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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スパージャおよびそれを含む反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20231221BHJP
   B01J 8/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B01J4/00 102
B01J8/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514817
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 KR2022009532
(87)【国際公開番号】W WO2023090564
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159855
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
【テーマコード(参考)】
4G068
4G070
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC16
4G068AD16
4G068AD41
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB31
4G070CA06
4G070CA18
4G070CB17
(57)【要約】
複数の孔を含む本体と、前記複数の孔の外周面に沿って上方向に延びた突出配管と、前記突出配管の側面から延びた側面配管と、を含むスパージャを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔を含む本体と、
前記複数の孔の外周面に沿って上方向に延びた突出配管と、
前記突出配管の側面から延びた側面配管と、を含む、スパージャ。
【請求項2】
前記側面配管は、前記突出配管の側面から水平方向に延びる水平配管部と、前記水平配管部の末端から下方に延びる下方配管部と、を含む、請求項1に記載のスパージャ。
【請求項3】
前記下方配管部の末端と前記本体の上端が離間している、請求項2に記載のスパージャ。
【請求項4】
前記下方配管部の末端は、前記突出配管に隣接した部分の表面高さが高いように傾斜部を含む、請求項2に記載のスパージャ。
【請求項5】
前記水平配管部と前記下方配管部が成す角度が75度~135度である、請求項2に記載のスパージャ。
【請求項6】
前記本体の下部から複数の孔を介して供給される気相物質は前記突出配管を通過して上方向に移動し、前記突出配管を介して移動する気相物質の一部は前記側面配管を介して排出される、請求項1又は2に記載のスパージャ。
【請求項7】
前記側面配管を介して排出される気相物質の流量が、前記孔を介して供給される気相物質の流量の5%~15%である、請求項6に記載のスパージャ。
【請求項8】
下記数式1を満たす、請求項1に記載のスパージャ。
[数式1]
≧L
(前記数式1中、Lは前記突出配管の高さであり、前記Lは前記本体の厚さである。)
【請求項9】
一つの突出配管から延びた側面配管が2個~4個である、請求項1に記載のスパージャ。
【請求項10】
気相の単量体ストリームが供給される単量体供給ラインと、
前記単量体供給ラインを介して供給される気相の単量体ストリームを分散させるための請求項1に記載のスパージャと、を含む、反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月18日付けの韓国特許出願第10-2021-0159855号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、スパージャに関し、ミキシング(mixing)効果とファウリング(fouling)の防止効果を同時に改善することができるスパージャ、およびそれを含む反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられている。
【0004】
前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として使用し、触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)により行われるが、前記反応により生成された生成物は目的の1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む多成分炭化水素混合物だけではなく、触媒反応中に、C20+の高分子物質を含む副生成物が少量生成される。かかる生成物および副生成物は相対的に重いため、反応器内における反応領域の下部に下降することになる。これにより、スパージャ(sparger)の孔(hole)が詰まるファウリングが発生するだけでなく、スパージャの上部に生成物が沈積する恐れがある。
【0005】
そこで、従来は、ファウリングの発生によるメンテナンスコストが発生するという問題があり、ミキシング効率の低下により、生成物が円滑に得られないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、ミキシング効率を高め、ファウリングの発生を低減することができるように設計したスパージャ、およびそれを含む反応器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、複数の孔を含む本体と、前記複数の孔の外周面に沿って上方向に延びた突出配管と、前記突出配管の側面から延びた側面配管と、を含むスパージャを提供する。
【0008】
また、本発明は、気相の単量体ストリームが供給される単量体供給ラインと、前記単量体供給ラインを介して供給される気相の単量体ストリームを分散させるための請求項1に記載のスパージャと、を含む反応器を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスパージャによると、反応物である気相物質が、スパージャの孔の外周面に沿って上方向に延びた突出配管を介して反応器内の反応領域に供給されることで、スパージャの孔が反応生成物乃至重質の副生成物によって詰まるファウリング現象を最小化することができる。これにより、反応器の運転周期を長くすることができ、ファウリングによるメンテナンスコストを低減することが可能である。
【0010】
また、前記突出配管の側面から延びた側面配管を介して下方に前記気相物質を噴射することで、スパージャの上部のミキシング効率を改善することができる。これにより、反応生成物が生成物排出口に円滑に排出されるようにし、転換率の改善など、反応設計に適う運転を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るスパージャの平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスパージャの断面図である。
図3a】本発明の一実施形態に係る側面配管の断面図である。
図3b】本発明の一実施形態に係る側面配管の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る反応器および工程の流れ図である。
図5a】比較例に係るスパージャの平面図である。
図5b】比較例に係るスパージャの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0013】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内における流体(fluid)の流れを意味し、また、移動ライン(配管)内を流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内を流れる流体自体および流体の流れを何れも意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)、および固体(solid)の何れか1つ以上が含まれているものを意味し得る。
【0014】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有する全ての炭化水素を表すものである。よって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を表すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有する全ての炭化水素分子を表すものである。よって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を表すものである。
【0015】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明を図1から図4を参照してより詳細に説明する。
【0016】
先ず、図1、および図1のA-A’を基準とした縦断面図である図2を参照すると、本発明に係るスパージャ100は、複数の孔130を含む本体と、前記複数の孔の外周面に沿って上方向に延びた突出配管110と、前記突出配管の側面から延びた側面配管120と、を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記スパージャ100は、例えば、反応器200の下部に備えられ、前記反応器200に供給される気相の単量体ストリームを上方向に分散させるとともに、前記反応器200内の液相の反応媒体をミキシング(mixing)することで、単量体の転換率を向上させることができる。
【0018】
前記スパージャ100の本体は反応器200の形態によって自由に設計可能であり、例えば、前記スパージャ100の本体は、反応器200の内面と同一の構造の外周面を有する円板状で形成されることができる。この際、前記本体の外周面は、反応器200の内面と密着するように設計されることができる。
【0019】
前記本体の直径は、例えば、100mm~1500mm、100mm~1000mm、または100mm~500mmであり、前記本体の厚さは、例えば、0mm超過~100mm、1mm~50mm、または10mm~30mmであることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記スパージャ100の本体は、前記スパージャ100の本体の上面と下面を貫通して形成された孔130を含むことができる。前記孔130は、前記本体の中心部および円周に沿って等間隔に複数個が形成されることができる。具体的に、前記本体の中心部および円周に沿って等間隔に形成された孔130を介して反応器の下部から供給される気相物質、例えば、単量体ストリームを反応器200の内部の反応媒体が備えられた反応領域に均一に噴射することができる。
【0021】
前記本体が円板状である場合、前記孔130の直径は、本体の直径の1%~50%、1%~30%、または1%~10%であることができる。前記孔130の直径が上記の範囲である場合に、スパージャのファウリングによる反応器のシャットダウン(shut down)を防止するとともに、反応器内におけるミキシング効率を向上させてデッドボリューム(dead volume)を最小化することができ、これにより、反応転換率を増加させる効果を得ることができる。
【0022】
前記複数の孔は互いに直径が同一であってもよく、直径が相対的に大きい孔と直径が相対的に小さい孔を含んでもよい。このように孔を互いに異なる直径で構成する場合、相対的に直径が大きい孔を通過した気相物質で混合できない部分は、直径が小さい孔を通過した気相物質で混合することができるため、反応器200内の液相の反応媒体のミキシング効率を向上させることができる。
【0023】
一方、本発明の一実施形態によると、前記スパージャ100は、前記複数の孔130のそれぞれの外周面に沿って上方向に延びた突出配管110を含むことができる。前記外周面は、スパージャ100の本体の上面のうち、孔130により形成された開口部の外周面を意味し得る。したがって、前記スパージャ100の本体と前記突出配管110は一体に形成されることができる。一方、前記上方向は、反応器200内の反応媒体が備えられている反応領域に向かう方向を意味し得る。
【0024】
スパージャ100の下部から孔130を介して供給される気相物質、例えば、気相の単量体ストリームは、孔を介して前記スパージャ100の本体を貫通し、突出配管110を介して反応領域上に分散されて供給されることができる。このような気相物質の流れは、図2において点線で示した。
【0025】
すなわち、従来のスパージャ140を示した図5aおよび図5bを参照すると、スパージャ140の本体の上面と孔150の開口部の上面の表面高さが同一または類似であることが分かる。スパージャ140を介して、スパージャ140の上部の反応媒体が備えられた反応領域に気相物質(反応物)を供給する場合、反応により生成された反応生成物および重質の副生成物などは反応媒体よりも密度が高いため、下に沈むことになる。そのため、孔150が詰まる現象(ファウリング)が生じやすい。さらに、反応が進行するにつれて、これらの反応生成物および重質の副生成物はスパージャ140の本体の上面に沈積することになるため、 均一な混合が不可能であった。
【0026】
これに対し、本発明の一実施形態に係るスパージャ100は、突出配管110を備えることで、スパージャ100の本体の上面の表面高さよりも突出配管110の表面高さを高く形成することができる。これにより、スパージャ100を通過して反応器に供給される気相の単量体ストリームの線速度を一定に維持するとともに、ファウリングの発生確率を低減することができる。また、反応器200を運転停止(shut down)して反応器200の内部とスパージャ100などの装置を洗浄しなければならない洗浄周期を延ばすことができる。さらに、突出配管110を介して気相の単量体を反応領域に供給する本発明では、より深い反応領域まで気相の単量体を供給可能であって、均一な反応領域を従来よりも大きく確保し、反応の性能、例えば、転換率などを向上させることができる。
【0027】
そのために、前記突出配管の高さ(L)、すなわち、スパージャ100の上面の表面高さと前記突出配管の表面高さの差(L)と、前記スパージャ100の本体の厚さ(L)との関係が、下記数式1を満たすことができる。
【0028】
[数式1]
≧L
【0029】
前記式1中、Lは前記突出配管の高さであり、前記Lは前記本体の厚さである。
【0030】
より具体的に、前記突出配管の高さ(L)は10L≧L≧Lであり、より具体的には、5L≧L≧Lであることができる。上記の範囲である場合、均一な反応領域の極大化と、孔のファウリング防止の効果を達成することができる。
【0031】
一方、本発明の一実施形態によると、本発明のスパージャ100は、前記突出配管110の側面から延びた側面配管120を含むことができる。前記側面配管120は、前記突出配管110の側面から水平方向に延びる水平配管部121と、前記水平配管部の末端から下方に延びる下方配管部122と、を含むことができる。前記下方配管部122の末端と前記本体の上端は離間して形成されることができる。
【0032】
具体的に、前記スパージャ100の本体の下部から複数の孔130を介して供給される気相物質(気相の単量体)は、前記突出配管110を通過して上方向に移動し、この過程で、前記突出配管110を介して移動する気相物質の一部は前記側面配管120を介して排出されることができる。すなわち、前記気相物質の一部は、側面配管120において前記スパージャ100の上面に平行な方向に延びる水平配管部121、および側面配管120において前記スパージャ100の上面に向くように下方に延びる下方配管部122を順に通過することで、スパージャ100の本体の上面に噴射されることができる。
【0033】
ここで、前記側面配管120を介して排出される気相物質の流量は、前記孔を介して供給される気相物質の流量の5%~15%であることができる。すなわち、側面配管120を介して排出される気相物質の流量が5%以上である場合、後述のスパージャ100の本体の上面に対するミキシング効率増大の効果が達成されることができ、前記流量が15%以下である場合、気相物質を突出配管110を介して反応領域に十分に伝達し、反応領域を最大に確保することで、転換率の増大などの効果を得ることができる。
【0034】
前述のように、反応により生成された反応生成物および重質の副生成物などは相対的に密度が高いため、スパージャ100の方に沈んだり、スパージャ100に沈積されたりする恐れがある。本発明の前記下方配管部122を介して排出されて噴射される気相物質の流れ乃至流動により前記反応生成物および重質の副生成物が混合されることができ、これにより、ミキシング効率を向上させてデッドボリューム(dead volume)を最小化することができ、一方では反応転換率を増加させる効果を得ることができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記下方配管部122の末端は、前記突出配管110に隣接した部分の表面高さが高いように、傾斜部を含むことができる。すなわち、図3aおよび図3bを参照すると、前記下方配管部122の末端の表面高さを、図3aのように同一に形成してもよく、図3bのように、前記下方配管部122の末端の表面高さを、前記突出配管110に隣接した部分の表面高さが高いように形成することで、全体的に傾斜部が導入されるように形成してもよい。前記下方配管部122の末端に傾斜部が導入される場合、下方配管部122を介して排出される気相物質の噴射強度を増加させることができ、これにより、スパージャ100の本体の上面に対するミキシング効率を向上させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記水平配管部121と前記下方配管部122が成す角度は、75度~135度であることができる。前述のように、前記スパージャ100は、本体の中心部で外周に沿って形成された複数の孔130を含むことができる。例えば、孔130の位置がスパージャ100の本体の外周に隣接した孔130である場合、すなわち、反応器の側壁に隣接した孔130においては、前記水平配管部121と前記下方配管部122が成す角度を90度より大きい角度で形成することができる。これにより、反応器の側壁とスパージャ100が連結された部分に沈積した反応生成物および重質の副生成物などに対して気相物質をより直接的に噴射および分散することで、ミキシング効率をさらに向上させることができる。
【0037】
同様に、一つの突出配管110から延びた側面配管120は2個~4個であることができる。例えば、スパージャ100の孔130と孔130との間の間隔が密になっている場合には、前記一つの突出配管110から延びた側面配管120の個数を2個として形成することができ、前記孔130と孔130との間の間隔が長い場合には、前記個数を4個として形成することで、気相物質の噴射によるミキシング効率を改善することができる。
【0038】
一方、本発明によると、前記スパージャ100を含む反応器200が提供される。具体的に、添付の図4を参照すると、前記反応器200は、気相の単量体ストリームが供給される単量体供給ライン210と、前記単量体供給ライン210を介して供給される気相の単量体ストリームを分散させるための、本発明に係るスパージャ100と、を含むことができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記反応器200は連続工程に適した反応器であることができる。例えば、前記反応器200は、連続攪拌槽型反応器(continuous stirred-tank reactor)、プラグ流反応器(plug flow reactor)、および気泡塔反応器(bubble column reactor)からなる群から選択される何れか一つ以上の反応器を含むことができる。具体的な例として、前記反応器200は気泡塔反応器であることができる。これにより、連続的に単量体を反応させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記反応器200は、触媒および溶媒の存在下で、単量体をオリゴマー化反応させてオリゴマーを製造するためのものであることができる。
【0041】
すなわち、図4を参照すると、前記反応器200の側部から触媒、助触媒、および溶媒がそれぞれの供給ライン220を介して反応器内の反応領域に供給されることができる。前記触媒、助触媒、および溶媒は、図4に示されたように、それぞれ別の供給ライン220を介して供給されてもよく、触媒および溶媒、助触媒および溶媒を混合して2つの供給ラインを介して供給されてもよい。
【0042】
前記単量体はエチレンを含むことができる。具体的に、エチレン単量体を含む気相の単量体ストリームを、反応器200の下部に備えられた単量体供給ライン210を介して反応器200内に導入し、前記気相の単量体ストリームがスパージャ100を介して分散され、反応器200内の反応媒体でオリゴマー化反応を経て、目的のアルファオレフィン生成物が製造されることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記単量体供給ラインから延びて備えられた噴射部をさらに含むことができる。前記単量体供給ライン210を介して移送される気相のエチレン単量体は、噴射部を介して噴射されてスパージャ100を通過することができる。
【0044】
前記噴射部は、単量体供給ライン210から延びて複数の配管に分岐されるように形成されることができ、前記分岐された複数の配管のそれぞれの端には、噴射ノズルが形成されることができる。具体的に、前記単量体供給ライン210を介して移送される気相のエチレン単量体は噴射部の噴射ノズルを介して反応器200に導入されることができる。このように、反応器200に導入された気相のエチレン単量体は、スパージャ100を通過して反応器200の上方向に噴射されることができる。このように、噴射部を備えることで、従来の転向板などの装置の追加が不要であり、従来の転向板の使用時に気相の単量体ストリームの線速度を一定に維持しにくいという問題を解決することができる。このように、気相の単量体ストリームの線速度を一定に維持することで、反応器内の反応液および副生成物の分散程度を均一に維持することにより、副生成物が一方に蓄積されることを防止することができる。
【0045】
前記オリゴマー化反応は、反応器200の下部乃至中部領域の反応領域で行われ、触媒および助触媒の存在下で、溶媒に溶解された液体状態で単量体のオリゴマー化反応が行われることができる。
【0046】
前記オリゴマー化反応は、単量体が多量体化される(oligomerized)反応を意味し得る。重合される単量体の個数によって、三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と呼ばれ、これらを総称して多量化(multimerization)と言う。
【0047】
前記単量体のオリゴマー化反応において、反応器200で未反応の単量体および気化した溶媒は、反応器200の上部に排出されることができ、これは、反応器200に循環させて単量体のオリゴマー化反応で再使用することができる。また、前記単量体のオリゴマー化反応により生成されたオリゴマーは、反応器200の下部の側面を介して分離して得ることができる。
【0048】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられている。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレン単量体の三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0049】
前記単量体のオリゴマー化反応は、前記反応系と通常の接触技術を応用して、溶媒の存在または非存在下で、均質液相反応、触媒が一部溶解されないか全部溶解されない形態であるスラリー反応、2相液体/液体反応、または生成物が主媒質として作用するバルク相反応または気相反応により行われることができる。
【0050】
前記溶媒、触媒、および助触媒は、液相で反応器200の下部の側面に供給されることができる。
【0051】
前記触媒は遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロリドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレート、およびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0052】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロリド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、改質されたメチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)、およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0053】
前記単量体のオリゴマー化反応で用いられる溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0054】
このように、触媒および溶媒の存在下で単量体をオリゴマー化させる過程では、オリゴマー生成物の他に、高分子などの粘着性を有する副生成物が生成される。かかる副生成物は、スパージャ100に形成された孔を詰まってファウリングを発生させる恐れがある。
【0055】
これに対して、本発明に係る反応器200では、上述の本発明に係るスパージャ100を用いることで、ファウリングによりスパージャ100の孔が詰まることを防止して反応器200の洗浄周期を延ばすことができ、これにより、運転時間の減少による生産量の減少を防止し、洗浄過程でかかるコストを低減することができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記反応器200は、必要に応じて、弁、凝縮器、再沸器、ポンプ、冷却施設、フィルタ、撹拌器、圧縮器、および混合器などの、オリゴマーの製造に必要な装置をさらに設けることができる。
【0057】
以上、本発明に係るスパージャおよびそれを含む反応器について記載および図示したが、上記の記載及び図示は、本発明の理解のための核心的な構成のみを記載及び図示したものであり、上記に記載及び図示した工程及び装置の他に、別に記載及び図示していない工程及び装置が、本発明に係るスパージャおよびそれを含む反応器を用いるために適宜応用されて利用可能である。
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0059】
実施例1
添付の図4のように、気泡塔反応器200に、本発明に係る図1のスパージャ100を備え、エチレン単量体のオリゴマー化反応を行った。具体的に、前記反応器200の下部の側面に溶媒、触媒、および助触媒を供給し、反応器200の下部に備えられた単量体供給ライン210を介して気相のエチレン単量体ストリームを供給し、スパージャ100を用いて上方向に分散させることで、反応器200内の液相の反応媒体内でオリゴマー化反応させた。オリゴマー化反応により生成されたアルファオレフィンは、反応器200の下部の側面に分離して得、未反応の単量体および気化した溶媒は、反応器200の上部に排出した。
【0060】
この際、前記スパージャ100の本体の直径は300mm、スパージャ100の本体の厚さは20mm、突出配管110の高さは60mmとして形成し、前記突出配管110の側面には側面配管120を備えた。
【0061】
この場合、一部の気相のエチレン単量体ストリームはスパージャ100の突出配管110を通過して反応領域に供給され、残りの気相のエチレン単量体ストリームは側面配管を通過してスパージャ100の本体の上面に噴射されることを確認した。
【0062】
実施例1の結果、エチレン単量体のミキシング効率が向上し、アルファオレフィンの生産量が増加した。また、スパージャ100のファウリングの発生が低下したため、反応器200の洗浄のためのシャットダウン周期を延ばすことができた。
【0063】
比較例1
前記実施例1において、スパージャ140として、添付の図5aおよび図5bのように、突出配管および側面配管が備えられておらず、孔150の表面高さと前記スパージャ140の本体の表面高さが同一であるスパージャ140を使用したことを除き、前記実施例1と同様に行った。
【0064】
この場合、実施例1に比べて、エチレン単量体のミキシング効率が減少してアルファオレフィンの生産量が減少し、スパージャ140のファウリング発生率が増加したため、反応器200の洗浄のためのシャットダウン周期が短くなるという問題を確認した。
【符号の説明】
【0065】
100・・・スパージャ
110・・・突出配管
120・・・側面配管
121・・・水平配管部
122・・・下方配管部
130・・・孔
200・・・反応器
210・・・単量体供給ライン
220・・・供給ライン
140・・・スパージャ
150・・・孔
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
【国際調査報告】