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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】廃水精製方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20230101AFI20231221BHJP
【FI】
C02F1/04 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513416
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2022010918
(87)【国際公開番号】W WO2023090581
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158835
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0081416
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ、ソク-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】オ、チュ-シク
(72)【発明者】
【氏名】コ、チュン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョ、キョン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オ、スン-ファン
【テーマコード(参考)】
4D034
【Fターム(参考)】
4D034AA11
4D034CA12
(57)【要約】
本発明は、廃水精製方法に関し、水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分とを混合した混合ストリームを第1カラムに供給するステップと、前記第1カラムの上部排出ストリームは、凝縮させてからデカンタに供給して水層と有機層に分離し、前記有機層成分を第2カラムに供給するステップと、前記第2カラムの下部排出ストリームから副産物を分離し、上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収するステップと、を含む、廃水精製方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分とを混合した混合ストリームを第1カラムに供給するステップと、
前記第1カラムの上部排出ストリームは、凝縮させてからデカンタに供給して水層と有機層に分離し、前記有機層成分を第2カラムに供給するステップと、
前記第2カラムの下部排出ストリームから副産物を分離し、上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収するステップと、を含む廃水精製方法。
【請求項2】
前記第1カラムの下部排出ストリームおよび前記デカンタの水層成分は精製廃水として廃水処理場に移送する、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項3】
前記混合ストリームのpHが1.5~5.5である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項4】
前記酸成分は、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、およびシアン酸からなる郡から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項5】
前記第1カラムの運転圧力が0.5bar~3.0barであり、運転温度が80℃~130℃である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項6】
前記第2カラムの運転圧力が0.15bar~0.5barである、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項7】
前記第2カラムの下部温度が20℃~45℃である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項8】
前記第2カラムの下部排出ストリーム中のニトリル系単量体の含量が5重量%~40重量%である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項9】
前記第2カラムの下部排出ストリームの一部ストリームは熱交換器を通過して前記第2カラムに還流され、残りのストリームとして副産物を分離する、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項10】
前記第2カラムの下部排出ストリームの一部のストリームは前記熱交換器のチューブを通過し、
前記熱交換器のシェルを介して供給される熱源の温度が60℃~90℃である、請求項9に記載の廃水精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月17日付けの韓国特許出願第10-2021-0158835号および2022年7月1日付けの韓国特許出願第10-2022-0081416号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、廃水精製方法に関し、より詳細には、ニトリル系単量体を用いた重合反応の後段の精製ステップで廃水から再使用可能な成分を回収し、廃水処理場に移送される廃水中の総窒素含量を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ニトリル系ゴムは、ニトリル系単量体を用いて、ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスを製造することにより得られる。前記ニトリル系ゴムの一例としては、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンを共重合させて製造したアクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックスが挙げられる。
【0004】
前記ニトリル系ゴムは乳化重合により製造することができ、前記乳化重合は、媒質を用いて単量体を溶液状態で重合する方法である。前記ニトリル系ゴムの乳化重合は、例えば、水を媒質として用い、ニトリル系単量体を単独でまたはニトリル系単量体と共重合させるための追加単量体を投入して重合させ、これにより、前記ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスが製造される。
【0005】
前記重合が完了した前記ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスは、ブローダウン(blowdown)タンクに移送し、前記ブローダウンタンクで未反応物および水を上部に気化させて廃水槽に移送する。
【0006】
一方、前記ブローダウンタンクでは、ラテックスのpH調節のためにアンモニアが投入され、その一部は水と共に上部に気化して廃水槽に流入される。この場合、前記廃水槽で未反応のニトリル系単量体2モルとアンモニア1モルとが反応して三量体が生成され、これにより、ニトリル系単量体の損失が発生するという問題があった。
【0007】
また、前記廃水からニトリル系単量体を回収した残りの廃水は廃水処理場に移送される。この際、前記廃水処理場に移送される廃水中の総窒素含量(total nitrogen、TN)が非常に高いため、これを処理するための廃水処理場に高いコストを投資しなければならず、環境規制が厳しくなる中、ラテックス製品の価格競争力において大きい損失が発生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスの製造工程で未反応のニトリル系単量体の回収時における損失を防止し、廃水処理場に移送される廃水中の総窒素含量を最小限に抑える方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分とを混合した混合ストリームを第1カラムに供給するステップと、前記第1カラムの上部排出ストリームは、凝縮させてからデカンタに供給して水層と有機層に分離し、前記有機層成分を第2カラムに供給するステップと、前記第2カラムの下部排出ストリームから副産物を分離し、上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収するステップと、を含む廃水精製方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の廃水精製方法によると、ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスの製造工程で未反応のニトリル系単量体の損失を最小限に抑え、回収および再使用することにより、コスト競争力を高めることができる。
【0011】
また、廃水処理場に移送される精製廃水中の総窒素含量を効果的に低減し、廃水処理のための廃水処理場に投資しなければならないコストを削減することができ、環境規制が厳しくなる中、ラテックス製品の価格競争力を高めて事業の持続可能性(sustainability)を向上させ、炭素排出量の低減および炭素税の削減などの効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る廃水精製方法の工程フロー図である。
図2】比較例に係る廃水精製方法の工程フロー図である。
図3】比較例に係る廃水精製方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内における流体(fluid)の流れを意味し、また、配管内を流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内を流れる流体自体および流体の流れを何れも意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)、および固体(solid)の何れか1つ以上の成分を含み得る。
【0015】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明を図1を参照してより詳細に説明する。
【0016】
本発明によると、廃水精製方法が提供される。より具体的に、水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分とを混合した混合ストリームを第1カラムに供給するステップと、前記第1カラムの上部排出ストリームは、凝縮させてからデカンタに供給して水層と有機層に分離し、前記有機層成分を第2カラムに供給するステップと、前記第2カラムの下部排出ストリームから副産物を分離し、上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収するステップと、を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記廃水は、ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスの製造工程で発生するものであることができる。具体的に、前記ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスの製造工程は、重合ステップと精製ステップを含むことができる。
【0018】
前記重合ステップは、乳化重合により行うことができる。前記乳化重合は、媒質として水を用い、ニトリル系単量体単独でまたはニトリル系単量体と共重合させるための追加単量体を投入して重合することにより行うことができる。例えば、前記追加単量体は、共役ジエン系単量体を含むことができる。
【0019】
前記ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記ニトリル系単量体は、アクリロニトリルであることができる。
【0020】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、およびイソプレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンであることができる。
【0021】
前記精製ステップは、前記重合が完了したニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスから未反応物と水を分離するステップであることができる。具体的に、前記重合が完了したニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスをブローダウン(blowdown)タンクに移送し、前記ブローダウンタンクで未反応物および水を上部に気化させて廃水槽10に移送することができる。
【0022】
前記ブローダウンタンクでは、ラテックスのpH調節のために、アンモニアを投入する必要がある。しかし、前記ブローダウンタンクで未反応物および水を気化させて廃水槽10に移送させる過程で、前記アンモニアの一部が水と共に気化して廃水槽10に流入され、これにより、前記廃水槽10で未反応のニトリル系単量体2モルとアンモニア1モルとが反応して3,3-イミノジプロピオニトリル(3,3-iminodipropionitrile)という三量体(trimer)が生成され、これにより、ニトリル系単量体の損失が発生するという問題があった。
【0023】
また、前記廃水からニトリル系単量体を回収した残りの廃水は廃水処理場に移送されるが、上記の三量体は、従来、廃水中の総窒素含量の殆どを占めるものであって、前記廃水処理場に移送される廃水中の総窒素含量が非常に高いため、これを処理するための廃水処理場に高いコストを投資しなければならない。また、環境規制が益々激しくなっていて、ラテックス製品の価格競争力が劣るという問題があった。
【0024】
これに対し、本発明では、未反応のニトリル系単量体の損失と廃水中の総窒素含量を最小限に抑え、廃水処理のためのコストを削減するとともに、ラテックス製品の価格競争力を向上させるための方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態によると、前記廃水槽10には、水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水が廃水移送ライン11を介して供給されることができる。また、前記廃水槽10には、酸成分移送ライン12を介して酸成分が投入されることができる。前記酸成分の種類は特に限定されず、例えば、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、およびシアン酸からなる郡から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記酸成分は酢酸であることができる。
【0026】
前記廃水槽10からは、前記水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分を混合した混合ストリームが排出され、前記混合ストリームは第1カラム20に供給されることができる。
【0027】
前記混合ストリームは、廃水に酸成分が混合されて廃水のpHが低くなった状態であることができる。例えば、前記混合ストリームのpHは、1.5以上、2.5以上、または3.5以上、および4.5以下、5以下、または5.5以下であることができる。前記混合ストリームのpHを上記の範囲内に調節することで、前記混合ストリーム中のアンモニア(NH3)をアンモニウム塩(NH4 +)に転換させ、ニトリル系単量体とアンモニアが副反応により三量体を形成することを防止することができ、これにより、ニトリル系単量体の損失を減少させることができる。また、前記ニトリル系単量体の三量体は、廃水中の総窒素含量の殆どを占める成分であり、三量体の形成を防止して総窒素含量を減少させた精製廃水を廃水処理場に移送することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記混合ストリームは第1カラム20に供給することができる。前記第1カラム20は、蒸留により混合ストリームの成分を分離するものであって、前記第1カラム20において、前記混合ストリーム中に含まれているニトリル系単量体と副産物は上部に分離し、残りの成分は下部に分離することができる。この際、前記副産物は前記ニトリル系単量体の二量体を含み得る。また、前記第1カラム20の下部に分離される残りの成分は、精製廃水として一部は通常の再沸器23で加熱された後に前記第1カラム20に還流され、残りは廃水処理場に移送されることができる。
【0029】
前記第1カラム20において、上部排出ストリームは凝縮器21で凝縮されてからデカンタ22に供給されることができる。前記デカンタ22はフレアガスを排出し、凝縮された第1カラム20の上部排出ストリームを水層と有機層に分離することができる。前記デカンタ22で分離された水層成分は、精製廃水として廃水処理場に移送することができる。
【0030】
前記ニトリル系単量体の三量体の形成を防止し、前記第1カラム20で廃水中のニトリル系単量体と前記ニトリル系単量体の二量体が分離されることにより、前記廃水処理場に移送される精製廃水中の総窒素含量が減少されることができる。例えば、前記廃水中の総窒素含量に対する、精製廃水中の総窒素含量比は0.25以上、0.3以上、または0.35以上、および0.5以下または0.55以下であることができる。
【0031】
前記第1カラム20の運転温度は、80℃以上、90℃以上、または95℃以上、および100℃以下、110℃以下、または130℃以下であることができる。また、前記第1カラム20の運転圧力は、0.5bar以上、0.7bar以上、または0.9bar以上、および1.5bar以下、2bar以下、または3bar以下であることができる。上記の範囲内に第1カラム20の運転条件を制御することで、上部にニトリル系単量体を効果的に分離することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記デカンタ22で分離された有機層成分はニトリル系単量体と共に副産物を含み得るが、前記ニトリル系単量体と副産物を分離するために第2カラム30に供給することができる。
【0033】
前記第2カラム30は、蒸留により、前記デカンタ22で分離された有機層成分中のニトリル系単量体とニトリル系二量体を含む副産物を分離することができる。具体的に、前記第2カラム30の上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収し、下部排出ストリームに副産物を分離することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記第2カラム30の下部排出ストリームの一部のストリームは、熱交換器33を通過して前記第2カラム30に還流され、残りのストリームは排出されることができる。
【0035】
前記熱交換器33は、例えば、シェル-チューブ熱交換器であることができる。前記シェル-チューブ熱交換器は、円筒状の本体と、前記本体の中心部に備えられ、流体を移送させるパイプ状のチューブと、前記チューブを取り囲むシェルと、からなることができる。前記シェルを介して供給される冷媒または温媒は、前記チューブを介して移送される流体とチューブ外壁を挟んで接触しつつ流れながら、前記チューブを介して移送される流体と熱交換することができる。具体的に、前記熱交換器33のチューブに前記第2カラム30の下部排出ストリームが供給され、前記チューブの入口から出口まで移動する。この際、前記シェルに供給される熱源がシェルの入口から出口まで移動しながら、チューブの外壁で、チューブを介して移動する第2カラム30の下部排出ストリームと熱交換することができる。これにより、前記チューブに供給される第2カラム30の下部排出ストリームを、シェルを通過する熱源により加熱し、前記第2カラム30に還流させることができる。
【0036】
一方、前記第2カラム30の下部排出ストリームが前記熱交換器33を通過する時に、シェルを通過する熱源から供給される熱により、チューブを通過する前記下部排出ストリームに含まれているニトリル系単量体の重合反応が発生し得る。かかる重合反応により生成された高分子は、チューブで部分析出されて蓄積されるファウリング現象を引き起こす恐れがある。このようなファウリング現象は流体の円滑な移動を妨害するため、全工程に悪影響を与えることになる。
【0037】
そこで、本発明では、前記第2カラム30および熱交換器33の運転条件を制御し、前記熱交換器33で発生するファウリングを抑えることにより、安定的な運転を可能とし、洗浄のための時間およびコストを削減することができる。
【0038】
前記熱交換器33のシェルに供給される熱源の温度は、例えば、60℃以上、65℃以上、または70℃以上、および80℃以下、85℃以下、または90℃以下であることができる。熱源の温度が高すぎると、前記第2カラム30の下部排出ストリームが移動するチューブの外壁側で、局所的な温度上昇によるニトリル系単量体の重合反応、およびそれによる重合高分子の生成が引き起こされる恐れがある。一方、前記熱源の温度が低すぎると、重合高分子の生成は抑えることができるものの、十分な熱交換のために求められる熱交換器の大きさが大きくなるという問題がある。前記熱源は、例えば、温水(Hot water)であることができる。
【0039】
一方、前述のように、前記第2カラム30の下部排出ストリームの一部のストリームは、熱交換器33を通過して前記第2カラム30に還流され、残りのストリームは排出されることができる。ニトリル系単量体の重合高分子によるファウリング現象は、前記熱交換器33を通過して前記第2カラム30に還流される還流配管でも発生し得る。これを防止するために、前記還流配管を流れる流体を液体状態に維持させて移送する必要がある。もし、還流配管内で液体状態の前記第2カラム30の下部排出ストリームの気化が一部発生する場合、前記液体と気体の界面でニトリル系単量体の重合反応が加速化され、ファウリング現象が引き起こされる恐れがある。よって、前記還流配管内の圧力を一定レベル以上に高く維持する必要がある。
【0040】
そのために、前記還流配管内の圧力は、0.5bar以上、1bar以上、または1.5bar以上、および2.5bar以下、3.0bar以下、3.5bar以下に維持することができる。さらに、このような圧力範囲を制御するために、本発明の一実施態様では、前記還流配管に圧力調節弁を備えることができる。
【0041】
前記第2カラム30の下部温度は、20℃以上、25℃以上、または30℃以上、および35℃以下、40℃以下、または45℃以下であることができる。上記の範囲内に前記第2カラム30の下部温度を維持することで、熱により発生するニトリル系単量体の重合反応を抑え、熱交換器のファウリング現象を防止することができる。
【0042】
前記第2カラム30の下部排出ストリーム中のニトリル系単量体の含量は、5重量%以上、10重量%以上、または15重量%以上、および20重量%以下、30重量%以下、または40重量%以下であることができる。具体的に、上記の範囲で前記第2カラム30の下部排出ストリームにニトリル系単量体の一部を流出させることができ、この場合、前記第2カラム30の下部温度を容易に維持することができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記第2カラム30の上部排出ストリームは、凝縮器31で凝縮されてから還流タンク32に供給されることができる。前記凝縮器31で凝縮された第2カラム30の上部排出ストリームは、前記還流タンク32で上部にフレアガスを排出し、ニトリル系単量体を含む下部排出ストリームの一部は前記第2カラム30に還流させ、残りは回収し、ニトリル系単量体由来の単位を含む単独重合体または共重合体ラテックスの製造工程における重合ステップで再使用することができる。
【0044】
前記第2カラム30の運転圧力は、0.15bar以上、0.2bar以上、または0.25bar以上、および0.4bar以下、0.45bar以下、または0.5bar以下であることができる。例えば、前記第2カラム30の運転圧力が上記の範囲より低い場合には、前記凝縮器31で凝縮が円滑に行われない恐れがあり、上記の範囲より高い場合には、温度もともに高くなるため、前述の前記熱交換器および還流配管にニトリル系単量体の重合高分子によるファウリングが発生する恐れがある。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記廃水精製方法において、必要に応じて、蒸留塔、凝縮器、再沸器、弁、ポンプ、分離器、および混合器などの装置を追加的にさらに設置することができる。
【0046】
以上、本発明に係る廃水精製方法について記載および図示したが、上記の記載及び図示は、本発明の理解のための核心的な構成のみを記載及び図示したものであり、上記に記載及び図示した工程及び装置の他に、別に記載及び図示していない工程及び装置が、本発明に係る廃水精製方法を行うために適宜応用されて利用可能である。
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0048】
[実施例]
[実施例1]
図1に示された工程フロー図にしたがって、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックスの製造工程で排出される廃水を精製した。
【0049】
具体的に、水、アクリロニトリル単量体、およびアンモニアを含み、pHが8である廃水が廃水移送ライン11を介して廃水槽10に供給され、酢酸が酸成分移送ライン12を介して廃水槽10に投入され、前記廃水槽10から排出される混合ストリームを第1カラム20に供給した。この際、前記廃水の総窒素含量は6,000ppmであり、混合ストリームのpHは5.5であることを確認し、総窒素含量は常用化されたTN(total nitrogen)測定器を用いて測定した。
【0050】
前記第1カラム20において、上部排出ストリームは凝縮器21で凝縮してからデカンタ22に供給し、前記デカンタ22で、フレアガスを排出し、水層と有機層に分離した後、前記有機層成分は第2カラム30に移送し、水層成分は精製廃水として廃水処理場に移送した。また、第1カラム20の下部排出ストリームの一部は再沸器23を用いて加熱してから還流させ、残りは精製廃水として廃水処理場に移送した。この際、前記第1カラム20の運転温度は90℃である、運転圧力は1barに調節した。また、前記精製廃水の総窒素含量は3,000ppmであることを確認した。
【0051】
前記第2カラム30の上部排出ストリームは凝縮器31で凝縮してから還流タンク32に供給し、前記還流タンク32からフレアガスを排出し、下部排出ストリームの一部は還流させ、残りからニトリル系単量体を回収して再使用した。また、前記第2カラム30の下部排出ストリームの一部は、熱交換器33を通過させて前記第2カラム30に還流させ、残りから副産物を分離した。この際、第2カラム30の下部排出ストリーム中のニトリル系単量体の含量は15重量%に調節し、前記熱交換器33のシェルに供給される温水の温度は90℃であった。また、前記第2カラム30の運転圧力は0.3barに調節し、下部温度は45℃に維持した。
【0052】
この場合、前記熱交換器33と凝縮器31におけるファウリングの発生が抑制され、洗浄周期が延長された。また、前記廃水槽10に供給される廃水に含まれているアクリロニトリル単量体の含量に対する、第2カラム30の上部排出ストリームから回収されるアクリロニトリル単量体の含量比より計算されるアクリロニトリル回収率は99.9%であることを確認した。
【0053】
[実施例2]
前記実施例1において、前記第2カラム30の下部排出ストリーム中のニトリル系単量体の含量を10重量%に制御し、前記第2カラム30の下部温度を50℃に制御したことを除き、前記実施例1と同様の方法により運転した。
【0054】
この場合、前記実施例1に比べて前記熱交換器33におけるファウリングの発生が促進され、洗浄周期が短縮されることを確認した。
【0055】
[実施例3]
前記実施例1において、前記熱交換器33のシェルに供給される温水の温度を100℃に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法により運転した。
【0056】
この場合にも、前記実施例1に比べて前記熱交換器33におけるファウリングの発生が促進され、洗浄周期が短縮されることを確認した。
【0057】
[実施例4]
前記実施例1において、前記第2カラム30の運転圧力を0.1barに制御したことを除き、前記実施例1と同様の方法により運転した。
【0058】
この場合、前記第2カラム30の上部排出ストリームが凝縮器31で円滑に凝縮されず、前記還流タンク32からフレアガスの排出時に損失されるニトリル系単量体の量が増加するという問題があった。
【0059】
[実施例5]
前記実施例1において、前記第2カラム30の運転圧力を0.7barに制御したことを除き、前記実施例1と同様の方法により運転した。
【0060】
この場合、前記実施例1に比べて前記凝縮器31におけるファウリングの発生が促進され、洗浄周期が短縮されることを確認した。
【0061】
[比較例]
[比較例1]
図2に示された工程フロー図にしたがって、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックスの製造工程で排出される廃水を精製した。
【0062】
具体的に、水、アクリロニトリル単量体、およびアンモニアを含み、pHが8である廃水が廃水移送ライン11を介して廃水槽10に供給され、前記廃水槽10から廃水を排出して第1カラム20に供給した。この際、前記廃水の総窒素含量は6,000ppmであることを確認した。
【0063】
前記第1カラム20において、上部排出ストリームは凝縮器21で凝縮してからデカンタ22に供給し、前記デカンタ22で、フレアガスを排出し、水層と有機層に分離した後、前記有機層成分からアクリロニトリルを回収し、水層成分は精製廃水として廃水処理場に移送した。また、第1カラム20の下部排出ストリームの一部は、再沸器23を用いて加熱してから還流させ、残りは精製廃水として廃水処理場に移送した。この際、前記第1カラム20の運転温度は90℃であり、運転圧力は1barに調節した。また、前記精製廃水の総窒素含量は5,000ppmであることを確認し、前記廃水槽10に供給される廃水に含まれているアクリロニトリル単量体の含量に対する、前記デカンタ22で有機層成分から回収されるアクリロニトリル単量体の含量比より計算されるアクリロニトリル回収率は30%であることを確認した。
【0064】
さらに、有機層成分中に、アクリロニトリルの他にも、ニトリル系単量体の二量体成分もともに混合されていたため、回収されるストリームを重合に再使用することが不可能であった。
【0065】
[比較例2]
図3に示された工程フロー図にしたがって、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックスの製造工程で排出される廃水を精製した。
【0066】
具体的に、前記実施例1において、廃水槽10に酢酸を投入しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0067】
この場合、前記精製廃水の総窒素含量は5,000ppmであり、前記廃水槽10に供給される廃水に含まれているアクリロニトリル単量体の含量に対する、第2カラム30の上部排出ストリームから回収されるアクリロニトリル単量体の含量比より計算されるアクリロニトリル回収率は30%であることを確認した。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
前記熱交換器33は、例えば、シェル-チューブ熱交換器であることができる。前記シェル-チューブ熱交換器は、円筒状の本体と、前記本体の中心部に備えられ、流体を移送させるパイプ状のチューブと、前記チューブを取り囲むシェルと、からなることができる。前記シェルに供給される冷媒または温媒は、前記チューブを介して移送される流体とチューブ外壁を挟んで接触しつつ流れながら、前記チューブを介して移送される流体と熱交換することができる。具体的に、前記熱交換器33のチューブに前記第2カラム30の下部排出ストリームが供給され、前記チューブの入口から出口まで移動する。この際、前記シェルに供給される熱源がシェルの入口から出口まで移動しながら、チューブの外壁で、チューブを介して移動する第2カラム30の下部排出ストリームと熱交換することができる。これにより、前記チューブに供給される第2カラム30の下部排出ストリームを、シェルを通過する熱源により加熱し、前記第2カラム30に還流させることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、ニトリル系単量体、およびアンモニアを含む廃水と酸成分とを混合した混合ストリームを第1カラムに供給するステップと、
前記第1カラムの上部排出ストリームは、凝縮させてからデカンタに供給して水層と有機層に分離し、前記有機層成分を第2カラムに供給するステップと、
前記第2カラムの下部排出ストリームから副産物を分離し、上部排出ストリームからニトリル系単量体を回収するステップと、を含む廃水精製方法。
【請求項2】
前記第1カラムの下部排出ストリームおよび前記デカンタの水層成分は精製廃水として廃水処理場に移送する、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項3】
前記混合ストリームのpHが1.5~5.5である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項4】
前記酸成分は、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、およびシアン酸からなる郡から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項5】
前記第1カラムの運転圧力が0.5bar~3.0barであり、運転温度が80℃~130℃である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項6】
前記第2カラムの運転圧力が0.15bar~0.5barである、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項7】
前記第2カラムの下部温度が20℃~45℃である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項8】
前記第2カラムの下部排出ストリーム中のニトリル系単量体の含量が5重量%~40重量%である、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項9】
前記第2カラムの下部排出ストリームの一部ストリームは熱交換器を通過して前記第2カラムに還流され、残りのストリームとして副産物を分離する、請求項1に記載の廃水精製方法。
【請求項10】
前記第2カラムの下部排出ストリームの一部のストリームは前記熱交換器のチューブを通過し、
前記熱交換器のシェルに供給される熱源の温度が60℃~90℃である、請求項9に記載の廃水精製方法。
【国際調査報告】