(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】コントラストガスを使用したエンドポイント判定
(51)【国際特許分類】
G03F 1/72 20120101AFI20240109BHJP
【FI】
G03F1/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538733
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021085295
(87)【国際公開番号】W WO2022135981
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020216518.1
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】リノウ ダニエル
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BD35
2H195BD36
2H195BD40
(57)【要約】
本発明は、リソグラフィマスク上の欠陥を修復する方法であって、(a.)前記欠陥上で局所エッチング作用を誘起するために前記欠陥に粒子ビームを向けることと、(b.)前記欠陥上での前記局所エッチング作用から前記欠陥の下の前記マスクの要素上の局所エッチング作用への移行点を検出するために、後方散乱粒子および/または二次粒子、および/またはエッチング作用によって発生した任意のその他の自由空間信号を使用して前記エッチング作用を監視することと、(c.)前記移行点の検出におけるコントラストを増すために少なくとも1つのコントラストガスを供給することとを含む方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィマスクの欠陥を修復する方法であって、
a.前記欠陥上で局所エッチング作用を誘起するために前記欠陥に粒子ビームを向けることと、
b.前記欠陥上での前記局所エッチング作用から前記欠陥の下の前記マスクの要素上の局所エッチング作用への移行点を検出するために、後方散乱粒子および/または二次粒子、および/またはエッチング作用によって発生した任意のその他の自由空間信号を使用して前記エッチング作用を監視することと、
c.前記移行点の検出におけるコントラストを増すために少なくとも1つのコントラストガスを供給することとを含む、方法。
【請求項2】
前記欠陥の下の前記要素の前記材料上の前記コントラストガスの吸着レートおよび/または滞留時間が、前記欠陥の材料上の前記コントラストガスの吸着レートまたは滞留時間よりも高いように前記コントラストガスを選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子の後方散乱および/または二次粒子の発生、および/または前記エッチング作用によって発生した前記他の自由空間信号が前記欠陥の材料に対して前記コントラストガスが与える影響の程度が、下の前記要素の材料に与える影響の程度と異なる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントラストガスへの前記粒子ビームの入射の結果、粒子の後方散乱および/または二次粒子の発生が生じる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コントラストガスが不活性ガスである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コントラストガスが少なくとも2つの別個の期間に供給される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コントラストガスが、前記エッチング作用が開始した後で、好ましくは前記欠陥上の前記エッチング作用から前記欠陥の下の前記マスクの前記要素上の前記エッチング作用への期待移行点の直前にのみ供給される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コントラストガスが存在しない状態で前記局所エッチング作用を誘起することと、
エッチングの所定の期待進行度に達した後で前記コントラストガスを供給することとをさらに含み、
前記エッチング作用が、前記コントラストガスが供給された後でのみ監視される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチング作用のために前駆体ガスを供給することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コントラストが、前記前駆体ガスが供給された後で供給される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体ガスが、前記欠陥の材料上および/または下の前記要素の材料上の粒子の前記後方散乱および/または二次粒子の発生に影響を与える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記コントラストガスが下の前記要素の材料上の前記前駆体ガスを、好ましくは前記欠陥の材料上におけるよりも大幅に置き換えるように、前記コントラストガスを選択することをさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
実行されるとコンピュータに請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を行わせる命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項14】
リソグラフィマスク上の欠陥を修復する装置であって、
a.前記欠陥上で局所エッチング作用を誘起するために前記欠陥に粒子ビームを向ける手段と、
b.前記欠陥上での前記局所エッチング作用から前記欠陥の下の前記マスクの要素上の局所エッチング作用への移行点を検出するために、後方散乱粒子および/または二次粒子、および/またはエッチング作用によって発生した任意のその他の自由空間信号を使用して前記エッチング作用を監視する手段と、
c.前記移行点の検出におけるコントラストを増すために少なくとも1つのコントラストガスを供給する手段とを含む、装置。
【請求項15】
リソグラフィ材料における欠陥を修復する装置であって、請求項13に記載のコンピュータプログラムを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子ビームを使用してリソグラフィマスクの欠陥を修復する方法、装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスにおける集積密度の着実な向上の結果として、リソグラフィマスク(以下、しばしば略して単に「マスク」)は、ますます微小な構造要素をウエハのフォトレジスト層内に結像する(image)必要が生じている。このような要件を満たすために、露光波長はますます短い波長に移行しつつある。現在、露光のために主としてフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザーが使用されており、これらのレーザーは193nmの波長の光を放射する。極紫外線(EUV)波長範囲(10nm~15nm)で放射する光源および対応するEUVマスクに関する集中的な研究が行われている。ウエハ露光プロセスの分解能は、従来のバイナリリソグラフィマスクの複数の変形の同時開発によって向上している。その例としては、位相マスクまたは位相シフトマスクと、多重露光用マスクがある。
【0003】
構造要素の寸法がますます微小化しているため、リソグラフィマスクは、常にウエハ上のプリント可能欠陥または可視欠陥なく製造することができるわけではない。マスクの製造コストは高いため、欠陥マスクは可能であれば常に修復される。
【0004】
リソグラフィマスクの欠陥の重要な2つのグループは、第1には暗欠陥であり、第2には明欠陥である。
【0005】
暗欠陥は、吸収剤材料および/または位相シフト材料が存在するが、そのような材料が存在しない必要がある箇所である。これらの欠陥は、その余分な材料を、好ましくは局所エッチング作用を用いて除去することによって修復される。
【0006】
それに対して、明欠陥は、ウエハステッパまたはウエハスキャナにおける露光時に、同一の無欠陥基準箇所よりも透過率が大きい、マスク上の欠陥である。マスク修復プロセスでは、このような明欠陥は、適切な光学特性を有する材料を堆積させることによってなくすことができる。理想的には、修復に使用される材料の光学特性は、吸収剤または位相シフト材料の光学特性に対応する必要がある。
【0007】
暗欠陥を除去する方法は、修復する欠陥に直接向けられる電子ビームを使用すること(露光)である。電子ビームの使用により、具体的には、欠陥へのビームの正確なステアリングと位置決めが可能である。修復するマスクの雰囲気中に存在するかまたはマスク自体に吸着する場合がある、プロセスガスとも呼ばれる前駆体ガスとともに、入射電子ビームにより、局所エッチング作用に類似した反応を誘起することができる。この誘起された局所エッチング作用は、リソグラフィマスクにとって望ましい吸収剤特性および/または位相シフト特性を生じさせるかまたは復元することができるように、マスクから(欠陥の)余分な材料の部分を除去することができる。
【0008】
あるいは、使用される前駆体ガスを、ビームへの露光時に堆積プロセスを誘起することができるように選定することも可能である。その結果、マスクの透過率を局所的に低減するため、および/または、位相シフト特性を向上させるために、明欠陥上に追加の材料を堆積することができる。
【0009】
修復するマスクは、一般に、典型的には重ね合わされた少なくとも2つの材料からなる多層構造を有する。ここで、上部材料(電子ビームに面した材料)は吸収剤材料として、位相シフト材料として、または欠陥材料としての役割を果たすことができであり、下部材料は、修復するリソグラフィマスクの基板または担体材料(または欠陥の下の要素の材料として)の役割を果たすことができる。
【0010】
前駆体ガスまたは欠陥の材料とのエッチングまたは堆積に使用される電子ビームまたは他の粒子ビームの相互作用の場合、電子または粒子の後方散乱がある場合がある。たとえば、後方散乱電子は、エッチングおよび/または堆積プロセスと並行して検出されることがあり、後方散乱電子の信号(たとえば、EsB信号。EsB:Energy-selective backscattering(エネルギー選択後方散乱))を生じさせる。これに加えて、またはこの代わりに、粒子ビームと前駆体ガスまたは欠陥の材料との相互作用のプロセスにより、二次粒子、たとえば電子を発生させることもある。たとえば、二次電子は、同様にエッチングまたは堆積プロセスと並行して検出可能な二次電子信号(SE信号)を生じさせることがある。エッチング作用および/または堆積作用中に上記の粒子またはそれによって発生する信号を検出することによって、修復操作の進行状況を監視することができる。
【0011】
具体的には、欠陥の材料上のエッチング作用から欠陥の下の要素の材料への移行点の正しく精密な検出が、修復操作の成功にとって極めて重要である。この移行点は、エンドポイント検出(endpointing)とも呼ばれる。正確なエンドポイント検出は、修復するマスクが、エッチング作用の終了後に、望ましい吸収特性および/または位相シフト特性を有することと、たとえば、欠陥材料の下の基板材料がエッチング作用によって浸食および/または除去されないように保証することを最終的に可能にする。半導体産業におけるウエハ構造体に要求される高い精度のため、それに応じた同様の厳しい要求がリソグラフィマスクの修復に対してもある。
【0012】
エッチング作用時に(エッチングされる材料上に)形成される後方散乱粒子および/または二次粒子を検出することによるエッチング作用の監視によって、エッチング作用の一種のリアルタイム像を取得することができる。したがって、上記の粒子ビームの変化するコントラストによって、材料間のエッチング作用の移行点を判定することができる。しかし、このコントラストは、場合によっては、たとえばエッチング作用において存在する材料がわずかにしか異ならない(たとえば類似した原子番号を有する)場合に、エンドポイント(欠陥の材料から欠陥の下の要素の材料へのエッチング作用の移行点)の厳密な判定が不可能なほど著しく弱くなることがある。
【0013】
この問題にもかかわらず、正確な結果を得るための以下のような様々な手法が知られている。
【0014】
米国特許出願公開第2004/0121069号は、荷電粒子ビームシステムによって位相シフトフォトマスクを修復する方法を開示している。この場合、走査電子顕微鏡からのトポグラフィデータがエンドポイント検出の代替として使用される。トポグラフィデータは、その特定の点における高度と表面勾配とに基づいて、欠陥環境内のすべての点について荷電粒子ビームの照射量を調整するために使用することができる。
【0015】
米国特許第6593040B2号は、フォトマスクにおける位相シフト欠陥の修正のための方法および装置を開示している。これは、フォトマスクのスキャンと、AFM(原子間力顕微鏡)による欠陥の3次元解析とを含む。3次元解析に基づいて、エッチマップが作成され、欠陥を除去するためにエッチマップに従って集束イオンビーム(FIB)が制御される。修復プロセスにより高い正確度を与えるために、FIBの試験体が製作され、3次元で解析される。
【0016】
しかし、これらの手法は、時間がかかり、複雑である。また、エッチ速度は、常に正確に予測可能であるとは限らず、したがって、労力と複雑さにもかかわらず、決して常に最適な結果を出すことができるわけではない。
【0017】
したがって、対処される課題は、欠陥に対するエッチング作用をさらに改良することである。
【発明の概要】
【0018】
上記の目的は、以下に記載する本発明の様々な態様によって少なくとも部分的に達成される。
【0019】
本出願は、ドイツ特許出願DE第102020216518.1の優先権を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
一実施形態は、リソグラフィマスク上の欠陥を修復する方法を含むことができる。この方法では、(a.)欠陥上の局所エッチング作用を誘起するために、修復する欠陥に粒子ビームを向けることができる。エッチング作用は、(b.)欠陥上の局所エッチング作用から欠陥の下のマスクの要素上の局所エッチング作用への移行点を検出するために、後方散乱粒子および/または二次粒子、および/またはエッチング作用によって発生した他の自由空間信号を使用して監視することができる。さらに、(c.)移行点の検出におけるコントラストを強くするために、少なくとも1つのコントラストガスを供給することができる。
【0021】
本発明の発明人らは、(修復するマスクの周囲の雰囲気中に)コントラストガスを供給することによって、移行点の検出を顕著に向上させることができることを認めた。これは、移行点の検出に使用される信号(後方散乱粒子、二次粒子、および/またはエッチング作用によって発生する他の自由空間信号。原則として、移行点の検出に原則として適する他のすべての種類の信号も考えられる。以下、簡単にするために、常に自由空間信号に言及する)が、移行点においてかろうじて検出可能な程度にしか変化しないか、または検出不可能な状況において特に有用となり得る。特にそのような状況では、欠陥の材料上または欠陥の下の要素の材料上の信号の発生に異なる程度に影響を与えるコントラストガスが、特に高いコントラストの相対的増大に寄与することができる。具体的には、この効果は、エッチング作用を大幅に妨害せずに有意な程度に得られることがわかった。したがって、いかなる反復的方法または特に複雑な測定装置の必要もなしに、エッチング作用のエンドポイントを確実に確認することができる。
【0022】
たとえば、EsBエンドポイント検出の文脈では、エンドポイントの正確な判定を確実にすることができるように、少なくとも10階調のモノクロ階調差、たとえば合計256階調が使用されることが望ましい。ここで、原則的に、たとえば使用される検出装置システム(ハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントの両方を含むことができる)に応じて、異なる必要モノクロ階調差を得ることも可能である。可能なモノクロ階調数が変化する場合、エンドポイント検出を行うことができるように、それに対応して変更された10以外のモノクロ階調差も考えられる。モノクロ階調差は、ここでは、欠陥の材料が除去されると生じる後方散乱電子の信号強度と、粒子ビームが欠陥の下の材料に当たると発生する信号強度との比に関係し得る。しかし、エンドポイント検出は、本明細書に記載のEsBエンドポイント検出には限定されず、たとえば、本明細書で一般的な用語で説明されるように、第1の材料の処理(たとえば除去)から第2の材料への移行点を正確に検出することができるように、後方散乱および/または二次電子の発生を起こす、異なるメカニズムを使用して行うこともできる。上記のモノクロ階調差を使用して、本明細書に記載のEsBエンドポイント検出以外のプロセスにおける対応するエンドポイント判定も行うことができ、256階調の可能なモノクロ階調の場合における10階調のモノクロ階調差は、単に例示の指針値とみなされるべきである。
【0023】
また、特に関与する材料の原子番号がわずかにしか相違しない場合も、コントラストガスを供給することによってエンドポイント検出を向上させることができる。コントラストガスは、この場合、たとえば材料依存および/または用途固有の方式で選定可能である。これにより、エッチング作用のエンドポイントのはるかにより正確で信頼性の高い判定、したがって、リソグラフィマスクにおける欠陥のより正確な修復が、不利なスループット損失、またはエッチング作用自体の悪影響を受け入れる必要なしに可能になる。
【0024】
粒子ビームの粒子は、たとえば電子、陽子、イオン、原子、分子、光子などであってもよい。
【0025】
たとえば、コントラストガスは、欠陥の下の要素の材料(以下、しばしばマスク材料とも呼ぶ)におけるコントラストガスの(少なくとも時間平均での)吸着レートおよび/または滞留時間が、欠陥の材料(欠陥材料)上のコントラストガスの吸着レートまたは滞留時間より高くなるように選定することができる。これは、コントラストガスが欠陥の下の要素の材料上に優先的および/またはより迅速に吸着し、ならびに/あるいはより長く滞留するという望ましい要件によって行うことができる。マスク材料におけるコントラストガスの優先吸収には様々な理由があり得る。たとえば、コントラストガスは物理吸着によって欠陥の材料上よりもマスク材料上でより長い滞留時間を示すことができる。同様におよびその代わりに、コントラストは化学吸着により、欠陥材料上よりもマスク材料上でより長い滞留時間を有することができる。
【0026】
優先吸着のため、コントラストガス自体により、および/または、第2の材料とのコントラストガスのより強力な相互作用により、発生する信号へのより高い影響とのより高いコントラストを確実にすることができる。たとえば、これは、EsB信号またはSE信号(または他の適切な信号)におけるマスク材料のより強力なコントラストを生じさせることができる。マスクの表面に吸着するコントラストガスは、欠陥材料と比較してより強力またはより弱いEsB信号、および/あるいはより強力またはより弱いSE信号を与えることができる。
【0027】
使用されるコントラストガスは、一般に、欠陥の下の要素の材料よりも欠陥の材料に対してより低い親和性を有するように選定することができる。これにより、第1に、欠陥の下の要素上のコントラストガスの優先吸着により、移行点の検出のためにそこに発生した信号が欠陥の材料上よりも対応してよりより大きく影響を受けるため、より明確な相対的コントラスト増加があるようにすることができる。第2に、これは、欠陥上の局所エッチング作用がすでに終わっている場合、粒子ビームはコントラストガスにのみより多く当たるため、エッチング作用の妨害を最小限にすることもできる。
【0028】
上記に代えて、または上記に加えて、コントラストガスは、エッチング作用に使用される前駆体ガスよりも欠陥の材料により低い親和性(吸着レートおよび/または滞留時間)を有するように選定することも可能である。上記に代えて、または上記に加えて、コントラストガスは、エッチング作用に使用される前駆体ガスよりも、欠陥の下の要素の材料により高い親和性(吸着レートおよび/または滞留時間)を有するように選定することも可能である。
【0029】
具体的には、コントラストガスは、このように材料依存および用途に基づいて選択することができる。
【0030】
また、コントラストガスは、粒子の後方散乱および/または二次粒子の発生および/または欠陥の材料上でのエッチング作用によって発生する他の自由空間信号に影響を与える程度が、下の要素の材料に対する程度とは異なるように選択することができる。たとえば、コントラストガスの特性は、その存在により、マスク材料および/または欠陥の材料と比較することによって検出可能な後方散乱粒子および/または二次粒子、および/または他の自由空間信号に関して異なる特性を生じさせるような特性であることができる。欠陥材料および/またはマスク材料上のコントラストガスの存在および/または吸着により、これらの粒子の検出に至る特性が使用されるコントラストガスに応じて変化し得るように、後方散乱粒子および/または二次粒子および/またはその他の自由空間信号に関して欠陥材料および/またはマスク材料の自然の特性に影響を与えることが可能である。たとえば、マスク材料の表面に吸着するコントラストガスは、後方散乱粒子および/または二次粒子、および/またはマスク材料から出る他の自由空間ビームの信号を減衰させることができる。
【0031】
コントラストガスへの粒子ビームの入射が、粒子のさらなる後方散乱および/または二次粒子またはさらなる他の自由空間信号の発生を生じさせるように、コントラストガスを選択することも可能である。
【0032】
考えられる一実施形態では、コントラストガスは不活性ガス、たとえば希ガスであってもよい。これは、エッチング作用の持続期間および品質に対するコントラストガスの(悪)影響の回避に寄与することができる。コントラストガスは、同様に、不活性ガスであるか否かを問わず、エッチングプロセスの成功に対するいかなる影響もほとんど与えないか、重大な影響を全く与えない潜在的反応性を有するガスとすることができる。
【0033】
コントラストガスは、少なくとも2つの別個の期間に供給可能である。したがってコントラストガスは、(高用量で)1回だけ供給されるのではなく、(低用量で)間隔を空けて補給される。また、エッチング作用時に多数の間隔でコントラストガスを供給することができる(チョッピング)。たとえば、エッチング作用中の動的な変化に反応することも可能である。常に十分な濃度のコントラストガスが存在するが、コントラストガスの過剰用量は回避されるように保証することができる。後者は、同様に、コントラストガスの存在の結果としてエッチング作用に及ぼす悪影響を回避するために有利となり得る。
【0034】
チョッピングは、たとえば2つ以上の特徴期間によって表すこともできる。第1に、これはガスが流入可能な期間とすることができる。第2に、これはガスが流入しない後続期間とすることができる。これは、例として、前駆体ガス(またはコントラストガス)の貯蔵槽に接続され、それを通ってこのガスが反応場所に達することができるバルブの開放時間、およびバルブが閉じた状態のままである時間として表すことができる。開バルブと閉バルブとの典型的な時間比は、1:10(たとえばバルブが1秒間開き、1秒間閉じる)、1:30または1:60とすることができるが、異なる比を使用することも原則的に可能である。
【0035】
コントラストガスは、エッチング作用が開始した後で、好ましくは、欠陥上のエッチング作用から欠陥の下のマスクの要素上のエッチング作用への期待移行点の直前にのみ、供給することができる。これで、コントラストガスによるエッチング作用の妨害を低減することができる。
【0036】
コントラストガスがない状態で局所エッチング作用を生じさせることも可能である。さらに、エッチングの所定の期待進行度に達した後でのみコントラストガスが供給されることも考えられる。これにかかわらず、エッチング作用の監視はコントラストガスが供給された後にのみ開始される場合もあり得る。ここで、後者の3つの方法ステップのうちの2つまたはすべてが実行される場合もあり得る。あるいは、それとは異なり、後者の方法ステップのうちの個別の方法ステップのみを実行すること(たとえば、コントラストガスが供給された後でのみエッチング作用の監視を開始すること)も可能である。
【0037】
エッチングの所定の進行度は、たとえば、25%、50%、75%、90%または任意のその他の度合いのエッチングの進行度に関し得る。100%のエッチング進行度が、エッチング作用が欠陥のエッチングから欠陥の下の要素のエッチングに移行するエッチングの進行度に関連付けられてもよい。エッチング作用および/またはエッチングの進行度は、オペレータの立ち会いの下で(たとえば目視エンドポイント検出として)、または完全自動化方式で監視可能である。
【0038】
エッチング作用の誘起の前に、たとえばルックアップテーブルのキャリブレーションが行われてもよい。たとえばルックアップテーブルは、エッチングの進行度を、たとえば時間の関数として、ループ数の関数としてなど、予め設定するために使用することができる。所定の期待エッチング進行度に達すると、コントラストガスを供給することができる。エッチングの所定の進行度は、たとえば、ルックアップテーブルを使用して、具体的には使用されるエッチングパラメータ(ビームパラメータ、前駆体ガス、エッチングされる材料など)について確認することができる。ルックアップテーブルのキャリブレーションに代えて、またはそれに加えて、たとえば、その時点で開始されるエッチング作用のエッチングパラメータに対応するか、または少なくともそれに近いエッチングパラメータに関係するルックアップテーブルをメモリから読み出すことも可能である。そのようなルックアップテーブルは、本明細書に記載のように同様に使用可能である。この場合のエッチングプロセスは基本的に線形プロセスとすることができるため、エッチングの所定の期待進行度の使用は、同種欠陥組成の場合は特に、エッチングの進行度の正確な推定を可能にすることができる(たとえば、同じ期間内にエッチングの等しい進行度を達成することができる)。
【0039】
エッチング作用の誘起のために、エッチング作用のための雰囲気に、エッチング作用のための前駆体ガスを供給することができ、この前駆体ガスは入射粒子ビームと相互作用し、最終的にエッチング反応と欠陥材料の除去を引き起こす。プロセスは、前駆体ガスが供給された後でのみコントラストガスが供給されるような時間系列で進行することができる。これは、コントラストガスによるエッチング作用の妨害のさらなる低減にも寄与することができる。このようにして、たとえば欠陥材料を好ましくは前駆体ガスで被覆することができる。一方、エッチング作用が進行する雰囲気中にこの2種類のガスを同時に供給することも同様に可能である。適切な場合には、前駆体ガスの前にコントラストガスをエッチング作用の雰囲気中に供給することも同様に考えられる。
【0040】
前駆体ガスは、欠陥の材料上および/またはその下の要素の材料上における粒子の後方散乱および/または二次粒子および/またはその他の自由空間信号の発生に影響を与え得る。
【0041】
コントラストガスは、欠陥材料の下の要素の材料上の前駆体ガスを置き換えるように、好ましくは、欠陥の材料上よりもより強力に置き換えるように、選択することができる。これは特に、マスク材料上のコントラストガスの十分な吸着が常に可能であるように保証し、したがって欠陥材料のエッチングの、その下の要素の材料のエッチングへの移行点の早期の認識を確実にする。それと同時に、欠陥材料上の前駆体ガスのより低い置き換えは、さらに、エッチングプロセスの妨害を最小限にすることができる。
【0042】
ここで、有用なコントラストガスは、1つまたは複数のオキシダント、たとえばO2、O3、H2O、H2O2、N2O、NO、NO2、HNO3および/またはその他の含酸素ガスである場合がある。同様に、1つまたは複数のハロゲン化物、たとえば、Cl2、HCl、XeF2、HF、I2、Hl、Br2、HBr、NOCl、NF3、PCl3、PF3および/またはその他のハロゲン含有ガスを使用することも可能である。Cl2は、局所エッチング作用にわずかしか干渉せず、仕事関数を下げる(それにより高いSE信号を生じさせることができる)ため、好ましいコントラストガスとみなせる。同様に、有用なコントラストガスは、還元作用を有するガス、たとえば、H2、NH3、CH4、H2S、H2Se、H2Teおよびその他の水素含有ガスを含み得る。同様に、気体状アルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs)をコントラストガスとして使用するか、またはプラズマの(好ましくは、サンプルから別個に発生させた遠隔プラズマの)成分を使用することも可能である。また、希ガス(たとえば、He、Ne、Ar、Kr、Xe)を使用することも可能である。さらなる選択肢は、界面活性物質の使用である(たとえば、水酸化アルキル、脂肪族カルボン酸、メルカプトアルカン、アルキルアミン、アルキル硫酸塩、リン酸アルキル、アルキルホスホン酸塩の使用であり、アルキル化合物の代わりに芳香族化合物およびその他の有機化合物を使用することも可能である)。また、上記のコントラストガスは、前駆体ガスとして使用することもできることに留意されたい。
【0043】
有用な前駆体ガスは、1つまたは複数の(金属、遷移元素、主族)アルキル、たとえば、シクロペンタジエニル(Cp)-またはメチルシクロペンタジニエル(MeCp)-トリメチルプラチナ(CpPtMe3および/またはMeCpPtMe3)、テトラメチルスズSnMe4、トリメチルガリウムGaMe3、フェロセンCp2Fe、ビスアリルクロムAr2Cr、ジシクロペンタジエニルルテニウムRu(C5H5)2、およびこの種のその他の化合物である場合がある。同様に、1つまたは複数の(金属、遷移元素、主族)カルボニル、たとえば、クロムヘキサカルボニルCr(CO)6、モリブデンヘキサカルボニルMo(CO)6、タングステンヘキサカルボニルW(CO)6、ジコバルトオクタカルボニルCo2(CO)8、トリルテニウムドデカカルボニルRu3(CO)12、鉄ペンタカルボニルFe(CO)5および/またはこの種のその他の化合物を使用することも可能である。同様に、1つまたは複数の(金属、遷移元素、主族)アルコキシド、たとえば、テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタンTi(OC3H7)4およびこの種のその他の化合物使用することができる。また、1つまたは複数の(金属、遷移元素、主族)ハロゲン化物、たとえば、WF6、WCl6、TiCl6、BCl3、SiCl4および/またはこの種のその他の化合物を使用することも可能である。同様に、1つまたは複数の(金属、遷移元素、主族)錯体、たとえば銅ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)Cu(C5F6HO2)2、ジメチル金トリフルオロアセチルアセトネートMe2Au(C5F3H4O2)および/またはこの種のその他の化合物を使用することも可能である。さらに、CO、CO2、脂肪族または芳香族炭化水素、真空ポンプ油の成分、揮発性有機化合物および/またはこの種のその他の化合物を使用することも可能である。また、列挙した前駆体ガスをコントラストガスとして使用することも考えられることに留意されたい。
【0044】
ここで、上記の列挙は網羅的ではないことと、記載されている選択されたもの以外も含めて、ここで単に例として挙げた考えられる選択されたコントラストガスおよび前駆体ガスの任意の所望の組合せも可能であることが、当業者にはわかる。
【0045】
好ましい実施例では、前駆体ガスの影響に対してEsB/SE信号(または使用される異なる信号)への相反する影響を有するコントラストガスの組合せがある。ここでの影響は、エッチングされる材料とエッチングされない材料とに関連する。この場合、たとえば、吸着した前駆体ガスが材料の仕事関数を下げることが可能であり(より高いSE信号)、一方、コントラストガスは仕事関数を大きくすることができ(より低いSE信号)、その逆もある。
【0046】
(たとえばエッチング作用の開始後に)コントラストガスを供給するのではなく、コントラストガスが(低濃度で)すでに存在していてもよく、その後、(たとえばエッチング作用の開始後、その期待終了時点の前に)その濃度を指示された方式で単に上昇させてもよいことに留意されたい。
【0047】
エッチング作用の移行点が検出された後、欠陥材料の下のマスク材料の望ましくないエッチングを防ぐために、エッチング作用を停止させることができる。たとえば、これは粒子ビームを停止することによって行うことができる。
【0048】
また、同様に、本明細書に記載のプロセスはコンピュータプログラムとして実施することができる。これは、実行されると、コンピュータに本明細書に記載の方法ステップのうちの1つまたは複数のステップを有する方法を行わせる命令を有するコンピュータプログラムとすることができる。
【0049】
リソグラフィマスク上の欠陥の修復は、(a.)欠陥に粒子ビームを向ける手段を含むことができる装置によって実行することもできる。装置は、(b.)欠陥上のエッチング作用から欠陥の下のマスクの要素上のエッチング作用への移行点を検出することができるように、後方散乱粒子および/または二次粒子および/またはエッチング作用によって発生する他の自由空間信号を使用してエッチング作用を監視する手段をさらに含むことができる。最後に、装置は、(c.)移行点の検出におけるコントラストを増すことができるように少なくとも1つのコントラストガスを供給する手段を含むことができる。
【0050】
装置は、方法に関して本明細書に記載されているステップを実行するように設定された手段をさらに含むことができる。
【0051】
リソグラフィマスクにおける欠陥を修復するための装置が、上述のコンピュータプログラムを含み、そのプログラム内の命令に従って、装置に上述の方法ステップのうちの1つまたは複数のステップを実行させるように設定することも可能である。
【0052】
以下の詳細な説明では、本発明の考えられる実施形態について以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1a】コントラストガスのない状態でのエンドポイント検出の例を示す図である。
【
図1b】コントラストガスのない状態でのエンドポイント検出の例を示す図である。
【
図2a】コントラストガスを使用したエンドポイント検出の例を示す図である。
【
図2b】コントラストガスを使用したエンドポイント検出の例を示す図である。
【
図3a】コントラストガスの吸着特性の例を示す図である。
【
図3b】コントラストガスの吸着特性の例を示す図である。
【
図4a】コントラストガスと前駆体ガスの吸着特性の例を示す図である。
【
図4b】コントラストガスと前駆体ガスの吸着特性の例を示す図である。
【
図5A】コントラストガスが存在しない状態と存在する状態での局所エッチング作用中の移行点における信号進行度を示す図である。
【
図5B】コントラストガスが存在しない状態と存在する状態での局所エッチング作用中の移行点における信号進行度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、主としてリソグラフィマスク、特にマイクロリソグラフィ用のマスクの修復について参照しながら本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明はこれには限定されず、他の種類のマスク処理、またはより一般的に、表面処理全般、たとえばマイクロエレクトロニクスの分野で使用されるその他の物、たとえば構造化ウエハ表面またはマイクロチップの表面の改変および/または修復のためなどにも使用可能である。たとえば、表面または表面の要素の上に全般的に帰する欠陥を修復することが可能である。したがって、説明を明確に、より理解しやすいようにするために、以下でマスク表面を処理する用途について言及されている場合であっても、当業者は、開示されている教示の他の考えられる使用も念頭におくであろう。
【0055】
また、以下では、本発明の個々の実施形態についてのみより詳細に説明する場合があることにも留意されたい。しかし、当業者は、これらの実施形態に関連して記載されている特徴および変更オプションは、さらに変更することもでき、および/または、他の組合せまたはサブコンビネーションで互いに組み合わせることもでき、これは本発明の範囲から逸脱しないことがわかるであろう。また、意図された結果を得ることに関してなくても済むならば、個々の特徴または下位特徴を省くこともできる。したがって、無用な繰り返しを避けるために、前節での記載および説明を参照し、それらは以下の詳細な説明のための有効性も保持する。
【0056】
図1aに、リソグラフィマスクの修復に使用されるような、荷電粒子のビームによって誘起されるエッチング作用を使用した、従来のエンドポイント検出方法の概略図を示す。他の荷電粒子も使用可能であるが、粒子1、たとえば電子のビームを、この場合、第1の材料2上まで誘導することができる。この第1の材料2は、暗欠陥Dを有するかまたは暗欠陥Dであってもよい。これには、たとえば半導体産業におけるウエハの製造のために採用されるような光を透過させるために欠陥の箇所における望ましくない吸収特性または望ましくない位相シフトを生じさせるという結果が伴うことがある。したがって、この余分な材料をそれに応じて除去することが修復方法の目的である。ここでは、第1の材料2は第2の材料3に付加することができ、第2の材料3は基板またはマスクとして機能する。両方の材料は、材料層の形態をとることができるが、他の材料構成も可能である。たとえば、第1の材料2は、第2の材料3によって形成された層の上の局所的に結合した構成とすることもできる。
【0057】
欠陥Dを望ましい方式で除去するために、周囲の、典型的には密閉された雰囲気に、荷電粒子1の入射ビームと相互作用して入射粒子ビームの箇所において局所エッチング作用を生じさせることができる前駆体ガス(ここでは図示せず)を供給することができる。入射粒子ビームは、ここでは、磁界および/または電界との相互作用ならびに/あるいは他の制御方法によって、欠陥領域の上に体系的に誘導することができ、その結果として欠陥Dの対応する除去が起こる。荷電粒子1の入射ビーム1の相互作用の結果として、後方散乱粒子4aおよび/または二次粒子4bおよび/または他の自由空間ビーム4cが得られる(以下で説明する実施例が後方散乱粒子および/または二次粒子に限定される場合でも、エッチング作用の進行度に関して判定を可能にする他の種類の粒子/ビームも同様に有利に使用可能である)。これらの粒子またはこのビームは、エッチング作用を監視する選択肢を提供する。第1の材料2と第2の材料3は、典型的には組成が(たとえば、それぞれの原子番号に関して)異なり得るため、後方散乱粒子6および/または二次粒子7および/または自由空間ビームから検出される信号5の変化があり得る。検出された信号の変化は、欠陥材料Dが完全に除去され、入射荷電粒子ビームが第2の材料3と相互作用しているという判定を可能にする。
【0058】
第1の材料2からなる欠陥Dが完全に除去されているシナリオを
図1bに示す。この場合、荷電ビーム1は基板材料3に直接当たり、その後、第1の材料2とのいかなる局所相互作用もなくなる。これは、後方散乱粒子および/または二次粒子からの信号が、
図1aに示すシナリオと比較して変更されるような検出可能な信号5の変化を生じさせる。たとえば、後方散乱粒子の信号を増大させることができる。これに代わって、またはこれに加えて、第2の粒子によって生じる信号を減衰させることができる。
【0059】
図1aおよび
図1bに示すリソグラフィマスクの修復方法の知られている問題は、特に第1の材料から第2の材料への移行点における検出可能な信号が変化しないか、または検出不能な方式で変化するか、または困難を伴ってのみ検出することができる場合に生じる。その場合、エッチング作用の監視は、困難を伴ってのみ可能である。したがって、エンドポイント、すなわち、たとえば第1の材料2からなる欠陥Dが完全に除去された時点の精密な判定は、きわめて限定された正確度でのみ可能である。その結果、粒子ビーム誘起エッチング作用は第2の材料3の一部も意図せずに除去する可能性があり、その結果としてマスクの吸収特性および/または位相シフト特性が影響を受ける。これは、特に、2つの材料2および3が荷電粒子1とのきわめて類似した相互作用特性を有する場合に起こり得る。
【0060】
この問題およびこの限界が本出願人により認識され、本発明により、エッチング中に第1の材料2から第2の材料3への材料の移行点をより高い精度で知ることができるように、エッチング作用にコントラストガスを供給することができるという点で最適化される。
【0061】
図2aに、リソグラフィマスクの修復のために使用可能なエッチング作用を示す。
図1aおよび
図1bによる方法に加えて、エッチング作用にコントラストガス8を供給することができる。このコントラストガス8は、ここでは、第2の材料3に優先的に吸着するように選択することができる。粒子ビーム1は、第1の材料2からなる欠陥Dに当たると、主として第1の材料2と相互作用し、供給されたコントラストガス8とはより少ない程度しか相互作用しない。したがって、第1の材料2上のエッチング作用中に検出可能な信号強度6および7は、最初は
図1aに記載されている実施例と類似している可能性がある。
【0062】
図2bに、欠陥Dの完全除去の場合のシナリオを示す。このシナリオでは、第2の材料3が供給されたコントラストガス8に暴露可能であり、コントラストガス8は好ましくは第2の材料3に優先的に吸着するように選択することができるため、粒子ビーム1は第2の材料3に直接当たらず、第2の材料3に吸着したコントラストガスのガス粒子に当たる。コントラストガス8は、後方散乱粒子6および/または二次粒子7の発生に関して第2の材料3とは異なる特性を有することができるか、またはこれ関して少なくとも第2の材料3の特性を変化させることができる。これにより、粒子ビーム1と第1の材料2との相互作用の結果として、または第2の材料に吸着したコントラストガス8の箇所9における相互作用の結果として生じる、後方散乱粒子および/または二次粒子からの信号間のコントラストを高くすることができる。例として、
図2bに、後方散乱粒子6の信号が増大し、二次粒子7の信号が低減することを示す。ただし、これは一例に過ぎない。各場合において、これらの信号のうちの1つのみおよび/または別の自由空間信号を検出することも可能であり、いずれの方向でも信号強度の変動が考えられる。
【0063】
好ましい実施形態では、局所エッチング作用の誘起は、コントラストガスの存在しない状態で行われ得る。
【0064】
上記とは独立して、ルックアップテーブルのキャリブレーションが考えられる。ルックアップテーブルにおいて、エッチ速度、エッチ時間、サイクル数などのパラメータを、粒子ビーム1のパラメータ(たとえばパワー、加速電圧、粒子タイプなど)および/または第1の材料および/または第2の材料3および/または前駆体ガスおよび/またはコントラストガスのパラメータと関連付けることができる。これに基づいて、特定のエッチング作用について、様々なビームまたはエッチパラメータの場合の第1の材料2から第2の材料3へのエッチング作用の移行の時点の予測を可能にすることができる。ここで考えられるのは、コントラストガスが存在する状態とコントラストガスが存在しない状態の両方のルックアップテーブルのキャリブレーションである。
【0065】
実施形態によっては、キャリブレーションは必ずしもすべてのエッチング作用の前に行われなくてもよい。これは、ルックアップテーブルが記憶媒体に記憶され、過去に記録されたデータまたは作業パラメータに基づく場合も同様にあり得るためである。キャリブレーションされたルックアップテーブルおよび/または記憶されたルックアップテーブルに基づいて、たとえば、コントラストガスがある状態またはない状態で時間の経過とともに期待されるエッチングの進行度を予め設定することが可能である。
【0066】
これにはかかわらず、コントラストガス8は、たとえばエッチング進行度がすでに所定の進度まで進んでいるときにのみ供給することができる。所定の進度は、たとえばルックアップテーブルによって確認することができる。エッチングプロセスの経過中(たとえばその終わり近く)のみのコントラストガスの供給は、局所エッチングに対するコントラストガス8のいかなる妨害的影響も最小限にすることができる。これらは、たとえば、コントラストガスがない状態と比較したコントラストガスの存在する状態におけるエッチ速度および/またはエッチ選択性の変化に現れることがあり、この変化は場合によってはエッチングの進行および/またはエッチ品質の低下に関する不正確な予測につながる可能性がある。
【0067】
エッチング作用は、コントラストガスが供給された後でのみ監視されてもよい。その場合、それぞれのセンサ、プログラムなどは、コントラストガスの供給後または供給時にのみ稼働していればよい。
【0068】
コントラストガス8の吸着特性の一例が
図3aおよび
図3bに示されている。コントラストガス8は、ここでは、第2の材料3上の吸着に対して高い親和性を有し、第1の材料2上ではより低い吸着しか示さないように選択することができる。したがって、選定されたコントラストガス8は、エッチング作用中に監視されているたとえば後方散乱粒子および/または二次粒子の信号において、第1の材料2上のエッチング作用の第2の材料3への移行点における信号のコントラストに「人工的な」相対的増大を生じさせることができる。これは、リソグラフィマスク上の修復操作時のより正確なエンドポイント検出を可能にすることができる。図示されていないが、当然ながら、第1の材料2および/または第2の材料3の(上方の)雰囲気中に前駆体ガスが存在することも可能である。この前駆体ガスも、同様に、第1の材料2および/または第2の材料3の表面に吸着可能であり、その場合、吸収特性は変動し得る。これらの場合においても、コントラストガス8は、第2の材料3上の吸着に対して高い親和性を有し、第1の材料2上ではより低い吸着しか示さないように選定することができる。したがって、選択されたコントラストガス8は、前駆体ガス10が存在する場合であっても、コントラストの「人工的」相対増加に寄与することができる。
【0069】
図4aおよび
図4bに、コントラストガス8と追加の前駆体ガス10の吸収特性の一例を示す。
図4aは、第1の材料2がコントラストガス8と前駆体ガス10の両方に暴露される場合を示している。コントラストガス8は、前駆体ガス10よりも第1の材料2に吸着する程度が少ないように、たとえば、第1の材料2に対して前駆体ガス10よりも低い親和性を有するように選択することができる。これは、コントラストガス8による第1の材料2のエッチングプロセスへの影響の程度の低減に寄与することができる。
【0070】
図4bに、第2の材料3が前駆体ガス10とコントラストガス8とに暴露される状況を示す。コントラストガス8は、第2の材料3に第1の材料2よりも高い親和性を有するように選択することができる。したがって、前駆体ガス8は、第1の材料2上よりも第2の材料3上により高程度に吸着することができる。これに代えて、またはこれに加えて、前駆体ガス10は、第2の材料3よりも第1の材料2に対してより高い親和性を有するように選択することができる。最初は第1の材料2の表面に前駆体ガス10のより多くの吸着があり(
図4a)、エッチング作用の第2の材料3への移行点においてコントラストガス8による第2の材料3からの前駆体ガス10の少なくとも部分的な置き換えがある、全体的な状況が生じ得る。
【0071】
上記に代えて、または上記に加えて、コントラストガス8と前駆体ガス10は、コントラストガス8が前駆体ガス10と比較して第2の材料3により多く吸着するように選定することができる。このようにしても、エッチング作用の第2の材料3への移行点において、第2の材料3による前駆体ガス10の少なくとも部分的な置き換えが起こり得る。
【0072】
コントラストガス8に対する前駆体ガス10による第2の材料3の表面の被覆比は、第1の材料2上より小さくなり得る(より高い被覆も考えられ、その場合、エッチングプロセスは、前駆体ガス10による第1の材料2の被覆を高く維持することがより望ましい傾向がある)。エッチング作用中に観察可能な信号5のより高いコントラスト(たとえば、EsB信号および/またはSE信号に関して)が、コントラストガス8自体の結果として、および/または、コントラストガス8の第2の材料3との相互作用の結果として、生じ得る。
【0073】
同様に考えられるのは、前駆体ガス10が第1の材料2上または第2の材料3上に有意に吸着せず、その代わりに、たとえばこの2つの材料の周囲の雰囲気中にのみある場合である。選定されたコントラストガス8が第1の材料2上よりも第2の材料3上でより高い吸収レート(たとえば経時平均)および/またはより長い滞留時間を有していれば十分な場合がある。吸収は、物理吸着および/または化学吸着および/または、吸着を生じさせる他のプロセスなどのプロセスの結果であり得る。
【0074】
より具体的には、第2の材料3の表面上に吸着した選定されたコントラストガス8は、第1の材料2と比較して、EsB信号および/またはSE信号において異なるコントラストを生じさせることができる。これは、第2の材料3の表面に吸着したコントラストガス8による、第2の材料3と比較してより強いかまたはより弱いEsB信号の発生の結果として生じ得る。さらに、第2の材料3と比較してより強いかまたはより弱いSE信号が、第2の材料3の表面に吸着したコントラストガス8によって発生し得る。最後に、上記に代わり、または上記に加えて、第2の材料3の表面に吸着したコントラストガス8が、第2の材料3から発せられるEsB信号および/またはSE信号を減衰させ得る。
【0075】
コントラストガス自体は有意に吸着されず、平均して前駆体ガスによる第1または第2の材料の占有の変化を生じさせることも同様に考えられる。
【0076】
図5Aおよび
図5Bに、コントラストガス8が存在しない状態(
図5A)とコントラストガス8が存在する状態(
図5B)における、第1の材料2上の局所エッチング作用がすでに第1の材料2の下の第2の材料3上のエッチング作用に移行しているか否かの判定の考えられる作用を示す。
【0077】
図5Aは、後方散乱粒子および/または二次粒子またはエッチング作用によって発生した他の自由空間信号からなる考えられる検出可能信号を、エッチング作用回数(たとえば時間)に対してプロットした図を示す。ここで参照番号2は、第1の材料2から第2の材料3へのエッチング作用の移行点12の前に、検出可能信号が第1の材料2上の局所エッチング作用に関連付けられていることを示している。
図5Aからわかるように、この移行点は信号の変化11に関連付けることができる。この実施例では、信号の変化11は信号の低下を含む。しかし、これは一例に過ぎず、移行点12における信号の上昇もあり得ることに留意されたい。移行点12は、ここでは、信号の変化11が所定の臨界閾値を超えるとき、すなわち、Δ信号>閾値のときと想定することができる。
図5Aにおいて、閾値は、検出信号中のノイズより小さいかまたは同等である。したがって、コントラストが低い。これは、特に、期待値に対する信号の変化が期待ノイズレベルと比較して相対的に低いかまたは同等であるとみなされる場合に起こり得る。
【0078】
図5Bは、
図5Aと同じ構成であるが、局所エッチング作用にコントラストガス8が供給される場合の検出可能信号に対する影響を例として示している点が異なる。このコントラストガス8は、本事例では、移行点12においてたとえば
図5Aに示すよりも検出可能信号のより際だった信号変化11(この例では信号の低下)をもたらす。これは、移行点12のより正確な判定、したがって局所エッチング作用のより厳密なエンドポイント検出を可能にする。コントラストガス8の存在は、移行点8における検出可能信号の増大にもつながり得ることに留意されたい。
【国際調査報告】