(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】フォトレジストとして使用される炭素ドープされた金属酸化物の気相堆積
(51)【国際特許分類】
G03F 7/16 20060101AFI20231227BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231227BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231227BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20231227BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231227BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231227BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231227BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G03F7/16
H01L21/316 X
H01L21/302 105A
C23C16/40
C23C16/455
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G03F7/004
G03F7/004 531
H01L21/31 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536988
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021062228
(87)【国際公開番号】W WO2022132506
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カルタラジ, ラクマル チャリドゥ
(72)【発明者】
【氏名】サリー, マーク ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ, ルイイン
(72)【発明者】
【氏名】フレンチ, ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ケルヴィン
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4K030
5F004
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA10
2H197GA01
2H225AN80P
2H225CA12
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2H225EA16P
4K030AA02
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5F058BF07
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
本明細書に開示された実施形態は、基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法を含む。一実施形態では、当該方法は、堆積サイクルを繰り返すことを含み、堆積サイクルの各反復は、a)金属前駆体を、基板を含むチャンバ内に流す工程、及びb)オキシダントをチャンバ内に流す工程を含み、オキシダントと金属前駆体とが反応して、金属オキソフォトレジストを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法であって、
堆積サイクルを繰り返すことを含み、前記堆積サイクルの各反復が、
a)金属前駆体を、前記基板を含むチャンバ内に流す工程、及び
b)オキシダントを前記チャンバ内に流す工程
を含み、前記オキシダントと前記金属前駆体とが反応して、前記金属オキソフォトレジストを形成する、方法。
【請求項2】
前記堆積サイクルの少なくとも1つの反復において、前記チャンバが、工程a)と工程b)との間にパージされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積サイクルの少なくとも1つの反復において、前記チャンバが、連続的な堆積サイクルの工程b)の後、かつ、工程a)の前にパージされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オキシダントが2つ以上の成分を含み、かつ/又は、前記金属前駆体が2つ以上の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の堆積サイクルが第1の金属前駆体を含み、第2の堆積サイクルが前記第1の金属前駆体と異なる第2の金属前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の堆積サイクルが第1のオキシダントを含み、第2の堆積サイクルが前記第1のオキシダントと異なる第2のオキシダントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が工程a)の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積サイクルの1つ又は複数の反復における工程a)中にプラズマを点火すること、及び/又は、前記堆積サイクルの1つ又は複数の反復における工程b)中にプラズマを点火すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程a)が、前記チャンバの第1の領域において実施され、工程b)が、前記チャンバの第2の領域において実施され、前記基板が、前記チャンバの前記第1の領域と前記チャンバの前記第2の領域との間で回転させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属前駆体が、一般式MR
XL
Yからなり、ここで、X=0~4及びY=4~Xであり、Mが金属であり、Rが、直鎖アルキル、分岐アルキル、又は環状アルキルであり、Lが、アルキルアミノ、Cl、Br、CN、CNO、SCN、N
3、又はSeCNである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
MがSnである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オキシダントが、水、O
2、エチレングリコール、アルコール、過酸化物、及び酸のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程a)及び工程b)を実施するために、前記基板がチャンバの異なるセクション間で回転させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法であって、
堆積サイクルを繰り返すことを含み、前記堆積サイクルの各反復が、
a)金属前駆体を、前記基板を含むチャンバ内に流す工程、及び
b)オキシダントを前記チャンバ内に流す工程であって、前記オキシダントと前記金属前駆体とが反応して、前記金属オキソフォトレジストを形成する、工程
を含む、堆積サイクルを繰り返すことと、
前記堆積サイクルの第1の回数の反復の後、前記金属オキソフォトレジストをプラズマ処理で処理することと
を含む方法。
【請求項15】
前記堆積サイクルの第1の反復を開始する前に、前記基板を初期プラズマ処理で処理することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマ処理の後、前記堆積サイクルの反復を再開することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積サイクルの第2の回数の反復の後、前記金属オキソフォトレジストを第2のプラズマ処理で処理することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記堆積サイクルの前記第1の回数の反復が、前記堆積サイクルの前記第2の回数の反復と異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法であって、
堆積サイクルを繰り返すことを含み、前記堆積サイクルの各反復が、
a)金属前駆体を、前記基板を含むチャンバ内に流す工程であって、前記金属前駆体が、一般式MR
XL
Yからなり、ここで、X=0~4及びY=4~Xであり、Mが、金属であり、Rが、直鎖アルキル、分岐アルキル、又は環状アルキルであり、Lが、アルキルアミノ、Cl、Br、CN、CNO、SCN、N
3、又はSeCNである、工程、
b)前記チャンバをパージする工程、
c)オキシダントを前記チャンバ内に流す工程であって、前記オキシダントと前記金属前駆体とが反応して、前記金属オキソフォトレジストを形成し、前記オキシダントが、水、O
2、エチレングリコール、アルコール、過酸化物、及び酸のうちの1つ又は複数を含む、工程、並びに
d)前記チャンバをパージする工程
を含む、方法。
【請求項20】
前記堆積サイクルの1つ又は複数の反復において、工程a)及び/又は工程c)中にプラズマを点火することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月17日に出願された米国仮出願第63/126,977号の利益を主張する、2021年11月23日に出願された米国特許出願第17/534,287号に対する優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、半導体処理の分野に関し、具体的には、気相プロセスを使用して、フォトレジスト層を基板上に堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィは、半導体産業において、マイクロエレクトロニクスデバイスに2次元及び3次元パターンを生成するために数十年も使用されてきた。リソグラフィプロセスには、膜(フォトレジスト)のスピンオン堆積、エネルギー源(露光)によって、選択されたパターンで膜を照射(露光)すること、溶媒に溶解して、膜の露光領域(ポジ調)又は非露光領域(ネガ調)を除去(エッチング)することが伴う。残った溶媒を除去するために、ベークが行われる。
【0004】
フォトレジストは、放射感受性材料であるべきであり、照射されると、膜の露光部分に化学変化が起こり、露光領域と非露光領域との間で溶解度の変化が可能になる。この溶解度の変化を利用して、フォトレジストの露光領域又は非露光領域のいずれかが除去(エッチング)される。これによりフォトレジストが現像され、エッチングによってパターンを下層の薄膜又は基板に転写することができる。パターンが転写された後、残留したフォトレジストが除去され、このプロセスを何度も繰り返すことで、マイクロエレクトロニクスデバイスに使用される2次元及び3次元の構造体が生成される。
【0005】
リソグラフィプロセスでは、幾つかの特性が重要である。この重要な特性には、感度、分解能、より低いラインエッジ粗さ(line-edge roughness:LER)、耐エッチング性、及びより薄い層を形成する能力が含まれる。感度が高い場合、堆積された膜の溶解度を変化させるのに必要なエネルギーが低くなる。これにより、リソグラフィプロセスの効率化の向上が可能になる。解像度及びLERは、リソグラフィプロセスでどのように狭いフィーチャを実現するかを決定する。深い構造を形成するためのパターン転写には、耐エッチング性がより高い材料が必要とされる。耐エッチング性がより高い材料は、より薄い膜を実現することもできる。より薄い膜は、リソグラフィプロセスの効率を高める。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示された実施形態は、基板上に金属オキソフォトレジスト(metal-oxo photoresist)を形成する方法を含む。一実施形態では、当該方法は、堆積サイクルを繰り返すことを含み、堆積サイクルの各反復は、a)金属前駆体を、基板を含むチャンバ内に流す工程、及びb)オキシダントをチャンバ内に流す工程を含み、オキシダントと金属前駆体とが反応して、金属オキソフォトレジストを形成する。
【0007】
追加の実施形態は、基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法を含む。一実施形態では、当該方法は、堆積サイクルを繰り返すことを含み、堆積サイクルの各反復は、a)金属前駆体を、基板を含むチャンバ内に流す工程、及びb)オキシダントをチャンバ内に流す工程を含み、オキシダントと金属前駆体とが反応して、金属オキソフォトレジストを形成する。一実施形態では、当該方法は、堆積サイクルの第1の回数の反復の後、金属オキソフォトレジストをプラズマ処理で処理することをさらに含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法が開示される。一実施形態では、当該方法は、堆積サイクルを繰り返すことを含み、堆積サイクルの各反復は、a)金属前駆体を、基板を含むチャンバ内に流す工程であって、金属前駆体が、一般式MRXLYからなり、ここで、X=0~4及びY=4~Xであり、Mが、金属であり、Rが、直鎖アルキル、分岐アルキル、又は環状アルキルであり、Lが、アルキルアミノ、Cl、Br、CN、CNO、SCN、N3、又はSeCNである、工程、b)チャンバをパージする工程、c)オキシダントをチャンバ内に流す工程であって、オキシダントと金属前駆体とが反応して、金属オキソフォトレジストを形成し、オキシダントが、水、O2、エチレングリコール、アルコール、過酸化物、及び酸のうちの1つ又は複数を含む、工程、並びにd)チャンバをパージする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る、真空堆積プロセスを使用して、金属オキソフォトレジストを基板上に堆積させるためのプロセスを示すフロー図である。
【
図2】一実施形態に係る、プラズマ処理を伴う真空堆積プロセスを用いて、金属オキソフォトレジストを基板上に堆積させるための追加プロセスを示すフロー図である。
【
図3】一実施形態に係る、金属オキソフォトレジストを基板上に堆積させるために空間原子層堆積プロセスの使用を可能にする処理ツールの平面概略図である。
【
図4A】一実施形態に係る、金属オキソフォトレジストを有する基板の断面図である。
【
図4B】一実施形態に係る、第1の層及び第2の層を有する金属オキソフォトレジストを有する基板の断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る、
図1又は
図2のプロセスを実施するために使用され得る処理ツールの断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る、例示的なコンピュータシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、気相プロセスを使用して、フォトレジストを基板上に堆積させる方法が説明される。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が提示されている。当業者であれば、これらの具体的な詳細がなくても本開示の実施形態を実施し得ることは明らかであろう。他の事例では、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、集積回路の製造といった周知の態様については、詳細に説明していない。さらに、図に示す様々な実施形態は例示的な表現であり、必ずしも縮尺どおりには描かれていないことを理解すべきである。
【0011】
背景を説明すると、極端紫外線(EUV)リソグラフィで使用されるフォトレジストシステムは、効率の低さが課題である。すなわち、既存のEUVリソグラフィのための既存のフォトレジスト材料系は、フォトレジスト材料の現像を可能にする必要な溶解度スイッチを提供するために、高い用量を必要とする。有機-無機ハイブリッド材料(例えば、金属オキソ材料系(metal oxo materials systems))は、EUV放射に対する感度の高さのゆえに、EUVリソグラフィのための材料系として提案されている。かような材料系は、通常、金属(例えば、Sn、Hf、Zr等)、酸素、及び炭素を含む。さらに、金属オキソベースの有機-無機ハイブリッド材料は、低LERと高解像度を提供することが実証されており、これらの特性は、狭いフィーチャを形成するために必要な特性である。
【0012】
金属オキソ材料系は、現在、湿式プロセスを用いて基板上に配置される。金属オキソ材料系は、溶媒に溶解され、スピンコーティングプロセスのような湿式化学堆積プロセスを使用して、基板(例えば、ウエハ)上に分配される。フォトレジストの湿式化学堆積には、幾つかの欠点がある。湿式化学堆積のマイナス面のうちの1つは、大量の湿った副生成物が発生することである。湿った副生成物は望ましくないため、半導体業界は可能な限り湿った副生成物を減らすよう積極的に取り組んでいる。さらに、湿式化学堆積は、不均一性の問題を引き起こす可能性がある。例えば、スピンオン堆積は、金属オキソ分子の不均一な厚さ又は不均一な分布を有するフォトレジスト層を設けることができる。さらに、金属オキソフォトレジスト材料系(metal oxo photoresist material systems)は、露光後の厚さの減少が課題であることが示されており、リソグラフィプロセスにおいて厄介である。さらに、スピンオンプロセスでは、フォトレジスト中の金属の割合が固定されており、簡単に調整することはできない。
【0013】
したがって、本開示の実施形態は、金属オキソフォトレジスト層を設けるための真空堆積プロセスを提供する。真空堆積プロセス(例えば、原子層堆積(ALD) プロセス)は、上述の湿式堆積プロセスの欠点に対処する。特に、真空堆積プロセスには次の利点、すなわち、1)湿った副生成物の発生をなくすこと、2)均一性の高いフォトレジスト層を設けること、3)露光後の厚さの減少を抑えること、及び4)フォトレジスト中の金属の割合を調整するメカニズムを設けること、がある。
【0014】
本明細書に開示された実施形態は、金属前駆体とオキシダントとの反応を含む様々な真空堆積プロセスを提供する。第1の実施形態では、真空堆積プロセスは、ALDプロセスであってもよい。幾つかの実施形態では、真空堆積プロセスは、熱プロセスであってもよい。他の実施形態では、真空堆積プロセスは、プラズマ強化(PE)堆積プロセス(例えば、PE-ALD)であってもよい。真空堆積プロセスは、プラズマ処理(例えば、堆積前、所定の回数の堆積サイクルの後、及び/又は最後の堆積サイクルの後)をさらに含み得る。
【0015】
均一性(例えば、厚みの均一性、表面全体の組成の均一性)を向上させることに加えて、ALDプロセスを使用することにより、金属オキソフォトレジストの(厚み方向の)組成に大きな柔軟性が生まれる。例えば、堆積プロセスの種々のサイクル中に前駆体を変化させることで、組成を修飾することができる。このように修飾可能な金属オキソ構造は、さまざまな用途に合わせてフォトレジストを微調整することを可能にする。このような用途の1つでは、金属オキソフォトレジストの主要部分は用量に対して最適化され、下層の基板との界面に近い異なる組成が、接着、EUV光子への感度、化学物質の現像への感度などのために調整される。これにより、スカム(scumming)、欠陥、レジスト倒れ/リフトオフなどのリソグラフィ後のプロファイル制御が改善される。さらに、金属オキソフォトレジストのグラデーションは、パターンタイプに応じて最適化することができる。例えば、ピラーは、改善された接着性を必要とするが、ライン/スペースパターンは、より低い接着性を必要とする場合があり、用量感度の改善のために最適化することができる。
【0016】
一実施形態では、真空堆積プロセスは、金属前駆体とオキシダントとの間の化学反応に依存する。金属前駆体及びオキシダントは、真空チャンバへ向けて気化される。金属前駆体は、オキシダントと反応して、基板の表面上に金属オキソを含むフォトレジスト層を形成する。幾つかの実施形態では、金属前駆体及びオキシダントは、交互するパルスで真空チャンバに供給される。ALD又はPE-ALDプロセスでは、金属前駆体とオキシダントのパルスの間に真空チャンバのパージが行われることがある。
【0017】
これより
図1を参照すると、一実施形態に係る、基板上に金属オキソフォトレジストを堆積させるためのプロセス100が示されている。一実施形態では、金属オキソフォトレジストは、シリコンウエハなどの基板上に堆積されるが、これに限定されない。基板はシリコン以外の材料を含まない場合があることを理解されよう。
【0018】
一実施形態では、プロセス100は、金属前駆体を、基板を含む真空チャンバに供給する動作101で開始される。一実施形態では、金属前駆体が一般式MR
XL
Yからなる場合があり、ここで、X=0~4及びY=4~Xである。Mは、Sn、Hf、Zr、Co、Cr、Mn、Fe、Cu、Ni、Mo、W、Ta、Os、Re、Pd、Pt、Ti、V、In、Sb、Al、As、Ge、Se、Cd、Ag、Pb、Au、Er、Yb、Pr、La、Na、及びMgのうちの1つ又は複数などの金属である。一実施形態では、Rはアルキル(例えば、C1-C10)である。アルキルは、直鎖アルキル、分岐アルキル、又は環状アルキル(例えば、tBu、nBu、Sec-ブチル、又はiPr)であってもよい。Rは、さらにアルケニル、アルキニル、アリール、又はベンジルであってもよい。構造(1)と(2)は、一対の適切なMR構造の例を示す図である。一実施形態では、Lは、ジメチルアミノ又はメチルエチルアミノなどのアルキル(C1-C10)アミノである。Lは、Cl、Br、CN、CNO、SCN、N3、又はSeCNをさらに含む。構造(3)、(4)、及び(5)は、適切なML構造の例を示す図である。完全な金属前駆体(例えば、スズ前駆体)の例が構造(6)に示される。R成分は、金属オキソ膜の露光感度を変えるために修飾され得る。金属前駆体とオキシダントとの間の反応性は、金属前駆体上のR及び/又はLを変化させることによって調節することができる。
【0019】
一実施形態では、単一の金属前駆体種がチャンバ内に流入し得る。他の実施形態では、2つ以上の異なる金属前駆体種がチャンバ内に流入し得る。例えば、幾つかの実施形態では、種々の金属Mを有する金属前駆体が使用され得る。一実施形態では、金属前駆体は、それ自体でチャンバ内に流入し得る。他の実施形態では、さらに不活性キャリアガスが金属前駆体とともにチャンバ内に流入し得る。キャリアガスは、Ar、N2、Heなどの不活性ガスであってもよい。一実施形態では、金属前駆体は、基板の表面に吸着される。
【0020】
一実施形態では、プロセス100は、真空チャンバをパージすることを含む動作102に進み得る。パージ動作は、幾つかの実施形態では任意である。すなわち、幾つかの実施形態では、プロセス100は、動作101から動作103へと直接進み得る。チャンバのパージは、Ar、N2、又はHeなどの不活性ガスをチャンバ内に流すことを含み得る。
【0021】
一実施形態では、プロセス100は、オキシダントを真空チャンバ内に供給することを含む動作103に進み得る。オキシダントと金属前駆体とが反応して、基板の上に金属オキソ膜を形成する。概して、金属オキソ膜は、MOCネットワーク中にM-O結合とM-C結合を含む。露光(例えば、UV又はEUV光)により、M-C結合が切断され、膜の中の炭素の割合が減少する。これにより、現像プロセスの間に選択的エッチングが生じる。一実施形態では、オキシダントは、水、O2、エチレングリコール、アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)、過酸化物(例えば、H2O2)、及び酸(例えば、ギ酸、酢酸等)のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0022】
一実施形態では、プロセス100は、真空チャンバをパージすることを含む動作104に進み得る。パージ動作は、幾つかの実施形態では任意である。すなわち、幾つかの実施形態では、プロセス100は、動作103から動作101へと直接進み得る。チャンバのパージは、Ar、N2、又はHeなどの不活性ガスをチャンバ内に流すことを含み得る。
【0023】
動作104から動作101への矢印で示すように、所望の厚さの金属オキソ膜を設けるために、プロセス100を任意のサイクル数繰り返してもよい。一実施形態では、堆積サイクルの各反復で同じ処理ガスが使用される。他の実施形態では、サイクル間で処理ガスを変更してもよい。例えば、第1の堆積サイクルは、第1の金属前駆体蒸気を利用してもよく、第2の堆積サイクルは、第2の金属前駆体蒸気を利用してもよい。幾つかの実施形態では、後続の堆積サイクルは、第1の金属前駆体蒸気と第2の金属前駆体蒸気との間で交互に継続し得る。一実施形態では、複数のオキシダント蒸気が、同様の態様でサイクル間で交互してもよい。さらに別の実施形態では、第1の金属前駆体及び第1のオキシダントを使用して、高い接着力の金属オキソ層を設けることができ、後続の堆積サイクルが第2の金属前駆体及び第2のオキシダントを使用して、金属オキソ膜に対する高い感度をもたらすことができる。
【0024】
一実施形態では、処理動作101~104の各々を任意の持続時間にわたって実行してもよい。例えば、処理動作101~104は、約1ミリ秒から1分の間の持続時間にわたって実施されてもよい。幾つかの実施形態では、各動作101~104の持続時間は、同一である必要はない。各動作101~104の持続時間は、堆積サイクル間で異なることもある。
【0025】
一実施形態では、プロセス100は、熱プロセスとして実施される。すなわち、プロセス100は、プラズマがない状態で実施され得る。このようなプロセスは、幾つかの実施形態では、ALDプロセスと呼ばれることがある。一実施形態では、基板の温度は、約-40℃から約500℃の間に維持され得る。
【0026】
さらに別の実施形態では、処理動作101~104の1つ又は複数の間にプラズマが点火され得る。このような場合、プラズマの存在が、金属オキソフォトレジストの形成に使用される化学反応を強化し得る。このような実施形態は、PE-ALDプロセスと呼ばれ得る。一実施形態では、プラズマを形成するために任意のプラズマ源が使用され得る。例えば、プラズマ源は、容量結合プラズマ(CCP)源、誘導結合プラズマ(ICP)源、遠隔プラズマ源、又はマイクロ波プラズマ源を含み得るが、これらに限定されない。
【0027】
図示された実施形態では、プロセス100は、動作101から開始するように示されている。しかしながら、プロセス100は、処理動作101~104のいずれかで開始してもよいことを理解されたい。例えば、金属前駆体と基板との間の接着を改善するために、動作103から開始することが、基板の表面の処理に役立ち得る。
【0028】
一実施形態では、プロセス100で利用される真空チャンバは、副大気圧を提供可能な任意の適切なチャンバであり得る。一実施形態では、真空チャンバは、チャンバ壁温度を制御するための、かつ/又は基板の温度を制御するための温度制御フィーチャを含んでもよい。一実施形態では、真空チャンバは、チャンバ内にプラズマを供給するためのフィーチャをさらに含んでもよい。好適な真空チャンバに関する詳細な説明は、
図3又は
図5に関連して提供される。
【0029】
金属オキソ膜の1つ又は複数の特性を向上させるために、プロセス100を実行している間の特定の処理パラメータが選択され得ることを理解されよう。概して、プロセス条件には、約-20℃と約175℃との間のシャワーヘッド温度が含まれ得る。ペデスタル温度は、さらに約-20℃と約175℃との間であってもよい。一実施形態では、チャンバ内の圧力は、約10T未満であってもよい。他の実施形態では、圧力は、約0.01Tと約10Tとの間であってもよい。基板とシャワーヘッドとの間の間隔は、約100milと約4,000milとの間であってもよい。ガス流に関しては、前駆体ガスは、約0.1slmと約5slmとの間の流量を有し得る。前駆体の流量は、キャリアガス(例えば、Ar又はN2)を含み得る。オキシダント(例えば、H2O)の流量は、約50mgmと約500mgmとの間であってもよい。オキシダントをチャンバ内に運ぶために、キャリアガス(例えば、Ar又はN2)を使用してもよい。キャリアガスは、約0.01slmと約5slmとの間の流量を有し得る。
【0030】
これより
図2を参照すると、追加の実施形態に係るプロセス210のフロー図が示されている。一実施形態では、プロセス210は、動作211で開始し得る。動作211は、プラズマ処理で真空チャンバ内の基板を処理することを含み得る。動作211は、金属オキソ膜との接着性を改善するように、基板の表面の準備に使用され得る。幾つかの実施形態では、初期プラズマ処理動作211は、任意である。すなわち、プロセス210は、幾つかの実施形態では、動作212から開始し得る。
【0031】
一実施形態では、動作212は、金属前駆体を、基板を含む真空チャンバに供給することを含み得る。一実施形態では、金属前駆体は、プロセス100で上述した金属前駆体と実質的に同様であってもよく、ここでは繰り返して言及しない。
【0032】
一実施形態では、プロセス210は、真空チャンバをパージすることを含む動作213に進み得る。一実施形態では、パージ動作は任意である。すなわち、プロセス210は、幾つかの実施形態では、動作212の後に動作214に直接進み得る。チャンバのパージは、Ar、N2、又はHeなどの不活性ガスをチャンバ内に流すことを含み得る。
【0033】
一実施形態では、プロセス210は、オキシダントを真空チャンバ内に供給することを含む動作214に進み得る。一実施形態では、オキシダントは、金属前駆体と反応して、金属オキソ膜を基板の上に形成する。一実施形態では、動作214におけるオキシダントは、動作103におけるオキシダントと実質的に同様であり、ここでは繰り返して言及しない。
【0034】
一実施形態では、プロセス210は、真空チャンバをパージすることを含む動作215に進み得る。一実施形態では、パージ動作は任意である。すなわち、プロセス210は、幾つかの実施形態では、動作214の後に動作216に直接進み得る。チャンバのパージは、Ar、N2、又はHeなどの不活性ガスをチャンバ内に流すことを含み得る。
【0035】
一実施形態では、プロセス210は、所定の数の堆積サイクルが完了したかどうかを判断することを含む動作216に進み得る。各堆積サイクルは、動作212~215の反復を指し得る。所定の回数の堆積サイクルが完了していない場合、プロセス210は、動作212へループバックし、新たな堆積サイクルを開始する。所定の回数の堆積サイクルが完了すると、プロセス 210は、動作217に進む。
【0036】
一実施形態では、動作217は、金属オキソ膜をプラズマ処理で処理することを含む。一実施形態では、プラズマ処理は、Ar、N2、Heなどの1つ又は複数の不活性ガスから生成されたプラズマを含み得る。一実施形態では、不活性ガス又はガスは、O2、CO2、CO、NO、NO2、H2Oなどの1つ又は複数の酸素含有ガスと混合してもよい。一実施形態では、真空チャンバは、動作217の後にパージされてもよい。パージは、Ar、N2、Heなどの不活性ガスのパルスを含み得る。
【0037】
動作217の後、プロセス210は、動作218に進み得る。動作218は、所望の金属オキソ膜の厚さに到達したかを判断することを含む得る。所望の厚さに達していない場合、動作を212にループバックして、処理を続行することができる。所望の厚さに達した場合、処理は、動作219に進み、そこでプロセス210が終了する。このような場合、動作217の最終的なプラズマ処理は、「後処理」とみなされてもよい。幾つかの実施形態では、プロセス210は、後処理が実施される前に終了することがある。
【0038】
幾つかの実施形態では、プラズマ処理動作217は、所定の回数の堆積サイクルの後に定期的に実施される。例えば、プラズマ処理動作217は、10回の堆積サイクルごとに実施してもよい。他の実施形態では、プラズマ処理動作217間で、堆積サイクルの所定の回数が変動し得る。例えば、第1のプラズマ処理動作217が、10回の堆積サイクルの後に実施されてもよく、第2のプラズマ処理動作217が、さらに20回の堆積サイクルの後に実施されてもよい。
【0039】
プロセス100と同様に、プロセス210は、熱プロセス又はプラズマ強化プロセスとして実施され得る。例えば、動作212~215の1つ又は複数の間にプラズマが点火され得る。さらに、堆積サイクル(すなわち、動作212~215)は、金属前駆体を流すことから開始するが、堆積サイクルは、任意選択的に、オキシダントを流すことから開始されてもよいことを理解されたい。
【0040】
一実施形態では、プロセス210で利用される真空チャンバは、副大気圧を提供することが可能な任意の適切なチャンバであってもよい。一実施形態では、真空チャンバは、チャンバ壁温度を制御するための、かつ/又は基板の温度を制御するための温度制御フィーチャを含んでもよい。一実施形態では、真空チャンバは、チャンバ内にプラズマを供給するためのフィーチャをさらに含んでもよい。好適な真空チャンバに関する詳細な説明は、
図3又は
図5に関連して提供される。
【0041】
金属オキソ膜の1つ又は複数の特性を向上させるために、プロセス210を実行している間の特定の処理パラメータが選択され得ることを理解されよう。概して、プロセス条件は、約-20℃と約175℃との間のシャワーヘッド温度を含み得る。ペデスタル温度は、さらに約-20℃と約175℃との間であってもよい。一実施形態では、チャンバ内の圧力は、約10T未満であってもよい。他の実施形態では、圧力は、約0.01Tと約10Tとの間であってもよい。基板とシャワーヘッドとの間の間隔は、約100milと約4,000milとの間であってもよい。ガス流に関しては、前駆体ガスは、約0.1slmと約5slmとの間の流量を有し得る。前駆体の流量は、キャリアガス(例えば、Ar又はN2)を含み得る。オキシダント(例えば、H2O)の流量は、約50mgmと約500mgmとの間であってもよい。オキシダントをチャンバ内に運ぶために、キャリアガス(例えば、Ar又はN2)を使用してもよい。キャリアガスは、約0.01slmと約5slmとの間の流量を有し得る。
【0042】
さらに別の実施形態では、複数の金属前駆体を利用する堆積プロセスが使用される。第1の金属前駆体は、一般式MRxL4-Xを有し得る。第1の金属前駆体は、上述の金属前駆体と実質的に類似し得る。第2の金属前駆体は、一般式ML4を有し得、Lはアルキルアミンである。すなわち、第2の金属前駆体は、炭素を含むR基を含まない場合がある。このように、第1の金属前駆体と第2の金属前駆体との間の調節は、膜中の炭素量を調節するために使用され得る。
【0043】
一実施形態では、堆積プロセスは、第1のサイクルと第2のサイクルとを含むループを利用することができる。第1のサイクルは、第1の金属前駆体を流し、その後、オキシダントを流すことを含む。第1のサイクルは、任意の回数繰り返してもよい。その後、ループは、第2の金属前駆体を流し、その後、オキシダントを流すことを含む第2のサイクルに進み得る。第2のサイクルも任意の回数繰り返してよい。一実施形態では、ループの反復を任意の回数繰り返して、所望の厚さの膜を設けることができる。堆積ループは、第1サイクルの反復又は第2サイクルの反復で開始されてもよいことを理解されよう。
【0044】
このような堆積プロセスは、膜の組成に可撓性をもたらす。例えば、第2サイクルから開始される(又は第2サイクルの反復回数を多く含む)ループを使用することで、下層基板との界面に炭素濃度がより低い膜を形成することができる。これにより、接着性が改善され得る。また、各ループの第1サイクルと第2サイクルの反復回数を徐々に変化させることで、膜の組成勾配を実現することができる。
【0045】
これより
図3を参照すると、一実施形態に係るチャンバ330の平面図が示されている。一実施形態では、チャンバ330は、メモリに記憶された命令に従って制御され、1つ又は複数の金属オキソ堆積プロセスを実行することができる。例えば、上述のプロセス100及び210などの1つ又は複数のプロセスが、真空チャンバ330内で実行され得る。一実施形態では、チャンバ330は、複数の領域331A~Dを含み得る。 4つの領域331が示されているが、チャンバ330は、2つ以上の領域331を含み得ることを理解されよう。一実施形態では、複数の基板335が領域331に設けられている。複数の基板335が、矢印で示すように、種々の領域331を通って回転せられる。
【0046】
一実施形態では、チャンバ330の各領域331が、金属オキソフォトレジストの形成に使用される堆積サイクルの処理動作の1つを実行する役割を担う。例えば、領域331Aで金属前駆体がチャンバ内に流し込まれてもよく、領域331Bでパージが行われてもよく、領域331Cでオキシダントがチャンバ内に流し込まれてもよく、領域331Dでパージが行われてもよい。幾つかの実施形態では、領域331間の境界は、パージのためのフィーチャを含み得る。このような実施形態では、領域331A及び331Cが金属前駆体を供給してもよく、領域331B及び331Dがオキシダントを供給してもよい。したがって、チャンバ330を1回転するごとに、基板335上に2回の堆積サイクルが行われ得る。
【0047】
これより
図4Aを参照すると、一実施形態に係るウエハ440の断面図が示されている。ウエハ440は、ベース基板441、及びベース基板441上の金属オキソフォトレジスト442を含む。ベース基板441は、シリコン又は半導体製造に使用される他の材料を含み得る。一実施形態では、金属オキソフォトレジスト442は、上述のようなプロセスを用いてベース基板441上に堆積させることができる。一実施形態では、金属オキソフォトレジスト442は、均一な組成及び均一な厚さを有する。このような実施形態は、各々の堆積サイクルが実質的に均一である場合に提供され得る。
【0048】
しかしながら、金属オキソフォトレジスト442の厚さを通して不均一な材料組成も可能であることを理解されたい。このような実施形態の例を
図4Bに示す。図示のように、金属オキソフォトレジスト442とベース基板441との間には界面層443が設けられている。界面層443は、金属オキソフォトレジスト442と比較して接着強度が改善されるように調整された金属オキソ材料であってもよい。一実施形態では、界面層443は、約数ナノメートルから数百ナノメートルの厚さを有してもよい。界面層443は、金属オキソフォトレジスト442の残りの部分を形成するために使用される堆積サイクルとは異なる1つ又は複数の堆積サイクルにより形成され得る。例えば、界面層443及び金属オキソフォトレジスト442を形成するために、種々の金属前駆体及び/又は種々のオキシダントを使用してもよい。
【0049】
上記の実施形態に記載されているような気相プロセスを用いて金属オキソフォトレジスト膜を設けることは、湿式化学法に比べて大きな利点をもたらす。かような利点のうちの1つは、湿った副生成物の排除である。気相プロセスでは、廃液がなくなり、副生成物の除去が簡略化される。さらに、気相プロセスは、より均一なフォトレジスト層を提供する。この文脈での均一性とは、ウエハ全体の厚さの均一性、及び/又は金属オキソ膜の金属成分の分布の均一性を指し得る。特に、ALD及びPE-ALDプロセスは、優れた厚みの均一性及び成分の均一性をもたらすことが実証されている。
【0050】
さらに、気相プロセスを使用することで、フォトレジスト中の金属の割合及びフォトレジスト中の金属の組成を微調整することができる。金属の割合は、真空チャンバ内への金属前駆体の流量を増減することによって、かつ/又は金属前駆体/オキシダントのパルス長を変更することによって変更することができる。気相プロセスを使用することで、複数の異なる金属を金属オキソ膜に含めることがさらに可能となり得る。例えば、2つの異なる金属前駆体を流す単一パルスを用いてもよいし、又は、2つの異なる金属前駆体の交互パルスを用いてもよい。
【0051】
さらに、気相プロセスを用いて形成された金属オキソフォトレジストは、露光後の厚さ減少に対してより耐性があることが実証されている。特定のメカニズムに縛られるわけではないが、厚さ減少に対する耐性は、少なくとも部分的に、露光時の炭素損失の減少に起因すると考えられている。
【0052】
図5は、本開示の一実施形態に係る、金属オキソフォトレジストの気相堆積を実施するように構成された真空チャンバの概略図である。真空チャンバ500は、接地されたチャンバ505を含む。基板510は、開口部515を通してロードされ、温度制御されたチャック520にクランプされる。
【0053】
処理ガスは、ガス源544から、それぞれのマスフローコントローラ549を通って、チャンバ505の内部へ供給される。特定の実施形態では、ガス供給プレート535は、金属前駆体、オキシダント、及び不活性ガスなどのプロセスガスの分配を実現する。チャンバ505は、排気ポンプ555を介して排気される。
【0054】
基板510の処理中にRF電力が印加されると、基板510の上のチャンバ処理領域内にプラズマが形成される。バイアス電力RF発生器525が、温度制御チャック520に連結されている。バイアス電力RF発生器525は、望まれる場合、プラズマを励起するためにバイアス電力を供給する。バイアス電力RF発生器525は、例えば、約2MHzから60MHzの間の低周波数、特定の実施形態では、13.56MHz帯の低周波数を有し得る。特定の実施形態では、真空チャンバ500は、約2MHz帯の周波数の第3のバイアス電力RF発生器526を含む。バイアス電力RF発生器526は、バイアス電力RF発生器525と同じように、RF整合器527に接続されている。ソース電力RF発生器530は、整合器(図示せず)を介して、プラズマ発生要素(例えば、ガス供給プレート535)に連結され、ソース電力を供給し、プラズマを励起する。ソースRF発生器530は、例えば、100から180MHzの間の周波数、特定の実施形態では、162MHz帯の周波数を有し得る。基板の直径は、150mm、200mm、300mm等、時とともに変わっているため、当技術分野では、プラズマエッチングシステムのソース及びバイアス電力を基板面積に合わせて標準化するのが一般的である。
【0055】
真空チャンバ500は、コントローラ570に制御されている。コントローラ570は、CPU572、メモリ573、及びI/Oインターフェース574を含み得る。CPU572は、メモリ573に記憶された命令に従って、真空チャンバ500内で処理動作を実行することができる。例えば、上述のプロセス100及び210などの1つ又は複数のプロセスが、コントローラ570によって、真空チャンバ内で実行され得る。
【0056】
図6は、コンピュータシステム600という例示的な形態のマシンの概略図を示しているが、コンピュータシステム600内では、ここに記載された方法のうちの任意の1つ又は複数をマシンに実行させるための一セットの命令が実行され得る。代替的な実施形態では、マシンは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イントラネット、エクストラネット、又はインターネットにおいて、他のマシンに接続(例えば、ネットワーク接続)され得る。当該マシンは、クライアント/サーバネットワーク環境においてサーバ若しくはクライアントマシンの能力により、又は、ピアツーピア(又は分散)ネットワーク環境においてピアマシンとして、作動し得る。当該マシンは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯型情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブ機器、サーバ、ネットワークルータ、スイッチ若しくはブリッジ、又は当該マシンによって実行される動作を特定する(連続的な若しくはその他の態様の)一セットの命令を実行可能な、任意のマシンであってもよい。さらに、単一のマシンのみが示されているが、「マシン」という用語は、ここに記載された方法のうちの任意の1つ又は複数を実行するために、1セットの(又は複数のセットの)命令を、個別に又は共に実行するマシン(例えば、コンピュータ)の任意の集合体を含んでいると解釈してもよい。
【0057】
例示的なコンピュータシステム600は、バス630を介して互いに通信する、プロセッサ602、メインメモリ604(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)(同期DRAM(SDRAM)又はランバスDRAM(RDRAM)等))、スタティックメモリ606(例えば、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、MRAM等)、及び二次メモリ618(例えば、データ記憶デバイス)を含む。
【0058】
プロセッサ602は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニットなどといった、1つ又は複数の汎用処理デバイスを表す。より具体的には、プロセッサ602は、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、他の命令セットを実装するプロセッサ、又は命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってもよい。プロセッサ602は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどといった、1つ又は複数の特殊用途処理デバイスであってもよい。プロセッサ602は、ここに記載の動作を実施するための、処理ロジック626を実行するように構成されている。
【0059】
コンピュータシステム600は、ネットワークインターフェースデバイス608をさらに含んでもよい。さらに、コンピュータシステム600は、ビデオディスプレイユニット610(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、又は陰極線管(CRT))、英数字入力デバイス612(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス614(例えば、マウス)、及び信号生成デバイス616(例えば、スピーカ)も含んでもよい。
【0060】
二次メモリ618は、ここに記載の方法又は機能のうちの任意の1つ又は複数を具現化する、1つ又は複数のセットの命令(例えば、ソフトウェア622)が記憶されている、マシンアクセス可能記憶媒体(又は、より具体的には、コンピュータ可読記憶媒体)632を含み得る。ソフトウェア622は、コンピュータシステム600によって実行されている間、メインメモリ604及び/又はプロセッサ602の中に、完全に又は少なくとも部分的に常駐し得る。メインメモリ604及びプロセッサ602もマシン可読記憶媒体を構成する。さらに、ソフトウェア622は、ネットワークインターフェースデバイス608を介して、ネットワーク620上で送受信され得る。
【0061】
例示的な実施形態では、マシンアクセス可能記憶媒体632が、単一の媒体として示されているが、「マシン可読記憶媒体」という用語は、1つ又は複数のセットの命令を記憶する単一の媒体又は複数の媒体(例えば、集中データベース若しくは分散データベース、並びに/又は関連キャッシュ及びサーバ)を含むと解釈すべきである。さらに、「マシン可読記憶媒体」という用語は、マシンによって実行される1セットの命令であって、本開示の方法のうちの任意の1つ又は複数をマシンに実行させる1セットの命令を、記憶又は符号化することが可能な任意の媒体を含むと解釈すべきである。したがって、「マシン可読記憶媒体」という用語は、固体メモリ、光学媒体、及び磁気媒体を含むと解釈すべきであるが、これらに限定されない。
【0062】
本開示の一実施形態によれば、マシンアクセス可能記憶媒体は、命令を記憶しており、この命令は、データ処理システムに、基板上に金属オキソフォトレジストを形成する方法を実行させる。本方法は、金属前駆体を真空チャンバ内へ向けて気化させ、オキシダントを真空チャンバ内へ向けて気化させることを含む。金属前駆体及びオキシダントは、連続的に真空チャンバ内に供給され得る。金属前駆体とオキシダントとの反応により、基板上に金属オキソフォトレジストが形成される結果となる。幾つかの実施形態では、金属オキソフォトレジストは、プラズマ処理で処理され得る。
【0063】
このように、気相プロセスを用いて金属オキソフォトレジストを形成する方法が開示されている。
【国際調査報告】