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2024-500162高トポロジカル選択比のための自己停止ポリッシング組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】高トポロジカル選択比のための自己停止ポリッシング組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231222BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20231222BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20231222BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231222BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538037
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021064532
(87)【国際公開番号】W WO2022140334
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,445
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チュヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】スディープ パリッカーラ クッティアトール
(72)【発明者】
【氏名】サジョ ネイク
(72)【発明者】
【氏名】エリオット ナプトン
(72)【発明者】
【氏名】チンフォン ワン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウィルホフ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB29
3C158ED04
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3C158ED26
3C158ED28
5F057AA28
5F057BB15
5F057BB16
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA06
5F057EA09
5F057EA25
5F057EA27
5F057EA29
5F057EA31
(57)【要約】
本発明は化学機械ポリッシング組成物であって、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I)の化合物から選択された自己停止剤と、(c)任意には非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物と、(e)水とを含み、ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を提供する。本発明はまた、基板、特に酸化ケイ素及び任意にはポリシリコンを含む基板を、前記組成物を使用して化学機械的にポリッシングする方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械ポリッシング組成物であって、
(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、
(b)式(I):
【化1】
の化合物から選択された自己停止剤であって、
Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、
(c)カチオン性モノマー化合物と、
(d)水と
を含み、
前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、
化学機械ポリッシング組成物。
【請求項2】
前記ポリッシング組成物が、約0.001wt%~約10wt%の研磨剤を含む、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項3】
前記ポリッシング組成物が、約0.05wt%~約5wt%の研磨剤を含む、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項4】
前記研磨剤がセリア研磨剤である、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項5】
前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約7である、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項6】
前記ポリッシング組成物のpHが約6~約6.5である、請求項5に記載のポリッシング組成物。
【請求項7】
前記自己停止剤が、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項8】
前記自己停止剤がベンズヒドロキサム酸である、請求項7に記載のポリッシング組成物。
【請求項9】
前記化学機械ポリッシング組成物が非イオン性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項10】
前記非イオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルアミン、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、疎水性変性ポリアクリレートコポリマー、親水性非イオン性ポリマー、多糖類、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載のポリッシング組成物。
【請求項11】
前記非イオン性ポリマーが、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマーである、請求項10に記載のポリッシング組成物。
【請求項12】
前記カチオン性モノマー化合物が、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(「DMAEA」)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(「DMAEM」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド(「DMAPMA」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド(「DMAPA」)、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「MAPTAC」)、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「APTAC」)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド(「DMAEA.BCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド(「DMAEM.BCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のポリッシング組成物。
【請求項13】
前記カチオン性モノマー化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)又はその塩である、請求項12に記載のポリッシング組成物。
【請求項14】
基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、
(i)基板を用意し、
(ii)ポリッシングパッドを用意し、
(iii)
(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、
(b)式(I):
【化2】
の化合物から選択された自己停止剤であって、
Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、
(c)カチオン性モノマー化合物と、
(d)水と
を含み、
当該ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、
化学機械ポリッシング組成物を用意し、
(iv)前記基板を前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物と接触させ、そして
(v)前記基板に対して前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物を動かすことによって前記基板の少なくとも一部を研磨し、これにより前記基板をポリッシングする
ことを含む、基板を化学機械的にポリッシングする方法。
【請求項15】
前記ポリッシング組成物が、約0.001wt%~約10wt%の研磨剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリッシング組成物が、約0.05wt%~約5wt%の研磨剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記研磨剤がセリア研磨剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約7である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリッシング組成物のpHが約6~約6.5である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記自己停止剤が、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記自己停止剤がベンズヒドロキサム酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化学機械ポリッシング組成物が非イオン性ポリマーをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記非イオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルアミン、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、疎水性変性ポリアクリレートコポリマー、親水性非イオン性ポリマー、多糖類、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン性モノマー化合物が、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(「DMAEA」)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(「DMAEM」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド(「DMAPMA」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド(「DMAPA」)、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「MAPTAC」)、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「APTAC」)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド(「DMAEA.BCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド(「DMAEM.BCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性モノマー化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)又はその塩である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
集積回路及び他の電子デバイスの製作に際して、導電性材料、半導電性材料、及び誘電材料から成る複数の層が、基板表面上へ堆積されるか、又は基板表面から除去される。材料層が順次に基板上へ堆積され、そして除去されるのにともなって、基板の最上面は、非平坦になり、平坦化を必要とする場合がある。表面の平坦化、又は表面の「ポリッシング(polishing)」は、基板の表面から材料を除去することにより概ね一様な平坦な表面を形成するプロセスである。平坦化は、望まれない表面トポロジー及び表面欠陥、例えば粗い表面、凝集された材料、結晶格子損傷、スクラッチ、及び汚染された層又は材料を除去する上で有用である。平坦化はまた、基板上にフィーチャを形成する上でも有用であり、このようなフィーチャの形成は、フィーチャを埋める目的で、そしてメタライゼーション及びプロセッシングの後続のレベルのために一様な表面を提供する目的で使用された余剰の堆積材料を除去することによって行われる。
【0002】
基板の表面を平坦化又はポリッシングするための組成物及び方法が、当業者によく知られている。化学機械平坦化、又は化学機械ポリッシング(CMP)は、基板を平坦化するために用いられる共通の技術である。CMPは、基板からの選択的な材料除去のために、CMP組成物又はより単純にポリッシング組成物(ポリッシングスラリーとも呼ばれる)として知られる化学組成物を利用する。ポリッシング組成物は典型的には、基板の表面と、ポリッシング組成物で飽和されたポリッシングパッド(例えばポリッシングクロス又はポリッシングディスク)とを接触させることにより、基板に被着される。基板のポリッシングは、ポリッシング組成物の化学的活性、及び/又はポリッシング組成物中に懸濁された、又はポリッシングパッド(例えば固定された研磨ポリッシングパッド)内へ組み込まれた研磨剤の機械的活性によってさらに助けられる。
【0003】
集積回路のサイズが小さくなり、チップ上の集積回路の数が増えるのにともなって、回路を形成する構成部分を互いにより近接させた状態で位置決めすることにより、典型的なチップ上で利用可能な限定的スペースに適応しなければならない。最適な半導体性能を保証するために、回路間の効果的な分離が重要である。これを目的として、半導体基板内へシャロートレンチをエッチングし、そしてこれに絶縁材料を埋めることにより、集積回路の活性領域を分離する。より具体的に言えば、シャロートレンチ・アイソレーション(shallow trench isolation(STI))は、シリコン基板上に窒化ケイ素を形成し、エッチング又はフォトリソグラフィを介してシャロートレンチを形成し、そして誘電層を堆積することによりトレンチを埋める、プロセスである。こうして形成されたトレンチの深さが変化するため、基板の上面に過剰の誘電材料を堆積することにより、すべてのトレンチの完全な充填を保証することが典型的には必要である。誘電材料(例えば酸化ケイ素)は、下側に位置する、基板のトポグラフィに一致する。
【0004】
このように、誘電材料が配置された後、堆積された誘電材料の表面は、誘電材料内のトレンチによって分離された誘電材料の隆起エリアの凹凸のある組み合わせによって特徴付けられる。誘電材料の隆起エリア及びトレンチは、下側表面の対応する隆起エリア及びトレンチと整合する。隆起誘電材料及びトレンチを含む基板表面の領域は、基板のパターンフィールド、例えば「パターン材料」、「パターン酸化物」、又は「パターン誘電体」と呼ばれる。パターンフィールドは「段差(step height)」によって特徴付けられる。段差は、トレンチ高さに対する誘電材料の隆起エリアの高さの差である。
【0005】
余剰の誘電材料は典型的にはCMPプロセスによって除去される。CMPプロセスはさらなるプロセッシングのために平坦な表面を付加的に提供する。隆起エリア材料の除去中に、トレンチからの所定量の材料も除去されることになる。トレンチからのこのような材料除去は、「トレンチ・エロージョン(trench erosion)」又は「トレンチ損失(trench loss)」と呼ばれる。トレンチ損失は、初期段差を排除することによってパターン誘電材料の平坦化を達成する際に、トレンチから除去された材料の量(厚さ(例えばオングストローム(Å)))である。トレンチ損失は、初期トレンチ厚から最終トレンチ厚を差し引いたものとして計算される。望ましいのは、トレンチからの材料除去速度が、隆起エリアからの除去速度を十分に下回ることである。このように、隆起エリアの材料が(トレンチから除去される材料と比較してより高い速度で)除去されるのにともなって、パターン誘電体は、高度に平坦化された表面になる。このような表面は、プロセッシングされた基板表面の「ブランケット」領域、例えば「ブランケット誘電体」又は「ブランケット酸化物」と呼ばれることがある。
【0006】
ポリッシング組成物は、そのポリッシング速度(すなわち除去速度)とその平坦化効率とにしたがって特徴付けることができる。ポリッシング速度は、基板の表面からの材料除去速度を意味し、そして通常は、時間単位当たりの(1分当たりの)長さ(厚さ(例えばオングストローム(Å)))の単位で表される。異なる基板領域に関する、又はポリッシング工程の異なる段階に関する異なる除去速度が、プロセス性能を評価する上で重要であり得る。「パターン除去速度」又は「アクティブ除去速度」は、基板がかなりの段差を呈するプロセス段階において、パターン誘電層の隆起エリアから誘電材料を除去する速度である。「ブランケット除去速度」は、段差が著しく(例えば本質的に全体に)低減されているポリッシング工程の終わりに、パターン誘電層の平坦化された(すなわち「ブランケット」)エリアから誘電材料を除去する速度を意味する。平坦化効率は、基板から除去された材料の量に対する段差低減(すなわち段差低減をトレンチ損失で割り算したもの)に関連する。具体的には、ポリッシング表面、例えばポリッシングパッドは先ず表面の「ハイポイント」と接触し、そして平坦な表面を形成するために材料を除去しなければならない。結果として材料の除去量がより少ない平坦な表面を得るプロセスが、平坦性を達成するためにより多くの材料の除去を必要とするプロセスよりも効率的であると考えられる。
【0007】
多くの場合、酸化ケイ素パターン材料の除去速度は、STIプロセスにおける誘電体ポリッシング工程にとって律速であり得るので、デバイス・スループットを高めるために、酸化ケイ素パターンの高い除去速度が望まれる。しかしながら、ブランケット除去速度があまりにも速い場合には、露出したトレンチ内の酸化物をオーバーポリッシングする結果として、トレンチ・エロージョンを招き、デバイス欠陥品率を増大させてしまう。ブランケット除去速度を低下させると、オーバーポリッシング及び関連するトレンチ損失を回避することができる。
【0008】
ある特定の用途において、CMP組成物が、表面の「ハイポイント(high points)」(すなわち隆起エリア)の大部分が除去されているときには除去速度が低下するように、「自己停止(self-stopping)」挙動を呈することが望ましい。自己停止ポリッシング用途において、基板表面に顕著な段差が存在している間は、除去速度は事実上高いのに対して、次いで表面が事実上平坦になるのにともなって、除去速度は低下させられる。(例えばSTIプロセスの)種々の誘電体ポリッシング工程において、パターン誘電材料(例えば誘電層)の除去速度は典型的には、プロセス全体の律速要因である。したがって、スループットを高めるためには、パターン誘電材料の高い除去速度が望まれる。比較的低いトレンチ損失という形での良好な効率も望ましい。さらに、平坦化達成後に誘電体の除去速度が高いままであると、オーバーポリッシングが発生し、結果としてトレンチ損失が追加される。
【0009】
したがって、表面の「ハイポイント」(すなわち隆起エリア)の大部分が除去されているときには除去速度が低下するように「自己停止」挙動を呈することができ、そしてポリッシング条件に晒されているときには安定なままであり得る、化学機械ポリッシングのための自己停止CMP組成物及び方法が依然として必要である。
【0010】
本発明は、このようなポリッシング組成物及び方法を提供する。本明細書中に提供された本発明の記載内容から、本発明のこれらの利点及び他の利点、並びに付加的な本発明の特徴が明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化学機械ポリッシング組成物であって、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化1】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)カチオン性モノマー化合物と、(d)水とを含み、これらから本質的に成り、又はこれらから成り、前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を提供する。
【0012】
本発明は、基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、(i)基板を用意し、(ii)ポリッシングパッドを用意し、(iii)(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化2】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)カチオン性モノマー化合物と、(d)水とを含み、当該ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を用意し、(iv)基板をポリッシングパッド及び化学機械ポリッシング組成物と接触させ、そして(v)前記基板に対して前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物を動かすことによって前記基板の少なくとも一部を研磨し、これにより前記基板をポリッシングすることを含む、基板を化学機械的にポリッシングする方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、化学機械ポリッシング組成物であって、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化3】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)任意には非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物と、(e)水とを含み、これらから本質的に成り、又はこれらから成り、前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を提供する。
【0014】
本発明の化学機械ポリッシング組成物は研磨剤を含む。ポリッシング組成物の研磨剤は、基板の非金属部分(パターン誘電材料、ブランケット誘電材料、パターン酸化物材料、ブランケット酸化物材料など)をポリッシングするのに適していることが望ましい。好適な研磨剤はセリア研磨剤(例えばCeO2)、ジルコニア研磨剤(例えばZrO2)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0015】
セリア研磨剤及びジルコニア研磨剤は、CMP技術分野においてよく知られており、商業的に入手可能である。好適なセリア研磨剤の例は、とりわけ湿式プロセスセリア、か焼セリア、及び金属ドープ型セリアを含む。好適なジルコニア研磨剤は、とりわけ金属ドープ型ジルコニア及び非金属ドープ型ジルコニアを含む。金属ドープ型ジルコニアには、セリウム、カルシウム、マグネシウム、又はイットリウムでドープされたジルコニアがあり、ドーパント元素重量パーセンテージは好ましくは0.1%~25%である。
【0016】
いくつかの実施態様では、化学機械ポリッシング組成物はセリア研磨剤を含む。本明細書中に使用される「セリア研磨剤」という用語は、「セリア研磨粒子」、「セリア粒子」、又は「研磨剤」と相互に置き換え可能に使用することができる。よく知られているように、セリアは希土類金属セリウムの酸化物であり、酸化第二セリウム、酸化セリウム(酸化セリウム(IV))、又は二酸化セリウムとしても知られている。酸化セリウム(IV)(CeO2)は、シュウ酸セリウム又は水酸化セリウムをか焼することにより形成することができる。セリウムはまた酸化セリウム(III)、例えばCe23を形成する。セリア研磨粒子は、セリアのこれらの酸化物又は他の酸化物のうちのいずれか1つ又は2つ以上を含んでよい。
【0017】
セリア研磨粒子は任意の適宜のタイプであってよい。1実施態様では、セリア研磨粒子はか焼セリア粒子、湿潤セリア粒子、湿潤系プロセスセリア粒子、又はこれらの組み合わせを含み、これらから本質的に成り、又はこれらから成る。本発明のポリッシング組成物中の使用に適したセリア研磨剤、及びこれらの調製のためのプロセスが、“Polishing Composition Containing Ceria Abrasive”(セリア研磨剤を含有するポリッシング組成物)と題する、2015年3月5日付けで出願された米国特許出願第14/639,564号、現在は米国特許第9,505,952号、及び“Methods and Compositions for Processing Dielectric Substrate”(誘電基板をプロセッシングするための方法及び組成物)と題する、2016年7月12日付けで出願された米国特許出願第15/207,973号であって、米国特許出願公開第2017/0014969号として公開されているものに記載されている。これらの開示内容は、本明細書中に参照することにより援用される。
【0018】
好ましい実施態様では、セリア研磨粒子は湿潤セリア粒子又は湿式プロセス系セリア粒子を含む。本明細書中に使用される「湿潤セリア粒子」又は「湿式プロセス系セリア粒子」(ここではまとめて「湿式プロセス」セリア粒子)は、(ヒュームド又は発熱性セリアとは異なり)沈殿、縮合重合、又は同様のプロセスによって調製されたセリアを意味する。湿式プロセスセリア粒子を含む本発明のポリッシング組成物は、本発明の方法にしたがって基板をポリッシングするために使用されると、より低い欠陥を呈することが判っている。特定の理論に縛られたくはないが、湿式プロセスセリアはほぼ球形のセリア粒子、及び/又はより小さな凝集セリア粒子を含み、これにより、本発明の方法において使用されると基板欠陥品率をより低くする。湿式プロセスセリアの実例は、Rhodiaから商業的に入手可能なHC30(登録商標)及びHC60(登録商標)セリア、及びANP Co., Ltdから商業的に入手可能なHybrid-30である。
【0019】
セリア研磨剤は任意の適宜のプロセスによって形成することができる。一例としては、セリア研磨剤は、下記プロセスにしたがって形成された湿式プロセスセリア粒子であってよい。典型的には、湿式プロセスセリア粒子を合成する第1工程は、水中にセリア前駆体を溶解させることである。セリア前駆体は、任意の適宜のセリア前駆体であってよく、そして任意の適宜の電荷、例えばCe3+又はCe4+を有するセリア塩を含むことができる。適宜のセリア前駆体は、例えば硝酸セリウムIII、硝酸セリウムIVアンモニウム、炭酸セリウムIII、硫酸セリウムIV、及び塩化セリウムIIIを含む。好ましくは、セリア前駆体は硝酸セリウムIIIである。
【0020】
セリア前駆体溶液のpHは典型的には、非晶質Ce(OH)3を形成するように高められる。溶液のpHは任意の適宜のpHに高めることができる。例えば、溶液のpHは約10以上のpH、約10.5以上のpH、約11以上のpH、又は約12以上のpHまで高めることができる。典型的には、溶液は約14以下のpH、例えば約13.5以下のpH、又は約13以下のpHを有することになる。任意の適宜の塩基を使用して、溶液のpHを高めることができる。適宜の塩基は例えばKOH、NaOH、NH4OH、及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む。有機塩基、例えばエタノールアミン及びジエタノールアミンも好適である。溶液は、pHが高くなるのにともなって白くなり濁るようになり、そして非晶質Ce(OH)3が形成される。
【0021】
セリア前駆体は典型的には数時間にわたって混合される。例えば、溶液は約1時間以上、例えば約2時間以上、約4時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約16時間以上、約20時間以上、又は約24時間以上にわたって混合することができる。典型的には、溶液は約1時間~約24時間、例えば約2時間、例えば約8時間、又は例えば約12時間にわたって混合される。混合が完了したら、溶液を加圧容器へ移し、そして加熱することができる。
【0022】
セリア前駆体溶液を任意の適宜の温度まで加熱することができる。例えば、溶液は約50℃以上、約75℃以上、約100℃以上、約125℃以上、約150℃以上、約175℃以上、約200℃以上の温度まで加熱することができる。この代わりに又はこれに加えて、溶液は、約500℃以下、約450℃以下、約400℃以下、約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約225℃以下、又は約200℃以下の温度まで加熱することができる。こうして、溶液は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた範囲の温度まで加熱することができる。例えば、溶液は約50℃~約300℃、例えば約50℃~約275℃、約50℃~約250℃、約50℃~約200℃、約75℃~約300℃、約75℃~約250℃、約75℃~約200℃、約100℃~約300℃、約100℃~約250℃、又は約100℃~約225℃の温度まで加熱することができる。
【0023】
セリア前駆体溶液は典型的には数時間にわたって加熱される。例えば、溶液は約1時間以上、例えば約5時間以上、約10時間以上、約25時間以上、約50時間以上、約75時間以上、約100時間以上、又は約110時間以上にわたって加熱することができる。この代わりに又はこれに加えて、溶液は約200時間以下、例えば約180時間以下、約165時間以下、約150時間以下、約125時間以下、約115時間以下、又は約100時間以下にわたって加熱することができる。こうして、溶液は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた時間にわたって加熱することができる。例えば、溶液は、約1時間~約150時間、例えば約5時間~約130時間、約10時間~約120時間、約15時間~約115時間、又は約25時間~約100時間にわたって加熱することができる。
【0024】
加熱後、セリア前駆体溶液をろ過することにより、沈殿したセリア粒子を分離することができる。沈殿剤を過剰の水で濯ぐことにより、未反応のセリア前駆体を除去することができる。沈殿剤と過剰の水との混合物をろ過し、続いて不純物を除去するためにそれぞれの濯ぎ工程を実施することができる。十分に濯いだら、セリア粒子を付加的なプロセッシング、例えば焼結のために乾燥させることができ、又はセリア粒子を直接に再分散させることもできる。
【0025】
セリア粒子は任意には再分散の前に乾燥させ焼結することができる。「焼結」及び「か焼」という用語は、下記条件下でのセリア粒子の加熱を意味するために、本明細書中では相互に置き換え可能に使用される。セリア粒子の焼結は、結果として生じるこれらの結晶化度に影響を与える。いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、高温で、そして長時間にわたってセリア粒子を焼結すると、粒子の結晶格子構造内の欠陥を低減すると考えられる。任意の適宜の方法を用いて、セリア粒子を焼結することができる。一例としては、セリア粒子を乾燥させ、次いで高温で焼結することができる。乾燥は室温で、又は高温で実施することができる。具体的には、乾燥は、約20℃~約40℃、例えば約25℃、約30℃、又は約35℃の温度で実施することができる。この代わりに又はこれに加えて、乾燥は、約80℃~約150℃、例えば約85℃、約100℃、約115℃、約125℃、又は約140℃の高温で実施することもできる。セリア粒子を乾燥させた後、これらのセリア粒子を粉砕することにより粉末を形成することができる。粉砕は、任意の適宜の粉砕材料、例えばジルコニアを使用して実施することができる。
【0026】
セリア粒子は任意の適宜の炉内で、任意の適宜の温度で焼結することができる。
例えば、セリア粒子は、約200℃以上、例えば約215℃以上、約225℃以上、約250℃以上、約275℃以上、約300℃以上、約350℃以上、又は約375℃ 以上の温度で焼結することができる。この代わりに又はこれに加えて、セリア粒子は、約1000℃以下、例えば約900℃以下、約750℃以下、約650℃以下、約550℃以下、約500℃以下、約450℃以下、又は約400℃以下の温度で焼結することができる。こうして、セリア粒子は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた温度で焼結することができる。例えば、セリア粒子は、約200℃~約1000℃、例えば約250℃~約800℃、約300℃~約700℃、約325℃~約650℃、約350℃~約600℃、約350℃~約550℃、約400℃~約550℃、約450℃~約800℃、約500℃~約1000℃、又は約500℃~約800℃の温度で焼結することができる。
【0027】
セリア粒子は任意の適宜の時間長さにわたって焼結することができる。例えば、セリア粒子は、約1時間以上、例えば約2時間以上、約5時間以上、又は約8時間以上にわたって焼結することができる。この代わりに又はこれに加えて、セリア粒子は約20時間以下、例えば約18時間以下、約15時間以下、約12時間以下、又は約10時間以下にわたって焼結することができる。このように、セリア粒子は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた時間にわたって焼結することができる。例えば、セリア粒子は、約1時間~約20時間、例えば約1時間~約15時間、約1時間~約10時間、約1時間~約5時間、約5時間~約20時間、又は約10時間~約20時間にわたって焼結することができる。
【0028】
セリア粒子はまた種々の温度で、そして上記範囲内の種々の時間長さにわたって焼結することができる。例えば、セリア粒子は、ゾーン炉内で焼結することができる。ゾーン炉は、セリア粒子を種々の時間長さにわたって1つ又は2つ以上の温度に晒す。一例としては、セリア粒子は、約200℃~約1000℃の温度で約1時間以上にわたって焼結することができ、次いで約200℃~約1000℃の範囲内にある異なる温度で、約1時間以上にわたって焼結することができる。
【0029】
セリア粒子は典型的には適宜のキャリア、例えば水性キャリア、具体的には水中に再分散される。セリア粒子が焼結される場合、セリア粒子は焼結完了後に再分散される。任意の適宜のプロセスを用いて、セリア粒子を再分散することができる。典型的には、セリア粒子と水との混合物のpHを、好適な酸を使用して低くすることにより、セリア粒子は再分散される。pHが低められるのにともなって、セリア粒子の表面は正のゼータ電位を発生させる。この正のゼータ電位はセリア粒子間の反発力を形成する。このことはセリア粒子の再分散を容易にする。任意の適宜の酸を使用して、混合物のpHを低くすることができる。好適な酸は、例えば塩酸及び硝酸を含む。高水溶性であり且つ親水性官能基を有する有機酸も好適である。好適な有機酸は例えば酢酸を含む。多価アニオンを有する酸、例えばH3PO4及びH2SO4は一般に好ましくない。混合物のpHは任意の適宜のpHまで低めることができる。例えば混合物のpHは約2~約5、例えば約2.5、約3、約3.5、約4、又は約4.5まで低めることができる。典型的には、混合物のpHは約2未満まで低められることはない。
【0030】
酸分散されたセリア粒子は典型的には、これらの粒径を小さくするためにミリング処理される。好ましくは、セリア粒子は再分散と同時にミリング処理される。ミリングは、好適なミリング材料、例えばジルコニアを使用して実施することができる。ミリング処理は超音波処理又はウェット-ジェット(wet-jet)処理を用いて実施することもできる。ミリング後、セリア粒子はいかなる残留大型粒子をも除去するようにろ過することができる。例えば、セリア粒子は、細孔径が約0.3μm以上、例えば約0.4μm以上、又は約0.5μm以上であるフィルタを使用して、ろ過することができる。
【0031】
セリア研磨剤は任意の適宜の平均粒径(すなわち平均粒子直径)を有することができる。平均セリア研磨剤粒径があまりにも小さい場合には、ポリッシング組成物は十分な除去速度を呈さないことがある。反対に、平均セリア研磨剤粒径があまりにも大きい場合には、ポリッシング組成物は望ましくなポリッシング性能、例えば悪い基板欠陥品率を呈するおそれがある。したがって、セリア研磨粒子は約10nm以上、例えば約15nm以上、約20nm以上、約25nm以上、約30nm以上、約35nm以上、約40nm以上、約45nm以上、又は約50nm以上の平均粒径を有することができる。この代わりに又はこれに加えて、セリア研磨粒子は、約1,000nm以下、例えば約750nm以下、約500nm以下、約250nm以下、約150nm以下、約100nm以下、約75nm以下、又は約50nm以下の平均粒径を有することができる。こうして、セリア研磨粒子は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた平均粒径を有することができる。例えば、セリア研磨粒子は、約10nm~約1,000nm、例えば約10nm~約750nm、約15nm~約500nm、約20nm~約250nm、約20nm~約150nm、約25nm~約150nm、約25nm~約100nm、約50nm~約150nm、又は約50nm~約100nmの平均粒径を有することができる。球状セリア研磨粒子の場合、粒子のサイズはその粒子の直径である。非球状セリア研磨粒子の場合、粒子のサイズは、その粒子を包囲する最小球体の直径である。セリア研磨粒子の粒径は、任意の適宜の技術を用いて、例えばレーザー回折技術を用いて測定することができる。好適な粒径測定機器は、例えばMalvern Instruments (英国Malvern)から入手可能である。
【0032】
いくつかの実施態様では、ポリッシング組成物のセリア研磨粒子は多峰性粒径分布を呈する。本明細書中の「多峰性(multimodal)」という用語は、セリア研磨粒子が、少なくとも2つの最大値(例えば2つ以上の最大値、3つ以上の最大値、4つ以上の最大値、又は5つ以上の最大値)を有する平均粒径分布を呈することを意味する。好ましくは、これらの実施態様では、セリア研磨粒子は二峰性粒径分布を呈し、すなわち、セリア研磨粒子は、2つの平均粒径最大値を有する粒径分布を呈する。「最大値(maximum及びmaxima)」という用語は、粒径分布におけるピークを意味する。ピークは、セリア研磨粒子に関して記載された平均粒径に相応する。このように、例えば、粒径に対する粒子の数のプロットは、二峰性粒径分布を反映することになり、この場合、第1のピークは約75nm~約150nm、例えば約80nm~約140nm、約85nm~約130nm、又は約90nm~約120nmの粒径範囲内にあり、そして第2のピークは約25nm~約70nm、例えば約30nm~約65nm、約35nm~約65nm、又は約40nm~約60nmの粒径範囲内にある。多峰性粒径分布を有するセリア研磨粒子は、それぞれが単峰性粒径分布を有する2種の異なるセリア研磨粒子を組み合わせることにより、得ることができる。
【0033】
セリア研磨粒子は好ましくは、本発明のポリッシング組成物中でコロイド的に安定である。コロイドという用語は、水性キャリア(例えば水)中のセリア研磨粒子の懸濁液を意味する。コロイド安定性は、時間を通してその懸濁を維持することを意味する。本発明の文脈において、研磨剤を100mLの目盛り付きシリンダ内へ入れ、2時間にわたって撹拌せずに静止させておいたときに、目盛り付きシリンダの底部50mL内の粒子の濃度([B](g/mLとして))と、目盛り付きシリンダの上部50mL内の粒子の濃度([T](g/mLとして))との差を、研磨組成物中の粒子の初期濃度で割り算した値が、0.5以下である(すなわち{[B]-[T]}/[C]≦0.5)場合に、研磨剤はコロイド的に安定と考えられる。より好ましくは、[B]-[T]}/[C]の値は0.3以下であり、そして最も好ましくは0.1以下である。
【0034】
ポリッシング組成物は、任意の適量の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含むことができる。本発明のポリッシング組成物があまりにも少量の研磨剤を含む場合、組成物は十分な除去速度を呈さないおそれがある。対照的に、ポリッシング組成物があまりにも多量の研磨剤を含む場合には、ポリッシング組成物は望ましくないポリッシング性能を呈することがあり、且つ/又は、コスト効率がよくないことがあり、且つ/又は安定性を欠くことがある。ポリッシング組成物は、約10wt%以下、例えば約9wt%以下、約8wt%以下、約7wt%以下、約6wt%以下、約5wt%以下、約4wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.9wt%以下、約0.8wt%以下、約0.7wt%以下、約0.6wt%以下、又は約0.5wt.%以下の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含む。この代わりに又はこれに加えて、ポリッシング組成物は約0.001wt%以上、例えば約0.005wt%以上、約0.01wt%以上、約0.05wt%以上、又は約0.1wt%以上の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含む。こうして、研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた量で、ポリッシング組成物中に存在することができる。例えば、ポリッシング組成物は、約0.001wt%~約10wt.%、例えば約0.001wt%~約9wt.%、約0.005wt%~約8wt%、約0.01wt%~約7wt%、約0.05wt%~約6wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.5wt%~約5wt%、約0.5wt%~約4wt%、約1wt%~約3wt%、又は約1.5wt%~約2.5wt%の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含むことができる。1実施態様では、ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約0.1wt%~約1wt%、又は約0.1wt%~約0.5wt%の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含むことができる。別の実施態様では、ポリッシング組成物は濃縮物として、約1~3wt%(例えば約1.2wt%又は約1.6wt%)の研磨剤(例えばセリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせ)を含む。
【0035】
ポリッシング組成物は自己停止剤を含む。自己停止剤は、酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの1種又は2種以上の除去速度を低減し得る任意の適宜の化合物であり得る。いくつかの実施態様では、自己停止剤は式(I):
【化4】
を有し、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールから成る群から選択されている。
【0036】
本明細書中に使用される「アルキル」という用語は、直鎖状又は分枝状、飽和型又は不飽和型の、示された炭素原子数を有する脂肪族ラジカルである。アルキルは任意の数の炭素、例えばC1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6及びC5-6を含むことができる。例えば、C1-6アルキルの一例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。アルキルは、炭素原子数が最大30のアルキル基、例えばヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを意味することもできる。アルキル基は置換型又は無置換型であり得る。「置換型アルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択された1つ又は2つ以上の以上の基と置換することができる。
【0037】
本明細書中に使用される「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書中に記載されたアルキル基であって、1つ又は2つ以上の炭素原子が任意にそして独立してN、O及びSから選択されたヘテロ原子と置換された、アルキル基を意味する。
【0038】
本明細書中に使用された「シクロアルキル」という用語は、飽和型又は部分不飽和型、単環式、融合二環式、又は環原子数3~12又は示された原子数の架橋多環式環集合を意味する。シクロアルキル基は任意の数の炭素、例えばC3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11及びC3-12を含むことができる。飽和型単環式炭素環は例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、及びシクロオクチルを含む。飽和型の二環式及び多環式炭素環は、例えばノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、及びアダマンタンを含む。炭素環基は部分不飽和型であってよく、環内に1つ又は2つ以上の二重又は三重結合を有することができる。部分不飽和型の代表的な炭素環基の一例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが挙げられる。
【0039】
本明細書中に使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書中に記載されたシクロアルキル基であって、1つ又は2つ以上の炭素原子が任意にそして独立してN、O及びSから選択されたヘテロ原子と置換された、シクロアルキル基を意味する。
【0040】
本明細書中に使用される「アリール」という用語は、任意の適宜の環原子数と、任意の適宜の環数とを有する芳香環システムを意味する。アリール基は任意の適宜の環原子数、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16の環原子、並びに6~10、6~12、又は6~14の環員を含むことができる。アリール基は、単環式であることができ、又は融合することにより二環式又は三環式基を形成することができ、又は結合によって連結することによってビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基はフェニル、ナフチル及びビフェニルを含む。他のアリール基はベンジルを含み、メチレン結合基を有する。いくつかのアリール基は6~12環員、例えばフェニル、ナフチル、又はビフェニルを有する。他のアリール基は6~10環員、例えばフェニル又はナフチルを有する。
【0041】
本明細書中に使用される「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中に記載されたアリール基であって、1つ又は2つ以上の炭素原子が任意にそして独立してN、O及びSから選択されたヘテロ原子と置換された、アリール基を意味する。
【0042】
ある特定の実施態様では、自己停止剤は、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸(ベンゾヒドロキサム酸)、サリチルヒドロキサム酸、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0043】
ポリッシング組成物は任意の適量の自己停止剤を含むことができる。ポリッシング組成物は、約10ppm以上、例えば約15ppm以上、約20ppm以上、約25ppm以上、約30ppm以上、約35ppm以上、又は約40ppm以上の自己停止剤を含むことができる。この代わりに又はこれに加えて、ポリッシング組成物は、約5000ppm以下、例えば約3000ppm以下、約1000ppm以下、約800ppm以下、約600ppm以下、約400ppm以下、約200ppm以下、又は約100ppm以下の自己停止剤を含むことができる。こうして、ポリッシング組成物は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた量で自己停止剤を含むことができる。例えば、ポリッシング組成物は、約10ppm~約5000ppm、例えば約10ppm~約3000ppm、約10ppm~約1000ppm、約10ppm~約800ppm、約10ppm~約600ppm、約10ppm~約400ppm、約10ppm~約200ppm、約10ppm~約100ppm、約25ppm~約5000ppm、約25ppm~約3000ppm、約25ppm~約1000ppm、約25ppm~約800ppm、約25ppm~約600ppm、約25ppm~約400ppm、約25ppm~約200ppm、又は約25ppm~約100ppmの自己停止剤を含むことができる。
【0044】
いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、自己停止剤はテトラエトキシシラン(TEOS)ブランケット誘導材料上の所与のダウンフォース(down force (DF))に対する非線形応答を促進すると考えられる。研磨中、パターン誘電材料は、ブランケット誘電材料のそれよりも高い有効ダウンフォース(DF)を被る。なぜならば、接触は、パッドと接触するいくつかのパターン誘電材料部分上にのみ広がるからである。TEOSパターン誘電材料により高い有効DFが加えられることにより、TEOS除去速度が約8,000Å/minの「高」除去速度(例えばパターン除去速度)ポリッシング・レジームがもたらされる。より低い有効DFは、TEOS除去速度が約1,000Å/min以下の「停止」ポリッシング・レジーム(例えばブランケット除去速度)をもたらす。「高」レジームと「停止」レジームとの差は典型的には明確であり、所与のDFに関して「高」除去速度又は「停止」除去速度が観察されるようになっている。したがって、加えられたDFがブランケットウエハーで判定して「停止」レジームにあるときにも、自己停止剤が「高」除去速度(すなわちパターン除去速度)を望ましい形で可能にすると考えられる。
【0045】
さらに注目すべきなのは、このメカニズムはDFだけに依存するのではないことである。それというのもパターン誘電材料上のトレンチ酸化物除去速度は、ブランケットウエハー上よりもトレンチ内の有効DFが低いにもかかわらず、ブランケット除去速度よりも高いからである。例えば、いくつかのポリッシング用途において、自己停止剤の濃度は、観察される効果に関与する。それというのも、低濃度では、自己停止剤は速度向上剤として作用することができ(例えば「高」除去速度が観察される)、そしてより高い濃度では、自己停止剤挙動が観察される(例えば「停止」除去速度が観察される)。したがって、いくつかの速度向上剤は二重の作用を有することができる。例えば、ポリッシング組成物がピコリン酸をより低い濃度で含むと、ピコリン酸は速度向上剤として機能することができる。しかしながら、ポリッシング組成物がピコリン酸をより高い濃度で含むと、ピコリン酸は自己停止剤として機能することができる。典型的には、ピコリン酸は、重量を基準として約1000ppm未満(例えば約500ppm、約250ppmなど)の濃度で速度向上剤として機能する。
【0046】
化学機械ポリッシング組成物はカチオン性モノマー化合物を含む。カチオン性モノマー化合物は、(例えばラジカル重合、付加重合、メタセシス重合、又はこれに類するものを通した)重合を施すことができる、当業者によって認識される任意の適宜のカチオン性(例えばアンモニウム)化合物であり得る。例えば、カチオン性モノマー化合物は、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(「DMAEA」)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(「DMAEM」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド(「DMAPMA」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド(「DMAPA」)、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「MAPTAC」)、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「APTAC」)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド(「DMAEA.BCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド(「DMAEM.BCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせであってよい。ある特定の実施態様では、カチオン性モノマー化合物は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましい実施態様では、カチオン性モノマー化合物は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)又はその塩である。
【0047】
ポリッシング組成物は任意の適量のカチオン性モノマー化合物を含むことができる。ポリッシング組成物は約10ppm以上、例えば約15ppm以上、約20ppm以上、約25ppm以上、約30ppm以上、約35ppm以上、又は約40ppm以上のカチオン性モノマー化合物を含むことができる。この代わりに又はこれに加えて、ポリッシング組成物は、約1000ppm以下、例えば約800ppm以下、約600ppm以下、約400ppm以下、約200ppm以下、又は約100ppm以下のカチオン性モノマー化合物を含むことができる。こうして、ポリッシング組成物は、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた範囲でカチオン性モノマー化合物を含むことができる。例えば、ポリッシング組成物は、約10ppm~約1000ppm、例えば約10ppm~約800ppm、約10ppm~約600ppm、約10ppm~約400ppm、約10ppm~約200ppm、約10ppm~約100ppm、約25ppm~約1000ppm、約25ppm~約800ppm、約25ppm~約600ppm、約25ppm~約400ppm、約25ppm~約200ppm、又は約25ppm~約100ppmのカチオン性モノマー化合物を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、ポリッシング組成物は非イオン性ポリマーをさらに含む。こうして、いくつかの態様では、本発明は、化学機械ポリッシング組成物であって、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化5】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物と、(e)水とを含み、これらから本質的に成り、又はこれらから成り、前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を提供する。
【0049】
非イオン性ポリマーは、カチオン又はアニオン電荷を有しない、pHが約5.5~約8の任意の適宜のポリマーであり得る。いくつかの実施態様では、非イオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルアミン、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、疎水性変性ポリアクリレートコポリマー、親水性非イオン性ポリマー、多糖類、及びこれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施態様では、非イオン性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレンオキシド(PPO))、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、又はこれらの組み合わせである。好ましい実施態様では、非イオン性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0050】
非イオン性ポリマーは、任意の適宜の重量平均分子量を有することができる。非イオン性ポリマーの重量平均分子量は、約400g/mol以上、例えば約500g/mol以上、約600g/mol以上、約750g/mol以上、約1,000g/mol以上、約1,500g/mol以上、約2,000g/mol以上、約2,500g/mol以上、約3,000g/mol以上、約3,500g/mol以上、約4,000g/mol以上、約4,500g/mol以上、約5,000g/mol以上、約5,500g/mol以上、約6,000g/mol以上、約6,500g/mol以上、約7,000g/mol以上、又は約7,500g/mol以上であり得る。この代わりに又はこれに加えて、非イオン性ポリマーの重量平均分子量は、約20,000g/mol以下、例えば約10,000g/mol以下、約9,000g/mol以下、約8,000g/mol以下、約7.500g/mol以下、約7,000g/mol以下、約6,500g/mol以下、約6,000g/mol以下、約5,500g/mol以下、約5.000g/mol以下、約4,500g/mol以下、約4.000g/mol以下、約3,500g/mol以下、約3,000g/mol以下、約2,500g/mol以下、又は約2,000g/mol以下であり得る。こうして、非イオン性ポリマーは、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた重量平均分子量を有することができる。例えば、非イオン性ポリマーの重量平均分子量は、約400g/mol~約20,000g/mol、例えば約400g/mol~約10,000g/mol、約400g/mol~約9,000g/mol、約400g/mol~約8,000g/mol、約400g/mol~約7,000g/mol、約400g/mol~約6,000g/mol、約400g/mol~約5,000g/mol、約1000g/mol~約20,000g/mol、約1000g/mol~約10,000g/mol、約1000g/mol~約9,000g/mol、約1000g/mol~約8,000g/mol、約1000g/mol~約7,000g/mol、約1000g/mol~約6,000g/mol、又は約1000g/mol~約5,000g/molであり得る。
【0051】
ポリッシング組成物は、存在するならば、任意の適量の非イオン性ポリマーを含むことができる。ポリッシング組成物は約25ppm以上、例えば約50ppm以上、約100ppm以上、又は約200ppm以上の非イオン性ポリマーを含むことができる。この代わりに又はこれに加えて、ポリッシング組成物は約5000ppm以下、例えば約4000ppm以下、約3000ppm以下、約2000ppm以下、又は約1000ppm以下の非イオン性ポリマーを含むことができる。こうして、ポリッシング組成物は非イオン性ポリマーを、上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた量で含むことができる。例えば、ポリッシング組成物は、約25ppm~約5000ppm、例えば約25ppm~約400ppm、約25ppm~約3000ppm、約25ppm~約2000ppm、約25ppm~約1000ppm、約50ppm~約5000ppm、約50ppm~約4000ppm、約50ppm~約3000ppm、約50ppm~約2000ppm、約50ppm~約1000ppm、約100ppm~約5000ppm、又は約100ppm~約1000ppmの非イオン性ポリマーを含むことができる。
【0052】
ポリッシング組成物は水性キャリアを含む。水性キャリアは水(例えば脱イオン水)を含み、そして1種又は2種以上の水混和性有機溶媒を含有してよい。使用され得る有機溶媒の例は、アルコール、例えばプロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノール、及びこれに類するもの、アルデヒド、例えばアセチルアルデヒド、及びこれに類するもの、ケトン、例えばアセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、及びこれに類するもの、エステル、例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチル、及びこれに類するもの、スルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリム、及びこれに類するものを含むエーテル、アミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、及びこれに類するもの、多価アルコール、及び多価アルコールの誘導体、例えばエチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びこれに類するもの、及び窒素含有有機化合物、例えばアセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミン、及びこれに類するものを含む。好ましくは、水性キャリアは水単独、すなわち有機溶媒の存在がない水である。
【0053】
化学機械ポリッシング組成物は、ポリッシング組成物のpHを調整し得る(すなわち調整する)1種又は2種以上の化合物(すなわちpH調整化合物)を含むことができる。ポリッシング組成物のpHは、ポリッシング組成物のpHを調整し得る任意の適宜の化合物を使用して調整することができる。pH調整化合物は水溶性であり、ポリッシング組成物の他の成分と適合性を有することが望ましい。典型的には、化学機械ポリッシング組成物のpHは、ユースポイントにおいて約5.5~約8(例えば約5.5~約7.5、約5.5~約7、約5.5~約6.5、約5.5~約6、約6~約8、約6~約7.5、約6~約7、約6~約6.5、約7~約8、又は約7~約7.5のpH)である。ある特定の実施態様では、化学機械ポリッシング組成物のpHはユースポイントにおいて約5.5~約7である。好ましくは、化学機械ポリッシング組成物のpHはユースポイントにおいて約6~約6.5である。
【0054】
pHを調整し緩衝し得る化合物は、アルキルアミン、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、カルボン酸、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、ホウ酸塩、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0055】
化学機械ポリッシング組成物は任意には1種又は2種以上の添加剤をさらに含む。一例としての添加剤は、コンディショナー、酸(例えばスルホン酸)、錯化剤、キレート剤、殺生物剤、スケール抑制剤、及び分散剤を含む。
【0056】
殺生物剤は、存在するならば任意の適宜の殺生物剤であってよく、ポリッシング組成物中に任意の適量で存在することができる。好適な殺生物剤はイソチアゾリノン殺生物剤である。殺生物剤は約1~約750ppm、好ましくは約20~約200ppmの濃度で、ポリッシング組成物中に存在することができる。
【0057】
ポリッシング組成物は、多くが当業者に知られている任意の適宜の技術によって製造することができる。ポリッシング組成物は、バッチプロセス又は連続プロセスで調製することができる。大まかに言えば、ポリッシング組成物はポリッシング組成物の成分を合体させることにより調製される。本明細書中に使用される「成分」という用語は個々の構成要素(例えば研磨剤、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤)、並びに構成要素(例えば研磨剤、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤など)の任意の組み合わせを含む。
【0058】
例えば、ポリッシング組成物は、(i)液体キャリアのすべて又は一部を用意し、(ii)当該分散体を調製するのに適した任意の手段を使用して、研磨剤、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤を分散し、(iii)必要に応じて分散体のpHを調整し、そして(iv)適量の他の任意の成分及び/又は添加剤を混合物に任意に添加することによって、調製することができる。
【0059】
この代わりに又はこれに加えて、ポリッシング組成物は、(i)研磨剤スラリー中の1種又は2種以上の成分(例えば自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤)を用意し、(ii)添加剤溶液中の1種又は2種以上の成分(例えば自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤)を用意し、(iii)研磨剤スラリーと添加剤溶液とを合体することにより、混合物を形成し、(iv)任意には、適量の他の任意の添加剤を混合物に添加し、そして(v)混合物のpHを必要に応じて調整することにより、調製することもできる。
【0060】
ポリッシング組成物は、研磨剤、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、他の任意の添加剤、及び水を含む1パッケージシステムとして供給することができる。あるいは、本発明のポリッシング組成物は、第1パッケージ内の研磨剤スラリーと、第2パッケージ内の添加剤溶液とを含む2パッケージシステムとして供給することもできる。研磨剤スラリーは、研磨粒子と水とから本質的に成り、又はこれらから成り、そして添加剤溶液は自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤から本質的に成り、又はこれらから成る。2パッケージシステムは、2つのパッケージ、すなわち研磨剤スラリーと添加剤溶液とのブレンド比を変えることによる、ポリッシング組成物特性の調整を可能にする。
【0061】
種々の方法を採用して、このような2パッケージポリッシングシステムを利用することができる。例えば、供給配管の出口に接合され接続された種々異なる管によって、研磨剤スラリー及び添加剤溶液をポリッシング・テーブルへ送達することができる。研磨剤スラリーと添加剤溶液とをポリッシングのすぐ前又はポリッシングの直前に混合することができ、又はポリッシング・テーブル上に同時に供給することもできる。さらに、2つのパッケージを混合するときに、所望の場合には脱イオン水を添加することにより、ポリッシング組成物及び結果としてもたらされる基板ポリッシング特性を調整することができる。
【0062】
同様に、3、4、又は5以上のパッケージから成るシステムを本発明と関連して利用することができる。複数の容器のそれぞれは、本発明の化学機械ポリッシング組成物の異なる成分、1種又は2種以上の任意の成分、及び/又は異なる濃度の同じ成分のうちの1種又は2種以上を含有する。
【0063】
ユースポイントにおいて、又はユースポイントの近くでポリッシング組成物を製造する目的で2つ又は3つの貯蔵装置内に含有された成分を混合するために、貯蔵装置は典型的には、各貯蔵装置からポリッシング組成物のユースポイント(例えばプラテン、ポリッシングパッド、又は基板表面)へ延びる1つ又は2つ以上のフローラインを備えている。本明細書中に利用される「ユースポイント」という用語は、ポリッシング組成物が基板表面に被着される地点(例えば、ポリッシングパッド又は基板表面自体)を意味する。「フローライン(flow line)」は、個々の貯蔵容器から、貯蔵容器内に貯蔵された成分のユースポイントへの流路を意味する。フローラインはそれぞれユースポイントへ直接に延びることができ、あるいは、フローラインのうちの2つ又は3つ以上を任意の地点で組み合わせることにより、ユースポイントへ通じる単一のフローラインにすることもできる。さらに、フローライン(例えば個々のフローライン又は組み合わされたフローライン)のいずれも、成分のユースポイントに達する前に、先ず1つ又は2つ以上の他の装置(例えばポンプ装置、測定装置、混合装置など)に延びることができる。
【0064】
ポリッシング組成物の成分はユースポイントへ独立して送達することができ(例えば成分は基板表面へ送達され、そして成分がポリッシングプロセス中に混合される)、あるいは例えばユースポイントへの送達のすぐ前又は直前に、成分のうちの1種又は2種以上を合体させることもできる。成分が、プラテン上へ混合形態で添加される約5分前以降、例えばプラテン上へ混合形態で添加される約4分前以降、約3分前以降、約2分前以降、約1分前以降、約45秒前以降、約30秒前以降、約10秒前以降に、又はユースポイントにおける成分の送達と同時に合体される(成分はディスペンサーで合体される)場合に、成分は「ユースポイントへの送達の直前に」合体される。成分がユースポイントから5m以内、例えばユースポイントから1m以内、又はユースポイントから10cm以内(例えば、ユースポイントから1cm以内)で合体される場合にも、成分は「ユースポイントへの送達の直前に」合体される。
【0065】
ポリッシング組成物の成分のうちの2種又は3種以上がユースポイントへの到達前に合体されるときには、成分をフローライン内で合体し、混合装置を使用せずにユースポイントへ送達することができる。あるいは、フローラインのうちの1つ又は2つ以上は、成分のうちの2種又は3種位上の合体を容易にするために、混合装置内へ延びることもできる。任意の適宜の混合装置を使用することができる。例えば、混合装置は、成分のうちの2種又は3種以上が貫流するノズル又はジェット(例えば高圧ノズル又はジェット)であり得る。あるいは、混合装置は、ポリッシングスラリーの2種又は3種の成分がミキサーへ導入される1つ又は2つ以上の入口と、混合済み成分が直接に又は装置の他のエレメントを介して(例えば1つ又は2つ以上のフローラインを介して)ユースポイントへ送達されるべくミキサーを出る際に通る少なくとも1つの出口とを含む容器タイプの混合装置であり得る。さらに、混合装置は2つ以上のチャンバを含むことができ、各チャンバは少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを有しており、2種又は3種以上の成分が各チャンバ内で合体される。容器タイプの混合装置が使用される場合、混合装置は好ましくは、成分の合体をさらに容易にするための混合メカニズムを含む。混合メカニズムは当該技術分野において概ね知られており、スターラー、ブレンダー、撹拌機、パドル状バッフル、ガススパージャーシステム、振動機などを含む。
【0066】
ポリッシング組成物は濃縮物として提供することもできる。濃縮物は、使用前に適量の水で希釈されるように意図される。このような実施態様では、ポリッシング組成物濃縮物は、適量の水で濃縮物を希釈すると、ポリッシング組成物の各成分が、各成分に関して上述した適宜の範囲内の量でポリッシング組成物中に存在することになるような量で、ポリッシング組成物の成分を含む。例えば、研磨剤、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤はそれぞれ、各成分に関して上述した濃度よりも約2倍(例えば約3倍、約4倍、又は約5倍)高い量で濃縮物中に存在し得るので、濃縮物を等体積の水(例えばそれぞれ2等体積の水、3等体積の水、又は4等体積の水)で希釈すると、各成分は、各成分に関して上述した範囲内の量でポリッシング組成物中に存在することになる。さらに、当業者には理解されるように、濃縮物は、最終ポリッシング組成物中に存在する水の適宜の部分を含有することにより、研磨粒子、自己停止剤、カチオン性モノマー化合物、任意の非イオン性ポリマー、及び/又は他の任意の添加剤が、濃縮物中に少なくとも部分的に又は完全に溶解されることを保証し得る。
【0067】
本発明は、基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、(i)基板を用意し、(ii)ポリッシングパッドを用意し、(iii)(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化6】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)任意には非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物と、(e)水とを含み、当該ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を用意し、(iv)基板をポリッシングパッド及び化学機械ポリッシング組成物と接触させ、そして(v)前記基板に対して前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物を動かすことによって前記基板の少なくとも一部を研磨し、これにより前記基板をポリッシングすることを含む、基板を化学機械的にポリッシングする方法をさらに提供する。
【0068】
化学機械ポリッシング組成物は、任意の適宜の基板をポリッシングするために使用することができ、そして低誘電材料から成る少なくとも1つの層(典型的には表面層)を含む基板をポリッシングするために特に有用である。好適な基板は、半導体業界において使用されるウエハーを含む。ウエハーは典型的には、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属複合体、金属合金、又はこれらの組み合わせを含むか、又はこれから成る。本発明の方法は、酸化ケイ素及び/又はポリシリコン、例えば上述の材料のいずれか1種又はすべてを含む基板をポリッシングするのに特に有用である。いくつかの実施態様では、基板は、基板の表面上に酸化ケイ素及びポリシリコンを含み、そして基板の表面上の酸化ケイ素及びポリシリコンの少なくとも一部を研磨することにより、基板をポリッシングする。
【0069】
ある特定の実施態様では、基板は酸化ケイ素とポリシリコンとを含む。ポリシリコンは任意の適宜のポリシリコンであり得る。これらのポリシリコンの多くが当該技術分野において知られている。ポリシリコンは任意の適宜の相を有することができ、非晶質、結晶性、又はこれらの組み合わせであり得る。酸化ケイ素も同様に、任意の適宜の酸化ケイ素であり得る。これらの酸化ケイ素の多くが当該技術分野において知られている。酸化ケイ素の好適なタイプの一例としては、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、及び/又はプラズマ支援型オルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)、及び/又はオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、熱酸化物、及び非ドープ型ケイ酸ガラスが挙げられる。
【0070】
本発明の化学機械ポリッシング組成物を適合させる(tailor)ことによって、特定の薄層材料に対して選択的な所期ポリッシング範囲で効果的なポリッシングを可能にするとともに、表面の不完全性、欠陥、コロージョン、エロージョン、及びストップ層の除去を最小限に抑える。ポリッシング組成物の成分の相対濃度を変更することによって、選択比を制御することができる。本明細書中に使用される「選択比(selectivity)」という用語は、2つの異なる目標材料の除去速度比を意味する。例えば、選択比は2種の異なる材料の除去速度比、又は2種の異なるトポグラフィの除去速度比(例えばブランケット除去対アクティブ除去)を意味することができる。
【0071】
望ましい場合には、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、少なくとも8,000Å/min、例えば少なくとも9,000Å/min、少なくとも10,000Å/min、少なくとも11,000Å/min、又は少なくとも12,000Å/minのアクティブ酸化ケイ素除去速度を提供することができる。この代わりに又はこれに加えて、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、少なくとも20:1、例えば少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、又は少なくとも40:1のアクティブ酸化ケイ素除去速度とブランケット酸化ケイ素除去速度との選択比を提供することができる。ある特定の実施態様では、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、少なくとも11,000Å/minのアクティブ酸化ケイ素除去速度、及び少なくとも25:1のアクティブ酸化ケイ素除去速度とブランケット酸化ケイ素除去速度との選択比を提供する。好ましい実施態様では、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、少なくとも12,000Å/minのアクティブ酸化ケイ素除去速度、及び少なくとも30:1のアクティブ酸化ケイ素除去速度とブランケット酸化ケイ素除去速度との選択比を提供する。
【0072】
同様に、ある特定の態様では、本発明は、基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、(i)基板を用意し、(ii)ポリッシングパッドを用意し、(iii)(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、(b)式(I):
【化7】
の化合物から選択された自己停止剤であって、Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、(c)非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物と、(e)水とを含み、当該ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、化学機械ポリッシング組成物を用意し、(iv)前記基板を前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物と接触させ、そして(v)前記基板に対して前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物を動かすことによって前記基板の少なくとも一部を研磨し、これにより前記基板をポリッシングすることを含み、上記から本質的に成り、又は上記から成る、基板を化学機械的にポリッシングする方法をさらに提供する。
【0073】
望ましい場合には、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、ポリシリコンに対して高められた速度で酸化ケイ素を選択的に除去するために、酸化ケイ素とポリシリコンとを含む基板の選択的な化学機械ポリッシングを可能にする。これに関して、この方法は、1分当たり除去されるオングストロームによって判定して、約20:1を上回る選択比で、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去することができる。いくつかの実施態様では、この方法は、1分当たり除去されるオングストロームによって判定して、約40:1を上回る選択比で、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去することができる。いくつかの実施態様では、この方法は、1分当たり除去されるオングストロームによって判定して、約80:1を上回る選択比で、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去することができる。
【0074】
いかなる具体的な理論にも縛られたくはないが、非イオン性ポリマーを添加すると、ポリシリコンの除去速度を選択的に低減し得るので、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去する選択比が高められると考えられる。換言すれば、非イオン性ポリマーはポリシリコンの除去速度を低下することができるのに対して、酸化ケイ素の除去速度に対してはほとんど乃至は全く影響を及ぼさない。
【0075】
大まかに言えば、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、ポリッシング中の研磨剤粒径の増大によって証明されるように、ポリッシング法に晒されているときには安定である。例えば、いくつかの実施態様では、ポリッシング後の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)は、ポリッシング前の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)に対する増大が100%未満である。ある特定の実施態様では、ポリッシング後の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)は、ポリッシング前の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)に対する増大が50%未満である。好ましい実施態様では、ポリッシング後の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)は、ポリッシング前の平均研磨剤粒径(すなわち平均粒子直径)に対する増大が20%未満である。
【0076】
いかなる具体的な理論にも縛られたくはないが、カチオン性ポリマーの代わりにカチオン性モノマー化合物を使用し、且つ/又はより低いpH(例えば約6~約6.5)を用いる結果、より安定なポリッシング組成物をもたらし得ると考えられる。本明細書中に提供される実施例4によって証明されるように、カチオン性ポリマー及びユースポイントにおいてpH7.8を含有するポリッシング組成物は結果として、ポリッシング前からポリッシング後まで、400%を上回る粒径増大をもたらし得る。
【0077】
本発明のポリッシング組成物は望ましくは、適宜の技術によって判定して、基板をポリッシングするときに呈する粒子欠陥が低い。好ましい実施態様では、本発明の化学機械ポリッシング組成物は、低い欠陥品率に関与する湿式プロセスセリアを含む。本発明のポリッシング組成物でポリッシングされた基板上の粒子欠陥は、任意の適宜の技術によって判定することができる。例えば、レーザー光散乱技術、例えば暗視野垂直ビーム複合体(DCN)及び暗視野斜めビーム複合体(DCO)を用いて、ポリッシングされた基板上の粒子欠陥を判定することができる。粒子欠陥を評価するのに適した機器は、例えばKLA-Tencorから入手可能である(例えば120nm閾値又は160nm閾値で動作するSURFSCAN(登録商標)SPI機器)である。
【0078】
本発明のポリッシング組成物でポリッシングされた基板、特に酸化ケイ素及び/又はポリシリコンを含むシリコンは望ましくは、約20,000カウント以下、例えば約17,500カウント以下、約15,000カウント以下、約12,500カウント以下、約3,500カウント以下、約3.000カウント以下、約2,500カウント以下、約2,000カウント以下、約1.500カウント以下、又は約1,000カウント以下のDCN値を有する。好ましくは、本発明の実施態様にしたがってポリッシングされた基板のDCN値は、約750カウント以下、例えば約500カウント以下、約250カウント以下、約125カウント以下、又は約100カウント以下である。この代わりに又はこれに加えて、本発明の化学機械ポリッシング組成物でポリシングされた基板は望ましくは、適宜の技術によって判定して低いスクラッチを呈する。例えば、本発明の実施態様にしたがってポリッシングされたシリコンウエハーは望ましくは、当該技術分野において知られた任意の適宜の方法によって判定して、約250スクラッチ以下、又は約125スクラッチ以下を有する。
【0079】
本発明の化学機械ポリッシング組成物及び方法は、化学機械ポリッシング装置と併せて使用するのに特に適している。典型的には、装置はプラテンであって、使用中には運動しており軌道運動、直線運動、又は円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触するポリッシングパッドであって、運動中にはプラテンと一緒に動くポリッシングパッドと、キャリアであって、ポリッシングパッドの表面に対して基板を接触させ運動させることによって、ポリッシングされるべき基板を保持するキャリアとを含む。基板のポリッシングは、基板をポリッシングパッド及び本発明のポリッシング組成物と接触させ、次いで基板に対してポリッシングパッドを動かすことにより、基板の少なくとも一部を研磨し、これにより基板をポリッシングすることにより行われる。
【0080】
任意の適宜のポリッシングパッド(例えばポリッシング表面)を使用して、化学機械ポリッシング組成物で基板をポリッシングすることができる。好適なポリッシングパッドは例えば、織布及び不織布のポリッシングパッドを含む。さらに、好適なポリッシングパッドは、様々な密度、硬さ、厚さ、圧縮率、圧縮時の反発能力、及び圧縮係数を有する任意の適宜のポリマーを含むことができる。好適なポリマーは例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらの共形成生成物(co-formed products)、及びこれらの混合物を含む。軟質ポリウレタンポリッシングパッドが、本発明のポリッシング法との関連において特に有用である。典型的なパッドの一例としては、SURFIN(登録商標)000, SURFIN(登録商標)SSW1, SPM3100(Eminess Technologies)、Dow Chemical Company (デラウェア州Newark)から商業的に入手可能なPOLITEX(登録商標)、及びFujibo(日本国大阪)から商業的に入手可能なPOLYPAS(登録商標)27、並びにCabot Microelectronics(イリノイ州Aurora)から商業的に入手可能なEPIC(登録商標)D100パッド、又はNEXPLANAR(登録商標)E6088が挙げられる。好ましいポリッシングパッドは、Dow Chemicalから商業的に入手可能な剛性の微多孔性ポリウレタンパッド(IC1010(登録商標))である。
【0081】
望ましくは、化学機械ポリッシング装置は、現場ポリッシング・エンドポイント検出システムをさらに含む。システムの多くが当該技術分野において知られている。基板の表面から反射された光又は他の放射線を分析することによって、ポリッシングプロセスを検査しモニタリングする技術が当該技術分野において知られている。このような方法は例えば、米国特許第5,196,353号明細書、米国特許第5,433,651号明細書、米国特許第5,609,511号明細書、米国特許第5,643,046号明細書、米国特許第5,658,183号明細書、米国特許第5,730,642号明細書、米国特許第5,838,447号明細書、米国特許第5,872,633号明細書、米国特許第5,893,796号明細書、米国特許第5,949,927号明細書、及び米国特許第5,964,643号明細書に記載されている。望ましくは、ポリッシングされる基板に関するポリッシングプロセスの進捗状況を検査又はモニタリングすることによって、ポリッシングのエンドポイントの判定、すなわち特定の基板に対するポリッシングプロセスをいつ終了させるべきかの判定が可能になる。
【0082】
実施態様
(1) 実施態様(1)では、化学機械ポリッシング組成物であって、
(a) セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、
(b) 式(I):
【化8】
の化合物から選択された自己停止剤であって、
Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、
(c) カチオン性モノマー化合物と、
(d) 水と
を含み、
前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、
化学機械ポリッシング組成物が提示される。
【0083】
(2) 実施態様(2)では、前記ポリッシング組成物が、約0.001wt%~約10wt%の研磨剤を含む、実施態様(1)のポリッシング組成物が提示される。
【0084】
(3) 実施態様(3)では、前記ポリッシング組成物が、約0.05wt%~約5wt%の研磨剤を含む、実施態様(1)又は実施態様(2)のポリッシング組成物が提示される。
【0085】
(4) 実施態様(4)では、前記研磨剤がセリア研磨剤である、実施態様(1)~(3)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0086】
(5) 実施態様(5)では、前記研磨剤がジルコニア研磨剤である、実施態様(1)~(3)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0087】
(6) 実施態様(6)では、前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約7である、実施態様(1)~(5)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0088】
(7) 実施態様(7)では、前記ポリッシング組成物のpHが約6~約6.5である、実施態様(1)~(6)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0089】
(8) 実施態様(8)では、前記自己停止剤が、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(1)~(7)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0090】
(9) 実施態様(9)では、前記自己停止剤がヒドロキサム酸である、実施態様(1)~(8)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0091】
(10) 実施態様(10)では、前記自己停止剤がベンズヒドロキサム酸である、実施態様(1)~(8)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0092】
(11) 実施態様(11)では、前記自己停止剤がサリチルヒドロキサム酸である、実施態様(1)~(8)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0093】
(12) 実施態様(12)では、前記化学機械ポリッシング組成物が非イオン性ポリマーをさらに含む、実施態様(1)~(11)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0094】
(13) 実施態様(13)では、前記非イオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルアミン、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、疎水性変性ポリアクリレートコポリマー、親水性非イオン性ポリマー、多糖類、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(12)のポリッシング組成物が提示される。
【0095】
(14) 実施態様(14)では、前記非イオン性ポリマーがポリビニルピロリドンである、実施態様(12)又は実施態様(13)のポリッシング組成物が提示される。
【0096】
(15) 実施態様(15)では、前記非イオン性ポリマーがポリアルキレングリコールである、実施態様(12)又は実施態様(13)のポリッシング組成物が提示される。
【0097】
(16) 実施態様(16)では、前記非イオン性ポリマーが、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマーである、実施態様(12)又は実施態様(13)のポリッシング組成物が提示される。
【0098】
(17) 実施態様(17)では、前記カチオン性モノマー化合物が、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(「DMAEA」)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(「DMAEM」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド(「DMAPMA」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド(「DMAPA」)、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「MAPTAC」)、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「APTAC」)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド(「DMAEA.BCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド(「DMAEM.BCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(1)~(16)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0099】
(18) 実施態様(18)では、前記カチオン性モノマー化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)又はその塩である、実施態様(1)~(17)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0100】
(19) 実施態様(19)では、基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、
(i) 基板を用意し、
(ii) ポリッシングパッドを用意し、
(iii) (a) セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、及びこれらの組み合わせから選択された研磨剤と、
(b) 式(I):
【化9】
の化合物から選択された自己停止剤であって、
Rが、それぞれが置換型又は無置換型であってよい、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環アルキル、及び複素環アリールから成る群から選択されている、自己停止剤と、
(c) カチオン性モノマー化合物と、
(d) 水と
を含み、
当該ポリッシング組成物のpHが約5.5~約8である、
化学機械ポリッシング組成物を用意し、
(iv) 前記基板を前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物と接触させ、そして
(v) 前記基板に対して前記ポリッシングパッド及び前記化学機械ポリッシング組成物を動かすことによって前記基板の少なくとも一部を研磨し、これにより前記基板をポリッシングする
ことを含む、基板を化学機械的にポリッシングする方法が提示される。
【0101】
(20) 実施態様(20)では、前記ポリッシング組成物が、約0.001wt%~約10wt%の研磨剤を含む、実施態様(19)のポリッシング組成物が提示される。
【0102】
(21) 実施態様(21)では、前記ポリッシング組成物が、約0.05wt%~約5wt%の研磨剤を含む、実施態様(19)又は実施態様(20)のポリッシング組成物が提示される。
【0103】
(22) 実施態様(22)では、前記研磨剤がセリア研磨剤である、実施態様(19)~(21)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0104】
(23) 実施態様(23)では、前記研磨剤がジルコニア研磨剤である、実施態様(19)~(21)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0105】
(24) 実施態様(24)では、前記ポリッシング組成物のpHが約5.5~約7である、実施態様(19)~(23)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0106】
(25) 実施態様(25)では、前記ポリッシング組成物のpHが約6~約6.5である、実施態様(19)~(24)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0107】
(26) 実施態様(26)では、前記自己停止剤が、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(19)~(25)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0108】
(27) 実施態様(27)では、前記自己停止剤がヒドロキサム酸である、実施態様(19)~(26)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0109】
(28) 実施態様(28)では、前記自己停止剤がベンズヒドロキサム酸である、実施態様(19)~(26)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0110】
(29) 実施態様(29)では、前記自己停止剤がサリチルヒドロキサム酸である、実施態様(19)~(26)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0111】
(30) 実施態様(30)では、前記化学機械ポリッシング組成物が非イオン性ポリマーをさらに含む、実施態様(19)~(29)のいずれか1つのポリッシング組成物が提示される。
【0112】
(31) 実施態様(31)では、前記非イオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルアミン、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、疎水性変性ポリアクリレートコポリマー、親水性非イオン性ポリマー、多糖類、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(30)の方法が提示される。
【0113】
(32) 実施態様(32)では、前記非イオン性ポリマーがポリビニルピロリドンである、実施態様(30)又は実施態様(31)の方法が提示される。
【0114】
(33) 実施態様(33)では、前記非イオン性ポリマーがポリアルキレングリコールである、実施態様(30)又は実施態様(31)の方法が提示される。
【0115】
(34) 実施態様(34)では、前記非イオン性ポリマーが、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマーである、実施態様(30)又は実施態様(31)の方法が提示される。
【0116】
(35) 実施態様(35)では、前記カチオン性モノマー化合物が、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(「DMAEA」)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(「DMAEM」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド(「DMAPMA」)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド(「DMAPA」)、3-メタクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「MAPTAC」)、3-アクリルアミドプロピル-トリメチル-アンモニウムクロリド(「APTAC」)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、2-(アクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEA.MCQ」)、2-(メタクリロイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(「DMAEM.MCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド(「DMAEA.BCQ」)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド(「DMAEM.BCQ」)、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様(19)~(34)のいずれか1つの方法が提示される。
【0117】
(36) 実施態様(36)では、前記カチオン性モノマー化合物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)又はその塩である、実施態様(19)~(35)のいずれか1つの方法が提示される。
【0118】
(37) 実施態様(37)では、前記基板が酸化ケイ素を含み、そして前記酸化ケイ素の少なくとも一部を研磨することにより、基板をポリッシングする、実施態様(19)~(36)のいずれか1つの方法が提示される。
【0119】
(38) 実施態様(38)では、前記基板がポリシリコンを含み、そして前記ポリシリコンの少なくとも一部を研磨することにより、基板をポリッシングする、実施態様(37)の方法が提示される。
【0120】
(39) 実施態様(39)では、基板をポリッシングすることにより、1分当たり除去されるオングストロームによって判定して、約20:1を上回る選択比で、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去する、実施態様(38)の方法が提示される。
【0121】
(40) 実施態様(40)では、基板をポリッシングすることにより、1分当たり除去されるオングストロームによって判定して、約40:1を上回る選択比で、ポリシリコンに対して酸化ケイ素を除去する、実施態様(39)の方法が提示される。
【0122】
実施例
これらの下記実施例は本発明をさらに説明するが、しかしこれらはもちろん、本発明の範囲を何らかの形で限定するものと解釈されるべきではない。
【0123】
下記略語、すなわち、除去速度(RR)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びポリシリコン(polySi)、ポリエチレングリコール(PEG)、ユースポイント(POU)、及び重量平均分子量(MW)が実施例全体を通して使用される。
【0124】
下記実施例において、基板TEOS(すなわち酸化ケイ素)及び/又はpolySiをパターン化ウエハー上に塗布し、そしてMIRRA(登録商標)(Applied Materials, Inc.)ポリッシング工具、AP-300(登録商標)(CTS Co., Ltd)ポリッシング工具、又はREFLEXION(登録商標)(Applied Materials, Inc.)ポリッシング工具を使用して、基板をポリッシングした。IC 1010(登録商標)ポリッシングパッド(Rohm and Haas Electronic Materials)、又はNEXPLANAR(登録商標)E6088 ポリッシングパッド(イリノイ州Aurora在Cabot Microelectronics)を、すべての組成物に対して同一のポリシング・パラメータとともに使用した。特に断りのない限り、標準REFLEXION(登録商標)ポリッシングパラメータは次の通りである。IC1010(登録商標)パッド、ダウンフォース=20.68kPa(3psi)、ヘッド速度=110rpm、プラテン速度=120rpm、総流量=200mL/min。特に断りのない限り、標準AP-300(登録商標)ポリッシングパラメータは次の通りである。IC1010(登録商標)パッド、ダウンフォース=20.68kPa(3psi)、ヘッド速度=110rpm、プラテン速度=120rpm、総流量=200mL/min。特に断りのない限り、標準MIRRA(登録商標)ポリッシングパラメータは次の通りである。IC1010(登録商標)パッド、ダウンフォース=20.68kPa(3psi)、ヘッド速度=110rpm、プラテン速度=120rpm、総流量=200mL/min、又はNEXPLANAR(登録商標)E6088パッド、ダウンフォース=20.68kPa(3psi)、ヘッド速度=110rpm、プラテン速度=120rpm、総流量=200mL/min。分光エリプソメトリーを用いて膜厚を測定し、そして初期厚から最終厚を差し引くことにより、除去速度を計算した。
【0125】
実施例1
この実施例は、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせと、(b)自己停止剤と、(c)任意には非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物とを含有する、本発明によるポリッシング組成物の調製を明らかにする。下記実施例2~4に使用されるポリッシング組成物を調製する際に、研磨製剤A1及びA2と添加製剤B1~B13とを使用することにより、クレームに記載のポリッシング法の効率を明らかにした。
【0126】
実施例2~4に使用されるポリッシング組成物のそれぞれのために、Hybrid-30セリア粒子(ANP Co., Ltd.から商業的に入手可能)、又は酸化ジルコニウム(Saint Gobainから商業的に入手可能)をピコリン酸(500ppm)と組み合わせて使用して、研磨製剤A1及びA2を調製した。結果として生じた混合物のpHを4.2に調整した。研磨製剤を表1に要約する。
【表1】
【0127】
実施例2~4に使用されるポリッシング組成物のそれぞれのために、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)、又はポリ(2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(「polyMADQUAT」)をカチオン性添加剤として、ベンズヒドロキサム酸又はサリチルヒドロキサム酸を自己停止剤として、そしてポリビニルピロリドン(「PVP」)、Brij TM S20(Sigma Aldrichから商業的に入手可能)、又はPluronic(登録商標)L31(Sigma Aldricから商業的に入手可能)を非イオン性ポリマーとして使用して、添加製剤B1~B13を調製した。添加製剤は任意には、Bis-Tris(登録商標)(Sigma Aldrichから商業的に入手可能)を緩衝液としてさらに含み、そしてpHを硝酸又はトリエタノールアミン(「TEA」)で調整した。添加製剤を表2に要約する。
【表2】
【0128】
実施例2
この実施例は、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤、又はこれらの組み合わせと、(b)自己停止剤と、(c)任意には非イオン性ポリマーと、(d)カチオン性モノマー化合物とを含有する、本発明によるポリッシング組成物によって提供される有益なトポグラフィ選択比を明らかにする。
【0129】
50%パターン密度を有する250μmのTEOSフィーチャ(ほぼ20,000Å厚のフィーチャ)を含有する別個のパターン化ウエハー(200x300mmのウエハー)を、ほぼ8,000Åの段差を有するパターン化シリコン基板上に被覆し、そして比較ポリッシング組成物2A~2D及び本発明のポリッシング組成物2E~2Jを有するIC1010(登録商標)パッドを使用して、Mirra(登録商標)又はReflexion(登録商標)工具上でポリッシングした。7:3体積の研磨製剤と添加製剤とを合体させることによって、比較ポリッシング組成物2A~2D及び本発明のポリッシング組成物2E~2Jを調製した。アクティブ除去速度(アクティブRR)及びブランケット除去速度(ブランケットRR)を測定し、その結果を表3に示す。
【0130】
比較ポリッシング組成物2A~2Dは、本発明のポリッシング組成物2E~2Jとは異なった。なぜならば、本発明のポリッシング組成物2E~2Jはカチオン性モノマー化合物を含有したからである。
【表3】
【0131】
表3から明らかなように、セリア研磨剤と、自己停止剤(ヒドロキサム酸)と、pH4.2とを含有する比較研磨組成物2Aは、低いアクティブRR:ブランケットRR比を呈した。換言すれば、カチオン性モノマー化合物を含有しない比較研磨組成物2Aは、アクティブ除去速度とブランケット除去速度との制限された選択比を呈した。
【0132】
表3はまた、セリア研磨剤と、自己停止剤と、カチオン性ポリマーとを含有する比較ポリッシング組成物2B~2Dが、比較研磨組成物2Aに対して改善されたアクティブRR:ブランケットRR比を呈したことも示している。しかしながら、アクティブ除去速度は、比較ポリッシング組成物2Cによって証明されるように、pHが7.7まで高められない場合には著しく低下した(比較ポリッシング組成物2B及び2D参照)。
【0133】
対照的に、セリア研磨剤、自己停止剤と、カチオン性モノマー化合物とを含有する本発明の研磨組成物2E~2Jは、6.2という低いpHにおいて高いアクティブ除去速度と、高いトポグラフィ選択比とを呈した。これらの結果は、比較ポリッシング組成物2A~2Dに対して本発明のポリッシング組成物2E~2Jによって呈される、改善されたトポグラフィ選択比を明らかにする。
【0134】
実施例3
この実施例は、非イオン性ポリマーを含有する本発明のポリッシング組成物によって呈される、選択比に対する効果を明らかにする。
【0135】
TEOSとPolySiとを含むパターン化基板を、比較ポリッシング組成物3A及び3B、並びに本発明のポリッシング組成物3C~3Kを有するIC1010(登録商標)パッドを使用して、Mirra(登録商標)又はReflexion(登録商標)工具上でポリッシングした。比較ポリッシング組成物3A及び3B、並びに本発明のポリッシング組成物3C~3Kは、7:3体積の研磨製剤と添加製剤とを合体させることにより調製した。アクティブ除去速度(TEOS)及びPolySi除去速度を測定し、そして結果を表4に示す。
【0136】
比較ポリッシング組成物3A及び3B、並びに本発明のポリッシング組成物3Cは、本発明のポリッシング組成物3D~3Kとは異なった。なぜならば、本発明のポリッシング組成物3D~3Kは非イオン性ポリマーを含有したからである。
【表4】
【0137】
表4から明らかなように、(a)セリア研磨剤、ジルコニア研磨剤と、(b)自己停止剤と、(c)カチオン性モノマー化合物とを含有する本発明のポリッシング組成物3C~3Kは、セリア研磨剤と、自己停止剤と、カチオン性ポリマーとを同じpH(すなわちpH6.2)で含有する比較研磨組成物3Aに対して、より高いアクティブ除去速度(すなわちTEOS除去速度)を呈した。本発明のポリッシング組成物3H~3Kは高効率なので、アクティブ除去速度(すなわちTEOS除去速度)は測定しなかった。
【0138】
表4はまた、非イオン性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(「PVP」)、Brij TM S20(Sigma Aldrichから商業的に入手可能)、又はPluronic(登録商標)L31(Sigma Aldricから商業的に入手可能)を添加すると、比較ポリッシング組成物3A及び3B又は本発明のポリッシング組成物3Cと比較して本発明のポリッシング組成物3D~3Kによって証明されるように、アクティブ除去速度(すなわちTEOS除去速度)に影響を及ぼすことなしに、PolySi除去速度を著しく低下させたことも示している。これらの結果は、本発明によるポリッシング組成物が高いアクティブ除去速度(すなわちTEOS除去速度)を有しており、そしてTEOS除去速度を著しく低下させることなしに、非イオン性ポリマーの添加によってPolySiを上回る形でTEOSをポリッシングするように選択的にされ得ることを明らかにする。
【0139】
実施例4
この実施例は、カチオン性ポリマーとは異なりカチオン性モノマー化合物を含有する本発明のポリッシング組成物によって呈される安定性に対する効果を明らかにする。
【0140】
TEOSとPolySiとを含むパターン化基板を、比較ポリッシング組成物4A並びに本発明のポリッシング組成物4B及び4Cを有するIC1010(登録商標)パッドを使用して、Mirra(登録商標)又はReflexion(登録商標)工具上でポリッシングした。比較ポリッシング組成物4A並びに本発明のポリッシング組成物4B及び4Cは、7:3体積の研磨製剤と添加製剤とを合体させることにより調製した。ポリッシング前の研磨剤粒径と、ポリッシング後の研磨剤粒径とを測定し、そしてその結果を表5に示す。
【0141】
比較ポリッシング組成物4Aは、本発明のポリッシング組成物4B及び4Cとは異なった。なぜならば、本発明のポリッシング組成物4B及び4Cはカチオン性ポリマーの代わりにカチオン性モノマー化合物を含有し、そしてより低いpHを有したからである。各ポリッシング組成物を60秒間のポリッシングのために使用した。
【表5】
【0142】
表5から明らかなように、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)をカチオン性モノマー化合物として含有し、且つpHが6.2である本発明のポリッシング組成物4B及び4Cは、ポリッシングの前後で同じ粒径を維持した。対照的に、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(「polyMADQUAT」)を含有し、pHが7.8である比較ポリッシング組成物4Aが呈するポリッシング後の粒径増大は、4倍を上回った。これらの結果は、カチオン性モノマー化合物及びより低いpH(例えば約5.5~約7)を含有するポリッシング組成物が、カチオン性ポリマー及びより高いpH(例えば約7.5以上)を含有するポリッシング組成物よりも安定であることを明らかにする。
【0143】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願明細書、及び特許明細書を含むすべての引用文献は、あたかも各引用文献が参照することにより本明細書中に援用されるように個別且つ具体的に指し示され、そして本明細書中に全体的に明記されるのと同じ程度に、参照することにより本明細書中に援用される。
【0144】
本発明を記述する文脈における(特に下記請求項の文脈における)「a」及び「an」及び「the」という用語、及び同様の指示対象の使用は、別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのではない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきである。「少なくとも1つの」に続いて1つ又は2つ以上の事項の列挙が続く用語(例えばA及びBの少なくとも1つ)を使用する場合、これは、別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのではない限り、挙げられた事項から選択された1つの事項(A又はB)、又は挙げられた事項のうちの2つ又は3つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち「含むが、しかしこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中に値の範囲を記述することは、別段の指示がない限りは、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値に個別に言及することの省略法として役立とうとしているのにすぎない。そして各別個の値は、あたかもそれが個別にここに記述されているかのように本明細書中に援用される。本明細書中に記載されたすべての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、任意の適宜の順番で実施することができる。本明細書中に提供されたありとあらゆる例、又は例を示す言語(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、本発明をより良く説明しようとしているのにすぎず、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言語も、本発明の実施にとって必須のものとして、クレームにはないエレメントを示唆するものと解釈されるべきではない。
【0145】
本発明の好ましい実施態様が、本発明を実施するために発明者に知られた最善の態様を含めて本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施態様の変更は、前記説明を読めば当業者には明らかになり得る。発明者は、当業者がこのような変更形を必要に応じて採用することを予期し、発明者は、本発明が本明細書中に具体的に記載したものとは異なる形で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可される、ここに添付されたクレームに挙げられた主題のあらゆる改変形及び等価形を含む。さらに、あらゆる可能な変更形における上記要素のいかなる組み合わせも、本明細書中に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、本発明によって包含される。
【国際調査報告】