(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】粒状物質から水を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537127
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021085257
(87)【国際公開番号】W WO2022128804
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヘンスラー,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ケルン,アンドレアス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フィス ゴンサレス,ラケル
(72)【発明者】
【氏名】バイアーリンク,トルシュテン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
ニッケル又はコバルトの少なくとも1種及びニッケル以外の少なくとも1種の金属を含む(オキシ)ヒドロキシド及び炭酸塩から選択される粒状物質から水を除去する方法であって、
含水率が、上記粒状物質に基づいて1~30質量%の範囲の少なくとも1種の粒状物質を、外部発熱体を備えたロータリーキルンに導入し、及び上記粒状物質を、ガスの流れと共にロータリーキルンを通して移動させる工程を含み、得られた生成物の残留水分は50ppm~1.5質量%の範囲である方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル又はコバルトから選択される少なくとも1種の遷移金属及びニッケル以外の少なくとも1種の金属を含む(オキシ)ヒドロキシド及び炭酸塩から選択される粒状物質から水を除去する方法であって、
含水率が、前記粒状物質に基づいて1~30質量%の範囲の少なくとも1種の粒状物質を、外部発熱体を備えたロータリーキルンに導入し、及び前記粒状物質を、ガスの流れと共にロータリーキルンを通して移動させる工程を含み、得られた生成物の残留水分は50ppm~1.5質量%の範囲である方法。
【請求項2】
前記ガスの流れは、前記粒状物質の動きに対して向流である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒状物質が、ニッケル及びコバルトとマンガンとから選択される少なくとも1種の遷移金属の、(オキシ)ヒドロキシド複合材料から選択され、及び任意に、Mg、Al、Ba、Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mo、Sb、及びYから選択される少なくとも1種の更なる金属を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスの流れが入口温度を、ゼロ~1400℃の範囲に有する、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒状物質がリチウムを含まない、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータリーキルンは、前記粒状物質が異なる温度レベルで処理される少なくとも2つの区別可能なゾーンを有する、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1の温度ゾーンでは、前記粒状物質の温度が80~130℃の範囲であり、及び第2の温度ゾーンでは、前記温度は200~500℃の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記粒状物質の平均滞留時間が30分~5時間の範囲である、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ロータリーキルンの排出端部上で、不活性ガス、空気、酸素富化又は酸素消耗空気又は煙道ガスの入口流が前記ロータリーキルンに導入される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒状物質が、ニッケルと、コバルト及びマンガンから選択される少なくとも1種の遷移金属の複合炭酸塩から選択され、及び任意に、Mg、Al、Ba、Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mo、Sb、及びYから選択される少なくとも1種の更なる金属を含有し、及び炭酸塩が二酸化炭素として少なくとも部分的に除去される、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル又はコバルトの少なくとも1種の遷移金属及びニッケル以外の少なくとも1種の金属を含む(オキシ)ヒドロキシド及び炭酸塩から選択される粒状物質から水を除去する方法であって、含水率が、上記粒状物質に基づいて1~30質量%の範囲の少なくとも1種の粒状物質を、外部発熱体を備えたロータリーキルンに導入し、及び前記粒状物質を、ガスの流れと共にロータリーキルンを通して移動させる工程を含み、得られた生成物の残留水分は50ppm~1.5質量%の範囲である方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状固体材料からの水分除去は、非常に興味深い主題である。湿った材料の乾燥は、前工業プロセス及び工業プロセス技術の基本的な操作である。幾つかの課題に対処するべきである:多くの場合、上記粒子状物質の形態は保存する必要があり、ダスティングも塊もリング形成も望ましくない。熱伝達は効率的である必要がある:高い蒸発エネルギーのために、多くのエネルギーが湿った材料に伝達されなければならず、エネルギーがどのように生成されるかにかかわらず、高いエネルギー損失は望ましくない。
【0003】
連続プロセスでは、多くの連続反応器では反応時間が平均時間であるため、水分除去はさらに多くの課題をもたらす。粒子の群のショートカットと非常に長い滞留時間の両方は、それぞれ不完全な反応と二次粒子の望ましくない凝集のために回避する必要が有る。
【0004】
リチウムイオン電池用の正極活物質の製造において、水分除去の話題がますます関心を集めている。対応する複合酸化物は一般に、2段階の工程を用いて製造される。第一段階では、遷移金属の難溶性化合物が、これを溶液、例えば炭酸塩又は水酸化物から沈殿させることによって作られる。この難溶性塩は多くの場合、前駆体とも称される。このような前駆体は、それらの粒度分布及び内部物理的構造に関して、例えばそれらの真球度又は比表面積(BET表面)によって特徴付けられる厳しい仕様を満たすことが期待される。第2段階では、上記前駆体はリチウム化合物、例えばLi2CO3、LiOH又はLi2Oとの複合体であり、及び高温、例えば600~1100℃で焼成される。従って水の除去は2つの段階の間で非常に重要である。含水率を含む組成、及び粒度分布を含む形態の両方において、均質な前駆体であることが強く望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの場合、共沈後、前駆体は固液分離法、特に濾過によって母液から分離される。得られたフィルターケーキは、最大30質量%の水を含有し得る。上記の水の除去には多くのエネルギーを必要とする。同時に、前駆体の形態(morphology)に悪影響を及ぼさないことが望まれる。
【0006】
従って本発明の目的は、粒状物質の形態を維持しながら、経済的な方法で粒状物質から水を除去することができる工程(プロセス)を提供することであった。更に、このような工程を行うための反応器を提供することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って冒頭に定義される工程が見出され、該工程は以降、「本発明の工程」又は「本発明に従う工程」とも称される。本発明の工程は連続工程である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の工程は、粒子状固体とも称される粒子状材料、特に濾過ケーキ(フィルターケーキ)から出発する。本発明の工程で導入される上記粒状物質は湿潤である。これは本発明において、湿潤粒状材料が1~30質量%の範囲の含水率を有することを意味するものとする。含水率は、質量が変化しなくなるまで100℃の温度で真空中で乾燥することによって決定しても良い。本発明の工程の過程で、上記湿潤粒状材料はペースト、スラリー又は湿潤粉末又は凝集した湿潤粉末として導入される。好ましい実施形態において、湿潤粒状材料は、濾過ケーキとして提供される。
【0009】
上記粒状物は、1μm~1mmの範囲の平均直径(d50)を有しても良いが、好ましくは2μm~100μmである。平均直径は有利には、レーザー回折によって決定され、そして本発明では、質量中央値を表す。上記粒状材料は不規則な形状を有していても良いが、好ましい実施形態において、上記粒状材料は規則的な形状、例えば回転楕円体又は球状さえも有する。アスペクト比は1~10の範囲であっても良く、好ましくは1~3の範囲であり、更に好ましくは1~1.1の範囲である。アスペクト比は、幅の長さに対する比率、又は特定的には最長寸法の粒子径と最短寸法の粒子径の比として定義される。完全な球形の粒子のアスペクト比は1である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、湿潤粒子材料は、リチウムイオン電池用正極活物質用の前駆体の沈殿又は好ましくは共沈からのフィルターケーキとして提供される。このような実施形態において、上記粒状固体は、好ましくは2~20μmの範囲の平均粒子径(d50)を有し、更により好ましくは、これは3~15μmの範囲である。例えば湿式粒状物質は、水酸化ニッケルもしくは水酸化コバルトの沈殿から、又は炭酸ニッケルもしくは炭酸コバルトから、又は共沈からの濾過ケーキ(フィルターケーキ)として提供されても良い。
【0011】
粒状物質は、遷移金属の酸化物、(オキシ)水酸化物及び炭酸塩から選択され、好ましいものは炭酸塩であり、更に好ましいのは(オキシ)水酸化物である。オキシ水酸化物という用語は、酸化物イオンと水酸化物イオンの化学量論的シェアが同じ化合物を表すだけでなく、非化学量論的化合物をも表す。
【0012】
上記粒状物質は、ニッケル又はコバルトから選ばれる少なくとも1種の遷移金属とニッケル以外の少なくとも1種の金属とを含有する(オキシ)水酸化物及び炭酸塩から選択される。従ってニッケル以外の少なくとも1つの金属、例えばマンガン又はコバルトを含むオキシ水酸化コバルト又は水酸化コバルト又は炭酸コバルト又はニッケルの炭酸塩又は(オキシ)水酸化物であり得る。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記粒状材料は、ニッケルとコバルト及びマンガンから選択される少なくとも1種の遷移金属との複合(オキシ)水酸化物から選択され、任意選択でMg、Al、Ba、Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mo、Sb及びYから選択される少なくとも1種の更なる金属を含有する。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記粒状材料は、ニッケルとコバルト及びマンガンから選択される少なくとも1種の遷移金属との複合炭酸塩から選択され、任意選択でMg、Al、Ba、Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mo、Sb及びYから選択される少なくとも1種の更なる金属を含有し、好ましくは上記粒状材料は、ニッケル及びマンガンの複合炭酸塩から選択される。これに関連して炭酸塩は、酸化物又は酸化物の対イオンも含む炭酸塩である、塩基性炭酸塩をも含む。
【0015】
湿潤粒状材料は、少量のリチウムを、例えば上記(オキシ)水酸化物又は炭酸塩中に存在するコバルト又は場合によってはニッケルとコバルトと他の遷移金属との合計に対して、1.5~3モル%含有しても良い。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、湿潤粒状材料はリチウムを含まない。ここで「リチウムを含まない」とは、上記(オキシ)水酸化物又は炭酸塩中に存在するコバルト又は場合によってはニッケルとコバルトと他の遷移金属との合計に対して、1モル%未満のリチウム含有量を表す。
【0017】
一部の要素は偏在性(ubiquitous)である。本発明において、不純物としてのナトリウム、カルシウム、鉄又は亜鉛等の微量の偏在性金属は、本発明の説明において考慮され得ない。ここにおける微量は、出発物質の合計金属含有量に対して0.02モル%以下の量を意味し得る。更に、硫酸塩出発物質に由来する残留硫酸アニオンも無視され得る。
【0018】
本発明の一実施形態では、ニッケルとコバルト及びマンガンから選択される少なくとも1種の遷移金属との混合炭酸塩又は混合水酸化物の金属部分は、一般式(I)
NiaM1
bMnc (I)
に対応し、変数はそれぞれ次のように定義される:
M1は、Co又はCoとTi、Zr、Al及びMgから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、
aは、0.15~0.95の範囲、好ましくは0.6~0.92又は0.15~0.3の範囲であり、
bは、0~0.35の範囲、好ましくは0.05~0.2の範囲であり、
cは、0~0.8の範囲、 好ましくは0.05~0.2の範囲であり、且つ
a+b+c=1.0であり、且つb及びcの少なくとも一方が0より大きい。
【0019】
本発明の一実施形態において、粒状固体の平均滞留時間は、30分~5時間の範囲であり、好ましくは1~3時間の範囲である。ここで平均滞留時間とは、ロータリーキルン内の粒状物質の平均滞留時間を表す。
【0020】
本発明の一実施形態では、湿潤粒状固体は、周囲温度でロータリーキルンに導入される。本発明の別の実施形態では、湿潤粒状固体は、50℃~100℃の温度でロータリーキルンに導入される。
【0021】
本発明の一実施形態では、上記湿潤粒状固体は、シュート又は振動シュートによって、スパイラルコンベア又はスクリューコンベアによって上記ロータリーキルンに導入され、 これは好ましくは単一のスクリュー又は複数のスクリューを備えたスクリューコンベアによって行われる。
【0022】
次に、湿潤粒状固体がロータリーキルンを通って移動される。湿潤粒状固体が移動すると、含水率は減少する。好ましくは、本発明の工程の終了時に、残留水分含有量は、50ppm~1.5質量%の範囲、好ましくは100~300ppmの範囲である。ppmは百万分率であり、質量を基準とする。残留水分含有量は、カールフィッシャー滴定又は熱質量法によって決定されても良い。
【0023】
本発明の一実施形態では、ロータリーキルンのレトルト長は、1~50m、好ましくは5~25mである。
【0024】
本発明の一実施形態では、ロータリーキルンのレトルト径は、0.2~4mの範囲であり、好ましくは1~2mである。
【0025】
本発明の一実施形態では、レトルト径に対するレトルト長の比は、5~50の範囲であり、好ましくは10~25である。
【0026】
本発明の一実施形態では、ロータリーキルンは、正確に水平である。別の実施形態では、ロータリーキルンは、例えば0.2~7℃の傾斜角度で傾斜され、及びロータリーキルンを通る粒状固体の移動は重力によってなされる。
【0027】
本発明の一実施形態では、ロータリーキルンは、毎分0.01~20回転で運転され、これは好ましくは、毎分0.5~5回転であり、及び各場合において、連続的又は間隔的に運転される。インターバルモードでの運転を所望する場合は、例えば1~5回転後に1~60分間回転を停止し、その後、再び1~5回転を行い、再び1~60分間停止することが可能であり、及びこのように進行可能である。
【0028】
本発明の一実施形態では、ロータリーキルンは内部部分を備えていても良い。内部部分は、垂直バッフル又はダム、らせんベーン、直線又は傾斜ブレード、Lリフター、プラウシェア、チェーンカーテン又はシャベルなどの複数の機械ユニットを含んでも良い。内部部分は、壁からロータリーキルンの中心までの断面全体を覆う場合もあれば、壁からロータリーキルンの中心まで部分的に拡張することも可能である。好ましくは内部部分は、回転管の軸に沿って0.2~5mの長さのセクションに配置され、各セクションは、回転チューブの円周に沿って規則的に分布する1~24個の個別の機械ユニットを含む。
【0029】
ロータリーキルンは、1つ以上の外部加熱要素、例えば外部炉を有する。このような外部炉からの熱は、ガス燃焼、電気抵抗加熱、誘導加熱、又はマイクロ波加熱を経て発生しても良い。
【0030】
上記粒状物質は、ガスの流れと共にロータリーキルン内を移動される。上記ガスは、空気、窒素等の不活性ガス、又は酸素消尽空気又は酸素富化空気又は煙道ガスであっても良く、空気及び煙道ガスが好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態では、ガスの流れは、0~1400℃の範囲の入口温度を有し、これは好ましくは100又は200~1000℃である。 ガス入口温度が100℃以上である実施形態では、予熱システムが必要となる。予熱システムが所望でない実施形態では、入口温度は周囲温度に対応する。
【0032】
本発明の一実施形態では、上記粒状材料は、ガスの並流流と共にロータリーキルンを通って移動される。本発明の他の実施形態では、上記ガスの流れ及び上記粒状固体は、上記ロータリーキルン内を向流状態で移動される。並流は、最も仕上がった前駆体が湿度と二酸化炭素が比較的豊富なガスと接触するという不利を有している。この不利は、ガスの流れと粒状固体の動きが向流である場合には回避される。
【0033】
本発明の一実施の形態では、上記ロータリーキルンの排出端部において、不活性ガス、空気、酸素富化又は酸素消耗空気又は煙道ガスの入口流がロータリーキルン内に導入される。本発明の一実施形態では、上記ロータリーキルンは、粒状材料が異なる温度レベルで処理される、少なくとも2つの区別可能なゾーン、例えば2~6つの温度ゾーンを有する。区別可能なゾーンは、強い吸熱工程ステップ-水の蒸発及び水酸化物又は炭酸塩の水又は二酸化炭素としての化学分解水によって、又は別個の外部加熱ゾーンを介して、異なる温度レベルを与えることによって事前設定される。
【0034】
好ましい実施形態では、第1の温度ゾーンでは、上記粒状材料の温度は80~130℃の範囲であり、第2の温度ゾーンでは、温度は200~500℃の範囲、好ましくは200~450℃、より好ましくは220~300℃の範囲である。上記温度は、センサを用いて決定しても良い。
【0035】
本発明の工程を実施することにより、粒状物質からの水及び該当する場合は炭酸塩の除去は、粒状材料の形態を維持しつつ、経済的な方法で行われて良い。特に、本発明の工程に従って水分蒸発と水酸化物/炭酸塩分解を行うことにより、機器の設置面積と複雑さが軽減されるだけでなく、材料の顕熱をより効率的に使用し、熱損失を低減することにより、全体的なエネルギー効率が向上する。
【0036】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。
【実施例】
【0037】
一般:d10、d50、及びd90は、累積体積分布の10、50、及び90%での粒子径を表す。
【0038】
I.前駆体の共沈
連続撹拌槽型反応器に、脱イオン水と水1kg当たり49gの硫酸アンモニウムを充填した。溶液を55℃に穏やかにし、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12に調整した。
【0039】
共沈反応を、遷移金属硫酸塩水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を同時に供給することによって開始させ、及び総流量によって平均滞留時間が8時間となった。遷移金属硫酸塩溶液は、Ni、Co及びMnの硫酸塩を88:7:5のモル比で含み、及び全遷移金属濃度は1.65mol/kgであった。水酸化ナトリウム水溶液は、25質量%水酸化ナトリウム水溶液及び25質量%アンモニア水溶液が質量比6であった。pH値は、水酸化ナトリウム水溶液を別に供給することによって12に保たれた。すべての供給のスタートアップと一緒に始めて、得られたスラリーを連続的に除去した。
【0040】
次いで、スラリーをフィルタープレスで濾過した。得られたフィルターケーキを脱イオン水で洗浄し、次いで水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。結果物である前駆体の湿潤濾過ケーキが得られ、これは濾過ケーキ全体に対して残存含水率9.5質量%であり、平均粒子径(d50)が11μm、であり、スパン [(d90)-(d10) を (d50)で割った値]: 1.4であった。
【0041】
II.濾過ケーキの乾燥
II.1 5つの加熱ゾーンを有するロータリーキルン内での乾燥及び脱水
実施例Iから得られた湿潤フィルターケーキを次いで、連続運転された電気加熱式ロータリーキルンに供給した、質量流量20kg/h。ロータリーキルンは、加熱長さ6m及び内径0.3mで、及び外部電気抵抗炉によって長さ6mにわたり加熱され、5つの加熱ゾーンが均等に分散されていた。設定温度は、固形分供給側から測定した最初の2つのゾーン(乾燥ゾーン)では200及び240℃、及び最後の加熱3ゾーン(水酸化物分解ゾーン)では320、440、490℃に設定した。粒状物質の平均滞留時間は、キルンの加熱セクションで90分に達した。向流ガス流(空気)の体積流量は20m3/hで、これは標準条件で測定された。空気入口温度は周囲温度であった。
【0042】
その結果、カールフィッシャー滴定により求めた残留水分量500ppm、粉末X線回折測定により求めた酸化ニッケル(ブンセン石:bunsenite)に特徴的な相パターンを有する脱ヒドロキシル化金属酸化物の微粉末が得られた。
【0043】
II.2 ロータリーキルンでの乾燥と脱水
次に、実施例I.で得られた湿潤濾過ケーキを、質量流量20kg/hの連続運転式電気加熱ロータリーキルンに供給した。ロータリーキルンは、加熱長さ2.3m及び内径0.26mで、外部電気抵抗炉により長さ6mにわたる加熱を行った。設定温度は475℃とした。粒状物質の平均滞留時間は、キルンの加熱セクションで45分に達した。向流ガス流(空気)の体積流量は、標準条件で決定して3m3/hに達した。空気入口温度は周囲温度であった。
【0044】
その結果、カールフィッシャー滴定法により求めた残留水分率0.45質量%、BET比表面積60m2/g(N2吸着法による測定)、粉末X線回折測定により求めた酸化ニッケル(ブンセン石)の相パターン特性を有する脱ヒドロキシル化金属酸化物の微粉末が得られた。
【0045】
II.3 水酸基(ヒドロキシル基)を除去せずにロータリーキルンで乾燥(比較)
実施例I.で得られた湿潤濾過ケーキをその後、質量流量1.5kg/hで、連続運転した電気加熱ロータリーキルンに供給した。ロータリーキルンは加熱長さ1m、内径0.1mであった。キルンは約150℃の炉温度で運転した。粒状物質の平均滞留時間は、キルンの加熱セクションで50分に達した。向流ガス流(空気)の体積流量は1 Nm3/hであった。その結果、BET比表面積33m2/g、残留含水率1wt%、及び全LOI(着火減量)21.2wt%の脱ヒドロキシル化金属酸化物の微粉末が得られた。このようにして得られた比較前駆体は、水酸化ニッケル(テオフラスタイト:theophrastite)に特徴的な結晶相パターンを示した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の実施例II.1及びII.2に従いなされた前駆体のSEM画像、及び比較例II.3に従いなされた前駆体のSEM画像である。
【国際調査報告】