(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】添加剤供給システム、インゴット引上げ装置、及び添加剤供給システムを使用して単結晶シリコンインゴットを形成する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240109BHJP
C30B 15/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C30B29/06 502H
C30B15/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540075
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021065469
(87)【国際公開番号】W WO2022147089
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ザルドーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ザゴ,ジャンカルロ
(72)【発明者】
【氏名】アゴスティーニ,ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】アリンジェル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】イーオフ,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077EB03
4G077PB02
4G077PB11
4G077PB13
(57)【要約】
インゴット引上げ装置の坩堝内に配置されたシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための、添加剤供給システムが開示される。添加剤供給システムは、振動させて、第1添加剤及び第2添加剤を、添加剤が貯蔵されるキャニスタから、器に追加される第1添加剤又は第2添加剤の量が感知される他の器へ移動させる、第1供給トレイ及び第2供給トレイを含んでもよい。添加剤は器から添加剤供給管に排出され、添加剤供給管を通して添加剤が坩堝に入る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝内に配置されるシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための添加剤供給システムであって、
第1添加剤を保持するための第1キャニスタと、
第2添加剤を保持するための第2キャニスタと、
前記第1キャニスタから排出される第1添加剤と前記第2キャニスタから排出される第2添加剤とを回収するための器と、
前記器における第1添加剤又は第2添加剤の量を感知するための添加剤センサと、
第1添加剤又は第2添加剤を前記器から前記坩堝に輸送するための添加剤供給管と
を備える、添加剤供給システム。
【請求項2】
第1添加剤又は第2添加剤を前記器から放出するためのアクチュエータを備える、
請求項1に記載の添加剤供給システム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記器を選択的に開閉して、第1添加剤又は第2添加剤を前記器から放出する、
請求項2に記載の添加剤供給システム。
【請求項4】
制御ユニットをさらに備え、
前記制御ユニットは、前記アクチュエータに通信可能に接続されており、
前記制御ユニットは、前記センサが前記器内の添加剤の量が目標添加剤量に等しいか、又は目標添加剤量を超えることを感知する際、前記器から添加剤を前記添加剤供給管に放出するように前記アクチュエータを作動させる、
請求項2又は3に記載の添加剤供給システム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記器への第1添加剤の追加又は前記器への第2添加剤の追加を選択的に制御する、
請求項4に記載の添加剤供給システム。
【請求項6】
前記第1キャニスタの下方に配置されており、前記第1キャニスタから前記器に第1添加剤を移動させるための、第1トレイと、
前記第1トレイを振動させることによって、第1添加剤を前記第1トレイに沿って前記器に向けて移動させるための、第1振動器と、ここで前記通信ユニットは前記第1振動器に通信可能に接続されており、
前記第2キャニスタの下方に配置されており、前記第2キャニスタから前記器に第2添加剤を移動させるための、第2トレイと、
前記第2トレイを振動させることによって、第2添加剤を前記第2トレイに沿って前記器に向けて移動させるための、第2振動器と、ここで前記制御ユニットは前記第1振動器に通信可能に接続されており、
を備えた、
請求項4又は5に記載の添加剤供給システム。
【請求項7】
前記第1キャニスタの下方に配置されており、第1添加剤を前記第1キャニスタから前記器に移動させるための、第1トレイと、
前記第1トレイを振動させることによって、第1添加剤を前記第1トレイに沿って前記器に向けて移動させるための、第1振動器と、
前記第2キャニスタの下方に配置されており、第2添加剤を前記第2キャニスタから前記器に移動させるための、第2トレイと、
前記第2トレイを振動させることによって、第2添加剤を前記第2トレイに沿って前記器に移動させるための、第2振動器と
を備えた、
請求項1~5のいずれか1つに記載の添加剤供給システム。
【請求項8】
前記添加剤センサは、前記添加剤のレベル、体積、又は重量を感知する、
請求項1~7のいずれか1つに記載の添加剤供給システム。
【請求項9】
前記添加剤センサは、ロードセルである、
請求項1~8のいずれか1つに記載の添加剤供給システム。
【請求項10】
シリコンインゴットを作製するためのインゴット引上げ装置であって、
シリコン溶融物を保持するための坩堝と、
シリコンインゴットを前記溶融物から引き上げるための、成長チャンバと、ここで前記坩堝は前記坩堝内に配置されており、
少なくとも2つの異なる添加剤を前記坩堝内に配置されたシリコンに供給するための、添加剤供給システムと、
を備えており、
前記添加剤供給システムは、
第1添加剤を保持するための第1キャニスタと、
第2添加剤を保持するための第2キャニスタと、
前記第1キャニスタから排出される第1添加剤と前記第2キャニスタから排出される第2添加剤とを回収するための器と、
第1添加剤又は第2添加剤を前記器から前記坩堝に輸送するための添加剤供給管と
を有している、インゴット引上げ装置。
【請求項11】
前記添加剤供給システムは、前記器における第1添加剤又は第2添加剤の量を感知するための添加剤センサを有している、
請求項10に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項12】
前記添加剤センサはロードセルである、
請求項11に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項13】
前記添加剤供給システムは、前記器から第1添加剤又は第2添加剤を放出するためのアクチュエータを有している、
請求項10~12のいずれか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項14】
前記第1キャニスタの下方に配置されており、第1添加剤を前記第1キャニスタから前記器に移動させるための、第1トレイと、
前記第1トレイを振動させることによって、第1添加剤を前記第1トレイに沿って前記器に向けて移動させるための、第1振動器と、
前記第2キャニスタの下方に配置されており、第2添加剤を前記第2キャニスタから前記器に移動させるための、第2トレイと、
前記第2トレイを振動させることによって、第2添加剤を前記第2トレイに沿って前記器に向けて移動させるための、第2振動器と
を有する、
請求項10~13のいずれか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項15】
単結晶シリコンインゴットを形成する方法であって、
固相多結晶シリコンを、側壁及び底部を有する坩堝に追加すること、
前記多結晶シリコンを加熱して、表面を有するシリコン溶融物を形成すること、
前記シリコン溶融物に種結晶を接触させること、
前記種結晶を前記シリコン溶融物から引き上げてシリコンインゴットを形成すること、
第1添加剤を器に追加すること、
前記器における第1添加剤の量を計量すること、
前記器における第1添加剤の量が目標第1添加剤量に等しいか又は目標第1添加剤量を超えるとき、前記溶融物に前記第1添加剤を追加すること、
第2添加剤を前記器に追加すること、
前記器における第2添加剤の量を計量すること、
前記器における第2添加剤の量が目標第2添加剤量に等しいか又は目標第2添加剤量を超えるとき、前記溶融物に前記第2添加剤を追加すること
を含む、方法。
【請求項16】
前記シリコン溶融物が前記種結晶に接触する前に、前記第1添加剤が追加される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコン溶融物が前記種結晶に接触する前に、前記第2添加剤が追加される、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インゴットは、バッチ式のチョクラルスキプロセスにおいて成長し、多結晶シリコンはインゴットの成長中に前記溶融物に追加されない、
請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記インゴットは、連続式のチョクラルスキプロセスにおいて成長し、このとき多結晶シリコンはインゴットの成長中に前記溶融物に追加される、
請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月30日に出願された米国非仮特許出願第17/138,035号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、インゴット引上げ装置の坩堝内に配置されたシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための添加剤供給システムに関する。
【背景技術】
【0003】
チョクラルスキプロセスによる単結晶シリコンインゴットの成長中、インゴット成長の前または後に、様々な添加剤が坩堝に加えられることがある。顧客の仕様及びインゴットの品質パラメータが発展するにつれて、インゴットの品質パラメータを改善し及び/又はより正確に制御するために、インゴットサイクル中に異なるタイプの添加剤が坩堝に加えられることがある。例えば、坩堝にドーパントと石英カレットの両方を添加することが望ましい場合がある。ドーパントは溶融物の抵抗率プロファイルを変化させ、カレットは溶融物中で浮遊し、インゴットの成長中に溶融物に添加されるポリシリコンに接触する、緩衝部材として作用することがある(例えば、連続式のチョクラルスキ成長プロセスのように)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コストと添加剤供給システムの設置面積を最小化するために、異なる供給容器から2つの異なる添加剤を比較的正確に共有コンポーネントにより添加できる添加剤供給システムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本セクションは、本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図しており、これらは以下に説明され及び/又は請求される。本説明は、本開示の様々な側面をよりよく理解するための背景情報を読者に提供する上で有用であると考えられる。従って、これらの記述はこのような観点から読まれるべきであり、先行技術を認めるものではないと理解すべきである。
【0006】
本開示の一態様は、坩堝内に配置されたシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための添加剤供給システムに向けられている。添加剤供給システムは、第1添加剤を保持するための第1キャニスタと、第2添加剤を保持するための第2キャニスタとを含む。器は、第1キャニスタから排出された第1添加剤と第2キャニスタから排出された第2添加剤を回収する。添加剤センサは、器内の第1添加剤又は第2添加剤の量を感知する。添加剤供給管は、第1添加剤又は第2添加剤を器から坩堝に輸送する。
【0007】
本開示の他の態様は、シリコンインゴットを作製するためのインゴット引上げ装置に向けられている。インゴット引上げ装置は、シリコン溶融物を保持するための坩堝と、溶融物からシリコンインゴットを引き上げるための成長チャンバを含む。坩堝は、坩堝内に配置される。装置は、坩堝内に配置されたシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための添加剤供給システムを含む。添加剤供給システムは、第1添加剤を保持するための第1キャニスタと、第2添加剤を保持するための第2キャニスタとを含む。添加剤供給システムは、第1キャニスタから排出される第1添加剤と第2キャニスタから排出される第2添加剤とを回収する器を含む。添加剤供給システムは、器から坩堝まで第1添加剤又は第2添加剤を輸送するための添加剤供給管を含む。
【0008】
本開示のさらなる態様は、単結晶シリコンインゴットを形成する方法に向けられている。固相の多結晶シリコンは、側壁と底部とを有する坩堝に加えられる。多結晶シリコンを加熱し、表面を有するシリコン溶融物を形成する。シリコン溶融物を種結晶に接触させる。種結晶はシリコン溶融物から引上げられ、シリコンインゴットを形成する。第1添加剤が器に加えられる。第1添加剤の量が器内で計量される。第1添加剤が溶融物に加えられると器内の第1添加剤の量が目標第1添加剤量以上になる。第2添加剤が器に加えられる。第2添加剤の量が器内で計量される。第2添加剤が溶融物に加えられると、器内の第2添加剤量が目標第2添加剤量以上になる。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して言及された特徴には、様々な改良が存在する。また、本開示の上述の態様には、さらなる特徴も組み込むことができる。これらの改良および追加の特徴は、個々に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の説明された実施形態のいずれかに関連して後述される様々な特徴は、単独で又は任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、シリコンインゴットの成長前のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0011】
【
図2】
図2は、シリコンインゴットの成長中のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0012】
【
図3】
図3は、インゴット引上げ装置の添加剤供給システムの斜視図である。
【0013】
【
図4】
図4は、ハウジングを取り外した状態の添加剤供給システムの詳細正面図である。
【0014】
【
図5】
図5は、器が開位置にある状態の添加剤供給システムの器の正面図である。
【0015】
【0016】
【
図7】
図7は、器と器を開閉するアクチュエータの背面図である。
【0017】
【
図8】
図8は、添加剤供給システムの第1キャニスタ、第1トレイ、第1振動器の斜視図である。
【0018】
【
図9】
図9は、添加剤供給システムの第2キャニスタ、第2トレイ、第2振動器の斜視図である。
【0019】
【
図10】
図10は、添加剤供給システムを制御するための制御システムの概略図である。
【0020】
対応する参照符号は、図面全体を通して対応する部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の規定は、インゴット引上げ装置の坩堝内に配置されたシリコンに少なくとも2つの異なる添加剤を供給するための添加剤供給システム、およびそのような添加剤供給システムを使用して結晶シリコンインゴットを形成する方法に関する。一般に、添加剤供給システムは、単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された、任意のインゴット引上げ装置と共に使用されてもよい。インゴット引上げ装置(又はより簡単に「インゴット引上げ機」)の一例が、
図1において概して「100」で示されている。インゴット引上げ装置100は、サセプタ106によって支持された、シリコン等の半導体材料又はソーラーグレード材料の溶融物104を保持するための坩堝102を含む。インゴット引上げ装置100は、シリコンインゴット113(
図2)を引上げ軸Aに沿って溶融物104から引き上げるための成長チャンバ152を画定する結晶引上げハウジング108を含む。
【0022】
坩堝102は、フロア129と、フロア129から上方に延びる側壁131とを含む。側壁131は概ね垂直である。坩堝102内には、溶融物表面111(すなわち、溶融物-インゴット界面)を有するシリコン溶融物104が存在する。いくつかの実施形態では、坩堝102は層状である。例えば、坩堝102は、石英ベース層と、石英ベース層上に配置された合成石英ライナとで作製できる。
【0023】
サセプタ106はシャフト105によって支持されている。サセプタ106、坩堝102、シャフト105及びインゴット113(
図2)は、共通の長手方向軸A又は「引上げ軸」Aを有する。
【0024】
インゴット引上げ装置100内には、インゴット113を成長させて溶融物104から引き上げるための引上げ機構114(
図2)が設けられている。引上げ機構114は、引上げケーブル118と、引上げケーブル118の一端に結合された種ホルダ又はチャック120と、結晶成長を開始するために種ホルダ又はチャック120に結合された種結晶122とを含む。引上げケーブル118の一端は、プーリ(不図示)又はドラム(不図示)、若しくは他の適切なタイプの持ち上げ機構、例えばシャフトに接続され、他端は種結晶122を保持するチャック120に接続される。操作中、種結晶122は溶融物104に接触するように下降する。引上げ機構114を作動させて、種結晶122を上昇させる。これにより、単結晶インゴット113(
図2)が溶融物104から引き上げられる。
【0025】
加熱及び結晶引き上げの間、坩堝駆動装置107(例えば、モータ)は、坩堝102及びサセプタ106を回転させる。リフト機構112は、成長プロセス中、引上げ軸Aに沿って坩堝102を昇降させる。例えば、坩堝102は、坩堝102に先に追加された固相多結晶シリコンのチャージが溶融される最も低い位置(底部ヒータ126の近傍)にある場合がある。溶融物104を種結晶122に接触させ、引上げ機構114によって種結晶122を持ち上げることにより、結晶成長を開始する。インゴット113が成長するにつれて、シリコン溶融物104が消費され、坩堝102内の溶融物の高さが減少する。坩堝102及びサセプタ106は、インゴット引上げ装置100(
図2)に対して溶融物表面111を同じ位置またはその近傍に維持するために上昇させてもよい。
【0026】
結晶駆動ユニット(不図示)はまた、引上げケーブル118及びインゴット113(
図2)を、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させる方向とは反対方向に回転させてもよい(例えば、逆回転)。等回転を使用する実施形態では、結晶駆動ユニットは、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させるのと同じ方向に引上げケーブル118を回転させてもよい。
【0027】
チョクラルスキ単結晶成長プロセスによれば、固相の多結晶シリコン又はポリシリコンが坩堝102にチャージされる。坩堝に導入された半導体材料またはソーラーグレード材料は、1つまたは複数の加熱要素から供給される熱によって溶融される。インゴット引上げ装置100は、引上げ装置100内の熱を保持するために、底部断熱材110と側部断熱材124を含む。示された実施形態では、インゴット引上げ装置100は、坩堝フロア129の下方に配置された底部ヒータ126を含む。坩堝102は、坩堝102にチャージされた多結晶体を溶融させるために、底部ヒータ126に比較的すぐ位置するように移動させてもよい。
【0028】
インゴットを形成するには、種結晶122を溶融物104の表面111に接触させる。引上げ機構114は、溶融物104から種結晶122を引き上げるように作動する。次に
図2を参照すると、インゴット113はクラウン部142を含み、このクラウン部142では、インゴットが種結晶122から外側に移行してテーパーを付け、目標直径に達する。インゴット113は、引上げ速度を増大させることによって成長する結晶の一定直径部分145又は円柱形の「本体」を含む。インゴット113の本体145は比較的一定の直径を有する。インゴット113は、本体145の後にインゴットの直径が先細りになるテールコーン又はエンドコーン(不図示)を含む。直径が十分に小さくなると、インゴット113が溶融物104から分離される。
【0029】
インゴット引上げ装置100は、結晶成長中に溶融物104の温度を維持するために、坩堝102を取り囲む側部ヒータ135及びサセプタ106を含む。側部ヒータ135は、坩堝102が引上げ軸Aを上下に移動するにつれて、坩堝側壁131に対して外径側に配置される。側部ヒータ135及び底部ヒータ126は、側部ヒータ135及び底部ヒータ126が本明細書に説明されるように動作することを可能にする任意のタイプのヒータであってよい。いくつかの実施形態では、ヒータ135、126は抵抗ヒータである。側部ヒータ135および底部ヒータ126は、溶融物104の温度が引上げプロセス全体にわたって制御されるように、制御システム(不図示)によって制御されてもよい。
【0030】
インゴット引上げ装置100は、熱シールド151を含んでもよい。熱シールド151は、インゴット113を覆い、結晶成長中、坩堝102内に配置されてもよい(
図2)。インゴット引上げ装置100は、成長チャンバ152からアルゴン等の不活性ガスを導入および引き抜く不活性ガスシステムを含んでもよい。
【0031】
本開示の実施形態に従って、インゴット引上げ装置100は、添加剤供給管214を介する等、添加剤を溶融物104に導入するための添加剤供給システム200も含む。ここで
図3を参照すると、本開示の例示的な添加剤供給システム200が示されている。添加剤供給システム200は、坩堝102(
図1)内に配置されたシリコンに2つの異なる添加剤を追加するように構成されている。添加剤供給システム200は、(例えば、追加の添加剤キャニスタ、トレイ、振動器などを用いて)2つの添加剤より多く追加するように適合させてもよい。
【0032】
添加剤供給システム200は、第1添加剤(不図示)を保持するための第1キャニスタ204と、第2添加剤を保持するための第2キャニスタ206とを含む。第1キャニスタ204及び第2キャニスタ206はそれぞれ、キャニスタ204、206を密閉するための取り外し可能な蓋207、209を含む。第1キャニスタ204及び第2キャニスタ206はそれぞれ、キャニスタ204、206の下方に配置されたトレイ260、270に添加剤を導く漏斗部分211、213も含む。システム200は、添加剤供給管214をインゴット引上げ装置100の覗き窓(不図示)に接続することにより、インゴット引上げ装置100に取り付けてもよい。
【0033】
システム200は、第1キャニスタ204から排出された第1添加剤と第2キャニスタ206から排出された第2添加剤とを回収するための器228を含む。器228は、添加剤が器から排出される「開」位置に示されている。以下にさらに説明するように、器228は、添加剤が器228に集まる「閉」位置(
図6)に移動させることができる。器228内の添加剤の量が測定されると(すなわち、設定点に達すると)、アクチュエータ230(
図7)が作動し、添加剤が器228から添加剤供給管214に排出される。第1添加剤又は第2添加剤は、添加剤供給管214を通って、坩堝102(
図1)に流入する。添加剤供給管214は、インゴット引上げ装置100の成長チャンバ152(
図1)を周囲の環境と隔離するために、第1キャニスタ204及び第2キャニスタ206と、ならびに添加剤供給管214とシールを形成する外側ハウジング(不図示)を含んでもよい。
【0034】
添加剤センサ231(
図5)は、器228に追加された第1添加剤又は第2添加剤の量(すなわち、器228に追加された第1添加剤又は第2添加剤のバッチ)を感知する。示された実施形態では、添加剤センサ231は、器228に追加された添加剤のバッチを計量するロードセルである。他の実施形態では、添加剤センサ231は流量計または圧力変換器である。
【0035】
一般に、添加剤を器228に回収し、添加剤を添加剤供給管214に排出することを可能にする、任意の器228及びアクチュエータ230を、特に断りのない限り使用してもよい。図示の器228(
図6)は、器228を開閉するためにピン242を中心に枢動する第1爪要素240A及び第2爪要素240Bを含む。モータ245(
図7)(例えば、電磁コイル)は、ロッド247を垂直に移動させる。ロッド247は、器228の各爪要素240A、240Bに接続されたブラケット250に接続されている。
【0036】
ブラケット250が垂直に移動すると、爪要素240A、240Bは、器228の開閉を可能にするように互いに向かって又は互いに離れて枢動する。モータ245に電力が供給されていないとき、爪要素240A、240Bの重量がロッド247及びブラケット250を引き下げ、爪240A、240Bを互いに向かって移動させて器228を閉じさせる。モータ245に電力が供給されるとき、モータ245はロッド247及びブラケット250を引上げ、爪要素240A、240Bを互いに離れる方向に移動させて器228を開かせる。
【0037】
第1キャニスタ204から器228に第1添加剤を移動させるために、添加剤供給システム200は、第1キャニスタ204の下方に配置され、キャニスタ204と器228との間に延びる第1トレイ260(
図4)を含む。第1キャニスタ出口265(
図8)は、第1トレイ260内に配置されている。第1トレイ260は、器228(
図5)の上方に配置される第1トレイ出口268を有する。第1トレイ260は第1振動器262の上方に配置され、第1振動器262に接続されている。振動器262に電力を供給すると、トレイ260が振動し、第1添加剤が第1キャニスタ出口265から第1トレイ260を渡って搬送される。第1添加剤は、第1トレイ出口268から器228に排出される。
【0038】
次に
図9を参照すると、第2トレイ270が第2キャニスタ206の下に配置されている。第2のトレイ270には、第2キャニスタ出口272が配置されている。第2トレイ270は、器228(
図5)の上方に配置される第2トレイ出口274を含む。第2振動器277は、第2トレイ270の下方に配置され、第2トレイ270に接続されている。第2振動器277に電力を供給すると、第2トレイ270が振動し、第2添加剤が第2キャニスタ出口272から第2トレイ270を渡って搬送される。第2添加剤は、第2トレイ出口274から器228に排出される。
【0039】
次に
図10を参照すると、添加剤供給システム200は、添加剤供給システム200を制御するための制御システム285を含む。制御システム285は、添加剤供給システム200のコンポーネントを制御するための制御ユニット280を含む。例えば、制御ユニット280は、アクチュエータ230(
図7)に通信可能に接続され(例えば、モータ245に接続され)、器228の開閉を制御する。制御ユニットはまた、器228への第1添加剤及び第2添加剤の追加を選択的に制御するために、第1振動器262及び第2振動器277に通信可能に接続されている。添加剤センサ231は、器228内の添加剤の量に関連する信号を制御ユニットに送る。
【0040】
制御ユニット280は、本明細書で説明される様々な論理ブロック、モジュール、及び回路が、汎用コンピュータ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタ論理、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又は本明細書で説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせにより、実装又は実行できる。汎用プロセッサの例は、マイクロプロセッサ、従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、ステートマシン、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
制御ユニット280は、プロセッサ、例えば、命令を実行するためのコンピュータの中央処理ユニット(CPU)を含む。命令は、例えばメモリ領域に格納されてもよい。プロセッサは、命令を実行するために、例えばマルチコア構成の1つ以上の処理ユニットを含んでもよい。命令は、UNIX(登録商標)、LINUX、Microsoft Windows(登録商標)等、コントローラ上の様々な異なるオペレーティングシステム内で実行できる。また、コンピュータベースの方法を開始すると、初期化中に様々な命令が実行される場合があることも理解されたい。いくつかの操作は、本明細書で説明される1つ以上の処理を実行するために必要とされてもよいが、他の操作は、より一般的であってもよく及び/又は特定のプログラミング言語、例えば、限定するものではないが、C、C#、C++、Java、又は他の適切なプログラミング言語等に固有であってもよい。
【0042】
プロセッサはまた、記憶装置に動作可能に結合されていてもよい。記憶装置とは、データの保存及び/又は検索に適した、コンピュータで動作可能な任意のハードウェアのことである。いくつかの実施形態では、記憶装置はコントローラに統合されている。他の実施形態では、記憶装置はコントローラの外部にあり、データベースと同様である。例えば、制御ユニット280は、記憶装置として1つ以上のハードディスクドライブを含んでもよい。他の実施形態では、記憶装置はコントローラの外部にある。例えば、記憶装置は、レイド(RAID)構成のハードディスク又はソリッドステートディスク等の複数の記憶装置を含んでもよい。記憶装置は、ストレージエリアネットワーク(SAN)及び/又はネットワーク接続型記憶装置(NAS)システムを含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、メモリインタフェイスを介して記憶装置に動作可能に結合される。メモリインタフェイスとは、プロセッサに記憶装置へのアクセスを提供できる任意のコンポーネントである。メモリインタフェイスは、例えば、ATA(Advanced Technology Attachment)アダプタ、SATA(Serial ATA)アダプタ、SCSI(Small Computer System Interface)アダプタ、RAIDコントローラ、SANアダプタ、ネットワークアダプタ、及び/又はプロセッサに記憶装置へのアクセスを提供する任意のコンポーネントを含んでもよい。
【0044】
メモリエリアは、ダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)等のランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、不揮発性RAM(NVRAM)等を含むが、これらに限定されない。上記のメモリの種類は例示であり、コンピュータ・プログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプを限定するものではない。
【0045】
器228、ひいては坩堝102(
図1)(及び初期シリコンチャージ又は溶融物104)への添加剤の追加を制御するために、制御ユニット280は、第1振動器262又は第2振動器277を選択的に作動させて、それぞれ第1容器204又は第2容器206から第1添加剤又は第2添加剤を移動させる。第1添加剤又は第2添加剤は、添加剤センサ231が器228内の添加剤の量(例えば、質量、体積又はレベル)を測定している間、器228に継続的に追加される。目標添加剤量(すなわち、設定点)が達成されるか又はそれを超えると、添加剤を移動させるために電力が供給されていた振動器262、277が停止させられる。制御ユニットはアクチュエータ230に信号を送り、アクチュエータ230を作動させて器228から添加剤供給管214に添加剤を排出させる。
【0046】
器228及び坩堝102への第1添加剤又は第2添加剤の追加の選択は、オペレータによって選択されてもよく、又はインゴット成長のための制御システムの一部として自動化されてもよい。第1添加剤及び第2添加剤を、インゴットの成長サイクル中の異なる時点で追加してもよい。添加剤の中には、複数のバッチ(例えば、インゴットの成長前とインゴットの成長中)に追加されてもよい。
【0047】
一般に、第1添加剤及び第2添加剤は、坩堝に追加するためにトレイ及び振動器によって計量され得る任意の固相添加剤であってよい。好適な添加剤は、種々の半導体ドーパント(例えば、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム、及び/又はインジウム及びそれらの合金等のp型ドーパント、又は赤リン、リン、ヒ素、及び/又はアンチモン及びそれらの合金などのn型ドーパント)を含む。他の実施形態では、第1添加剤及び第2添加剤の一方は、連続式のチョクラルスキプロセスにおいて緩衝部材として溶融物に追加される石英カレットである。いくつかの実施形態では、第1添加剤及び第2添加剤の一方は、インゴットの成長中に坩堝102(
図1)に追加される固相多結晶シリコンである。他の実施形態では、第1添加剤と第2添加剤の両方が、多結晶シリコン以外の添加剤(例えば、ドーパントやカレット)である。
【0048】
第1添加剤及び/又は第2添加剤は、一般に、インゴットの成長サイクルの任意の時点で追加されてもよい。例えば、第1添加剤及び/又は第2添加剤は、坩堝に追加された固相多結晶シリコンの初期チャージのメルトダウン前に追加されてもよく、メルトダウン中に追加されてもよく、チャージのメルトダウン後に追加されてもよく、インゴットの成長中に追加されてもよい。インゴットの成長プロセスは、インゴットの成長中に多結晶シリコンが溶融物に添加されないバッチ式のチョクラルスキプロセスであってもよく、又はインゴットの成長中に多結晶シリコンが溶融物に(例えば、連続的または断続的に)追加される連続式のチョクラルスキプロセスであってもよい。
【0049】
従来の添加剤供給システムと比較して、本開示の添加剤供給システムにはいくつかの利点がある。第1添加剤及び第2添加剤が選択的に追加されて測定されてもよい、共通の器を使用することによって、第1添加剤及び第2添加剤を相対的な精度で坩堝に追加できる。添加剤の添加量は、インゴットの成長に関連する添加剤パラメータに従って測定され、投与され、調節されてもよい。振動トレイを使用することによって、各添加剤を保管容器から計量される器に確実に移動させることができる。共通のコンポーネント(例えば、計量容器、添加剤供給管、添加剤排出用アクチュエータ等)を使用することによって、システムのコストと複雑さが低減する。
【0050】
本明細書において使用されるように、寸法、濃度、温度、又は他の物理的若しくは化学的性質若しくは特性の範囲と共に使用される場合、「約」、「実質的に」、「本質的に」及び「およそ」という用語は、例えば、丸め、測定方法、又は他の統計的変動に起因する変動を含め、性質又は特性の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動を網羅することを意味する。
【0051】
本開示の要素又はその実施形態(複数可)を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、要素が1つ以上あることを意味することを意図している。用語「comprising」、「including」、「containing」及び「having」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語の使用(例:「頂部」、「底部」、「側部」など)は説明の便宜のためであり、説明された品目の任意の特定の向きを要求とするものではない。
【0052】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構成及び方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味において解釈されないことが意図される。
【国際調査報告】