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特表2024-501851積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造
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  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図1
  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図2A
  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図2B
  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図2C
  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図3A
  • 特表-積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】積層造形によって作製された静電チャック、ならびに関連する方法および構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240109BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L21/68 R
B28B1/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540034
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 US2021064966
(87)【国際公開番号】W WO2022146845
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,634
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカトラマン, チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シリニャーノ, スコット
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グダティ, スバシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペルマル, ティネス クマール
(72)【発明者】
【氏名】リービー, モントレー
(72)【発明者】
【氏名】リプチンスキー, ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルドフリード, カルロ
【テーマコード(参考)】
4G052
5F131
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA02
5F131CA17
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
(57)【要約】
ワークピースを処理する工程中にワークピースを支持するのに有用な静電チャック、および積層造形技術によって作製された静電チャックのベース構成部品が記載される。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機複合材から成る上側チャックベース面と、
前記無機複合材から成る下側チャックベース面と、
前記無機複合材から成る、前記上側チャックベース面と前記下側チャックベース面との間の内部分と、
前記内部分内で前記無機複合材によって形成された流路とを含み、前記上側チャックベース面、前記下側チャックベース面、および前記内部分が、前記上側チャックベース面から前記下側チャックベース面まで延在する前記無機複合材の連続的な層を含む、チャックベース。
【請求項2】
前記無機複合材の前記連続的な層がシームレスであり、前記無機複合材の組成が均一である、請求項1に記載のチャックベース。
【請求項3】
前記流路が、円形、三角形、ドーム形状、六角形、または涙滴形状から選択される断面を有する、請求項2に記載のチャックベース。
【請求項4】
前記上側チャックベース面および前記下側チャックベース面の少なくとも一方が、50ミクロン未満の表面粗さを有する、請求項1または2に記載のチャックベース。
【請求項5】
前記チャックベースの前記上側チャックベース面、前記下側チャックベース面、または前記チャックベースの前記内部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも99.6%の密度を有する、請求項1、2、または4に記載のチャックベース。
【請求項6】
前記流路が相互連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のチャックベース。
【請求項7】
前記無機材料が、5×10-6m/(mK)~10×10-6m/(mK)の範囲の熱膨張係数を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のチャックベース。
【請求項8】
前記無機材料が、アルミニウム合金である、請求項1~7のいずれか一項に記載のチャックベース。
【請求項9】
前記アルミニウム合金がAlSiMgである、請求項1~8のいずれか一項に記載のチャックベース。
【請求項10】
前記無機材料がチタン合金である、請求項1~7のいずれかに記載のチャックベース。
【請求項11】
前記チタン合金がTiAlVである、請求項1~7または10のいずれかに記載のチャックベース。
【請求項12】
内部分の無機材料が、99.6%未満の見かけ密度を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のチャックベース。
【請求項13】
積層造形によってチャックベースを形成する方法であって、
連続的な底面を含む前記チャックベースの下側部分を、積層造形によって形成することと、
前記チャックベースの前記下側部分の上に冷却流路を含む前記チャックベースの中間部分を、積層造形によって形成することと、
前記チャックベースの前記中間部分の上に、連続的な上面を含む前記チャックベースの上側部分を、積層造形によって形成することと
を含む方法。
【請求項14】
それぞれの第1の細層が第1の細層厚を有する複数の第1の細層を形成することを含む、前記チャックベースの前記下側部分を、積層造形によって形成することと、
それぞれの粗層が前記細層厚よりも大きい粗層厚を有する複数の粗層を形成することを含む、前記チャックベースの前記中間部分を、積層造形によって形成することと、
それぞれの第2の細層が第2の細層厚を有する複数の第2の細層を形成することを含む、前記チャックベースの前記上側部分を、積層造形によって形成することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の細層厚および前記第2の細層厚のそれぞれが40ミクロン未満であり、
前記粗層厚が60ミクロンより大きい、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
チャックベース面の少なくとも一方は、50ミクロン未満の表面粗さを有し、
前記チャックベースの前記上側部分、前記チャックベースの前記下側部分のうち少なくともいずれかが、少なくとも99.6%の見かけ密度を有するか、またはその両方ともである
請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記チャックベースの前記中間部分の前記無機材料が、99.6%未満の見かけ密度を有する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記チャックベースの前記下側部分、前記チャックベースの前記中間部分、および前記チャックベースの前記上側部分が、同じ複合材を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記チャックベースの前記下側部分、前記チャックベースの前記中間部分、および前記チャックベースの前記上側部分が、継ぎ目なく連結される、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記チャックベースの前記下側部分、前記チャックベースの前記中間部分、および前記チャックベースの前記上側部分が、複合材を使用した1つの連続的な積層造形プロセスで形成される、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークピースを処理する工程中にワークピースを支持するのに有用な静電チャックのベース構成部品の分野にあり、ベース構成部品(「ベース」)は、積層造形工程によって作製される。
【背景技術】
【0002】
静電チャック(略して単に「チャック」とも呼ばれる)は、半導体およびマイクロエレクトロニクスデバイスの処理に使用される。チャックは、ワークピースの表面での処理を実行するため、半導体ウエハまたはマイクロエレクトロニクスデバイス基板などのワークピースを定位置に保持する。特に、静電チャックは、ワークピースとチャックとの間に静電引力を発生させることによって、ワークピースをチャックの上面で支持し、固定する。電圧が、チャック内に含まれる電極に印加されて、ワークピースおよびチャックに反対の極性の電荷が誘起される。
【0003】
チャックは、チャックが実行することを可能にする、または性能を改善する様々な構造、装置、および設計を含む。典型的な静電チャックアセンブリは、ワークピースを支持する平坦な上面と、チャックおよび支持されたワークピースの静電気電荷を制御するための電極、導電性コーティング、および接地接続などの電気部品と、チャックおよび支持されたワークピースの温度を制御するための温度制御システム(例えば、冷却システム)と、チャックに対するワークピースの位置を支持または変更するために使用される測定プローブおよび可動ピンを含むことができる様々な他の構成部品と、チャックからツールインターフェースまで延在する温度制御媒体接続部および電気接続部とを含む複数構成部品構造である。
【0004】
静電チャックの典型的な特徴は、温度制御システム(例えば、冷却システム)を含むベースである。温度制御システムは、流体(例えば、気体、水、または別の液体)がチャックの内部を通って流れることでチャックから熱を除去し、処理工程中または処理工程後に支持されたワークピースの温度を制御することを可能にする、チャックの内部に形成された流路または通路のパターンを含む。例えば、ワークピースは、半導体処理工程中チャックによって支持されている間に温度の上昇を受ける可能性がある。チャックの冷却システムを通過する冷却流体は、ワークピースから熱を除去し、ワークピースの温度を制御するのに有用であり得る。
【0005】
静電チャックアセンブリのベースは、寸法、平坦度、表面粗さ、複雑な温度制御流路、および開口部などの高精度な特徴を有する構造を形成するように処理することができる高強度の密な材料から構成されなければならない。静電チャックのベースを製造するために使用される現在の材料には、機械加工技術によって高精度のベース構造に形成することができるアルミニウムおよび他の金属またはセラミックが含まれる。アルミナ以外、これらの材料は、高硬度特性を示すことがあり、高精度の機械加工技術を使用して製造することが困難かつ高価となる。
【0006】
既存の方法によって、内部の(囲まれた)冷却流路を含むベースを形成するために、2つの対向する部品が別々の部分(例えば、半分)で機械加工によって形成され、この2つの別々に形成された部品は、典型的には真空ろう付け工程または電子ビーム溶接工程によって互いに接合される。
【0007】
真空ろう付けは、航空宇宙産業で使用される特殊なプロセスであり、高価であり、かつ容易に利用できない可能性がある。真空ろう付けは、炉を使用して2つの表面の間に置かれた「充填材料」を溶融することによって2つの対向する表面の間に接合を形成し、次いで溶融した充填材料を固化させて接合または真空ろう付け接合部を形成することを含む。充填材料は、接合される2つの部品の溶融温度よりも低い温度で溶融する材料でよい。「充填」材料によって形成される接合部は、通常、真空ろう付け構造に見出せる。全体として、各々が複雑な機械加工工程による2つの別々の部品の形成と、それに続く真空ろう付け工程との組み合わせにより、高い材料コストおよび加工コストならびに潜在的に非常に長い製造リードタイムがもたらされる。
【0008】
代替的なプロセスは、形成済み管を冷却流路用のプレースホルダとして使用し、続いてその管の上に材料を鋳造してベースを形成する。
【0009】
静電チャックベースを製造する際の困難のため、静電チャックの材料および製造プロセスのさらなる改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本開示は、無機複合材を備えるチャック(例えば静電チャック)ベースに関し、ベースは、無機複合材から成る上側ベース面と、無機複合材から成る下側ベース面と、無機複合材から成る、上側ベース面と下側ベース面との間の内部分と、内部分内で無機複合材によって囲まれた流路(例えば、冷却流路)とを備え、上側ベース面、下側ベース面、および内部分が上側ベース面から下側ベース面まで延在する無機複合材の連続的な層を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、積層造形によってチャック(例えば、静電チャック)ベースを形成する方法に関する。連続的な底面を含むベースの下側部分を、積層造形によって形成することと、下側部分の上に流路(例えば、冷却流路)を含む中間部分を、積層造形によって形成することと、中間部分の上に、連続的な上面を含むベースの上側部分を、積層造形によって形成することとを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】記載の静電チャックアセンブリの側面図である。
図2A】記載のベースの上面図である。
図2B】記載のベースの側面切取図を示す。
図2C】記載のベースの側面切取図を示す。
図3A】記載の例示的な方法のステップを示す。
図3B】記載の例示的な方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は概略的で例示的なものであり、必ずしも一定の縮尺ではない。
【0014】
以下の説明は、積層造形法によって、静電チャックアセンブリの構成部品として有用なベース構造などの密な実質的に非多孔質の三次元構造を作製する方法に関する。これらには、一般に「3D印刷」技術と呼ばれる方法が含まれる。
【0015】
チャック(例えば、静電チャック)は、とりわけ放熱、後部ガス流、電気接続を含むチャックアセンブリの様々な機能をサポートするベース構成部品を含む。高度な用途では、ベースはまた、好ましくは、チャックアセンブリの熱性能および平坦度を高めるために、アセンブリの別の構成部品、セラミック層の熱膨張係数の範囲内の熱膨張係数を示すように作製されてもよい。静電チャックのベース構成部品を作製する従来の方法には、ベースの材料タイプに応じて、ベースのいくつかまたはすべての物理的要件を容易には満たさない機械加工技術が含まれる。セラミック材料の場合、機械加工は非常に困難であり、埋め込み(内部)流路(例えば、冷却流路)を形成することは非常に困難である。
【0016】
積層造形法は、一般に、供給原料の層から取り出された固化した供給原料複合材の複数の層を連続的に形成する一連の個々の層形成工程を含む。各工程が構造のうちの単一層を形成する、一連の積層造形工程を使用して、固化した供給原料の複数の層が、本明細書で多層複合材(または「複合材」)と呼ばれる構造に連続的に形成される。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「複合材」(または「多層複合材」)という用語は、固化した供給原料の一連の複数の個別の、個々に形成された層を連続的に形成することによって、積層造形によって形成された構造を指す。複合材は、静電チャックのベース(「ベース」)の形態をとってもよいし、ベースの1つまたは複数の部分、例えばベースの下側部分および内部分であってもよい。上部分(上面を有する)、底部分(底面を有する)、および内部分(例えば、冷却流路を含む)のそれぞれを含み、3つの部分のすべてが、積層造形法の層形成工程によってのみで(例えば、2つの別個に製造された部品を共に接合するために真空ろう付け工程または任意の他のタイプの接合工程を使用せずに)共に形成され保持される、ベース構造である複合材は、本明細書では「連続的な」ベースまたはベースの「連続的な層」と呼ばれることがある。
【0018】
この文脈における「連続的な」という用語は、ベースまたは層構造が複数の連続的に形成された層から単一部品の複合材構造として形成されることを意味する。複合材構造の形成は、連続的なまたは停止しない処理でよい。「連続的な」という用語は、2つの個別の部品を別々に形成し、次いで、例えば真空ろう付け技術または異なるタイプの接合技術によって、2つの別々に形成された部品を互いに接合することによって作製される構造を指すものではない。連続的なベース構造は、シームレスであり、および/またはベース構造全体にわたって組成が均一な材料を含む。連続的なベースは、接合工程から生じる継ぎ目または境界、特にベースの材料とは異なる組成を有する接合材料または充填材料から構成された継ぎ目または境界を含まない。連続的なベース構造は、複数の分離した部品を、その別々の部品が同じ材料を含んでいるにしても、接合または充填材料の有無にかかわらず、接合することによって形成されたベース構造を含まない。
【0019】
積層造形技術の1つの具体例は、一般に「選択的レーザ溶融」と呼ばれる技術である。選択的レーザ溶融(SLM)は、直接金属レーザ溶融(DMLM)またはレーザ粉末床溶融結合(LPBF)としても知られており、高出力密度レーザを使用して供給原料材料の固体粒子を溶融する三次元印刷方法であり、これにより、粒子の溶融した(液体)材料を流動させて溶融材料の連続的な層を形成することが可能となり、次いで連続的な層を冷却および固化させて固化した供給原料を形成することができる。ある特定の例示的な方法によれば、供給原料の粒子を完全に溶融して液体を形成する(すなわち、液化する)ことができ、この液体材料を流動させて実質的に連続的な実質的に非多孔質の(例えば、80、85、または90%を超える多孔度)膜を形成し、次いでこれを冷却し、多層複合材の固化した供給原料層として硬化させることができる。
【0020】
選択的レーザ溶融法は、選択的レーザ焼結(「SLS」)として知られる別の積層造形技術と同様の特徴を含む。選択的レーザ焼結は、レーザエネルギーを使用して、供給原料材料の粒子が焼結されるようにする、すなわち、粒子が溶融することなく融合されるようにする。これにより、加熱された粒子の材料によって形成される構造は、粒子間に空間を有することになり、構造が多孔質ということになる。対照的に、選択的レーザ溶融を使用すると、粒子は完全に溶融されて密な(実質的に非多孔質の)三次元構造が形成され得る。
【0021】
本明細書は、積層造形技術、例えば選択的レーザ溶融を使用して静電チャックのベースを形成することに関する。積層造形技術は、これらのベース構造を形成するのに、特に複雑で困難な機械加工技術、およびベースの複数(例えば、2個)の個々の部品を別々に形成し、次いで複数の部品を互いに接合して、真空ろう付け工程などによって完成したベース構造を形成する工程を含む以前の方法と比較して、費用対効果の高い技術となり得る。
【0022】
積層造形技術は、金属材料(合金を含む)および金属基複合材料を含む広範囲の材料から作られたベース構造を形成するのに有用であり得る。選択的レーザ溶融技術を含む積層造形技術を使用することで、ベースを形成するために使用することができる可能性のある金属、合金、および金属基複合材の範囲には、機械加工技術などの先行の技術によって有用なベース構造に容易に形成されない材料が有利なことに含まれ得る。積層造形技術で利用可能な材料の範囲には、アルミニウム合金、チタン合金、および様々な金属基複合材料など、レーザエネルギーによって溶融することができる金属および金属合金が含まれ、それらの一部は機械加工によって容易に処理されない。例示的な材料が、正確な寸法および複雑な流路(例えば、冷却流路)を含む静電チャックのベースの正確な構造を形成するために機械加工技術によって加工することが困難となる場合があるような高い硬度を示すことがある。積層造形技術を使用することで、こうした材料を処理して、複雑に囲まれた(「埋め込まれた」、「組み込まれた」、または画定された)流路を含むベース構造を、標準的な機械加工技術を使用することによって同様に形成することが困難な材料からであっても形成することができる。
【0023】
ベースを作製するために使用される材料は、静電チャックアセンブリのベースを作製するのに有用な任意の材料、例えば、様々な金属(合金を含む)および金属基複合材を含む無機材料であってもよい。「金属」という用語は、本明細書では、金属技術、化学技術、および積層造形技術で「金属」という用語の意味と合致し、任意の金属もしくは半金属の化学元素またはこれらの元素の2つ以上の合金を指すように使用される。
【0024】
「金属基複合材」(「MMC」)という用語は、少なくとも2つの成分または2つの相を含むように作製された複合材料を指し、一方の相は、金属または金属合金であり、別の相は、金属基中に分散した、異なる金属または別の非金属材料、例えば繊維、粒子、またはウィスカである。非金属材料は、炭素ベース、無機、セラミックなどであってもよい。いくつかの例示的な金属基複合材料は、アルミナ粒子を有するアルミニウム合金、炭素を有するアルミニウム合金、ケイ素を有するアルミニウム合金、炭化ケイ素(SiC)を含むアルミニウム合金、TiBを有するチタン合金、ケイ素を有するチタン合金、炭化ケイ素(SiC)を有するチタン合金の組み合わせから構成される。
【0025】
本明細書の方法に従って有用であり得る金属および金属合金には、静電チャックアセンブリ用のベース構造を作製するために従来使用されてきた金属および金属合金、さらには使用されていなかった他の材料が含まれる。有用または好ましい材料には、鉄合金(例えば、ステンレス鋼および他の種類の鋼)、チタンおよびチタン合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、ならびに様々な金属基複合材料などの金属が含まれる。
【0026】
本方法によれば、先行の方法(例えば、機械加工法)からベースを作製するために使用することができるよりも多くの種類の材料からベースを作製することができる。より多くの種類の材料が利用可能であるため、ベースの材料は、静電チャックアセンブリのベースに、また隣接するセラミック層などのアセンブリの他の構成部品に使用される材料を考慮して、特に有用または望ましい物理的特性を実現するように選択することができる。
【0027】
熱膨張係数(「CTE」)は、金属、金属基複合材、およびセラミック材料の既知の物理的特性である。本明細書のベースの層の材料は、一般に、静電チャックのベースアセンブリの構成部品を形成するために以前より使用されてきた様々な金属およびセラミック材料の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有することができる。記載のベースアセンブリのベースまたはセラミック層として有用であり得るいくつかの例示的な材料とそれらのおおよそのCTE値は、以下の通りである。アルミナ(8.1×10-6m/(mK))、アルミニウム(21~24×10-6m/(mK))、アルミニウム合金(AlSiMg)(21~22×10-6m/(mK))、窒化アルミニウム(5.3×10-6m/(mK))、ステンレス鋼440C(10.2×10-6m/(mK))、ステンレス鋼17-4PH(10.8×10-6m/(mK))、鋼M2(ツール)(11×10-6m/(mK))、チタン(8.6×10-6m/(mK))、チタン合金Ti-6Al-4v(TC4)(8.7~9.1×10-6m/(mK))。
【0028】
例示的に、記載のベースを作製するために使用される金属または金属基複合材料の有用なまたは好ましい熱膨張係数は、4×10-6m/(m K)~30×10-6m/(m K)、例えば5×10-6m/(m K)~25×10-6m/(m K)の範囲内でよい。
【0029】
特定の好ましいベース構造および静電チャックアセンブリでは、ベースの材料は、好ましくは、アセンブリの隣接する層の熱膨張係数に一致または同様の熱膨張係数を有するものでよい。多くの場合、静電チャックアセンブリの一部として、ベース層は、ベース層とセラミック層とが同様の温度条件を受け、一方の熱膨張が他方により影響を受ける(例えば、制限される)ように、アセンブリのセラミック層の近くに、隣接して、そうでなければ十分に近くに配置される。そうした場合、アセンブリのベース層とセラミック層との有用な組み合わせを、ほぼ等しい熱膨張係数を有する材料で構成することができる。静電チャックアセンブリの好ましいベースは、同じチャックアセンブリの一部であるセラミック層の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有することができる。ベースの熱膨張係数は、セラミック層の熱膨張係数(m/(m-ケルビン度))の25、20、15、10、または5%以内であってもよい。
【0030】
記載の積層造形技術の層ごとの手法により、静電チャックベースに含まれる場合に非常に効果的な構造である、入り組み、高精度で、複雑な形状を形成することができる。機械加工技術と比較して、記載の積層造形技術は、非常に複雑であり、ベースの表面積の大部分を覆い、ベース構造の全体積に対してベース構造の大きな体積を占有し、様々な断面形状、または専用に設計された(特化された)パターンを有するパターン(例えば、流路)を生成する際より効率的であり得る。これらのパターンは、様々な機能のために設計された形状のボイド、開口部、窪み、空洞、溝、切り欠きでもよい。これらの機能には、加熱、冷却、軽量化、機械的特性の強化、安定性のための支持面の提供、および他の可能な機能が含まれる。一例では、パターンは冷却用の流路であり、冷媒はその流路を通って流れてチャックおよびその上に支持されたワークピースから熱を除去することができる。
【0031】
積層造形技術によって形成された流路は、異なるまたは多様な形状(断面)、パターン(ベースアセンブリの表面に対する)、およびサイズ(例えば、流路の幅または直径)、配置(流路の相対位置)であってもよく、流路を通る流体を滑らかで効率的に流すことを可能とする表面特徴を有してもよい。例えば、機械加工工程は、通常(断面が)正方形の流路を生成するが、積層造形技術は、(断面が)円形の流路を生成するのに有用となり得るため、正方形の断面を有する流路を通ると乱流になるのに比較して、この流路を通ると改善した流れ(層流)にすることができる。別の例として、流路は、非対称断面を示すように形成されてもよく、これにより、ベースの表面を通る熱伝達効率が改善された流路の設計が可能になる。別の例では、積層造形技術は、2つ以上の流路を形成してそれらの間を相互連結させることができる。2つ以上の流路は、様々な断面形状を含む。さらなる例では、2つ以上の流路は、互いに異なる断面形状を有してもよい。
【0032】
記載のように形成された流路のさらに別のオプションの特徴は、ベースおよびベースアセンブリの表面領域(通常は円形)に関する流路のパターンであってよく、このパターンは、ベースアセンブリが支持することができる特定のワークピースおよび特定のワークピースの不均一な特徴に対して熱伝達の効率を改善するように設計されている。この特徴は、「共形冷却」と呼ばれることもあり、使用中に静電チャックアセンブリによって支持されるワークピース(例えば、半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイスまたはウエハ)の特定の熱除去要件に適合するように、専用の設計でベース内の流路のパターンをベース内に設計および形成することを可能にする。さらに、積層造形技術により、2つの別々のベース部品を形成し、真空ろう付け工程を使用してその2つの部品を接合する先行の方法と比較して、より少ない総工程の製造方法を含む、ベースを形成するためのより複雑でない製造方法が可能となる。積層造形によって、静電チャックの完全に(または実質的に完全に)機能可能なベース層を、単一の製造プロセス(単一の積層造形「工程」)を使用して作製することができ、これにより、単位当たりの時間量が削減された高製造効率(高製造スループット)がもたらされる。実質的にすべての必要な構造(底部分、内部分、および上部分を含む)を備えた完全なベース層を、単一の一連の積層造形工程によって作製することができる。例えば、ベース構造を形成するための「1工程」積層造形プロセスと呼ぶことができるものは、記載の多層複合材として、単一の連続的な層としてベース(底部分、内部分、および上部分を含む)の多くの、ほとんどの、またはすべての必要な構造を形成することができる。1工程積層造形プロセスは、複数の別々の部品を別々の工程によって個別に形成し、続いてその複数の別々に形成された部品を互いに接合して機能可能なベース構造を形成するさらに追加の工程を行う必要性を回避する。
【0033】
さらに、積層造形技術を使用して、高精度の寸法を有するベースを形成することができる。例えば、ベースの寸法精度は+/-0.13mm以内、ベースの場所(または位置)精度は+/-0.13mm以内、垂直度は+/-0.01mm以内、平坦度は+/-0.04mm以内、平行度は0.05mm未満、角度精度は+/-0.5°以内、および/または囲まれた特徴(例えば、流路)の漏れ率は10-10mbarL/s未満である。
【0034】
例示的な方法によれば、ベースは、高レベルの平坦度、例えば「超平坦な」表面を示すように作製することができ、平坦度はアセンブリの金属基複合材層の上面で測定されるため、ベースの高レベルの平坦度が、静電チャックアセンブリの平坦度を改善することができる。平坦度は、静電チャック、またはチャックのベース構成部品の典型的な特性であり、3次元測定機を使用するなどで既知の技術によって測定することができる。一般に、平坦度は、測定された表面の山(最高測定点)と谷(最低測定点)との間の(z方向の)高さの差として測定および報告され、距離の単位、例えばミクロンで与えられる。機械加工工程のみによって作製された直径300ミリメートルのベースは、30ミクロン程度の低い平坦度を示すように形成することができる。本明細書に記載の同等のベース(直径300ミリメートル)の表面では、積層造形工程によってベースを形成し、次いで機械加工工程によってベース表面をさらに加工することによって、機械加工によってのみ形成されたベースに対してベースの平坦度を改善することができる。積層造形後のベース表面の平坦度は、45または50ミクロン未満であり得、例えば、40ミクロン程度の低さであり得る。表面は、さらに低い平坦度、例えば30ミクロン未満、例えば20ミクロン未満、または約15ミクロン程度の低い平坦度を実現するために、ラッピングまたは研磨などの機械加工工程によってさらに処理されてもよい。
【0035】
静電チャックアセンブリの特定の高度な用途(例えば、Cryo、低角度注入)では、有用なチャックアセンブリは、アセンブリの上面(例えば、セラミック層の上部で測定して超高平坦度を示すべきである。チャックアセンブリの特定の用途のための好ましい平坦度値が、300ミリメートルのチャックの場合、上部セラミック表面で測定して10ミクロン未満の場合がある。広範囲の動作温度にわたってこの超高平坦度特性を維持することも重要である。ある温度範囲にわたるチャックアセンブリの平坦度レベルは、チャックアセンブリの異なる層(セラミック層とベース層)の熱膨張係数値をぴったりマッチングすることにより、また、熱を取り出すためのアセンブリからの放熱(ベースを通した流体流による熱除去)の改善により、さらにまた、層間の接合部におけるこれらの層の表面の平坦度の改善により、向上させることができる。チタン、チタン合金、および金属基複合材などのチャックアセンブリのベースを形成するために使用される材料により、CTEマッチングの改善、およびこれらの材料よりも剛性が低いアルミニウムなどのチャックベースを形成するために一般的に使用されている以前の材料と比較して平坦度の改善がもたらされ得る。
【0036】
さらに、本開示の例示的な方法を使用して、比較的低粗度を示すベースを作製することができる。粗さは、静電チャックのベースの典型的な特性であり、例えば、3Dレーザ顕微鏡または触針式表面形状測定器を使用することによって、表面の粗さ曲線の算術平均(「Ra」と示される)によって表されるものを含み、既知の分析技術によって粗さを測定することができる。Raは、表面の測定された微細な山と谷の粗さ平均として計算される。記載の積層造形法によって作製され、それに続く機械加工工程によって積層造形法により作製された表面の粗さが低減されたベースの例示的な表面は、1ミクロン未満、例えば0.5ミクロン未満、または約0.1ミクロン程度の低い表面粗さ(Ra)を有することができる。粗さ(Ra)は、ISO4287-1:1984またはASTM F 1048などの様々な標準法のうちの1つによって測定することができる。ベースを形成する精度が改善されたことにより、ベースに取り付けられたセラミック層を含むチャックアセンブリを形成する精度がより高く改善されることが、セラミック層の上部で測定される平坦度が改善されることを含め可能となる。300ミリメートルの直径を有する機械加工法によって作製された典型的なベースをセラミック層と組み合わせて、上側セラミック表面で測定して30ミクロン程度の低い平坦度を示すアセンブリを形成することができる。例示的な実施形態では、本明細書のベース層を同等のセラミック層と組み合わせて、上側セラミック表面で測定して30ミクロン未満の平坦度、例えば25ミクロン未満、例えば20ミクロン未満、または約15または10ミクロン程度の低い平坦度を示す300ミリメートルの直径を有するアセンブリを形成することができる。ベースアセンブリの金属基複合材層のこの低いレベルの平坦度を達成するために、ベース層を積層造形によって形成することができ、ベースアセンブリの表面(金属基複合材層に接触する)を機械加工して、積層造形工程によって生成された表面の平坦度を改善することができる。
【0037】
積層造形プロセスの後に追加のプロセスを利用することができる。例えば、粉末除去プロセスを実行して、副生成物として積層造形プロセス中に発生した遊離粉末を除去することができる。粉末除去プロセスは、超音波振動支援真空システムによってチャックまたは流路の表面から遊離粉末を除去し、続いて流路入口から圧縮空気を吹きつけて遊離粉末を運び出す。別の例で、追加のプロセスに、積層造形プロセス中に引き起こされた油またはグリースなどのチャック上の汚染を除去するための洗浄プロセスが含まれてもよい。さらなる例では、熱プロセスを使用して、積層造形プロセス中に誘発される熱応力を軽減することができる。
【0038】
本明細書の方法は、積層造形技術を使用して、複合材の複数の層を連続的に形成することによってベース構造(例えば、連続的なベース層、またはベース層の一部)を形成する。複合材は、それぞれ個別に任意の有用な厚さを有することができる複数の層から、また溶融して流動しベース構造の実質的に非多孔質の材料として有用な密度の高い無機(例えば、金属または金属基複合材)の固体を形成することができる1つ以上の材料から、形成される。
【0039】
一般に、ベースは、ある厚さの2つの対向する平坦で円形な表面を含む平坦な円盤などの、平坦で薄い典型的には円形の構造(上および底方向から見て)の形態を有すると考えてよい。2つの対向する表面は、ベース層の上部および底部として機能する。ベースの内部分は、2つの対向する表面の間に存在する。内部分は、曲がりくねり、曲折し、ねじれ、回り道の、または蛇行する経路で内部分を通って延びる囲まれた流路(例えば、冷却流路)のシステムを含むことができる。
【0040】
流路は、ベースの動作中にベースの温度を制御するために使用することができる流体の流れ(例えば、水または別の液体または気体の流体)を収容することができる。他の構造もまた、例えば、厚さの間およびベースの2つの対向する表面の間に(上部から底部に、および厚さ全体にわたって)延在する垂直口部(「開口部」)、または上面および底面の一方または両方での流路または溝等がベースの表面中に形成されてもよい。
【0041】
チャックアセンブリの機能可能なベース層は、少なくとも3つの異なる部分、すなわち底面を含む下側部分と、底面の反対側の上面を含む上側部分と、上側部分と下側部分との間に配置され、流路(例えば、冷却流路)を含むことができる中間(「内部」)部分とを含むと考えることができる。好ましくは、記載の好ましい方法によれば、3つすべての部分およびそのすべての層は、積層造形法によって製造することができ、それにより単一の(好ましくは連続する)一連の層形成工程が使用され、オプションで、好ましくは、すべての層形成工程が単一の積層造形装置で実行されて、機能可能なベース層のすべての層を、接合工程(例えば、真空ろう付け)によって形成されることがある継ぎ目または境界などどんな継ぎ目または内部境界も含まない無機材料の連続的な継ぎ目のない層として形成する。「連続する」とは、一連の積層造形工程における各層形成工程が、任意の2つの層形成工程の間にいずれの異なる種類の工程(例えば、いずれの種類の非層形成工程)を行うことなく、また、充填材料、ろう材、接着材等を用いてベース層の2つの部品を互いに接合する接合工程(積層造形工程とは異なる)を行うことなく、順次実施されることを意味する。
【0042】
本明細書に記載の方法の一例のような方法は、積層造形によって、底面を含むベースの下側部分を形成することと、積層造形によって、下側部分の上に冷却流路を含むベースの中間部分を形成することと、積層造形によって、中間部分の上に、上面を含むベースの上側部分を形成することとを含むことができる。
【0043】
複合材の各層は、所望の材料から所望の厚さで所望されるように形成されて、所望の特性を有する多層複合材の形態でベース層を製造することができる。例示的な積層造形法により、各層は、一般に粉末の形態である粒子の集合体(「供給原料」と呼ばれる)から作製される。供給原料は、高エネルギーレーザによって溶融されて液化および流動して溶融材料の連続的な層を形成し、次いで冷却して固化して多層複合材の層を形成することができる、1つまたは様々な異なる無機材料で構成された小さな粒子を含む。
【0044】
本明細書に従った有用な粒子は、記載される有用な多層複合材を形成するように処理することができる任意の粒子でよい。粒子は、高エネルギーレーザからのエネルギーを使用して溶融されることで多層複合材の層を形成することができる無機粒子を含むか、それからなるか、または基本的にそれらからなる粉末の形態の供給原料に含まれてもよい。
【0045】
有用な粒子の例には、記載されるようにレーザエネルギーによって溶融または液化されて、ベース構造の層を形成することができる無機粒子が含まれる。そのような粒子の例には、金属(合金を含む)および金属基複合材から成る無機粒子が含まれる。いくつかの有用な例には、一般に、アルミニウム、チタン、およびそれらの合金などの金属および金属合金、ならびに金属基複合材が含まれる。有用なアルミニウム合金の1つの具体例は、AlSiMgである。有用なチタン合金の1つの具体例は、TiAlVである。
【0046】
供給原料の有用な粒子は、ミクロンの程度(例えば、500ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン未満、または5ミクロン未満の平均サイズ)の小さいまたは比較的小さい粒子を含む、有効な任意のサイズ(例えば、平均粒径)またはサイズの範囲でよい。
【0047】
粒子は、記載の処理の有効性を達成するように選択することができ、供給原料に含まれ、供給原料層中に形成され、溶融されて流動して連続的な層を形成することができ、連続的な層が冷却して固化した供給原料を多層複合材の層として形成することができる。粒子のサイズ、形状、および化学的構成は、これらの目的に有効な任意のものでよい。
【0048】
粒子は、本明細書の積層造形プロセスで使用することができる供給原料複合材の形態でよい。例によれば、積層造形プロセスに有用な供給原料は、溶融して多層複合材の連続的な実質的に非多孔質の層を形成することができる粒子を含むことができる。供給原料材料は、他の材料を含む必要はないが、必要に応じて任意に少量の他の材料を含んでもよい。例示的な供給原料複合材は、供給原料複合材の総重量に基づいて、重量で少なくとも80、90、または95、98、または99%の無機粒子を含有してもよい。必要に応じて、流動助剤、界面活性剤、潤滑剤、レベリング剤などのうちの1つまたは複数の他の成分が少量で存在してもよい。
【0049】
多層複合材の各層は、任意の有用な厚さを有するように形成されてもよい。多層複合材の層の厚さは、供給原料層の粒子を溶融して連続的に溶融され次いで固化された複合材の層を形成することによって層が形成された後に、複合材の層について測定される。複合材の層の例示的な厚さは、30ミクロン~100ミクロン,200ミクロン、またはそれ以上、例えば30~50、60、70、80ミクロン~90,100,150,200,300,400、または500ミクロンまでの範囲であってもよい。例示的な複合材構造では、複合材のすべての層が同じ厚さまたは実質的に同じ厚さを有してもよい。他の例示的な複合材構造では、層がすべて同じ厚さを有するのではなく、複合材の異なる層がそれぞれ異なる厚さを有してもよい。
【0050】
本明細書の特定の例示的な方法およびベース構造によれば、ベースは、ベースの異なる部分で異なる厚さを有するように複合材の層を形成することにより、積層造形工程によって作製されてもよい。これらの方法および構造の例は、例えばベースの上部分および底部分において、より薄い厚さを有する1つまたは複数の層(「細層」と呼ばれる)、を形成することと、例えば上部分と底部分との間のベースの内側部分(または中間部分)において、より厚い厚さを有する層(「粗層」)を形成することとを含む。あるいは、中間部分が細層を含み、上側部分および底部分が粗層を含んでもよい。
【0051】
多層複合材(例えば、ベース層の形態で)の一部としての1つ以上の細層の位置は、粗層に対して、任意の有用な位置にし得る。複合材の粗層および細層の様々な場所、ならびに細層に対する粗層の様々な形成順序が有効となり得る。しかし、記載のベース構造および関連する方法の特定の実施形態によれば、1つまたは複数の細層が好ましくはベースの1つまたは複数の表面に存在してもよく、粗層が同じベースの内部分に存在してもよい。すなわち、細層と粗層とは交互に形成されていてもよい。細層は、粗層と比較してより望ましい物理的特性を示し得るため(下記参照)、細層は1つまたは複数の表面に配置されることが望ましい場合がある。高い品質がそれほど重要ではないベースの内部分の層は、製造効率を高めるために粗層で作製されてもよい(以下を参照)。
【0052】
異なる厚さを有するベースの層を形成することにより、処理効率に関して、またベース(またはベースの一部)の物理的特性に関しても利点が生み出され得る。1つまたは複数の厚い厚さの「粗」層を形成することにより、ベースの生産速度および効率を高める有益な効果が得られる。厚い粗層は、薄い(細)層と比較して品質が低下する可能性があるが(以下を参照)、比較的厚い厚さの層を形成することで、ベースの生産速度が増加する(必要な時間が短縮される)。厚い(粗)層の厚さが増加すると、特定の厚さを有するベースを製造するために形成されなければならない層の総数および必要な層形成工程数が削減される。粗層の厚さは、積層造形法によって形成される層の典型的な範囲内の厚さ、例えば、70、80、90、または100ミクロンから500ミクロンまでの範囲の厚さでよい。粗層の厚さが厚いほど、所定の総厚の完成した多層複合材を形成するのに必要な工程数および時間が削減される。
【0053】
積層造形技術によって形成される層の厚さは、層形成工程が同一の供給原料および同一のレーザを使用する場合、層の物理的特性(品質)に影響を及ぼす可能性がある。例えば、より薄い層は、同一の供給原料および同一のレーザを使用して形成されたより厚い層と比較して、より少ない内部の空いた空間、すなわち「細孔」を含むように形成され得る。層中の細孔の存在は、層の見かけ密度によって測定および表現することができる。一般に、同じレーザおよび同じレーザ出力を供給原料層に同じ時間で適用する積層造形プロセスを使用した場合、より厚い(粗い)層の見かけ密度は、より薄い厚さだが同じ供給原料から作製された同様の(例えば、細かい)層の見かけ密度よりも低くなる。
【0054】
見かけ密度は、100%密な非多孔質(多孔度0)の形態で層を形成するように使用された材料の実際の(または理論的な)密度に対する複合材の層の測定された密度を指す。複合材の層は、供給原料の粒子を溶融し、溶融した粒子を流動させ、液化した粒子の材料から連続的な層(例えば、「膜」)を形成することが可能となる工程によって形成されるため、通常連続的な密な材料である。しかし、一般に、形成される連続的な密な材料は、100%密ではなく、層形成プロセス中に除去されない少量の空隙または細孔を含む。細孔は、特にベースが減圧下でのプロセスで使用される場合、流体(例えば、冷却水)が、流路からベースの多孔質材料を通ってベースの外部に漏れてしまう可能性があることによって、ベースの性能低下を引き起こすおそれがある。
【0055】
多くの場合、層または複合材中の細孔は、複合材の表面または内部分において、拡大の有無にかかわらず光学的に視認可能である。あるいは、これらの空隙は、複合材の層または複合材の一部の密度(見かけ密度)の低下として検出することができる。空隙のない(細孔が0%の100%密な無機材料)で形成された層は、層を作製するために使用された細孔のない無機材料の密度に等しい密度を有する。細孔を含む無機材料の塊は、無機材料の密度よりもわずかに低い密度(見かけ密度)を有する。
【0056】
層の密度(層中に分量のある細孔が含まれる場合には、見かけ密度)は、層の質量を層の体積(細孔体積を含む)で割ったものが尺度となり、細孔ゼロの体積を有する層を形成するために使用される材料の実際の(理論的)密度値でそれを割って、実際の密度の百分率として報告される。記載の層または複合材の一部(またはベース層)の見かけ密度値は、通常、比較的高く、例えば、層を形成するために使用される材料の実際の密度の80、90、92、96、98、または99%を超えることがある。
【0057】
無機粒子から複合材の層を形成する場合、高出力レーザからのエネルギーを使用して、供給原料層として形成された無機粒子を溶融する。溶融した粒子は流れて、複合材の層として固化する連続的な層(例えば、「膜」)を形成する。理想的には(理論的には)、レーザエネルギーは、層を作製するために使用される供給原料複合材のすべての粒子を完全に溶融し、液化した粒子材料の流れは、ボイドのない液体層を形成し、その液体層が固化してボイドのない固体を形成する。しかし、実際には、このようにして形成された層は、一般に、欠陥、ボイド、または部分的に溶融されていない粒子を含むことがあり、これらの欠陥の量は、より厚い厚さを有するように形成された層ほど多くなる(同一の供給原料、同一のレーザを使用し、供給原料層の領域にレーザを等しい時間さらした場合に対して)。
【0058】
複合材の粗層を形成する工程は、より高い厚さを有する供給原料層を形成することと、供給原料の粒子を溶融することとを含む。(より多くの粒子を有する)粗層用に、細層(より少ない粒子を有する)の粒子を溶融するために使用することができるのと等しい量のレーザ出力と、供給原料の領域にレーザをさらすのに等しい時間とを使用すると、より厚い供給原料層(より多くの粒子を有する)の粒子数を溶融するために利用可能なレーザ出力の量は、粒子あたりはより少なくなる。(粗供給原料層のため粒子数が多い)供給原料層の粒子あたりの受け取るレーザエネルギーが低いことにより、細層と比較して粗層は欠陥を高いレベルで有する可能性がある。
【0059】
欠陥の量が多いほど、見かけ密度が低くなる可能性がある。粗層の見かけ密度は、通常、同一の供給原料、同一のレーザ、および供給原料層の領域へのレーザの同一の照射時間を使用する場合、細層の見かけ密度よりも低くなる。例示的な方法およびベース構造では、ベースの任意の層の見かけ密度は、好ましくは少なくとも98または99%でよい。より具体的には、ベースの粗層の見かけ密度は、好ましくは少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2または99.4%でよい。ベースの細層の見かけ密度は、好ましくは、同じベースの粗層の見かけ密度より大きくてもよく、少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.6%でもよい。
【0060】
薄い層厚の1つまたは複数の「細」層を形成することは、ベース構造の物理的品質を改善するために有用であり得る。積層造形法によって製造された複合材のより細かな層は、高い密度および層内に形成された細孔などの欠陥の量が比較的少ないなどの有用または好ましい物理的特性を示すことが分かっている。
【0061】
一方、より薄い厚さを有する複数の細層を積層造形プロセス中に形成することは、多層複合材の生産速度を低下させる、すなわち、必要な工程数および時間が増加する。なぜなら、特定の厚さを有する多層複合材を製造するのにより多数の細い(より薄い)層を形成しなければならず、所与の厚さの多層複合材を作るためにより多数の積層造形工程が必要とされることになるためである。
【0062】
細層の厚さは、積層造形法によって形成された層の厚さの典型的な範囲内で、特に、30ミクロン~100ミクロン、例えば30~50、60、70、80、または90ミクロンの範囲の厚さなどの下端でよい。
【0063】
記載の静電チャックは、静電チャックアセンブリを形成するように共に層状に組み立てられた複数の構成部品を含むマルチピース(または「複数構成部品)構造である。アセンブリは、様々な構造および特徴を含むが、それらは、静電チャックアセンブリに特有のものであり、静電引力がチャックの上面(「ワークピース接触面」)でワークピースを定位置に保持して、処理中にチャックがワークピース(例えば、半導体基板、マイクロエレクトロニクスデバイス、半導体ウエハ、それの前駆体)を支持することを可能にする。静電チャックで使用されるワークピースの例としては、半導体ウエハ、フラットスクリーンディスプレイ、太陽電池、レチクル、フォトマスクなどが含まれる。ワークピースは、円形の直径100ミリメートルのウエハ、直径200ミリメートルのウエハ、直径300ミリメートルのウエハ、または直径450ミリメートルのウエハ以上の面積を有することができる。
【0064】
チャックは、処理中にワークピースを支持するように構成された上部「ワークピース接触面」を含む。上面は、通常、ワークピース接触面と多層チャックの両方の周囲を画定する円形縁部を有する円形表面領域を有する。本明細書で使用される場合、「ワークピース接触面」という用語は、使用中にワークピースに接触し、セラミック材料で構成され、典型的には上面に突出部を備え、上面の少なくとも一部を覆うことができる任意の導電性コーティングを備えた上面を有する「主要な場」を含む静電チャックの上部露出面を指す。ワークピースは、セラミック材料の上面上で、突出部の上面と接触して、ワークピース接触面で保持され、静電チャックの使用中に静電チャックに対して保持されるか、または「クランプ」される。例示的な静電チャックアセンブリは、ACおよびDCのクーロン型のチャックおよびジョンセン-ラーベック型のチャックで使用することができる。本実施形態では、上部「ワークピース接触面」は、積層造形法を使用して複合材の細層を堆積させることによって形成される。
【0065】
チャックアセンブリ(または略して「チャック」)はまた、チャックが機能するために必要または任意選択であるいくつかの他の層、デバイス、構造、および特徴を含む。これらは、処理中にワークピースを定位置に保持するためにチャックとワークピースとの間に静電引力を生成する電極層、接地層および関連する電気接続部などの接地デバイス、処理工程中に圧力、温度、または電気的特性を測定するための測定デバイス、温度制御機能の一部としてのガス流導管、ワークピース接触面とワークピースとの間のガス流および圧力制御のための後部ガス流機能、導電性表面コーティングなどを含む。
【0066】
典型的なチャックアセンブリの1つの層は、アセンブリの上側部分にあるセラミック層(別名誘電体層)である。セラミック層は、アセンブリの最上層でもよく、セラミック層の上面に配置された導電性コーティング、突出部など以外のチャックの上面を含んでもよい。上面の導電性コーティングは、チャックアセンブリにも含まれる接地層、接地ピンなどを介して電気接地に接続されてもよい。セラミック層は、とりわけ、アルミナ、窒化アルミニウム、石英、SiO(ガラス)などの有用なセラミック材料で構成することができる。セラミック層は、単一の(一体的な)材料層で構成されてもよいか、あるいは必要に応じて、2つ以上の異なる材料、例えば異なる材料の複数の層で構成されてもよい。セラミック層(セラミック材料の1つまたは複数の層を有する)の総厚は、任意の有効厚さ、例えば1~10ミリメートル、例えば1~5ミリメートルの範囲の厚さでもよい。
【0067】
セラミック層は、とりわけ記載のようにアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、金属基複合材などの金属で構成することができる本明細書に記載されるようなベース層(略して「ベース」)によって、下で支持される。
【0068】
通常、セラミック層とベースとの間には、接合層(例えば、ポリマー接着剤)、電極、接地層、電極および他の層が電気的に機能することを可能にする絶縁層、または追加の回路のうちの1つまたは複数がある。
【0069】
有用なチャックアセンブリの例を図1に示す。チャックアセンブリ10は、ベース12と、セラミック層(アセンブリ)14と、ベース12をセラミック層14に接合する接合層16とを含む。セラミック層14は、電極などの副構成部品を含む。セラミック層14の上面には、突出部18のパターンがある。図示のように、ウエハ20が突出部によって支持される。ウエハ20の下面とセラミック層14の上部との間には空所22が存在する。空所22は、セラミック層14の上面に位置する突出部18によって形成され、この突出部は、セラミック層18の上面の上方のわずかな距離でウエハ20を支持する。使用中、ガス(例えば、冷却ガス)の流れは、ウエハ20とセラミック層14との間の空所22を通過して、ウエハ20の温度を制御する(例えば、下げる)ことができる。ベース12は、具体的に図示されていない冷却流路(例えば、冷却流路)を含む。
【0070】
本明細書のチャックアセンブリは、流路(例えば、冷却流路)を含むベース構成部品を含む。本明細書に記載の方法によれば、ベースおよび内部流路の全体構造は、選択的レーザ溶融技術などの積層造形技術を使用して製作される。流路のシステムは、ベース構造に形成された多層複合材内に分布する連結された流路を形成する空いた空間(例えば、「ボイド」空間)のパターンとして、ベースの積層造形中にベース内に形成することができる。すなわち、流路は、流路の位置で多層複合材料が存在しないことによって画定され、流路の構造を形成または画定するために他の構造は必要ない。流路は、ベース層の内部全体にわたって通じ、積層造形法によるベースの形成中にベース層内に形成される流路の空所以外の構造または表面を必要としない。流路は互いに相互連結することができる。流路は、他の材料を無しに多層複合材の表面によって画定される。具体的には、流路は、複合材から別々に形成され、複合ベース層内に配置された別々の管、パイプ、または導管など、多層複合材の構造以外の追加の構造を含まない。使用中、気体または液体でよい流体は、多層複合材で構成された流路の側壁と接触して流路を通って流れ、流路の内面を形成または画定する他の材料は存在しない。
【0071】
流路(例えば、冷却流路)は、ベースの内部分を通って流体(例えば、水または熱交換用の別の液体)を循環させて、ベースの温度を制御するように機能する。流路は、ベースの内部に形成され、垂直に(例えば、上から、「上面」から)見てベースの領域に対して水平方向に延在する。あるいは、流路は、垂直方向などの水平方向以外の方向に延在してもよい。流路は、流体がベースに入ることを可能にするベース内の少なくとも1つの入口と、流体がベースから出ることを可能にする少なくとも1つの出口とを含む。
【0072】
ベースの一部である流路(例えば、冷却流路)またはその一部は、ベースの内部の任意の有用な位置で、ベースの領域に対して任意の有用なパターンとしてもよい。有利には、記載のベースの流路をベースに形成して、機械加工技術によって形成された流路に対して性能(熱交換、例えば冷却)の改善を実現することができる。積層造形技術によって形成された流路は、より精度よくでき、(機械加工によって形成することができない)代替の断面形状で形成されてもよく、より複雑な(蛇行した)パターンに形成されてもよく、機械加工によって形成された流路に対してより高い密度の流路でベース内に形成されてもよい(流路は、機械加工によって形成された流路と比較して、ベース構造の全体積のより大きな割合を占めることになる)。流路の断面形状の例としては、円形、三角形、六角形、ドーム形状(一端で湾曲、他端で平坦)、涙滴形状の形状が挙げられる。流路の断面形状は、上記の積層造形プロセスによって達成される。
【0073】
図2Aおよび図2Bは、本明細書のベース100の単一の例を示す。ベース100は、周囲110と、上面102と、下面104と、対向する二つの面の間の厚さとを含む。冷却流路106(円形断面を有するように示されている)は、ベースの内部分に蛇行パターンとして存在する。
【0074】
図2Cは、三角形(i)、六角形(ii)、ドーム形状(一端で湾曲し、対向端で平坦)(iii)、および涙滴形状(iv)である断面を含む、様々な冷却流路の断面形状の例を示す。
【0075】
これらまたは他の断面形状では、機械加工技術を使用しては不可能または容易に達成することができない流路(例えば、冷却流路)の他の特徴をベース設計に組み込むこともできる。例えば、流路は、ベースの底面と比較してベースの上面に向かってより大きな体積を有するように形成されてもよい。流路は、流路の大部分が上面に向かうように、または流路が上面により近く底面からより遠くに位置するように成形されてもよい。代替で、または追加で、熱交換ループは、ベースの厚さの単一のレベルではなく、ベースの厚さの種々のレベルに配置されてもよい。熱交換ループのいくつかの部分は、他の部分と比較して異なる厚さのレベル(上面により近くまたは上面からより遠く)に配置されてもよい。代替で、または追加で、流路の断面は、ベース内の位置に基づいて変化してもよい。断面は、より均一な熱伝達を可能にするために、ベース中心に近いベースの部分ではサイズ(断面積)が小さくなるか、または異なる形状になり、縁部では大きくなるか、または異なる形状にしてもよい(またはその逆)。
【0076】
記載のベースは、一連の個々の層形成工程を使用して密度の高い金属または金属基複合材の多層複合材構造を形成する積層造形法によって作製することができる。一例として、選択的レーザ溶融(SLM)と呼ばれる技術は、多層複合材を層ごとに形成するために使用することができる積層造形技術の一タイプである。選択的レーザ溶融は、高出力レーザエネルギーを使用して、供給原料金属基複合材層の金属または金属基複合材粒子を選択的に溶融させ、流動させ、実質的に連続的な固化した供給原料層を形成させる。
【0077】
より具体的には、多層複合材は、より大きな三次元構造(複合材)の多数の薄い断面(本明細書での「層」の「固化した供給原料」)を生成する連続した工程によって作ることができる。供給原料の層が形成され、その層には金属または金属基複合材の多くの粒子が含まれる。レーザエネルギーは、供給原料の層の一部にわたって供給原料層に選択的に印加される。レーザエネルギーは、レーザエネルギーにさらされる供給原料の一部にある粒子を溶融する。溶融された粒子は液化し、溶融された粒子の材料の連続的な層に流入し、次いで冷却して固化した供給原料の層として固化する。固化した供給原料の初期層が形成された後、固化した供給原料を含む完成した層の上面上に供給原料の追加の薄い層が堆積される。このプロセスが繰り返されて、固化した供給原料の複数の層を形成し、各層は前の層の上に形成され、前の層の上面に付着する。各完成した層の上に1つずつ次々に複数の層が堆積されて、固化した供給原料の各層の複合材である多層複合材を形成する。この複数の層は、同じ組成および厚さでよいか、または異なる組成および異なる層厚でもよい。
【0078】
記載の多層複合材を作製するのに有用な選択的レーザ溶融積層造形技術の一例(200)を図3Aに示す。このプロセスは、市販の選択的レーザ溶融積層造形装置および供給原料を形成する粒子を使用して実施することができる。供給原料202は、無機粒子の集合体を含む粉末である。図3Aに示す例示的なステップによれば、選択的レーザ溶融積層造形装置に含まれる粉末供給原料(202)は、装置のビルドプレートの上に均一な層として形成される(204,206)。次のステップ(208)において、電磁放射線源(例えば、高出力レーザ)は、粒子を溶融させる波長およびエネルギーの放射線をこの供給原料の第1の層の一部に選択的に照射する。溶融した粒子は、連続的な膜中に流入し、次いで冷却により固化する。供給原料の層は、細層または粗層であってもよく、任意の有用な厚さを有してもよい。溶融粒子の固化した材料は、照射部分で固化した供給原料を形成する。固化した供給原料に形成されていない供給原料層の部分は、元の液体供給原料として残る。
【0079】
ビルドプレートが下に移動し(210)、粉末供給原料の第2の層(細層または粗層のいずれか)が、第1の供給原料層の上および第1の供給原料層の固化した供給原料の上に第2の均一な層として形成される(212)。次いで、電磁放射線源が、第2の層の一部を選択的に照射し(214)、この部分の粒子を溶融させる。次いで、溶融した部分が冷却して、第2の層の一部に固化した供給原料を形成する。固化した供給原料に形成されていない第2層の部分は、元の粉末供給原料として残る。ステップ212,214および216が繰り返されて(218)、元の液体供給原料(202)に囲まれた完成した多層の固化した供給原料複合材が形成される。
【0080】
多層の固化した供給原料複合材は、それぞれ形成された層の固化した供給原料を含む本体であり、供給原料の溶融粒子の材料から作られた複数の連続的な層から構成される。元の供給原料(202)を除去し、多層複合材から分離することができる(218)。
【0081】
図3Bを参照すると、市販の選択的レーザ溶融積層造形装置(230)を使用し、本明細書による粉末供給原料(232)を使用して、例示的なプロセスを実行することができる。本方法の例示的なステップによれば、供給原料(232)は、装置(230)のビルドプレート(238)の上に均一な供給原料層(234)として形成される。レーザ(236)が、電磁放射線(233)を第1の層(234)の一部に照射し、これにより、供給原料の粒子が溶融して連続的な層に流れ、次いで連続的な層が冷却されて第1の固化した供給原料(240)をその部分に形成することができる。固化した供給原料(240)に形成されていない供給原料層の部分(234)は、元の供給原料(232)として残る。ビルドプレート(238)が下方に移動し(214)、第2のまたは次の供給原料層(242)が第1の層(234)および第1の固化した供給原料(240)の上に形成される。次いで、レーザ(236)は、電磁放射線(233)を第2の層(242)の一部に選択的に照射し、供給原料の粒子を溶融および流動させて連続的な層を形成し、これを冷却して第2の層から固化した供給原料を形成することができる。固化した供給原料に形成されていない第2層の部分は、元の粉末供給原料として残る。このシーケンスが繰り返されて(250)、元の供給原料(232)に囲まれた完成した多層の固化した供給原料複合材(252)が形成される。多層の固化した供給原料複合材(252)は、それぞれ形成された層の固化した供給原料を含む本体であり、供給原料の溶融粒子の材料から構成される。元の供給原料(232)を除去し、多層複合材(252)から分離することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機複合材から成る上側チャックベース面と、
前記無機複合材から成る下側チャックベース面と、
前記無機複合材から成る、前記上側チャックベース面と前記下側チャックベース面との間の内部分と、
前記内部分内で前記無機複合材によって形成された流路と
を含み、前記上側チャックベース面、前記下側チャックベース面、および前記内部分が、前記上側チャックベース面から前記下側チャックベース面まで延在する前記無機複合材の連続的な層を含む、チャックベース。
【請求項2】
前記無機複合材の前記連続的な層がシームレスであり、前記無機複合材の組成が均一である、請求項1に記載のチャックベース。
【請求項3】
前記チャックベースの前記上側チャックベース面、前記下側チャックベース面、または前記内部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも99.6%の密度を有する、請求項1に記載のチャックベース。
【請求項4】
前記流路が相互連結されている、請求項1に記載のチャックベース。
【請求項5】
積層造形によってチャックベースを形成する方法であって、
連続的な底面を含む前記チャックベースの下側部分を、積層造形によって形成することと、
前記チャックベースの前記下側部分の上に冷却流路を含む前記チャックベースの中間部分を、積層造形によって形成することと、
前記チャックベースの前記中間部分の上に、連続的な上面を含む前記チャックベースの上側部分を、積層造形によって形成することと
を含む方法。
【国際調査報告】