(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電子レンズ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/12 20060101AFI20240105BHJP
H01J 37/248 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01J37/12
H01J37/248 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537484
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021084737
(87)【国際公開番号】W WO2022135926
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーンブリンク,ステイン,ウィレム,ヘルマン,カレル
(72)【発明者】
【氏名】コーニング,ジョアン,ジョースト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ゾースト,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラント,マルコ,ジャン-ジャコ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB02
5C101EE03
5C101EE17
5C101EE57
5C101EE65
5C101EE68
5C101EE76
5C101FF02
5C101LL01
(57)【要約】
本明細書では、電子光学デバイス、レンズアセンブリ及び電子光学コラムが開示される。電子光学デバイスは、アレイ基板と隣接基板とを含み、及びそれらの基板間に電位差を提供するように構成される。電子ビームレットの経路のためのアパーチャのアレイが基板の各々に画定される。アレイ基板は、アレイ基板が、アパーチャのアレイに対応する領域において、アレイ基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームレットを操作するための電子光学デバイスを含む、電子ビームレットを操作するためのレンズアセンブリであって、前記デバイスは、
電子ビームレットの経路のためのアパーチャのアレイが画定されるアレイ基板であって、前記アレイ基板が、前記アパーチャのアレイに対応する領域において、前記アレイ基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有するアレイ基板、
前記電子ビームレットの前記経路のためのアパーチャの別のアレイが画定される隣接基板、
前記基板の対向する表面が互いに同一平面上にあるように、前記基板を分離するために前記基板間に配置されたスペーサーであって、前記電子ビームレットの前記経路のための開口部を画定し、及び前記ビームレットの前記経路に面する内側表面を有するスペーサー
を含み、前記電子光学デバイスは、前記基板間に電位差を提供する、レンズアセンブリ。
【請求項2】
前記アレイ基板及び前記隣接基板の一方は、他方のアップビームにある、請求項1に記載のレンズアセンブリ。
【請求項3】
前記アップビーム基板は、基準電位に対してダウンビーム基板よりも高い電位差を有する、請求項2に記載のレンズアセンブリ。
【請求項4】
前記基板の前記より薄い領域と、前記基板の前記他の領域との間の前記基板の表面は、前記隣接基板に面する前記基板の前記表面に垂直である、請求項1~3の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項5】
前記内側表面は、前記内側表面にわたる前記基板間のクリープ経路が前記基板間の最小距離よりも長いように形作られる、請求項1~4の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項6】
前記内側表面は、ひだを含み、好ましくは、前記ひだは、同心円状であり、及び/又は前記ひだは、前記開口部を取り囲む、請求項5に記載のレンズアセンブリ。
【請求項7】
前記アレイ基板は、
前記アパーチャアレイが画定される第1のウェーハであって、前記スペーサーと接触して配置される第1のウェーハと、
前記アパーチャアレイに対応しない領域において、前記第1のウェーハの表面上に配置される第2のウェーハと
を含む、請求項1~6の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項8】
前記アレイ基板は、異なる厚さを有する前記領域を生成するようにエッチングされた第1のウェーハを含む、請求項1~6の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項9】
前記内側表面は、上部ビーム部分が下部ビーム部分よりも前記ビームレットの前記経路から更に離された状態で段差を付けられる、請求項1~8の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項10】
0.5オーム/スクエア以下のコーティングは、前記基板の少なくとも1つの前記表面上に提供される、請求項1~9の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【請求項11】
前記隣接基板に画定された前記アパーチャのアレイは、前記アレイ基板に画定された前記アパーチャのアレイと同じパターンを有する、請求項1~10の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項12】
電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供する保護抵抗器を更に含む、請求項1~11の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【請求項13】
前記アレイ基板及び/又は前記隣接基板に電気的に接続された回路基板を更に含み、
好ましくは、前記保護抵抗器は、前記回路基板に電気的に接続される、請求項12に記載のレンズアセンブリ。
【請求項14】
前記アレイ基板及び/又は前記隣接基板を前記回路基板に電気的に接続するコネクタを更に含み、前記コネクタは、25kV/mm以上の材料によって取り囲まれる、請求項13に記載のレンズアセンブリ。
【請求項15】
サンプルから放出された電子を検出する検出器アレイを更に含む、請求項1~14の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年12月23日に出願された欧州特許出願公開第20216933.0号及び2021年8月17日に出願された欧州特許出願公開第21191728.1号の優先権を主張するものであり、これらの特許出願は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本明細書で提供される実施形態は、概して、電子光学デバイス、レンズアセンブリ及び電子光学コラムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体集積回路(IC)チップを製造する際、製造工程中に基板(例えば、ウェーハ)又はマスク上に望ましくないパターン欠陥が生じ、それにより歩留まりが低下し得る。欠陥は、例えば、光学効果及び付随して発生する粒子又はエッチング、化学機械研磨の堆積などの他の処理ステップの結果として発生し得る。従って、望ましくないパターン欠陥の程度をモニタリングすることは、ICチップの製造において重要なプロセスである。より一般的には、基板又は他の物体/材料の表面の検査及び/又は測定は、その製造中及び/又は製造後において重要なプロセスである。
【0004】
[0004] 荷電粒子ビームを用いたパターン検査ツールは、物体を検査するため、例えばパターン欠陥を検出するために使用されてきた。これらのツールは、一般的に、走査電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡法技術を使用する。SEMでは、比較的高いエネルギーの電子の一次電子ビームが、比較的低い着地エネルギーでターゲット上に着地するために、最終減速ステップでターゲットにされる。電子ビームは、ターゲット上にプロービングスポットとして集束される。プロービングスポットにおける材料構造と、電子ビームからの着地電子との相互作用により、二次電子、後方散乱電子又はオージェ電子などの電子が表面から放出される。発生した二次電子は、ターゲットの材料構造から放出され得る。
【0005】
[0005] 一次電子ビームにプローブスポットとしてターゲット表面上を走査させることにより、二次電子がターゲットの表面にわたって放出され得る。ターゲット表面から放出されたこれらの二次電子を収集することにより、パターン検査ツールは、ターゲット表面の物質構造の特性を表す画像状の信号を取得することができる。そのような検査では、収集された二次電子は、ツール内の検出器によって検出される。検出器は、付随する粒子に応答して信号を生成する。サンプルのあるエリアが検査されると、信号は、サンプルのその検査エリアに対応する検査画像を生成するために処理されるデータを含む。画像は、ピクセルを含み得る。各ピクセルは、検査エリアの一部分に対応し得る。典型的には、電子ビーム検査ツールは、単一のビームを有し、シングルビームSEMと呼ばれ得る。マルチビームSEM(MBSEM)と呼ばれ得るツール(又は「マルチビームツール」)にマルチ電子ビーム検査を導入しようとする試みがなされてきた。
【0006】
[0006] 電子光学コラムの別の用途は、リソグラフィである。荷電粒子ビームは、基板の表面上のレジスト層と反応する。荷電粒子ビームが向けられるレジスト層上の位置を制御することにより、レジスト中に所望のパターンを生成することができる。
【0007】
[0007] 電子光学コラムは、荷電粒子の1つ又は複数のビームを生成、照射、投影及び/又は検出するための装置であり得る。荷電粒子ビームの経路は、電磁場(即ち静電場及び磁場)によって制御される。浮遊電磁場は、ビームの方向を望ましくなくそらし得る。
【0008】
[0008] 一部の電子光学コラムでは、静電場は、通常、2つの電極間で生成される。ビーム電流の使用量が増加したシステムの場合、マルチ電子ビーム検査ツールにおいて、マルチビームの着地エネルギーを増大させる必要性が存在する。その結果、例えば、マルチ電子ビームのサブビームを動作させることができる静電レンズを形成する2つの電極間に電位差が加えられる。従って、既知のアーキテクチャを高い電位差で使用する場合、壊滅的な静電的破壊が発生する危険性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本発明は、より高い電位差において所望の電子光学性能を可能にする適切なアーキテクチャを提供する。本発明の一態様によれば、電子ビームレットを操作するための電子光学デバイスを含む、電子ビームレットを操作するためのレンズアセンブリが提供され、このデバイスは、電子ビームレットの経路のためのアパーチャのアレイが画定されるアレイ基板であって、アレイ基板が、アパーチャのアレイに対応する領域において、アレイ基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有するアレイ基板、電子ビームレットの経路のためのアパーチャの別のアレイが画定される隣接基板、これらの基板の対向する表面が互いに同一平面上にあるように、これらの基板を分離するためにこれらの基板間に配置されたスペーサーであって、電子ビームレットの経路のための開口部を画定し、及びビームレットの経路に面する内側表面を有するスペーサーを含み、電子光学デバイスは、これらの基板間に電位差を提供するように構成される。
【0010】
[0010] 本発明の利点は、本発明の特定の実施形態が例示及び例として記載される添付の図面と併せて以下の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【0011】
[0011] 本開示の上記及び他の態様は、添付の図面と併せた例示的実施形態の説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]例示的な荷電粒子ビーム検査装置を示す概略図である。
【
図2】[0013]
図1の例示的な検査装置の一部である例示的なマルチビーム電子光学コラムを示す概略図である。
【
図3】[0014]
図1の例示的な検査装置の一部である、コリメータ素子アレイ及び走査偏向器アレイを含む例示的な電子光学系の概略図である。
【
図4】[0015]
図3の電子光学系を含む例示的な電子光学系アレイの概略図である。
【
図5】[0016]
図1の例示的な検査装置の一部である代替の例示的な電子光学系の概略図である。
【
図6】[0017]
図3、
図4及び
図5の電子光学系の一部である例示的な電子光学デバイスの概略図である。
【
図7】[0018]
図6の電子光学デバイス内のスペーサーの周囲の静電場を示す図である。
【
図8】[0019]ひだの付いた内側表面を有する、電子光学デバイスの一部を形成するスペーサーの概略図である。
【
図9】[0020]絶縁ワイヤ接続及び抵抗器を含む例示的な対物レンズアセンブリの概略図である。
【
図10】[0021]スペーサー内において、「ビア」とも呼ばれる金属コーティングされた貫通孔による接続部を含む例示的な対物レンズアセンブリの概略図である。
【
図11】[0022]フリップチップ接続部を含む例示的な対物レンズアセンブリの概略図である。
【
図12】[0023]接地電圧で動作する水冷システムを含む例示的な対物レンズアセンブリの概略図である。
【
図13A】[0024]代替の例示的な検出器構成の概略図である。
【
図13B】[0024]代替の例示的な検出器構成の概略図である。
【
図13C】[0024]代替の例示的な検出器構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0025] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の説明は、添付の図面を参照し、別段の表示がない限り、異なる図面における同一の番号は、同一又は類似の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明に記載される実装形態は、本発明と一致する全ての実装形態を表すわけではない。代わりに、それらの実装形態は、添付の請求項において記述されるように、本発明に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例である。
【0014】
[0026] ICチップ上のトランジスタ、コンデンサ、ダイオード等の回路部品の実装密度を大幅に高めることにより、デバイスの物理的な大きさの低減及び電子デバイスの計算能力の向上を実現することができる。これは、分解能の向上によって可能になり、更に小さい構造物を作製することを可能にしている。半導体IC製造は、数百もの個別のステップを伴う、複雑で時間のかかるプロセスである。ICチップを製造する工程の何れかのステップでエラーが発生すると、最終製品の機能に悪影響を及ぼす可能性がある。1つのみの欠陥がデバイスの故障を引き起こし得る。プロセスの全体的な歩留まりを改善することが望ましい。例えば、50ステップのプロセス(ステップは、ウェーハ上に形成される層の数を示し得る)について75%の歩留まりを得るために、個々のステップは、それぞれ歩留まりが99.4%よりも高くなければならない。個々のステップの歩留まりが95%である場合、全体的なプロセスの歩留まりは、7~8%まで低くなる。
【0015】
[0027] 1時間当たりに処理される基板の数として定義される基板(即ちウェーハ)スループットを高く維持することも望ましい。高いプロセス歩留まり及び高い基板スループットは、欠陥の存在により影響され得る。これは、欠陥を調べるためにオペレータの介在を必要とする場合に特に当てはまる。検査ツール(走査型電子顕微鏡(「SEM」など)により、マイクロ及びナノスケールの欠陥を高いスループットで検出及び識別することは、ICチップの高い歩留まり及び低いコストを維持するために望ましい。
【0016】
[0028] SEMは、走査デバイス及び検出器装置を含む。走査デバイスは、一次電子を発生させるための電子源を含む照明装置と、一次電子の1つ又は複数の集束ビームで基板などのターゲットを走査するための投影装置とを含む。一次電子は、ターゲットと相互作用し、二次電子及び/又は後方散乱電子などの相互作用生成物を発生させる。SEMがターゲットの走査エリアの画像を生成できるように、検出装置は、ターゲットが走査されるにつれて、ターゲットからの二次電子及び/又は後方散乱電子を捕捉する。これらのSEM機能を具現化した電子光学ツールの設計は、単一ビームを有し得る。検査などのスループットをより高くするために、一部の装置の設計では、一次電子の複数の集束ビーム、即ちマルチビームが使用される。マルチビームの構成ビームは、サブビーム又はビームレットと呼ばれ得る。マルチビームは、ターゲットの異なる部分を同時に走査することができる。従って、マルチビーム検査装置は、例えば、ターゲットをより高速で移動させることにより、単一ビーム検査装置よりもターゲットをはるかに迅速に検査することができる。
【0017】
[0029] マルチビーム検査装置では、一次電子ビームの幾つかのビームの経路は、走査デバイスの中心軸、即ち一次電子光軸(本明細書では荷電粒子軸とも呼ばれる)の中心点からずれる。全ての電子ビームが実質的に同じ入射角でサンプル表面に到達することを確実にするために、中心軸からの半径方向の距離がより大きいサブビーム経路は、中心軸により近い経路を有するサブビーム経路よりも大きい角度を介して移動するように操作される必要がある。このより強力な操作により、収差が引き起こされ、これにより結果的に得られる画像がぼやけて焦点ずれになり得る。一例は、球面収差であり、これは、各サブビーム経路の焦点を異なる焦点面にもたらす。特に、中心軸上にないサブビーム経路について、サブビームの焦点面の変化は、中心軸からの半径方向の変位によってより大きくなる。そのような収差及び焦点ずれの影響は、二次電子が検出されるとき、ターゲットからの二次電子に関連して残ったままになり得、例えばターゲット上にサブビームによって形成されるスポットの形状及びサイズが影響を受けることになる。従って、そのような収差は、検査中に生成される結果画像の品質を劣化させる。
【0018】
[0030] 既知のマルチビーム検査装置の実装について以下で説明する。
【0019】
[0031] 図は、概略図である。従って、図面では、コンポーネントの相対寸法は、明瞭にするために拡大される。以下の図面の説明では、同じ又は同様の参照番号は、同じ又は同様のコンポーネント又はエンティティを指し、個々の実施形態に対する違いのみを説明する。説明及び図面は、電子光学装置を対象とするが、実施形態は、本開示を特定の荷電粒子に限定するために使用されないことが理解される。従って、本明細書全体を通して、電子及び電子に関連して言及される項目への言及は、より一般的に、荷電粒子及び荷電粒子に関連して言及される項目への言及であると考えることができ、荷電粒子は、必ずしも電子とは限らない。
【0020】
[0032] ここで、
図1を参照する。
図1は、例示的な荷電粒子ビーム検査装置100を示す概略図である。
図1の検査装置100は、真空チャンバ10、ロードロックチャンバ20、電子光学コラム40(電子ビームコラムとしても知られる)、機器フロントエンドモジュール(EFEM)30及びコントローラ50を含む。電子光学コラム40は、真空チャンバ10内にあり得る。
【0021】
[0033] EFEM30は、第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bを含む。EFEM30は、追加の1つ又は複数の装填ポートを含み得る。第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bは、例えば、基板(例えば、半導体基板若しくは他の材料でできている基板)又は検査対象のターゲット(以降では、基板、ウェーハ及びサンプルは、まとめて「ターゲット」と呼ばれる)を収容する基板前面開口式一体型ポッド(FOUP)を受け取り得る。EFEM30内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)は、ターゲットを装填ロックチャンバ20に運ぶ。
【0022】
[0034] 装填ロックチャンバ20は、ターゲットの周囲の気体を取り除くために使用される。装填ロックチャンバ20は、装填ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続され得、装填ロック真空ポンプシステムは、装填ロックチャンバ20内の気体粒子を取り除く。装填ロック真空ポンプシステムの動作により、装填ロックチャンバが、大気圧を下回る第1の圧力に達することが可能になる。メインチャンバ10は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続される。メインチャンバ真空ポンプシステムは、ターゲットの周囲の圧力が、第1の圧力を下回る第2の圧力に達するように、メインチャンバ10内の気体分子を取り除く。第2の圧力に達した後、ターゲットは、電子光学コラム40、ターゲットは、電子ビームツールによって検査され得る。電子光学コラム40は、単一ビーム又はマルチビーム電子光学装置の何れかを含み得る。
【0023】
[0035] コントローラ50は、電子光学コラム40に電子的に接続される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置100を制御するように構成されたプロセッサ(コンピュータなど)であり得る。コントローラ50は、様々な信号及び画像処理機能を実行するように構成された処理回路も含み得る。
図1では、コントローラ50は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20及びEFEM30を含む構造の外部のものとして示されているが、コントローラ50は、構造の一部であり得ることが理解される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置のコンポーネント要素の1つの内部に位置し得るか、又はコントローラ50は、コンポーネント要素の少なくとも2つに分散され得る。本開示は、電子ビーム検査ツールを収納するメインチャンバ10の例を提供するが、本開示の態様は、広い意味において、電子ビームコラムを収納するチャンバに限定されないことに留意すべきである。むしろ、前述の原理は、第2の圧力下で動作する装置の他のツール及び他の配置にも適用できることが理解される。
【0024】
[0036] ここで、
図2を参照する。
図2は、
図1の検査装置100の例示的なマルチビーム電子光学コラム40の概略図である。代替の実施形態では、検査装置100は、単一ビーム検査装置である。電子光学コラム40は、電子源201、ビームフォーマアレイ372(ガンアパーチャプレート、クーロンアパーチャアレイ又はプレサブビーム形成アパーチャアレイとしても知られる)、集光レンズ310、放射源変換器(又はマイクロ光学アレイ)320、対物レンズ331及びターゲット308を含み得る。一実施形態では、集光レンズ310は、磁気式である。ターゲット308は、ステージ上の支持体によって支持され得る。ステージは、電動式であり得る。ステージは、ターゲット308が付随的な電子によって走査されるように移動する。電子源201、ビームフォーマアレイ372、集光レンズ310は、電子光学コラム40によって含まれる照明装置の構成要素であり得る。以下でより詳細に説明する放射源変換器320(放射源変換ユニットとしても知られる)及び対物レンズ331は、電子光学コラム40によって含まれる投影装置の構成要素であり得る。
【0025】
[0037] 電子源201、ビームフォーマアレイ372、集光レンズ310、放射源変換器320及び対物レンズ331は、電子光学コラム40の一次電子光軸304と整列される。電子源201は、一般的に、電子光軸304に沿って及び(仮想又は現実の)放射源クロスオーバー301Sを伴って一次ビーム302を生成することができる。動作中、電子源201は、電子を放出するように構成される。電子は、抽出器及び/又はアノードによって抽出又は加速されて、一次ビーム302を形成する。
【0026】
[0038] ビームフォーマアレイ372は、一次電子ビーム302の辺縁の電子をカットして、結果として起きるクーロン効果を低減する。一次電子ビーム302は、ビームフォーマアレイ372により、3つのサブビーム311、312及び313など、指定された数のサブビームにトリミングされ得る。この説明は、1つ、2つ又は4つ以上などの任意の数のサブビームを有する電子光学コラム40に当てはまることが意図されることを理解されたい。ビームフォーマアレイ372は、動作時、辺縁の電子を遮断してクーロン効果を低減するように構成される。クーロン効果により、プローブスポット391、392、393のそれぞれのサイズが拡大し、従って検査分解能が低下し得る。ビームフォーマアレイ372は、ビーム内に投射された複数の電子間のクーロン相互作用から生じる収差を低減する。ビームフォーマアレイ372は、放射源変換器320の前であっても複数の一次サブビームを生成するための複数の開口部を含み得る。
【0027】
[0039] 放射源変換器320は、ビームフォーマアレイ372によって伝播されたビーム(存在する場合にはサブビームを含む)を、ターゲット308に向けて投射されるサブビームに変換するように構成される。一実施形態では、放射源変換器は、ユニットである。代わりに、放射源変換器という用語は、単にサブビームからビームレットを形成するコンポーネントの群の総称として使用され得る。
【0028】
[0040]
図2に示すように、一実施形態では、電子光学コラム40は、ターゲット308に向けて投射されるビームレット(又はサブビーム)の外形寸法を画定するように構成されたアパーチャパターン(即ちある編成に配置されたアパーチャ)を有するビーム制限アパーチャアレイ321を含む。一実施形態では、ビーム制限アパーチャアレイ321は、放射源変換器320の一部である。代替の実施形態では、ビーム制限アパーチャアレイ321は、メインコラムのアップビームのシステムの一部である。一実施形態では、ビーム制限アパーチャアレイ321は、ターゲット308に向けて投射されるビームレットの数が、ビームフォーマアレイ372を通して伝播するサブビームの数よりも多くなるように、サブビーム311、312、313の1つ又は複数をビームレットに分割する。代替の実施形態では、ビーム制限アパーチャアレイ321は、ビーム制限アパーチャアレイ321に入射するサブビームの数を維持し、この場合、サブビームの数は、ターゲット308に向けて投射されるビームレットの数と等しくてもよい。
【0029】
[0041]
図2に示すように、一実施形態では、電子光学コラム40は、サブビーム311、312及び313をそれぞれ曲げる予備曲げ偏向器323_1、323_2及び323_3を有する予備曲げ偏向器アレイ323を含む。予備曲げ偏向器323_1、323_2及び323_3は、サブビーム311、312及び313の経路をビーム制限アパーチャアレイ321上に曲げることができる。
【0030】
[0042] 電子光学コラム40は、像形成偏向器322_1、322_2及び322_3を有する像形成素子アレイ322も含み得る。各ビームレットの経路に関連付けられたそれぞれの偏向器322_1、322_2及び322_3が存在する。偏向器322_1、322_2及び322_3は、電子光軸304に向けてビームレットの経路を偏向させるように構成される。偏向されたビームレットは、放射源クロスオーバー301Sの虚像(図示せず)を形成する。現在の実施形態では、これらの虚像は、対物レンズ331によってターゲット308上に投影され、ターゲット308上にプローブスポット391、392、393を形成する。電子光学コラム40は、各サブビームに存在し得る収差を補償するように構成された収差補償器アレイ324も含み得る。一実施形態では、収差補償器アレイ324は、それぞれのビームレットに対して作用するように構成されたレンズを含む。レンズは、形態又はレンズのアレイを取り得る。アレイ状のレンズは、マルチビームの異なるビームレットに対して作用し得る。収差補償器アレイ324は、例えば、マイクロレンズを備えた像面湾曲補償器アレイ(図示せず)を含み得る。像面湾曲補償器及びマイクロレンズは、例えば、プローブスポット391、392及び393で明確に分かる像面湾曲収差について、個々のサブビームを補償するように構成され得る。収差補償器アレイ324は、マイクロ非点収差補正器を備えた非点収差補償器アレイ(図示せず)を含み得る。マイクロ非点収差補正器は、例えば、補正しなければプローブスポット391、392及び393に存在することになる非点収差を補償するように、サブビームに対して作用するように制御され得る。
【0031】
[0043] 放射源変換器320は、サブビーム311、312及び313をそれぞれ曲げる予備曲げ偏向器323_1、323_2及び323_3を有する予備曲げ偏向器アレイ323を更に含み得る。予備曲げ偏向器323_1、323_2及び323_3は、サブビームの経路をビーム制限アパーチャアレイ321上に曲げることができる。一実施形態では、予備曲げマイクロ偏向器アレイ323は、ビーム制限アパーチャアレイ321の平面に垂直な方向に向けてサブビームのサブビーム経路を曲げるように構成され得る。代替の実施形態では、集光レンズ310は、サブビームの経路方向をビーム制限アパーチャアレイ321上に調節し得る。集光レンズ310は、例えば、3つのサブビーム311、312及び313を一次電子光軸304に沿って実質的に平行なビームになるように集束(コリメート)させ得、その結果、3つのサブビーム311、312及び313は、放射源変換器320に実質的に垂直に入射するようになり、これは、ビーム制限アパーチャアレイ321に対応し得る。そのような代替の実施形態では、予備曲げ偏向器アレイ323が必要でない場合がある。
【0032】
[0044] 像形成素子アレイ322、収差補償器アレイ324及び予備曲げ偏向器アレイ323は、サブビーム操作デバイスの複数の層を含み得、それらの幾つかは、形態又はアレイ、例えばマイクロ偏向器、マイクロレンズ又はマイクロ非点収差補正器であり得る。ビーム経路は、回転操作され得る。回転補正は、磁気レンズによって適用され得る。加えて又は代わりに、回転補正は、集光レンズ構成などの既存の磁気レンズによっても実現され得る。
【0033】
[0045] 電子光学コラム40の現在の例では、ビームレットは、像形成素子アレイ322の偏向器322_1、322_2及び322_3によって電子光軸304に向けてそれぞれ偏向される。ビームレット経路は、偏向器322_1、322_2及び322_3に到達する前に電子光軸304と既に一致している場合があることを理解されたい。
【0034】
[0046] 対物レンズ331は、ビームレットをターゲット308の表面上に集束させ、即ち3つの虚像をターゲット表面上に投影する。ターゲット表面上に3つのサブビーム311~313によって形成された3つの像は、ターゲット上に3つのプローブスポット391、392及び393を形成する。一実施形態では、サブビーム311~313の偏向角は、3つのプローブスポット391~393のオフアクシス収差を低減又は制限するために、対物レンズ331の前方焦点を通過するか又はそれに近づくように調節される。一構成では、対物レンズ331は、磁気式である。3つのビームレットについて言及したが、これは、単なる例である。ビームレットの数は、任意であり得る。
【0035】
[0047] マニピュレータは、1つ又は複数の荷電粒子ビームを操作するように構成される。マニピュレータという用語は、偏向器、レンズ及びアパーチャを包含する。予備曲げ偏向器アレイ323、収差補償器アレイ324及び像形成素子アレイ322は、個別に又は互いに組み合わせてマニピュレータアレイと呼ばれ得、なぜなら、それらは、荷電粒子の1つ又は複数のサブビーム又はビームレットを操作するためである。レンズ並びに偏向器322_1、322_2及び322_3は、マニピュレータと呼ばれ得、なぜなら、それらは、荷電粒子の1つ又は複数のサブビーム又はビームレットを操作するためである。
【0036】
[0048] 一実施形態では、ビームセパレータ(図示せず)が設けられる。ビームセパレータは、放射源変換器320のダウンビームにあり得る。ビームセパレータは、例えば、静電双極子場及び磁気双極子場を含むウィーンフィルタであり得る。ビームセパレータは、ビーム経路の方向において隣接する複数のシールドセクション(以下でより詳細に説明する)間に配置され得る。シールドの内側表面は、ビームセパレータの半径方向内側であり得る。代わりに、ビームセパレータは、シールドの内部にあり得る。動作時、ビームセパレータは、サブビームの個々の電子に対して静電双極子場による静電力を作用させるように構成され得る。一実施形態では、静電力は、ビームセパレータの磁気双極子場によってサブビームの個々の一次電子に対して作用する磁力と大きさが同じであるが、方向が反対向きである。従って、サブビームは、少なくとも実質的にゼロの偏向角でビームセパレータを少なくとも実質的に直線に通過することができる。磁力の方向は、電子の移動方向に依存する一方、静電力の方向は、電子の移動方向に依存しない。従って、二次電子及び後方散乱電子は、一般に、一次電子と比較して逆方向に移動するため、二次電子及び後方散乱電子に作用する磁力は、もはや静電力を相殺せず、その結果、ビームセパレータを通して移動する二次電子及び後方散乱電子は、電子光軸304からそれるように偏向される。
【0037】
[0049] 一実施形態では、対応する二次荷電粒子ビームを検出するための検出素子を含む二次コラム(図示せず)が設けられる。二次ビームが検出素子に入射すると、素子は、対応する強度信号出力を生成し得る。この出力は、画像処理システム(例えば、コントローラ50)に向けられ得る。各検出素子は、格子の形態をし得るアレイを含み得る。アレイは、1つ又は複数のピクセルを有し得、各ピクセルは、アレイの要素に対応し得る。検出素子の強度信号出力は、検出素子内の全てのピクセルによって生成された信号の合計であり得る。
【0038】
[0050] 一実施形態では、二次投影装置及びそれに関連する電子検出デバイス(図示せず)が設けられる。二次投影装置及びそれに関連する電子検出デバイスは、二次コラムの二次電子光軸と整列され得る。一実施形態では、ビームセパレータは、二次電子ビームの経路を二次投影装置に向けて偏向させるように構成される。その後、二次投影装置は、二次電子ビームの経路を電子検出デバイスの複数の検出領域上に集束させる。二次投影装置及びそれに関連する電子検出デバイスは、二次電子又は後方散乱電子を使用して、ターゲット308の像を登録及び生成し得る。
【0039】
[0051] 一実施形態では、検査装置100は、単一の放射源を含む。
【0040】
[0052] 電子光学コラム内の任意の素子又は素子の集合は、交換可能又は現場で交換可能であり得る。コラム内の1つ又は複数の電子光学コンポーネント、特にアパーチャアレイ及びマニピュレータアレイなど、サブビームに作用するか又はサブビームを生成する電子光学コンポーネントは、1つ又は複数の微小電気機械システム(MEMS)を含み得る。予備曲げ偏向器アレイ323は、MEMSであり得る。MEMSは、微細加工技術を使用して作製された小型の機械式及び電気機械式の素子である。一実施形態では、電子光学コラム40は、MEMSとして形成されたアパーチャ、レンズ及び偏向器を含む。一実施形態では、レンズ及び偏向器322_1、322_2及び322_3などのマニピュレータは、ターゲット308に向けて投射される荷電粒子のビームレットを制御するように、アレイ全体として、個別に又はアレイ内のグループ毎に受動的又は能動的に制御可能である。
【0041】
[0053] 一実施形態では、電子光学コラム40は、荷電粒子経路上において、
図1及び
図2を参照して上述したようなレンズ及び他のコンポーネントなど、代替の及び/又は追加のコンポーネントを含み得る。そのような構成の例は、
図3及び
図4に示され、これらの図については、後に更に詳細に説明する。特に、実施形態は、放射源からの1つの荷電粒子ビームを複数のサブビームに分割する電子光学コラム40を含む。複数のそれぞれの対物レンズがサブビームをサンプルに投射することができる。一部の実施形態では、複数の集光レンズが対物レンズのアップビームに設けられる。集光レンズは、各サブビームを、対物レンズのアップビームにある中間焦点に集束させる。一部の実施形態では、コリメータが対物レンズのアップビームに設けられる。フォーカスエラー及び/又は収差を低減するために補正器が設けられ得る。一部の実施形態では、そのような補正器は、対物レンズと一体化されるか、又は対物レンズに直接的に隣接して配置される。加えて又は代わりに、集光レンズが設けられる場合、そのような補正器は、集光レンズと一体化されるか若しくは集光レンズに直接的に隣接して配置され、及び/又は中間焦点に配置されるか若しくは中間焦点に直接的に隣接して配置され得る。サンプルによって放出された荷電粒子を検出するために検出器が設けられる。検出器は、対物レンズ内に組み込まれ得る。検出器は、使用時にサンプルに面するように対物レンズの底面上にあり得る。検出器は、マルチビーム構成のビームレットのアレイに対応し得るアレイを含み得る。検出器アレイ内の検出器は、生成される像のピクセルに関連付けられ得る検出信号を生成することができる。集光レンズ、対物レンズ及び/又は検出器は、MEMS又はCMOSデバイスとして形成され得る。
【0042】
[0054]
図3は、例示的な電子光学系の別の設計の概略図である。この電子光学系は、放射源201及び電子光学コラムを含み得る。電子光学コラムは、上部ビームリミッター252、コリメータ素子アレイ271、制御レンズアレイ250、走査偏向器アレイ260、対物レンズアレイ241、ビーム整形リミッター242及び検出器アレイを含み得る。放射源201は、荷電粒子(例えば、電子)のビームを提供する。サンプル208上に集束するマルチビームは、放射源201によって提供されるビームから引き出される。サブビームは、例えば、ビーム制限アパーチャのアレイを画定するビームリミッターを使用してビームから引き出され得る。放射源201は、輝度と全放出電流との間の良好な妥協点を有する高輝度の熱電界放出器であることが望ましい。
【0043】
[0055] 上部ビームリミッター252は、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する。上部ビームリミッター252は、上部ビーム制限アパーチャアレイ又はアップビームビーム制限アパーチャアレイと呼ばれ得る。上部ビームリミッター252は、複数のアパーチャを有するプレート(プレート状の物体であり得る)を含み得る。上部ビームリミッター252は、放射源201によって放出された荷電粒子のビームからサブビームを形成する。サブビームを形成することに寄与する部分以外のビーム部分は、ダウンビームのサブビームの邪魔にならないように、上部ビームリミッター252によって遮断(例えば、吸収)され得る。上部ビームリミッター252は、サブビーム画定アパーチャアレイと呼ばれ得る。
【0044】
[0056] コリメータ素子アレイ271が上部ビームリミッターのダウンビームに設けられる。各コリメータ素子は、それぞれのサブビームをコリメートする。コリメータ素子アレイ271は、空間的にコンパクトになるように、MEMS製造技術を使用して形成され得る。一部の実施形態では、
図3に例示するように、コリメータ素子アレイ271は、放射源201のダウンビームにあるビーム経路内の第1の偏向又は集束電子光学アレイ素子である。別の構成では、コリメータは、全体的に又は部分的にマクロコリメータの形態を取り得る。そのようなマクロコリメータは、上部ビームリミッター252のアップビームにあり得るため、マルチビームを生成する前に放射源からのビームに作用する。磁気レンズがマクロコリメータとして使用され得る。
【0045】
[0057] コリメータ素子アレイのダウンビームには、制御レンズアレイ250がある。制御レンズアレイ250は、複数の制御レンズを含む。各制御レンズは、それぞれの電位源に接続された少なくとも2つの電極(例えば、2つ又は3つの電極)を含む。制御レンズアレイ250は、それぞれの電位源に接続された2つ以上(例えば、3つ)のプレート電極アレイを含み得る。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241に関連付けられる(例えば、それらの2つのアレイは、互いの近くに配置され、及び/又は互いに機械的に接続され、及び/又はユニットとして一緒に制御される)。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241のアップビームに配置される。制御レンズは、サブビームをプリフォーカスする(例えば、サブビームが対物レンズアレイ241に到達する前にサブビームに集束作用を適用する)。プリフォーカスにより、サブビームの発散度が低減されるか、又はサブビームの収束率を高めることができる。
【0046】
[0058] 前述のように、制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241に関連付けられる。上述のように、制御レンズアレイ250は、例えば、対物レンズアレイアセンブリの一部として、対物レンズアレイ241の電極242、243の追加の電極を提供するものと見なすことができる。制御レンズアレイ250の追加の電極により、サブビームの電子光学パラメータを制御する際に更なる自由度がもたらされる。一実施形態では、制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241のそれぞれの対物レンズの追加の機能を可能にする、対物レンズアレイ241の追加の電極であると見なされ得る。一構成では、そのような電極は、対物レンズアレイ241の対物レンズに追加の機能を提供する対物レンズアレイの一部と見なされ得る。そのような構成では、制御レンズは、対応する対物レンズの一部であると見なされ、制御レンズが対物レンズの一部であるとのみ言及されることもある。
【0047】
[0059] 例示を容易にするために、本明細書では、レンズアレイは、楕円形のアレイによって概略的に示されている。各楕円形は、レンズアレイ内の複数のレンズの1つを表す。楕円形は、光学レンズで採用されることが多い両凸形状の類推から、レンズを表すために慣例的に使用される。しかしながら、本明細書で考察するような荷電粒子機構に関連して、レンズアレイは、通常、静電的に動作するため、両凸形状を採用した物理的素子を必要としない場合があることを理解されたい。上述のように、代わりに、レンズアレイは、アパーチャを有する複数のプレートを含み得る。
【0048】
[0060] 複数の走査偏向器を含む走査偏向器アレイ260が設けられ得る。走査偏向器アレイ260は、MEMS製造技術を使用して形成され得る。各走査偏向器は、それぞれのサブビームをサンプル208にわたって走査させる。従って、走査偏向器アレイ260は、サブビーム毎に走査偏向器を含み得る。各走査偏向器は、サブビームを一方向(例えば、X軸などの単一の軸と平行に)又は二方向(例えば、X軸及びY軸など、平行ではない2つの軸を基準にして)に偏向させ得る。偏向は、サブビームを一方向又は二方向に(即ち1次元的に又は2次元的に)サンプル208全体にわたって走査させるようなものである。一実施形態では、欧州特許出願公開第2425444号に記載された走査偏向器を使用して走査偏向器アレイ260を実装し得、この出願は、その全体が特に走査偏向器に関して参照により本明細書に組み込まれる。(例えば、上述のようにMEMS製造技術を使用して形成された)走査偏向器アレイ260は、マクロ走査偏向器よりも空間的にコンパクトであり得る。別の構成では、マクロ走査偏向器が上部ビームリミッター252のアップビームで使用され得る。マクロ走査偏向器は、マルチビームのビームレットが生成される前に放射源からのビームに作用するが、その機能は、走査偏向器アレイと似ているか又は等しくてもよい。
【0049】
[0061] 複数の対物レンズを含む対物レンズアレイ241は、サブビームをサンプル208に向けるために設けられる。各対物レンズは、それぞれの電位源に接続された少なくとも2つの電極(例えば、2つ又は3つの電極)を含む。対物レンズアレイ241は、それぞれの電位源に接続された2つ以上(例えば、3つ)のプレート電極アレイを含み得る。プレート電極アレイによって形成される各対物レンズは、異なるサブビームに対して作用するマイクロレンズであり得る。各プレートは、複数のアパーチャ(穴とも呼ばれ得る)を画定する。プレート内の各アパーチャの位置は、他のプレート(又は複数のプレート)内の対応するアパーチャ(又は複数のアパーチャ)の位置と一致する。対応するアパーチャは、対物レンズを画定し、従って、対応するアパーチャの各組は、使用時、マルチビーム内の同じサブビームに対して作用する。各対物レンズは、マルチビームのそれぞれのサブビームをサンプル208上に投射する。
【0050】
[0062] 対物レンズアレイは、走査偏向器アレイ260、制御レンズアレイ250及びコリメータ素子アレイ271の何れか又は全部と共に対物レンズアレイアセンブリの一部を形成し得る。対物レンズアレイアセンブリは、ビーム整形リミッター242を更に含み得る。ビーム整形リミッター242は、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する。ビーム整形リミッター242は、下部ビームリミッター、下部ビーム制限アパーチャアレイ又は最終ビーム制限アパーチャアレイと呼ばれ得る。ビーム整形リミッター242は、複数のアパーチャを有するプレート(プレート状の物体であり得る)を含み得る。ビーム整形リミッター242は、制御レンズアレイ250の少なくとも1つの電極から(任意選択的に全ての電極から)ダウンビームにある。一部の実施形態では、ビーム整形リミッター242は、対物レンズアレイ241の少なくとも1つの電極から(任意選択的に全ての電極から)ダウンビームにある。
【0051】
[0063] 一構成では、ビーム整形リミッター242は、対物レンズアレイ241の電極302と構造的に一体である。ビーム整形リミッター242は、静電場強度が低い領域に配置されることが望ましい。各ビーム制限アパーチャは、対物レンズアレイ241内の対応する対物レンズと位置合わせされる。この位置合わせは、対応する対物レンズからのサブビームの一部分がビーム制限アパーチャを通過し、サンプル208に当たることができるようなものである。各ビーム制限アパーチャには、ビーム制限効果があり、ビーム整形リミッター242に入射するサブビームの選択された部分のみがビーム制限アパーチャを通過できるようにする。選択される部分は、対物レンズアレイ内のそれぞれのアパーチャの中心部分を通過するそれぞれのサブビームの部分のみがサンプルに到達するようなものであり得る。中心部分は、断面が円形であり得、及び/又はサブビームのビーム軸を中心とし得る。
【0052】
[0064] 一実施形態では、電子光学系は、制御レンズの焦点距離が制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間の離隔距離よりも大きくなるように、(例えば、制御レンズアレイ250の電極に印加される電位を制御することにより)対物レンズアレイアセンブリを制御するように構成される。従って、制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241は、比較的互いの近くに配置され得、このとき、制御レンズアレイ250からの集束作用は、弱く、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点を形成しない。制御レンズアレイ及び対物レンズアレイは、一緒に動作して、同じ表面への合成焦点距離を形成する。中間焦点のない合成動作により、収差の危険性が低減され得る。他の実施形態では、対物レンズアレイアセンブリは、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点を形成するように構成され得る。
【0053】
[0065] 制御レンズアレイ250の制御レンズ及び対物レンズアレイ241の対物レンズの電極にそれぞれの電位を印加するために、電源が設けられ得る。
【0054】
[0066] 対物レンズアレイ241に加えて制御レンズアレイ250を設けることにより、サブビームの特性を制御する自由度が増す。例えば、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点が形成されないように、制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241が比較的互いの近くに設けられる場合でも、自由度の増加がもたらされる。制御レンズアレイ250を使用して、ビームの縮小率に関してビーム開き角を最適化し、及び/又は対物レンズアレイ241に送達されるビームエネルギーを制御することができる。制御レンズアレイは、2つ又は3つ以上の電極を含み得る。2つの電極がある場合、縮小率及び着地エネルギーは、一緒に制御される。3つ以上の電極がある場合、縮小率及び着地エネルギーを個別に制御することができる。従って、制御レンズは、(例えば、電源を使用して制御レンズ及び対物レンズの電極に適切なそれぞれの電位を印加して)それぞれのサブビームの縮小率、及び/又はビーム開き角、及び/又は基板上の着地エネルギーを調節するように構成され得る。この最適化は、対物レンズの数に過度の悪影響を与えることなく、及び対物レンズの収差を過度に悪化させることなく(例えば、対物レンズの強度を低下させることなく)達成することができる。制御レンズアレイを使用すると、対物レンズアレイを最適な電場強度で動作させることが可能になる。縮小率及び開き角への言及は、同じパラメータの変形物を指すことを意図することに留意されたい。理想的な構成では、縮小率の範囲と対応する開き角との積は、一定である。しかしながら、開き角は、アパーチャの使用によって影響され得る。
【0055】
[0067] 一実施形態では、着地エネルギーは、所定の範囲、例えば1000eV~5000eVの所望の値に制御され得る。着地エネルギーは、主に、制御レンズを出る電子のエネルギーを制御することによって変動させることが望ましい。対物レンズ内部の電場ができる限り高いままとなるように、対物レンズ内部の電位差は、この変動中に一定に保たれることが好ましい。更に、制御レンズに印加される電位を使用して、ビーム開き角及び縮小率を最適化することができる。制御レンズは、着地エネルギーの変化を考慮して縮小率を変化させるように機能することができる。2つの独立した制御変数を提供するように、各制御レンズが3つの電極を含むことが望ましい。例えば、それらの電極の1つを使用して拡大率を制御することができ、別の電極を使用して着地エネルギーを個別に制御することができる。代わりに、各制御レンズは、2つの電極のみを有し得る。電極が2つのみある場合、それらの電極の一方は、拡大率と着地エネルギーとの両方を制御する必要があり得る。
【0056】
[0068] サンプル208から放出された荷電粒子を検出するために、検出器アレイ(図示せず)が設けられる。検出される荷電粒子には、サンプル208から放出された二次電子及び/又は後方散乱電子を含め、SEMによって検出される荷電粒子の任意のものが含まれ得る。検出器は、サンプル208に面するコラムの表面、例えばコラムの底面を提供するアレイであり得る。代わりに、検出器アレイは、底面のアップビーム又は例えば対物レンズアレイ若しくは制御レンズアレイ内又はそのアップビームにある。検出器アレイの素子は、マルチビーム構成のビームレットに対応し得る。アレイの素子による電子の検出により生成された信号は、画像を生成するためにプロセッサに送られる。信号は、画像のピクセルに対応し得る。
【0057】
[0069] 他の実施形態では、マクロ走査偏向器と走査偏向器アレイ260との両方が設けられ得る。そのような構成では、サンプル表面上でのサブビームの走査は、マクロ走査偏向器と走査偏向器アレイ260とを一緒に好ましくは同期して制御することにより達成され得る。
【0058】
[0070] 一実施形態では、
図4に例示するように、電子光学系アレイ500が設けられる。アレイ500は、本明細書で説明する電子光学系の何れかを複数含み得る。各電子光学系は、それぞれのマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させる。各電子光学系は、異なるそれぞれの放射源201からの1つの荷電粒子ビームから複数のサブビームを形成し得る。それぞれの各放射源201は、複数の放射源201における1つの放射源であり得る。複数の放射源201の少なくともサブセットは、放射源アレイとして提供され得る。放射源アレイは、共通の基板上に設けられた複数の放射源201を含み得る。複数のマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させると、同時に処理(例えば、評価)されるサンプル208の面積を増加させることができる。アレイ500内の電子光学系は、それぞれのマルチビームをサンプル208の隣接する領域に投射するように互いに隣接して配置され得る。
【0059】
[0071] 任意の数の電子光学系をアレイ500内で使用することができる。電子光学系の数は、2(好ましくは9)~200の範囲内であることが好ましい。一実施形態では、電子光学系は、矩形のアレイ又は六角形のアレイに配置される。他の実施形態では、電子光学系は、不規則なアレイ状又は矩形若しくは六角形以外の形状を有する規則的なアレイ状で設けられる。アレイ500内の各電子光学系は、単一の電子光学系に言及する場合、例えば、上述したような、特に
図6を参照して図示し、説明した実施形態に関して、本明細書で説明する態様の何れでも構成され得る。そのような構成の詳細については、2020年7月6日に出願された欧州特許出願公開第A20184161.6号に記載されており、この出願は、対物レンズをマルチコラム構成で使用するように組み込み、適合させる方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
[0072]
図4の例では、アレイ500は、
図3を参照して上述したタイプの複数の電子光学系を含む。従って、この例の各電子光学系は、走査偏向器アレイ260とコリメータ素子アレイ271との両方を含む。上述のように、走査偏向器アレイ260及びコリメータ素子アレイ271は、それらの空間的なコンパクトさにより、電子光学系アレイ500に組み込むのに特に適しており、このコンパクトさは、電子光学系を互いに近くに配置することを容易にする。電子光学コラムのこの構成は、コリメータとして磁気レンズを使用する他の構成よりも好ましい場合がある。磁気レンズを、マルチコラム構成で使用するように意図された電子光学コラムに組み込むことは、困難であり得る。
【0061】
[0073] マルチビーム電子光学コラムの代替の設計では、
図3に関して説明したのと同じ特徴があり得るが、以下に説明し、
図5に例示する点が異なる。マルチビーム電子光学コラムの代替の設計は、2020年2月21日に出願された欧州特許出願公開第20158804.3号に開示されるように、対物レンズアレイ構成241のアップビームに集光レンズアレイ231を含み得、この出願は、コリメータを有するマルチビームコラム及びその構成要素の説明に関して参照により本明細書に組み込まれる。そのような設計は、ビーム整形リミッターアレイ242又は上部ビームリミッターアレイ252を必要とせず、なぜなら、集光レンズアレイ231に関連付けられたビーム制限アパーチャアレイは、放射源201のビームからのマルチビームのビームレット211、212、213を整形することができるためである。集光レンズのビーム制限アパーチャアレイは、レンズアレイ内の電極としても機能し得る。
【0062】
[0074] ビームレット211、212、213の経路は、集光レンズアレイ231から離れるように発散する。集光レンズアレイ231は、生成されたビームレットを集光レンズアレイ231と対物レンズアレイアセンブリ241との間の中間焦点に(即ち制御レンズアレイ及び対物レンズアレイに向けて)集束させる。コリメータアレイ271は、対物レンズアレイアセンブリ241に関連付けられる代わりに中間焦点にあり得る。
【0063】
[0075] コリメータは、発散するビームレット経路の発散度を低減することができる。コリメータは、ビームレット経路が対物レンズアレイアセンブリに向けて実質的に平行になるように、発散するビームレット経路をコリメートすることができる。補正器アレイは、例えば、集光レンズアレイ、中間焦点及び対物レンズアレイアセンブリに関連付けられてマルチビーム経路中に存在し得る。検出器240は、対物レンズ241内に組み込まれ得る。検出器240は、使用時にサンプルに面するように対物レンズ241の底面上にあり得る。
【0064】
[0076] 電子光学系アレイは、
図4に示すように、
図3のマルチビームコラムを参照して説明したようなこの設計の複数のマルチビームコラムを有し得る。そのような構成は、2020年2月21日に出願された欧州特許出願公開第20158732.6号に示され説明されており、この出願は、中間焦点にあるコリメータと共に開示されるマルチビームコラムの設計を特徴とするマルチビームツールのマルチコラム構成に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
[0077] マルチビームツールの更なる代替の設計は、複数の単一ビームコラムを含む。本明細書で説明する本発明の目的のために生成される単一ビームは、単一コラムによって生成されるマルチビームと似ているか又は同等であり得る。そのようなマルチコラムツールは、100個のコラムを有し得、そのそれぞれが単一のビーム又はビームレットを生成する。この更なる代替の設計では、単一ビームコラムは、共通の真空システムを有し得るか、各コラムが別々の真空システムを有するか、又はコラムのグループ毎に異なる真空システムが割り当てられる。各コラムは、関連する検出器を有し得る。
【0066】
[0078] 電子光学コラム40は、検査(若しくは計測検査)ツールの構成要素又は電子ビームリソグラフィツールの一部であり得る。マルチビーム荷電粒子装置は、SEMだけでなく、電子顕微鏡一般及びリソグラフィを含む多数の異なる用途に使用され得る。
【0067】
[0079] 電子光軸304は、放射源201を通して及び放射源201から出力される荷電粒子の経路を表す。マルチビームのサブビーム及びビームレットは、明示的に言及されない限り、少なくともマニピュレータ又は電子光学アレイを通して電子光軸304と全て実質的に平行であり得る。電子光軸304は、電子光学コラム40の機械軸と同じであるか又は異なり得る。
【0068】
[0080] 電子光学コラム40は、電子ビームレットを操作するために、
図6に示すような電子光学デバイス700を含み得る。例えば、対物レンズアレイ241及び/又は集光レンズアレイ231は、電子光学デバイス700を含み得る。特に、対物レンズ331、及び/又は集光レンズ310、及び/又は制御レンズ250は、電子光学デバイス700を含み得る。
【0069】
[0081] 電子光学デバイスは、2つ以上の基板間に電位差を提供するように構成される。電極として機能する基板間に静電場が生成される。静電場は、2つの基板間の引力をもたらす。引力は、電位差が増加するにつれて増加し得る。
【0070】
[0082] 電子光学デバイスでは、複数の基板の少なくとも1つは、アレイ基板が、アパーチャのアレイに対応する領域において、アレイ基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有する。例えば、基板の2つの部分が異なる厚さを有する段差のある厚さを有することが有利であり、なぜなら、電位差が高いと、基板は、より大きい静電力にさらされ、これにより、基板が一定の厚さである場合、例えば薄すぎる場合、基板が曲がる可能性があるためである。基板が曲がると、ビーム間の均一性に悪影響が及び得る。従って、厚い基板は、曲げを軽減するのに有利である。しかしながら、アパーチャのアレイの領域で基板が厚すぎると、望ましくない電子ビームレットの変形につながり得る。従って、電子ビームレットの変形を軽減するために、アパーチャのアレイの周りで薄い基板が有利である。即ち、基板の残りの部分よりも薄い基板の領域にアパーチャのアレイが画定され得る。従って、基板を段差のある厚さにすることにより、ビームレットの変形の可能性を高めることなく、曲がる可能性が低減される。
【0071】
[0083]
図6に示す例示的な電子光学デバイスは、アレイ基板710、隣接基板720及びスペーサー730を含む。(「アレイ基板」という用語は、この基板を、本明細書で言及される他の基板から区別するために使用されることに留意されたい。)アレイ基板では、アパーチャのアレイ711が電子ビームレットの経路に対して画定される。アパーチャのアレイにおけるアパーチャの数は、マルチビーム構成におけるサブビームの数に対応し得る。一構成では、サブビーム経路のグループが1つのアパーチャを通過するように、マルチビーム内のサブビームよりもアパーチャの数が少ない。例えば、アパーチャは、マルチビーム経路を横切って延在し得る。アパーチャは、ストリップ又はスリットであり得る。スペーサー730が基板間に配置されて、それらの基板を分離する。電子光学デバイスは、アレイ基板710と隣接基板720との間に電位差を提供するように構成される。
【0072】
[0084] 隣接基板720では、アパーチャの別のアレイ721が電子ビームレットの経路に対して画定される。隣接基板720も、隣接基板が、アパーチャのアレイに対応する領域において、隣接基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有し得る。隣接基板720内に画定されるアパーチャのアレイ721は、アレイ基板710内に画定されるアパーチャのアレイ711と同じパターンを有することが好ましい。一構成では、これらの2つの基板内のアパーチャのアレイのパターンは、異なり得る。例えば、隣接基板720内のアパーチャの数は、アレイ基板710内のアパーチャの数より少なくても又は多くてもよい。一構成では、マルチビームのサブビームの全ての経路に対して、隣接基板内に単一のアパーチャが存在する。アレイ基板710及び隣接基板720内のアパーチャは、実質的に互いに十分に整列されることが好ましい。アパーチャ間のこの整列は、レンズ収差を制限するためである。
【0073】
[0085] アレイ基板及び隣接基板は、それぞれ基板の最も厚い箇所で最大で1.5mm、好ましくは1mm、より好ましくは500μmの厚さを有し得る。一構成では、ダウンビームにある基板(即ちサンプルにより近い基板)は、最も厚い箇所で200μm~300μmの厚さを有し得る。ダウンビームの基板は、好ましくは、最も厚い箇所で200μm~150μmの厚さである。アップビームにある基板(即ちサンプルからより遠い基板)は、最も厚い箇所で最大で500μmの厚さを有し得る。
【0074】
[0086] 例えば、段差を提供する、基板710のより薄い領域と、基板の例えばより厚い領域などの他の領域との間のアレイ基板の表面は、隣接基板720に面する基板の表面及び/又はマルチビームの経路と垂直であることが好ましい。同様に、より厚い領域(半径方向外側)と内側領域(半径方向内側)との間の段差の箇所における隣接基板720の表面は、アレイ基板710に面する隣接基板の表面に垂直であり得ることが好ましい。
【0075】
[0087] アレイ基板及び/又は隣接基板の表面上にコーティングが提供され得る。コーティングは、両方ともアレイ基板及び隣接基板上に提供されることが好ましい。コーティングがなければ望ましくないビームディストーションをもたらし得る表面帯電は、コーティングにより低減される。
【0076】
[0088] コーティングは、アレイ基板と隣接基板との間で起こり得る電気絶縁破壊現象に耐えるように構成される。低抵抗のコーティングが提供されることが好ましく、0.5オーム/スクエア以下のコーティングが提供されることがより好ましい。コーティングは、ダウンビームにある基板の表面上に提供されることが好ましい。コーティングは、これらの基板の少なくとも1つとスペーサーとの間に提供されることがより好ましい。低抵抗のコーティングにより、基板の望ましくない表面帯電が低減される。
【0077】
[0089] アレイ基板及び/又は隣接基板は、低バルク抵抗材料、好ましくは1オーム・メートル以下の材料を含み得る。アレイ基板及び/又は隣接基板は、ドープされたシリコンを含むことがより好ましい。低バルク抵抗を有する基板には、故障する可能性が低いという利点があり、なぜなら、放電電流は、例えば、薄いコーティング層を介してではなく、バルクを介して供給/排出されるためである。
【0078】
[0090] アレイ基板は、第1のウェーハを含む。第1のウェーハをエッチングして、厚さが異なる領域を生成することができる。アレイ基板が、アパーチャのアレイに対応する領域で薄くなるように、第1のウェーハを、アパーチャのアレイに対応する領域においてエッチングし得る。例えば、ウェーハの第1の側をエッチングするか、又はウェーハの両側をエッチングして、基板の段差のある厚さを生成し得る。エッチングは、深い反応性イオンエッチングによるものであり得る。代わりに又は加えて、基板の段差のある厚さは、レーザードリル又は機械加工によって生成され得る。
【0079】
[0091] 代わりに、アレイ基板は、第1のウェーハ及び第2のウェーハを含み得る。アパーチャのアレイは、第1のウェーハ内に画定され得る。第1のウェーハは、スペーサーと接触して配置され得る。第2のウェーハは、アパーチャのアレイに対応しない領域において、第1のウェーハの表面上に配置される。第1のウェーハ及び第2のウェーハは、ウェーハボンディングにより接合され得る。アパーチャのアレイに対応する領域におけるアレイ基板の厚さは、第1のウェーハの厚さであり得る。アパーチャのアレイの領域以外の別の領域、例えばアパーチャアレイの半径方向外側におけるアレイ基板の厚さは、第1のウェーハと第2のウェーハとを合わせた厚さであり得る。従って、アレイ基板は、第1のウェーハと第2のウェーハとの間で段差のある厚さを有する。
【0080】
[0092] アレイ基板及び隣接基板の一方は、他方のアップビームにある。アレイ基板及び隣接基板の一方は、他方の基板に対して負に帯電する。アップビームにある基板は、例えば、接地電位、放射源又はサンプルのものを基準にして、ダウンビームにある基板よりも電位が高いことが好ましい。電子光学デバイスは、アレイ基板と隣接基板との間に5kV以上の電位差を提供するように構成され得る。電位差は、10kV以上であることが好ましい。電位差は、20kV以上であることが更に好ましい。
【0081】
[0093] スペーサー730は、これらの基板の対向する面が互いに同一平面上にあるようにアレイ基板と隣接基板との間に配置されることが好ましい。スペーサー730は、ビームレットの経路に面する内側表面731を有する。スペーサー730は、電子ビームレットの経路のための開口部732を画定する。
【0082】
[0094] 伝導性コーティング、例えばコーティング740がスペーサーに適用され得る。低抵抗のコーティングが提供されることが好ましく、0.5オーム/スクエア以下のコーティングが提供されることがより好ましい。
【0083】
[0095] コーティングは、他の基板に対して負に帯電する、負に帯電した基板に面する空間の表面上にあることが好ましい。ダウンビームにある基板は、アップビームにある基板に対して負に帯電することが好ましい。コーティングは、負に帯電した基板と同じ電位に置かれるべきである。コーティングは、負に帯電した基板に面するスペーサーの表面上にあることが好ましい。コーティングは、負に帯電した基板に電気的に接続されることが更に好ましい。コーティングを使用して、スペーサーと、負に帯電した基板との間に生じ得る隙間を埋めることができる。
【0084】
[0096] スペーサー上にそのようなコーティングがないと、そのような隙間内で電場増強が生じ得る。電場増強は、それらの隙間における電気的絶縁破壊につながり得、それにより下部電極の電位が不安定になり得る。この電位の不安定さにより、時間の経過と共にレンズの強度が変化し、それにより電子ビームの焦点ずれが生じる。
【0085】
[0097] 内側表面731は、その内側表面にわたる基板間のクリープ経路が基板間の最小距離よりも長いように形作られる。スペーサーの内側表面は、10kV/mm以下、好ましくは3kV/mm以下のクリープ長さを提供するように形作られることが好ましい。
【0086】
[0098]
図6の例示的な電子光学デバイス700は、開口部732を画定するスペーサー730を含む。内側表面は、望ましくは、スペーサー730を通る開口部の表面である。スペーサー730は、段差のある厚さを有する。内側表面は、段差が付いている。内側表面は、ビームレットの経路に面する少なくとも一部分を有し得る。全てのビームレットの経路がこの開口部を通過する。電子ビームレットの経路に最も近いスペーサーの領域におけるスペーサー730の厚さは、電子ビームレットの経路からより遠い領域におけるスペーサー730の厚さよりも薄い。一構成では、例えば
図6に示すように、スペーサー730の開口部732は、アップビーム側においてダウンビーム側よりも大きい幅(直径であり得る)を有する。即ち、スペーサーにおいて、表面を有する貫通路を画定し得るアパーチャ又は開口部が画定される。貫通路は、アパーチャを通るビーム経路に沿った異なる位置において少なくとも2つの異なる直径を有し得る。例えば、異なる直径を有する貫通路の部分間の段差のある表面は、角度が付いており、好ましくはアレイ基板及び隣接基板の少なくとも一方に平行であり、及び/又はビーム経路に垂直である。段差のある表面は、内側表面731の一部であり得る。内側表面は、電子ビームレットの経路に面する部分を有する。内側表面は、狭い部分と広い部分とを有し得る。内側表面の狭い部分は、電子ビームレットの経路に最も近いスペーサーの領域に対応し得る。狭い部分は、開口部を貫通する方向において、電子ビームレットの経路に最も近いスペーサーの領域におけるスペーサー730の厚さになるように寸法決めされ得る。内側表面の広い部分は、電子ビームレットの経路からより遠い領域に対応し得る。スペーサー730は、アップビームにある基板710と接触する表面積よりも、ダウンビームにある基板720と接触する表面積の方が大きい。別の構成では、スペーサー内に画定される開口部は、スペーサーのダウンビーム側において、スペーサーのアップビーム側よりも大きい幅を有する。アップビーム基板及びダウンビーム基板の一方は、他方の基板に対して正に帯電する。スペーサー内に画定される開口部は、他方の基板に対して正に帯電する基板に最も近いスペーサーの側により大きい幅を有することが好ましい。
【0087】
[0099]
図7は、アレイ基板710と隣接基板720との間の、スペーサー730の内側表面731上の段差の周りの静電場を示す。この例では、隣接基板720は、アレイ基板710のダウンビームにある。電子光学デバイス、スペーサー730の内側表面731とアレイ基板との間の領域における比誘電率ε
rは、約1である。スペーサーを作製するために、セラミック及びガラスなどの様々な材料を使用することができる。段差のあるスペーサー730に起因して、この構造物の比誘電率ε
rが増加し、スペーサーの領域820では1よりも大きくなり、好ましくは例えば5になる。従って、段差のあるスペーサーの形状が有利であり、なぜなら、この形状は、ダウンビーム基板720上の「三重点」830の近傍、例えばダウンビーム基板と、スペーサーの最も内側の内側表面とが接触するダウンビーム基板の場所で静電場強度を低減するためである。ダウンビーム基板720は、サンプルを基準にしてアップビーム基板710よりも小さい電位を有する。三重点830の近傍で静電場強度が低減すると、放電現象の発生を低減するのに役立つ。
【0088】
[0100] サンプルに対する電位差がより小さくなると、ダウンビーム基板は、アップビーム基板に対して負に帯電する。実際には、アップビーム基板に対して負に帯電すると、ダウンビーム基板は、例えば、三重点からの放電の発生時に電極に供給する。スペーサー730に画定される開口部がダウンビーム側においてスペーサーのアップビーム側よりも大きい幅を有する構成では、同じ説明が当てはまるが、アップビーム基板710は、ダウンビーム基板720よりもサンプルに対してより小さい電位差を有することと、「三重点」830は、アップビーム基板710上、例えばアップビーム基板と、スペーサーの最も内側の内側表面とが接触するアップビーム基板上の場所になることが異なる。
【0089】
[0101] 更に、スペーサー730の段差のある内側表面731では、直線の壁のスペーサーと比較して表面クリープ放電の経路長が増加する。貫通路の表面上の最短経路は、段差がある、例えば段差のある表面を有すると、より長くなり得る。最短経路を延ばすか又は長くすると、クリープ長が延び得る。
【0090】
[0102]
図8に示すように、スペーサー930の内側表面931、例えば段差のある表面の少なくとも一部分が溝を含んで、ひだを形成又は画定し得る。ひだは、開口部を取り囲み得る。ひだは、同心円状であることが好ましい。従って、例えば、スペーサーの内側表面にひだの付いた形状を設けることにより、内側表面931上の最短経路長を増加させることにより、クリープ長が更に増加する。従って、内側表面931の一部としてひだの付いた位置が存在することにより、例えばアップビーム基板とダウンビーム基板との間において、基板にわたる望ましくない放電の可能性が低減される。
【0091】
[0103] スペーサーは、最も厚い箇所で0.1~2mmの厚さを有し得る。スペーサーは、好ましくは、0.5~1.6mm、より好ましくは0.8~1.6mmの厚さを有する。
【0092】
[0104] スペーサーは、電子ビームのディストーションを制限するように構成される。ディストーションは、スペーサーの表面が帯電することにより、例えば内側表面931上に時間の経過と共に電荷が蓄積又は収集されることにより引き起こされ得る。電荷の蓄積は、最も外側の電子ビームレットの経路と、電子ビームレットの経路に面する、スペーサーの内側表面との間の距離によって制限され得る。スペーサーの設計では、電子ビームレットの経路とスペーサーの内側表面との間の距離は、スペーサーの厚さが増加するにつれて増加させるべきである。スペーサー内の開口部により、アレイ基板及び隣接基板の支持されないエリアが生じる。支持されないエリアが大きくなるほど、基板の曲がりが大きくなる。基板の曲がりは、望ましくないビーム間のレンズ強度のばらつきを引き起こし得る。しかしながら、スペーサー内の開口部が小さいと、スペーサーの表面帯電によりディストーションが引き起こされ得る。従って、適切に寸法決めされた開口部をスペーサーに設けることが必要である。開口部は、基板の曲がりを制限するのに十分に小さいものの、スペーサーの表面帯電の可能性を低減するのに十分に大きくする必要がある。
【0093】
[0105] 上述のように、スペーサーは、スペーサー内に画定された開口部が一方の側でより大きい幅を有し、他方の側でより小さい幅を有するように段差のある厚さを有する。内側表面は、上部ビーム部分(広い部分)が下部ビーム部分(又は狭い部分)よりもビームレットの経路から更に離された状態で段差を付けられることが好ましい。この構成では、開口部は、スペーサー内の開口部の内側表面の下部ビーム部分においてより狭い幅を有する。(別の実施形態では、上部ビーム部分は、下部ビーム部分よりもビームレットの経路により近くになるように離間され得るため、下部ビーム部分の代わりに狭い部分と呼ばれ得る。)
【0094】
[0106] スペーサー内の開口部のより狭い幅は、4~30mm、好ましくは4mm~25mm、より好ましくは8mm~20mm、更により好ましくは10mm~20mmの最大寸法を有し得る。最大寸法は、直径であることが好ましい。
【0095】
[0107] スペーサーの厚さは、基板間に印加される意図された電位差、即ち各基板と、サンプル及び/又は接地若しくは基準電位との間の電位差に依存し得る。基準電位は、接地電位であり得ることに留意されたい。基準電位は、サンプルの電位であり得る。サンプルは、接地電位、例えば5kV~20kVなどの任意の値などのシステム内の最大電位又は接地電位、最大電位若しくは任意の他の選択された基準電位の任意のオフセットなど、任意の適切な電位にあり得る。従って、印加される電位が増加するか又は更に上昇する場合、スペーサー及び/又は基板(例えば、アレイ基板及び隣接基板)は、好ましくは、より厚くすべきである。更に、上述のように、開口部の直径は、スペーサーの厚さが増加するにつれて増加する。従って、スペーサーによって支持されないアレイ基板及び/又は隣接基板のエリアが増加する。これは、スペーサーが開口部のエリア内で基板に接触しないためである。従って、開口部の直径の増加に起因して、基板が曲がる可能性が増加する。更に、動作中、印加電位は、アップビーム基板とダウンビーム基板との間で静電場を生成する。この静電場は、基板間に引力を発生させる。従って、曲がりを回避するために、例えば電極間の電位差を低減することにより、静電場が低減され得る。代わりに又は加えて、開口部の直径を低減して、電極の支持体の剛性を増加させる。従って、電極の曲がり及びサブビームを歪めることになり得るサブビームとスペーサーとの近接さを考慮して、開口部の直径が最適化される。
【0096】
[0108] 電子光学デバイスは、電子ビームレットを操作するためのレンズアセンブリ内に設けられ得る。レンズアセンブリは、例えば、対物レンズアセンブリ又は集光レンズアセンブリであるか又はその一部であり得る。対物レンズアセンブリなどのレンズアセンブリは、制御レンズアレイなど、少なくとも2つの基板を含む追加のレンズアレイを更に含み得る。
【0097】
[0109] レンズアセンブリは、保護抵抗器610を含み得る。保護抵抗器は、アップビーム基板又はダウンビーム基板などの基板を電源に接続する電力線などの電気ルーティング内に配置され得る。電気ルーティングは、基板に電位を提供することができる。保護抵抗器610は、電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供するように構成され得る。従って、保護抵抗器610は、レンズアセンブリへの損傷を防ぐ。
【0098】
[0110] 更に、レンズアセンブリ内では、レンズアセンブリ、特に例えばアップビーム基板若しくはダウンビーム基板などの基板又は検出器など、レンズアセンブリの素子との間でデータ伝送を可能にするために、信号通信が提供され得る。検出器は、検出器アレイであり得る。
【0099】
[0111]
図9、
図10及び
図11は、アレイ基板710、隣接基板720及び保護抵抗器610を含む、電子ビームレットを操作するための例示的なレンズアセンブリを示す。レンズアセンブリは、例えば、スペーサーを備えた基板間に電位差を提供するように構成される。アレイ基板710、隣接基板720及びスペーサー730は、
図6、
図7及び
図8を参照して説明され、及びこれらの図に示されるような形態、構造及び構成を取り得る。アパーチャのアレイは、電子ビームレットの経路に対してアレイ基板710内に画定される。少なくとも1つのアパーチャは、電子ビームレットの経路に対して隣接基板720内に画定される。隣接基板720は、アレイ基板710のダウンビームに配置される。アレイ基板及び/又は隣接基板は、段差のある厚さを有し得る。保護抵抗器610は、電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供するように構成される。
【0100】
[0112] 保護抵抗器は、回路基板に電気的に接続されることが好ましい。隣接基板に電気的に接続される回路基板が存在し得、及び/又はアレイ基板に電気的に接続される回路基板が存在し得る。回路基板は、セラミック材料を含むことが好ましい。回路基板は、良好な絶縁耐力及び熱伝導率を有し、真空環境においてガス放出が少ない、セラミックなどの材料を含むことが好ましい。レンズアセンブリは、アレイ基板及び/又は隣接基板を回路基板に電気的に接続するように構成されたコネクタを含み得る。一構成では、保護基板は、例えば、例えば回路基板の一体的な要素として回路基板内にあり得る。
【0101】
[0113]
図9、
図10及び
図11のレンズアセンブリは、例えば、コネクタ630を介して隣接基板720に電気的に接続された第1の回路基板621を含む。レンズアセンブリは、例えば、接続ワイヤなどのコネクタによりアレイ基板710に電気的に接続された第2の回路基板622を更に含む。高電圧ケーブル650は、第1の回路基板621に電気的に接続される。接続は、はんだなどの接続材料800を使用して行われ得る。ケーブル650は、基板、例えば隣接基板720に電位を印加する手段を提供する。特定の設計では、電位は、基板全体に対して、基板内の異なる素子に異なる電位で及び基板全体又は基板内の素子の何れかに動的に印加され得る。第2の回路基板622及びアップビーム基板710は、高電圧ケーブル650に接続され得る。更に、ケーブル650は、レンズアセンブリとの間でデータを伝送することができる。
【0102】
[0114]
図9の例示的なレンズアセンブリは、隣接基板720を第1の回路基板621に電気的に接続するためのコネクタ630を含む。コネクタ630は、電気絶縁材料631によって取り囲まれる。絶縁材料631は、25kV/mm以上、好ましくは100kV/mm以上、より好ましくは200kV/mm以上の絶縁耐力を有し得る。電気絶縁材料を使用すると、放電現象の発生率が減少する。
【0103】
[0115] コネクタ630は、ワイヤであり得、ワイヤボンド接続を形成し得る。スペーサー730は、接続開口部を画定し得、コネクタ630は、この開口部を通過して、例えば隣接基板又はダウンビーム基板に接続することができる。従って、第1の回路基板621及び/又は保護抵抗器610は、隣接基板720とは逆のスペーサー730の側に設けられ得る。絶縁材料631は、スペーサー730内のコネクタ開口部を充填し得る。一構成では、保護抵抗器は、例えば、第1の回路基板の一体的な要素として第1の回路基板内にあり得る。
【0104】
[0116]
図10及び
図11の例示的なレンズアセンブリでは、図示したレンズアセンブリのコンポーネントは、本明細書で説明されるものを除いて、
図9のものと同様である。絶縁材料631は、保護抵抗器610及び第1の回路基板621と接触して配置される。任意選択的に、保護抵抗器及び/又は回路基板が真空にさらされないように、保護抵抗器及び/又は回路基板は、絶縁材料631中に封入され得る。絶縁材料631は、コネクタ630、保護抵抗器610及び/又は回路基板621などの電子部品及び電気部品の封入された表面から電子が放出されることを防ぎ得る。絶縁材料は、導体において生成される場を低減することができ、そうしないと、この場は、電気部品の性能を妨害し得る。絶縁材料は、例えば、これらの図に示されるように、電気導体の何れかの大部分又はわずかな部分を覆い、任意選択的に封入し得る。電気絶縁材料を使用すると、放電現象の発生率が減少する。
【0105】
[0117]
図10の例示的なレンズアセンブリは、アップビーム表面及びダウンビーム表面内の開口部間に延びる、ビアとも呼ばれる接続貫通路を画定するスペーサー730を含む。接続貫通路は、隣接基板730と第1の回路基板621との間に延びる。貫通路の表面は、導電性コーティング660を用いてコーティングされる。導電性コーティング660は、隣接基板720を第1の回路基板621に電気的に接続する。そのような接続は、「ビア」と呼ばれ得る。導電性コーティング660は、金属コーティングであり得る。この構成には、露出した鋭いエッジ又は細いワイヤボンドワイヤがないという利点がある。従って、望ましくない放電の可能性が低減される。
【0106】
[0118] 接続貫通路は、少なくとも開口部において、導電性接着剤などの導電性充填剤を充填され得る。導電性充填剤は、電気接続を提供することができる。導電性充填剤は、導電性コーティングに加えて又はその代わりに提供され得る。代わりに又は加えて、基板と回路基板との間に電気接続を提供するために、接続開口部内に金属物体を配置し得る。
【0107】
[0119]
図11の例示的なレンズアセンブリでは、第1の回路基板は、スペーサー730の隣に配置される。スペーサーのダウンビームに面する表面と回路基板は、同様の平面内にあり得る。スペーサーのダウンビームに面する表面及び回路基板は、隣接基板720と接触し得る。第1の回路基板621は、フリップチップ接続を介して隣接基板720に電気的に接続される。この構成では、
図9及び
図10の構成に見られるようなスペーサー730を通る接続開口部が必要ない。同様に、フリップチップ接続を使用して、アレイ基板を第1の回路基板621又は第2の回路基板622に電気的に接続することができる。フリップチップ接続は、第1の回路基板621のダウンビーム表面の電気接点を隣接基板のアップビーム表面の電気接点と接続することができる。フリップチップ接続は、例えば、第1の回路基板621のダウンビーム表面の電気接点と、隣接基板720のアップビーム表面の電気接点とを相互接続するためのボールグリッドアレイ670を含み得る。フリップチップ接続は、貫通シリコンビアを含み得る。貫通シリコンビアは、回路基板を貫通して延び得る。貫通シリコンビアは、一方の端部において、回路基板のアップビーム側、即ち基板上に部品を配置することができる側の回路と電気的に接続し得る。他方の端部において、貫通シリコンビアは、回路基板のダウンビームに面する表面上の電気接点を提供する。
【0108】
[0120]
図9、
図10及び
図11は、対物レンズアセンブリを示すが、これらの特徴は、集光レンズアセンブリに含まれ得る。そのような集光レンズアセンブリは、
図5に示され、
図5に関して説明されたように、集光レンズアレイ231を特徴とし得る。集光レンズアセンブリは、
図9、
図10及び
図11によって図示されこれらの図に関して説明された構成の体積的な制約なしに設計することができるレンズアセンブリの一例である。集光レンズアレイは、放射源によって放出された電子ビームから電子ビームレットを生成するように構成され得る。基板内に画定されたアパーチャのアレイが電子ビームレットを生成することが好ましい。集光レンズアセンブリは、電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供するように構成された保護抵抗器を含み得る。集光レンズアセンブリは、
図6に示したものなどの電子光学デバイスを含み得る。アレイ基板及び/又は隣接基板内に画定されたアパーチャのアレイは、例えば、放射源によって提供されたビームから電子ビームレットを生成することができる。アレイ基板及び隣接基板は、それぞれ基板の最も厚い箇所で最大で1.5mm、好ましくは1mm、より好ましくは700μm、更により好ましくは500μmの厚さを有し得る。隣接基板720などのフィーチャは、電子光学デバイス内の体積がそのように提供する場合、厚さなどでより大きい寸法を取り得ることに留意されたい。
【0109】
[0121] レンズアセンブリは、例えば、
図12に示すような対物レンズアセンブリであり得る。
図9、
図10及び
図11に示す構成のような対物レンズアセンブリは、電子光学デバイスのダウンビームに検出器240を含み得る。検出器は、検出器アセンブリに含まれ得る。検出器は、シリコンを含み得、好ましくは、検出器は、シリコンを実質的に含む。検出器は、サンプルから放出された電子を検出するように構成された、例えば検出器素子の検出器アレイを含み得る。検出器素子は、各サブビーム経路に関連付けられ得る。検出器アレイは、2020年7月に出願された2019P00407EPに記載され、図示される検出器アレイの形態及び機能を有し得、この出願は、検出器アレイの形態に関して参照により本明細書に組み込まれる。検出器の少なくとも一部分は、対物レンズアレイに隣接し、及び/又は対物レンズアレイに組み込まれることが好ましい。例えば、検出器アレイは、隣接基板730に隣接するか又は組み込まれる。
【0110】
[0122]
図9~
図11に図示する構成では、検出器アレイは、隣接基板を介して電気的に接続される。従って、検出器アレイは、隣接基板を介して信号により接続される。従って、検出器アレイは、第1の回路基板621(セラミックであり得る)、接続630、ケーブル650、ビア660及びフリップチップ接続を介して接続され得る。
【0111】
[0123]
図12に図示する構成では、検出器アセンブリは、検出回路基板680を含み得る。検出回路基板680は、検出器アレイに電気的に接続される。検出回路基板は、フリップチップ接続を介して検出器アレイに電気的に接続され得る。フリップチップ接続は、ボールグリッドアレイを含み得る。フリップチップ接続は、貫通シリコンビアを含み得る。フリップチップ接続及び貫通シリコンビアの特徴は、
図11に関して説明したフリップチップ接続及び貫通シリコンビアに関して説明した通りであり得る。
図12では、隣接基板720のそれぞれは、第1の回路基板621に電気的に接続され、検出器アレイは、検出回路基板680に接続される。代わりに、回路基板の1つが隣接基板と検出器アレイとの両方に電気的に接続され得る。同様に、
図12では、第2の回路基板622は、アレイ基板710に電気的に接続される。代わりに、アレイ基板は、隣接基板及び/又は検出器アレイが電気的に接続されるのと同じ回路基板に電気的に接続され得る。
【0112】
[0124] 検出器アセンブリは、セラミックを含み得る。検出器アセンブリは、検出回路基板内にセラミック材料を含むことが好ましい。検出回路基板は、セラミック回路基板を含むことがより好ましい。対物レンズアセンブリなどのレンズアセンブリは、熱的に調整され得る。従って、アップビーム基板、ダウンビーム基板及び検出アセンブリなどの対物レンズアセンブリの要素は、熱的に調整され得る。従って、検出器及び検出回路基板は、熱的に調整され得る。熱的調整は、冷却によって能動的に達成できることが好ましい。従って、検出回路基板は、能動的に冷却され得る。検出回路がセラミックを含む場合、検出回路を冷却すると、セラミックなどの高い熱伝導率の材料を含む対物レンズアセンブリの素子の熱伝導を通して、対物レンズアセンブリの他の部分も冷却することができる。冷却され得る対物レンズアセンブリの他の部分には、検出器アセンブリと、アレイ基板及び隣接基板の一方又は両方とが含まれる。第1及び第2の回路基板は、例えば、冷却システムとの直接的又は間接的な接触による熱的調整により、直接的又は間接的に冷却され得る。第1及び第2のプリント回路基板は、熱的調整に適し得、なぜなら、それらの基板は、それぞれセラミック材料を含み得る(それにより熱的調整、従って冷却が容易になる)ためである。検出器アセンブリを冷却する際、検出回路基板を通した熱伝導性により、検出器及び検出器素子が冷却され得る。別の構成では、検出器は、例えば、冷却システムと接触させることによる検出回路基板の能動的な熱的調整に加えて又はその代わりに能動的に冷却される。
【0113】
[0125] 検出器に又は検出器から信号を送信するための接続は、データ伝送のための電気接続又はガラスファイバーを介して提供され得る。電気的に絶縁されることにより、ガラスファイバー接続は、接地電位での検出器制御及びデータ処理を可能にする。従って、電気接続を介するよりもガラスファイバーを介した方が、信号通信のための絶縁材料が少なくて済む。例えば、検出回路との間でデータを伝送するためにガラスファイバー接続が設けられ得る。検出回路基板から信号を伝送するためにオプトカプラが設けられ得る。オプトカプラは、光ファイバー、例えばガラスファイバーに接続するために、検出回路基板に取り付けられ得る。
【0114】
[0126] 検出器は、読み出しチップを含み得る。読み出しチップ内には、電子ビームレットの経路のための開口部が画定され得る。開口部は、複数の開口部のアレイであることが好ましい。開口部のアレイは、アレイ基板内に画定されたアレイアパーチャアレイに対応することがより好ましい。読み出しチップ内の開口部のそれぞれは、少なくとも1つの電子ビームレットの経路に対応することが好ましい。
【0115】
[0127] 読み出しチップは、アレイ基板及び隣接基板のダウンビーム基板であり得る基板と接触して設けられ得る。別の構成では、読み出しチップは、検出回路基板に取り付けられるか又は検出回路基板に組み込まれ得る。説明した構成では、ダウンビーム基板は、近接基板である。読み出しチップは、ダウンビーム基板に対して更なる強度、例えば剛性をもたらし得、これにより基板が望ましくなく曲がる可能性が更に低減され得る。
【0116】
[0128]
図13A及び
図13Bの例示的な検出器240では、検出器アレイ511は、読み出しチップ521のダウンビームに配置される。検出器アレイ511は、フリップチップ接続を介して読み出しチップに電気的に接続され得る。フリップチップ接続は、
図11及び
図12に関して説明したような、貫通ビア、電気接点及びボールグリッドアレイなどのフィーチャを有し得る。
図13Aでは、マルチビーム全体の経路に対して寸法決めされた1つのアパーチャが読み出しチップ521内に画定される。検出器アレイ内のアパーチャアレイは、読み出しチップ521内の単一のアパーチャと整列される。
【0117】
[0129]
図13Bでは、読み出しチップ522内に複数のアパーチャが画定される。アパーチャのパターンは、検出器アレイ511内に画定されたアパーチャアレイのパターンに対応し得る。代わりに、読み出しチップ内のアパーチャは、2つ以上のサブビームの経路、従って検出器アレイ511の2つ以上のアパーチャに対応し得る。
【0118】
[0130]
図13Cの例示的な検出器アセンブリでは、検出器アレイ512は、読み出しチップ523内にある。検出器アレイ512は、読み出しチップ523内の少なくとも1つの開口部のダウンビームにある。検出器アレイ512は、読み出しチップ523のダウンビーム表面を提供する。代替の構成では、読み出しチップが検出器アレイのアップビーム及びダウンビームにあるように、検出器アレイは、読み出しチップの内部に、例えば読み出しチップに組み込まれて配置され得る。
【0119】
[0131] 検出器240は、レンズアセンブリ241に含まれ得る。レンズアセンブリは、レンズアセンブリを熱的に調整するように構成された冷却回路を更に含み得る。冷却回路は、検出器と熱的に接触することが好ましい。検出回路基板、従って検出器アレイと熱連通することがより好ましい。レンズアセンブリを熱的に調整するために、能動的又は受動的な冷却が提供され得る。冷却は、水冷システムとして提供され得る。水冷システムは、接地又は高電圧の何れかで提供され得る。水が高電圧で供給される場合、水は、脱イオン化されることが好ましい。水は電気を伝導するため、通常の水を使用すると、放電が発生する。好ましくは、コラムのダウンビーム端部に向けて電子光学コラム内の電子光学素子のアレイに熱的調整を提供するという記載は、米国特許出願公開第20180113386A1号及び米国特許出願公開第2012/0292524号で提供されており、これらの両方は、電子光学アレイの構造及び冷却システムの開示に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
[0132] 読み出しチップ523は、狭いギャップによって隣接基板720から分離されることが好ましい。真空のため、読み出しチップ523と隣接基板とは、熱的に隔離され、例えば熱的に接触しない。即ち、例えば、読み出しチップ523と隣接基板とは、離間される。読み出しチップ253は、検出器アレイ512を含む検出器240の一部であるため、検出器240及び/又は検出器アレイ512は、例えば、狭いギャップによって隣接基板720から離間され得る。特定の構成に応じて、検出器240及び/又は検出器アレイ512は、隣接基板から熱的に隔離される。従って、検出器から放散される熱は、隣接基板720に伝達されない。基板の熱安定性要件は、検出器よりも厳しく、従って基板を過熱させないことが好ましい。
【0121】
[0133]
図12の例示的な対物レンズは、検出器アレイ512、読み出しチップ523、検出回路基板680、光ファイバー651及び冷却システム690を含む。冷却システムは、能動的な熱調整システムの形態を取り得る。検出器アレイは、読み出しチップ513と検出回路基板680との間のフリップチップ接続を介して検出回路基板680に接続される。検出回路基板680は、冷却システム690によって冷却される。冷却システム690は、検出器アレイ512などの対物レンズアセンブリの熱伝導素子を介した熱的接続部である導管であり得る。検出回路基板は、冷却回路と熱的に接続し得、読み出しチップ及び検出器アレイが含まれ得るキャリア基板が検出回路基板に接続される。図示するように、冷却導管は、マルチビーム経路から離れて検出回路基板と接触して配置される。従って、読み出しチップ513が検出回路基板680の熱伝導性によって冷却されるように、検出回路基板680がセラミックを含むことが好ましい。接地電位又は基準電位にある冷却システム690の導管である。別の構成では、冷却回路は、高電位にある。そのような構成では、導管は、検出回路基板621と熱的に接触して配置され得る。導管の位置は、マルチビーム経路のより近くにあり得る。冷却回路を高電圧にすることは、回路基板上においてより低い電圧の分離で済むことを意味する。その結果、レンズ構成が埋める空間がより少なくなり得る。従って、水冷導管を、より多くの熱を放散する能動電子機器、例えば検出器アレイ及び対物レンズアセンブリのより近くに配置することができる。前述のように、本発明の態様を具現化する対物レンズアセンブリ又はまさしくレンズアセンブリの他のフィーチャは、
図12に関して説明し、図示したシステム、例えば冷却システム690などの冷却システムを特徴とし得る。
【0122】
[0134] 検出回路基板680は、光ファイバー651を介して信号情報を送信及び/又は受信するように構成される。ダウンビーム基板740は、絶縁ワイヤ630を介して第1の回路基板621と電気的に接続する。従って、対物レンズは、光ファイバー651を介して検出器アレイ512と接続し、及びケーブル650を介してダウンビーム基板740と接続する信号通信を有する。
【0123】
[0135] 検出器は、
図1~
図5の何れかの電子光学コラム40などの電子光学コラムの一部を形成し得る。電子光学コラムは、放射源ビームからビームレットを生成し、そのビームレットをサンプルに向けて投射するように構成され得る。検出器は、サンプルに面するように配置され、サンプルから放出された電子を検出するように構成され得る。検出器は、電流検出器のアレイを含み得る。検出器アレイへの信号通信には、対物レンズアセンブリに含まれ得る光ファイバーを介した信号通信が含まれ得る。電子光学系は、電子光学コラムを含み得る。電子光学系は、電子ビームを放射するように構成された放射源も含む。
【0124】
[0136] 複数の電子光学系が電子光学系アレイ内に含まれ得る。電子光学系アレイの電子光学系は、それぞれのマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させるように構成されることが好ましい。
【0125】
[0137] 本発明の実施形態が以下の番号付きの条項に記載される。
【0126】
[0138] 条項1:電子ビームレットを操作するための電子光学デバイスであって、電子ビームレットの経路のためのアパーチャのアレイが画定されるアレイ基板であって、アレイ基板が、アパーチャのアレイに対応する領域において、アレイ基板の別の領域よりも薄いように段差のある厚さを有するアレイ基板と、電子ビームレットの経路のための少なくとも1つのアパーチャ、好ましくはアパーチャの別のアレイが画定される隣接基板とを含み、基板間に電位差を提供するように構成される電子光学デバイス。
【0127】
[0139] 条項2:アレイ基板及び隣接基板の一方は、他方のアップビームにあり、好ましくは、アップビーム基板は、好ましくは基準電位に対してダウンビーム基板よりも高い電位差を有する、条項1に記載の電子光学デバイス。
【0128】
[0140] 条項3:ダウンビーム基板は、最も厚い箇所で200μm~300μmの厚さを有する、条項2に記載の電子光学デバイス。
【0129】
[0141] 条項4:望ましくは基板間の電位差は、5kV以上である、条項1~3の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0130】
[0142] 条項5:基板の薄い領域と、基板の他の領域との間の基板の表面は、隣接基板に面する基板の表面に垂直である、条項1~4の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0131】
[0143] 条項6:基板の対向する表面が互いに同一平面上にあるように、基板を分離するために基板間に配置されたスペーサーであって、ビームレットの経路に面する内側表面を有するスペーサーを更に含む、条項1~5の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0132】
[0144] 条項7:スペーサーは、電子ビームレットの経路のための開口部を画定する、条項6に記載の電子光学デバイス。
【0133】
[0145] 条項8:内側表面は、その内側表面にわたる基板間のクリープ経路が基板間の最小距離よりも長いように形作られる、条項6又は7に記載の電子光学デバイス。
【0134】
[0146] 条項9:内側表面は、ひだを含み、好ましくは、ひだは、同心円状であり、及び/又はひだは、開口部を取り囲む、条項8に記載の電子光学デバイス。
【0135】
[0147] 条項10:アレイ基板は、アパーチャアレイが画定される第1のウェーハであって、スペーサーと接触して配置される第1のウェーハと、アパーチャアレイに対応しない領域において、第1のウェーハの表面上に配置される第2のウェーハとを含む、条項6~8の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0136】
[0148] 条項11:アレイ基板は、異なる厚さを有する領域を生成するようにエッチングされた第1のウェーハを含む、条項1~9の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0137】
[0149] 条項12:内側表面は、上部ビーム部分が下部ビーム部分よりもビームレットの経路から更に離された状態で段差を付けられる、条項6~11の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0138】
[0150] 条項13:スペーサー内の開口部の内側表面の下部ビーム部分内の開口部は、4~30mmの最大寸法、好ましくは直径を有する、条項12に記載の電子光学デバイス。
【0139】
[0151] 条項14:スペーサーは、最も厚い箇所で0.1mm~2mmの厚さを有する、条項6~13の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0140】
[0152] 条項15:0.5オーム/スクエア以下のコーティングは、基板の少なくとも1つの表面上に提供される、条項1~14の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0141】
[0153] 条項16:基板の少なくとも1つ、1オーム・メートル以下の材料を含む、条項1~15の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0142】
[0154] 条項17:基板の少なくとも1つは、ドープされたシリコンを含む、条項1~16の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0143】
[0155] 条項18:隣接基板に画定されたアパーチャのアレイは、アレイ基板に画定されたアパーチャのアレイと同じパターンを有する、条項1~17の何れか一項に記載の電子光学デバイス。
【0144】
[0156] 条項19:電子ビームレットを操作するためのレンズアセンブリであって、先行する条項の何れかに記載の電子光学デバイスを含むレンズアセンブリ。
【0145】
[0157] 条項20:電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供するように構成された保護抵抗器を更に含む、条項19に記載のレンズアセンブリ。
【0146】
[0158] 条項21:電子ビームレットを操作するためのレンズアセンブリであって、電子ビームレットの経路のためのアパーチャのアレイが画定されるアレイ基板と、電子ビームレットの経路のための少なくとも1つのアパーチャが画定される隣接基板と、電力線において、レンズ内での静電容量の制御された放電を提供するように構成された保護抵抗器とを含み、基板間に電位差を提供するように構成されるレンズアセンブリ。
【0147】
[0159] 条項22:アレイ基板及び/又は隣接基板に電気的に接続された回路基板を更に含み、好ましくは、保護抵抗器は、回路基板に電気的に接続される、条項20又は21に記載のレンズアセンブリ。
【0148】
[0160] 条項23:回路基板は、セラミック材料を含む、条項22に記載のレンズアセンブリ。
【0149】
[0161] 条項24:アレイ基板及び/又は隣接基板を回路基板に電気的に接続するように構成されたコネクタを更に含み、コネクタは、25kV/mm以上の材料によって取り囲まれる、条項22又は23に記載のレンズアセンブリ。
【0150】
[0162] 条項25:回路基板は、フリップチップ接続を介してアレイ基板及び/又は隣接基板に電気的に接続される、条項22又は23に記載のレンズアセンブリ。
【0151】
[0163] 条項26:レンズアセンブリは、集光レンズアレイであり、放射源によって放射された電子ビームから電子ビームレットを生成するように構成され、好ましくは、アレイ基板に画定されるアパーチャのアレイは、電子ビームレットを生成する、条項19~25の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【0152】
[0164] 条項27:対物レンズアセンブリであって、条項18~25の何れか一項に記載のレンズアセンブリであって、望ましくは電子光学デバイスのダウンビームに望ましくは検出器アセンブリを更に含み、検出器アセンブリは、サンプルから放出された電子を検出するように構成された検出器アレイを含み、好ましくは、検出器の少なくとも一部分は、対物レンズアレイに隣接し、及び/又は組み込まれる、レンズアセンブリ又は条項18~25の何れか一項に記載のレンズアセンブリであって、サンプルから放出された電子を検出するように構成された検出器を含み、望ましくは、検出器の少なくとも一部分は、レンズアレイに隣接し、及び/又は組み込まれる、レンズアセンブリを含む対物レンズアセンブリ。
【0153】
[0165] 条項28:検出器アセンブリは、フリップチップ接続を介して検出器アレイに電気的に接続された検出回路基板を含む、条項27に記載の対物レンズアセンブリ。
【0154】
[0166] 条項29:検出器アセンブリは、セラミックを含み、好ましくは、検出器アセンブリは、セラミック材料を含む検出回路基板を含む、条項27又は28に記載の対物レンズアセンブリ。
【0155】
[0167] 条項30:検出器アセンブリは、読み出しチップを更に含む、条項27~29の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0156】
[0168] 条項31:読み出しチップには、電子ビームレットの経路のための開口部が画定され、好ましくは、開口部は、開口部のアレイである、条項30に記載の対物レンズアセンブリ。
【0157】
[0169] 条項32:読み出しチップには、ビームレットの経路のための開口部が画定され、各開口部は、少なくとも1つの電子ビームレットの経路に対応する、条項30又は31に記載の対物レンズアセンブリ。
【0158】
[0170] 条項33:検出器アレイは、読み出しチップのダウンビームに配置される、条項30~32の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0159】
[0171] 条項34:検出器アレイは、読み出しチップの内部にあり、好ましくは、検出器アレイは、読み出しチップ内の少なくとも1つの開口部のダウンビームにあり、及び/又は検出器アレイは、読み出しチップのダウンビーム表面を提供する、条項31~33の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0160】
[0172] 条項35:検出器アセンブリは、熱的に調整されるように構成される、条項27~34の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0161】
[0173] 条項36:検出器アレイとの信号通信は、光ファイバーを介した信号通信を含み、対物レンズアレイアセンブリは、光ファイバーを含む、条項27~35の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0162】
[0174] 条項37:検出器アセンブリの少なくとも一部分は、隣接基板から離間され、好ましくは隣接基板から熱的に隔離され、検出器アセンブリの少なくとも一部分は、好ましくは、検出器アレイ及び/又は読み出しチップ、任意選択的に検出器アセンブリを含む、条項27~36の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリ。
【0163】
[0175] 条項38:レンズアセンブリを熱的に調整するように構成された冷却回路を更に含み、好ましくは、冷却回路は、検出器アセンブリと熱的に接触し、より好ましくは検出回路基板、従っては検出器アレイと熱連通する、条項19~37の何れか一項に記載のレンズアセンブリ。
【0164】
[0176] 条項39:電子ビームツールの電子光学系のための対物レンズアセンブリであって、マルチビームをサンプル上に集束させるように構成され、及び対物レンズアレイであって、各対物レンズは、マルチビームのそれぞれのサブビームをサンプル上に投射するように構成される、対物レンズアレイと、サンプルから放出された電子を検出するように構成された検出器アレイを含む検出器アセンブリであって、検出器アセンブリの少なくとも一部分は、好ましくは、対物レンズアレイに隣接し、及び/又は組み込まれる、検出器アセンブリとを含み、少なくとも検出器アセンブリ、好ましくは検出器アレイは、熱的に調整されるように構成され、検出器アレイへの信号通信は、光ファイバーを介した信号通信を含み、対物レンズアレイアセンブリは、光ファイバーを含み、及び/又は対物レンズアレイは、条項19~25若しくは27~37に記載のレンズアセンブリを含む、対物レンズアセンブリ。
【0165】
[0177] 条項40 放射源ビームからビームレットを生成し、ビームレットをサンプルに向けて投射するように構成された電子光学コラムであって、サンプルに面する検出器を含み、及び電流検出器のアレイを含み、検出器アセンブリは、サンプルから放出された電子を検出するように構成された検出器アレイを含み、少なくとも検出器アセンブリは、熱的に調整されるように構成され、検出器アレイへの信号通信は、光ファイバーを介した信号通信を含み、対物レンズアレイアセンブリは、光ファイバーを含み、及び/又は検出器アセンブリは、条項27~37の何れか一項に記載の検出器アセンブリの特徴を含む、電子光学コラム。
【0166】
[0178] 条項41;検出器アセンブリは、セラミックを含み、好ましくは、検出回路基板は、セラミック材料を含む、条項40に記載の電子光学コラム。
【0167】
[0179] 条項42:検出器アセンブリは、読み出しチップを更に含む、条項40又は40に記載の電子光学コラム。
【0168】
[0180] 条項43:電子光学系であって、電子ビームを放射するように構成された放射源と、条項40~42の何れか一項又は条項27~39の何れか一項に記載の対物レンズアセンブリを含む電子光学コラムとを含む電子光学系。
【0169】
[0181] 条項44:電子光学系アレイであって、条項43に記載の電子光学系の複数を含み、電子光学系は、それぞれのマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させるように構成される、電子光学系アレイ。
【0170】
[0182] 本発明を様々な実施形態と関連付けて説明してきたが、本明細書で開示される本発明の仕様及び実施を考慮することで本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書及び例は、単なる例示と見なされ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0171】
[0183] 上記の説明は、例示的であることを意図し、限定するものではない。従って、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、説明したような変更形態がなされ得ることが当業者に明らかであろう。
【国際調査報告】