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特表2024-501868気化ドーパントを使用して単結晶シリコンインゴットを製造するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】気化ドーパントを使用して単結晶シリコンインゴットを製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B29/06 502H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540127
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021065810
(87)【国際公開番号】W WO2022147344
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】17/139,352
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/139,367
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ユー-チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルーター,ウィリアム リン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,リチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】イーオフ,ジェイムズ ディーン
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB03
4G077EG30
4G077HA12
(57)【要約】
インゴット引上げ装置内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするためのシステム及び方法が開示される。インゴット引上げ装置は、チャンバを画定するハウジングと、チャンバ内に配置されたるつぼと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタとを含む。前記方法は、気化カップを加熱することと、ハウジングの内部の圧力を第1の圧力に維持することとを含む。前記方法はさらに、液体ドーパントを気化カップ内に注入することを含む。液体ドーパントの圧力は、注入前の第1の圧力より高い第2の圧力に維持される。前記方法はまた、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントをハウジング内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって液体ドーパントを気化させることと、気化ドーパントをハウジング内に導くことを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーピングされた単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、インゴット引上げ装置は、
チャンバを画定するハウジング、
チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、
ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを備え、
ドーパントインジェクタは、
ハウジングに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送モジュールを有し、
配送モジュールは、
チャンバ内に配置されるドーパント注入管、及び
ドーパント注入管及びチャンバ内に配置される気化カップであって、第2のバルブが液体ドーパントを気化カップに選択的に導き、気化カップが液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる、気化カップとを有する、
インゴット引上げ装置。
【請求項2】
ドーパント注入管は、気化ドーパントを融液の表面に指向させるために融液の表面に隣接して配置される第1の端部を含む、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項3】
気化カップは、
レシーバ、及び
レシーバ内に配置される気化プラグであって、液体ドーパントがレシーバ上に注入され、レシーバが液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる、気化プラグを有する、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項4】
気化プラグは、レシーバを液体受容部と蒸気チャネル部とに分ける、
請求項3に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項5】
レシーバは、気化ドーパントを液体受容部からドーパント注入管に導くチャネルを画定する、
請求項4に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項6】
気化プラグは、第1の端部及び第2の端部を含み、第1の端部から第2の端部に延びる蒸気チャネルを画定し、液体ドーパントは、気化プラグ上に注入され、気化ドーパントは、蒸気チャネルを通じてチャネル内に導かれる、
請求項5に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項7】
ドーパントインジェクタは、ドーパント注入管をシリコン融液に隣接して移動させるためのベローズを含む、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項8】
加熱システムからの放射熱を用いて気化カップを加熱するための加熱システムをさらに備え、加熱システムからの放射熱は、加熱システムがるつぼ内の多結晶シリコンを溶融するときの加熱システムからの余剰熱である、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項9】
ドーピングされた単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、インゴット引上げ装置は、
チャンバを画定するハウジング、
チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、
ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを備え、
ドーパントインジェクタは、
ハウジングの外面に取り付けられた注入モジュールであって、注入モジュールは、
液体ドーパントを収容するための第1のリザーバ、
液体ドーパントを収容するための第2のリザーバ、
液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに選択的に導くための第1のバルブ、及び、
液体ドーパントを第2のリザーバからチャンバに選択的に導くための第2のバルブを有する、注入モジュール、並びに、
注入モジュールに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送モジュールであって、第2のバルブが液体ドーパントを配送モジュールに選択的に導き、配送モジュールが液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる、配送モジュール、を有する、
インゴット引上げ装置。
【請求項10】
第2のバルブに連結されたシャフトをさらに備え、シャフトは、第2のバルブを作動させる、
請求項9に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項11】
第1のリザーバ及び第2のリザーバは、チャンバの圧力を超える圧力に維持される、
請求項9に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項12】
ドーピングされた単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、インゴット引上げ装置は、
チャンバを画定するハウジング、
チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、
ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを備え、
ドーパントインジェクタは、
ハウジングの外面に取り付けられた注入モジュールであって、注入モジュールは、
液体ドーパントを収容するための第1のリザーバ、
液体ドーパントを収容するための第2のリザーバ、
液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに選択的に導くための第1のバルブ、及び、
液体ドーパントを第2のリザーバからチャンバに選択的に導くための第2のバルブ、並びに、
注入モジュールに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送モジュールを有し、
配送モジュールは、
チャンバ内に配置されるドーパント注入管、及び、
ドーパント注入管及びチャンバ内に配置される気化カップであって、第2のバルブが液体ドーパントを気化カップに選択的に導き、気化カップが液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる、気化カップとを有する、
インゴット引上げ装置。
【請求項13】
ドーパント注入管は、気化ドーパントを融液の表面に指向させるために融液の表面に隣接して配置される第1の端部を含む、
請求項12に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項14】
第2のバルブに連結されたシャフトをさらに備え、シャフトは、第2のバルブを作動させる、
請求項12に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項15】
気化カップは、
レシーバ、及び
レシーバ内に配置される気化プラグであって、液体ドーパントがレシーバ上に注入され、レシーバが液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる、
請求項12に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項16】
気化プラグは、レシーバを液体受容部と蒸気チャネル部とに分ける、
請求項15に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項17】
レシーバは、気化ドーパントを液体受容部からドーパント注入管に導くチャネルを画定する、
請求項16に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項18】
気化プラグは、第1の端部及び第2の端部を含み、第1の端部から第2の端部に延びる蒸気チャネルを画定し、液体ドーパントは、気化プラグ上に注入され、気化ドーパントは、蒸気チャネルを通じてチャネル内に導かれる、
請求項17に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項19】
ドーパントインジェクタは、ドーパント注入管をシリコン融液に隣接して移動させるためのベローズを含む、
請求項12に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項20】
加熱システムからの放射熱を用いて気化カップを加熱するための加熱システムをさらに備え、加熱システムからの放射熱は、加熱システムがるつぼ内の多結晶シリコンを溶融するときの加熱システムからの余剰熱である、
請求項12に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項21】
インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするための方法であって、インゴット引上げ装置は、ハウジングと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタと、ハウジングと共に配置される加熱システムとを含み、ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されるドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置される気化カップとを含み、前記方法は、
加熱システムを使用して気化カップを加熱する工程、
ハウジングの内部の圧力を第1の圧力に維持する工程、
液体ドーパントをドーパント注入管及び気化カップ内に注入する工程であって、液体ドーパントの圧力が、ドーパント注入管及び気化カップ内に注入される前の第1の圧力より高い第2の圧力に維持される、工程、
ハウジング内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる工程であって、液体ドーパントが、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントをハウジング内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって、フラッシュ蒸発によって気化される、工程、及び、
ドーパント注入管を使用して気化ドーパントをハウジング内に導く工程、
を有する方法。
【請求項22】
気化カップを加熱する工程は、加熱システムからの放射熱を使用して気化カップを加熱することを有し、加熱システムからの放射熱は、加熱システムがるつぼ内の多結晶シリコンを溶融するときの加熱システムからの余剰熱である、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
不活性ガスをドーパント注入管に導く工程をさらに備え、不活性ガスは、気化ドーパントをハウジング内に導く、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
第1の圧力は、大気圧より低い圧力である、
請求項21に記載の方法。
【請求項25】
第1の圧力は、真空であり、第2の圧力は、大気圧である、
請求項21に記載の方法。
【請求項26】
気化ドーパントをシリコン融液中に拡散させる工程をさらに備える、
請求項21に記載の方法。
【請求項27】
気化カップは、レシーバ、及びレシーバ内に配置される気化プラグを含み、加熱システムを使用して気化カップを加熱する工程は、レシーバ内に配置される気化プラグを加熱することを有する、
請求項21に記載の方法。
【請求項28】
インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを製造するための方法であって、前記方法は、
るつぼに多結晶シリコンを添加する工程であって、るつぼがインゴット引上げ内側チャンバ内に配置される、工程、
るつぼ内にシリコン融液を形成させるために多結晶シリコンを加熱する工程、
シリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げる工程、
液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入する工程、
インゴット引上げ装置内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる工程、及び、
単結晶シリコンインゴットを融液から引き上げる間に、気化ドーパントをドーパントとして融液に入れるために、気化ドーパントを融液の表面に接触させる工程、
を有する方法。
【請求項29】
インゴット引上げ装置は、インゴット引上げ装置のハウジング内に延びるドーパントインジェクタを含み、ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されるドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置される気化カップとを含み、インゴット引上げ装置内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる工程は、
気化カップを使用して液体ドーパントを加熱する工程、及び、
液体ドーパントをハウジング内に注入することによって液体ドーパントの圧力を低下させる工程であって、ハウジングが大気圧より低い圧力に維持される、工程を有する、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ドーパントインジェクタは、第1のリザーバ、第1のバルブ、第2のリザーバ、及び第2のバルブを含み、液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入することは、
第1のバルブを開くことによって、液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに導くことと、
第2のバルブを開くことによって、液体ドーパントを第2のリザーバからハウジングに導くことと、を有する、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ドーパントインジェクタは、ベローズを含み、液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入することは、
ベローズを使用してドーパント注入管をシリコン融液に隣接して移動させることと、
気化ドーパントをシリコン融液中に拡散させることと、を有する、
請求項29に記載の方法。
【請求項32】
加熱システムからの放射熱を使用して気化カップを加熱する工程をさらに有し、加熱システムからの放射熱は、加熱システムがるつぼ内の多結晶シリコンを溶融するときの加熱システムからの余剰熱である、
請求項29に記載の方法。
【請求項33】
不活性ガスをドーパント注入管に導く工程をさらに備え、不活性ガスは、気化ドーパントをハウジング内に導く、
請求項29に記載の方法。
【請求項34】
第1のリザーバ及び第2のリザーバは、ハウジングの圧力を超える圧力に維持される、
請求項29に記載の方法。
【請求項35】
ハウジングの圧力は、真空であり、第1のリザーバ及び第2のリザーバは、大気圧である、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
気化カップは、レシーバ、及びレシーバ内に配置される気化プラグを含み、気化カップを使用して液体ドーパントを加熱する工程は、
レシーバ内に配置される気化プラグを加熱することと、
気化プラグを使用して液体ドーパントを加熱することと、を有する
請求項29に記載の方法。
【請求項37】
インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするための方法であって、インゴット引上げ装置は、ハウジングと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタと、ハウジングと共に配置される加熱システムとを含み、ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されるドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置される気化カップとを含み、前記方法は、
加熱システムを使用して気化カップを加熱する工程、
液体ドーパントをドーパント注入管及び気化カップ内に注入する工程、
ハウジング内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる工程であって、液体ドーパントが、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱することによって、フラッシュ蒸発によって気化される、工程、及び、
ドーパント注入管を使用して気化ドーパントをハウジング内に導く工程、
を有する方法。
【請求項38】
気化カップを加熱する工程は、加熱システムからの放射熱を使用して気化カップを加熱することを有し、加熱システムからの放射熱は、加熱システムがるつぼ内の多結晶シリコンを溶融するときの加熱システムからの余剰熱である、
請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ドーパントインジェクタは、第1のリザーバ、第1のバルブ、第2のリザーバ、及び第2のバルブを含み、液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入する工程は、
第1のバルブを開くことによって、液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに導くことと、
第2のバルブを開くことによって、液体ドーパントを第2のリザーバからハウジングに導くことと、を有する、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
気化カップは、レシーバ、及びレシーバ内に配置される気化プラグを含み、気化カップを使用して液体ドーパントを加熱する工程は、
レシーバ内に配置される気化プラグを加熱することと、
気化プラグを使用して液体ドーパントを加熱することと、を有する
請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年12月31日に出願された米国特許出願第17/139367号及び2020年12月31日に出願された米国特許出願第17/139352号に対する優先権を主張し、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本分野は、気化ドーパント(vaporized dopant)を使用して単結晶シリコンインゴットを製造するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高抵抗率シリコンウエハの用途では、ウエハがスライスされる単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、融液に様々なドーパントを添加することによって制御され得る。ドーパントは、シリコンインゴットが引き上げられる融液の形成に使用される多結晶シリコンのソース中の、様々な不純物(例えば、ホウ素又はリン)を補償するために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インゴットにおいて目標抵抗率を達成するために1つ又は複数のドーパントが添加される場合、化合物の偏析係数の違いにより、特定のドーパント及び/又は不純物が、融液に蓄積することがある。例えば、ホウ素は、約0.8の偏析係数を有し、それは、ホウ素が成長中のインゴットに容易に取り込まれることを可能にする。リンは、約0.35の偏析係数を有し、それは、より容易に取り込まれるホウ素に対してリンを融液に蓄積させる。従って、インゴットが成長して融液が枯渇するとき、リンは、融液に蓄積し、成長中のインゴットの抵抗率が変化する。これは、抵抗率が低下し、顧客仕様から外れる及び/又はインゴットにタイプ変化が生じることを引き起こすことがある。
【0005】
顧客仕様内にとどまるインゴットの長さを大きくするために、インゴット成長中にシリコン融液にカウンタードーピング(counter-doping)するための方法の必要性が存在する。また、容易に入手可能である及び/又は比較的安価であるドーパントソース材料の使用を可能にし、融液が比較的容易にドーピングされることを可能にするドーピング方法の必要性が存在する。さらに、ドーパントのソースとして液相ドーパントが使用されることを可能にするインゴット引上げ装置が必要である。
【0006】
本セクションは、本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図し、それらは、以下に説明及び/又は請求される。この議論は、本開示の様々な側面のより良い理解を促進するために、読者に背景情報を提供するのに有用であると信じる。従って、これらの記述は、先行技術の自認としてではなく、この観点から読まれるべきであると理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、ドーピング(doped)された単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置は、チャンバを画定するハウジング、チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジングに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送(delivery)モジュールを含む。配送モジュールは、チャンバ内に配置されるドーパント注入管、及び、ドーパント注入管及びチャンバ内に配置される気化カップ(vaporization cup)を含む。第2のバルブは、液体ドーパントを気化カップに選択的に導き、気化カップは、液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる。
【0008】
別の態様において、ドーピングされた単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置は、チャンバを画定するハウジング、チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジングの外面に取り付けられた注入(injection)モジュールを含む。注入モジュールは、液体ドーパントを収容するための第1のリザーバ、液体ドーパントを収容するための第2のリザーバ、液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに選択的に導くための第1のバルブ、及び、液体ドーパントを第2のリザーバからチャンバに選択的に導くための第2のバルブを含む。ドーパントインジェクタはまた、注入モジュールに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送モジュールを含む。第2のバルブは、液体ドーパントを配送モジュールに選択的に導き、配送モジュールは、液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる。
【0009】
さらに別の態様において、ドーピングされた単結晶シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置は、チャンバを画定するハウジング、チャンバ内に配置されたるつぼ、及び、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジングの外面に取り付けられた注入モジュールを含む。注入モジュールは、液体ドーパントを収容するための第1のリザーバ、液体ドーパントを収容するための第2のリザーバ、液体ドーパントを第1のリザーバから第2のリザーバに選択的に導くための第1のバルブ、及び、液体ドーパントを第2のリザーバからチャンバに選択的に導くための第2のバルブを含む。ドーパントインジェクタはまた、注入モジュールに取り付けられてハウジングを通じてチャンバ内に延びる配送モジュールを含む。配送モジュールは、チャンバ内に配置されるドーパント注入管、及び、ドーパント注入管及びチャンバ内に配置される気化カップを含む。第2のバルブは、液体ドーパントを気化カップに選択的に導き、気化カップは、液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる。
【0010】
別の態様において、インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするための方法が提供される。インゴット引上げ装置は、ハウジングと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタと、ハウジングと共に配置される加熱システムとを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されるドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置される気化カップとを含む。前記方法は、加熱システムを使用して気化カップを加熱することを含む。前記方法はまた、ハウジングの内部の圧力を第1の圧力に維持することを含む。前記方法はさらに、液体ドーパントをドーパント注入管及び気化カップ内に注入することを含む。液体ドーパントの圧力は、ドーパント注入管及び気化カップ内に注入される前の第1の圧力より高い第2の圧力に維持される。前記方法はまた、ハウジング内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させることを含む。液体ドーパントは、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントをハウジング内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって、フラッシュ蒸発によって気化される。前記方法はさらに、ドーパント注入管を使用して気化ドーパントをハウジング内に導くことを含む。
【0011】
さらに別の態様において、インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを製造するための方法が提供される。前記方法は、るつぼに多結晶シリコンを添加することを含む。るつぼは、インゴット引上げ内側チャンバ(ingot puller inner chamber)内に配置される。前記方法はまた、るつぼ内にシリコン融液を形成させるために多結晶シリコンを加熱することを含む。前記方法はさらに、シリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げることを含む。前記方法はまた、インゴット引上げ装置に液体ドーパントを注入することを含む。前記方法はさらに、インゴット引上げ装置内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させることを含む。前記方法はまた、単結晶シリコンインゴットを融液から引き上げる間に、気化ドーパントをドーパントとして融液に入れるために、気化ドーパントを融液の表面に接触させることを含む。
【0012】
別の態様において、インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするための方法が提供される。インゴット引上げ装置は、ハウジングと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタと、ハウジングと共に配置される加熱システムとを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されるドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置される気化カップとを含む。前記方法は、加熱システムを使用して気化カップを加熱することを含む。前記方法はまた、液体ドーパントをドーパント注入管及び気化カップ内に注入することを含む。前記方法はさらに、ハウジング内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させることを含む。液体ドーパントは、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱することによって、フラッシュ蒸発によって気化される。前記方法はまた、ドーパント注入管を使用して気化ドーパントをハウジング内に導くことを含む。
【0013】
本開示の前述の態様に関連して指摘された特徴には、様々な改良が存在する。さらなる特徴も同様に、本開示の上述の態様に組み込むことができる。これらの改良及び追加の特徴は、個別に又は任意の組合せで存在し得る。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述される様々な特徴は、本開示の前述の態様のいずれかに、単独で又は任意の組合せで組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ドーパントインジェクタを有するインゴット引上げ装置の一実施形態の部分断面側面図である。
図2図1に示すドーパントインジェクタの斜視図である。
図3図1に示すドーパントインジェクタの断面斜視図である。
図4A図1に示すドーパントインジェクタの断面斜視図である。
図4B図4Aに示すドーパントチャンバの詳細断面斜視図である。
図5A図1に示すドーパントインジェクタの断面斜視図である。
図5B図5Aに示すドーパントチャンバの詳細断面斜視図である。
図6A図1に示すドーパントインジェクタの断面斜視図である。
図6B図6Aに示す配送モジュールの詳細断面斜視図である。
図7図3に示す気化カップの断面斜視図である。
図8】インゴット長さの関数としてのインゴット抵抗率のグラフである。
図9】単結晶シリコンインゴットの製造方法の一例を示す概略図である。
図10】単結晶シリコンインゴットにドーピングする方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【0016】
インゴット引上げ装置100の一例を、図1図8に概略的に示す。図1図8の装置100は、本明細書に記載される方法のように、気化したホウ素ドーパントを用いてインゴットにカウンタードーピング又はドーピングするために使用され得る、又は天然形態、水和形態、又は結晶成長プロセスに非汚染性の化合物のいずれかにおいてシリコンの溶融温度(約1414℃)未満で気化し得る他の液相ドーパントと共に使用され得る。
【0017】
ここで図1を参照すると、インゴット引上げ装置100は、インゴット引上げ外側ハウジング102を含み、ハウジング102は、ハウジング102内にインゴット引上げ内側チャンバ104を画定する。るつぼ106は、インゴット引上げ内側チャンバ104内に配置される。るつぼ106は、シリコン融液108を含み、そこからシリコンインゴット110が引き上げられる。インゴット110は、熱シールド112によって覆われる。
【0018】
インゴット引上げ装置100は、インゴット110がシリコン融液110から引き上げられるときに液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入するためのドーパントインジェクタ114を含む。ドーパントインジェクタ114は、インゴット110が融液から引き上げられるときに、シリコン融液110が液体ドーパントを用いて複数回カウンタードーピングされることを可能にし、インゴットの抵抗率を高め、顧客仕様(例えば、高抵抗率)内にあるインゴットの部分を増大させ、インゴット引上げ装置の効率を高める。
【0019】
ドーパントインジェクタ114は、注入モジュール116、配送モジュール118、及び第1のフランジ120を含む。注入モジュール116及び配送モジュール118はそれぞれ、第1のフランジ120に取り付けられ、そのフランジは、注入モジュール及び配送モジュールをハウジング102に取り付ける。具体的には、ハウジング102は、ドーパントインジェクタ開口部122を画定し、第1のフランジ120は、フランジがドーパントインジェクタ開口部を覆うようにハウジングに取り付けられる。
【0020】
注入モジュール116は、注入モジュールがチャンバ104の外側に配置されるように、第1のフランジ120の第1の側124に取り付けられる。配送モジュール118は、配送モジュールがチャンバ104内に配置されるように、第1のフランジ120の第2の側126に取り付けられる。注入モジュール116は、ドーパントを受け取り、ドーパントを配送モジュール118に導き(channel)、配送モジュールは、注入モジュールからドーパントを受け取り、本明細書に記載されるようにドーパントをチャンバ104内に注入する。この実施形態では、注入モジュール116は、液体ドーパントを受け取り、配送モジュール118は、本明細書に記載されるように、チャンバ104内において液体ドーパントを気化させる。
【0021】
図2に示すように、注入モジュール116は、第2のフランジ128と、第2のフランジ128に取り付けられたドーピングチャンバ130と、ドーピングチャンバの上部に配置された作動機構132と、冷却流体をドーパントインジェクタ114に導くための冷却流体導管134及び136と、第1のフランジ120及び第2のフランジ128に取り付けられたベローズ(bellows)138と、材料(material)をドーパントインジェクタに出し入れして導くためのポート140、142及び144とを含む。ドーピングチャンバ130は、第2のフランジ128の第1の側146に取り付けられ、ベローズ138は、第2のフランジ128の第2の側148及び第1のフランジ120の第1の側124に取り付けられ、ポート140、142、144は、ドーピングチャンバに取り付けられてドーピングチャンバから延びる。ベローズ138は、注入モジュール116が、シリコン融液110に隣接してインゴット引上げ内側チャンバ104内に配置されることを可能にする。具体的には、ベローズ138は、注入モジュール116がシリコン融液110に対して垂直に移動されることを可能にする。
【0022】
冷却流体導管134及び136は、冷却流体供給部134及び冷却流体戻し部136を含む。冷却流体導管134及び136は、作動機構132を通じてドーピングチャンバ130内に延びる。作動機構132は、本明細書に記載されるように、ドーパントインジェクタ114内のバルブを作動させるためのエアシリンダ150を含む。ポート140、142、及び144は、ドーパントインジェクタ114に不活性ガスを供給するための不活性ガスポート140、ドーピングチャンバ130の圧力を測定するための圧力センサポート142、及びドーピングチャンバ内に真空を生成するための真空ポート144を含む。
【0023】
図3に示すように、注入モジュール116はまた、ドーパント添加管152と、第1のリザーバ156を画定する第1のリザーバ管154と、第2のリザーバ160を部分的に画定する第2のリザーバ管158と、第1のバルブ162と、第2のバルブ164と、アクチュエータ166と、作動シャフト168と、冷却ジャケット170とを含む。ドーパント添加管152、第1のリザーバ管154、第1のリザーバ156、及び第1のバルブ162はすべて、ドーピングチャンバ130内に配置される。第2のリザーバ管158、第2のリザーバ160、作動シャフト168、及び冷却ジャケット170はすべて、ドーピングチャンバ130から延びる。第2のリザーバ管158は、作動シャフト168を取り囲んでそれらの間に第2のリザーバ160を画定し、冷却ジャケット170は、第2のリザーバ管158を取り囲む。
【0024】
ドーパント添加管152は、第1のリザーバ156に連結され、第1のバルブ162は、作動シャフト168によって選択的に作動され、第1のリザーバ内の液体ドーパントを維持又は放出する。ドーパント添加管152は、液体ドーパントを受け取り、液体ドーパントを第1のリザーバ156に導く。第1のバルブ162は、閉じられ、液体ドーパントを第1のリザーバ156内に維持する。作動シャフト168によって作動されると、第1のバルブ162は、開いて、本明細書に記載されるように、液体ドーパントを第2のリザーバ160に導く。
【0025】
第1のリザーバ156は、第2のリザーバ160に連結され、第1のバルブ162は、作動シャフト168によって選択的に作動され、第1のリザーバ内の液体ドーパントを第2のリザーバに放出する。第2のリザーバ160は、液体ドーパントを受け取り、液体ドーパントを配送モジュール118に導く。第2のバルブ164は、閉じられ、液体ドーパントを第2のリザーバ160内に維持する。作動シャフト168によって作動されると、第2のバルブ164は、開いて、本明細書に記載されるように、液体ドーパントを配送モジュール118に導く。冷却ジャケット170は、冷却流体供給部134から冷却流体を受け取り、冷却流体を冷却流体戻し部136に戻す。冷却流体は、注入モジュールの過熱を防止するために注入モジュール116を冷却する。
【0026】
インゴット引上げ内側チャンバ104は、第1の圧力に維持され、ドーピングチャンバ130は、第1の圧力より高い第2の圧力に維持される。具体的には、インゴット引上げ内側チャンバ104の第1の圧力は、真空に維持され、ドーピングチャンバ130の第2の圧力は、液体ドーパントも大気圧に維持されるように大気圧に維持される。代替実施形態では、インゴット引上げ内側チャンバ104の第1の圧力は、大気圧より低い圧力に維持され、ドーピングチャンバ130の第2の圧力は、第1の圧力を超える圧力に維持される。従って、液体ドーパントは、液体ドーパントの圧力が第1の圧力(真空)に低下されるインゴット引上げ内側チャンバ104に液体ドーパントが注入されるまで、第2の圧力(大気圧)に維持される。
【0027】
アクチュエータ164は、ドーピングチャンバ130内に配置され、エアシリンダ150及び作動シャフト168に連結されている。エアシリンダ150は、アクチュエータ160を作動させ、アクチュエータは、第1のバルブ162及び作動シャフト168を作動させる。作動シャフト168は、第2のバルブ164を作動させる。より具体的には、図示される実施形態では、アクチュエータ160は、線形アクチュエータであり、線形アクチュエータは、第1のバルブ162及びシャフト168を直線的に並進させ、第1のバルブを開き、第2のバルブ164を直線的に並進させ、第2のバルブを開く。代替実施形態では、作動シャフト168は、第1のバルブ162と第2のバルブ164の両方に連結され、第1のバルブと第2のバルブの両方を作動させる。幾つかの実施形態では、作動シャフト168は、第1のバルブ162と第2のバルブ164とを独立して作動させる。代替実施形態では、作動シャフト168は、第1のバルブ162と第2のバルブ164とを同時に作動させる。例えば、作動シャフト168は、インゴット引上げ内側チャンバ104内の第1の圧力を維持するために、第2のバルブ164が開いているときに第1のバルブ162が閉じ、第2のバルブ164が閉じているときに第1のバルブ162が開いているように、第1のバルブ162及び第2のバルブ164を同時に作動させることができる。
【0028】
配送モジュール118は、供給管172と、供給管内に配置された気化カップ174とを含む。供給管172は、インゴット引上げ内側チャンバ104内に配置され、気化ドーパントをシリコン融液108に導く。具体的には、気化管174は、インゴット引上げ内側チャンバ104内からの放射熱によって加熱され、第2のリザーバ160から液体ドーパントを受け取る。インゴット引上げ装置100は、シリコン融液108を溶融し、インゴット引上げ内側チャンバ104内に熱を放射する加熱システム176を含む。液体ドーパントは、インゴット引上げ内側チャンバ104内において気化ドーパントに気化され、インゴット引上げ内側チャンバでは、液体ドーパントは、気化カップ174を用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントをインゴット引上げ内側チャンバ104内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって、フラッシュ蒸発によって気化される。
【0029】
供給管172は、インゴット引上げ外側ハウジング102から最も遠い遠位端178と、インゴット引上げ外側ハウジングに最も近い近位端180とを有する。供給管軸Aは、供給管172の遠位端178及び近位端180を通じて延びる。供給管172は、石英又は他の適切な材料で作ることができる。
【0030】
供給管172は、供給管軸Aに沿ってインゴット引上げ内側チャンバ104内において移動可能である。供給管172は、シリコン融液108に向かってインゴット引上げ内側チャンバ104内に降下させることができる。具体的には、供給管172は、冷却ジャケット170に取り付けられ、冷却ジャケットは、ドーピングチャンバ130に取り付けられる。ベローズ138は、ドーピングチャンバ130、冷却ジャケット170、及び供給管172が、シリコン融液108に向かって、及びシリコン融液108から離れて、供給管軸Aに沿って移動することを可能にする。ドーピングチャンバ130、冷却ジャケット170、及び供給管172を移動させることによって、供給管172の遠位端178は、遠位端がシリコン融液108から離れて配置される上昇位置と、遠位端がシリコン融液108の表面に隣接して配置される下降位置との間において移動する。熱シールド112は、供給管172がシリコン融液108に近づくための通路を提供するために、そこに形成されたチャネル182を含み得る。
【0031】
供給管172の下降位置では、気化ドーパントは、供給管を下方へ移動し、シリコン融液108の表面に指向される。気化ドーパントは、供給管172の遠位端178を通過してシリコン融液108に接触し、シリコン融液にドーピングさせられる及び/又はカウンタードーピングさせられる。ドーピングチャンバ130、冷却ジャケット170、及び供給管172が、上昇位置から下降位置に移動されるとき、気化カップ174とシリコン融液108及び加熱システム176との間の距離が(例えば、操作者によって)変更され得る。
【0032】
気化カップ174は、レシーバ184と、レシーバ内に配置された気化プラグ186とを含み、レシーバを液体受容部188と蒸気チャネル部190とに分ける。レシーバ184及び気化プラグ186は、液体受容部188を画定し、レシーバ184は、気化ドーパントを液体受容部から供給管172に導くチャネル192を画定する。気化プラグ186は、第1の端部194及び第2の端部196を有し、気化ドーパントを液体受容部188から蒸気チャネル部190に導く、第1の端部から第2の端部に延びる蒸気チャネル198を画定する。
【0033】
加熱システム176からの余剰熱は、気化プラグ186を加熱し、第2のバルブ164は、液体ドーパントを第2のリザーバ160から液体受容部188に、そして気化プラグ上に導く。気化プラグ186は、気化プラグ186を用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントを液体受容部188内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって、フラッシュ蒸発によって、液体ドーパントを気化ドーパントに気化させる。蒸気チャネル198は、気化ドーパントを蒸気チャネル部190のチャネル192に導き、チャネル192は、気化ドーパントを供給管172に導き、シリコン融液108に導く。さらに、プロセスガス(例えば、アルゴン)は、ドーピングチャンバ130を通じて、気化ドーパントを気化カップ174及び供給管172を通じて導くための不活性ガスポート140を通じて循環されてもよい。
【0034】
圧力センサポート142は、インゴット引上げ内側チャンバ104内の圧力の測定を可能にする。真空ポート144は、ポンプダウンとリークテストを可能にする。冷却ジャケット170は、注入モジュールの過熱を防止するように注入モジュール116を冷却する。
【0035】
本開示の例示的な方法を、図9及び図10に示す。本方法は、液相のホウ酸からホウ素含有ガスを生成するように構成されたインゴット引上げ装置100を用いて実行され得る。本方法を例示するために、図1図8に示されるインゴット引上げ装置100を参照して本方法を説明することがあるが、特に明記しない限り、本方法はインゴット引上げ装置100に限定されるべきではない。
【0036】
図8を参照すると、シリコンインゴットを準備するための方法の実施形態に従って、シリコン融液は、インゴット引上げ装置100のインゴット引上げ内側チャンバ104内に配置されたるつぼ106内に準備される。るつぼ106は、サセプタ(図示せず)によって支持され得る。インゴット引上げ装置100は、るつぼ106を回転させる、及び/又はインゴット引上げ装置100内にるつぼ106を垂直に移動させるように構成され得る。
【0037】
シリコン融液を準備するために、多結晶シリコンは、るつぼ106に添加される。多結晶シリコンは、多結晶シリコンをシリコン融液108に融解させるために、シリコンの溶融温度(約1414℃)以上に加熱される。加熱システム176は、多結晶シリコンを溶融させるために作動される。例えば、るつぼ106の下方又は側方にある1つ又は複数のヒータ200は、シリコンを溶融させるために作動される。
【0038】
融液108が製造される前又は後に、融液は、融液中のp型不純物(例えば、ホウ素)を補償するために、ドーパント、典型的にはn型ドーパントを用いてドーピングされ得る。n型ドーパントは、インゴット110の成長が開始する前に添加され得る。融液を補償することによって、結果として生じるインゴット110の抵抗率が増加され得る。例えば、インゴットの種端部(すなわち、インゴットの頭頂部に最も近いインゴットの部分)は、少なくとも約30Ω・cm、又は他の実施形態にあるように、少なくとも約35Ω・cm、少なくとも約40Ω・cm、少なくとも約45Ω・cm、少なくとも約50Ω・cm、少なくとも約55Ω・cm、少なくとも約60Ω・cm、又は約30Ω・cmから約60Ω・cmの範囲である抵抗率を有し得る。好適なn型ドーパントは、リン及びヒ素を含む。
【0039】
融液108が準備されると、単結晶シリコンインゴット110は、融液108から引き上げられる。種結晶202は、種チャック204に固定されている。種チャック204及び種結晶202は、種結晶202がシリコン融液108の表面に接触するまで下降される。種結晶202が融解し始めると、引き上げ機構は、単結晶インゴット110を成長させるまで種結晶202をゆっくりと引き上げる。プロセスガス(例えば、アルゴン)は、インゴット引上げ装置100のインゴット引上げ内側チャンバ104を通じて循環される。プロセスガスは、インゴット引上げ内側チャンバ104内に雰囲気を作る。
【0040】
本開示の方法の実施形態は、液相のホウ酸(HBO)のソースを提供することを含む。ホウ酸は、約99%以上の純度、99.9%以上の純度、又は99.99%以上の純度など、比較的純粋であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ酸は、比較的同位体的に純粋(すなわち、ホウ素11)であり得る。
【0041】
ホウ素含有ガスは、液相のホウ酸から生成される。生成されるガスは、一般に、ホウ酸(HBO)又はその誘導体(B 錯体)の形態であり、他の化合物(例えば、ジボラン(B)又は二水素化ホウ素(BH))ではない。しかしながら、他のホウ素化合物がホウ素含有ガスに添加されてもよいことが理解されるべきである。
【0042】
液相のホウ酸は、ホウ素含有ガスを生成するために気化温度(約300℃)以上に加熱され得る。例えば、液相のホウ酸は、インゴット引上げ装置100内のシリコン融液108から放射される熱によって又は加熱システム176によって加熱され得る。
【0043】
ホウ素含有ガスが生成されると、ホウ素含有ガスは、ホウ素が融液中に拡散することを可能にするためにシリコン融液108の表面に接触する。ホウ素が融液に入ると、ホウ素は、リンの比較的低い偏析係数のために融液中に濃縮したリンを補償し、それによって、インゴット引上げ装置100内に形成するインゴット110の残りの部分の抵抗率を増加させる。
【0044】
図8は、インゴット長さの関数としてのインゴット抵抗率のグラフ206である。図8に示すように、シリコン融液108は、インゴット110がシリコン融液から引き上げられるとき、本明細書で説明するように複数回カウンタードーピングされ得る。具体的には、インゴット110の抵抗率は、リンの濃度のため、インゴットがシリコン融液108から引き上げられるとき低下し得る。シリコン融液108は、インゴットの大部分が顧客仕様(例えば、高抵抗率)内にあるように製造中にインゴットの抵抗率を増加させるために、インゴット110がシリコン融液108から引き上げられるとき、本明細書で説明するようにドーパントインジェクタ114を用いて複数回カウンタードーピングされ得る。より具体的には、図8に示すように、シリコン融液108は、インゴット110がシリコン融液108から引き上げられるとき、2回カウンタードーピングされる。従って、ドーパントインジェクタ114は、インゴット110の製造中にシリコン融液108を複数回カウンタードーピングし、インゴットの大部分の抵抗率を顧客仕様(例えば、高抵抗率)内に維持することによって、インゴット引上げ装置100の効率を向上させる。
【0045】
図9は、インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを製造するための方法300のフロー図である。方法300は、るつぼに多結晶シリコンを添加すること302を含み、るつぼは、インゴット引上げ内側チャンバ内に配置される。方法300はまた、シリコン融液をるつぼ内に形成させるために多結晶シリコンを加熱すること304を含む。方法300はさらに、シリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げること306を含む。方法300はまた、液体ドーパントをインゴット引上げ装置内に注入すること308を含む。方法300はさらに、インゴット引上げ装置内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させること310を含む。方法300はまた、単結晶シリコンインゴットを融液から引き上げる間に、気化ドーパントをドーパントとして融液に入れるために、気化ドーパントを融液の表面と接触させること312を含む。
【0046】
図10は、インゴット引上げ装置内に配置されたるつぼ内に保持されたシリコン融液から引き上げられる単結晶シリコンインゴットにドーピングするための方法400のフロー図である。インゴット引上げ装置は、ハウジングと、ハウジング内に延びるドーパントインジェクタと、ハウジングと共に配置された加熱システムとを含む。ドーパントインジェクタは、ハウジング内に配置されたドーパント注入管と、ドーパント注入管及びハウジング内に配置された気化カップとを含む。方法400は、加熱システムを使用して気化カップを加熱すること402を含む。方法400はまた、ハウジングの内部の圧力を第1の圧力に維持すること404を含む。方法400はさらに、液体ドーパントをドーパント注入管及び気化カップ内に注入すること406を含む。液体ドーパントの圧力は、ドーパント注入管及び気化カップ内に注入される前の第1の圧力より高い第2の圧力に維持される。方法400はまた、ハウジング内において液体ドーパントを気化ドーパントに気化させること408を含む。液体ドーパントは、気化カップを用いて液体ドーパントを加熱し、液体ドーパントをハウジング内に注入することによって液体ドーパントの圧力を第2の圧力から第1の圧力に低下させることによって、フラッシュ蒸発によって気化される。方法400はさらに、ドーパント注入管を使用して、気化ドーパント410をハウジング内に導くこと410を含む。
【0047】
シリコン融液から単結晶シリコンインゴットを製造するための従来の方法と比較して、本開示のシステム及び方法は、いくつかの利点を有する。具体的には、インゴットの大部分は、顧客仕様(例えば、高抵抗率)内であり得る、及び/又はインゴットのタイプ変化が防止され得る。より具体的には、本開示のシステム及び方法は、リンによる偏析の影響を中和するために、補償ホウ素がインゴットに組み込まれるようにドーピング速度を制御する。従って、正味の自由電荷キャリアは、インゴット長さにわたって制限の間に維持され得る。インゴットの目標抵抗率に応じて、ドーピング速度を制御することは、インゴットのn型からp型への、又は他の例ではp型からn型へのタイプ変化を防止することができる。液相のホウ酸は、比較的低い気化温度を有し、それは、ドーパントガスが比較的容易に生成されることを可能にする。さらに、気化カップは、インゴット引上げハウジング内に配置することができ、それは、融液の熱及び加熱システムがドーパントを気化させることを可能にする。供給管は、融液からの距離を制御することができるようにインゴット引上げ装置内において移動可能であり、それは、融液へのドーパント添加速度が制御されることを可能にする。従って、本明細書に記載されるシステム及び方法は、インゴットの製造中にシリコン融液を複数回カウンタードーピングし、インゴットの大部分の抵抗率を顧客仕様(例えば、高抵抗率)内に維持することによって、インゴット引上げ装置の効率を向上させる。
【0048】
本明細書で使用されるように、寸法、濃度、温度又は他の物理的若しくは化学的性質若しくは特性の範囲と共に使用される場合、用語「約」、「実質的に」、「本質的に」及び「およそ」は、例えば、丸め、測定方法論又は他の統計的変動から生じる変動を含む、性質又は特性の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動をカバーすることを意味する。
【0049】
本開示の要素又はその実施形態(複数可)を紹介する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「前記(said)」は、要素が1つ又は複数存在することを意味することが意図される。用語「有する(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」及び「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「上(top)」、「下(bottom)」、「側(side)」など)の使用は、説明の便宜のためであり、説明される項目の特定の向きを必要とするものではない。
【0050】
本開示の範囲から逸脱することなく上記の構造及び方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、制限的な意味ではないことを意図する。
図1
図2
図3
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】