絡のリスクが低くなるため、使用状況(たとえば、電子システム)における電極システムの適用が容易化される。あるいは、全体を絶縁することにより、電極面と反対の導体キャリアの表面または電極面の反対を向いた導体キャリアの表面は、1つまたはそれ以上の導電性電極部が露出した表面とすることができる(すなわち、導体キャリアの2つの対向表面を電極面とすることができる)。
【0008】
一実施形態において、電極構成は、少なくとも1つの導電性電極トラックを含む。電極構成は、少なくとも2つの導電性電極トラック(たとえば、2つのトラック、3つのトラック、または4つのトラック)を含むことができる。それぞれのトラックは、可撓性導体キャリアの電極面上に形成または配置される。それぞれの導電性電極トラックは、可撓性導体キャリアに沿って延びることができる。複数の導電性電極トラックが存在する場合、導電性電極トラックは、導体キャリアに沿って相互に電気的に分離または絶縁される。言い換えると、導体キャリア上の電極構成の2つの導電性電極トラック間、好ましくは、任意の選択された一対の2つの導電性電極トラック間には、電気的相互連結が存在しないようにすることができる。
【0009】
一実施形態において、電極システムは、センサ電極システムである。センサ電極システムは、検知部位(たとえば、ユーザインターフェース部材の外部作動面)と当該電極システムを介して入力される1つまたはそれ以上の電気的特性を評価するように構成されたセンサコントローラ(以下参照)との間を作動連結するように構成される。たとえば、センサ電極システムは、センサコントローラとの組合せにて適用可能な場合、薬物送達デバイスまたは電子システムのユーザインターフェース部材の外部作動面上または近傍のキャパシタンスまたはキャパシタンスの変化を検知するように構成される。具体的に、センサ電極構成は、ユーザの指(たとえば、親指、親指と異なる指、ならびに/または少なくとも親指および人差し指などの別の指)の外部作動面への近接を検知するように構成される。
【0010】
一実施形態において、導電性電極トラックのうちの1つは、検知電極を形成することもできるし、検知電極を画成することもできるし、検知電極とすることもできる。検知電極は、可撓性導体キャリアの検知領域において延びることができる。検知領域は、外部作動面に近く、好ましくは可能な限り近く配置されるように構成された導体キャリアの領域とすることができる。外部作動面は、設定面、すなわち、ドーズ設定作動中またはドーズ設定作動のためにユーザが接触する表面、または、送達面、すなわち、ドーズ送達作動中またはドーズ送達作動のためにユーザが接触するように配置される表面とすることができる。
【0011】
一実施形態において、電極トラックは、1つまたはそれ以上の電極トラックによって検知領域における1つまたはそれ以上の電気的特性(たとえば、2つの電極トラック間のキャパシタンス)をモニタリングするセンサコントローラの別個のチャネルもしくは入力と連結されるような構成または別個のチャネルもしくは入力を形成するような構成がなされる。代替的または追加的に、電極トラックは、導体キャリアの異なる検知領域に割り当てられる。
【0012】
一実施形態において、電極システム、可撓性導体キャリア、および/または電極構成は、たとえば全体または少なくとも1つもしくはそれ以上の領域において変形可能である。電極システム、可撓性導体キャリア、および/または電極構成は、たとえば全体または少なくとも1つもしくはそれ以上の領域において弾性変形可能であるのが好ましい。したがって、電極システムは、たとえば非変形構成から変形構成へと変形される。変形の結果として、非変形構成を再構築する傾向にある弾性復元力を得ることができる。弾性復元力は、有利に使用される。たとえば、弾性復元力は、好ましくは外部作動面の反対を向いたユーザインターフェース部材の内壁などの別の部品によって弾性変形された可撓性導体キャリアの一部の接点を維持するのに用いられる。弾性復元力は、可撓性導体キャリアの表面(たとえば、電極面)を他方の部品に対して押し付けることができる。このため、弾性変形可能であることは、非平面状または湾曲(たとえば、円筒)表面に対する電極システムの適合を促進する。電極システムは、全体が弾性変形可能であるか、または、1つもしくはそれ以上の領域のみが弾性変形可能である。電極システムのその他の領域は、依然として変形可能ではあるが、必ずしも弾性的ではない。変形可能な電極システム(たとえば、可撓性プリント配線板)は、空間要件が小さく済むため、ユーザインターフェース部材のさまざまな形状およびサイズに対して容易に調整可能である。
【0013】
一実施形態において、電極構成の導電性電極トラックのうちの1つは、基準電極であるか、または、基準電極を形成する。基準電極は、可撓性導体キャリアの検知領域において、検知電極に沿って延びることができる。基準電極の電極トラックは、検知電極の電極トラック全体に沿って延びることができる。基準電極および検知電極は、異なる電位が与えられるように構成される。異なる電位によって、基準電極と検知電極との間には電界が形成される。たとえば交流電位または電圧によって、電界を静的または動的とすることができる。電界またはその特性は、システムのセンサコントローラによりモニタリングされる。電界または特性(たとえば、キャパシタンス)の変動は、ユーザの指が検知電極および/または基準電極に近づくことで生じる。したがって、センサコントローラにより変動が評価され、1つまたはそれ以上の所定の基準を満たす場合は、ユーザの指が外部作動面に近づくことで生じたものと見なされる。たとえば、電極の一方に高電位が与えられ、他方に低電位(たとえば、グランド電位)が与えられる。また、一方の電位を正とし、他方を負とすることができる。また、低電位の電極を基準電極とし、高電位の電極を検知電極とすることができる。電子システム(たとえば、センサコントローラ)は、基準電極と検知電極との間のキャパシタンスの変化をモニタリングするように構成される。変化が閾値レベルと交差した場合(たとえば、所定の閾値よりも高低いずれかとなった場合)、センサコントローラは、たとえば電子システムのメインコントローラまたは電子制御ユニットに対して信号を生成または供給するように構成される。外部作動面に対する接触イベントまたは近接イベントが起こった場合、センサコントローラは、それに応じた信号を発行するが、これは、電子システムにおいて、電子システムの作動状態の変更に用いられる。この信号(使用信号とすることもできるし、近接信号とすることもできる)に応答して、電子システムは、低電力消費の第1の状態(たとえば、センサコントローラだけが作動する状態)から高電力消費の第2の状態(たとえば、以前に作動不可能であった電子システムの1つまたはそれ以上のユニットが作動する状態)に切り替えられるように構成される。これらのユニットには、運動検知ユニットおよび/または通信ユニットを含むことができる。切り替え作動は、センサコントローラに加えて設けられた電子制御ユニット(たとえば、メインコントローラ)により実行される。
【0014】
一実施形態において、特に、可撓性導体キャリアの検知領域において、検知電極は、複数の検知電極部を有する。検知電極部は、たとえば一様に、検知領域全体に分布する。検知電極部は、検知領域において、互いに分離される。検知電極部は、相互に平行に配向される。代替的または追加的に、基準電極は、特に検知領域において、複数の基準電極部を有することができる。基準電極部は、たとえば一様に、検知領域全体に分布する。基準電極部は、検知領域において、相互に分離される。基準電極部は、検知領域において、相互に平行に配向される。それぞれの電極部は、関連する導電性電極トラックにより形成される。それぞれの電極部は、たとえば電子システムにおいて、電子システムの近位端から電子システムの遠位端へなど、軸方向に配向される。検知領域の検知電極部は、検知領域に沿って等距離に配設される。すなわち、任意の一対の2つの連続する検知電極部は、同じ距離を有することができる。代替的または追加的に、同じことを基準電極部にも当てはめることができる。あるいは、隣り合う検知電極部間の距離は、たとえば規則的なパターンにて変化することができる。代替的または追加的に、同じことを隣り合う基準電極部にも当てはめることができる。
【0015】
一実施形態においては、基準電極および検知電極の一方が電極部を有する。たとえば、基準電極は、検知領域において反対方向(たとえば、反対の軸方向)に配向された基準電極部を有する。電極部は、異なる方向(たとえば、異なる軸方向)を向いた端部を有することができる。一部の電極部が近位方向を向き、他の電極部が遠位方向を向くことができる。基準電極および検知電極の他方(たとえば、検知電極)は、反対方向に配向される基準電極および検知電極の一方の2つの部分間に配置される。
【0016】
一実施形態において、それぞれの電極部すなわち基準電極部および/または検知電極部は、軸方向に配向される。この軸は、可撓性導体キャリアの主延伸の長手方向に垂直なものとすることができる。それぞれの電極部は、自由端を有することができる。
【0017】
一実施形態において、検知電極部および基準電極部は、たとえば検知領域、電極システム、および/または可撓性導体キャリアの主延伸方向に沿って見た場合、検知領域において、および/または、検知領域に沿って交互に配設される。すなわち、検知電極部に基準電極部が続き、これに別の検知電極部が続き、さらに、これに別の基準電極部が続くことができる。
【0018】
一実施形態においては、電極部により、検知電極および基準電極は、検知領域における検知電極および基準電極の交互配置または櫛型配置を有することもできるし、画成することもできる。ここで、主延伸方向に沿って見た場合、連続する電極部は、異なる電極すなわち基準電極または検知電極に属することができる。第1の櫛が検知電極により形成され、第1の櫛と係合される第2の櫛が基準電極により形成される。電極部は、それぞれの櫛の歯を形成することができる。基準電極部および/または検知電極部は、たとえば可撓性導体キャリアの主延伸方向など、検知領域の主延伸方向に沿って見た場合、検知領域に沿って順次配設される。
【0019】
一実施形態において、連続する検知電極部間の距離は、隣り合う検知電極部間に配置された基準電極部の幅よりも大きくすることができる。同じことを連続する基準電極部間の距離にも当てはめることができ、これは便宜上、2つの隣り合う基準電極部間に配置された検知電極部の幅よりも大きい。この幅は、たとえば電極部の端部に向かう電極部の延伸と垂直な寸法を意味することができる。
【0020】
一実施形態において、検知電極部および/または基準電極部は、検知領域、電極システム、および/または可撓性導体キャリアの主延伸方向に対して斜めまたは垂直に配向される。
【0021】
一実施形態において、検知領域は、たとえば次のような値:2mm、1.5mm、1mmのうちの1つよりも短い距離、好ましくは最大距離で外部作動面の近くに配置されるように構成される。外部作動面は、円周方向または角度方向配設面(たとえば、ユーザインターフェース部材の設定面)とすることができる。検知領域の主延伸方向は、電極システムが電子システムに設けられた場合、円周方向配設面に沿った方向(たとえば、角度方向)とすることができる。
【0022】
一実施形態において、検知電極部は、同じ幅および/または同じ長さを有する。代替的または追加的に、基準電極部は、同じ幅および/または同じ長さを有することができる。基準電極部の幅を検知電極部の幅と等しくすることができる。基準電極部の長さまたは軸方向延伸を検知電極部の長さまたは軸方向延伸と等しくすることができる。
【0023】
一実施形態において、検知電極部は、検知電極の連結部に連結される。たとえば直接的に、すべての検知電極部が共通の連結部に連結されるのが好ましい。連結部は、検知電極部を導電的に相互連結することができる。連結部は、検知電極部が分岐する電極トラックの一部とすることができる。すべての検知電極部が連結部から同じ方向に分岐することができる。連結部と検知電極部との間の遷移領域は、連結部に沿って(たとえば、直線的および/または連結部の主延伸方向に沿って)順次配設される。それぞれの検知電極部は、検知電極の連結部から遠隔の端部を有することができる。検知電極部は、連結部から離れる方向に直線的に延びることができる。連結部は、可撓性導体キャリアに沿って直線的に延びることができる。
【0024】
一実施形態において、基準電極部は、基準電極の連結部に連結される。たとえば直接的に、すべての基準電極部が共通の連結部に連結されるのが好ましい。連結部は、基準電極部を導電的に相互連結することができる。連結部は、基準電極部が分岐する電極トラックの一部とすることができる。すべての基準電極部が連結部から同じ方向に分岐することができる。連結部と基準電極部との間の遷移領域は、連結部に沿って(たとえば、直線的に)順次配設される。それぞれの基準電極部は、基準電極の連結部から遠隔の端部を有することができる。基準電極部は、連結部から離れる方向に直線的に延びることができる。連結部は、可撓性導体キャリアに沿って直線的に延びることができる。
【0025】
一実施形態において、基準電極部(たとえば、複数の基準電極部またはすべての基準電極部)のうちの少なくとも1つの端部(たとえば、自由端)は、特に可撓性導体キャリアに沿って見た場合、検知電極または検知電極の電極トラック側を向く。
【0026】
一実施形態において、検知電極部(たとえば、複数の検知電極部またはすべての検知電極部)のうちの少なくとも1つの端部(たとえば、自由端)は、特に可撓性導体キャリアに沿って見た場合、基準電極または基準電極の電極トラック側を向く。
【0027】
一実施形態において、検知電極部の数および/または基準電極部の数は、偶数または奇数である。検知電極部の数を基準電極部の数と等しくすることができる。
【0028】
一実施形態において、検知電極部の数および/または基準電極部の数は、次のような値:2、3、4、5、6、7、8のうちの1つ以上である。
【0029】
一実施形態において、基準電極部の端部、特に、基準電極部のすべての端部は、検知電極の連結部側を向く。代替的または追加的に、検知電極部の端部、特に、検知電極部のすべての端部は、基準電極の連結部側を向く。
【0030】
一実施形態において、それぞれの検知電極部および/またはそれぞれの基準電極部は、直線的に延びる。基準電極部および検知電極部は、相互に平行に延びるように配向される。
【0031】
一実施形態において、それぞれの電極部すなわち基準電極部および/または検知電極部のうちの1つまたは複数は、たとえばそれぞれの電極部を連結する連結部からそれぞれの電極部の自由端に向かう方向に見た場合、その延伸に沿って一定の幅を有する。それぞれの電極部は、規則的な形状を有することができる。
【0032】
一実施形態において、それぞれの電極部すなわち基準電極部および/または検知電極部のうちの1つまたは複数は、たとえばそれぞれの電極部を連結する連結部からそれぞれの電極部の自由端に向かう方向に見た場合、その延伸に沿って異なる幅を有する。電極部の幅は、自由端に向かう方向において、好ましくは連続的に小さくすることができる。自由端を尖った端部にすることもできるし、平坦な端部にすることができる。それぞれの電極部は、三角形状または台形状を有することができる。
【0033】
一実施形態において、可撓性導体キャリアの検知領域は、ユーザインターフェース部材の円周方向もしくは角度方向配設検知面に対して適合する、ならびに/または円周方向もしくは角度方向配設検知面に沿って延伸するように構成される。電極システムが電子システムに適用または包含される場合、検知領域は、ユーザインターフェース部材の検知面に対する適合および/または検知面に沿った延伸を行う。検知領域は、検知面の全周または少なくとも360°の角度を覆うように提供される。検知面は、特にユーザインターフェース部材の内部またはユーザインターフェース部材の本体上でユーザインターフェース部材の外部作動面に沿って延びた表面とすることができる。検知面は、360°の角度方向延伸を有することができる。外部作動面は、ユーザインターフェース部材によるドーズ設定作動の実行のため、ユーザによる操作(たとえば、回転)が必要な設定面とすることができる。検知面の角度方向または円周方向の配設は、ドーズ設定の回転軸に対して行うことができる。
【0034】
一実施形態において、センサ電極システムは、特に検知面に沿って1つの基準電極部および1つの検知電極部が対向箇所に配設できる、または配設されるような構成、ならびに/または、電極システムが電子システムに設けられた場合に、たとえば検知領域が検知面に適合するような構成がなされる。このため、電子システムに配置された場合は、1つの検知電極部および1つの基準電極部が相互に180°だけオフセットされる。両部とも、検知面側を向くことができる。すべての検知電極部は、たとえば当該部から180°だけオフセットされた対向配設または関連の基準電極部を有することができる。ユーザは、ドーズ設定作動のため、親指および人差し指などの別の指で対向箇所におけるユーザインターフェース部材に接触する可能性が非常に高いため、検知電極部および基準電極部を互いの対向箇所に設けることによって、ドーズ設定の場合またはドーズ設定中のユーザの指により、センサコントローラが知覚可能である特に顕著な変動が生じることが発見されている。この目的で、検知電極部および基準電極部の数が奇数であれば特に都合が良い。
【0035】
一実施形態において、検知領域における基準電極および検知電極の一方(たとえば、基準電極または検知電極)は、検知電極および基準電極の他方(たとえば、それぞれ検知電極または基準電極)の端部を通過する。代替的または追加的に、検知電極および基準電極の他方は、基準電極および検知電極の一方の2つの部分間に配置される。基準電極および検知電極の一方の2つの部分は、たとえば少なくとも検知電極および基準電極の他方の大部分に沿って、互いに平行に延びるか、もしくは、互いに平行に配向され、ならびに/または、検知電極および基準電極の一方の端部を通過する電極部によって連結される。
【0036】
一実施形態において、検知電極は、第1の検知電極であり、検知領域は、第1の検知領域である。電極構成の導電性電極トラックのうちの1つは、第2の検知電極を形成することもできるし、第2の検知電極を画成することもできるし、第2の検知電極とすることもできる。第2の検知電極は、可撓性導体キャリアの第2の検知領域において延びることができる。第2の検知領域および第1の検知領域は、相互に分離される(たとえば、重ならない)。第2の検知領域および第1の検知領域は、可撓性導体キャリアの連結領域により連結される。第2の検知電極の電極トラックは、第2の検知領域において第2の検知電極を画成できるように、連結領域内で延びる。第1の検知領域および/または第2の検知領域とは対照的に、連結領域は、より小さな寸法(たとえば、より小さな長さおよび/またはより小さな幅)を有することができる。第2の検知電極の導電性電極トラックは便宜上、可撓性導体キャリア上において、第1の検知電極の電極トラックから電気的に分離または絶縁されている。第2の検知電極の電極トラックは、基準電極の電極トラックから電気的に分離または絶縁される。
【0037】
一実施形態において、可撓性導体キャリアは、第1の検知領域および第2の検知領域が相互に可動となるように構成される。検知領域は、検知電極すなわち第1の検知電極および第2の検知電極を伴う表面が異なる方向を向くように、相互に可動とすることができる。たとえば、第2の検知領域および第1の検知領域は相互に垂直となる、すなわち、可撓性導体キャリアの表面の法線ベクトルを検知領域において垂直とすることができるような相互に配置されるように第1の検知領域および第2の検知領域が構成される。電極システムが電子システムに設けられた場合は、検知領域の一方が本質的に平面の表面を有し、他方の検知領域が湾曲表面または半径方向を向いた角度方向配向面を有することができる。
【0038】
一実施形態において、第1の検知領域および第2の検知領域は、異なる方向を向いた外部作動面に割り当てられるように構成されるか、または、割り当て可能である。たとえば、第1の検知電極は、ユーザインターフェース部材の設定面に割り当てられる。代替的または追加的に、第2の検知電極は、ユーザインターフェース部材の送達面に割り当てられる。
【0039】
一実施形態において、基準電極またはその導電性電極トラックは、第1の検知領域における第1の検知電極および/または第2の検知領域における第2の検知電極に沿って延びる。すなわち、第1の検知電極および第2の検知電極は、共通の基準電極を有することができる。このため、2つの異なる検知領域において、1つの導電性電極トラックが基準電極に用いられる。
【0040】
一実施形態において、基準電極またはその導電性電極トラックは、第1の検知電極またはその電極トラックと第2の検知電極またはその導電性電極トラックとの間に配置される。このため、第1および第2の検知電極またはその電極トラックは、互いに沿って延びる場合、依然として基準電極により分離されている。この構成は、第1および第2の検知電極間の電気的分離を特に容易かつ信頼性あるものとし、少なくとも検知電極間のクロストークの可能性を減らすことができる。
【0041】
一実施形態において、基準電極または関連する電極トラックは、検知領域において、検知電極または関連する電極トラックを囲む。たとえば検知領域における基準電極は、第1の部分および第2の部分を有することができる。両部とも、可撓性導体キャリアまたは検知領域の主延伸方向に沿って配向される。これらの部分は、相互に平行に延びている。検知電極は、基準電極の2つの部分間に配置(たとえば、限定)される。第1および第2の部分は、遷移部により連結される。遷移部は、第1の部分から第2の部分まで延びる場合、検知電極の端部を通過することができる。この端部を接点連結領域から遠隔とすることができる(以下参照)。
【0042】
一実施形態において、第1の検知電極および第2の検知電極は、電子システムの作動中に同じ電位または異なる電位が与えられるように構成される。
【0043】
一実施形態において、第1および第2の検知領域間の連結領域は、第1の検知領域の幅および/または第2の検知領域の幅よりも小さな幅を有する。第2の検知領域の幅を第1の検知領域の幅よりも小さくすることができる。小さな幅の連結領域を有することにより、第1および第2の検知領域間の可動連結が容易となる。基準電極および第2の検知電極の電極トラックは、連結領域に沿って延びることができる。電極トラックは、連結領域とともに変形される。
【0044】
一実施形態において、可撓性導体キャリアは、接点連結領域を含む。接点連結領域は、連結領域、コネクタ領域(以下参照)、および/または検知領域の外側の領域とすることができる。接点連結領域は、それぞれの電極トラックまたは(第1の)検知電極、基準電極、および/もしくは第2の検知電極などの関連する電極をセンサコントローラなどの電子システムの別の構成要素に導電連結するように設けられる。センサコントローラは、複数のチャネルを有することができ、その数は、電極システム上に設けられた電極または電極トラックの数に対応するのが好ましい。たとえば、センサコントローラは、電極が1つだけ設けられた場合は1つのチャネル、検知電極および基準電極など、電極が2つ設けられた場合は2つのチャネル、第1の検知電極、第2の検知電極、および基準電極など、電極が3つ設けられた場合は3つのチャネルを有することができる。念のため、共通の基準電極を有する代わりに、第1および第2の検知電極に対して別個の基準電極を設けることも可能であることに留意するものとする。この場合、センサコントローラは、4つのチャネルを有することができる。接点連結領域は、検知領域に対して可動(たとえば、折り畳み可能)とすることができる。接点連結領域は、可撓性導体キャリア上の電極トラックをセンサコントローラおよび/または他の導体キャリアと導電連結するように設けられる。センサコントローラは、他の(たとえば、剛性の)導体キャリア上に配置される。接点連結領域は、コネクタ(たとえば、fccコネクタまたはスリムスタックコネクタ)との連結のために設けられる。第1の検知領域は、(たとえば、接点連結領域から第2の検知領域またはコネクタ領域までそれぞれ)可撓性導体キャリアの延伸に沿って見た場合、接点連結領域と第2の検知領域との間または接点連結領域とコネクタ領域との間に配置される。あるいは、第2の検知領域またはコネクタ領域は、接点連結領域と第1の検知領域との間に配置される。
【0045】
一実施形態において、基準電極、(第1の)検知電極、および/もしくは第2の検知電極、またはその電極トラックは、関連する検知領域から接点連結領域への延伸および/または接点連結領域における電気的接触が行われる。それぞれの電極は、接点連結領域において電気的接点連結を行うことができる。接点連結領域には、それぞれの電極(または、電極トラック)の端子が設けられる。
【0046】
一実施形態において、検知領域は、ユーザインターフェース部材の円周方向配設面(たとえば、上述の検知面および/または表面に適合する場合の検知面)の角度方向延伸の少なくとも270°、少なくとも300°、少なくとも350°を覆うように構成される。可撓性導体キャリアは、表面の延伸の360°超を覆うように構成される。このように、導体キャリアを介して、可撓性導体キャリアの特に高感度の領域を外面から遮蔽することができる。すなわち、可撓性導体キャリアは、当該可撓性導体キャリアの1つまたはそれ以上の高感度領域(たとえば、連結領域および/または接点連結領域)を覆うことができる。
【0047】
一実施形態において、電極システムは、可撓性プリント配線板である。
【0048】
一実施形態において、電極構成は、ユーザインターフェース部材の内部に配置される。すなわち、外部からアクセス不可能である。
【0049】
一実施形態において、導電性電極トラックのうちの1つは、コネクタ電極を形成することもできるし、コネクタ電極を画成することもできるし、コネクタ電極とすることもできる。コネクタ電極は、可撓性導体キャリアのコネクタ領域において延びることができる。コネクタ電極またはコネクタ領域は、別の電極(たとえば、別個の検知電極)を電極構成に対して電気的に連結するために設けられる。この別の電極を電極構成とは別個(たとえば、別個の部品)にすることができる。この別の電極を金属部品とすることができる。コネクタ電極は、可撓性導体キャリアのコネクタ領域において露出することにより、コネクタ電極の別の電極との機械的接点を有効にすることができる。電子システムにおいて、この別の電極は、可撓性導体キャリアと外部作動面(送達面とすることができる)との間に配置される。この別の電極は、電極構成を介して、電源に導電連結される。この別の電極を弾性変形可能にすることができる。この別の電極は、付勢部材としての作用(以下参照)ならびに/または外部作動面(たとえば、可撓性導体キャリアの一部)から離れる方向に電子システムの1つまたはそれ以上の要素または構成要素を付勢する配置が行われる。コネクタ領域は、送達面と関連付けられたまたは関連付けられる導体キャリアの領域に配置される。この別の電極は、(第2の)検知領域または(第2の)検知電極(あるいは、送達面と関連付けられた検知領域/電極)の役割を果たすことができる。したがって、(第2の)検知領域または電極(あるいは、送達面と関連付けられた検知領域)に関する上述および後述の構成は、コネクタ領域にも当てはまり、その逆もまた同様である。第1の検知領域(あるいは、設定面と関連付けられた検知領域)は便宜上、コネクタ領域および別の電極に追加で設けられる。
【0050】
一実施形態において、電極システム(たとえば、電極構成)は、たとえば直接、電源に連結されるように構成された端子部を含む。端子部は、たとえば基準電極または検知電極を形成する電極トラックの一部とすることができる。端子部は、たとえば外部作動面の反対を向いた可撓性導体キャリアの面上でアクセス可能にすることができる。付勢部材(上記または以下参照)(たとえば、別の電極)は、端子部を電源の端子に向かって付勢する(たとえば、機械的接触させる)ように配置される。端子部は、コネクタ領域におけるコネクタ電極から遠隔または反対の可撓性導体キャリアの面上に配置される。端子部は、コネクタ電極から電気的に絶縁される。
【0051】
一実施形態において、基準電極部は、コネクタ領域におけるコネクタ電極に沿って(たとえば、コネクタ電極の外部または外縁に沿って)延びる。コネクタ電極と関連付けられた基準電極の1つまたはそれ以上の部分を有することにより、電子システムが組み立てられると、基準電極が別の電極に近づく。基準電極が別の電極に近づくことにより、電極構成自体が検知電極を提供せず、別の電極が提供する場合であっても都合が良い。
【0052】
一実施形態において、導体キャリアの上面図または平面図に見られるように、たとえばキャリアが平坦構成の場合、コネクタ電極は、基準電極部と端子部との間に配置される。
【0053】
一実施形態において、電子システムは、ユーザインターフェース部材を含む。ユーザインターフェース部材は、少なくとも1つの外部作動面を有する。外部作動面は、ドーズ作動の場合にユーザが操作するように配置される。ドーズ作動は、薬物送達デバイスにより送達されるドーズを設定するドーズ設定作動および/またはドーズ(たとえば、過去に設定されたドーズ)を送達するドーズ送達作動とすることができる。ユーザインターフェース部材を操作する場合は、外部作動面にユーザが接触する必要がある。外部作動面は、ドーズ設定作動のための設定面(たとえば、半径方向を向いた表面および/もしくは円周方向に配設された表面)または軸方向(たとえば、近位方向)を向いた表面などの送達面とすることができる。ユーザインターフェース部材は、ドーズ設定作動のため、たとえば回転可能に動かす必要がある。回転量は、設定ドーズのサイズに比例とすることができる。ユーザインターフェース部材は、ドーズ送達作動のため、たとえば軸方向に動かす必要がある。ユーザインターフェース部材の(それぞれの)動きは、ハウジング(たとえば、薬物送達デバイスまたは薬物送達デバイスユニットのハウジング)に対するものとすることができる。
【0054】
一実施形態において、ユーザインターフェース部材は、ユーザインターフェース部材本体を含む。ユーザインターフェース部材本体は、1つまたはそれ以上の外部作動面を形成することもできるし、画成することもできる。この本体は、カップ状構成を有することができる。この本体は、送達面に対して近位端を有することができる。遠位端は、たとえばドーズ設定の機構部材および薬物送達デバイスの駆動機構または薬物送達デバイスのための駆動機構に対するユーザインターフェース部材の連結のため、開放することができる。
【0055】
一実施形態において、外部作動面および/またはユーザインターフェース部材本体は、電気的に絶縁することができる。
【0056】
一実施形態において、電子システムは、ユーザ近接検出ユニットを含む。ユーザ近接検出ユニットは、ユーザインターフェース部材の内部、特に、ユーザインターフェース部材本体の内部に配置される。ユーザ近接検出ユニットは、ユーザが外部作動面に接近または接触したかどうかを検出するように配置および構成される。ユーザ近接検出ユニットは、ユーザの外部作動面への接近または接触を確認した場合、ユーザ近接検出ユニットは、使用信号または近接信号などの電気信号を提供することもできるし、電気信号の生成をトリガすることもできる。この信号は、ユーザが外部作動面に接近もしくは接触していること、ならびに/または、ドーズ作動(たとえば、ドーズ設定作動またはドーズ送達作動)が開始されようとしていることを示すことができる。ユーザ近接検出ユニットは、上述のような電極システムを含むことができる。ユーザ近接検出ユニットは、電子センサコントローラ(たとえば、マイクロコントローラまたはASIC)をさらに含むことができる。センサコントローラは、たとえばすでに詳しく論じた通り、電極システムに導電連結される。センサコントローラは、異なるトラックまたは電極に対して異なるチャネルを有することができる。ユーザが外部作動面に接触したこと、または、ユーザが外部作動面に接近したものの外部作動面に接触はしておらず、外部作動面から所定の距離未満であることに応答して、ユーザ近接検出ユニットにより信号が提供される。所定の距離は、次のような値:5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mmのうちの1つ以下とすることができる。
【0057】
一実施形態において、(第1の)検知電極は、ユーザインターフェース部材の設定面に割り当てられ、および/または、第2の検知電極は、ユーザインターフェース部材の送達面に割り当てられる。このため、電極システムを介して、異なる表面に対するユーザの近接が同じ電極システムにより検出される。
【0058】
一実施形態において、第1の検知領域は、設定面と関連付けられる。代替的または追加的に、第2の検知領域は、送達面と関連付けられる。
【0059】
一実施形態において、電子システムは、たとえば少なくとも1つのコインセルを含む充電式または非充電式のバッテリなどの電源を含む。電源は、電子システムの電動構成要素の電力を供給することができる。電子システムは、自己完結型とすることができる。すなわち、電源は、交換可能にすることができず、結果として、システムに恒久的に組み込まれる。このため、電源が充電式でない場合は、電源に含まれる電力が消費されると、電子システムを廃棄する必要がある。
【0060】
一実施形態において、電子システムは、電子制御ユニットを含む。電子制御ユニットは、センサコントローラに加えて設けられる。このように、センサコントローラは、電子制御ユニットを高電力消費の状態へと切り替えるのに用いられる。そして、電子制御ユニットも同じように、1つまたはそれ以上の他のユニットを高電力消費の状態へと(たとえば、非作動から作動へと)切り替えることができる。他のユニットには、運動検知ユニットおよび/または通信ユニットを含むことができる。運動検知ユニットは、ドーズ送達作動中のドーズ関連データ(たとえば、送達ドーズのサイズの特性)を取り込むために設けられる。通信ユニットは、ドーズ送達作動の終了後などに、別のデバイス(たとえば、携帯電話またはパソコン)への通信チャネルの確立および/または別のデバイスへのドーズ関連データの伝達のために設けられる。
【0061】
一実施形態において、検知領域(たとえば、第2の検知領域および/または第1の検知領域)は、たとえば弾性力またはばね力により外部作動面に向かって付勢される。たとえば、検知領域は、外部作動面に近いユーザインターフェース部材またはユーザインターフェース部材本体の内面に対して付勢される(たとえば、外部作動面の反対を向いたユーザインターフェース部材本体の壁(壁は外部作動面を外部に画成)の面に配置される)。したがって、検知領域は、ユーザインターフェース部材またはユーザインターフェース部材本体の内面に隣接することもできるし、適合することもできる。
【0062】
一実施形態において、検知領域(たとえば、第1の検知領域および/または第2の検知領域)は、電極システムまたは可撓性導体キャリアの弾性変形の結果としての力により外部作動面に向かって付勢される。
【0063】
一実施形態において、電子システムは、付勢部材(たとえば、ばねなどの弾性部材)を含む。付勢部材は、たとえば、ユーザインターフェース部材本体に向かう方向またはユーザインターフェース部材本体から離れる方向に、外部作動面および/またはユーザインターフェース部材本体に対する可撓性導体キャリアの領域を付勢するように配置される。上述の通り、付勢部材は、別個の検知電極として作用することができる別の電極により形成される。したがって、付勢部材の言及(たとえば、その配置に関する言及)は、特に別の電極が検知電極として設けられ、当該電極が電極構成により実現されていない場合、別の電極の言及として了解される。
【0064】
一実施形態において、検知領域(たとえば、第2の検知領域)は、付勢部材により外部作動面に向かって付勢される。言い換えると、付勢部材は、検知領域を外部作動面に向かって機械的に付勢するため、電子システムに設けられる。
【0065】
一実施形態において、付勢部材は、ユーザインターフェース部材本体とコネクタ部との間(たとえば、(送達面などの)外部作動面とコネクタ部との間)に配置される。
【0066】
一実施形態において、付勢部材は、導電性である。付勢部材は、電源に導電連結される。付勢部材は、センサコントローラならびに/または電子システムの構成要素の他の電子もしくは電気動力ユニット(たとえば、電源)に導電連結される。
【0067】
付勢部材は、電源から電子システムの他のユニットまたは構成要素(センサコントローラまたは電子制御ユニットなど)への電力の案内に役立つことができる。付勢部材は、検知領域をユーザインターフェース部材本体に対して近位方向に付勢する(たとえば、送達面を形成するまたは画成するユーザインターフェース部材本体のセクションの内面に隣接する)ことができる。検知領域は、当該検知領域が関連付けられた外部作動面を画成するユーザインターフェース部材本体と付勢部材との間に固定される。
【0068】
付勢部材は、電源側への(たとえば、ユーザインターフェース部材本体に対する)可撓性導体キャリアの付勢および/または他方のキャリア(たとえば、剛性の導体キャリア)側への電源の付勢によって、場合により、電源と他方のキャリア(たとえば、その導体または端子)との間の導電連結を確実にする。付勢部材は、別個の検知電極として機能することができ、たとえばコネクタ電極と付勢部材との間の機械的接点により、可撓性導体キャリアのコネクタ領域においてコネクタ電極と導電連結される。
【0069】
一実施形態において、可撓性導体キャリアは、同じ外部作動面(たとえば、送達面または設定面)と関連付けられた複数の検知領域を有する。各検知領域においては、電極構成の1つまたはそれ以上の電極トラックが延びることができる。異なる検知領域における電極トラックの構成を同一にすることができる。各検知領域(たとえば、各第2の検知領域)は、可撓性導体キャリアの別々の連結領域を介して、可撓性導体キャリアの別のキャリア領域(たとえば、第1の検知領域)に連結される。この場合、外部作動面は、好ましくは同じ電極トラック構成および/または各検知領域に設けられた同じ電極トラックの一部を有する複数の検知領域により網羅またはモニタリングされる。したがって、外部作動面のモニタリングは、多様な検知領域に分散される。これは、それぞれの検知領域のサイズおよび重量の抑制を容易にする。したがって、連結領域は、その固有の弾性により、それぞれの検知領域を外部作動面に向かって付勢することが容易になる。この場合は、上記目的または付勢部材の異なる寸法規定のため、別個の付勢部材を免除することが容易になる。
【0070】
一実施形態において、ユーザ近接検出ユニットは、外部作動面に対する物体(たとえば、ユーザの指などの可変物体)の近接をモニタリングするように構成される。
【0071】
一実施形態において、外部作動面は、表面構造を含む。表面構造は、1つまたはそれ以上の窪みまたは凹部を含むことができる。窪みまたは凹部は、相互に分離されるか、または、連結される。窪みまたは凹部は、ユーザが外部作動面に接触した場合に、ユーザの指(たとえば、親指および/または人差し指)の皮膚などの可変物体が当該窪みまたは凹部中へと偏向されるように寸法規定される。このように、ユーザの皮膚と検知領域との間の距離が抑えられる。検知対象の物体が検知領域に近いほど、通例は信号がより顕著になる。表面構造により、ユーザが外部作動面に近いものと非可変物体(たとえば、金属物体)が誤って評価されるリスクが抑えられる。外部作動面の表面構造は、ユーザインターフェース部材本体により画成される。ユーザインターフェース部材本体は、変化する厚さを有することができる。外部作動面としての設定面の場合、本体の半径方向厚さは、設定面の軸方向延伸および/または角度方向延伸に沿って変化することができる。外部作動面としての送達面の場合、本体の軸方向厚さは、送達面の半径方向延伸および/または角度方向延伸に沿って変化することができる。特に検知領域と関連する外部作動面との間の領域におけるユーザインターフェース部材本体の厚さは、検知面と関連する外部作動面との間の距離を規定することができる。したがって、この距離は、たとえば表面構造によっても同様に変化することができる。
【0072】
一実施形態において、外部作動面は、当該外部作動面に容易には適合しない硬質または剛性の導電性物体(たとえば、金属および/または剛性物体)との比較により、外部作動面に容易に適合する軟質または可撓性の導電性物体(たとえば、ユーザの指または親指の皮膚)に対してユーザ近接検出ユニットが高い感度を有するように構成される。これは、上述のような表面構造により実現される。
【0073】
一実施形態において、センサ電極システムは、外部作動面に沿ったユーザインターフェース部材本体の厚さ変動および/または外部作動面と関連付けられた検知領域からの外部作動面の距離変動を補償するように、好ましくは検知領域において電極構成が調整、好ましくは設定されるように構成される。厚さまたは距離変動は、ユーザインターフェース部材本体の表面構造によるものとすることができる。電極構成は、特に厚さ変動に関わらず、センサ電極システムによりモニタリングされるセンサ電極システムを含むセンサの感度が外部作動面(たとえば、設定面)に沿って一様となるように構成される。したがって、提案の解決手段では、同じセンサによりモニタリングされる外部基準面に沿った感度変動よりも、外部作動面に沿った(たとえば、設定面に沿った円周方向および/または軸方向の)センサ感度の変動を小さくすることができる。基準面は、滑らかにすることができるため、ユーザインターフェース部材本体の内面または検知面に適合するセンサ電極システムの検知領域から一定の距離を有する。基準本体の一般形状は、ユーザインターフェース部材本体と同じにすることができる一方、厚さ変動は伴わない。基準面は便宜上、ユーザインターフェース部材本体と同じ材料の基準本体の表面である。基準面に沿った基準本体の厚さは、一定にすることができ、また、ユーザインターフェース部材本体の最大厚さと最小厚さとの間にすることもできる。検知領域からの外部基準面の距離は、検知領域からの外部作動面の最大距離と最小距離との間にすることができる。電極構成は、検知領域における1つまたは複数の電極トラックの構成により厚さ変動に合わせて調整される。たとえば、基準電極および検知電極は、検知領域において交互配置されるが、これは、構造化表面がセンサ電極システムによりモニタリングされる場合であっても一様な感度を提供するのに特に好適と考えられる。
【0074】
一実施形態においては、センサ(たとえば、容量センサ)がセンサコントローラおよびセンサ電極システムを含む。
【0075】
一実施形態において、電子システムにおいては、接点連結領域および第2の検知領域が同じ方向に配向されるか、または、接点連結領域およびコネクタ領域が同じ方向に配向される。
【0076】
一実施形態において、電子システムにおいては、接点連結領域および/または第2の検知領域が第1の検知領域に対して斜めまたは垂直である。
【0077】
一実施形態において、電子システムは、導体キャリア(たとえば、剛性導体キャリア)などのキャリアを含む。キャリアは、電子システムの可撓性導体キャリアに加えて設けられる。電子システムのセンサコントローラ、電子制御ユニット、ならびに/または他のユニット(通信ユニットおよび/もしくは運動検知ユニットなど)は、キャリア上の配置および/またはキャリア上に設けられた導体に対する導電連結がなされる。キャリアは、プリント配線板とすることができる。
【0078】
一実施形態において、ユーザインターフェース部材は、ユーザインターフェース部材部品を含む。ユーザインターフェース部材部品は、ユーザインターフェース部材本体に対して、好ましくは軸方向および/または回転不能に固定される。ユーザインターフェース部材の内部は、ユーザインターフェース部材本体およびユーザインターフェース部材部品により区切られる。内部は、たとえば水分および/または塵埃に対して封止される。ユーザインターフェース部材部品をユーザインターフェース部材の遠位開口部に受け、好ましくは当該開口部を閉じる。ユーザインターフェース部材部品は、筐体とすることができる。
【0079】
一実施形態において、キャリアは、ユーザインターフェース部材部品に対して、たとえば軸方向および/または回転不能に保持される。
【0080】
一実施形態において、電極システム(たとえば、検知領域)は、ユーザインターフェース部材部品に巻き付けられる。
【0081】
一実施形態において、検知領域は、ユーザインターフェース部材部品および/またはキャリアの外面(たとえば、半径方向を向いた外面)に沿って延びる。検知領域は、たとえば遠位方向に平行な軸に対して、特に角度方向または円周方向において、キャリアまたはユーザインターフェース部材部品の全部または一部を囲むことができる。
【0082】
一実施形態において、電極システムの接点連結領域は、たとえば(剛性の)キャリアに向かって、ユーザインターフェース部材部品の外面に対して内方に延びる。接点連結領域は、たとえば直接またはキャリア上の導体を介して、センサコントローラに導電連結される。
【0083】
一実施形態において、可撓性導体キャリアは、たとえば回転不能および/または軸方向に、ユーザインターフェース部材部品に固定または保持される。検知領域は、ユーザインターフェース部材部品(たとえば、その外面)に固定される。ユーザインターフェース部材部品の突起を可撓性導体キャリアまたは電極システムの切り欠きに受けることにより、たとえば可撓性導体キャリアをユーザインターフェース部材部品に固定する。
【0084】
一実施形態において、電源は、可撓性導体キャリアの一部と(剛性の)キャリアとの間に配置される。可撓性導体キャリアの一部は、コネクタ領域とすることができる。可撓性導体キャリアの連結領域(たとえば、接点連結領域に向かって延びた連結領域)は、可撓性導体の一部および/またはキャリアから遠隔の電源の面からキャリアに向かって延びることができる。接点連結領域は、キャリア(たとえば、キャリア上の導体または端子)に対して機械的および/または電気的に連結される。接点連結領域は、可撓性導体キャリアをキャリアおよび/またはセンサコントローラに導電連結することができる。電源は、たとえば一方がキャリアに関連する連結部、他方がユーザインターフェース部材部品に関連する連結部を介して、可撓性導体キャリアによりユーザインターフェース部材部品および/またはキャリアに保持または固定される。言い換えると、本開示において、可撓性導体キャリアは、電子システムのサブアセンブリの構成要素を相互に保持する保持器または保持部材として機能することができる。サブアセンブリは、ユーザインターフェース部材本体に挿入される。構成要素は:キャリア、ユーザインターフェース部材部品、および/または電源とすることもできるし、これらを含むこともできる。これらの構成要素のほか、サブアセンブリは、可撓性導体キャリアを含むことができる。
【0085】
一実施形態において、電子システムの製造または組立ての方法においては、薬物送達デバイスの電極システムが用意される。電極システムは、上述のものとすることができる。電極システムは、好ましくは電気的に絶縁した可撓性導体キャリアを含むことができる。電極システムは、電極構成をさらに含むことができる。電極構成は、少なくとも1つの導電性電極トラックを含むことができる。電極トラックは、可撓性導体キャリアに沿って延びることができる。また、この方法においては、部品(たとえば、ユーザインターフェース部材部品)が用意される。
【0086】
一実施形態においては、電子ユニット(たとえば、センサコントローラ)が電極構成(たとえば、導電性電極トラック)に導電連結される。
【0087】
一実施形態において、この方法は、たとえば電極システムの1つまたはそれ以上の部分を他の部分に対して折り畳むことにより、電極システムを変形させることを含む。電極構成は、導体キャリアの表面が部品(たとえば、部品の外面)に沿って延びるか、または、部品に適合するように変形される。部品側を向く可撓性導体キャリアの表面は、電極構成から遠隔の可撓性導体キャリアの表面とすることができる。反対側は、検知領域を画成することができる。電極システムまたは可撓性導体キャリアは、たとえば可撓性導体キャリアの接点連結領域を介して電極トラックを電子ユニットと導電連結させる前または後に変形させることができる。
【0088】
一実施形態においては、電極システムが変形して部品の外面に沿って延びる前に、すでに電子ユニットに連結された接点連結領域に対して、可撓性導体キャリアのその他の部分が偏向される。
【0089】
一実施形態において、電極トラックを電子ユニットと導電連結させた後および/または部品に適合するように可撓性導体キャリアを変形させた後、ユーザインターフェース部材本体は、部品の反対を向いた可撓性導体キャリアの表面上を案内される。これにより、電子システムにおいては、ユーザインターフェース部材本体の内面と(ユーザインターフェース部材)部品の外面との間に可撓性導体キャリアのある領域が配置される。上述の通り、当該領域は、検知領域(たとえば、第1の検知領域)とすることもできるし、検知領域を含むこともできる。ユーザインターフェース部材本体およびユーザインターフェース部材部品は、たとえばしっかりと相互に連結される。
【0090】
一実施形態において、この方法は、付勢部材を用意することと、部品から離れる方向および/またはユーザインターフェース部材本体の内面に向かう方向に検知領域を付勢するように付勢部材を配置するように、付勢部材および可撓性導体キャリアのある領域(たとえば、第2の検知領域などの検知領域)を配置することと、をさらに含む。内面は、外部作動面の反対を向いたユーザインターフェース部材の表面(たとえば、外部に送達面を画成するユーザインターフェース部材本体の壁の内面)とすることができる。
【0091】
一実施形態においては、サブアセンブリが用意される。サブアセンブリは、たとえば電極トラックが電子ユニットに連結された後、部品に対して回転不能および/または軸方向に保持されるように設けられる。キャリア、電源、電子ユニット、および/または付勢部材は、サブアセンブリに属することができる。
【0092】
一実施形態において、サブアセンブリは、配向機能を含む。配向機能は、規定の相対配向(たとえば、相対角度配向)のみでサブアセンブリが部品上に配置されるか、または、部品に連結されることを確実にするように設けられる。規定の相対配向は、相対配向を1つだけ含むことができる。これにより、サブアセンブリの電子ユニットが規定の位置で部品に対して配置されることが確実になる。
【0093】
一実施形態において、可撓性導体キャリアは、外縁、特に、電源および/または部品(たとえば、ユーザインターフェース部材部品)の半径方向外縁に沿って延びる。
【0094】
一実施形態において、薬物送達デバイスは、薬物を入れたリザーバ(たとえば、カートリッジ)を保持するリザーバ保持器を含む、および/またはデバイスは、リザーバを含む。リザーバは、薬物送達デバイスが送達する複数のドーズ、好ましくはユーザが設定可能なドーズに十分な薬物を含むことができる。
【0095】
一実施形態において、薬物送達デバイスは、ペン型デバイスおよび/または注射デバイス(たとえば、針式注射器)である。
【0096】
一実施形態において、電子システムは、薬物送達デバイスユニットの(好ましくは再利用可能な)追加物として構成される。このシステムは、薬物送達デバイスユニットに取り付けられるように構成される。すなわち、電子システムは、複数の薬物送達デバイスユニットとともに用いられるように構成される。それぞれの薬物送達デバイスユニットは、使い捨ての薬物送達デバイスユニットとすること、ならびに/または、それぞれの薬物送達デバイスユニットは、ドーズ設定作動およびドーズ送達作動を実行するように完全に作動可能とすることができる。薬物送達デバイスユニットは、リザーバを含むことができる。薬物送達デバイスユニットは、電動ユニットまたはこのようなユニット用の構成要素をなくすことができる。
【0097】
一実施形態において、薬物送達デバイスまたは薬物送達デバイスユニットは、ドーズ設定および駆動機構を含む。ドーズ設定および駆動機構は、電子システムに連結または連結可能とされた第1の部材を含むことができる。ドーズ設定および駆動機構は、第2の部材を含むことができる。第1および第2の部材は、ドーズ設定作動のために連結される(たとえば、回転不能にロックされる)。ドーズ送達作動のため、第1および第2の部材は、たとえば相対的に回転可能な動きが可能となるようにデカップリングされる。ドーズ設定および駆動機構は、ピストンロッドをさらに含むことができる。第1の部材は、たとえば直接および/またはねじでピストンロッドに連結される。ドーズ送達作動中は、第1および第2の部材間の相対的に回転可能な動きが電子システムにより測定され、送達ドーズのサイズが決定される。
【0098】
一実施形態においては、薬物送達デバイスのキットが薬物送達デバイスユニットおよび電子システムを含む。システムをデバイスユニットに取り付けて、薬物送達デバイスを形成可能とすることができる。薬物送達デバイスに関して上記および以下に開示の構成、特に、電子システムと直接は関連しない構成は、薬物送達デバイスユニットにも当てはまり、その逆もまた同様であるものとする。
【0099】
本明細書において、「遠位」は、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端を向くもしくは指すように配置されたもしくは配置される方向、端部、もしくは表面、ならびに/または、近位端の反対を指す、反対を向くように配置される、もしくは反対を向いた方向、端部、もしくは表面を指定するために使用する。一方、「近位」は、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端の反対を向くもしくは指すように配置されたもしくは配置される方向、端部、もしくは表面、ならびに/または、遠位端の反対を向くもしくは指すように配置されたもしくは配置される方向、端部、もしくは表面を指定するために使用する。遠位端は、投薬端に最も近い端部および/または近位端から最も遠い端部とすることができ、近位端は、投薬端から最も遠い端部とすることができる。近位面は、遠位端の反対および/または近位端を向くものとすることができる。遠位面は、遠位端および/または近位端の反対を向くものとすることができる。投薬端は、たとえば針ユニットがデバイスに取り付けられたまたは取り付けられる針端とすることができる。
【0100】
有利な一実施形態において、薬物送達デバイスのセンサ電極システムは:
- 電気的に絶縁した可撓性導体キャリアと;
- 可撓性導体キャリアに沿って延び、導体キャリアに沿って相互に電気的に分離された少なくとも2つの導電性電極トラックを含む電極構成と、
を含み、
導電性電極トラックのうちの1つは、可撓性導体キャリアの検知領域において延びた検知電極を形成する。
【0101】
有利な一実施形態において、薬物送達デバイスの電子システムを製造する方法は:
- 電気的に絶縁した可撓性導体キャリアと、可撓性導体キャリアに沿って延びた少なくとも1つの導電性電極トラックを含む電極構成と、を含む電極システム(たとえば、上述の電極システム)を用意する工程と、
- 部品(たとえば、ユーザインターフェース部材部品)を用意する工程と、
- 可撓性導体キャリアの表面が部品に沿って(たとえば、部品の外面に沿って)延びるように電極システムを変形させる工程と;
- 少なくとも1つの導電性電極トラックを電子ユニットと導電連結することにより、たとえば電子システムを形成する工程と、
を含む。
【0102】
さまざまな態様および実施形態と併せて開示された構成は、たとえ明示的な議論がなくても相互に組み合わされる。たとえば、電極システム、電子システムに関する構成は、デバイスにも方法にもキットにも当てはめることができ、その逆もまた同様である。
【0103】
他の態様、実施形態、および利点については、図面と併せた例示的な実施形態に関する以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】薬物送達デバイスの一実施形態を示した図である。
【
図2】電子システムの一実施形態を示した図である。
【
図4】電極システムの一実施形態を示した図である。
【
図5】電子システムの一実施形態を示した図である。
【
図6】電極システムの一実施形態を示した図である。
【
図7】電子システムの一実施形態を示した図である。
【
図10-1】
図10A~
図10Dは、電子システムならびに電子システムの組立てもしくは製造のための方法の一実施形態を示した図である。
【
図11】電極システムの一実施形態を示した図である。
【
図12】電極システムの一実施形態を示した図である。
【
図13】電極システムの一実施形態を示した図である。
【
図14】電極システムの一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図中、同一の要素、同一作用の要素、または同種の要素には、同じ参照番号を付与している。
【0106】
以下、インスリン注射デバイスを参照して、いくつかの概念を説明する。本明細書に記載のシステムは、このデバイスにおいて実現される。ただし、本開示は、このような用途に限定されず、他の薬剤を押し出すように構成された注射デバイスすなわち一般的な薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイスおよび/もしくは注射デバイスのためにまたはそれらにおいて十分等しく使用される。
【0107】
以下、送達するドーズに関するデータの記録および/または追跡を行う注射デバイス、特に可変ドーズ注射デバイスに関する実施形態を提供する。これらのデータは、選択されたドーズのサイズおよび/または実際に送達されるドーズのサイズ、投与の日時、投与の継続時間などを含むことができる。本明細書に記載の構成は、(たとえば、小さなバッテリの促進および/もしくは効率的な電力使用の有効化のための)電力管理技術または関連する概念を含むことができる。
【0108】
本明細書における特定の実施形態は、たとえばSanofiのALLSTAR(登録商標)デバイスと同様に、注射ボタンおよびグリップ(ドーズ設定部材またはドーズ設定器)が組み合わされた注射デバイスに関して例示する。注射ボタンは、薬物送達デバイスのドーズ送達作動の開始および/または実行のためのユーザインターフェース部材を提供することができる。グリップまたはノブは、ドーズ設定作動の開始および/または実行のためのユーザインターフェース部材を提供することができる。デバイスは、ダイヤル延伸型とすることができる、すなわち、ドーズ設定中に長さが増大する。ドーズ設定およびドーズ排出作動モード中のダイヤル延伸部およびボタンの同じ運動学的挙動が他の注射デバイスとしては、たとえばEli Lillyから販売されているKwikpen(登録商標)もしくはSavvio(登録商標)デバイスならびにNovo Nordiskから販売されているFlexPen(登録商標)、FlexTouch(登録商標)、またはNovopen(登録商標)デバイスが知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は簡単に思われるため、これ以上の説明は省略する。ただし、本開示の一般原理は、このような運動学的挙動に限定されない。他の特定の実施形態は、注射ボタンおよびグリップ構成要素/ドーズ設定部材が別個に存在する注射デバイス(たとえば、SanofiのSoloSTAR(登録商標))に対する適用として着想される。このため、本開示は、ドーズ設定作動およびドーズ送達作動それぞれに1つずつ、2つの別個のユーザインターフェース部材を備えたシステムにも関連する。デバイスのドーズ設定構成およびドーズ送達構成を切り替えるため、ドーズ送達用のユーザインターフェース部材がドーズ設定用のユーザインターフェース部材に対して動かされる。1つのユーザインターフェース部材が設けられた場合は、ハウジングに対して遠位方向に当該ユーザインターフェース部材が動かされる。それぞれの動きの過程では、デバイスのドーズ設定および駆動機構の2つの部材間のクラッチがその状態を(たとえば、係合から解放、またはその逆)に変化させる。たとえば2つの部材における複数組の噛み合い歯により形成されたクラッチが係合されると、2つの部材は相互に回転不能にロックされ、クラッチが係合解除または解放されると、2つ部材の一方が部材の他方に対して回転可能とされる。部材の一方は、ドーズ設定および駆動機構のピストンロッドと係合する駆動部材または駆動スリーブとすることができる。駆動スリーブは、ドーズ設定中にハウジングに対して回転するように設計され、ドーズ送達中にハウジングに対して回転不能にロックされる。駆動スリーブとピストンロッドとの間の係合は、ねじ係合とすることができる。このため、駆動スリーブがドーズ送達中に回転不可能なことから、ハウジングに対する駆動スリーブの軸方向運動によって、ピストンロッドの回転が生じる。この回転は、送達作動中に、ピストンロッドとハウジングとの間のねじ連結によって、ピストンロッドの軸方向変位へと変換される。
【0109】
図1の注射デバイス1は、ハウジング10を含むとともに、容器14(たとえば、インスリン容器)またはこのような容器のレセプタクルを含む注射ペンである。容器は、薬剤(たとえば、インスリン)を含むことができる。容器は、カートリッジまたはカートリッジのレセプタクルとすることができ、レセプタクルは、カートリッジを含むこともできるし、カートリッジを受けるように構成することも可能である。容器またはレセプタクルには、針15が固定される。容器は、カートリッジとすることができ、レセプタクルは、カートリッジホルダーとすることができる。針は、内側針キャップ16ならびに外側針キャップ17もしくは別のキャップ18によって保護される。投与量ノブ12を回すことによって、注射デバイス1から押し出されるインスリンドーズが設定、プログラム、または「ダイヤル入力」された後、現在プログラムまたは設定されているドーズが投与量ウィンドウ13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。単位は、ノブ12のハウジング10に対する相対回転を1単位設定増分の整数倍でのみ許容するドーズ設定機構によって決定され、これにより1ドーズ増分が規定される。これは、たとえば適当なラチェットシステムによって実現される。ウィンドウに表示される印は、番号スリーブまたはダイヤルスリーブ70上に提供される。たとえば、注射デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成された場合は、いわゆる国際単位(IU)で投与量が表示される。1IUは、約45.5マイクログラムの純粋な結晶インスリンの生物学的同等量である(1/22mg)。類似のインスリンまたは他の薬剤を送達する注射デバイスにおいては、他の単位が採用される。選択されたドーズは、
図1の投与量ウィンドウ13に示されているのとは異なって十分等しく表示されることに留意されたい。
【0110】
投与量ウィンドウ13は、投与量ノブ12が回された場合に動いて、現在プログラムされているドーズの視覚的標示を提供するように構成されたダイヤルスリーブ70の制限部をユーザが視認できるようにするハウジング10のアパーチャの形態とすることができる。投与量ノブ12は、プログラム中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。
【0111】
本例において、投与量ノブ12は、データ収集デバイスまたは電子システムの取り付けを容易にする1つまたはそれ以上の構造71a、71b、71cを含む。ユーザインターフェース部材(ノブ12および/もしくはボタン11)または、一般的に、薬物送達デバイス1のドーズ設定および駆動機構の要素もしくは部材に取り付け可能な電子システムについては、以下により詳しく説明する。電子システムは、たとえばユーザインターフェース部材内に設けられる。また、以下により詳しく説明する電子システムは、薬物送達デバイスの追加物として構成される。
【0112】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことにより機械的クリック音が音響フィードバックをユーザに与えるように構成される。本実施形態において、投与量ノブまたはドーズボタン12は、注射ボタン11としても作用する。針15が患者の皮膚部分に刺された後、投与量ノブ12/注射ボタン11が軸方向に押されると、表示ウィンドウ13に表示されたインスリンドーズが注射デバイス1から押し出されることになる。投与量ノブ12が押し戻された後、注射デバイス1の針15が皮膚部分に一定時間留まると、ドーズが患者の体内に注入される。また、インスリンドーズの押し出しによっても機械的なクリック音を出すことができるものの、これは、ドーズのダイヤル操作中に投与量ノブ12を回転させた場合に生じる音とは異なる。
【0113】
本実施形態において、インスリンドーズの送達中、投与量ノブ12は、回転することなく、軸方向運動においてその初期位置に戻される一方、ダイヤルスリーブ70または番号スリーブ70は、回転してその初期位置に戻り、たとえばゼロ単位のドーズを表示する。上述の通り、本開示は、インスリンに限定されず、あらゆる薬物、特に液体薬または製剤を薬物容器14に含むものとする。
【0114】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるか、または、注射デバイス1内の薬剤の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまで、複数回の注射プロセスに使用される。
【0115】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、たとえば2単位のインスリンを選択し、針15を上に向けて注射デバイス1を保持しながら投与量ノブ12を押すことにより、いわゆる「プライムショット」の実行によって、インスリン容器14および針15から流体が正しく流れるようにすることを必要なものとすることができる。表現を簡素化するため、以下では、排出量が実質的に、注入ドーズに対応するものと仮定する。たとえば、注射デバイス1から排出される薬剤の量は、ユーザが受けるドーズに等しい。
【0116】
また、上記説明の通り、投与量ノブ12は、注射ボタン11としても機能するため、同じ構成要素がドーズのダイヤル操作/設定およびドーズの投薬/送達に用いられる。この場合でも、好ましくは限られた方法でのみ、相互に可動の2つの異なるユーザインターフェース部材を備えた構成も可能であることに留意する。ただし、以下の議論では、ドーズ設定およびドーズ送達の機能を提供する単一のユーザインターフェース部材に焦点を当てる。言い換えると、ドーズ設定作動のためにユーザが接触する部材の設定面およびドーズ送達作動のためにユーザが接触するドーズ送達面が固定的に連結される。あるいは、異なるユーザインターフェース部材が用いられる場合は、相互に可動とすることができる。それぞれの作動中、ユーザインターフェース部材は、デバイスの本体またはハウジングに対して動かされるのが好ましい。ドーズ設定中、ユーザインターフェース部材は、近位方向への移動および/またはハウジングに対する回転がなされる。ドーズ送達中、ユーザインターフェース部材は、好ましくはハウジングまたは本体に対して回転することなく、軸方向(たとえば、遠位方向)に動く。
【0117】
以下、薬物送達デバイスの電子システムの一実施形態を開示する。
【0118】
図2は、電子システム1000の一実施形態を模式的に示している。システム1000は、ユーザインターフェース部材1600を含む。ユーザインターフェース部材は、ドーズ設定作動および/またはドーズ送達作動中に、ユーザによって作動されるように設計される。ユーザインターフェース部材1600は、さまざまな外部作動面を有する。作動面は、ユーザインターフェース部材本体またはハウジング1605の外部からアクセス可能な外部面により画成される。ユーザインターフェース部材1600は、ドーズ設定作動の場合にユーザが把持するように配置された設定面1610を有する。特に回転により実行される場合のドーズ設定作動は通例、ユーザインターフェース部材との2点の接点を必要とする。たとえば、ユーザは通例、人差し指および親指などの2つの指でユーザインターフェース部材を把持する。設定面は、ユーザインターフェース部材1600を円周方向に区切る表面(たとえば、半径方向を向いた表面)である。また、ユーザインターフェース部材1600は、送達面1620を有する。送達面は、ドーズ送達の場合にユーザが接触する(たとえば、押す)ように配置される。送達面1620は、軸方向を向いた表面(たとえば、近位方向を向いた表面)である。図示の実施形態において、ユーザインターフェース部材1600は、カップ状構成を有する。上述の通り、本開示の実施形態は、設定および送達に異なるユーザインターフェース部材を採用することができる。ドーズ設定作動には、ユーザインターフェース部材1600の中心軸周りの回転を含むことができ、中心軸は、送達面1620と垂直に、送達面を通って延びることができる(明示的には図示せず)。
【0119】
ユーザインターフェース部材1600内(たとえば、ユーザインターフェース部材本体1605により画成された内部中空内)には、電子システムのいくつかの付加的な要素またはユニットが収容または配置される。具体的に、このシステムは、電気的なユーザ近接検出ユニット1330を含む。ユーザ近接検出ユニット1330は、ユーザの指(たとえば、人差し指および/または親指)が設定面1610に接近もしくは接触しているか、ならびに/または、送達面1620に接近もしくは接触しているか、を検出するように構成される。ユーザ近接検出ユニット1330は、センサコントローラ1340(たとえば、Azoteq IQS 228-AS型のコントローラ)を含む。センサコントローラ1340は、電極構成によって、電極システム1345に作動(たとえば、導電)連結される。センサコントローラおよびセンサ電極システムは、容量センサを一体的に形成する。センサ電極システム1345は、設定検知領域1310(第1の検知領域)を与えるか、または含む。センサ電極システム1345は、送達検知領域1320(第2の検知領域)を与えるか、または含む。設定検知領域1310は、設定面1610と関連付けられる。設定検知領域1310は便宜上、少なくとも設定面の反対を向いたユーザインターフェース部材本体1605の内面の大部分または全体に沿って(たとえば、少なくとも内面の角度方向延伸の350°または360°に沿って)延びる。設定検知領域1310は、設定面1610側を向く。送達検知領域1320は、送達面1620と関連付けられる。送達検知領域1320は、送達面1620側を向く。検知領域1320は、平面とすることができる。検知領域1310は、ユーザインターフェース部材の中心または主軸Aの周りに包囲または延伸する湾曲(たとえば、円筒状)構成を有することができる。設定検知領域および送達検知領域を有する代わりに、これらの領域の一方のみ(すなわち、設定検知領域または送達検知領域)が設けられる。また、図示の実施形態においては、両検知領域または関連する電極が共通のセンサコントローラ1340に連結される。また、設定検知領域および送達検知領域を別個のセンサコントローラに連結することも考えられる。ただし、便宜上は、両検知領域を同じセンサコントローラ、好ましくはセンサコントローラの異なるチャネルに連結する。電極システム1345の好適な実施形態については、以下により詳しく説明する。センサコントローラ1340は、電極システム1345の検知領域から(たとえば、それぞれのチャネルまたはチャネルの組合せから)、入力キャパシタンスまたは電界をモニタリングし、検知領域において検出されたキャパシタンス、キャパシタンスの変化、または電界の変化が所定の基準を満たす場合(たとえば、モニタリング量または値が閾値を上回る場合または下回る場合)に信号を出力する低電力コントローラとすることができる。基準は便宜上、当該基準が満たされた場合に、それぞれの外部作動面にユーザが接近または接触していることを特徴付けるように選定される。容量センサは、ユーザがモニタリング面から離れて0.5mm、0.4mm、0.3mm、または0.2mm未満となった場合に信号を出力するように構成される。ただし、容量センサの作動距離は、必要に応じて延長され、場合によっては短縮されることに留意する。ユーザ近接検出ユニット1330により生成された信号は、電子システムまたは当該システムを含む薬物送達デバイスの作動状態に影響を及ぼすために用いられる。設定検知領域および送達検知領域を有することにより、外部作動面の一方、すなわち、設定面または送達面のいずれにユーザが近づいているかを識別可能となる。これは、電子システムにおける異なる作動に用いられる。
【0120】
電子システム1000は、電子制御ユニット1100をさらに含む。制御ユニットは、プロセッサ(たとえば、マイクロコントローラまたはASIC)を含むことができる。また、制御ユニット1100は、プログラムメモリおよび/またはメインメモリなど、1つまたは複数のメモリユニットを含むことができる。プログラムメモリは、電子システムにより実行された場合に、当該システムおよび/または電子制御ユニットの作動を制御するプログラムコードまたはソフトウェアを記憶するように設計される。制御ユニット1100は便宜上、電子システム1000の作動を制御するように設計される。制御ユニット1100は、有線インターフェースまたは無線インターフェースを介して、電子システム1000の他のユニット(たとえば、センサコントローラ1340)と通信することができる。制御ユニット1100は、コマンドおよび/もしくはデータを含む信号のユニットへの送信、ならびに/または、それぞれのユニットからの信号および/もしくはデータの受信を行うことができる。
図2において、ユニットと電子制御ユニットとの間の連結は、線または矢印により表される。ただし、明示的には図示していないユニット間の連結も存在する。同様に、電極システム1345とセンサコントローラ1340との間の作動連結または導電連結については、矢印により示される。
【0121】
電子システムは、バッテリ(たとえば、コインセルまたは複数のコインセルのスタック)などの電源1500をさらに含む。電源は、およそ1.4~3Vの電圧でおよそ50~500mAhの総充電量を供給するように構成される。電源1500は便宜上、センサコントローラ1340および/または電子制御ユニット1100に導電連結される。電源は、好ましくはその寿命全体を通して、電子システムの作動のための全電力を供給することができる。電源に残る電力がシステムの作動に不十分となると、システムを廃棄する必要がある。
【0122】
電子システム1000は、導体キャリア3000(たとえば、(プリント)配線板)をさらに含む。電子システムの電気もしくは電子ユニットの構成要素またはすべてのユニットは、導体キャリア3000上の配置および/または導体キャリア上の導体への導電連結がなされる。導体キャリア3000は、剛性である。すなわち、導体キャリアは便宜上、好ましくは導体キャリアに力がかかっている場合であっても、地面に対する任意の配向にて、自重下でその形状を保つ。導体キャリア3000は、以下に詳しく論じるセンサ電極システム1345の可撓性導体キャリア1350よりも剛性とすることができる。可撓性導体キャリアは、自重下でその形状を保つことができる場合および保つことができない場合であるが、いずれにしても、外力が印加されると変形可能である。導体キャリア3000は、ユーザインターフェース部材本体1605に対して直接本体に固定されるか、または、別の部品に固定された後、本体に固定される(明示的には図示していない(後述のユーザインターフェース部材部品または筐体1670参照))。センサコントローラ1340および電子制御ユニット1100は、導体キャリア3000上に配置され、好ましくは導体キャリア上の導体に導電連結される。電源1500は、送達面1620と導体キャリア3000との間に配置される。これは、ユーザインターフェース部材1600のコンパクト設計を容易にする。
【0123】
電子システム1000は、電気的な運動検知ユニット1200をさらに含む。運動検知ユニット1200は、1つのセンサ(たとえば、1つのセンサのみ、または、複数のセンサ)を含むことができる。運動検知ユニットは便宜上、電子システムまたは薬物送達デバイスのある部材の別の部材に対する動き(たとえば、
図1と併せてさらに上述したデバイスにおける駆動スリーブまたはボタン/ノブに対するダイヤルスリーブまたは番号スリーブの動き)を示す電気信号などの運動信号を生成するように設計されており、センサは、部材のうちの1つ(たとえば、ノブもしくはボタンまたは駆動スリーブ)に固定連結される。この動きは便宜上、相対的に回転可能な動きである。相対的に回転可能な動きは便宜上、ドーズ送達作動中(たとえば、送達作動中のみ)に発生する。それぞれのセンサは、光電子センサとすることができる。光電子センサは、センサに対して動く部材から現れ、センサに衝突する放射線を検知して、センサ内(たとえば、光学エンコーダコンポーネント)でセンサ信号または運動信号を励起することができる。放射線は、光電子放射線源(たとえば、LED)などの放射線源から、動く部材により反射され、部材に衝突する放射線とすることができる。放射線源は、IR源(IR-LED(赤外発光ダイオード))とすることができる。放射線源は、少なくとも1つのセンサを含むセンサ構成の一部とすることができる。センサの考えられる一実施形態は、赤外光を検出するように構成されたIRセンサである。光源およびセンサは、同じ構成要素または部材に配置される。本明細書に論じる電子システムに好適な光電子センサ構成の一般的な機能については、WO2019/101962A1に開示されており、特にさまざまなセンサ構成および設定に関して、あらゆる目的でそのすべての開示内容を参照によって明示的に本明細書に組み入れる。ただし、他のセンサ構成(たとえば、磁気センサの使用)についても同様に採用されることに留意されたい。電動センサおよび/またはセンサを刺激する電動源(放射線エミッタおよび関連するセンサなど)を有する運動検知ユニットにおいては、電力消費が特に多くなるため、システムへの給電に利用可能な電力の適当な電力管理によって、特定の影響を及ぼすことができる。たとえば、ユーザ近接検出ユニットにより生成された信号は、非作動状態またはオフ状態から作動状態またはオン状態に運動検知ユニットを切り替えるのに用いられる。電子制御ユニット1100は、ユーザ近接検出ユニットにより生成され、電子制御ユニット1100への供給または電子制御ユニット1100による検出が行われる信号に応答して、高電力消費の作動状態へと運動検知ユニットを切り替えることができる。図示の実施形態において、運動検知ユニットは、送達面1620および/もしくは電子制御ユニット1100またはセンサコントローラ1340の反対を向いた導体キャリアの表面上に配置される。これは、光電子ユニットが運動検知に使用され、運動を検知すべき部材が導体キャリアに対して運動検知ユニット1200と同じ側に配置されている場合に特に好適である。
【0124】
運動検知ユニット1200は、ドーズ送達作動中に、薬物送達デバイスのドーズ設定および駆動機構または薬物送達デバイスのためのドーズ設定および駆動機構のある部材について、ドーズ設定および駆動機構の別の部材に対するまたはハウジング10に対する相対的な動きを検出し、好ましくは測定または定量化するように設計される。たとえば、運動検知ユニットは、薬物送達デバイスのドーズ設定および駆動機構の2つの可動部材相互の相対的に回転可能な動き(たとえば、駆動スリーブまたはユーザインターフェース部材のボタン/ノブに対するダイヤルスリーブまたは番号スリーブの動き)を測定または検出することができる。ユニット100から受けた動きデータまたはユニット100の信号から計算した動きデータに基づいて、電子システム(たとえば、制御ユニット1100)は、ドーズデータ(たとえば、継続中または完了したドーズ送達作動において、現在送達されているドーズに関するデータ)を計算することができる。運動検知ユニット1200は便宜上、電子システムまたは薬物送達デバイスの第1の部材と第2の部材との間の相対的な動きを定量化するように構成される。相対的な動きは、送達ドーズを示すことができる。相対的な動きは、相対的に回転可能な動きとすることができる。たとえば、第1の部材は、ドーズ送達中などに、第2の部材に対して回転することができる。運動検知ユニットは便宜上、1単位設定増分の整数倍で相対的な動きを定量化するのに適する。単位増分は、次のような値:5°、10°のうちの1つ以上の角度とすることもできるし、このような角度により規定することもできる。単位設定増分は、次のような値:25°、20°のうちの1つ以下の角度とすることもできるし、このような角度により規定することもできる。単位設定増分は、たとえば5°~25°とすることができる。単位設定増分は、たとえば15°の相対回転に対応することができる。単位設定増分は、デバイスにより送達される最小設定可能ドーズの設定に必要な回転とすることができる。上記説明の通り、運動検知ユニットにより決定される第1および第2の部材間の相対的な動きの量または距離は、ドーズ設定作動における現在の設定ドーズまたはドーズ送達作動における現在の投薬ドーズを特徴付けることができる。送達されたドーズのサイズは、ドーズ送達作動中にドーズ設定および駆動機構のピストンロッドがハウジング10に対して遠位方向に変位した距離により決定されるか、または、そのような距離に対応することができる。
【0125】
運動検知ユニットは、二重矢印により示唆される通り、電子制御ユニット1100に双方向導電連結されるのが好ましい。一方向は、電子制御ユニットから運動検知ユニットに起動信号が送信され、ユニットが作動状態に切り替えられる方向とすることができる。他方向においては、運動信号が運動検知ユニットから制御ユニットに送られ、信号の別途処理によって、たとえばドーズ情報またはデータが計算される。
【0126】
ユーザインターフェース部材本体1605は、ユーザが電極1345と重なる領域の外部面に接触する際、電極1345に接触しないように、電極システム1345とユーザインターフェース部材の外部面との間に配置される。ただし、ユーザは、電極に接触するとも考えられる。内部に電極を有することにより、外部の影響(たとえば、水分および/または塵埃)に対する内部の封止が容易となる。ユーザインターフェース部材の内部を封止することは、好適な一実施形態である。このため、
図2に示す遠位開口部は、たとえば上述したが、以下でさらに説明するユーザインターフェース部材部品または筐体1670によって閉じられる。電極システム1345は、当該電極システム1345との組合せでコントローラ1340により形成された容量センサの大きな感度表面積を提供することができる。センサは、センサ電極1345からコントローラへの電気特性入力をモニタリングする(低電力)コントローラとすることもできるし、そのようなコントローラを含むこともできる。センサコントローラ1340は便宜上、センサ管理の実行またはある頻度(ポーリング頻度)または応答速度でのセンサ信号の取得を行うように構成される。この頻度または応答速度は、次のような値:10Hz、5Hz、4Hz、3Hz、2Hz、1Hzのうちの1つ以下とすることができる。センサ1340の電力消費は、次のような値:15μA、10μA、8μA、7μA、6μA、5μA、4μA、3μAのうちの1つ以下とすることができる。電力消費は、測定が行われる頻度によって決まることが明らかである。センサがポーリングされる、すなわち測定が行われる頻度が高いほど、電力消費は多くなる。上述の電力消費の大きさのオーダーは、上述の頻度にも当てはめることができる。頻度は、ユーザ近接検出ユニット1330がユーザインターフェース部材の設定面に対する近接をモニタリングする場合に特に好適である。ユーザがシステムもしくはデバイスの作動のために2つの表面を切り替える必要があるためドーズ設定とドーズ送達との間の時間が比較的長くなることから、ならびに/または、ユーザのウィンドウ検査による設定ドーズの確認および/もしくは調整が必要となるためドーズの設定には通例、多くの時間を要することから、頻度は、より低くても十分なものとすることができる。送達面がセンサによりモニタリングされる場合、頻度は、次のような値:40Hz、50Hz、60Hz、70Hz、80Hz、90Hz、100Hzのうちの1つ以上とする必要がある。この場合、電力消費はより多くなる(たとえば、次のような値:30μA、40μA、50μA、60μA、70μA、80μA、90μA、100μAnうちの1つ以上)。ユーザ近接検出ユニットにより生成された信号が高電力消費の状態へのシステムの切り替えに使用される場合、特に、作動状態への運動検知ユニットの切り替えに使用される場合は、より高い頻度が特に好適である。送達面の接触がかなり近くで発生するドーズ送達作動中は、ユニットが作動している必要があるためである。送達面への近接が別の目的(たとえば、通信ユニット(以下参照)関連など、システムの別の機能の起動目的)でモニタリングされる場合は、上述の規定よりも低い頻度または応答速度が好適となる。センサコントローラ1340および制御ユニット1100は、キャリア3000の同じ表面または異なる表面に搭載される。
【0127】
ユーザインターフェース部材1600の外部から見た場合(たとえば、送達面1620の上面視)の部材の半径方向幅または直径は、次のような値:2.5cm、2cm、1.5cmのうちの1つ以下とすることができる。代替的または追加的に、ユーザインターフェース部材の半径方向幅または直径は、次のような値:0.5cm、0.7cmのうちの1つ以上とすることができる。半径方向延伸は、ドーズ設定中のユーザインターフェース部材の回転軸に対して決定されるか、または、ユーザインターフェース部材の長手方向主軸もしくは中心軸に対して決定され、これらの軸は一致することができる。ユーザインターフェース部材1600の長さまたは軸方向延伸は、次のような値:2.5cm、2cm、1.5cmのうちの1つ以下とすることができる。代替的または追加的に、ユーザインターフェース部材1600の長さまたは軸方向延伸は、次のような値:0.5cm、0.7cmのうちの1つ以上とすることができる。たとえば、ユーザインターフェース部材の半径方向幅を18mm、長さを19mmとすることができる。
【0128】
電子システム1000は、通信ユニット1400(たとえば、RF、WiFi、および/またはBluetoothユニット(たとえば、BLE(Bluetooth Low Energy)ユニット))をさらに含む。通信ユニット1400は、システムまたは薬物送達デバイスと他の電子デバイスなど(たとえば、携帯電話、パソコン、ラップトップなど)の外部デバイスとの間の通信インターフェースとして設けられる。たとえば、通信ユニットによって、ドーズデータの外部デバイスへの送信および/またはデバイスとの同期が行われる。ドーズデータは、外部デバイスに構築されたドーズログまたはドーズ履歴に使用される。通信ユニットは、無線通信用に提供される。外部デバイスとの通信を確立しようとする試みは特に、たとえばドーズ送達作動を示す相対的な動きを運動検知ユニットが測定した後、電子システムの作動ルーチン内に含まれる。また、電子システム1000は、たとえば外部デバイスとの通信を確立しようとする試みが失敗した場合またはこのようなデバイスが利用不可能であった場合に、たとえば外部デバイスとのデータ同期を実行するため、通信ユニットが別途作動される機能を含むことができる。この機能は、特に所定の時間(たとえば、10s)以内に、送達面の近接を示す信号に先立って設定面に接触することがなかった場合、たとえば送達面を介してトリガまたは作動される。ドーズデータは、電子システム内に一時的または恒久的に記憶されるが、たとえば、最新の送達作動に関連する最新のドーズデータのみ、または、送達された1つのドーズまたは複数のドーズ(たとえば、全ドーズ)についての日付、時間、および/またはサイズなどのドーズデータを含むドーズ履歴データがある。
【0129】
すでに論じた通り、ユーザ近接検出ユニット(たとえば、センサコントローラ1340)は、高電力消費の状態への電子制御ユニット1100または電子システムの切り替えまたは切り替えのトリガに用いられる信号(たとえば、近接信号)を出力するように構成される。近接信号は、電子制御ユニット1100への供給または電子制御ユニット1100による検出が行われ、電子制御ユニット1100はその後、電子システムの作動状態に影響を及ぼすコマンドまたは信号を発行することができる。高電力消費の状態において、運動検知ユニット1200および/または通信ユニット1400は、作動することができる。近接信号は、ユーザが設定面に近いことを示す信号(設定信号)とすることができる。設定面の近接信号は、運動検知ユニットおよび/または通信ユニットのウェークアップへの使用に代えて、この信号はたとえば送達面1620への近接をセンサコントローラ1340が測定またはポーリングする頻度の増大による送達面のモニタリングの電力消費の増大に用いられる。ユーザが送達面に近いことを示す送達面の近接信号(送達信号)は、運動検知ユニットおよび/または通信ユニットの作動に用いられる。追加または代替の可能性として、たとえば所定の時間間隔内で設定信号が送達信号に先行する場合のみ、または、好ましくは所定の時間間隔内に先行する設定信号がない場合のみ、送達信号が通信ユニット1400を起動させる。この近接信号は、ドーズ送達作動とは別個の外部デバイスとのデータ同期イベントの開始に用いられる。このため、運動検知ユニットは、通信ユニットが作動であっても非作動であっても、作動することができる。
【0130】
電子システム1000は、追加ユニットまたはモジュールとして、好ましくは解放可能に薬物送達デバイスユニットに連結されるように構成される。薬物送達デバイスユニットは、電子的なもの以外とすることができる。したがって、すべての電子機器が電子システム中に設けられる。薬物送達デバイスユニットは、使い捨てとすることができる。すなわち、このユニットは、当該ユニットおよびシステム1000を含む薬物送達デバイスの使用により当該ユニットのリザーバが空になった後、廃棄される。電子システム1000は、薬物送達デバイスユニットから取り外され、別の薬物送達デバイスユニットに再利用される。薬物送達デバイスユニットは、それ自体で完全に機能するものとして、すなわち、送達するドーズの設定および設定ドーズの送達を行うように作動するものとして構成されるのが好ましい。1つの例示的なユニットが
図1に示すものである。電子システムは、その他の点では完全に機能するユニットの純粋な追加物とすることができる。あるいは、薬物送達デバイスは、一体部分、すなわち、デバイスのその他の部分とともに廃棄される部品および/または薬物のドーズの設定および送達のためのデバイスの作動に必要な部品として、電子システムを含むことができる。たとえば、電子システムがなければ、薬物送達デバイスユニットには、ドーズ設定作動またはドーズ送達作動を実行するためにユーザがアクセスできる表面がないことになるためである。
【0131】
薬物送達デバイスユニットへの連結のため、電子システムは、1つまたはそれ以上の連結機能1615(たとえば、スナップ機能)を含むことができる。それぞれの連結機能は、ユーザインターフェース部材1600の遠位部(たとえば、部材の内部)に配置される。上述の通り、ユーザインターフェース部材部品は、ユーザインターフェース部材1600の近位端を閉じることができる。この場合、連結機能1615は便宜上、ユーザインターフェース部材本体1605に対して回転不能および/または軸方向に保持されたユーザインターフェース部材部品上に設けられる。システム1000は便宜上、ドーズ設定および駆動機構の部材などの薬物送達デバイスユニットの部材に対して(たとえば、
図1と併せて論じたユニットの駆動スリーブまたはドーズノブおよび/もしくは注射ボタンに対して)、恒久的または取り外し可能に機械的連結されるように構成される。システムは、たとえばユーザインターフェース部材本体1605を介して、薬物送達デバイスユニットの部材に回転不能かつ軸方向にロックされる。システムが連結された部材は便宜上、ドーズ設定およびドーズ送達中に(たとえば、設定中は回転不能および/または軸方向に、送達中は軸方向にのみ)ハウジング10に対して可動である。システムが連結された部材は、たとえばねじでピストンロッドに係合することができる。
図1のユニットのドーズノブおよび駆動スリーブは、ドーズ設定およびドーズ送達中、一体的に形成されるか、または、単一の部材として作用することができる。たとえばクラッチによって、ドーズ設定中のダイヤルスリーブおよび駆動スリーブが同速度で回転し、ドーズ送達中にダイヤルスリーブが駆動スリーブに対して回転するように、ドーズ設定中は、駆動スリーブが、ドーズ設定および駆動機構のダイヤルスリーブに対して選択的に回転不能にロックされる。ダイヤルスリーブは、番号スリーブとすることができる。ドーズ送達中のダイヤルスリーブと駆動スリーブとの相対的な回転は、運動検知ユニットにより測定される。ただし、当業者には、異なる機能を有するドーズ設定および駆動機構にも開示の概念が機能することが容易に明らかとなるであろう。
【0132】
図2に示す電子システム1000は、連結検出ユニット1700を含む。連結検出ユニット1700は、電子システムが薬物送達デバイスユニットに連結されているかを検出するように構成される。このシステムは、薬物送達デバイスユニットへの連結が検出された場合に、当該電子システムが高電力消費の状態に切り替えられるように構成される。連結検出ユニットが薬物送達デバイスユニットへの連結を検出した場合は、検出信号が生成またはトリガされる。電子システム1000は、検出信号に応答して、高電力消費の状態に切り替えられるように構成される。
【0133】
たとえば、連結検出ユニット1700は、電源1500を電子システムの他の構成要素またはユニットに導電連結させることにより、たとえば電子制御ユニットによって適当に起動された場合に、これらの構成要素またはユニットを機能させることができる。具体的に、薬物送達デバイスユニットへの連結が検出された場合は、電源からそれぞれの構成要素またはユニットに電力を供給することもできる。連結が検出されない場合、電源は、電子システムのそれぞれの構成要素またはユニットから切断される。したがって、連結検出ユニットは、デバイスユニットへの連結が検出されない場合に電源を遮断する断続器とすることもできるし、断続器に連結することもできる。
【0134】
代替的または追加的に、連結検出ユニット1700は、ユーザ近接検出ユニット1330を高電力消費の状態(たとえば、近接またはユーザ検出ユニットが作動される状態)に切り替えるように構成される。連結検出ユニットによって高電力消費の状態に切り替えられる前、近接またはユーザ検出ユニットは、第1の状態で作動することができない。連結検出ユニットは、容量センサまたは関連するセンサコントローラの起動をトリガして、たとえば、好ましくは低頻度で設定面および/または送達面への近接を検知することができる。
【0135】
したがって、連結検出ユニット1700は、電子制御ユニット1100に連結され、電子制御ユニットによってそれぞれのユニットの起動もしくは高電力消費の状態への切り替えを行うか、または、それぞれのユニット(たとえば、センサコントローラ1340)に直接連結され、連結検出ユニットによって高電力消費の状態に切り替えるものとする。連結検出ユニット1700は、たとえばマイクロ(力)スイッチなどのスイッチ1710を含むことができる。スイッチは、ユーザインターフェース部材本体1605の開口部側を向いたキャリア3000側に配置される。開口部は、デバイスユニットおよびシステムが連結された場合に、デバイスユニットの部材を受けるように設計される。スイッチ1710は、薬物送達デバイスユニットの部材との機械的接触もしくは機械的相互作用を行うような配置ならびに/または当該部材によりトリガされるような配置がなされる。この部材は、連結機能1615を介して電子システム1000が連結されるものと同じ部材とすることができる。スイッチがトリガされると、ユーザ検出ユニットまたはユーザ近接検出ユニットは、作動可能状態になることができる。このように、保管中のユニットの電力消耗が回避されるか、または、少なくとも大幅に少なくなる。
【0136】
たとえば、ユーザ近接検出ユニットに関して上述した通り、システムが容量センサを含む場合、ユーザが関連する表面に近いかを確認するようにセンサが動作する場合は、たとえば上述のような頻度で測定を周期的に実行することを必要とすることができる。あらゆる測定において、電源から電力が消耗される。したがって、システムが薬物送達デバイスユニットに連結されていない場合は、このような電力消耗が完全に不要となり、連結検出ユニットは、上述したように、たとえば低頻度で作動するように容量センサをオンに切り替えることができる。このため、連結検出ユニットは、特に薬物送達デバイスユニットから分離されている場合の電子システムの保管の期間中の電力管理を改善する。
【0137】
上述のような連結検出ユニット1700は、ユーザ近接検出ユニット1330のみならず、電子制御ユニット、運動検知ユニット、通信ユニット、またはさらに他のユニットなど、電子システムの他のユニットにも適することに留意する。たとえば、連結検出ユニットはまた、設定センサ、送達センサ、および/またはウェークアップユニットであろうと、特定の状況において実行可能なものとともに作動することができる。システムがデバイスユニットに連結されたことを連結検出ユニットが検出していない場合は、電力消費をゼロにすることもできるし、電子システムのユーザ検出ユニットのみが起動している場合の電力消費より少なくすることもできる。
【0138】
図3A~
図3Cは、電子システム1000および/または電極システム1345の一実施形態を示している。
【0139】
図3Aは、たとえば
図1に関して上述したデバイス1への組込みまたはデバイスユニット1への追加物としての連結がなされるような、薬物送達デバイスの電子システム1000の模式斜視図である。全体的な設定は、すでに上記で説明した通りである。したがって、この説明では、未だ論じていないことに焦点を当てる。
【0140】
図3Aは、好ましくはプラスチックまたは電気的絶縁本体であるユーザインターフェース部材本体1605により形成された設定面1610および送達面1620を備えたユーザインターフェース部材1600を示している。設定面1610は便宜上、ユーザの指の皮膚がユーザ近接検出ユニット1330の電極システム1345に可能な限り近づくことを容易化するように構造化される。ただし、ユーザインターフェース部材本体1605は、円周方向に閉じられているのが好ましい。特に、設定面は、連続面とすることができる。半径方向を向くとともに角度方向に延びた設定面には、開口部が存在しない場合がある。軸方向を向くとともに半径方向に延びた送達面1620にも同じことを当てはめることができる。このため、ユーザインターフェース部材本体1605は、近位方向にも閉じられているのが好ましい。これは、すでに論じた通り、1つまたはそれ以上の電気的または電子的構成要素を収容する封止内部をユーザインターフェース部材1600内に設けることを容易化する。さらに、
図3Aには、
図3Bの断面斜視図に断面を取得する平面を視覚化した平面Pを示す。
【0141】
図3Bは、ユーザインターフェース部材本体1605を示している。さらに、電子制御ユニット1100を備えた導体キャリア3000が示される。ユーザインターフェース部材本体1605には部品1630が保持され、好ましくは、たとえば回転不能および/または軸方向に本体に固定される。部品1630は、以下に論じるスペーサコンポーネント1510(図示せず)とすることができる。スペーサコンポーネントは、ユーザインターフェース部材内に導体キャリア3000上の電子的構成要素の(取り付け)スペースの画成、ならびに/または、内部における電源などの他の構成要素からの電子的構成要素間の距離を維持できる。スペーサコンポーネントの代替として、部品1630は、たとえば遠位方向にユーザインターフェース部材の内部を区切ることができるユーザインターフェース部材部品または筐体1670(この描写には図示せず)とすることができる。本目的のため、一般的な部品1630について論じれば十分である。部品1630は、円周方向の伸び、好ましくは円周方向に閉じられた外面を有することができる。ユーザインターフェース部材1605は、部品1630の外面に対向する内面を有する。内面は、円筒状構成を有することができる。部品1630の外面とユーザインターフェース部材本体1605の内面との間には、電極システム1345またはその少なくとも1つの検知領域(設定検知領域1310など)が配置される。電子システムの可撓性導体キャリア1350上には、電極構成1360が設けられる(好適な電極構成の詳細については以下に詳しく論じる)。可撓性導体キャリア1350および電極システム1345は、ユーザインターフェース部材本体1605の内面、特に、設定面1610を画成する同じ壁の表面(ただし、設定面の反対)に適合することができる。内面に適合された場合の可撓性導体キャリア1350の円周方向延伸は便宜上、次のような値:270°、355°、360°、400°のうちの1つ以上である。代替的または追加的に、円周方向延伸は、次のような値:540°、450°のうちの1つ以下である。特定の範囲(たとえば、270°超かつ540°以下)の円周方向延伸を有することにより、作動面(この場合は、設定面1610)の大きな割合の部分に電極構成を提供することができる。360°を超える延伸を有することにより、可撓性導体キャリア1350のある領域が可撓性導体キャリア1350の別の領域によって半径方向に(たとえば、半径方向外方に)覆われるため、導体キャリアの慎重に扱うべき領域を導体キャリアの別の領域で保護することが容易にすることができる。
【0142】
電極システム1345は、電気的絶縁導体キャリア1350に沿って延びた複数の導電性電極トラックを有するのが好ましい。可撓性導体キャリア1350は、その上を延びる電極トラックの電極構成とともに、センサ電極システム(たとえば、可撓性プリント配線板)を形成することができる。電極システム1345は、全体的に可撓性とすることができる。可撓性導体キャリア1350は、接点連結領域1352を有する。接点連結領域1352には、1つまたはそれ以上の導電性端子が設けられ、各端子は、電極システムのある導電性電極トラックと関連付けられるか、または、その一部とすることができる。接点連結領域1352は、fccコネクタに連結されるように構成されるか、または、fccコネクタを含むことができる。接点連結領域1352を介して、電極システム1345は、導体キャリア3000上に配置されたセンサコントローラ1340と直接、導電連結されるか、または、導体キャリア3000上の導体を介してもしくはセンサコントローラ1340に対するコネクタを介してなど、間接的に導電連結される。これは、電極構成および可撓性導体キャリア1350を含むセンサ電極システム1345に対するセンサコントローラ1340の作動連結を提供する。すでに上述した通り、センサコントローラおよびセンサ電極システムは、容量センサを一体的に形成する。電極トラックと関連付けられた可撓性導体キャリアの接点連結領域1352は、たとえば半径方向において、および/または、キャリア3000に対して垂直に延びることができるユーザインターフェース部材1600の軸と垂直な方向に見た場合、部品1630の外面から内方に延びることができる。電極システム1345または可撓性導体キャリア1350は便宜上、ユーザインターフェース部材1600に配置された場合、変形構成または形状を有する。すなわち、形状または構成は、非変形または第1の構成または形状から、システムをユーザインターフェース部材に配置するための変形または第2の構成または形状に変化している。可撓性導体キャリア1350および電極構成を備えた電極システム1345は便宜上、電極システムまたは可撓性導体キャリアがユーザインターフェース部材1600に適用された場合、非変形構成または形状を再構築しようとする固有の弾性復元力によって、その非変形形状に戻る傾向となるように弾性変形可能である。弾性は、電極構成、可撓性導体キャリア、または両者により与えられる。電極システムまたは可撓性導体キャリア1350がかける弾性復元力は、電極システムまたはその領域をユーザインターフェース部材本体1605の内部面または壁に適合させるのに用いられる。この場合、設定面1610の反対、特に、半径方向および/または内方を向いたユーザインターフェース部材本体1605の内面は、可撓性導体キャリアの電極システムが適合する表面を画成する。可撓性導体キャリアの非変形構成は、平坦または平面構成とすることができる。すなわち、非変形構成において、可撓性導体キャリアは、平面に沿って配向される。
【0143】
図3Cは、2つの異なる描写すなわちAおよびBを用いて、弾性復元力の影響または使用を示している。描写Aは、たとえば遠位開口部を通じて、センサ電極システム1345がユーザインターフェース部材本体に導入された状態を示す。センサ電極システムをユーザインターフェース部材本体に導入するため、センサ電極システムは、たとえばユーザインターフェース部材本体の開口部の幅よりも延びた第1の構成から、たとえば延伸が幅未満である第2の構成へと変形されている。第1の構成は、非変形構成とすることができる。第2の構成は、変形構成および/または電子システムの組立てにおける中間構成とすることができる。第2の構成において、電極システム1345は便宜上、少なくとも1つまたはそれ以上の領域において、部品1630の外面に適合する。このため、部品1630の外径は、第2の構成における電極システムの寸法(たとえば、その直径)を決定することができる。接点連結領域1352は、検知領域1310に対して、および/または、検知領域1310を起点として、内方(たとえば、半径方向内方)に延びる。接点連結領域1352は便宜上、上述の通り、センサコントローラ1340に導電連結されるが、ここでは詳細に示していない。
【0144】
図3Cの描写Aに示す状況は、電子システムの組立て中に起こる状況とすることができる。電極システムおよび部品1630を含むサブアセンブリは、たとえばサブアセンブリがユーザインターフェース部材本体1605に完全に受けられるように、ユーザインターフェース部材本体1605に導入される。ユーザインターフェース部材本体1605の外部にある間、変形された電極システム1345は、好ましくは導入プロセス中も、たとえばツールまたは手動によって、部品1630の外面と接触した状態に維持される。サブアセンブリがユーザインターフェース部材本体1605の内部に導入された後、電極システムは、たとえばツールを取り外すことにより、その非変形構成へと弛緩可能となって、ユーザインターフェース部材本体1605の内壁(たとえば、設定面1610の反対の面)と係合することができる。描写Bに示す状況は、固有の弾性復元力によって、中間構成から、組み立てた電子システム1000における最終または第3の構成へと電子システムが遷移する状況とすることができる。表現Bにおいては明らかに、電極システム1345の外面は、特に検知領域1310の延伸に沿って、たとえば少なくとも340°以上(たとえば、少なくとも:345°、350°、355°)にわたってユーザインターフェース部材本体1605の内面に適合する。
【0145】
電極システム1345は、特にユーザインターフェース部材本体内に位置する場合、2つの対向端部である第1の端部1356および第2の端部1358(たとえば、角度方向端部)を有する。第2または変形構成において、電極システムがユーザインターフェース部材本体1605に導入された場合および/または中間構成においては、電極システムが角度方向にそれ自体と重なる領域1354が存在する。すなわち、部品1630の内部から半径方向(たとえば、外方)に、電極システム(たとえば、可撓性導体キャリアまたは検知領域1310)に向かって進む場合、電極システムの内面に電子システムの外面が続き、同じように、電子システムの内面が続き、それに電子システムの外面が続き、たとえば直接、外面がユーザインターフェース部材本体1605の内面側を向く角度方向位置が存在する。言い換えると、電極システムの長さは、部品1630の円周よりも大きくすることができる。第2の構成において、電極システムまたはその検知領域は、一巻きを超え、好ましくは二巻き未満の程度で部品1630に巻回または巻き付けがなされる。電子システムの第3または最終の構成においては、描写Bに示すように、電子システムまたは検知領域1310の2つの角度方向端部間に角度方向クリアランス1361が存在する。あるいは、第3または最終の構成においては、領域1354が中間構成のみならず、最終構成(図示せず)においても存在するように、電極システムの角度方向の重畳が依然として存在する。(ユーザインターフェース部材本体1605の内壁により非変形構成へとさらに動くことが阻止されて)変形または付勢を維持する最終構成が達成されるまでの変形構成から非変形構成への遷移に際して、電子システム、特に、検知領域1310は、描写Aの矢印により示唆される通り、ユーザインターフェース部材本体の内壁に衝突するまで内壁に向かって拡がることができる。
【0146】
本実施形態においては、平坦な可撓性電極システムが部品1630に巻き付けられる。その後、本体1605が組み立てられ、電極システムを拘束する。導体キャリア1350の自然な剛性または弾力性は、電極システムを解きほぐすように作用して、本体1605の内側へと外方に、効果的に付勢する。このように、電極システムは、たとえば製造公差により射出成形プロセスで予想される広範な外側ケーシング部のサイズに確実に適合できる。
【0147】
図4は、電子システム1000(たとえば、上述のもの)の電極システム1345の例示的な一実施形態を示している。したがって、以下の議論では、未だ論じていないことに焦点を当てるため、上述の構成が本実施形態にも当てはまる。電極システム1345は、その第1または非変形の構成(たとえば、平坦構成)にて示している。可撓性導体キャリア1350は、当該可撓性導体キャリアに沿って延びた電極構成1360とともに示している。たとえば主延伸方向または長さ方向に沿って電子システムを区切る可撓性導体キャリア1350または電極システム1345の2つの(対向)端部1356および1358を示す。2つの対向端部1356および1358間の距離は、電極システム1345の長さLを規定することができる。長さLは便宜上、ユーザインターフェース部材本体1605の内面に適合または隣接している電極システムによって、内面の円周方向延伸の少なくとも350°が覆われるように選定される。すでに述べた通り、この長さは、内面の円周方向延伸より大きくすることもできる。
【0148】
電極システム1345および特にその電極構成1360は、複数の導電性電極トラックをさらに含む。図示の実施形態は、2つの電極トラックとして第1の電極トラック1362および第2の電極トラック1364を示す。電極トラックは、金属(たとえば、銅)製とすることができる。電極トラック1362および1364は、可撓性導体キャリア1350に沿って延びる。電極システム1345は、検知領域(この場合は、設定検知領域1310)を有する。両電極トラック1362および1364は、検知領域1310内で延びる。図示の構成において、検知領域1310の幅(すなわち、検知領域1310の長さまたは長手方向の主方向と垂直な延伸)は、長手方向の主方向に沿って一定である。図示の実施形態において、検知領域1310は、矩形状を有し、
図4においては破線の矩形により強調される。検知領域1310においては、第1および第2の電極トラックの一方(たとえば、第2のトラック1364または第1のトラック1362)が検知電極1366を画成または形成する(図示の実施形態においては、電極トラック1364が検知電極を形成する)。また、検知領域においては、第1および第2の電極トラックの他方(図示の実施形態においては、電極トラック1362)が基準電極1368を画成または形成する。なお、検知電極および基準電極を提供する電極トラック1362または1364の反転もなされることに留意する。
【0149】
作動中は、2つの電極(検知電極および基準電極)間の異なる電位によって電界が形成されるように、電極1366および1368に異なる電位(たとえば、検知電極に正電位、基準電極に負電位、またはその逆も同様)(ただし、同じ符号の電位による電位差でも十分なものとすることができる)が与えられるように構成される。検知電極および/または基準電極が導電連結されたセンサコントローラ1340によって、当該電界の変動および/または電極間のキャパシタンスの変動が評価される。
【0150】
検知電極1366は、複数の検知電極部1369を含む。これらの部分は、長さ方向または主方向に見た場合、検知領域1310に沿って順次、相互に間隔を空けて配設される。部分1369は、検知領域の主延伸方向と垂直な方向の配向および/または電極システムがユーザインターフェース部材本体1605に配置された場合の本体の設定面1610の軸方向延伸に沿って配向される。部分1369は、相互に平行に配向される。部分1369は、同一構成を有することができる。また、端部1358に近い最後の部分1369は、その他の部分と同じような幅の構成を有すること、ならびに/または、電極システム1345がユーザインターフェース部材本体1605中に位置した後、端部1356に近い電極トラック1364の部分と協働して、その他の連続電極部1369と同一もしくは同様の幅の組合せ検知電極部を形成することができる。部分1369は、電極トラック1364の連結部1370によって導電連結される。部分1369は、連結部1370から突出する。このため、図示の実施形態において、検知電極1366は、櫛状構成を有することができる。
【0151】
基準電極1368は、複数の基準電極部1371を含む。これらの部分は、長さ方向または主方向に見た場合、検知領域1310に沿って順次、相互に間隔を空けて配設される。部分1371は、検知領域の主延伸方向と垂直な方向に配向される、および/または電極システムがユーザインターフェース部材本体1605に配置された場合の本体の設定面1610の軸方向延伸に沿って配向される。部分1371は、相互に平行に配向される。部分1371は、同一構成を有することができる。部分1371は、連結部1372によって導電連結される。部分1371は、連結部1372から突出する。このため、図示の実施形態において、基準電極1368は、櫛状構成を有することができる。
【0152】
基準電極1368および検知電極1366は、互いに交互配置されるように配置される。特に、電極部1369および1371は、検知領域1310の長手方向の主方向に沿って交互に配置される。すなわち、検知領域の主延伸方向に沿って、好ましくは線C(たとえば、検知領域1310の中心線)に沿って移動する場合は、検知電極部1369および基準電極部1371が交互に生じる。具体的には、検知電極部に基準電極部が続き、これに検知電極部が続き、以下同様である。検知電極1366および基準電極1368は、検知領域1310において、検知電極と基準電極との間の距離(この距離は、それぞれの他方の電極の最も近い部分まで測定される)が便宜上、一定となるか、または大幅に変化しないように構成される。ただし、たとえば検知領域1310において検知電極と基準電極との間の距離が変化する他の構成も可能である。検知領域における基準電極と検知電極との間の距離は、理想的には目標(たとえば、ユーザの指)が確実に検出されるように選定されるものとする。
【0153】
基準電極部および検知電極部は、同じように構成されるのが好ましい。たとえば、それらが同じ長さ(それぞれの連結部から突出する距離)および/または幅(それぞれの連結部から離れる延伸と垂直な寸法)を有することができる。基準電極部および検知電極部の端部は、異なる方向を向くこともできるし、異なる方向に配向させることもできる。連結部1370および1372は、相互に沿って配向される。検知電極部は、近位方向または遠位方向に配向される。基準電極部は、反対方向(たとえば、遠位方向または近位方向)に配向される。
図4においては、上方向を近位方向とすることができる(その方向に検知電極部1369が配向される)。連結部は、相互に平行に延びることができる。基準電極部は、検知領域に沿って一様に分布する。検知電極部は、検知領域に沿って一様に分布する。
【0154】
図示の実施形態において、可撓性導体キャリア1350の接点連結領域1352は、可撓性および/または折り畳み可能タブである。タブは、検知領域1310に対して偏向または折り畳みがなされるように、可撓性とすることができる。接点連結領域と検知領域との間には、切り欠き1373(たとえば、切り込み)が可撓性導体キャリアに設けられる。これは、導体キャリア1350のその他の部分に対するタブのより容易な屈曲または折り曲げを促進する。図示の実施形態において、接点連結領域1352は、可撓性導体キャリア1350の端部1356に近い。具体的に、接点連結領域(たとえば、タブ)は、可撓性導体キャリアの端部の一部を画成することができる。ただし、接点連結領域1352が検知領域1310内にある構成、両端部から遠隔の構成、または異なる構成など、接点連結領域の他の構成も使用されることに留意されたい。接点連結領域1352において、電極トラックの幅は、検知領域における電極部および/または連結部よりも狭い。たとえば、それぞれの電極トラック1362および1364は、検知領域において関連する電極の部分(たとえば、検知電極1366および基準電極1368の電極部)よりも狭い中間部を介して、第1の電極トラック1362および第2の電極トラック1364の端子1374および1375に連結される。端子1375および1374は、fccプラグインコネクタまたはスリムスタックコネクタなどのプラグインコネクタに連結されるように構成される。端子1375および1374を介して、電極トラック1362および1364がセンサコントローラ1340の異なる端子またはチャネルに導電連結される。
【0155】
容量センサの感度を制御するには、センサコントローラが検知電極1366に対して明確なグランド面を有するのが好都合である。グランド面は、基準電極1368により与えられる。モニタリングすべき表面の近くに基準電極を有することは、システムの内部深くにある基準またはグランド電位とは対照的に、センサのより一様な感度の点で都合が良い。たとえば、作動中は、電界(たとえば、静電界または動電界)が検知電極および基準電極に印加される。電界が変化すると、センサのキャパシタンスも変化する。電界がより一様であるほど、センサの感度もより一様となる。図示の構成は、一様な感度の点で特に好適であることが分かっている。(ユーザインターフェース部材本体1605のような)円筒状配置の場合は、
図4に示すような交互配置の電極トラック1362および1364によって、特に良好または一様な感度が実現されることが発見されており、基準電極および検知電極が交互配置となる。検知領域におけるトラックまたは電極部の厳密な寸法および量については、たとえばより小さな手の検出への適用のために変化する。図示の電極システムによるセンサの感度は便宜上、設定面への近接のモニタリングの場合、円周方向に一様である。
図4に示す設計は、外部面上に表面構造を有するユーザインターフェース部材本体の一様な感度の実現に特に適する。
【0156】
基準電極部の数は、検知電極部の数と等しくするのが好ましい。基準電極部および/または検知電極部の数は、偶数にすることもできるし、奇数にすることもできる(たとえば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ)。奇数個の基準および検知電極部を有することにより、一般的な円筒状設定(たとえば、電極システム1345がユーザインターフェース部材本体1605に配置される場合)においては、1つの基準電極部を1つの検出電極部の反対に(たとえば、角度方向に180°オフセットさせて)配置することが容易となる。検知電極部を可撓性導体キャリア1350に沿って一様に分布させ、基準電極部を可撓性導体キャリアに沿って一様に分布させることによっても、このような構成が容易となる。ユーザは、ドーズを設定しようとする場合、ドーズ設定に最も自然な指の組合せ(すなわち、人差し指および親指)を使用する場合には、直径方向の対向箇所でユーザインターフェース部材の設定面1610にユーザが接触することが予想される。電界またはキャパシタンスの変動は、異なる電位の電極部(検知電極および基準電極部)が180°オフセットしている場合に特に顕著になると予想されるが、これは、検知電極部および基準電極部の数が奇数であることにより容易にもたらされる。
図5は、これを一例として示すものであり、各基準電極部1369が1つの検知電極部1371と直径方向に対向する3つの部分を使用している。
【0157】
図6は、
図4と併せて論じた電極システム1345に酷似する電極システム1345の別の実施形態を示している。したがって、以下の説明では、相違部分に焦点を当てることになる。1つの相違として、電極システム1345は、2つの異なる検知領域を含むことである。具体的に、電極システムは、設定検知領域1310のほか、
図6において破線矩形により強調する送達検知領域1320を含む。送達検知領域1320には、検知電極1376が配置される。検知電極1376は、送達検知電極とすることができる。検知領域1320においては、基準電極1368が検知電極1376と関連付けられるが、特に可撓性導体キャリア1350に沿って、検知電極1376から電気的に分離または絶縁される。基準電極1368および検知電極1376は便宜上、検知領域1320において、基準電極1368が検知電極1376の少なくとも大部分(たとえば、少なくとも外周の280°)に沿って延びるように配置される。図示の実施形態において、検知電極1376は、円形の周囲または外郭を有する。他の形状も同様に可能とすることができる。また、検知電極1376または検知領域は、開口部のない連続構成の代わりに、リング状構成を有する。可撓性導体キャリア1350は、特に検知電極1376がリング状構成を有する場合に、たとえば検知電極1376の真ん中に孔を有することができる(明示的には図示せず)。検知領域1320は、図示のように、湾曲した周囲および/または大きな円形の周囲を有することができる。
【0158】
検知電極1376は、検知領域1320において延びた電極構成1360の電極トラック1378により形成または画成される。電極トラック1378は便宜上、電極構成1360において、電極トラック1362および電極トラック1364に追加で存在する。構成の電極トラックは便宜上、可撓性導体キャリア1350の全体に沿って相互に電気的に絶縁される。検知電極1366および検知電極1376の基準電極1368は、異なる検知領域において同じ電極トラックにより形成される。このため、基準電極1368の電極トラック1364は、異なる検知領域において延びることができる。検知電極1366および1376の電極トラックは便宜上、1つの検知領域(すなわち、設定検知領域1310または送達検知領域1320)のみにおいて延びる。代替的または追加的に、基準電極1368の電極トラック1362は、検知電極1376の電極トラック1378と検知電極1366の電極トラック1364との間に、(
図6に示すように)好ましくは連続して配置される。設定検知領域1352においては、電極トラック1378への接点連結用の端子1379が形成される。端子1379を介して、電極トラック1378または検知電極1376がセンサコントローラ1340(たとえば、その別個のチャネルまたは入力、特に、検知電極1366および/または基準電極1368について一方から別個のチャネルまたは入力)に導電連結される。
【0159】
検知領域1320は、可撓性導体キャリア1350の連結領域1380によって、導体キャリア1350のその他の部分に連結される。連結領域は、可撓性導体キャリア1350のその他の部分から検知領域に向かって延び、検知領域1320を可撓性導体キャリア1350のその他の部分に対して機械的に連結することができる。連結領域1380は、幅を長さよりも小さくすることができる(ここで、長さは、導体キャリア1350のその他の部分から検知領域1320までの延伸である)。連結領域の幅は、検知領域1320の幅よりも小さくすることができる。連結領域1380は、検知領域1320とともに、電極システム1345の折り畳み可能タブを形成することができる。
【0160】
基準電極1368および/または検知電極1366(設定検知電極)のほか、検知電極1376(送達検知電極)用の別個の電極トラック1378を有することによって、基準電極による送達面近接検知の改善、および/または、これらの表面に割り当てられた2つの電気的に分離された電極トラックによるユーザインターフェース部材の送達面1620および設定面1610への近接の区別の有効化がもたらされる。
【0161】
連結領域1380において、可撓性導体キャリア1350は、検知領域1310および1320が異なる方向(たとえば、相互に垂直な方向)に配向されるように、特に容易に、好ましくは弾性的に変形される。送達検知領域1320は、送達面1620と反対または送達面1620の反対を向いたユーザインターフェース部材本体1605の内面に適合することができる。設定検知領域1310は、設定面1610と反対または設定面1610の反対を向いたユーザインターフェース部材本体1605の内面に適合することができる。連結領域1380は、電極システムがユーザインターフェース部材に適用された場合に、送達面1620と反対のユーザインターフェース部材本体1605の内面に向かって検知領域1320を付勢することができるように、弾性変形可能とすることができる。代替的または追加的に、可撓性導体キャリア1350の検知領域1320を送達面1620に向かって(たとえば、近位方向に)付勢する付勢部材が電極システムに設けられる。
【0162】
図7は、付勢部材1381(たとえば、圧縮ばねなどのばね)を模式的に示している。付勢部材1381は、ユーザインターフェース部材本体1605の内面もしくは内部面ならびに送達面1620に向かって検知領域1320を付勢するために設けられる。付勢部材1381は、金属部品(たとえば、金属プレス)により形成される。付勢部材1381は、模式的に示すような螺旋状の圧縮ばね1381である必要がない。この目的では、以下の議論から明らかとなるように、他の弾性構造が好適である(電源電極または電極/付勢部材1390として同時に作用することができる付勢部材1520のアーム状付勢部1540参照)。付勢部材が接地されるか、あるいは、その力が、ユーザインターフェース部材本体1605に対して軸方向、好ましくは回転不能に保持された電子システム1000の部品もしくは構成要素、または本体自体が反応する。力に反応する部分は、すでに上述した部分1630とすることができる。
【0163】
電極システム1345が電子システムに配置された場合に、送達面と設定面との間で連結領域1380が遷移領域1618の内面に適合するように、電極システムがユーザインターフェース部材本体に合わせて調整されるのであれば都合が良い。遷移領域1618は、外部で湾曲することにより、半径方向に配向した送達面を軸方向に配向した設定面と連結する。ユーザにとって、遷移領域に作用する可能性は、ユーザインターフェース部材1600の操作に対して、送達面および設定面に作用する可能性よりも低い。したがって、ユーザインターフェース部材本体1605の遷移領域においては、検知専用領域が必ずしも必要とされない。
【0164】
なお、それぞれ電極システムの検知領域が送達検知領域である検知領域を1つだけ備えた電極システム1345または送達面と関連付けられた送達検知領域のみを備えた電極システム1345を有することも、本開示の範囲内である。
【0165】
図3A~
図4と併せて記載したような巻き付け電極システム(たとえば、可撓性プリント配線板)を提供することにより、設定面(たとえば、円筒状「グリップ」面)への接触の感度が与えられることになる。送達検知領域の折り畳み可能タブの追加によって、この感度を送達面または上面にも同様に延ばすことができる。付加的な電極トラックによって、2つの接触部位(設定面および送達面)の間で区別される。2つのチャネルまたはトラック間のクロストークは、複数の方法で最小化される。第一に、検知領域用の2つの電極トラック間の近接は、可能な限り最小限に抑えられる。第二に、2つの検知電極間には、両チャネルに共通のグランドトラックまたは基準電極トラック1362が常に存在する。最後に、電極システムまたは検知領域1310は、ユーザインターフェース部材本体の内部面および/または部品1630の外部面に沿って360°よりも多く延びることもできるし、巻き付くこともでき、たとえば、送達検知電極および/または接点連結領域1352が脆弱となる任意のエリアを覆い尽くす。
【0166】
電極システム1345は、1つまたはそれ以上の検知電極および/または関連する基準電極を有することに限らない。むしろ、他の電極(たとえば、導電機能またはトラックを備えたアンテナまたは他の構造用の電極)が可撓性導体キャリア1350上に実装される。したがって、電極システムは、アンテナ(たとえば、通信ユニット1400(たとえば、Bluetooth通信ユニット、好ましくはBLE:Bluetooth Low Energy通信ユニット))用の電極トラックを含むことができる。
【0167】
図8A~
図8Cは、電子システム1000の電極システム1345の別の実施形態を模式的に示している。一般的に、システム1345は、
図4および
図6に関して上述したシステムに類似する。したがって、この説明では、相違部分に焦点を当てる。
【0168】
図4および
図6の上述の実施形態と同様に、電極システム1345は、第1の構成または平坦構成にて示している。すなわち、ユーザインターフェース部材本体1605への導入および変形が行われていない。本実施形態においては、電極構成1360を明示的には示していない。一般的には、
図6の実施形態と同じように電極トラックが設けられると考えられる。したがって、3つの電極トラックが設けられ、1つのトラックは検知電極1366用、1つのトラックは検知電極1376用、1つのトラックは基準電極1368用である。すでに上述した通りであるため、具体的なトラック構成については示していない。それぞれの検知領域1310または1320においては、(この場合も、検知領域1310および1320に対して共通のトラックまたは電極により形成された)好ましくは関連する基準電極1368とともに、関連する検知電極1366または1376が配設される。
【0169】
図示の実施形態において、検知領域1320および/または1310は、可撓性導体キャリア1350の複数の別個の検知領域にわたって分布する。
図8Aに示すように、送達検知領域1320に対して、複数の別個の領域(たとえば、3つの領域)が設けられる。言い換えると、導体キャリア1350は、複数の送達検知領域1320を有する。これらの送達検知領域はそれぞれ、関連する連結領域1380を介して導体キャリア1350のその他の部分に連結されるが、この場合は、別々の連結領域1380が各検知領域1320と関連付けられるのが好ましい。連結領域1380は、特に第1の構成において、可撓性導体キャリア1350の主延伸方向に対して斜めまたは垂直に配向される。便宜上、異なる送達検知領域1320が同様に構成される。電極トラック1378および1362は、送達検知領域において電極を画成することができる。
【0170】
複数の送達検知領域1320に代替的または追加的に、設定検知領域1310用の複数(たとえば、4つ)の別個の領域が可撓性導体キャリア1350の主延伸方向に沿って設けられる。言い換えると、可撓性導体キャリアは、複数の設定検知領域1310を有する。各連結領域1380は、1つの関連する設定検知領域1310から現れる。設定検知領域1310は、可撓性導体キャリア1350または電極システム1345の主延伸方向または長さ方向に沿って、たとえば直線状に連続して配設される。設定検知領域1310は、等しい長さであるのが好ましい。すなわち、主延伸方向に沿った延伸を等しくすることができる。また、少なくとも複数の領域1310について、幅も等しくすることができる。1つの領域(たとえば、接点連結領域1352が現れる領域)が異なる幅を有することができ、これによって、送達検知領域1320または送達面1620から(遠位方向に)オフセットされる一方で半径方向には重なり合う部位において、センサコントローラへの接点連結が容易となる。それぞれの連結領域1380は、異なる検知領域1310における異なる箇所で検知領域1310から現れるようにすることができる。たとえば、連結領域1380が現れる最も右側の検知領域1320すなわち接点連結領域1352に最も近い検知領域1320は、(接点連結領域1352から見た場合)検知領域1310の最初に連結領域1380を有し、後続の検知領域1310の連結領域1380は、検知領域1310の真ん中に配置され、最後の検知領域の連結領域1380すなわち接点連結領域1352から最も遠い連結領域1380は、(長さ方向に沿って接点連結領域から離れる方向に見た場合)検知領域1310の最後に配置される。異なる連結領域1380は便宜上、異なる設定検知領域1310に連結される。それぞれの連結領域1380は、たとえば設定検知領域に対するそれぞれの送達検知領域1320の再配置を可能にするため、折り畳み可能であるのが好ましい。それぞれの連結領域1380は、たとえば折り畳まれた場合に、弾力性または弾性変形性を示すことができる。それぞれの連結領域1380は、ストリップ状とすることができる。
【0171】
設定検知領域1310は、連結領域1382により相互連結される。連結領域1382は、可撓性導体キャリア1350の主延伸方向に沿って配向される。2つの隣り合う設定検知領域が1つの連結領域1382により連結される。連結領域1382は、屈曲に対する電極システムの剛性を抑えるため、円周方向に延びた(たとえば、円筒状)表面に対する電極システム、好ましくは検知領域の適合を容易にすることができる。ただし、たとえば検知領域を設定面に向かって付勢するのに大きな弾性復元力が必要な場合は、連結領域1382を省くこともできる。連結領域1382は便宜上、検知領域1310よりも幅が小さい。可撓性導体キャリア1350の幅すなわち長手方向の主方向と垂直な延伸は、連結領域1382により連結された検知領域1310よりも連結領域1382において小さくすることができる。電極構成1360のすべての電極トラック(たとえば、3つの電極トラック)は、連結領域1382のそれぞれに沿って延びることができる。それぞれの連結領域1382は、ストリップ状である。
【0172】
2つの隣り合う検知領域1310間(たとえば、検知領域を連結する連結領域1382の両側)に設けられた切り込みまたはスリットは、以下に詳しく論じる通り、たとえば曲面に対する適合性に関して、および/または、製造を目的として有利なものとすることができる。具体的に、これらは、たとえば部品1630の外面に対する電極構成の回転不能なロックおよび/または製造中のサブアセンブリのセクションの受容に役立つことができる。
【0173】
それぞれの送達検知領域1320は、たとえば送達検知領域を導体キャリア1350のその他の部分に連結する連結領域1380から遠隔の端部1383を有する。端部1383は、第1または非変形の構成において相互に位置合わせされる。連結領域1380から端部1383に向かって見た場合、検知領域1320は、端部に向かって幅を変化することができる。最初は、幅が増す。すなわち、検知領域1320は、たとえば最大の幅になるまで広くなることができる。その後、検知領域1320は、端部1383に向かって狭くなることができる。検知領域1320の外郭は、たとえば連結領域1380に近い領域において、湾曲部を有することができる。湾曲部には、直線部を後続させることができる。直線部は、湾曲部を端部1383と連結することができる。端部1838は、尖らすことができる。
【0174】
検知領域1310の検知電極は便宜上、それぞれの連続する電極トラック(図示せず)により形成される。同じことが検知領域1320の検知電極にも当てはまり、この電極トラックは便宜上、検知領域1310の電極トラックから電気的に絶縁される。それぞれの検知領域における基準電極は、
図6と併せてすでに記載した通り、共通の電極トラックに属することができる。このトラックは便宜上、その他のトラックから電気的に絶縁される。すべてのトラックは便宜上、たとえば端子(図示せず)を介したセンサコントローラ1340への連結のため、接点連結領域1352においてアクセス可能である。
【0175】
電極システム1345には、たとえばユーザインターフェース部材本体またはユーザインターフェース部材の部品に対して電極システム1345を固定または位置合わせするための機械的部分1359が設けられる。電極構成1360の端部1358の左下に例示的な部分1359を示す。代替的または追加的に、構成1359は、可撓性導体キャリア1350または電極システム1345の端部1358を画成することができる。
【0176】
電極システムがユーザインターフェース部材本体1605に配置された場合、設定検知領域1310は、すでに論じた通り、ユーザインターフェース部材本体の内面に沿って円周方向に配設される。送達検知領域1320の端部1383は、相互の対向ならびに/または半径方向内方の配向もしくは指向がなされる。これを
図8Bに示しており、この図は、挿入のために変形されたまたはユーザインターフェース部材本体へすでに挿入された状況の電極システムを模式的に示すが、本体については示していない。接点連結領域1352についても同様に示している。これは、(半径方向)内方への折り畳みおよび/または屈曲がなされており、この構成においては、電子システムが組み立てまたは製造された場合にユーザインターフェース部材の内部に配置されるセンサコントローラ1340(図示せず)に連結される。
【0177】
複数の送達検知領域1320を有することにより、可撓性導体キャリアの異なる領域上の送達面のモニタリングを担う電極面の分布および/または複数の連結領域1380の使用が図られる。これにより、検知領域1320を送達面1620に向かって付勢するために可撓性導体キャリアおよび/または連結領域1380が与える弾性力の使用が促進される。このため、
図8Bに示す構成へと折り畳まれた場合、検知領域は、ユーザ近接検出ユニット1330に対する1つの連続的な感度エリアを提供することになる。各タブまたは検知領域1320は、同じ電極トラック構成を特徴とすることができ、折り畳まれた場合、1つの接触感度エリアとして作用することになる。これにより、特に
図6の実施形態と比較した場合、たとえば製造中にキャリア1350の剛性をより好ましく利用可能となり、(連結領域における)複数の屈曲によって、より大きな力および/またはより一様に拡がる力(たとえば、ユーザインターフェース部材本体1605に作用する弾性復元力)が生じる。
【0178】
図8Bの面A-Aに沿った断面図を示す
図8Cは、送達面1620の反対のユーザインターフェース部材本体の内壁との領域1320の接触を維持する傾向にある付勢力を示している。図に見られるように、設定検知領域1310が円筒状の包囲面に沿って配向された変形構成において、送達検知領域1320は、連結領域1380が与える可撓性および/または弾性により、設定検知領域1310に対して枢動または移動される。連結領域1380は、その幅方向において、枢動軸を形成することができる。ユーザインターフェース部材本体1605が連結領域および/または検知領域を偏向構成に維持する場合は、関連する弾性復元力が検知領域を送達面に向かって付勢する。
【0179】
図9A~
図9Cは、電子システム1000の別の実施形態を示している。
図9Aは、設定面1610および送達面1620を備えたユーザインターフェース部材1600の斜視図を示す。設定面には、表面構造1617が設けられる。このため、設定面1610は、プロファイル加工される。表面構造の構造要素1616または凹部は、大略軸方向すなわち近位端から遠位端の方向に配向される。角度方向または円周方向に沿って、複数の連続的な構造要素1616または凹部が順次配設される。構造要素1616の角度方向表面は、波状、ローレット状、または起伏のある形状を有することができる。また、それぞれの凹部の底面についても、波状、ローレット状、または起伏のある形状を有することができる。
【0180】
送達面1620は、表面構造1617を有する。この構造は、設定面の構造とは異なるのが好ましい。たとえば、構造要素1616(たとえば、凹部)は、異なる長さおよび/または異なる幅など、異なる寸法を有することができる。これとは対照的に、設定面1610の構造の構造要素1616は、等しい長さ、幅、および/または等しい構成を有することができる。
【0181】
外部作動面上の表面構造1617には、指のような適合物体が剛性の平面物体(たとえば、コインまたは金属テーブル)のような非適合物体よりも大きな表面接触面積を有する、という利点がある。また、適合物体は、表面の構造化により、非適合物体よりも電極構成1360に近づくことができる。これを
図9Bにより示すが、この図は、平面物体4000よりも大きな設定面1610との接触面積を明らかに有するおよび/または電極構成1360により近い指または親指をコントラスト表示する。
図9Cは、構造化された送達面について、適合物体との接触面における構造1617の効果を示している。
【0182】
本実施形態は、上記実施形態に記載のような電極システム1345を特徴とする。また、適合物体(たとえば、指)が剛性物体(たとえば、金属テーブル)よりも検知電極に近づけるように、外部作動面には小さな凹部が形成される。これは、剛性の非適合物体よりも適合物体によって、電界またはキャパシタンスのより大きな変化を必然的に伴う。円筒面または設定面において、凹部は、たとえば任意のパターン(たとえば、ローレット状)のリッジとして設けられ、ユーザによる購入または表面の把持を達成できるように補助に役立つことができる。上面または送達面において、凹状エリアは、エンボス設計または焼印として同時に作用することができる。
【0183】
図10A~
図10Dは、いくつかの態様において、先行図と併せて論じたものよりも具体的な電子システム1000ならびに電子システムの組立てもしくは製造の方法の実施形態を示している。ただし、先行図と併せて開示のすべての構成がシステム1000にも当てはまり、その逆もまた同様であるものとする。
【0184】
図10Aは、電子システム1000の模式断面図である。この場合も、システムは、ユーザインターフェース部材本体1605が設定面1610および送達面1620を画成するユーザインターフェース部材1600を含む。導体キャリア3000は、ユーザインターフェース部材本体1605の内部に設けられ、上述のような1つまたはそれ以上の電子ユニット(たとえば、センサコントローラ1340、運動検知ユニット1200、連結検出ユニット1700、および/または電子制御ユニット1100)を搭載する。導体キャリア3000は、ユーザインターフェース部材において、たとえば後述の筐体1670に対して軸方向および回転不能に保持される。
図10Aの断面図においては、上述のユニットのすべてを明示的には示していないものの、存在することはできる。
【0185】
電源1500およびその電気動力コンポーネントに対する接点連結の構成については、
図2および
図3の模式的描写よりも詳しく示している。電源1500は、キャリア3000とユーザインターフェース部材1600の近位面すなわち送達面1620との間に配置される。キャリア3000と電源との間には、スペーサコンポーネント1510が配置される。したがって、電源1500は、スペーサコンポーネント1510を介してキャリア3000に支持される。スペーサコンポーネント1510は、キャリア3000に搭載された(電子的)構成要素に沿って円周方向に延びるように、湾曲した内部面を有することができる。スペーサコンポーネント1510は便宜上、当該スペーサコンポーネント側を向いたキャリア3000の表面と電源との間に中空を画成する。中空には、電源1500に直接接触するリスクなく、キャリア3000上の電子ユニットまたは構成要素が配置される。また、スペーサコンポーネントは、過剰な機械的負荷(たとえば、ドーズ送達作動中にユーザが送達面にかける負荷)がキャリア3000上の電子ユニットまたは構成要素に直接伝わることがないように補助する。
【0186】
さらに、
図10Aは、電源電極1520を示している。電極1520は、特に導体キャリア3000を介して、電源1500ならびに1つもしくはそれ以上の電気的もしくは電子的構成要素に導電連結される。電極1520は、当該電極を導体キャリア3000に導電連結する接点部1530を有する(
図10B参照)。電極1520は、電源1500に対向するキャリア3000の面から電源1500の反対を向いたキャリア3000の面まで延びる。後者の面には、接点部1530が配置される。ただし、電源と電子的構成要素との間の接点連結の異なる構成も考えられる。電極1520は、1つまたはそれ以上(図示の実施形態においては、3つ)の付勢部1540を有する。付勢部1540は、弾性偏向可能である。それぞれの付勢部1540は、たとえば自由端を伴う可撓性アームとすることができる。それぞれの付勢部1540は、ユーザインターフェース部材の主軸に対して傾斜した近位方向に延びることができる。それぞれの付勢部は、力を電源1500にかけることで電源がキャリア3000および/またはスペーサに向かって(たとえば、遠位方向に)付勢されるように設けられる。代替的または追加的に、付勢部は、ユーザ近接検出ユニットによってモニタリングすべきユーザインターフェース部材本体1605の外部作動面に向かって、電極システム1345の1つまたはそれ以上の検知領域(
図10B参照(
図10Aにおいては、検知領域1310および1320をごく模式的にしか示していない))を付勢するために設けられる。付勢部1540は、電源1500をキャリア3000に向かって、検知領域1320を送達面1620に向かって付勢することができる。付勢部1540は、リング部1560により連結され、リング部1560から離れる軸方向かつリング部1560に対して内方に延びる(
図10B参照)。リング部1560は、電源1500(たとえば、その1つの端子)に導電連結される。電極1520は、保持部1550を有する。保持部1550は、電源1500をスペーサコンポーネント1510に保持することにより、たとえば電子システムの組立て中に操作されるサブアセンブリまたはユニットを形成するように設計される。これは、図示の実施形態において、スペーサコンポーネントおよび電源を電極1520の領域間に固定することにより実現される(明示的には図示せず)。
【0187】
システム1000は、ユーザインターフェース部材本体1605のほか、ユーザインターフェース部材部品または筐体1670を有する。本明細書における筐体の言及は、ユーザインターフェース部材部品の言及として了解され、その逆もまた同様であるものとする。筐体1670は、ユーザインターフェース部材本体1605に対して回転不能および軸方向にロックされる(たとえば、スナップフィットまたは溶接される)のが好ましい(本実施形態においては、たとえばユーザインターフェース部材の遠位端の近くに、スナップ機能1681を伴うスナップフィットを示している)。筐体は、ユーザインターフェース部材本体とともに、ユーザインターフェース部材1600の内部を画成することができる。内部は、封止(たとえば、塵埃密封および/または流体密封)されているのが好ましい。このため、ユーザインターフェース部材本体/筐体間には、1つまたはそれ以上のシール(たとえば、Oリング)が設けられる(明示的には図示せず)。筐体1670は、ユーザインターフェース部材本体1605の遠位開口部を閉じる。筐体は、剛性部1672および/または変形可能部(たとえば、弾性変形可能部)1674を含むのが好ましい。筐体1670は、2K成形プロセスにおいて形成された部品とすることができる。システムを薬物送達デバイスユニットに連結する連結機能1615は、筐体(たとえば、その外部面(明示的には図示せず))に設けられ、半径方向内方を向くことができる。
【0188】
筐体1670は、スペースが遠位方向に開放されたユーザインターフェース部材1600の受容スペース1675を画成する。受容スペース1675は、システム1000を連結すべき薬物送達デバイスユニットの部材を受けるために設けられる。受容スペースを近位方向に制限することができる筐体の変形可能部1674は、薬物送達デバイスユニットの部材と相互作用するように設計されるのが好ましく、ユニットがシステムに連結されている場合、変形可能部1674は、システムがデバイスユニットに連結されていない状況と比較して、部材により弾性変形されるのが好ましい。変形可能部1674の変形中の(近位方向)の動きは、連結検出ユニット1700のスイッチ1710のトリガに用いられる。これにより、デバイスユニットに対する電子システムの連結が電子的に検出され、たとえばユーザ近接検出ユニット1330を起動することにより、システムが高電力消費の状態に切り替えられる。システムがデバイスユニットから切断された場合、部分1674は、弾性によってその非変形形状を再開することにより、たとえばスイッチ1710がその状態を変更することによって、連結検出ユニット1700にデバイスユニットからの切断を検出させることができる。部分1674が筐体1670の一部であることから、薬物送達デバイスユニットの部材とスイッチ1710または連結検出ユニット1700との間の直接的な接点は不要となり、たとえば電子機器および電極システムに対して、ユーザインターフェース部材1600の内部の封止が容易となる。また、筐体1670は、1つまたはそれ以上の光案内部1676を含むのが好ましい。光案内部は、運動検知に放射線が用いられる場合、運動検知ユニット1200に設けられた放射線エミッタおよび放射線センサに作動連結される。その結果、ユーザインターフェース部材1600の内部から遠隔の光案内部1676の端面に対して動く部材(たとえば、エンコーダコンポーネント)の動きにより、放射線センサへと反射して戻る放射線(強度)が変動する。この反射放射線は、光案内部を通じて放射線センサまで案内され、および/または、放射線は放射線エミッタにより生成されたものであるのが好ましい。このように、ユーザインターフェース部材1600またはドーズノブもしくはボタンに対する部材(たとえば、ダイヤルスリーブまたは番号スリーブ)の動きは、ドーズ送達作動中などに定量化される。光案内部および/またはそれに応じたセンサは、エンコーダコンポーネントの反射部に対して位相をずらすことができ(WO2019/101962A1参照)、これにはいくつかの利点がある。
【0189】
図10Bは、筐体1670および電極システム1345を示している。電極システム1345は、
図8Aと併せて上述したものに酷似する。ただし、特に本明細書に記載のものから、その他任意の電極システムも同様に使用されることに留意する。電極システム1345は、連結部1382により連結された複数の順次配設設定検知領域1310を有する。
図10Bにおいては、これらの部分または領域のすべてを強調しているわけではない。また、電子システム1000は、送達検知領域1320を有する。
図8Aの実施形態とは対照的に、
図6に示す実施形態と同様に送達検知領域1320が1つだけ設けられる。本実施形態においては、電極構成1360を詳しく示していないが、電極システム1345の設計に組み込まれる。電極トラックは、外部作動面に対する機能または近接検知を提供するためである。たとえば幅方向に沿って見た場合に、たとえば送達検知領域1320から遠隔に配置された可撓性導体キャリア1350の面または送達検知領域1320から遠隔に配置される可撓性導体キャリア1350の面上のスリット1384は、特に可撓性導体キャリア1350が筐体1670の外面に巻き付けられた場合、筐体1670の外面上のリッジ1678と位置合わせされるように構成されるか、または、リッジ1678を受けるように構成される。リッジ1678は、たとえば近位方向に沿って、軸方向に配向される。リッジ1678は、スリット1384との協働によって、可撓性導体キャリア1350または電極システムが筐体1670の外面に巻き付けられた後の筐体1670と電極システム1345との間の角度方向の相対位置を保持することができる。たとえば遠位端において、ユーザインターフェース部材部品または筐体1670の周囲(全周)に、半径方向外方に突出したフランジ1680が設けられる。フランジ1680は、ユーザインターフェース部材の遠位端および/またはユーザインターフェース部材本体1605の台座を提供することができる。フランジから近位方向すなわち送達面1620側にオフセットして、1つまたはそれ以上のスナップ機能1681が設けられる。
【0190】
近位端または送達面1620側を向いた筐体1670の表面には、たとえばスイッチ1710を収容する凹部1682が設けられる。凹部の底面または遠位端面は、変形可能部1674により画成される。側壁は、筐体の剛性部1672により画成される。
【0191】
電子システム1000の組立てまたは製造のため、電極システム1345には、電子ユニットまたは構成要素が搭載されたキャリア3000が設けられる。センサコントローラ(図示せず)は、筐体1670側を向くように設けられたキャリアの表面または送達面1620側(すなわち、近位方向)を向くように設けられたキャリアの面上に搭載される。接点連結領域1352は、たとえば直接または導体キャリア3000上の導体を介して、センサコントローラ1340に導電連結される。好ましくは連結を構築した後、筐体1670の外面に対して接点連結領域1352が内方にオフセットするように、領域1352が筐体1670に対して配置される。あるいは、最初に接点連結領域1352が
図10Bに示すように配置された後、センサコントローラ1340との接点連結が構築される。接点連結には、fccプラグが用いられる。fccプラグの代替として、スリムスタックコネクタなどの垂直連結用にコネクタが用いられる。筐体1670は便宜上、接点連結領域1352を受けるように、たとえば半径方向および/または内方に配向されたスロットを含む。
【0192】
図10Bに示すように、複数の構成要素またはユニット、好ましくは(たとえば、センサコントローラ1340、電子制御ユニット1100、通信ユニット1400、および/もしくは運動検知ユニット1200を備えた)キャリア3000、スペーサコンポーネント1510、電源1500、ならびに/または電源電極1510を含むサブアセンブリが提供されるのであれば、たとえば製造の観点から都合が良い。キャリア3000は便宜上、筐体側への対向および/または筐体側を向く面上のサブアセンブリの制限のために配置される。
【0193】
センサコントローラ1340に対する接点連結は便宜上、センサコントローラがすでにサブアセンブリの一部である場合に行われる。サブアセンブリは、たとえば筐体上(その近位面など)に配置されるように構成される。サブアセンブリは、たとえば軸方向および/または回転不能に筐体に保持される。サブアセンブリおよび筐体1670は、如何なる相対的に回転可能な配向でもサブアセンブリが筐体上に配置されないように構成される。むしろ、図示の実施形態において、サブアセンブリは、1つの所定の相対的に回転可能な配向のみで筐体上に配置される。サブアセンブリ(図示の実施形態においては、スペーサコンポーネント1510(ただし、他の実施態様も可能))は、1つまたはそれ以上の回転不能ロックまたは配向構成1515を含む。構成1515は便宜上、たとえば筐体上の表面への接触によってサブアセンブリの筐体上への配置を可能にする所望の回転可能な配向が与えられた場合に、筐体1670上の対応する構成1684と協働するように構成される。サブアセンブリおよび筐体が所定の配向ではない場合、構成1515は、筐体(たとえば、その表面)との協働により、支承面(たとえば、キャリア3000の表面)が筐体に接触した状態でサブアセンブリが筐体上に配置も担持もされないようにすることができる。
【0194】
対応する構成1684は、筐体およびサブアセンブリが相互に所定の回転可能な配向である場合に、構成1515を受けるように構成された凹部を筐体に含むことができる。対応する構成1684は、凹部(たとえば、凹部1682)を区切る筐体1670の壁によって画成される。凹部1682は、筐体1670の外面から内方に延びるため、対応する構成のほか、スイッチ1710用のスペースを提供することができる。対応する構成1684の凹部の底部または凹部を区切る遠位面は、変形可能部1674によって一部または全部が形成される。配向機能に代替的または追加的に、構成1515は、サブアセンブリが筐体1670に搭載されている場合、筐体に対してサブアセンブリを回転不能にロックすることができる。筐体およびサブアセンブリが正しい回転可能な配向である場合、運動検知ユニット1200は、光案内部1676に作動連結される。たとえば、運動検知ユニットの光案内部1676への対向、および/または、変形可能部1674の変形によるスイッチ1710のトリガを行うことができる。サブアセンブリは、たとえばスナップフィット(明示的には図示せず)により筐体1670に対して軸方向にロックされるか、または、ユーザインターフェース部材本体1605および筐体1670が軸方向にロックされた場合はこれらによって適所に固定される。サブアセンブリは便宜上、電極システムの接点連結領域がセンサコントローラ1340またはキャリア3000と導電連結された後、正しい配向にて筐体上に配置される。接点連結領域1352は、サブアセンブリまたはキャリア3000と筐体1670との間に配置される。
【0195】
電子システム1000の組立て中、好ましくは電極システム1345およびセンサコントローラ1340の電気的接点が構築された後、ならびに/または、サブアセンブリが正しい配向で筐体上に配置された後、設定検知領域1310は、たとえば当該設定検知領域が軸方向に配向されるように、接点連結領域1352に対して折り畳まれる。設定検知領域は、たとえば接点連結領域1352に対して斜めまたは垂直となるように、下方または遠位方向に折り畳まれる。可撓性導体キャリア1350は、検知領域が半径方向を向き、および/または、筐体を円周方向に囲むように、筐体の外面に巻き付けられる。その後、検知領域1310は、筐体1670の外面(たとえば、円筒状構成の表面)に沿って配置される。このプロセスでは、引き続き、検知領域1320が半径方向に配向され、ならびに/または、接点連結領域1352、キャリア3000、電源1500、および/もしくは筐体1670の近位面に沿って延びるように検知領域1320を配置することができる。これは、連結領域1380および/または検知領域1320を適当に折り畳むことにより実現される。検知領域1320は、所望の部分へと動いて、たとえば近位方向におよび/または送達面1620を向いた場合、検知領域はたとえばその領域の表面が遠位方向を向き、好ましくは電源電極1520により形成された付勢部材1540に担持される。この構成を
図10Cに示す。
【0196】
このため、
図10Cにおいて、検知領域1310および1320は、ユーザインターフェース部材1600の設定面1610または送達面1620への近接を検知できるように適当に位置する。電源電極の1つまたはそれ以上の部分は、可撓性導体キャリア1350中の切り込みまたはスリット内に延びることもできるし、切り込みまたはスリットと角度方向に位置合わせすることもできる。スリットまたは切り込みは、連結領域1382の領域に形成される。構成要素の正しい配置については、
図10Cに示す段階で視覚的に検査される。このプロセスでは、引き続き、可撓性導体キャリア1350、サブアセンブリ、および筐体1670を含むユニットをユーザインターフェース部材本体に導入し、たとえば説明したスナップフィットによって、筐体1670をユーザインターフェース部材本体1605に固定する。
【0197】
ユーザインターフェース部材本体への導入に先立ち、電極システム1345の第1の構成または平坦構成を再構築する傾向にある弾性力に対して、たとえば取付具(図示せず)が反応する。たとえば取付具を取り外した場合に、力に対する反応がなくなったら、弾性復元力は、電極システム、特に検知領域1310をユーザインターフェース部材本体1605の内壁に対して押し付けることができる。これは、電極システムと外部作動面との間の作動連結を改善することができる。電極システムの弾性が付与されていない場合または不十分な場合、この力は、検知領域1310を設定面1610に向かって付勢する(別の)付勢部材によって与えられる。
【0198】
図10Dは、キャリア3000上の導体経由または直接、接点連結領域1352がセンサコントローラ1340に導電連結された状態で、筐体1670、電極システム1345(電極トラックは図示せず)、およびキャリア3000を含む構造を示している。同様に、スペーサコンポーネント1510、電源1500、および電源電極1540を示している。
図10Cの描写とは対照的に、送達検知領域1320は、連続領域であって、連続的に配設された領域により形成されるわけではない。ただし、図示の構成は、本明細書において扱うその他任意の実施形態にも採用されることが了解されるものとする。電極システム1345において、接点連結領域1352および連結領域1380は、たとえば次のような値:90°、45°、30°、25°、20°、15°のうちの1つ未満の角度方向距離で相互に近接する。本実施形態において、対向端部1356および1358は、筐体1670が見える小さな間隙が両者間に形成されるように、相互に対向する。たとえば接点連結領域1352および/または連結領域1380を保護するため、たとえば接点連結領域1352および/または連結領域1380が可撓性導体キャリアにより覆われるように、可撓性導体キャリアを長くすることが了解されるものとする。この場合、可撓性導体キャリアは、筐体周りの360°超に巻き付くことができる。
【0199】
図11は、電極システム1345の別の実施形態を示している。本実施形態は、
図6と併せて論じたものに酷似する。したがって、以下の議論では、相違部分に焦点を当てる。最も顕著な相違は、基準電極1368の電極トラック1362の構成である。この電極トラック1362は、検知領域1310において、検知電極1366の電極トラック1364の両側で延びる。電極トラック1362は、たとえば接点連結領域1352から見た場合および/もしくは端部1358に向かって見た場合の第1の方向ならびに第1の方向と反対かつ好ましくは平行な第2の方向において、電極トラック1364に沿って延びる。電極トラック1362は、電極トラック1364を囲むことができる。たとえば端部1358に近い遷移部において、電極トラック1362は、たとえばシステム1345または可撓性導体キャリア1350の端部1358に最も近いトラック1364の端部を通過することにより、電極トラック1364の一方側から他方側に延びることができる。また、この構成によれば、基準電極部1371が端部を異なる方向に向ける。電子システム1000に適用された場合は、いくつかの部分1371が遠位方向を指し、いくつかの部分が近位方向を指すことになる。各部の端部は、検知電極1366の電極トラック1364側を指すのが好ましい。電極部1371は、電極トラック1362のそれぞれの側で同じ方向を指す。検知電極部1369および基準電極部1371は、検知領域1310に沿って等距離に配設される。電極トラック1362から分岐した電極部1371は、電極トラック1362により画成された凹部へと突き出る。この電極トラックの構成により、検知領域1310の長さ方向において交互の多くの検知電極部および基準電極部を有することが容易化される。連結領域1380において、検知領域1320における検知電極1376の電極トラック1378は、基準電極1362の電極トラック1364の2つの部分間に延びる。
【0200】
なお、1つまたは2つの異なる検知電極の電極トラックのほか、可撓性導体キャリア上の基準電極の電極トラックを有することは、開示の概念の実装に必要ではない。たとえば、1つの検知電極(たとえば、送達面用の検知電極)の電極トラックは、表面に対する近接を別の検知電極(たとえば、設定面用の検知電極)でモニタリングすべき場合に、基準電極として作用することができる。また、基準電極は、内部において、可撓性導体キャリアから遠隔とすることができる。それにも関わらず、基準電極用の専用電極トラックを電極システムに有することは、有利なものとすることができる。ただし、検知電極と併せて基準電極を可撓性導体キャリア上に有することにより、センサコントローラおよび電極システムを含むセンサの感度の向上が容易化または向上される。また、(たとえば、設定面および送達面用の)2つの異なる検知電極が設けられる場合、特に、基準電極が検知電極間に延びる場合および/または可撓性導体キャリアに沿って両検知電極から電気的に分離される場合、基準電極は、検知電極間をある程度隔離することができる。
【0201】
図12は、電極システムの一実施形態を示している。本実施形態は、
図6および
図11と併せて論じたものに酷似する。このため、以下の議論では、相違部分の説明を容易化する構成に焦点を当てる。ただし、上記実施形態と同様に、本実施形態と併せて明示的に開示されない構成についても実装される。電極システム1345は、設定検知領域1310を有する。電極システムは、送達検知領域1320を有する。この場合も、上記実施形態と同様に、領域のうちの1つ(たとえば、設定検知領域または送達検知領域)で十分なものとすることができる。本実施形態において、送達検知領域1320は、
図6と同じように構成される。ただし、
図11のような構成も同様に可能である。送達検知領域1320および設定検知領域1310は、可撓性導体キャリア1350の連結領域1380により連結される。連結領域1380は、設定検知領域1310に対して送達検知領域1320を動かすことにより、たとえばこれらの検知領域を2つの異なる配向の表面(たとえば、相互に垂直に延びる表面)に対して適合させることを容易化する。上記実施形態と同様に、設定検知領域1310は、ユーザインターフェース部材本体1605の湾曲(たとえば、円筒)表面(たとえば、設定面1610と関連付けられた検知面)に適合するように構成される。送達検知領域1320は、ユーザインターフェース部材本体1605の平面(たとえば、送達面1620と関連付けられた検知面)に適合するように構成される。設定検知領域1310において、電極構成1360は、2つの電極トラックすなわちトラック1362および1364を含む。この場合も、電極トラック1362が基準電極1368を画成し、電極トラック1364が検知電極1366を画成する。それぞれの電極トラックは、可撓性導体キャリア1350または好ましくは連続した検知領域1310の端部1356および1358間で検知領域1310の長手方向に沿って延びる。電極トラック1362および1364は、検知領域において、たとえば一般的には(長手方向)端部1356から離れ、(長手方向)端部1358に向かって、相互に沿って延びる。検知電極1366および基準電極1368は、検知領域の対向端部(たとえば、幅方向もしくは軸方向または長手方向と垂直な方向に領域を区切る端部)に沿って延びる。
【0202】
関連する電極の基準電極部1371および/または検知電極部1369は、設定検知領域1310の長手方向または長さ方向に対して斜めまたは垂直に延びる。基準および検知電極部は、特に端部1356および1358間に延びた検知領域1310の中心および/またはストリップ状エリアRに沿って、相互に重なり合う。エリアRは、
図12において一点鎖線により視覚化している。
【0203】
それぞれの電極部すなわち検知電極部1369および/または基準電極部1371は、(自由)端部を有する。電極部の一方(検知電極部および/または基準電極部)は、電極部の他方(基準電極部または検知電極部)とそれぞれ重なり合う領域を有することができる。また、電極部の一方が電極部の他方と重なり合わない領域も有することできる。非重畳領域は、電極部の一方を連結する連結領域に対して、電極部の他方の端部が同じ連結領域に対するよりも近接することができる。検知電極部および/または基準電極部の主延伸方向は便宜上、相互に平行である。検知電極部1369は、当該検知電極部を導電連結する連結部1370から離れる方向、および/または、基準電極部1371を導電連結する連結部1372に向かう方向に延びる。基準電極部1371は、当該基準電極部を導電連結する連結部1372から離れる方向、および/または、連結部1370に向かう方向に延びる。それぞれの電極部の(自由)端部は、それぞれの電極部を連結する連結部から遠隔である。電極部の端部は、たとえば検知領域の長手方向の主延伸方向と垂直な方向または軸方向もしくは幅方向に見た場合、関連する連結部から最も遠くに配置された領域とすることができる。連結部1370および1372は、可撓性導体キャリア1350または検知領域1310の対向端部に沿って延びる。
【0204】
基準電極部1371の(自由または突出)端部は、互いに位置合わせされる。検知電極部1369の(自由または突出)端部は、互いに位置合わせされる。幅方向に見た場合、位置合わせされた端部は、同じ箇所または実質的に同じ箇所とすることができる。基準電極部1371の端部および検知電極部1369の端部は、たとえば幅方向もしくは軸方向ならびに/または長手方向において、相互にオフセットする。このため、基準電極部1371および検知電極部1369は、上記実施形態と同様に、交互配置の構成を有する。
【0205】
ただし、上述の実施形態において、センサ電極部の幅、すなわち、それらの主延伸方向すなわち連結部を離れて(自由)端部に向かう方向と垂直な寸法は、電極部の端部への延伸に沿って一定であった。このため、それぞれの電極部は、部分上の上面視の場合、本質的に矩形の形状を有していた。ここに示す実施形態において、基準電極部1371は、連結部1372から離れる方向および/または基準電極部の端部に向かう方向に見た場合、幅が小さくなる。代替的または追加的に、同じことが連結部1370およびその関連する部分の端部に対して検知電極部にも当てはまる。それぞれの電極部は、自由端を通って延びる軸および/または可撓性導体キャリアに沿った電極部の主延伸方向と平行な軸に関して対称であるのが好ましい。この軸は、たとえば電子システムがデバイスに適用された場合、システムまたはデバイスの近位端と遠位端との間に延びることができる。
【0206】
図示の構成において、基準電極1368および検知電極1366を分離する可撓性導体キャリア1350の領域は、波状または正弦波形状を有する。これは、上記実施形態における蛇行形状とは対照的である。したがって、基準電極部および検知電極部が重なる領域の所与の位置(たとえば、任意の位置またはすべての位置のうちの1つ)において、それぞれの電極部は、長手方向に沿って異なる延伸を有することができる。たとえば、基準電極部を連結する連結部の近くの領域においては、基準電極部を検知電極部よりも広くすることができる。この構成は、電極構成を含むセンサの感度の一様性にとって有益なものとすることもできるし、センサの感度を所望の感度特性へと調整することもできる。
【0207】
図13および
図14は、電極システムの他の実施形態を模式的に示している。実施形態は、
図12に示したものに類似する。特に、電極部は、関連する連結部から離れる方向に幅を小さくすることができる。
図13は、電極部の正弦波構成を示している(特に、異なる電極トラックと関連付けられた電極部1369および1371を分離するエリアが正弦波形状を有する)。
図14は、電極部のジグザグまたは鋸歯構成を示している(特に、異なる電極トラックと関連付けられた電極部1369および1371を分離するエリアがジグザグまたは鋸歯形状を有する)。
【0208】
上述の通り、(基準電極および検知電極の)電極トラックのレイアウトは、矩形状(
図4、
図6、および
図11)、ジグザグもしくは鋸歯(
図14)、または正弦波繰り返し(
図12および
図13)など、電極部の広範な電極パターンまたは形状を特徴付けることができる。電極部のレイアウトまたは電極トラックの構成は便宜上、たとえばユーザの指または親指がユーザインターフェース部材を把持する場合に両トラックまたは両部(基準電極および(それぞれの)検知電極)を覆う可能性を増やすことにより、ユーザの把持に対する応答の確実性および/または改善を図るように(たとえば、電極部の配置および/または構成を適当に調整することによって)選定される。
【0209】
図15A~
図15Fは、電極システムの一実施形態、電極システムを用いた電子システムの一実施形態、および方法の一実施形態を示している。本実施形態の文脈において記載の構成は、本明細書に記載の他の実施形態にも適用され、その逆もまた同様である。
【0210】
図15Aおよび
図15Bは、電極システム1345を反対側から示している。
図15Bは、
図15Aに対して180°回転したものである。一般的に、電極システム1345は、たとえば
図4、
図6、
図11、および
図12に関して上述したシステムに類似する。したがって、この説明では、相違部分に焦点を当てる。
【0211】
電極システム1345は、設定検知領域1310を含む。設定検知領域は、電極システムの2つの端部1356および1358間に延びる。端部1356および1358は、可撓性導体キャリア1350のストリップ状領域の2つの対向端部または遠隔端部とすることができる。設定検知領域1310において、(設定)検知電極1366は、電極構成1360の電極トラック1364により与えられる。検知電極1366は、連結部1370を有する。連結部1370から離れる方向および/または基準電極1368に向かう方向に、複数の異なる検知電極部1369が延びる。検知電極1366に向かう方向および/または連結部1372から離れる方向に延びる基準電極部1371にも同じことが当てはまる。電極部1371は、電極トラック1362により形成される。電極部1366および1371の配置により、設定検知領域1310において基準電極1368および検知電極1366を分離する可撓性導体キャリア1350のエリアの図示の蛇行形状を構築することができる。検知電極および基準電極は、検知領域1310における図示の櫛状構造を形成することができる。
【0212】
検知領域1310において、電極システム1345は、複数の切り欠きまたはスリット1384を含む。切り欠きまたはスリット1384は、電極システム1345の2つの対向端部からアクセス可能となるように、電極システム全体にわたって延びる。切り欠きまたはスリット1384は便宜上、電極システム、特に検知領域1310を関連する電子システム1000のユーザインターフェース部材部品または筐体1670に取り付けまたは連結するために設けられる(たとえば、
図15C参照)。切り欠きまたはスリット1384は、たとえば第1の端部1356から第2の端部1358まで、検知領域1310の延伸に沿って等距離で配設される。切り欠きまたはスリット1384は、全周に沿って、可撓性導体キャリアならびに/または1つもしくはそれ以上の電極トラックにより区切られる。切り欠きまたはスリットは、異なる長さを有することもできるし、等しい長さを有することもできる(図示の実施形態においては、長さが異なる;好ましくは任意の2つの隣り合う切り欠きが異なる長さを有し、この長さは、検知領域1310の主延伸方向に対して垂直に測定される)。切り欠きまたはスリット1384は、電極システムが電子システム1000に適用された後、近位端から遠位端まで延びる軸に沿って、当該切り欠きまたはスリットの主延伸方向が配向されるように配向される。切り欠きまたはスリット1384のうちの1つまたはそれ以上は、電極部が配置されない検知領域1310の副領域ならびに/または電極部1369および1371の一方が配置された副領域に限定されるように配置される。切り欠きまたはスリットは、電極部1369および1371の一方によって、全部または一部が囲繞および/または境界設定される。図示の実施形態において、検知電極部1369を通る切り欠きまたはスリットは、電極部1369によって(たとえば、2つの隣り合う電極部1369間に)一部のみが囲まれる。一方、基準電極部1371を通る切り欠きまたはスリットは、関連する電極部1371によって完全に囲まれる。これを逆にすることもできるし、両電極部が切り欠きまたはスリット1384それぞれの一部または全部を囲むこともできる。
【0213】
電極システム1345は、コネクタ領域1386をさらに含む。コネクタ領域1386は、便宜上可撓性の連結領域1380を介して、検知領域1310に連結される。コネクタ領域1386は、検知領域1310に対して可動である。電極トラック1362および/または電極トラック1364は、検知領域1310から連結領域1380を介してコネクタ領域1386まで延びる。連結領域1380は、検知領域1310の幅および/またはコネクタ領域1386の幅よりも小さな幅を有する。コネクタ領域1386またはそのセクションの外周は、全部または一部が円形の形状を有することもできるし、円形の包囲曲線を規定することもできる。
【0214】
コネクタ領域1386は、(可撓性導体キャリア1350に沿って見た場合)検知領域1310と接点連結領域1352との間に配置される。接点連結領域1352は、電極システム1345の別の連結領域1382を介してコネクタ領域1386に連結される。別の連結領域1382は、連結領域1380から直径方向に反対の箇所でコネクタ領域1386から離れる方向に延びることができる。コネクタ領域1386またはコネクタ領域1386を検知領域1310に連結する連結領域1380は、端部1356および1358間で、たとえば中心もしくは真ん中ならびに/または両端部から遠隔に位置する。コネクタ領域1386においては、別の電極トラック1378が配置される。電極トラック1378は、接点連結領域1352においてアクセス可能である。電極トラック1362および1364も同様に、接点連結領域1352においてアクセス可能であるため、1つの接点連結領域のみにおける電極構成との接点連結を容易化する。ただし、電極トラック1378は、検知領域1310に延入しない。むしろ、トラック1378は、コネクタ領域1386、接点連結領域1352、および連結領域1382に限られる。
【0215】
電極トラック1378は、コネクタ電極1388を提供する。コネクタ電極1388は、別個の検知電極に対する電極システムのインターフェースとして提供される。図示の実施形態において、電極は、別個の電極またはばね1390(
図15C参照)(たとえば、電源ばね)により提供される。コネクタ電極1388は、電極システム1345が電子システムに配置された場合、壁はユーザインターフェース部材本体1605を近位方向に区切るユーザインターフェース部材本体の壁の遠位方向指向面側を向くように設けられる。コネクタ領域1386のサイズおよび/またはコネクタ電極1388のサイズは、電源1500(たとえば、コインセル)のサイズに合わせて調整される。
【0216】
電極トラック1362の基準電極部1371は、コネクタ電極1388(たとえば、その外周)に沿って延びる。基準電極部1371は、電極トラック1362の隣り合う部分よりも大きな幅を有すること、および/または、コネクタ電極1388の異なる(たとえば、反対)側に延びることができる。コネクタ領域1386においてコネクタ電極1388以外の電極トラックの部分は、絶縁材料(たとえば、可撓性導体キャリア1350の材料)で覆われる。このため、コネクタ領域1386(たとえば、電子システム1000においてユーザインターフェース部材本体1605に対向する側)においては、コネクタ電極1388のみが露出する。コネクタ電極のみが露出することにより、たとえば別個の検知電極1390を原因とする異なる電極トラック間の短絡のリスクが回避される。このことから、
図15Aにおいて、コネクタ電極1388をハッチングで示しているのは、この電極(だけ)がアクセス可能であることまたは露出していることを強調するためである。図示の実施形態において、コネクタ電極1388は、リング状の形状を有する(ただし、一般的には、他の形状も可能である)。リングは、相互に対向することができる2つの端部を有する。また、リングは、300°超(たとえば、350°超)にわたって円周方向に延びることができる。リングの端部は、コネクタ電極により区切られた内部から外部まで、別の電極トラック(たとえば、基準電極1368を画成する電極トラック1362)の一部用の通路を区切ることができる。内部を画成するとともに内部から外部までの別の電極トラックの通路を区切るコネクタ電極を有することは、リング状の形状に限定されない。
【0217】
コネクタ電極1388から遠隔のコネクタ領域1380の側では、電極構成(たとえば、電極トラック1362)の端子部1392が露出する。たとえば短絡のリスクを抑えるため、端子部1392のみが露出するのが好ましい。電子システム1000において、端子部1392は、たとえば直接、電源1500に接触することができる(
図15C参照)。コネクタ電極1388は、端子部1392が露出しているコネクタ領域1386の側で電気的絶縁材料により覆われる(したがって、コネクタ電極1388および/または電子システムにおけるユーザインターフェース部材本体1605の近位端から遠隔のコネクタ領域1386の側の上面図を示す
図15Bにおいては、コネクタ電極1388ではなく端子部分1392をハッチングしている)。接点連結領域1352における電極トラックの端子は、可撓性導体キャリア1350に関して端子部1392と同じ側でアクセス可能であるか、または露出する(このため、接点連結領域1352においても同様に、電極トラック1362、1364、および1378をハッチングしている)。
【0218】
図15Cは、
図15Aおよび
図15Bと併せて論じた電子システムに合わせた調整を除き、
図10A~
図10Dと併せて論じたシステムに大略対応する組立て電子システム1000の模式断面図である。設定検知領域1310は、筐体またはユーザインターフェース部材部品1670の外部に巻き付けられるか、または、外部の周りに延びる。また、筐体の突起またはリッジ1678がスリット1684を通って突出し、筐体1670に対する検知領域1310の保持または取り付けを行う。突起もしくはリッジならびに切り欠きもしくはスリットは、たとえば突起またはリッジをスリットまたは切り欠きへと案内することにより筐体1670が検知領域1310に取り付けられるように構成される。言い換えると、(たとえば、それぞれの突起またはリッジ1678において、好ましくは軸方向に延びたアンダーカットにより提供される)フォームフィット連結は、検知領域1310が筐体1670に取り付けられる際の筐体1670から離れる方向の検知領域1310の半径方向運動および/または筐体に対する検知領域の軸方向運動を防止することができる。接点連結領域1352は、たとえば電源1500から遠隔の導体キャリア3000の側または導体キャリア3000の遠位側で、導体キャリア3000上のコネクタ3002に導電連結される。接点連結領域1352とコネクタ3002との間の電気的接点連結は、たとえばプラグインコネクタおよび/またははんだにより形成される。
【0219】
電極システム1345が連結された筐体1670は、ユーザインターフェース部材本体1605への案内、および/または、便宜上として、(たとえば、スナップフィットまたは溶接による)本体1605に対する回転不能および/または軸方向の固定がなされる。別個の検知電極または付勢部材1390は、コネクタ領域1386および/または端子部1392を電源の1つの接点(たとえば、グランド接点)へと付勢する。その関連する力は、遠位方向および/またはユーザインターフェース部材本体の近位端面から離れる方向に作用することができる。また、電極1390の検知面は、ユーザインターフェース部材本体1605の近位端において、本体の内壁に適合および/または接触することができる。付勢部材または別個の検知電極1390は、電極1500上の接点(たとえば、その負接点)を導体キャリア3000上の電気端子3004へと付勢する。このように、電源の接点は、導体キャリアおよび電極システム1345に連結される。導体キャリア3000と電源1500との間には、スペーサコンポーネント1510が配置される(あるいは、スペーサを省くこともできる)。本実施形態においては当然のことながら、上述の電子システムの実施形態のその他の構成と同様に、運動検知ユニット1200、電子制御ユニット1100、および/またはセンサコントローラ1340も提供される。
【0220】
図15Dは、ユーザインターフェース部材本体1605への挿入前の電子システム1000のサブアセンブリを示している。サブアセンブリは、電極システム1345、筐体1670、および電源1500を含み、場合により、スペーサ1510および/またはキャリア3000を含む(明示的には図示せず)。電極システム1345が筐体およびキャリア3000にも連結されていることから、電源1500は、たとえば当該電源1500の横方向外面を横切って軸方向に延びることができる連結部1380および1382によって、サブアセンブリに確実に保持される。コネクタ部1386は、電源の上面を覆い、端子部は、電源の(他の)接点を電極システムに連結する。
【0221】
図15Eおよび
図15Fは、電子システムにおいて使用される電極1390(付勢部材)の一実施形態を示している。電極1390は、電極連結部1394を有する。電極連結部1394は、たとえばコネクタ電極1388への担持によって、電極をセンサコントローラ1340および/または電極システム1345に連結するために設けられる。図示の実施形態において、電極連結部1394は、複数(たとえば、3つ)のアームまたは脚部により形成される。安定性の観点からは、3つの脚部が特に好都合である。アームは、円周方向に一様に分布する。アームは傾斜する。アームは、軸方向(たとえば、遠位方向)および/または半径方向(たとえば、半径方向内方)に延びる。アームは、コネクタ電極1388に担持されるように構成される。電極1390は、電極検知部1396を含む。電極検知部1396は、ユーザインターフェース部材本体1605の内部を近位方向に区切る壁の内面に接触および/または適合するように配置される。電極検知部1396は、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620へのユーザの近接の検出を有効化、容易化、または改善するように配置される。検知部1396は、(容量)検知に利用可能な表面積を最大化するように構造化された(たとえば、円周方向に蛇行形状の)表面を有する。円周方向に配設された複数の凹部(たとえば、半径方向に配向された凹部)は、同じく円周方向に配設された複数の突出電極部(たとえば、半径方向に突出した電極部)を分離することができる。凹部の角度方向延伸は、電極部の角度方向延伸よりも小さくすることができる。それぞれの電極連結部1394は、検知部1396の端部(たとえば、半径方向外側端)で始まることおよび/または端部から延びること、好ましくはその突出部から始まることおよび/または延びることができる。
【0222】
電極または付勢部材1390は便宜上、
図15Cに示す状況において弾性変形され、たとえば遠位方向を指向する復元力を提供する。したがって、付勢部材または電極1390から遠位方向に配設された構成要素を付勢して、相互の機械的接触または機械的および/もしくは電気的接点の強化を図ることができる。たとえば、付勢部材または電極1390により、以下の複数対の構成要素のうちの1つもしくはそれ以上またはすべての構成要素が付勢され、相互の機械的接触に至る:
- 端子部1392および電源1500(たとえば、グランドまたは正接点など、電源の近位側において);
- 電源1500(たとえば、負接点など、電源の遠位側において)および電気端子3004;
- 導体キャリア3000ならびに筐体1670におけるキャリアの台座もしくは支承面(明示的には図示せず);
- 運動検知ユニット1200(たとえば、その光遷移面)および光案内部1676(たとえば、その光遷移面(レンズのように形成された光線成形部を含むことができる))。これは、光案内部1676と運動検知ユニット1200との間の光結合を向上させることができ、場合により作動することができる。
【0223】
たとえば一端(
図15Aおよび
図15Bには示さず)または両端1356および1358(図示の通り)の端部領域における電極システム1345は、1つまたはそれ以上の切り欠き1398を有する。検知領域1310が筐体に連結されている場合、切り欠きは、たとえばコネクタ3002への連結用の筐体内部への接点連結領域1352の通路を画成することもできるし、区切ることもできる(
図15D参照)。
【0224】
図15Dに示すサブアセンブリにおいて電源の上方に延びた電極システムを有することには、サブアセンブリにおいて電源を保持するための専用のクリップが不要になる、という利点がある。むしろ、電源1500は、電極システム1345を介して筐体/ユーザインターフェース部材部品1670に保持される。
【0225】
図15A~
図15Fに提案の電極システムもしくは電子システムのレイアウトならびに/または電子システムにおける電極システムの配置は、別個の検知電極を使用しないシステムにも適用されることに留意する。この場合、付勢部材は便宜上、コネクタ領域としてではなく、送達検知領域として機能する領域1386から遠位方向に位置する。同様に、
図10A~
図10Dの電子システムのレイアウトは、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620への近接をモニタリングするための別個の検知電極を採用するように調整される。
【0226】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0227】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0228】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0229】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0230】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0231】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0232】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0233】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0234】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0235】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0236】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0237】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0238】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0239】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0240】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0241】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0242】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0243】
当業者であれば、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の改良(追加および/または除去)について、このような改良およびそのありとあらゆる同等物を包含する本発明の全範囲および思想から逸脱することなく実行されることが了解されよう。
【0244】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO11608-1:2014(E)の5.2項の表1に記載のような針ベースの注射システムを含むことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載の通り、針ベースの注射システムは、マルチドーズ容器システムおよびシングルドーズ(一部または全部の排出を伴う)容器システムに大別される。容器は、交換可能な容器または交換不可能な一体型容器とすることができる。
【0245】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載の通り、マルチドーズ容器システムは、交換可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムにおいて、各容器は、サイズが固定または可変(ユーザによる予備設定)の複数のドーズを保持する。別のマルチドーズ容器システムは、交換不可能な一体型容器を備えた針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムにおいて、各容器は、サイズが固定または可変(ユーザによる予備設定)の複数のドーズを保持する。
【0246】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載の通り、シングルドーズ容器システムは、交換可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムの一例においては、各容器が単一のドーズを保持するため、送達可能な全体積が排出される(全排出)。別の例においては、各容器が単一のドーズを保持するため、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。また、ISO11608-1:2014(E)に記載の通り、シングルドーズ容器システムは、交換不可能な一体型容器を備えた針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムの一例においては、各容器が単一のドーズを保持するため、送達可能な全体積が排出される(全排出)。別の例においては、各容器が単一のドーズを保持するため、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【0247】
保護の範囲は、上述の例に制限されない。本明細書に開示の如何なる発明も、新規の各特徴および特徴の各組合せにて具現化されるが、これらは特に、この特徴または特徴の組合せが特許請求の範囲または例に明示的に記載されていない場合であっても、特許請求の範囲に記載のあらゆる構成のすべての組合せを含む。
【符号の説明】
【0248】
1 注射デバイス、薬物送達デバイス、またはデバイスユニット
10 ハウジング
12 投与量ノブ
11 注射ボタン
13 ウィンドウ
14 容器
15 針
16 内側針キャップ
17 外側針キャップ
18 キャップ
70 スリーブ
71a-c 構造
1000 電子システム
1100 電子制御ユニット
1200 運動検知ユニット
1310 設定検知領域
1320 送達検知領域
1330 ユーザ近接検出ユニット
1340 センサコントローラ
1345 電極システム
1350 可撓性導体キャリア
1352 接点連結領域
1354 部分
1356 端部
1358 端部
1359 機械的部分
1360 電極構成
1361 角度方向クリアランス
1362 電極トラック
1364 電極トラック
1366 検知電極
1368 基準電極
1369 検知電極部
1370 連結部
1371 基準電極部
1372 連結部
1373 切り欠き
1374 端子
1375 端子
1376 検知電極
1378 電極トラック
1379 端子
1380 連結領域
1381 付勢部材
1382 連結領域
1383 端部
1384 スリット
1386 コネクタ領域
1388 コネクタ電極
1390 電極
1392 端子部
1394 電極連結部
1396 電極検知部
1398 切り欠き
1400 通信ユニット
1500 電源
1510 スペーサコンポーネント
1515 配向構成
1520 電源電極
1530 接点部
1540 付勢部
1550 リング部
1600 ユーザインターフェース部材
1605 ユーザインターフェース部材本体
1610 設定面
1615 連結機能
1617 表面構造
1616 構造要素
1618 遷移領域
1620 送達面
1630 部品
1670 筐体
1672 剛性部
1674 変形可能部
1675 受容スペース
1676 光案内部
1678 リッジ
1680 フランジ
1681 スナップ機能
1682 凹部
1683 スロット
1684 対応する構成
1700 連結検出ユニット
1710 スイッチ
3000 導体キャリア
3002 コネクタ
3004 端子
4000 物体
A 軸
C 線
L 長さ
R エリア
P 平面
【国際調査報告】