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特表2024-502453リチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-リチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240112BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240112BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240112BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541108
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2021020170
(87)【国際公開番号】W WO2022149792
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0001480
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ファン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】イン・ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ホン・リョル・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・シン
(72)【発明者】
【氏名】スン・リョン・オ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ボン・チェ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H050AA10
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
(57)【要約】
リチウム塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、該添加剤は、下記化学式1で表される第1化合物、及び下記化学式2で表される第2化合物を含み、第1化合物及び第2化合物の混合重量比が1:9ないし9:1範囲である、リチウム二次電池用電解質、並びにそれを含むリチウム二次電池が提示される:

化学式1で、X、RないしR、及びn、そして化学式2、A及びAは、詳細な説明で定義されている通りである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、
前記添加剤は、下記化学式1で表される第1化合物、及び下記化学式2で表される第2化合物を含み、
前記第1化合物及び前記第2化合物の混合重量比が1:9ないし9:1範囲である、リチウム二次電池用電解質:
【化1】
前記化学式1で、
は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であり、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数であり、
【化2】
前記化学式2で、
及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1ないし5のアルキレン基;カルボニル基;スルフィニル基;またはエーテル結合を介し、複数の置換もしくは非置換のアルキレン単位が結合した炭素数2ないし6の二価基である。
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物と、前記化学式2で表される第2化合物との混合重量比は、1:5ないし5:1範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項3】
前記第1化合物の含量は、前記電解質総重量を基準に、0.05ないし10重量%範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項4】
前記第2化合物の含量は、前記電解質総重量を基準に、0.05ないし10重量%範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
前記第1化合物は、下記化学式1-1で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化3】
前記化学式1-1で、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数である。
【請求項6】
前記第1化合物は、下記化学式1-1Aまたは化学式1-1Bで表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化4】
前記化学式1-1A及び1-1Bで、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1ないしC10のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC10のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC10のアルケニル基、または置換もしくは非置換のC2ないしC10のアルキニル基である。
【請求項7】
前記第1化合物は、下記の化学式1-2ないし化学式1-9で表される化合物のうちから選択された1以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化5A】
【化5B】
【請求項8】
前記第2化合物は、下記化学式2-1で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化6】
前記化学式1-1で、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数であり、
mは、1ないし5の整数である。
【請求項9】
第2化合物は、下記化学式2-2ないし化学式2-19で表される化合物のうちから選択された1以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化7A】
【化7B】
【化7C】
【請求項10】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(2≦x≦20、2≦y≦20)、LiCl、LiI、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide(LiFSI))、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、LiPO、及び下記化学式3ないし6で表される化合物によってなる群のうちから選択された1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化8】
【請求項11】
前記リチウム塩の濃度が、0.01ないし5.0Mである、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項12】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配される、請求項1ないし11のうち1項に記載の電解質と、を含むリチウム二次電池。
【請求項13】
前記正極が、下記化学式7で表される化合物を含む、請求項12に記載のリチウム二次電池:
[化学式7]
LiNiCo2-b
前記化学式7で、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.6≦x<1、0<y≦0.3、0<z≦0.3、x+y+z=1、Mはマンガン(Mn)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びボロン(B)によってなる群のうちから選択された1以上であり、
Aは、F、S、Cl、Br、またはそれらの組み合わせである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンのような携帯用電子機器の駆動電源として使用される。
再充電が可能なリチウム二次電池は、既存の鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などと比較し、単位重量当たりエネルギー密度が高く、高速充電が可能である。
【0003】
リチウム二次電池は、高い駆動電圧で作動するので、リチウムと反応性が高い水系電解質が使用されえない。リチウム二次電池用電解質としては、一般的に、有機電解質が使用される。該有機電解質は、リチウム塩が有機溶媒に溶解されて製造される。該有機溶媒は、高電圧で安定しており、イオン伝導度と誘電率とが高く、粘度が低いことが望ましい。
【0004】
しかしながら、リチウム二次電池用電解質として、リチウム塩を含む有機電解質が使用されれば、負極/正極と電解質との副反応により、リチウム二次電池の寿命特性及び高温安定性が低下されてしまう。
【0005】
従って、向上された寿命特性及び高温安定性を有するリチウム二次電池を提供することができるリチウム二次電池用電解質が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、電池性能を向上させることができるリチウム二次電池用電解質を提供するものである。
他の一態様は、前記リチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様により、リチウム塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、前記添加剤は、下記化学式1で表される第1化合物、及び下記化学式2で表される第2化合物を含み、前記第1化合物及び前記第2化合物の混合重量比が1:9ないし9:1範囲である、リチウム二次電池用電解質が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1で、
は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であり、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数であり、
【化2】
前記化学式2で、
及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1ないし5のアルキルレン基;カルボニル基;スルフィニル基;またはエーテル結合を介し、複数の置換もしくは非置換のアルキレン単位が結合した炭素数2ないし6の二価基である。
【0010】
他の態様により、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配される前述の電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
一具現例によるリチウム二次電池用電解質を利用すれば、高温保管時、電池抵抗の増大が抑制され、リチウム二次電池の寿命特性及び高温安定性が向上されうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一具現例によるリチウム二次電池の模式図である。
図2】実施例3及び比較例1,3及び6によるリチウム二次電池の高温保存後の正極のニッケル(Ni)溶出量測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、例示的な具現例によるリチウム二次電池用電解質、及びそれを含むリチウム二次電池につき、さらに詳細に説明する。
一具現例によるリチウム二次電池用電解質は、リチウム塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、前記添加剤は、下記化学式1で表される第1化合物、及び下記化学式2で表される第2化合物を含み、前記第1化合物及び前記第2化合物の混合重量比が1:9ないし9:1範囲である。
【0014】
【化3】
前記化学式1で、
は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であり、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数であり、
【化4】
前記化学式2で、
及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1ないし5のアルキレン基、カルボニル基、スルフィニル基、またはエーテル結合を介し、複数の置換もしくは非置換のアルキレン単位が結合した炭素数2ないし6の二価基である。
【0015】
正極活物質として、ニッケル、及び1以上の他の遷移金属を含み、ニッケルの含量が遷移金属の全体モル数に対し、例えば、80mol%以上のリチウム遷移金属酸化物を利用すれば、高出力及び高容量を有するリチウム二次電池を作製することができる。しかしながら、ニッケルの含量が多いリチウム遷移金属酸化物は、表面構造が不安定であり、電池の充放電過程において、副反応によるガス発生が増大し、ニッケルのような遷移金属の溶出がさらにはなはだしくなる。従って、ニッケルの含量が多いリチウム遷移金属酸化物を正極活物質として利用したリチウム二次電池は、寿命特性が低下され、高温において抵抗が増大され、高温における安定性改善が必要である。
【0016】
一具現例によるリチウム二次電池用電解質は、添加剤として、前記化学式1で表される第1化合物と、前記化学式2で表される第2化合物との組み合わせを使用することにより、抵抗が低いSEI(solid electrolyte interface)膜及び/または保護層を形成することができ、それにより、電池内部抵抗が低減されうる。また、高温保存時のニッケル溶出量を顕著に低減させることにより、前述の問題点を解決し、高温において、抵抗抑制効果に優れ、寿命特性及び高温安定性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0017】
電解質添加剤として、前記化学式1で表される第1化合物と、前記化学式2で表される第2化合物との組み合わせを使用し、リチウム二次電池の性能を向上させる理由につき、以下において、さらに具体的に説明するが、それらは、本発明の理解の一助とするためのものであり、本発明の範囲は、以下の説明範囲に限定されるものではない。
【0018】
電解質に含まれるリチウム塩として、LiPFが一般的に使用されるが、熱安定性に劣り、水分によっても、加水分解されやすいという問題点を有している。そのように、LiPF含有電解質は、湿気及び高温に露出されたとき、不安定性を示す。LiPFの分解生成物は、負極界面の組成及び安定性の変化に寄与する主な因子のうち一つである。残余水分及び/または表面ヒドロキシ基は、溶液において、PF陰イオンと反応し、HFを生成し、PFを放出しうる。そのように放出されたHFは、正極、及び場合により、正極を腐食させ、電気化学的性能を漸進的に低下させる。
【0019】
電解質添加剤として、前記化学式1で表される第1化合物が使用される場合、負極表面に、高温安定性が高く、すぐれたイオン伝導性を有するSEI膜を形成し、-POF作用基によるLiPFの副反応を抑制することができる。その結果、高温保存時、リチウム二次電池内部において、電解液の分解反応によるガス発生が抑制され、サイクル寿命特性が向上される。また、ガス発生抑制による電池のスウェリング現象が防止されうる。
【0020】
また、化学式1で表される化合物と共に、前記化学式2で表される第2化合物を含むことにより、抵抗が低いSEI膜及び/または保護層を形成することができ、それにより、電池内部抵抗が低減されうる。
【0021】
前記化学式1で表される第1化合物、及び前記化学式2で表される第2化合物は、正極の遷移金属イオンと強く相互作用を行い、正極表面における反応中心を完全にキャッピングして非活性化させることにより、遷移金属の溶解、及び溶媒の酸化を防止する。すなわち、正極表面に、低インピーダンス特性を有するCEI(cathode electrolyte interphase)膜を形成する。該CEI膜は、電解質酸化を防ぎ、ガス及びHFのような副産物が生成されることを防ぎ、電極の構造が破壊されることを防ぎ、サイクル安定性及び律速性能を改善させる。また、前記CEI膜が形成されることにより、電解質と正極との界面における抵抗を低くし、リチウムイオン伝導度が向上され、それにより、低温放電電圧上昇効果を有する。
【0022】
さらに具体的に説明すれば、化学式1で表される第1化合物は、LiPFのようなリチウム塩の熱分解物、またはリチウム塩から解離された陰イオンに配位され、複合体を形成することができ、それら複合体の形成により、リチウム塩の熱分解物、またはリチウム塩から解離された陰イオンが安定化されることにより、それらと電解液との所望しない副反応が抑制されうるので、リチウム二次電池のサイクル寿命特性の向上と共に、リチウム二次電池内部にガスが発生することを防止し、不良発生率を顕著に低下させることができる。
【0023】
また、化学式2で表される第2化合物は、前記化学式1で表される第1化合物より高い還元電位を有しており、SEI膜形成にまず参与することにより、前記化学式1で表される第1化合物の過分解を防止することができ、それにより、電解液との副反応が抑制されることにより、抵抗が低いSEI膜及び/または保護層を形成することができる。化学式2により、過分解が抑制された化学式1は、高温、例えば、60℃の高温保存において、リチウム塩の高温熱分解を抑制し、電解液の副反応を低減させることができる。
【0024】
前記化学式1で表される化合物と、前記化学式2で表される第2化合物との混合重量比は、1:9ないし9:1範囲でもある。例えば、前記化学式1で表される化合物と、前記化学式2で表される第2化合物との混合重量比は、1:8ないし8:1範囲でもあり、具体的には、例えば、1:7ないし7:1範囲、または1:6ないし6:1範囲でもあり、例えば、約1:5ないし5:1範囲でもある。前記混合重量比で含まれることにより、抵抗が低く、熱的安定性にすぐれるSEI被膜を形成し、電解液分解反応を抑制することができる。
【0025】
前記化学式1で表される第1化合物の含量は、前記電解質総重量を基準に、0.05ないし10重量%範囲でもあり、例えば、0.1ないし10重量%範囲、0.2ないし5重量%範囲、または0.2ないし3重量%範囲でもあるが、それらに限定されるものではなく、必要により、電池特性を阻害しない範囲において、適切な量で選択的に使用されうる。化学式1で表される第1化合物の含量が前記範囲であるとき、高温保存及びスウェリング改善の効果をもたらし、界面抵抗の増大を抑制し、寿命特性が低下されることなしに、高温特性及び抵抗特性が改善されたリチウム二次電池を作製することができる。
【0026】
前記化学式2で表される第2化合物の含量は、前記電解質総重量を基準に、0.05ないし10重量%範囲でもあり、例えば、0.1ないし10重量%範囲、0.2ないし5重量%範囲、または0.2ないし3重量%範囲でもあるが、それらに限定されるものではなく、必要により、電池特性を阻害しない範囲において、適切な量で選択的に使用されうる。化学式2で表される第2化合物の含量が、前記範囲であるとき、界面抵抗の増加を抑制し、容量確保及び寿命特性のような電池性能を改善させることができる。
【0027】
一実施例によれば、前記化学式1で表される第1化合物の含量は、前記化学式2で表される第2化合物の含量と同じであるか、あるいはさらに多いものである。そのように、第1化合物の含量を、第2化合物の含量と同等以上に含むことにより、高温保存時、直流抵抗増大率がさらに抑制されながらも、ガス発生量を減少させることができる。
【0028】
一実施例によれば、前記第1化合物は、下記化学式1-1によっても表される。
【0029】
【化5】
【0030】
前記化学式1-1で、
ないしR、及びnは、前述の通りである。
化学式1-1で表される化合物は、中心原子であるリン(P(III))に直接結合された電子水溶性フッ素置換基を有しており、正極上部に存在するSEI膜の安定性を改善させることができる。
【0031】
一実施例によれば、前記第1化合物は、下記化学式1-1Aまたは化学式1-1Bによっても表される。
【0032】
【化6】
【0033】
前記化学式1-1A及び前記1-1Bで、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1ないしC10のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC10のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC10のアルケニル基、または置換もしくは非置換のC2ないしC10のアルキニル基である。
【0034】
具体的には、前述のRないしRは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のC1ないしC10のアルキル基でもあり、さらに具体的には、前述のRないしRは、それぞれ水素でもある。
【0035】
前記化学式1で表される第1化合物は、例えば、下記の化学式1-2ないし化学式1-9で表される化合物のうちから選択された1以上である。
【0036】
【化7A】
【化7B】
【0037】
一実施例によれば、前記第1化合物は、前記化学式1-2で表される化合物でもある。
一実施例によれば、前記第2化合物は、下記化学式2-1によっても表される。
【0038】
【化8】
【0039】
前記化学式1-1で、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルキル基、置換もしくは非置換のC1ないしC20のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルケニル基、置換もしくは非置換のC2ないしC20のアルキニル基、置換もしくは非置換のC3ないしC20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6ないしC20のアリール基、または置換もしくは非置換のC2ないしC20のヘテロアリール基であり、
nは、0または1の整数であり、
mは、1ないし5の整数である。
前記化学式2で表される第2化合物は、例えば、下記化学式2-2ないし化学式2-19で表される化合物のうちから選択された1以上である。
【0040】
【化9A】
【化9B】
【化9C】
【0041】
一実施例によれば、前記第2化合物は、下記化学式2-2で表される化合物でもある。
一具現例によれば、前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(2≦x≦20、2≦y≦20)、LiCl、LiI、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide(LiFSI))、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、LiPO、及び下記化学式3ないし6で表される化合物によってなる群のうちから選択された1種以上を含むものでもあるが、それらに制限されるものではなく、当該技術分野において、リチウム塩として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0042】
【化10】
【0043】
前記電解質において、前記リチウム塩の濃度は、0.01ないし5.0M、例えば、0.05ないし5.0M、例えば、0.1ないし5.0M、例えば、0.1ないし2.
0Mである。該リチウム塩の濃度が前記範囲であるとき、さらに向上されたリチウム二次電池特性が得られる。
【0044】
有機溶媒は、カボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及びケトン系溶媒のうちから選択された1以上でもある。
【0045】
カボネート系溶媒として、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用され、エステル系溶媒として、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、エチルブチレート、酢酸メチル、酢酸エチル、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、γ-バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用され、エーテル系溶媒として、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用され、ケトン系溶媒として、シクロヘキサノンなどが使用され、ニトリル系溶媒として、アセトニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリルなどが使用されうる。その他溶媒として、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランなどが使用されうるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、有機溶媒として使用されうるものであるならば、いずれも可能である。例えば、有機溶媒は、鎖式カーボネート50ないし95vol%と、環式カーボネート5ないし50vol%との混合溶媒、例えば、鎖式カーボネート70ないし95vol%と、環式カーボネート5ないし30vol%との混合溶媒を含むものでもある。例えば、該有機溶媒は、3種以上の有機溶媒の混合溶媒でもある。
【0046】
一具現例によれば、前記有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ブチレンカーボネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、エチルブチレート、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン及びテトラヒドロピュランによって構成された群のうちから選択された1種以上を含むものでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、有機溶媒として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0047】
前記電解質は、液体またはゲル状態でもある。前記電解質は、有機溶媒に、リチウム塩、及び前述の添加剤を添加しても製造される。
他の一具現例によるリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、該正極と該負極との間に配される前述の電解質と、を含む。
【0048】
前記リチウム二次電池は、前述のリチウム二次電池用電解質添加剤を含むことにより、リチウム二次電池の初期抵抗増大が抑制され、副反応によるガス発生が抑制され、寿命特性が向上される。
【0049】
正極活物質は、ニッケル、及び他の遷移金属を含むリチウム遷移金属酸化物を含む。ニッケル、及び他の遷移金属を含むリチウム遷移金属酸化物において、ニッケルの含量は、遷移金属の全体モル数に対し、60mol%以上、例えば、75mol%以上、例えば、80mol%以上、例えば、85mol%以上、例えば、90mol%以上でもある。
【0050】
例えば、リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式7で表される化合物でもある:
[化7]
LiNiCo2-b
前記化学式7で、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.6≦x<1、0<y≦0.3、0<z≦0.3、x+y+z=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びボロン(B)によってなる群のうちから選択された1以上であり、
Aは、F、S、Cl、Br、またはそれらの組み合わせである。
【0051】
例えば、0.7≦x<1、0<y≦0.3、0<z≦0.3;0.8≦x<1、0<y≦0.3、0<z≦0.3;0.8≦x<1、0<y≦0.2、0<z≦0.2;0.83≦x<0.97、0<y≦0.15、0<z≦0.15;または0.85≦x<0.95、0<y≦0.1、0<z≦0.1;でもある。
【0052】
例えば、リチウム遷移金属酸化物が、下記化学式4及び5で表される化合物のうち、少なくとも一つでもある:
[化4]
LiNiCoMn
前記化学式4で、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.1である。例えば、0.7≦x≦0.95、0<y≦0.3、0<z≦0.3である。
[化5]
LiNiCoAl
前記化学式5で、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.1である。例えば、0.7≦x≦0.95、0<y≦0.3、0<z≦0.3である。例えば、0.8≦x≦0.95、0<y≦0.3、0<z≦0.3である。例えば、0.82≦x≦0.95、0<y≦0.15、0<z≦0.15である。例えば、0.85≦x≦0.95、0<y≦0.1、0<z≦0.1である。
【0053】
例えば、リチウム遷移金属酸化物は、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.88Co0.08Mn0.04、LiNi0.8Co0.15Mn0.05、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.88Co0.1Mn0.02、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.8Co0.1Mn0.2またはLiNi0.88Co0.1Al0.02でもある。
【0054】
他の一具現例によれば、前記正極活物質は、Li-Ni-Co-Al(NCA)、Li-Ni-Co-Mn(NCM)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)及びリチウム鉄リン酸化物(LiFePO)によってなる群のうちから選択された少なくとも1つの活物質を含む。
【0055】
負極活物質は、シリコン系化合物、炭素系材料、シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体、及びシリコン酸化物(SiO(0<x<2))のうちから選択された1以上を含むものでもある。
【0056】
シリコン系化合物は、シリコン粒子、シリコン合金粒子などでもある。シリコン系化合物のサイズは、200nm未満、例えば、10ないし150nmである。用語「サイズ」は、シリコン系化合物が球形である場合には、平均粒径を示し、シリコン粒子が非球形である場合には、平均長軸長を示しうる。
【0057】
シリコン系化合物のサイズが前記範囲であるとき、寿命特性にすぐれ、一具現例による電解質を使用した場合、リチウム二次電池の寿命がさらに一層改善される。
【0058】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または繊維型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon)(低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0059】
シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体は、シリコンナノ粒子が炭素系化合物上部に配された構造を有する複合体、シリコン粒子が炭素系化合物表面とその内部とに含まれた複合体、シリコン粒子が炭素系化合物にコーティングされ、炭素系化合物内部に含まれた複合体でもある。シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体において、炭素系化合物は、黒鉛、グラフェン、グラフェンオキサイド、またはその組み合わせ物でもある。
【0060】
シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体は、炭素系化合物粒子上に、平均粒径が約200nm以下であるシリコンナノ粒子を分散させた後、カーボンコーティングして得られる活物質、シリコン(Si)粒子がグラファイト上部及び内部に存在する活物質などでもある。該シリコン系化合物と該炭素系化合物との複合体の二次粒子平均粒径は、5μmないし20μmでもある。該シリコンナノ粒子の平均粒径は、5nm以上、例えば、10nm以上、例えば、20nm以上、例えば、50nm以上、例えば、70nm以上でもある。該シリコンナノ粒子の平均粒径は、200nm以下、150nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下でもある。例えば、シリコンナノ粒子の平均粒径は、100nmないし150nmでもある。
【0061】
シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体の二次粒子平均粒径は、5μmないし18μm、例えば、7μmないし15μm、例えば、10μmないし13μmでもある。
【0062】
前記シリコン系化合物と炭素系化合物との複合体の他の例として、大韓民国特許公開10-2018-0031585の多孔性シリコン複合体クラスター、大韓民国特許公開10-2018-0056395に開示された多孔性シリコン複合体クラスター構造体が利用されうる。大韓民国特許公開10-2018-0031586及び大韓民国特許公開10-2018-0056395が、本明細書に参照として統合される。
【0063】
一具現例によるシリコン・炭素系化合物複合体は、多孔性シリコン複合体二次粒子を含む多孔性コア(core)と、前記コアの上部に配された第2グラフェンを含むシェル(shell)と、を含む多孔性シリコン複合体クラスターであり、前記多孔性シリコン複合体二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、前記シリコン複合体一次粒子は、シリコンと、前記シリコン上に配されたシリコン酸化物(SiO)(O<x<2)と、前記シリコン酸化物上に配された第1グラフェンと、を含む多孔性シリコン複合体クラスターでもある。
【0064】
他の一具現例によるシリコン・炭素系化合物複合体は、多孔性シリコン複合体二次粒子と、前記多孔性シリコン複合体二次粒子の少なくとも一面上の第2炭素フレークと、を含む多孔性シリコン複合体クラスター;及び前記多孔性シリコン複合体クラスター上部に配された非晶質炭素を含む炭素系コーティング膜を含み、前記多孔性シリコン複合体二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、前記シリコン複合体一次粒子は、シリコンと、前記シリコンの少なくとも一面上のシリコン酸化物(SiO)(O<x<2)と、前記シリコン酸化物の少なくとも一面上の第1炭素フレークと、を含み、前記シリコン酸化物は、膜(film)、マトリックス(matrix)、またはその組み合わせ物の状態で存在する多孔性シリコン複合体クラスター構造体でもある。
【0065】
前記第1炭素フレーク及び前記第2炭素フレークは、それぞれ膜(film)、粒子、マトリックス(matrix)、またはその組み合わせ物の状態で存在しうる。そして、第1炭素フレーク及び第2炭素フレークは、それぞれグラフェン、グラファイト、炭素繊維、グラフェンオキサイドなどでもある。
【0066】
前述のシリコン系化合物と炭素系化合物との複合体は、シリコンナノ粒子が炭素系化合物上部に配された構造を有する複合体、シリコン粒子が炭素系化合物表面とその内部とに含まれた複合体、シリコン粒子が炭素系化合物にコーティングされ、炭素系化合物内部に含まれた複合体でもある。該シリコン系化合物と該炭素系化合物との複合体において、該炭素系化合物は、黒鉛、グラフェン、グラフェンオキサイド、またはその組み合わせ物でもある。
【0067】
前記リチウム二次電池は、その形態が特別に制限されるものではなく、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウム硫黄電池などを含む。
前記リチウム二次電池は、次のような方法によっても製造される。
【0068】
まず、正極を準備する。
例えば、正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされ、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造されうる。前記正極は、前述のところで列挙した形態に限定されるものではなく、前述の形態以外の形態でもある。
【0069】
前記正極活物質は、リチウム含有金属酸化物であり、当業界で一般的に使用されるものであるならば、制限なしに、いずれも使用されうる。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせのうちから選択される金属と、リチウムとの複合酸化物のうち、1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、Li1-b (前記式で、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);Li1-b 2-c (前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiE2-b 4-c (前記式で、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCo α(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cCo 2-α α(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cCo 2-α (前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMn α(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cMn 2-α α(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMn 2-α (前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(前記式で、0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式で、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式で、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式で、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式で、0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表される化合物を使用することができる。
【0070】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Fは、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせでもある。
【0071】
例えば、LiCoO、LiMn2x(x=1、2)、LiNi1-xMn2x(0<x<1)、LiNi1-x-yCoMn(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFePOなどである。
【0072】
ここで、前記化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるということは、言うまでもない。該コーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含むものでもある。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にそのような元素を使用し、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)によってコーティングすることができるならば、いかなるコーティング方法を使用してもよく、それについては、当該分野に携わる者に十分理解されうる内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0073】
前記導電材としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電材として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0074】
前記バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、及びその混合物、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0075】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0076】
前述の正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されうる。
【0077】
次に、負極を準備する。
例えば、負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質組成物を準備する。前記負極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて乾燥され、負極板が製造される。代案としては、前記負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、負極板が製造されうる。
【0078】
前記負極活物質は、当該技術分野において、リチウム電池の負極活物質として使用されうるものであるならば、いずれも可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物、及び炭素系材料によってなる群のうちから選択された1以上を含むものでもある。
【0079】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、SbSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせでもある。
【0080】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO、SiO(0<x<2)などでもある。
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または繊維型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon)(低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0081】
負極活物質組成物において、導電材及びバインダは、前記正極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。
前述の負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されうる。
【0082】
次に、前記正極と前記負極との間に挿入されるセパレータを準備する。
前記セパレータは、リチウム電池において一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能にすぐれるものが使用されうる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布または織布の形態でもある。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用されうる。例えば、前記セパレータは、下記の方法によっても製造される。
【0083】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物を準備する。前記セパレータ組成物が電極上部に直接コーティングされて乾燥され、セパレータが形成されうる。または、前記セパレータ組成物が支持体上にキャスティングされて乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成されうる。
【0084】
前記セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合材に使用される物質がいずれも使用されうる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用されうる。
また、セパレータは、以下のものに限定されるものではないが、例えば、PES(polyethylene separator)、PPS(polypropylene separator)、CCS(ceramic coated separator)、PCS(polymer coated separator)、MCS(multi-layer coated separator)、MFS(multi-functional separator)などを含むものでもあるが、それらの組み合わせも可能である。
【0085】
次に、前述の電解液を準備する。
図1から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり、折り畳まれたりし、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケースは、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム電池は、大型薄膜型電池でもある。前記リチウム電池は、リチウムイオン電池でもある。
【0086】
円筒状電池は、正極と負極との間にセパレータが巻き取られた円柱状の電極組立体を形成し、円筒状カンに挿入された後、電解液が円筒状カンに注液されうる。該円筒状カンは、スチール、スチール合金、ニッケルメッキされたスチール、ニッケルメッキされたスチール合金、アルミニウム、アルミニウム合金、またはそれらの等価物によっても形成されるが、ここで、その材質が限定されるものではない。さらには、該円筒状カンには、キャップアセンブリが外部に離脱されないように、該キャップアセンブリを中心に、その下部に内部方向に陥没されたビーディング部(beading part)が形成され、その上部に、内部方向に曲折されたクリンピング部(crimping part)が形成されうる。
【0087】
なお、前記正極と前記負極との間にセパレータが配された電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などにも使用される。
【0088】
一具現例によるリチウム二次電池は、一般的なニッケルリッチなリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質に採用したリチウム二次電池と比較し、DCIR(direct current internal resistance)上昇率が顕著に低下し、すぐれた電池特性を発揮することができる。
【0089】
前述の正極、負極、電解質を適用したリチウム二次電池の作動電圧は、例えば、下限は、2.5-2.8Vであり、上限は、4.1V以上、例えば、4.1-4.45Vである。
【0090】
また、前記リチウム二次電池は、例えば、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(EV:electric vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:hybrid electric vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)などを含む電気車両;電気自転車(E-bike)、電気スクータ(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力保存用システムなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0091】
本明細書において、「アルキル基」という用語は、分枝型または非分枝型の脂肪族炭化水素基を意味する。一具現例において、該アルキル基は、置換もしくは非置換でもある。該アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などを含むが、それらに限定されるものではなく、それらそれぞれは、他の具現例において、選択的に置換されうる。他の具現例において、該アルキル基は、1ないし6の炭素原子を含むものでもある。例えば、炭素数1ないし6のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基などを含むが、それらに限定されるものではない。
【0092】
前記アルキル基における1以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC-C20アルキル基(例:CF、CHF、CHF、CClなど)、C-C20アルコキシ基、C-C20アルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、C-C20アルキニル基、C-C20ヘテロアルキル基、C-C20アリール基、C-C20のアリールアルキル基、C-C20のヘテロアリール基、C-C20ヘテロアリールアルキル基、C-C20ヘテロアリールオキシ基、またはC-C20ヘテロアリールオキシアルキル基で置換されうる。
【0093】
本明細書において、「アルケニル基」は、1以上の炭素・炭素二重結合を含む炭素数2ないし20の炭化水素基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基などが含まれるが、それらに限定されるものではない。他の具現例において、該アルケニル基は、置換もしくは非置換でもある。他の具現例において、該アルケニル基の炭素数が2ないし40でもある。
【0094】
本明細書において、「アルキニル基」という用語は、1以上の炭素・炭素三重結合を含む炭素数2ないし20の炭化水素基であり、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基などを含むが、それらに限定されるものではない。他の具現例において、該アルキニル基は、置換もしくは非置換でもある。他の具現例において、該アルキニル基の炭素数が2ないし40でもある。
【0095】
本明細書において、置換基は、非置換の親作用基(parent group)から誘導され、ここで、1以上の水素原子が他の原子や作用基で置換される。取り立てて表示されなければ、該作用基が「置換されている」と見立てられれば、それは、前記作用基が、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、C-C20アルキニル基、C-C20アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、ヒドロキシ基及びニトロ基によってなる群から独立して選択された1以上の置換基で置換されることを意味する。1つの作用基が「選択的に置換されている」と記載されれば、前記作用基は、前述の置換基で置換されうる。
【0096】
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
「アルコキシ基」は、「アルキル-O-」を示し、アルキル基は、前述の通りである。該アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、2-プロポキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基ギなどを挙げることができる。前記アルコキシ基における1以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同一置換基で置換されうる。
【0097】
「ヘテロアリール基」は、N、O、PまたはSのうちから選択された1以上のヘテロ原子を含み、残り環原子が炭素である単環式(monocyclic)または二環式(bicyclic)の有機基を意味する。前記ヘテロアリール基は、例えば、1-5個のヘテロ原子を含み、5-10環メンバー(ring member)を含むものでもある。前述のSまたはNは、酸化され、さまざまな酸化状態を有しうる。
【0098】
ヘテロアリール基の例としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3-オキサジアゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,2,5-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、1,2,3-チアジアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,2,5-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、イソチアゾール-3-イル基、イソチアゾール-4-イル基、イソチアゾール-5-イル基、オキサゾール-2-イル基、オキサゾール-4-イル基、オキサゾール-5-イル基、イソオキサゾール-3-イル基、イソオキサゾール-4-イル基、イソオキサゾール-5-イル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-トリアゾール-5-イル基、1,2,3-トリアゾール-4-イル基、1,2,3-トリアゾール-5-イル基、テトラゾリル基、ピリド-2-イル基、ピリド-3-イル基、2-ピラジン-2-イル基、ピラジン-4-イル基、ピラジン-5-イル基、2-ピリミジン-2-イル基、4-ピリミジン-2-イル基または5-ピリミジン-2-イル基を有しうる。
【0099】
用語「ヘテロアリール基」は、ヘテロ芳香族環が、1以上のアリール基、脂環族(cycloaliphatic)基またはヘテロ環式基に選択的に融合された場合を含む。
用語「炭素環式基」は、飽和、または部分的に不飽和の非芳香族(non-aromatic)単環式、二環式または三環式の炭化水素基を言う。
【0100】
前記単環式炭化水素基の例として、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などがある。
前記二環式炭化水素基の例として、ボルニル(bornyl)基、デカヒドロナフチル(decahydronaphthyl)基、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル(bicyclo[2.1.1]hexyl)基、ビシクロ[2.1.1]ヘプチル(bicyclo[2.2.1]heptyl)基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル(bicyclo[2.2.1]heptenyl)基またはビシクロ[2.2.2]オクチル(bicyclo[2.2.2]octyl)基がある。
【0101】
前記三環式炭化水素基の例として、アダマンチル(adamantly)基などがある。
前記炭素環のうち1以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同一置換基で置換されうる。
【0102】
以下の実施例及び比較例を介し、本発明についてさらに詳細に説明される。
ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけにより、本発明の範囲は、限定されるものではない。
【実施例
【0103】
(リチウム二次電池の製造)
実施例1
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の体積比が2:4:4である混合溶媒に、1.5MのLiPFとビニレンカーボネートとを添加した後、電解質総重量を基準に、化学式1-2で表される化合物1.0重量%を添加し、化学式2-2で表される化合物0.2重量%を添加し、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0104】
【化11】
【0105】
正極活物質として、LiNi0.8Co0.1Al0.1 97重量%、導電材として、人造黒鉛粉末0.5重量%、カーボンブラック(Ketjen black)0.8重量%、改質アクリロニトリルゴム0.2重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5重量%を混合し、N-メチル-2-ピロリドンに投入した後、機械式撹拌器を使用し、30分間撹拌し、正極活物質スラリーを製造した。前記スラリーを、ドクターブレードを使用し、20μm厚のアルミニウム集電体上に、約60μm厚に塗布し、100℃の熱風乾燥器で0.5時間乾燥させた後、真空、120℃の条件において、4時間さらに一度乾燥させ、圧延(roll press)して正極を製造した。
【0106】
負極活物質として、人造黒鉛、バインダとして、ポリフッ化ビニリデンを、それぞれ98:2の重量比で混合し、N-メチルピロリドンに分散させ、負極活物質スラリーを製造した。前記スラリーを、ドクターブレードを使用し、10μm厚の銅集電体上に、約60μm厚に塗布し、100℃の熱風乾燥器で0.5時間乾燥させた後、真空、120℃の条件において、4時間さらに一度乾燥させ、圧延(roll press)して負極を製造した。
前述の製造された正極及び負極、厚さ14μmポリエチレンセパレータ、及び前記電解質を使用し、円筒状リチウム二次電池を製造した。
【0107】
実施例2
前記化学式1-2で表される化合物、及び化学式2-2で表される化合物の含量を、それぞれ1.0重量%及び0.5重量%にしたことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0108】
実施例3
前記化学式1-2で表される化合物、及び化学式2-2で表される化合物の含量を、それぞれ1.0重量%及び1.0重量%にしたことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0109】
実施例4
前記化学式1-2で表される化合物、及び化学式2-2で表される化合物の含量を、それぞれ0.5重量%及び1.0重量%にしたことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0110】
実施例5
前記化学式1-2で表される化合物、及び化学式2-2で表される化合物の含量を、それぞれ0.2重量%及び1.0重量%にしたことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0111】
比較例1
前記化学式1-2で表される化合物、及び化学式2-2で表される化合物をいずれも添加していない電解質を使用したことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0112】
比較例2ないし4
前記化学式1-2で表される化合物の含量を、それぞれ0.2重量%、1.0重量%及び1.5重量%に変更し、化学式2-2で表される化合物は、添加していないことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0113】
比較例5ないし7
前記化学式2-2で表される化合物の含量を、それぞれ0.2重量%、1.0重量%及び1.5重量%に変更し、化学式1-2で表される化合物は、添加していないことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0114】
評価例1:常温(25℃)初期直流抵抗(DC-IR)、及び高温保存後の直流抵抗増大率の評価
実施例1ないし5、及び比較例1ないし7で作製されたリチウム二次電池に対し、25℃において、1C/10秒放電(SOC 100)条件下でテストし、60℃のオーブンに高温保管する前のリチウム二次電池につき、ΔV/ΔI(電圧変化/電流変化)値でもって初期直流抵抗(DCIR)を測定した。その結果を下記表1に示した。そして、初期直流抵抗(DCIR)を測定した後、高温(60℃)で60日間保管した後、抵抗を測定し、直流抵抗変化率(%)を下記数式1によって計算した。
【0115】
[数1]
直流抵抗変化率=DCIR(60d.)/DCIR(0d.)X100%
数式1で、DCIR(60d.)は、60日後のDCIRを示し、DCIR(0d.)は、保管直前のDCIRを示す。
初期直流抵抗、高温保存後の直流抵抗及び抵抗変化率の測定結果を、下記表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
前記表1に示されているように、実施例1のリチウム二次電池は、高温で長期間保管した場合、化学式1-2の化合物、または化学式2-2の化合物を含んでいない比較例1、及び化学式1-2の化合物、または化学式2-2の化合物のうちいずれか一つだけ含んでいる比較例2ないし7と比較し、高温保存時、直流抵抗値が低く、直流抵抗増大率も低下していることが分かる。
【0118】
評価例2:高温保存ガス発生量の評価
実施例1、及び比較例1ないし9で製造されたリチウム二次電池に対し、定電流条件で、25℃で電圧が4.2V(対Li)に至るまで、0.1C充電し、次に、定電圧モードで4.2Vを維持しながら、0.05Cカットオフ(cut-off)充電した。その後、リチウム二次電池を解体し、正極板をパウチに電解液と共に入れた後、それを60℃オーブンに保管した。パウチの体積変化による質量変化をアルキメデス法によって換算し、その結果を前記表1に共に示した。
【0119】
なお、前記電解液は、1.5M LiPFが、EC(エチレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)の混合溶媒(2:4:4体積比)に溶けている溶液である。
【0120】
該アルキメデス法は、前記パウチを特定周期(例えば、4日)ごとに、水で満たされた水槽で重さを測定し、重さ変化を体積に換算し、ガス発生量を測定する方法である。
前記表1を参照すれば、実施例1のリチウム二次電池は、比較例1ないし7のリチウム二次電池に比べ、抵抗変化率が抑制されながらも、ガス発生量が低減されたことが分かる。
【0121】
評価例3:常温(25℃)寿命特性の評価
実施例1ないし5、及び比較例1ないし7で製造されたリチウム二次電池に対し、25℃において、0.5C rateの電流で、電圧が4.2V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.2Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで、1.0C rateの定電流で放電した。そのような充放電サイクルを300回反復した。
【0122】
前述の全ての充放電サイクルにおいて、1回の充電/放電サイクル後、10分間の休止時間を置いた。常温における寿命特性を、300回目サイクルにおける容量維持率で評価し、その結果を下記表2に示した。300回目サイクルにおける容量維持率は、下記数式2によって定義される。
[数2]
容量維持率=[300回目サイクルにおける放電容量/最初サイクルにおける放電容量]×100
【0123】
【表2】
【0124】
前記充放電特性評価の結果、表2から分かるように、実施例1ないし5のリチウム二次電池は、比較例1ないし7のリチウム二次電池と比較し、常温における寿命特性が改善されていることが分かる。
【0125】
評価例4:Ni溶出の評価
実施例3、並びに比較例1,3及び6で製造されたリチウム二次電池につき、下記のような方法でNi溶出量を測定した。
前記リチウム二次電池に対し、0.2Cで4.2Vまで100%充電した後、高温(60℃)で60日間保管した後、電池を解体し、正極極板を分離させた。ICP-MS分析を介し、Ni含量を測定し、その結果を図2に示した。
【0126】
図2を参照すれば、実施例3で製造されたリチウム二次電池は、極板からのNi溶出量が非常に少ないということを確認することができる。しかしながら、比較例1,3及び6で製造されたリチウム二次電池は、実施例1のリチウム二次電池と比較するとき、顕著に多量のニッケル(Ni)が溶出されることが確認された。従って、実施例によるリチウム二次電池の場合、高温保存時に発生しうるガス発生量を顕著に低減させることができ、電解液との反応によるNiイオン溶出量を低減させることができるということが分かる。
【0127】
以上においては、図面及び実施例を参照し、一具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において、通常の知識を有する者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
図1
図2
【国際調査報告】