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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】汚染低減システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542911
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2021085835
(87)【国際公開番号】W WO2022152491
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21151852.7
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】クヴォン、ヴラディミール
(72)【発明者】
【氏名】ヤクニン、アンドレイ、ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ケルクホフ、マルクス、アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】アスタホフ、ドミトリー、イーゴレヴィチ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CA18
2H197CD03
2H197CD12
2H197CD13
2H197FA01
2H197GA01
2H197GA03
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA11
2H197GA12
2H197GA16
2H197GA18
2H197GA20
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
(57)【要約】
【解決手段】プラズマ環境中のパターニングシステムの汚染を低減するための汚染低減システムは、放射ビーム中にパターニングシステムを保持するよう配置されるサポートと、パターニングシステムから放射ビームの一部を遮蔽するよう構成されるシャッタと、シャッタとサポートの間に位置する電極であって、電源に接続され、電極と、サポートに保持されるパターニングシステムとの間に電界を生成するよう構成される電極と、を備える。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターニングシステムの汚染を低減するための汚染低減システムであって、
放射ビーム中にパターニングシステムを保持するよう配置されるサポートと、
パターニングシステムから放射ビームの一部を遮蔽するよう構成されるシャッタと、 前記シャッタと前記サポートとの間に位置する電極であって、電源に接続され、前記電極と、前記サポートに保持される前記パターニングシステムとの間に電界を生成するよう構成される電極と、を備える汚染低減システム。
【請求項2】
前記電極は、単一電極である、請求項1に記載の汚染低減システム。
【請求項3】
前記電極は、前記サポートに対して分離可能に取り付けられる、請求項1または2に記載の汚染低減システム。
【請求項4】
前記電界は、2V/mm未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項5】
前記生成される電界の大きさは、所定値よりも大きく、
前記所定値は、前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、
前記生成される電界および前記第2電界は、反対の極性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項6】
前記パターニングシステムにおける前記電界を測定するための手段をさらに備え、前記所定値は、前記測定された電界を備える、請求項5に記載の汚染低減システム。
【請求項7】
前記所定値を記憶するメモリをさらに備える、請求項5または6に記載の汚染低減システム。
【請求項8】
前記所定値は、時間とともに変化する関数を備え、
前記電源によって印加される電圧は、時間とともに変化し、前記所定値に依存して選択される、請求項5から7のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項9】
前記放射ビームによって照明されるように配置される前記パターニングシステムの表面にガスを提供するよう構成されるガス出口をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項10】
前記ガス出口および電極は、一体である、請求項9に記載の汚染低減システム。
【請求項11】
前記電極から熱を除去するように構成される冷却システムをさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項12】
前記電極は、前記パターニングシステムおよび/またはシャッタの平面にほぼ平行に延びる平坦面を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項13】
前記電極は、第1部分と、前記第1部分から電気的に絶縁される第2部分とを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備えるレチクルステージ。
【請求項15】
請求項14に記載のレチクルステージおよび/または請求項1から13のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備える、リソグラフィ装置。
【請求項16】
パターニングシステムの汚染を抑制する方法であって、
前記パターニングシステムは、放射ビーム中に保持され、前記パターニングシステムの一部は、シャッタによって前記放射ビームから遮蔽されており、
前記方法は、前記シャッタと前記パターニングシステムとの間に位置する電極に電圧を印加し、前記電極と前記パターニングシステムとの間に電界が生成されるようにすることを備える方法。
【請求項17】
前記電圧は、前記生成される電界の大きさが所定値よりも大きくなるように印加され、
前記所定値は、前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、
前記生成される電界および前記第2電界は、反対の極性を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界を測定することをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電圧を印加することは、第1時間間隔中に第1電圧を印加することと、第2時間間隔中に第2電圧を印加することと、を備え、
前記第1電圧および前記第2電圧が異なる、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1電圧は、第1極性を有し、前記第2電圧は、前記第1極性とは反対の第2極性を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プラズマ環境中の汚染特性を決定するための計測システムであって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の汚染低減システムと、
検知装置と、を備え、
前記検知装置は、前記電極の表面上の一以上の汚染粒子の一以上の特性を決定するよう動作可能である、計測システム。
【請求項22】
前記特性は、前記一以上の汚染粒子の量、および/または、密度、および/または、組成を備える、請求項21に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2021年1月15日に出願された欧州出願第21151852.7号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、汚染低減システムに関する。特に、プラズマ環境中、例えばリソグラフィ環境中で使用される汚染低減システムに関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを形成するための装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用できる。リソグラフィ装置は、例えば、基板上に設けられた放射線感受性材料(レジスト)の層上に、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)のパターンを投影しうる。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用しうる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外(EUV)を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するために使用されうる。
【0005】
EUV放射は、リソグラフィ装置内の汚染の生成に寄与しうる。例えば、EUV放射は、リソグラフィ装置内に存在する物質(例えば、少量のガス)と相互作用してプラズマを形成しうる。プラズマは、リソグラフィ装置内の表面から汚染粒子を放出させるのに適した強い静電気力を提供しうる。一般に、EUV放射のパワーが増加すると、EUV生成プラズマによって表面から放出される粒子の数が増加する。
【0006】
汚染粒子は、影響されやすい(センシティブな)光学表面に輸送されて入射する可能性がある。例えば、汚染粒子は、パターニングデバイス(すなわち、マスクまたはレチクル上)に入射する可能性がある。このような汚染粒子は、基板上に結像され、所望の投影パターンを乱し、その結果、リソグラフィ装置によって製造される製品に欠陥を生じさせる可能性がある。別の例として、汚染粒子は、リソグラフィ装置の構成要素またはリソグラフィ装置内に存在する物体を損傷させる可能性があり(例えば、レチクルを保護するペリクルを断裂させる可能性がある)、それによってメンテナンス活動の頻度が増加し、リソグラフィ装置の生産性が低下する。したがって、上記の問題の一以上を軽減することが望ましいかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、パターニングシステムの汚染を低減するための汚染低減システムであって、放射ビーム中にパターニングシステムを保持するよう配置されるサポートと、パターニングシステムから放射ビームの一部を遮蔽するよう構成されるシャッタと、シャッタとサポートの間に位置し、電源に接続され、電極と、サポートに保持されるパターニングシステムとの間に電界を生成するよう構成される電極と、を備える汚染低減システムが提供される。
【0008】
電界は、電極とパターニングシステムとの間の少なくとも一つの帯電粒子が電極によって引き寄せられるようなものである。電界は、少なくとも一つの帯電粒子がパターニングシステムから遠ざかるようなものである。帯電粒子は汚染物質であってもよい。一実施形態において、パターニングシステムは基板を備えてもよい。他の実施形態において、基板はレチクル、または、ペリクルを有するレチクルであってもよい。
【0009】
このような構成は、プラズマ環境中で使用されてもよい。プラズマ環境は、パターニングデバイスの近傍における放射ビームの入射によって少なくとも部分的に引き起こされる可能性がある。電極が放射ビームから遮蔽されているため、電極はプラズマ環境中のプラズマ本体から離れた位置にあり、したがって制御可能にバイアスされることができる。さらに、電極がシャッタとパターニングシステムとの間に位置するため、粒子をパターニングシステムから遠ざけるのに十分な電界を発生させるには、比較的小さな電圧が必要とされる。低電圧は、特にプラズマ環境におけるアークのリスクを低減する。したがって、本発明は、プラズマ環境中に配置されるパターニングシステムの汚染の低減に適している。
【0010】
パターニングシステムがサポートによって保持されているとき、電極はシャッタとパターニングシステムとの間に位置する。つまり、パターニングデバイスの使用時、電極がシャッタとパターニングシステムとの間に位置する。使用時において、汚染低減システムは、放射ビームによって照明されるパターニングシステムを備えてもよい。電極は、シャッタとサポートとの間に配置されるが、シャッタおよびサポートから電気的に絶縁されていてもよい。電極は、シャッタまたはサポートと直接接触しなくてもよい。電界は、パターニングシステムの平面に対してほぼ垂直であってもよい。パターニングシステムは、第2電極として機能してもよい。
【0011】
サポートは、放射ビーム中にパターニングシステムを保持するように配置される。したがって、サポートは、放射ビームがパターニングシステムに与えられる間、パターニングシステムを保持するように構成される。
【0012】
電極は、単一電極であってもよい。つまり、シャッタとパターニングシステムとの間には単一電極のみが配置されてもよい。電界は、単一電極とパターニングシステムとの間に生成され、単一電極が第1電極として機能し、パターニングシステムが第2電極として機能してもよい。このような構成は、単一電極とパターニングシステムとの間に電界を生成することを可能にし、パターニングシステムの近傍に大きな体積を必要とせずに汚染を低減または防止することを可能にする。したがって、この構成は、多くの体積を犠牲にすることなく、少ない体積にて採用されうる。
【0013】
電極は、サポートに対して分離可能に取り付けられてもよい。電極は、サポートおよびパターニングシステムに対して分離可能に移動してもよい。電極は、シャッタに機械的に結合されてもよい。電極は、放射ビームから電極が遮蔽されたままとなるように、シャッタとともに移動可能であってもよい。電極は、汚染の低減が望ましい場所である、パターニングシステムのある場所に移動されてもよい。
【0014】
電界は、2V/mm未満であってもよい。このような低電界を用いることは、アークが発生する可能性を低減させ、汚染低減システムの安全性を有利に向上させる。追加的に、電圧は、1V/mm未満であってもよい。
【0015】
生成される電界の大きさは、所定値よりも大きくてよく、所定値は、電極に電圧が印加されていないときのパターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、生成される電界および第2電界は、反対の極性を有する。
【0016】
反対の極性とは、生成される電界が第2電界と比較して反対の方向に向けられることを意味する。このようにして、第2電界は、生成される電界によって打ち負かされるかもしれない。したがって、電圧が印加されていないときにはパターニングシステムに引き寄せられるであろう汚染物質は、電圧が印加されるときに電極によって引き寄せられ、パターニングシステムから離れるようにして逸れるかもしれない。このような電界は、電圧源によって印加される電圧を所定値に依存して選択することによって生成されてもよい。
【0017】
パターニングシステムにおける電界は、放射ビームの入射に起因して発生する可能性がある。パターニングシステムにおける電界は、パターニングシステムがプラズマ環境中にあることに起因しうる。パターニングシステムにおけるとは、パターニングシステムの近傍、例えば、放射ビームから放射を受けるパターニングシステムの表面上または表面の近くにあるとみなされてもよい。二以上の所定値が使用されてもよい。
【0018】
汚染低減システムは、パターニングシステムにおける電界を測定するための手段をさらに備えてもよい。所定値は、測定される電界を備えてもよい。例えば、汚染低減システムは、センサを備えてもよい。電界は、パターニングシステムの表面および/または表面に近い領域で測定されてもよい。経験的に測定することにより、電極に電圧が印加されていないときの電界は、それに基づいて計算される電圧を印加することによって正確に打ち負かされうる。
【0019】
汚染低減システムは、所定値を記憶するためのメモリをさらに備えてもよい。所定値は、例えば理論的分析および/またはモデル化によって計算されてもよい。所定値は、経験的に測定される一以上の電界値に対応してもよい。
【0020】
所定値は、時間とともに変化する関数を備えてもよい。電圧源によって印加される電圧は、時間とともに変化してもよく、所定値に依存して選択されてもよい。すなわち、生成される電界は、時間とともに変化してもよい。印加電圧は、連続的に変化可能であってもよい。変化する電圧は、より低い電圧の印加を可能にしつつ、依然として汚染を低減しうる。
【0021】
汚染低減システムは、電圧源によって印加される電圧を制御するように動作可能な制御装置をさらに備えてもよい。
【0022】
汚染低減システムは、放射ビームによって照明されるように配置されるパターニングシステムの表面にガスを提供するように構成されるガス出口をさらに備えてもよい。ガス出口は、中性汚染粒子および/または帯電していない粒子がパターニングシステムに到達するのを阻止するガスカーテンを生成してもよい。
【0023】
ガス出口および電極は、一体であってもよい。すなわち、ガスノズルが電極を備えてもよい。有益なことに、これは、パターニングシステム内で他の有益な用途を有する表面に二重の機能性を提供することができるため、体積をほとんどまたは全く犠牲にすることなく、電極をパターニングシステムに組み込むことを可能にする。
【0024】
汚染低減システムは、電極から熱を除去するように構成される冷却システムをさらに備えてもよい。冷却システムを設けることにより、例えばプラズマ環境との相互作用に起因する熱の蓄積が除去されてもよい。熱の除去は、電極の損傷を低減し、および/または、電極上に付着する汚染物質の放出リスクを低減しうる。熱の除去は、汚染低減システムの寿命を向上させうる。
【0025】
電極は、パターニングシステムおよび/またはシャッタの平面とほぼ平行に延びる平坦面を備えてもよい。この構造を有する電極は、誘導電界に起因する無視できる程度の機械的損傷を受ける可能性がある。電極は、パターニングシステムおよび/またはシャッタの平面に対して垂直な厚さをミリメートルオーダで有してもよい。パターニングシステムの平面に平行/垂直とは、通常の使用時にサポートによって保持されるときのパターニングシステムに関連して解釈されるべきである。
【0026】
電極は、第1部分と、第1部分から電気的に絶縁される第2部分とを備えてもよい。第1部分および第2部分のそれぞれに異なる電圧が印加されてもよい。したがって、例えば、異なる極性/方向を有する追加の電界が生成される可能性があるため、追加の汚染物質の方向付けが実行されてもよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様のいずれかの実施形態の汚染低減システムを備えるレチクルステージが提供される。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様のレチクルステージおよび/または本発明の第1の態様のいずれかの実施形態の汚染低減システムを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、パターニングシステムの汚染を抑制する方法が提供される。パターニングシステムは、放射ビーム中に保持され、パターニングシステムの一部は、シャッタによって放射ビームから遮蔽される。この方法は、シャッタとパターニングシステムとの間に位置する電極に電圧を印加し、電極とパターニングシステムとの間に電界が生成されるようにすることを備える。
【0030】
サポートは、放射ビーム中にパターニングシステムを保持するように配置される。したがって、サポートは、放射ビームがパターニングシステムに与えられる間、パターニングシステムを保持するように構成される。
【0031】
電界は、電極とパターニングシステムとの間の少なくとも一つの荷電粒子が電極によって引き付けられるようなものである。電界は、少なくとも一つの荷電粒子がパターニングシステムから遠ざかるようなものである。 荷電粒子は、汚染物質であってもよい。
【0032】
このような構成は、プラズマ環境中で使用されてもよい。プラズマ環境は、パターニングデバイスの近傍における放射ビームの入射によって少なくとも部分的に引き起こされる可能性がある。
【0033】
印加される電圧は、生成される電界の大きさが所定値よりも大きくなるようにすることができ、所定値は、電極に電圧が印加されないときのパターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、生成される電界および第2電界は、反対の極性を有する。
【0034】
反対の極性とは、生成される電界が第2電界と比較して反対の方向に向けられることを意味する。このようにして、第2電界は、生成される電界によって打ち負かされるかもしれない。したがって、電圧が印加されていないときにはパターニングシステムに引き寄せられるであろう汚染物質は、電圧が印加されるときに電極によって引き寄せられ、パターニングシステムから離れるようにして逸れるかもしれない。このような電界は、電圧源によって印加される電圧を所定値に依存して選択することによって生成されてもよい。
【0035】
パターニングシステムにおける電界は、放射ビームの入射に起因して発生する可能性がある。パターニングシステムにおける電界は、パターニングシステムがプラズマ環境中にあることに起因しうる。パターニングシステムにおけるとは、パターニングシステムの近傍、例えば、放射ビームから放射を受けるパターニングシステムの表面上または表面の近くにあるとみなされてもよい。二以上の所定値が使用されてもよい。
【0036】
この方法は、電極に電圧が印加されていないときにパターニングシステムにおける電界を測定することをさらに備えてもよい。代わりに、電圧が印加されていないときのパターニングシステムにおける電界が理論的に計算されてもよい。この方法は、必要に応じて、測定または計算された電界を記憶することをさらに備えてもよい。
【0037】
電圧を印加することは、第1時間間隔中に第1電圧を印加することと、第2時間間隔中に第2電圧を印加することとを備え、第1電圧および第2電圧が異なる。
【0038】
電圧は、放射ビームの特性の関数として変化してもよく、放射ビーム自体が時間とともに変化してもよい。例えば、変化は、放射ビームのパルスレートおよび/またはパワーの関数であってもよい。変化する電圧を印加することによって、生成される電界は、放射ビームの入射に起因して生じる電界の変化に合わせて調整されてもよい。変化する電圧は、より低い電圧の印加を可能にしつつ、依然として汚染を低減しうる。電圧は、例えば入射する放射ビームに起因して、パターニングシステムの近傍で経験される電界および/またはパターニングシステムによって経験されるバイアスに依存して変化してもよい。
【0039】
第1電圧は、第1極性を有してもよく、第2電圧は、第1極性とは反対の第2極性を有してもよい。極性を反転することは、一以上の汚染物質を電極の表面から放出させることを促進しうる。一以上の汚染物質の放出は、洗浄および/または計測の目的に有益となりうる。
【0040】
放出される汚染物質がダミー基板に付着しうるように、ダミー基板が導入されてもよい。このようなダミー基板は、放出される汚染物質が他の構成要素、例えばパターニングシステムに付着するリスクを低減してもよい。このようなダミー基板は、例えばダミー基板の表面の汚染物質の一以上の特性を検知することによって、その後の計測手順に使用されてもよい。
【0041】
本発明の第5の態様によれば、プラズマ環境中の汚染特性を決定するための計測システムであって、本発明の第1の態様の汚染低減システムのいずれかの実施形態と、検知装置とを備える計測システムが提供される。検知装置は、電極の表面上の一以上の汚染粒子の一以上の特性を決定するよう動作可能である。
【0042】
このような計測システムは、プラズマ環境内、例えばリソグラフィ装置内の汚染の特性をより良く理解するために使用されてもよい。
【0043】
特性は、一以上の汚染粒子の量、および/または、密度、および/または、組成を備える。
【0044】
一態様または一実施形態に関して説明された特徴は、別の態様または別の実施形態に関して説明された任意の特徴と組み合わせることができ、そのような組み合わせはすべて本書で明示的に考慮および開示されることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の実施の形態は、単なる例示として、添付の概略的な図面を参照しながら、以下に説明される。
図1】リソグラフィ装置および放射源を備えるリソグラフィシステムを示す図である。
図2A】従来装置のレチクルミニ環境を概略的に示す図である。
図2B】本発明の実施形態に係るレチクルミニ環境を概略的に示す図である。
図2C図2Bに示される構成の一部における負に帯電した粒子の動きを概略的に示す図である。
図2D図2Bに示される構成の一部における負に帯電した粒子の動きを概略的に示す図である。
図2E図2Bに示される構成の一部における負に帯電した粒子の動きを概略的に示す図である。
図2F図2Bに示される構成の一部における負に帯電した粒子の動きを概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るレチクルミニ環境の別の構成を示す図である。
図4】注目領域におけるプラズマ環境内の電界プロファイルを表す曲線を示す図である。
図5】プラズマ環境中の汚染物質の単位電荷あたりの運動量の変化を表す曲線を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る汚染低減システムの例示的な電極を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、放射源SOおよびリソグラフィ装置LAを備えるリソグラフィシステムを示す。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、EUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成されるサポート構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成される基板テーブルWTとを備える。
【0047】
図1に示される放射源SOは、例えば、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれるタイプのものである。例えばCOレーザを含みうるレーザシステム1は、例えば燃料エミッタ3から供給される錫(Sn)などの燃料にレーザビーム2を介してエネルギーを与えるように構成される。以下の説明では錫が参照されるが、任意の適切な燃料が使用されてもよい。燃料は、例えば、液体の形態であってもよく、例えば、金属または合金であってもよい。 燃料エミッタ3は、例えば液滴の形態で、錫をプラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って方向付けるように構成されるノズルを備えてもよい。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4において錫に入射する。レーザエネルギーを錫に与えることで、プラズマ形成領域4において錫プラズマ7が形成される。EUV放射を含む放射は、電子とプラズマのイオンとの脱励起および再結合の間にプラズマ7から放出される。
【0048】
プラズマからのEUV放射は、コレクタ5によって収集および集束される。コレクタ5は、例えば、近法線入射放射コレクタ5(より一般的には、法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)を備える。コレクタ5は、EUV放射(例えば、13.5nmといった所望の波長を有するEUV放射)を反射するように構成される多層ミラー構造を有してもよい。コレクタ5は、二つの焦点を有する楕円体構造を有してもよい。後述されるように、焦点のうちの第1焦点はプラズマ形成領域4にあってもよく、焦点のうちの第2焦点は中間焦点6にあってもよい。
【0049】
レーザシステム1は、放射源SOから空間的に分離されてもよい。この場合、レーザビーム2は、例えば、適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダ、および/または他の光学系を備えるビームデリバリシステム(図示せず)の助けを借りて、レーザシステム1から放射源SOに通過してもよい。レーザシステム1、放射源SO、およびビームデリバリシステムは、合わせて放射システムとみなされてもよい。
【0050】
コレクタ5によって反射された放射は、EUV放射ビームBを形成する。EUV放射ビームBは、中間焦点6において集束され、プラズマ形成領域4に存在するプラズマの中間焦点6での像を形成する。中間焦点6での像は、照明システムILのための仮想放射源として機能する。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの筐体構造9の開口8に、または開口8の近くに位置するように配置される。
【0051】
図1は、放射源SOをレーザ生成プラズマ(LPP)源として描いているが、放電生成プラズマ(DPP)源または自由電子レーザ(FEL)といった任意の適切な源(ソース)を使用してEUV放射が生成されてもよい。
【0052】
照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調整するように構成される。それについて、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11を含んでもよい。ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11は協働して、所望の断面形状および所望の強度分布を有するEUV放射ビームBを提供する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、または代えて、他のミラーまたはデバイスを含んでもよい。
【0053】
ペリクル(図示せず)は、パターニングデバイスMAに(例えばペリクルフレームを介して)取り付けられてもよい。パターニングデバイス、ペリクル、およびペリクルフレームMAは、パターニングシステムと呼ばれてもよい。追加の構成要素は、レチクルミニ環境RMEと呼ばれる領域内のパターニングデバイスMAの近傍に設けられる。追加の構成要素は、放射ビームBをさらに調整するために設けられ、例えばブレードとも呼ばれるシャッタ(図示せず)が設けられる。汚染粒子がパターニングデバイスMAに輸送されて付着する可能性を低減するために汚染低減システムも提供される。汚染低減システムは、電極100を含む。
【0054】
EUV放射ビームBは、調整された後、パターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン化されたEUV放射ビームB’が生成される。
【0055】
投影システムPSは、パターン化されたEUV放射ビームB’を基板W上に投影するように構成される。この目的のために、投影システムPSは、パターン化されたEUV放射ビームB’を基板テーブルWTによって保持される基板W上に投影するように構成される複数のミラー13、14を備えてもよい。投影システムPSは、パターン化されたEUV放射ビームB’に縮小係数を適用してもよく、これにより、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する像を形成してもよい。例えば、4または8の縮小係数が適用されてもよい。投影システムPSは、図1において2個のミラー13、14のみを有するように示されているが、投影システムPSは、異なる個数のミラー(例えば、6個または8個のミラー)を含んでもよい。
【0056】
基板Wは、既に形成されたパターンを含んでもよい。この場合、リソグラフィ装置LAは、パターン化されたEUV放射ビームB’によって形成された像を、基板W上に既に形成されたパターンと位置合わせする。
【0057】
図2Aは、従来のリソグラフィ装置のレチクルミニ環境RMEを概略的に示す。レチクルミニ環境RMEは、サポート構造MTによって支持されるパターニングシステムMSを含む。上述したように、パターニングシステムは、パターニングデバイスおよびペリクルを備えてもよい。サポート構造MTは、例えばサポート構造MTの平面内(すなわち、図2に示されるy方向)において、放射ビームBに対してスキャンされるように動作可能である。このようにして、サポート構造MT、したがってパターニングシステムMSは、パターニングデバイス上のパターンの異なる部分をパターン化された放射ビームB’に記録できるようにスキャンされることができる。
【0058】
シャッタシステムは、第1シャッタ22および第2シャッタ24を備え、レチクルミニ環境RME内に設けられる。シャッタ22、24は、パターニングシステムMSに入射する放射ビームBの領域を制御するために(例えば、y方向の放射ビームのサイズを制御するために)使用されうる。また、シャッタ22、24は、(例えば、基板のスキャン露光間において)放射ビームBを周期的に遮断し、放射ビームBがパターニングシステムMSに入射するのを防ぐために使用されてもよい。図2に描かれるシャッタシステムは、簡略図であり、シャッタシステムが異なる形態を取ってもよいことが理解されよう。例えば、より多い、または、より少ないシャッタがシャッターシステムに使用されてもよく、シャッタは任意の形状を有してもよい。シャッターシステムにおけるシャッタの動きは、典型的には制御モジュールによって制御される。
【0059】
レチクルミニ環境RMEは、ガスノズル26を含む。ガスノズル26は、レチクルミニ環境RME、特に放射ビームBによって照明されるべきパターニングシステムMSの表面にガスを供給する。レチクルミニ環境RMEには、汚染物質として知られる浮遊汚染粒子が存在しうる。汚染物質の直径は通常、ナノメートルからマイクロメートルのオーダーである。ガスノズル26によって供給されるガスは、パターニングシステムMS(例えば、パターニングデバイスまたはパターニングデバイスに取り付けられるペリクル)に汚染粒子が移動して付着するのを阻止するように作用するガスカーテンを形成する。水素ガスが典型的に使用される。ガスは、典型的に放射によって照明されるパターニングシステムMSの表面20の近傍に提供される。
【0060】
リソグラフィプロセスの間、パターニングシステムMSおよびレチクルミニ環境RMEは、放射ビームBによる照明に起因して放射にさらされる。したがって、レチクルミニ環境RME内のガスは、放射ビームによって照明され、イオン化してプラズマを形成する。プラズマは、レチクルミニ環境RMEの一部または全体にわたって延びる可能性があるため、レチクルミニ環境RMEはプラズマ環境にあると呼ばれることがある。プラズマ環境は、放射ビームBが入射するときに存続する可能性があり、さらに、放射ビームBが入射しなくなった後もある期間にわたって追加的に存続する可能性がある。プラズマ環境に起因して、従前は中性ガス内に浮遊していたであろう汚染物質が、現在はプラズマ環境内に存在する。プラズマ環境内の汚染物質は、プラズマ内の荷電種 (例えば、イオン、電子) に起因して帯電するようになる。典型的に、汚染物質は負に帯電する。
【0061】
レチクルミニ環境RME内での帯電に起因して、電界が発生する。特に、パターニングシステムMSは、典型的に正に帯電し、シャッタ22とパターニングシステムMSとの間に電界E1が確立される。電界E1は、負に帯電する汚染物質がパターニングシステムMSに向かって駆動され、パターニングシステムMSへの汚染物質の付着を促進するようなものである。特に、汚染物質は、パターニングデバイスの表面または(ペリクルが存在する場合には)ペリクルの表面を備えてもよいパターニングシステムMSの表面20に付着する可能性がある。パターニングデバイス上またはペリクル上のいずれか(つまり、パターニングシステムMS上)の汚染は、リソグラフィ装置の結像品質に悪影響を与えることができる。電界E1は、典型的に、ガスノズル26によって提供されるガスカーテンによって汚染物質に加わる力よりも電界E1によって汚染物質に加わる力が大きくなる程度に十分に強いため、電界E1は、ガスカーテンの汚染防止能力を打ち負かす(上回る)。
【0062】
図2Bは、本発明のある実施形態に係るリソグラフィ装置のレチクルミニ環境RMEを概略的に示す。電極100は、シャッタ22とパターニングシステムMSとの間に設けられる。電極100は、電圧源(図示せず)に接続されており、したがってバイアスされている。電極100とパターニングシステムMSとの間の電位差は、例えば電極100に与えられる電圧を制御することによって、電極100とパターニングシステムMSとの間に電界E2が確立されるように構成される。この構成において、パターニングシステムMSは、(第1)電極100と電極対を形成する第2電極として機能する。電界E2は、パターニングシステムMS(第2電極)と(第1)電極100との間に生じる。電界E2は、帯電した汚染物質に力を及ぼす。その結果、汚染物質を方向付けることができ、特に、パターニングシステムMSから遠ざかるように方向付けしうる。
【0063】
この構成例において、電極は、パターニングシステムMSに対して正の電圧でバイアスされる。例えば、パターニングシステムMSは接地されてもよく、その場合、電極100は任意の正の電位差を有してもよい。あるいは、パターニングシステムMSは、例えば蓄積された静電荷に起因して何らかのバイアスを有してもよく、その場合、電極100は、パターニングシステムMS上の任意のバイアスに対してより大きい正の(またはより小さい負の)電位差を有してもよい。その結果、負に帯電した汚染物質が電極100に引き付けられる。したがって、電界E2によって及ぼされる力に起因して、汚染物質はパターニングシステムMSから遠ざかるように方向付けされる。
【0064】
別の例において、電極は、反対極性の電圧で、例えばパターニングシステムMSに対して負の電圧でバイアスされてもよい。この例では、電界の方向が反転するため、正に帯電した汚染物質が電極100に引き寄せられるかもしれない。したがって、電極に印加されるバイアスの極性は、利用する特定のプラズマ環境に基づいて調整されてもよい。
【0065】
図2C、2D、2Eおよび2Fは、パターニングシステムMSがプラズマ環境内にあるとき(例えば放射ビームによる照明後)の図2Bに示される構成の一部における負に帯電した汚染物質27、28の動きを概略的に示す。図示される汚染物質27、28は、電極100とパターニングシステムMSとの間に位置する。
【0066】
図2Cは、電極100に電圧が供給されないときの第1汚染物質27の動きを示す。この例において、汚染物質27は、パターニングシステムMSに向かう方向に初速度29Cを有する。図2Cに示される座標系では、この初速度29Cは、正のz方向である。汚染低減策がなければ、汚染物質27は、破線で示されるようにパターニングシステムMSに移動し、パターニングシステムMSを汚染するであろう。初速度29Cは、少なくとも部分的には、図2Aを参照して説明したように生じる電界に起因する。つまり、プラズマ環境における帯電に起因して、シャッタ(図示せず)とパターニングシステムMSとの間に電界が確立され、負に帯電した汚染物質27がパターニングシステムMSに向かって引き寄せられるようになる。
【0067】
図2Dは、電極100に電圧が供給されたときの図2Cの汚染物質27の動きを示す。印加される電圧は、電極100にバイアスが印加されないときに生じるであろう電界と比較して、電極100とパターニングシステムMSとの間の電界の方向を反転させるのに十分となる程度に大きい。電極100によって生成される電界は、汚染物質27の進行方向の変化に影響を与える程度に十分に大きい。汚染物質27は、電極100に向かう方向、つまり、負のz方向の更新速度29Dを有する。汚染物質27は、その後、破線で示されるように電極100に移動する。 このようにして、電極100に電圧を印加すると、汚染物質が電極100に引き寄せられることによって、汚染物質がパターニングシステムMSから遠ざかるように方向付けされるであろう。
【0068】
汚染物質27が電極100に向けて移動すると、汚染物質が電極に付着することによって、汚染物質が浮遊粒子から表面に局在する粒子に変換されうる。汚染物質を電極100上に局在化させることにより、汚染物質はレチクルミニ環境RMEの周囲を再循環することができなくなり、パターニングシステムMSに移動/付着することができなくなる。汚染物質が電極に付着するか否かは、汚染物質および電極の材質特性、および/または、電極の表面状態に依存しうる。
【0069】
図2Eは、電極100に電圧が供給されていないときの第2汚染物質28の動きを示す。この例において、汚染物質28は、パターニングシステムMSに向かう方向(つまり、正のz方向)の成分と、パターニングシステムMSを横切る方向(つまり、正のy方向)の成分とを有する。パターニングシステムMSに向かう方向の初速度29Eの成分は、少なくとも部分的には、図2Aを参照して説明したように生じる電界に起因する。初速度29Eの横方向の成分は、環境の他の側面、例えばプラズマ環境および/またはガスノズルからのガス圧力によって及ぼされる力に起因しうる。
【0070】
図2Fは、電極100に電圧が供給されたときの図2Eの汚染物質28の動きを示す。印加される電圧は、電極100にバイアスが印加されないときに生じるであろう電界と比較して、電極100とパターニングシステムMSとの間の電界の方向を反転させるのに十分となる程度に大きい。電極100によって生成される電界は、汚染物質28の移動方向の変化に影響を与える程度に十分に大きい。汚染物質28は、パターニングデバイスMSに向かう方向の成分であって、初速度29Cの成分の大きさに比べて小さい成分を有する更新速度29Eを有する。しかしながら、更新速度29Eの横成分は電界の影響を比較的受けない。その結果、汚染物質28は、破線で示されるようにパターニングシステムMSが位置する平面に向かって移動し続けるが、パターニングシステムMSから逸れる。つまり、汚染物質28は、パターニングシステムMSに直接向かうように移動しないように、またはパターニングシステムMSに衝突しないように、パターニングシステムMSから遠ざかるように方向付けされる。この状況において、汚染物質28は、電極100による引力を経験するが、電極100に向かって移動しない。
【0071】
図2Dおよび2Fを参照しながら上述した粒子ステアリング(方向付け)の例では、汚染物質は、電極による引力を経験し、したがってパターニングシステムから遠ざかるように方向付けされる。その結果、汚染物質低減システムの一部として電極を設けることは、汚染物質がパターニングシステムに向かって移動し、パターニングシステム上に付着する可能性を低減させる。
【0072】
電極100は、パターニングシステムMSのうち、放射ビームBを介した放射によって照明されない領域に配置される。特に、電極100は、シャッタ22によって放射から遮蔽される。その結果、電極100は、放射ビームによって生成されるプラズマの本体から空間的に離れている。したがって、例えば加熱に起因する、電極100への損傷が低減される。さらに、電極100が放射ビームBから遮蔽される場合、電極100に付着していた汚染物質が再放出される可能性が低くなる。
【0073】
シャッタ22は、(第3)電極としても機能してよく、電極100とシャッタ22との間に別の電界E3が発生してもよい。これは、シャッタ22と電極100との間の電位差に起因して発生し、例えばシャッタ22が接地され、電極100が上述のようにバイアスされる場合である。汚染物質は、上述したものと同じ方法で、この電界E3によって方向付けされる可能性がある。電極100がシャッタ22のいずれのバイアスよりも正にバイアスされる例では、負に帯電した汚染物質がシャッタ22から離れて電極100に向かうように方向付けされる可能性がある。
【0074】
図3は、本発明のある実施形態に係るリソグラフィ装置のレチクルミニ環境RMEの別の構成を示す。図3の多くの特徴は、図2Bの特徴に対応しており、それに準じて符号が付けられている。
【0075】
図3に示される構成は、シャッタ24とパターニングシステムMSとの間に位置するガスノズル300を備える。ガスノズル300は、電圧源(図示せず)に接続されており、したがって、ガスノズル300は電極として機能する。この構成において、ガスノズル300とパターニングシステムMSとの間には、図2Bの電極100を参照して上述したように、電界E2が生じる。ガスノズル300とシャッタ24との間には、対応する電界E3が生じてもよい。パターニングシステムMSおよびシャッタ24のいずれのバイアスよりも大きな正の電圧がガスノズル300に印加されると、電界E2、E3は、ガスノズル300による引力に起因して負に帯電した汚染物質を方向付ける。したがって、汚染物質をパターニングシステムMSから離れるように逸らせ、ガスノズル300に汚染物質を固定することにより、パターニングシステムMSに到達する汚染が低減される。
【0076】
上述したように、例えば図2Dで示されるように汚染物質が電極に向けて移動するような引力である場合、汚染物質が電極表面に堆積しうるため、いくつかの構成では、電極はその表面に汚染物質を蓄積できる。この汚染物質は、プラズマ環境内の汚染に関するさらなる情報を決定するために調査されてもよい。特に、汚染物質が付着した電極の表面を調査し、汚染物質の一以上の特性、例えば汚染物質の化学組成または密度を決定してもよい。電極の表面に対し、既知の計測手法、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、X線光電子分光法(XPS)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、原子間力顕微鏡(AFM)、二次イオン質量分析法(SIMS)、プロフィロメトリ、エリプソメトリが使用されてもよい。
【0077】
また、計測手段がプラズマ環境内に実装されてもよく、例えば計測装置をリソグラフィ装置内に配置し、その場の電極を用いて、電極の特性および/または電極上の汚染物質の特性を測定し、汚染物質に関連する特性を決定できるようにしてもよい。あるいは、電極をその「使用中」の位置から取り外した後、例えばプラズマ環境から取り出した後、電極および/または汚染物質に対して計測手段が使用されてもよい。
【0078】
汚染物質は、追加的または代替的に、電極の表面から除去され、除去後に調査されてもよい。電極から除去された後の汚染物質の調査は、汚染物質の特性に関する情報を与えるかもしれない。既知の計測手法、例えば、粒子質量分級(PMC)、SEM、EDS、AFM、または透過電子顕微鏡(TEM)が汚染物質の調査に使用されてもよい。
【0079】
汚染物質は、電極に印加される電圧の極性を反転することによって、電極の表面から除去されてもよい。例えば、電極に負の電圧を印加して汚染物質を電極に引き寄せ、その結果、電極表面に汚染物質を堆積させる場合、電極に正の電圧を印加すると、電極から汚染物質が放出される可能性がある。汚染物質が電極から放出されるか否かは、汚染物質および電極の材料特性および/または電極の表面状態に依存しうる。汚染物質を放出するときに、ダミー基板を電極の近くに配置して、汚染物質がこのダミー基板に付着するようにしてもよい。ダミー基板は、その後、計測目的で分析されてもよい。追加的または代替的に、ダミー基板は、単に環境内の他の構成要素、例えばパターニングシステムMSに汚染物質が付着するリスクを低減するために設けられてもよい。
【0080】
電極とパターニングシステムとの間の電界のいかなる大きさも、汚染物質に力を加えることになるため、電極による汚染物質の引き付けを生じさせるであろう。電圧は、電界に起因して汚染物質に加わる力が、パターニングシステムまたはその一部から汚染物質を遠ざけるように方向付けるのに十分となる程度に大きくなるように選択されてもよい。いくつかの場合、電圧は、例えば図2Cおよび2Dを参照して説明したように、力が汚染粒子の方向の変化に影響を与えるのに十分となる程度に大きくなるように、汚染粒子が反転して電極に向かって移動するように選択されてもよい。いくつかの場合、電圧は、例えば図2Eおよび2Fを参照して説明したように、力が速度ベクトルを変えるのに十分となる程度に大きくなり、汚染物質がパターニングシステムから外れるように選択されてもよい。いくつかの場合、汚染物質に作用する力が、汚染物質が経験する可能性のある他の力、例えば、(例えばプラズマ環境内の中性粒子に対する)抗力や(例えばプラズマ環境内のプラズマクーロン場に起因する)クーロン力を超えるように、電圧を選択することが有益であるかもしれない。
【0081】
また、電圧は、アークのリスクの低減に十分となる程度に低くなるように選択されてもよい。シャッタとパターニングシステムとの間に位置する電極は、パターニングシステムに近接しているため、汚染物質の偏向に十分となる程度に強い電界の印加は、比較的低い電圧、例えば0-10Vの範囲で達成できる。
【0082】
第1の例では、静的な電圧が印加される。静的とは、電極100に印加される電圧がほぼ一定であることを意味する。第2の例では、動的な電圧が印加される。動的とは、電圧が変化する、例えば時間経過とともに変化することを意味する。これらの例とその効果については、以下でさらに詳述される。
【0083】
図4は、注目領域におけるプラズマ環境内の電界プロファイルを表す曲線を示す。注目領域は、レチクルミニ環境内にあり、図2Bを参照して説明したものと同様のパターニングシステムMSの表面20に近い位置にある。特に、本発明に係るシステムにおける電界プロファイルを表す曲線の場合、注目領域は、電極(例えば電極100)と表面(例えば表面20)との間に位置する。従来のシステム(例えば図2Aに描かれるもの)における電界プロファイルを表す曲線では、注目領域は、電極の存在しない対応する位置にあり、例えば、図2Aに電界E1が示される領域である。
【0084】
電界は、縦軸で示される。電界は、電界の方向性を表すために負の値と正の値で表される。電界は正にも負にもなることができず、この表現はパターニングシステムおよび電極に対する方向性を表すものであることが理解されよう。負の電界は、負に帯電した汚染物質をパターニングシステムに引き付ける電界に対応する。正の電界は、負に帯電した汚染物質をパターニングシステムから遠ざける電界に対応する。ゼロ電界(つまり、電界がない)は破線で示される。図2Aおよび図2Bを参照すると、図2Aの電界E1は、負のz方向の方向を有する負の電界として表される一方、図2Bの電界E2は、正のz方向の方向を有する正の電界として表されうる。
【0085】
電界プロファイルは、放射パルスがパターニングシステムを照明する(例えば、シャッタが開いた後に放射ビームがパターニングシステムに到達可能になる)ゼロ点から開始する時間に対して示される。電界プロファイルは、この最初のパルスに続く5μsの電界プロファイルがその後に示される。パルスは、数百ナノ秒程度以下のパルス幅を有する。
【0086】
第1曲線40は、電極がない従来装置の注目領域における電界プロファイルを示す。電界の大きさは、0秒から100nsでの25V/mの大きさの負のピークに向けて急速に増加する。その後、電界の大きさは減少し、5μsの時間窓にわたってゼロの大きさにゆっくりと近づく。電界は正にならない。したがって、この構成において負に帯電した汚染物質は、最初の数百ナノ秒間でパターニングシステムに強く引き付けられ、その後、パターニングシステムに弱く引き付けられ続けるか(電界が弱い負の場合)、または作用を受けないまま(電界がゼロの大きさを有する場合)となる。
【0087】
第2曲線42は、電極を備える装置の注目領域における電界プロファイルを示し、静的な電圧が印加される場合を示す。特に、当該装置は、図2Bに描かれるものと同様に構成され、電極100とパターニングシステムMSの表面20との間の間隔は約5mmである。注目領域内の電界の大きさは、0秒から100ns付近での約45V/mの大きさの負のピークに向けて急速に増加する。このピークは、パルスの持続期間において従来装置と比較してより強い大きさの負となる。つまり、負に帯電した汚染物質は、パルスの持続期間中にパターニングシステムに強く引き付けられる。その後、電界の大きさは100nsから約700nsの間で減少する。700ns付近で電界は正になり、2ms付近で約10V/mの大きさの正の最大値で頭打ちになるまで、正の大きさが徐々に増加する。電界は、5μsの時間窓全体にわたってこの正の最大値のままとなる。電界が正である間、負に帯電した粒子は電極に引き寄せられる。したがって、最初は短時間においてパターニングシステムに引き寄せられるにもかかわらず、電極に静的な電圧を印加することにより、5μsの時間窓の範囲内のかなりの時間においてパターニングシステムから負に帯電した汚染物質を遠ざけるように方向付けできる。
【0088】
第3曲線44は、電極を有する装置の注目領域における電界プロファイルを示し、動的電圧が印加される場合を示す。装置および注目領域は、第3曲線44と第2曲線42とで同じである。
【0089】
第3曲線44は、0秒から5μsまでの時間窓全体にわたってわずかに正である。つまり、動的な電圧が印加される場合、電界が常に正になるように電圧を調整できる。したがって、電極に印加される動的な電圧を用いて、負に帯電した汚染物質をパターニングシステムから常に遠ざけることができる。
【0090】
動的な電圧は、電極に印加される電圧V(t)が時間tに対して変化する。このような変化は、以下の式(1)によって表されてもよい。
【数1】
【0091】
ここで、f(…)は関数を表し、E(t)は電極に電圧が印加されていないときの時間 t に対する電界の変化を表す。電界E(t)は、理論的計算(例えば分析的)または経験的データ(例えばパターニングデバイスにおける電位測定による)に基づく推定値であってもよい。電界E(t)は、例えば、プラズマ環境において自然に発生する電界(例えば、図2Aの電界E1)であってもよい。
【0092】
ある具体例において、電極による汚染物質の引き付けに寄与する電界がパターニングデバイスによる汚染物質の引き付けに寄与する電界よりも常に大きくなるように、電界E(t)を生成するための電圧が計算される。その結果、図4で使用される基準フレームにおいて、注目領域内の全体的な電界は常に正になる。
【0093】
この例において、電圧は、電極での電位φeが以下の式(2)を満たすように選択されてもよい。
【数2】
【0094】
ここで、φpsは、電極に電圧が印加されていないときにパターニングシステムにて生じる電位またはパターニングシステムの近傍にて生じる電位である。電位φpsは、理論的に計算されてもよいし、または経験的に測定されてもよい。
【数3】
は、注目領域内の全体的な電界強度に影響を与えるように選択されうるオフセットであり、例えば、より大きなオフセット
【数4】
は、汚染物質の運動量により大きな変化を与え、より大きな速度でパターニングシステムから汚染物質を遠ざけるように方向付けうる。
【0095】
オフセット
【数5】
は、
【数6】
にしたがって計算できる。ここで、Eavgは、電極に電圧が印加されないときの注目領域における平均電界強度であり、電極に電圧が印加されないときのz方向(δz)の電位変化(δφ)に基づいて計算される。式(2)で表される電位φe、φpsは、時間の関数である。
【0096】
ある具体例において、センサがパターニングシステムの近傍に配置される。センサは、パターニングシステムにおける電界 (および/または電位φps) をモニタするために使用される。データは、例えば入射する放射および/またはプラズマ環境における他の変化に起因して、パターニングシステムにおける電界が時間の経過とともにどのように変化するかのモニタリングによって収集できる。したがって、動的な電圧は、センサによって取得されたデータに基づいて計算されてもよい。センサは、パターニングシステム上に配置されてもよいし、パターニングシステムの一部を形成してもよい。
【0097】
別の例において、パターニングシステムにおける電界(および/または電位φps)は、理論的に計算されてメモリに記憶されてもよい。電界値は、例えばプラズマ環境の変化に応答して、および/または入射する放射に起因して、一定期間にわたって計算されてもよい。
【0098】
電界値が検知されるか理論的に計算されるかにかかわらず、電界値は、所定の電界値として記憶されてもよい。したがって、これらの所定の電界値は、電極に与えられるべき電圧または電圧プロファイル(つまり、変化する電圧)を計算するために使用されてもよい。
【0099】
式(1)および(2)とは異なる関数が選択されてもよい。なお、関数(1)および(2)は時間tの関数として記載した。しかしながら、動的な電圧は、注目領域内の変化する電界に応じて変化してもよいことが理解されよう。変化する電界は、少なくとも部分的には入射する放射に起因する。したがって、動的な電圧は、放射の一以上の特性、例えばパルスレート、パルス幅、パルスエネルギー、放射波長の関数として変化するように表されてもよい。
【0100】
図5の曲線は、プラズマ環境中の汚染物質の単位電荷あたりの運動量の変化を表す。運動量変化曲線は、図4に描かれる電界プロファイルに対応する。つまり、第1曲線50は、電極がない従来装置の注目領域内の汚染物質の運動量変化を表し、第2曲線52は、静的な電圧でバイアスされる電極を有する装置の注目領域内の汚染物質の運動量変化を表し、第3曲線54は、動的な電圧でバイアスされる電極を有する装置の注目領域内の汚染物質の運動量変化を表す。
【0101】
負の運動量の領域56は、破線のボックスで囲まれて示されており、パターニングシステムに向かう方向の運動量を表す。逆に、この基準フレームにおいて、正の運動量を有する汚染物質は、パターニングシステムから遠ざかる。図2Cおよび2Dを参照すると、負の運動量は正のz方向の運動量とみなされてもよく、正の運動量は負のz方向の運動量とみなされてもよい。
【0102】
曲線は、ゼロ(0μs)にて生じるパターニングシステムに到達する放射パルスに続く20μsの時間窓について示される。図示される例において、これは、おおよそ放射線の繰り返しレートである (つまり、時間窓は、放射の単一パルスおよびその後の放射が供給されない一時停止における運動量変化を示す)。
【0103】
第1曲線50は、電極がないシステムを表し、20μsの時間窓全体にわたって負である。つまり、電極がない場合、汚染物質は常にパターニングシステムに向けて移動する。
【0104】
第2曲線52は、電極への静的な電圧の印加を表し、約2μsの間にわたって負の運動量を示す。したがって、静的な電圧が印加されるとき、最初の2μsの間、汚染物質はパターニングデバイスに向かって移動し続ける。これは、図4に描かれる電界プロファイル42に対応し、電界は、放射パルスの到着後の短時間にわたって負である。第2曲線52は、1μs付近でピークとなり、汚染物質に与えられる運動量変化の大きさが減少し、2μs付近でゼロに達するまで減少し続けることを示す。2μsを超えると、第2曲線は正になって大きさが急速に増加する。したがって、汚染物質は、2μsより後において方向の変化に十分となる程度に電極によって方向付けされ、時間の経過とともに速度が増加するようにして電極に向けて移動する。
【0105】
第3曲線54は、電極への動的な電圧の印加を表し、常に正である。第3曲線54は、示されている時間窓全体にわたってほぼ直線的に大きさが増加する。したがって、この動的な電圧が印加される電極を有するレチクルミニ環境内の汚染物質は、パターニングシステムから遠ざけるように常に方向付けされうる。
【0106】
上記の議論では、平均運動量を考慮している。粒子の集団は、運動量の統計的な広がりを備えるため、集団内の全ての粒子が説明したように反応するわけではないことが理解されよう。しかしながら、統計的に平均的な粒子は、説明したように振る舞うであろう。したがって、動的な電圧が印加されるときに一以上の粒子がパターニングデバイスに向けて移動するかもしれないが、粒子の大多数はパターニングデバイスから遠ざかるように方向付けされる。
【0107】
汚染物質に付与される運動量の影響は、放射の追加のパルスがプラズマ環境に照明されるにつれて累積する。つまり、図5に描かれる20μsの時間窓の終わりにおいて、単位電荷あたりの運動量は、静的な場合と動的な場合の双方においてゼロではない。放射の第2パルスに起因する運動量変化を考慮するとき、汚染物質はこれらのゼロではない運動量から始まり、電極によって提供される電界によって追加の運動量を獲得する。したがって、汚染物質ステアリング(方向付け)の影響は、時間の経過とともに (パルス数の関数として) 増加する。この累積効果に起因して、低い電圧であったとしても複数回の放射パルスの後に粒子に実質的なステアリング効果が与えられるため、電極に供給される電圧はさらに低いかもしれない。
【0108】
図6は、本発明のある実施形態に係る汚染低減システムの例示的な電極600を概略的に示す。電極600は、シャッタ22とパターニングシステムMSとの間に設けられる。電極600は、第1部分64および第2部分66を備える。第1部分64および第2部分66は、互いに電気的に絶縁される。第1部分64および第2部分66は、それぞれ電圧供給源(図示せず)に接続される。第1部分64および第2部分66は、二つの出力を有する単一電圧源に接続されてもよいし、二つの別個の電圧源に接続されてもよい。
【0109】
第1部分64に供給される第1電圧は、電極600とパターニングシステムMSとの間に第2電界E2が生成されるようなものである。第1電圧(したがって第2電界E2)は、負に帯電した汚染粒子が電極600の第1部分64に引き付けられるようなものである。したがって、汚染粒子は、電界E2によって加えられる力に起因して、パターニングシステムMSから離れるように方向付けされてもよい。
【0110】
第2部分66に供給される第2電圧は、電極600とシャッタ22との間に第3電界E3が生成されるようなものである。第2電圧(したがって第3電界E3)は、負に帯電した汚染粒子が電極600の第2部分66から離れるように方向付けされるようなものである。したがって、汚染粒子は、電界E3によって加えられる力に起因して、パターニングシステムMSからさらに離れるように方向付けされてもよい。
【0111】
電極は、所与のプラズマ環境および/またはリソグラフィ装置の体積要件を考慮して、任意のサイズおよび形状で使用されてもよい。注目する形状電極の一つは、平坦な電極であり、電極はパターニングデバイスに対して平行な平面である。この構成において、電極は、誘導電界に起因する機械的損傷を回避するのに実質的に十分な厚さを有してもよい。例えば、ある例示的なリソグラフィ装置における電極は、約0.4μNの誘導場力を経験するかもしれない。このような誘導場力は無視できると考えられるため、mm程度以下の厚さを有する電極が選択されてもよい。電極は、シャッタと平行な平面内に配置されてもよい。
【0112】
電極は、シャッタと同様の形状を有してもよい。例えば、電極とシャッタの形状は相補的であってもよい。電極は、シャッタと実質的に同じ形状を有してもよいが、シャッタよりも断面積がわずかに小さい。したがって、電極は、典型的に、シャッタの射影内に留まってもよい(つまり、シャッタは、放射ビームが電極に照明されることを常に妨げてもよい)。
【0113】
電極は、パターニングシステムおよび/またはそのサポートとは別個に取り付けられてもよい。したがって、電極は、パターニングシステムとともに移動しないであろう。むしろ、電極は、シャッタ上に取り付けられてもよく、シャッタに機械的に結合されてもよい。シャッタに取り付けるか、シャッタに機械的に結合することにより、電極は、シャッタとともに移動してもよい。この構成において、電極は、シャッタの動きに関係なく、常にシャッタによって放射ビームから遮蔽されてもよい。
【0114】
簡略化のために、図面において多くの特徴(例えば、配線および電圧源)が省略されていることが理解されよう。
【0115】
本書の図面に示されるレチクルミニ環境RMEは、本質的に例示的なものであり、具体的な体積を明示的に表すものとして考慮されるべきではない。むしろ、レチクルミニ環境RMEは、レチクルの近傍の一般的な領域を示すために示されており、そのように理解されるべきである。本書に記載される様々な特徴は、以下に記載される特許請求の範囲にしたがって配置されてもよく、それらの位置は、本書に描かれるレチクルミニ環境RMEを参照することによって限定されない。さらに、本書で説明されるプラズマ環境は、装置の任意の部分に拡張されてもよく、レチクルミニ環境RMEに限定されない。プラズマ環境は、プラズマが形成される体積として定義される。
【0116】
この文書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的に言及しているが、本書に記載されるリソグラフィ装置は他の用途を有してもよいことが理解されよう。可能性のある他の用途は、集積光学システム、磁区ドメインメモリ用の案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ (LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造を含む。
【0117】
この文書では、リソグラフィ装置の文脈で本発明の実施形態について具体的な言及がなされたかもしれないが、本発明の実施形態は他の装置で使用されてもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはマスク(または他のパターニングデバイス)といった物体を測定または処理する任意の装置の部分を形成してもよい。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれるかもしれない。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または大気(非真空)条件を使用してもよい。
【0118】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、本発明は、記載以外の方法で実施されてもよいことが理解されるであろう。上記の説明は、限定ではなく、例示を意図したものである。したがって、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された本発明に変更が加えられてもよいことは、当業者には明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターニングシステムの汚染を低減するための汚染低減システムであって、
放射ビーム中にパターニングシステムを保持するよう配置されるサポートと、
パターニングシステムから放射ビームの一部を遮蔽するよう構成されるシャッタと、 前記シャッタと前記サポートとの間に位置する電極であって、電源に接続され、前記電極と、前記サポートに保持される前記パターニングシステムとの間に電界を生成するよう構成される電極と、を備える汚染低減システム。
【請求項2】
前記電極は、単一電極である、請求項1に記載の汚染低減システム。
【請求項3】
前記電極は、前記サポートに対して分離可能に取り付けられる、請求項1または2に記載の汚染低減システム。
【請求項4】
前記生成される電界の大きさは、所定値よりも大きく、
前記所定値は、前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、
前記生成される電界および前記第2電界は、反対の極性を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項5】
前記パターニングシステムにおける前記電界を測定するための手段をさらに備え、前記所定値は、前記測定された電界を備える、請求項に記載の汚染低減システム。
【請求項6】
前記所定値を記憶するメモリをさらに備える、請求項またはに記載の汚染低減システム。
【請求項7】
前記所定値は、時間とともに変化する関数を備え、
前記電源によって印加される電圧は、時間とともに変化し、前記所定値に依存して選択される、請求項からのいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項8】
前記放射ビームによって照明されるように配置される前記パターニングシステムの表面にガスを提供するよう構成されるガス出口をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項9】
前記ガス出口および電極は、一体である、請求項に記載の汚染低減システム。
【請求項10】
前記電極から熱を除去するように構成される冷却システムをさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項11】
前記電極は、前記パターニングシステムおよび/またはシャッタの平面にほぼ平行に延びる平坦面を備える、請求項1から1のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
【請求項12】
請求項1から1のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備えるレチクルステージ。
【請求項13】
請求項1に記載のレチクルステージおよび/または請求項1から1のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備える、リソグラフィ装置。
【請求項14】
パターニングシステムの汚染を抑制する方法であって、
前記パターニングシステムは、放射ビーム中に保持され、前記パターニングシステムの一部は、シャッタによって前記放射ビームから遮蔽されており、
前記方法は、前記シャッタと前記パターニングシステムとの間に位置する電極に電圧を印加し、前記電極と前記パターニングシステムとの間に電界が生成されるようにすることを備える方法。
【請求項15】
プラズマ環境中の汚染特性を決定するための計測システムであって、
請求項1から1のいずれか一項に記載の汚染低減システムと、
検出装置と、を備え、
前記検出装置は、前記電極の表面上の一以上の汚染粒子の一以上の特性を決定するよう動作可能である、計測システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、本発明は、記載以外の方法で実施されてもよいことが理解されるであろう。上記の説明は、限定ではなく、例示を意図したものである。したがって、以下の特許請求の範囲および以下の項から逸脱することなく、説明された本発明に変更が加えられてもよいことは、当業者には明らかであろう。
(項1)
パターニングシステムの汚染を低減するための汚染低減システムであって、
放射ビーム中にパターニングシステムを保持するよう配置されるサポートと、
パターニングシステムから放射ビームの一部を遮蔽するよう構成されるシャッタと、 前記シャッタと前記サポートとの間に位置する電極であって、電源に接続され、前記電極と、前記サポートに保持される前記パターニングシステムとの間に電界を生成するよう構成される電極と、を備える汚染低減システム。
(項2)
前記電極は、単一電極である、項1に記載の汚染低減システム。
(項3)
前記電極は、前記サポートに対して分離可能に取り付けられる、項1または項2に記載の汚染低減システム。
(項4)
前記電界は、2V/mm未満である、項1から項3のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項5)
前記生成される電界の大きさは、所定値よりも大きく、
前記所定値は、前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、
前記生成される電界および前記第2電界は、反対の極性を有する、項1から項4のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項6)
前記パターニングシステムにおける前記電界を測定するための手段をさらに備え、前記所定値は、前記測定された電界を備える、項5に記載の汚染低減システム。
(項7)
前記所定値を記憶するメモリをさらに備える、項5または項6に記載の汚染低減システム。
(項8)
前記所定値は、時間とともに変化する関数を備え、
前記電源によって印加される電圧は、時間とともに変化し、前記所定値に依存して選択される、項5から項7のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項9)
前記放射ビームによって照明されるように配置される前記パターニングシステムの表面にガスを提供するよう構成されるガス出口をさらに備える、項1から項8のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項10)
前記ガス出口および電極は、一体である、項9に記載の汚染低減システム。
(項11)
前記電極から熱を除去するように構成される冷却システムをさらに備える、項1から項10のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項12)
前記電極は、前記パターニングシステムおよび/またはシャッタの平面にほぼ平行に延びる平坦面を備える、項1から項11のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項13)
前記電極は、第1部分と、前記第1部分から電気的に絶縁される第2部分とを備える、項1から項12のいずれか一項に記載の汚染低減システム。
(項14)
項1から項13のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備えるレチクルステージ。
(項15)
項14に記載のレチクルステージおよび/または項1から項13のいずれか一項に記載の汚染低減システムを備える、リソグラフィ装置。
(項16)
パターニングシステムの汚染を抑制する方法であって、
前記パターニングシステムは、放射ビーム中に保持され、前記パターニングシステムの一部は、シャッタによって前記放射ビームから遮蔽されており、
前記方法は、前記シャッタと前記パターニングシステムとの間に位置する電極に電圧を印加し、前記電極と前記パターニングシステムとの間に電界が生成されるようにすることを備える方法。
(項17)
前記電圧は、前記生成される電界の大きさが所定値よりも大きくなるように印加され、
前記所定値は、前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界に対応する第2電界を表し、
前記生成される電界および前記第2電界は、反対の極性を有する、項16に記載の方法。
(項18)
前記電極に電圧が印加されないときの前記パターニングシステムにおける電界を測定することをさらに備える、項17に記載の方法。
(項19)
前記電圧を印加することは、第1時間間隔中に第1電圧を印加することと、第2時間間隔中に第2電圧を印加することと、を備え、
前記第1電圧および前記第2電圧が異なる、項16から項18のいずれか一項に記載の方法。
(項20)
前記第1電圧は、第1極性を有し、前記第2電圧は、前記第1極性とは反対の第2極性を有する、項19に記載の方法。
(項21)
プラズマ環境中の汚染特性を決定するための計測システムであって、
項1から項13のいずれか一項に記載の汚染低減システムと、
検知装置と、を備え、
前記検知装置は、前記電極の表面上の一以上の汚染粒子の一以上の特性を決定するよう動作可能である、計測システム。
(項22)
前記特性は、前記一以上の汚染粒子の量、および/または、密度、および/または、組成を備える、項21に記載の計測システム。
【国際調査報告】