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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240117BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240117BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240117BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240117BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240117BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/131
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023534918
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021083359
(87)【国際公開番号】W WO2022122448
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212552.2
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ベルグナー,ベンヤミン ヨハネス ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,パスカル
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
電極活物質を製造する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を提供する工程であって、TMが金属の組み合わせであり、TMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有する、工程と、
(b)工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物を、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理する工程であって、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択される、工程と、
(c)溶媒(単数又は複数)を除去し、それによって固体残留物を得る工程と、
(d)工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~900℃の範囲の温度で熱処理する工程と、
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を提供する工程であって、TMがNi又は金属の組み合わせであり、そして、TMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有する、工程と、
(b)工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物を、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理する工程であって、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択される、工程と、
(c)溶媒(単数又は複数)を除去し、それによって固体残留物を得る工程と、
(d)工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~900℃の範囲の温度で熱処理する工程と、
を含む、電極活物質を製造する方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dMd (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
b+c>0であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で提供される前記(オキシ)水酸化物が、50~2000質量ppmの範囲の含水量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Mの化合物がC~C-アルカノラートから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
がNb及びTaから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)が、溶媒(単数又は複数)の蒸発によって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)における溶媒が水及びC~C-アルカノールから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
とTMのモル比が、1:100~1:1000の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一次粒子からの凝集体である二次粒子を含む、一般式Li1+x(M TM1-y(1-x)による粒子状カソード活物質であって、TMがNiであるか、又はTMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有し、xが0~0.2の範囲であり、yが0.001~0.01の範囲であり、Mが、Zr、Nb及びTaから選択され、一次粒子の結晶子表面に濃縮し、そうでなければそのようなカソード活物質中に均一に分布する、粒子状カソード活物質。
【請求項10】
の化合物が、2~30nmの平均厚さを有する層の形態で一次粒子の結晶子表面に濃縮する、請求項9に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項11】
がNb及びTaから選択され、請求項9又は10に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項12】
TMが、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dM1 d (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
は、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項9から11のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項13】
(E)少なくとも1種の、請求項9から12のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質、
(F)導電状態の炭素、
(G)バインダー材料
を含有する、カソード。
【請求項14】
(1)少なくとも1つの、請求項13に記載のカソード、
(2)少なくとも1つのアノード、
(3)少なくとも1種の電解質
を含有する、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を提供する工程であって、TMがニッケル又は金属の組み合わせであり、TMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有する、工程と、
(b)工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物を、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理する工程であって、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択される、工程と、
(c)溶媒(単数又は複数)を除去し、それによって固体残留物を得る工程と、
(d)工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~900℃の範囲の温度で熱処理する工程と、
を含む、電極活物質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピュータなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレータなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料は特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0003】
電極材料は、リチウムイオン電池の特性にとって極めて重要である。リチウム含有の混合遷移金属酸化物、例えばスピネル又は層状構造の混合酸化物、特にニッケル、マンガン、及びコバルトのリチウム含有混合酸化物は、特に重要視されている(例えば、EP 1 189 296を参照ください)。しかしながら、電極材料の化学量論だけでなく、形態及び表面特性などの他の特性も重要である。
【0004】
リチウムイオン電池のためのカソード材料の典型的な製造方法において、まず、遷移金属を炭酸塩、酸化物として、又は好ましくは塩基性であってもなくてもよい水酸化物、例えばオキシ水酸化物として共沈させることにより、いわゆる前駆体を形成する。次に、この前駆体を、リチウム塩、例えばLiOH、LiO又はLiCO(これらに限定されるものではない)と混合して、高温で焼成(か焼)する。リチウム塩(単数又は複数)は、水和物(単数又は複数)として、又は脱水形態で使用することができる。しばしば前駆体の熱処理又は加熱処理とも呼ばれる焼成又はか焼は通常、600~1000℃の範囲の温度で行われる。熱処理中に、固相反応が起こり、電極活物質を形成する。熱処理は、オーブン又はキルンの加熱ゾーンで実行される。
【0005】
既存のリチウムイオン電池は、特にエネルギー密度及びサイクル安定性に関して、改善の余地がある。サイクル安定性が低いのは、多くの場合はカソード活物質(CAM)表面の副反応に起因するが、副反応を低減できるコーティングが、Liカチオンの抵抗となることが見出された。したがって、本発明の目的は、上記の欠点を克服したカソード活物質、及びその製造方法を提供することであった。
【0006】
高いエネルギー密度を実現する典型的な種類のカソード活物質は、多量の、例えば非リチウム金属の含有量に対して少なくとも80モル%のNiを含有する(Niリッチ)。しかしながら、エネルギー密度はまだ改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP 1 189 296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、高いエネルギー密度を有する電極活物質の前駆体及びその簡単な製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、以下で「本発明の方法」とも呼ばれる、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を提供する工程であって、TMがニッケル又は金属の組み合わせであり、TMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種を含有する、工程と、
(b)工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物を、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理する工程であって、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択される、工程と、
(c)溶媒(単数又は複数)を除去し、それによって固体残留物を得る工程と、
(d)工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~900℃の範囲の温度で熱処理する工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、CAM.2を示す。左の写真:CAM.2の高角度環状暗視野イメージング(HAADF-STEM)。矢印は結晶子表面を指している。右の写真:矢印は結晶子表面に濃縮したNb酸化物化合物(明るい色)の層を指している(TEM-EDXSマッピング)。
図2図2は、CAM.3を示す。左の写真:CAM.3の高角度環状暗視野イメージング(HAADF-STEM)。矢印は結晶子表面を指している。右の写真:矢印は結晶子表面に濃縮したTa酸化物化合物(明るい色)の層を指している(TEM-EDXSマッピング)。
図3図3は、CAM.4を示す。左の写真:CAM.4の高角度環状暗視野イメージング(HAADF-STEM)。矢印は結晶子表面を指している。右の写真:矢印は結晶子表面に濃縮したNb酸化物化合物(明るい色)の層を指している(TEM-EDXSマッピング)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法は、本発明の文脈においてそれぞれ工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)及び工程(e)とも呼ばれる、5つの工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を含む。任意に、本発明の方法は、以下でさらに記載している工程(e)又は(f)、又はその両方をさらに含む。工程(a)~(d)、及び任意の工程(e)及び(f)については、以下でより詳細に説明する。
【0012】
本発明の方法は、TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物から出発する。このようなTMの(オキシ)水酸化物又は酸化物において、TMは、少なくとも2種の金属の組み合わせであり、Niと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種を含有する。好ましくは、TMは、Niと、Co及びMnの両方とを含有する。
【0013】
本発明の一実施態様において、TMは、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dMd (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
b+c>0であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである。
【0014】
工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、好ましくは、球状の形状を有する粒子を指す球状粒子から構成されている。球状粒子には、正確に球形である粒子だけでなく、代表的なサンプルの少なくとも90%(数平均)の最大直径と最小直径の差が10%以下である粒子も含まれる。
【0015】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、一次粒子の凝集体である二次粒子から構成されている。好ましくは、工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、一次粒子の凝集体である球状の二次粒子から構成されている。さらにより好ましくは、工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、球状の一次粒子又はプレートレットの凝集体である球状の二次粒子から構成されている。
【0016】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0017】
一部の元素は遍在するものである。本発明の文脈において、不純物としての微量のナトリウム、カルシウム、鉄又は亜鉛などの遍在金属は、本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量とは、TMの全金属含有量に対して0.02モル%以下の量を意味する。
【0018】
工程(a)で提供される前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、酸化物及び水酸化物以外のアニオン、例えば炭酸塩及び硫酸塩を微量に含有することができる。特に、前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物がTMの硫酸塩から製造される場合、沈殿物中に一部の残留の硫酸塩が残存することがある。炭酸塩は、エージングしたアルカリ水酸物の使用によって、又は新に沈殿したTM(OH)をCO含有空気にさらすことによって含まれることがある。
【0019】
工程(a)で提供されるTMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、Niと、Co及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にさらなる金属とを、TMの水酸化物として、コバルト又はマンガンの硫酸塩又は両方、及び必要に応じてAl、Ti、Zr、V、Co、Zn又はBaから選択される金属(単数又は複数)の少なくとも1種の化合物と組み合わせた硫酸ニッケルの水溶液からアルカリ金属の水酸化物と共沈し、続いてろ過及び乾燥することによって製造されてもよい。
【0020】
工程(a)で提供されるTMの(オキシ)水酸化物は、そのような水酸化物を、例えば、真空下又は空気下で、80~150℃の範囲の温度で加熱し、それによって水を除去することによって製造することができる。TMのオキシ水酸化物は、水酸化物として化学的に結合した水、又は残留水分含有量を有する、非化学量論的オキシ水酸化物を含むことを意味する。本発明の一実施態様において、前記TMのオキシ水酸化物は、50~2000質量ppmの範囲の含水量を有する。この場合の含水量は、化学的及び物理的に結合した水を含み、カールフィッシャー滴定により決定することができる。
【0021】
工程(a)で提供されるTMの(オキシ)水酸化物又は酸化物は、100~500℃の範囲の温度で乾燥し、それによって50~2000ppmの範囲の含水量を有するTMの酸化物又はオキシ水酸化物を得ることができる。特にTMがマンガンを多量に含む場合、TM、特にマンガンの部分酸化が起こり、酸化物は厳密には化学量論的なTMOではない。
【0022】
残留水分含有量は、例えばカールフィッシャー滴定により決定することができる。
【0023】
工程(b)では、工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物は、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理され、ここで、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択され、好ましくは、MがNb又はTaであり、さらにより好ましくは、MがNbである。上記の2種以上の組み合わせも使用可能である。
【0024】
このようなMの化合物は、Mの硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、例えばZr(SO、ZrOSO、ZrO(NO、NH)Nb(C、(NH)Ta(C、(NH)NbO(C、(NH)TaO(C、又は対応する水和物から、好ましくはMのC~C-アルカノラート、例えばメタノラート、エタノラート、イソ-プロパノラート、n-プロパノラート、n-ブタノラート、イソ-ブタノラート、sec.-ブタノラート、tert-ブタノラート、及びMのC~C-アルカノラートの混合物から選択されてもよい。非限定的な例として、Ti(OC、Zr(OC、Ti(O-イソC、Zr(O-イソC、Nb(OC、Ta(OC、Nb(O-イソC、Ta(O-isoC、Nb(O-nC、及びTa(O-nCが挙げられる。上記の化合物の少なくとも2種の組み合わせも使用可能である。
【0025】
このようなMの化合物の好適な溶媒は、水、及びアルコール及びエーテルのような非水性溶媒、例えばジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-イソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、及び上記の少なくとも2種の混合物から選択される。水及びC~C-アルカノラートが好ましい。MのC~C-アルカノラートの好ましい溶媒は、対応するアルコールである。
【0026】
工程(b)は、TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を、前記Mの化合物の溶液と組み合わせることにより、例えば前記Mの化合物の溶液を前記TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物に添加すること又はその逆に添加することにより行われてもよい。
【0027】
本発明の一実施態様において、MとTMのモル比は、1:100~1:1000の範囲である。
【0028】
本発明の一実施態様において、前記Mの溶液と、TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物との体積比は、1:20~10:1の範囲である。
【0029】
工程(b)は、混合操作、例えば、攪拌又は振とうによってサポートされてもよい。
【0030】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、5℃~100℃の範囲の温度で、好ましくは10~40℃で、より好ましくは室温で行われる。
【0031】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、空気下、又は窒素又は希ガスの雰囲気下で行われる。
【0032】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、C~C-アルカノラートから選択される溶媒で開始され、工程(b)の過程中で、例えば工程(b)を湿った空気又は湿った窒素の雰囲気下で行われることにより、又は液体水の添加により、水が添加される。
【0033】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、0.1バール~100バール、好ましくは0.5バール~10バールの圧力下で行われる。
【0034】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、1分~2時間の持続時間、好ましくは2分~30分の持続時間を有する。
【0035】
工程(c)では、溶媒(単数又は複数)を除去する。前記除去は、工程(b)からの溶媒(単数又は複数)に関し、固液分離法により、例えば濾過により又は遠心分離機の助けを借りて、又は好ましくは溶媒(単数又は複数)の蒸発によって行うことができる。
【0036】
本発明の一実施態様において、除去は、工程(b)で採用される有機溶媒(単数又は複数)に関し、そのような溶媒の完全又はほぼ完全な除去が好ましい。この文脈において、「ほぼ完全」とは、工程(b)で採用される有機溶媒(単数又は複数)の少なくとも95体積%、好ましくは少なくとも98体積%を指す。さらにより好ましくは、工程(b)で採用される有機溶媒(単数又は複数)の98.5~99.9体積%が除去される。
【0037】
水が溶媒又は複数の溶媒である実施態様において、該当する場合、水の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%を除去することが好ましい。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、10~150℃の範囲の温度での蒸発によって行われる。
【0039】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、10~500ミリバールの範囲の圧力での蒸発によって行われる。
【0040】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、例えば室温で、バンドフィルター又はフィルタープレスで濾過することによって行われる。
【0041】
工程(c)を行うことにより、固体残留物が得られる。
【0042】
工程(d)は、工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合することを含む。
【0043】
リチウム源の例は、リチウムの無機化合物、例えばLiNO、LiO、LiOH、LiCO、及び上記の少なくとも2種の組み合わせであり、LiO、LiOH及びLiCOが好ましく、リチウム源の文脈において結晶化の水は無視され、さらにより好ましくはLiOHである。
【0044】
本発明の一実施態様において、前記リチウム源は、1~5μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【0045】
好適なアルミニウムの化合物は、例えばAl(NO、Al、Al(OH)、AlOOH、Al・aqであり、AlOOH及びAl、特にγ-Alが好ましい。前記アルミニウム源は、水溶液、水性スラリーとして、又は粒子形態で添加することができ、粒子形態が好ましい。
【0046】
本発明の一実施態様において、前記Alの化合物は、粒子状であり、2nm~20nm、好ましくは5nm~15nmの範囲の、X線回折によって決定される平均結晶子径を有する。動的レーザー散乱(DLS)によって決定される平均粒径(D50)は、1~10μm、好ましくは1~3μmの範囲である。
【0047】
好適なTiの化合物は、TiO(OH)、TiO(OH)、TiO、TiO・aqであり、TiOが好ましい。
【0048】
本発明の一実施態様において、前記Tiの化合物は、粒子状であり、2nm~20nm、好ましくは5nm~15nmの範囲の、X線回折によって決定される平均結晶子径を有する。動的レーザー散乱(DLS)によって決定される平均粒径(D50)は、1~10μm、好ましくは1~3μmの範囲である。
【0049】
好適なZrの化合物は、LiZrO、ZrO(OH)、Zr(OH)、ZrO、ZrO・aqであり、Zr(OH)、ZrO及びZrO・aqが好ましく、Zr(OH)がさらにより好ましい。
【0050】
本発明の一実施態様において、前記Zrの化合物は、粒子状であり、2nm~20nm、好ましくは5nm~15nmの範囲の、X線回折によって決定される平均結晶子径を有する。動的レーザー散乱(DLS)によって決定される平均粒径(D50)は、1~10μm、好ましくは1~3μmの範囲である。
【0051】
本発明の一実施態様において、リチウム源と、工程(c)で添加される(TM+Ti+Zr+Al)とのモル比は、1.05:1~1.0:1の範囲である。
【0052】
工程(b)においてMがTi又はZrから選択される実施態様において、工程(d)において、それぞれ、Ti又はZrの化合物を添加しないことが好ましい。
【0053】
本発明の一実施態様において、工程(d)で添加されるAlのモル量は、TMに対して0.2~3モル%の範囲である。別の実施態様において、上記に示したように、工程(d)においてAlの化合物は添加されない。
【0054】
本発明の一実施態様において、工程(d)で添加されるTiのモル量は、TMに対して0.05~1モル%の範囲である。別の実施態様において、上記に示したように、工程(d)においてTiの化合物は添加されない。
【0055】
本発明の一実施態様において、工程(d)で添加されるZrのモル量は、TMに対して0.05~1モル%の範囲である。別の実施態様において、上記に示したように、工程(d)においてZrの化合物は添加されない。
【0056】
工程(d)は、1つの操作として行われてもよいが、工程(d)が、工程(c)からの残留物を前記リチウム源と混合するサブ工程、及び次にマグネシウム源の溶液を添加するサブ工程を含むことが好ましい。前記サブ工程は、以下でより詳細に説明される。しかしながら、工程(d)を一段階で行うか、又はリチウム源とマグネシウム又はアルミニウムの化合物、及びTi又はZrの化合物とを最初に混合し(サブ工程(d1))、続いて得られた混合物をTMの酸化物又はオキシ水酸化物と組み合わせる(サブ工程(d2))ことが好ましい。他の実施態様において、TMの酸化物又はオキシ水酸化物は、リチウムの源と、マグネシウム又はアルミニウムの化合物と、Ti又はZrの化合物と、単一の工程で混合される。
【0057】
工程(d)を行うための好適な装置の例は、高剪断ミキサー、タンブラーミキサー、プラウシェアミキサー及び自由落下ミキサーである。
【0058】
工程(d)は、0~100℃の範囲の温度で行われてもよく、室温が好ましい。
【0059】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、10分~2時間の持続時間を有する。工程(d)において追加の混合が行われるかどうかに応じて、工程(d)において徹底的な混合が達成されなければならない。
【0060】
工程(d)において、有機溶媒、例えばグリセロール又はグリコール、又は水を添加することが可能であるが、工程(d)を乾燥状態で、すなわち水又は有機溶媒を添加せずに行うことが好ましい。
【0061】
工程(d)から混合物が得られる。
【0062】
工程(e)は、工程(d)から得られた混合物を550~900℃の範囲の温度で熱処理することを含む。
【0063】
工程(e)は、前記混合物を、例えば550~900℃、好ましくは600~850℃、より好ましくは650~825℃の範囲の温度での熱処理に供することを含む。
【0064】
本発明の一実施態様において、工程(e)からの混合物は、0.1~10℃/分の加熱速度で650~850℃に加熱される。
【0065】
本発明の一実施態様において、650~850℃、好ましくは650~825℃の所望の温度に達する前に温度を上昇させる。例えば、最初に、工程(d)からの混合物を350~550℃に加熱し、その後、10分~4時間の時間で一定に保持し、その後、650℃~850℃まで上昇させる。
【0066】
工程(d)において少なくとも1種の溶媒が使用されている実施態様において、工程(d)の一部として、又は別々に、工程(e)を開始する前に、このような溶媒(単数又は複数)が、例えば、このような溶媒(単数又は複数)の濾過、蒸発又は蒸留によって除去される。好ましいのは、蒸発及び蒸留である。
【0067】
本発明の一実施態様において、工程(e)は、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又はロータリーキルン、又は前記の少なくとも2つの組み合わせで行われる。ロータリーキルンは、そこで製造される材料の均質化が非常に良好であるという利点を有する。ローラーハースキルン及びプッシャーキルンでは、異なる工程に関する異なる反応条件を非常に容易に設定することができる。実験室規模の実験では、箱型炉、管状炉、及び分割管状炉も使用可能である。
【0068】
本発明の一実施態様において、工程(e)は、酸素含有雰囲気中、例えば純酸素中又は酸素富化空気中、例えば空気と酸素の体積比1:3~1:10の混合物中で行われ、純酸素が好ましい。
【0069】
本発明の方法を行うことで、優れた安定性、例えば低い容量損失及び高いサイクル安定性を示すカソード活物質が作製される。
【0070】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明のカソード活物質とも呼ばれる、カソード活物質に関する。
【0071】
一般式Li1+x(M TM1-y(1-x)による粒子状カソード活物質は、一次粒子からの凝集体である二次粒子を含み、ここで、TMがニッケルであるか、又はTMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有し、xが0~0.2の範囲であり、yが0.001~0.01の範囲であり、Mが、Nb及びTaから選択され、一次粒子の結晶子表面に濃縮し、そうでなければそのようなカソード活物質中に均一に分布する。
【0072】
前記「そうでなければ・・・均一に分布する」という用語は、Mが本発明のカソード活物質の二次粒子の外表面に濃縮していないことを意味する。
【0073】
本発明の一実施態様において、Mの化合物は、2~30nmの平均厚さを有する層の形態で一次粒子の結晶子表面に濃縮する。この化合物は、複数の化合物を含むことができる。一次粒子の結晶子表面に濃縮するこのようなMの化合物(単数又は複数)は、Nb、Ta、ZrO、TiO、LiNbO、LiTaO、LiZrO、LiTi12、LiTiOから選択される。Nb及びTaが好ましい。
【0074】
本発明の一実施態様において、TMは、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dM1 d (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
は、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである。好ましくは、b+c>0である、
一部の元素は遍在するものである。本発明の文脈において、不純物としての微量のナトリウム、カルシウム、鉄又は亜鉛などの遍在金属は、本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量とは、TMの全金属含有量に対して0.02モル%以下の量を意味する。
【0075】
本発明の一実施態様において、本発明の電極活物質は、3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0076】
本発明の一実施態様において、本発明の電極活物質は、0.3~1.5、好ましくは0.3~0.5又は0.8~1.2の範囲の、スパン=((D90)-D(10))/D(50)によって定義された粒径分布のスパンを有する。粒径分布は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0077】
本発明の一実施態様において、本発明の前駆体は、2~200m/g、好ましくは2~50m/gの範囲の、例えばDIN-ISO 9277:2003-05に従って、窒素吸着によって決定された比表面積(BET)を有する。
【0078】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明のカソードとも呼ばれるカソードに関する。
【0079】
特に、本発明のカソードは、
(A)少なくとも1種の、本発明の電極活物質、
(B)導電状態の炭素、
(C)バインダー又はバインダー(C)とも呼ばれるバインダー材料、及び好ましくは、
(D)集電器
を含有する。
【0080】
好ましい実施態様において、本発明のカソードは、(A)、(B)及び(C)の合計に基づいて、
(A)80~98質量%の本発明の電極活物質、
(B)1~17質量%の炭素、
(C)1~15質量%のバインダー材料
を含有する。
【0081】
本発明によるカソードは、さらなる構成要素を含むことができる。それらは、集電器、例えばアルミホイル(これに限定していない)を含むことができる。それらは、導電性炭素及びバインダーをさらに含むことができる。
【0082】
本発明によるカソードは、簡潔に炭素(B)とも呼ばれる、導電性修飾の炭素を含有する。炭素(B)は、すす、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びグラファイト、及び上記の少なくとも2つの組み合わせから選択することができる。
【0083】
好適なバインダー(C)は、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0084】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0085】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0086】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックポリプロピレン又は本質的にイソタクチックポリプロピレンである。
【0087】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0088】
別の好ましいバインダー(C)は、ポリブタジエンである。
【0089】
他の好適なバインダー(C)は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0090】
本発明の一実施態様において、バインダー(C)は、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0091】
バインダー(C)は、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0092】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダー(C)は、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0093】
好適なバインダー(C)は、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0094】
本発明のカソードは、電極活物質に対して1~15質量%のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。別の実施態様において、本発明のカソードは0.1~1質量%未満のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。
【0095】
本発明のさらなる態様はは、本発明の電極活物質、炭素、及びバインダーを含む少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード、及び少なくとも1種の電解質を含有する電池である。
【0096】
本発明のカソードの実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0097】
前記アノードは、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズを含有してもよい。前記アノードは、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0098】
前記電解質は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでもよい。
【0099】
電解質のための非水性溶媒は、室温で液体又は固体であり得、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール、及び環状又は非環状有機カーボネートから選択される。
【0100】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C~C-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ここでは、ポリエチレングリコールは、20モル%以下の1種以上のC~C-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2個のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0101】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、少なくとも400g/molであり得る。
【0102】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、最大5000000g/mol、好ましくは最大2000000g/molであり得る。
【0103】
好適な非環状エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0104】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0105】
好適な非環状アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0106】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、及び特に1,3-ジオキソランである。
【0107】
好適な非環状有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0108】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)による化合物である
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なることができ、水素及びC~C-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択され、好ましくは、R及びRの両方ともがtert-ブチルであることはない)。
【0109】
特に好ましい実施態様において、Rはメチルであり、R及びRはそれぞれ水素であるか、又はR、R及びRはそれぞれ水素である。
【0110】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0111】
【化2】
【0112】
好ましくは、溶媒又は複数の溶媒は、水を含まない状態で、すなわち、例えば、カールフィッシャー滴定によって決定することができる1ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0113】
電解質(C)は、少なくとも1種の電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(C2n+1SO、リチウムイミド、例えばLiN(C2n+1SO(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SOF)、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、及び一般式(C2n+1SOYLiの塩である
(式中、Yが酸素及び硫黄から選択される場合、t=1であり、
Yが窒素及びリンから選択される場合、t=2であり、
Yが炭素及びケイ素から選択される場合、t=3である)。
【0114】
好ましい電解質塩は、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiPF、LiBF、LiClOから選択され、LiPF及びLiN(CFSOが特に好ましい。
【0115】
本発明の一実施態様において、本発明による電池は、それによって電極が機械的に分離される1つ以上のセパレータを含む。好適なセパレータは、金属リチウムに対して反応しないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータのための特に好適な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成の多孔性ポリエチレン及びフィルム形成の多孔性ポリプロピレンである。
【0116】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータは、35~45%の範囲の多孔率を有することができる。好適な細孔径は、例えば30~500nmの範囲である。
【0117】
本発明の他の実施態様において、セパレータは、無機粒子で充填したPET不織布から選択することができる。このようなセパレータは40~55%の範囲の多孔率を有し得る。好適な細孔径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0118】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスク又は円筒形カンの形状を有することができるハウジングをさらに含むことができる。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0119】
本発明による電池は、例えば低温(0℃以下、例えば-10℃又はそれ未満まで)で良好な放電挙動、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示す。
【0120】
本発明による電池は、互いに組み合わされている、例えば直列に接続するか、又は並列に接続することができる2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池において、少なくとも1つの電気化学セルは少なくとも1つの本発明によるカソードを含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルにおいて、電気化学セルの大部分は本発明によるカソードを含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池において、すべての電気化学セルは本発明によるカソードを含有する。
【0121】
本発明はさらに、本発明による電池を機器、特にモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例は、車両、例えば自動車、自転車、航空機、又は水上乗り物、例えばボート又は船である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は例えば建築部門における電動手工具、特にドリル、バッテリー式ドライバー又はバッテリー式ステープラーである。
【0122】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0123】
平均粒径(D50)は動的光散乱法(「DLS」)により決定した。パーセンテージは、特に明記しない限り、質量%である。
【0124】
TEM分析:
サンプル材料をEpofix樹脂(Struers,Copenhagen,
デンマーク)に埋め込んだ。透過型電子顕微鏡(TEM)のための超薄サンプル(~100nm)を超微細加工によって調製し、TEMサンプルキャリアグリッドに移した。HAADF-STEM条件下200/300keVで運転した、Tecnai Osiris及びThemis Z3.1装置(Thermo-Fisher,Waltham,USA)を用いて、サンプルをTEMによって画像化した。SuperX G2検出器を用いたエネルギー分散型X線分光法(EDXS)によって、化学組成マップを取得した。Velox(Thermo-Fisher)とEsprit (Bruker,Billerica,USA)ソフトウェアパッケージを使用して、画像と元素マップを評価した。
【0125】
超微細加工は通常、一次粒子の断面を作らず、一次粒子の粒界に沿って二次粒子をスライスする。EDSは、サンプルの全厚みにわたって統合された化学組成を決定する。一次結晶の内側領域のコーティング元素のシグナルは、粒子の上部と下部の表面コーティングによるものである。
【0126】
工程(a.1):錯化剤としてアンモニアを用いて、硫酸ニッケル水溶液(1.65mol/kg溶液)を25質量%のNaOH水溶液と組み合わせることにより、球状のNi(OH)前躯体を得た。pH値を12.6に設定した。新たに沈殿したNi(OH)を水で洗浄し、ふるい分け、120℃で12時間乾燥させた。その後、新たに沈殿したNi(OH)をアルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/h)、炉内500℃で、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で3時間乾燥させて、6μmのD50を有する前駆体p-CAM.1を得た。
【0127】
比較用カソード活物質C-CAM.1の製造:
脱水した前駆体p-CAM.1を、LiOH・HOと1.01:1のLi:Niのモル比で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、3℃/分の加熱速度を用いて、酸素雰囲気下(10回交換/h)、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。得られた材料を10℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、その後、30μmのメッシュサイズを使用してふるい分け、6μmのD50を有する比較用材料C-CAM.1を得た。
【0128】
本発明の材料CAM.2の製造:
工程(b.2):窒素雰囲気下で、40gの前駆体p-CAM.1をビーカーに入れた。2.84gのニオブ(V)エトキシドを10mlの乾燥エタノールに溶解させた。得られた溶液を、前駆体が液体に浸るまで、室温で5分かけて滴下漏斗を通してビーカーに滴下して添加した。前駆体の上に目に見える液膜は形成しなかった。得られたスラリーをビーカー内で30分間攪拌した。Nb及びNiの個々の量は、Ni:Nbモル比が0.98:0.02となるように設定した。
【0129】
工程(c.2):その後、スラリーを120℃及び10ミリバールの圧力で6時間加熱することによりエタノールを除去して、p-CAM.2を得た。
【0130】
工程(d.2)及び(e.2):前駆体p-CAM.2を、LiOH・HOと1.01:1のLi:(Ni+Nb)のモル比で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で、酸素雰囲気下(10回交換/h)、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、30μmのメッシュサイズを使用して、このようにして得られた材料をふるい分け、本発明のカソード活物質CAM.2を得た。
【0131】
本発明の材料CAM.3の製造:
工程(b.3):窒素雰囲気下で、40gの前駆体p-CAM.1をビーカーに入れた。3.67gのタンタル(V)エトキシドを10mlの乾燥エタノールに溶解させた。得られた溶液を、前駆体が液体に浸るまで、室温で5分かけて滴下漏斗を通してビーカーに滴下して添加した。前駆体の上に目に見える液膜は形成しなかった。得られたスラリーをビーカー内で30分間攪拌した。Ta及びNiの個々の量は、Ni:Taモル比が0.98:0.02となるように設定した。
【0132】
工程(c.3):その後、スラリーを120℃及び10ミリバールの圧力で6時間加熱することによりエタノールを除去して、p-CAM.3を得た。
【0133】
工程(d.3)及び(e.3):前駆体p-CAM.3を、LiOH・HOと1.01:1のLi:(Ni+Ta)のモル比で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で、酸素雰囲気下(10回交換/h)、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、30μmのメッシュサイズを使用して、このようにして得られた材料をふるい分け、本発明のカソード活物質CAM.3を得た。
【0134】
工程(a.4):錯化剤としてアンモニアを用いて、対応する比(1.65mol/kg溶液)のそれぞれの遷移金属の硫酸塩水溶液を25質量%のNaOH水溶液と組み合わせることにより、Ni:Co:Mn=91:4.5:4.5のモル組成を有する球状の前躯体を得た。pH値を11.7に設定した。新たに沈殿した材料を水で洗浄し、ふるい分け、120℃で12時間乾燥させた。その後、子の材料をアルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/h)、炉内500℃で、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で3時間乾燥させて、11μmのD50を有する前駆体p-CAM.4を得た。
【0135】
本発明の材料CAM.4の製造:
工程(b.4):窒素雰囲気下で、50gの前駆体p-CAM.4をビーカーに入れた。3.42gのニオブ(V)エトキシドを10gの乾燥エタノールに溶解させた。得られた溶液を、前駆体が液体に浸るまで、室温で5分かけて滴下漏斗を通してビーカーに滴下して添加した。前駆体の上に目に見える液膜は形成しなかった。得られたスラリーをビーカー内で1~2分間攪拌した。Nb及び(Ni:Co:Mn)の個々の量は、(Ni:Co:Mn):Nbモル比が0.98:0.02となるように設定した。
【0136】
工程(c.4):その後、スラリーを室温及び真空で24時間加熱し、その後、60℃及び10ミリバールの圧力で72時間加熱することによりエタノールを除去して、p-CAM.5を得た。
【0137】
工程(d.4)及び(e.4):前駆体p-CAM.5を、LiOH・HO、Al、ZrO及びTiOと、1.04:1のLi:(Ni+Co+Mn+Nb)のモル比、及び0.974:0.02:0.003:0.003の(Ni+Co+Mn+Nb):Al:Zr:Ti比で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で、酸素雰囲気下(10回交換/h)、750℃で6時間加熱した。その後、32μmのメッシュサイズを使用して、このようにして得られた材料をふるい分け、カソード活物質CAM.4を得た。
【0138】
HAADF及びEDSマッピングによって示されるように、CAM.2及びCAM.4では、酸化ニオブは、一次粒子の結晶子表面に濃縮し、そうでなければそのようなカソード活物質中に均一に分布していることが分かった。HAADF及びEDSマッピングによって示されるように、CAM.3では、タンタル酸化物は、一次粒子の結晶子表面に濃縮し、そうでなければそのようなカソード活物質中に均一に分布していることが分かった。
【0139】
比較用材料C-CAM.5の製造:
工程(d.5)及び(e.5):前駆体p-CAM.4を、LiOH・HO、Al、ZrO及びTiOと、1.04:1のLi:(Ni+Co+Mn)のモル比、及び0.974:0.02:0.003:0.003の(Ni+Co+Mn):Al:Zr:Ti比で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度で、酸素雰囲気下(10回交換/h)、750℃で6時間加熱した。その後、32μmのメッシュサイズを使用して、このようにして得られた材料をふるい分け、カソード活物質C-CAM.5を得た。
【0140】
電極の製造:電極は、94%のそれぞれのCAM又はC-CAM、3%のカーボンブラック(Super C65)及び3%のバインダー(ポリビニリデンフルオリド、Solef 5130)を含有した。スラリーをN-メチル-2-ピロリドン中で混合し、ドクターブレードでアルミホイル上にキャストした。真空中105℃で6時間乾燥させた後、円形の電極を打ち抜き、秤量し、真空中120℃で12時間乾燥させた後、Arで充填したグローブボックスに入れた。
【0141】
ハーフセルの電気化学測定:コイン型電気化学セル(「コインハーフセル」)は、アルゴン充填のグローブボックス内で組み立てた。直径14mmの正極(担持量8.0±0.5mg cm-2)電極は、ガラス繊維セパレータ(Whatman GF/D)によって0.58厚のLiホイルから分離した。質量比3:7のエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)中の1MのLiPFの95μlの量を電解質として使用した。以下のCレートを適用することにより、ある放電ステップで初期放電容量の70%に達するまで、Maccor 4000バッテリーサイクラーで、室温で3.1~4.3Vの間でセルを定電流的にサイクルした。
【0142】
【表1】
【0143】
上記のCレートで充電した後、最初の充電ステップを除くすべての充電ステップを、定電圧ステップ(CV)によって1時間、又は電流が0.02Cに達するまで終了した。
【0144】
サイクリング中、1分ごと、又は少なくとも5mVの電圧変化が発生した後、データポイントを収集した。各材料について4つの電気化学セルを組み立て、4つのセルを平均化することによって、対応するサイクルプロファイル、容量及び抵抗を得た。
【0145】
抵抗測定(25℃で25サイクルごとに実施)の間、セルを0.2Cで充電し、前回の放電容量に対して50%の充電状態になった。セルを平衡化するために、30分間の開回路ステップが続いた。最後に、2.5Cの放電電流を30秒間印加し、抵抗値を測定した。電流パルスの終了後、セルを再び開回路で30分間平衡化し、さらに0.2Cで3.0Vまで放電させた。
【0146】
抵抗を算出するために、2.5Cパルス電流を印加する前の電圧V0s、2.5Cパルス電流を30秒印加した後の電圧V30s、及び2.5C電流値(Aで表示するj)を取得しました。式3(V:電圧、j:2.5Cパルス電流)に従て、抵抗を算出した。
【0147】

R=(V0s-V30s)/j (式1)
【0148】
【表2】
【0149】
CAM.4はC-CAM.5より優れた電気化学特性を示す。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物又は酸化物を提供する工程であって、TMがNi又は金属の組み合わせであり、TMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有する、工程と、
(b)工程(a)からの前記酸化物又は(オキシ)水酸化物を、Mの化合物の非水性溶液又は水溶液で処理する工程であって、MがTi、Zr、Nb又はTaから選択される、工程と、
(c)溶媒(単数又は複数)を除去し、それによって固体残留物を得る工程と、
(d)工程(c)からの固体残留物を、リチウム源、及び任意にTi又はAl又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~900℃の範囲の温度で熱処理する工程と、
を含む、電極活物質を製造する方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dMd (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
b+c>0であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で提供される前記(オキシ)水酸化物が、50~2000質量ppmの範囲の含水量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Mの化合物がC~C-アルカノラートから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
がNb及びTaから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)が、溶媒(単数又は複数)の蒸発によって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)における溶媒が水及びC~C-アルカノールから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
とTMのモル比が、1:100~1:1000の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一次粒子からの凝集体である二次粒子を含む、一般式Li1+x(M TM1-y(1-x)による粒子状カソード活物質であって、TMがNiであるか、又はTMがNiと、Mn及びCoのうちの少なくとも1種とを含有し、xが0~0.2の範囲であり、yが0.001~0.01の範囲であり、Mが、Zr、Nb及びTaから選択され、一次粒子の結晶子表面に濃縮し、そうでなければそのようなカソード活物質中に均一に分布する、粒子状カソード活物質。
【請求項10】
の化合物が、2~30nmの平均厚さを有する層の形態で一次粒子の結晶子表面に濃縮する、請求項9に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項11】
がNb及びTaから選択され、請求項9又は10に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項12】
TMが、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dM1 d (I)

(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
は、Al、Mg、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項9から11のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項13】
(E)少なくとも1種の、請求項9から12のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質、
(F)導電状態の炭素、
(G)バインダー材料
を含有する、カソード。
【請求項14】
(1)少なくとも1つの、請求項13に記載のカソード、
(2)少なくとも1つのアノード、
(3)少なくとも1種の電解質
を含有する、電池。
【国際調査報告】