(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】気泡塔反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 10/00 20060101AFI20240110BHJP
C07C 2/08 20060101ALI20240110BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01J10/00 104
C07C2/08
C07C11/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515174
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2022009669
(87)【国際公開番号】W WO2023096049
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0162827
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
【テーマコード(参考)】
4G075
4H006
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075BA10
4G075BD27
4G075CA54
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA01
4G075EB01
4G075EC02
4G075EC09
4G075FA01
4H006AA04
4H006AC29
4H006BD81
(57)【要約】
本発明は、気泡塔反応器に関し、下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)と、前記ダウンチャンバの上部に形成された反応領域と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板と、前記ダウンチャンバと連結され、気相反応物を供給する気体供給配管とを含み、前記気体供給配管は、前記ダウンチャンバの内部に延びた噴射部を備え、前記噴射部は、ダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズルを含む気泡塔反応器を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)と、前記ダウンチャンバの上部に形成された液相の反応領域と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板と、前記ダウンチャンバと連結され、気相反応物を供給する気体供給配管とを含み、
前記気体供給配管は、前記ダウンチャンバの内部に延びた噴射部を備え、
前記噴射部は、ダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズルを含む、気泡塔反応器。
【請求項2】
前記噴射部の前記複数個の噴射ノズルは、前記ダウンチャンバの径方向に一列に備えられている、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項3】
前記噴射部は、ダウンチャンバの水平断面の中心を経由して水平方向に延びている、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項4】
前記ダウンチャンバの高さは、前記反応器の直径の2倍以上である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項5】
前記複数個の噴射ノズルは、
前記ダウンチャンバの中心領域に位置する第1噴射ノズルと、
前記ダウンチャンバの内側壁と隣接した領域に位置する第2噴射ノズルと、
前記ダウンチャンバの中心領域および内側壁と隣接した領域との間の領域に位置する第3噴射ノズルとを含み、
前記第1および第3噴射ノズルの噴射方向は、下方垂直方向であり、
前記第2噴射ノズルの噴射方向と前記下方垂直方向がなす角度は、15゜~50゜である、請求項1又は2に記載の気泡塔反応器。
【請求項6】
前記複数個の噴射ノズルは、位置に応じて噴射角が異なる、請求項5に記載の気泡塔反応器。
【請求項7】
前記第1噴射ノズルの噴射角は95゜~120゜であり、
前記第2噴射ノズルの噴射角は15゜~45゜であり、
前記第3噴射ノズルの噴射角は50゜~90゜である、請求項6に記載の気泡塔反応器。
【請求項8】
前記反応領域に連結される1以上の反応媒体供給ラインを含み、
前記反応媒体は、触媒、助触媒、および溶媒を含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項9】
前記反応領域に連結され、前記反応媒体供給ラインの他側に備えられた生成物排出ラインを含む、請求項8に記載の気泡塔反応器。
【請求項10】
気相反応物はエチレンを含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月23日付けの韓国特許出願第10-2021-0162827号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、気泡塔反応器に関し、より詳細には、気泡塔反応器でオリゴマーの製造時に、気体反応物を反応領域に均一に供給して反応媒体の混合効率を向上させるための気泡塔反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。
【0004】
前記アルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応が行われる反応器の形態として、気相のエチレンを反応物として使用して触媒を含む液相の反応媒体を含む反応領域との接触により、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)を行う気泡塔反応器(bubble column reactor)が使用されている。
【0005】
気泡塔反応器は、反応器の下部に備えられたダウンチャンバに気相反応物が供給され、気相反応物は、分散板を介して液相の反応媒体を含む反応領域に流入されるとともに分散され混合される。
【0006】
従来、気体供給配管を介して前記気相反応物をダウンチャンバに供給する際、ダウンチャンバ内で分散板に向かって上方に噴射する方式を採用していたが、この場合、噴射圧によって気相反応物がダウンチャンバ内で十分に混合された状態で分散板を通過することが難しかった。また、反応領域で行われるオリゴマー化反応によって生成される様々な副生成物によって分散板のホールが詰まるなどの問題によって、気相反応物を分散板のみにより均一に供給するのに限界があった。これは、反応領域内で反応媒体と気相反応物との混合効率の低下を引き起こした。
【0007】
したがって、上記のような問題を解決するためには、反応領域に供給される気相反応物の均一な分散および供給のための研究が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、気相反応物を反応領域に供給する前に気泡塔反応器のダウンチャンバ内での気相反応物を十分に均一に分散させた後、反応領域に気相反応物を供給することができる気泡塔反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)と、前記ダウンチャンバの上部に形成された液相の反応領域と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板と、前記ダウンチャンバと連結され、気相反応物を供給する気体供給配管とを含み、前記気体供給配管は、前記ダウンチャンバの内部に延びた噴射部を備え、前記噴射部は、ダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズルを含む気泡塔反応器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気泡塔反応器によると、気体供給配管でダウンチャンバの内部に延びた噴射部を介してダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射することで、気相反応物がダウンチャンバ内で十分に混合されることができる経路および時間を提供し、前記気相反応物が均一な状態で反応領域内に供給されて反応媒体と混合されることができる。
【0011】
また、前記噴射部の噴射ノズルの位置に応じて噴射方向および噴射角を異ならせて設定することで、噴射される気相反応物の均一な混合を達成し、これにより、反応領域内の気相反応物を均一に供給し、反応領域の混合効率を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態による気泡塔反応器の一部を拡大して示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による気泡塔反応器の一部を拡大して示す図である。
【
図4】従来技術による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)および固体(solid)のいずれか一つ以上が含まれたものを意味し得る。
【0015】
本発明において「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、下記
図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明によると、気泡塔反応器100が提供される。前記気泡塔反応器100は、下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)200と、前記ダウンチャンバ200の上部に形成された液相の反応領域300と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板350と、前記ダウンチャンバと連結されて気相反応物を供給する気体供給配管210とを含み、前記気体供給配管210は、前記ダウンチャンバ200の内部に延びた噴射部220を備え、前記噴射部220は、ダウンチャンバ200の下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズル230を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記気泡塔反応器100は、触媒および溶媒(solvent)の存在下で、単量体(monomer)をオリゴマー化反応させてオリゴマー生成物(product)を製造するためのものである。
【0019】
具体的には、前記気泡塔反応器100は、反応領域300を含み、前記反応領域300の一側面に連結される1以上の反応媒体供給ライン310を介して、反応媒体が反応領域300に供給されることができる。
【0020】
一方、前記反応媒体は、触媒、助触媒、および溶媒を含むことができる。前記触媒、助触媒、および溶媒は、それぞれ別の反応媒体供給ライン310を介して供給されることができ、2以上の反応媒体成分が混合された状態で反応媒体供給ライン310を介して反応領域300に供給されることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記単量体は、エチレン単量体を含むことができる。具体的な例として、前記エチレン単量体を含む気相反応物を後述する気泡塔反応器100のダウンチャンバ200内に供給されて、オリゴマー化反応を経て目的とするアルファオレフィン生成物を製造することができる。
【0022】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0023】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレートおよびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0024】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0025】
一方、前記気泡塔反応器100内の反応領域300で触媒、助触媒、および溶媒を含む液体状態の反応媒体内で単量体とのオリゴマー化反応が行われることができる。このように、単量体のオリゴマー化反応が行われる反応媒体からなる領域を反応領域300と定義し得る。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量体化(trimerization)、四量体化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量体化(multimerization)とする。
【0026】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレンの三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0027】
前記気泡塔反応器100は、前記反応領域300に連結され、前記反応媒体供給ラインの他側に備えられた生成物排出ライン320を含むことができ、前記生成物排出ラインを介してオリゴマー化反応の生成物であるアルファオレフインを含む生成物が排出されることができる。前記反応媒体の反応領域300への供給および生成物の反応領域300からの排出は、連続して行われることができる。
【0028】
一方、前記オリゴマー化反応のための単量体を含む気相反応物は、気泡塔反応器100の下部に位置するダウンチャンバ200内に供給された後、分散板350を通過して液相の反応媒体が含まれた反応領域300に供給されることができる。
【0029】
すなわち、前記分散板350は、前記ダウンチャンバ200と前記反応領域300との間に備えられることができるが、前記分散板350の中心部および円周に沿って等間隔で形成されたホールを介して、気相反応物、例えば、単量体がダウンチャンバ200から反応媒体が備えられた反応領域300に均一に分散されて供給されることができる。
【0030】
前記分散板350を介して気相反応物が液相の反応媒体を含む反応領域300に流入されるとともに分散され、分散した気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、液相の反応媒体と気相の反応物の自然な混合が行われる。ここで、分散板350を介して反応領域300に流入される気相反応物の分散力は、前記液相の反応媒体から下方に作用する水頭圧に比べて大きく維持されることで、前記液相の反応媒体が前記反応領域300内に滞留することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記気相反応物は、前記ダウンチャンバ200と連結されて気相反応物を供給する気体供給配管210を介して前記ダウンチャンバ200内に供給されることができる。前記気体供給配管210は、前記ダウンチャンバ200の内部に延びた噴射部220を備え、前記ダウンチャンバ200の下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズル230を含むことができる。前記噴射ノズル230は、噴射される気相反応物の噴射方向および噴射角を調節することができ、所定の噴射圧を付与することができる手段であり、その形態および構造は特に制限されない。
【0032】
すなわち、気相のエチレンなどの気相反応物をダウンチャンバ200に供給する際、ダウンチャンバ200の下面に向かう下方に噴射して供給することで、噴射される気相反応物の流れが前記ダウンチャンバ200の側壁または下面によって衝突するか変化し、気相反応物の前記ダウンチャンバ200の側壁側への移動を誘導することができる。これは、従来、
図4のように、気相反応物分散板に向かって上方に噴射する場合に比べて、気相反応物の上昇移動時の中央集中度を緩和することができる。すなわち、本発明は、ダウンチャンバ200内から気相反応物を均一に混合させた状態で前記分散板350を通過させることができ、これにより、反応領域300の混合効率を向上させ、さらには、反応領域の全体にわたり均一な反応を誘導して、転化率を向上させることができる効果を奏することができる。
【0033】
図2および
図3を参照すると、前記気体供給配管210と前記噴射部220は、一つの一体化した配管として構成されることができる。一方、前記噴射部220は、前記ダウンチャンバ200の水平断面(横断面)の水平な方向に気体供給配管210からダウンチャンバの内部200に延びた形態であることができる。すなわち、前記噴射部220は、ダウンチャンバ200の水平断面(横断面)の中心を経由して水平方向に延びた形態であることができる。また、前記噴射部220に備えられた複数個の噴射ノズル230、240、250、250’、260、260’は、ダウンチャンバの径方向、すなわち、噴射部220の延長方向に沿って一列に備えられたことができる。
【0034】
一方、前記複数個の噴射ノズルは、位置に応じて、噴射方向および噴射角が相違していることができる。
【0035】
すなわち、本発明の一実施形態によると、前記複数個の噴射ノズルは、前記ダウンチャンバ200の中心領域に位置する第1噴射ノズルと、前記ダウンチャンバ200の内側壁と隣接した領域に位置する第2噴射ノズルと、前記ダウンチャンバ200の中心領域および内側壁と隣接した領域との間の領域に位置する第3噴射ノズルとを含むことができる。
【0036】
具体的には、前記第1噴射ノズルは、前記ダウンチャンバの水平断面の中心にまたは前記水平断面の中心に最も隣接する噴射ノズルであることができ、前記第2噴射ノズルは、ダウンチャンバの内側壁に最も隣接する噴射ノズルであることができ、第3噴射ノズルは、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に位置する噴射ノズルであることができる。
【0037】
より具体的には、
図2を参照すると、噴射部220に備えられた複数個の噴射ノズルの個数が奇数個である場合、前記第1噴射ノズル260は、ダウンチャンバ200の中心軸Cと噴射部220が交差する地点に備えられることができる。一方、ダウンチャンバ200の内側壁と隣接した第2噴射ノズル240、240’が備えられることができ、前記第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に前記第3噴射ノズル250、250’が備えられることができる。
【0038】
ここで、前記第1および第3噴射ノズル250、250’、260の噴射方向は、下方垂直方向であり、前記第2噴射ノズル240、240’の噴射方向と前記下方垂直方向がなす角度は、15゜~50゜であることができる。ここで、噴射方向とは、ノズルの排出口の方向として、ノズルの中心軸が向かう方向を意味する。すなわち、前記第1および第3噴射ノズル250、250’、260の噴射方向は、ダウンチャンバ200の下面に向かい、前記第2噴射ノズル240、240’は、それぞれ隣接する内側壁に向かって傾斜した噴射方向を有する。これは、ダウンチャンバ200の内側壁と下面が接する地点部位に対する集中的な噴射により、気相反応物の当該地点での停滞を防止し、よりスムーズな気体反応物の流動を誘導して、混合効率を極大化することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記複数個の噴射ノズルは、位置に応じて、噴射角が相違することができる。ここで、噴射角は、噴射ノズルの排出口を中心に排出される気相反応物の領域がなす角度を意味する。この場合、前記第1噴射ノズル260の噴射角は、95゜~120゜であり、前記第2噴射ノズル240、240’の噴射角は、15゜~45゜であり、前記第3噴射ノズル250、250’の噴射角は、50゜~90゜であることができる。気相反応物を噴射する際、前記ダウンチャンバ200の中心領域に位置する第1噴射ノズル260は、噴射角を相対的に広くして噴射し、前記ダウンチャンバ200の側壁に隣接した第2噴射ノズル240、240’は、狭い噴射角で噴射することができる。一方、前記第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に前記第3噴射ノズル250、250’が位置する場合には、前記第1噴射ノズル260の噴射角よりは狭い且つ前記第2噴射ノズル240、240’の噴射角よりは広い噴射角で噴射することができる。前記複数個の噴射ノズルを介して排出される気相反応物の流量が同一であるか類似する場合に、噴射角が広い第1噴射ノズル260に比べて、噴射角が狭い第2噴射ノズル240、240’の噴射圧が、最も大きいと言える。
【0040】
これにより、複数個の噴射ノズルを介して噴射される気相反応物の流動による相互混合を図り、気相反応物のダウンチャンバ200の下面および内側面との衝突による渦流の形成を誘導して、気相反応物の混合をより活性化することができる。なによりも内側壁に隣接した第2噴射ノズル240、240’を介して気相反応物を狭い噴射角で噴射することで、前記気相反応物の上昇移動時の中央集中度を緩和することができる。
【0041】
一方、
図3を参照すると、噴射部220に備えられた複数個の噴射ノズルの個数が偶数個である場合に、前記第1噴射ノズル260、260’は、ダウンチャンバ200の中心軸Cを中心として互いに対応するように離隔して備えられることができる。一方、ダウンチャンバ200の内側壁と隣接した第2噴射ノズル240が備えられることができ、前記第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に前記第3噴射ノズル250が備えられることができる。前記複数個の噴射ノズルの個数が偶数個である場合にも、第1~第3噴射ノズルの噴射方向および噴射角は、前記複数個の噴射ノズルの個数が奇数個である場合と同様の噴射方向および噴射角を有することができる。
【0042】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による気泡塔反応器100は、前記ダウンチャンバ200の高さHが前記反応器直径Rの2倍以上であることができて、具体的には、前記高さHは、反応器直径Rの2倍~3倍であることができる。ここで、前記ダウンチャンバ200の高さHは、前記ダウンチャンバ200の下面から前記分散板350までの長さである。
図4に示される従来の気泡塔反応器100’に比べて、前記ダウンチャンバ200の高さHを反応器の直径Rの2倍以上に長くすることで、ダウンチャンバ200の内部に噴射されて上昇する気相反応物が上昇空間を十分に確保し、これにより、気相反応物の分散効率を向上させることができる。一方、ダウンチャンバ200の高さHを反応器直径Rの3倍以下にすることで、分散効率に対して気泡塔反応器のサイズが過剰に大きくなることを防止することができる。
【0043】
また、前記噴射部220の高さhと前記ダウンチャンバ200の高さHとの割合h/Hは、0.1~0.5であることができ、具体的には0.2~0.3であることができる。前記高さの割合h/Hが0.1未満の場合、前記噴射部220が前記ダウンチャンバ200の下部の表面と過剰に近く隣接するため、噴射ノズルの噴射方向および噴射角を異ならせて噴射することによる混合効率の効果が十分に発揮され難いだけでなく、噴射される気体の流れにも悪影響を及ぼし得る。一方、前記高さの割合h/Hが0.5超の場合、前記噴射部220がダウンチャンバ200の下部の表面と過剰に離隔するため、噴射される気体が前記ダウンチャンバ200の下部の表面と接触していない状態で、上昇方向の流れに転換されることがあり、混合効率が減少し得る。
【0044】
一方、前記気泡塔反応器100の反応領域300に供給された気相反応物は、溶媒および触媒が存在する液体状態の反応媒体を通過しながら触媒反応によりオリゴマー化反応が行われる。この場合、反応領域300内の気相反応物と反応媒体が互いに混在し、2相として存在する。前記反応物のオリゴマー化反応により生成されたオリゴマー生成物は、液相の生成物排出ストリームとして生成物排出ライン320を介して排出されることができる。反応媒体内でオリゴマー化反応していない未反応の単量体および溶媒を含む気相の第1排出ストリームは、反応領域300の上部の分離区域400に移動し得る。
【0045】
具体的には、前記反応器100内では、単量体の触媒反応によって、目的とするオリゴマー生成物以外に固体状態の高分子が副生成物として生成されて液相の反応媒体に浮遊する。ここで、単量体を含む多量の気相反応物が分散板350を介して反応領域300に供給される場合、その流入される速度によって固体状態の高分子と液体状態の溶媒が気相の未反応の単量体とともに飛沫同伴(entrainment)されて、第1排出ストリームとして排出されることができる。
【0046】
このような第1排出ストリームが分離区域400を通過することで、上向き移動速度が減少することができ、飛沫同伴された高分子および溶媒が、前記第1排出ストリーム内で容易に除去されることができる。
【0047】
一方、前記分離区域400を通過した第1排出ストリームは、前記分離区域400の上部に位置する凝縮領域500に導入され、冷却媒体510によって冷却される前記凝縮領域500で凝縮された溶媒は、分離区域400を経て反応器の反応領域に還流されて、オリゴマー化反応に再使用することができる。一方、凝縮されていない気相成分は、気体排出配管520を介して気泡塔反応器100の外部に排出されることができる。
【0048】
また、前記生成物排出ストリームは、オリゴマー化反応により生成されたオリゴマー生成物および溶媒を含むことができ、前記オリゴマー生成物と溶媒は、さらなる分離装置を介して分離されることができる。分離された溶媒は、オリゴマー製造工程内で再使用されることができる。また、前記単量体としてエチレン単量体を用いてオリゴマー化反応を行った場合を例にあげると、オリゴマー生成物は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むことができる。
【0049】
以上、本発明による気泡塔反応器について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による気泡塔反応器を実施するために適切に応用され用いられることができる。
【符号の説明】
【0050】
100・・・・気泡塔反応器
200・・・・ダウンチャンバ
210・・・・気体供給配管
220・・・・噴射部
230・・・・噴射ノズル
240・・・・第2噴射ノズル
250・・・・第3噴射ノズル
260・・・・第1噴射ノズル
300・・・・反応領域
310・・・・反応媒体供給ライン
320・・・・生成物排出ライン
350・・・・分散板
400・・・・分離区域
500・・・・凝縮領域
520・・・・気体排出配管
R・・・・・・反応器直径
C・・・・・・中心軸
H・・・・・・ダウンチャンバ200の高さ
h・・・・・・噴射部220の高さ
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)と、前記ダウンチャンバの上部に形成され
た反応領域と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板と、前記ダウンチャンバと連結され、気相反応物を供給する気体供給配管とを含み、
前記気体供給配管は、前記ダウンチャンバの内部に延びた噴射部を備え、
前記噴射部は、ダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズルを含む、気泡塔反応器。
【請求項2】
前記噴射部の前記複数個の噴射ノズルは、前記ダウンチャンバの径方向に一列に備えられている、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項3】
前記噴射部は、ダウンチャンバの水平断面の中心を経由して水平方向に延びている、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項4】
前記ダウンチャンバの高さは、前記反応器の直径の2倍以上である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項5】
前記複数個の噴射ノズルは、
前記ダウンチャンバの中心領域に位置する第1噴射ノズルと、
前記ダウンチャンバの内側壁と隣接した領域に位置する第2噴射ノズルと、
前記ダウンチャンバの中心領域および内側壁と隣接した領域との間の領域に位置する第3噴射ノズルとを含み、
前記第1および第3噴射ノズルの噴射方向は、下方垂直方向であり、
前記第2噴射ノズルの噴射方向と前記下方垂直方向がなす角度は、15゜~50゜である、請求項1又は2に記載の気泡塔反応器。
【請求項6】
前記複数個の噴射ノズルは、位置に応じて噴射角が異なる、請求項5に記載の気泡塔反応器。
【請求項7】
前記第1噴射ノズルの噴射角は95゜~120゜であり、
前記第2噴射ノズルの噴射角は15゜~45゜であり、
前記第3噴射ノズルの噴射角は50゜~90゜である、請求項6に記載の気泡塔反応器。
【請求項8】
前記反応領域に連結される1以上の反応媒体供給ラインを含み、
前記反応媒体は、触媒、助触媒、および溶媒を含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項9】
前記反応領域に連結され、前記反応媒体供給ラインの他側に備えられた生成物排出ラインを含む、請求項8に記載の気泡塔反応器。
【請求項10】
気相反応物はエチレンを含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)と、前記ダウンチャンバの上部に形成された反応領域と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板と、前記ダウンチャンバと連結され、気相反応物を供給する気体供給配管とを含み、前記気体供給配管は、前記ダウンチャンバの内部に延びた噴射部を備え、前記噴射部は、ダウンチャンバの下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズルを含む気泡塔反応器を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明によると、気泡塔反応器100が提供される。前記気泡塔反応器100は、下部に形成されたダウンチャンバ(down chamber)200と、前記ダウンチャンバ200の上部に形成された反応領域300と、前記ダウンチャンバと前記反応領域との間に形成された分散板350と、前記ダウンチャンバと連結されて気相反応物を供給する気体供給配管210とを含み、前記気体供給配管210は、前記ダウンチャンバ200の内部に延びた噴射部220を備え、前記噴射部220は、ダウンチャンバ200の下方に気相反応物を噴射する複数個の噴射ノズル230を含むことができる。
【国際調査報告】