(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電子密度分布を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231227BHJP
H05G 2/00 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532670
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021082663
(87)【国際公開番号】W WO2022135811
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スモーレンバーグ,ペトラス,ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ルイテン,オッゲル,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ブライアン,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】フランセン,ジム,ゲラルドス,ヒューベルタス
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CA12
2H197DA02
2H197GA03
2H197HA03
4C092AA03
4C092AB14
4C092AC09
4C092BD04
(57)【要約】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための方法であって、イオン化レーザを使用してキャビティ内部の超低温励起原子のパターンから複数の電子を発生させることであって、電子が、励起原子のパターンの少なくとも1つ及びイオン化レーザによって決定された密度分布を有する、発生させることと、非静的加速プロファイルを使用して、キャビティから出る電子を加速させることであって、加速プロファイルが、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布を制御する、加速させることとを含む、方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための方法であって、
イオン化レーザを使用してキャビティ内部の超低温励起原子のパターンから複数の電子を発生させることであって、前記電子が、励起原子の前記パターンの少なくとも1つ及び前記イオン化レーザによって決定された密度分布を有する、発生させることと、
非静的加速プロファイルを使用して、前記キャビティから出る前記電子を加速させることであって、前記加速プロファイルが、前記電子が前記キャビティを出る際の前記電子の前記密度分布を制御する、加速させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記加速プロファイルが、前記電子が前記キャビティを出る際に前記電子の速度が実質的に等しくなるように、前記キャビティ内の前記電子の前記速度を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電子の前記密度分布が、複数の電子バンチを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加速プロファイルが、前記キャビティを出る電子の前記密度分布におけるチャープを低減する、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加速が、非静的電磁場を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非静的電磁場が、時間に応じて変化する成分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記非静的電磁場が、前記キャビティ内の位置に応じて変化する成分を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記電子密度分布が、超低温励起原子の前記パターンと整合する、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電子密度分布が、構造化されたイオン化レーザによって決定される、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記キャビティが、共振マイクロ波構造である、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生が、逆コンプトン散乱を使用して達成される、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための装置であって、請求項1~11の何れか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置を含む放射源。
【請求項14】
請求項12に記載の装置を含むメトロロジ装置。
【請求項15】
請求項12に記載の装置を含むリソグラフィセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、参照によって全体として本明細書に援用される、2020年12月21日に出願された欧州特許出願第20216083.4号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、放射線発生に関連する使用のために電子密度分布を制御するための方法、アセンブリ及び装置に関する。具体的には、本発明は、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生における使用のための、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に施すように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)にあるパターン(「デザインレイアウト」又は「デザイン」と呼ばれることも多い)を、基板(例えば、ウェーハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置は、基板にパターンを投影するために電磁放射を使用し得る。この放射の波長により、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズが決まる。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。波長が4~100nmの範囲、例えば6.7nm又は13.5nmである極端紫外線(EUV)の放射を使用するリソグラフィ装置であれば、例えば、波長が193nmである放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することが可能である。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置の古典的な解像限界より小さい寸法を有するフィーチャをプロセスするために、低k1リソグラフィが用いられ得る。そのようなプロセスでは、解像度の式は、CD=k1×λ/NAで表され得、ここで、λは、使用される放射線の波長であり、NAは、リソグラフィ装置の投影光学系の開口数であり、CDは、「クリティカルディメンジョン」であり(一般には印刷される最小フィーチャサイズであるが、この場合にはハーフピッチ)、k1は、経験的な解像度ファクタである。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的な機能性及び性能を達成するために回路設計者が計画した形状及び寸法に似せたパターンを基板上に複写することが困難になる。このような困難を克服するために、高度な微調整ステップがリソグラフィ投影装置及び/又はデザインレイアウトに適用され得る。そのようなステップとして、例えば、NAの最適化、照明方式のカスタマイズ、位相シフトパターニング装置の使用、デザインレイアウトの様々な最適化、例えば、デザインレイアウトにおける光近接効果補正(OPC(「光学及びプロセス補正」と呼ばれることもある))又は他の一般的に「解像度向上技術」(RET)と定義される方法があるが、これらに限定されない。代わりに、低k1でのパターン複写を改善するために、リソグラフィ装置の安定性を管理する厳格管理ループが用いられ得る。
【0006】
[0006] メトロロジツールは、リソグラフィ装置を使用して生成されたパターン及びデバイスの測定及び検査を行うために使用することができる。リソグラフィプロセスにおけるパターン寸法が原因で、短波長プローブ放射線を使用して動作する高スループット光学メトロロジツールに対する必要性が高まっている。高スループットにより、リソグラフィプロセスの間の検査の時間量及びコストを制限することができる。短波長プローブ放射線は、必要な分解能及び侵入深さを達成できるようにするために必要であり、それらは両方とも、波長依存性である。従来のツール(例えば、可視波長を使用する光学メトロロジツールなど)は、パターン形成されたリソグラフィ構造を解像するには不十分であり得る。短波長ツールは、例えば、EUV並びにX線放射線(軟X線及び硬X線放射線を含む)を含み得、それにより、より高い分解能を達成することができる。
【0007】
[0007] より短い波長の放射源は、分解能の課題に対処することができる。しかし、より短い波長では、大量生産用途におけるメトロロジのために必要な高輝度の放射源が不足している。本出願は、輝度を増大した放射源を達成するための方法、アセンブリ及び装置を説明することによって、この問題に対処する。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本発明の目的は、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための方法を提供することである。方法は、イオン化レーザを使用してキャビティ内部の超低温励起原子のパターンから複数の電子を発生させることであって、電子が、励起原子のパターンの少なくとも1つ及びイオン化レーザによって決定された密度分布を有する、発生させることを含む。キャビティから出る電子は、非静的加速プロファイルを使用して、加速される。加速プロファイルは、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布を制御する。
【0009】
[0009] 任意選択的には、加速プロファイルは、電子がキャビティを出る際に電子の速度が実質的に等しくなるように、キャビティ内の電子の速度を制御することができる。
【0010】
[00010] 任意選択的には、電子の密度分布は、複数の電子バンチを含み得る。
【0011】
[00011] 任意選択的には、加速プロファイルは、キャビティを出る電子の密度分布におけるチャープを低減することができる。
【0012】
[00012] 任意選択的には、加速は、非静的電磁場を含み得る。
【0013】
[00013] 任意選択的には、非静的電磁場は、時間に応じて変化する成分を含み得る。
【0014】
[00014] 任意選択的には、非静的電磁場は、キャビティ内の位置に応じて変化する成分を含み得る。
【0015】
[00015] 任意選択的には、電子密度分布は、超低温励起原子のパターンと整合し得る。
【0016】
[00016] 任意選択的には、電子密度分布は、構造化されたイオン化レーザによって決定することができる。
【0017】
[00017] 任意選択的には、キャビティは、共振マイクロ波構造であり得る。
【0018】
[00018] 任意選択的には、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生は、逆コンプトン散乱を使用して達成することができる。
【0019】
[00019] 本開示の別の態様によれば、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための装置であって、上述の方法を実行するように構成された装置が提供される。
【0020】
[00020] 本開示の別の態様によれば、上記のような装置を含む放射源が提供される。
【0021】
[00021] 本開示の別の態様によれば、上記のような装置を含むメトロロジ装置が提供される。
【0022】
[00022] 本開示の別の態様によれば、上記のような装置を含むリソグラフィセルが提供される。
【0023】
[00023] 本開示の別の態様によれば、コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するための方法が提供される。方法は、密度分布を有する複数の電子バンチを受け取ることと、電子バンチの伝播方向に沿ったバンチ間の距離が、発生される硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線の波長に対応するように、複数の電子バンチを圧縮することとを含む。
【0024】
[00024] 任意選択的には、電子バンチは、エコーエンハンス高調波発生を使用して圧縮することができる。
【0025】
[00025] 任意選択的には、電子バンチは、電子光学機器を使用して圧縮することができる。
【0026】
[00026] 任意選択的には、コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生は、逆コンプトン散乱を使用して達成することができる。
【0027】
[00027] 本開示の別の態様によれば、コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するためのアセンブリが提供される。アセンブリは、上述の密度分布を圧縮するための方法を実行するように構成される。
【0028】
[00028] 本開示の別の態様によれば、コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のためのエコーエンハンス高調波発生方法が提供される。方法は、複数の電子バンチを受け取ることであって、各バンチが、運動量拡がりを含む、受け取ることを含む。電子は、分散セクションを通じて提供され、位相空間において伝播方向に沿ってスキューが導入される。光変調器を使用して、伝播方向に沿って周期的な運動量変調が電子バンチに適用される。電子は、第2の分散セクションを通じて伝播され、位相空間において伝播方向に沿って第2のスキューが導入される。受け取られた複数のバンチと比べて低減された伝播方向に沿った分離を複数のバンチに提供するために、第2のスキューは、バンチの変調運動量を修正する。
【0029】
[00029] 本開示の別の態様によれば、アト秒の硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線パルスを発生させるための方法が提供される。方法は、複数の電子バンチを得ることと、複数のバンチ間の分離においてチャープを導入することと、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線を発生させるための後方励起チャープ放射線パルスをチャープバンチに照射することとを含む。バンチ間の分離におけるチャープは、共振条件に従って放射線パルスのチャープと整合し、それにより、アト秒の硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線パルスが発生する。
【0030】
[00030] 任意選択的には、バンチ間の分離におけるチャープ及び放射線パルスにおけるチャープは、正であり得る。
【0031】
[00031] 任意選択的には、運動エネルギーチャープは、発生される硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線の帯域幅を制御するように設定することができる。
【0032】
[00032] 任意選択的には、複数のバンチ間の分離においてチャープを導入することは、電子バンチの運動エネルギー及び電子バンチのピッチの少なくとも1つの前後方向変化率を制御することを含み得る。
【0033】
[00033] 以下では、添付の概略図面を参照して、本発明の実施形態をあくまで例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】[00033]リソグラフィ装置の概略的概要を示す。
【
図2】[00033]リソグラフィセルの概略的概要を示す。
【
図3】[00033]ホリスティックリソグラフィの概略図を示し、半導体製造を最適化するための重要な3つの技術間の協調を表す。
【
図4】[00033]スキャトロメトリ装置を概略的に示す。
【
図5】[00033]透過型スキャトロメトリ装置を概略的に示す。
【
図6】[00033]例示的な逆コンプトン散乱の硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射源の概略表現を示す。
【
図7a】[00033]超低温電子パルスを発生させるための方法のステップの概略表現を示す。
【
図7b】[00033]超低温電子パルスを発生させるための方法のステップの概略表現を示す。
【
図7c】[00033]超低温電子パルスを発生させるための方法のステップの概略表現を示す。
【
図7d】[00033]超低温電子パルスを発生させるための方法のステップの概略表現を示す。
【
図8】[00033]キャビティから出る電子パルスを加速させるための2つの電極の例示的なセットアップを示す。
【
図9】[00033]電子密度分布或いは硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生を制御するための方法のステップのフロー図を示す。
【
図10a】[00033]非静的加速プロファイルによって加速させたキャビティから出る電子パルスの例示的なシミュレーションのグラフを示す。
【
図10b】[00033]非静的加速プロファイルによって加速させたキャビティから出る電子パルスの例示的なシミュレーションのグラフを示す。
【
図10c】[00033]非静的加速プロファイルによって加速させたキャビティから出る電子パルスの例示的なシミュレーションのグラフを示す。
【
図11a】[00033]ランダムな電子の概略表現を示す。
【
図11b】[00033]バンチとなった電子の概略表現を示す。
【
図12】[00033]コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するための方法のステップのフロー図を示す。
【
図13】[00033]電子パルス圧縮のためのビームライン変換におけるステップを表す例示的な位相空間プロットを示す。
【
図14】[00033]前後方向位相空間における水平及び垂直スキューの概略表現を示す。
【
図15a】[00033]エコーエンハンス高調波発生を使用した電子パルス圧縮のステップの概略表現を示す。
【
図15b】[00033]エコーエンハンス高調波発生を使用した電子パルス圧縮のステップの概略表現を示す。
【
図15c】[00033]エコーエンハンス高調波発生を使用した電子パルス圧縮のステップの概略表現を示す。
【
図15d】[00033]エコーエンハンス高調波発生を使用した電子パルス圧縮のステップの概略表現を示す。
【
図16】[00033]複数のバンチを含む圧縮電子パルスの伝播方向に沿った例示的な電子密度を示すグラフを示す。
【
図17】[00033]光変調器を使用したエコーエンハンス高調波発生圧縮に対する例示的な粒子追跡シミュレーションを示す。
【
図18】[00033]運動エネルギー、バンチ間隔及びそれらの前後方向導関数の位相空間における例示的な表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[00034] 本文書では、「放射線」及び「ビーム」という用語は、紫外線放射線(例えば、365、248、193、157又は126nmの波長を有する)、EUV(例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する、極端紫外線放射線)、X線放射線、電子ビーム放射線及び他の粒子放射線を含む、電磁放射線及び粒子放射線のすべてのタイプを網羅するために使用される。
【0036】
[00035] 本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」又は「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を、入射する放射ビームに提供するために使用可能な一般的なパターニングデバイスを意味するものとして広義に解釈され得る。これに関連して「ライトバルブ」という用語も使用される場合がある。古典的なマスク(透過型又は反射型のマスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)に加えて、他のそのようなパターニングデバイスの例として、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイがある。
【0037】
[00036]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射、EUV放射又はX線放射)を調節するように構成された(イルミネータとも呼ばれる)照明システムILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築されて、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたマスク支持部(例えば、マスクテーブル)Tと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築されて、特定のパラメータに従って基板支持部を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板支持部(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば、1つ以上のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
【0038】
[00037] 稼働中、照明システムILは、放射源SOから(例えば、ビーム送達システムBDを介して)放射ビームを受ける。照明システムILは、放射の誘導、整形及び/又は制御のために様々なタイプの光学コンポーネントを含み得、例えば屈折型、反射型、回折型、磁気型、電磁型、静電型及び/又は他のタイプの光学コンポーネント又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。イルミネータILは、放射ビームBがパターニングデバイスMAの面において所望の空間強度分布及び角度強度分布をその断面に有するように、放射ビームBを調節するために使用され得る。
【0039】
[00038] 本明細書で使用される「投影システム」PSという用語は、様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈されたい。そのようなシステムには、使用されている露光放射の必要に応じて及び/又は他の要因(例えば、液浸液の使用又は真空の使用)の必要に応じて、屈折型、反射型、回折型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁型及び/又は静電光学型のシステム又はこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用されている場合、それらは、すべてより一般的な用語である「投影システム」PSと同義であると見なされ得る。
【0040】
[00039] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を埋めるように、基板の少なくとも一部分が、屈折率が比較的高い液体(例えば、水)で覆われ得るタイプであり得、これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6952253号に示されている。
【0041】
[00040] リソグラフィ装置LAは、基板支持部WTが2つ以上あるタイプ(「デュアルステージ」とも呼ばれる)であってもよい。そのような「複数ステージ」マシンでは、それらの基板支持部WTは並行して使用されてよく、及び/又は、それらの基板支持部WTの一方に載っている基板Wが、その基板Wにパターンを露光することに使用されている間に、他方の基板支持部WTに載っている別の基板Wに対して、その別の基板Wのその後の露光の準備の手順が実施されてよい。
【0042】
[00041] 基板支持部WTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含んでよい。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニング装置を保持するように構成されている。センサは、投影システムPSの特性、又は放射ビームBの特性を測定するように構成されてよい。測定ステージは複数のセンサを保持してよい。クリーニング装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部、又は液浸液を供給するシステムの一部をクリーニングするように構成されてよい。測定ステージは、基板支持部WTが投影システムPSから離れているときに、投影システムPSの下を動いてよい。
【0043】
[00042] 稼働中は、放射ビームBが、パターニングデバイス(例えば、マスク支持物T上に保持されたマスクMA)に入射し、パターニングデバイスMA上にあるパターン(設計レイアウト)によってパターニングされる。放射ビームBは、マスクMAを横断した後、投影システムPSを通り抜け、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上にフォーカスさせる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFの支援により、基板支持部WTは正確に動くことができる、例えば、様々なターゲット部分Cが、放射ビームBの経路中のフォーカス及びアライメントされる位置に位置決めされるように正確に動くことができる。同様に、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めするために、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(これは
図1に明示されていない)とが使用されてよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2、及び基板アライメントマークP1、P2を使用してアライメントされてよい。基板アライメントマークP1、P2は、図示されたように専用ターゲット部分を占有するが、ターゲット部分間の空間に配置されてよい。基板アライメントマークP1、P2は、ターゲット部分C間に配置される場合には、スクライブラインアライメントマークと呼ばれる。
【0044】
[00043]
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLC(リソセル又は(リソ)クラスタと呼ばれることもある)の一部をなし得、リソグラフィセルLCは、基板Wに対して露光前プロセス及び露光後プロセスを実施するための装置も含むことが多い。従来、そのような装置として、レジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光したレジストを現像するデベロッパDE、冷却プレートCH及びベークプレートBK(これらは、例えば、基板Wの温度を調節するものであり、それは、例えば、レジスト層中の溶剤を調節するために行われる)がある。基板ハンドラ(即ちロボット)ROが基板Wを入出力ポートI/O1、I/O2からピックアップし、それらの基板Wを様々なプロセス装置間で動かし、それらの基板Wをリソグラフィ装置LAのローディングベイLBまで送達する。リソセル内のデバイスは、まとめてトラックと呼ばれることも多く、トラック制御ユニットTCUの管理下にあり得、トラック制御ユニットTCU自体は、監視制御システムSCSによって制御され得、監視制御システムSCSは、リソグラフィ装置LAも(例えば、リソグラフィ制御ユニットLACUを介して)制御し得る。
【0045】
[00044] リソグラフィプロセスでは、作成された構造を(例えば、プロセスの管理及び検証のために)頻繁に測定することが望ましい。そのような測定を行うツールは、メトロロジツールMTと呼ばれ得る。そのような測定を行うメトロロジツールMTとして様々なタイプが知られており、例えば走査電子顕微鏡又は様々な形式のスキャトロメータメトロロジツールMTがある。スキャトロメータは、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にする多目的計器であり、測定は、スキャトロメータの対物レンズの瞳若しくは瞳に対する共役面に又はその近くにセンサを有すること(通常、瞳ベースの測定と呼ばれる測定)により、又は像面若しくは像面に対する共役面に又はその近くにセンサを有すること(この場合、通常、像ベース若しくはフィールドベースの測定と呼ばれる測定)により行われる。そのようなスキャトロメータ及び関連する測定技術については、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100328655号、同第2011102753A1号、同第20120044470A号、同第20110249244号、同第20110026032号又は欧州特許出願公開第1,628,164A号に詳述されている。前述のスキャトロメータは、硬X線(HXR)、軟X線(SXR)、極端紫外線(EUV)、可視光線~近赤外線(IR)及びIR波長範囲からの光を使用して、格子を測定することができる。放射線が硬X線又は軟X線である場合、前述のスキャトロメータは、任意選択的に、小角X線散乱メトロロジツールであり得る。
【0046】
[00045] リソグラフィ装置LAによって基板Wが正確且つ一貫して露光されるように、基板を検査して、連続する層間のオーバーレイエラー、線の太さ、クリティカルディメンション(CD)、構造の形状などのパターン形成された構造の特性を測定することが望ましい。そのため、検査ツール及び/又はメトロロジツール(図示せず)がリソセルLCに含まれ得る。エラーが検出された場合は、例えば、後続の基板の露光又は基板Wにおいて実行されるべき他の処理ステップに対する調整を行うことができ、これは、特に、同じバッチ又はロットの他の基板Wが引き続き露光又は処理される前に検査が行われる場合に行うことができる。
【0047】
[00046] メトロロジ装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性を決定するために使用され、特に、異なる基板Wの特性がどのように変化するか、又は、同じ基板Wの異なる層と関連付けられた特性が層ごとにどのように変化するかを決定するために使用される。その代替として、検査装置は、基板W上の欠陥を識別するように構築することができ、例えば、リソセルLCの一部であることも、リソグラフィ装置LAに組み込むことも、スタンドアロン装置であることさえも可能である。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層内の像)に関する特性、半潜像(露光後ベークステップPEB後のレジスト層内の像)に関する特性、現像されたレジスト像(レジストの露光部分又は非露光部分が除去されている)に関する特性、又は、エッチングされた像(エッチングなどのパターン転写ステップ後の像)に関する特性でさえも測定することができる。
【0048】
[00047] 第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、格子の特性を再構築又は計算する再構築方法が測定信号に適用され得る。そのような再構築は、例えば、散乱する放射線とターゲット構造の数学モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することの結果であり得る。数学モデルのパラメータは、相互作用のシミュレーションにより、実際のターゲットから観察された回折パターンと同様の回折パターンが生成されるまで調節される。
【0049】
[00048] 第2の実施形態では、スキャトロメータMTは、分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射線源から放射された放射線がターゲットに向かい、ターゲットから反射、透過又は散乱した放射線がスペクトロメータ検出器に向かい、スペクトロメータ検出器が、鏡面反射した放射線のスペクトルを測定する(即ち強度を波長の関数として測定する)。このデータから、検出されたスペクトルを引き起こしているターゲットの構造又はプロファイルを再構築することが可能であり、この再構築は、例えば、厳密結合波理論及び非線形回帰により、又はシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により可能である。
【0050】
[00049] 第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソスキャトロメータである。エリプソスキャトロメータは、偏光状態のそれぞれについて、散乱又は透過した放射線を測定することによってリソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのようなメトロロジ装置は、偏光光(例えば、直線偏光光、円形偏光光又は楕円偏光光)を、例えばメトロロジ装置の照明セクションにおいて適切な偏光フィルタを使用して放射する。メトロロジ装置に好適な源は、偏光放射線も同様に提供可能である。既存のエリプソスキャトロメータの様々な実施形態は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第11/451,599号、同第11/708,678号、同第12/256,780号、同第12/486,449号、同第12/920,968号、同第12/922,587号、同第13/000,229号、同第13/033,135号、同第13/533,110号及び同第13/891,410号に記載されている。
【0051】
[00050] スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、反射スペクトル及び/又は検出構成の非対称性を測定することによって、2つのミスアライメントのある格子又は周期構造のオーバーレイを測定するように適応させており、非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(オーバーラップし得る)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続層というわけではない)において適用することができ、ウェーハ上の実質的に同じ位置に形成することができる。スキャトロメータは、いかなる非対称性も明確に区別できるように、例えば、共同所有する欧州特許出願公開第1628164A号において説明されるような、対称的な検出構成を有し得る。これにより、格子のミスアライメントを測定するための単刀直入な方法が提供される。ターゲットが周期構造の非対称性を通じて測定される際の、周期構造を含む2つの層の間のオーバーレイエラーを測定するためのさらなる例は、全体として参照により本明細書に援用される、PCT特許出願公開の国際公開第2011/012624号又は米国特許出願第20160161863号から入手することができる。
【0052】
[00051] 他の対象のパラメータは、フォーカス及びドーズであり得る。フォーカス及びドーズは、全体として参照により本明細書に援用される、米国特許出願第2011-0249244号において説明されるような、スキャトロメトリによって(又は代わりに走査電子顕微鏡によって)、同時に決定することができる。フォーカスエネルギーマトリックス(FEM、フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる)の各ポイントに対するクリティカルディメンジョン及び側壁角度測定値の独特の組み合わせを有する単一の構造を使用することができる。クリティカルディメンジョン及び側壁角度のこれらの独特の組み合わせが利用可能である場合は、フォーカス及びドーズ値は、これらの測定値から独特に決定することができる。
【0053】
[00052] メトロロジターゲットは、複合格子の集合体であり得、大部分がレジストにおけるリソグラフィプロセスによって形成されるが、例えば、エッチングプロセスの後にも形成される。格子の構造のピッチ及び線幅は、メトロロジターゲットから得られる回折次数を捕捉できるように、測定光学系(具体的には、光学系のNA)に強く依存し得る。以前に示した通り、回折信号は、2つの層の間のシフト(「オーバーレイ」とも呼ばれる)を決定するために使用することも、リソグラフィプロセスによって生成されるようなオリジナルの格子の少なくとも一部を再構築するために使用することもできる。この再構築は、リソグラフィプロセスの質のガイダンスを提供するために使用することができ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために使用することができる。ターゲットは、ターゲットにおけるデザインレイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成された、より小さなサブセグメンテーションを有し得る。このサブセグメンテーションにより、ターゲットは、全プロセスパラメータ測定値がデザインレイアウトの機能部分に酷似するように、デザインレイアウトの機能部分に一層類似するように挙動する。ターゲットは、アンダーフィルモード又はオーバーフィルモードで測定することができる。アンダーフィルモードでは、測定ビームは、ターゲット全体より小さいスポットを発生させる。オーバーフィルモードでは、測定ビームは、ターゲット全体より大きいスポットを発生させる。そのようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することも可能であり得、したがって、それと同時に異なる処理パラメータを決定することも可能であり得る。
【0054】
[00053] 特定のターゲットを使用したリソグラフィパラメータの全体的な測定の質は、少なくとも部分的には、このリソグラフィパラメータの測定に使用される測定レシピによって決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ若しくは複数のパラメータ、測定された1つ若しくは複数のパターンの1つ若しくは複数のパラメータ又はその両方を含み得る。例えば、基板測定レシピで使用される測定が回折ベースの光学的測定である場合は、この測定のパラメータの1つ又は複数は、放射線の波長、放射線の偏光、基板に対する放射線の入射角、基板上のパターンに対する放射線の方位などを含み得る。測定レシピを選択する際の基準の1つは、例えば、プロセス変動に対する測定パラメータのうちの1つの感受性であり得る。さらなる例は、参照によって全体として本明細書に援用される、米国特許出願第2016-0161863号及び公開済みの米国特許出願第2016/0370717A1号に記載されている。
【0055】
[00054] リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法決定及び配置に高い精度を必要とする処理において最もクリティカルなステップの1つであり得る。この高い精度を確保するために、
図3に概略的に示されるように、3つのシステムをいわゆる「ホリスティック」制御環境において組み合わせることができる。これらのシステムの1つは、リソグラフィ装置LAであり、これは、メトロロジツールMT(第2のシステム)及びコンピュータシステムCL(第3のシステム)に(仮想的に)接続される。そのような「ホリスティック」環境の鍵は、これらの3つのシステム間の協調を最適化して、プロセスウィンドウ全体を強化し、厳格な制御ループを提供することにより、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングが確実にプロセスウィンドウ内にとどまるようにすることである。プロセスウィンドウは、プロセスパラメータ(例えば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)の範囲を規定し、この範囲内で特定の製造プロセスが規定の結果(例えば、機能する半導体デバイス)を産出し、この範囲内でリソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータが変動し得る。
【0056】
[00055] コンピュータシステムCLは、パターニングされるデザインレイアウト(の一部)を使用して、どの分解能向上技法を使用すべきかを予測することが可能であり、演算リソグラフィのシミュレーション及び計算を実行して、パターニングプロセスのプロセスウィンドウ全体の最大化を達成するマスクレイアウト及びリソグラフィ装置設定を決定することが可能である(
図3では、第1のスケールSC1の両方向矢印で示されている)。分解能向上技法は、リソグラフィ装置LAのパターニング可能性に適合するように構成することができる。また、コンピュータシステムCLを使用して、プロセスウィンドウ内のどの場所でリソグラフィ装置LAが現在動作しているかを検出して(例えば、メトロロジツールMETからの入力を使用して)、例えば、準最適な処理が原因で、欠陥が存在する可能性があるかどうかを予測することも可能である(
図3では、第2のスケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0057】
[00056] メトロロジツールMTは、正確なシミュレーション及び予測を可能にするための入力をコンピュータシステムCLに提供することができ、例えば、リソグラフィ装置LAの較正ステータスにおいて、起こり得るドリフトを識別するためのフィードバックをリソグラフィ装置LAに提供することができる(
図3では、第3のスケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0058】
[00057] スキャトロメータなどのメトロロジ装置の一例が
図4に示される。それは、放射5を基板W上に投影する広帯域(例えば、白色光)放射プロジェクタ2を含み得る。反射又は散乱放射10がスペクトロメータ検出器4に送られ、スペクトロメータ検出器4は、鏡面反射放射のスペクトル6を測定する(すなわち、波長λの関数としての強度Iの測定)。このデータから、検出スペクトルを生じさせる構造又はプロファイル8が、処理ユニット(PU)によって、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって、又は
図4の下部に示されるようなシミュレーションスペクトルのライブラリとの比較によって再構築され得る。一般に、再構築のために、構造の一般形態は分かっており、幾つかのパラメータは、構造が作られたプロセスの知識から想定され、それによって、スキャトロメトリデータから決定されるべき、構造の数個のパラメータのみが残される。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成されてもよい。
【0059】
[00058] メトロロジ装置(
図4に示されるスキャトロメータなど)の例の透過バージョンは、
図5に示されている。透過した放射線11は、スペクトロメータ検出器4に渡され、スペクトロメータ検出器4は、
図4に対して論じられるように、スペクトル6を測定する。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。任意選択的には、<1nm、任意選択的には、<0.1nm、任意選択的には、<0.01nmの波長を有する硬X線放射線を使用する透過バージョン。
【0060】
[00059] 光学メトロロジ方法の代替として、例えば、<0.01nm、<0.1nm、<1nm、0.01nm~100nm、0.01nm~50nm、1nm~50nm、1nm~20nm、5nm~20nm及び10nm~20nmの少なくとも1つの波長範囲を有する放射線など、硬X線、軟X線又はEUV放射線の使用も考慮されている。上記で提示される波長範囲の1つで機能するメトロロジツールの一例は、透過小角X線散乱(その内容が参照によって全体として本明細書に援用される米国特許出願公開第2007224518A号のようなT-SAXS)である。T-SAXSを使用したプロファイル(CD)測定については、Lemaillet et al,“Intercomparison between optical and X-ray scatterometry measurements of FinFET structures”, Proc. of SPIE, 2013, 8681によって論じられている。レーザ生成プラズマ(LPP)X線源の使用については、参照によって全体として本明細書に援用される米国特許出願公開第2019/003988A1号及び米国特許出願公開第2019/215940A1号において説明されていることに留意されたい。かすめ入射におけるX線(GI-XRS)及び極端紫外線(EUV)放射線を使用した反射率測定技法は、基板上の膜及び層のスタックの特性を測定するために使用することができる。反射率測定法の一般的な分野内では、角度測定及び/又は分光技法を適用することができる。角度測定法では、異なる入射角での反射ビームの変動を測定することができる。他方では、分光反射率測定法は、所定の角度で反射する波長のスペクトルを測定する(広帯域放射を使用して)。例えば、EUVリソグラフィにおける使用のためのレチクル(パターニングデバイス)の製造の前に、マスクブランクの検査のために、EUV反射率測定法が使用されている。
【0061】
[00060] 適用範囲により、例えば、硬X線、軟X線又はEUV領域における波長の使用では不十分な場合がある。米国特許出願公開第20130304424A1号及び米国特許出願公開第2014019097A1号(Bakeman et al/KLA)は、CDなどのパラメータの測定値を得るために、120nm~2000nmの範囲の波長でX線を使用して行われる測定と光学的測定とを組み合わせたハイブリッドメトロロジ技法について説明している。CD測定値は、1つ又は複数の共通のを通じて結合することによって及びX線数学モデルと光学的数学モデルとによって得られる。引用される米特許出願の内容は、参照によって全体として本明細書に援用される。
【0062】
[00061] リソグラフィパタリング装置を使用して生成される構造を測定するためのメトロロジツールMTの多くの異なる形態を提供することができる。メトロロジツールMTは、構造を調べるために電磁放射線を使用することができる。放射線の特性(例えば、波長、帯域幅、パワー)は、ツールの異なる測定特性に影響を及ぼし得、一般に、波長が短いほど、分解能を増大することができる。放射線波長は、メトロロジツールが達成することができる分解能に影響を及ぼす。従って、小さな寸法を有するフィーチャを備える構造を測定できるようにするため、短波長放射源を備えるメトロロジツールMTが好ましい。
【0063】
[00062] 放射線波長が測定特性に影響を及ぼし得る別の方法は、放射線波長で検査予定の材料の侵入深さ及び透過率/不透過率である。不透過率及び/又は侵入深さに応じて、透過又は反射における測定に対して放射線を使用することができる。測定のタイプは、構造/基板の表面及び/又はバルク内部についての情報が得られるかどうかに影響を及ぼし得る。従って、侵入深さ及び不透過率は、メトロロジツールに対する放射線波長を選択する際に考慮すべき別の要素である。
【0064】
[00063] リソグラフィ技術でパターン形成された構造の測定に対する、より高い分解能を達成するため、短波長を有するメトロロジツールMTが好ましい。これは、例えば、電磁スペクトルのUV、EUV及びX線部分など、可視波長より短い波長を含み得る。透過小角X線散乱(TSAXS)などの硬X線方法(HXR)は、硬X線(波長<0.1nm)の高い分解能及び高い侵入深さを利用し、従って、透過形式で動作し得る。他方では、軟X線及びEUV(波長>0.1nm)は、ターゲットの深くまで侵入することはないが、プローブ予定の材料における豊富な光学応答を誘発し得る。これは、多くの半導体材料の正当な光学特性であり得、プローブ波長と同等のサイズの構造によるものであり得る。その結果、EUV及び/又は軟X線メトロロジツールMTは、例えば、リソグラフィ技術でパターン形成された構造からの回折パターンの撮像又は分析によって、反射形式で動作し得る。軟X線は、0.1~1nmの範囲の波長を有し得る。
【0065】
[00064] 硬X線、軟X線及びEUV放射線の場合、大量生産(HVM)用途における適用は、必要な波長で利用可能な高輝度の放射源の不足が原因で制限され得る。硬X線の場合、産業用途において一般的に使用される放射源は、X線管を含む。X線管(例えば、液体金属アノード又は回転アノードに基づく、高度なX線管を含む)は、比較的入手し易く、コンパクトであるが、HVM用途のために必要な輝度が不足していることがある。シンクロトロン光源(SLS)及びX線自由電子レーザ(XFEL)などの高輝度X線源が現在存在しているが、それらのサイズ(>100m)及び高いコスト(数億ユーロ)により、それらは、メトロロジ用途に対して法外に巨大な且つ高価なものになっている。同様に、十分に明るいEUV及び軟X線放射源の可用性が欠如している。
【0066】
[00065] 高輝度X線又はEUVを提供する可能性を秘めた代替の放射源の有望なクラスは、逆コンプトン散乱(ICS)放射源である。
図6は、例示的なICS放射源400の主なコンポーネントの概略的概要を示す。(a)では、パルス電子源402は、電子パルスを電子加速器404に提供する。加速させる電子は、加速され、次いで、放出放射線発生のためにパルスレーザ406によって照射される。放出放射線は、電磁スペクトルの極端紫外線、軟X線及び/又は硬X線部分の波長を含み得る。放出放射線は、1nm未満、0.1nm未満、0.01nm未満、0.01nm~100nm、0.1nm~100nm、0.1nm~50nm、1nm~50nm及び10nm~20nmの範囲のうちの1つ又は複数の波長を含み得る。ここでは、ICS放射源の動作についてさらに詳細に説明する。
【0067】
[00066] パルス電子源402は、光電子放出源であり得、UVレーザパルスであり得るレーザパルスをカソードに向けて発射することによって、カソードから電子パルスが押し出され得る。パルスレーザ406からのレーザビームは、電子パルスの伝播方向に対向して伝播する成分を含む伝播方向を有し得る。その代替として又はそれに加えて、パルスレーザ406の伝播方向は、電子パルスの伝播方向に対する垂直及び/又は共動成分を有し得る。後方励起型レーザパルスは、電子パルスと衝突し得る。電子は、光の速さに近い速度で移動し得る。相対論的ドップラー効果により、電子に跳ね返されたレーザ光子は、放出放射線(例えば、X線光子)に変換され得、以下の本文における例として使用される。これにより、電子と同じ方向に移動する狭X線ビームが構成される。現時点では、ICS放射源によって実演される輝度は、依然として、109~1011光子/s/mm2/mrad2/0.1%BW程度である。この輝度は、HVMセットアップを意図するメトロロジ用途において目的とする輝度を数桁下回るものである。HMV X線メトロロジセットアップは、少なくとも1012~1014光子/s/mm2/mrad2/0.1%BWの輝度を有する放射源を必要とし得、必要な明度は、特定の用途に依存する。上述のICS放射源の低い輝度は、個々の電子によって発生するX線がインコヒーレントに加算されるという事実に部分的に起因し得る。インコヒーレントな加算は、従来のICS放射源400の輝度が電子の数Nに線形比例することを意味する。対照的に、X線光子がコヒーレントに加算される場合は、輝度は、電子の数に二次式的に(N2に比例して)拡大することになる。本説明に記載されるように、これは、例えば、個々の電子が同相のX線光子を放出して、それらの強度がコヒーレントに加算された場合に、達成することができる。
【0068】
[00067] ICS放射源においてX線光子のコヒーレントな放出を達成するための考えられる方法の1つは、超低温電子源(UCES)を使用するものであり、それにより、ICS放射源の放出輝度の複数桁の増大が可能になる。セットアップでは、従来の光電子放出電子源の代わりに、超低温電子源が使用される。これは、
図6の画像(b)に示されており、ICS放射源408は、超低温電子源410を有する。UCESを使用する重要な利点は、発生する電子パルスの電子密度分布(電子雲とも呼ばれる)を合わせて調整できることである。
図6(b)では、密度分布は、電子がUCESを出る際に、一続きの狭い間隔のバンチ412に電子を集中させるように制御される。バンチングをどのように達成できるかについては、参照によって本明細書に援用される、国際公開第2020/089454号及びFranssen, J. G. H., et al.“From ultracold electrons to coherent soft X-rays.”arXiv preprint arXiv:1905.04031 (2019)においてさらに詳細に説明されている。
【0069】
[00068] 発生するX線光子をコヒーレントに加算させ得る方法の1つは、パルスにおける電子バンチ間の間隔を、発生するX線放射線の波長とほぼ等しくすることによるものであり得る。これは、例えば、X線発生のために電子パルスがレーザパルス416に到達する前に、加速器414によって部分的に達成することができる。上記のように、このコヒーレントな加算は、ICS放射源の輝度のかなりの部分がN2に比例するようになることを意味し得、発生するX線の輝度の数桁の増大をもたらす。この輝度の増大により、放射源は、HVMリソグラフィメトロロジツールMTにおいてなど、より高い輝度の用途に適したものになり得る。UCES駆動のICS放射源の別の利益は、いくつかの用途において重要な特性である、空間的に完全にコヒーレントなX線パルスをもたらすことであり得る。
【0070】
[00069] コヒーレントなX線発生をどのように達成できるかについて説明するには、超低温電子源の動作原理を理解することが役立ち、それについては、
図7に関連して説明する。画像(a)では、超低温原子500の雲が生成され得る。雲は、キャビティ501と呼ばれるエリアにおいて生成され得る。キャビティ501は、例えば、原子物理学において周知の技法である、レーザビーム及び磁場の組み合わせを伴う光磁気トラップを含み得る。一実施形態では、キャビティ501は、スペクトルのマイクロ波領域に電磁場を限定する閉鎖された(又は大部分が閉鎖された)金属構造から成る、特別なタイプの共振器であるマイクロ波キャビティ又は高周波(RF)キャビティである。その構造は、中空であるか又は誘電材料が充填される。マイクロ波は、キャビティの壁の間を何度も行き来する。キャビティの共振周波数では、マイクロ波は、キャビティ内において定常波の形成を強める。従って、キャビティは、オルガンパイプ又は楽器のサウンドボックスと同様に機能し、その共振周波数である一連の周波数で優先的に振動する。RFキャビティもまた、加速電圧の印加によって、キャビティを通過する荷電粒子を操作することができ、従って、粒子加速器並びにマイクロ波真空管(クライストロン及びマグネトロン)において使用される。次に、画像(b)では、原子502は、2つの後方励起型レーザ504によって励起され、定常波が形成され得る。定常波などの強度パターンを生成するため、代替の技法(例えば、空間光変調器の使用など)を使用することができる。定常波の特性は、局所強度が最大強度とゼロとの間で半波長ごとに変調されるものであり得る。原子は、強度が高い場所では、高エネルギー状態に励起され、原子は、強度が低い場所では、励起されない。これにより、励起原子バンチのパターンを生成することができる。バンチ間の間隔506は、励起レーザ504の波長の半分に等しいものであり得る。例として、
図7では、励起原子バンチ間の間隔506は、780nmの波長を有する励起レーザ504によって生成される場合、390nmであり得る。画像(c)では、イオン化レーザパルス508が印加され得る。パルス508の光子エネルギーは、励起原子をイオン化できるほど十分に高いが、非励起原子をイオン化できるほど十分に高いものではない。従って、これにより、定常波パターンによって生成された励起原子506と実質的に同じバンチ構造を有する電子雲510が発生し得る。電子雲は、この説明では、電子パルスと呼ぶことができる。電子は、高い励起レーザ強度と高いイオン化レーザ強度の両方の組み合わせが存在している場所で発生し得る。従って、電子雲を発生させる代替の実施形態は、構造イオン化レーザ(例えば、定常波又はSLM発生)と構造化されていない励起レーザとを組み合わせたものや、構造化された励起レーザと構造イオン化レーザの組み合わせを含み得る。後者の実施形態では、例えば、異なる強度パターンを有する励起レーザとイオン化レーザを組み合わせることによって、より複雑な電子雲パターンが発生し得る。画像(d)では、キャビティ501から出る構造化された電子雲510は、電極514(a)と電極514(b)との間の静的電場512によって加速させることができる。
【0071】
[00070] 本発明人等は、
図7に関連して説明される超低温電子発生方法と関連付けられる問題を確認した。すなわち、上記の画像(d)では、電子は、静電場によって加速させる。そのような場は、典型的には、
図7に示されるように、キャビティ501内において原子雲506を取り囲む後方電極と前方電極との間に静電圧を印加することによって生成することができる。しかし、このスキームの問題は、後方電極514(a)の方に近い原子から生じる電子が、前方電極514(b)のアパーチャを通じて出る前に、加速場512において、前方電極514(b)の方に近い原子から生じる電子より多くの時間を費やし得ることであり得る。その結果、キャビティ501の後方で生じた電子は、前方で生じた電子より大きい速度でキャビティ501を出ることになり得る。後方で生じた電子は、前方で生じた電子に追いつき及び/又は追い越し始めることになり得る。
【0072】
[00071]
図8は、キャビティ601から出る電子雲を加速させるための2つの電極の例示的なセットアップを示す。電極は、電場Eを生み出し、電場Eは、キャビティ全体を通じて実質的に一定であり得、E=V
0/Lによって得ることができ、式中、V
0は、電極の両端間に印加される電圧であり、Lは、2つの電極間のキャビティ601の長さである。
図8では、電子雲の中心に対する位置zにおける電子によって得られる速度vは、前方電極までのその初期の距離z
0-zに比例し、その結果、
v(z)=v
0+
となる。
【0073】
ここでは、z
0は、雲中心から前方電極までの距離である。v
0は、雲中心によって得られる速度である。定数h<0は、電子雲のチャープと呼ぶことができ、
【数1】
によって近似的に得られる。
【0074】
結果的に、電子雲は、
図8の画像(b)に示されるように、短い距離dに沿って伝播した後、非常に短い長さまで自己圧縮し得、
【数2】
である。
【0075】
[00072] 上述の通り及び
図8(b)に示されるように、電子雲は、時刻t
0で発生し、加速してキャビティ601を出るが、電子は、様々な速度を有する。様々な速度により、雲は、t
1に示されるように、加速して出口602から遠ざかると共に圧縮され得る。時刻t
2では、電子は、その最も圧縮された状態に到達する。電子雲がその最も圧縮されたポイントに到達する場所は、自己圧縮ポイントと呼ぶことができる。キャビティ601の出口602と自己圧縮ポイントとの間の距離dは、典型的には、数mmであり得る。電子雲が自己圧縮ポイントを通過する際、キャビティの後方の近くで発生した電子は、キャビティ601の前方及び出口602の近くで発生した電子を追い越し得る。これは、時刻t
3において示されており、電子雲のサイズは、圧縮ポイントにおけるそのサイズと比べて拡大している。本開示の目的の1つは、自己圧縮の課題を克服するための方法及び装置を提供することである。
【0076】
[00073] 本発明の第1の態様によれば、
図9に示されるように、X線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための方法が提供される。方法は、キャビティ内部の超低温励起原子のパターンから複数の電子を発生させること(702)を含み得る。電子は、励起原子のパターンに対応する密度分布を有し得る。キャビティから出る電子は、非静的加速プロファイルを使用して、加速させることができる(704)。加速プロファイルは、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布を制御することができる。
【0077】
[00074] 上述の方法の利点は、非静的加速プロファイルにより、上記の
図8に関連して説明される課題を克服できることである。静的電場を使用して加速させ、電子がキャビティ内のどこで発生したかに応じて、キャビティを出る電子に異なる速度を持たせる代わりに、非静的加速プロファイルは、この影響を軽減するように設計することができる。キャビティ内部で様々な加速を電子に適用することにより、キャビティを出る電子の密度分布にわたる速度の制御が可能であり得る。また、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布の形状及び/又はサイズの制御も可能であり得る。
【0078】
[00075] 加速プロファイルは、電子がキャビティを出る際に電子の速度が実質的に等しくなるようにキャビティ内の電子の速度を制御するように設計することができる。この雲の電子の実質的に等しい速度により、電子がキャビティから遠ざかると共に、キャビティの出口における電子の密度分布が実質的に維持され得る。電子の密度分布は、電子雲及び/又は電子パルスと呼ぶこともできる。
【0079】
[00076] 加速プロファイルは、電子の密度分布におけるチャープを低減することができる。チャープの潜在的な定義は、上記の
図8に関連して提供される。チャープは、密度分布における異なる位置の電子間の速度の差によって生じ得、それにより、電子の伝播に伴う密度分布の形状の変化が生じる。電子がキャビティを出る際に密度分布におけるすべての電子の速度が実質的に等しい例では、チャープを実質的に排除することができる(すなわち、チャープをゼロまで低減することができる)。すべての電子が実質的に同じ速度を有する、前後方向にコリメートされた密度分布(すなわち、ゼロチャープの密度分布)をもたらす加速プロファイルは、密度分布の自己圧縮を回避する加速プロファイルと呼ぶこともできる。
【0080】
[00077] 非静的加速プロファイルは、電磁場を含み得る。場は、例えば、非静的電場E(z,t)であり得る。場は、時間tに応じて変化し得、キャビティ内のいかなる設定場所の場も、経時的に変化する。また、場は、伝播方向zに沿った位置に応じて変化し得、キャビティ内のzに沿った異なる位置は、どの時点においても異なる電場強度を経験し得る。電場強度は、キャビティから出る電子雲が加速する間の範囲にわたって変化し得る。
【0081】
[00078] キャビティは、電子が発生するボリュームであり得る。キャビティは、高い電場強度(例えば、数十MV/m程度の電場であり、数十keV~数MeVの範囲の運動エネルギーを有するパルスの電子バンチをもたらし得る)の生成をサポートするための共振構造であり得る。キャビティは、密閉空間(部分的な)でも、開放空間でもあり得る。キャビティは、キャビティから電子を取り出すことができる少なくとも1つの出口を含み得る。キャビティは、超低温原子のパターンから電子の発生を可能にするための共振マイクロ波構造であり得る。キャビティは、電子がキャビティを出る出口の働きをするアパーチャを含み得る。キャビティは、例えば、キャビティ内で発生した電子を加速させるための前方及び後方電極を含み得る。前方電極は、電子雲の出口としての役割を果たすアパーチャを含み得る。キャビティは、長方形形状、又は、非静的加速プロファイルを達成するためのより複雑な非長方形形状を有し得る。
【0082】
[00079] キャビティは、例えば、RF波が振動場を生み出し得る金属エンクロージャを含み得るRFキャビティであり得る。場は、L、S、C及びXバンドの1つ又は複数の標準化周波数に相当し得る1~12GHzの範囲の周波数で振動し得る。RFキャビティは、クライストロンRF放射源によって電力供給され得る。RFキャビティは、パルスモードで動作することができる。パルス周波数は、キャビティ内部の超低温原子雲が補充される速さによって決定することができる。これは、典型的には、kHz範囲であり得る。気相の十分に高い密度の原子を小さなボリュームに閉じ込めるのに適したいかなるデバイスも、超低温原子雲及びパターンを形成するために使用することができる。これは、例えば、光磁気トラップを含み得る。
【0083】
[00080] 上述の通り、非静的加速プロファイルでキャビティから出る電子雲を加速させることは、時間及び位置依存性電場E(z,t)を使用して達成することができる。電場強度は、電子雲が発生して電子雲がキャビティの出口の方へ進む間の値の範囲にわたって変化し得る。電子が経験する値の範囲は、キャビティ内部で電子が発生した初期の位置zに依存し得る。キャビティ内部の異なる場所で発生した電子に対するこの変動により、電子の速度分布を修正することが可能になり得る。具体的には、電子内のチャープを修正することができる。
【0084】
[00081] 非静的加速プロファイルを通じて電場の修正及び電子の速度の制御を行うため、電場分布E(z,t)は、電子雲がキャビティを出るのに要する時間の間にかなり変化し得る。電場分布E(z,t)は、伝播方向zに沿った異なる位置における電子においてかなり異なる場の値を観測できるほど十分に強い場勾配を伴い得る。この文脈では、十分に強い場勾配dE/dzの大きさは、E/Lほどであり得、Eは、キャビティにおける電場強度であり、Lは、電子雲の長さである。勾配の強度は、特定の用途のE及びLに依存し得るが、MV/m2~GV/m2程度の範囲であり得る。また、電場分布E(z,t)は、ベッセルから出る電子雲をかなりの速度で加速できるような、とても強いものでもあり得る。この文脈では、かなりの速度とは、電子雲が加速器を通過した後にX線が発生するように、十分な速度で電子雲を加速器に注入できるような速度である。この速度は、例えば、光の速さの少なくとも10%であり得る。その上、速さが大きいほどクーロン相互作用(衝突)が少なくなるため、電子速度は、より大きい方が好ましい。これらのクーロン衝突は、バンチング分解をもたらし得るため、有害なものであり得る。従って、速さ(ビームエネルギー)を増大することによってそれらのクーロン衝突を低減することは、電子速度の増大の利点であり得る。この段落で説明される特性を有する電場は、例えば、強振動電磁場を確立することができるRFキャビティにおいて達成することができる。
【0085】
[00082] 非静的加速プロファイルとしての使用に適した例示的な電場は、以下の通りであり得、
【数3】
式中、E
0は、ピーク電場強度であり、φは、イオン化ステップに対する場振動のタイミングを定義する場の位相であり、ωは、キャビティ内の定常波の角周波数であり、Lは、z方向に沿ったキャビティの長さである。角周波数は、
【数4】
であり、cは、光の速さを表す。いくつかの例示的な値は、1GHz~12GHz(例えば、1GHz~10GHz)の範囲の
【数5】
を含み得る。これは、L、S、C及びX周波数バンドとして示され得る。対応するキャビティ長は、12mm~150mmの範囲であり得る。
【0086】
[00083]
図10は、上記の式(1)によって与えられる場E(z,t)によってキャビティから出る電子雲が加速している例示的なシミュレーションを示す。この例示的なシミュレーションに対して、次のパラメータ、すなわち、z伝播方向に沿った長さが1mmと測定された電子雲、L=3cmの長さを有する2GHzのRFキャビティ及び電場E
0=9MV/mが使用された。
図10では、実線は、パルスの後方の電子、すなわち、キャビティの出口からさらに遠くの、後方電極の近くで発生した電子に相当する。破線は、パルスの前方の電子、すなわち、キャビティの出口近くの、前方電極の近くで発生した電子に相当する。
図10(a)は、キャビティから出る電子の加速の間に両方の例示的な電子が経験する電場を示す。初期の段階では、グラフの100psまでは、後方電子は常に、前方電子よりも最大場に近い。この状況は、静場加速の事例と同様である。しかし、場は時間振動するため(式(1)を参照)、場は、電子がキャビティを出る前に、逆の方向に設定され得る。これは、例えば、
図10(a)の100ps~200psにおいて見られる。
図10(b)に示されるように、反転電場は、電子を部分的に減速させ得、それにより、それらの取得速度の一部が相殺され得る。
【0087】
[00084] このセットアップの利点は、例えば、電子間の速度差が相殺されるようにパラメータE
0、φ及びz
0に対する適切な値の選択及び設定を行うことによって、場反転をチューニングできることであり得る。
図10(a)に示されるように、前方電子の方が加速度が大きく(0ps~100ps)、また、減速度も大きい(100ps~200ps)。正味の効果は、
図10(b)に示されるように、前方電子と後方電子の両方が同じ速度でキャビティを出るように、チューニングすることができる。パルスのすべての電子に対する出口速度が同じであることは、この電子パルスに対するチャープhがゼロにチューニングされることに等しい。その結果、パルスの自己圧縮ポイントは発生しない。その上、キャビティの内外で電子を加速させるプロセスの間、z方向に沿った異なる位置における電子は、その軌道が交差することはない。
図10(c)に示されるように(パルスの中央に対する電子の位置が示されている)、前方及び後方電子は、離れた位置でキャビティを出ることができる。
図10(c)に示されるように、電子パルスは、発生時のサイズと比べて、やや圧縮されてキャビティを出ることがある。
【0088】
[00085] 電子は、パルス電子源によって発生する単一のパルスを形成する電子の雲であり得る。電子は、例えば、上記の
図7に関連して説明されるように発生し得る。パルスは、複数のバンチを含み得る。
【0089】
[00086] 電子の密度分布は、発生した電子パルスであり得、複数の電子バンチを含む。電子パルスは、z方向に沿って互いに空間的に分離した複数の電子バンチを含み得る。各バンチは、バンチ間のエリアに位置する低い密度の電子と比べて、より高い密度の複数の電子を含み得る。複数のバンチは、例えば、上記の
図6に関連して説明されるように、キャビティ内部に存在する超低温原子のパターンから生成することができる。
【0090】
[00087] 上記の
図10に関連して説明される加速プロファイルによれば、電子パルスのバンチ間の分離が維持され得る。パルスの異なるバンチは、互いにオーバーラップすることなく、加速してキャビティから出ることができる。バンチは、加速してキャビティから出る際、サイズ圧縮され、パルスの圧縮の一部として互いに接近して移動し得る。電子パルスのバンチの分離は、例えば、0.39~10μmの範囲であり得る。電子パルス長は、1mm程度であり得る。パルスのバンチの数は、100~2500の範囲であり得る。
【0091】
[00088] 加速プロファイルは、電子パルスのチャープをゼロにチューニングすることに関連して説明されているが、上述の方法は、他のチャープ及び/又は速度構成を設定するために使用することができる。チャープは、電子の速度とは無関係に制御することができるが、それは、静場では不可能である。具体的には、ビームチャープは、非常に短い時間内に自己圧縮ポイントを通過できるように、大きな値まで意図的に増加される。これにより、マイクロ構造分解を制限できるほど十分に空間電荷効果の持続時間を短縮できるため、自己圧縮ポイントにおける有害なクーロン相互作用低下を回避するための代替の方法を提供することができる。
【0092】
[00089] 静的電場及びRFキャビティが直列に使用されることもある。複数のRFキャビティを直列に使用することもできる。上記では、2つの電極を含む長方形のキャビティ形状が説明されているが、方法は、より一般的なキャビティ形状を使用することもある。式(1)は単一の定常波場分布(すなわち、キャビティの最低次モード)を示しているが、一般に、RFキャビティは、複数の異なるモードをサポートすることができる。従って、最終的な速度分布は、RFキャビティモードの組み合わせを使用することによって、さらにチューニングすることができる。RFキャビティの定常波モードというよりむしろ、RF進行波構造を使用することもできる。
【0093】
[00090] 上記で論じられる密度分布の制御は、パルスの伝播方向(z方向)に沿った制御に重点が置かれる。また、加速場は、静的であるか又はRFであるかや、どのRFキャビティモード(及びRFキャビティ形状)であるかにかかわらず、x及びy方向に沿った電子パルスの電子の上下左右方向の速度分布にも影響を及ぼし得る。いかなる電場も、前後方向勾配が上下左右方向場成分を誘発するという特性を有する。これにより、負のチャープの場合は、上下左右方向に発散する電子パルスが生じ、正のチャープの場合は、上下左右方向に収束する電子パルスが生じる。RFキャビティで動作させる際は、上下左右方向ビームサイズ及び/又は電子ビーム発散は、追加の電子光学機器(例えば、ソレノイド、四重極磁石、静電若しくは静磁場用の上下左右方向の電子光学機器又は時間依存性の上下左右方向の電子光学機器)によって制御することができる。そのような電子光学機器は、例えば、キャビティの出口の近くに提供することができる。
【0094】
[00091] 電子の密度分布は、X線発生のために使用することができる。具体的には、電子は、逆コンプトン散乱を通じてX線を発生させるために使用することができる。上述の電子の密度分布を制御するための方法は、装置によって実行することができる。装置は、例えば、X線放射源などの放射源の一部を形成することも、放射源に接続することもできる。装置は、例えば、リソグラフィ構造の測定及び/又は検査のために、メトロロジ装置において又はメトロロジ装置と共に使用するために提供することができる。装置は、リソグラフィ用途において使用するためのものであり得、例えば、リソグラフィセルにおいて、電子の密度分布を制御するための装置を提供することができる。
【0095】
[00092] 制御された速度プロファイルを用いてキャビティの外部において電子の密度分布が提供された時点で、X線発生のためにパルスを送り先に導くことができる。上述の通り、密度分布は、複数のバンチを含み得る。逆コンプトン散乱X線源におけるバンチのパターンの適用は、X線源の輝度及び/又は時間的コヒーレンスを増大するという利点を有し得る。セットアップは、同様の輝度性能を達成する他のタイプのX線源と比べてコンパクトであり得る。これは、例えば、電子分布を示す
図11に示されている。
図11(a)は、ランダムに分布した電子を示す。これらの電子から発生するX線放射線は、ランダムな分布に起因して、インコヒーレントに放出され得る。これにより、上記の
図6に関連して説明されるように、電子の数Nに比例するX線源輝度がもたらされ得る。
【0096】
[00093]
図11(b)は、バンチにまとまった電子を示す。バンチとなった密度分布は、レーザパルスで照射する際に、X線放射線のコヒーレントな放出の増大をもたらし得る。しかし、発生するX線放射線のコヒーレント性を増大させるため、バンチ間の間隔は、発生するX線放射線の波長に近似するものであるべきである。バンチがキャビティを出る際の密度分布におけるバンチ間の間隔は、
図7に関連して説明されるように、励起レーザ504及び/又はイオン化レーザの定常波パターンの周期程度のものであり得る。この間隔は、所望の間隔より数桁大きいものであり得る。従って、X線波長の間隔を達成するため、パルスが生成されたキャビティをパルスが出た後に、電子パルスの密度分布のさらなる制御及び操作が必要であり得る。本説明の目的は、X線波長とほぼ等しくなるように電子バンチ間の間隔を操作することによって、放射源輝度のさらなる増大を達成することである。バンチ間の間隔を低減するため、z伝播方向に沿って電子パルスを前後方向に圧縮するようにビームラインを提供することができる。
【0097】
[00094]
図12は、コヒーレントなX線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するための方法のフロー図を示す。具体的には、発生させるX線は、軟X線であり得る。方法は、密度分布を有する複数の電子バンチを受け取ること(1002)を含む。電子バンチの伝播方向に沿ったバンチ間の距離が、発生されるX線放射線の波長に対応するように、複数の電子バンチが圧縮される(1004)。
【0098】
[00095] 上述の通り、圧縮前の電子バンチ間の距離又は間隔は、数百ナノメートル程度であり得る。X線波長と整合させるための電子バンチ間の間隔の低減は、逆コンプトン散乱を通じてコヒーレントなX線発生の増加を可能にし、それにより、X線源の輝度が増大するという利点を有し得る。
【0099】
[00096] ICS発生X線におけるコヒーレント性向上の基準は、
k
mod=k
x+k
0cosθ
0
であり得、式中、
【数6】
は、波数を表し、λ
modは、バンチ間の間隔(圧縮後)を表し、
【数7】
であり、λ
xは、X線波長であり、
【数8】
であり、λ
0は、ICSレーザ波長であり、θ
0は、電子ビーム経路に対するICSレーザの入射角である。ICSレーザ波長に関連する項は、他の項と比べて小さいものであり得る。そのような事例では、式は、k
mod≒k
xで近似され得る。圧縮前のバンチ間の間隔は、λ
mod,0によって表すことができ、間隔の前後方向(z伝播方向に沿った)圧縮係数を
【数9】
として表せることを意味する。
図7及び8に関連して説明される電子密度分布の場合、コヒーレントなICS X線発生を可能にするために数桁の圧縮が必要とされ得る。そうでなければ、M≪1であり得る。また、Mは、拡大係数又は縮小係数と呼ぶこともできる。
【0100】
[00097] 圧縮方法は、ビームラインによって実行することができる。ビームラインのコンテンツを説明するため、位相空間における電子パルスの速度及び位置分布を考慮することが有用であり得る。電子バンチの前後方向ダイナミクスを視覚化する上で有用な方法は、いわゆる前後方向位相空間をプロットすることであり得、それは、伝播方向における粒子運動量p
zと、電子バンチの粒子の前後方向位置zとのプロットである。例示的な前後方向位相空間プロットは、
図13に示されており、ビームラインに沿った異なる場所に対する位相空間がスケッチされている。濃い線は、高い粒子密度を示し、薄い背景は、低い粒子密度を示す。電子バンチは、位置z
n=nλ
modにおける高い電子密度として発生し、それらの位置の間に低い電子密度が発生し得る。この文脈では、高い及び低い密度の意味は、互いと比較して評価され得る。理想的には、低い電子密度は、電子の欠如である(1m
3あたりの電子が0である)。高い電子密度の例は、放射源において、1m
3あたり10
16~10
18の電子の範囲であり得る。相互作用場所では、高い密度は、1m
3あたり10
16~10
18/Mの電子の範囲であり得、Mは、上記で紹介した拡大係数であり、上下左右方向サイズは一定であると想定される。
【0101】
[00098] 位相空間表現では、バンチングは、一連の垂直線のように見える場合がある。プロット(i)は、放射源の出口における電子バンチの状態を表し得る。全体的な電子バンチは、特定の有限の長さ及び特定の粒子運動量拡がりを有し得、それらは、グラフにおいて、位相空間楕円と呼ばれる位相空間における楕円輪郭の幅及び高さによって表すことができる。位相空間では、ビームラインの目標は、最終的な位相空間(iv)が放射源におけるものより、係数1/Mで間隔が狭くなった垂直線のパターンを示すように、電子バンチを操作することであり得る。数学的には、この最終的な位相空間は、線形変換によって、初期の位相空間から得ることができる。例えば、複数のバンチを含むグラフ(i)の密度分布は、グラフ(iv)では、係数1/Mで水平方向に縮小され得る。この結果は、例えば、加速器ビームラインにおいて利用可能な2つの初等線形変換を組み合わせることによって得ることができる。これらは、位相空間の水平スキュー及び位相空間の垂直スキューであり得る。位相空間におけるスキューの意味は、
図14に示されている。上の行は、z次元における正及び負の水平スキューを示す。下の行は、z次元における正及び負の垂直スキューを示す。
【0102】
[00099] 低い電子パルスエネルギーでは、水平スキューは、特定の距離にわたってパルスを伝播させることによって得ることができ、それにより、ドリフトが構成される。この理由は、わずかに高い運動量を有する位相空間楕円の上部の粒子が、わずかに低い運動量を有する位相空間楕円の下部の電子を追い越すためである。より高い電子パルスエネルギーの場合、水平スキューは、高速粒子を低速粒子より長い又は短い経路にわたって移動させることによって得ることができる。これは、例えば、1つ又は複数の磁場を印加することによって達成することができる。これを行うための標準的な磁気デバイスは、例えば、いわゆるシケイン、ドッグレッグ及び/又はアルファマグネットを含み得る。位相空間において水平スキューを引き起こすいかなる配置も、より一般的には、分散セクションと呼ぶことができる。スキューの大きさは、R56として示され得る。この表記では、5と6の数字は、転送行列のインデックスであり、5と6は、5番目の行と6番目の列を表す。この理由は、上下左右方向のx及びy方向が、転送行列の最初の4つの行及び列を使用し、z方向が、変換に含まれる第3の方向であるためである。
【0103】
[000100] 位相空間の垂直スキューは、粒子運動量のz依存変更を適用することによって得ることができる。位相空間では、これは、位相空間楕円の一方の端部を上方へ移動し、他方の端部を下方へ移動し得る。そのような垂直スキューは、例えば、RFキャビティ構造を通じて電子パルスを伝播させることによって達成することができる。RFキャビティ構造内では、振動電場の位相は、パルスの前方(又は後方)がキャビティを横断する際には、場が加速方向にあり、電子パルスの後方(又は前方)がキャビティを横断する頃には、減速方向にあるというようなものであり得る。より一般的には、位相空間における垂直スキューを生じさせるいかなるビームライン要素も、チャーパと呼ぶことができる。スキューの大きさは、R
65として示すことができる(符号規約については、
図14を参照)。
【0104】
[000101] 初等スキュー動作の観点から、ビームラインは、所望の大きさ及び所望の順番で所望の変換ステップを適用する一連のビームライン要素を含み得る。これらのビームライン要素は、上述のような電子光学機器を含み得る。
図13に示されるように、伝播方向に沿った圧縮を達成するための動作は、初期のパルス(i)から(ii)の間では、R
1
56>0の分散セクションを含み得る。これは、上述の水平スキュー方法の何れかによって形成することができる。(ii)から(iii)の間では、R
65<0のチャーパを含み得る。これは、例えば、直列に並んだ多くのRFキャビティによって得ることができる。(iii)から(iv)の間では、R
2
56>0の第2の分散セクションが提供され得る。係数Mの圧縮を達成するには、以下の関係を満たさなければならない。
【数10】
【0105】
[000102] ビームラインの代替のバージョンは、縮小Mを達成するために提供することができる。例えば、上記の式(2)及び(3)を満たす任意の3つのビームライン要素。その上、圧縮は、多段階にわたって分散することができる(例えば、3つを超える変換要素を使用して)。多段階ビームラインでは、各段階は、上述のビームラインと同様であり得る。すべての段階の縮小係数の積は、総圧縮Mに等しいものであり得る。そのような多段階縮小は、大きな圧縮M(M≪1)が必要とされる場合に有利であり得る。この理由は、大きな圧縮の場合、より小さな複数の圧縮段階を直列で使用することによって、ビームラインの全長を短縮できるためである。z方向における位相空間の縮小をもたらすいかなるビームラインも、ビームラインで使用することができる。ビームラインは、転送行列Tによって特徴付けることができる。転送行列は、位相空間座標z及びp
zがビームラインによってどのように変換されるかを示し得る。圧縮以外には、ビームラインは、拡大を達成するためにも使用することができる。従って、係数Mは、拡大係数及び圧縮係数の一方/両方と呼ぶことができる。
【数11】
この表記を使用することにより、
【数12】
の形式(xは、任意の数)のいかなる転送行列も、拡大係数Mを達成する。
【0106】
[000103] 任意選択的には、ビームラインの終わりにデチャーパ(すなわち、第1のチャーパのものとは反対のR65の第2のチャーパ)を加えて、最終的なバンチにおけるzとpzとの間の残りの相関を取り除くことができる。任意選択的には、総バンチエネルギーを増大するため、ビームラインのいかなる位置にも、加速器を配置することができる。これは、ICSによって発生するX線の光子エネルギーをさらに増大するために有利であり得る。
【0107】
[000104] ビームラインでは、電子パルスの電子が互いに反発し合うという点で、その複雑度がかなり増し得る。これにより、バンチにおける電子のより大きな密度が原因で、バンチ間間隔を縮めるようにパルスのバンチが拡大し得る。それに加えて、速度と運動量との間には、軽度相対論的電子パルスに対する特性である非線形関係が存在し得る。この非線形関係により、位相空間の変形が生じ得る。これらの現象により、式を満たすビームラインのすべてではないもの。2及び3は、同じようにうまく機能する。空間電荷及び相対論的効果について詳細に説明する詳細な粒子追跡シミュレーションは、
図13の例示的なビームラインが、最大で3000の電子を含む電子パルスに対してうまく機能できることを示している。例示的なビームラインでは、チャーパは、単一のRFキャビティというよりむしろ、一連の複数の連続RFキャビティとして設計され得る。これは、1つのキャビティあたりの必要な電場強度を制限するためのものであり得る。
【0108】
[000105] 例示的なビームラインでは、粒子の数の増加は電子パルスのバンチング構造にかなりの影響を及ぼし得るため、寄生圧縮に関連するボトルネックにより、この増加を防ぐことができる。寄生圧縮は、パルス長が最小になるビームラインのポイントであり得る。このポイントは、R
1
56>0の場合、チャーパとICSレーザによる相互作用ポイントとの間で発生し得る。従って、対象のものであり得る代替のビームラインは、第1の分散セクションがR
1
56<0を有するものであり得る。それに加えて、このセクションの大きさの絶対値は、式3を考慮すると大きいものであり得、大きな縮小率が必要とされる。実際には、このセクションは、
【数13】
が最大化される専用アルファマグネットによって形成することができる。
【0109】
[000106] 上述の電子光学機器を使用したビームラインの代替の形態は、エコーエンハンス高調波発生EEHGを使用して圧縮を達成することであり得る。EEHGは、初期の広いピッチのバンチング構造を有するパルス内に狭いピッチのバンチを有する局所領域を得ることができる。ピッチ圧縮のためにEEHGを使用する原理は、
図15に示されている。バンチ間間隔が圧縮される複数のバンチを有する電子パルス(15(a)に示される)は、分散セクション1302を通じて伝えることができる。これは、水平スキュー位相空間(15(b)に示される)につながり得る。初期の水平スキューは、強いものであり得る。
【0110】
[000107] 次のステップでは、変調器1304を適用することができ、それにより、パルスの伝播方向であるz方向において周期的な電子運動量が変調される。この例における運動量変調の大きさは、パルスの初期の運動量拡がりよりかなり大きいものであり得る。これは、15(c)に示されるように、変調後の位相空間が、あらゆる変調時間p
1において負の傾きを有する複数の狭い間隔の線を有する領域を呈するという利点を有し得る。変調済みのパルスは、第2の水平スキューを導入するために、第2の分散セクション1306を通じて伝えることができる。これにより、負の傾きが垂直に方向付けられた(1308)線のバンドが生じ得る(15(d)を参照)。この最終的な位相空間に相当するz方向に沿った電子密度は、
図16に示されている。示されるように、EEHG手順は、距離p
1だけ離隔された、非常に狭い間隔のバンチを有する領域をもたらし得、その間隔は、λ
modに制御することができる。分散セクションの代替の実装形態を使用することができる。セクション1302には、正又は負符号を提供することができる。選択的に、セクション1306には、負符号を提供することができ、その場合、
図15(c)の大きな正の傾きを有する領域が垂直に方向付けられ得る。
【0111】
[000108] EEHGについては、Stupakov, Phys. Rev. Lett. 102, 74801 (2009)及びRibic et al., Nature Photonics 13, 555 (2019)において説明されている。上述のセットアップには、それらの参考文献において説明されるEEHGに勝るいくつかの利点がある。第1の利点は、上記のEEHG方法ステップを本明細書で説明されるように得られる電子パルスと組み合わせることである。パルスの電子の速度及び密度分布の制御により、パルスの運動量拡がりは、従来の電子パルスのものよりかなり低い。これは、相当に低い振幅で変調器を使用できることを意味し得る。
【0112】
[000109] 第2に、上記の参考文献は、自由電子レーザへの入力として狭い間隔のバンチを有する超相対論的電子パルスを提供するためのツールとして使用するための高エネルギー加速器の文脈において、EEHGを説明する。しかし、この説明は、X線発生のためのコンパクトなICS放射源においてEEHGを使用する選択肢を紹介する。従って、EEHGは、低エネルギー電子パルスに適用することができる。低エネルギー適用の利点は、単純な伝播セクションとして分散セクションを実装できることであり得る。
【0113】
[000110] その上、磁気変調器の代わりに、光変調器を使用することができる。上記の参考文献において説明されるEEHGプロセスは、変調ステップに対して使用される磁気変調器について説明する。従来の磁気変調器は、ピッチλ
uを有する磁気アンジュレータ(極性を交互に変化させる磁石の配置)から成り得る。磁気アンジュレータは、波状経路をたどるように電子を導き得る。アンジュレータは、波長λ
sを有する前方励起シードレーザパルスと組み合わされる。電子の波状運動のため、それらは、波長
【数14】
の放射線を放出し、
【数15】
であり、vは、電子速度であり、cは、光の速さである。アンジュレータは、シード光と共振し、すなわち、
【数16】
の場合、一部の電子は、相互作用から平均的にエネルギーを得る一方で、他の電子は、平均的にエネルギーを失う。平均エネルギーは、例えば、
図15(c)に示されるような周期的な運動量変調に至るパターンで得られたり、失われたりし得る。
【0114】
[000111] しかし、ICS X線源の場合、γの値は、2~10の範囲であり得る。これにより、従来のシードレーザ放射源と、サブミリメートルのピッチを有する共振磁気アンジュレータとを組み合わせる必要があり得る。このピッチは小さく、達成が困難であり得る。本明細書では、光変調器を提供することで、この課題を克服できることが提案されている。これは、コヒーレント性向上のために必要なバンチ間間隔がX線波長放射線程度であることを理由に、ICS X線発生用途において有利であり得る。光変調器では、磁気アンジュレータは、波長λ
uを有する後方励起型レーザと置き換えることができる。後方励起型レーザは、パルスレーザ放射線ビームであり得る。後方励起型レーザの逆コンプトン散乱により、電子パルスは、波長
【数17】
を有する放射線を放出し得る。シードレーザの放射線波長が後方励起型レーザ放射線と共振する場合(例えば、
【数18】
)は、従来の磁気変調器を使用した際と同じ周期的な運動量変調が結果として得られる。上記の公式では、公式の簡略化のために近似が行われている。超相対論的近似が行われている。シードレーザ及びレーザを当てた変調が電子速度の方向に沿って伝播するという近似が行われている。当業者であれば、一般化された非近似公式を代わりに使用できることが理解されよう。
【0115】
[000112] シードレーザ及び後方励起型レーザの配置を含む光変調器は、レーザの異なる入射角を用いることが可能である。異なる角度のセットアップは、対応する一般化された共振基準を有し得る。光変調器を使用する利点は、ビームラインにおける必要な経路長が、磁気変調器に対して必要とされるサイズと比べて短いことであり得る。経路長は、2つのシードレーザビーム及び後方励起型レーザビームが交差する焦点領域と同じくらい短いものであり得る。別の利点は、光変調器がX線放射源の一部を形成する際、1つ又は複数のレーザがセットアップの他の部分に存在し得ることであり得る。その結果、X線源セットアップ全体にわたって、後方励起型及び/又はシードレーザ放射源を複数回使用することができる。例えば、追加のレーザを提供する必要なく、X線源の別の部分で使用されるレーザを、光変調器の後方励起型放射源として同時に使用することができる。
【0116】
[000113] その上、低エネルギー電子パルス用途では、ICS発生X線に関し、変調器における必要な電磁力は、パルスレーザの光場によって提供できるような十分に低い(例えば、μJ程度の)ものであり得る。これは、より従来の高エネルギー自由電子レーザ用途における超相対論的電子パルスの事例では可能ではない。
図17は、例示的な粒子追跡シミュレーションの結果を示し、2つの交差するレーザビームから成る光変調器の適用後の電子パルスの小さなスライスの位相空間を示す。グラフは、上述の通り、正弦波形状に変調された、z方向に沿った高電子密度の平行バンドの構造を示す。変調器における電磁力は、レーザ強度によって定量化することができる。変調器に対する要件は、課されるエネルギー変調が電子パルスの固有のエネルギー拡がりより大きいことであり得る。この要件を満たすために必要なレーザ強度は、電子エネルギーと電子エネルギー拡がりの積に比例し得る。本明細書で説明される超低温電子パルスの場合、エネルギーは、例えば、数MeV程度であり得る。エネルギー拡がりは、数eVであり得る。これにより、必要なレーザ強度は、10
17~10
19W/m
2になり得る。これは、超低温電子源の典型的なkHz繰り返し率で、市販のフェムト秒レーザを使用して、容易に達成することができる。対照的に、超相対論的電子パルスは、1GeVに近いエネルギー及び1MeVに近いエネルギー拡がりを有し得る。これにより、必要なレーザ強度は、10
25W/m
2になり得る。これは、kHz繰り返し率で利用可能なレーザによって達することはできない非常に高い強度である。従って、超相対論的電子パルスの場合、磁気変調器を用いなければならない可能性がある。
【0117】
[000114] 上述の制御された密度及び速度分布及び/又はビームラインを用いた電子パルスは、X線パルスを発生させるために使用することができる。複数の電子バンチを含む電子パルスは、その運動エネルギーU及びそのバンチングピッチ/間隔λ
modによって特徴付けることができる。U及びλ
modの平均値を制御することによって、並びに、それに加えて又はその代替として、それらの前後方向導関数dU/dz及びdλ
mod/dzを制御することによって、多様なICS発生X線パルスを達成することが可能であり得る。
図18は、これらの異なる特徴付け特性を制御する例示的な効果を示す。グラフ1601は、z方向に沿ったバンチの前後方向運動量を示したものである。破線によって示される傾きは、zに沿った運動エネルギーの変化率に比例し得る。グラフ1602は、z方向に沿ったピッチ又はバンチ間間隔を示す。傾きは、電子パルスの伝播方向zに沿ったピッチの変化率を表したものである。
【0118】
[000115] 非ゼロエネルギー導関数dU/dzを有する電子パルスは、エネルギーチャープを伴うと言い得る。非ゼロバンチング導関数dλmod/dzを有する電子パルスは、バンチングチャープを伴うと言い得る。パルスのエネルギーチャープは、電子源において、例えば、原子雲のRF位相及び位置を適切に選択することによって制御することができる。その代替として又はそれに加えて、電子パルスのエネルギーチャープは、ビームラインにおいて、例えば、チャーパを使用することによって、制御することができる。電子パルスのバンチングチャープは、電子源において定常波を操作することによって制御することができる。これは、例えば、強く発散する励起レーザビームを交差させることによって及び/又は空間光変調器によって、或いは、ビームラインスキュー動作において非線形性を導入することによって、達成することができる。
【0119】
[000116] その上、電子パルスを照射して逆コンプトン散乱X線発生を誘発するために使用されるICSレーザパルスも同様に、意図的にチャープさせることができる。前方から後方にかけて波長が徐々に減少するレーザパルスは、正のチャープc0>0を有するレーザパルスと呼ぶことができる。エネルギーチャープ及び/又はバンチングチャープを伴う電子パルスをチャープICSレーザパルスと衝突させることにより、以下で説明される機会を提供することができる。
【0120】
[000117] 第1の機会は、極短のアト秒のX線パルス発生の発生であり得る。これは、バンチングチャープを伴う電子パルスをチャープレーザパルスと衝突させることによって達成することができる。これは、発生するX線パルスの時間圧縮をもたらし得る。圧縮機構は、チャープミラーの動作原理と同様であり得る。チャープレーザパルスは、異なる波長が鏡面内の異なる深さまで侵入し、反射することによって、前後方向に圧縮され得る。異なる波長放射線の経路長をチューニングすることにより、異なる波長に対応するレーザパルスのセクションをオーバーラップさせることができる。これは、反射パルスの圧縮をもたらし得る。超短波X線パルス発生のための機構は、同じ圧縮原理に基づいて達成することができる。
【0121】
[000118] 負のバンチングチャープを伴う電子バンチ(dλmod/dz<0)は、後方励起型の正のチャープを伴うレーザパルスと衝突させることができる。逆コンプトン散乱により、電子は、波長λx(t)=λ(t)/4γ2を有するX線放射線を放出し得る。パルスがチャープされることを理由に、この放出波長は、レーザパルスの持続時間に沿って異なる。レーザパルスのどこかの短い時間間隔の間においてのみ、電子パルスの局所バンチングは、放出波長と共振する。kmod=kx+k0cosθ0というコヒーレント性向上に対する条件が満たされる時点において、放出X線放射線は、コヒーレント増幅され得る。この条件は、z方向に沿って電子パルスの異なる部分(スライス)に対して異なる場所で満たされる。従って、電子パルスの各スライスは、増幅されたX線放射線のショートバーストを放出し得る。その上、電子パルスはバンチングチャープを伴うため、共振時間間隔は、電子パルスの異なるスライスに対して異なり得る。
【0122】
[000119] 有利な関係を持たせるようにバンチングチャープ及びレーザチャープを制御することにより、電子パルスの個々のスライスによって放出されたX線放射線のショートバーストをオーバーラップさせることができる。その結果、非常に短い強力なX線パルス(例えば、アト秒範囲のパルス)が生じ得る。この概念は、レーザパルスの前方の近くで共振するパルスのスライス及びパルスの後方の近くで共振するパルスのスライスを考慮することによって理解することができる。レーザの前方は、パルスの立ち下がりスライスと共振すべきであり、その結果、共振散乱放射線は、レーザの後方と共振する際に前方スライスに達する。
【0123】
[000120] 別の機会は、X線パルスのスペクトル帯域幅の制御を含み得る。これは、電子パルスのエネルギーチャープとレーザパルスのチャープの組み合わせを選択することによって達成することができる。バンチングチャープは、ゼロでもゼロでなくともよい。逆コンプトン散乱により、パルスの電子は、波長λx(t)=λ(t)/4γ2のX線放射線を放出し得る。レーザパルスがチャープされることを理由に、この波長は、レーザパルスの持続時間に沿って異なり得る。電子パルスがエネルギーチャープを伴うことにより、バンチ間隔は、レーザパルスのどこかの短い時間間隔の間においてのみ、放出波長と共振する。上記の通り、共振条件は、kmod=kx+k0cosθ0であり得る。共振条件が満たされる間隔の間、放出X線放射線は、コヒーレント増幅され得る。近似の見解では、これは、放出放射線λx(t)がバンチングピッチλmodに等しい際に起こり得る。しかし、エネルギー延いてはγがパルスにわたって変化し得るため、λ(t)/4γ2=λmodに従って共振及びコヒーレント増幅が起こるレーザパルスの特定の部分λ(t)もまた、電子パルスにわたって変化し得る。
【0124】
[000121] 例えば、エネルギーチャープが正であり、レーザチャープが負である場合は、電子パルスの前方によって放出されるX線放射線は、レーザパルスの後方によって励起される際のバンチ間間隔と共振し得る(大きなλが大きなγと組み合わされる)。電子パルスの後方によって放出されるX線放射線は、レーザパルスの前方によって励起される際のバンチ間間隔と共振し得る(小さなλが小さなγと組み合わされる)。その結果、電子パルスのすべての部分が、比較的短い時間間隔内で共振するようになり得る。この結果、X線パルス全体の時間が短くなり得る。これは、X線パルスが広いスペクトル帯域幅を有することに相当し得る。また、他の極端には、例えば、エネルギーチャープとレーザチャープの両方とも正である際は、逆のことが起こり得る。電子パルスの前方は、レーザパルスの前方と共振し得る。電子パルスの後方は、レーザパルスの後方と共振し得る。電子パルスの前方と後方励起型レーザパルスの前方が最初に接触し、電子パルスの後方とレーザパルスの後方はしばらく後にしか接触しないため、電子パルスの異なる部分がコヒーレント増幅された放射線を放出する時刻は、比較的長い間隔にわたって分散され得る。これは、狭いスペクトル帯域幅に相当し得る比較的長いX線パルスをもたらし得る。
【0125】
[000122] さらなる実施形態が、後続の番号が付された条項に開示される。
1.硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための方法であって、
イオン化レーザを使用してキャビティ内部の超低温励起原子のパターンから複数の電子を発生させることであって、電子が、励起原子のパターンの少なくとも1つ及びイオン化レーザによって決定された密度分布を有する、発生させることと、
非静的加速プロファイルを使用して、キャビティから出る電子を加速させることであって、加速プロファイルが、電子がキャビティを出る際の電子の密度分布を制御する、加速させることと
を含む、方法。
2.加速プロファイルが、電子がキャビティを出る際に電子の速度が実質的に等しくなるように、キャビティ内の電子の速度を制御する、条項1に記載の方法。
3.電子の密度分布が、複数の電子バンチを含む、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
4.加速プロファイルが、キャビティを出る電子の密度分布におけるチャープを低減する、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
5.加速が、非静的電磁場を含む、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
6.非静的電磁場が、時間に応じて変化する成分を含む、条項3に記載の方法。
7.非静的電磁場が、キャビティ内の位置に応じて変化する成分を含む、条項5又は6に記載の方法。
8.電子密度分布が、超低温励起原子のパターンと整合する、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
9.電子密度分布が、構造化されたイオン化レーザによって決定される、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
10.キャビティが、共振マイクロ波構造である、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
11.硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生が、逆コンプトン散乱を使用して達成される、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
12.硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生において使用するために、電子源によって提供される電子の密度分布を制御するための装置であって、条項1~11の何れか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
13.条項12に記載の装置を含む放射源。
14.条項12に記載の装置を含むメトロロジ装置。
15.条項12に記載の装置を含むリソグラフィセル。
16.コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するための方法であって、
密度分布を有する複数の電子バンチを受け取ることと、
電子バンチの伝播方向に沿ったバンチ間の距離が、発生される硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線の波長に対応するように、複数の電子バンチを圧縮することと
を含む、方法。
17.電子バンチが、エコーエンハンス高調波発生を使用して圧縮される、条項16に記載の方法。
18.電子バンチが、電子光学機器を使用して圧縮される、条項16又は17に記載の方法。
19.コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生が、逆コンプトン散乱を使用して達成される、条項16~18の何れか一項に記載の方法。
20.コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するためのアセンブリであって、条項16~19の何れか一項に記載の方法を実行するように構成されたアセンブリ。
21.コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のためのエコーエンハンス高調波発生方法であって、
複数の電子バンチを受け取ることであって、各バンチが、運動量拡がりを含む、受け取ることと、
分散セクションを通じて電子を伝播し、位相空間において伝播方向に沿ってスキューを導入することと、
光変調器を使用して、伝播方向に沿って周期的な運動量変調を電子バンチに適用することと、
第2の分散セクションを通じて電子を伝播し、位相空間において伝播方向に沿って第2のスキューを導入することであって、受け取られた複数のバンチと比べて低減された伝播方向に沿った分離を複数のバンチに提供するために、第2のスキューが、バンチの変調運動量を修正する、第2のスキューを導入することと
を含む、方法。
22.アト秒の硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線パルスを発生させるための方法であって、
複数の電子バンチを得ることと、
複数のバンチ間の分離においてチャープを導入することと、
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線を発生させるための後方励起チャープ放射線パルスをチャープバンチに照射することであって、バンチ間の分離におけるチャープが、共振条件に従って放射線パルスのチャープと整合し、それにより、アト秒の硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線パルスが発生する、照射することと
を含む、方法。
23.バンチ間の分離におけるチャープ及び放射線パルスにおけるチャープが、正である、条項22に記載の方法。
24.運動エネルギーチャープが、発生される硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線の帯域幅を制御するように設定される、条項22又は23に記載の方法。
25.複数のバンチ間の分離においてチャープを導入することが、電子バンチの運動エネルギー及び電子バンチのピッチの少なくとも1つの前後方向変化率を制御することを含む、条項22~24の何れか一項に記載の方法。
【0126】
[000123] 本明細書では、リソグラフィ装置をICの製造で使用することが具体的に参照されているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることが理解されるべきである。可能な他の用途として、一体型光学系、磁区メモリのガイダンスパターン及び検出パターン、平面パネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造がある。
【0127】
[000124] 本明細書では、実施形態をリソグラフィ装置に関連して具体的に参照している場合があるが、実施形態は、他の装置で使用され得る。実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置或いはウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定又はプロセスする任意の装置の一部をなし得る。これらの装置は、まとめてリソグラフィツールと呼ばれ得る。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を用い得る。
【0128】
[000125] この明細書では、検査又はメトロロジ装置の文脈における実施形態に対して特定の言及がなされることがあるが、実施形態は、他の装置で使用することができる。実施形態は、マスク検査装置、リソグラフィ装置、或いは、ウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)などの物体の測定又は処理を行う任意の装置の一部を形成し得る。「メトロロジ装置」(又は「検査装置」)という用語は、検査装置又は検査システム(或いはメトロロジ装置又はメトロロジシステム)も指し得る。例えば、実施形態を含む検査装置は、基板の欠陥又は基板上の構造の欠陥を検出するために使用することができる。そのような実施形態では、基板上の構造の対象の特性は、構造の欠陥、構造の特定の部分の欠如又は基板上の不必要な構造の存在に関連し得る。
【0129】
[000126] 上記では、光学リソグラフィの文脈における実施形態の使用に対して特定の言及がなされていることがあるが、本発明は、文脈において許容される場合は、光学リソグラフィに限定されず、例えば、インプリントリソグラフィなど、他の用途で使用できることが理解されよう。
【0130】
[000127] 上述のターゲット又はターゲット構造(より一般的には、基板上の構造)は、測定の目的のために具体的に設計及び形成されるメトロロジターゲット構造であるが、他の実施形態では、基板上に形成されたデバイスの機能部分である1つ又は複数の構造における対象の特性を測定することができる。多くのデバイスは、規則的な、格子のような構造を有する。構造、ターゲット格子及びターゲット構造という用語は、本明細書で使用される場合、その構造が、実行されている測定のために具体的に提供されたものであることを必要としない。さらに、メトロロジターゲットのピッチは、スキャトロメータの光学システムの分解能限界近くであっても、それより小さくてもよいが、ターゲット部分Cにおいてリソグラフィプロセスによって生成される典型的な非ターゲット構造(任意選択的には、製品構造)の寸法よりはるかに大きいものであり得る。実際には、ターゲット構造内のオーバーレイ格子の線及び/又は間隔は、非ターゲット構造の寸法と同様の、より小さな構造を含むように生成することができる。
【0131】
[000128] 上記では、特定の実施形態について説明してきたが、本発明は、説明される以外の方法でも実践できることが理解されよう。上記の説明は、制限ではなく、例示を意図する。従って、当業者であれば、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱しない範囲で、説明される本発明に対して修正を行えることが明らかであろう。
【0132】
[000129] 「メトロロジ装置/ツール/システム」又は「検査装置/ツール/システム」に対して特定の言及がなされているが、これらの用語は、同じ又は同様のタイプのツール、装置又はシステムを指し得る。例えば、本発明の実施形態を含む検査又はメトロロジ装置は、基板上又はウェーハ上の構造の特性を決定するために使用することができる。例えば、本発明の実施形態を含む検査装置又はメトロロジ装置は、基板の欠陥又は基板上若しくはウェーハ上の構造の欠陥を検出するために使用することができる。そのような実施形態では、基板上の構造の対象の特性は、構造の欠陥、構造の特定の部分の欠如又は基板上若しくはウェーハ上の不必要な構造の存在に関連し得る。
【0133】
[000130] SXR及びEUV電磁放射線に対して特定の言及がなされているが、本発明は、文脈において許容される場合は、電波、マイクロ波、赤外線、(可視)光、紫外線、X線及びガンマ線を含むすべての電磁放射線を用いて実施できることが理解されよう。光学メトロロジ方法の代替として、メトロロジ測定のために、X線、任意選択的には、硬X線(例えば、0.01nm~10nm、又は、任意選択的には、0.01nm~0.2nm、又は、任意選択的には、0.1nm~0.2nmの波長範囲の放射線)の使用も考慮されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線を含む放出放射線を発生させるための放射源であって、
電子パルスを発生させるように構成されたパルス電子源と、
前記電子パルスの運動量を変調するように構成された光変調器と、
前記電子パルスを加速させるように構成された電子アクセラレータと、
前記放出放射線発生のために前記加速させた電子パルスと衝突させるレーザビームを生成するように構成されたパルスレーザと
を含む、放射源。
【請求項2】
前記光変調器が、シードレーザ及び後方励起型レーザの配置を含み、前記レーザの入射角が異なる、請求項1に記載の放射源。
【請求項3】
前記パルスレーザの伝播方向が、前記電子パルスの伝播方向に対する共動成分を有する、請求項1又は2に記載の放射源。
【請求項4】
前記パルスレーザの伝播方向が、前記電子パルスの伝播方向に対する垂直成分を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の放射源。
【請求項5】
前記パルスレーザの伝播方向が、前記電子パルスの伝播方向に対する後方励起成分を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の放射源。
【請求項6】
前記放出放射線が、コヒーレントな放射線を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の放射源。
【請求項7】
前記加速させた電子パルスが、狭い間隔のバンチを含む、請求項1~6の何れか一項に記載の放射源。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の放射源を含むメトロロジ装置。
【請求項9】
コヒーレントな硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線発生のために、電子バンチを含む密度分布を圧縮するための方法であって、
密度分布を有する複数の電子バンチを受け取ることと、
前記電子バンチの伝播方向に沿った前記バンチ間の距離が、発生される硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線放射線の波長に対応するように、前記複数の電子バンチを圧縮することと
を含む、方法。
【請求項10】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線を含む放出放射線を発生させるための方法であって、
電子パルスを発生させることと、
光変調器を用いて前記電子パルスの運動量を変調することと、
前記電子パルスを加速させることと、
前記放出放射線発生のためにレーザビームを前記加速させた電子パルスと衝突させることと
を含む、方法。
【請求項11】
前記光変調器が、シードレーザ及び後方励起型レーザの配置を含み、前記レーザの入射角が異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電子バンチの伝播方向に沿った前記バンチ間の距離が、発生される前記放出放射線の波長に対応するように、前記電子パルスの複数の前記電子バンチを圧縮すること
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
光変調器を有する逆コンプトン散乱源を使用して、硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線を含む放出放射線を発生させるための方法。
【請求項14】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線を含む放出放射線を発生させるための方法であって、電子バンチの伝播方向に沿った前記電子バンチ間の距離が、発生予定の前記放出放射線の波長に対応するように、複数の前記電子バンチを圧縮することを含む、方法。
【請求項15】
硬X線、軟X線及び/又は極端紫外線を含む放出放射線を発生させるための逆コンプトン散乱源であって、電子パルスの運動量を変調するように構成された光変調器を含む、逆コンプトン散乱源。
【国際調査報告】