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特表2024-502487抗酸化剤を含む原油及びガス貯留層の地下注入用薬液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】抗酸化剤を含む原油及びガス貯留層の地下注入用薬液
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/06 20060101AFI20240112BHJP
   E21B 43/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C09K8/06
E21B43/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541897
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2022011975
(87)【国際公開番号】W WO2022150762
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】17/146,047
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523261838
【氏名又は名称】ニッサン ケミカル アメリカ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NISSAN CHEMICAL AMERICA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】10333 Richmond Avenue,Suite 1100 Houston,Texas 77042(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴広
(72)【発明者】
【氏名】北川 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】村上 智
(72)【発明者】
【氏名】マグワイヤ-ボイル,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】サウスウェル,ジョン
(57)【要約】
地下注入用薬液は無機物質と、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、グルコン酸、若しくはそれらの塩、又はα-アセチル-γ-ブチロラクトン、又は亜硫酸水素塩、若しくは二亜硫酸塩)と、水とを含む。前記無機物質はコロイド粒子、又は粉体であり得る。無機物質は、地下注入用薬液の全質量を基準として0.001質量%~50質量%の量で地下注入用薬液に含有され得る。前記酸化剤は、無機物質の質量に対して質量比で0.0001~2となる割合にて薬液に含有され得る。無機物質の表面はシラン化合物で被覆され得る。薬液は更にアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、又はそれらの混合物を含むことができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物質と、抗酸化剤と、水とを含む地下注入用薬液。
【請求項2】
前記無機物質が、コロイド粒子又は粉体である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項3】
前記無機物質が、3nm~200nmの平均粒子径を有するシリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、及びジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも一種のコロイド粒子である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項4】
前記無機物質が、pH1~12のシリカゾル中のシリカ粒子である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項5】
前記無機物質が、地下注入用薬液の全質量を基準として0.001質量%~50質量%の割合にて前記薬液中に含まれる、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項6】
前記抗酸化剤が、ヒドロキシラクトン、ヒドロキシカルボン酸、若しくはそれらの塩、又は亜硫酸塩である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項7】
前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、グルコン酸、若しくはそれらの塩、又はα-アセチル-γ-ブチロラクトン、又は亜硫酸水素塩、若しくは二亜硫酸塩である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項8】
前記抗酸化剤が、無機物質の質量に対して、抗酸化剤の質量が0.0001~2となる割合にて前記薬液中に含まれる、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項9】
前記無機物質の表面の少なくとも一部が式(1):
Si(R4-a (1)
(式(1)中、Rはエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基、オキセタニルアルキル基、又はエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基もしくはオキセタニルアルキル基のいずれかを含む有機基、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、
はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
aは1~3の整数を表す。)で表される加水分解性シランを含むシラン化合物で被覆されている、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項10】
前記シラン化合物が、無機物質の質量に対して、シラン化合物の質量が0.1~10.0となる割合にて含まれる、請求項9に記載の地下注入用薬液。
【請求項11】
更にアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項12】
前記少くとも1種の界面活性剤が、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.0001質量%~30質量%の割合にて前記薬液中に含まれる、請求項11に記載の地下注入用薬液。
【請求項13】
塩分濃度4質量%の環境下で、前記地下注入用薬液を、無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて20℃、72時間保管する室温耐塩性試験において、室温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/室温耐塩性試験前のDLS平均粒子径で表される比が1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)である、請求項1記載の地下注入用薬液。
【請求項14】
塩分濃度4質量%の環境下で、前記地下注入用薬液を、無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて100℃、720時間保管する高温耐塩性試験において、高温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/高温耐塩性試験前のDLS平均粒子径で表される比が1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項15】
前記地下注入用薬液が、地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収するために用いられ、注入井から地下貯留層に圧入して、生産井から原油を回収する原油回収用薬液である、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項16】
前記地下注入用薬液がその総質量に対して0.1質量%~35質量%の塩分を含む原油回収用薬液である、請求項15に記載の地下注入用薬液。
【請求項17】
更にヒドロキシエチルセルロース、その塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その塩、カルボキシメチルセルロース、その塩、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ポリアクリルアミド、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の地下注入用薬液。
【請求項18】
地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収する方法であって、
(a)請求項1に記載の地下注入用薬液を注入井から地下貯留層に圧入する工程、
(b)地下貯留層に圧入した前記薬液とともに生産井から原油を回収する工程、を含む
原油回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に原油及びガスを含む貯留層の地下処理のための薬液に関する。特に本発明は、内陸又は海底油田の油層内に薬液を注入して原油を回収する原油回収攻法(oil recovery flooding)に使用される薬液であって、高温耐塩性に優れ、原油回収率の高い原油回収用薬液に関する。
【背景技術】
【0002】
地下注入用の薬液には、水の移動を防ぐシールを形成する薬液、貯留層への注入時に粘性のゲル状物質を生成する薬液、石油の一次、二次、又は三次回収に使用される原油回収用薬液等、多様な用途ある。
油層から原油を回収(採取)するために、一次、二次、三次回収(又はEOR(増進回収))という3段階の方法が、原油及びガス貯留層に適用される。 一次回収法には、油層の自然の圧力や重力を利用する自噴採油法と、ポンプを利用して人工圧力を用いた人工採油法が挙げられる。これらの方法を組み合わせて実施される一次回収の原油回収率は最大で貯留岩から20%程度と言われている。二次回収法には、一次回収法で生産が減退した後、水やガスを導入して油層圧の回復及び産油量の増加を図る水攻法や圧力維持法が挙げられる。これら一次、二次回収を合わせても、原油回収率は40%程度とされ、原油の大部分は地下油層に残留した状態にある。三次回収法又はEOR法はある種のケミカル攻法を利用し、油層から原油をさらに回収するために提案されている。
【0003】
EOR法には、油層への熱攻法、ガス攻法、微生物攻法、ケミカル攻法などがある。ケミカル攻法は、目的に応じた薬液を油層内に圧入し、原油と流体間の界面張力を低下させ、原油自体の流動性を向上させることで原油の採取効率を上げる技術である。ケミカル攻法は、使用する薬液によりポリマー攻法、界面活性剤攻法、ミセル攻法、エマルション攻法、アルカリ攻法などに分類される。
界面活性剤攻法は、界面活性剤を主成分とする流体を含む一連の流体を油層に圧送することで、原油と水との間の界面張力を低下させ、油層内に捕捉されている原油を生産井の方向に流動させるEOR攻法である(例えば特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/054414号
【特許文献2】国際公開第2019/053907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の一態様において、地下注入用薬液、特に原油回収用薬液として、無機物質、例えばコロイド状シリカ等の数nm~数十nmの微小なコロイド粒子を含有する薬液が用いられる。こうした微小な粒子は、原油を含む岩石の割れ目に入り込み、岩石表面から石油を取り去ることにより、原油回収の役割を果たす。
こうした薬液を用いた原油回収方法に使用する原油回収用薬液は、その作製時に、地表水や海水が使用され得る。また、当該原油回収用薬液の使用時、すなわち該薬液を油層に圧入する際、該薬液は地層水と接触する。該薬液がしばしば接触する水には、数万~350万ppmの範囲の多量の総溶解固形分(TDS)が含まれ、また総溶解固形分の質量中に数万ppmの様々な無機塩が含まれている。塩分は海水、含油地層水、あるいは陸水に含まれる。原油回収用薬液は、作製時や使用時に、数十万ppmにも至る高塩分濃度の塩分含有水(塩水ともいう)と接触することとなる。例えば塩水中の塩濃度は、0.1質量
%~35質量%、1質量%~20質量%、2質量%~15質量%、3質量%~10質量%、あるは4質量%~8質量%の範囲であり得る。原油回収用薬液が高塩分濃度の塩水と接触したとき、該薬液に含まれる無機物質(コロイド粒子等)が凝集したり、また該薬液がゲル化したりすると、油含有貯留層へ該薬液を圧入することが困難になる。さらに、圧入後の薬液のゲル化により、貯留岩石の割れ目が閉塞し、原油回収を困難にする。
そのため、原油回収用薬液には、一般的な坑井(ダウンホール)温度にて高塩分濃度の塩水下であっても安定であること、すなわち該薬液が該塩水と接触し混ざり合い、高塩分濃度を有する薬液となった場合にあっても、薬液に含まれる無機物質、例えばコロイド粒子がゲル化や凝集せず、安定な分散状態を保てることが求められる。該薬液が出くわす坑井(ダウンホール)温度は、通常、21℃以上、100℃以上、150℃以上、175℃~275℃、及び200℃~250℃の範囲になり得る。
【0006】
以上の通り、地中に薬液を圧入し原油を回収するEOR技術では、原油を含む貯留岩石の割れ目に該薬液中の無機物質、例えばコロイド粒子が入り込み、貯留岩石の割れ目から原油を回収する。コロイド粒子が貯留岩石の割れ目に自由に入り込むには、典型的な坑井(ダウンホール)温度にて高塩分濃度下にさらされる原油回収用薬液中で、無機物質、例えばコロイド粒子が凝集することなく安定に存在することが求められる。
本発明は、薬液が典型的な坑井(ダウンホール)温度にて高塩分濃度下にさらされる場合においても、該薬液中のコロイド状粒子等の無機物質が安定に分散して存在する、地下注入用薬液、特に原油回収用薬液を提供する。そして、本発明は、該薬液を用いた原油回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、無機物質と、抗酸化剤と、水とを含む地下注入用薬液である。
本発明の第2の態様は、前記無機物質が、コロイド粒子又は粉体である、第1態様に記載の地下注入用薬液である。
本発明の第3の態様は、前記無機物質が、3nm~200nmの平均粒子径を有するシリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、及びジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも一種のコロイド粒子である、第1態様又は第2態様に記載の地下注入用薬液である。
本発明の第4の態様は、前記無機物質が、pH1~12のシリカゾル中のシリカ粒子である、第1態様乃至第3態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第5の態様は、前記無機物質が、地下注入用薬液の全質量を基準として0.001質量%~50質量%の割合にて含まれる、第1態様乃至第4態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第6の態様は、前記抗酸化剤が、ヒドロキシラクトン、ヒドロキシカルボン酸、若しくはそれらの塩、又は亜硫酸塩である、第1態様乃至第5態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第7の態様は、前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、グルコン酸、若しくはそれらの塩、又はα-アセチル-γ-ブチロラクトン、又は亜硫酸水素塩、若しくは二亜硫酸塩である、第1態様乃至第5態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第8の態様は、前記抗酸化剤が、無機物質の質量に対して、質量比で0.0001~2となる割合にて含まれる、第1態様乃至第7態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第9の態様は、前記無機物質の表面の少なくとも一部が式(1):
Si(R4-a (1)
(式(1)中、Rはエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基、オキセタニル基、又はエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基もしくはオキセタニルアルキル基のいずれかを含む有機基、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、
又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、
はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
aは1~3の整数を表す。)で表される加水分解性シランを含むシラン化合物で被覆されている、第1態様乃至第8態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第10の態様は、前記シラン化合物が、無機物質の質量に対して、質量比で0.1~10.0となる割合にて含まれる、第9態様に記載の地下注入用薬液である。
本発明の第11の態様は、更にアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤からなる群から選択される少くとも1主の界面活性剤を含む、第1態様乃至第10態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第12の態様は、前記少くとも1種の界面活性剤が、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.0001質量%~30質量%の割合にて含まれる、第11態様に記載の地下注入用薬液である。
本発明の第13の態様は、塩分濃度4質量%の環境下で、前記地下注入用薬液を、無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて20℃、72時間保管する室温耐塩性試験において、室温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/室温耐塩性試験前のDLS平均粒子径で表される比が1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)である、第1態様乃至第12態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第14の態様は、塩分濃度4質量%の環境下で、前記地下注入用薬液を、無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて100℃、720時間保管する高温耐塩性試験において、高温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/高温耐塩性試験前のDLS平均粒子径で表される比が1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)である、第1態様乃至第12態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第15の態様は、前記地下注入用薬液が、地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収するために用いられ、注入井から地下貯留層に圧入して、生産井から原油を回収する原油回収用薬液である、第1態様乃至第14態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液である。
本発明の第16の態様は、前記地下注入用薬液が、その総質量に対して0.1質量%~35質量%の塩分を含む原油回収用薬液である、第15態様に記載の地下注入用薬液である。
本発明の第17の態様は、地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収する方法であって、
(a)第1態様~第16態様のいずれか1つに記載の地下注入用薬液を注入井から地下貯留層に圧入する工程、
(b)地下貯留層に圧入した前記薬液とともに生産井から原油を回収する工程、を含む
原油回収方法である。
【発明の効果】
【0008】
実施態様において、本発明の地下注入用薬液、特に原油回収用薬液は、薬液を作製する時の地表水や海水等の水に含まれる塩分や、内陸や海底油田の油層に注入した時の塩分と接触する場合においても、前記無機物質(コロイダル粒子等)がゲル化しない安定な薬液である。特に、地下注入用薬液中で安定に存在するコロイド状粒子は、コロイド状物質(例えばシリカナノ粒子)が有するくさび効果により、原油を含む岩石の割れ目に該薬液を圧入したとき、貯留層の岩盤表面からの原油回収効率のさらなる向上を見込むことができる。そのため地下注入用薬液は、高回収率で原油の回収が期待できる原油回収用薬液として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、無機物質と、抗酸化剤と、水とを含む地下注入用薬液を提供する。
【0010】
[無機物質]
上記無機物質は、コロイド粒子又は粉体の形態にて用いることができる。
上記無機物質は、地下注入用薬液の全質量を基準として0.001質量%~50質量%の割合で薬液中に含有することができる。
【0011】
上記無機物質としては、200nmを超え3ミクロン以下の粒子径を有するシリカ粉末、アルミナ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末等の無機酸化物の無機粉体を用いることができる。上記無機粉体としては、シリカ成分、アルミナ成分、チタニア成分、ジルコニア成分等の無機酸化物成分を含む粉体であればよく、合成品、天然品のいずれも用いることができる。無機粉体の具体例としては石英紛、珪砂紛等のシリカ含有粉体、ムライト、アルミナ等のアルミナ含有粉末等が挙げられる。これら無機物質の粒子径はレーザー回折法により測定することができる。
【0012】
上記無機物質がコロイド粒子である場合は、3nm~200nm、又は3nm~100nm、又は3nm~50nmの平均粒子径を有するシリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子等の無機酸化物のコロイド粒子を用いることができる。これらコロイド粒子はシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等の水性ゾルの態様にて用いることができる。
好ましくは無機物質としてpH1~12のシリカゾルに基づくシリカ粒子を用いることができる。
【0013】
無機物質、例えばシリカ粒子を用いる場合、水性シリカゾルを用いることができる。
水性シリカゾルは水性溶媒を分散媒とし、コロイダルシリカ粒子を分散質として含むコロイド分散系をいい、公知の方法により製造することができる。
水性シリカゾルの平均粒子径は、分散質であるコロイダルシリカ粒子の平均粒子径をいう。
【0014】
無機物質、例えば水性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子)の平均粒子径は、特に断りのない限り、窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径又はシアーズ法粒子径をいう。
窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径(平均粒子径(比表面積径)D(nm))は、窒素吸着法で測定される比表面積S(m/g)から、D(nm)=2720/Sの式によって与えられる。
シアーズ法粒子径は、文献:G.W.Sears,Anal.Chem.28(12)1981頁,1956年 コロイダルシリカ粒子径の迅速な測定法、に基づいて測定した平均粒子径をいう。詳細には、コロイダルシリカの比表面積は、1.5gのSiOに相当するコロイダルシリカをpH4からpH9まで滴定するのに必要とした0.1N-NaOHの量から求め、これから算出した相当径(比表面積径)を用いる。
無機物質、例えば水性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子)の窒素吸着法(BET法)又はシアーズ法による平均粒子径は3~200nm、3~150nm、3~100nm、又は3~30nmとすることができる。
無機物質(例えばコロイダルシリカ粒子)の平均粒子径が3nmより小さいと薬液が不安定になる虞があるため好ましくない。一方、無機物質(例えばコロイダルシリカ粒子)の平均粒子径が200nmより大きいと、地下油田貯留層内に存在する砂岩又は炭酸塩岩の孔隙を塞いでしまう可能性があり、油回収性が悪くなるため好ましくない。
【0015】
DLS測定により、薬液中での無機物質(例えばシリカゾルのシリカ粒子)の平均粒子径(DLS平均粒子径)とともに、その分散状態(分散状態にあるか、又は凝集状態にあ
るか)を判断することができる。
DLS平均粒子径は、2次粒子径(分散粒子径)の平均値を表している。完全に分散している状態のDLS平均粒子径は、平均粒子径(窒素吸着法(BET法)又はシアーズ法により測定して得られる比表面積径であり、1次粒子径の平均値を表す)の2倍程度であると言われている。DLS平均粒子径が大きくなるほど、無機物質(例えば水性シリカゾル中のシリカ粒子)がより凝集状態になっていると判断できる。
【0016】
例えば無機物質、特に水性シリカゾルの一例として、日産化学(株)製の水性シリカゾル:スノーテックス(登録商標)ST-Oを挙げることができる。この水性シリカゾルは、平均粒子径(BET法)が10~11nmであり、DLS平均粒子径は15~20nmである。後述する実施例にて示すように、この水性シリカゾルを含有する原油回収用薬液並びにその耐塩性評価サンプル(塩分含有の薬液)は、そのDLS平均粒子径がほぼ30nm以下であり、例えば15nm~25nmである。この結果は薬液中及び塩分を含有する薬液中でシリカ粒子がほぼ分散状態にあることを示している。
【0017】
無機物質としてシリカ粒子を用いる場合に、水性シリカゾルとして市販品を使用することができる。水性シリカゾル中のシリカ濃度が5~50質量%のものが一般に市販されており、これは容易に入手できる点で好ましい。
市販品の水性シリカゾルとしては、スノーテックス(登録商標)ST-OXS、スノーテックス(登録商標)ST-OS、スノーテックス(登録商標)ST-O、スノーテックス(登録商標)ST-O-40、スノーテックス(登録商標)ST-OL、スノーテックス(登録商標)ST-OYL、スノーテックス(登録商標)ST-OZL-35(以上、日産化学(株)製)などが挙げられる。
使用する水性シリカゾルにおけるシリカ(SiO)濃度としては、例えば5~55質量%が好ましい。
【0018】
無機物質(例えば水性シリカゾルの場合にはシリカ固形分換算にて)は、地下注入用薬液、例えば原油回収用薬液の全質量を基準として、0.001質量%~50質量%、又は0.01質量%~30.0質量%、より好ましくは10.0質量%~25.0質量%、例えば15.0質量%~25.0質量%にて、該薬液に含まれ得る。
【0019】
無機物質の表面の少なくとも一部(例えば前記水性シリカゾル中のシリカ粒子を例とすれば、シリカ粒子の表面の少なくとも一部)が、後述するシラン化合物で被覆されていてもよい。
なお本発明において、「無機物質の表面の少なくとも一部がシラン化合物で被覆される」とは、シラン化合物が無機物質(例えばシリカ粒子)表面の少なくとも一部に結合した態様を指す。すなわち該シラン化合物が無機物質の表面全体を覆う態様、該シラン化合物が無機物質の表面の一部を覆う態様、該シラン化合物が無機物質の表面に結合してなる態様を包含するものである。
表面の少なくとも一部にシラン化合物が結合した水性シリカゾル中のシリカ粒子の粒子径は、前述のDLS粒子径として市販の装置によって容易に測定され得る。
【0020】
本発明の地下注入用薬液に用いる無機物質(例えばシリカ粒子)の表面の少なくとも一部を、下記式(1)で示される加水分解性シランを含むシラン化合物で被覆してもよい。
下記式(1)で表される加水分解性シランが加水分解されることにより生じるシラノール基と、無機物質、例えばシリカ粒子の表面に存在するシラノール基とが反応して、シリカ粒子の表面に式(1)のシラン化合物が結合することとなる。
Si(R4-a (1)
式(1)中、Rはエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基、オキセタニルアルキル基、又はエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基もしくはオキセ
タニルアルキル基のいずれかを含む有機基、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、
はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、そして
aは1~3の整数を表す。
【0021】
ある実施態様において、加水分解性シランは式(1-1)で表される:
Si(R4-(c+d) (1-1)
式(1-1)中、Rはエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基、又はそれらを含む有機基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、
はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
cは1の整数を表し、dは0~2の整数を表し、c+dは1~3の整数を表す。
【0022】
式(1)で表されるシラン化合物はエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシアルキル基、又はそれらを含む有機基を有するものである。
【0023】
式(1)で表されるシラン化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、及び1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
オキセタン環を有するシラン化合物としては、例えば、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
本発明の地下注入用薬液において、上記シラン化合物は、無機物質(例えば水性シリカゾル中のシリカ固形分、すなわちシリカ粒子)に対して、質量比で、シラン化合物/無機物質(例えば水性シリカゾル(シリカ:SiO))=0.1~10.0となる割合にて添加されてなることが好ましい。より好ましくは、同質量比が0.1~5.0となる割合にて添加されてなる。
【0025】
このように、ある態様において、本発明の地下注入用薬液において、前述の無機物質(水性シリカゾル中のシリカ粒子)は、その一部の表面に、上記シラン化合物の少なくとも一部が結合していてもよい。例えば、シラン化合物が表面の少なくとも一部に結合してなるシリカ粒子としては、シラン化合物によってその表面が被覆されたシリカ粒子も含まれる。表面の少なくとも一部にシラン化合物が結合したシリカ粒子、例えば、シラン化合物で表面が被覆されたシリカ粒子を用いることで、原油回収用薬液の高温耐塩性をより向上
させることができる。
従って、好ましい態様において、地下注入用薬液は、前記無機物質(水性シリカゾル中のシリカ粒子)の少なくとも一部の表面に、前記シラン化合物の少なくとも一部が結合してなる無機物質(シリカ粒子)を含む。
【0026】
[抗酸化剤]
地下注入用薬液は、抗酸化剤を含む。抗酸化剤としてヒドロキシラクトン、ヒドロキシカルボン酸、若しくはそれらの塩、又は亜硫酸塩を用いることができる。また、アスコルビン酸、グルコン酸、若しくはそれらの塩、又はα-アセチル-γ-ブチロラクトン、又は亜硫酸水素塩、若しくは二亜硫酸塩もまた抗酸化剤として用いることができる。同様に、前述のものの任意の組み合わせを抗酸化剤として使用することができる。
【0027】
アスコルビン酸やグルコン酸は、地下注入用薬液のpHによりアスコルビン酸塩やグルコン酸塩として用いることができる。アスコルビン酸塩として、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸アミン塩等を用いることができる。グルコン酸塩としてグルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸アミン塩等を用いることができる。
【0028】
ある態様において、アスコルビン酸のL型とD型の光学異性体が薬液中に存在し得るため、アスコルビン酸の双方の形態が本明細書に記載の地下注入用薬液における抗酸化剤として用いることができる。双方の異性体とも抗酸化能力を提供可能である。
ラクトン系酸化防止剤のL型及びD型光学異性体など、上記有機分子におけるL型及びD型の光学異性体における他方も抗酸化能力を提供できるため、薬液に使用することができる。
【0029】
ある態様において、亜硫酸塩、例えば二亜硫酸塩は加水分解を受けると亜硫酸水素塩となり、プロトン放出を促進する。二亜硫酸塩や亜硫酸水素塩としてはナトリウム塩やカリウム塩を二亜硫酸塩や亜硫酸水素塩として用いることができる。例えば二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムを例示することができる。
【0030】
上記抗酸化剤は、無機物質に対する質量比で0.0001~2となる割合にて含有することができる。
【0031】
[界面活性剤]
ある実施態様において、地下注入用薬液は界面活性剤を含むことができる。
界面活性剤は、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.0001質量%~30質量%の割合にて含むことができる。
【0032】
前記界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、又はそれらの混合物であり得る。
また、2種以上のアニオン界面活性剤と、1種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記アニオン界面活性剤の例としては、脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
アルキルベンゼンスルホン酸塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム
塩が挙げられ、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどがある。
高級アルコール硫酸エステル塩の例としては、炭素原子数12のドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウムなどがある。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の例としては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウムなどがある。
α-オレフィンスルホン酸塩の例としては、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムなどがある。
アルカンスルホン酸塩の例としては、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどがある。
アニオン界面活性剤を使用する場合、地下注入用薬液(例えば原油回収用薬液)の全質量を基準として、合計で0.001質量%~30質量%、又は0.001質量%~20質量%の割合にて含有することが好ましい。含有量が0.001質量%未満では、薬液の高温耐塩性、原油回収能が悪くなり、好ましくない。含有量が30質量%超、更には20質量%より多くなると回収した油が界面活性剤と激しく乳化し、界面活性剤からの分離が困難となるため好ましくない。
【0034】
ある態様において、後述するように、地下注入用薬液のpH値が7以上12未満であるか、又はpH値が2以上7未満であるかによって、最適な用途を選択することができる。そしてこのとき、アニオン界面活性剤の量を調整することにより、薬液の高温耐塩性を大幅に向上させることができる。
例えば、地下注入用薬液のpHを7以上12未満に調整した場合、前記アニオン界面活性剤を、前記地下注入用薬液のシリカ固形分に対して、質量比として0.4以上5.0未満となる量にて含有させることが好ましい。
また、地下注入用薬液のpHを2以上7未満に調整した場合、前記アニオン界面活性剤を、前記地下注入用薬液のシリカ固形分に対して、質量比として0.001以上0.4未満となる量にて含有させることが好ましい。
【0035】
上記カチオン界面活性剤の例としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、及びN-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩の例としては、例えば塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16~18)トリメチルアンモニウム、及び塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩の例としては、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14~18)ジメチルアンモニウム、及び塩化ジオレイルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩の例としては、塩化アルキル(C8~18)ジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
カチオン界面活性剤を使用する場合、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.001質量%~30質量%の割合にて含有することが好ましい。含有量が0.001質量%未満では、薬液の耐熱性、耐塩性が悪くなり、好ましくない。含有量が30質量%より多く
なると薬液の粘度が非常に高くなり、好ましくない。
【0036】
上記両性界面活性剤の例としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、及びアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
アルキルアミノ脂肪酸塩の例としては、コカミドプロピルベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)、及びラウラミドプロピルベタイン(ラウリル酸アミドプロピルベタイン)等が挙げられる。
アルキルベタインの例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルベタイン、ステアリルベタイン、及びラウラミドプロピルベタイン(ラウリル酸アミドプロピルベタイン)等が挙げられる。
アルキルアミンオキシドの例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
両性界面活性剤を使用する場合、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.001質量%~30質量%の割合にて含有することが好ましい。含有量が0.001質量%未満では、薬液の耐熱性、耐塩性が悪くなり、好ましくない。含有量が30質量%より多くなると薬液の粘度が非常に高くなり、好ましくない。
【0037】
上記非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、及びポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、及びポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルなどが挙げられる。
アルキルグルコシドの例としては、デシルグルコシド、及びラウリルグルコシドなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレエート、及びポリプロピレングリコールジオレエートなどが挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレートなどがある。
脂肪酸アルカノールアミドの例としては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、及びオレイン酸ジエタノールア
ミドなどがある。
さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、又はポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキルエーテル又はポリオキシアルキルグリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ソルビタン脂肪酸エステルアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ソルビタンモノオレエート、ショ糖脂肪酸エステルなども使用できる。
これら非イオン界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが、薬液の高温耐塩性が良好で、より好ましい。
非イオン界面活性剤を使用する場合、地下注入用薬液の全質量を基準として、0.0001質量%~30質量%の割合にて含有することが好ましい。含有量が0.0001質量%未満では、薬液の耐熱性、耐塩性が悪くなり、好ましくない。含有量が30質量%より多くなると薬液の粘度が非常に高くなり、好ましくない。
【0038】
[その他の成分]
また発明の地下注入用薬液は、ダウンホール薬液の粘度と流体力学を高めるために、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース及びその塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩、ペクチン、グアーガム、キサンダンカム、タマリンドガム、及びカラギーナン、ポリアクリルアミド並びに他のポリアクリルアミド誘導体などの標準的な油田用成分をさらに添加することができる。
【0039】
[地下注入用薬液の製造]
前記薬液は、上記無機物質と抗酸化剤(例えばアスコルビン酸又はその塩)と水とを混合することで製造することができる。更に必要に応じてその他の成分を適宜添加することができる。
そして、ダウンホール圧送前又は“オンザフライ”とも呼ばれるダウンホール圧送の間、地下注入用薬液は、例えば地表水や海水など利用可能な水で1:1~4000倍程度に希釈し、目的の地層に圧送することができる。
【0040】
[pH及び用途]
ある態様において、地下注入用薬液の最適な用途を、そのpH値を7以上12未満とするか、又はpH値を2以上7未満とするかによって、選択することができる。
pH値が7以上12未満の地下注入用薬液は、塩化物イオンとナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含有する塩水下(例えば内陸の地下油層における使用が想定される)で優れた高温耐塩性を示す。
pH値が2以上7未満の地下注入用薬液は、塩化物イオンとナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含有する塩水に加え、海水(例えば海底油田の海底油層における使用が想定される)においても優れた高温耐塩性を示す。
ある態様において、本発明の地下注入用薬液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水溶液や、アンモニア水、塩基性のアミン水溶液などを用いて、そのpH値を12に至るまで調整しても、優れた高温耐塩性を得ることができる。
【0041】
[耐塩性評価]
地下注入用薬液を塩分含有の環境下で保管する耐塩性試験によって、該薬液の耐塩性(塩水安定性)を評価することができる。DLS(動的光散乱法)により測定される無機物質の平均粒子径の変化が、本試験前後の測定において、狭いサイズ分布を有している場合には、無機物質が分散状態を維持していると評価できる。よって、該薬液は良好な耐塩性を有すると評価できる。一方、耐塩性試験後の無機物質のDLS平均粒子径が大きく増加した場合、これは無機物質の凝集状態を反映したものといえる。、よって該薬液は耐塩性に劣ると評価できる。
【0042】
例えば、室温での耐塩性評価として、塩分濃度が4質量%である環境下で、前記地下注入用薬液を、その無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて、20℃で72時間保管してなる室温耐塩性試験によって、該薬液の室温での耐塩性(塩水安定性)を評価することができる。
上記室温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が8.0以下、又は1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)、又は1.1以下(平均粒子径の変化率が10%以下)であれば、室温耐塩性試験後においても、無機物質が凝集やゲル化することなく、該薬液中で分散状態を維持していると評価できる。
【0043】
高温での耐塩性評価として、塩分濃度が4質量%である環境下で、前記地下注入用薬液を、その無機物質の濃度が0.1質量%となる濃度にて、100℃で720時間保管してなる高温耐塩性試験によって、該薬液の高温での耐塩性を評価することができる。
上記高温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が8.0以下、又は1.5以下、又は1.1以下であれば、高温耐塩性試験後においても、無機物質が凝集やゲル化することなく、該薬液中で分散状態を維持していると評価できる。しかし、薬液の高温耐塩性が悪い場合、高温耐塩性試験後のDLS粒子径は非常に大きくなり、該薬液中での無機物質の凝集状態を示すものとなる。
例えば、上記の高温耐塩性試験(例えば、100℃で720時間の保管)において、高温耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前の平均粒子径の比が1.5以下(平均粒子径の変化率が50%以下)であれば、前記薬液は良好な耐塩性を有すると判断できる。特にこの比が1.1以下(平均粒子径の変化率が10%以下)の薬液は、無機物質(例えばシリカゾル)の変質がなく、高温耐塩性が非常に良好であると判断できる。
【0044】
[原油回収方法]
前記地下注入用薬液は、地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収するために使用でき、注入井から地下貯留層に圧入し、生産井から原油を回収するための原油回収用薬液として有用である。
原油回収用薬液の作製において使用される水が地表水や海水であった場合、該薬液はそれらに含まれる塩分にさらされることとなる。そのような実施態様において、前記薬液は、該薬液の総質量に基づいて、例えば0.1質量%~35質量%、1質量%~20質量%、3質量%~17質量%、5質量%~15質量%、又は7質量%~12質量%の塩分を含むことができる。また原油回収用薬液はその使用時、すなわち該原油回収用薬液が地中に入ると、地層水や陸水中の塩分と接触し、高濃度の塩分下にさらされることとなる。
例えば、海水や地層水や陸水は0.1質量%~35質量%、あるいは1~20質量%、2~15質量%、3~10質量%、または4~8質量%の塩分が含む。それ故、この高塩分濃度の塩水中であっても、該薬液中の無機物質、例えばコロイド粒子は安定に分散してなることが求められる。
本発明の地下注入用薬液は、地下の炭化水素含有貯留層から原油を回収する方法に用いられる。特に、
(a)上記の地下注入用薬液を注入井から地下貯留層に圧入する工程、及び
(b)地下貯留層に圧入した前記薬液とともに生産井から原油を回収する工程、を含む原油回収方法を行うことができる。
【実施例
【0045】
以下、合成例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0046】
(測定装置)
合成例で調製した水性シリカゾルの分析(pH値、電気伝導率、及びDLS平均粒子径)、並びに、実施例及び比較例にて製造した薬液の分析(pH値、電気伝導率、粘度、及
びDLS平均粒子径)、そして該薬液を用いて調製したサンプルの室温耐塩性試験後又は高温耐塩性試験後のサンプルの分析は、以下の装置を用いて行なった。
・DLS平均粒子径(動的光散乱法粒子径):動的光散乱法粒子径測定装置 ゼーターサイザー ナノ(スペクトリス(株)マルバーン事業部製)を用いた。
・pH:pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製)を用いた。
・電気伝導率:電気伝導率計(東亞ディーケーケー(株)製)を用いた。
・粘度:B型粘度計((株)東京計器製)を用いた。
・界面張力:表面張力計DY-500(協和界面科学(株)製)を用いた。
【0047】
[原油回収用薬液の評価]
(耐塩性評価)
〈ブラインテストサンプルの調製〉
200mlのスチロール瓶に撹拌子を投入後、実施例又は比較例で製造した各薬液0.83gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。マグネットスターラーで撹拌しながら、純水49.2gと塩濃度6質量%のブライン溶液100gを投入し、1時間撹拌した。これを、4質量%の塩濃度下で、前記薬液をシリカ濃度0.1質量%となる濃度とした際の、薬液の耐熱性及び耐塩性を評価するブラインテストサンプルとして使用した。得られたブラインテストサンプルのpH、電気伝導率、粘度、及びサンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
【0048】
〈室温耐塩性評価〉
200mlのスチロール製の密閉できる容器に、前記ブラインテストサンプル150gを入れた。密閉後、スチロール容器を20℃で静置し、所定時間保持した。その後、ブラインテストサンプルの外観、pH、電気伝導率、及びサンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
耐塩性は、の評価は、20℃で所定時間保持(72時間後)したサンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径の測定結果に基づく耐塩性の判定(下記<耐塩性の判定>参照)並びに外観の評価により行った。
【0049】
<耐塩性の判定>
A:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.1以下。
B:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.2~1.5。
C:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.6~8.0。
D:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が8.1~20.0。
E:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が20.1以上。
耐塩性試験結果としてはAが最も好ましく、B、C、D、Eの順で好ましい結果であることを示す。
【0050】
〈高温耐塩性評価-1〉
120mlのテフロン(登録商標)製の密閉できる容器に、前記ブラインテストサンプル65gを入れた。密閉後、テフロン(登録商標)容器を100℃の乾燥機内に置き、100℃で所定時間保持(720時間)した。その後、ブラインテストサンプルの外観、pH、電気伝導率、及びサンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。上記〈室温耐塩性評価〉の<耐塩性の判定>と同じ判定基準により、高温耐塩性の判定を行った。
【0051】
〈高温耐塩性評価-2〉
100℃での保持時間を10時間とした以外は、上記(高温耐塩性評価-1)と同じ操作により、高温耐塩性の判定を行った。
【0052】
[原油回収用薬液の調製:水性ゾルの調製]
(合成例1)
2000mlのガラス製ナスフラスコに水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-O、シリカ濃度=20.5質量%、BET法平均粒子径11.0nm、DLS平均粒子径17.2nm)1200gとマグネット撹拌子を投入した。その後、マグネットスターラーで撹拌しながら、水性シリカゾル中のシリカに対してシラン化合物の質量比が0.78になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック インダストリーズ アーゲー製Dynasylan GLYMO)を191.0g投入した。続いて、水道水を流した冷却管をナスフラスコの上部に設置した。還流しながら水性ゾルを60℃に昇温し、60℃で4時間保持した後、冷却した。室温まで冷却後、水性ゾルを取り出した。
水性シリカゾル中のシリカに対するシラン化合物の質量比0.78、シリカ固形分=21.2質量%、pH=3.1、電気伝導率=353μS/cm、及びDLS平均粒子径=23.2nmの、シラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを含む水性ゾル1391.0gを得た。
【0053】
(合成例2)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-O、BET法の平均粒子径11.0nm、DLS平均粒子径17.2nm)中のシリカに対して、シラン化合物の質量比が0.39になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック インダストリーズ アーゲー製Dynasylan GLYMO)を95.5g投入した以外は、合成例1と同じ操作により水性ゾルを得た。
水性シリカゾル中のシリカに対するシラン化合物の質量比0.39、シリカ固形分=20.9質量%、pH=3.2、電気伝導率=363μS/cm、及びDLS平均粒子径=20.1nmのシラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを含む水性ゾル1295.5gを得た。
【0054】
(合成例3)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-O、BET法の平均粒子径11.0nm、DLS平均粒子径17.2nm)中のシリカに対して、シラン化合物の質量比が0.20になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック インダストリーズ アーゲー製Dynasylan GLYMO)を47.8g投入した以外は、合成例1と同じ操作により水性ゾルを得た。
水性シリカゾル中のシリカに対するシラン化合物の質量比0.20、シリカ固形分=20.6質量%、pH=2.7、電気伝導率=634μS/cm、及びDLS平均粒子径=20.0nmのシラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを含む水性ゾル1247.8gを得た。
【0055】
[原油回収用薬液の調製]
(実施例1)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水2.2gと水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-O、シリカ濃度=20.5質量%、BET法平均粒子径11.0nm、DLS平均粒子径17.2nm)87.8gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながらアスコルビン酸(純正化学(株)製)10.0gを投入した後、1時間撹拌して実施例1の薬液を製造した。実施例1の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0056】
(実施例2)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水12.1gと合成例1で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾル84.9gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながら、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gを投入した後、1時間撹拌して実施例2の薬液を製造した。実施例2の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-1〉に従って100℃で30日間(720時間)保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0057】
(実施例3)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水9.3gと合成例1で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾル84.9gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながら、アニオン界面活性剤α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製リポラン(登録商標)LB-440 有効成分36.3%)0.8gを投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いてアニオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(新日本理化(株)製シノリン(登録商標)90TK-T)0.30gを投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いて非イオン界面活性剤としてHLB=14.3のポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬(株)製ノイゲン(登録商標)EA-157)を純水で希釈して有効成分70%にしたものを1.7g投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いてアスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gを投入した後、1時間撹拌して実施例3の薬液を製造した。実施例3の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-1〉に従って100℃で30日間(720時間)保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0058】
(実施例4)
アスコルビン酸の投入量を1.0gとした以外は、実施例2と同じ操作で実施例4の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0059】
(実施例5)
アスコルビン酸の投入量を5.0gとした以外は、実施例2と同じ操作で実施例5の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-1〉に従って100℃で30日間(720時間)保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0060】
(実施例6)
アスコルビン酸の投入量を10.0gとした以外は、実施例2と同じ操作で実施例6の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-1〉に従って100℃で30日間(720時間)保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0061】
(実施例7)
アスコルビン酸の投入量を15.0gとした以外は、実施例2と同じ操作で実施例7の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-1〉に従って100℃で30日間(720時間)保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0062】
(実施例8)
合成例2で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを投入した以外は、実施例2と同じ操作で実施例8の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0063】
(実施例9)
合成例3で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを投入し、及びアスコルビン酸の投入量を10gとした以外は、実施例2と同じ操作で実施例9の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0064】
(実施例10)
純水の投入量を66.4g、水性シリカゾルの投入量を23.6g、及びアスコルビン酸の投入量を10.0gとした以外は、実施例1と同じ操作で実施例10の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。
実施例10で製造した薬液の投入量を3.0g、及び純水の投入量を47.0gとした以外は、〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製した。該サンプルを〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0065】
(実施例11)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水8.8gと合成例1で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾル84.9gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながら、カチオン界面活性剤アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(第一工業製薬(株)製カチオーゲン(登録商標)TML
有効成分30%)3.3gを投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながらアスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gを投入した後、1時間撹拌して実施例11の薬液を製造した。実施例11の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0066】
(実施例12)
上記実施例1において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)10.0gの代わりに、グルコン酸(富士フイルム和光純薬(株)製 有効成分50.0%)20.0gを用いた以外は、実施例1と同じ操作で実施例12の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0067】
(実施例13)
上記実施例2において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、グルコン酸(富士フイルム和光純薬(株)製 有効成分50.0%)6.0gを用いた以外は実施例2と同じ操作で実施例13の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0068】
(実施例14)
上記実施例3において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、グルコン酸(富士フイルム和光純薬(株)製 有効成分50.0%)6.0gを用いた以外は実施例3と同じ操作で実施例14の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0069】
(実施例15)
上記実施例1において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)10.0gの代わりに、二亜硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)10.0gを用いた以外は、実施例1と同じ操作で実施例15の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0070】
(実施例16)
上記実施例2において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、二亜硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)3.0gを用いた以外は実施例2と同じ操作で実施例16の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0071】
(実施例17)
上記実施例3において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、二亜硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)3.0gを用いた以外は実施例3と同じ操作で実
施例17の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0072】
(実施例18)
上記実施例1において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)10.0gの代わりに、α-アセチル-γ-ブチロラクトン(東京化成工業(株)製)10.0gを用いた以外は、実施例1と同じ操作で実施例18の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0073】
(実施例19)
上記実施例2において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、α-アセチル-γ-ブチロラクトン(東京化成工業(株)製)3.0gを用いた以外は実施例2と同じ操作で実施例19の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0074】
(実施例20)
上記実施例3において、アスコルビン酸(純正化学(株)製)3.0gの代わりに、α-アセチル-γ-ブチロラクトン(東京化成工業(株)製)3.0gを用いた以外は実施例3と同じ操作で実施例20の薬液を製造した。該薬液の物性を評価した。なお、水の添加量を調整して合計量を100(100g)とした。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0075】
(比較例1)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水12.2gと水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-O)87.8gを投入しマグネットスターラーで撹拌し、比較例1の薬液とした。比較例1の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で3日間(72時間)保持した。その後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0076】
(比較例2)
120mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水12.1gと合成例1で製造したシラン化合物で表面処理された水性シリカゾル85.1gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。続いて、マグネットスターラーで撹拌しながら、アニオン界面活性剤α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製リポラン(登録商標)LB-440 有効成分36.3%)0.8gを投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いてアニオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(新日本理化(株)製シノリン(登録商標)90TK-T)0.30gを投入し、完全に溶けきるまで撹拌した。続いて非イオン界面活性剤としてHLB=14.3のポリオキシエチレンスチレン化フェ
ニルエーテル(第一工業製薬(株)製ノイゲン(登録商標)EA-157)を純水で希釈して有効成分70%にしたものを1.7g投入した後、1時間撹拌して比較例2の薬液を製造した。比較例2の薬液のpH、電気伝導率、粘度、及び薬液中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
〈ブラインテストサンプルの調製〉に従いブラインテストサンプルを調製し、〈高温耐塩性評価-2〉に従って100℃で10時間保持した。その後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0077】
表1~6に実施例の薬液の組成(成分濃度)及び耐塩性試験結果を示す。表7及び表8に比較例の薬液の組成(成分濃度)及び耐塩性試験結果を示す。
なお表中のアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤の種類(符号)は以下を表す。
<アニオン界面活性剤>
・AOS:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム「リポラン(登録商標)LB-440」、有効成分36.3%、ライオン・スペシャリティー・ケミカルズ(株)
・SDS:ドデシル硫酸ナトリウム「シノリン(登録商標)90TK-T」、有効成分96.0%、新日本理化(株)
<非イオン界面活性剤>
・EA-157:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル「ノイゲン(登録商標)EA-157」、有効成分100%、第一工業製薬(株)
<カチオン界面活性剤>
・LTAC:アルキルトリメチルアンモニウムクロライド「カチオーゲン(登録商標)TML」、有効成分30%、第一工業製薬(株)
【0078】
<界面張力評価>
本発明の原油回収用薬液は界面活性剤を含有することができるため、油層内で水-油界面張力を低下させ、水による油の置換効率を向上させることにより原油の増進回収効果がより期待できる。
実施例1~3、実施例12~17、比較例1~2、海水のみ(塩分濃度は4質量%)、についてパラフィンオイルに対する界面張力を測定した。表9に測定結果を示す。
【0079】
[油回収性評価-1]
実施例3及び比較例2の原油回収用薬液を用い、パラフィンオイルとベレア砂岩を用いて、地下油層を想定した油回収性評価を実施した。
なお、実施例3及び比較例2の原油回収用薬液は、4質量%人工海水でシリカ濃度0.1または0.5質量%になるように調整し、これを原油回収性能評価用サンプルとした。
油として、パラフィンオイル(シェル ルブリカンツ ジャパン(株)製オンジナオイル15)を使用した。
ベレア砂岩として、60℃で1日乾燥させた、浸透率約150mD、孔隙量約15ml、長さ3インチ及び直径1.5インチの試料を用いた。
【0080】
真空容器内でベレア砂岩を4質量%人工海水に浸漬し、真空ポンプを用いて容器内を減圧することでベレア砂岩を塩水(人工海水)で飽和させた後、ベレア砂岩を塩水から取り出し、重量法で塩水飽和量を求めた。
塩水(人工海水)で飽和させたベレア砂岩を、掃攻法油回収装置SRP-350(Vinci テクノロジーズ社製)のコアホルダにセットした。コアホルダの温度を60℃まで昇温させた後、2000psiの拘束圧(側圧)をかけながらパラフィンオイルをベレア砂岩に圧入し、その後、ベレア砂岩をコアホルダから取り出し、重量法で油飽和量を求めた。
油飽和させたベレア砂岩をパラフィンオイル中で60℃で2か月熟成させた後、掃攻法
油回収装置SRP-350のコアホルダにベレア砂岩を再度セットし、4質量%人工海水を流量0.4ml/分でベレア砂岩に圧入し、排出されたパラフィンオイルの容積から塩水掃攻された油回収率を求めた。
続いて上記の通りに調製した実施例又は比較例の原油回収性能評価用サンプルを、流量0.4ml/分でベレア砂岩に圧入し、排出されたパラフィンオイルの容積から薬液掃攻された油回収率を求めた。
【0081】
[油回収性評価-2]
実施例3の油回収用薬液を用い、原油とベレア砂岩を用いて、地下油層を想定した油回収性評価を実施した。
なお、実施例3の原油回収用薬液を、4質量%人工海水でシリカ濃度0.5質量%になるように調整し、原油回収性能評価用サンプルを調製した。
油としては、ロシア産原油を使用した。
ベレア砂岩として、50℃で1日乾燥させた、浸透率約60mD、孔隙量約5ml、長さ2インチ及び直径1インチの試料を用いた。
【0082】
真空容器内でベレア砂岩を4質量%人工海水に浸漬し、真空ポンプを用いて容器内を減圧することでベレア砂岩を塩水(人工海水)で飽和させた後、ベレア砂岩を塩水から取り出し、重量法で塩水飽和量を求めた。
塩水(人工海水)で飽和させたベレア砂岩を、掃攻法油回収装置BCF-700(Vinci テクノロジーズ社製)のコアホルダにセットした。コアホルダの温度を50℃まで昇温させた後、800psiの拘束圧(側圧)をかけながら原油をベレア砂岩試料に圧入し、その後、ベレア砂岩をコアホルダから取り出して重量法で油飽和量を求めた。
油飽和させたベレア砂岩を原油中で50℃で2か月熟成させた後、掃攻法油回収装置BCF-700のコアホルダにべレア砂岩を再度セットし、4質量%人工海水を流量0.2ml/分でベレア砂岩に圧入し、排出された原油の容積から塩水掃攻された油回収率を求めた。
続いて上記の通りに調製した実施例の原油回収性能評価用サンプルを、流量0.2ml/分でベレア砂岩に圧入し、排出された原油の容積から薬液掃攻された油回収率を求めた。
【0083】
表10に、実施例及び比較例の油回収率の結果を示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
表4~6に示すように、実施例1、実施例4、実施例8~実施例10、実施例12、実施例14、実施例15、及び実施例18の薬液は、塩水中で、20℃で72時間静置した後においても層分離やゲル化が観察されなかった。また試料中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径についても、薬液のDLS平均粒子径に対する室温耐塩性試験後のDLS平均粒子径の比が小さく、シリカゾルは変質がなく、安定であった。よって薬
液は、室温耐塩性に優れることが確認された。
表4~6に示すように、実施例2、実施例3、実施例5~実施例7、実施例11、実施例13、実施例16、実施例17、実施例19、及び実施例20の薬液は、塩水中で、100℃で720時間(30日)または10時間加熱した後においても層分離やゲル化が観察されなかった。また試料中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径についても、薬液のDLS平均粒子径に対する高温耐塩性試験後のDLS平均粒子径の比が1.5以下であり、シリカゾルは変質がなく、安定であった。よって薬液は、高温耐塩性に優れることが確認された。
【0095】
一方、表7及び8に示すように、アスコルビン酸を含有せず、シラン化合物で表面処理していない水性シリカゾルを使用した比較例1の薬液は、<室温耐塩性評価>において24時間後に白濁して固液分離が生じ、耐塩性が非常に悪い結果となった。
アスコルビン酸を含有せず、シラン化合物とアニオン界面活性剤を2種とノニオン界面活性剤1種のみの含有とした比較例2の薬液は、<高温耐塩性評価-1>後に白色ゲルが生成し、高温耐塩性が悪い結果となった。
本発明に従う上記実施例1~20の薬液にあっては、アスコルビン酸、グルコン酸、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、及び二亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤を配合することにより、界面活性剤の有無に関わらずシリカの分散性が向上し安定化を実現したものと考えられる。
【0096】
以上の結果より、本明細書に記載の薬液は、原油回収性能が高く、高温耐塩性に優れ、さらに油回収率にも優れることが期待される。
【0097】
また表9に示すように、実施例3、実施例14、及び実施例17は、いずれも添加した界面活性剤の効果により、界面張力が低かった。その結果、これら薬液は、油層内で水-油界面張力を低下させ、水による油の置換効率を向上させ、油の増進回収効果が期待できる。
実施例3のケミカル掃攻によって油を回収でき、油回収に有効であることが確認された。
【国際調査報告】