(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 123/16 20060101AFI20231226BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231226BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231226BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20231226BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20231226BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231226BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C09J123/16
C09J11/08
C09J11/06
A61L15/24 200
A61L15/58 320
A61F13/15 355A
C09J5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534596
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021061943
(87)【国際公開番号】W WO2022125411
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】デサイ、 ダルシャク アール.
(72)【発明者】
【氏名】フー、 ユーホン
【テーマコード(参考)】
3B200
4J040
【Fターム(参考)】
3B200BB20
3B200EA23
4J040BA182
4J040DA002
4J040DA121
4J040HB01
4J040KA26
4J040KA31
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB02
4J040MB09
4J040NA05
4J040NA06
4J040NA10
(57)【要約】
【解決手段】
プロピレンコポリマーの混合物で調製されたホットメルト接着剤組成物が開示される。ホットメルト接着剤組成物は、不織基材及びポリマーフィルムへの高い密着力及び優れた接着性を提供しながら、油含有量をほとんど又はまったく必要としない。ホットメルト接着剤組成物は、吸収性構造物品の製造に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、
を有する第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、
を有する第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
から成る約20~約45重量%のポリマー混合物、
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと前記第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーとの比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤、並びに
(c)任意で約30重量%以下のワックス又は可塑剤、
を含むホットメルト接着剤であって、
(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、メタロセン触媒で調製される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、チーグラー・ナッタ触媒で調製される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、190℃で5000~8500cpsの粘度を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記粘着付与剤が、C
5樹脂、石油蒸留物、水素化炭化水素、C
5/C
9樹脂、C
9樹脂、ポリテルペン、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
前記ワックスが、ポリエチレン及びポリプロピレンワックスから成る群から選択される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
前記可塑剤が、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン又はそれらの混合物から選択される非油ポリオレフィン液状可塑剤である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
実質的にオイルを含まない、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項10】
酸化防止剤、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、顔料、包装用相溶性コーティング、及びそれらの混合物から成る群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項11】
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、(iv)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第1のポリマー系と、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第2のポリマー系と、
の混合物から調製される約20~約45重量%のポリマーマトリックス、
前記第1のポリマー系と前記第2のポリマー系との比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤、
(c)約10~約30重量%のワックス又は可塑剤、並びに
(d)約0.1~約6重量%の酸化防止剤、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、顔料、包装用相溶性コーティング、及びそれらの混合物から成る群から選択される添加剤、
から本質的に成るホットメルト接着剤であって、
(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する、ホットメルト接着剤。
【請求項12】
請求項1に記載の接着剤を含む物品。
【請求項13】
前記接着剤が2つの基材の間に挿入される、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記基材が、不織布、ポリマーフィルム、弾性フィルム、及びティッシュから成る群から選択される、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
おむつ、トレーニングパンツ、吸収パンツ、水着、生理用ナプキン、タンポン、殺菌ワイプ、フェイスワイプ、医療用ガウン、肉パッド、フェイスマスク、カバーオール、手術用ドレープ、帽子、手袋、フェイスマスク、包帯、創傷被覆材、フィルター、ベッドパッド、アンダーパッド、タオル、トイレットペーパー、化粧紙又は動物用パッドである、請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンコポリマーの混合物で調製されたホットメルト接着剤組成物に関する。ホットメルト接着剤組成物は、不織基材及びポリマーフィルムへの高い密着力及び優れた接着性を提供しながら、油含有量をほとんど又はまったく必要としない。ホットメルト接着剤組成物は、吸収性構造物品の製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系ホットメルト接着剤の柔軟性と密着力の適切なバランスを見つけることは困難である。このバランスを達成するために、米国特許出願公開第2019/0382631A1における水素化スチレンブロックコポリマーとアルファ―オレフィンコポリマーのブレンド、米国特許第9822283号における熱可塑性スチレンブロックコポリマーとプロピレンホモポリマーのブレンド、及び米国特許出願公開第2020/0157385A1におけるプロピレン/ブテン又はプロピレン/ヘキセンコポリマーとポリブテン-1とのブレンドを包含するポリマーの様々なブレンドがホットメルト接着剤の調製に使用されてきた。
【0003】
最近のオレフィン触媒の開発により、より経済的なオレフィン、特にポリプロピレンコポリマーが市場に提供されるようになった。プロピレンポリマーはホットメルト接着剤の候補であるが、それらが硬く、基材に接着できないことから、ホットメルト接着剤として望ましいものにはならない。プロピレンポリマーの剛性を低下させるために、ゴムベース又は非晶質のエチレンコポリマーが添加される。しかしながら、プロピレンベースのホットメルト接着剤の柔軟性と密着力の適切なバランスを見つけることは困難であった。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0204306A1及び米国特許出願公開第2019/0144719A1に記載されるホットメルト接着剤は、35J/g超過のDSC溶融エンタルピーを有する半結晶性の低分子量プロピレンを用いて調製される。これらの接着剤は、弾性フィルムと弾性ストランドを接着する際のクリープ保持を改善するように設計されているが、柔軟性が不十分であり、塗布量が少ないとフィルム基材への浸潤と浸透が不十分である。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0102230A1に記載されるホットメルト接着剤は、約130℃~約165℃の範囲のDSC融点を有する90重量%超過のプロピレンを有するポリプロピレンインパクトコポリマーで調製される。しかしながら、軟化点が130℃を超えると粘度が高くなり、より高い塗布温度が必要になり、加工性が制限される。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0290945A1に記載されるように、約20未満のメルトインデックス(190℃、2.16kgで測定)を有するプロピレンベースのコポリマーで調製されたホットメルト接着剤、高粘度及び高塗布温度の接着剤には、高い油含有量、例えば20重量%超過が必要である。
【0007】
当技術分野では、柔軟性と密着力の適切なバランス、及び油のしみ出しと移行が最小限又はまったくない安定した接着性能を備えたプロピレンベースのホットメルト接着剤が必要とされている。本発明は、この必要性に対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0382631A1
【特許文献2】米国特許第9822283号
【特許文献3】国特許出願公開第2020/0157385A1
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0204306A1
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0144719A1
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/0102230A1
【特許文献7】米国特許出願公開第2017/0290945A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吸収性構造物品を製造するのに適したプロピレンコポリマーの混合物で調製されたホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0010】
本発明の1つの態様は、
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、
(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、
(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、
を有する第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、
(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、
を有する第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
から成る約20~約45重量%のポリマー混合物、
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと前記第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーとの比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤
を含む、ホットメルト接着剤である。
【0011】
ホットメルト接着剤は、(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する。ホットメルト接着剤は、任意で約30重量%以下のワックス又はポリオレフィン液状可塑剤を有する。
【0012】
別の態様では、本発明は、
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、(iv)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第1のポリマー系と、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第2のポリマー系と、
の混合物から調製される約20~約45重量%のポリマーマトリックス、
前記第1のポリマー系と前記第2のポリマー系との比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤、
(c)約10~約30重量%のワックス又はポリオレフィン液状可塑剤、並びに
(d)約0.1~約6重量%の充填剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、包装用適合コーティング剤から成る群から選択される添加剤、
から本質的に成るホットメルト接着剤を対象とする。
【0013】
ホットメルト接着剤は、(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「吸収性物品」とは、身体の滲出物を吸収して封じ込める装置を指し、より具体的には、身体から排出される様々な滲出物を吸収して封じ込めるために、着用者の身体に対して、又は身体に近接して配置される装置を指す。吸収性物品の例としては、おむつ、トレーニングパンツ、プルオンパンツ型おむつ(例えば、米国特許第6,120,487号に示されているような予め形成されたウエスト開口部及び脚開口部を有するおむつ)、再締結可能なおむつ又はパンツ型のおむつ、失禁ブリーフ及び下着、おむつホルダー及びライナー、パンティライナー等の女性用衛生衣類、吸収性インサート、肉パッド、動物パッド、マスク、カバーオール等が挙げられる。
【0015】
「吸収構造接着剤」は、吸収パッド、不織布、トップシート、バックシート、コアラップ、コア安定化、及びコア固定が挙げられる吸収性物品の構成要素を一緒に接着する接着剤を指す。
【0016】
基材への「接着結合」では、基材(例えば、フィルム、ポリマーフィルム、弾性フィルム、不織布、及びティッシュ)への結合、又は第2の類似若しくは異なる基材への結合に接着剤が使用される。
【0017】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」、「包含する(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」並びにそれらの変形それらの変形は、制約のない用語であり、それぞれ、成分等の後に続くものの存在を指定するが、当技術分野で知られている又は本明細書に開示されている他の特徴、例えば、要素、工程、成分等の存在を排除するものではない。しかしながら、こうした記載は、組成物又は方法を、「列挙された成分/工程から成り、指定された成分/工程のみの存在を、そこから生じる可能性のある不純物と共に許可し、他の成分/工程を除外する」として説明していると解釈されるべきである。
【0018】
本明細書では、「・・・から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「・・・から本質的に成る(consists essentially of)」は、特許請求の範囲等の主題の範囲を、特定の材料又は工程、及び主題の基本的且つ新規の特徴に著しく影響を与えないものに限定するために使用される。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を包含する本文書が優先される。好ましい方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができる。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び実施例は、例示のみを目的としており、限定を意図するものではない。
【0020】
本出願の明細書及び特許請求の範囲における数値は、特にポリマー又はポリマー組成物に関するものであり、異なる特徴の個々のポリマーを含有してよい組成物の平均値を反映している。さらに、特に断りのない限り、数値は、同じ有効桁数に換算した場合に同じである数値、及び値を決定するために本出願に記載された種類の従来の測定技術の実験誤差よりも少ないだけ、記載された値と異なる数値を包含すると理解されるべきである。
【0021】
本明細書に開示される全ての範囲は、列挙された端点を包含し、独立して組み合わせることができる(例えば、「2~10」の範囲は、端点2と10、及び全ての中間値を包含する)。本明細書に開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されない。これらの範囲及び/又は値に近似する値を包含するには、十分に不正確である。本明細書で使用される場合、近似言語は、関連する基本機能の変化をもたらすことなく変化し得る任意の量的表現を修正するために適用されてよい。したがって、「約」などの用語によって修飾された値は、場合によっては、指定された正確な値に限定されない場合がある。少なくともいくつかの例では、近似言語は、値を測定するための機器の精度に対応する場合がある。修飾子「約」は、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するものと見なされる必要がある。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示する。「約」という用語は、示された数値のプラス又はマイナス10%を指す場合がある。例えば、「約10%」は「9%~11%」の範囲を示す場合があり、「約1」は、0.9~1.1を意味する場合がある。「約」の他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかであり、例えば「約1」は0.5~1.4を意味する場合もある。
【0022】
本発明は、160℃以下で塗布できる噴霧可能なホットメルト接着剤を提供する。この噴霧可能なホットメルト接着剤は、高いグリーン強度、優れた接着強度、及び冷却時のエージング後の劣化性能を有する。噴霧可能なホットメルト接着剤は、熱に敏感な基材への裏抜けや溶け落ちのリスクなしに、薄い接着線に塗布できる場合がある。
【0023】
本発明の1つの態様は、約20~約45重量%のポリマー混合物及び30~約60重量%の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤である。ホットメルト接着剤は、任意で約30重量%以下のワックス又はポリオレフィン液状可塑剤を包含する。
【0024】
ポリマー混合物は、
(1)(i)ASTM D3236に従って、190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、
を有する第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、
を有する第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
から成る。
【0025】
さらに、第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーの比は、約1.8:1~約2.8:1である。繰り返すが、この範囲外では、ホットメルト接着剤は柔軟性と密着力の適切なバランスを実現しない。驚くべきことに、2つのポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーの組合せにより、ゴム又は非晶質ポリマーを添加しなくても、接着剤に柔軟性と接着性を提供する。
【0026】
別の実施形態では、ホットメルト接着剤は、約20~約45重量%のポリマー系、約30~約60重量%の粘着付与剤、約10~約30重量%のワックス又は可塑剤、並びに約0.1~約6重量%の充填剤、酸化防止剤、着色剤、UV吸収剤、UV阻害剤、顔料、包装用適合コーティング剤等から成る群から選択される添加剤から本質的に成る。
【0027】
ポリマー系は、
(1)(i)190℃において約3000~約8500cps、好ましくは約5000~約8500の粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、及び(iv)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第1のポリマー系と、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、及び(iii)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第2のポリマー系と、
の混合物である。第1のポリマー系と第2のポリマー系の比は、約1.8:1~約2.8:1の範囲である。
【0028】
2つの特定のポリプロピレン(コ)ポリマーで調製されたホットメルト接着剤が発見された。約1.8:1~約2.8:1の特定の比率で、良好なグリーン強度及び十分なオープンタイムのための柔軟性を提供する。これは、追加のゴム又は非晶質ポリマーを使用せずに、パラフィン油又はナフテン油を使用せずに達成される。
【0029】
1つの実施形態では、両方のポリプロピレン(コ)ポリマーが本質的に非晶質である。融解熱は、ポリマーの結晶化度と直接相関している。低レベルの結晶化度、例えば、ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値が、噴霧可能なホットメルト接着剤のポリプロピレン(コ)ポリマーに望ましい。
【0030】
適切な第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合された非晶質ポリ-α-オレフィン(APAO)である。適切な非晶質ポリ-α-オレフィンポリマーは、プロピレン及びエチレンモノマーのランダムコポリマーであり、とりわけ、イーストマンケミカルからのエラフィン 35、イーストマンケミカルからのエラフィン75H、レックスタック社からのRT2330が挙げられる。別の適切な第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーは、メタロセン触媒を使用して重合された非晶質ポリプロピレンコポリマーである。接着剤で使用するのに適した市販のメタロセン触媒ポリプロピレン(コ)ポリマーは、エクソンモービル・ケミカルからのビスタマックス8380及びビスタマックス8780である。適切な第2の第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーとしては、とりわけ、エクソンモービル・ケミカルからのビスタマックス6502が挙げられる。第1及び第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーの指定された粘度/メルトフローインデックスを有するポリマーブレンドは、ホットメルト接着剤に、柔軟性と密着力の適切なバランスを提供する。
【0031】
有用な粘着付与樹脂としては、脂肪族石油炭化水素樹脂;芳香族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びに脂環式石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体等の任意の相溶性樹脂又はそれらの混合物が挙げられてよい。特に適切な水素化石油炭化水素粘着付与剤の例としては、エクソンモービルケミカルズからのエスコレス5400及び5300;荒川からのアルコンP115、イーストマンケミカルからのイーストタック100R、100W、レガライトS1100及びR1100;テンシン・レフア・ケミカル社からのルホレスHD1100;コロン工業からのスコレズSU-100及びSU-500;ハンファ・ソリューションズ社からのHC-100及びHS-100;ヘンゲ・マテリアルズ・アンド・サイエンステクノロジー社からのHM1000;ニンボ・ジンハイ・チェングォン・ケミカル社からのHAITACK JH6100等が挙げられる。環式又は非環式C5樹脂及び芳香族変性非環式又は環式樹脂も包含される。市販のC5樹脂の例としては、クレイバレーUSA社からのウイングタック98、ウイングタックエクストラ、ウイングタックET;イーストマンケミカルからのピコタック9095及び1095;エクソンモービルケミカルズからのエスコレス2203LC;ルファ・ケミカル社からのルホレスA1100、A2100;ゼオン・ケミカルズ社からのクイントーン R100及びC210及びS195が挙げられる。ポリテルペン樹脂;フェノール変性テルペン樹脂及びその水素化誘導体、例えば、二環式テルペン及びフェノールの酸性媒体中での縮合から得られる樹脂生成物も挙げられる。市販の変性テルペン樹脂の例は、クレイトンケミカルB.V.からのシルバレスTR M1115及びTR126、クレイトンケミカルB.V.からのNG98、クレイトンケミカルB.V.からのTP2040HM及びシルバレスTP300である。本発明を実施するために使用できる市販のロジン及びロジン誘導体の例としては、クレイトンケミカルB.V.から入手可能なシルバライトRE100L及びシルバレスRE115;ピノバ社からのフォラル105のような水素化ロジン及びロジン誘導体が挙げられる。他の有用な粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、レジネート、及び重合ロジンを包含する天然及び変性ロジン;例えばペールのグリセロールエステル、ウッドロジン、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルを包含する天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル;例えば、スチレン/テルペン及びα-メチルスチレン/テルペンを包含する天然テルペンのコポリマー及びターポリマーが挙げられる。
【0032】
好ましい粘着付与剤としては、C5樹脂、石油蒸留物、水素化炭化水素、C5/C9樹脂、C9樹脂、ポリテルペン、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル及びそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
C9芳香族/脂肪族オレフィン由来であり、サートマー及びクレイバレーからノルソレンの商品名で、ラトガーズシリーズのTK芳香族炭化水素樹脂から入手可能な芳香族炭化水素樹脂も有用である。ノルソレン1100は、クレイバレーから市販されている低分子量の熱可塑性炭化水素ポリマーである。
【0034】
イーストマンケミカルズからのクリスタレックスF115、1120及び5140、アリゾナケミカルズからのシルバレスSAシリーズ等のアルファメチルスチレンも、本発明の粘着付与剤として有用である。2つ以上の記載された粘着付与樹脂の混合物が、いくつかの配合物のために必要とされる場合がある。
【0035】
適切なワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、副生ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、酸化フィッシャートロプシュワックス、並びにヒドロキシステアラミドワックス及び脂肪族アミドワックスなどの官能化ワックスが挙げられる。高密度低分子量ポリエチレンワックス、副生ポリエチレンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスは、従来、当技術分野では合成高融点ワックスと呼ばれている。有用なワックスとしては、クラリアント社からのリコセンPE4201、PE3101等のリコセンシリーズ、クラリアント社からのLICOワックスPE520及びロクタスPE310、サーソル・ケミカルズ社からのサルソルワックスH1;サーソル・ケミカルズ社からのセレーション1820、ハネウェル・インターナショナル社からのAC-9、AC-8、AC-820A等のACシリーズ、ライオン・ケムテック社からのL-C101Nとして入手可能なポリエチレン及びポリプロピレンワックスが挙げられる。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、室温でパラフィン油又はナフテン油を実質的に含まない。本明細書における「実質的に含まない」又は「含まない」は、不可避レベルの不純物を包含するが、それ以上は包含しないと定義される。非油ポリオレフィン液状可塑剤は、可塑剤としてホットメルト接着剤に適している。適切なポリオレフィン液状可塑剤としては、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられる。市販の非油ポリオレフィン可塑剤の例は、イネオスオリゴマーズからのインドポルH100、H300、H900、H1500;デリム・インダストリアル社からのPB950;TPCグループ(テキサス・ペトロケミカルズ)からのTPC1105、TPC1160;ブラスケムS.AからのPIB32、PIB24;クラリアントからのリコセンPPA330である。
【0037】
本発明の噴霧可能な低適用温度ホットメルト接着剤は、望ましくは少なくとも1つの安定化剤及び/又は少なくとも1つの酸化防止剤も含有してよい。これらの化合物は、例えば、熱、光、又は粘着付与樹脂などの原材料からの残留触媒によって引き起こされる酸素との反応によって引き起こされる劣化から接着剤を保護するために添加される。
【0038】
本明細書に包含される適用可能な安定剤又は酸化防止剤の中には、高分子量ヒンダードフェノール並びに硫黄及びリン含有フェノールなどの多官能性フェノールがある。ヒンダードフェノールは当業者に周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基のすぐ近くに立体的にかさ高い基も含有するフェノール化合物として特徴付けることができる。特に、第三ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも1つでベンゼン環上に置換されている。ヒドロキシル基の近くにこれらの立体的にかさ高い置換基が存在すると、その伸縮頻度が低下し、それに応じてその反応性が低下する。この障害により、フェノール化合物にその安定化特性がもたらされる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン;ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;4,4′-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール);4,4′-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-1,3,5トリアジン;ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート;及びソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]が挙げられる。
【0039】
こうした酸化防止剤は、BASFから市販されており、ヒンダードフェノールであるイルガノックス(登録商標)565、1010、1076及び1726が挙げられる。これらは、ラジカルスカベンジャーとして作用する主要な酸化防止剤であり、単独で、又はBASFから入手可能なイルガフォス(登録商標)168、エバースプリング・ケミカル・カンパニーからのEVERFOS168などのホスファイト酸化防止剤などの他の酸化防止剤と組み合わせて使用されてよい。ホスファイト酸化防止剤は二次酸化防止剤と見なされ、一般的に単独では使用されない。これらは主に過酸化物分解剤として使用される。他の入手可能な酸化防止剤は、ソルベイから入手可能なCYANOX(登録商標)LTDP、HMロイヤルから入手可能なエタノックス(登録商標)330、及びメイゾーから入手可能なBNX1010である。こうした酸化防止剤の多くは、単独で、又は他のこうした酸化防止剤と組み合わせて使用することができる。これらの化合物は、少量、典型的には約10重量%未満でホットメルトに添加され、他の物理的性質に影響を及ぼさない。物理的特性に影響を与えない追加可能な他の化合物は、いくつかだけ言及すると、色を追加する顔料又は蛍光剤である。これらのような添加剤は、当業者に知られている。
【0040】
異なる特性を満たし、特定の用途要件を満たすために、ホットメルト接着剤に従来から使用されている他の添加剤も、本発明の接着剤組成物に添加してよい。こうした添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、流動性調整剤、染料、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤、包装目的で接着剤がブロッキングする(くっつく)のを防ぐ相溶性コーティングが挙げられ、これらは目的に応じて少量又は多量に接着剤配合物に組み込んでよい。
【0041】
ホットメルト接着剤組成物は、一般に約2時間、約150~約180℃の温度で、溶融状態で成分をブレンドして均質なブレンドを形成することによって調製される。ブレンドの様々な方法が当技術分野で知られており、均一なブレンドを生成する任意の方法を使用してよい。次いで、ブレンドを冷却し、ペレット、チャブ、ミニチャブ、又はブロックに成形して、予備成形接着剤として貯蔵又は出荷してよい。これらの予備成形接着剤は、再加熱して融解し、基材に塗布することができる。
【0042】
得られたホットメルト接着剤は、(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する。
【0043】
ホットメルト接着剤組成物は、吸収性構造物品、特におむつ、おむつパンツ、おしりふき、トレーニングパンツ、吸収パンツ、育児パンツ、水着及び他の使い捨て衣類を包含する衛生的吸収性構造物品;生理用ナプキン、ワイプ、生理用ナプキン、パンティライナー、パンティシールド、タンポン、及びタンポンアプリケーターを包含するフェミニンケア製品;ワイプ、パッド、容器、失禁用製品、及び尿シールドを包含する成人ケア製品;衣料品;スポーツ及びレクリエーション製品:ホット又はコールドセラピーを適用するための製品、医療ガウン(すなわち、防護及び/又は外科用ガウン)、外科用ドレープ、キャップ、手袋、フェイスマスク、包帯、創傷被覆材、ワイプ、カバー、容器、フィルター、使い捨て衣料、ベッドパッド、医療用吸収衣、アンダーパッド;建設及び包装用品、肉パッドを含む工業用パッド;洗浄及び消毒用製品、ワイプ、カバー、フィルター、タオル、トイレットペーパー、化粧紙、不織布ロール製品、枕、パッド、クッション、マスクを包含する家庭用快適製品、並びに皮膚のクレンジング又はトリートメントに使用される製品を包含するボディケア製品、白衣、カバーオールを取り付けるのに適している。噴霧可能な低適用温度の接着剤は、ボトルのラベル付け、若しくはプラスチック結合又は取り外し可能な感圧接着剤の適用を伴う他の用途にも有用である。
【0044】
当業者には明らかであるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正及び変形を行うことができる。本明細書に記載された特定の実施形態は、例としてのみ提供され、本発明は、添付の請求項の用語によってのみ限定されるべきであり、そのような請求項が権利を与えられた均等物の全範囲と共に限定されるべきである。
【実施例】
【0045】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらは例示の目的で包含されるものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0046】
ポリマーの融解熱(ΔH)及び融解温度Tmは、DSC(示差走査熱量計、TAIモデルQ1000 DSC)によって、ASTM D3418に従って、加熱サイクル及び冷却サイクルの両方について10℃/分の速度で測定された。
【0047】
接着剤及びポリマーの粘度は、ASTM 3236に従って、140℃、150℃、160℃、及び190℃で、標準的なブルックフィールド粘度計、スピンドル27を使用して測定された。
【0048】
TAダイナミック・メカニカルアニカルアナライザー(ARES-M LS)を使用して、オーケストレータ・ソフトウェア・バージョン7.2.0.4からの昇温試験を使用して、tan δを得た。この試験には、直径25mm(316ステンレス鋼、TAインスツルメンツからのパート番号708-00966-1)で、約1mmのギャップで分離されたスチール平行板を使用した。試料を乗せた後、必要な温度で160℃まで加熱し、160℃の平衡に達すると昇温が開始した。プログラムは、10秒間隔ごとにデータを測定する。対流式オーブン(ARES-LN2型)に冷たい窒素ガスを連続的に流した。冷却速度は、0℃に達するまで5℃/分である。対流式オーブンに窒素を連続的に流した。周波数は10rad/sに維持された。試験開始時の初期歪みは(プレートの外縁で)50%であった。ソフトウェアの自動歪みオプションを使用して、試験全体で正確に測定可能なトルクを維持した。このオプションは、ソフトウェアで許容される最大適用歪みが80%になるように構成された。自動歪みプログラムは、必要に応じて、各温度増分で歪みを調整した。トルクが19.62×10-3Nm未満の場合、歪みは現在の値の5%減少した。トルクが117.72×10-3Nm以上の場合、現在の値の25%減少した。19.62×10-3Nmと117.72×10-3Nmの間のトルクでは、その温度上昇で歪みの変化はなかった。せん断貯蔵又は弾性係数(G’)及びせん断損失弾性率(G”)は、トルクと歪みデータからソフトウェアによって計算される。Tan(δ)は140℃でのG”/G’として報告される。つまり、Tan(δ)=G”/G’(140℃)。
【0049】
接着剤試料中のポリプロピレンコポリマーを表1に要約する。
【0050】
【0051】
接着剤試料を、接着剤の例A~Hとして表2に示す。接着剤には、粘着付与剤、ワックス、可塑剤、及び酸化防止剤と共に様々なポリプロピレンポリマーが配合されている。HM-1000は、ヘンゲ・マテリアル・アンド・サイエンステクノロジー株式会社からの水素化炭化水素粘着付与剤であり、リコセンPE4201は、クラリアントからのポリエチレンワックスであり、リコセンPPA330は、クラリアントからのポリオレフィン液状可塑剤であり、エバーノックス10は、エバースプリング・ケミカル・カンパニーからの酸化防止剤である。
【0052】
【0053】
各接着剤試料について、成分を160℃で加熱し、均一になるまで混ぜ合わせる。次いで、接着剤を2つの基材の間に塗布して、接着物品を形成した。2つの異なる接着物品を作製した。第1の接着物品(不織布-フィルム)は、クロペイ基材からの通気性ポリBR149とPGI基材からの15gsm不織布とを接着剤試料で接着することによって形成された。第2の接着物品(フィルム-フィルム)は、非通気性ポリエチレンフィルムを、厚さ0.65ミルの接着で別の非通気性ポリエチレンフィルムに、接着剤試料で接着することによって形成された。ノードソン社のシグニチャースプレーアプリケーターヘッドを使用して、150~155℃、ライン速度1000フィート/分、コート重量2.5gsm又は4gsmで基材に接着剤を塗布した。表3に、接着強度と対応する接着剤試料の結果を、初期及びエージング後の両方で示す。
【0054】
初期試料とエージングした試料の接着強度は、次のように決定された。
接着強度[g/in]=平均剥離力[g]/試験片幅[in]。
【0055】
試料のラミネートを50℃で2週間エージングし、エージングした試料について同じ試験を行った。次に、エージングした試料を23±2℃で最低1時間平衡化した後、同じ温度で試験した。さらに、最低5つの試料を使用してエージング後の平均接着強度を決定した。接着剤の初期及びエージング後接着強度を表3に示す。
【0056】
シンテック1/D引張試験機(MTS、モデル1500BZF-50、USA)において、初期試料及びエージング後の試料について、モードI T剥離構造の引張試験機を用いて、不織布-フィルム及びフィルム-フィルムの間の接着剤の接着強度を測定した。引張試験機には、高精度の300ポンドのロードセルを取り付けた。試験試料は、スウィング・アルバート・インスツルメント社(ペンシルベニア州フィラデルフィア)製の精密カッターで実質的に直線の形状を有した。試料の寸法は、機器に適した力で必要な歪みを達成するように選択された。試料の寸法は、幅およそ2インチ、長さおよそ6インチであった。試料の長さは機械方向(MD方向)に揃えた。同じ温度で試験する前に、試料を23℃±2℃で最低1時間平衡化した。試験した試料の寸法に合わせて適切なサイズの軽量ジョー(フラットフェース又はバーラインを使用してよい)を使用して、固定具とグリップを取り付けた。製造元の指示に従って機器を校正した。グリップ力の線間の距離(ゲージ長)は1インチであり、これはグリップの横にスチール製の定規を置いて測定した。装置の力読み取り値は、固定具とグリップの質量を考慮してゼロにした。以下の手順を用いて、T剥離試験のために試料(幅2インチ×長さおよそ6インチ)を準備した。ラミネート試料を上部でおよそ1インチ離して、ポリ側と不織布側の両方をテープで留める。T剥離試料のフィルム部分を下部グリップに取り付け、T剥離試料の不織布部分を上部グリップに取り付けた状態で、試料をT剥離構成でグリップに取り付けた。試験片を、たるみが最小限になるようにグリップに取り付けた。クロスヘッドを12インチ/分の一定のクロスヘッド速度で上昇させ、それぞれの材料(不織繊維及びフィルム)が完全に分離するまで試料を剥離した。剥離を測定している間に、50Hzの速度で取得した力と伸びのデータを取った。最初の8インチ伸張中の剥離力(グラム力、gf)をモードI接着強度として報告した。平均初期接着強度を決定するために、少なくとも5つの試料を使用した。
【0057】
接着剤の好ましい剥離強度は、初期剥離試験及びエージング後の剥離試験の両方から特定の基材上で200gf/インチ以上である。一般に、200gf/インチを超える接着剤で形成された物品は、基材の歪み及び裂け目をもたらし、これは、接着結合ではなく基材の破損を示す。
【0058】
【0059】
接着剤試料A、B、C及びGは、初期試料と2週間エージングした試料の両方で200gf/インチ超過の接着強度を示した。試料Bは、不織布-フィルム基材及びフィルム-フィルム基材の両方で、様々な基材の初期試料とエージング後の試料の両方で200gf/インチよりも有意に高い接着強度を示した。剥離強度を試験すると、初期試料とエージング後の試料の両方で、基材が歪み、不織繊維が引き裂かれた。これらの接着剤試料は、(i)190℃で3,000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピークを有する第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーで作製された。
【0060】
接着剤試料D及びEは、所望の粘度及び/又は融解温度外のポリマーで調製された。それらの粘度は高く、接着パターンが不十分であるか、177℃未満の温度では噴霧できなかった。
【0061】
接着剤Fは、190℃で3000cps未満の粘度を有するポリマーで作製された。接着剤Hは、約15J/gを超える融解熱を有するポリマーで作製された。両方の接着剤は、200gf/インチ未満の所望の接着強度よりも低いか、又はその境界を示していた。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、
を有する第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、
を有する第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと、
から成る約20~約45重量%のポリマー混合物、
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーと前記第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーとの比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤、並びに
(c)任意で約30重量%以下のワックス又は可塑剤、
を含むホットメルト接着剤であって、
(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、メタロセン触媒で調製される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、チーグラー・ナッタ触媒で調製される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記第1のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、190℃で5000~8500cpsの粘度を有
し、前記第2のポリプロピレン-ポリエチレン(コ)ポリマーが、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記粘着付与剤が、C
5樹脂、石油蒸留物、水素化炭化水素、C
5/C
9樹脂、C
9樹脂、ポリテルペン、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記ワックスが、ポリエチレン及びポリプロピレンワックスから成る群から選択さ
れ、前記可塑剤が、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン又はそれらの混合物から選択される非油ポリオレフィン液状可塑剤である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
実質的にオイルを含まない、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
(a)(1)(i)190℃で3000~8500cpsの粘度、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)ASTM 3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約90~145℃のDSC融解ピーク、(iv)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第1のポリマー系と、
(2)(i)ASTM D1238に従って、2.16kg、190℃で約15~約40g/10分のメルトインデックス、(ii)ASTM D3418に従って10℃/分の加熱速度で測定された約15J/g未満のDSC融解熱値、(iii)プロピレン及びエチレン(コ)モノマー、
を有する第2のポリマー系と、
の混合物から調製される約20~約45重量%のポリマーマトリックス、
前記第1のポリマー系と前記第2のポリマー系との比率は、約1.8:1~約2.8:1であり、
(b)約30~約60重量%の粘着付与剤、
(c)約10~約30重量%のワックス又は可塑剤、並びに
(d)約0.1~約6重量%の酸化防止剤、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、顔料、包装用相溶性コーティング、及びそれらの混合物から成る群から選択される添加剤、
から本質的に成るホットメルト接着剤であって、
(i)140℃、10rad/sで約30超過のtan(δ)値、及び(ii)ASTM 3236に従って測定された、150℃で約2,000~約11,000cpsの溶融粘度を有する、ホットメルト接着剤。
【請求項9】
請求項1に記載の接着剤を含む物品。
【請求項10】
おむつ、トレーニングパンツ、吸収パンツ、水着、生理用ナプキン、タンポン、殺菌ワイプ、フェイスワイプ、医療用ガウン、肉パッド、フェイスマスク、カバーオール、手術用ドレープ、帽子、手袋、フェイスマスク、包帯、創傷被覆材、フィルター、ベッドパッド、アンダーパッド、タオル、トイレットペーパー、化粧紙又は動物用パッドである、請求項
9に記載の物品。
【国際調査報告】