(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】PD1-LAG3二重特異性抗体及びCD20 T細胞二重特異性抗体を用いる併用療法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240122BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240122BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240122BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240122BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240122BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
C07K16/46
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 G
A61K39/395 U
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/68
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540992
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022050040
(87)【国際公開番号】W WO2022148732
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペロ, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー, パトリック アレクサンダー アーロン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体及びCD20 T細胞活性化二重特異性抗体を用いる併用療法、がんの治療のためのこれらの併用療法の使用、及び併用療法を使用する方法に関する。
【選択部】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用され、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項2】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、請求項1に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項3】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、IgG FcドメインであるFcドメイン、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、前記Fcドメインが、Fc受容体への、特にFcγ受容体に対する結合を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項4】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項5】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む前記VHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む前記VLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項6】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項7】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、請求項1~3又は5のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項8】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインと
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項9】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合するFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合するFabフラグメントとを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項10】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、請求項1~6又は8又は9のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項11】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、重鎖可変領域(V
HCD3)及び軽鎖可変領域(V
LCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(V
HCD20)及び軽鎖可変領域(V
LCD20)を含む第2の抗原結合ドメインと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列、及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(V
HCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(V
LCD3)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項13】
II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が前記併用治療の前に行われ、前記前治療と前記併用治療との間の期間が、前記II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した個体におけるB細胞の減少に十分である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【請求項14】
CD20発現がんの治療に使用するための抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物であって、前記治療が、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む組成物との組み合わせでの、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む前記組成物の投与を含み、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
VLドメインであって、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、組成物。
【請求項15】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む前記VHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む前記VLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、請求項14~16に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントと
を含む、請求項14~17に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体がグロフィタマブである、請求項14~18に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体がモスネツズマブである、請求項14~18に記載の組成物。
【請求項21】
疾患、特にCD20発現がんの併用治療、逐次治療又は同時治療に使用するための、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせを含む、医薬組成物。
【請求項22】
CD20発現がん、特に非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される血液がんの治療に使用するための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
CD20発現がんを治療するための医薬の製造における、抗CD20/CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせの使用であって、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、使用。
【請求項24】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントと
を含む、請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
対象においてCD20発現がんを治療するための方法であって、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を前記対象に投与することを含み、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、方法。
【請求項27】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントと
を含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体がグロフィタマブである、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、静脈内投与又は皮下投与される、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体と同時に、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の前に、又は前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の後に投与される、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PD1-LAG3二重特異性抗体及びCD20 T細胞活性化二重特異性抗体を用いる併用療法、がんの治療のためのこれらの併用療法の使用、及び併用療法を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
B細胞増殖性障害は、白血病及びリンパ腫の両方を含む不均一な悪性腫瘍群を記載する。リンパ腫はリンパ細胞から発生し、2つの主要なカテゴリーである、ホジキンリンパ腫(HL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む。米国では、B細胞起源のリンパ腫は、全ての非ホジキンリンパ腫症例の約80~85%を構成し、起源のB細胞における遺伝子型及び表現型の発現パターンに基づいて、B細胞サブセット内にかなりの不均一性がある。例えば、B細胞リンパ腫サブセットには、濾胞性リンパ腫(FL)又は慢性リンパ性白血病(CLL)、並びにより侵攻性のサブタイプであるマントル細胞リンパ腫(MCL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの増殖の遅い緩徐進行型及び不治の疾患が含まれる。B細胞増殖性障害の治療のための様々な薬剤の利用可能性にもかかわらず、患者における寛解を延長し、治癒率を改善するための安全で効果的な治療法の開発が継続的に必要とされている。
【0003】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、B細胞上に発現するCD20及びT細胞上に存在するCD3イプシロン鎖(CD3ε)を標的とする分子である。同時の結合は、B細胞のT細胞活性化及びT細胞媒介性殺傷をもたらす。CD20+B細胞の存在下では、循環しているか組織内であるかにかかわらず、薬理学的に活性な用量のCD20-CD3二重特異性抗体は、T細胞活性化及び関連するサイトカイン放出を引き起こす。末梢血におけるB細胞枯渇と並行して、CD20 T細胞活性化二重特異性抗体は、最初の投与後24時間以内に末梢血中のT細胞の一過性減少及びサイトカイン放出のピークをもたらし、続いて、急速なT細胞回復及び72時間以内にサイトカインレベルのベースラインへの回帰をもたらす。T細胞活性化二重特異性抗体による治療中の2つの主要な報告された逃避機構には、制御性T細胞(Treg)の頻度の増加、及びB前駆細胞上のPD-L1発現レベルの増加が含まれる。Tregは、CTLA4及び他の機構を介してエフェクターT細胞の活性化を抑制する。しかしながら、T細胞が完全に活性化される場合でさえ、PD1のアップレギュレーションは、腫瘍細胞によって発現されるPD-L1に結合した後に阻害性シグナル伝達をもたらすであろう。これらの機構は、エフェクターT細胞の抑制及び疲弊、又は機能不全を誘導し、これらはチェックポイント遮断により治療することができる。
【0004】
疲弊したT細胞は、阻害性分子PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)の持続的発現を特徴とし、PD-1及びPD-L1(PD-1リガンド)相互作用の遮断がT細胞疲弊を逆転させ、抗原特異的T細胞応答を回復させ得ることが見出された。しかしながら、PD-1-PD-L1経路単独を標的とすることは、おそらく耐性機構、MDSCの免疫抑制活性、及び/又は制御性T細胞に起因して、T細胞疲弊の逆転を常にもたらすとは限らない。
【0005】
リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3又はCD223)は、IL-2依存性NK細胞株で発現する分子を選択的に単離するように設計された実験で、最初に発見された(Triebel F et al.,Cancer Lett.235(2006),147-153)。LAG3は、CD4に対して構造相同性を有し、4つの細胞外免疫グロブリンスーパーファミリー様ドメイン(D1~D4)を有する、固有の膜貫通タンパク質である。この膜の遠位にあるIgGドメインは、短いアミノ酸配列(他のIgGスーパーファミリータンパク質にはみられない、いわゆるエキストラループ)を含む。細胞内ドメインは、LAG3がT細胞機能に対して負の影響を与えることが必要とされる固有のアミノ酸配列(KIEELE、配列番号103)を含む。LAG3は、メタロプロテアーゼによって接続ペプチド(CP)で開裂され、可溶性形態を生成することができ、この形態は、血清中で検出可能である。CD4と同様に、LAG3タンパク質は、MHCクラスII分子に結合するが、親和性は、より高く、CD4とは別の部位で結合する(Huard et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)、5744-5749)。LAG3は、T細胞、B細胞、NK細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)で発現し、T細胞活性化に従ってアップレギュレーションする。LAG3は、T細胞の機能とT細胞のホメオスタシスを調節する。免疫不応答性であるか、又は機能不全を示す従来のT細胞の一部は、LAG3を発現する。LAG3+T細胞は、腫瘍部位に、また、慢性ウイルス感染中に豊富に含まれる(Sierro et al Expert Opin.Ther.Targets 15(2011)、91-101)。LAG3は、CD8 T細胞の疲弊において、ある役割を果たすことが示されている(Blackburn et al.Nature Immunol.10(2009)、29-37)。従って、LAG3の活性をアンタゴナイズし、腫瘍に対する免疫応答を生成し、回復させるために使用可能な抗体が必要とされている。
【0006】
機能不全腫瘍特異的Tリンパ球上のPD-1及びLAG-3の両方を標的とすることによって、PD1-LAG3は、有効な抗腫瘍免疫応答を回復させ、現在利用可能なチェックポイント阻害剤よりも多くのがん患者に生存利益を提供することを目的とする。PD-1/LAG-3共発現機能不全T細胞を優先的に標的化し、潜在的に腫瘍微小環境におけるLAG-3発現Tregの標的化を減少させることによって、PD1-LAG3 BsAbは、抗腫瘍免疫応答を回復させながらTreg媒介免疫抑制効果の再活性化を回避し得る。
【0007】
有効なCD20発現がん治療法が存在するが、最適以下の応答、再発性難治性疾患、及び/又は1つ以上の治療剤に対する耐性は依然として課題である。さらに、より高いリスク及び細胞遺伝学的異常を有する患者は、承認された治療法に対する最適未満の応答、並びにより短い奏効期間及び無増悪生存期間を依然として有する。したがって、血液悪性腫瘍の治療のための、より効果的で安全かつ永続的な標的化併用療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体とを用いる併用療法に関する。本明細書に記載の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、より良好な選択性及び有効性を提供するので、抗PD1抗体よりも有利であることが分かった。これらの抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、更に、シンク効果の低下(T細胞によるインターナリゼーションの低下によって示される)を示すことを特徴とし、これらの二重特異性抗体は、従来のT細胞に対して、Tregに対するよりも優先的に結合し、Treg抑制からT細胞エフェクター機能を守ることができ、腫瘍特異的なT細胞エフェクター機能の増加及びin vivoでの腫瘍根絶の増加を示す。これらの特性に基づいて、それらは、T細胞二重特異性抗体、特に抗CD20/抗CD3二重特異性抗体との組み合わせで使用するのに有利である。
【0009】
がん、特にCD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用される、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が本明細書に記載される。
【0010】
本発明は、本明細書に上で規定するような方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0011】
一態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が単一の組成物で一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物で別々に投与される、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0012】
さらに、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用され、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、IgG FcドメインであるFcドメイン、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。より詳しくは、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメインを含む。
【0013】
一態様において、本明細書で上に記載される方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインであって、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含むVLドメインと
を含む、第2の抗原結合ドメインを含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0014】
別の態様において、本明細書に開示される方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0015】
更なる態様において、本明細書に記載される使用のための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインであって、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、第2の抗原結合ドメインを含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0016】
追加の態様において、本明細書に記載される方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインであって、
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、第2の抗原結合ドメインを含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0017】
さらに、本明細書に開示される方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインと
を含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0018】
更なる態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合するFabフラグメント及びLAG3に特異的に結合するFabフラグメントを含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。一態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、PD1に特異的に結合するFabフラグメントを含み、可変ドメインVL及びVHは、VLが重鎖の一部であり、VHが軽鎖の一部であるように互いに置き換えられている。
【0019】
別の態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体がPD-1に対する一価結合及びLAG3に対する一価結合を含む、本明細書で上に開示した方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0020】
更なる態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体がヒト化抗体又はキメラ抗体である、本明細書で上に開示した方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。特に、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体はヒト化抗体である。さらに、本明細書で上に記載される抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含むFcドメインを含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。一態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、ノブ・イントゥ・ホール法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EUナンバリング)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を含む。
【0021】
特定の態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
(a)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0022】
より詳しくは、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む。
【0023】
さらに、C20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用するためのものであり、かつ、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、重鎖可変領域(VHCD3)及び軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(VHCD20)及び軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインとを含む、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む、第1の抗原結合ドメインを含む。一態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列、及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。特に、第2の抗原結合ドメインは、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む。更なる態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD20に結合する第3の抗原結合ドメインを含む。別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。
【0024】
特定の一態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、グロフィタマブである。別の態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、モスネツズマブである。
【0025】
更なる態様において、CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用され、組み合わせが約1週間~3週間の間隔で投与するためのものである、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が提供される。
【0026】
更に別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD20発現がんを治療する方法に使用するためのものであり、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が併用治療の前に行われ、前治療と併用治療との間の期間が、II型抗CD20抗体に応答した個体におけるB細胞の減少に十分である。好ましくは、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0027】
更なる一態様において、CD20発現がんの治療に使用するための抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物であって、当該治療が、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む組成物との組み合わせでの、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む当該組成物の投与を含み、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、組成物が提供される。
【0028】
一態様において、組成物は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む。更なる一態様において、組成物は、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含むVLドメインと
を含む、第2の抗原結合ドメインを含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む。
【0029】
一態様において、組成物は、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む。
【0030】
特定の一態様において、組成物は、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントと
を含む抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む。
【0031】
さらに、CD20発現がんの治療に使用するための抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物であって、治療が、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む組成物との組み合わせでの抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物の投与を含み、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、重鎖可変領域(VHCD3)及び軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(VHCD20)及び軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインとを含む、組成物が提供される。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む、第1の抗原結合ドメインを含む。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。特に、第2の抗原結合ドメインは、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD20に結合する第3の抗原結合ドメインを含む。別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。特定の一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はグロフィタマブである。別の特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はモスネツズマブである。
【0032】
更に別の態様において、CD20発現がんの治療に使用するための抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物であって、当該治療が、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む組成物との組み合わせでの抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む組成物の投与を含み、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が併用治療の前に行われ、前治療と併用治療との間の期間が、II型抗CD20抗体に応答した個体のB細胞の減少に十分である、組成物が提供される。好ましくは、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0033】
更なる態様において、(A)有効成分としての抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、薬学的に許容され得る担体とを含む第1の組成物、及び(B)疾患、特にCD20発現がんの併用治療、逐次治療又は同時治療に使用するための、有効成分としての抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体と、薬学的に許容され得る担体とを含む第2の組成物を含む、医薬製品が提供される。
【0034】
別の態様において、疾患、特にCD20発現がんの併用治療、逐次治療又は同時治療に使用するための、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせを含む、医薬組成物が提供される。特に、医薬組成物は、B細胞増殖性障害、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患の治療に使用するためのものである。
【0035】
別の態様において、増殖性疾患を治療するため又はその進行を遅延するため、特にCD20発現がんを治療するための医薬の製造における、抗CD20/CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせの使用であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、使用が提供される。
【0036】
更なる一態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインであって、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含むVLドメインと
を含む、第2の抗原結合ドメインを含む。
【0037】
別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせの、増殖性疾患を治療するため、又は増殖性疾患の進行を遅延させるため、特にCD20発現がんを治療するための医薬の製造における使用であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むPD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むLAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含む、使用が提供される。
【0038】
更に別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせの、増殖性疾患を治療するための、又はその進行を遅延させるための、特にCD20発現がんを治療するための医薬の製造における使用であって、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が、併用治療の前に行われ、前治療と併用治療との間の期間が、II型抗CD20抗体に応答した個体におけるB細胞の減少のために十分である使用が提供される。好ましくは、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0039】
更なる態様において、対象においてCD20発現がんを治療するための方法であって、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を対象に投与することを含み、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、方法が提供される。
【0040】
一態様において、方法であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含むVHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含むVLドメインと
を含む、方法が提供される。
【0041】
別の態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含む方法が提供される。
【0042】
一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、重鎖可変領域(VHCD3)及び軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(VHCD20)及び軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインとを含む方法が提供される。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む、第1の抗原結合ドメインを含む。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。特に、第2の抗原結合ドメインは、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD20に結合する第3の抗原結合ドメインを含む。別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。特定の一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はグロフィタマブである。別の特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はモスネツズマブである。
【0043】
更に別の態様において、対象においてCD20発現がんを治療する方法であって、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を対象に投与することを含み、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が併用治療の前に行われ、前治療と併用治療との間の期間が、II型抗CD20抗体に応答して個体のB細胞を減少させるのに十分である方法が提供される。好ましくは、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0044】
一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、静脈内投与又は皮下投与される。別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体と同時に、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の前に、又は抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の後に投与される。
【0045】
上の態様のいずれかにおいて、個体は、好ましくは哺乳動物であり、特にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、実施例で使用される特定の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体(
図1A)、及び特定の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体(
図1B)の概略図である。これらの分子は、それぞれ実施例2及び実施例1に更に詳細に記載されている。
図1Aは、1+1フォーマットの抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を示し、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)を含み、LAG3結合ドメインは、正しい対形成を補助するために、アミノ酸変異を有するCH1ドメインとCKドメインとを含む(「帯電バリアント」)。Fc部分は、ノブ・イントゥ・ホール変異(黒色矢印によって示される)と、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に無効にするアミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gとを含む。
図1Bでは、2+1フォーマットの例示的な二重特異性抗CD20/抗CD3抗体が示される(CD20 TCBと命名)。
【
図2】
図2は、B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共培養したヒトCD4 T細胞による細胞傷害性グランザイムB放出に対する、CD20 TCBとの組み合わせでの抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体(PD1-LAG3 BsAb)の効果を示す。PD1-LAG3 BsAbをPD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ及び親PD-1抗体)と比較する。
【
図3】
図3は、WSU-DLCL2担持完全ヒト化NSGマウスにおけるCD20 TCBとの組み合わせでのPD1-LAG3 BsAb対PD1抗体のin vivo有効性研究のプロトコルを示す図である。以下の表では、異なる組合せを受けたマウスのサブグループを定義する。実験を実施例4に記載する。
【
図4】
図4は、研究の結果を示す。CD20を発現する1.5×10
6個のWSU-DLCL2細胞をヒト化NSGマウスに皮下注射した。腫瘍が約350~400mm
3の平均体積に達した後(14日目)、マウスを、以下を受ける6つの群に無作為化した:A)対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS;ビヒクル);B)CD20-TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)、C)CD20-TCB(0.15 mg/kg、1回/週、i.v.)+ニボルマブ(1.5mg/kg、1回/週、i.v.)、D)CD20-TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+ニボルマブ(1.5mg/kg、1回/週、i.p.)+抗LAG3(1.5mg/kg、1回/週、i.v.)、E)CD20-TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+PD1-LAG3 BsAb(1.5mg/kg、1回/週、i.v.)、F)CD20-TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+PD1-LAG3 BsAb(3mg/kg、1回/週、i.v.)。腫瘍体積をデジタルカリパスによって週に3回測定した。データを平均腫瘍体積及び平均の標準誤差(+/-SEM)として示す。
【
図5】
図5A~
図5Fでは、14日目から45日目までの期間にわたる腫瘍体積(mm
3+/-SEM)の測定値が、PD1-LAG3 BsAbで治療した群における抗腫瘍応答の均一性を示す各個々の動物について示される。腫瘍増殖曲線は、ビヒクル群については
図5A、CD20 CD3 TCB単独(0.15mg/kg)については
図5B、CD20 CD3 TCBとニボルマブとの組み合わせ(1.5mg/kg)については
図5C、CD20 CD3 TCBとニボルマブ及びLAG3(1.5mg/kg)との組み合わせ(1.5mg/kg)については
図5D、CD20 CD3 TCBとPD1/LAG3 BsAbとの組み合わせについては
図5E(1.5mg/kg)及び
図5F(3mg/kg PD1/LAG3 BsAb)に示される。
【
図6】
図6は、3mg/kgのCD20 CD3 TCBとPD1/LAG3 BsAbとの組み合わせが、ニボルマブ又はニボルマブ+抗LAG3との組み合わせでの治療と比較して、統計的に有意な腫瘍防御をもたらしたことを示す。この分析のため、腫瘍体積データを新しい終点を導入して変換した。すなわち、本発明者らは、各動物の最後に観察された腫瘍体積が800mm3未満であるかどうか、又はバイナリ読み出し及び低サイズ腫瘍の割合を提供しないかどうかを評価した。次いで、このエンドポイントを、Chi2検定に基づくペアワイズ群比較に供した。
【
図7】
図7は、OCI-Ly18を担持する完全ヒト化NSGマウスにおける、PD1-LAG3 BsAb又はペンブロリズマブ+抗LAG3との組み合わせでのCD20 TCBのin vivo有効性研究のプロトコルを示す。以下の表では、異なる組合せを受けたマウスのサブグループを定義する。実験を実施例5に記載する。
【
図8】
図8は、研究の結果を示す。ヒト化NSGマウスに、CD20を発現するOCI-Ly18リンパ腫細胞を皮下注射した。腫瘍が約200mm
3の平均体積に達した後(10日目)、マウスを無作為化し、治療薬を注射した。腫瘍体積(mm
3+/-SEM)の測定値を、マウス群内の平均体積として示す。少なくとも6匹(ビヒクルの場合)又は7匹(治療群の場合)のマウス/群/時点があるまで、腫瘍サイズを測定した。ビヒクルを26日目まで、治療群を35日目まで追跡した。データを平均腫瘍体積及び平均の標準誤差(+/-SEM)として示す。
【
図9】
図9A~
図9Dでは、10日目から35日目までの期間にわたる腫瘍体積(mm
3+/-SEM)の測定値が各個々の動物について示される。腫瘍増殖曲線を、ビヒクル群については
図9Aに、CD20 CD3 TCB単独については
図9Bに、CD20 CD3 TCBとPD1-LAG3 BsAbとの組み合わせについては
図9Cに、CD20 CD3 TCBとペンブロリズマブ及び抗LAG3との組み合わせについては
図9Dに示す。
【
図10】
図10は、オビツヌツズマブによる前治療を使用した場合の、OCI-Ly18を担持する完全ヒト化NSGマウスにおけるPD1-LAG3 BsAbとの組合せと比較したCD20 TCB単独のin vivo有効性研究のプロトコルを示す。以下の表では、異なる組合せを受けたマウスのサブグループを定義する。実験を実施例6に記載する。
【
図11】
図11は、研究の結果を示す。ヒト化NSGマウスに、CD20を発現するOCI-Ly18リンパ腫細胞を皮下注射した。腫瘍が約400mm
3の平均体積に達した後(17日目)、マウスを無作為化し、治療法を実験レイアウトに従って注射した。腫瘍体積(mm
3+/-SEM)の測定値を、マウス群内の平均体積として示す。腫瘍サイズを、治療群については35日目まで、ビヒクル群については26日目まで測定した。
【
図12】
図12A~
図12Cでは、17日目から35日目までの期間にわたる腫瘍体積(mm
3+/-SEM)の測定値が各個々の動物について示される。腫瘍増殖曲線を、
図12Aにおけるビヒクル群、
図12Bにおけるオビヌツズマブ及びCD20 CD3 TCB、並びに
図12Cにおけるオビヌツズマブと、CD20 CD3 TCB及びPD1-LAG3 BsAbとの組み合わせについて示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
定義
他の意味であると定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野で一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合にはいつでも、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆に、複数形で使用される用語は、単数形も含む。
【0048】
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されないが、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体及び多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体を除き、そのようなバリアントは、一般的に、少量存在する。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「単一特異性」抗体という用語は、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を意味する。「二重特異性」という用語は、抗体が、少なくとも2つの別個の抗原決定基、例えば、異なる抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合している抗体重鎖可変ドメイン(VH)と抗体軽鎖可変ドメイン(VL)の対によってそれぞれ形成される2つの結合部位に特異的に結合することができることを意味する。そのような二重特異性抗体は、1+1フォーマットでである。他の二重特異性抗体フォーマットは、2+1フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する1つの結合部位とを含む)、又は2+2フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位とを含む)である。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。
【0051】
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の結合ドメインの存在を示す。この場合、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、抗原結合分子中のそれぞれ2個の結合ドメイン、4個の結合ドメイン及び6個の結合ドメインの存在を示す。本発明の二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」又は「多価」(例えば、「四価」又は「六価」)であってもよい。特定の態様において、本発明の抗体は、2つ以上の結合部位を有し、二重特異性である。すなわち、2個より多い結合部位が存在する場合であっても(すなわち、抗体は三価又は多価である)、抗体は、二重特異性であってもよい。
【0052】
「全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」という用語は、天然抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgGクラス抗体は、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖で構成される。N末端からC末端まで、それぞれの重鎖は、可変領域(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)(重鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。同様に、N末端からC末端まで、それぞれの軽鎖は、可変領域(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)、続いて軽鎖定常ドメイン(CL)(軽鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。抗体の重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに分けられてもよく、このいくつかは、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)等のサブタイプに更に分けられてもよい。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。
【0053】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、交差Fabフラグメント、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、抗体フラグメントから作られる多重特異性抗体、及び単一ドメイン抗体が挙げられる。特定の抗体フラグメントの総説としては、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照されたい。scFvフラグメントの総説としては、例えば、Plueckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。また、国際公開第93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFab及びF(ab’)2フラグメントの説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい2つの抗原結合ドメインを含む抗体フラグメントであり、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に説明されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照)。これに加え、抗体フラグメントは、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)単鎖ポリペプチドを含み、それによって、完全長抗体の抗原結合特性を与える。抗体フラグメントは、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化、及び組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0054】
インタクト抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合フラグメントを生じ、これは、それぞれ重鎖及び軽鎖可変ドメインと、更に、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む「Fab」フラグメントと呼ばれる。したがって、本明細書で使用される場合、「Fabフラグメント」という用語は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖フラグメントと、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体フラグメントを指す。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を担持するFab’フラグメントである。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFabフラグメント)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2フラグメントが得られる。
【0055】
「クロスFabフラグメント」又は「xFabフラグメント」又は「クロスオーバーFabフラグメント」という用語は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されたFabフラグメントを指す。クロスオーバーFab分子の2つの可能な鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の可変領域は、置き換わっており、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(VLVH)とも呼ばれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が置き換わっている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0056】
「単鎖Fabフラグメント」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、当該抗体ドメイン及び当該リンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:(a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、(b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、(c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又は(d)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;かつ当該リンカーは、少なくとも30アミノ酸、好ましくは32~50アミノ酸のポリペプチドである。当該単鎖Fabフラグメントは、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化されている。これに加え、これらの単鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabatナンバリングによれば、可変重鎖の位置44及び可変軽鎖の位置100)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、更に安定化されるであろう。
【0057】
「クロスオーバー一本鎖Fabフラグメント」又は「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、当該抗体ドメイン及び当該リンカーは、N末端からC末端への方向で、以下の順序:(a)VH-CL-リンカー-VL-CH1及び(b)VL-CH1-リンカー-VH-CLの1つを有する。ここで、VHとVLは、一緒に、ある抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成し、当該リンカーは、少なくとも30アミノ酸のポリペプチドである。これに加え、これらのx-scFab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabatナンバリングによれば、可変重鎖の位置44及び可変軽鎖の位置100)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、更に安定化されるであろう。
【0058】
「単鎖可変フラグメント(scFv)」は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドを用いて接続された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可撓性のためにグリシンが豊富であり、溶解度のためにセリン又はスレオニンが豊富であり、VHのN末端とVLのC末端とを、又はその逆で接続することができる。このタンパク質は、定常領域が除去され、リンカーが導入されているが、元々の抗体の特異性を保持している。scFv抗体は、例えば、Houston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-96)に記載されている。これに加え、抗体フラグメントは、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)単鎖ポリペプチドを含み、それによって、完全長抗体の抗原結合特性を与える。
【0059】
「足場抗原結合タンパク質」は、当該技術分野で既知であり、例えば、フィブロネクチン及び設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、抗原結合ドメインの代替的な足場として使用されてきた。例えば、Gebauer and Skerra,Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.Curr Opin Chem Biol 13:245-255(2009)及びStumpp et al.,Darpins:A new generation of protein therapeutics.Drug Discovery Today 13:695-701(2008)を参照されたい。本発明の一態様において、足場抗原結合タンパク質は、CTLA-4(エビボディ)、リポカリン(アンチカリン)、プロテインA由来分子、例えば、プロテインAのZ-ドメイン(アフィボディ)、A-ドメイン(アビマー/マキシボディ)、血清トランスフェリン(トランスボディ);設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、抗体軽鎖又は重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ、aVH)、VNARフラグメント、フィブロネクチン(アドネクチン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン);新規抗原受容体ベータ-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNARフラグメント)、ヒトγ-クリスタリン又はユビキチン(アフィリン分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクニッツ型ドメイン、ミクロボディ、例えば、ノッチンファミリー由来のタンパク質、ペプチドアプタマー及びフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群から選択される。CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4+T細胞で発現するCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは、可変ドメイン様のIg折りたたみを有する。抗体のCDRに対応するループは、異なる結合特性を与えるために、異種配列と置換されてもよい。異なる結合特異性を有するように操作されたCTLA-4分子も、エビボディとして知られている(例えば、米国特許第7166697号B1)。エビボディは、抗体(例えば、ドメイン抗体)の単離された可変領域とほぼ同じ大きさである。更なる詳細については、Journal of Immunological Methods 248(1-2)、31-45(2001)を参照されたい。リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の小さな疎水性分子を運ぶ細胞外タンパク質のファミリーである。リポカリンは、剛性ベータ-シート二次構造を有し、円錐構造の開放端に多くのループがあり、このループは、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。アンチカリンは、160~180アミノ酸の大きさであり、リポカリンから誘導される。更なる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482:337-350(2000)、米国特許第7250297号B1及び米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。アフィボディは、抗原に結合するように操作することが可能な、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAに由来する足場である。ドメインは、約58アミノ酸の3つの螺旋形の束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって作られている。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.2004,17,455-462及び欧州特許出願公開第1641818号A1を参照されたい。アビマーは、Aドメイン足場ファミリーに由来する複数ドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは、規定のジスルフィド結合した構造に適合する。多様性は、A-ドメインのファミリーによって示される天然の変動のシャッフリングによって作られる。更なる詳細については、Nature Biotechnology 23(12)、1556-1561(2005)及びExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6)、909-917(2007年6月)を参照されたい。トランスフェリンは、モノマー血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、許容状態の表面ループへのペプチド配列の挿入によって異なる標的抗原に結合するように操作可能である。操作されたトランスフェリン足場の例としては、トランスボディが挙げられる。更なる詳細については、J.Biol.Chem 274、24066-24073(1999)を参照されたい。設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、細胞骨格の内在性膜タンパク質の付着に介在するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのアルファらせんとベータ-ターンとからなる33残基のモチーフである。単一のアンキリンリピートは、各反復の第1のアルファらせん及びベータ-ターンの中の残基をランダム化することによって異なる標的抗原に結合するように操作することができる。その結合界面は、モジュールの数を増やすことによって、増加させることができる(親和性成熟方法)。更なる詳細については、J.Mol.Biol.332、489-503(2003)、PNAS 100(4)、1700-1705(2003)及びJ.Mol.Biol.369、1015-1028(2007)及び米国特許出願公開第20040132028号A1を参照されたい。
【0060】
単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。第1の単一ドメインは、ラクダ由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来した(ナノボディ又はVHHフラグメント)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律的なヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来VNARフラグメントを含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するように操作可能な足場である。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列を有する骨格からなる。ベータ-サンドイッチの片方の端にある3つのループを、アドネクチンが目的の治療標的を特異的に認識することができるように操作することができる。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.18、435-444(2005)、米国特許出願公開第20080139791号、国際公開第2005056764号及び米国特許第6818418号B1を参照されたい。ペプチドアプタマーは、定常足場タンパク質、典型的には、活性部位に挿入される拘束された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。更なる詳細について、Expert Opin.Biol.Ther.5、783-797(2005)を参照されたい。ミクロボディは、3~4のシステイン架橋を含む、25~50アミノ酸長の天然に存在するミクロタンパク質に由来し、ミクロタンパク質の例としては、KalataBI、コノトキシン及びノッチンが挙げられる。ミクロタンパク質は、ミクロタンパク質の全体的な折りたたみに影響を与えることなく、25アミノ酸までを含むように操作することができるループを有する。操作されたノッチンドメインの更なる詳細については、国際公開第2008098796号を参照されたい。
【0061】
参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合分子」は、競合アッセイにおいて、参照分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする抗原結合分子を指し、逆に、参照分子は、競合アッセイにおいて、抗原結合分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする。
【0062】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部位」という用語は、抗原決定基に特異的に結合する抗原結合分子の一部を指す。より詳しくは、「抗原結合ドメイン」という用語は、ある抗原の一部又は全てに特異的に結合し、ある抗原の一部又は全てに対して相補的な抗体の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定の部分のみに結合してもよく、この部分は、エピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と、抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。一態様において、抗原結合ドメインは、その抗原に結合し、その機能をブロックするか、又は部分的にブロックすることができる。PD1及びLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、本明細書で更に定義するように、抗体及びそのフラグメントを含む。これに加え、抗原結合ドメインは、足場抗原結合タンパク質、例えば、設計された反復タンパク質又は設計された反復ドメインに基づく結合ドメインを含んでいてもよい(例えば、国際公開第2002/020565号を参照)。
【0063】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」という用語は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分-抗原複合体を形成する、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される立体配座構造)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染した細胞の表面上に、他の疾患細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中で遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)中に認めることができる。特に指定されない限り、本明細書において抗原として有用なタンパク質は、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意の天然形態のタンパク質であってもよい。特定の実施形態において、抗原は、ヒトタンパク質である。本明細書において特定のタンパク質が言及される場合、この用語は「全長」の未処理のタンパク質と、細胞内でのプロセシングにより得られる任意の形態のタンパク質とを包含する。この用語はまた、天然に存在するタンパク質バリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントを包含する。
【0064】
「特異的結合」とは、結合が抗原について選択的であり、望ましくない又は非特異的な相互作用とは区別可能であることを意味する。抗原結合分子が特定の抗原に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当該技術分野で知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))によって測定することができる。一実施形態において、無関係なタンパク質に対する抗原結合分子の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗原結合分子の結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗原に結合する分子は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-7M以下、例えば、10-7M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。
【0065】
「親和性」又は「結合親和性」は、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)と、その結合対(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に指定されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xのその結合対Yに対する親和性は、一般的に、解離定数(Kd)によって表すことができ、脱離速度定数と解離速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比が同じである限り、同等の親和性が異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当該技術分野で一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0066】
本明細書で使用される場合、ある抗体の「高親和性」という用語は、標的抗原に対するKdが10-9M以下、更により詳しくは10-10M以下の抗体を指す。「低親和性」の抗体は、Kdが10-8以上の抗体を指す。
【0067】
「親和性成熟した」抗体は、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の変更を有する抗体を指し、これに対して、親抗体は、そのような変更を有しておらず、そのような変更によって、抗原に対する抗体の親和性が向上する。
【0068】
「CD20」は、Bリンパ球表面抗原B1又は白血球表面抗原Leu-16としても知られているBリンパ球抗原CD20を指し、特に指定されない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CD20を含む。ヒトCD20のアミノ酸配列は、Uniprot寄託番号P11836(バージョン149、配列番号61)に示されている。CD20は、プレBリンパ球及び成熟Bリンパ球上に発現される約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても知られる膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1である。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。この新生タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似のイントロン/エクソンスプライス境界によって特徴付けられ、造血細胞及び非リンパ組織の間で固有の発現パターンを示す。この遺伝子は、B細胞の形質細胞への発達及び分化において役割を果たすBリンパ球表面分子をコードする。このファミリーメンバーは、ファミリーメンバーのクラスターの中で11q12に局在している。この遺伝子の選択的スプライシングは、同じタンパク質をコードする2つの転写バリアントをもたらす。「CD20」という用語は、「全長」の、未処理CD20、及び、細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のCD20を包含する。この用語は、CD20の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。
【0069】
「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」という用語は、抗体がCD20の標的化において診断剤及び/又は治療剤として有用であるような充分な親和性で、CD20に結合可能である抗体を指す。一実施形態において、無関係な非CD20タンパク質に対する抗CD20抗体の結合度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるCD20に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態において、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態において、抗CD20抗体は、異なる種に由来するCD20間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0070】
「II型抗CD20抗体」とは、Cragg et al.,Blood 103(2004)2738-2743;Cragg et al.,Blood 101(2003)1045-1052、Klein et al.,mAbs 5(2013),22-33に記載される、II型抗CD20抗体の結合特性及び生物学的活性を有する抗CD20抗体を意味し、以下の表1に要約する。
【表A】
*IgG
1アイソタイプの場合
【0071】
II型抗CD20抗体の例としては、例えば、オビヌツズマブ(GA101)、トシツムマブ(B1)、ヒト化B-Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示されているようなキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示されているような)及びAT80 IgG1が挙げられる。
【0072】
一態様において、II型抗CD20抗体は、配列番号55の重鎖可変領域配列(VHCD20)及び配列番号56の軽鎖可変領域配列(VLCD20)を含む。別の態様において、II型抗CD20抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように改変される。一態様において、II型抗CD20抗体のFc領域中のN結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている。
【0073】
特定の態様において、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブ(推奨INN,WHO Drug Information,Vol.26,No.4,2012,p.453)である。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブはGA101と同義である。商品名は、GAZYVA(登録商標)又はGAZYVARO(登録商標)である。これは、以前の全てのバージョン(例えば、Vol.25,No.1,2011,p.75-76)に置き換わり、以前はアフツズマブとして知られていた(推奨 INN,WHO Drug Information,Vol.23,No.2,2009,p.176;Vol.22,No.2,2008,p.124)。一態様において、II型抗CD20抗体は、配列番号62のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一態様において、II型抗CD20抗体はトシツモマブである。
【0074】
I型抗CD20抗体の例としては、例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、カラツズマブ、オクレリズマブ、PRO131921、ブリツキシマブ、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示されているもの)、2F2 IgG1(国際公開第2004/035607号及び国際公開第2005/103081号に開示されているもの)、及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示されているもの)が挙げられる。
【0075】
「ヒト化B-Ly1抗体」という用語は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されるヒト化B-Ly1抗体を指し、それは、マウスモノクローナル抗CD20抗体B-Ly1(マウス重鎖(VH)の可変領域:配列番号64;マウス軽鎖(VL)の可変領域:配列番号65:(Poppema,S.and Visser,L.,Biotest Bulletin 3(1987)131-139を参照)から、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化及びその後のヒト化によって得られたものである(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号を参照)。これらの「ヒト化B-Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に詳細に開示されている。
【0076】
「減少」という用語(及び「減少する」又は「減少すること」 などのその文法的変形)、例えば、B細胞の数又はサイトカイン放出の減少は、当技術分野で公知の適切な方法によって測定される場合、それぞれの量の減少を指す。明確にするために、この用語は、0までの減少(又は分析方法の検出限界未満)、すなわち完全な消失又は排除も含む。逆に、「増加した」とは、それぞれの量の増加を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面に提示される抗原決定基を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「T細胞活性化治療剤」は、対象にT細胞活性化を誘導することのできる治療剤、特に対象にT細胞活性化を誘導するために設計された治療剤を指す。T細胞活性化治療剤の例には、CD3等の活性化T細胞抗原、及びCD20又はCD19等の標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体が含まれる。更なる例としては、T細胞活性化ドメインと、CD20又はCD19などの標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分とを含むキメラ抗原受容体(CAR)が挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「活性化T細胞抗原」は、Tリンパ球,特に細胞傷害性Tリンパ球によって発現される抗原決定基を指し,抗原結合分子との相互作用時にT細胞活性化を誘導又は増強することができる。具体的には、抗原結合分子のT細胞活性化抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達のカスケードをトリガーすることによりT細胞活性化を誘導することができる。例示的な活性化T細胞抗原はCD3である。
【0080】
特に指定されない限り、「CD3」という用語は、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD3を指す。この用語は、「全長」の、未処理のCD3、及び、細胞内でのプロセシングによりもたらされる任意の形態のCD3を包含する。この用語は、CD3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一実施形態において、CD3は、ヒトCD3、特にヒトCD3のイプシロンサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号P07766(バージョン144)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1に示されている。配列番号66も参照されたい。カニクイザル[Macaca fascicularis]CD3εのアミノ酸配列は、NCBI GenBank番号BAB71849.1に示されている。配列番号67も参照されたい。
【0081】
「PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体」、「PD1及びLAG3に特異的に結合する二重特異性抗体」、「PD1及びLAG3に特異的な二重特異性抗原結合分子」又は「抗PD1/抗LAG3抗体」は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、PD1及びLAG3に、抗体がPD1及びLAG3を標的とする際に診断及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性で結合することが可能な二重特異性抗体を指す。
【0082】
「PD1」という用語は、プログラム細胞死タンパク質1としても知られ、1992年に最初に記述された288アミノ酸のI型膜タンパク質である(Ishida et al.,EMBO J.,11(1992),3887-3895)。PD-1は、T細胞制御因子の伸長したCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、2つのリガンドPD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)を有する。このタンパク質の構造は、細胞外IgVドメインと、その後に膜貫通領域と、細胞内尾部とを含む。細胞内尾部は、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ及び免疫受容体チロシン系スイッチモチーフ中に位置する2つのリン酸化部位を含み、PD-1がTCRシグナルを負の方向に制御することを示唆している。このことは、リガンド結合の際の、PD-1の細胞質尾部に対するSHP-1及びSHP-2ホスファターゼの結合に一致している。PD-1は、ナイーブT細胞では発現しないが、T細胞受容体(TCR)が介在する活性化に従ってアップレギュレーションされ、活性化したT細胞及び疲弊したT細胞の両方で観察される(Agata et al.,Int.Immunology 8(1996)、765-772)。これらの疲弊したT細胞は、機能不全の表現型を有し、適切に応答することができない。PD-1は、比較的広い発現パターンを有するが、その最も重要な役割は、T細胞に対する共阻害受容体としての役割であろう(Chinai et al、Trends in Pharmacological Sciences 36(2015)、587-595)。したがって、現在の治療手法は、T細胞応答を向上させるために、PD-1とそのリガンドとの相互作用をブロックすることに集中している。「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「PDCD1」、「hPD-1」及び「hPD-I」という用語は、相互に置き換え可能に使用することができ、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、PD-1と共通の少なくとも1つのエピトープを有するアナログを含む。ヒトPD1のアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号Q15116(配列番号68)に示される。
【0083】
「抗PD1抗体」及び「PD1に結合する抗原結合ドメインを含む抗体」という用語は、抗体が、PD1を標的とする際に診断及び/又は治療剤として有用であるように十分な親和性で、PD1(特に、細胞表面で発現するPD1ポリペプチド)に結合することが可能な抗体を指す。一態様において、無関係な非PD1タンパク質に対する抗PD1抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する場合、PD1に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の態様において、ヒトPD1に結合する抗原結合タンパク質は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)のヒトPD1への結合についての結合親和性のKD値を有する。好ましい一実施形態において、結合親和性のそれぞれのKD値は、PD1結合親和性について、ヒトPD1の細胞外ドメイン(ECD)(PD1-ECD)を用い、表面プラズモン共鳴アッセイで決定される。「抗PD1抗体」という用語は、PD1及び第2の抗原に結合することが可能な二重特異性抗体も包含する。
【0084】
特定の態様において、抗PD1抗体は、MDX 1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピジリズマブ)、PDR001(スパルタリズマブ)、SHR1210(カンレリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。特定の一態様において、抗PD1抗体はペンブロリズマブ、又は配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体である。ペンブロリズマブ(Merck)は、MK-3475、Merck 3475、ラムブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475としても知られており、国際公開第2009/114335号(CAS登録番号1374853-91-4)に記載の抗PD-1抗体である。特定の一態様において、抗PD1抗体は、ニボルマブ、又は配列番号77のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号78のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体である。ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4、Bristol-Myers Squibb/Ono)は、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても公知であり、国際公開第2006/121168号(CAS登録番号946414-94-4号)に記載されている抗PD-1抗体である。別の特定の態様において、抗PD-1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインVH及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインVL、又はそのヒト化バリアントを含む。特定の態様において、抗PD-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインVH及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインVLを含む。
【0085】
「LAG3」又は「Lag-3」又は「リンパ球活性化遺伝子-3」又は「CD223」という用語は、本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意の天然LAG3を指す。この用語は、「全長」の未処理のLAG3と、細胞の処理から生じるLAG3の任意の形態を包含する。この用語は、LAG3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。好ましい一実施形態において、「LAG3」という用語は、ヒトLAG3を指す。例示的に処理された(シグナル配列を含まない)LAG3のアミノ酸配列を配列番号69に示す。例示的な細胞外ドメイン(ECD)LAG3のアミノ酸配列を配列番号70に示す。
【0086】
「抗LAG3抗体」及び「LAG3に結合する抗体」という用語は、抗体が、LAG3を標的とする際に診断及び/又は治療剤として有用であるように十分な親和性で、LAG3に結合することが可能な抗体を指す。一態様において、無関係な非LAG3タンパク質に対する抗LAG3抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるLAG3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態において、LAG3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の態様において、抗LAG3抗体は、異なる種由来のLAG3の中で保存されているLAG3のエピトープに結合する。好ましい一実施形態において、「抗LAG3抗体」、「ヒトLAG3に特異的に結合する抗体」、及び「ヒトLAG3に結合する抗体」とは、1.0×10-8mol/l以下のKD値、一実施形態において1.0×-9mol/l以下のKD値、一実施形態において1.0×10-9mol/l~1.0×10-13mol/lのKD値の結合親和性で、ヒトLAG3抗原又はその細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合する抗体を指す。この観点で、結合親和性は、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore(登録商標)、GE-Healthcare Uppsala、スウェーデン)を用いて、例えば、LAG3細胞外ドメインを用いて決定される。「抗LAG3抗体」という用語は、LAG3及び第2の抗原に結合することが可能な二重特異性抗体も包含する。一態様において、抗LAG3抗体は、レラトリマブ若しくはBMS-986016、又は配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体である。
【0087】
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、これらが結合する抗原の生体活性を阻害するか、又は減らす抗体である。いくつかの実施形態において、ブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生体活性を実質的に、又は完全に阻害する。例えば、本発明の二重特異性抗体は、抗原刺激に対する機能不全状態から、T細胞による機能応答(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死)を回復するように、PD-1及びLAG3によるシグナル伝達をブロックする。
【0088】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗原結合分子の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。一般に、抗体は6つのCDRを含み、3つがVHにあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、3つがVLにある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。本明細書における例示的なCDRとしては、以下が挙げられる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))。
【0090】
特に指定されない限り、CDRは、上記のKabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は、任意の他の科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
【0091】
「Kabatのような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatのようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語及びその変形は、Kabat et al.の抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリング方式を使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。一般的に、天然4鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)、計6つのHVRを含む。
【0092】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1ドメイン、FR2ドメイン、FR3ドメイン及びFR4ドメインの4つのFRドメインからなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中において以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0093】
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に対して、配列が同一である。
【0094】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来する抗体を指し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りは、異なる供給源又は種に由来する。
【0095】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0096】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含む、キメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合という観点で、本発明による特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から更に改変されるか、又は変更されているものである。
【0097】
「ヒト」抗体は、ヒト又はヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源から誘導される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。
【0098】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。そのようなバリアントは、一般的に少量で存在する。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない多様な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法が本明細書に記載されている。
【0099】
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含む抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。特に、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びている。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもしてなくてもよい。重鎖のアミノ酸配列は、常に、C末端リシンを伴って存在するが、C末端リシンを含まないバリアントは、本発明に含まれる。
【0100】
IgG Fc領域は、IgG CH2ドメインと、IgG CH3ドメインと、を含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、おおよそのアミノ酸位置231のアミノ酸残基から、おおよそのアミノ酸位置340のアミノ酸残基まで延びている。一実施形態において、炭水化物鎖は、CH2ドメインに付着している。本発明のCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又はバリアントCH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域中のCH2ドメインに対してC末端に残基の伸長部を含む(すなわち、IgGのおおよその位置341のアミノ酸残基から、おおよその位置447のアミノ酸残基まで)。本発明のCH3領域は、天然配列CH3ドメイン又はバリアントCH3ドメインであってもよい(例えば、その1つの鎖に導入された「隆起」(「ノブ」)を有し、その他の鎖に対応する導入された「空洞」(「ホール」)を有するCH3ドメイン、本明細書に参考として明確に組み込まれる米国特許第5,821,333号を参照)。そのようなバリアントCH3ドメインを使用して、本明細書に記載される2つの同一ではない抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進してもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0101】
「ノブ・イントゥ・ホール」技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある隆起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。隆起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作り出すことができる。具体的な実施形態において、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの1つにアミノ酸置換T366Wを含み、ホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうち他方の1つにアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更なる具体的な実施形態において、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋の形成をもたらし、それにより、二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0102】
「免疫グロブリンのFc領域に等価な領域」は、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域の対立遺伝子バリアント及び置換、付加又は欠失を生じるが、エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性)に介在する免疫グロブリンの能力を実質的に低下させない変更を有するバリアントを含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生体機能を実質的に失うことなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から欠失され得る。そのようなバリアントは、活性に対して最小限の影響を有するように、当該技術分野で知られた一般的な規則に従って選択することができる(例えば、Bowie,J.U.et al.、Science 247:1306-10(1990)を参照)。
【0103】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生物活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞活性化。
【0104】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による連結の後に、エフェクター機能を発揮するために受容体を担持する細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProt寄託番号P08637、バージョン141を参照)。
【0105】
「ペプチドリンカー」という用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当該技術分野で知られているか、又は本明細書に記載される。好適な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、((G4S)n、(SG4)n、又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、ここで、「n」は、一般に、1~10の間、典型的には2~4の数、特に2である。特に興味深いペプチドリンカーは、(G4S)(配列番号71)、(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号72)、(G4S)3(配列番号73)及び(G4S)4(配列番号74)、より詳しくは(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号72)である。
【0106】
「~に融合する」又は「~に接続する」とは、構成要素(例えば、抗原結合ドメイン及びFcドメイン)が、ペプチド結合によって直接的に、又は1つ以上のペプチドリンカーを介して連結することを意味する。
【0107】
本出願において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシα-アミノ酸の群を示す。
【0108】
参照ポリペプチド(タンパク質)配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、これらの配列を整列させ、最大の配列同一性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入し、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない場合の参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、公的に入手可能なBLAST、BLAST-2、ALIGN等のコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で達成され得る。SAWI又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルし得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含め、UNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(或いは、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
この場合、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。
【0109】
特定の態様において、本明細書で提供される本発明の二重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントが想定される。例えば、二重特異性抗体の結合親和性及び/又は他の生体特性を改良することが望ましい場合がある。二重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントは、分子をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって調製されてもよく、又はペプチド合成によって調製されてもよい。そのような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換が含まれる。最終コンストラクトが所望の特性、例えば、抗原結合を有していることを条件として、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを、最終コンストラクトに到達させるために作ることができる。置換変異誘発の対象となる部位には、HVR及びフレームワーク(FR)が含まれる。保存的置換は、「好ましい置換」の見出しで表Cに与えられており、アミノ酸側鎖クラス(1)~(6)を参照しつつ、以下に更に記載される。アミノ酸置換は、対象となる分子に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
【表B】
【0110】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0111】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0112】
「アミノ酸配列バリアント」という用語は、親抗原結合分子(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基中にアミノ酸置換が存在する実質的なバリアントを含む。一般的に、更なる試験のために選択され、得られたバリアント(複数可)は、親抗原結合分子と比較して、特定の生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、及び/又は親抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して、簡便に生成され得る。簡潔には、1つ以上のHVR残基は、変異しており、ファージディスプレイされ、特定の生体活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされたバリアント抗原結合分子である。特定の実施形態において、置換、挿入又は欠失は、そのような変更が、抗原結合分子が抗原に結合する能力を実質的に減らさない限り、1つ以上のHVR内で起こってもよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてよい。変異誘発を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science、244:1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャンニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するための、抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的にしても排除してもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを決定するためにスクリーニングされてもよい。
【0113】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する二重特異性抗体が挙げられる。分子の他の挿入バリアントには、二重特異性抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへのN末端又はC末端への融合が含まれる。
【0114】
特定の態様において、本明細書で提供される二重特異性抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変更される。分子のグリコシル化バリアントは、1つ以上のグリコシル化部位が作成されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を変えることによって、簡便に得られるだろう。例えば、Fcドメインに付着する炭水化物が変更されてもよい。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合付着される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに付着したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態において、特定の改良された特性を有するバリアントを作成するために、本発明の二重特異性抗体中のオリゴ糖改変が行われてもよい。一態様において、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着するフコースを欠いた炭水化物構造を有する二重特異性抗体のバリアントが提供される。そのようなフコシル化バリアントは、改良されたADCC機能を有していてもよく、例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)又は米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。本発明の二重特異性抗体の更なるバリアントは、二分されたオリゴ糖を有するもの、例えば、Fc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されているものを含む。そのようなバリアントは、減少したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有していてもよく、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al)を参照されたい。Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有するバリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有する場合があり、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.)、国際公開第1998/58964号(Raju、S.)及び国際公開第1999/22764号(Raju、S.)に記載される。
【0115】
特定の態様において、本発明の二重特異性抗体のシステイン操作されたバリアント、例えば、分子の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、分子の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能な部位に配置され、その反応性チオール基を用いて抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲートさせて、イムノコンジュゲートを作製することができる。特定の実施形態において、以下の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換されていてもよい。軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作された抗原結合分子は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように作製されてもよい。
【0116】
特定の態様において、本明細書で提供される二重特異性抗体は、当該技術分野で知られており、容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含むように改変されてもよい。抗体の誘導体化に適した部位としては、限定されるものではないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に付着するポリマーの数は変化し得て、1つを超えるポリマーが付着する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、又は異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が限定条件の下での治療法に使用されるかどうかを含めた(但しこれらに限定されない)考慮事項に基づいて決定することができる。
【0117】
別の態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam,N.W.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、任意の波長であってよく、限定されないが、通常の細胞に有害ではないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含む。
【0118】
「イムノコンジュゲート」は、限定されないが、細胞傷害性薬剤を含む、1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされている抗体である。
【0119】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離された核酸分子又はコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は従来の結合以外の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含んでいてもよい。「核酸分子」という用語は、任意の1つ以上の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA又はRNAフラグメントを指す。
【0120】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドが意図するのは、その天然環境から取り出された核酸分子、DNA又はRNAである。例えば、ベクターにおいて含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例には、異種宿主細胞内に維持されている組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の(部分的に又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外に、又は天然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。単離されたRNA分子は、in vivo又はin vitroでの本発明のRNA転写物、及びポジティブ及びネガティブの鎖形態、二本鎖形態を含む。さらに、本発明の単離されたポリヌクレオチド又は核酸には、合成により生成されたそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーター等の調節エレメントであってもよく、又は調節エレメントを含んでいてもよい。
【0121】
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドあたり5個までの点突然変異を含んでいてもよいことを除けば、参照配列と同一であることを意図している。言い換えると、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列内のヌクレオチドの5%までが、欠失していてもよく、若しくは別のヌクレオチドで置換されていてもよく、又は参照配列内の全ヌクレオチドの5%までが、参照配列内へと挿入されていてもよい。参照配列のこのような変更は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれら末端位置の間のどの位置で起こってもよく、参照配列中の残基間に個々に散在してもよいし、又は参照配列内に1つ以上の連続した群として散在してもよい。実際の様式として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラム、例えば、ポリペプチドについて上に記載したもの(例えば、ALIGN-2)を用いて、従来通りに決定することができる。
【0122】
「発現カセット」という用語は、標的細胞内の特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて、組換え又は合成により生成されたポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸フラグメントに組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列とプロモーターとを含む。特定の実施形態において、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。
【0123】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、「発現コンストラクト」と同義であり、標的細胞内においてそれが作動可能に結合する特定の遺伝子の発現を導入及び誘導するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及びベクターが導入された宿主細胞のゲノム内へと組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターによって、安定したmRNAの多量の転写が可能となる。発現ベクターが標的細胞内部に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞転写及び/又は翻訳機構によって生成される。一実施形態において、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む発現カセットを含む。
【0124】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫も含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含量が親細胞と完全に同じでなくてもよく、変異を含んでもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞でスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体の子孫が含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を生産するのに使用できる任意の種類の細胞系である。特に、宿主細胞は、原核生物又は真核生物の宿主細胞である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物若しくは動物組織に含まれる細胞も挙げられる。
【0125】
ある薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において、ある生理学的変化を引き起こすのに必要な量を指す。
【0126】
薬剤、例えば医薬組成物の「治療有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を得るのに必要な投薬量及び期間での有効な量を指す。治療有効量の薬剤は、例えば、疾患の副作用を除去し、低下させ、遅延させ、最小限にし、又は予防する。
【0127】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は対象は、ヒトである。
【0128】
「医薬組成物」という用語は、中に含まれる有効成分の生物活性が有効になるような形態の調製物であり、かつ、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0129】
「薬学的に許容され得る賦形剤」は、医薬組成物中の有効成分以外の成分で、対象に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容され得る賦形剤としては、限定されないが、バッファー、安定剤又は防腐剤が挙げられる。
【0130】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、当該治療製品の使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0131】
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」等、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために行うことも、臨床病理の過程において行うこともできる。治療の所望の効果としては、疾患の発症又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移の予防、疾患進行率を低下させること、症状の寛解又は緩和、及び回復又は改善された予後が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の分子を使用し、疾患の発生を遅らせるか、又は疾患の進行を遅らせる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、リンパ腫、リンパ球性白血病、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、肺細気管支肺胞がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部若しくは頸部のがん、皮膚若しくは眼内の黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、膀胱のがん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌腫、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形膠芽細胞腫、星細胞種、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮がん、下垂体腺腫(上述のがんのいずれかの難治性態様を含む)、又は上述のがんの1つ以上の組み合わせであってもよい。一実施形態において、がんという用語は、CD20発現がんを指す。
【0133】
「CD20の発現」という用語は、それぞれ腫瘍又はがん、好ましくは非固形腫瘍からの細胞内、好ましくはT細胞又はB細胞、より好ましくはB細胞の細胞表面上の有意なレベルの発現CD20を示すことを意図している。「CD20を発現するがん」を有する患者は、当該技術分野で公知の標準的なアッセイによって決定することができる。例えば、CD20抗原の発現は、免疫組織化学(IHC)検出、FACSを使用して、又は対応するmRNAのPCRベースの検出を介して測定され得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「CD20発現がん」という用語は、がん細胞がCD20抗原の発現を示す全てのがんを指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、CD20発現がんは、リンパ腫(好ましくはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))及びリンパ球性白血病を指す。かかるリンパ腫及びリンパ性白血病には、例えば、a)濾胞性リンパ腫、b)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地域性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫、及び非バーキットリンパ腫を含む)、c)辺縁帯リンパ腫(結節外辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、e)大細胞型リンパ腫(B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫、肺B細胞リンパ腫を含む)、f)有毛細胞性リンパ腫、g)リンパ球性リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、h)急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、i)形質細胞腫瘍、形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、j)ホジキン病が含まれる。
【0135】
一態様において、CD20発現がんは、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)である。別の態様において、CD20発現がんは、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫、有毛細胞白血病、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、辺縁帯リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、HIV関連リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、又は原発性CNSリンパ腫からなる群から選択される。
【0136】
「B細胞増殖性障害」とは、患者のB細胞の数が健常対象のB細胞の数と比較して増加している疾患、特にB細胞の数の増加が疾患の原因又は特徴である疾患を意味する。「CD20陽性B細胞増殖性障害」は、B細胞、特に悪性B細胞が(正常B細胞に加えて)CD20を発現するB細胞増殖性障害である。例示的なB細胞増殖障害としては、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、並びにいくつかのタイプの多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)が挙げられる。
【0137】
「治療する方法」、「治療方法」という用語、又はその等価物は、例えばがんに適用される場合、患者のがん細胞の数を減少させるか若しくは排除するか、又はがんの症状を緩和するように設計された手順又は一連の作用を指す。がん又は別の増殖性障害を「治療する方法」は、がん細胞若しくは他の障害が実際に排除されること、細胞障害の数が実際に減少すること、又はがん若しくは他の障害の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。多くの場合、がんを治療する方法は、成功の可能性が低い場合であっても実施されるが、患者の病歴及び推定生存予想を考慮すると、それにもかかわらず、全体的に有益な一連の作用を誘導すると考えられる。
【0138】
「組み合わせ」、「同時投与」又は「同時投与すること」という用語は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を2つの別個の製剤として(又は単一の製剤として)投与することを指す。同時投与は、同時であっても順次であってもよく、好ましくは、両方(又は全て)の活性剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間が存在する。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、同時に又は順次(例えば、連続注入により静脈内(i.v.)でのいずれかで同時投与される(1つは抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であり、1つは抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体である)。両方の治療剤が順次に同時投与される場合、用量は2回の別々の投与で同じ日に投与されるか、又は薬剤の1つが1日目に投与され、2番目が2日目~7日目、好ましくは2日目~4日目に同時投与される。したがって、「順次」という用語は、第1の成分(抗CD20/抗CD3二重特異性抗体又は抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体)の投与後7日以内、好ましくは第1の成分の投与後4日以内を意味し、「同時に」という用語は同じ時を意味する。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の維持用量に関して「同時投与」という用語は、治療サイクルが両方の薬物に適切である場合、例えば毎週、維持用量を同時に同時投与することができることを意味する。又は、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を例えば2週間ごとに投与し、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を3週間ごとに投与する。或いは、維持用量は、1日以内又は数日以内のいずれかで順次同時投与される。
【0139】
本発明で使用するための例示的な抗CD20/抗CD3二重特異性抗体
本発明は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体、及び抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせでのそれらの使用、特にCD20発現がんを治療又は進行遅延させる方法、より詳しくはB細胞増殖性障害を治療又は進行遅延させる方法におけるそれらの使用に関する。本明細書で使用される場合、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、CD20に結合する第2の抗原結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体である。したがって、それらはCD20発現B細胞を標的としている。
【0140】
したがって、本明細書で使用される場合、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、重鎖可変領域(VHCD3)及び軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(VHCD20)及び軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインと、を含む。
【0141】
特定の態様において、組み合わせで使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む。
【0142】
一態様において、CD3に特異的に結合する抗体は全長抗体である。一態様において、CD3に特異的に結合する抗体は、ヒトIgGクラスの抗体、特にヒトIgG1クラスの抗体である。一態様において、CD3に特異的に結合する抗体は、抗体フラグメント、特にFab分子又はscFv分子、より詳しくはFab分子である。特定の態様において、CD3に特異的に結合する抗体は、Fab重鎖及びFab軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されている(すなわち、互いに置き換えられる)クロスオーバーFab分子である。一態様において、CD3に特異的に結合する抗体はヒト化抗体である。
【0143】
別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、第2の抗原結合ドメインを含む。
【0144】
別の特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、CD20に結合する第3の抗原結合ドメインを含む。特に、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第3の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第3の抗原結合ドメインを含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、第3の抗原結合ドメインを含む。
【0145】
更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖及びFab軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されたクロスFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインは、存在する場合、従来のFab分子である。
【0146】
別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は二重特異性抗体であり、(i)第2の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端において第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合されており、第1の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合されており、第3の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端においてFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合されており、又は(ii)第1の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端において第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合されており、第2の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合されており、第3の抗原結合ドメインはFab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合されている。
【0147】
複数のFab分子はFcドメインに、又は互いに、直接、又は、典型的には約2~20個のアミノ酸を含む、1つ以上のアミノ酸を含む、ペプチドリンカーを介して、融合することができる。ペプチドリンカーは当技術分野において既知であり、本明細書に記載される。好適な非免疫原性ペプチドリンカーとしては、例えば、(G4S)(配列番号71)、(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号72)、(G4S)3(配列番号73)及び(G4S)4(配列番号74)、より詳しくは(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号72)が挙げられる。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合させるのに特に適したペプチドリンカーは、(G4S)2である。別の好適なリンカーは、配列(G4S)4(G4S)4(配列番号74)を含む。加えて、リンカーは免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含むことができる。特に、Fab分子がFcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介して、追加のペプチドリンカーを伴い又は伴わずに融合していてもよい。
【0148】
更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。特に、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(EUナンバリングによる)アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む。
【0149】
特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号57の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号58の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号59の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、及び配列番号60の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチドを含む。更に特定の実施形態において、二重特異性抗体は、配列番号57のポリペプチド配列、配列番号58のポリペプチド配列、配列番号59のポリペプチド配列及び配列番号60のポリペプチド配列を含む(CD20 TCB)。
【0150】
特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はグロフィタマブである。
【0151】
グロフィタマブ(Proposed INN:List 121 WHO Drug Information,Vol.33,No.2,2019、CD20-TCB、RO7082859、又はRG6026としても知られている)は、B細胞上のCD20への二価結合及びT細胞上のCD3、特にCD3イプシロン鎖(CD3e)への一価結合のための2:1の分子構成を有する新規T細胞係合二重特異性全長抗体である。そのCD3結合領域は、可撓性リンカーを介して頭部--尾部様式でCD20結合領域の1つに融合される。この構造は、1:1構成を有する他のCD20-CD3二重特異性抗体と比較して優れたin vitro効力を有するグロフィタマブを与え、前臨床DLBCLモデルにおいて大きな抗腫瘍効果をもたらす。CD20二価性は、競合する抗CD20抗体の存在下でこの効力を維持し、これらの薬剤による前治療又は同時治療の機会を提供する。グロフィタマブは、FcgR及びC1qへの結合が完全に消失した、操作されたヘテロ二量体Fc領域を含む。ヒトCD20発現腫瘍細胞及びT細胞上のT細胞受容体(TCR)複合体のCD3εに同時に結合することによって、T細胞の活性化、増殖及びサイトカイン放出に加えて、腫瘍細胞溶解を誘導する。グロフィタマブによって媒介されるB細胞の溶解はCD20特異的であり、CD20発現の非存在下又はCD20発現細胞へのT細胞の同時結合(架橋)の非存在下では起こらない。殺傷に加えて、T細胞は、T細胞活性化マーカー(CD25及びCD69)、サイトカイン放出(IFNγ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-10)、細胞傷害性顆粒放出(グランザイムB)及びT細胞増殖の増加によって検出されるように、CD3架橋による活性化を受ける。
【0152】
別の態様において、組み合わせで使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号83のCDR-H1配列、配列番号84のCDR-H2配列及び配列番号85のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号86のCDR-L1配列、配列番号87のCDR-L2配列、及び配列番号88のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含むより詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号89のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号90のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、及び/又は配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む。
【0153】
更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号91のCDR-H1配列、配列番号92のCDR-H2配列及び配列番号93のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号94のCDR-L1配列、配列番号95のCDR-L2配列、及び配列番号96のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。より詳しくは、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号97のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、及び/又は配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、第2の抗原結合ドメインを含む。
【0154】
特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号99の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号100の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号101の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、及び配列番号102の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチドを含む。更なる特定の実施形態において、二重特異性抗体は、配列番号99のポリペプチド配列、配列番号100のポリペプチド配列、配列番号101のポリペプチド配列及び配列番号102のポリペプチド配列を含む。
【0155】
特定の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はモスネツズマブである。モスネツズマブ(RO7030816;BTCT4465Aとしても知られている)は、ヒトIgG1クラスのヒト化全長抗CD20/CD3 T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体であり、フラグメント結晶化可能(Fc)領域にアミノ酸置換N297G(EUナンバリング従う)を含む。この置換は、Fcガンマ(FC-γ)受容体への結合が最小限であり、結果としてFcエフェクター機能を低下させる非グリコシル化重鎖をもたらす。モスネツズマブの作用機序は、CD3を介したT細胞とCD20発現細胞との係合を伴い、CD20発現細胞のT細胞活性化及びT細胞媒介性細胞溶解をもたらす。全長抗体としてのその構造及び非臨床データに基づいて、モスネツズマブの薬物動態(PK)特性は、他のモノクローナル抗体と同様に、臨床現場での間欠投薬を可能にする。
【0156】
特定の二重特異性抗体は、PCT公開番号国際公開第2016/020309号A1又は国際公開第2015/095392号A1に記載されている。
【0157】
更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はまた、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))を含み得る。更なる態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体はXmAb(登録商標)13676である。別の態様において、二重特異性抗体はREGN1979である。別の態様において、二重特異性抗体はFBTA05(Lymphomun)である。
【0158】
本発明で使用するための例示的な二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体
本明細書で提供される組み合わせでは、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、生産性、安定性、結合親和性、生体活性、特定のT細胞の特異的な標的化、標的化効率及び毒性の低下など、特に有利な特性を有する新規な二重特異性抗体が使用される。本明細書で使用するための特定の二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体は、国際公開第2018/185043号A1に記載されている。
【0159】
特定の態様において、T細胞表面に結合する際にインターナリゼーションの低下を示す、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。インターナリゼーションは、標的受容体がTCRシグナル伝達を阻害する準備ができた細胞表面で迅速に再発現しつつ、数時間以内に分解し得る分子の重要なシンクを表す。更なる態様において、Tregに対してよりも、従来のT細胞に対して優先的に結合する、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。このことは、ブロッキング抗体を用いたTreg上のLAG-3の標的化が、その抑制機能を増加させ、最終的に他のT細胞に対する正のブロッキング効果を覆い隠すことによって悪化し得るため、有利である。更なる態様において、Treg抑制からT細胞エフェクター機能を守ることができる、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。別の態様において、本明細書で提示されるアッセイで示されるように、腫瘍細胞株ARH77と共に培養すると、CD4 T細胞によるグランザイムB分泌を誘発することができる、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。更なる態様において、腫瘍特異的なT細胞エフェクター機能の増加を示し、及び/又はT細胞の細胞毒性効果を高める、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。別の態様において、in vivoで腫瘍根絶の増加を示す、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。
【0160】
一態様において、本発明は、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する当該第1の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む。
【0161】
一態様において、二重特異性抗体は、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインは、エフェクター機能を低下させるか、又は無効にしさえする。特に、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0162】
更なる態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0163】
別の態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含むVHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0164】
特定の更なる態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0165】
別の態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0166】
更なる態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0167】
別の態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号81のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号82のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0168】
特定の態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0169】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0170】
更なる態様において、本発明の二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0171】
更なる態様において、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。特に、二重特異性抗体は、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0172】
一態様において、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、二価である。このことは、二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインとを含む(1+1フォーマット)ことを意味する。
【0173】
一態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。特定の態様において、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられている。特定の態様において、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換えられている。
【0174】
特定の態様において、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、
(a)配列番号35の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号37の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号35の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0175】
より詳しくは、二重特異性抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む。
【0176】
Fc受容体の結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
特定の態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供され、該二重特異性抗体は、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させ、エフェクター機能を低下させるか又は失わせる1つ以上のアミノ酸修飾を含むFcドメインを含む。
【0177】
特定の態様において、1つ以上のアミノ酸改変は、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントを生成する。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0178】
以下のセクションは、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン改変を含む、本発明の二重特異性抗原結合分子の好ましい態様を記載する。一態様において、本発明は、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体に関する。特に、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0179】
Fcドメインは、本発明の二重特異性抗体に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかしながら、同時に、好ましい抗原を担持する細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する本発明の二重特異性抗体の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。したがって、特定的な実施形態において、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、天然IgG Fcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 ドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。より詳しくは、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。
【0180】
1つのそのような態様において、Fcドメイン(又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合親和性を示し、及び/又は天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一態様において、Fcドメイン(又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合せず、及び/又はエフェクター機能を誘発しない。特定の態様において、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一態様において、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様において、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一態様において、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より具体的には、ヒトFcγRIIBである。一態様において、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌のうち1つ以上である。特定の態様において、エフェクター機能はADCCである。一態様において、Fcドメインは、天然のIgG1 Fcドメインと比較して、新生児型Fc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は該Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、FcRnに対して約70%より大きく、特に約80%より大きく、より詳しくは約90%より大きい結合親和性を示す場合に達成される。
【0181】
特定の態様において、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性が低下し、及び/又はエフェクター機能が低下するように操作される。特定の態様において、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を下げる1つ以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一態様において、アミノ酸変異は、FcドメインのFc受容体への結合親和性を低下させる。別の態様において、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に低下させる。一態様において、操作されたFcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の20%未満、特に10%未満、より詳しくは5%未満を示す。特定の態様において、Fc受容体は、Fcγ受容体である。別の態様において、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様において、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より具体的には、ヒトFcγRIIBである。いくつかの態様において、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の態様において、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの各受容体への結合が低下する。いくつかの態様において、補体成分に対する結合親和性(具体的には、C1qに対する結合親和性)も低下する。一態様において、新生児Fc受容体(FcRn)への結合親和性は低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合(すなわち、上記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保護)は、Fcドメイン(又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対するFcドメインの操作されていない形態(又はFcのこの操作されていない形態を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)の結合親和性の約70%を超える結合親和性を示す場合に達成される。Fcドメイン、又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、そのような親和性の約80%より大きく、更に約90%より大きい親和性を示してもよい。特定の実施形態において、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクター機能が低下するように操作される。エフェクター機能の低下としては、限定されないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:補体依存性細胞障害(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞への結合の低下、マクロファージへの結合の低下、単球への結合の低下、多形核細胞への結合の低下、アポトーシスを誘導する直接シグナル伝達の低下、樹状細胞の成熟の低下、又は減少したT細胞プライミング。
【0182】
エフェクタ機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329において1つ以上の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc突然変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上に置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312号、及びShields,R.L.et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604)。
【0183】
本発明の一つの態様において、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置にアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(「LALA」)を含む。1つのそのような実施形態において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一態様において、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な態様において、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施形態において、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含み、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sからなる群から選択される更なるアミノ酸置換を含む。更に特定の実施形態において、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(「P329G LALA」)を含む。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組合せは、PCT出願国際公開第2012/130831A1号に記載されるように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体の結合をほとんど完全になくす。当該文書は、そのような突然変異体Fcドメインを調製するための方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能などの特性を決定するための方法も記載する。そのような抗体は、変異L234A及びL235Aを有するか、又は変異L234A、L235A及びP329Gを有するIgG1である(ナンバリングはKabat et alのEUインデックスに従う、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991)。
【0184】
一態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、(i)任意に変異P329G、L234A及びL235Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(ii)任意に変異P329G、S228P及びL235Eを有する、ヒトIgG4サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(iii)任意に変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A及びH435Aを有するか、又は任意に変異P329G、L234A、L235A、H310A、H433A及びY436Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(iv)1つのFc領域ポリペプチドが変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヘテロ二量体Fc領域、又は(v)両Fc領域ポリペプチドが、変異P329G、L234A及びL235Aを含み、1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヒトIgG1サブクラスのヘテロ二量体Fc領域を含む(全て、KabatのEUインデックスによる位置)。
【0185】
一態様において、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な実施形態において、Fcドメインは、位置S228(Kabatナンバリング)にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。より具体的な実施形態において、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329Gを含む、IgG4 Fcドメインである。このアミノ酸置換は、in vivoでのIgG4抗体のFabアーム交換を減少させる(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照)。したがって、一態様において、二重特異性抗体であって、(全て、KabatのEUインデックスによる位置)両Fc領域ポリペプチドが、変異P329G、S228P及びL235Eを含み、1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc領域を含む二重特異性抗体が提供される。
【0186】
半減期が長くなり、新生児Fc受容体に対する結合が向上した抗体は、胎児に対する成熟IgGの移動を担い(Guyer,R.L.et al.、J.Immunol.117(1976)587-593及びKim,J.K.et al.、J.Immunol.24(1994)2429-2434)、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つ以上の置換をその中に有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するバリアントを含む(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan,A.R.及びWinter,G.、「Nature」第322巻(1988年)第738~740頁;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0187】
Fc受容体への結合は、例えば、ELISAによって又は標準的な機器、例えばBIAcore機器(GE Healthcare)及び例えば組換え発現により得られ得るFc受容体を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。好適なかかる結合アッセイを本明細書に記載する。或いは、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するための好適なアッセイは、本明細書に記載されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載される。或いは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン))。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又はこれに加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば動物モデル、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されているものにおいてin vivoで評価されてもよい。
【0188】
以下のセクションは、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン改変を含む、本発明の二重特異性抗体の好ましい態様を記載する。一態様において、Fcドメインが、Fcγ受容体に対する、特にFc受容体に対する抗体の結合親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。別の態様において、Fcドメインがエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。特定の態様において、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0189】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本明細書に記載の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合した異なる抗原結合ドメインを含み、したがってFcドメインの2つのサブユニットは、2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれ得る。これらのポリペプチドの組換え共発現及びその後の二量体化により、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組換え産生における本発明の二重特異性抗体の収率及び純度を高めるために、本明細書に開示される二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望なポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利である。
【0190】
したがって、特定の態様において、Fcドメインが、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間のタンパク質間相互作用が最も広範囲に及ぶ部位は、FcドメインのCH3ドメインにある。したがって、一態様において、当該改変は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
【0191】
具体的な態様において、上記改変は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」改変であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」改変と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」改変と、を含む。したがって、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体に関し、ノブ・イントゥ・ホール法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む。特定の態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EUナンバリング)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0192】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある隆起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同じ又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
【0193】
したがって、一態様において、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に隆起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が位置換え可能である。隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により変化させることによって作り出すことができる。具体的な態様において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置366のスレオニン残基がトリプトファン残基と置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基がバリン残基と置き換えられている(Y407V)。一態様において、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置366のトレオニン残基が、セリン残基と置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換えられている(L368A)。
【0194】
なお更なる態様において、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換えられており(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換えられている(Y349C)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋の形成をもたらし、二量体を更に安定化する(Carter(2001),J Immunol Methods 248,7-15)。特定の態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EUナンバリング)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0195】
しかしながら、欧州特許第1 870 459号に記載される他のホールにノブを入れる技術も、これに代えて、又はこれに加えて使用することができる。一実施形態において、多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0196】
一態様において、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を含み、「ホール」鎖のCH3ドメインに変異T366S、L368A及びY407Vを含み、更に、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0197】
一態様において、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、更に、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、変異D399K及びE357Kを含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0198】
別の態様において、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変は、例えばPCT公開である国際公開2009/089004に記載されているように、静電ステアリング効果を媒介する改変を含む。一般に、この方法では、2つのFcドメインサブユニットの界面にある1つ以上のアミノ酸残基を帯電したアミノ酸残基で置き換えて、ホモ二量体形成が静電気的に不利になるが、ヘテロ二量体化が静電気的に有利になるようにする。
【0199】
「ノブ・イントゥ・ホール技術」の他に、ヘテロ二量体化を推進するために多重特異性抗体の重鎖のCH3ドメインを改変するための他の技術は、当該技術分野で知られている。これらの技術、特に、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、及び国際公開第2013/096291号に記載される技術は、二重特異性抗体との組み合わせで「ノブ・イントゥ・ホール」に対する代替として、本明細書で想定される。
【0200】
一態様において、二重特異性抗体において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、欧州特許第1870459号に記載される手法を用いる。この手法は、第1及び第2の重鎖の間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷で帯電したアミノ酸の導入に基づく。
【0201】
したがって、この態様において、多重特異性抗体の三次構造において、第1の重鎖のCH3ドメインと第2の重鎖のCH3ドメインは、それぞれの抗体CH3ドメインの間に存在する界面を形成し、第1の重鎖のCH3ドメインのそれぞれのアミノ酸配列及び第2の重鎖のCH3ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、抗体の三次構造中の当該界面内に位置する一連のアミノ酸を含み、界面に位置する一連のアミノ酸から、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、第1のアミノ酸が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、界面に位置する一連のアミノ酸から、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、第2のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されている。この態様の二重特異性抗体は、本明細書では、「CH3(+/-)操作された二重特異性抗体」とも呼ばれる(ここで、省略語「+/-」は、それぞれのCH3ドメインに導入されたのと反対の電荷に帯電したアミノ酸を表す)。
【0202】
一態様において、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K、R及びHから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0203】
一態様において、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K及びRから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0204】
一態様において、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、Kであり、負に帯電したアミノ酸は、Eである。
【0205】
一態様において、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、1つの重鎖のCH3ドメイン中、位置409のアミノ酸RがDによって置換されており、位置のアミノ酸KがEによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸DがKによって置換されており、位置357のアミノ酸EがKによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0206】
一態様において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2013/157953号に記載される手法を用いる。一実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。別の実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0207】
別の態様において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。さらに、以下の置換の少なくとも1つが他の重鎖のCH3ドメインに含まれる。位置349のアミノ酸YがEによって置換されており、位置349のアミノ酸YがDによって置換されており、位置368のアミノ酸LがEによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。一実施形態において、位置368のアミノ酸Lは、Eによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0208】
一態様において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2012/058768号に記載される手法を用いる。一態様において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。別の実施形態において、上述の置換に加え、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置411(元はT)、399(元はD)、400(元はS)、405(元はF)、390(元はN)及び392(元はK)のアミノ酸の少なくとも1つが置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。好ましい置換は次のとおりである。
- 位置411のアミノ酸Tを、N、R、Q、K、D、E及びWから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- 位置399のアミノ酸Dを、R、W、Y及びKから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- 位置400のアミノ酸Dを、E、D、R及びKから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- 位置405のアミノ酸Fを、I、M、T、S、V及びWから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- 位置390のアミノ酸Nを、R、K及びDから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- 位置392のアミノ酸Kを、V、M、R、L、F及びEから選択されるアミノ酸で置換する(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0209】
別の態様において、二重特異性抗体が、国際公開第2012/058768)号に従って操作されており、すなわち、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがVによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。多重特異性抗体の別の実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。後者の上述の実施形態において、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸KがEによって置換されており、位置411のアミノ酸TがEによって置換されており、位置399のアミノ酸DがRによって置換されており、位置400のアミノ酸SがRによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0210】
一態様において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2011/143545号に記載される手法を用いる。一態様において、両重鎖のCH3ドメイン中のアミノ酸改変は、位置368及び/又は409に導入される(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0211】
一態様において、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2011/090762号に記載される手法を用いる。国際公開第2011/090762号は、「ノブ・イントゥ・ホール」(KiH)技術に従ったアミノ酸改変に関する。一実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがWによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。別の実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがYによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがTによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0212】
一態様において、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2009/089004号に記載される手法を用いる。一実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸K又はNが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態において、E又はDによって、好ましい一実施形態において、Dによって)置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸D、位置356のアミノ酸E又はD、又は位置357のアミノ酸Eが、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(一実施形態において、K又はR、好ましい一実施形態において、Kによって置換されており、好ましい一実施形態において、位置399又は356のアミノ酸が、Kによって置換されている)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。更なる一実施形態において、上述の置換に加え、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置409のアミノ酸K又はRが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態において、E又はDによって、好ましい一実施形態において、Dによって)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。1つのなお更なる態様において、上述の置換に加えて、又は上述の置換に代えて、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置439のアミノ酸K及び/又は位置370のアミノ酸Kが、互いに独立して、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態において、E又はDによって、好ましい一実施形態において、Dによって)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0213】
一態様において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2007/147901号に記載される手法を用いる。一実施形態において、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置253のアミノ酸KがEによって置換されており、位置282のアミノ酸DがKによって置換されており、位置322のアミノ酸KがDによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置239のアミノ酸DがKによって置換されており、位置240のアミノ酸EがKによって置換されており、位置292のアミノ酸KがDによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0214】
本明細書に報告される二重特異性抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうちの1つ又は2つが除去された、短くなったC末端であってもよい。好ましい一態様において、重鎖のC末端は、PGで終わる短くなったC末端である。
【0215】
一態様において、本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様において、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン-リシンジペプチドを含む(G446及びK447、ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。本明細書に報告される全ての態様のうちの一実施形態において、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン残基を含む(G446、ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0216】
Fabドメイン内の改変
一態様において、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLのいずれかが交換されている、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。二重特異性抗体は、Crossmab技術に従って調製される。
【0217】
1つの結合アームにドメインの置き換え/交換を有する多重特異性抗体(CrossMabVH-VL又はCrossMabCH-CL)は、国際公開2009/080252号、国際公開2009/080253号及びSchaefer,W.et al、PNAS、108(2011)11187-1191に記載される。これらの多重特異性抗体は、明確に、第1の抗原に対する軽鎖と、第2の抗原に対する誤った重鎖のミスマッチにより生じる副産物を減らす(そのようなドメインの置き換えがない手法と比較した場合)。
【0218】
特定の態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体であって、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHが、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように、互いに置き換えられている、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。特定の態様において、二重特異性抗体は、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換えられている、二重特異性抗体である。
【0219】
別の態様において、正しい対形成を更に改善するために、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体は、異なる荷電アミノ酸置換(いわゆる「荷電残基」)を含むことができる。これらの改変は、クロスしているか、又はクロスしていないCH1ドメイン及びCLドメインに導入される。これらの改変は、例えば、国際公開第2015/150447号、国際公開第2016/020309号及び国際出願PCT/EP2016/073408号に記載される。
【0220】
特定の態様において、定常ドメインCLにおけるFabフラグメントの1つにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって独立して置換されており(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって独立して置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。特定の態様において、二重特異性抗体は、TIM3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、二重特異性抗体である。
【0221】
特定の態様において、CLドメインの1つにおいて、位置123のアミノ酸(EUナンバリング)がアルギニン(R)によって置き換えられており、位置124のアミノ酸(EUナンバリング)がリジン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147のアミノ酸(EUナンバリング)及び位置213のアミノ酸(EUナンバリング)がグルタミン酸(E)によって置換されている、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が提供される。特定の態様において、二重特異性抗体は、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントにおいて、位置123のアミノ酸(EUナンバリング)が、アルギニン(R)によって置き換えられており、位置124のアミノ酸(EUナンバリング)が、リシン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147(EUナンバリング)及び位置213(EUナンバリング)のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている、二重特異性抗体である。
【0222】
更なる態様において、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖と
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換えられている。
【0223】
a)の抗体はb)で報告されている改変を含有せず、a)の重鎖及び軽鎖は単離された鎖である。
【0224】
(b)の抗体では、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLが、当該抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換わっており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHが、当該抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換えられている。
【0225】
一態様において、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(ナンバリングはKabatに従う)が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)が、負に帯電したアミノ酸によって置換されているか、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(ナンバリングはKabatに従う)が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)が、負に帯電したアミノ酸によって置換されている。
【0226】
別の態様において、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(ナンバリングはKabatに従う)(好ましい一実施形態において、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(ナンバリングはKabatに従う)(好ましい一実施形態において、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0227】
一態様において、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸は、Kによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0228】
一態様において、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸は、Rによって置換されており、位置124のアミノ酸は、Kによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0229】
一態様において、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、Eによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0230】
一態様において、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0231】
一態様において、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸がRによって置換されており、位置124のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸が両方ともEによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0232】
一態様において、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されており、第1の軽鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されており、第2の重鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0233】
一態様において、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖と
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっており、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換えられている。
【0234】
(a)の抗体は、(b)で報告される改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。(b)の抗体において、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLは、当該抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換わっており、定常軽鎖ドメインCLは、当該抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換わっており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHは、当該抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換わっており、定常重鎖ドメインCH1は、当該抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換え得られている。
【0235】
一態様において、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖と
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換えられている。
【0236】
a)の抗体はb)で報告されている改変を含有せず、a)の重鎖及び軽鎖は単離された鎖である。(b)の抗体において、軽鎖内で、定常軽鎖ドメインCLが、当該抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換わっており、重鎖内で、定常重鎖ドメインCH1が、当該抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換え得られている。
【0237】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
(b)第2の抗原に対して特異的に結合する1つ、2つ、3つ又は4つの一本鎖Fabフラグメントと
を含む、二重特異性抗体であり、
(b)の当該一本鎖Fabフラグメントは、(a)の当該全長抗体に対し、ペプチドリンカーを介し、当該全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端で融合している。
【0238】
一態様において、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fabフラグメントは、全長抗体に対し、ペプチドリンカーを介し、当該全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端で融合する。
【0239】
一態様において、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、当該全長抗体の重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0240】
一態様において、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、当該全長抗体の軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0241】
一態様において、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、当該全長抗体の重鎖又は軽鎖のそれぞれのC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0242】
一態様において、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、当該全長抗体のそれぞれの重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0243】
一態様において、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、当該全長抗体のそれぞれの軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0244】
一態様において、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
b)
(ba)抗体重鎖可変ドメイン(VH)、又は
(bb)抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体定常ドメイン1(CH1)からなる、第1のポリペプチドであって、
当該第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介し、当該全長抗体の2つの重鎖の1つのC末端に対し、そのVHドメインのN末端と融合している、第1のポリペプチドと、
(c)
(ca)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、又は
(cb)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)及び抗体軽鎖定常ドメイン(CL)からなる第2のポリペプチドであって、
当該第2のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介し、当該全長抗体の2つの重鎖の他方のC末端に対し、VLドメインのN末端と融合している、第2のポリペプチドとを含む、三価抗体であり、
第1のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)と、第2のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、一緒に、第2の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する。
【0245】
一態様において、(b)のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び(c)のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、以下の位置の間にジスルフィド結合を導入することによって、鎖間ジスルフィド架橋を介して接続され、安定化される:
(i)重鎖可変ドメインの位置44から軽鎖可変ドメインの位置100まで、又は
(ii)重鎖可変ドメインの位置105から軽鎖可変ドメインの位置43まで、又は
(iii)重鎖可変ドメインの位置101から軽鎖可変ドメインの位置100まで(ナンバリングは常にKabat EUインデックスに従う)。
【0246】
安定化のために非天然ジスルフィド架橋を導入するための技術は、国際公開94/029350号、Rajagopal,V.,et al.、Prot.Eng.(1997)1453-1459;Kobayashi,H.,et al.、Nucl.Med.Biol.25(1998)387-393、及びSchmidt,M.,et al.、Oncogene 18(1999)1711-1721に記載される。一実施形態において、(b)及び(c)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意要素のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置44と軽鎖可変ドメインの位置100との間にある。一実施形態において、(b)及び(c)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意要素のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置105と軽鎖可変ドメインの位置43との間にある(ナンバリングは常にKabat EUインデックスに従う)。一実施形態において、一本鎖Fabフラグメントの可変ドメインVHとVLとの間に当該任意のジスルフィド安定化を有しない三価の二重特異性抗体が好ましい。
【0247】
一態様において、二重特異性抗体は、三重特異性抗体又は四重特異性抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、及び/又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられている、全長抗体の第2の(改変された)軽鎖及び第2の(改変された)重鎖とを含み、
(c)1つ又は2つの更なる抗原(すなわち、第3及び/又は第4の抗原)に特異的に結合する1~4個の抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーを介し、(a)及び/又は(b)の軽鎖又は重鎖のC末端又はN末端に融合している。
【0248】
(a)の抗体は、(b)で報告される改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0249】
一態様において、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、1つ又は2つの更なる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0250】
一態様において、抗原結合ドメインは、scFvフラグメント及びscFabフラグメントからなる群から選択される。
【0251】
一態様において、抗原結合ドメインは、scFvフラグメントである。
【0252】
一態様において、抗原結合ドメインは、scFabフラグメントである。
【0253】
一態様において、抗原結合ドメインは、(a)及び/又は(b)の重鎖のC末端に融合している。
【0254】
一態様において、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、1つの更なる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0255】
一態様において、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、第3の抗原に特異的に結合する2つの同一の抗原結合ドメインを含む。好ましい一実施形態において、そのような2つの同一の抗原結合ドメインは、(a)及び(b)の重鎖のC末端に対し、同じペプチドリンカーを介して両方とも融合している。好ましい一実施形態において、2つの同一の抗原結合ドメインは、scFvフラグメント又はscFabフラグメントである。
【0256】
一態様において、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、第4の抗原に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。一実施形態において、当該2つの抗原結合ドメインは、(a)及び(b)の重鎖のC末端に対し、同じペプチド接続部を介して両方とも融合している。好ましい一実施形態において、当該2つの抗原結合ドメインは、scFvフラグメント又はscFabフラグメントである。
【0257】
一態様において、二重特異性抗体は、二重特異性の四価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の2つの軽鎖及び2つの重鎖(及び2つのFabフラグメントを含む)と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の2つの更なるFabフラグメントと
を含み、当該追加のFabフラグメントは、両方とも、ペプチドリンカーを介し、(a)の重鎖のC末端又はN末端のいずれかに融合しており、
Fabフラグメントにおいて、以下の改変が行われた:
(i)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、若しくは(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、及び/若しくは定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられているか、又は
(ii)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられているか、又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられているか、又は
(iii)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられているか、又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられているか、又は
(iv)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられているか、又は
(v)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている。
【0258】
一態様において、当該追加のFabフラグメントは、(a)の重鎖のC末端又は(a)の重鎖のN末端のいずれかにペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0259】
一態様において、当該追加のFabフラグメントは、(a)の重鎖のC末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0260】
一態様において、当該追加のFabフラグメントは、(a)の重鎖のN末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0261】
一態様において、Fabフラグメントにおいて、以下の改変が行われる:(a)の両Fabフラグメントにおいて、又は(b)の両Fabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、及び/又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられている。
【0262】
一態様において、二重特異性抗体は、四価抗体であり、
(a)第1の抗体の(改変された)重鎖であって、第1の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CH1ドメイン対を含み、当該重鎖のC末端に、当該第1の抗体の第2のVH-CH1ドメイン対のN末端が、ペプチドリンカーを介して融合している、第1の抗体の(改変された)重鎖と、
(b)(a)の当該第1の抗体の2つの軽鎖と、
(c)第2の抗体の(改変された)重鎖であって、第2の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CLドメイン対を含み、当該重鎖のC末端に、当該第2の抗体の第2のVH-CLドメイン対のN末端が、ペプチドリンカーを介して融合している、第2の抗体の(改変された)重鎖と、
(d)それぞれCL-CH1ドメインを含む、(c)の当該第2の抗体の2つの(改変された)軽鎖と
を含む。
【0263】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、重鎖のN末端が、ペプチドリンカーを介して軽鎖のC末端に接続している、第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖と
を含む。
【0264】
(a)の抗体は、(b)で報告される改変を含まず、重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0265】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
(b)VH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合するFvフラグメントと
を含み、両ドメインが、ジスルフィド架橋を介して互いに接続しており、
VH2ドメイン又はVL2ドメインのいずれかのみが、第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の重鎖又は軽鎖にペプチドリンカーを介して融合する。
【0266】
二重特異性抗体において、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0267】
一態様において、VH2ドメイン又はVL2ドメインのうち他方は、第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の重鎖又は軽鎖にペプチドリンカーを介して融合していない。
【0268】
本明細書で報告される全ての態様において、第1の軽鎖は、VLドメインとCLドメインとを含み、第1の重鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと、ヒンジ領域と、CH2ドメインと、CH3ドメインとを含む。
【0269】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFabフラグメントと、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに置き換わっている、1つのCrossFabフラグメントと、
(c)第1のFc領域の重鎖と第2のFc領域の重鎖とを含む1つのFc領域を含む、三価抗体であり、
2つのFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、CrossFabフラグメントのCLドメインのC末端は、Fabフラグメントの1つのVHドメインのN末端に接続している。
【0270】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFabフラグメントと、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに置き換わっている、1つのCrossFabフラグメントと、
(c)第1のFc領域の重鎖と第2のFc領域の重鎖とを含む1つのFc領域を含む、三価抗体であり、
第1のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドの1つのN末端に接続しており、CrossFabフラグメントのCLドメインのC末端は、他の重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、第2のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、第1のFabフラグメントのVHドメインのN末端に、又はCrossFabフラグメントのVHドメインのN末端に接続している。
【0271】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
(b)重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントを含むVH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合し、軽鎖フラグメント内で、可変軽鎖ドメインVL2が、当該抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換えられており、重鎖フラグメント内で、可変重鎖ドメインVH2が、当該抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換えられている、Fabフラグメントと
を含み、
重鎖Fabフラグメントは、全長抗体の重鎖の1つのCH1ドメインと、全長抗体のそれぞれのFc領域との間に挿入され、軽鎖FabフラグメントのN末端は、全長抗体の重鎖と対を形成する全長抗体の軽鎖のC末端にコンジュゲートされ、その中に重鎖Fabフラグメントが挿入される。
【0272】
一態様において、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
(b)重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントとを含むVH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合し、軽鎖フラグメント内で、可変軽鎖ドメインVL2が、当該抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換えられており、重鎖フラグメント内で、可変重鎖ドメインVH2が、当該抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換えられており、Fabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、全長抗体の重鎖の1つのN末端にコンジュゲートされており、Fabフラグメントの軽鎖フラグメントのC末端は、全長抗体の重鎖と対を形成する全長抗体の軽鎖のN末端にコンジュゲートされており、これに対し、Fabフラグメントの重鎖フラグメントがコンジュゲートされている、Fabフラグメントと
を含む。
【0273】
ポリヌクレオチド
本明細書に記載の二重特異性抗体又はそのフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチドが更に提供される。
【0274】
「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、これにより、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線状又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。誘導体化された糖又はホスフェート骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例として、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子は、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子及びRNA分子も包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、改変されていなくてもよく、又は改変されていてもよい。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために対象にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい。(例えば、Stadler ert al,Nature Medicine 2017,published online 12 June 2017,doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2 101 823号B1を参照)。
【0275】
「単離された」ポリヌクレオチドは、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離されたポリヌクレオチドは、元々その核酸分子を含む細胞に含まれているが、その核酸分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子を含む。
【0276】
本発明の二重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドは、完全な抗原結合分子をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は同時発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。一緒に発現するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な抗原結合分子を形成してもよい。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は、免疫グロブリンの重鎖部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされ得る。共発現すると、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して免疫グロブリンを形成する。
【0277】
いくつかの態様において、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載する本発明による二重特異性抗体に含まれるポリペプチドをコードする。
【0278】
一態様において、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、PD1に特異的に結合する当該第1の抗原結合ドメインは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメインと、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLドメインとを含む。
【0279】
本発明で使用するための二重特異性抗体の調製
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生することができる。これらの方法のために、抗体をコードする1つ以上の単離された核酸(複数可)が提供される。
【0280】
天然抗体又は天然抗体フラグメントの場合、2つの核酸が必要であり、1つは軽鎖又はそのフラグメント用で、もう1つは重鎖又はそのフラグメント用である。そのような核酸(複数可)は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖(複数可))をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター上、又は異なる発現ベクター上にあってもよい。4つの核酸が必要とされるヘテロ二量体重鎖を有する特定の二重特異性抗体の場合、1つは第1の軽鎖のため、1つは、ヘテロモノマーFc領域ポリペプチドを含む第1の重鎖のため、1つは第2の軽鎖のため、1つは、第2のヘテロモノマーFc領域ポリペプチドを含む第2の重鎖のためのものである。4つの核酸は、1つ以上の核酸分子又は発現ベクターの中に含まれ得る。例えば、そのような核酸(複数可)は、第1のVLを含むアミノ酸配列及び/又は第1のヘテロモノマーFc領域を含む第1のVHを含むアミノ酸配列及び/又は第2のVLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体の第2のヘテロモノマーFc領域(例えば、抗体の第1及び/又は第2の軽鎖及び/又は第1及び/又は第2の重鎖)を含む第2のVHを含むアミノ酸配列をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター上又は異なる発現ベクター上にあってもよく、通常、これらの核酸は、2つ又は3つの発現ベクター上に位置しており、すなわち、1つのベクターは、これらの核酸のうち、2つ以上を含んでいてもよい。これらの二重特異性抗体の例は、CrossMab及びT細胞二重特異性抗体である(例えば、Schaefer、W.et al、PNAS、108(2011)11187-1191を参照)。例えば、ヘテロモノマー重鎖の1つは、いわゆる「ノブ変異」(T366Wと、任意に、S354C又はY349Cのうち1つ)を含み、他方は、いわゆる「ホール変異」(T366S、L368A及びY407Vと、任意に、Y349C又はS354C)を含む(例えば、Carter,P.et al.,Immunotechnol.2(1996)73を参照)。
【0281】
一態様において、本明細書に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、PD1及びLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインのVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードする。更なる態様において、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。あるそのような態様において、宿主細胞は、以下を含む(例えば、以下を用いて形質転換されている)。(1)アミノ酸配列をコードする第1の核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第1のVLを含み、他方が第1のVHを含む、第1のベクターと、アミノ酸配列をコードする第2の核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第2のVLを含み、他方が第のVHを含む、第2のベクター、又は(2)アミノ酸配列をコードする第1の核酸を含み、アミノ酸配列の一方が可変ドメイン(好ましくは軽鎖可変ドメイン)を含む第1のベクターと、アミノ酸配列をコードする核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が軽鎖可変ドメインを含み、他方が第1の重鎖可変ドメインを含む第2のベクターと、アミノ酸配列をコードする核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が第2のベクターとはそれぞれ他の軽鎖可変ドメインを含み、他方が第2の重鎖可変ドメインを含む第3のベクター、又は(3)アミノ酸配列をコードする核酸を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第1のVLを含む第1のベクターと、抗体の第1のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターと、抗体の第2のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第3のベクターと、抗体の第2のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第4のベクター。一態様において、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一態様において、二重特異性抗体を製造する方法が提供され、この方法は、上に提供されるように、抗体の発現に適した条件で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意に、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することとを含む。
【0282】
本明細書に記載される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体又は抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の組換え産生のため、例えば上記のような二重特異性抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
【0283】
抗体コード化ベクターのクローニング又は発現のための好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされていない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌中の抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号、及び米国特許第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌(E.coli)における抗体フラグメントの発現を記載するCharlton,K.A.,In:Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2003),pp.245-254も参照)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製され得る。
【0284】
原核生物に加えて、糸状菌や酵母等の真核生物は、抗体をコードするベクターのクローニング又は発現宿主として適しており、その中には、グリコシル化経路が「ヒト化」された菌株や酵母株が含まれ、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体が産生される。Gerngross,T.U.,Nat.Biotech.22(2004)1409-1414、及びLi,H.et al.,Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照されたい。
【0285】
(グリコシル化)抗体の発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。
【0286】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術)を参照。
【0287】
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚腎臓株(例えば、Graham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74に記載されるような、293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.、Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載されるようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);TRI細胞(例えば、Mather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載される);MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220);並びに骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が含まれる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説については、例えば、Yazaki,P.and Wu,A.M.,Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2004),pp.255-268を参照されたい。
【0288】
アッセイ
本明細書に提供される二重特異性抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物活性について、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、同定され得るか、スクリーニングされ得るか、又は特徴付けられ得る。
【0289】
1.親和性アッセイ
対応する抗原に対する、本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子、抗体及び抗体フラグメントの親和性は、Biacore(登録商標)装置(GE Healthcare)などの標準的な装置、受容体又は組換え発現によって得られ得るような標的タンパク質を用い、表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施例に記載される方法に従って決定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示的及び例示的な実施形態は、国際公開第2018/185043号の実施例2、8又は11に記載されている。一態様によれば、KDは、BIACORE(登録商標)T100機(GE Healthcare)を用い、25℃で表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0290】
2.結合アッセイ及びその他のアッセイ
一態様において、本発明の二重特異性抗体を、例えばELISA、ウェスタンブロットなどの公知の方法によってその抗原結合活性について試験する。対応する組換え抗原又は抗原発現細胞への本明細書で提供される抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の結合は、国際公開第2018/185043号の実施例8又は11に記載されるようにELISAによって評価することができる。更なる態様において、新鮮な末梢血単核細胞(PBMCs)は、異なる末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、単球、NK細胞及びT細胞に対する結合を示すために、結合アッセイに使用され得る。
【0291】
別の態様において、2つの異なる受容体PD1及びLAG3の二量体化又は最後の結合/相互作用を示すために、細胞二量体化アッセイを使用し、これらの受容体は、両標的に対して二重特異性抗体を用いて切断するか、又は架橋する際に、酵素の2つのフラグメントと細胞質融合する。ここで、唯一1つの受容体のみが、酵素活性を示さない。この特異的な相互作用について、両受容体の細胞質ゾルC末端は、個々に、レポーター酵素の異種サブユニットに融合する。1つの酵素サブユニットのみがレポーター活性を示さなかった。しかしながら、両受容体に対する同時結合は、両受容体の局所的な細胞蓄積、2種類の異種酵素サブユニットの相補性を引き起こし、最終的に、基質を加水分解し、それによって、化学発光シグナルを生成する特異的で機能的な酵素の形成をもたらすと予想される(国際公開第2018/185043号の実施例11)。
【0292】
3.活性アッセイ
一態様において、生物学的活性を有する抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を同定するためのアッセイが提供される。生体活性としては、例えば、異なる免疫細胞、特にT細胞の活性化及び/又は増殖、免疫調整サイトカイン、例えば、IFNγ又はTNF-アルファの分泌、PD1経路のブロック、LAG3経路のブロック、腫瘍細胞の死滅を高める能力が挙げられるだろう。in vivo及び/又はin vitroでそのような生体活性を有する抗体も提供される。特定の態様において、本発明の抗体は、そのような生体活性について試験される。一態様において、1つの個体(ドナーX)由来のリンパ球から、別の個体(ドナーY)由来のリンパ球までの活性化を測定する免疫細胞アッセイが提供される。混合リンパ球反応(MLR)を使用は、リンパ球エフェクター細胞に対するPD1経路をブロックする効果を示すことができる。このアッセイ中のT細胞は、本発明の二重特異性抗体存在下又は非存在下、活性化及びそのIFN-γ分泌について試験された。このアッセイは、国際公開第2018/185043号の実施例9により詳細に記載されている。
【0293】
医薬組成物、製剤、及び投与経路
更なる態様において、本発明は、例えば、以下の治療方法のいずれかに使用するための、本明細書で提供される抗CD20/抗CD3抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体を含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬組成物は、本明細書で提供される抗CD20/抗CD3抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む。別の実施形態において、医薬組成物は、本明細書で提供される二重特異性抗体のいずれかと、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、以下に記載するもの)とを含む。
【0294】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容され得る賦形剤に溶解又は分散した治療有効量の1つ以上の二重特異性抗体を含む。「薬学的に許容され得る又は薬理学的に許容され得る」という語句は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して一般に無毒である、すなわち、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与されたとき、副作用、アレルギー反応又は他の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。少なくとも1つの抗体と、任意に多追加の有効成分とを含む医薬組成物の調製は、本明細書に参考として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.Mack Printing Company、1990に例示されるように、本開示の観点で、当該技術分野で既知である。特に、組成物は、凍結乾燥された製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る賦形剤」としては、当業者には知られているだろうが、任意及び全ての溶媒、バッファー、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張性剤、塩類、安定化剤及びこれらの組合せが挙げられる。
【0295】
非経口組成物には、注射による投与、例えば、皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射用に設計されたものが含まれる。注射のために、本発明の抗原結合分子は水溶液中で、好ましくは、ハンクス溶液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液などの、生理学的に適合性の緩衝剤中で製剤化し得る。溶液は、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含んでもよい。或いは、融合タンパク質は、好適なビヒクル、例えば、滅菌した発熱性物質除去水と共に使用前に構成するための、粉末形態であってもよい。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の融合タンパク質を必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁液又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の追加の所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。エンドトキシンの汚染は、安全なレベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきであることが理解される。薬学的に許容され得る好適な賦形剤には、限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を上げる化合物(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストラン等)を含んでいてもよい。任意に、懸濁液は、好適な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油注射懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル(ethyl cleat)若しくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。
【0296】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性調製物を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成型物品の形態である。特定の実施形態において、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせ)の組成物での使用によってもたらされてもよい。
【0297】
本発明の例示的な薬学的に許容され得る賦形剤は、更に、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)を含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様において、sHASEGPを、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わせる。
【0298】
例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤には、ヒスチジン-酢酸緩衝液が含まれる。
【0299】
既に記載した組成物に加え、二重特異性抗体は、デポー製剤として配合されてもよい。そのような徐放性調製物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与することができる。それゆえに、例えば融合タンパク質は、好適なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容され得るオイルの乳剤エマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、又は例えば、低溶解性の塩等の難溶性誘導体として製剤化してよい。
【0300】
本発明の二重特異性抗原結合分子を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を医薬として使用可能な製剤へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。
【0301】
本明細書に開示される二重特異性抗体は、遊離酸又は遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に配合されてもよい。薬学的に許容され得る塩は、遊離酸又は塩基の生物学的活性を実質的に保持する塩である。薬学的に許容され得る塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成される酸付加塩、又は塩酸又はリン酸等の無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマンデル酸等の有機酸と形成されるものが挙げられる。また、遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは水酸化第二鉄等の無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカイン等の有機塩基に由来し得る。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0302】
本発明の組成物は、治療される特定の徴候に必要な1種類より多い有効成分も含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。かかる有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0303】
一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物、並びに本明細書に記載の抗PD1/抗LAG3抗体を含む第2の医薬が提供される。一態様において、医薬組成物は、CD20発現がんの治療に使用するためのものである。特定の態様において、医薬組成物は、B細胞増殖性障害、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患の治療に使用するためのものである。
【0304】
in vivo投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。
【0305】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の投与
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方(両方とも本明細書では物質と呼ばれる)は、非経口投与、肺内投与及び鼻腔内投与、並びに局所治療のために所望される場合は病変内投与を含む任意の好適な手段によって投与され得る。しかしながら、本明細書に記載される方法は、非経口、特に静脈内注入によって投与される治療剤に関して特に有用である。
【0306】
非経口輸液には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期か又は長期かに部分的に依存して、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射等の注射により行うことができる。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。一態様において、治療剤は非経口的に、特に静脈内投与される。特定の態様において、物質は静脈内注入によって投与される。別の態様において、物質は皮下投与される。
【0307】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方が、優良医療慣行と一致する様式で製剤化され、投薬され、投与されるであろう。この文脈において考慮すべき要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、及び医師に公知な他の要因が含まれる。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方は、必ずしもそうである必要はないが、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と共に任意に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する治療剤の量、障害又は治療の種類、及び上記の他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0308】
疾患の予防又は治療のために、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の適切な投薬量(それらの組み合わせ、又は1つ以上の他の追加の治療剤との組み合わせで使用される場合)は、治療される疾患の種類、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の種類、疾患の重症度及び経過、両方の薬剤が予防目的又は治療目的のいずれで投与されるか、以前の治療法、患者の病歴及び治療剤に対する応答、並びに主治医の裁量に依存する。各物質は、一度に又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の物質を、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかにかかわらず、対象に投与するための初期の候補投薬量とすることができる。上記の要因に応じて、典型的な1日あたりの投薬量は、約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲である可能性がある。数日間又はそれ以上にわたる反復投与の場合、治療は通常、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。二重特異性抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の例では、投薬量はまた、投与あたり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで、又はもっと多く、又はその間の誘導可能な任意の範囲を含んでいてもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重等が、上述の数に基づいて投与されてもよい。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg若しくは10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)の1つ以上の用量を患者に投与してもよい。かかる用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。最初のより高い負荷用量、続いて1回以上のより低い用量を投与することができる。しかしながら、他の投与レジメンが有用であってもよい。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。しかしながら、他の投与レジメンが有用であり得る。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0309】
一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方の投与は、単回投与である。特定の態様において、治療剤の投与は2回以上の投与である。そのような一態様において、物質は、毎週、2週間ごと、又は3週間ごと、特に2週間ごとに投与される。一態様において、物質は治療有効量で投与される。一態様において、物質は、約10μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約300μg/kg、約400μg/kg、約500μg/kg、約600μg/kg、約700μg/kg、約800μg/kg、約900μg/kg、又は約1000μg/kgの用量で投与される。一実施形態において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、抗PD1/抗LAG3抗体を投与せずに、対応する治療レジメンにおける抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の用量よりも高い用量で投与される。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の第1の用量の初期投与、及び抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、第2の用量は第1の用量よりも高い。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の第1の用量の初期投与、及び抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、第1の用量は第2の用量よりも低くない。
【0310】
一態様において、本発明による治療レジメンにおける抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与は、対象への抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の最初の投与(少なくとも同じ治療過程の範囲内で)である。一態様において、抗PD1/抗LAG3抗体の投与は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与の前に対象に行われない。別の態様において、抗PD1/抗LAG3抗体は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与前に投与される。
【0311】
別の態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、抗PD1/抗LAG3抗体との組み合わせで使用するためのものであり、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が併用治療の前に行われ、前治療と併用治療との間の期間が、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した個体におけるB細胞の減少に十分である。
【0312】
T細胞の活性化は、重度のサイトカイン放出症候群(CRS)をもたらす可能性がある。TeGenero(Suntharalingam et al.,N Engl J Med(2006)355,1018-1028)によって行われた第1相試験では、6人の健常ボランティア全員が、不適切に投薬されたT細胞刺激スーパー-アゴニスト抗CD28モノクローナル抗体の注入後急速に、ほぼ致死的な重症サイトカイン放出症候群(CRS)を経験した。対象への抗CD20/抗CD3二重特異性抗体などのT細胞活性化治療剤の投与に関連するサイトカイン放出は、II型抗CD20抗体、例えばオビヌツズマブでの当該対象の前治療によって有意に減少させることができる。GAZYVA(登録商標)前治療(Gpt)の使用は、腫瘍細胞の排除を媒介するために投薬開始から十分に高いT細胞活性化治療剤の曝露レベルを支持しながら、T細胞活性化治療剤(例えば、CRS)による強い全身性T細胞活性化からの高度に関連性のある有害事象(AE)のリスクが低減されるように、末梢血及び二次リンパ器官の両方におけるB細胞の急速な枯渇を助けるはずである。現在までに、オビヌツズマブの安全性プロファイル(サイトカイン放出を含む)は、進行中のオビヌツズマブ臨床試験において数百人の患者で評価及び管理されている。最後に、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体などのT細胞活性化治療剤の安全性プロファイルを支持することに加えて、Gptはまた、これらの固有の分子に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を防止するのに役立つはずである。
【0313】
本発明において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3抗体との組み合わせを、治療法において1つ以上の塚の薬剤との組み合わせで使用することができる。例えば、少なくとも1つの追加の治療剤を同時投与することができる。特定の態様において、追加の治療剤は免疫療法剤である。
【0314】
上述のそのような併用療法は、併用投与(同じ又は別個の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、治療剤の投与は、追加の1つ以上の薬剤の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に行うことができる。一実施形態において、治療剤の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、又は約1、2、若しくは3週間以内、又は約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に行われる。
【0315】
治療方法及び組成物
CD20は、幹細胞及び形質細胞を除いて大部分のB細胞で発現され(pan-B-細胞マーカー)、ほとんどのヒトB細胞悪性腫瘍(腫瘍関連抗原)、例えば多発性骨髄腫を除くリンパ腫及び白血病、例えば非ホジキンリンパ腫及び急性リンパ芽球性白血病で頻繁に発現される。
【0316】
一態様において、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3抗体を対象に投与することを含む、対象におけるCD20発現がんを治療又は進行遅延させる方法が提供される。
【0317】
そのような一態様において、本方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を対象に投与することを更に含む。更なる実施形態において、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3抗体を対象に投与することを含む、B細胞を枯渇させる方法が本明細書で提供される。上記の態様のいずれかによる「個体」又は「対象」は、好ましくはヒトである。
【0318】
更なる態様において、抗CD20/抗CD3抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体を含む、がん免疫療法に使用するための組成物が提供される。特定の実施形態において、がん免疫療法の方法に使用するための抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3抗体を含む組成物が提供される。
【0319】
更なる態様において、医薬の製造又は調製における、抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3抗体を含む組成物の使用が本明細書で提供される。一態様において、医薬はCD20発現がんの治療用である。一態様において、医薬は、B細胞増殖性障害の治療のためのものである。更なる態様において、薬剤は、B細胞増殖性障害を有する個体に有効量の薬剤を投与することを含む、B細胞増殖性障害を治療する方法に使用するためのものである。そのような一態様において、上記方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。更なる態様において、医薬はB細胞を枯渇させるためのものである。B細胞増殖性障害は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される。特定の一態様において、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ芽球性白血病である。
【0320】
更なる態様において、B細胞がんを治療するための方法が本明細書で提供される。一実施形態において、本方法は、そのようなB細胞がんを有する個体に有効量の抗PD1/抗LAG3抗体を投与することを含む。そのような一実施形態において、本方法は、以下に記載されるように、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体へ投与することを更に含む。上記実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであってもよい。特に、B細胞がんは、B細胞リンパ腫又はB細胞白血病である。一態様において、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ芽球性白血病である。
【0321】
上述の併用療法は、併用投与(同じ又は別個の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本明細書に報告される抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の投与は、追加の治療剤(複数の場合がある)の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に行われ得る。一態様において、有効量の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与、有効量の抗PD1/抗LAG3抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内、又は約1、2若しくは3週間以内、又は約1、2、3、4、5若しくは6日以内に行われる。
【0322】
本明細書に記載の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体(及び任意の追加の治療剤)の両方を、非経口、肺内及び鼻腔内、並びに局所治療のために所望される場合は病巣内投与を含む任意の好適な手段によって投与することができる。非経口輸液には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期か又は長期かに部分的に依存して、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射等の注射により行うことができる。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。
【0323】
本明細書に報告されるように、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方が、優良医療慣行と一致する様式で製剤化され、投薬され、投与されるであろう。この文脈において考慮すべき要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、及び医師に公知な他の要因が含まれる。抗体は、必ずしもそうである必要はないが、任意に、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類、及び上記の他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0324】
当業者は、多くの場合、二重特異性分子は治癒をし得ないが、部分的な利益のみを提供する場合があることを容易に認識する。いくつかの実施形態において、何らかの利点を有する生理学的変化も治療的に有益であるとみなされる。したがって、いくつかの態様において、生理学的変化を与える二重特異性抗体の量は、「有効量」又は「治療有効量」とみなされる。
【0325】
本明細書で定義される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び抗PD1/抗LAG3抗体の両方は、一度に又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の二重特異性抗体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかによらず、患者に投与するための初期の候補投薬量であってもよい。上記の要因に応じて、典型的な1日あたりの投薬量は、約1μg/kg~10mg/kg又はそれ以上の範囲である可能性がある。数日間又はそれ以上にわたる反復投与の場合、治療は通常、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の例示的投薬量の一例は、約0.05μg/kg~約1000μg/kgの範囲であろう。抗PD1/抗LAG3抗体の場合、用量はまた、投与当たり、約0.01mg/体重kg、約0.05mg/体重kg、約2mg/体重kg、約4mg/体重kg、約10mg/体重kg、約20mg/体重kg、約30mg/体重kg、約40mg/体重kg、約45mg/体重kg、約50mg/体重kg、約100mg/体重kg、約200mg/体重kg、約300mg/体重kg、約400mg/体重kg、約500mg/体重kg、約600mg/体重kg、約800mg/体重kg、約1000mg/体重kg、上部約1200mg/体重kg又はそれ以上、及びその中の誘導可能な任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約0.05μg/kg/体重~約500mg/kg/体重等が、上述の数に基づいて投与されてもよい。一態様において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、約0.01mg、2.5mg~約10mg又は約20mg又は約30mgの用量で患者に投与され得る。そのような投薬量を、断続的に、例えば、毎週、又は3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者は、約2~約20回、又は例えば約6回の融合タンパク質の投薬を受ける)。初期のより低い負荷用量、続いて1つ以上のより高い用量が投与され得る。しかしながら、他の投与レジメンが有用であってもよい。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。一態様において、抗PD1/抗LAG3は、約100mgから、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、又は約1500mgの用量で患者に投与され得る。
【0326】
本明細書で定義されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、意図した目的を達成するために有効な量で、一般的に使用されるだろう。疾患の症状を治療又は予防するための使用のために、本発明の二重特異性抗体、又はその医薬組成物が、治療有効量で投与されるか、又は塗布される。治療的有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0327】
全身投与の場合、治療有効投薬量は、in vitroアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物で決定されるIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで配合してもよい。そのような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量を更に正確に決定することができる。
【0328】
初期投薬量も、in vivoデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算することができる。当業者であれば、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができるであろう。
【0329】
治療効果を維持するのに十分な二重特異性抗体 の血漿濃度を与えるように、投薬量及び投薬間隔は、個々に調節されてもよい。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿レベルは、各日に複数回用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定することができる。
【0330】
局所投与又は選択的な取り込みの場合には、二重特異性抗体の有効な局所濃度は、血漿濃度と関係がない場合がある。当業者は、過度な実験を行うことなく、治療に有効な局所投薬量を最適化し得る。
【0331】
本明細書に記載の二重特異性抗体の治療に有効な投薬量は、実質的な毒性を引き起こすことなく、一般的に治療利益を与える。融合タンパク質の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物研究を使用して、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定できる。毒性効果と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す二重特異性抗体が好ましい。一実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用に適した投薬量の範囲の処方に使用できる。投薬量は、好ましくは毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、様々な要因、例えば、用いられる剤形、利用される投与経路、対象の症状などに応じて、この範囲内で変動し得る。正確な製剤、投与経路及び投薬量は、患者の症状(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1のFingl et al.,1975を参照)を考慮して個々の医師が選択することができる。
【0332】
本発明の二重特異性抗体で治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床反応が適切でない場合(毒性を排除する場合)、治療をより高いレベルに調整することも知っている。対象となる障害の管理における投与量の大きさは、治療される症状の重症度、投与経路等によって変わる。症状の重症度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価されてもよい。さらに、投与量及びおそらく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び反応に応じて変化する。
【0333】
そのような他の薬剤は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。有効量のそのような他の薬剤は、使用される融合タンパク質の量、障害又は治療の種類、上述の他の因子に依存する。二重特異性抗体は、一般的に、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0334】
上述のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、二重特異性抗体の投与は、追加の治療薬剤及び/若しくはアジュバントの投与前、追加の治療剤及び/若しくはアジュバントの投与と同時に、並びに/又は追加の治療薬剤及び/若しくはアジュバントの投与後に行われてもよい。
【0335】
H.製造品
本発明の別の態様において、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、静注溶液袋等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、症状の治療、予防、及び/又は診断に有効な、単独の又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書で上できてされる抗PD1/抗LAG3抗体である。
【0336】
ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を治療するために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)組成物を含む第1の容器であって、該組成物が抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む、第1の容器と、(b)組成物を含む第2の容器であって、該組成物が抗PD1/抗LAG3抗体を含む、第2の容器とを備え得る。本発明のこの実施形態における製造品は、特定の症状を治療するために上記組成物が使用可能であることを示す添付文書を更に備えてもよい。
【0337】
これに代えて、又はこれに加えて、製造品は、薬学的に許容され得る緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。本製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に備えてもよい。
【表C】
【0338】
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に与えられる。抗体鎖のアミノ酸は、上に定義したようなKabat(Kabat,E.A.,et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))によるナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、参照される。
【0339】
発明の態様
以下に、本発明の態様のいくつかを列挙する。
【0340】
1.CD20発現がんを治療する方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であって、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用される、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0341】
2.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、項目(項)1に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0342】
3.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、IgG FcドメインであるFcドメイン、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、前記Fcドメインが、Fc受容体への、特にFcγ受容体に対する結合を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、項1又は2に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0343】
4.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインを含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0344】
5.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0345】
6.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含むVHドメインと、
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含むか、又は
(b)
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H3と
を含む、VHドメインと、
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L3と
を含む、VLドメインと
を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0346】
7.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む前記VHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含む前記VLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0347】
8.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0348】
9.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、項1~5又は7のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0349】
10.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、
配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインと
を含む、項1~9のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0350】
11.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合するFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合するFabフラグメントとを含む、項1~10のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0351】
12.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合するFabフラグメントを含み、前記可変ドメインVL及びVHが、VLが重鎖の一部であり、VHが軽鎖の一部であるように互いに置き換えられている、項1~11のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0352】
13.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、PD-1に対する一価結合及びLAG3に対する一価結合を含む、項1~12のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0353】
14.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、
(a)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、項1~13のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0354】
15.前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、配列番号35のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号36のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、項1~14のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0355】
16.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、重鎖可変領域(VHCD3)及び軽鎖可変領域(VLCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、重鎖可変領域(VHCD20)及び軽鎖可変領域(VLCD20)を含む第2の抗原結合ドメインと、を含む、項1~15のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0356】
17.前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号41のCDR-H1配列、配列番号42のCDR-H2配列、及び配列番号43のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)、並びに/又は配列番号44のCDR-L1配列、配列番号45のCDR-L2配列、及び配列番号46のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む、項1~16のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0357】
18.前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD3)及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD3)を含む、項1~17のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0358】
19.前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号49のCDR-H1配列、配列番号50のCDR-H2配列、及び配列番号51のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号52のCDR-L1配列、配列番号53のCDR-L2配列、及び配列番号54のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、項1~18のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0359】
20.前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)及び/又は配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、項1~19のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0360】
21.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、CD20に結合する第3の抗原結合ドメインを含む、項1~20のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0361】
22.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む、項1~21のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0362】
23.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせで使用され、前記組み合わせが約1週間~3週間の間隔で投与するためのものである、項1~22のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0363】
24.II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が前記併用治療の前に行われ、前記前治療と前記併用治療との間の期間が、前記II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した個体におけるB細胞の減少に十分である、項1~23のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗CD20/抗CD3二重特異性抗体。
【0364】
25.疾患、特にCD20発現がんの併用治療、逐次治療又は同時治療に使用するための、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせを含む、医薬組成物。
【0365】
26.抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び薬学的に許容され得る担体と、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を含む第2の医薬とを含む、医薬組成物。
【0366】
27.CD20発現がん、特に非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される血液がんの治療に使用するための、項26に記載の医薬組成物。
【0367】
28.CD20発現がんを治療するための医薬の製造における、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体との組み合わせの使用。
【0368】
29.対象においてCD20発現がんを治療するための方法であって、有効量の抗CD20/抗CD3抗体及び有効量の抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【0369】
30.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、項29に記載の方法。
【0370】
31.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体が、静脈内投与又は皮下投与される、項29又は30に記載の方法。
【0371】
32.前記抗CD20/抗CD3二重特異性抗体が、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体と同時に、前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の前に、又は前記抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の後に投与される、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【実施例】
【0372】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬を製造者の指示書に従って使用した。ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、以下に与えられる:Kabat,E.A.et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Ed.,NIH Publication No 91-3242.
【0373】
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定によって決定した。
【0374】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、適切なテンプレートを使用したPCRによって生成されたか、又はGeneart AG(ドイツ国レーゲンスブルク)によって、合成オリゴヌクレオチド及びPCR産物から自動遺伝子合成によって合成した。正確な遺伝子配列が利用できない場合においては、最も近い相同体の配列に基づきオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、適切な組織に由来するRNAから、RT-PCRにより遺伝子を単離した。特異な制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準のクローニング/シーケンシングベクター中にクローニングした。プラスミドDNAを形質転換細菌から精製し、濃度をUV分光法によって測定した。サブクローニングした遺伝子フラグメントのDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。それぞれの発現ベクターへのサブクローニングを可能にするために、好適な制限部位を有する遺伝子セグメントを設計した。全てのコンストラクトは、真核細胞における分泌のためのタンパク質を標的とするリーダーペプチドをコードする、5’末端DNA配列を使用して設計された。
【0375】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology(2000),Bonifacino,J.S.,Dasso,M.,Harford,J.B.,Lippincott-Schwartz,J.and Yamada,K.M.(eds.),John Wiley&Sons,Inc.に記載されているように、標準的な細胞培養技術を使用した。
【0376】
タンパク質精製
標準的なプロトコルを参照して、フィルタにかけた細胞培養上清からタンパク質を精製した。簡潔に述べると、抗体を、Protein A Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出はpH2.8で達成され、その直後に試料を中和した。凝集したタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によって、PBS中、又は20mM ヒスチジン、150mM NaCl(pH6.0)中、単量体抗体から分離させた。単量体抗体画分をプールし、(必要な場合)例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し、-20℃又は-80℃で凍結保存した。これらの試料の一部が、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析によるその後のタンパク質解析及び分析的特性評価のために提供された。
【0377】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造業者の説明書に従って、使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)、及びNuPAGE(登録商標)MES(還元型ゲル、NuPAGE(登録商標)酸化防止剤ランニングバッファー助剤を添加)又はMOPS(非還元型ゲル)ランニングバッファーを使用した。
【0378】
分析用サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、HPLCクロマトグラフィーによって行った。簡潔には、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システムの300mM NaCl、50mM KH2PO4/K2HPO4(pH7.5)におけるTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-Systemの2×PBSにおけるSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶離したタンパク質をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901を標準とした。
【0379】
表面プラズモン共鳴(SPR)(BIACORE)を用い、それぞれの抗原に対する多重特異性抗体の結合及び結合親和性の決定。
それぞれの抗原に対する、生成した抗体の結合は、BIACORE装置(GE Healthcare Biosciences AB、ウプサラ、スウェーデン)を用い、表面プラズモン共鳴によって観察された。簡潔には、親和性測定のために、ヤギ抗ヒトIgG、JIR 109-005-098抗体を、それぞれの抗原に対する抗体の提示のためにアミンカップリングを介してCM5チップ上に固定化する。結合を、HBS緩衝液(HBS-P(10mM HEPES、150mM NaCl、0.005%Tween 20、ph7.4)、25℃(又は代替的に37℃)中で測定する。抗原(R&D Systems又は社内精製)を溶液中に様々な濃度で添加した。80秒~3分の抗原注入により会合を測定し、チップ表面をHBS緩衝液で3~10分間洗浄して解離を測定し、1:1ラングミュア結合モデルを用いてKD値を推定した。システム固有のベースラインドリフトの補正及びノイズシグナル低減のために、試料曲線から陰性対照データ(例えば、緩衝曲線)を差し引く。それぞれのBiacore Evaluation Softwareを、センサーグラムの分析及び親和性データの計算に使用する。
【0380】
実施例1
T細胞二重特異性(TCB)抗体の調製、精製及び特性評価
TCB分子は、国際公開第2016/020309号A1に記載される方法に従って調製された。
【0381】
実験で使用した抗CD20/抗CD3二重特異性抗体(CD20 CD3 TCB又はCD20 TCB)は、国際公開第2016/020309号A1の実施例1に記載されている分子Bに対応する。分子Bは、「2+1 IgG CrossFab」抗体であり、2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖から構成される。2つの異なる重鎖のアセンブリを促進するために、CH3ドメイン中の点変異(「ノブ・イントゥ・ホール」)を導入した。国際公開第2012/130831号に記載の方法に従い、Pro329Gly、Leu234Ala、及びLeu235Ala変異を、ノブ及びホール重鎖の定常領域に導入して、Fcγ受容体への結合を消失させた。2つの異なる軽鎖の正しい集合を促進するために、CD3結合FabのVHドメイン及びVLドメインの交換、並びにCD20結合FabのCHドメイン及びCLドメインの点変異を行った。2+1は、その分子が、CD20に特異的な2つの抗原結合ドメインと、CD3に特異的な1つの抗原結合ドメインを有することを意味する。
【0382】
CD20 TCBは、配列番号57、配列番号58、配列番号59及び配列番号60のアミノ酸配列を含む。2+1フォーマットの二重特異性抗体の概略図を
図1Bに示す。
【0383】
この分子は、国際公開第2016/020309号A1の実施例1において更に特徴付けられる。
【0384】
実施例2
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の調製、精製及び特性評価
1つの結合アームにおいてVH/VLドメイン交換/置き換え(CrossMAb
Vh-VL)によりヒトPD1及びヒトLAG3に結合する二重特異性抗体を、国際公開第2018/185043号の実施例10.1に記載されるように作製した。多重特異性1+1 CrossMAb
Vh-Vl抗体の調製は、国際公開第2009/080252号にも記載されている。二重特異性抗体を、表1に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを使用して発現させた。1+1 CrossMAb
Vh-Vl二重特異性抗体の模式的な構造を
図1Aに示す。
【表1】
【0385】
全てのコンストラクトについて、ノブ・イントゥ・ホールヘテロ二量体化技術を、第1のCH3ドメインにおける典型的なノブ(T366W)置換及び第2のCH3ドメインにおける対応するホール置換(T366S、L368A及びY410V)(及び2つの追加の導入されたシステイン残基S354C/Y349’C)と共に使用した(上に記載するそれぞれの対応する重鎖(HC)配列に含まれる)。国際公開第2012/130831号に記載の方法に従い、Pro329Gly、Leu234Ala、及びLeu235Ala変異を、ノブ及びホール重鎖の定常領域に導入して、Fcγ受容体への結合を消失させた。正しい対形成を改善するために、従来のFab(帯電バリアント)のCH及びCLドメインにアミノ酸置換を更に導入した。
【0386】
上のように発現した二重特異性抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって、上清から精製した。得られた生成物を、質量分析法によって属性について特性決定し、SDS-PAGEによって純度、モノマー含有量及び安定性などの分析特性を特性決定した。
【0387】
比較のために使用される親PD1抗体PD1(0376)IgG1は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0388】
実施例3
B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共培養したヒトCD4 T細胞による細胞傷害性グランザイムB放出に対するCD20 CD3 TCBとの組み合わせでのPD-1/LAG-3二重特異性抗体の効果
PD-1/LAG-3二重特異性抗体とCD20-TCBとの組み合わせ可能性を調べるために、本発明者らは、EBV不死化B細胞リンパ芽球様腫瘍細胞株(ARH77)の存在下で新たに精製したCD4 T細胞を5日間共培養するアッセイを開発した。本発明者らは、PD-1リガンド、PD-L1の中間発現レベル、及び高レベルのLAG-3リガンドMHC-IIのためにARH77細胞株を選択し、PD-1に加えてLAG-3遮断の寄与の評価を可能にした。
【0389】
CD4 T細胞を、5人の健常ドナーから得た108個のPBMCから、マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によって濃縮した。培養前に、CD4 T細胞を、5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。次いで、105個のCD4 T細胞を、ブロッキング抗PD1抗体(親抗PD-1、ニボルマブ又はペンブロリズマブのいずれか)、又は10-7~10μg/mlの間の濃度のPD-1/LAG-3二重特異性抗体PD1/LAG3 0927(PD1-LAG3 BsAb)、及び固定濃度のCD20-TCB(66pM)の存在下又は非存在下で、B細胞株と共に(5:1)96ウェルプレートに蒔いた。5日後、最後の5時間のインキュベーションのために、本発明者らは、タンパク質輸送を遮断し、サイトカインの細胞内蓄積を可能にするために、Golgi-plug及びGolgi-stopを添加した。
【0390】
興味深いことに、本発明者らは、グランザイムBのCD4 T細胞分泌に対する、CD20-TCBとの組み合わせでのPD-1遮断抗体の用量依存的効果を観察した(
図2を参照)。しかしながら、等モルのPD1-LAG3 BsAbは、CD4 T細胞によって分泌されるグランザイムBを用量依存的様式で増加させることにおいてPD-1遮断抗体よりも強力かつ有効であり(E
max)、CD20-TCBに対する好適な組み合わせパートナーとなった。対応するEC50値を以下の表2に示す:
【表2】
【0391】
実施例4
ヒト化NSGマウスにおけるWSU-DLCL2移植片モデルにおけるin vivoでのPD1/LAG3二重特異性抗体とCD20 CD3 TCBとの併用療法の強力な抗腫瘍効果
CD20 CD3 TCB(CD20 TCB)との組み合わせでのPD-1/LAG-3二重特異性抗体PD1/LAG3 0927(PD1-LAG3 BsAb)の抗腫瘍活性を、皮下注射されたヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫モデルWSU-DLCL2を移植したHSC-NSGマウスにおいてin vivoで評価した。この組み合わせの有効性を、単一治療のCD20 CD3 TCB、及びニボルマブ又はニボルマブ+抗LAG3参照抗体とのその組み合わせと比較した。
【0392】
a)実験材料及び方法
WSU-DLCL2細胞株の調製:WSU-DLCL2細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)は、最初はECACC(European Collection of Cell Culture)から入手し、拡大後はRoche Glycart内部細胞バンクに寄託した。細胞を、10%FCS及び1×Glutamaxを含有するRPMI中で培養した。5%CO2で、水飽和した雰囲気中、37℃で細胞を培養した。98.6%の生存率でRPMI細胞培養培地(Gibco)及びGFRマトリゲル(1:1、総体積100μl)中、動物あたり1.5×106個の細胞(in vitro継代P13)をマウスごとに皮下注射した。
【0393】
完全ヒト化マウスの作製:実験開始時に4~5週齢のメスNSGマウス(Jackson Laboratory)を、公認ガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、特定病原体不在条件下、12時間明/ 12時間暗の日周期で維持した。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(P 2011/128)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。NSGマウスに、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1×105のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入14~16週目に、ヒト化免疫不全マウス(HSC-NSG)を舌出血させ、ヒト化の成功についてフローサイトメトリーによって血液を分析した。効率的に生着したマウスを、ヒトT細胞頻度に従って異なる治療群に無作為に分けた。
【0394】
有効性実験:完全ヒト化HSC-NSGマウスに、1:1の比でマトリゲルの存在下、0日目に1.5×10
6個のWSU-DLCL2細胞(CD20を発現するヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を皮下チャレンジした。全実験期間中、腫瘍をカリパスによって週に3回測定した。14日目(腫瘍平均約350~400mm
3)に、マウスを7つの群に無作為化し(
図3)、最初の治療法を行った。毎週の予定された治療法を開始した:A群はビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水、PBS)を受け、B群はCD20 TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)を受け、C群はCD20 TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+ニボルマブ(1.5 mg/kg、1回/週、i.v.)を受け、D群はCD20 TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+ニボルマブ(1.5mg/kg、1回/週、i.v.)+抗LAG3(BMS-986016、1.5mg/kg、1回/週、i.v.)を受け、E群はCD20 TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+PD1-LAG3 BsAb(1.5mg/kg、1回/週、i.v.)を受け、F群はCD20 TCB(0.15mg/kg、1回/週、i.v.)+PD1-LAG3 BsAb(3mg/kg、1回/週、i.v.)を受けた。治療を、最大400μlの腹腔内注射によって行った。カリパスを用いて腫瘍増殖を週3回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)×L(W:幅、L:長さ)
【0395】
試験は45日目に終了した。
【0396】
したがって、治療法の影響は、腫瘍サイズを測定することによって評価され、平均として(
図4)、又は各単一マウスの経時的な腫瘍増殖として(
図5A~5F)のいずれかで経時的な腫瘍成長として表示された。統計分析のため、各動物の最後に観察された腫瘍体積をエンドポイントとして使用し、それが800mm3未満であるか否かを評価した。次いで、このエンドポイントを、Chi2検定に基づくペアワイズ群比較に供した(
図6)。
【0397】
b)結果
この設定では、CD20 TCBによるWSU-DCLC2担持マウスの治療は、ビヒクルと比較した場合、30日目から強力な腫瘍増殖阻害を媒介することが見出された(
図4)。TCBによる活性化はT細胞上のPD1発現並びにLAG3発現を誘導することが知られているため、CD20 TCBをニボルマブ又はニボルマブ+抗LAG3抗体のいずれかと組み合わせて、有効性を更に改善しようと試みた。しかしながら、そのような組み合わせは、単一治療と比較した場合、統計学的に有意なレベルまで腫瘍増殖の減少を誘導しなかった(
図4及び
図6)。対照的に、CD20 TCBとの組み合わせでの1.5mg/kg及び3mg/kgの両方のPD1-LAG3 BsAbによる治療は、42日目までに強い腫瘍退縮を伴う強い腫瘍防御をもたらした。最後に観察された腫瘍サイズを考慮し、閾値を800mm
3に固定して統計分析を適用した場合、ニボルマブ及び抗LAG3抗体との組み合わせでのCD20 TCBによる治療と比較して、動物をCD20 TCBとの組み合わせでの3mg/kgのPD1-LAG3 BsAbで治療した場合、抗腫瘍有効性の有意な増加が観察された。
【0398】
各単一動物の腫瘍増殖を
図5A~
図5Fのスパイダープロットで示す。プロットは、ビヒクルでは、2つを除く全ての腫瘍が実験ウィンドウ全体にわたって進行したことを示す。CD20-TCBをニボルマブ又はニボルマブ+抗LAG3と組み合わせた場合、抗腫瘍効果の大きな改善は観察されなかった。対照的に、3mg/kg及び1.5mg/kgのCD20-TCBとPD1-LAG3 BsAbとの組み合わせは、1匹を除くほとんどのマウスにおいて一貫した腫瘍制御を示した。
【0399】
実施例5
ヒト化NSGマウスにおけるOCI-Ly18移植片モデルにおけるin vivoでのPD1/LAG3二重特異性抗体とCD20 CD3 TCBとの併用療法の強力な抗腫瘍効果
CD20 CD3二重特異性抗体との組み合わせでPD-1及びLAG-3の共遮断の寄与を評価するために、CD20 TCB(グロフィタマブ)との組み合わせを、OCI-Ly18を担持するhuHSC-NSGマウスにおいて評価した。OCI-Ly18は、単剤療法として、腫瘍増殖の制御に失敗したCD20-TCB治療にあまり感受性でないヒトDLBCリンパ腫モデルである。
【0400】
a)実験材料及び方法
完全ヒト化マウスの作製:実験開始時に4-5週齢のメスNSGマウス(Jackson Laboratory)を、公認ガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、特定病原体不在条件下、12時間明/ 12時間暗の日周期で維持した。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(P 2011/128)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。NSGマウスに、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1×105のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入14~16週目に、マウスを舌下出血させ、ヒト化の成功についてフローサイトメトリーによって血液を分析した。効率的に生着したマウスを、ヒトT細胞頻度に従って異なる治療群に無作為に分けた。
【0401】
OCI-Ly18細胞株の調製:OCI-Ly18細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を、最初Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)から入手し、拡大後、Glycart内部細胞バンクに寄託した。OCI-Ly18細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS、Gibco)及び1%Glutamax(Invitrogen/Gibco#35050-038)を含有するRPMI 1640培地(Gibco/Lubioscience#42401-042)中で培養した。5%CO2で、水飽和した雰囲気中、37℃で細胞を培養した。
【0402】
有効性実験:完全ヒト化HSC-NSGマウス(1群あたり20匹のマウス)に、1:1の比でマトリゲルの存在下、0日目に5×10
6個のOCI-Ly18細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を皮下チャレンジした。11日目(腫瘍平均約200mm
3)に、オビヌツズマブによる最初の治療を投与して、末梢B細胞を排除し、サイトカイン放出症候群を回避した。オビヌツズマブ(30mg/kg)による前治療の後に、ビヒクル(ヒスチジン緩衝液)、CD20 TCB(0.5mg/kg)、PD1-LAG3 BsAb(3mg/kg)、ペンブロリズマブ(1.5mg/kg)及び抗LAG3抗体(1.5mg/kg;配列番号79及び配列番号80のアミノ酸配列を含む抗体)(i.v.)の毎週の予定された治療法を行った。(
図7参照)。カリパスを用いて腫瘍増殖を週2~3回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)×L(W:幅、L:長さ)
【0403】
試験は35日目に終了した。
【0404】
b)結果
この実験では、CD20 TCBの単剤療法(0.5mg/kg)は、ビヒクル群と比較した場合、腫瘍増殖の遅延をもたらした(
図8)。しかしながら、CD20 TCBとPD1-LAG3 BsAb(3mg/kg)との組み合わせは、腫瘍制御を提供し、一部のマウスでは腫瘍拒絶を促進した(
図9C)。興味深いことに、CD20 TCBとペンブロリズマブ(1.5mg/kg)及び抗LAG3抗体(1.5mg/kg)との組み合わせは、CD20 TCB単剤療法と異ならなかった。
【0405】
これらのデータは、PD1-LAG3 BsAbが、PD-1及びLAG-3の結合部位を一致させるために、3mg/kgのPD1-LAG3 BsAbに対して、1.5mg/kgで投与された単一特異性抗LAG-3抗体との組み合わせでの標準治療の抗PD-1抗体よりも優れた様式でリンパ腫異種移植モデルの状況においてCD20 TCBの抗腫瘍活性を改善することを実証している。これらの研究は、PD-1阻害に対するPD1-LAG3 BsAbによるLAG-3阻害の寄与を確立し、抗LAG-3抗体との組み合わせでの競合剤抗PD-1抗体に対するその差別化され作用機序を支持する。
【0406】
実施例6
ヒト化NSGマウスにおけるOCI-Ly18移植片モデルにおけるin vivoでのPD1/LAG3二重特異性抗体とCD20 CD3 TCBとの併用療法のオビヌツズマブによる前治療後の抗腫瘍効果
【0407】
この追加の実験では、グロフィタマブによって媒介されるT細胞との末梢B細胞係合によって誘導されるサイトカイン放出症候群(CRS)を軽減するための抗CD20枯渇抗体であるオビヌツズマブによる前治療を更に評価した(
図10)。
【0408】
a)実験材料及び方法
完全ヒト化マウスの作製:実験開始時に4~5週齢の雌NSGマウス(Jackson Laboratory)を、特定の病原体のいない条件に維持し、1日のサイクルは、関連するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明状態/12時間暗状態であった。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(P 2011/128)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。NSGマウスに、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1×105のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入後14~16週目に、マウスを舌下出血させ、ヒト化の成功についてフローサイトメトリーによって血液を分析した。効率的に生着したマウスを、ヒトT細胞頻度に従って異なる治療群に無作為に分けた。
【0409】
OCI-Ly18細胞株の調製:OCI-Ly18細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を、最初Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)から入手し、拡大後、Glycart内部細胞バンクに寄託した。OCI-Ly18細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS、Gibco)及び1%Glutamax(Invitrogen/Gibco#35050-038)を含有するRPMI 1640培地(Gibco/Lubioscience#42401-042)中で培養した。5%CO2で、水飽和した雰囲気中、37℃で細胞を培養した。
【0410】
有効性実験:完全ヒト化HSC-NSGマウス(1群あたり14匹のマウス)に、1:1の比でマトリゲルの存在下、0日目に5×10
6個のOCI-Ly18細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を皮下チャレンジした。17日目(腫瘍平均約400mm
3)に、オビヌツズマブ(30mg/kg)による最初の治療を投与して、末梢B細胞を排除し、サイトカイン放出症候群を回避した。オビヌツズマブ前治療の後に、ビヒクル(ヒスチジン緩衝液)、CD20 TCB(0.5mg/kg)、PD1-LAG3 BsAb(3mg/kg)、いずれもi.v.の毎週の予定された治療法を行った(
図10を参照)。カリパスを用いて腫瘍増殖を週2~3回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)×L(W:幅、L:長さ)
【0411】
試験は35日目に終了した。
【0412】
b)結果
この実験では、ビツヌツズマブ(30mg/kg)で前治療したCD20 TCB(0.5mg/kg)の単剤療法は、ビヒクル群と比較した場合、部分的な腫瘍制御をもたらした(
図11、並びに
図12A及び
図12B)。しかしながら、CD20 TCBとPD1-LAG3 BsAb(3mg/kg)との組み合わせは、強力な腫瘍制御を提供した(
図11)。一部のマウスでは、腫瘍拒絶が観察された(
図12C)。これらのデータは、PD1-LAG3 BsAbが、CRSを軽減するためにオビヌツズマブによる前治療が使用される場合にも、リンパ腫異種移植モデルの状況においてCD20 TCBの抗腫瘍活性を改善することを実証している。
【0413】
この研究は、オビヌツズマブ前治療の状況でのCD20-TCBの単一治療に対するPD1-LAG3 BsAbによるPD-1及びLAG-3阻害の寄与を確立した。
【配列表】
【国際調査報告】