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特表2024-503909メラノコルチン-4受容体アゴニストの使用
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  • 特表-メラノコルチン-4受容体アゴニストの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】メラノコルチン-4受容体アゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20240122BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P3/04
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544401
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2022001021
(87)【国際公開番号】W WO2022158868
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008622
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ドン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジン・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ウォン・アン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明は、稀な遺伝性肥満疾患、特に損傷したメラノコルチン4受容体(MC4R)経路に関連する稀な遺伝性肥満疾患を予防または治療する目的での化学式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の下記式(1)
【化1】
(式中、R1は、C2-C5アルキルである。)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療用薬剤。
【請求項2】
前記式(1)の化合物が、下記式(2)
【化2】
で示されるN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記稀な遺伝的肥満疾患が、損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連していることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
前記損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀な遺伝的肥満疾患が、レプチン受容体(LEPR)欠乏であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
経口剤であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項7】
治療有効量の下記式(1)
【化3】
(式中、R1は、C2-C5アルキルである。)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項8】
前記式(1)の化合物が、下記式(2)
【化4】
で示されるN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドであることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記稀な遺伝的肥満疾患が、損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連していることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路と関連する稀な遺伝的肥満疾患が、レプチン受容体(LEPR)欠乏であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
経口剤であることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希少遺伝性肥満、特にメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路の障害に関連する希少遺伝性肥満の予防または治療における、下記式(1)
【化1】
(式中、R1は、C2-C5アルキルである。)化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メラノコルチン受容体(MCR)は、G-タンパク質共役受容体(GPCR)の一種であり、G-タンパク質の主な役割は、2次メッセンジャーを活性化し、シグナル伝達を通じて多くの生理学的刺激に対する細胞の応答を制御することである。現在までに、メラノコルチン受容体には5つのサブタイプが同定されている。MC1Rは、主にメラノサイトとマクロファージで発現し、メラノサイトのメラニン色素を調節することにより皮膚と毛髪の色を決定する。MC2Rは、副腎と脂肪組織で発現し、副腎における副腎皮質刺激ホルモンによる副腎ホルモン分泌調節を媒介する機能が良く知られている。MC3R、MC4R及びMC5Rは、神経端部だけでなく脳内にも発現していることから、メラノコルチンペプチドによる中枢神経作用を媒介し、行動、学習、記憶、食欲、神経の発生・再生などに影響を与えることが分かっている。これまでに、MC3Rは勃起不全及び炎症反応に、MC4Rは肥満及び糖尿病に関与することが知られており、各受容体の作用の特異性に関する研究が活発に行われている(非特許文献1)。その結果、MC4Rが肥満者の遺伝的研究に深く関与していることがわかり、MC4Rが除去されたノックアウトマウスが過食により肥満を発症することを示すことにより、この受容体が食欲の調節に重要な役割を果たしていることが実証された(非特許文献2、3及び4)。
【0003】
一方、これまでに開発された抗肥満薬としては、中枢神経系に作用する食欲阻害薬が主流である。その中でも、神経伝達物質の作用を調節する薬(例えば、フェンテルミン、マジンドール、ロカセリン、フルオキセチン及びシブトラミン)が主に使用されていた。しかし、前記神経伝達物質調節因子は、多数のサブタイプ受容体による食欲抑制に加えて、様々な生理学的作用に広範囲な影響を及ぼす。そのため、前記薬は、各サブタイプに対する選択性に乏しく、長期投与の場合には、様々な副作用を伴うという大きな欠点がある。反面、メラノコルチンアゴニストは、神経伝達物質ではなく神経ペプチドであり、MC4R遺伝子ノックアウト(KO)マウスでは、エネルギー代謝以外の機能が正常であることを考慮すると、メラノコルチンアゴニストは、他の生理機能に対する影響を与えることなく、食欲抑制による体重減少のみを誘導できるという点で作用点としての利点を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】MacNeil DJ et al., Eur J Pharmacol 2002, 450, 93
【非特許文献2】Lu D, Willard D et al., Nature 1994, 371(6500), 799
【非特許文献3】Huszar D et al., Cell 1997, 88(1), 131
【非特許文献4】Hinney A et al., J Clin Endocrinol Metab 1990, 84(4), 1483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、下記式(1)
【化2】
(式中、R1は、C2-C5アルキルである。)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、稀な遺伝的肥満疾患、特に損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療するための使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、治療有効量の下記式(1)
【化3】
(式中、R1は、C2-C5アルキルである。)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療用薬剤を提供する。
【0007】
また、本発明は、治療有効量の前記式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、治療有効量の前記式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、稀な遺伝的肥満疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、稀な遺伝的肥満疾患を予防又は治療における、前記式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の一態様によれば、治療有効量の前記式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、稀な遺伝的肥満疾患(rare genetic obesities)の予防又は治療用薬剤が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、治療有効量の前記式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、稀な遺伝的肥満疾患の予防又は治療用医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明による一実施形態において、前記式(1)の化合物は、下記式(2)
【化4】
で示されるN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドである。
【0014】
本発明による別の実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸;酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;によって形成される酸付加塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明による別の実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸からなる群から選択され得る。本発明による別の実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。
【0015】
本発明による別の実施形態において、前記式(1)の化合物の塩酸塩は、下記の反応スキーム1に従って調製することができる。しかし、当業者は、式(1)の構造に基づいて種々の方法により式(1)の化合物を調製することができる。
<反応スキーム1>
【化5】
(式中、R2は、C1-C5アルキルであり、R3は、非置換又は1若しくは2個のC1-C5アルキルで置換されたC3-C8シクロアルキルであり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである。)
【0016】
本発明による別の実施形態において、前記稀な遺伝的肥満疾患は、損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連している可能性がある。本発明による別の実施形態では、前記損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀な遺伝的肥満疾患は、レプチン受容体(LEPR)欠乏であってもよい。レプチンは、体脂肪細胞(脂肪細胞)から分泌されるホルモンであり、レプチンホルモンは視床下部のレプチン受容体に作用して、メラノコルチン-4受容体(MC4R)経路の上流で代謝と食欲の恒常性を維持し、体重の調節に重要な役割を果たす。したがって、レプチン受容体欠乏は、重度の肥満を引き起こす可能性がある。
【0017】
本発明による別の実施形態において、個々の対象に対する「治療有効量」は、前記した薬理学的効果、すなわち、治療効果を達成するのに十分な量を意味する。化合物の量は、対象の状態及び重症度、投与方式、及び治療対象の年齢に応じて変化し得るが、関当業者であれば知識に基づいて決定することができる。
【0018】
本発明による別の実施形態において、前記式(1)の化合物の治療有効量は、例えば、投与の頻度と強度に応じて、典型的には1日あたり約0.1~500mgの範囲である。成人に対する筋肉内又は静脈内投与の典型的な1日量は、分割単位投与が可能な1日あたり約0.1~300mgの範囲である。患者によっては、より高用量の1日投与量が必要な場合がある。
【0019】
本発明において、「医薬組成物」は、本発明による有効成分に加えて、担体、希釈剤、賦形剤などの他の成分を含むことができる。従って、前記医薬組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はそれらの組み合わせが含まれていてもよい。医薬組成物は、体内への化合物の投与を容易にする。化合物を投与するための様々な方法としては、経口、注射、エアロゾル、非経口、及び局所投与などが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書において、「担体(carrier)」とは、細胞又は組織内への化合物の投入を容易にする化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞又は組織内への多くの有機化合物の投入を容易にする従来の担体である。
【0021】
本明細書において、「希釈剤(diluent)」とは、生物学的に活性な形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解する溶媒中で希釈される化合物を意味する。この分野では、緩衝液に溶解した塩が希釈剤として使用される。従来使用されている緩衝液は、体液中の塩の形態を模倣したリン酸緩衝食塩水である。緩衝液は、低濃度で溶液のpHを制御できるため、緩衝液希釈剤が化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。
【0022】
本明細書において、「薬学的に許容される」とは、化合物の生物学的活性や物性を損なわない性質を意味する。
【0023】
本発明による化合物は、様々な薬学的に投与される剤形として製剤化することができる。本発明の医薬組成物の調製において、有効成分、具体的に式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、調製する剤形を考慮して選択された薬学的に許容される担体と混合する。例えば、本発明による医薬組成物は、必要に応じて注射剤、経口剤などとして製剤化することができる。
【0024】
本発明の化合物は、既知の医薬用担体と賦形剤を使用する常法により製剤化し、単一又は複数のユニットの容器に挿入することができる。製剤は、油又は水性溶媒中の溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよく、従来の分散剤、懸濁化剤又は安定化剤を含む。さらに、化合物は、例えば、使用前に滅菌、発熱物質を含まない水に溶解される乾燥粉末形態であってもよい。本発明の化合物は、ココアバターや他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を用いて坐剤に製剤化することができる。経口投与のための固体形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒が挙げられる。特にカプセル剤と錠剤が好ましい。錠剤及び丸剤は、腸溶コーティングされていることが好ましい。固体形態は、本発明の化合物を、スクロース、ラクトース又はデンプンなどの不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、崩壊剤、結合剤などから選択される少なくも1つの担体と混合することによって調製することができる。また、経皮投与形態、例えば、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又は噴霧剤として製剤化することも。本発明による別の実施形態において、前記薬剤又は医薬組成物は、経口剤であってもよい。
【0025】
本明細書において、「予防」という用語は、疾患に罹患する可能性を低減又は排除することを意味する。
【0026】
本明細書において、「治療」という用語は、疾患の症状を示す対象における疾患の進行を阻止、遅延、又は改善することを意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明による薬剤又は医薬組成物は、稀な遺伝的肥満疾患、特に損傷したメラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀な遺伝的肥満疾患を効率的に予防又は治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】レプチン受容体欠乏マウスモデル(db/dbマウスモデル)における体重減少効果を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を以下の実施例によりさらい詳細に説明する。しかしながら、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものでないことを理解されたい。
【0030】
製造例:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩の合成
【化6】
下記の工程A、B、C及びDの過程を経て表題化合物を得た。
【0031】
工程A:メチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレートの調製
メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(28.7g、82.73mmol)、(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸(24.5g、86.87mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(22.2g、115.83mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(15.7g、115.83mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(400mL)に溶解し、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(72.0mL、413.66mmol)をゆっくり加えた。室温で16時間撹拌した後、反応溶媒を減圧濃縮し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、カラム・クロマトグラフィーで精製して表題化合物(41.19g、87%)を得た。
MS [M+H] = 575 (M+1)
【0032】
工程B:(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸の調製
前記工程Aで得られたメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(39.4g、68.62mmol)をメタノール(450mL)に溶解し、6N水酸化ナトリウム水溶液(57.2mL、343.09mmol)を加えた。室温で16時間撹拌し、6N塩酸水溶液でpHを約5に調整した後、反応溶液を減圧濃縮した。濃縮液をジクロロメタンに溶解し、不溶固体をろ紙でろ過した。ろ液を減圧下濃縮して、粗製物(38.4g、99%)を得、これを精製することなく次の工程で使用した。
MS [M+H] = 561 (M+1)
【0033】
工程C:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの調製
前記工程Bで得られた(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸(38.4g、68.60mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.4g、96.04mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(13.0g、96.04mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(200mL)に溶解し、モルホリン(5.9mL、68.80mmol)及びN,N’-ジイソプロピルエチルアミン(59.7mL、343.02mmol)をゆっくりと順次に加えた。室温で16時間撹拌した後、反応溶液を減圧濃縮し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、てカラム・クロマトグラフィーで精製して表題化合物(37.05g、86%)を得た。
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0034】
工程D:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩の調製
前記工程Cで得られたN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド(5.0g、7.95mmol)を酢酸エチル(50mL)に溶解し、2N塩酸酢酸エチル溶液(3.97mL、15.89mmol)をゆっくり加えた。室温で30分間撹拌した後、反応溶媒を減圧濃縮させた。得られた粗固体をヘキサンとジエチルエーテルを用いて粉砕することにより精製して、表題化合物(5.23g、99%)を得た。
MS [M+H] = 630 (M+1)
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.49-7.44 (m, 4H), 4.83 (m, 1H), 4.23-4.20 (m, 1H), 3.95-3.91 (m, 2H), 3.79-3.47 (m, 14H), 3.03-3.00 (m, 1H), 2.86-2.82 (m, 1H), 2.73-2.67 (m, 1H), 2.20-2.14 (m, 1H), 1.97 (m, 1H), 1.80-1.62 (m, 5H), 1.50 (s, 9H), 1.44-1.27 (m, 3H), 1.06-1.04 (m, 9H)
【0035】
実施例:db/dbマウスモデル実験
メラノコルチン-4受容体(MC4R)の上流に作用するレプチン受容体遺伝子に変異を有するdb/dbマウスは、レセプター受容体欠乏性肥満を反映するモデルであり、このマウスは、過食症や重度の肥満など、代謝疾患に関連する異常な表現型を示す。抗肥満効果を確認するために、MC4R経路に関連するレプチン受容体に変異が生じた遺伝的肥満マウスモデルであるdb/dbマウスに、45kcal%高脂肪食(脂肪45kcal%の食餌)を与えながら、調製例で得られたN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩(以下、‘試験化合物’という)を4週反復投与した。体重増加抑制効果は、投与期間中の体重を測定することにより測定し、体脂肪量減少効果は、4週間反復投与後の総体脂肪量を測定することにより確認した。その結果、陰性対照群と比較して体重が有意に減少し、体重増加率も有意に減少した。体脂肪分析の結果、除脂肪量は、陰性対照群と差がなかったのに対し、体脂肪量は陰性対照群と比較して有意的に減少した。前記結果を図1に示した。
【0036】
図1から分かるように、本発明の試験化合物は有意な減量効果を示すことが確認された。
図1
【国際調査報告】