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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】吸水性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61F13/494 130
A61F13/494 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537407
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022006773
(87)【国際公開番号】W WO2022240199
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060742
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057890
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キユル・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ミョンジン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ソンキョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギチュル・キム
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA06
3B200BB09
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA02
(57)【要約】
本発明は、立体ギャザーに吸水能に優れた高吸水性樹脂フィルムを含むことで、体液漏出防止効果に優れている吸水性物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体不透過性背面シート、高吸水性樹脂およびパルプを含む吸水体、および液体透過性上部シートを含み、互いに垂直な長さ方向および幅方向を有する本体部;および
前記本体部の幅方向両側に位置し、長さ方向に延長する一対の立体ギャザーを含む吸水性物品であって、
前記各立体ギャザーは、ギャザーシート、弾性部材、および厚さ5~500μmの高吸水性樹脂フィルムを含むものである、吸水性物品。
【請求項2】
前記ギャザーシートの一端は液体不透過性背面シートと結合され、他端は本体部の外側に延長されてから内側に折り畳まれて液体透過性上部シートと結合され、
前記高吸水性樹脂フィルムは、前記ギャザーシートが折り畳まれて形成されたギャザーシートの間の空間に位置するものである、請求項1に記載の吸水性物品。
【請求項3】
前記高吸水性樹脂フィルムの一端は液体透過性上部シートとギャザーシートとの連結部下段に位置するものである、請求項2に記載の吸水性物品。
【請求項4】
前記高吸水性樹脂フィルムは、EDANA法WSP 241.2により測定された遠心分離保水能が25g/g~50g/gである、請求項1に記載の吸水性物品:
【請求項5】
前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が9MPa~50MPaである、請求項1に記載の吸水性物品。
【請求項6】
前記高吸水性樹脂フィルムは、下記式1で計算される伸び率が100%以上である、請求項1に記載の吸水性物品。
[式1]
伸び率(%)=(L-L)/L×100
(前記式1で、
は、初期ゲージ長であり、
は、試片を1分当たり0.5mmの速度で引張した時、破断が発生した時点のゲージ長である。)
【請求項7】
前記高吸水性樹脂フィルムは、坪量が10~250g/mである、請求項1に記載の吸水性物品。
【請求項8】
前記ギャザーシートは、坪量が10~25g/mである、請求項1に記載の吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2021年5月11日付韓国特許出願第10-2021-0060742号および2022年5月11日付韓国特許出願第10-2022-0057890号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、体液漏出防止機能が向上して使用感に優れた吸水性物品に関する。
【背景技術】
【0003】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁用パッドなどの吸水性物品は、一般に液体不透過性背面シート、吸水体、および着用者の皮膚と接触する液体透過性上部シートを含み、小便など体液の漏出を抑制し、着用時に人体との密着力を向上させることができるように、胴体または足の周りと密着する部分にギャザー(gather)を形成するものが公知である。
【0004】
ギャザーは、弾性体を含んで着用者の身体に密着することができるように構成され、上部シートに沿って流れる体液が横に漏れることを防止する。しかし、物品を長時間使用して弾性体の弾性が低下したり、一時的に放出される体液が多い場合、あるいは着用者の動きによりギャザーと身体密着力が低下する場合、体液が漏れ出ることがある。しかし、これを防止するために弾性体の弾性力を高めると着用者の身体に刺激を与えて不便を感じさせる。
【0005】
そこで、長時間使用時にも優れた体液漏出防止(漏れ防止)機能を有する吸水性物品の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、体液が外部に漏れ出ることを効率的に防止することができる吸水性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、液体不透過性背面シート、高吸水性樹脂およびパルプを含む吸水体、および液体透過性上部シートを含み、互いに垂直な長さ方向および幅方向を有する本体部;および前記本体部の幅方向両側に位置し、長さ方向に延長する一対の立体ギャザーを含む吸水性物品であって、前記各立体ギャザーは、ギャザーシート、弾性部材、および厚さ5~500μmの高吸水性樹脂フィルムを含むものである、吸水性物品が提供される。
【0008】
前記吸水性物品で、前記ギャザーシートの一端は液体不透過性背面シートと結合され、他端は本体部の外側に延長されてから内側に折り畳まれて液体透過性上部シートと結合され、前記高吸水性樹脂フィルムは、前記ギャザーシートが折り畳まれて形成されたギャザーシートの間の空間に位置することができる。この時、前記高吸水性樹脂フィルムの一端は液体透過性上部シートとギャザーシートとの連結部下段に位置することができる。
【0009】
前記高吸水性樹脂フィルムは、EDANA法WSP 241.2により測定された遠心分離保水能が25g/g~50g/gであるものであり得る。
【0010】
前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が9MPa~50MPaであるものであり得る。
【0011】
前記高吸水性樹脂フィルムは、下記式1で計算される伸び率が100%以上であるものであり得る。
【0012】
[式1]
伸び率(%)=(L-L)/L×100
【0013】
(前記式1で、
は、初期ゲージ長であり、
は、試片を1分当たり0.5mmの速度で引張した時、破断が発生した時点のゲージ長である。)
【0014】
前記高吸水性樹脂フィルムは、坪量が10~250g/mであり得る。
【0015】
前記ギャザーシートは、坪量が10~25g/mであり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸水性物品は、立体ギャザーに吸水能に優れた高吸水性樹脂フィルムを含むことで、優れた体液漏出防止効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による吸水性物品を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態による吸水性物品の断面図である。
図3】実験例2で使用したコアインテグリティ(core integrity)測定装置を簡略に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されるものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0019】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0020】
同様に、本発明を説明するために本明細書に添付した図面は、本発明の一実施形態であって、本発明は多様な異なる形態に具現することができ、本明細書に限定されない。この時、図面においては、本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分を省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を使用した。また図面に表示された構成要素の大きさおよび相対的な大きさは、実際の縮尺とは関係なく、説明の明瞭性のために縮小されたり誇張されたものであり得る。
【0021】
本明細書で「幅方向」は、物体の同一平面の周り上の互いに向き合う二点を連結する直線距離のうち最短距離を有する方向を意味し、「横方向」とも称することができる。また、「長さ方向」は、前記「幅方向」に垂直な方向を意味し、「縦方向」とも称することができる。
【0022】
本発明の吸水性物品は、体液が外部に漏れることを防止することができるように立体ギャザーに高吸水性樹脂フィルムを含むことを特徴とする。
【0023】
具体的に、本発明の一実施形態による吸水性物品は、
液体不透過性背面シート、高吸水性樹脂およびパルプを含む吸水体、および液体透過性上部シートを含み、互いに垂直な長さ方向および幅方向を有する本体部;および
前記本体部の幅方向両側に位置し、長さ方向に延長する立体ギャザーを含み、
前記立体ギャザーは、ギャザーシート、弾性部材、および厚さ5~500μmの高吸水性樹脂フィルムを含む。
【0024】
図1は本発明の一実施形態による吸水性物品を示す平面図である。前記吸水性物品は、本体部10と、本体部の幅方向両側に長さ方向に延長し、物品着用時に着用者の本体あるいは足の周りを囲むようになる一対の立体ギャザー20a、20b(立体構造は図示せず)とを含む。また、前記吸水性物品は、本体部10の長さ方向両側に着用者の腰の周りを囲むようになる腰バンド部30a、30bを含むことができる。
【0025】
図2は本発明の一実施形態による吸水性物品を示す断面図であり、図1の線I-I’に沿って切断した断面を示したものである。図2に示されているように、本発明の吸水性物品は、本体部10の両側に位置する一対の立体ギャザー20a、20bそれぞれに高吸水性樹脂フィルム22を含む。
【0026】
このように本発明の吸水性物品は、吸水体を含む本体部の外側に厚さが薄いながらも吸水能に優れた高吸水性樹脂フィルムを含み、既存の吸水性物品に比べて顕著に改善された体液漏出防止性能を示すことができる。
【0027】
以下、本発明の吸水性物品を構成要素別に詳しく説明する。
【0028】
本体部
本発明の吸水性物品で本体部10は体液の吸収が行われる部分であり、液体不透過性背面シート11、高吸水性樹脂およびパルプを含む吸水体12、および液体透過性上部シート13を含む。本体部の幅方向両側には立体ギャザー20a、20bが連結される。
【0029】
液体不透過性背面シート
前記吸水性物品の液体不透過性背面シートは、通気性防水フィルムを含み、素材の柔らかさを向上させるために前記通気性防水フィルムの一面にポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を紡糸して製造されたポリオレフィン不織布をさらに含むことができる。
【0030】
通気性防水フィルムは、熱可塑性重合体と添加剤をブレンドして樹脂組成物を製造し、鋳造または膨張フィルム押出、または他の適したフィルム-形成技術を使用して成形して製造することができる。前記樹脂組成物は、例えば熱可塑性重合体40~60%および添加剤40~60%の組成を有することができる。前記添加剤は、酸化防止剤、充填剤粒子、染料など目的とする特性により多様な成分であり得る。
【0031】
一例として、熱可塑性重合体と添加剤をブレンドした樹脂組成物をキャスティングして製造したフィルムを予熱工程、伸張工程、および熱固定工程の3段階を経て単軸または二軸で伸張させて、通気性を付与した防水フィルムを製造することができる。
【0032】
前記熱可塑性重合体としては、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、エチレンとC3-C12α-オレフィンの共重合体、プロピレンとエチレンおよび(または)C4-C12α-オレフィンの共重合体、およびポリプロピレン主鎖内のアタクチックおよびアイソタクチックプロピレン単位の両方を含むプロピレン-基材重合体を含む可溶性ポリオレフィン;エラストマー、例えばポリウレタン、コポリエーテルエステル、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、コポリ(スチレン/エチレン-ブチレン)、スチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-スチレン、スチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-スチレン、ポリスチレン/ポリ(エチレン-ブチレン)/ポリスチレン、ポリ(スチレン/エチレン-ブチレン/スチレン)などのブロック共重合体などが含まれるが、これらに制限されない。
【0033】
前記添加剤としては、炭酸カルシウム(CaCO)などの充填剤を使用することができる。炭酸カルシウムは、炭酸イオンとカルシウムイオンが反応して生成された白色の固体物質であり、高分子樹脂により結合されながらフィルムに多数のホール(hole)を形成することができる。本発明では通気性防水フィルムの製造時、前記炭酸カルシウムの含有量を通気性防水フィルム形成組成物の全体重量を基準に40~45重量%の範囲に調節しながら、引張強度および透湿度を考慮してフィルムの延伸比を機械的方向に2.5~3.5倍の範囲に調節することによって、フィルムに形成されるホール(hole)の大きさを調節して、吸水体に吸収された排泄物が外部に漏出されないながら、空気や水蒸気が背面シートを通じてより円滑に通過するようにすることができる。
【0034】
具体的に、炭酸カルシウムの含有量およびフィルムの延伸比を前述した範囲に調節する場合、フィルムに大きさ(直径)が約10~90μm、好ましくは約40~60μmの範囲であるホールを形成することができる。このようなホールの大きさは、100μm以上である水粒子の大きさよりは小さく、約0.001~0.01μm程度である蒸気の大きさよりは大きい。したがって、吸水体に吸収された排泄物は通気性防水フィルムにより外部に漏れ出ないが、おむつ内部の熱い空気や水蒸気は通気性防水フィルムを通じて外部に容易に排出され得る。
【0035】
前記通気性防水フィルムは、通気度(air permeability)が2000~5000g/m・24hr、好ましくは3500~4500g/m・24hrの範囲であり得る。前記通気性範囲を満たす場合、湿った空気により皮膚副作用が発生することをより効率的に防止することができる。
【0036】
前記通気性防水フィルムの坪量は特に制限されないが、約15~22g/mである場合、フィルムの強度がより向上し、フィルムの通気度が約3500~4500g/m・24hrの範囲に調節され得るため、吸収コアに吸収された排泄物が外部に漏れ出ないように遮断しながら、空気や水蒸気が背面シートを通じて円滑に通過して着用者の着用感をより向上させることができる。
【0037】
前記ポリオレフィン不織布は、背面シートの通気性と素材の柔らかさを向上させる役割を果たす。不織布の製造法は特に制限されず、エアレイド、サーマルボンド、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ステッチボンドなどの加工法により製造されたものを制限なしに使用することができる。
【0038】
前記ポリオレフィン不織布は、気孔の大きさが20~1000μm、50~700μm、または10~300μmの範囲であるものを使用することができる。不織布の気孔が前記範囲を満たす時、液体の透過は遮断され、水蒸気および空気の透過は可能であるため、優れた着用感を示すことができる。
【0039】
ポリオレフィン不織布の坪量は特に制限されないが、約10~25g/m、好ましくは約12~20g/mである場合、吸水体に吸収された排泄物が外部に漏れ出ないようにしながら、触感をより向上させることができる。
【0040】
吸水体
本発明の吸水性物品に使用される吸水体は、高吸水性樹脂粒子の集合体である高吸水性樹脂粉末およびパルプを含む。
【0041】
前記高吸水性樹脂粉末は、通常吸水性物品に吸収性能付与のために使用される物質を制限なしに使用することができる。前記高吸水性樹脂は、例えば、アクリル酸塩重合体架橋物、ビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコール架橋物、アクリル酸塩-メタクリル酸塩共重合体架橋物、メチルアクリレート-酢酸ビニル共重合体の鹸化物の架橋物、デンプン-アクリル酸塩グラフト共重合体架橋物、デンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体の鹸化物の架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、イソブチレン-無水マレイン酸塩共重合体架橋物、およびメチレンオキシド重合体架橋物からなる群より選択される1種以上であり得、好ましくは、アクリル酸塩重合体架橋物であり得る。
【0042】
前記高吸水性樹脂粉末をなす高吸水性樹脂粒子の大きさは、100~1,000μm、150~800μm、または300~600μmであり得る。高吸水性樹脂粒子の大きさが100μm未満である場合、体液を吸収して膨潤された高吸水性樹脂ゲルが吸水性物品外部に排出されたり、ゲルブロッキング現象を起こして物性を阻害するおそれがあり、粒子サイズが1,000μmを超える場合、吸水性物品のスリム化が難しいという問題がある。
【0043】
前記高吸水性樹脂粉末は、吸水体総重量の10~90重量%で含まれ得、好ましくは20重量%以上、30重量%以上、または40重量%以上であり、80重量%以下、または60重量%以下の含有量で含まれ得る。
【0044】
前記吸水体に使用されるパルプは、木材パルプを粉砕して形成されたセルロースフラッフパルプであり得る。前記パルプは、液体を急速に吸収し、高吸水性樹脂粒子を互いに分離させてゲル粘着度を減少させるよう作用することができる。
【0045】
このような効果を確保するために、前記パルプは、吸水体総重量の10~90重量%で含まれ得、好ましくは20重量%以上、または40重量%以上であり、80重量%以下、70重量%以下、または50重量%以下で含まれ得る。
【0046】
具体的に、前記高吸水性樹脂は、吸収コアの総重量を基準に約10~90重量%、好ましくは約30~60重量%であり得、前記パルプの含有量は、吸水体の総重量を基準に約10~90重量%、好ましくは約40~70重量%であり得る。
【0047】
前記吸水体は、高吸水性樹脂粉末およびパルプ以外に、選択的にポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維をさらに含むことができ、この場合、高吸水性樹脂粉末とパルプの結束力をより向上させることができる。このような合成繊維は、吸水体総重量の20重量%以下、または10重量%以下で使用することができる。
【0048】
前記吸水体の製造方法は特に制限されず、一例として高吸水性樹脂粉末とパルプ、選択的に合成繊維を均一に混合し、これを熱、圧力などを加えて成形した後、ティッシュなどの包装材で成形物を包装して製造することができる。
【0049】
液体透過性上部シート
前記液体透過性上部シートとしては、液体が迅速に透過することができるように親水性を有し、触感が柔らかく、使用者の皮膚に刺激を与えない素材が適宜に使用され得る。
【0050】
前記液体透過性上部シートは、例えば、親水性不織布、開口ポリエチレンフィルムなどの開口性フィルム、またはウレタンフォームなどの発泡フィルムであり得、これらを1以上積層して使用することができる。
【0051】
好ましくは、前記液体透過性上部シートは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、綿、脱脂綿などの合成繊維または天然繊維を利用して製造された親水性不織布であり得る。不織布の製造法は特に制限されず、エアースルー、エアーレイ、サーマルボンディング、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ステッチボンドなどの加工法により製造されたものを制限なしに使用することができる。
【0052】
前記液体透過性不織布の繊維の太さ(繊度、fineness)は特に限定されないが、繊維の太さが約1.5~6デニール(denier、d)、好ましくは約1.5~2デニール(denier、d)範囲である場合、吸水用品の着用時、皮膚刺激が最小化されて皮膚副作用の発生を最小化することができ、瞬間吸水機能を向上させることができる。
【0053】
また、前記繊維の長さは特に限定されないが、約36~39mmである場合、不織布の製造時、カーディング(carding)工程の作業性が向上することができると共に、不織布表面の均斉度が向上して着用者の皮膚摩擦を最小化することができる。
【0054】
このような繊維で形成された不織布の坪量は特に制限されないが、約15~30g/m、好ましくは約15~20g/mである場合、吸収力を向上させながら、表面感触をより柔らかくすることができるため、皮膚副作用の発生を最小化させることができる。
【0055】
前記本体部の製造方法は特に制限されず、液体不透過性背面シート、吸水体、および液体透過性上部シートを適切な順序に積層した後、エンボシングを利用して固定したり、または前記各構成要素の間をホットメルト接着剤などの接着剤を利用して固定させる方式で製造することができる。この時、液体不透過性背面シート、吸水体、および液体透過性上部シートの面積はそれぞれ同一であるかまたは異なるように構成することができる。
【0056】
立体ギャザー
立体ギャザー20a、20bは、本体部の両側部に沿って前後方向全体にかけて延長され、表面側、つまり、着用者の皮膚面側に起立するように形成された帯形状部材であり、液体透過性上部シート13上に沿って横方向に移動する小便や柔らかい大便を遮断して横に漏れることを防止するために形成される。
【0057】
立体ギャザー20a、20bは、表面側に起立しており、着用時に立体ギャザー20a、20bと本体部10との間に空間ができるようになり、そのために排泄物が外側に漏れることを物理的に遮断することができる。しかし、着用者の過度な動きがあったり、排泄物が一時に多量放出される場合は、立体ギャザー20a、20b外部に排泄物が漏れることがある。そこで、本発明の一実施形態による吸水性物品は、立体ギャザー20a、20bと本体部10との間の空間に流れ込んだ排泄物が移動して外側に漏れる前に即時吸収され得るように、立体ギャザー20a、20bに高吸水性樹脂フィルム22を含む。
【0058】
前記立体ギャザー20a、20bは、本体部10の側面から外側に延長されてから内側に折り畳まれたギャザーシート21と、前記ギャザーシート21が折り畳まれて形成されたシートの間の空間に前記弾性部材23および前記高吸水性樹脂フィルム22が位置する構造、つまり、弾性部材23と高吸水性樹脂フィルム22がギャザーシート21の間に内包される構造を有する。
【0059】
前記構造の立体ギャザーは、本体部の側面に本体部の長さと同じ長さを有する帯形状のギャザーシート21の一端を連結させ、連結されない他端を幅方向に折り畳んで二つに重ねた後、ギャザーシート21の他端を再び本体部の側面に連結させて形成することができる。この時、ギャザーシート21の一端は液体不透過性背面シート11と結合され、他端は液体透過性上部シート13と結合され得る。
【0060】
本明細書では、前記本体部10とギャザーシート21が結合された部分を立体ギャザーの基端部21a、ギャザーシート21が内側に折って畳まれた部分を立体ギャザーの先端部21bと称する。
【0061】
前記高吸水性樹脂フィルム22は、立体ギャザー20a、20b内のどの部分にも含まれ得るが、立体ギャザー20a、20bの基端部21a側に位置することが好ましい。具体的に高吸水性樹脂フィルム22の一端は液体透過性上部シート13とギャザーシート21の連結部、つまり、二つのシートが重なる部分の下段に位置することが好ましい。この場合、上部シート13に沿って流れる体液が立体ギャザー20a、20bと本体部との間の空間に留まる時、基端部21aの液体透過性上部シート13を通じて高吸水性樹脂フィルム22に迅速に吸収され得るため、優れた漏れ防止効果を示すことができる。
【0062】
または、図2に示されているように、高吸水性樹脂フィルム22の一端を立体ギャザー20a、20bの基端部21a外側に、つまり、本体部側にさらに延長されるように配置して本体部の液体透過性上部シート13直下に高吸水性樹脂フィルム22が位置することができるようにすることによって漏れ防止効果を一層高めることができる。
【0063】
前記高吸水性樹脂フィルム22は、立体ギャザー20a、20bの基端部21aから幅方向に最大先端部21bまで延長され得、長さ方向には最大立体ギャザー20a、20bの長さだけ延長され得る。
【0064】
前記立体ギャザー20a、20b内で弾性部材と高吸水性樹脂フィルム22相互間の位置は特に制限されない。弾性部材は、立体ギャザー20a、20b内の高吸水性樹脂フィルム22が存在しない部分に配置され得る、および/または高吸水性樹脂フィルム22とギャザーシート21との間に弾性部材が配置され得る。
【0065】
一実施形態の立体ギャザー20a、20bは、図2に示されているように、本体部の側部から起立するように形成され、根元側の部分は幅方向中央側に向かって傾斜して起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって傾斜して起立する形態であり得る。このような形態で立体ギャザー20a、20bの先端側部分が身体と密着し、本体部と立体ギャザー20a、20bとの間の空間がより良好に維持されるため、排泄物が外部に漏れずに立体ギャザー20a、20b内の高吸水性樹脂フィルム22に伝達および吸収され得る。
【0066】
前記立体ギャザー20a、20bの起立高さ(h)、つまり、吸水性物品を展開した時、物品の底面(背面シート面)から突出した高さは20~50mm、または30~40mmであり得る。また、立体ギャザー20a、20bの長さは、本体部および吸水性物品の長さにより調節され得、一例として400mm~500mm、または400~450mmの長さで形成され得る。この時、ギャザーシート21の間に介される弾性部材および高吸水性樹脂フィルム22の長さは、前記立体ギャザー20a、20bの長さと同一であるか、あるいはより短く形成され得る。
【0067】
ギャザーシート
ギャザーシート21は、体液漏出を防止することができるように疎水性であることが好ましい。
【0068】
前記ギャザーシートは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂から製造された不織布であり得、不織布の製造方法はエアレイド、サーマルボンド、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ステッチボンドなどの通常の加工法を制限なしに使用することができる。また、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布の複合不織布であるSMS不織布、SMMMS不織布、SSMMS不織布などを使用することができる。一例として、前記ギャザーシートとしては、疎水性SMSポリプロピレン不織布を使用することができる。
【0069】
前記ギャザーシートの坪量は10~25g/m、好ましくは12~20g/mであり得る。前記範囲内で優れた漏れ防止効果および皮膚密着力向上効果を得ることができる。
【0070】
前記ギャザーシートは、本体部と別途に準備された後、本体部の側面に連結され得る。連結方法は特に制限されず、熱接着、または接着剤を利用した接着方法などを使用することができる。
【0071】
または、本体部の液体不透過性背面シートを延長してギャザーシートとして活用することができる。つまり、吸水体と液体透過性上部シートそれぞれの幅より液体不透過性背面シートの幅を広くする場合に発生する液体不透過性背面シートの余分の縁部分をギャザーシートとして活用することができる。
【0072】
弾性部材
弾性部材23は、身体との密着力を向上させるために含まれるものであり、各立体ギャザー20a、20bには1個以上、好ましくは3~5個の弾性部材が含まれ得る。
【0073】
一例として、弾性部材としては、細くて長い形態のスパンデックス糸ゴムなどを使用することができる。前記スパンデックス糸ゴムの太さは、450~1200dtex、または600~900dtexであり得、固定時の伸び率は、150~300%、200~300%の範囲であり得る。
【0074】
前記弾性部材は、ギャザーシートと予め結合され得る。つまり、ギャザーシートの一面に弾性部材を結合させ、これを弾性部材が結合された面が当接するように折り畳んで重ねて立体ギャザーを形成することができる。
【0075】
または、ギャザーシートと別途に弾性部材を準備し、高吸水性樹脂フィルムと共に適切に配置した後、ギャザーシートと固定して立体ギャザーを形成することができる。
【0076】
高吸水性樹脂フィルム
前記立体ギャザーは、より効率的に体液の漏出を防止することができるように、厚さが薄くて吸水能に優れた高吸水性樹脂フィルム22を含む。
【0077】
前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが薄いながらも優れた吸収性能を示す。したがって立体ギャザーに高吸水性樹脂フィルムを含む場合、着用者に不便感を与えず、体液が外部に漏れ出ることを効率的に防止することができる。また、前記高吸水性樹脂フィルムは、引張強度、伸び率など機械的物性に優れて、着用者の動きがある場合にも簡単に破損されず、効率的に体液漏出を防止することができる。
【0078】
前記高吸水性樹脂フィルムは、吸水体に含まれる粒子状の高吸水性樹脂と区別される薄膜のフィルム形態のアクリル酸系重合体であり、含水率が15%以下であり、無色透明で、弾性があり、柔軟性に優れた膜形態の高吸水性樹脂を意味する。前記高吸水性樹脂フィルムは、取り扱い時に飛散されたり吸水性物品から漏れ出るおそれがなく、パルプなどの補助剤なしに自体が吸水体として使用され得る。
【0079】
好ましくは、前記高吸水性樹脂フィルムの含水率は、15重量%以下、または12重量%以下、または11重量%以下、または10重量%以下であり、1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上であり得る。
【0080】
前記「含水率」は、試料の乾燥前重量に対して試料が含有する水分の量を百分率で表示したものである。つまり、含水率は、試料の乾燥前重量から試料の乾燥後重量を引いた値を試料の乾燥前重量で割った後、100をかけて計算することができる。この時、乾燥条件は、常温から約150℃まで温度を上昇させた後、150℃で維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定する。
【0081】
前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが5~500μmであり、このような厚さ範囲で可視光線に対する全光線透過率が89.5%と高い透明性を示す。本発明の一実施形態による高吸水性樹脂フィルムの全光線透過率は、90%以上、90.3%以上、または91%以上、または91.5%以上、または92%以上であり得る。全光線透過率は理論的に100%であり得、一例として99%以下であり得る。
【0082】
また、本発明の高吸水性樹脂フィルムは、厚さ1~500μmの範囲でASTM D1925規格による黄色度(Yellow Index)が2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、1.9以下、1.5以下、または1.3以下であり得る。
【0083】
前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下と薄いため、立体ギャザーの厚さを大きく増加させないながらも体液漏出防止機能を付与することができる。また、高吸水性樹脂フィルムの厚さが500μmを超える場合、通気性が低下することがあるが、500μm以下の薄膜型高吸水性樹脂フィルムは、水分吸収時にフィルムの柔軟性が大幅増加し、重合体鎖間の空間性(capacity)が増えるため、通気性を確保しながら体液漏出防止効果を示すことができる。結果的に、高吸水性樹脂フィルムを含む立体ギャザーは、薄い厚さを維持することができるため、身体との密着力が低下することなく、着用者に異物感や通気性低下による不便感を与えないながら優れた体液漏出防止機能を示すことができる。
【0084】
このような観点で、前記高吸水性樹脂フィルムの厚さ(h)は、好ましくは5μm以上、10μm以上、または15μm以上であり、400μm以下、300μm以下、200μm以下、または150μm以下であり得る。
【0085】
前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが薄いながらも優れた吸収性能を示して効率的に体液漏出を防止することができる。
【0086】
一例として、前記高吸水性樹脂フィルムは、EDANA法WSP 241.2により測定された遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上、30g/g以上または34g/g以上であって、優れた吸収物性を示す。遠心分離保水能はその値が高いほど優れるもので、理論的に上限はないが、一例として50g/g以下、または48g/g以下であり得る。
【0087】
また、前記高吸水性樹脂フィルムは、EDANA法WSP 242.2の方法により測定された0.7psi下での加圧吸水能(AUP)が5.0g/g以上、7.0g/g以上、または9.0g/g以上であり、25g/g以下、または20g/g以下であり得る。
【0088】
一方、前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が5MPa以上であるものであり得る。好ましくは、含水率が5~15%である時、高吸水性樹脂フィルムの引張強度は、10MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、19MPa以上、または22MPa以上であり、50MPa以下、47MPa以下、45MPa以下、40MPa以下、または35MPa以下であり得る。このように高い引張強度を示すことによって、前記高吸水性樹脂フィルムは着用者の動きにも簡単に破損されず、優れた体液漏出防止機能を示すことができる。
【0089】
また、前記高吸水性樹脂フィルムは、柔軟性と伸縮性に優れて立体ギャザーに適用されることに適する。一例として前記高吸水性樹脂フィルムは、下記式1で計算される伸び率が100%以上、120%以上、150%以上、180%以上、または200%以上であり、550%以下、530%以下、または510%以下であり得る。したがって前記高吸水性樹脂フィルムは、動きが多い立体ギャザーに適用されても簡単に損傷されず、優れた吸収性能を示すことができる。
【0090】
[式1]
伸び率(%)=(L-L)/L×100
【0091】
前記式1で、
は、初期ゲージ長であり、
は、試片を1分当たり0.5mmの速度で引張した時、破断が発生した時点のゲージ長である。
【0092】
立体ギャザーに含まれる高吸水性樹脂フィルムの大きさは、吸水性物品乃至立体ギャザーの大きさと構成により適切に調節され得る。
【0093】
ただし、高吸水性樹脂フィルムの単位面積当たり重量が過度に高ければ体液が吸収されながら立体ギャザーが垂れるなど変形が発生することがあり、反対に高吸水性樹脂フィルムが過度に少なく含まれれば十分な体液漏れ防止効果を期待することができないため、高吸水性樹脂フィルムの坪量は、10g/m以上、20g/m以上、または22g/m以上であり、250g/m以下、230g/m以下、または215g/m以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0094】
前述した高吸水性樹脂フィルムは、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および溶媒を混合してモノマー組成物を製造する段階;前記モノマー組成物を基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを形成する段階;前記モノマー組成物フィルムを延伸しながら熱および/または光を照射して含水ゲル重合体フィルムを形成する段階;および前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させる段階を含む製造方法により製造され得る。
【0095】
前記製造方法によれば、粘度が調節されたモノマー組成物溶液から溶液キャスティング法を通じてモノマー組成物フィルムを製造し、これを重合および乾燥することによってフィルム形態の高吸水性樹脂を製造することができる。特に、重合段階でモノマー組成物フィルムに張力を加えて延伸することによって、製造される高吸水性樹脂フィルムの引張強度を調節することができる。
【0096】
以下、前記高吸水性樹脂フィルムの製造方法を具体的に説明する。
【0097】
前記モノマー組成物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、重合開始剤、および溶媒を含む。
【0098】
まず、前記アクリル酸系モノマーは、下記の化学式1で表される化合物である。
【0099】
[化学式1]
-COOM
【0100】
前記化学式1で、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0101】
好ましくは、前記アクリル酸系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0102】
ここで、前記アクリル酸系モノマーは、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであり得る。好ましくは前記モノマーを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。この時、前記アクリル酸系モノマーの中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性により調節され得る。前記中和度が過度に高ければ中和されたモノマーが析出されて重合が円滑に行われ難いことがあり、反対に中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく落ちることがある。
【0103】
好ましい一実施形態において、前記アルカリ物質としては、水酸化カリウム(KOH)を使用することができる。水酸化カリウムの使用時、含水率が10%以下でも柔軟性および寸法安定性を有する高吸水性樹脂フィルムを製造することができるため好ましい。
【0104】
前記アクリル酸系モノマーの濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含むモノマー組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%になることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度になることができる。ただし、前記モノマーの濃度が過度に低くなれば高吸水性樹脂の収率が低く、経済性に問題が生じることがあり、反対に濃度が過度に高くなればモノマーの一部が析出されるなど工程上に問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0105】
一方、本発明では溶液キャスティング法を通じてモノマー組成物をフィルム形態で塗布することができるように、モノマー組成物に増粘剤および保湿剤を含む。
【0106】
このように増粘剤および保湿剤を同時に含むことによって、本発明のモノマー組成物は、フィルム形態でキャスティングするのに適した粘度を示し、フィルムキャスティング後の重合過程で適切な含水率を維持することができるため、製造される高吸水性樹脂フィルムが高い柔軟性を示すことができる。
【0107】
本発明で増粘剤としては、セルロース系増粘剤を使用し、具体的にナノセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される1種以上を使用することができる。好ましくはナノセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0108】
前記セルロース系増粘剤は、モノマー組成物内の固形分100重量部に対して0.01重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、または0.35重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、1重量部以下、または0.9重量部以下で含まれ得る。
【0109】
この時、モノマー組成物内の固形分は、溶媒を除いた組成物の全成分を意味する。つまり、前記固形分は、アクリル酸系モノマー、アクリル酸系モノマーを中和させるためのアルカリ物質、セルロース系増粘剤、保湿剤、架橋剤、熱開始剤、光開始剤、内部架橋剤、その他添加剤の総含有量を意味する。
【0110】
もし、セルロース系増粘剤の含有量がモノマー組成物内の固形分100重量部に対して0.01重量部未満であれば十分な増粘効果を確保することができないため、モノマー組成物フィルムの製造が難しいことがあり、反対に5重量部を超えればモノマー組成物の粘度が過度に高くなってフィルムの厚さが厚くなり、フィルム厚さを均一に制御し難いことがある。
【0111】
前記保湿剤は、通常医薬品、化粧品、化学製品などに保湿成分として使用される物質を制限なしに使用することができる。このような保湿剤の例としては、分子内のヒドロキシ基を2以上含む多価アルコール、クエン酸、およびクエン酸塩からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0112】
具体的に、前記多価アルコールは、分子内のヒドロキシ基を3~12個含む、炭素数3~30の多価アルコールを使用することができる。一例として、前記多価アルコールは、グリセリン;ジグリセリン;プロピレングリコール;ブチレングリコール;ソルビトール;ポリエチレングリコール;ポリグリセリン-3;ポリグリセリン-6;ポリグリセリン-10;およびポリグリセリル-10ジステアレートおよびその誘導体(炭素数3~18);からなる群より選択される1種以上であり得、このうちグリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、およびソルビトールからなる群より選択される1種以上を好適に使用することができる。
【0113】
また、クエン酸および/またはクエン酸塩を保湿剤として使用することができる。クエン酸塩の例としては、トリエチルシトレート、メチルシトレート、ナトリウムシトレート、トリナトリウム2-メチルシトレートなどが挙げられる。
【0114】
前記保湿剤は、アクリル酸系モノマー100重量部に対して5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、または30重量部以上であり、70重量部以下、60重量部以下、または50重量部以下で使用されることが好ましい。
【0115】
保湿剤の含有量がアクリル酸系モノマー100重量部に対して5重量部未満であればモノマー組成物フィルムの含水率が十分でないため、後続する重合および乾燥過程でフィルムが乾いてしまったり砕けることがあり、製造される高吸水性樹脂フィルムの柔軟度を確保することができないという問題がある。反対に多価アルコールの含有量がアクリル酸系モノマー100重量部に対して70重量部を超えれば高吸水性樹脂フィルムの吸水能を低下させるという問題があり得る。したがって保湿剤の含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0116】
前記モノマー組成物は、重合体の架橋のための内部架橋剤を含む。前記内部架橋剤は、通常の高吸水性樹脂の製造時に使用されるものを使用することができる。より具体的に前記内部架橋剤としては、前記アクリル酸系モノマーの水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有しながら、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記モノマーの水溶性置換基および/またはモノマーの加水分解により形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0117】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的に、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。一実施形態において、前記内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを使用することができる。
【0118】
前記内部架橋剤は、モノマー組成物に対して5000ppm以下の濃度で含まれて、重合された高分子を架橋させることができる。一実施形態において、前記内部架橋剤は、100ppm以上、250ppm以上、または500ppm以上であり、5000ppm以下、4500ppm以下、または4000ppm以下で含まれ得る。前記内部架橋剤の含有量は、製造される高吸水性樹脂フィルムの厚さと目的とする引張強度の範囲により適切な含有量で調節することができる。
【0119】
本発明の高吸水性樹脂フィルムの製造方法で重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0120】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。好ましい一実施形態によれば、重合開始剤として光重合開始剤および熱重合開始剤を同時に使用することができる。
【0121】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によりラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なしに使用することができる。
【0122】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(a-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-Trimethylbenzoyldiphenylphosphine oxide)、Irgacure 819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、Phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)などが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier、2007年)」の115頁に開示されており、前述した例に限定されない。
【0123】
前記光重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して10ppm以上、20ppm以上、または40ppm以上であり、2000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、または100ppm以下で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0124】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、 Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley, 1981)」の203頁に開示されており、前述した例に限定されない。
【0125】
前記熱重合開始剤は、前記モノマー組成物に10ppm以上、100ppm以上、または500ppm以上であり、2000ppm以下、1500ppm以下、または1000ppm以下で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微々になることがあり、熱重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0126】
前記モノマー組成物は、必要に応じて可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0127】
前述したアクリル酸系不飽和モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および添加剤などの原料物質は、溶媒に溶解されたモノマー組成物溶液の形態で準備される。
【0128】
使用することができる前記溶媒は、前述した成分を溶解することができればその構成の限定なしに使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。一例として、前記溶媒としては、水を使用することができる。
【0129】
本発明で前記モノマー組成物は、セルロース系増粘剤および保湿剤を含んで溶液キャスティング法に適した粘度を示す。具体的に、前記モノマー組成物の25℃で粘度は、100mPa・s以上、140mPa・s以上、または200mPa・s以上であり、5000mPa・s以下、2300mPa・s以下、2000mPa・s以下、1500mPa・s以下、または1400mPa・s以下であり得る。モノマー組成物の粘度は、粘度計(例えば、TOKI社のTV-22)で、スピンドル#1、回転速度1rpm条件下で測定することができる。
【0130】
もし、モノマー組成物の粘度が100mPa・s未満であればモノマー組成物フィルムを均一な厚さにキャスティングし、これを延伸しながら重合し難いことがある。反対にモノマー組成物の粘度が5000mPa・sを超えれば均一なモノマー組成物の製造が難しく、モノマー組成物の流れ性が低いため加工性が落ち、脱泡が難しいため好ましくない。
【0131】
前記モノマー組成物を製造した後、これを基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを製造し、これを延伸すると同時に重合して含水ゲル重合体フィルムを形成する。このようなモノマー組成物のキャスティングおよび重合過程はロールツーロール工程により連続的に行うことができる。
【0132】
まず、モノマー組成物を基材上に塗布してモノマー組成物フィルムを製造する。
【0133】
一般に高分子の溶液キャスティング法で高分子溶液キャスティング後に溶媒を除去するのとは異なり、本発明ではモノマー組成物を基材上に塗布した後に含水率が低下しないように直ちに延伸および重合過程を行う。
【0134】
もし、モノマー組成物フィルムの含水率が過度に低ければ重合前モノマー組成物を構成する成分が析出されることがあり、重合後フィルムが砕ける問題があり得る。そこで、モノマー組成物フィルムの含水率は、30重量%~60重量%範囲を満たすことが好ましく、30重量%~50重量%、または30重量%~45重量%範囲を満たすことが好ましい。
【0135】
モノマー組成物フィルムの厚さは、目的とする高吸水性樹脂フィルムの厚さにより適切に調節することができる。モノマー組成物フィルムは、重合段階では厚さがほとんど変化しないが、重合以降、含水ゲル重合体フィルムの乾燥過程で含水率が減少しながら約10~40%、または15~35%程度厚さが減少することがあるため、これを勘案して適切な厚さにモノマー組成物フィルムを製造する。
【0136】
一例として、モノマー組成物フィルムの厚さは、800μm以下、600μm以下、または500μm以下であり、1μm以上、5μm以上、または10μm以上であり得るが、これに制限されるのではなく、モノマー組成物の組成や重合、乾燥段階での具体的な条件、目的とする高吸水性樹脂フィルム厚さにより適切に調節され得る。
【0137】
次に、モノマー組成物フィルムを縦方向(MD方向)に延伸しながら熱および/または光を照射して重合反応を行い、含水ゲル重合体フィルムを形成する。このように重合時にフィルムを延伸することによって製造される高吸水性樹脂フィルムの引張強度などの物性が調節され得る。
【0138】
この時、モノマー組成物フィルムに加える張力は、40N/m以上、または45N/m以上、または50N/m以上、または60N/m以上であり、100N/m以下、または90N/m以下、または70N/m以下であり得る。もし、過度に大きい張力を加えて延伸すればモノマー組成物フィルムが切れたり厚さが過度に薄くなる問題があり得、張力が過度に小さい場合、フィルムの引張強度など物理的特性を確保できないことがある。
【0139】
重合時の温度はモノマー組成物の組成により適切に調節され得るが、円滑な反応進行のために40℃、または50℃以上であることが好ましい。また、温度が過度に高い場合、溶媒が蒸発してモノマー組成物を構成する成分が析出されることがあるため、重合温度は90℃以下、または80℃以下であることが好ましい。
【0140】
前記重合段階を経て製造された含水ゲル重合体フィルムの含水率は、約20重量%以上、好ましくは25重量%以上であり、40重量%以下、または35重量%以下であり得る。そこで、前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させて最終高吸水性樹脂フィルムを製造する。
【0141】
前記乾燥段階の温度は、80~150℃、または90~100℃の範囲が好ましい。前記温度範囲内で約5~30分間乾燥することによって、含水率が15重量%以下、または12重量%以下、または10重量%以下、または9重量%以下であり、1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上である高吸水性樹脂フィルムを得ることができる。
【0142】
前述した本発明の吸水性物品は、立体ギャザーに厚さが薄くて吸水能に優れた高吸水性樹脂フィルムを含むことで、着用感を低下させることなく、体液が外部に漏れ出ることを効率的に防止することができる。
【0143】
前記吸水性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、または失禁用パッドであり得る。
【0144】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者に明白なものであり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0145】
[実施例]
<製造例:高吸水性樹脂フィルムの製造>
製造例1
アクリル酸55g、水酸化カリウム(KOH)45重量%溶液66.6g、および水55gを混合してアクリル酸の70モル%が中和された中和液を準備した。
【0146】
前記中和液にヒドロキシエチルセルロース(HEC、Ashland社のNatrosol 250HR)、グリセリン、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム、光重合開始剤としてIrgacure 819を添加して、固形分含有量(TSC)が54重量%であるモノマー組成物を製造した。
【0147】
この時、HECはモノマー組成物の固形分100重量部に対して0.45重量部、グリセリンはアクリル酸100重量部に対して40重量部を添加し、熱重合開始剤はモノマー組成物総重量に対して1000ppm、光重合開始剤は80ppm添加した。
【0148】
前記製造されたモノマー組成物の25℃での粘度をTOKI社のTV-22粘度計を利用して、スピンドル(spindle)#1、回転速度1rpmで測定し、その結果、モノマー組成物の粘度は201mPa・sと確認された。
【0149】
次に、前記モノマー組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一面にコーティングして20μm厚さのモノマー組成物フィルム(含水率12%)を形成した。前記コーティングにはコンマコーターを利用し、アプリケータロールの移動速度は0.5m/minにした。
【0150】
その後、前記モノマー組成物フィルムに370mJ/cmの紫外線を照射して重合を実施して、含水ゲル重合体フィルムを形成した。この時、モノマー組成物フィルムにMD方向に60N/mの張力を加えて延伸しながら重合反応を行った。製造された含水ゲル重合体フィルムの厚さは20μmで、モノマー組成物と比較して大きい変化がないことが確認され、含水率は12重量%であった。
【0151】
次に、前記製造された含水ゲル重合体フィルムを80℃温度で5分間乾燥して、含水率が9重量%であり、厚さが19μmである高吸水性樹脂フィルム(SAP film)を製造した。
【0152】
製造例2
モノマー組成物フィルムの厚さを50μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を80℃、乾燥時間を10分としたことを除き、製造例1と同様な方法で含水率10重量%、厚さ49μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0153】
製造例3
モノマー組成物フィルムの厚さを200μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を110℃、乾燥時間を10分としたことを除き、製造例1と同様な方法で含水率11重量%、厚さ189μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0154】
<実施例および比較例:吸水性物品の製造>
比較例1
吸水体として、SAMBO社のFasthann(登録商標)(坪量186gsm、高吸水性樹脂(SAP)粉末とパルプの複合体がティッシュで囲まれた構造、ティッシュ17%、パルプ62%、SAP21%);
液体不透過性背面シートとして、ATPOLY社のBreathable film(厚さ17μm、坪量18gsm、LLDPE 48%、CaCO 48%、TiO 2%、その他添加剤で構成);
液体透過性表面シートとして、SAMBO社のSofthann(登録商標)(厚さ0.34mm、坪量20gsm、PE/PP 2de FD 50%、PE/PP 2de SD 50% bicomponent fiber)製品を使用した。
【0155】
立体ギャザーを形成するギャザーシートとしては、弾性部材が接着されているToray社の疎水性SMS(Spunbond+Meltblown+Spunbond)ポリプロピレン不織布(厚さ0.12mm、坪量12gsm)を使用した。
【0156】
前記液体不透過性背面シート、吸水体、液体透過性表面シートを順次に積層し、ホットプレスを利用して固定させて本体部を製造した。
【0157】
前記本体部の液体不透過性背面シートとギャザーシート一端を結合させた。そしてギャザーシートを幅方向に折り返して二つに重ねた後、折り返されたギャザーシートの他端を本体部の液体透過性表面シートに固定させて立体ギャザーを製造した。
【0158】
実施例1
立体ギャザーの製造時、折り畳まれたギャザーシートの間に製造例1で製造した高吸水性樹脂フィルム(坪量22g/m)を2.5cm×40cmに裁断して介在させたことを除き、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0159】
実施例2
立体ギャザーの製造時、折り畳まれたギャザーシートの間に製造例2で製造した厚さが49μmである高吸水性樹脂フィルム(坪量51g/m)を2.5cm×40cmに裁断して介在させたことを除き、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0160】
実施例3
立体ギャザーの製造時、折り畳まれたギャザーシートの間に製造例3で製造した厚さが189μmである高吸水性樹脂フィルム(坪量212g/m)を2.5cm×40cmに裁断して介在させたことを除き、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0161】
比較例2
立体ギャザーの製造時、折り畳まれたギャザーシートの間に高吸水性樹脂粉末およびフラッフパルプ(fluff pulp)を含む厚さ2mmの吸水体(横×縦=2.5cm×40cm)を介在させたことを除き、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0162】
前記立体ギャザーに介在される吸水体は、坪量50g/mのフラッフパルプ40重量%を、粒径が250~600μmであるポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂粉末(平均粒径400μm、CRC:34g/g、0.3psi AUP:28g/g)60重量%と混合した後、コアラップシートで囲んで製造した。
【0163】
比較例3
立体ギャザーの製造時、折り畳まれたギャザーシートの間にホットメルト接着剤で固着された高吸水性樹脂粉末が位置するようにしたことを除き、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0164】
具体的に、次のような方法で立体ギャザーを製造した。まず、本体部の液体不透過性背面シートと結合されたギャザーシートの上面に、2.5cm×40cm大きさでホットメルト接着剤(H.B. Fuller社、製品名:FLC7228AZP)を塗布し、その上に粒径が250~600μmであるポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂粉末(平均粒径400μm、CRC:34g/g、0.3psi AUP:28g/g)を平均0.4mmの厚さに塗布(つまり、高吸水性樹脂粉末を単層(monolayer)で塗布し、そのために粒子の平均粒径が塗布厚さになる)した。その後、ギャザーシートを幅方向に折り返して二つに重ねた後、折り返されたギャザーシートの他端を本体部の液体透過性表面シートに固定させて立体ギャザーを製造した。
【0165】
<実験例>
前記各製造例の高吸水性樹脂フィルムと、各実施例および比較例の吸水性物品に対して、下記の方法で物性を評価し、その結果を表1に示した。
【0166】
実験例1:高吸水性樹脂フィルムの物性評価
(1)含水率(%)
高吸水性樹脂フィルム試片の乾燥前重量(a)および乾燥後重量(b)から含水率を計算した。この時、試片の乾燥は、常温(25℃)から150℃まで5分にかけて温度を上昇させた後、150℃で15分間維持する方式で行われた。
【0167】
含水率(%)=(a-b)/a×100
【0168】
(2)遠心分離保水能、(CRC、g/g)
EDANA法WSP 241.2の方法により遠心分離保水能(CRC)を測定した。測定対象である高吸水性樹脂フィルムの含水率は、下記表に記載されたとおりであり、別途の含水率調整なしに遠心分離保水能を測定した。
【0169】
具体的に、高吸水性樹脂フィルムを重量(W0)が0.08~0.12gになるように裁断して不織布製の封筒に入れて密封(seal)した後、常温で0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を利用して250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を抜き、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を利用せずに同一の操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を利用して次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0170】
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0171】
(3)引張強度(MPa)
高吸水性樹脂フィルムを20mm×60mmの大きさの長方形形態に切断面が平滑になるように裁断して試片を準備し、引張強度測定機器(TAXTplus、Stable Micro Systems社)の初期グリップ(grip)間隔を20mmとした後、前記試片を装着した。試片を1秒当たり0.5mmの速度で引張して試片の破断が発生した時点の力(Force)(N)を測定し、その値を試片の断面積(mm)で割って引張強度(MPa)を求めた。
【0172】
(4)0.7psi加圧吸水能(AUP、g/g)
EDANA法WSP 242.2の方法により0.7psi下での加圧吸水能(AUP)を測定した。測定対象である各実施例および比較例の高吸水性樹脂フィルムの含水率は下記表に記載されたとおりであり、別途の含水率調整なしに加圧吸水能を測定した。
【0173】
具体的に、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400mesh鉄網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で鉄網上に吸水性樹脂フィルムを重量(W3)が0.6gになるように裁断して投入し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは、外径25mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下動きが妨害を受けないようにした。この時、前記装置の重量W4(g)を測定した。
【0174】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターを置き、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後、測定装置を持ち上げ、その重量W5(g)を測定した。
【0175】
得られた各質量を利用して次の式により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0176】
AUP(g/g)=[W5(g)-W4(g)]/W3(g)
【0177】
(5)伸び率(%)
高吸水性樹脂フィルムを20mm×60mmの大きさの長方形形態に切断面が平滑になるように裁断して試片を準備し、引張強度測定機器(TAXTplus、Stable Micro Systems社)の初期ゲージ長を20mmとした後、試片を装着した。試片を1分当たり0.5mmの速度で引張して試片の破断が発生した時点のゲージ長を測定し、その値を初期ゲージ長で割って伸び率を求めた。
【0178】
伸び率(%)=(L-L)/L×100
【0179】
:初期ゲージ長
:破断が発生した時点のゲージ長
【0180】
【表1】
【0181】
実験例2:吸水性物品の物性評価
(1)漏れ防止機能評価
吸水性物品の立体ギャザーに生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)2mlを注入し、生理食塩水が外部に漏れるか否かを確認して、漏れる場合は漏れ防止機能なし、漏れない場合は漏れ防止機能ありと評価した。
【0182】
その結果、吸水性物質を含まない比較例1は漏れ防止機能が全くなかったが、実施例1~3および比較例2および3は漏れ防止機能を示すことが確認された。
【0183】
ただし、比較例2および3は立体ギャザーが厚くて吸水性物品が形態を維持できず、立体ギャザー部が垂れる現象が確認された。
【0184】
(2)立体ギャザーの耐久性評価
塩水を吸収した状態での立体ギャザーの耐久性を評価するために、次のようなコアインテグリティテスト(core integrity test)を行った。耐久性評価対象としては、実施例2、比較例2、および比較例3の吸水性物品を使用した。
【0185】
テスト対象である立体ギャザーは本体部から分離して使用した。
【0186】
分離された立体ギャザーに0.9重量%塩化ナトリウム水溶液80mlを吸収させて5分間放置した後、上下に振動を付与できるコアインテグリティ(core integrity)測定装置に立体ギャザーをかけ、15mmの落差で1分当たり65回の上下振動を付与してテストを行った。前記コアインテグリティ(core integrity)測定装置は、図3のようにテスト対象である物品(立体ギャザー)20をかけることができる棒40および前記棒が上下振動することができるように振動を付与した装置(図示せず)から構成されたものであって、直接製造して使用した。
【0187】
この時、立体ギャザー内に含まれている吸水性物質(高吸水性樹脂フィルム、高吸水性樹脂粉末、または高吸水性樹脂粉末とフラッフパルプの複合体)が分離されるか否かを肉眼で観察して、総量の半分が分離される時点の振動数を確認した。
【0188】
その結果、比較例2は120回振動後、比較例3は40回振動後に立体ギャザー内の高吸水性樹脂粉末の半分が分離されたが、実施例2の立体ギャザーは柔軟性および引張強度に優れた高吸水性樹脂フィルムが含まれており、1000回以上の振動にも高吸水性樹脂フィルムが分離されず、優れた耐久性を示すことを確認することができた。
【0189】
前記結果から、高吸水性樹脂粉末に比べて高吸水性樹脂フィルムは耐久性に優れて動きが多い立体ギャザーに漏れ防止用途で適用されるのに適していることを確認できる。
【符号の説明】
【0190】
10:本体部
11:液体不透過性背面シート
12:吸水体
13:液体透過性上部シート
20、20a、20b:立体ギャザー
21:ギャザーシート
21a:立体ギャザーの基端部
21b:立体ギャザーの先端部
22:高吸水性樹脂フィルム
23:弾性部材
30a、30b:腰バンド部
100:吸水性物品
200:コアインテグリティ(core integrity)測定装置
図1
図2
図3
【国際調査報告】