(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】高い熱たわみ温度を有する光硬化性樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240116BHJP
B29C 35/08 20060101ALI20240116BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240116BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240116BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240116BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240116BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C35/08
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/112
B29C64/314
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541324
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022011331
(87)【国際公開番号】W WO2022150400
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ステシコヴァ,エルヴィラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーチュ,マーク,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4F203
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4F203AA42
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4J127AA03
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4J127EA12
4J127FA06
(57)【要約】
ここに開示されるのは、3D印刷に使用するための光重合性組成物である。該組成物は、高架橋性アクリレートモノマー、弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、光重合開始剤、及び任意にカーボンブラックを含む。光重合後の組成物は、E弾性率、引張強さ、破断伸度などの強力な機械的特性を維持しながら高い熱たわみ温度(例えば、少なくとも80℃)を有する。これらの組成物を利用して三次元物体を製造する方法、及びこれらの組成物から作られた三次元物体も説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の官能価を有する少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマー;
少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー;及び
少なくとも1つの光重合開始剤、
を含む、光重合性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは式Iによるアクリレートモノマーであって:
【化1】
式中、R
1は、炭素、エーテル、エステル又はウレタン結合を有する分岐鎖又は直鎖の炭化水素鎖であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6はそれぞれ独立して、アクリル部分であり、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6はそれぞれ独立して、0又は1であり;式中、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6の合計は、3から6の値である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6の合計が4から5の値である、請求項2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは式IIによるアクリレートモノマーであって:
【化2】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、H、C
1-6アルキル、又は
【化3】
であり、
式中、少なくとも1つのR
1又はR
2は
【化4】
であり;
R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立してH又はCH
3であり;
X、Y及びZは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC
1-6アルキレン基であり;
pは0又は1であり;
出現ごとのwは独立して1、2又は3であり;
qは0又は1~100の整数であり;
tは0又は1~100の整数であり;
r、s、u、及びvは、独立して、0、1、2、3、又は4である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
R
1及びR
2の両方は:
【化5】
である、請求項4に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは、以下の:
エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、
【化6】
エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、
【化7】
プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、
【化8】
及び
トリメチロールプロパントリアクリレート
【化9】
からなる群から選択される、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記高架橋性アクリレートモノマーがエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートである、請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
前記弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが、式(III)のウレタン(メタ)アクリレートであって、
【化10】
式中
R
1は、2~12個の炭素原子を有し、任意にC
1~C
4アルキル基によって置換されていてよく、及び/又は1つ以上の酸素原子で中断されていてよい二価のアルキレン基であり、該基は、具体的には2~10個、より具体的には2~8個の炭素原子を有し、非常に具体的には3~6個の炭素原子を有し、
R
2は、それぞれの場合において、他とは独立して、メチル又は水素、特に水素であり、
R
3は、1~12個の炭素原子を有し、任意にC
1~C
4アルキル基によって置換されていてよく、及び/又は1つ以上の酸素原子によって中断されていてよい二価のアルキレン基であり、該基は、具体的には2~10個、より具体的には3~8個、非常に具体的には3~4個の炭素原子を有し、及び
nとmは、互いに独立して、1~5、具体的には2~5、より具体的には2~4、非常に具体的には2~3、より具体的には2~2.5の正の数であり、
R
4は、脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートから両方のイソシアネート基が脱離することによって形成される二価の有機基である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーが:
(I)下式のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)を
【化11】
下式の(n+m)/2当量のラクトン(B)と反応させ、
【化12】
下式の中間体を形成すること、
【化13】
及び
(II)第1ステップで形成された中間体を、少なくとも1つの脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートと反応させて、ウレタンアクリレートオリゴマーを形成すること、
を含む方法によって得られる、請求項8に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択され、非常に具体的には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項9に記載の光重合性組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)がヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである、請求項10に記載の光重合性組成物。
【請求項12】
前記ラクトン(B)が、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-エチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、7-メチルオキセパン-2-オン、1,4-ジオキセパン-5-オン、オキサシクロトリデカン-2-オン、及び13-ブチル-オキサシクロトリデカン-2-オンからなる群から選択される、請求項9に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
前記ラクトン(B)がε-カプロラクトンである、請求項12に記載の光重合性組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートが、ジシクロメタンジイソシアネートである、請求項9に記載の光重合性組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを20:80~80:20の質量比で含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを30:70~70:30の質量比で含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項17】
前記組成物が、前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを60:40~70:30の質量比で含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項18】
両方とも組成物全体を基準として、前記1つ以上の高度架橋性モノマーが、60から75質量%の量で存在し、前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが、10から40質量%の量で存在する、請求項15に記載の光重合性組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが20~30質量%の量で存在する、請求項18に記載の光重合性組成物。
【請求項20】
カーボンブラックをさらに含み、前記少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと前記少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーとの質量比が65:35~75:25の範囲である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項21】
光重合後の前記組成物が、少なくとも80℃の熱たわみ温度を有する、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項22】
光重合後の前記組成物が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、請求項21に記載の光重合性組成物。
【請求項23】
請求項1の組成物を含むパッケージ。
【請求項24】
三次元物品の調製方法であって、前記方法は、三次元物品を製造するために請求項1の組成物の1つ以上の連続層を適用することと、前記連続層にUV照射を照射することとを含む、方法。
【請求項25】
前記適用することが、前記組成物の第1層を基材に堆積させることと、前記組成物の第2層を前記第1層に適用し、任意に、その後連続層を適用することとを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記適用することが、前記組成物のインクジェット印刷を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記三次元物品が、少なくとも100℃の熱たわみ温度を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記三次元物品が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
請求項1の組成物のUV硬化された連続層を含む三次元物品。
【請求項30】
請求項24の方法によって製造される三次元物品。
【請求項31】
前記三次元物品が、少なくとも100℃の熱たわみ温度を有する、請求項29に記載の三次元物品。
【請求項32】
前記三次元物品が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、請求項29に記載の三次元物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2021年1月6日に出願された米国仮特許出願第63/134,295号の利益を主張し、それらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、三次元(3D)印刷技術に関し、より具体的には、インクジェット、ステレオリソグラフィ(SLA)、及びデジタルライトプロセッシング(DLP)用の3D印刷可能な組成物、ならびにその使用方法及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0004】
以下の背景の議論においては、特定の構造及び/又は方法が参照される。しかし、以下の参照は、これらの構造及び/又は方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が先行技術として適格でないことを示す権利を明示的に留保する。
【0005】
光硬化性組成物は、光重合開始剤を用いてラジカル重合を開始させて光源を使用してモノマーとオリゴマーのネットワークを硬化(重合)させる、3D印刷技術に使用される材料である。一般的に、これらの組成物は、光重合開始剤、モノマー、オリゴマー、その他の成分を含む。
【0006】
過去30年間、ステレオリソグラフィ(SLA)、及びデジタル光処理(DLP)3Dプリンティング業界の焦点は、プロトタイピングと限定的な製造機械に集中していた。その間に、3Dプリンタ、ソフトウェアの開発、オープンシステムの採用に向けて大幅な進歩があった。残念ながら、クローズドシステムの普及とプロトタイピングのための技術要件の欠如により、SLA及びDLPアプリケーション用の先端材料の開発が遅れていた。付加製造産業がプロトタイピングから製造へと着実に進化している現在、目標とする明確に定義された用途によって特定の特性を有する先端材料の開発が重要となっている。したがって、射出成形及び従来の製造方法などの既存の製造技術に適合する高度な性能仕様を備えたエラストマー及び熱可塑性3D印刷材料を開発することが最も重要になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、オリゴマーO3含有量の関数としてのE弾性率を示している。
【
図2】
図2は、配合物中のO3含有量の関数としての破断伸度を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
硬度及び伸びなどの望ましい物理的特性のバランスをとりながら、改善された熱安定性も示す3Dプリンティング配合物を提供することが依然として望まれている。より具体的には、実行可能な物理的特性(衝撃強度、弾性率、破断伸度)と高い熱たわみ温度(「HDT」)を十分に組み合わせることが望まれている。これらの要素のバランスをとることにより、衝撃や高温でのたわみに耐え、機械的安定性を備える、強靭な材料を提供することが目標である。熱たわみ温度は、高温で所定の荷重下におけるポリマーの歪みに対する抵抗力の尺度である。テストでは、所定のテストバーが所定の荷重下で0.25mmたわむ温度を報告している。例えば電子機器又は自動車用途などの特定の用途では、3D印刷装置は、適切な物理的特性を維持しながら温度に基づく物理的変化に対するある程度の耐性(高い耐熱性)を有する必要がある。本発明の目標は、同時に、熱たわみ温度の上昇を追求しながら、これらの用途に適切な強度を有するデバイスを再現可能に形成する3D印刷できる配合を見出すことであった。
【0009】
驚くべきことに、架橋可能な官能基を2つ以上、特に官能基を4つ以上有する特定の高架橋性アクリレートモノマーを弾性ウレタンアクリレートオリゴマーと組み合わせて使用することにより、強度などの物理的特性を維持しながら、高いHDTを示す、エレクトロニクス及び自動車などの高温用途で有用な3D印刷される骨組みを提供する配合物を作成することが可能であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術の一態様は、少なくとも3つの官能基、例えば少なくとも4つの官能基、特に4~6個の官能基を有する1つ以上の高架橋性モノマー;及び少なくとも1つの弾性オリゴマーを含む組成物に関し、ここで該組成物は3次元UV硬化性組成物である。本発明で使用可能な高架橋性モノマーは、高いTg値、例えば100℃を超える、特に150℃を超えるTg値を有することができる。エラストマーオリゴマーは、例えば、長鎖ジアクリレートポリウレタンオリゴマーであってよい。
【0011】
本技術の別の態様では、組成物は、1つ以上の高架橋性モノマーと少なくとも1つの弾性オリゴマーとを、20:80~80:20、例えば30:70~70:30、例えば60:40~70:30の質量比で含む。
【0012】
本技術の別の態様では、組成物は、少なくとも80℃、例えば少なくとも100℃、特に少なくとも200℃の熱たわみ温度を有する。
【0013】
本技術の別の態様では、3次元UV硬化性組成物は、高架橋性モノマーとしてエトキシル化ペンタエリスリトールテトラクリレートと、ウレタンアクリレートオリゴマーとを含む。
【0014】
任意の実施形態において、組成物は、インクジェット、SLA、及び/又はDLP堆積に有用であり得る。任意の実施形態において、組成物は、1つ以上の光重合開始剤を含み得る。本技術はまた、本明細書に記載の組成物のいずれかを含むパッケージをも提供する。
【0015】
別の態様では、本技術は、本明細書の任意の実施形態に記載される組成物を使用して3D物品を製造する方法に関し、該方法は、任意の実施形態で本明細書に記載された組成物の1つ以上の連続する層を適用して3D物品を作製すること;及び連続する層にUV照射を照射することを含む。任意の実施形態において、組成物は、インクジェット、SLA、及び/又はDLPで堆積され得る。これらの連続する層は、50~200μmの厚さを有することができる。より厚い層はより高速な印刷を可能にし、層が薄いと、良好な解像度をもたらし得る。
【0016】
さらに別の関連する態様では、本技術は、本明細書に記載された組成物のいずれかのUV硬化連続層を含む3D物品を提供する。任意の実施形態では、組成物は、インクジェット、SLA、又はDLPによって堆積され得る。
【0017】
定義
本発明をさらに詳細に説明する前に、本出願で使用される用語は、別段の指示がない限り、以下のように定義される。
【0018】
本明細書で使用される「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度まで変化する。使用される文脈でも当業者に明確ではないこの用語の使用がある場合、「約」は、その特定の用語の最大プラス又はマイナス10%を意味することになる。
【0019】
要素を記載する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)「a」及び「an」及び「the」という用語ならびに類似の参照の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾されない限り、単数及び複数の両方をカバーするものと解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の記載は、本明細書で別段の表示がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡略な方法として単に機能することを意図され、各個別の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書で別段の表示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾されない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるすべての例又は例示的な言葉(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に実施形態をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の記載がない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書内のいかなる文言も、特許請求されていない要素を必須として示すものと解釈されるべきではない。
【0020】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、後に記述される状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、その記述にはその状況が発生する場合と発生しない場合とが含まれる。
【0021】
「事前に決定された」という用語は、その正体(identity)がその使用前に知られている要素を指す。
【0022】
本明細書で使用される「ステレオリソグラフィ」又は「SLA」という用語は、光重合を使用してレイヤーバイレイヤーの様式でモデル、プロトタイプ、パターンの作成、及び部品の製造に使用する3D印刷技術の一形態を指し、それによれば、光によって分子鎖が結合してポリマーを形成する。次に、これらのポリマーは、三次元固体の本体を構成する。
【0023】
本明細書で使用される「デジタル光処理」又は「DLP」という用語は、3Dモデリングソフトウェアで作成した設計を取得し、DLP技術を使用して3D物体を印刷する、3D印刷及びステレオリソグラフィとしても知られている付加製造プロセスを指す。DLPは、デジタルマイクロミラーデバイスを使用する光学マイクロエレクトロメカニカルテクノロジーに基づく表示デバイスである。DLPは、樹脂を固体の3D物体に硬化するためのプリンタにおける光源として使用されることができる。
【0024】
本明細書で使用される「熱たわみ温度」又は「HDT」という用語は、高温で所定の荷重下におけるポリマーの歪みに対する抵抗力の尺度である。言い換えれば、所定のポリマーテストバーが所定の荷重下で0.25mmたわむ温度である。この熱たわみ温度は、「荷重たわみ温度(deflection temperature under load)」あるいは「熱変形温度(heat distortion temperature.)」とも知られている。ASTM D 648に従ってテストされる。
【0025】
発明の実施形態
第1実施形態では、光重合性組成物は:
3つ以上の官能価を有する少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマー;
少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー;及び
少なくとも1つの光重合開始剤、を含む。
【0026】
第2実施形態は、第1実施形態に記載の光重合性組成物であって、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは式Iによるアクリレートモノマーであり:
【化1】
式中、R
1は、炭素、エーテル、エステル又はウレタン結合を有する分岐又鎖は直鎖炭化水素鎖であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6はそれぞれ独立して、アクリル部分であり、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6はそれぞれ独立して、0又は1であり;式中、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6の合計は、3から6の値である、第1実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0027】
第3実施形態は、p1、p2、p3、p4、p5、及びp6の合計が4から5の値である、第2実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0028】
第4実施形態は、第1実施形態に記載の光重合性組成物であって、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは式IIによるアクリレートモノマーであり:
【化2】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、H、C
1-6アルキル、又は
【化3】
であり、
式中、少なくとも1つのR
1又はR
2は
【化4】
であり;
R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立してH又はCH
3であり;
X、Y及びZは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC
1-6アルキレン基であり;
pは0又は1であり;
出現ごとのwは独立して1、2又は3であり;
qは0又は1~100の整数であり;
tは0又は1~100の整数であり;
r、s、u、及びvは、独立して、0、1、2、3、又は4である、第1実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0029】
第5実施形態は、第4実施形態に記載の光重合性組成物であって、R
1及びR
2の両方が:
【化5】
である、第4実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0030】
第6実施形態は、第1から第5実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物であって、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーは、以下の:
エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、
【化6】
エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、
【化7】
プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、
【化8】
及び
トリメチロールプロパントリアクリレート
【化9】
からなる群から選択される、第1から第5実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0031】
第7実施形態は、高架橋性アクリレートモノマーがエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートである、第1から第6実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0032】
第8実施形態は、第1から第7実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物であって、弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが、式(III)のウレタン(メタ)アクリレートであり、
【化10】
式中
R
1は、2~12個の炭素原子を有し、任意にC1~C4アルキル基によって置換されていてよく、及び/又は1つ以上の酸素原子で中断されていてよい二価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個、より具体的には2~8個の炭素原子を有し、非常に具体的には3~6個の炭素原子を有し、
R
2は、それぞれの場合において、他とは独立して、メチル又は水素、特に水素であり、
R
3は、1~12個の炭素原子を有し、任意にC1~C4アルキル基によって置換されていてよい、及び/又は1つ以上の酸素原子によって中断されていてよい二価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個、より具体的には3~8個の炭素原子を有し、非常に具体的には3~4個の炭素原子を有し、及び
nとmは、互いに独立して、1~5、具体的には2~5、より具体的には2~4、非常に具体的には2~3、より具体的には2~2.5の正の数である。
【0033】
式中R4は、脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートから両方のイソシアネート基の脱離によって形成される二価の有機ラジカルである、第1から第7実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0034】
第9実施形態は、第8実施形態に記載の光重合性組成物であって、ウレタンアクリレートオリゴマーは:
(I)下式
【化11】
のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)を、
下式
【化12】
の(n+m)/2当量のラクトン(B)と反応させ、
下式の中間体を形成すること、
【化13】
及び
(II)第1ステップで形成された中間体を、少なくとも1つの脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートと反応させて、ウレタンアクリレートオリゴマーを形成すること、
を含む方法によって得られる、第8実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0035】
第10実施形態は、第9実施形態に記載の光重合性組成物であって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択され、非常に具体的には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される、第9実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0036】
第11実施形態は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)がヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである、第10実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0037】
第12実施形態は、ラクトン(B)が、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-エチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、7-メチルオキセパン-2-オン、1,4-ジオキセパン-5-オン、オキサシクロトリデカン-2-オン、及び13-ブチル-オキサシクロトリデカン-2-オンからなる群から選択される、第9から第11実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0038】
第13実施形態は、ラクトン(B)がε-カプロラクトンである、第12実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0039】
第14実施形態は、少なくとも1つの脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートが、ジシクロメタンジイソシアネートである、第9から第13実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0040】
第15実施形態は、組成物が、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを、20:80~80:20の質量比で含む、第1から第14実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0041】
第16実施形態は、組成物が、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを、30:70~70:30の質量比で含む、第1から第15実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0042】
第17実施形態は、組成物が、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを、60:40~70:30の質量比で含む、第1から第14実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0043】
第18実施形態は、1つ以上の高度架橋性モノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが両方とも組成物全体を基準として、1つ以上の高度架橋性モノマーが、60から75質量%の量で存在し、少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが、10から40質量%の量で存在する、第15から第17実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0044】
第19実施形態は、少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーが20~30質量%の量で存在する、第18実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0045】
第20実施形態は、第1から第14実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物であって、カーボンブラックをさらに含み、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーとの質量比が65:35~75:25の範囲である、第1から第14実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0046】
第21実施形態は、光重合後の組成物が、少なくとも80℃の熱たわみ温度を有する、第1から第20実施形態のいずれか1つに記載の光重合性組成物である。
【0047】
第22実施形態は、光重合後の組成物が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、第21実施形態に記載の光重合性組成物である。
【0048】
第23実施形態は、第1から第22実施形態のいずれか1つの組成物を含むパッケージである。
【0049】
第24実施形態は、三次元物品の製造方法であって、該方法は、第1から第22実施形態のいずれか1つの組成物の1つ以上の連続層を適用して三次元物品を作製することと、連続する層にUV照射を照射することとを含む、三次元物品の製造方法である。
【0050】
第25実施形態は、適用することが、組成物の第1層を基材に堆積させることと、組成物の第2層を第1層に適用し、任意に、その後連続層を適用することとを含む、第24実施形態に記載の方法である。
【0051】
第26実施形態は、適用することが、組成物のインクジェット印刷を含む、第24又は第25実施形態に記載の方法である。
【0052】
第27実施形態は、三次元物品が、少なくとも100℃の熱たわみ温度を有する、第24から第26実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0053】
第28実施形態は、三次元物品が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、第24から第27実施形態のいずれか1つに記載の方法である。
【0054】
第29実施形態は、第1から第22実施形態のいずれか1つの組成物のUV硬化された連続層を含む三次元物品である。
【0055】
第30実施形態は、第24から第28実施形態のいずれか1つに記載の方法によって製造される三次元物品である。
【0056】
第31実施形態は、三次元物品が、少なくとも100℃の熱たわみ温度を有する、第29又は第30実施形態に記載の三次元物品である。
【0057】
第32実施形態は、三次元物品が、少なくとも150℃の熱たわみ温度を有する、第29又は第30実施形態に記載の三次元物品である。
発明の詳細な説明
【0058】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみであり、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0059】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限の単位の10分の1までその範囲の上限及び下限のそれぞれの介在する値、及びその記述された範囲の他の記述された値又は介在する値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、記述された範囲において具体的に排除される限界に従うことを条件に、独立して、より小さな範囲中に含まれてよく、本発明内にも包含される。記述された範囲が、限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除く範囲もまた、本発明に含まれる。
【0060】
本明細書中のある範囲は、「約」という用語によって先行される数値によって提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近い数か、又は近似する数である数の、文言上のサポートを提供するために、本明細書中で使用される。数が、具体的に列挙された数に近いか、又は近似する数であるかどうかを決定する際に、近いか、又は近似する列挙されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数の実質的に同等のものを提供する数であってよい。
【0061】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用されることができるが、代表的な例示的方法及び材料をここで説明する。
【0062】
本開示を読む当業者には明らかであるように、本明細書中に記載及び説明される個々の実施形態それぞれは、本発明の範囲又は趣旨を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離され、又は組み合わされ得る別個の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行されることができる。
【0063】
光重合による三次元印刷に使用するための組成物が開示されている。
【0064】
本明細書では、モノマーとして、少なくとも100℃のT
g又は軟化点を有する高架橋性モノマーを含有するUV硬化性組成物が提供される。高架橋性モノマーの場合と同様に、T
g値は様々な分析方法を用いて評価されることができる。ここでは、HDT試験と同じ455kPaの荷重を用いて、動的機械分析(DMA)を用いて軟化点を測定した。本明細書で使用されるモノマーは、少なくとも100℃、例えば少なくとも150℃の軟化点を有する。一実施形態では、高架橋性モノマーは、式Iによるアクリレートモノマーである:
【化14】
式中、R
1は、炭素、エーテル、エステル又はウレタン結合を有する分岐又鎖は直鎖炭化水素鎖であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6はそれぞれ独立して、アクリル部分であり、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5、及びp
6はそれぞれ独立して、0又は1であり;式中、p
1からp
6の合計は、2から6の値、例えば4から6の値、例えば4又は5の値である。
【0065】
一実施形態では、高架橋性モノマーは、式IIによるアクリレートモノマーであり:
【化15】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、H、C
1-6アルキル、又は
【化16】
及び
式中、少なくとも1つのR
1又はR
2は
【化17】
であり;
R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立してH又はCH
3であり;
X、Y及びZは、それぞれ独立して、存在しないか、又はC
1-6アルキレン基であり;
pは0又は1であり;
出現ごとのwは独立して1、2又は3であり;
qは0又は1~100の整数であり;
tは0又は1~100の整数であり;
r、s、u、及びvは、独立して、0、1、2、3、又は4である。
【0066】
一実施形態では、高架橋性モノマーは、式IIによるアクリレートモノマーであり、式中、R
1及びR
2の少なくとも一方は、
【化18】
である。
【0067】
別の実施形態では、高架橋性モノマーは式IIによるアクリレートモノマーであり、式中R
1及びR
2は両方とも
【化19】
である。
【0068】
別の実施形態では、高架橋性モノマーは高いTgを有し、特に100℃以上、例えば150℃以上、特に200℃以上のTgを有する。
【0069】
別の実施形態では、高架橋性モノマーは、官能価6のウレタンアクリレート(例えばArkema SARTOMER CN968として販売)、
エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
【化20】
エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート
【化21】
プロポキシル化グリセロールトリアクリレート
【化22】
及び
トリメチロールプロパントリアクリレート
【化23】
(それぞれが、シリカナノ粒子などの機械的及び熱的安定性を強化するための添加剤を任意に含むことができる)からなる群から選択されるアクリレートモノマーである。特に、高架橋性モノマーはエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0070】
本明細書で開示される光重合性3Dプリンティング組成物では、高架橋性モノマーを弾性ウレタンアクリレートオリゴマーと組み合わせて使用する。このようなオリゴマーは、脆さを相殺し、弾性を与えるために、より高分子量の可撓性鎖を有する。これらのオリゴマーは、例えば、長鎖ジアクリレートポリウレタンオリゴマーである。
【0071】
一実施形態では、ウレタンアクリレートオリゴマーは、式(III)のウレタン(メタ)アクリレートである
【化24】
上記の式では
【0072】
R1は、2~12個の炭素原子を有し、任意にC1~C4アルキル基によって置換されていてよく、及び/又は1つ以上の酸素原子で中断されていてよい二価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個、より具体的には2~8個の炭素原子を有し、非常に具体的には3~6個の炭素原子を有し、
R2は、それぞれの場合において、他とは独立して、メチル又は水素、特に水素であり、
R3は、1~12個の炭素原子を有し、任意にC1~C4アルキル基によって置換されていてよく、及び/又は1つ以上の酸素原子によって中断されていてよい二価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個、より具体的には3~8個、非常に具体的には3~4個の炭素原子を有し、及び
nとmは、互いに独立して、1~5、具体的には2~5、より具体的には2~4、非常に具体的には2~3、より具体的には2~2.5の正の数である。
【0073】
式中R4は、脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートから両方のイソシアネート基が脱離することによって形成される二価の有機ラジカルである。このようなウレタンアクリレートオリゴマーの製造方法は、例えばUS2016/0107987に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
このようなウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、R
1およびR
2が上記の定義を有する下式のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)を
【化25】
R
3が上記の定義を有する式の(n+m)/2当量の下式のラクトン(B)と反応させることにより製造されることができる。
【化26】
この反応により、下式の中間体が生成される。
【0075】
【0076】
例示的なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートから選択され、非常に具体的には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、特に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される。特に例示的なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、特にβ-ヒドロキシエチルアクリレートである。
【0077】
例示的なラクトン(B)は、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-エチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、7-メチルオキセパン-2-オン、1,4-ジオキセパン-5-オン、オキサシクロトリデカン-2-オン、及び13-ブチル-オキサシクロトリデカン-2-オンから選択される。特に例示的なラクトンは、ε-カプロラクトンである。
【0078】
第2ステップでは、1ステップで形成された中間体を少なくとも1つの脂肪族、脂環式脂肪族又は芳香族ジイソシアネートと反応させて、ウレタンアクリレートオリゴマーを形成する。例示的なジイソシアネートとしては、ジシクロメタンジイソシアネート、特にジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。例示的なウレタンアクリレートオリゴマーは、β-ヒドロキシエチルアクリレートをε-カプロラクトンと反応させ、次いでジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートと反応させることによって得られる。
【0079】
別の実施形態では、ウレタンアクリレートオリゴマーは、1000~5000g/molのモル質量M
wを有し、1分子当たり2つのエチレン性不飽和二重結合を有する、少なくとも1つの高強度及び高屈曲性のウレタン(メタ)アクリレートであって、合成成分として
(a1)少なくとも1つの芳香族又は脂環式脂肪族ジイソシアネートと、
(a2)少なくとも1つのポリエステルジオールであって、
(a21)任意に、250g/mol未満のモル質量を有するジオールと、
(a22)少なくとも1つのオリゴマー又はポリマージオールであって、
(a221)モル質量M
nが1000g/molまでのポリテトラヒドロフランジオールと、
(a222)モル質量M
nが600g/molまでの少なくとも1つのポリカプロラクトンジオールと、
からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴマー又はポリマージオールと、
(a23)少なくとも1つのジカルボン酸であって、式(Ia)の化合物
【化28】
及び/又は式(Ib)の化合物
【化29】
(ここで、R
2は単結合又は1~3つの炭素原子を含む二価のアルキレンラジカルであり、R
3は水素又1~10個の炭素原子を含むアルキルラジカルである)からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸と、
から合成される少なくとも1つのポリエステルジオールと、
【0080】
(a3)正確に1つのイソシアネート反応性基と、正確に1つの遊離の重合性基とを含む第3の化合物と、
を含むウレタン(メタ)アクリレートである。
【0081】
例示的な芳香族ジイソシアネートとしては、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート及びその異性体混合物、m-又はp-キシリレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン及びその異性体混合物、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、1-クロロ-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、3-メチルジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトベンゼン又はジフェニルエーテル4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0082】
例示的な脂環式脂肪族ジイソシアネートとしては、4-、1,3-又は1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は2,4-又は2,6-ジイソシアナト-1-メチルシクロヘキサン、また、3(又は4)、8(又は9)-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン異性体混合物が挙げられる。
【0083】
さらに例示的なウレタンアクリレートオリゴマーは、実質的に成分として以下を含むポリウレタンアクリレートである:
(a)少なくとも1つの有機脂肪族、芳香族又は脂環式脂肪族ジイソシアネート又はポリイソシアネートと、
(b)イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つの基と、フリーラジカル重合可能な少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つの化合物と、
(c)任意に、イソシアネートに対して反応性のある少なくとも2つの基を有する少なくとも1つの化合物。
【0084】
脂肪族、芳香族、及び脂環式脂肪族のジイソシアネート及びポリイソシアネートは、少なくとも1.8、任意に1.8~5、特に任意に2~4のNCO官能価を有し、そのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、及びウレジオンが成分(a)として適している。
【0085】
成分(b)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドグリコール酸又はメタクリルアミドグリコール酸などのα,β-不飽和カルボン酸のモノエステル、又は、好ましくは2~20個の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有するジオールもしくはポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,1-ジメチル-1,2-エタンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、エリスリトール、ソルビトール、162~2000のモル質量を有するポリTHF、または134~400のモル質量を有するポリ-1,3-プロパンジオール、又は238~458のモル質量を有するポリエチレングリコール、を有するビニルエーテルであり得る。さらに、(メタ)アクリル酸と、アミノアルコール、例えば2-アミノエタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール又は2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-メルカプトエタノール又はポリアミノアルカン、例えばエチレンジアミン又はジエチレントリアミン、又はビニル酢酸とのエステル又はアミドを使用することも可能である。
【0086】
成分(c)として適切な化合物は、イソシアネートに対して反応性のある少なくとも2つの基、例えば-OH、-SH、-NH2又は-NHR2を有する化合物であり、式中R2は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルであり得る。
【0087】
これらは、好ましくは、ジオール又はポリオール、例えば、2~20個の炭素原子を有する炭化水素ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,1-ジメチルエタン-1,2-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオールなど、その短鎖ジカルボン酸とのエステル、例えばアジピン酸又はシクロヘキサンジカルボン酸などの短鎖ジカルボン酸とのそのエステル、ジオールとホスゲンとの反応、又はジアルキルもしくはジアリールカーボネートとのトランスエステル化によって調製されるカーボネート、又は脂肪族ジアミン、例えばメチレン-及びイソプロピリデンビス(シクロヘキシルアミン)、ピペラジン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)など、ジチオール又は多官能性アルコール、第二級又は第一級アミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミンなど、又はチオアルコール、例えばチオエチレングリコールなどである。
【0088】
本技術の別の態様では、組成物は、1つ以上の高架橋性モノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーとを、20:80~80:20、例えば30:70~70:30、例えば60:40~70:30の質量比で含有する。以下にさらに詳細に記載するように、例えばカーボンブラックを含めると、その比は例えば65:35~75:25、特に75:25であってよい。組成物の全体に基づいて、1つ以上の高架橋性モノマーは、60~75質量%の量で存在してもよく;少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーは、10~80質量%、例えば15~45質量%、特に20~30質量%の量で存在してよい。
【0089】
本技術の別の態様では、上記の高架橋性モノマー及び弾性オリゴマーに加えて、組成物は、1つ以上の染料、顔料、又は着色剤を有することができる。例えば、このような染料、顔料、又は着色剤は、色を提供するために、又は印刷中のあり得る変色及び/又は印刷部品の老化を回避するために使用され得る。例示的な染料、顔料、又は着色剤には、カーボンブラック顔料、白色顔料、及びシアン、マゼンタ、イエローなどの様々な染料が挙げられる。特に組成物は、組成物の総質量に基づいて、例えば0.005~0.1質量%、例えば0.01~0.1質量%、特に0.01~0.05質量%の量のカーボンブラックを含む。顔料を含有する配合物では、1つ以上の分散剤を使用することができる。このような分散剤は、当業者には公知であろう。例えば、EFKA4701を使用することが可能であろう。分散剤は、全組成物の質量に基づいて、約10~100ppm、例えば20~50ppm、特に20ppmの量で使用されることができる。
【0090】
組成物は、1つ以上の光重合開始剤を含むことができる。適切な光重合開始剤には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、及びこれらの任意の2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、1つ以上の光重合開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びそれらの2つ以上の組み合わせであってよい。
【0091】
いずれの実施形態でも、1つ以上の光重合開始剤は、組成物の総質量の約0.01質量%~約6.0質量%の量で存在し得る。光重合開始剤の適切な量には、光重合性組成物に基づいて、約0.01質量%~約6.0質量%、約0.1質量%~約4.0質量%、約0.20質量%~約3.0質量%、又は約0.5質量%~約1.0質量%、又は約1~2質量%が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、光重合開始剤は、0.25質量%~約2.0質量%の量で存在する。別の実施形態では、光重合開始剤は、0.5質量%~約1.0質量%の量で存在する。
【0092】
任意の実施形態によれば、表面から未硬化の残留樹脂を除去するために、印刷後に3D印刷された部品を洗浄するために溶媒を使用することができる。適切な溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソプロパノール及びこれらの2つ以上の混合物、さらに水とそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
任意の実施形態によれば、組成物は、本技術の組成物の機械的及び化学的特性をさらに高め得るエチレン性官能性又は非官能性非ウレタンオリゴマーをさらに含み得る。適切な非ウレタンオリゴマーには、エポキシ、エトキシル化又はプロポキシル化エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリケトン、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
三次元物品を得るために組成物を適用することは、組成物を堆積させることを含み得る。いずれの実施形態でも、適用は、組成物の第1層を堆積し、組成物の第2層を第1層に堆積し、その後に連続層を堆積して、3D物品を得ることを含み得る。このような堆積には、UVインクジェット印刷、SLA、連続液体界面製造(CLIP)、及びDLPを含む1つ以上の方法が含まれるが、これらに限定されない。組成物の他の用途には、印刷、包装、自動車、家具、光ファイバー、及び電子機器のための他のコーティング及びインク用途が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書に記載された方法には、組成物の層を紫外線照射と接触させて組成物の硬化を誘発することが含まれる。いずれの実施形態でも、接触には、短波長及び長波長の紫外線照射が含まれる。適切な短波長の紫外線照射には、UV-C又はUV-B照射が含まれる。一実施形態では、短波長の紫外線照射は、UV-C光である。適切な長波長の紫外線照射には、UV-A照射が含まれる。さらに、電子ビーム(EB)照射を利用して、組成物の硬化を誘発してよい。
【0096】
本明細書に記載された方法には、3D物品を得るために、組成物の層の堆積及びUV照射への暴露を繰り返すことが含まれる。いずれの実施形態でも、繰り返しが連続的に起こり得、そこではUV照射への暴露の前に、3D物品を得るために組成物の層の堆積が繰り返される。いずれの実施形態でも、繰り返しが続いて起こり得、そこでは組成物の層の堆積及びUV照射への暴露が、両方の工程の後に繰り返される。
【0097】
別の関連する態様では、本明細書に記載された組成物のいずれかのUV硬化した連続層を含む3D物品が提供される。いずれの実施形態でも、組成物は、インクジェット、SLA、又はDLP堆積されていてよい。
【0098】
いずれの実施形態でも、3D物品には、研磨パッド又は同様の後処理技術が含まれ得る。いずれの実施形態でも、研磨パッドは、化学機械研磨(CMP)パッドである。研磨パッドは、任意の既知の方法、例えば、米国特許出願第2016/0107381号、米国特許出願第2016/0101500号、及び米国特許第10,029,405号(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)で提供された方法に従って作製され得る。
【0099】
本技術の3D物品は、改善された靭性を示す。いずれの実施形態でも、三次元物品は、例えば、56~81MPa、又は任意に26~55MPaの引張強さを示し得る。三次元物品は、任意で10~50kJ/m2、例えば20~40kJ/m2、任意に25~40kJ/m2のノッチなしサンプルの衝撃強度を有し得る。
【0100】
このように一般的に記載された本技術は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解され、これらの実施例は、説明のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0101】
実施例
A. モノマー評価
【0102】
潜在的に可能なモノマーの初期評価を行うための研究では、以下の材料が使用された:
【0103】
【0104】
A.1 組成物
【0105】
表1に示された成分を使用して、表2に示される比率と組み合わせで混合して18種類の異なる配合物を調製した。
【0106】
【0107】
典型的には、表2に示されるように、50又は60質量%のPI/モノマー溶液を、50又は40%の対応するオリゴマー及び光重合開始剤と混合した。サンプルはFlacktek高速ミキサーで2~3分間十分に混合し、その後50℃に加熱したVWR超音波浴で60分間超音波処理を行った。このサイクルを必要なだけ繰り返し、光重合開始剤の混合と溶解を確実にするため、通常3日間まで要した。樹脂をテストバーの印刷に使用した。
【0108】
A.2 3D印刷とポストキュア
【0109】
すべての3D印刷は、295mAの電流と8.2~8.5mW/cm2の強度設定で動作するOriginプリンタを用いて行った。各100μm層は、3秒のUV露光時間で印刷された。表3に示すように、3D印刷されたドッグボーン、インパクト及びDMAバーは、単一印刷の部品として、垂直方向に印刷された。新たに印刷された部品は、印刷プラットフォームから取り出され、表面に残った液体の一部を取り除くために拭き取られ、洗浄溶媒で洗浄され、風乾された。
【0110】
ポストキュアは、新たに洗浄された3D印刷されたバーをCCW UVポストキュアチャンバーに入れ、405nmのUV光と23~26mW/cm2の出力強度で各面に2分間照射することで行った。その後、ポストキュアされたバーの機械的性能をテストした。
【0111】
【0112】
破断伸度、E弾性率及び引張強さは、ASTM D638 V規格に従って、インストロン5965引張試験機と最大7つの3D印刷されたドッグボーンバーを用いて測定した。平均値と標準偏差を以下に報告する。3D印刷された試料の衝撃強度(Izod ASTM D256)は、Instron IZOD Impact Tester、CEAST 9050を用いて測定された。典型的には、7つの3D印刷されたバーをテストし;平均値と標準偏差を報告する。衝撃は、材料の靭性の尺度であり、塑性たわみ中にエネルギーを吸収する材料の能力に依存する。衝撃強度は、単位断面積当たりのエネルギー損失(kJ/m2)で測定され、報告される。すべての衝撃強度の結果は、ノッチなしのサンプルを参照している。
【0113】
3D印刷されたバーの熱たわみ温度を、ASTM D648(A)と同様の方法で、DMA3点曲げテスト法を用いて評価した。空気雰囲気中で、0.46MPaの荷重と2℃/分の温度上昇でサンプルに誘発されるのと同じ歪みまでサンプルにたわみを与える、DMAで制御された力をテスト中に適用した。報告されたHDT値は、バーが0.25mmたわむ温度である。
【0114】
A.3 結果
【0115】
高い柔軟性と低い引張強さを有する材料の製造を避けるため、配合物中の柔軟性オリゴマーの含有量は50%未満に制限された。脆性材料の生成を避けるために、高Tgモノマー含有量を60%未満に維持した。したがって、表2に示されるように、事前に選択した成分と上記の組成物を含む18種類の配合物をスクリーニング研究のために製造した。それらの測定された物理的特性を表4にまとめた。
【0116】
【0117】
最後に、サンプル14樹脂のHDT特性はASTM D648 テスト方法に従って検証され、253.6℃という結果が得られた。この結果は、DMAの軟化点測定値268℃と一致しており、この材料の独特の熱安定性を裏付けている。
【0118】
B. さらなるテストと配合物
【0119】
この研究の目標は、適度に高いHDT値を維持しながら、上述の配合物の機械的特性を改善することであった。新しい配合物を選択及び開発する過程で、11種類の高Tg架橋性モノマーを評価した。さらに、モノマーとO3オリゴマーの60/40ブレンドを調製し、適切な配合物をさらに特定した。以下の表5は、この実施例で使用した材料を示している。
【0120】
【0121】
高Tg鎖と架橋ネットワークを形成する能力により、2以上の高官能価のモノマー11種を選択した。O3ポリウレタンジアクリレートオリゴマー(β-ヒドロキシエチルアクリレート、ε-カプロラクトン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートから作られる)は、靭性を付与し、架橋密度を制御するために導入された。
【0122】
B.1 UV硬化性配合物の調製
【0123】
純粋なモノマーの場合、1%のPIと99%の純粋なモノマーをFlacktek高速ミキサーで2~3分間混合し、その後50℃に加熱したVWR超音波浴で60分間超音波処理を行った。このサイクルを必要なだけ繰り返し、光重合開始剤の混合と溶解を確実にするため、通常3日間まで要した。
【0124】
モノマー/オリゴマー配合物の場合、通常、1%のPIを所望の比率で予備混合したモノマー/O3ブレンドに溶解した。各サンプルはFlacktek高速ミキサーで2~3分間混合し、その後50℃に加熱したVWR超音波浴で60分間超音波処理を行った。このサイクルを必要なだけ繰り返し、光重合開始剤の混合と溶解を確実にするため、通常3日間まで要した。すべてのサンプルは、3D印刷に使用する前に、Flacktekミキサーを使用して新たに混合した。
【0125】
B.2 3D印刷とポストキュア
すべての3D印刷は、295mAの電流と8.2~8.5mW/cm2の強度設定で動作するOriginプリンタを用いて行われた。各100μm層は、特に断りのない限り、3秒のUV露光時間を使用して印刷された。3D印刷されたドッグボーン、インパクト及びDMAバーは、上記の表3に示すように、単一のプリント部品として、垂直方向に印刷された。新たに印刷された部品は、印刷プラットフォームから取り出され、表面に残った液体を取り除くために拭き取られ、洗浄溶媒で洗浄され、風乾された。詳細な3D印刷の研究は、同じOriginプリンタで、印刷層の厚さを変え(50~200μm)、及び、各層のUV露光時間(0.5~3.5秒)を変えて行われた。100μmの層厚と1.25秒又は1.5秒のUV照射に焦点を当てた。
【0126】
ポストキュアは、新たに洗浄された3D印刷バーをCCW UVポストキュアチャンバーに入れ、405nmのUV光と23~26mW/cm2の出力強度で各面に2分間照射することで行った。その後、ポストキュアされたバーの機械的性能をテストした。
【0127】
B.3 機械テスト
【0128】
破断伸度(本報告書では伸度と表記)、E弾性率及び引張強さは、ASTM D638 V規格に従って、インストロン5965引張試験機と7つまでの3D印刷ドッグボーンバーを用いて測定した。平均値と標準偏差は本研究で報告されている。
【0129】
3D印刷試料の衝撃強度は、インストロンIZOD衝撃試験機、CEAST 9050を用いて測定された。代表的に、7つの3D印刷バーがテストされ、平均値と標準偏差が報告される。衝撃強度は、単位断面積当たりのエネルギー損失(kJ/m2)及び単位厚さ当たりのエネルギー損失(J/m)の観点から測定され、報告される。ノッチ時に亀裂が形成されるため、ノッチは回避され;すべてのサンプルはノッチなしでテストされた。
【0130】
3D印刷されたバーの熱たわみ特性(又は軟化温度)は、上述と同じDMA3点曲げテスト法を用いて評価された。空気雰囲気中で、0.46MPaの荷重と2℃/分の温度上昇でサンプルに誘発されるのと同じ歪みまでサンプルにたわみを与える、DMAで制御された力をテスト中に適用した。報告されたHDT値は、バーが0.25mmたわむ温度である。
【0131】
HDTテストは、455KPa(66psi)の適用荷重に対応するASTM-D648テスト法を用いてCEAST自動試験機を用いて実施された。テストは、制御された環境室で行われた:すべてのサンプルは、テスト前に24時間、温度23℃、相対湿度52%に調整された。シリコンオイルを装置の加熱媒体として使用し、23℃の開始温度から120℃/時間の加熱速度でサンプルを加熱した。ここで報告される平均値を算出するため、テストされた各材料について2~3つの複製サンプルを測定した。
【0132】
B.3 結果
【0133】
1%の光重合開始剤しか含有しない選択された個々のモノマーで作られた3D印刷されたテストバーが生成され、その後分析された。テストバーの物性テストを行い、その結果を表6に示す。
【0134】
【0135】
表6の結果は、純粋な状態で、M2が、3D印刷中に硬化し、非常に高い弾性率4150MPa、高いHDT288℃、非常に低い破断伸度及び衝撃強度1.1%及び8.1kJ/m2をそれぞれ有する強靭な材料を形成することを示している。この性能は、強靭で熱的に安定し、壊れにくい材料に相当する。
【0136】
B.4 モノマー/オリゴマー光硬化性配合物
【0137】
この例では、高Tg成分(表6のモノマー)と弾性オリゴマー(O3)をブレンドしてUV硬化性アクリルベースの材料を配合した。この研究の目的のために、オリゴマー成分を一定に保ちながらモノマーの種類を変更させた。2つの成分の比率は、この実施例を通して一定に保った。
【0138】
【0139】
B5. M3/O3配合物
【0140】
M3/O3配合物の特性は、75/25から50/50の範囲の組成に基づいて評価された。表8は、サンプル14及び純粋なM3、O3、M2成分と比較したM3/O2系(system)について得られた特性を示している。結果は以下の表8に示されている。
【0141】
【0142】
表8のデータを
図1~3にプロットする。
図1は、オリゴマーO3含有量の関数としてのE弾性率を示している。濃い灰色の軌跡はM2/O3配合に対応し、純粋な個々の成分、すなわちM2とO3のE弾性率の値を結んでいる。明るい灰色の曲線は、すべてのM3/O3組成と純成分を結んだものであり;曲線全体が下方にシフトしており、広い範囲のO3組成(25~50%)でE弾性率の直線的に減少していることを示している。全体として、E弾性率は配合物の組成に線形依存性を示す。
【0143】
図2は、配合物中のO3含有量の関数としての破断伸度を示している。M2/O3系の濃灰色のトレースは、非常に低い伸度を示しており、高度に架橋された剛性の高い系(system)であることを示している。M3/O3配合物(薄いグレーの記号)では、より高い伸度が観察されている。広範囲のオリゴマー組成(25~50%)は、3D印刷されたサンプルで観察された、狭い範囲の伸度4~8%を生じる。
【0144】
衝撃データの分析(
図3)は、伸度データの分析(
図2)と非常に似ている。M3/O3配合物は、より高い衝撃強度と高い伸度特性を示し、靭性が改善されていることを示している。
【0145】
C. カーボンブラックを含む組成物
【0146】
カーボンブラックの添加の潜在的な効果は、配合物B-21及びB-22に1%未満の異なる量のカーボンブラック顔料を添加することにより調べられた。それぞれの3D印刷された材料の特性を表9に示す。
【0147】
【0148】
表9のデータは、配合物中のカーボンブラック量が増加するにつれてE弾性率が減少することを示している。衝撃強さはカーボンブラックの増量に伴い増加する。伸度は、カーボンブラックの配合量を1質量%未満に増やしても変化しない。顔料の最適な量は、より濃い色及び着色部分が好まれる場合、及び、様々な特性のバランスが考慮され達成されなければならない場合によって決定される。
【0149】
ここに示された結果は、本明細書に記載されている架橋性モノマー及び弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを選択することにより、適度に強い機械的特性を維持しながら、所望のHDT値を達成することが可能であることを示している。
【0150】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含めて、本明細書に記載されている。本発明は、好ましい実施形態を参照して上述した詳細に限定されるものではなく、以下の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変更を行うことができることが理解されよう。
【国際調査報告】