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特表2024-500028空洞を含む熱シールドを有するインゴットプラー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】空洞を含む熱シールドを有するインゴットプラー装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532795
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 US2021060918
(87)【国際公開番号】W WO2022115668
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/119,200
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】クァ,ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】バガバト,スミート エス
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジェウ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ルーター,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,カリシマ マリー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077EG01
4G077EG18
4G077EG19
4G077EG20
4G077FE17
4G077HA12
4G077PE22
4G077PE24
(57)【要約】
チョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを作成するためのインゴットプラー装置が開示されている。インゴットプラー装置は熱シールドを含む。熱シールドは、脚セグメントに配置されている空洞(すなわち、断熱材のない空間)を含む脚セグメントを有する。熱シールドはまた、熱シールド内に部分的に断熱材を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの溶融物から単結晶シリコンのインゴットを成長させるためのインゴットプラー装置であって、
前記インゴットプラー装置は、
成長チャンバを形成する、プラーハウジングと、
前記成長チャンバ内に配置され、前記シリコンの溶融物を収容する、るつぼと、
引き抜き軸に沿って前記溶融物から前記インゴットを引き抜くための引き抜き機構と、
前記成長チャンバ内に配置された熱シールドであって、前記熱シールドは、前記インゴットが前記引き抜き機構によって引き抜かれるとき、前記インゴットを受容するための中央通路を形成して、前記熱シールドは、前記引き抜き軸に対して下方に延びる脚セグメントを有して、前記脚セグメントは、前記脚セグメント内に形成された空洞を有する、ことを特徴とする、前記熱シールドと、を備える、インゴットプラー装置。
【請求項2】
前記空洞は、前記脚セグメントの遠位端にある、請求項1に記載のインゴットプラー装置。
【請求項3】
前記脚セグメントは、脚チャンバを画定する脚セグメントハウジングを含み、
前記脚セグメントは、前記脚チャンバ内に配置された断熱材を含む、請求項1又は2に記載のインゴットプラー装置。
【請求項4】
前記空洞は、前記断熱材の下方にある、請求項3に記載のインゴットプラー装置。
【請求項5】
前記空洞は、前記断熱材に対して径方向内側にある、請求項3に記載のインゴットプラー装置。
【請求項6】
前記空洞は、前記断熱材の径方向内側にあり、且つ前記断熱材の下方にも延びている、請求項3に記載のインゴットプラー装置。
【請求項7】
前記断熱材が、炭素、フェルト、又は層状モリブデンからなる、請求項3から6のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【請求項8】
前記脚セグメントハウジングがグラファイトから形成されている、請求項3から7のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【請求項9】
前記脚セグメントは、前記脚セグメントの遠位端において、径方向内側に延びる脚部を有しており、
前記空洞は少なくとも部分的に前記脚部内に配置されている、請求項1から8のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【請求項10】
前記脚部は、脚部チャンバを画定する脚部ハウジングを有しており、
前記脚部チャンバ内には断熱材が配置されていない、請求項9に記載のインゴットプラー装置。
【請求項11】
前記脚部は、脚部ハウジングを有しており、
前記脚部ハウジングは、前記引き抜き軸に対して平行である径方向内側壁を有する、請求項9又は10に記載のインゴットプラー装置。
【請求項12】
前記脚部は、径方向内側下部側壁と径方向内側上部側壁とを有しており、
前記径方向内側下部側壁と前記径方向内側上部側壁は、互いに向かって角度をつけて頂点を形成して、前記頂点は前記熱シールドの最も径方向内側の部分である、請求項9又は10に記載のインゴットプラー装置。
【請求項13】
前記脚部は、前記脚部内に形成された空洞を含まない、請求項12に記載のインゴットプラー装置。
【請求項14】
前記インゴットプラー装置は、前記引き抜き軸に沿って前記熱シールドと少なくとも部分的にオーバーラップする冷却ジャケットを備え、
前記冷却ジャケットは前記熱シールドに対して径方向内側にあり、
前記冷却ジャケットは、前記インゴットが前記引き抜き機構によって引き抜かれるとき、前記インゴットを受容するための中央通路を形成する、請求項1から13のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【請求項15】
シリコンの溶融物から単結晶シリコンのインゴットを成長させるためのインゴットプラー装置であって、
前記インゴットプラー装置は、
成長チャンバを形成する、ハウジングと、
前記成長チャンバ内に配置され、前記シリコンの溶融物を収容する、るつぼと、
引き抜き軸に沿って前記溶融物から前記インゴットを引き抜くために構成されている、引き抜き機構と、
前記成長チャンバ内に配置された熱シールドであって、前記熱シールドは、前記インゴットが前記引き抜き機構によって引き抜かれるとき、前記インゴットを受容するための中央通路を形成して、前記熱シールドは、前記引き抜き軸に沿って延びる脚セグメントを有して、前記脚セグメントは、前記脚セグメントの遠位端において、径方向内側に延びる脚部を有する、ことを特徴とする、前記熱シールドと、を備えており、
前記脚部は、
径方向内側下部側壁と、
径方向内側上部側壁と、を有しており、
前記径方向内側下部側壁と前記径方向内側上部側壁は、互いに向かって角度をつけて頂点を形成して、前記頂点は前記熱シールドの最も径方向内側の部分である、インゴットプラー装置。
【請求項16】
前記脚部は、前記脚部内に形成された空洞を含まない、請求項15に記載のインゴットプラー装置。
【請求項17】
前記脚部は、グラファイトを備える、請求項15又は16に記載のインゴットプラー装置。
【請求項18】
前記頂点は、引き抜き軸に対して平行な内壁である、請求項15から17のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【請求項19】
前記インゴットプラー装置は、前記引き抜き軸に沿って前記熱シールドと少なくとも部分的にオーバーラップする冷却ジャケットを備え、
前記冷却ジャケットは前記熱シールドに対して径方向内側にあり、
前記冷却ジャケットは、前記インゴットが前記引き抜き機構によって引き抜かれるとき、前記インゴットを受容するための中央通路を形成する、請求項15から18のいずれかに記載のインゴットプラー装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願のクロスリファレンス】
【0001】
本願は、2020年11月30日に提出された米国仮特許出願第63/119,200号の利益を主張して、本明細書の一部としてその全体を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示の技術分野は、チョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを作成するためのインゴットプラー装置、特に熱シールド内に配置されている空洞(例えば、断熱材がない領域)を含む熱シールドを有するインゴットプラー装置に関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶シリコンは、半導体装置及び太陽電池などの種々の電子部品を製造するための出発原料である。単結晶シリコンは、一般的に、チョクラルスキー(CZ)法を用いて作成される。つまり、チョクラルスキー法は、シリコンの溶融物を形成するため、るつぼ内の多結晶シリコン(ポリシリコン)を融解すること、結晶成長を開始するため、種晶を下降させて該溶融物に接触させること、及び溶融物から単結晶のインゴットを引き抜くことを含む。
【0004】
一部のインゴットプラー装置は、インゴットが溶融物から引き抜かれるとき、インゴットを覆う溶融物の上方において、(場合によって「リフレクタ」と呼称される)熱シールドを含む。熱シールドは、インゴットが溶融物から引き抜かれるとき、インゴットの温度を保つため、熱シールド全体にわたる断熱材を含む。上述のインゴットプラー装置において成長したインゴットからスライスされたウェハは、ウェハの縁に近い径方向のバンドにおいて、欠陥を含む。これらの欠陥は、ゲート酸化物完全性(GOI)の異常を引き起こす、大きく成長した空洞と酸素析出物を含む。上述の異常は、特に、新しい世代の記憶装置に対して用いられる完全シリコン(PS)ウェハ製品に対する故障となる。
【0005】
空洞と酸素析出物のような欠陥の数が少ない、及び/又は空洞と酸素析出物のような欠陥の大きさが小さいインゴットを製造するインゴットプラー装置の必要性がある。
【0006】
本項目は、以下に説明及び/又は請求される本開示の種々の態様に対して関連し得る技術の種々の態様を紹介することを意図している。この記述は、本開示の種々の態様の理解を促すための背景情報を提供することにおいて、有用であると考えられる。したがって、本記述は、この観点で解釈されるものであり、先行技術を認めるものではないと理解されたい。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、シリコンの溶融物から単結晶シリコンのインゴットを成長させるためのインゴットプラー装置を対象とする。上記装置は、成長チャンバを形成するプラーハウジングを備える。るつぼは、シリコンの溶融物を収容するため、成長チャンバ内に配置される。インゴットプラー装置は、引き抜き軸に沿って溶融物からインゴットを引き抜くための引き抜き機構を備える。熱シールドは、成長チャンバ内に配置される。熱シールドは、インゴットが引き抜き機構によって引き抜かれるとき、インゴットを受容するための中央通路を画定する。熱シールドは、引き抜き軸に対して下方に延びる脚セグメントを有する。脚セグメントは、脚セグメント内に形成された空洞を有する。
【0008】
本開示の別の態様は、シリコンの溶融物から単結晶シリコンのインゴットを成長させるためのインゴットプラー装置を対象とする。上記装置は、成長チャンバを形成するハウジングを備える。るつぼは、シリコンの溶融物を収容するため、成長チャンバ内に配置される。引き抜き機構は、引き抜き軸に沿って溶融物からインゴットを引き抜くために構成されている。熱シールドは、成長チャンバ内に配置される。熱シールドは、インゴットが引き抜き機構によって引き抜かれるとき、インゴットを受容するための中央通路を画定する。熱シールドは、引き抜き軸に沿って延びる脚セグメントを有する。脚セグメントは、脚セグメントの遠位端において、径方向内側に延びる脚部を有する。脚部は、径方向内側下部側壁と、径方向内側上部側壁とを有する。径方向内側下部側壁と径方向内側上部側壁は、互いに向かって角度をつけて頂点を形成する。頂点は熱シールドの最も径方向内側の部分である。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して指摘された特徴には、様々な改良が存在する。また、さらなる特徴は、同様に、本開示の上述の態様に組み込まれ得る。これらの改良および追加機能は、個別に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述する様々な特徴は、単独でまたは任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、インゴットプラー装置の断面図である。
【0011】
図2図2は、インゴットプラー装置の熱シールドの断面図である。
【0012】
図3図3は、熱シールドの別の実施形態の断面図である。
【0013】
図4図4は、従来のインゴットプラー装置によって成長したインゴット、図2の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴット、及び図3の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴットに対する軸方向インゴット縁の温度測定のグラフである。
【0014】
図5図5は、従来のインゴットプラー装置によって成長したインゴット、図2の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴット、及び図3の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴットからスライスされたウェハの欠陥性能と完全シリコン窓のグラフである。
【0015】
図6図6は、従来のインゴットプラー装置によって成長したインゴット、図2の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴット、及び図3の熱シールドを有するインゴットプラー装置において成長したインゴットからスライスされたウェハの欠陥性能と平均引き抜き速度のグラフである。
【0016】
対応する符号は、図面全体にわたって対応する部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、単結晶シリコンインゴットを成長させるためのインゴットプラー装置(又はより簡単に「インゴットプラー」)を符号100で示す。インゴットプラー装置100は、シリコンの溶融物104からシリコンインゴット113を引き抜くための成長チャンバ152を画定する結晶プラーハウジング108を含む。インゴットプラー装置100は、シリコンの溶融物104を保持するため、成長チャンバ152内に配置されたるつぼ102を含む。るつぼ102は、サセプタ106によって支持されている。
【0018】
るつぼ102は、フロア129と、フロア129から上方に延びる側壁131とを含む。側壁131は、略垂直である。フロア129は、るつぼ102の側壁131の下方に延びる湾曲部を含む。溶融物面111 (すなわち、溶融物とインゴットの界面)を有するシリコン溶融物104が、るつぼ102内にある。サセプタ106は、シャフト105によって支持されている。サセプタ106、るつぼ102、シャフト105、及びインゴット113は、共通の長手方向軸A又は「引き抜き軸」Aを有する。
【0019】
引抜機構114が、インゴット113を成長させて溶融物104から引き抜くため、インゴットプラー装置100内に設けられている。引抜機構114は、引抜ケーブル118と、引抜ケーブル118の一端に結合されているシードホルダ又はチャック120と、結晶成長を開始するため、シードホルダ又はチャック120に結合されている種晶122とを含む。引抜ケーブル118の一端は、(図示しない)プーリー、又は(図示しない)ドラム、又は他の適切な種類の持ち上げ機構、例えばシャフトに接続されている。また、他端は、種晶122を保持するチャック120に接続されている。作動において、種晶122は、溶融物104に接触するように下降する。引抜機構114は、種晶122を上昇させるように作動する。これにより、溶融物104から単結晶インゴット113が引き抜かれる。
【0020】
加熱及び結晶の引抜の間、るつぼ駆動部107(例えば、モータ)が、るつぼ102及びサセプタ106を回転させる。リフト機構112は、成長工程の間、るつぼ102を引き軸Aに沿って昇降させる。インゴットが成長するにつれて、シリコン溶融物104が消費されて、るつぼ102内の溶融物の高さが減少する。るつぼ102とサセプタ106は、インゴットプラー装置100に対して溶融物面111を同じ位置又はそれに近い位置に保つように、上昇し得る。
【0021】
また、(図示しない)結晶駆動部は、るつぼ駆動部107がるつぼ102を回転させる方向と反対の方向に(例えば、逆回転に)、引抜ケーブル118とインゴット113を回転させ得る。同種の回転を用いる実施形態では、結晶駆動部は、るつぼ駆動ユニット107がるつぼ102を回転させる方向と同じ方向に引抜ケーブル118を回転させ得る。さらに、結晶駆動部は、成長工程の間、要求に応じて、インゴット113を溶融物面111に対して昇降させる。
【0022】
インゴットプラー装置100は、成長チャンバ152から、アルゴンなどの不活性ガスを導入して引き抜く不活性ガスシステムを含んでもよい。また、インゴットプラー装置100は、溶融物104にドーパントを導入するための(図示しない)ドーパント供給システムを含むことができる。
【0023】
チョクラルスキー単結晶成長工程によれば、大量の多結晶シリコン又はポリシリコンがるつぼ102に堆積される。るつぼ102内に導入される半導体又は太陽電池級材料は、1つ以上の加熱要素から与えられる熱によって溶融される。インゴットプラー装置100は、プラー装置100内の熱を保持するため、底部断熱部110と側面断熱部124とを含む。図示する実施形態において、インゴットプラー装置100は、るつぼのフロア129の下方に配置された底部加熱部126を含む。るつぼ102は、るつぼ102に堆積した多結晶を融かすように、底部加熱部126に比較的近接するように移動し得る。
【0024】
インゴットを形成するため、種晶122が溶融物104の表面111に接触する。引抜機構114は、溶融物104から種晶122を引き抜くように作動する。インゴット113は、インゴットが種晶122から遷移して、目標の直径に達するように外側に先細になるクラウン部142を含む。インゴット113は、引抜速度を上げることによって成長する結晶の定径部145又は円筒形の「本体」を含む。インゴット113の本体145は、比較的一定の直径を有する。インゴット113は、本体145の後、インゴットが直径を先細にする(図示しない)テール又はエンドコーンを含む。直径が十分に小さくなるとき、インゴット113は溶融物104から分離される。インゴット113は、クラウン部142とインゴット113の終端部とを通して延びる中心長手軸Aを有する。
【0025】
インゴットプラー装置100は、結晶成長の間の溶融物104の温度を保つため、るつぼ102を囲む側面加熱部135とサセプタ106を含む。側面加熱部135は、るつぼ102が引き軸Aを上下に移動するとき、るつぼの側壁131に対して半径方向外側に配置される。側面加熱部135と底部加熱部126は、本明細書に記載するように作動できる任意の種類の加熱器であってもよい。一部の実施形態では、加熱部135,126は、抵抗加熱器である。側面加熱部135と底部加熱部126は、溶融物104の温度が引抜工程全体にわたって制御されるように、(図示しない)制御システムによって制御され得る。
【0026】
本開示の実施形態に従って、インゴットプラー装置100は、成長チャンバ152内において、インゴットの成長の間、インゴット113を覆う溶融物104の上方に配置される熱シールド151を含む。熱シールド151は、結晶の成長の間、るつぼ102内に部分的に配置される。熱シールド151は、インゴットが引き抜き機構114によって引き抜かれるとき、インゴット113を受容するための中央通路160を画定する。
【0027】
熱シールド151は、引き抜き軸A(図1)に沿って延びる脚セグメント164(図2)を有する。脚セグメント164は、脚セグメント164内に形成されている空洞166(すなわち、ガスを含む空間)を有する。空洞166は、脚セグメント164の遠位端168にあり、引き抜き軸Aに対して上方に延びる。脚セグメント164は、脚セグメントハウジング170を含む。脚セグメントハウジング170は、ハウジング170内において、脚チャンバ172を画定する。脚セグメント164は、チャンバ172内において、断熱材174を含む。断熱材174は、ハウジング170から延びるレッジ155によって支持される。空洞166は、断熱材174の下方にあり、断熱材174に対して径方向内側にある。断熱材174は、熱伝導を低減するため、脚セグメントハウジング174から隙間154で分離され得る。脚セグメントハウジング174は、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)が、ハウジングに入り、空洞166を満たすことができるように、開口部を有してもよい。
【0028】
脚セグメントハウジング170は、グラファイト、又はシェル内において、放射線を遮断するため、モリブデンシートを有するグラファイトシェルから形成され得る。代替として、脚セグメントハウジングは、炭化ケイ素により覆われているグラファイトから形成され得る。断熱材174は、炭素(例えば、炭素ベースの硬質な断熱材)、フェルト、又は層状モリブデンから形成され得る。
【0029】
図2に示すように、脚セグメント164は、脚セグメント164から脚セグメント164の遠位端168に向けて径方向内側に延びる脚部182を有する。空洞166は、脚部182に向けて少なくとも部分的に延びる。(図2の実施形態において、空洞166は、脚部全体の中を通って延びる。)脚部182は、脚部チャンバ186を画定する脚部ハウジング184を備える。脚部ハウジング184は、フロア190、径方向内側壁192、及び傾斜した頂部194を含む。径方向内側壁192は、引き抜き軸Aに対して実質的に平行である(図1)。図2に示す実施形態において、脚部チャンバ186内には断熱材が配置されていない。他の実施形態において、脚部チャンバ186は、脚部チャンバ186内において、断熱材又は他の物質(例えば、グラファイト)を含む。
【0030】
図3において、熱シールドの別の実施形態を示す。図3に示す構成要素は、図2に示す構成要素に類似しており、図2の対応する符号に「100」を足した符号(例えば、部品182は282になる)によって示す。熱シールド251は、脚セグメント264と、脚セグメント264から延びる脚部282とを含む。熱シールド251は、脚セグメントハウジング270内に形成されている空洞266を含む。熱シールド251は、脚セグメント264内に形成されている脚チャンバ272内に断熱材274を含む。空洞266は、断熱材174より下方に延びて、断熱材174に対して径方向内側にある。
【0031】
脚部282は、径方向内側下部側壁283と径方向内側上部側壁285とを有する。径方向内側下部側壁283と径方向内側上部側壁285は、互いに向かって角度をつけて、熱シールド251の最も径方向内側の部分である頂点287を形成する。図示する実施形態において、頂点287は、引き抜き軸Aに対して平行な内壁である(図1)。
【0032】
図3に示すように、脚部282は、脚部282内に形成された空洞を含まない。脚部282は、グラファイトから形成され得る。
【0033】
図1を再び参照して、インゴットプラー装置100は、冷却ジャケット132を備える。冷却ジャケット132は、引き抜き軸Aに沿って熱シールド151と少なくとも部分的にオーバーラップする(図1)。冷却ジャケット132は、熱シールド151に対して径方向内側にある。冷却ジャケットは、インゴットが引き抜き機構114によって引き抜かれるとき、インゴットを受容するための中央通路134を画定する。
【0034】
従来のインゴットプラー装置と比較して、本開示の装置は、複数の利点を有する。空洞を有する熱シールド(図2,3)は、得られるウェハの欠陥性能を向上する。得られるウェハは、(例えば、インゴットプラー装置の冷却ジャケットの寸法を変更することなく)縁バンドを和らげる。熱シールドは、1685~1533°Kの温度範囲において、結晶縁に沿って熱除去を強化する。熱シールドは、結晶の1533~1285°Kの温度領域において、相対的に均一な温度勾配を保ち、残りの結晶に対する冷却効果を強化する。熱シールドは、粒子汚染を低減する比較的高い温度に保たれるように、外側上部リフレクタの温度をもたらす。熱シールドはまた、設計変更(例えば、15~40kWの電力上昇)に起因する熱損失を最小化する。
【0035】
[実施例]
本開示の工程は、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で捉えられるべきものではない。
【0036】
[第1の実施例:インゴット軸の温度勾配]
図4は、図1の熱シールド151のような従来の熱シールド(POR)を有する一方、熱シールド全体にわたる断熱材を有する、インゴットプラー装置で成長したインゴットの軸方向インゴット縁の温度測定値を示す。図4はまた、熱シールドに空洞が配置されている図2の熱シールドを含むインゴットプラー装置(図2)、及び熱シールドに空洞が配置されており、互いに向かって傾斜する上部側壁と下部側壁を含む脚部を有する図3の熱シールドを含むインゴットプラー装置(図3)の軸方向インゴット縁温度測定値を示す。図4に示すように、図2及び図3の熱シールドは、インゴット内に組み込まれた空孔濃度を低下させ、空孔のピークを縁に近づけながら、空孔の移動をより長い時間維持し、クラスターの成長を減少させる。
【0037】
上部のホットゾーンの冷却を増加させることによって、従来に比べて、熱シールドの下部が冷却される。
【0038】
[第2の実施例:熱シールドの形状の間の欠陥性能]
図5図6は、図1の熱シールド151のような従来の熱シールド(POR)を有しながら、熱シールド全体にわたる断熱材を有するインゴットプラー装置を用いることにより成長したインゴットの欠陥性能を示す。図4はまた、熱シールド内に空洞を有する図2の熱シールドを含むインゴットプラー装置において成長したインゴット(図2)、及び熱シールド内に空洞を有して、互いに向かって傾斜する上部側壁と下部側壁を含む脚部を有する図3の熱シールドを含むインゴットプラー装置において成長したインゴット(図3)の軸方向インゴット縁温度測定値を示す。すべてのパラメータは、より良い比較のため、POR性能によってスケーリングされている。図2の形状と図3の形状の両方が、従来の熱シールド(POR)よりも優れた欠陥性能を有している。両方の新しい形状において、約10%の低い引き抜き速度(図6)により、特定のプロセス条件に応じて、完全なシリコン窓(すなわち、完全なシリコンが生成される引き抜き速度の範囲)の10%~35%の改善が達成され得る(図5)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「about(約)」、「substantially(実質的に)」、「essentially(本質的に)」及び「approximately(およそ)」という用語は、寸法、濃度、温度又は他の物理的若しくは化学的な性質若しくは特性の範囲とともに使用される場合、たとえば、丸め、測定方法又は他の統計的変動から生じる変動を含む、性質あるいは特性の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動を包含することを意味する。
【0040】
本開示又はその(1つ又は複数の)実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、その要素が1つ又は複数あることを意味することを意図する。「comprising」、「including」、「containing」、及び「having」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。特定の向き(たとえば、「top」、「bottom」、「side」など)を示す用語の使用は、説明の便宜上のものであり、説明される部材の特定の向きを必要とするものではない。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく上記の構成及び方法に様々な変更を加えることができるので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきであることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
熱シールド151は、引き抜き軸A(図1)に沿って延びる脚セグメント164(図2)を有する。脚セグメント164は、脚セグメント164内に形成されている空洞166(すなわち、ガスを含む空間)を有する。空洞166は、脚セグメント164の遠位端168にあり、引き抜き軸Aに対して上方に延びる。脚セグメント164は、脚セグメントハウジング170を含む。脚セグメントハウジング170は、ハウジング170内において、脚チャンバ172を画定する。脚セグメント164は、チャンバ172内において、断熱材174を含む。断熱材174は、ハウジング170から延びるレッジ155によって支持される。空洞166は、断熱材174の下方にあり、断熱材174に対して径方向内側にある。断熱材174は、熱伝導を低減するため、脚セグメントハウジング170から隙間154で分離され得る。脚セグメントハウジング170は、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)が、ハウジングに入り、空洞166を満たすことができるように、開口部を有してもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】