(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/593 20060101AFI20240118BHJP
C04B 35/591 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C04B35/593 500
C04B35/591
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543223
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022072351
(87)【国際公開番号】W WO2022156635
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110075093.4
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510087966
【氏名又は名称】中国科学院上海硅酸塩研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 学建
(72)【発明者】
【氏名】蒋 金弟
(72)【発明者】
【氏名】姚 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】黄 政仁
(72)【発明者】
【氏名】陳 忠明
(72)【発明者】
【氏名】黄 健
(57)【要約】
高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法であって、(1)窒化ケイ素セラミック基板生地を窒化ホウ素坩堝に積み重ね、且つ隣接する窒化ケイ素セラミック基板生地間に1層の窒化ホウ素粉末がコーティングされるステップと、(2)段階的に真空引いた後、窒素雰囲気又は還元雰囲気で、500~900℃で剥離するステップと、(3)その後、窒素雰囲気で、1800~2000℃で圧力焼結し、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ作製を実現するステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素セラミック基板生地を窒化ホウ素坩堝に積み重ね、且つ隣接する窒化ケイ素セラミック基板生地間に1層の窒化ホウ素粉末がコーティングされるステップ(1)と、
段階的に真空引いた後、窒素雰囲気又は還元雰囲気で、500~900℃で剥離するステップであって、前記段階的な真空引きは、少なくとも二段階真空引き又は少なくとも三段階真空引きであり、二段階真空引きの場合に、前記段階的な真空引きのパラメータは、20~30分間真空引き、真空度を20~30kPaに達成させてから、10~20分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくし、或いは、三段階真空引きの場合に、前記段階的真空引きのパラメータは、まず10~15分間真空引き、真空度を60~80kPaに達成させてから、10~15分間真空引き、真空度を10~30kPaに達成させ、最後に10~15分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくするステップ(2)と、
その後、窒素雰囲気で、1800~2000℃で圧力焼結し、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ作製を実現するステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とする高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法。
【請求項2】
前記窒化ケイ素セラミック基板生地の積み重ね数量は5~50枚である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項3】
前記窒化ホウ素粉末のうち、O含有量が1%以下、C含有量が0.01%以下、金属不純物イオンの含有量が0.02%以下であり、前記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は1μm~5μmである、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項4】
前記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は2μm~5μmである、請求項3に記載のバッチ焼結方法。
【請求項5】
前記窒化ホウ素粉末の用量は1.0~2.5mg/cm
2である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項6】
前記窒化ホウ素粉末の用量は1.5~2.5mg/cm
2である、請求項5に記載のバッチ焼結方法。
【請求項7】
ステップ(2)で、前記窒素雰囲気又は還元雰囲気の圧力は0.05~0.2MPaであり、前記還元雰囲気は、水素含有量が5%以下である窒素/水素の混合雰囲気であり、前記剥離の時間は1~3時間である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項8】
ステップ(2)で、前記窒素雰囲気又は還元雰囲気の圧力は0.1~0.2MPaである、請求項7に記載のバッチ焼結方法。
【請求項9】
前記圧力焼結において窒素雰囲気圧力は0.5~10MPaであり、前記圧力焼結の時間は4~12時間である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項10】
複数の窒化ホウ素坩堝をグラファイト窯具に均一的に配置して圧力焼結を行う、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項11】
前記グラファイト窯具は、多層グリル構造を有する、請求項10に記載のバッチ焼結方法。
【請求項12】
前記窒化ケイ素セラミック基板生地は、スラリーテープキャスティング成形又は粉末プレス成形を用いて作製され、
前記スラリーテープキャスティング成形のステップは、
窒化ケイ素粉及びシリカフュームのうち少なくとも1つを原料粉末とし、焼結助剤、分散剤、消泡剤、結合剤及び可塑剤と保護雰囲気で混合した後に、さらに真空脱ガスが行われ、混合スラリーが得られるステップ(1)と、
窒素雰囲気でテープキャスティング成形及び乾燥を行い、第1生地が得られるステップ(2)と、
得られた第1生地に対して整形前処理を行い、窒化ケイ素セラミック基板生地が得られるステップ(3)と、を含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載のバッチ焼結方法。
【請求項13】
原料粉末にシリカフュームが含有される場合に、シリカフューム質量は原料粉末質量の75%以上であり、原料粉末質量は窒化ケイ素粉末及びシリカフュームが完全窒化した後に生成した窒化ケイ素の質量総和である、請求項12に記載のバッチ焼結方法。
【請求項14】
圧力焼結の前に、剥離した窒化ケイ素セラミック基板生地に対して窒化処理を行い、前記窒化処理のパラメータは、窒素雰囲気が、水素含有量が5%以下である窒素/水素の混合雰囲気であり、圧力が0.1~0.2MPaであり、窒化処理温度が1350~1450℃であり、窒化処理時間が3~6時間である、請求項13に記載のバッチ焼結方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のバッチ焼結方法で作製された高性能窒化ケイ素セラミック基板であって、
前記高性能窒化ケイ素セラミック基板の合格率は60%以上である、高性能窒化ケイ素セラミック基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法に関し、セラミック材料の作製分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは、高出力化、高周波化、集積化の方向へ急速に発展している。半導体デバイスの作動によって生成した熱は、半導体デバイスの故障を引き起こす要因であるが、絶縁基板の熱伝導率は、半導体デバイスの全体の放熱に影響する重要な要素である。また、例えば電気自動車、高速鉄道等の分野では、半導体デバイスの使用中に、常に衝撃、振動等の複雑な力学的環境に臨むことがあり、使用される材料の力学的信頼性に対して厳しく要求される。
【0003】
高性能窒化ケイ素(Si3N4)セラミックは、優れた力学的及び熱的性能を有し、優れる力学的性能及び高熱伝導性の潜在力によって、窒化ケイ素セラミックスは、アルミナ、窒化アルミニウム等の既存の基板材料の欠点を補うことが期待され、ハイエンド半導体デバイス、特にハイパワー半導体デバイス基板への応用において大きな市場の見通しを持っている。
【0004】
窒化ケイ素セラミック材料の主な焼結プロセスには、反応焼結、ホットプレス焼結、常圧焼結、圧力焼結がある。
【0005】
窒化ケイ素の反応焼結は、高純度Si粉末(又は少量のSi3N4粉が加入されたもの)を主要原料とし、まず1300~1500℃で窒化処理を行ってSiをSi3N4に変換し、さらに1750~1850℃まで昇温してSi3N4緻密セラミックが形成され、このプロセスの収縮率が小さく(5%以下)、複雑な形状のワークの作製に適用するが、窒化が不完全で、遊離Siが少量残存し、材料特性が比較的に低いという問題が生じやすい。
【0006】
窒化ケイ素のホットプレス焼結は、Si3N4粉を主要原料とし、少量の焼結助剤(通常、希土類酸化物及び金属酸化物)が加入されることによって、1atmの窒素保護雰囲気で、1750~1850℃で液相焼結メカニズムにより、同時に機械的圧力を介してSi3N4緻密セラミックが形成され、このプロセスで作製された材料は、一般的に比較的に優れる性能を有するが、このプロセスは外部からの機械的圧力の必要があるので、形状が簡単であるワークのみの作製に適用し、且つ後続の機械加工の必要もあり、生産効率が低く、バッチ生産に適用しない。
【0007】
窒化ケイ素の無圧焼結(又は常圧焼結)は、Si3N4粉を主要原料とし、適量の焼結助剤が加入されることによって、1atmの窒素保護雰囲気で、1750~1850℃で液相焼結メカニズムによって緻密Si3N4セラミックが形成され、このプロセスは生産効率が高く、バッチ生産に適用するが、Si3N4粉は、高温(約1800℃又は以上)で分解反応を発生しやすいので、材料性能が相対的に低くなる。
【0008】
窒化ケイ素の圧力焼結では、Si3N4粉を主要原料とし、適量の焼結助剤が加入されることによって、一定圧力の窒素保護雰囲気で、1800~2000℃で液相焼結メカニズムによって緻密Si3N4セラミックが形成される。このプロセスは、窒化ケイ素の無圧焼結に存在する高温分解課題に対して発展してきた作製プロセスであり、窒素圧力は一般的に0.1~10MPaであり、焼結温度は1800~2000℃に達することができる。このプロセスは、高圧窒素雰囲気の抑制作用によりSi3N4の高温分解課題を解決し、焼結温度をさらに向上させ、作製された材料の性能を保証するとともに、生産効率が高い特徴を保留し、バッチ生産に適用される。これは、高性能窒化ケイ素セラミック材料を作製する最適なプロセス方法と公認される。
【0009】
高性能(高い熱伝導率、高い強度、高い破壊電界強度)窒化ケイ素セラミック基板材料のバッチ生産にとって、圧力焼結は、最も発展性及び潜在力があるプロセス方法であるが、依然として下記の欠点がある。
(1)グラファイト発熱体及びグラファイトヒートシールドから構成される焼結炉にカーボンリッチ雰囲気があり、後者が異なる度合で基板材料を汚染するため、窒化ケイ素セラミック基板の絶縁性能が低下し、破壊電界強度が低下すること。
(2)生産焼結炉は一般的に大きい囲炉裏空間を有するが、1800~2000℃での高温条件で主に放射により熱伝達を行うものであり、焼結炉の発熱体は一般的に囲炉裏の四周に配置され、囲炉裏の内部の異なる位置での実際温度の間にきっと一定度合の偏差があり、材料性能の一致性に影響し、特に製品処理量を増加するために、囲炉裏の内部に多層グリルを設ける必要があり、そうすると囲炉裏の内部の異なる位置での温度の不均一性がさらに悪くなることが間違いないこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第108495831号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第109987944号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第103781742号明細書
【特許文献4】特開2011-178598号公報
【特許文献5】国際公開第2019/235593号
【発明の概要】
【0011】
高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結の臨む技術的課題に対して、本発明者等は、その圧力焼結バッチ作製プロセスを開発することによって、基板生地の複数の積層設計及び制御、坩堝及びグラファイト窯具ツールの設計及び制御、並びに、剥離及び焼結プロセスの設計及び制御により、最終的に高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法を提供する。本発明の高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法は、
窒化ケイ素セラミック基板生地を窒化ホウ素坩堝に積み重ね、且つ隣接する窒化ケイ素セラミック基板生地間に1層の窒化ホウ素粉末がコーティングされるステップ(1)と、段階的に真空引いた後、窒素雰囲気又は還元雰囲気で、500~900℃で剥離するステップであって、前記段階的な真空引きは、少なくとも二段階真空引き又は少なくとも三段階真空引きであり、二段階真空引きの場合に、前記段階的な真空引きのパラメータは、20~30分間真空引き、真空度を20~30kPaに達成させてから、10~20分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくし、或いは、三段階真空引きの場合に、前記段階的真空引きのパラメータは、まず10~15分間真空引き、真空度を60~80kPaに達成させてから、10~15分間真空引き、真空度を10~30kPaに達成させ、最後に10~15分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくするステップ(2)と、その後、窒素雰囲気で、1800~2000℃で圧力焼結し、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ作製を実現するステップ(3)とを含む。
【0012】
本発明は、高純度窒化ホウ素粉末及び坩堝を用いることによって、金属不純物イオンの加入及び焼結過程中の炭素雰囲気の加入を回避し、基板材料の熱伝導率及び破壊電界強度の保証に寄与する。そして、本発明は、さらに窒化ホウ素粉末の高温における化学的安定性の特徴を利用し、基板生地間に、隣接する基板が互いに凝着されることを防止する高純度窒化ホウ素粉末が1層コーティングされることによって、複数枚の基板の積層バッチ焼結を実現し、生産効率を向上させる。本発明は、段階的な真空引き措置を取ることによって、真空引き速度及び真空吸引力を制御し、基板生地層間の窒化ホウ素粉末の変位を回避し、窒化ケイ素セラミック基板が焼結過程において互いに凝着されるように形成することがないことを確保し、基板生地に対する微陽圧還元雰囲気熱処理により、窒化ケイ素及び窒化ホウ素粉末のさらなる酸化を回避し、作製された窒化ケイ素セラミック基板の物理的特性及び表面質量を保証する。上記複数の技術措置の協同作用により、窒化ケイ素セラミック基板性能を保証する前提で、生産効率を向上させ、生産コストを低下させる。
【0013】
好ましくは、前記窒化ケイ素セラミック基板生地の積み重ね数量は5~50枚である。
【0014】
好ましくは、前記窒化ホウ素粉末のうち、O含有量が1%以下であり、C含有量が0.01%以下であり、金属不純物イオンの含有量が0.02%以下であり、前記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は1μm~5μmであり、好ましくは2μm~5μmである。本発明は、窒化ホウ素粉末の純度(O含有量、C含有量、金属不純物イオンの含有量等)を制御することによって、窒化ケイ素セラミック材料に汚染を引き起こすことを回避し、セラミック基板の熱伝導率及び破壊電界強度等の性能を保証する。本発明は、主に窒化ホウ素粉末の粒度を制御することによって、作製された窒化ケイ素セラミック基板の表面質量(平面度、粗さ等)を保証する。
【0015】
好ましくは、前記窒化ホウ素粉末の用量は1.0~2.5mg/cm2であり、好ましくは1.5~2.5mg/cm2である。本発明は、基板生地の単位面積における窒化ホウ素粉末のコーティング量を制御することによって、窒化ケイ素セラミック基板の均一な収縮及び優れた隔離効果を保証する。
【0016】
好ましくは、ステップ(2)で、前記窒素雰囲気又は還元雰囲気の圧力は0.05~0.2MPaであり、好ましくは0.1~0.2MPaである。この圧力範囲が微陽圧に属し、合格品率の向上に寄与し、前記還元雰囲気は、水素含有量が5%以下である窒素/水素の混合雰囲気であり、前記剥離の時間は1~3時間である。
【0017】
好ましくは、前記圧力焼結における窒素雰囲気圧力は0.5~10MPaであり、前記圧力焼結の時間は4~12時間である。
【0018】
好ましくは、複数の窒化ホウ素坩堝を均一にグラファイト窯具に配置し、圧力焼結を行う。好ましくは、前記グラファイト窯具は多層グリル構造である。更には、本発明は、多層グリル構造を有する高い熱容量グラファイト窯具ツールを採用することによって、焼結炉の内部温度フィールドをさらに平均化して、窒化ケイ素セラミック基板のバッチ圧力焼結の高い性能の一貫性を保証する。
【0019】
好ましくは、前記窒化ケイ素セラミック基板生地は、スラリーテープキャスティング成形又は粉末プレス成形を用いて作製される。前記スラリーテープキャスティング成形のステップは、(1)窒化ケイ素粉及びシリカフュームのうち少なくとも1つを原料粉末とし、焼結助剤、分散剤、消泡剤、結合剤及び可塑剤と保護雰囲気で混合した後に、さらに真空脱ガスが行われ、混合スラリーが得られるステップと、(2)窒素雰囲気でテープキャスティング成形及び乾燥を行い、第1生地が得られるステップと、(3)得られた第1生地に対して整形前処理を行い、窒化ケイ素セラミック基板生地が得られるステップとを含む。好ましくは、原料粉末にシリカフュームが含有される場合に、シリカフューム質量は原料粉末質量の75%以上であり、原料粉末質量は窒化ケイ素粉末及びシリカフュームが完全窒化した後に生成した窒化ケイ素の質量総和である。より好ましくは、圧力焼結の前に、剥離した窒化ケイ素セラミック基板生地に対して窒化処理を行い、前記窒化処理のパラメータは、窒素雰囲気が、水素含有量が5%以下である窒素/水素の混合雰囲気であり、圧力が0.1~0.2MPaであり、窒化処理温度が1350~1450℃であり、窒化処理時間が3~6時間である。
【0020】
一方、本発明は、上記バッチ焼結方法に従って作製した高性能窒化ケイ素セラミック基板をさらに提供する。前記高性能窒化ケイ素セラミック基板は合格率≧60%であり、好ましくは合格率が70%以上であり、より好ましくは、合格率が80%以上であり、最も好ましくは、合格率が90%以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の顕著な特徴の一つとして、高純度窒化ホウ素粉末及び坩堝を採用することにより、不純物イオンの加入を回避し、基板の熱伝導率及び破壊電界強度の保証に寄与する。本発明の顕著な特徴のもう一つとして、積層方式、窯具ツール設計、真空引きプロセス制御等の措置を採用することにより、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結を実現し、生産効率を向上させ、生産コストを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】表面に窒化ホウ素粉末がコーティングされた窒化ケイ素基板の生地の模式図である。
【
図3】表面に窒化ホウ素粉末がコーティングされた20枚の窒化ケイ素基板の生地の堆積模式図である。
【
図4】20枚の堆積された窒化ケイ素基板の生地を窒化ホウ素坩堝に配置する模式図である。
【
図5】焼結すべき窒化ケイ素基板の生地が内蔵された窒化ホウ素坩堝をグラファイト窯具ツール(単層)に整然とした配置する模式図である。
【
図6】焼結すべき窒化ケイ素基板の生地が内蔵された窒化ホウ素坩堝をグラファイト窯具ツール(多層堆積)に整然とした配置する模式図である。
【
図7】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミック基板の実物図である。
【
図8】表1は本発明の実施例及び比較例で使用されたBN粉末の性能パラメータである。
【
図9】表2は本発明の窒化ケイ素セラミック基板の作製プロセスである。
【
図10】表3は本発明の窒化ケイ素セラミック基板の性能パラメータである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、下記実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。理解すべきこととしては、以下の実施形態は本発明を説明するためのものだけであり、本発明を限定するものではない。
【0024】
本開示で、圧力焼結プロセスを用いて高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結を実現し、具体的には、複数の基板生地の積層デザイン及び制御、坩堝及び窯具ツールのデザイン及び制御、並びに、剥離及び焼結プロセスのデザイン及び制御等のステップを含む事により、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結を実現する。
【0025】
以下、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法を例示的に説明する。
【0026】
窒化ケイ素セラミック基板生地の作製
具体的には、テープキャスティング成形のプロセス過程におけるスラリー作製、真空脱ガス、テープキャスティング成形、生地乾燥、生地整形等の過程によって、窒化ケイ素セラミック基板生地が作製されて得られる。
【0027】
本発明は、テープキャスティングスラリー作製過程において保護雰囲気での充分なボールミルミックスによって、低真空での長時間脱ガスに結び付けて、スラリー中のバブルを低減又は除去し、或いはスラリー中の凝集を低減する目的を達成する。テープキャスティング成形過程において、円筒形スクレーパー及びその高精密制御、及び温度インクリメントの連続的な熱N2雰囲気によるキャストフィルムブランクスの乾燥処理措置によって、高品質で欠陥なしのキャストフィルムの作製及びその厚さの均一性の精確制御を実現する。ボールミルミックス及びテープキャスティング成形過程中のN2保護雰囲気等の措置によって、窒化ケイ素粉末原料の二次酸化を抑制し、作製された窒化ケイ素セラミック基板が高熱い伝導率特性を有することを保証する。冷間等静圧圧縮成形前処理プロセスによって、作製されたキャストフィルムの密度、厚さの均一性及び平面度をさらに向上させる。
【0028】
無凝集、無バブルスラリーの作製
窒化ケイ素粉及びシリカフュームのうち少なくとも1つを原料粉末とし、焼結助剤、分散剤、消泡剤、結合剤及び可塑剤と保護雰囲気(例えばN2雰囲気であり、圧力は0.1MPaであってもよい)でボールミルミックスをした後に、さらに真空脱ガスを行い、無凝集、無バブルの混合スラリーを作製する。ボールミル過程において、窒化ケイ素セラミック研磨ボールを用いて、無水エタノールをボールミル媒体とする。ここで、焼結助剤は、希土類酸化物及びアルカリ土類金属酸化物であってもよく、窒化ケイ素粉又は/及びシリカフュームが完全に窒化形成された窒化ケイ素及び焼結助剤の総質量の4~5wt%である。希土類酸化物は、少なくともY2O3を含有する。前記アルカリ土類金属酸化物は、少なくともMgOを含有する。前記希土類酸化物とアルカリ土類金属酸化物との間のモル比は、(1.0~1.4):(2.5~2.9)であってもよい。ここで、シリカフュームを含有する場合に、前記シリカフュームの含有量は、窒化ケイ素粉又は/及びシリカフュームが完全に窒化形成した窒化ケイ素の総質量の75~100wt%に占める。作製されたスラリーに対して真空バブル除去処理を行い、真空度は、-0.1~-10kPaであり、脱ガス時間は6~24時間である。前記分散剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸トリエチル(TEP)のうちの少なくとも1つから選択され、添加量は窒化ケイ素粉、シリカフュームが完全に窒化形成した窒化ケイ素及び焼結助剤の総質量の0.2~1.0wt%である。前記消泡剤はオレイン酸であり、添加量は、窒化ケイ素粉、シリカフュームが完全に窒化形成した窒化ケイ素及び焼結助剤の総質量の0.2~1.0wt%である。前記結合剤は、ポリビニルブチラール(PVB)であり、添加量は、窒化ケイ素粉、シリカフュームが完全に窒化形成した窒化ケイ素及び焼結助剤の総質量の5~9wt%である。前記可塑剤は、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)及びポリエチレングリコール(PEG)のうちの少なくとも1つから選択され、添加量は、窒化ケイ素粉、シリカフュームが完全に窒化形成した窒化ケイ素及び焼結助剤の総質量の2~6wt%である。
【0029】
厚さが均一で表面にバブルがないキャストフィルム生地作製
N2雰囲気(0.1~0.2MPa)でテープキャスティング成形する。流れ熱N2雰囲気(フローレートは10~1000リットル/分間)で乾燥し、厚さが均一で、表面にバブルがないキャストフィルム生地の作製を実現する。例示として、N2雰囲気で円筒形スクレーパーテーを用いてテープキャスティング成形し、スクレーパーの高さを制御することによってキャストフィルム生地厚さに対する調整を実現する。温度上昇による流れ熱N2雰囲気を用いて、キャストフィルム生地を乾燥し、熱N2雰囲気の温度範囲は40~85℃であり、雰囲気の圧力は、0.1~0.2MPaである。例えば、温度段階数が2つであれば、1段階目の温度が40~65℃、乾燥時間が15~30分間であり、2段階目の温度範囲が60~85℃、乾燥時間が15~30分間であり、且つ1段階目の温度<2段階目の温度である。例えば、温度段階数は3つであれば、1段階目の温度が40~60℃、乾燥時間が5~20分間であり、2段階目の温度範囲が55~70℃、乾燥時間が5~20分間であり、3段階目の温度範囲が65~85℃、乾燥時間が5~20分間であり、且つ1段階目の温度<2段階目の温度<3段階目の温度である。
【0030】
キャストフィルム生地(第1生地)の整形前処理
一定の圧力(40~200MPa)条件で、切断したキャストフィルム生地(基板生地)に対して冷間等静圧圧縮の前処理を行い、キャストフィルムの厚さの均一性及び平面度を向上させ、窒化ケイ素セラミック基板生地が得られる。ここで、整形前処理の時間は2~10分間であってもよい。
【0031】
堆積基板生地の作製
一定数量の窒化ケイ素セラミック基板生地が積み重ねられ、基板生地の間に、隣接する基板が互いに凝着されることを防止する高純度窒化ホウ素粉末が1層コーティングされる。ここで、基板生地積み重ね数量は5~50枚であってもよく、この範囲にあると、積層焼結に寄与する。基板の積み重ね数量が5枚よりも少なければ、生産効率に影響する。基板の積み重ね数量が50枚よりも多ければ、上層と下層の基板の力受け状態の相違が大きすぎる場合に、基板間の一致性を影響し、且つ下層基板間に凝着現象が発生しやすい。ここで、高純度窒化ホウ素粉末は、O含有量が1%以下であり、C含有量が0.01%以下であり、金属不純物イオン含有量が0.02%以下である。窒化ホウ素粉末のうちO、C及び金属不純物イオンの含有量が高ければ、基板の熱伝導率及び破壊電界強度等の性能が低下する。ここで、高純度の平均粒子径は1~5μmであってもよい。採用される窒化ホウ素粉末の平均粒子径が小さ過ぎると、作製された基板との間に凝着現象が生じやすい。さらに窒化ホウ素粉末の粒子径の減少は、常にO含有量の増加に伴って、作製された基板熱伝導率及び破壊電界強度等の性能の劣化を引き起こし、採用される窒化ホウ素粉末の平均粒子径が大きすぎると、作製された基板の平面度が低下し、表面粗さが大きくなる。選択可能な実施方式において、窒化ホウ素スラリーは、スクリーン印刷の方式でコーティングされ、窒化ホウ素粉末の用量は1.0~2.5mg/cm2が好ましい。採用される窒化ホウ素粉末の用量が少なすぎると、作製された基板の間に凝着現象が生じやすく、採用される窒化ホウ素粉末の用量が多すぎると、ある度合で基板の高温収縮を阻止し、同一条件で作製された基板のサイズが比較的に大きく、平面度が低下し、表面粗さが大きくなる。
【0032】
バッチ基板生地の剥離
積層基板生地を高純度窒化ホウ素坩堝に入れて、熱処理炉に置いて、段階的に真空引き、層間の窒化ホウ素粉末の変位を回避する。そして、微陽圧の窒素雰囲気又は還元雰囲気で、一定の温度条件で基板生地を熱処理(剥離処理)する。選択可能な実施方式において、段階的な真空引きの速度は、真空バルブ開度、真空引き時間及び真空度によって制御される。ここで、段階的な真空引きは少なくとも3つの段階に分けて行われることができ、まず10~15分間真空引き、真空度を60~80kPaに達させ、続いて10~15分間真空引き、真空度を10~30kPaに達させ、次に10~15分間真空引き、真空度を5Paよりも小さくする。ここで、剥離処理は、水素含有量が5%以下である還元窒素を注入することによって、混合雰囲気に微陽圧が生じる。雰囲気圧力は0.1~0.2MPaであってもよく、処理温度は500~900℃であってもよく、処理時間は1~3hであってもよい。段階的な真空引きを採用しなければ、真空引きの速度が速すぎ、真空吸引力が過大となるため、基板生地間の隔離用窒化ホウ素粉末の変位を完全に回避するのが難しくなり、後の高温焼結過程において隣接する基板の大部分が凝着してしまう。
【0033】
バッチ基板生地の窒化
原料粉末にシリカフュームが含有される場合に、水素含有量が5%以下である水素/窒素混合雰囲気で、一定の温度条件で基板生地に対して窒化処理を行う。ここで、雰囲気圧力は、0.1~0.2MPaであってもよく、窒化処理温度は、1350~1450℃であってもよく、窒化処理時間は3~6時間であってもよい。
【0034】
バッチ基板生地の焼結
高窒素雰囲気の圧力で、高い熱容量グラファイト窯具を用いて焼結炉内部温度フィールドをさらに均一化し、一定温度で圧力焼結し、バッチ基板の緻密化を実現する。ここで、高窒素圧力での圧力焼結のパラメータとしては、雰囲気圧力が0.5~10MPaであってもよく、焼結温度が1800~2000℃であってもよく、保温時間が4~12時間であってもよい。好ましくは、高い熱容量グラファイト窯具は多層グリル構造であり、基板生地が取り付けられた窒化ホウ素坩堝をグラファイト窯具に均一的に配置する。
【0035】
本発明は、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結を実現する。レーザー熱伝導率計を用いて、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料の熱伝導率が80W・m-1・K-1よりも大きいと測定された。破壊電圧強度テスターを用いて、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料の破壊電界強度が25KV/mmよりも大きいと測定された。マイクロメーターを用いて、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料の厚さ偏差は±0.04mmであってもよいと測定された。プロファイラーを用いて、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料の平面度が0~0.002mm/mmであってもよいと測定された。プロファイラーを用いて、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料の表面粗さが0.3~0.8μmであってもよいと測定された。本発明で、得られた窒化ケイ素セラミック基板材料が同時に上記パラメータを満たすと、合格製品と見なすことができた。得られた窒化ケイ素セラミック基板の合格率は60%以上であり、好ましくは合格率が70%以上であり、より好ましくは合格率が80%以上であり、最も好ましくは、合格率が90%以上である。
【0036】
以下、さらに実施例をあげて本発明を詳細に説明する。同様に、以下の実施例は本発明をさらに説明するだけに用いられ、本発明の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。当業者による、本発明の上記内容に基づいてなされたいくつかの本質的な改良及び調整は、いずれも本発明の保護範囲に属する。下記例示的なプロセスパラメータ等も適当な範囲のうちの一例であり、すなわち当業者は、本明細書の説明により適当な範囲において選択を行うことができ、本発明は、以下の例示的な具体的数値に限定されるものではない。
【0037】
窒化ケイ素セラミック基板生地の作製例:
まず、原料粉末(窒化ケイ素粉及び/又はシリカフューム)、焼結助剤(Y2O3及びMgO)、分散剤、消泡剤、結合剤、可塑剤、無水エタノールを保護雰囲気(例えばN2雰囲気、圧力0.1MPa)下、密閉容器で、ボールミルミックス(30~100rpm、6~24時間)を行い、さらに真空脱ガス(-0.1~-10kPa、6~24時間)を行い、無凝集、無バブルの混合スラリーを作製した。そして、N2雰囲気(0.1~0.2MPa)でテープキャスティング成形を行い、流れ熱N2雰囲気(温度範囲40~85℃,雰囲気圧力0.1~0.2MPa、フローレート10~1000リットル/分間)で乾燥させ、厚さが均一で表面にバブルがないキャストフィルム生地の作製を実現した。最後に、切断したキャストフィルム生地(基板生地)に対して冷間等静圧圧縮整形前処理(40~200MPa、2~10分間)を行い、窒化ケイ素セラミック基板生地が得られた。
【0038】
実施例1
まず、ウェットミックス、真空脱ガス、テープキャスティング成形等のプロセスを採用して厚さ0.4mmの窒化ケイ素セラミック基板生地を作製した。スクリーン印刷プロセスを用いて、基板生地表面に薄い窒化ホウ素スラリーをコーティングし、スラリー乾燥後にそれを88mm×73mm仕様のサンプルに分割し、20枚の上記同一仕様のサンプルを内部空間100mm×100mm×30mmの高純度窒化ホウ素坩堝に堆積して置いた。
【0039】
次に、窒化ケイ素セラミック基板生地が内装された窒化ホウ素坩堝を、高純度グラファイト多層シェッド構造からなる焼結ツール(或いはグラファイト窯具とも称する)に均等に置いて、それを圧力焼結炉に入れ、以下のプロセスの順次に応じて熱処理が行われた。
(1)15分間真空引き。真空度を65~75kPaに達成させ、続いて15分間真空引き、真空度を15~25kPaに達成させた。続いて15分間真空引き、真空度を1~2Paに達成させた。
(2)真空システムを閉じ、N2(5%のH2含有)ガスを0.15MPaまでゆっくり注入した。
(3)0.15MPaのN2(5%のH2含有)の雰囲気保護で、5℃/minの速度で700℃まで昇温した後、2時間剥離前処理を行った。
(4)0.15MPaのN2雰囲気保護で、5℃/minの速度で1700℃まで昇温した後、1時間低温熱処理を行った。
(5)N2雰囲気を用いて焼結炉内部の雰囲気圧力を8MPaまで増加し、8MPaのN2雰囲気保護で、4℃/minの速度で1920℃まで昇温した後、5時間高温焼結した。
(6)炉で室温まで冷却した。
【0040】
本実施例1で作製された窒化ケイ素セラミック基板は、
図1を参照して、材料の熱伝導率93W/(m・K)、破壊電界強度42KV/mm、基板サイズ70mm×58mm、厚さ0.32±0.02mm、平面度0.03mm、表面粗さ0.4μmであり、基板間に互いに凝着現象がなく剥離しやすく、同一坩堝での異なる基板間に明らかな相違がなく、同一炉の異なる坩堝での異なる基板間に明らかな相違がなかった。
【0041】
実施例2~5
生地サイズ、基板生地隔離用窒化ホウ素粉末の特性(不純物含有量、平均粒子径、コーティング量)、基板生地堆積数量、真空引きプロセス、グラファイトグリル構造形式、剥離プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータを、表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料特性を表3に示す。
【0042】
実施例6
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末の平均粒子径のサイズが比較的に小さかったため、作製された基板間に部分凝着現象が発生した。合格品率は、実施例1よりも低下した。
【0043】
実施例7
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末の用量が比較的に少なかったため、作製された基板間に部分凝着現象が発生した。合格品率は、実施例1よりも低下した。
【0044】
実施例8
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。二段階制御による真空引き措置を採用し(まず、20分間真空引き、真空度を20~30kPaに達成させ、次に15分間真空引き、真空度を1~2Paに達成させる)、段階的に真空引きの速度を制御する措置を取る。段階的に真空引きの速度を制御する手段が採用されていたが、真空引き過程を二段階に分けているだけで、真空引きの速度は相変わらず速く、真空吸引力が相変わらず大きかった。その結果、基板生地間の窒化ホウ素粉末に部分的に変位したり、引き出されたりする現象が生じ、基板間の完全な隔離を十分に保証することができず、作製された基板間に部分凝着現象が発生した。合格品率は、実施例1よりも低下した。
【0045】
実施例9
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。微陽圧の還元雰囲気の剥離プロセスを採用しなかったため(低圧窒素雰囲気、即ち0.05MPaのN
2雰囲気を採用する)、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下し、且つ一部のサンプルにマイクロクラック現象が発生した。合格品率は、実施例1よりも低下した。
【0046】
実施例10
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。微陽圧の還元雰囲気の剥離プロセスを採用しなかったため(微陽圧の窒素雰囲気、即ち0.15MPaのN
2雰囲気)、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下した。
【0047】
実施例11
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。多層グリル構造窯什器(セッターボード及び温度管理の二重作用を果たす)が高い熱容量石墨材料で作られていなかったため、焼結炉の囲炉裏の内部の異なる位置間に一定の温度差があり、最終的に作製された基板の材料性能及び表面質量(基板サイズ、平面度、表面粗さ等)の一致性が比較的に低く、合格品率が実施例1よりも低下した。
【0048】
比較例1
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末のO含有量及び金属不純物イオンの含有量が高すぎるため、作製された基板の熱伝導率及び破壊電界強度は明らかに低下し、基板間にわずか凝着現象が発生した。
【0049】
比較例2
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末のC含有量が高すぎるため、作製された基板の破壊電界強度は明らかに低下した。
【0050】
比較例3
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末の平均粒子径サイズが大きすぎるため、作製された基板の平面度が低下し、表面粗さが明らかに増大した。
【0051】
比較例4
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。採用される窒化ホウ素粉末の用量が多過ぎるため、ある度合で基板の高温収縮を阻害し、作製された基板のサイズが比較的に大きく、平面度が低下し、表面粗さが明らかに増大した。
【0052】
比較例5
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。段階的、遅い真空引き措置(真空バルブ開度を制御せず、直接的に30分間真空引き、真空度を1~2Paに達成させる)を採用せず、真空バルブ開度(100%全開状態)及び段階的な真空引きを制御しなかったため、真空吸引力が大きすぎ、基板生地間の窒化ホウ素粉末が明らかに変位し、ひいては引き出されるようになって、基板間の充分な隔離が保証できず、作製された基板間に深刻な凝着現象が発生した。
【0053】
比較例6
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。0.5~10MPaの高圧力窒素雰囲気焼結プロセスを採用しなかった(常圧窒素雰囲気、即ち0.1MPaのN
2雰囲気を採用した)ため、作製された基板材料の熱伝導率及び破壊電界強度は明らかに低下し、基板の表面粗さは明らかに増大し、製品の合格率は低下した。
【0054】
比較例7
具体的なプロセスパラメータを表1(
図8)及び表2(
図9)に示し、プロセス過程について実施例1を参照し、作製された基板材料の特性を表3(
図10)に示す。0.5~10MPaの高圧力窒素雰囲気焼結プロセスを採用しなかった(0.3MPaのN
2雰囲気を採用した)ため、作製された基板材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下し、基板の表面粗さが増大し、製品の合格率が低下した。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素セラミック基板生地を窒化ホウ素坩堝に積み重ね、且つ隣接する窒化ケイ素セラミック基板生地間に1層の窒化ホウ素粉末がコーティングされるステップ(1)と、
段階的に真空引いた後、窒素雰囲気又は還元雰囲気で、500~900℃で剥離するステップであって、前記段階的な真空引きは、少なくとも二段階真空引き又は少なくとも三段階真空引きであり、二段階真空引きの場合に、前記段階的な真空引きのパラメータは、20~30分間真空引き、真空度を20~30kPaに達成させてから、10~20分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくし、或いは、三段階真空引きの場合に、前記段階的真空引きのパラメータは、まず10~15分間真空引き、真空度を60~80kPaに達成させてから、10~15分間真空引き、真空度を10~30kPaに達成させ、最後に10~15分間真空引き、真空度を10Paよりも小さくするステップ(2)と、
その後、窒素雰囲気で、1800~2000℃で圧力焼結し、高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ作製を実現するステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とする高性能窒化ケイ素セラミック基板のバッチ焼結方法。
【請求項2】
前記窒化ホウ素粉末のうち、O含有量が1%以下、C含有量が0.01%以下、金属不純物イオンの含有量が0.02%以下であり、前記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は1μm~5μmである、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項3】
ステップ(2)で、前記窒素雰囲気又は還元雰囲気の圧力は0.05~0.2MPaであり、前記還元雰囲気は、水素含有量が5%以下である窒素/水素の混合雰囲気であり、前記剥離の時間は1~3時間である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項4】
前記圧力焼結において窒素雰囲気圧力は0.5~10MPaであり、前記圧力焼結の時間は4~12時間である、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【請求項5】
複数の窒化ホウ素坩堝をグラファイト窯具に均一的に配置して圧力焼結を行う、請求項1に記載のバッチ焼結方法。
【国際調査報告】