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特表2024-500793スズ又はスズ合金電気めっきするための、平滑化剤を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】スズ又はスズ合金電気めっきするための、平滑化剤を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/32 20060101AFI20231227BHJP
   C25D 3/60 20060101ALI20231227BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C25D3/32
C25D3/60
C25D7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537295
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021086006
(87)【国際公開番号】W WO2022129238
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215809.3
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フリシュート,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 惣一
(72)【発明者】
【氏名】フリューゲル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルゲス,ヤン ニクラス
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AB04
4K023AB34
4K023BA29
4K023CB01
4K023CB21
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA21
4K024AB01
4K024AB08
4K024BA09
4K024BB12
4K024BC06
4K024CA02
4K024CA04
4K024CA06
4K024FA05
4K024GA02
4K024GA16
(57)【要約】
本発明は、スズイオンと、任意に銀イオン、インジウムイオン、及びビスマスイオンから選択される合金金属イオンと、式L1a
【化1】
又は式L1b
【化2】
(式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、各RL4について独立して、RL1及びRL3から選択され、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL3から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、(a)二価の飽和、不飽和基であり、以下:
(a) C~Cアルカンジイル基、
(b) C~Cアルケンジイル基、
から選択され、
又は
(c) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3から選択される基RL1の数である)
で表される少なくとも1つの添加剤とを含む、水性組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物であって、スズイオンと、任意に銀イオン、インジウムイオン、及びビスマスイオンから選択される合金金属イオンと、式L1a
【化1】
又は式L1b
【化2】
(式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、各RL4について独立して、RL1及びRL3から選択され、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL3から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、
(a)以下:
(i) C~Cアルカンジイル、
(ii) C~Cアルケンジイル、
から選択される二価の基であり、
又は
(b) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3から選択される基RL1の数である)
で表される少なくとも1つの添加剤とを含む、水性組成物。
【請求項2】
L1が、-F、-CRL3 F、-CRL3、-CFから選択され、RL3が、H及びC~Cアルキルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
L1が、-F、及び-CFから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
L2が、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、tertブチル、及びベンジリデンから選択され、好ましくはメチル及びエチル、エテニル、ベンジリデンであり、これらは非置換、又はF又はCNで置換されていてよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記添加剤が、式L2a
【化3】
又は式L2b
【化4】
(式中、
L1aは、RL1、Cl、Br、及びC~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキルから選択され、このアルキルは、非置換又はF、CN、Cl及びBrで置換されていてもよく、そして
mは、0、1、2、又は3、又は4、好ましくは0、1、又は2、最も好ましくは0又は1である)
で表される化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記添加剤が、式L3
【化5】
で表される化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記添加剤が、式L3a
【化6】
又は式L3b
【化7】
で表される化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
合金金属イオンが銀イオンを含み、好ましくは銀イオンからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
pHが4未満、好ましくは3未満、最も好ましくは2未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1つ以上の界面活性剤及び1つ以上の結晶微細化剤から選択されるさらなる添加剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
スズ又はスズ合金含有層を析出させるための浴における、式L1a
【化8】
又は式L1b
【化9】
(式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、各RL4について独立して、RL1及びRL3から選択され、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL3から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、
(a)以下:
(i) C~Cアルカンジイル、
(ii) C~Cアルケンジイル、
から選択される二価の基であり、
又は
(b) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3から選択される基RL1の数である)
で表される添加剤を含む添加剤の使用方法であって、前記スズ合金含有層が、銀、銅、インジウム、及びビスマスから選択される合金金属を0.01~10質量%の量で含む、使用方法。
【請求項12】
析出させたスズ合金層が0.1~5質量%の合金金属含有量を有する、請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
基板上にスズ又はスズ合金層を析出させるための方法であって、以下の工程
a) 請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させる工程、及び
b) 前記スズ又はスズ合金層を前記基板上に析出させるのに十分な時間、前記基板に電流を印加する工程
による方法。
【請求項14】
スズ合金を析出させ、そして析出した前記スズ合金の合金金属含有量が0.01~10質量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が1~1000マイクロメートル、好ましくは1~200マイクロメートル、最も好ましくは3~100マイクロメートルのアパーチャーサイズを有する窪んだ特徴的形状を含み、そしてマイクロメートルサイズの窪んだ特徴的形状を少なくとも部分的に充填するように析出が行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
4-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ブト-3-エン-2-オン、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ペント-1-エン-3-オン、1-(4-フルオロフェニル)ペント-1-エン-3-オン、及び1-(4-フルオロフェニル)-4,4-ジメチルペント-1-エン-3-オンから選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑化剤を含むスズ又はスズ合金電気めっき組成物、その組成物の使用及びスズ又はスズ合金電気めっきの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属及び金属合金は、特にエレクトロニクス産業において商用的に重要であり、電気接点、最終仕上げ及びはんだとして使用されることが多い。無鉛はんだ、例えばスズ、スズ-銀、スズ-銅、スズ-ビスマス、スズ-銀-銅などは、はんだの中で使用される一般的な金属である。これらのはんだは、多くの場合、金属電気めっき浴によって半導体基板上に析出(堆積)される。
【0003】
典型的なスズめっき溶液は、溶解したスズイオン、水、浴に導電性を付与するのに十分な量の酸電解質、例えばメタンスルホン酸、酸化防止剤、及びめっきの均一性と金属析出の品質を表面粗さ及びボイド形成に関して改善するための独自の添加物を含む。このような添加剤には、通常、界面活性剤及び結晶微細化剤などが、とりわけ含まれる。
【0004】
無鉛はんだめっきの或る特定の用途は、エレクトロニクス産業において課題を提示する。例えば、銅ピラー上のキャッピング層として使用される場合、比較的少量の無鉛はんだ、例えばスズ-銀はんだが銅ピラーの上部に析出される。このような少量のはんだをめっきする場合、ダイ内でもウエハー全体でも、各ピラーの上部に均一な高さのはんだ組成物をめっきすることは、多くの場合困難である。既知のはんだ電気めっき浴を使用すると、表面形態が比較的粗い析出となることが多い。
【0005】
US3361652は、式X-CH=CH-Yで表される一次光沢剤を含む酸性スズ電気めっき組成物を開示しており、式中、Xはフェニル、フルフリル、又はピリジルであり、そしてYは水素、ホルミル、カルボキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、ホルミルアルキル、又はカルボン酸のアシルラジカルであってよい。言及された光沢剤の1つは、ベンジリデンアセトン(ベンザルアセトン)である。
【0006】
好ましい実施形態において、US4582576は、以下の式
【化1】
で表されるカルボニル化合物を含む酸性スズ電気めっき組成物を開示しており、式中、X及びXは、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、塩素又は臭素であってよく、そしてアルコキシ基のアルキル基は約1~約5個の炭素原子を含有してよい。このような化合物の例には、ベンジリデンアセトン(ベンザルアセトン)及び3’-クロロベンジリデンアセトンが含まれる。
【0007】
US2014/183050A1には、ビア内にスズ又はスズ合金を選択的に析出させるビア充填に適したスズ又はスズ合金電気めっき液と、その液を用いたビア充填の方法が開示されており、該方法は、実質的にボイドを有しない柱状の析出を形成することができる。めっき液は、スズ又はスズ合金のめっき液中に添加された特定のα,β-不飽和カルボニル化合物を含む。このようなカルボニル化合物は、具体的には、1~9個の炭素原子を伴うアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボニル基、及びシアノ基で置換されていてよい。3-クロロアセトフェノン、クロトニルクロリド、ブテノイルクロリド、及び4-クロロ-2-ブテナールなどが挙げられる。
【0008】
しかしながら先行技術は、ダイ内でもウエハー全体でも均一な高さを得、析出させたはんだの粗さをより良好にする課題を解決しておらず、対処さえしていない。従って、電子産業では、改善された粗さRa、及び共平面性(coplanarity)(COP)とも呼ばれる高さの良好な、又はさらに良好な均一性のはんだ析出をもたらす純粋なスズ又はスズ合金電気めっき浴が、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US3361652
【特許文献2】US4582576
【特許文献3】US2014/183050A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、均一且つ平面的なスズ又はスズ合金析出を、特に1マイクロメートル~200マイクロメートルの幅の窪んだ特徴的形状にもたらすスズ又はスズ合金電気めっき組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、良好なレベリング特性を有するスズ又はスズ合金電気めっき組成物を提供すること、特に、スズ又はスズ合金電気めっき浴によって、実質的に平面のスズ又はスズ合金層を提供し且つ特徴的形状をマイクロメートル規模で充填することができ、欠陥、例えば、限定するものではないが、ボイドを実質的に形成することのない平滑化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、スズイオンと、任意に銀イオン、インジウムイオン、及びビスマスイオンから選択される合金金属イオンと、式L1a
【化2】
又は式L1b
【化3】
(式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、各RL4について独立して、RL1及びRL3から選択され、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL3から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、(a)二価の飽和、不飽和基であり、以下:
(a) C~Cアルカンジイル基、
(b) C~Cアルケンジイル基、
から選択され、
又は
(c) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3から選択される基RL1の数である)
で表される少なくとも1つの添加剤とを含む水性組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、スズ又はスズ合金含有層を析出させるための浴における本明細書に記載の添加剤の使用方法であり、スズ合金含有層は、銀、銅、インジウム、及びビスマスから選択される合金金属を0.01~10質量%の量で含む。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、基板上にスズ又はスズ合金層を析出させるための方法であって、以下の工程
a) 本明細書に記載の組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させる工程、及び
b) スズ又はスズ合金層を基板上に析出させるのに十分な時間、基板に電流を印加する工程
による方法である。
【0014】
本発明による添加剤は、接合技術、例えば、典型的には1~200、好ましくは3~100、最も好ましくは5~50マイクロメートルの高さ及び幅の、バンププロセスのためのスズ又はスズ合金バンプの製造において、回路基板技術において、又は電子回路の包装プロセスにおいて、有利に使用できる。1つの特定の実施形態では、基板はマイクロメートルサイズの特徴的形状を含み、そして析出はマイクロメートルサイズの特徴的形状を充填するために行われ、そのマイクロメートルサイズの特徴的形状は、1~200マイクロメートル、好ましくは3~100マイクロメートルの大きさを有する。
【0015】
本発明による添加剤は、非置換のα,β-不飽和カルボニル化合物又は本明細書に記載のフッ素含有置換基以外の置換基を有するα,β-不飽和カルボニル化合物と比較して、より良好な粗さRaを示すスズ又はスズ合金、特にスズ-銀の析出をもたらす。本発明による添加剤は、良好な又はさらに良好な共平面性(COP)を示すスズ又はスズ合金の析出ももたらす。さらに、本発明による添加剤を使用することにより、スズ又はスズ合金電気めっき浴のプロセスウィンドウが拡張される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な記載
本発明による添加剤
以下で、「添加剤」、「平滑剤(leveler)」、「フッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物」、及び「フッ素化化合物」という用語は、ここでは同義に用いられる。
【0017】
脂肪族又は芳香族環状フッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物を含む第1の実施形態において、スズイオンと、銀イオン、インジウムイオン、及びビスマスイオンから選択される任意の合金金属イオンとの他に、電気めっき組成物は、式L1a
【化4】
(式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、RL1又はRL3であり、
L1は、
(a)以下:
(i) C~Cアルカンジイル、
(ii) C~Cアルケンジイル、
から選択される二価の基であり、
又は
(b) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3、好ましくは1又は2、最も好ましくは1から選択される基RL1の数である)
で表される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0018】
本明細書で使用する「アルキル」及び「アルカンジイル」は、それぞれ、直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基又はアルカンジイル基を意味する。本明細書で使用する「芳香族」又は「アリール」は、非置換(置換基RL1を除く)又は1個以上のCl、C~Cアルキル基、具体的には1個以上のC~Cアルキル基、より具体的には1個以上のメチル、エチル又はプロピル基、最も具体的には1個又は2個のメチル又はエチル基によって置換されていてもよい単環又は二環の炭素環芳香族基をいう。本明細書で使用する「アルケニル」及び「アルケンジイル」は、それぞれ、直鎖状、分枝状又は環状のアルケニル基又はアルケンジイル基を意味する。本明細書で使用する「アリールアルキル」は、1個以上のアリール基、具体的には1個以上のフェニル基、最も具体的には1個のフェニル基によって置換されているアルキル基を意味する。本明細書で使用する「アルキルアリール」とは、1個以上のC~Cアルキル基、具体的には1個以上のC~Cアルキル基、より具体的には1個以上のメチル、エチル又はプロピル基、最も具体的には1個又は2個のメチル又はエチル基により置換されているアリール基を意味する。本明細書で使用する「C又はC位でフッ素化」とは、アルキル基のC位又はC位に少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のF置換基があることを意味する。あらゆるフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物は、E又はZ構成、又はそれらの混合、好ましくはE構成を有し得る。
【0019】
好ましくは、RL1は、-F、-CRL30 F、-CRL30、-CF、-CFRL30-CRL30 、-CF-CRL30 、-CF-CFRL30 、-CF-CFL30、及び-CF-CFから選択してよく、RL30はH及びC~Cアルキルから選択される。特に好ましい基RL1は、F又はペルフルオロ化C~Cアルキル、特に-CFであってよい。異なる基RL1は、任意の特定の置換基RL1 、すなわち、1個を超える置換基RL1が存在する場合に、RL1 、RL1 、及びRL1 に使用してよい。
【0020】
好ましくは、RL2は、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、tert.ブチル、及びベンジリデンから選択され、より好ましくは、メチル及びエチル、エテニル、ベンジリデンであり、これらはすべて非置換又はF、CNで置換されていてよい。最も好ましい基RL2はメチル又はエチルであってよく、これらはすべて非置換又はFで置換されていてよい。RL2がRL1と異なることを強調しなければならない。
【0021】
好ましくは、RL3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、Cl、及びCNから選択され、より好ましくはH、メチル又はエチルから選択され、最も好ましくはHから選択される。
【0022】
好ましくは、RL4は、RL1、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、Cl、及びCNから選択され、より好ましくはH、メチル又はエチルから選択され、最も好ましくはHから選択される。
【0023】
第1の実施形態に対する第1の好ましい代替において、平滑剤は、式L2a
【化5】
又は式L2b
【化6】
(式中、
L1aは、RL1、Cl、Br、及びC~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキルから選択され、このアルキルは、非置換又はF、CN、Cl及びBrで置換されていてよく、そして
mは、0、1、2、又は3、又は4、好ましくは0、1、又は2、最も好ましくは0又は1である)
で表される環状脂肪族化合物であってよい。
【0024】
第1の代替のフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物の特に好ましい化合物は、4-(3,6-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-(3-フルオロ-6-メチル-シクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-(3,6-ジフルオロ-シクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-(6-フルオロ-3-メチル-シクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-[3-メチル-6-(トリフルオロメチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-[6-(トリフルオロメチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(トリフルオロメチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,6-ビス(トリフルオロメチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-(3-フルオロシクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-(6-フルオロシクロヘキセン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(1-フルオロエチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,6-ビス(1-フルオロエチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(2-フルオロエチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、及び4-[3,6-ビス(2-フルオロエチル)シクロヘキセン-1-イル]ブト-3-エン-2-オン、及び式L2c
【化7】
で表される化合物である。
【0025】
第1の実施形態に対する第2の好ましい代替において、平滑剤は、式L3
【化8】
で表される芳香族化合物であってよい。
【0026】
第2の代替の特に好ましい平滑剤は、式L3a
【化9】
又は式L3b
【化10】
で表される化合物であってよい。
【0027】
あまり好ましくない場合でも、オルト置換フェニル基を使用してもよい。式L3、L3a、及びL3bで表されるそのような化合物は、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、Cl、及びCNでさらに置換されていてもよい。
【0028】
第2の代替の特に好ましいフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物は、4-(3-フルオロフェニル)-ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-ブト-3-エン-2-オン、4-(4-フルオロフェニル)-ブト-3-エン-2-オン、4-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-ブト-3-エン-2-オン、4-(3,5-ジフルオロフェニル)-ブト-3-エン-2-オン、4-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ブト-3-エン-2-オン、4-(2,4,6-トリフルオロフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-[2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[4-(ジフルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(ジフルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,5-ビス(ジフルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[4-(フルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(フルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,5-ビス(フルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[4-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,5-ビス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[4-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3-(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-[3,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、4-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ブト-3-エン-2-オン、(4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ペント-1-エン-3-オン、4-(4-フルオロフェニル)ペント-1-エン-3-オン、及び1-(4-フルオロフェニル)-4,4-ジメチルペント-1-エン-3-オンから選択される。
【0029】
さらに好ましいフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物は、アルコキシ又はヒドロキシ置換を含む化合物であり、限定するものではないが、1-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)-4,4-ジメチルペント-1-エン-3-オン、1-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)-4-メチルペント-1-エン-3-オン、4-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、1-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)ペント-1-エン-3-オン、4-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(3-フルオロ-2-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(2-フルオロ-6-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(3-フルオロ-5-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、4-(2-フルオロ-3-メトキシフェニル)ブト-3-エン-2-オン、及び4-(4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)ブト-3-エン-2-オンである。
【0030】
脂肪族直鎖状又は分枝状のフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物を含む第2の実施形態において、スズイオンと、銀イオン、インジウムイオン、及びビスマスイオンから選択される任意の合金金属イオンとの他に、電気めっき組成物は、式L1b
【化11】
(式中、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL2から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、各基RL1 について独立して、F又は直鎖状又は分枝状のC又はCフッ素化C~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、CN、及びOHから選択され、
L4は、各RL4について独立して、RL1及びRL3から選択される)
で表される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0031】
本発明による添加剤は、任意の調製方法によって調製してよい。フッ素化フェニルα,β-不飽和カルボニル化合物を調製するための好ましい方法は、それぞれの置換ベンズアルデヒドと、例えばトリフェニルホスホニウムイリド誘導体のウィッティヒ(Wittig)反応によるものであり、Bioorganic&Medicinal Chemistry、2012年、20(2),1029-1045に記載されている。
【0032】
α,β-不飽和カルボニル化合物を調製する方法において、例えば、平滑剤に特定の置換基を導入するため、定義された特性を設定するため、又は後の時点で得られた平滑剤に対するさらなる反応を可能にするために、さらなる化合物を使用することが可能である。本明細書に記載の組成物は、上記のフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物とは異なる1つ以上の界面活性剤及び1つ以上の結晶微細化剤から選択される添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
さらなる平滑剤
当業者には、1つを超える平滑化剤を使用してよいことが理解されるであろう。2つ以上の平滑化剤を使用する場合、平滑化剤の少なくとも1つは、本明細書に記載のフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物又はその誘導体である。1つ以上のみのフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物を、めっき浴組成物中の平滑化剤として使用することが好ましい。
【0034】
好適で追加的な平滑化剤としては、限定するものではないが、ポリアミノアミド及びその誘導体、ポリアルカノールアミン及びその誘導体、ポリエチレンイミン及びその誘導体、四級化ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン、ポリ尿素、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-co-ホルムアルデヒド)、アミンとエピクロルヒドリンとの反応生成物、アミンとエピクロルヒドリンとポリアルキレンオキシドとの反応生成物、アミンとポリエポキシド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン又はこれらのコポリマーとの反応生成物、ニグロシン、ペンタメチル-パラ-ローザニリン水素ハロゲン化物、ヘキサメチル-パラローザニリン水素ハロゲン化物、又は式N-R-Sで表される官能基を含有する化合物(式中、Rは、置換アルキル、非置換アルキル、置換アリール又は非置換アリールである)が挙げられる。典型的には、アルキル基は、C~Cアルキル、及び好ましくはC~Cアルキルである。一般的に、アリール基は、C~C20アリール、好ましくはC~C12アリールを含む。このようなアリール基は、硫黄、窒素及び酸素などのヘテロ原子をさらに含んでもよい。アリール基は、フェニル又はナフチルであることが好ましい。式N-R-Sで表される官能基を含有する化合物は、一般的に既知であり、一般的に市販されており、さらに精製することなく使用してよい。
【0035】
N-R-S官能基を含有するこのような化合物において、硫黄(「S」)及び/又は窒素(「N」)は、単結合又は二重結合によって残りの分子に結合されていてもよい。硫黄が単結合によって残りの分子に結合されている場合、硫黄は別の置換基、例えば、限定するものではないが、水素、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C20アリール、C~C12アルキルチオ、C~C12アルケニルチオ、C~C20アリールチオなどを有するであろう。同様に、窒素は1つ以上の置換基、例えば、限定するものではないが、水素、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C10アリールなどを有するであろう。N-R-S官能基は、非環式であっても環式であってもよい。環状N-R-S官能基を含有する化合物には、窒素又は硫黄のいずれか、又は窒素と硫黄の両方を環系内に有するものが含まれる。
【0036】
さらなる平滑化剤は、未公開の国際特許出願番号PCT/EP2009/066581に記載のトリエタノールアミン縮合物である。
【0037】
一般的に、電気めっき浴中の平滑化剤の総量は、めっき浴の総質量に対して0.5ppm~10000ppmである。本発明による平滑化剤は典型的には、より多量又はより少量が使用されることもあるが、めっき浴の総質量に対して約100ppm~約10000ppmの総量で使用される。
【0038】
めっきされたスズ又はスズ合金バンプに所望の表面仕上げをもたらすために、典型的には、多種多様な添加剤を浴中に使用してよい。通常、1つを超える添加剤が使用され、各添加剤が所望の機能を形成する。有利には、電気めっき浴は、界面活性剤、結晶微細化剤、合金析出の場合の錯化剤、酸化防止剤、及びそれらの混合物の1つ以上を含有してよい。最も好ましくは、電気めっき浴は、本発明による平滑化剤に加えて、界面活性剤及び任意に結晶微細化剤を含む。他の添加剤も、本発明の電気めっき浴に好適に使用される。
【0039】
界面活性剤
本組成物には、1つ以上の非イオン性界面活性剤を使用してよい。典型的には、非イオン性界面活性剤は、200~100,000、好ましくは500~50,000、より好ましくは500~25,000、及びさらにより好ましくは750~15,000の平均分子量を有する。このような非イオン性界面活性剤は、典型的には、電解質組成物中に、組成物の質量に基づいて、1~10,000ppm、好ましくは5~10,000ppmの濃度で存在する。好ましいアルキレンオキシド化合物には、ポリアルキレングリコール、例えば、限定するものではないが、少なくとも1つのヒドロキシ基及び20個以下の炭素原子を有する有機化合物のアルキレンオキシド付加生成物、及び低分子量ポリアミン化合物に対する異なるアルキレンオキシドの付加から誘導される四官能性ポリエーテルが含まれる。
【0040】
好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。このようなポリアルキレングリコールは、一般的に、様々な供給源から市販されており、さらに精製することなく使用してよい。1つ以上の末端水素がヒドロカルビル基に置き換えられたものであるキャップされたポリアルキレングリコールも好適に使用されうる。好適なポリアルキレングリコールの例としては、式R-O-(CXYCX’Y’O)R’で表されるものであり、式中、R及びR’は独立して、H、C~C20アルキル基及びC~C20アリール基から選択され、X、Y、X’及びY’はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル又はプロピルなどのアルキル、フェニルなどのアリール、又はベンジルなどのアラルキルから選択され、nは5~100,000の整数である。典型的には、X、Y、X’及びY’の1つ以上は水素である。
【0041】
好適なEO/POコポリマーは一般的に、10:90~90:10、好ましくは10:90~80:20のEO:POの質量比を有する。このようなEO/POコポリマーは、好ましくは、750~15,000の平均分子量を有する。このようなEO/POコポリマーは、様々な供給源から入手可能であり、例えば、BASF社から商品名「PLURONIC(登録商標)」で市販されているものがある。
【0042】
少なくとも1個のヒドロキシ基及び20個以下の炭素原子を有する有機化合物の好適なアルキレンオキシド縮合生成物には、1~7個の炭素原子の脂肪族炭化水素を有するもの、アルキル部分中に6個以下の炭素を有する非置換の芳香族化合物又はアルキル化芳香族化合物、例えばUS5174887に開示されているものが含まれる。脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。好適な芳香族化合物は、最大2個の芳香環を有するものである。芳香族アルコールは、エチレンオキシドで誘導体化される前に、最大20個の炭素原子を有する。このような脂肪族及び芳香族アルコールは、例えばスルフェート基又はスルホネート基でさらに置換されていてもよい。
【0043】
結晶微細化剤
スズ又はスズ合金電気めっき浴は、本発明による平滑剤とは異なる結晶微細化剤をさらに含有してもよい。結晶微細化剤は、式G1又はG2
【化12】
(式中、各Rは、独立してC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ヒドロキシ、又はハロゲンであり、R及びRは、独立して、H及びC~Cアルキルから選択され、Rは、H、OH、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシであり、mは0~2の整数であり、各Rは独立して、C~Cアルキルであり、各Rは独立して、H、OH、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、nは1又は2であり、そしてpは0、1又は2である)
で表される化合物から選択してよい。
【0044】
好ましくは、各Rは独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はヒドロキシ、より好ましくはC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はヒドロキシである。R及びRは独立して、H及びC~Cアルキル、より好ましくはH及びメチルから選択されることが好ましい。好ましくは、Rは、H、OH、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、より好ましくはH、OH又はC~Cアルキルである。Rは、C~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキルであることが好ましい。各Rは、好ましくは、H、OH、又はC~Cアルキル、より好ましくはH、OH又はC~Cアルキル、さらにより好ましくはH又はOHから選択される。mは0又は1であることが好ましく、より好ましくは、mは0である。好ましくは、nは1である。pは0又は1であることが好ましく、より好ましくは、pは0である。第1の結晶微細化剤の混合物、例えば、式1で表される2つの異なる結晶微細化剤、式2で表される2つの異なる結晶微細化剤、又は式1で表される結晶微細化剤と式2デラックス結晶微細化剤との混合物を使用してもよい。
【0045】
このような結晶微細化剤として有用な例示的化合物には、限定するものではないが、ケイ皮酸、シンナムアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピコリン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジンカルボキシアルデヒド、ピリジンジカルボキシアルデヒド、又はこれらの混合物が含まれる。好ましい結晶微細化剤には、ベンザルアセトン、4-メトキシベンズアルデヒド、ベンジルピリジン-3-カルボキシレート、及び1,10-フェナントロリンが含まれる。
【0046】
さらなる結晶微細化剤は、α,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物から選択してよい。好適なα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物には、限定するものではないが、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸エステル、α,β-不飽和アミド、及びα,β-不飽和アルデヒドが含まれる。好ましくは、このような結晶微細化剤は、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸エステル、及びα,β-不飽和アルデヒド、及びより好ましくはα,β-不飽和カルボン酸、及びα,β-不飽和アルデヒドから選択される。例示的なα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、C~Cアルキルメタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C~Cアルキルクロトネート、クロトンアミド、クロトンアルデヒド、(メタ)アクロレイン、又はこれらの混合物が含まれる。好ましいα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、クロトンアルデヒド、(メタ)アクリルアルデヒド、又はこれらの混合物である。
【0047】
結晶微細化剤は、本発明のめっき浴中に0.0001~0.045g/lの量で存在してよい。好ましくは、結晶微細化剤は、0.0001~0.04g/l、より好ましくは0.0001~0.035g/l、及びさらにより好ましくは0.0001~0.03g/lの量で存在する。第1の結晶微細化剤として有用な化合物は一般的に、様々な供給源から市販されており、そのままで使用してもよく、又はさらに精製してもよい。
【0048】
本組成物には、さらなる添加剤、例えば酸化防止剤、有機溶媒、錯化剤、及びこれらの混合物が任意に含まれてよい。本めっき浴では追加の平滑剤を使用してよいが、めっき浴は本発明による平滑剤のみを含むことが好ましい。
【0049】
酸化防止剤
酸化防止剤を本組成物に任意に添加して、スズを溶解性の二価の状態に維持することを補助してよい。1つ以上の酸化防止剤を本組成物中に使用することが好ましい。例示的な酸化防止剤には、限定するものではないが、ヒドロキノン、水酸化及び/又はアルコキシル化芳香族化合物(このような芳香族化合物のスルホン酸誘導体を含む)が含まれ、好ましくは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、レソルシノール、カテコール、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシベンゼン-4-スルホン酸、1,2-ジヒドロキシベンゼン-3,5-ジスルホン酸、1,4-ジヒドロキシベンゼン-2-スルホン酸、1,4-ジヒドロキシベンゼン-2,5-ジスルホン酸、2,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、及びp-メトキシフェノールである。このような酸化防止剤は、US4871429に開示されている。他の好適な酸化防止剤又は還元剤には、限定するものではないが、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムトリアセチルアセトネート、ハロゲン化バナジウム、オキシハロゲン化バナジウム、バナジウムアルコキシド及びバナジルアルコキシドなどのバナジウム化合物が含まれる。このような還元剤の濃度は当業者に周知であるが、典型的には0.1~10g/lの範囲、好ましくは1~5g/lである。このような酸化防止剤は一般的に、様々な供給源から市販されている。純粋なスズ電気めっき組成物に前述の酸化防止剤を使用することが特に好ましい。
【0050】
錯化剤
スズ又はスズ合金電気めっき浴は、組成物中に存在するスズ及び/又は他の金属を錯化するための錯化剤をさらに含有してよい。典型的な錯化剤は、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールである。さらなる有用な錯化剤は、WO2019/185468及び未公開国際特許出願番号PCT/EP2020/075080に記載されている。
【0051】
典型的な錯化剤は、ポリオキシモノカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクトン化合物、及びこれらの塩である。
【0052】
他の錯化剤は、US7628903、JP4296358B2、EP0854206A及びUS8980077B2に開示されているチオ尿素、チオール又はチオエーテルのような有機チオ化合物である。
【0053】
電解質
一般的に、本明細書で使用する「水性」は、本発明の電気めっき組成物が、少なくとも50%の水を含む溶媒を含むことを意味する。好ましくは、「水性」は、組成物の大部分が水であり、より好ましくは溶媒の90%が水であり、最も好ましくは溶媒が本質的に水からなることを意味する。蒸留水、脱イオン水又は水道水など、いずれのタイプの水を使用してもよい。
【0054】
スズ
スズイオン源は、金属イオンを放出し、十分な量で電気めっき浴中に析出させることができる任意の化合物であってよく、すなわち、電気めっき浴中で少なくとも部分的に可溶性である。金属イオン源は、めっき浴に可溶であることが好ましい。好適な金属イオン源は金属塩であり、限定するものではないが、金属スルフェート、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属ニトレート、金属フルオロボレート、金属アルキルスルホネート、金属アリールスルホネート、金属スルファメート、金属グルコネートなどが挙げられる。
【0055】
金属イオン源は本発明において、基板上に電気めっきするために十分な金属イオンを供給する任意の量で使用してよい。金属がスズ単独である場合、スズ塩は、典型的には、めっき溶液の約1~約300g/lの範囲の量で存在する。
【0056】
合金化金属(Alloying metals)
任意に、本発明によるめっき浴は、1つ以上の合金化金属イオンを含有してよい。好適な合金化金属には、非限定的に、銀、金、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、マンガン及びこれらの混合物が含まれる。好ましい合金化金属は、銀、銅、ビスマス、インジウム、及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀である。本発明の組成物は鉛を含まないことが好ましい。浴に可溶性の合金化金属の任意の塩は、合金化金属イオンの源として好適に使用される。このような合金化金属塩の例には、限定するものではないが、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属フルオロボレート、金属スルフェート、金属アルカンスルホネート、例えば金属メタンスルホネート、金属エタンスルホネート及び金属プロパンスルホネート、金属アリールスルホネート、例えば金属フェニルスルホネート、金属トルエンスルホネート及び金属フェノールスルホネート、金属カルボキシレート、例えば金属グルコネート及び金属アセテートなどが含まれる。好ましい合金化金属塩は、金属スルフェート、金属アルカンスルホネート、及び金属アリールスルホネートである。1つの合金化金属を本組成物に添加する場合、二元合金の析出が実現される。2つ又は3つ以上の異なる合金化金属を本組成物に添加する場合、三次、四次又はさらに高次の合金の析出が実現される。本組成物中に使用されるこのような合金化金属の量は、所望される特定のスズ合金に依存する。合金化金属のこのような量の選択は、当業者の能力の範囲内にある。当業者であれば、或る特定の合金化金属、例えば銀が使用される場合、追加の錯化剤が必要とされ得ることを理解するであろう。そのような錯化剤(又は錯化物(complexers))は当該技術分野において周知であり、任意の好適な量で使用してよい。
【0057】
本発明の電気めっき組成物は、スズ含有層(純粋なスズ層又はスズ合金層であり得る)を析出させるのに好適である。例示的なスズ合金層には、非限定的に、スズ-銀、スズ-銅、スズ-インジウム、スズ-ビスマス、スズ-銀-銅、スズ-銀-銅-アンチモン、スズ-銀-銅-マンガン、スズ-銀-ビスマス、スズ-銀-インジウム、スズ-銀-亜鉛-銅、及びスズ-銀-インジウム-ビスマスが含まれる。好ましくは、本発明の電気めっき組成物は、純粋なスズ、スズ-銀、スズ-銀-銅、スズ-銀-ビスマス、スズ-銀-インジウム、及びスズ-銀-インジウム-ビスマス、及びより好ましくは純粋なスズ、スズ-銀又はスズ-銅を析出させる。
【0058】
本発明の電気めっき浴から析出される合金は、原子吸着分光法(AAS)、蛍光X線(XRF)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)又は示差走査熱量測定(DSC)のいずれかによって測定した場合、合金の質量に対して0.01~99.99質量%の範囲の量のスズ、及び99.99~0.01質量%の範囲の量の1つ以上の合金化金属を含有する。好ましくは、本発明を用いて析出させたスズ-銀合金は、90~99.99質量%のスズ及び0.01~10質量%の銀及び任意の他の合金化金属を含有する。より好ましくは、スズ-銀合金の析出は、95~99.9質量%のスズ及び0.1~5質量%の銀及び任意の他の合金化金属を含有する。スズ-銀合金は好ましいスズ合金の析出であり、そして好ましくは90~99.9質量%のスズ及び10~0.1質量%の銀を含有する。より好ましくは、スズ-銀合金の析出は、95~99.9質量%のスズ及び5~0.1質量%の銀を含有する。多くの用途では、合金の共晶組成が使用される。本発明により析出した合金は、実質的に鉛を含まない、すなわち、1質量%、より好ましくは0.5質量%未満、及びさらにより好ましくは0.2質量%未満の鉛を含有し、そしてなおより好ましくは、鉛を含まない。
【0059】

一般に、本発明による金属イオン源及び少なくとも1つの平滑化剤の他に、本発明によれば、本発明の金属電気めっき組成物には、好ましくは、電解質、すなわち、酸性又はアルカリ性電解質、1つ以上の金属イオン源、任意のハロゲン化物イオン、及び任意の他の添加剤(界面活性剤及び結晶微細化剤など)が含まれる。このような浴は、典型的には水性である。水は、広範囲の量で存在しうる。蒸留水、脱イオン水又は水道水など、任意の種類の水を使用してよい。
【0060】
好ましくは、本発明のめっき浴は酸性であり、すなわち、7未満のpHを有する。典型的には、スズ又はスズ合金電気めっき組成物のpHは、4未満、好ましくは3未満、最も好ましくは2未満である。
【0061】
本発明の電気めっき浴は、任意の順序で成分を合わせることによって調製してよい。無機成分、例えば金属塩、水、電解質及び任意のハロゲン化物イオン源を、まず浴槽に添加し、その後、有機成分、例えば界面活性剤、結晶微細化剤、平滑剤などを添加することが好ましい。
【0062】
典型的には、本発明のめっき浴は、10~65℃以上の任意の温度で使用してよい。めっき浴の温度は10~35℃、及びより好ましくは15~30℃であることが好ましい。
【0063】
好適な電解質には、例えば、限定するものではないが、硫酸、酢酸、フルオロホウ酸、アルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えばフェニルスルホン酸及びトルエンスルホン酸、スルファミン酸、塩酸、リン酸、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシドなどが含まれる。酸は、典型的には、約1~約300g/lの範囲の量で存在する。
【0064】
一実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、クロリド、スルフェート又はアセテートから選択される対イオンYo-を含み、式中、oは正の整数である。
【0065】
そのような電解質は任意に、ハロゲン化物イオン源、例えば塩化スズ又は塩酸にあるようなクロリドイオンを含有していてよい。広範囲のハロゲン化物イオン濃度、例えば約0~約500ppmを本発明において使用してよい。典型的には、ハロゲン化物イオン濃度は、めっき浴に対して約10~約100ppmの範囲である。電解質は硫酸又はメタンスルホン酸、及び好ましくは硫酸又はメタンスルホン酸及びクロリドイオン源の混合物であることが好ましい。本発明で有用な酸及びハロゲン化物イオン源は一般的に市販されており、さらに精製することなく使用してよい。
【0066】
用途
本発明のめっき組成物は、スズ含有層が所望され、特にスズ含有はんだ層を、複数の導電性接合部分を含む半導体ウエハー上に析出させるための様々なめっき法で有用である。めっき法には、限定するものではないが、水平又は垂直ウエハーめっき、バレルめっき、ラックめっき、高速めっき、例えばオープンリール及びジェットめっき、及びラックレスめっき、及び好ましくは水平又は垂直ウエハーめっきが挙げられる。幅広い種類の基板が、本発明によるスズ含有析出物でめっき可能である。めっきする基板は導電性であり、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-鉄含有材料を含んでもよい。このような基板は、電子部品、例えば(a)リードフレーム、コネクタ、チップキャパシタ、チップ抵抗器、及び半導体パッケージ、(b)回路基板などのプラスチック、及び(c)半導体ウエハーの形態であってもよい。好ましくは、基板は半導体ウエハーである。従って、本発明は、スズ含有層を半導体ウエハー上に析出させる方法であって、複数の導電性接合部分を含む半導体ウエハーを製造することと、半導体ウエハーを上記の組成物と接触させることと、十分な電流密度を適用してスズ含有層を導電性接合部分に析出させることと、を含む、方法も提供する。好ましくは、接合部分は、純銅層の形態であってもよい銅、銅合金層、又は銅を含む任意の相互接続構造を含む。銅ピラーは、1個の好ましい導電性接合部分である。任意に、銅ピラーは、ニッケル層などの上部金属層を含んでよい。導電性接合部分が上部金属層を有する場合、スズ又はスズ合金のはんだ層が、接合部分の上部金属層上に析出される。接合パッド及び銅ピラーなどの導電性接合部分は当該技術分野において周知であり、例えば、US7,781,325、US2008/0054459A、US2008/0296761A、及びUS2006/0094226Aに記載されている。
【0067】
方法
本発明の一実施形態は、スズ又はスズ合金含有層を析出させるための浴における式L1で表される添加剤及び本明細書に記載の任意の他の平滑剤の使用方法であり、スズ合金含有層は、銀、銅、インジウム、及びビスマスから選択される合金金属を0.01~10質量%の量で含む。好ましくは、析出させたスズ合金層は、0.1~5質量%の合金金属含有量を有する。
【0068】
本発明の別の実施形態は、基板上にスズ又はスズ合金層を析出させるための方法であって、以下の工程
a) スズイオンと、銀、銅、インジウム、及びビスマスイオンから選択されるさらなる合金金属イオンと、式L1a
【化13】
又は式L1b
【化14】
で表される少なくとも1つの添加剤とを含む組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させる工程、及び
b) スズ又はスズ合金層を基板上に析出させるのに十分な時間、基板に電流を印加する工程
による方法であり、
式中、
L1は、各基RL1 について独立して、-F、C又はC位に1つ以上のF置換基を含む直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、
L2は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり、これらはすべてCN、OH、C~Cアルコキシ又はハロゲン、特にFによって置換されていてよく、
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ又はハロゲン、Cl、CN、及びOH、好ましくはRL1又はHから選択され、
L4は、RL1又はRL3であり、
L11、RL12、RL13は、RL1及びRL3から独立して選択され、RL11、RL12、RL13の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくはすべてがRL1であるという条件付きであり、
L1は、(a)二価の飽和、不飽和基であり、以下:
(a) C~Cアルカンジイル基、
(b) C~Cアルケンジイル基、
から選択され、
又は
(c) 隣接するC=C二重結合と共にC~C12芳香族環系を形成し、
そして
nは、1、2又は3から選択される基RL1の数である。
【0069】
ここで使用する「窪んだ特徴的形状(recessed feature)」とは、基板のビア、トレンチ又は任意の他の開口部、具体的には、はんだバンプを析出させるための開口部を意味する。ここで使用する「アパーチャーサイズ(aperture size)」とは、窪んだ特徴的形状の開口部における最短距離を意味する。
【0070】
好ましくは、基板は、1~1000マイクロメートルのアパーチャーサイズを有する窪んだ特徴的形状を含み、そして析出は、マイクロメートルサイズの窪んだ特徴的形状を少なくとも部分的に充填するように行う。最も好ましくは、窪んだ特徴的形状は1~200マイクロメートル、好ましくは3~100マイクロメートルのアパーチャーサイズを有する。
【0071】
一般的に、本発明を用いてスズ又はスズ合金を基板上に析出させる場合、使用中にめっき浴を撹拌する。好ましくは、スズ合金を析出させ、そして析出したスズ合金の合金金属含有量は、0.01~10質量%である。任意の好適な撹拌法を本発明と共に使用してよく、このような方法は当該技術分野において周知である。好適な撹拌法には、限定するものではないが、不活性ガス又は空気散布、ワークピース撹拌、衝突などが含まれる。このような方法は当業者に既知である。本発明を用いてウエハーなどの集積回路基板をめっきする場合、ウエハーを例えば1~150RPMで回転させて、回転するウエハーに、例えばポンプ又はスプレーによってめっき溶液を接触させてもよい。代替形態において、所望の金属析出物を設けるのにめっき浴の流れが十分な場合は、ウエハーを回転させる必要はない。
【0072】
スズ又はスズ合金は、本発明により、金属析出物中に実質的に空隙を形成することなく、凹部に析出される。用語「実質的に空隙を形成することなく」とは、金属析出物中に、1000nm、好ましくは500nm、最も好ましくは100nmより大きな空隙がないことを意味する。
【0073】
半導体基板をめっきするためのめっき設備は周知である。めっき設備は、スズ又はスズ合金電解質を保持し、プラスチック又は電解めっき溶液に不活性の他の材料などの好適な材料で作られた電気めっき槽を含む。槽は、特にウエハーめっき用に円筒状であってもよい。陰極は槽の上部に水平に配置され、開口部を有するシリコンウエハーなどの任意のタイプの基板であってもよい。
【0074】
これらの添加剤を、陰極液を陽極液から分離するメンブレン(複数可)の存在下又は不在下、可溶性及び不溶性の陽極とともに使用することができる。
【0075】
陰極基板と陽極とは、それぞれ、電源供給部に配線によって電気的に接続される。直流又はパルス電流のための陰極基板は正味の負電荷を有し、従って、溶液中の金属イオンが陰極基板で還元され、めっき金属が陰極表面上で形成される。酸化反応が陽極で生じる。陰極及び陽極は、槽内で水平に配置されても垂直に配置されてもよい。
【0076】
一般的に、スズ又はスズ合金バンプを製造するとき、フォトレジスト層が半導体ウエハーに適用され、次いで標準フォトリソグラフィー露光及び現像技法が施され、中に開口部又はビアを有するパターン化フォトレジスト層(又はめっきマスク)が形成される。めっきマスクの寸法(めっきマスクの厚さ及びパターン中の開口部のサイズ)は、I/Oパッド及びUBM上に析出したスズ又はスズ合金層のサイズ及び位置を画定する。
【0077】
すべてのパーセント、ppm又は同等の値は、別段の指定がある場合を例外として、各組成物の総質量に対する質量を指す。すべての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
以下の例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに例示するものである。
【実施例
【0079】
ここで使用した方法
ポリマーイオン化合物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により判定した。
【0080】
形態(粗さ)は、レーザー走査型顕微鏡(LSM)により基板の高さを測定して判定した。
【0081】
パターン化フォトレジストは、直径8μm及び深さ15μmのビア及び高さ5μmの予め形成された銅μバンプを含有していた。単離された(イソ)領域は、中心間の距離(ピッチ)が32μmの3×6のピラー配列からなる。高密度領域は、中心間の距離(ピッチ)が16μmの8×16のピラー配列からなる。
【0082】
平均粗さRは、式
【数1】
を用いて算出した。
【0083】
ここで、Hは、或る特定のバンプ上の位置iの高さである。1つのバンプの表面をレーザースキャンする際に、n個の位置の高さが判定される。H平均は、1つのバンプのn個すべての位置の平均高さである。
【0084】
実施例
以下の実施例に以下の平滑剤を使用した:
平滑剤1:4-[4-(ジフルオロメチル)フェニル]ブト-3-エン-2-オン、Aurora Fine Chemicals社から入手可能、
平滑剤2:4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ブト-3-エン-2-オン、Merck KGaA社から入手可能、
平滑剤3:4-(4-フルオロフェニル)-ブト-3-エン-2-オン、Chemieliva Pharmaceuticals Co.社から入手可能。
【0085】
比較実施例1
スズメタンスルホネートとして75g/lのスズ、180g/lのメタンスルホン酸、0.3g/lの市販の酸化防止剤、及びイソプロパノール中の1.5g/lのベンザルアセトンの異なる量の原液を含有するスズめっき浴を用意した。
【0086】
10μmのスズを、銅マイクロバンプ上に電気めっきした。銅マイクロバンプは、直径25μm及び高さ25μmを有していた。厚さ50μmのパターン化フォトレジスト層を有する2.5cm×2.5cmの大型ウエハークーポンを、上記のめっき浴に浸漬し、10ASDの直流電流密度を25℃で300秒間印加した。めっきしたスズバンプをレーザー走査顕微鏡(LSM)で検査した。
【0087】
結果を表1に示す。
【0088】
実施例2
ベンザルアセトンの代わりに平滑剤1を含有する比較実施例1に記載のスズめっき浴を用意した。めっき手順は、比較実施例1に記載したものであった。めっきしたスズバンプをレーザー走査型顕微鏡(LSM)で観察した。
【0089】
結果を表1にまとめる。
【0090】
結果を比較実施例1と比較すると、スズ電気めっきは、ベンザルアセトンと比較して、平滑剤1を使用した場合、より滑らかな表面をもたらした。さらに、平滑剤濃度を変えた実験では、平滑剤1の方がベンザルアセトンに比べてプロセスウィンドウが広いことが示された。
【0091】
実施例3
ベンザルアセトンの代わりに平滑剤2を含有する比較実施例1に記載のスズめっき浴を用意した。めっき手順は、比較実施例1に記載されたものであった。めっきしたスズバンプをレーザー走査型顕微鏡(LSM)で観察した。
【0092】
結果を表1にまとめる。
【0093】
結果を比較実施例1と比較すると、スズ電気めっきは、ベンザルアセトンと比較して、平滑剤2を使用した場合、より滑らかな表面をもたらした。さらに、平滑剤濃度を変えた実験では、平滑剤2はベンザルアセトンと比較して、特に低濃度の場合、より広いプロセスウィンドウを示した。
【0094】
実施例4
ベンザルアセトンの代わりに平滑剤3を含有する比較実施例1に記載のスズめっき浴を用意した。めっき手順は、比較実施例1に記載されたものであった。めっきしたスズバンプをレーザー走査型顕微鏡(LSM)で観察した。
【0095】
結果を表1にまとめる。
【0096】
比較実施例1と比較すると、スズ電気めっきは、ベンザルアセトンと比較して、平滑剤3を使用した場合、より滑らかな表面をもたらした。さらに、平滑剤濃度を変えた実験では、平滑剤3はベンザルアセトンに比べてプロセスウィンドウが広いことが示された。
【0097】
【表1】
【国際調査報告】