IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-504080ポリシラザンハードコーティング組成物
<>
  • 特表-ポリシラザンハードコーティング組成物 図1
  • 特表-ポリシラザンハードコーティング組成物 図2
  • 特表-ポリシラザンハードコーティング組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ポリシラザンハードコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/14 20060101AFI20240123BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240123BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240123BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240123BHJP
【FI】
C09D183/14
C09D7/61
C09D7/62
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541598
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2022050104
(87)【国際公開番号】W WO2022148757
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】21150705.8
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】グロッテンミュラー ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ネル セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ラフニット パトリツィア
(72)【発明者】
【氏名】クラセマン トーマス
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL161
4J038HA026
4J038HA216
4J038HA476
4J038JC32
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA11
(57)【要約】
本発明は、シラザンポリマー(A)、シランカップリング剤(B)、及び無機ナノ粒子(C)を含むコーティング組成物であって、成分(A)、(B)、及び(C)はある特定の比で存在する、コーティング組成物に関する。コーティング組成物は、種々の基部材料基材の表面にハードコーティングを作製するのに特に好適である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シラザンポリマー(A)、
(ii)シランカップリング剤(B)、及び
(iii)無機ナノ粒子(C)
を含むコーティング組成物であって、
前記シラザンポリマー(A)対前記シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、75:25~40:60の範囲であり、前記シラザンポリマー(A)及び前記シランカップリング剤(B)対前記無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、80:20~50:50の範囲である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記シラザンポリマー(A)対前記シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、66:34~45:55の範囲であり、前記シラザンポリマー(A)及び前記シランカップリング剤(B)対前記無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、73:27~55:45の範囲である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記シラザンポリマー(A)対前記シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、60:40~50:50の範囲であり、前記シラザンポリマー(A)及び前記シランカップリング剤(B)対前記無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、70:30~60:40の範囲である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シラザンポリマー(A)は、式(1)により表される反復単位M1を含み、
-[SiR12-NR3-] 式(1)
式中、R1、R2、及びR3は、同じであるか又は互いに異なり、水素、有機基、又はヘテロ有機基から独立して選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
1及びR2は、同じであるか又は互いに異なり、水素、1~30個の炭素原子を有するアルキル、2~30個の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個の炭素原子を有するアリールから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素で置き換えられていてもよく;R3は、水素、1~30個の炭素原子を有するアルキル、2~30個の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個の炭素原子を有するアリールから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素で置き換えられていてもよい、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記シラザンポリマー(A)は、式(2)により表される反復単位M2を更に含み、
-[SiR45-NR6-] 式(2)
式中、R4、R5、及びR6は、同じであるか又は互いに異なり、水素、有機基、又はヘテロ有機基から独立して選択される、請求項4又は5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
4及びR5は、同じであるか又は互いに異なり、水素、1~30個の炭素原子を有するアルキル、2~30個の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個の炭素原子を有するアリールから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素で置き換えられていてもよく;R6は、水素、1~30個の炭素原子を有するアルキル、2~30個の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個の炭素原子を有するアリールから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素で置き換えられていてもよい、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記シランカップリング剤(B)は、1つ又は複数のアルコキシシリル基を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記シランカップリング剤(B)は、式(a)により表され、
【化1】
式(a)
式中、Zは、1つ又は複数の炭素原子及び/又はケイ素原子を含む構造単位であり、
Iは、各出現において互いに独立して、1つ又は複数の-O-及び/又は-Si(CH32-基を含んでいてもよい、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルコキシ基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルコキシ基、又は3~20個の炭素原子を有する環状アルコキシ基であり、
IIは、各出現において互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、又は3~20個の炭素原子を有する環状アルキル基であり、
kは、0、1、又は2であり、
nは、1、2、3、又は4である、
請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記シランカップリング剤(B)は、式(b)~(e)のうちの1つにより表され、
【化2】
式(b) 式(c)
【化3】
式(d) 式(e)
式中、Xbは、(CH32N-、[HO-(CH2m2N-、AcO-、CH3(CH2m-NH-、CH3-NH-、Cl-、H2C=C(CH3)-CH2-NH-、H2C=C(CH3)-CO-O-、H2C=C(CH3)-O-CH2-CH(OH)-CH2-NH-、H2C=CH-、H2C=CH-CH2-NH-、H2C=CH-CO-CH2-CH(OH)-CH2-NH-、H2C=CH-CO-O-、H2N-、H2N-(CH2m-NH-、H2N-(CH2m-NH-(CH2n-、H2N-(CH2m-NH-(CH2n-NH-、H2N-(CH2m-NH-C46-、H2N-(CH2mNH-CH2-C46-、H2N-(CH2m-O-C(CH32-CH=CH-、H2N-C64-、H2N-C64-O-、H3C-、H3C-(CH2m-、H3C-(CH2m-O-、H3CO-、HO-、HS-、NCS-、Ph2N-、Ph-CO-O-、Ph-NH-、及び
【化4】
からなるリストから選択され、
mは、1~10の整数であり、
nは、1~10の整数であり、
cは、-(CH2p-、-NH-、-NH-(CH2p-NH-、-O-、-S-、-S2-、-S3-、-S4-、-Si(CH32-、及び-Si(CH32-O-Si(CH32-からなるリストから選択され、
pは、1~20の整数であり、
dは、
【化5】
及び
【化6】
からなるリストから選択され、
eは、
【化7】
からなるリストから選択され、
Yは、存在しないか、又は1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、若しくは3~20個の炭素原子を有する環状アルキレン基であり、
Iは、各出現において互いに独立して、1つ又は複数の-O-及び/又は-Si(CH32-基を含んでいてもよい、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルコキシ基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルコキシ基、又は3~20個の炭素原子を有する環状アルコキシ基であり、
IIは、各出現において互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、又は3~20個の炭素原子を有する環状アルキル基であり、
kは、0、1、又は2である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記シランカップリング剤(B)は、
(i)
(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(3-アミノプロポキシ)-3,3-ジメチル-1-プロペニル-トリメトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリールアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンチオール、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、6-エチル-6-(2-メトキシエトキシ)-2,5,7,10-テトラオキサ-6-シラウンデカン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシ(3-チオシアナト)プロピルシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリメトキシメチルシラン、及びビニルトリエトキシシランから選択される単官能性シランカップリング剤;
(ii)
1-(トリエトキシシリル)-2-(ジエトキシメチルシリル)エタン、1-(トリメトキシシリル)-2-(ジメチルメトキシシリル)エタン、1-(トリメトキシシリル)-2-(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(ジメチルメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリエトキシシリルエチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(トリメトキシシリルエチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(3-(トリエトキシシリル)-1-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル)テトラスルフィド、ビス[2-(トリエトキシシリル)エチル]ジメチルシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]ジメチルシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エーテル、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エーテル、及びN,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンから選択される二官能性シランカップリング剤;
(iii)
トリス(トリエトキシシリルエチル)メチルシラン、トリス(トリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルエチル)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルエチルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、及びトリス(トリメトキシシリルプロピル)メチルシランから選択される三官能性シランカップリング剤;並びに
(iv)
テトラキス(トリエトキシシリルエチル)シラン、テトラキス(トリエトキシシリルプロピル)シラン、及びテトラキス(トリメトキシシリルプロピル)シランから選択される四官能性シランカップリング剤
からなるリストから選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記無機ナノ粒子(C)は、キャッピング剤で表面修飾されていてもよい、炭化物、ダイヤモンド、窒化物、酸化物、シリケート、スルフェート、スルフィド、スルフィット、及びチタネートからなるリストから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記無機ナノ粒子(C)は、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、シリカ、チタニア、及びジルコニアからなるリストから選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記無機ナノ粒子(C)は、1~100nm、より好ましくは5~60nm、更により好ましくは10~40nm、最も好ましくは10~25nmの範囲の粒径を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
1つ又は複数の溶媒を更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
コーティングされた物品を作製するための方法であって、
(a)請求項1~15のいずれか1項に記載のコーティング組成物を物品の表面に適用するステップ、及び
(b)前記コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた物品を得るステップ
を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得ることができるコーティングされた物品。
【請求項18】
基部材料の表面にハードコーティングを形成するための、請求項1~15のいずれか1項に記載のコーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラザンポリマー(A)、シランカップリング剤(B)、及び無機ナノ粒子(C)を含むコーティング組成物であって、成分(A)、(B)、及び(C)はある特定の比で存在する、コーティング組成物に関する。コーティング組成物は、種々の基部材料基材の表面にハードコーティングを作製するのに特に好適である。ハードコーティングは、例えば、機械的耐性及び耐久性の向上(表面硬度の向上、擦傷耐性の向上、及び/又は摩耗耐性の向上を含む);湿潤及び接着特性の向上(疎水性及び疎油性、易洗浄効果、及び/又は耐落書き効果を含む);化学耐性の向上(腐食耐性の向上(例えば、溶媒、酸性及びアルカリ性媒体、並びに腐食性ガスに対する、並びに/又は抗酸化効果の向上));並びに物理的障壁又は封止効果の向上等の、物理的及び化学的表面特性の向上をもたらす。
本発明によるコーティング組成物は、特に最大の表面硬度、擦傷耐性、及び摩耗耐性等の、最大の機械的耐性及び耐久性を有するハードコーティングの作製を可能にする。加えて、濁った薄膜の形成及び湿潤問題等の有害挙動が回避される。
更に、本発明によるコーティング組成物は、種々の基材表面に対して高い接着性を示し、使い易いコーティング方法による容易な適用を可能にし、効率的に及び容易にハードコーティングを得ることができる。
本発明は、上記コーティング組成物を使用してコーティングされた物品を作製するための方法、及び上記方法により作製されたコーティングされた物品に更に関する。基部材料の表面にハードコーティングを形成し、それにより上述の表面特性のうちの1つ又は複数を向上させるための上記コーティング組成物の使用が更に提供される。
【背景技術】
【0002】
シラザン反復単位-[SiR2-NR’-]を含むポリマーは、典型的には、ポリシラザンと呼ばれる。置換基R及びR’が全て水素である場合、この材料はペルヒドロポリシラザン(PHPS)と呼ばれ、R及びR’のうちの少なくとも1つが有機部分である場合、この材料はオルガノポリシラザン(OPSZ)と呼ばれる。PHPS及びOPSZは、耐落書き効果、擦傷耐性、腐食耐性、又は疎水性及び疎油性等のある特定の特性を表面に付与するための様々な機能性コーティングのために使用される。したがって、シラザンは、種々の応用のための機能性コーティングに広く使用されている。
ポリシラザンは、1つ又は複数の異なるシラザン反復単位で構成されるが、ポリシロキサザンは、1つ又は複数の異なるシロキサン反復単位を更に含む。ポリシロキサザンは、ポリシラザン及びポリシロキサン化学及び挙動の特徴を併せ持つ。ポリシラザン及びポリシロキサザンは、様々なタイプの応用のための機能性コーティングの作製に使用される樹脂である。
【0003】
典型的には、ポリシラザン及びポリシロキサザンは両方とも、約>10,000g/molの分子量で固体になる液体ポリマーである。ほとんどの応用では、中程度の分子量の、典型的には2,000~8,000g/molの範囲の液体ポリマーが使用される。このような液体ポリマーから固体コーティングを作製するには、純粋な材料として又は配合物としてのいずれかの材料を基材に適用した後に実施される硬化ステップが必要である。
ポリシラザン又はポリシロキサザンは、加水分解により、例えば空気中の水分との反応により架橋させることができる。これは、分子量の増加及び材料の固化又は硬化に結び付く。そのため、「硬化」及び「架橋」並びに対応する動詞「硬化する」及び「架橋する」という用語は、本出願において、例えばポリシラザン及びポリシロキサザン等のシラザン系ポリマーが言及される場合、同義語として交換可能に使用される。通常、硬化は、周囲条件下又は高温での加水分解により実施される。硬化したポリシラザンは、優れた接着性、高い硬度、及び良好な擦傷耐性を示す。
【0004】
ポリシラザン系コーティングの固有特性の1つは、完全硬化後の架橋密度が高いことである。結果として、そのようなコーティングは高い硬度を有し、特にプラスチックのような柔質材料の擦傷保護用のハードコートとして適用される。周囲雰囲気中の水分による硬化速度を増加させるため、H2N-(CH23-Si(OEt)3(つまり、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、AMEO)又は(MeO)3Si-(CH23-NH-(CH23-Si(OMe)3(つまり、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、AMEO-ダイマー)等の、低分子量アルコキシシラン(シランカップリング剤)が使用される。このような添加剤も、完全硬化後の硬度を増加させる。ポリシラザン系コーティングの硬度および擦傷耐性を増加させるためによく使用される別の手法は、ナノ粒子の添加である。コーティングが光学的透明性を維持する場合、ナノ粒子のサイズは直径が≦20nmであるはずである。典型的には無機ナノ粒子が使用され、無機酸化物ナノ粒子が最も一般的に使用される。酸化ケイ素ナノ粒子は、性能が良好であり、商業的に容易に入手可能であるため、特に好ましい。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0083453号明細書は、アルコキシシリル試薬の存在下でポリシラザン又はポリシロキサザンを加熱することにより作製される表面コーティングを作製するために使用される水分硬化性ポリシロキサザン及びポリシラザンに関する。更に、より硬度の高いコーティングを得るために、セラミック粉末およびガラスを組み込むことが示唆されている。
米国特許出願公開第2020/0199406号明細書は、ポリシラザンに基づく透明コーティング薄膜組成物、及びそのような組成物の触媒としてのAMEOの使用に関する。
国際公開第2007/028511号パンフレットは、腐食を防止するための、擦傷耐性を増加させるための、及びより容易な洗浄を促進するための、金属及びポリマー表面上の恒久的コーティングとしてのポリシラザンの使用に関する。例えば、SiO2、TiO2、ZnO、ZrO2、又はAl23等の無機ナノ粒子が、そのようなポリシラザン配合物の更なる成分として記載されている。加えて、AMEOの触媒的使用が実施例に記載されている。
中国特許出願公開第108727979号明細書は、ペルヒドロポリシラザン、シロキサン、無機粒子、任意選択の触媒、及び任意選択のシランカップリング剤を含むコーティング組成物に関する。このコーティング組成物は、基部材料の表面上に、良好な密着性、温度耐性、及び擦傷耐性、並びに低エネルギー表面特性及び易洗浄特性を有するコーティング層を形成するために使用される。
欧州特許出願公開第3546498号明細書は、Si-H構造を含まないオルガノポリシラザン化合物、及び例えばビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン又はビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン等の、分子中に少なくとも2つのケイ素原子を有するオルガノキシシラン化合物を含むポリシラザン組成物に関する。
上述のコーティング組成物及びそれで作製される表面コーティングは、例えば良好な化学耐性又は機械的耐性等の幾つかの有利な特性を示すが、高い機械的耐性、化学耐性、及び耐久性の組合せに関する現代の高性能表面コーティングの要件を満たしていない。そのため、特にハードコーティング応用では、当技術水準において公知である表面コーティング組成物を更に向上させる必要性が常に存在する。
【0006】
本発明の目的
したがって、本発明の目的は、従来技術における欠点を克服し、例えば、機械的耐性及び耐久性の向上(表面硬度の向上、擦傷耐性の向上、及び/又は摩耗耐性の向上を含む);湿潤及び接着特性の向上(疎水性及び疎油性、易洗浄効果、及び/又は耐落書き効果を含む);化学耐性の向上(腐食耐性の向上(例えば、溶媒、酸性及びアルカリ性媒体、並びに腐食性ガスに対する、及び/又は抗酸化効果の向上));並びに物理的障壁又は封止効果の向上等の物理的及び化学的表面特性の向上をもたらすために、種々の基部材料基材の表面にハードコーティングを作製するのに特に好適な新しいコーティング組成物を提供することである。
特に、最大の表面硬度、擦傷耐性、及び摩耗耐性等の、最大の機械的耐性及び耐久性を有するハードコーティングの作製を可能にする新しいコーティング組成物を提供することが望ましい。加えて、濁った薄膜の形成及び湿潤問題等の有害挙動が回避されることが望ましい。
更に、本発明の目的は、上述の利点に加えて、種々の基材表面に対して高い接着性を示し、ハードコーティングを効率的に及び容易に得ることができるように使い易いコーティング方法による容易な適用を可能にする新しいコーティング組成物を提供することである。
本発明の更なる目的は、コーティングされた物品を作製するための方法、及び上記方法により作製され、上述の利点を示すコーティングされた物品を提供することである。
最後に、本発明の目的は、種々の基部材料の表面にハードコーティングを形成して、前述の表面特性、特に表面硬度、擦傷耐性、及び摩耗耐性のうちの1つ又は複数を向上させるために使用することができるコーティング組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、シラザンポリマー(A)、シランカップリング剤(B)、及び無機ナノ粒子(C)を含むコーティング組成物であって、こうした成分はある特定の混合比で存在する、コーティング組成物が、上述の目的を達成し、特に、高硬度、高擦傷耐性、及び高摩耗耐性を有する表面コーティングを提供することを見出した。
【0008】
これを考慮して、本発明者らは、驚くべきことに、上記の目的が、
(i)シラザンポリマー(A)、
(ii)シランカップリング剤(B)、及び
(iii)無機ナノ粒子(C)
を個々に又は任意の組合せのいずれかで含むコーティング組成物であって、
シラザンポリマー(A)対シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、75:25~40:60の範囲であり、シラザンポリマー(A)及びシランカップリング剤(B)対無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、80:20~50:50の範囲である、コーティング組成物により達成されることを見出した。
加えて、コーティングされた物品を作製するための方法であって、
(a)本発明によるコーティング組成物を物品の表面に適用するステップ、及び
(b)上記コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた物品を得るステップ
を含む方法が提供される。
更に、本発明によるコーティングされた物品を作製するための上述の方法により得ることができるか又は得られるコーティングされた物品が提供される。
本発明は、基部材料の表面にハードコーティングを形成するための、本発明によるコーティング組成物の使用に更に関する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】配合物1-A1~1-D6に由来するコーティングの実験1-A1~実験1-D6の分析結果を示す図である。
図2】配合物2-A1~2-D6に由来するコーティングの実験2-A1~実験2-D6の分析結果を示す図である。
図3】配合物3-A1~3-C5に由来するコーティングの実験3-A1~実験3-C5の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
「ポリマー」という用語には、これらに限定されないが、ホモポリマー、コポリマー、例えば、ブロック、ランダム、及び交互コポリマー、ターポリマー、クォーターポリマー等、並びにそれらの調合物及び改変物が含まれる。更に、別様に特に限定されていない限り、「ポリマー」という用語は、その物質の全ての考え得る配置異性体を含むものとする。そうした配置としては、これらに限定されないが、アイソタクチック対称、シンジオタクチック対称、及びアタクチック対称が挙げられる。ポリマーは、高相対分子量の分子であり、その構造は、実際に又は概念的に低相対質量の分子(つまり、モノマー)に由来する単位(つまり、反復単位)の複数の反復を本質的に含む。典型的には、ポリマー中の反復単位の数は10個よりも多く、好ましくは20個よりも多い。反復単位の数が10個未満である場合、ポリマーはオリゴマーとも呼ばれる場合がある。
「モノマー」という用語は、本明細書で使用される場合、重合を起こし、それにより構成単位(反復単位)をポリマーの本質的な構造に寄与させることができる分子を指す。
「ホモポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの種の(実際の、暗黙の、又は仮想の)モノマーに由来するポリマーを表す。
【0012】
「コポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、一般には、1種よりも多くのモノマーに由来し、1種よりも多くの対応する反復単位を含むあらゆるポリマーを意味する。一実施形態では、コポリマーは、2種又はそれよりも多くのモノマーの反応産物であり、したがって2種又はそれよりも多くの対応する反復単位を含む。コポリマーは、2種、3種、4種、5種、又は6種の反復単位を含むことが好ましい。3つのモノマー種の共重合により得られるコポリマーは、ターポリマーとも呼ばれる場合がある。4つのモノマー種の共重合により得られるコポリマーは、クォーターポリマーとも呼ばれる場合がある。コポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、及び/又は交互コポリマーとして存在してもよい。
「ブロックコポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、隣接するブロックが構成的に異なるコポリマー、つまり、隣接するブロックは、異なる種のモノマーに由来するか又は同じ種のモノマーに由来するが、反復単位の組成若しくは配列分布が異なる反復単位を含む、コポリマーを表す。
更に、「ランダムコポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、鎖の任意の所与の部位に所与の反復単位を見出す確率が、隣接する反復単位の性質に依存しない高分子で形成されたポリマーを指す。通常、ランダムコポリマーでは、反復単位の配列分布はベルヌーイ統計に従う。
「交互コポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、2種の反復単位を交互配列で含む高分子からなるコポリマーを表す。
【0013】
「ポリシラザン」という用語は、本明細書で使用される場合、ケイ素原子及び窒素原子が交互して基本骨格を形成するポリマーを指す。各ケイ素原子は少なくとも1つの窒素原子に結合しており、各窒素原子は少なくとも1つのケイ素原子に結合しているため、一般式-[SiR12-NR3-]m(シラザン反復単位)であって、式中、R1~R3は、水素原子、有機置換基、又はヘテロ有機置換基であってもよく、mは整数である一般式の鎖及び環が両方とも生じる。置換基R1~R3が全て水素原子である場合、ポリマーはペルヒドロポリシラザン、ポリペルヒドロシラザン、又は無機ポリシラザン(-[SiH2-NH-]m)と称される。少なくとも1つの置換基R1~R3が有機置換基又はヘテロ有機置換基である場合、ポリマーは、オルガノポリシラザンと称される。
「ポリシロキサザン」という用語は、本明細書で使用される場合、ケイ素原子及び酸素原子が交互する部分を更に含むポリシラザンを指す。そのような部分は、例えば、-[O-SiR78-]nで表すことができ、式中、R7及びR8は、水素原子、有機置換基、又はヘテロ有機置換基であってもよく、nは整数である。ポリマーの置換基が全ての水素原子である場合、ポリマーはペルヒドロポリシロキサザンと称される。ポリマーの少なくとも1つの置換基が有機又はヘテロ有機置換基である場合、ポリマーはオルガノポリシロキサザンと称される。
【0014】
「機能性コーティング」という用語は、本明細書で使用される場合、表面に1つ又は複数の特定の特性を付与するコーティングを指す。一般に、コーティングは、表面を保護するか又は表面に特定の効果を付与するために必要とされる。機能性コーティングにより付与することができる効果には様々なものがある。例えば、機械的耐性、表面硬度、擦傷耐性、摩耗耐性、抗菌効果、防汚効果、湿潤効果(水に対する)、疎水性及び疎油性、平滑化効果、耐久性効果、帯電防止効果、防汚染効果、防指紋効果、易洗浄効果、耐落書き効果、化学耐性、腐食耐性、抗酸化効果、物理障壁効果、封止効果、熱耐性、難燃性、低収縮、UV障壁効果、耐光性、及び/又は光学効果。
「硬化」という用語は、架橋ポリマーネットワークへの変換(例えば、触媒の有無に関わらず熱又は照射による)を意味する。
【0015】
「シランカップリング剤」という用語は、本明細書で使用される場合、有機材料及び無機材料との間に耐久性結合を形成する能力を有する化合物を指す。典型的なシランカップリング剤は、一般に、2つのクラスの官能性を示す。
【化1】
Xは、加水分解性基であり、典型的には、アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、又はアミンである。加水分解後、反応性シラノール基が形成され、反応性シラノール基は、他のシラノール基と、例えば、ポリシラザンの加水分解中に形成されているものと縮合してシロキサン連結を形成することができる。Rは、所望の特質を付与する官能性を有し得る非加水分解性有機官能基である。本発明の状況では、シランカップリング剤は、下記で更に説明するように、1つ又は複数のアルコキシシリル基を含むアルコキシシラン化合物である。シランカップリング剤は、アルコキシシリル試薬と呼ばれる場合もある。
【0016】
「構造単位」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ、2つ、3つ、又はそれよりも多くの結合部位を有する構造分子単位を指す。
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基を意味する。
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、置換されていてもよい任意の単環式、二環式、三環式、又は多環式芳香族又はヘテロ芳香族基を意味する。ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族系に1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、N、O、S、及び/又はP)を含む。
「アリールアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数の水素原子をアリール基で置き換えることによりアルキルラジカルから誘導されるあらゆる一価ラジカルを意味する。
【0017】
好ましい実施形態
本発明は、
(i)シラザンポリマー(A)、
(ii)シランカップリング剤(B)、及び
(iii)無機ナノ粒子(C)
を含むコーティング組成物であって、
シラザンポリマー(A)対シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、75:25~40:60の範囲であり、シラザンポリマー(A)及びシランカップリング剤(B)対無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、80:20~50:50の範囲である、コーティング組成物に関する。
【0018】
シラザンポリマー(A)
本発明の好ましい実施形態では、シラザンポリマー(A)は、式(1):
-[SiR12-NR3-] 式(1)
により表される反復単位M1を含み、
式中、R1、R2、及びR3は、同じであるか又は互いに異なり、水素、有機基、又はヘテロ有機基から独立して選択される。
1、R2、及びR3の好適な有機及びヘテロ有機基としては、アルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アリールシリル、アリールシリルオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、及びアリールアルキルオキシ等、及びそれらの組合せ(好ましくはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、及びそれらの組合せ);好ましくは1~30個の炭素原子(より好ましくは、1~20個の炭素原子、更により好ましくは1~10個の炭素原子、最も好ましくは1~6個の炭素原子(例えば、メチル、エチル、又はビニル))を有する基が挙げられる。基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、及びニトロ等、及びそれらの組合せ等の、1つ又は複数の置換基で更に置換されていてもよい。
【0019】
好ましい実施形態では、R1及びR2は、同じであるか又は互いに異なり、水素、1~30個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル、2~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、最も好ましくは2~6個)の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは6個)の炭素原子を有するアリールから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R3は、水素、1~30個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル、2~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、最も好ましくは2~6個)の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは6個)の炭素原子を有するアリールから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
より好ましい実施形態では、R1及びR2は、同じであるか又は互いに異なり、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はフェニルから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ビニル、又はフェニルから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
【0020】
特に好ましい実施形態では、R1及びR2は、同じであるか又は互いに異なり、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH32、-CH=CH2、及び-C65からなるリストから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R3は、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH32、-CH=CH2、及び-C65からなるリストから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
最も好ましい実施形態では、R1及びR2は、同じであるか又は互いに異なり、-H及び-CH3から独立して選択され、シラザンポリマー(A)中のH:CH3の数比は、好ましくは100:0~10:90の範囲、より好ましくは60:40~25:75の範囲である。
本発明の好ましい実施形態では、シラザンポリマー(A)は、式(2):
-[SiR45-NR6-] 式(2)
により表される反復単位M2を更に含み、
式中、R4、R5、及びR6は、同じであるか又は互いに異なり、水素、有機基、又はヘテロ有機基から独立して選択される。
【0021】
4、R5、及びR6の好適な有機基及びヘテロ有機基としては、アルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アリールシリル、アリールシリルオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、及びアリールアルキルオキシ等、及びそれらの組合せ(好ましくは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、及びそれらの組合せ);好ましくは1~30個の炭素原子(より好ましくは1~20個の炭素原子、更により好ましくは1~10個の炭素原子、最も好ましくは1~6個の炭素原子(例えば、メチル、エチル、又はビニル))を有する基が挙げられる。こうした基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、及びニトロ等、及びそれらの組合せ等の、1つ又は複数の置換基で更に置換されていてもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、R4及びR5は、水素、1~30個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル、2~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、最も好ましくは2~6個)の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは6個)の炭素原子を有するアリールから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R6は、水素、1~30個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル、2~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、最も好ましくは2~6個)の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは6個)の炭素原子を有するアリールから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
より好ましい実施形態では、R4及びR5は、同じであるか又は互いに異なり、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はフェニルから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R6は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ビニル、又はフェニルから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
最も好ましい実施形態では、R4及びR5は、同じであるか又は互いに異なり、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH32、-CH=CH2、及び-C65からなるリストから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよく;R6は、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH32、-CH=CH2、及び-C65からなるリストから選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
本発明の好ましい実施形態では、シラザンポリマー(A)は、式(3):
-[SiR78-O-] 式(3)
により表される反復単位M3を更に含み、
式中、R7及びR8は、同じであるか又は互いに異なり、水素、有機基、又はヘテロ有機基から独立して選択される。
7及びR8の好適な有機及びヘテロ有機基としては、アルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アリールシリル、アリールシリルオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、及びアリールアルキルオキシ等、及びそれらの組合せ(好ましくは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、及びそれらの組合せ);好ましくは1~30個の炭素原子(より好ましくは1~20個の炭素原子、更により好ましくは1~10個の炭素原子、最も好ましくは1~6個の炭素原子(例えば、メチル、エチル、又はビニル))を有する基が挙げられる。こうした基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、及びニトロ等、及びそれらの組合せ等の、1つ又は複数の置換基で更に置換されていてもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、R7及びR8は、同じであるか又は互いに異なり、水素、1~30個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル、2~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、最も好ましくは2~6個)の炭素原子を有するアルケニル、又は2~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは6個)の炭素原子を有するアリールから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
【0024】
より好ましい実施形態では、R7及びR8は、同じであるか又は互いに異なり、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はフェニルから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
最も好ましい実施形態では、R7及びR8は、同じであるか又は互いに異なり、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH32、-CH=CH2、及び-C65からなるリストから独立して選択され、炭素原子に結合した1つ又は複数の水素原子はフッ素により置き換えられていてもよい。
シラザンポリマーは、反復単位M1及び更なる反復単位M2を含み、M1及びM2は、互いに異なるシラザン反復単位であることが好ましい。
また、シラザンポリマーは、反復単位M1及び更なる反復単位M3を含み、M1はシラザン反復単位であり、M3はシロキサン反復単位であることが好ましい。
また、シラザンポリマーは、反復単位M1、更なる反復単位M2、及び更なる反復単位M3を含み、M1及びM2は、互いに異なるシラザン反復単位であり、M3はシロキサン反復単位であることが好ましい。
一実施形態では、シラザンポリマーは、ペルヒドロポリシラザン又はオルガノポリシラザンであってもよいポリシラザンである。好ましくは、ポリシラザンは、反復単位M1及び任意選択で更なる反復単位M2を含み、M1及びM2は、互いに異なるシラザン反復単位である。
【0025】
代替的な実施形態では、シラザンポリマーは、ペルヒドロポリシロキサザン又はオルガノポリシロキサザンであってもよいポリシロキサザンである。好ましくは、ポリシロキサザンは、反復単位M1及び更なる反復単位M3を含み、M1はシラザン反復単位であり、M3はシロキサン反復単位である。好ましくは、ポリシロキサザンは、反復単位M1、更なる反復単位M2、及び更なる反復単位M3を含み、M1及びM2は、互いに異なるシラザン反復単位であり、M3はシロキサン反復単位である。
好ましくは、シラザンポリマーは、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマー、又は少なくとも1つのランダム区画及び少なくとも1つのブロック区画を含む混合ランダムブロックコポリマー等のコポリマーである。より好ましくは、シラザンポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーである。
【0026】
本発明で使用されるシラザンポリマーは、単環式構造を有していないことが好ましい。より好ましくは、シラザンポリマーは、混合多環式、直鎖構造、及び/又は分岐鎖構造を有する。
シラザンポリマーは、分子量分布を有する。好ましくは、本発明のコーティング組成物に使用されるシラザンポリマーは、GPCにより測定して、少なくとも1,000g/mol、より好ましくは少なくとも1,200g/mol、更により好ましくは少なくとも1,500g/molの質量平均分子量Mwを有する。好ましくは、シラザンポリマーの質量平均分子量Mwは、100,000g/mol未満である。より好ましくは、シラザンポリマーの分子量Mwは、1,500~50,000g/molの範囲である。
好ましくは、コーティング組成物中のシラザンポリマーの総含有量は、コーティング組成物の総質量に基づき、10~90質量%、好ましくは20~60質量%の範囲である。
【0027】
シランカップリング剤(B)
本発明によるコーティング組成物に含まれるシランカップリング剤(B)は、1つ又は複数のアルコキシシリル基を含むことが好ましい。より好ましくは、本発明によるコーティング組成物に含まれるシランカップリング剤(B)は、1つ、2つ、3つ、又は4つのアルコキシシリル基を含む。
本発明の好ましい実施形態では、シランカップリング剤(B)は、式(a):
【化2】
式(a)
により表され、
式中、Zは、1つ又は複数の炭素原子及び/又はケイ素原子を含む構造単位であり、
Iは、各出現において互いに独立して、任意選択で1つ又は複数の-O-及び/又は-Si(CH32-基を含む、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する直鎖アルコキシ基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有する分岐アルコキシ基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を有する環状アルコキシ基である。
IIは、各出現において互いに独立して、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有する分岐アルキル基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を有する環状アルキル基であり、
kは、0、1、又は2、好ましくは0であり、
nは、1、2、3、又は4であり、好ましくは1又は2である。
【0028】
本発明のより好ましい実施形態では、シランカップリング剤(B)は、式(b)~(e):
【化3】
式(b) 式(c)
【化4】
式(d) 式(e)
のうちの1つにより表され、
式中、Xbは、(CH32N-、[HO-(CH2m2N-、AcO-、CH3(CH2m-NH-、CH3-NH-、Cl-、H2C=C(CH3)-CH2-NH-、H2C=C(CH3)-CO-O-、H2C=C(CH3)-O-CH2-CH(OH)-CH2-NH-、H2C=CH-、H2C=CH-CH2-NH-、H2C=CH-CO-CH2-CH(OH)-CH2-NH-、H2C=CH-CO-O-、H2N-、H2N-(CH2m-NH-、H2N-(CH2m-NH-(CH2n-、H2N-(CH2m-NH-(CH2n-NH-、H2N-(CH2m-NH-C46-、H2N-(CH2mNH-CH2-C46-、H2N-(CH2m-O-C(CH32-CH=CH-、H2N-C64-、H2N-C64-O-、H3C-、H3C-(CH2m-、H3C-(CH2m-O-、H3CO-、HO-、HS-、NCS-、Ph2N-、Ph-CO-O-、Ph-NH-、及び
【化5】
からなるリストから選択され、
mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の整数であり、
nは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の整数であり、
cは、-(CH2p-、-NH-、-NH-(CH2p-NH-、-O-、-S-、-S2-、-S3-、-S4-、-Si(CH32-、及び-Si(CH32-O-Si(CH32-からなるリストから選択され、
pは、1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~8の整数であり、
dは、
【化6】
及び
【化7】
からなるリストから選択され、
eは、
【化8】
からなるリストから選択され、
Yは、存在しないか、又は1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、若しくは3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を有する環状アルキレン基であり、
Iは、各出現において互いに独立して、任意選択で1つ又は複数の-O-及び/又は-Si(CH32-基を含む、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する直鎖アルコキシ基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有する分岐アルコキシ基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を有する環状アルコキシ基であり、
IIは、各出現において互いに独立して、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有する分岐アルキル基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を有する環状アルキル基であり、
kは、0、1、又は2、好ましくは0である。
【0029】
d及びXeの上記の構造における波線は、結合部位を示す。
【0030】
式(b)の好ましいシランカップリング剤(B)は、以下のものからなるリストから選択される:
(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(3-アミノプロポキシ)-3,3-ジメチル-1-プロペニル-トリメトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリールアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンチオール、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、6-エチル-6-(2-メトキシエトキシ)-2,5,7,10-テトラオキサ-6-シラウンデカン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシ(3-チオシアナト)プロピルシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリメトキシメチルシラン、及びビニルトリエトキシシラン。
【0031】
式(c)の好ましいシランカップリング剤(B)は、以下のものからなるリストから選択される:
1-(トリエトキシシリル)-2-(ジエトキシメチルシリル)エタン、1-(トリメトキシシリル)-2-(ジメチルメトキシシリル)エタン、1-(トリメトキシシリル)-2-(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(ジメチルメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリエトキシシリルエチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(トリメトキシシリルエチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(3-(トリエトキシシリル)-1-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル)テトラスルフィド、ビス[2-(トリエトキシシリル)エチル]ジメチルシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]ジメチルシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エーテル、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エーテル、及びN,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン。
【0032】
式(d)の好ましいシランカップリング剤(B)は、以下のものからなるリストから選択される:
トリス(トリエトキシシリルエチル)メチルシラン、トリス(トリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルエチル)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルエチルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、及びトリス(トリメトキシシリルプロピル)メチルシラン。
式(e)の好ましいシランカップリング剤(B)は、以下のものからなるリストから選択される:
テトラキス(トリエトキシシリルエチル)シラン、テトラキス(トリエトキシシリルプロピル)シラン、及びテトラキス(トリメトキシシリルプロピル)シラン。
特に好ましいシランカップリング剤(B)は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、及びトリス(トリエトキシシリルプロピル)アミンである。
【0033】
本発明によるコーティング組成物は、上述のシランカップリング剤の1つを、又は上述のシランカップリング剤の2つ、3つ、若しくはそれよりも多くを組合せで含むことが好ましい。
【0034】
無機ナノ粒子(C)
本発明の好ましい実施形態では、無機ナノ粒子(C)は、炭化物、ダイヤモンド、窒化物、酸化物、シリケート、スルフェート、スルフィド、スルフィット、及びチタネートからなるリストから選択され、これらは任意選択にキャッピング剤で表面修飾されていてもよい。
本発明のより好ましい実施形態では、無機ナノ粒子(C)は、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、シリカ、チタニア、及びジルコニアからなるリストから選択される。
本発明の最も好ましい実施形態では、無機ナノ粒子(C)は、シリカ(SiO2)である。
本発明によるコーティング組成物は、1つ、2つ、又はそれよりも多くのタイプの上述の無機ナノ粒子(C)を含んでいてもよい。
好ましくは、無機ナノ粒子(C)は、≦100nm、より好ましくは≦60nm、更により好ましくは≦40nm、最も好ましくは≦25nmの粒径を有する。好ましくは、無機ナノ粒子(C)は、1~100nm、より好ましくは5~60nm、更により好ましくは10~40nm、最も好ましくは10~25nmの範囲の粒径を有する。粒径は、例えば動的光散乱法等の当業者に公知の任意の標準的方法により決定することができる。ナノスケール粒子のサイズを決定するための装置及び方法は、例えば、Malvern Panalyticalから入手可能である(https://www.malvernpanalytical.com/en/products/product-range/zetasizer-range/zetasizer-advance-range/zetasizer-pro)。
【0035】
質量比
本発明によるコーティング組成物では、シラザンポリマー(A)対シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、75:25~40:60の範囲であり、シラザンポリマー(A)及びシランカップリング剤(B)対無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、80:20~50:50の範囲である。
シラザンポリマー(A)対シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、66:34~45:55の範囲であり、シラザンポリマー(A)及びシランカップリング剤(B)対無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、73:27~55:45の範囲であることが好ましい。
シラザンポリマー(A)対シランカップリング(B)の質量比[A]:[B]は、60:40~50:50の範囲であり、シラザンポリマー(A)及びシランカップリング剤(B)対無機ナノ粒子(C)の質量比[A+B]:[C]は、70:30~60:40の範囲であることがより好ましい。
【0036】
更なる成分
本発明によるコーティング組成物は、1つ又は複数の溶媒を含むことが好ましい。好適な溶媒は、例えば、1-クロロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン等の、ハロゲン化されていてもよい脂肪族及び/若しくは芳香族炭化水素、酢酸エチル、n-ブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、若しくはtert-ブチルアセテート等のエステル、アセトン若しくはメチルエチルケトン等のケトン、テトラヒドロフラン若しくはジブチルエーテル等のエーテル、及び更にモノ若しくはポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(グリム)、又は例えばブチルジグリコールアセテート等のアルファアルキルオメガアルキルカルボニルモノ若しくはポリグリコール等、或いはそれらの混合物等の有機溶媒である。
更に、本発明によるコーティング組成物は、好ましくは以下のものからなるリストから選択される1つ又は複数の添加剤を含んでもよい:蒸発挙動に影響を及ぼす添加剤、薄膜形成に影響を及ぼす添加剤、接着促進剤、防腐食添加剤、架橋剤、分散剤、充填剤、機能性顔料(例えば、電気伝導率又は熱伝導率、磁気特性等の機能的効果をもたらすための)、光学顔料(例えば、色、屈折率、真珠光沢効果等の光学的効果をもたらすための)、熱膨張を低減する粒子、下塗剤、レオロジー調整剤(例えば、増粘剤)、界面活性剤(例えば、湿潤剤及び均展剤、又は疎水性若しくは疎油性及び耐落書き効果を向上させるための添加剤)、粘度調整剤、及び他の種類の樹脂又はポリマー。
【0037】
1つ又は複数の触媒を添加することにより、コーティング組成物の硬化を加速させることが可能である。有用な触媒の例は、ホウ素-、アルミニウム-、スズ-、若しくは亜鉛-アルキル、アリール、若しくはカルボキシレート等のルイス酸、カルボン酸等のブレンステッド酸、第一級、第二級、若しくは第三級アミン若しくはホスファゼン等の塩基、又はカルボキシレート、アセチルアセトネート、若しくはアルコキシレートのPd、Pt、Al、B、Sn、若しくはZn塩等の金属塩である。Si-H基及びSi-CH=CH2基を両方とも有するシラザンを使用する場合、Pt又はPd塩又は錯体等の周知のヒドロシリル化触媒を使用することができる。Si-CH=CH2のみ、又はSi-H基及びSi-CH=CH2基の両方を有するシラザンを使用する場合、過酸化物又はアゾ化合物のようなUV又は熱ラジカル開始剤を使用することができる。好ましい実施形態では、本発明によるコーティング組成物は、上述の触媒のうちの1つ又は複数を含む。
当業者であれば、コーティング組成物及びその成分の定義に関する上述の好ましい、より好ましい、特に好ましい、及び最も好ましい実施形態を任意の所望の方法で自由に組み合わせることができることを理解されたい。
【0038】
方法
本発明は、コーティングされた物品を作製するための方法であって、
(a)本発明によるコーティング組成物を物品の表面に適用するステップ、及び
(b)上記コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた物品を得るステップ
を含む方法に更に関する。
好ましくは、ステップ(a)で適用されるコーティング組成物は、0.5~1,000mPas、より好ましくは1~250mPasの範囲の粘度を有する均質な液体である。組成物の粘度は、溶媒のタイプ及び含有量、並びにシラザンポリマー(A)、シランカップリング剤(B)、及び無機ナノ粒子(C)のタイプ、比、及び/又は分子量により調整することができる。
【0039】
コーティング組成物は、液体組成物を物品の表面に適用するのに好適な適用方法により、ステップ(a)で適用されることが好ましい。そのような方法としては、例えば、布拭き法、スポンジ拭き法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法、ローラーコーティング法、スリットコーティング法、スロットコーティング法、スピンコーティング法、ディスペンス法、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法、又はインクジェット印刷法等が挙げられる。ディップコーティング法及びスプレーコーティング法が特に好ましい。
【0040】
本発明のコーティング組成物は、例えば、建物、義歯、調度品、家具、衛生設備(トイレ、洗面台、浴槽等)、看板、サインボード、プラスチック製品、ガラス製品、陶磁器製品、金属製品、木製品、及び車両(道路車両、鉄道車両、船舶、及び航空機)等の種々の物品の表面に適用することができる。物品の表面は、使用に関して下記に記載されている基部材料のいずれかで作られていることが好ましい。
典型的には、コーティング組成物は、ステップ(a)において、0.1μm~100μm、好ましくは0.5μm~50μmの厚さの層として物品の表面に適用される。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、1~30μmの厚さを有する薄層として適用される。
ステップ(b)におけるコーティングの硬化は、例えば、周囲環境硬化、熱硬化、及び/又は照射硬化等の種々の条件下で実施することができる。硬化は、任意選択で、好ましくは水蒸気の形態の水分の存在下で実施される。この目的のため、人工気候室を使用することができる。
周囲環境硬化は、好ましくは、10~40℃の範囲の温度で行われる。熱硬化は、好ましくは、100~200℃、好ましくは120~180℃の範囲の温度で行われる。照射硬化は、好ましくは、IR照射又はUV照射により行われる。好ましいIR照射波長は、7~15μm又は基材吸収の場合は1~3μmの範囲である。好ましいUV照射波長は、300~500nmの範囲である。
【0041】
好ましくは、ステップ(b)の硬化は、炉又は人工気候室で実施される。その代わりに、非常に大きなサイズの物品(例えば、建物、車両等)をコーティングする場合、硬化は、好ましくは周囲条件下で実施される。
好ましくは、ステップ(b)の硬化時間は、コーティング組成物及びコーティング厚に応じて、0.01~24時間、より好ましくは0.10~16時間、更により好ましくは0.15~8時間、最も好ましくは0.20~5時間である。
他の好ましい硬化条件は、
1.過酸化物又は硫黄化合物等の触媒の存在下での熱硬化(加硫)。
2.UV活性光開始剤の存在下でのUV硬化
である。
ステップ(b)での硬化後、コーティング組成物は、化学的に架橋されて、物品の表面に硬質コーティングを形成する。
上記方法により得られるコーティングは、最大の表面硬度、擦傷耐性、及び摩耗耐性等の最大の機械的耐性及び耐久性を有するハードコーティングである。更に、濁った薄膜の形成及び湿潤問題等の有害挙動が回避される。
【0042】
物品
更に、上述の作製方法により得ることができるか又は得られるコーティングされた物品が提供される。
使用
本発明は、基部材料の表面にハードコーティングを形成するための、本発明によるコーティング組成物の使用に更に関する。
本発明によるコーティング組成物が適用される好ましい基部材料としては、例えば、金属(鉄、鋼、銀、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、ケイ素、ホウ素、錫、鉛、又はマンガン、又は必要に応じて酸化物若しくはメッキ薄膜が施されたそれらの合金);プラスチック(ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタン、ポリエステル(PET)、ポリアリルジグリコールカーボネート(PADC)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリチオシアネート、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等);ガラス(溶融石英、ソーダ石灰シリカガラス(窓ガラス)、ホウケイ酸ナトリウムガラス(Pyrex(登録商標))、酸化鉛ガラス(クリスタルガラス)、アルミノケイ酸ガラス、又は酸化ゲルマニウムガラス等);及び建築材料(レンガ、セメント、セラミック、粘土、コンクリート、石膏、大理石、ミネラルウール、モルタル、石、又は木材、及びそれらの混合物等)等の幅広く様々な材料が挙げられる。
【0043】
基部材料は、ハードコーティングの接着性を増強するために下塗剤で処理されてもよい。このような下塗剤は、例えば、シラン、シロキサン、又はシラザンである。プラスチック材料を使用する場合、機能性コーティングの接着性を向上させることができる火炎処理、コロナ処理、又はプラズマ処理による前処理を実施することが有利であり得る。建築材料を使用する場合、例えば、ポリウレタンラッカー、アクリルラッカー、及び/又は分散塗料等の、ラッカー、ワニス、又は塗料でプレコーティングを実施することが有利であり得る。
本発明は、以下の実施例により更に説明されているが、それらはいかなる点でも限定とは解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の改変、追加、及び変更をなすことができることを認識するだろう。
【実施例
【0044】
使用した原材料
本明細書に記載の実施例では、以下の原材料を使用した。
・ DBU[1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン]、Sigma-Aldrichから入手可能。
・ 無水品質のn-ブチルアセテート、Sigma-Aldrichから入手可能。
・ Nanopol(登録商標)C784、酢酸ブチル中50質量%、平均粒子サイズ20nm、コロイド状シリカ、Evonikから入手可能。
・ 3-アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、Sigma-Aldrichから入手可能:
【化9】
・ ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(AMEO-ダイマー)、Sigma-Aldrichから入手可能:
【化10】
・ Durazane(登録商標)1000:n:m=0:100、Durazane(登録商標)1033:n:m=33:67、Durazane(登録商標)1066:n:m=66:34、Durazane(登録商標)1085:n:m=85:15、全てMerck KGaAから入手可能:
【化11】
【0045】
I. シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)及びシランカップリング剤(B)としてAMEOを含む配合物の調製
シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)及びシランカップリング剤(B)としてAMEOを含む配合物を、以下の基本手順に従って調製した。使用した正確な量を表1に示す。
まず、AMEOを溶媒n-ブチルアセテートと混合した。次いで、Durazane(登録商標)を添加した。配合物を8時間激しく撹拌し、最終的に透明な溶液を得た。
【表1】
【0046】
II. シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)、シランカップリング剤(B)としてAMEO-ダイマー、及びDBUを含む配合物の調製
シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)、シランカップリング剤(B)としてAMEO-ダイマー、及びDBUを含む配合物を、以下の基本手順に従って調製した。使用した正確な量を表2に示す。
まず、AMEO-ダイマーを溶媒n-ブチルアセテートと混合し、次いでDBUを添加し、配合物を4時間激しく撹拌した。次いで、Durazane(登録商標)を添加し、配合物を更に8時間激しく撹拌した。最終的に、透明な溶液が得られた。
【表2】
【0047】
III. シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)、シランカップリング剤(B)としてAMEO-ダイマー、及び無機ナノ粒子(C)を含む配合物の調製
シラザンポリマー(A)としてDurazane(登録商標)、シランカップリング剤(B)としてAMEO、及び無機ナノ粒子(C)を含む配合物を、以下の基本手順に従って調製した。使用した正確な量を表3に示す。
まず、AMEOを溶媒n-ブチルアセテートと混合し、次いで無機ナノ粒子を添加し、配合物を4時間激しく撹拌した。次いで、Durazane(登録商標)を添加し、配合物を更に4時間激しく撹拌した。最終的に、透明~わずかに乳白色の溶液が得られた。
【表3】
【0048】
IV. 適用
配合物は全て、10cm×10cmガラスプレートにスピンコートした。スピンコーターの回転速度を、250~2,000rpmに調整して、2.0~2.5μmの薄膜厚を達成した。コーティングしたガラス板は全て、温度25℃及び相対湿度50%の周囲条件下で14日間硬化させた。
【0049】
コーティング性能の測定及び評価:
14日間硬化させた後、コーティングを全て、濁り、不均一性、亀裂、層間剥離、及び他の明らかな薄膜欠陥について肉眼で視覚的に分析した。DIN EN ISO 14577-1/ASTM E 2546に従って、ナノインデンター[ナノインデンターモデルHelmut Fisher FISCHERSCOPE HM2000 S、ビッカースダイヤモンドピラミッド]を用いて、コーティングの硬度を分析した。結果を表4、5、及び6に示す。
【表4】
【0050】
表4及び図1の結果は、硬度が、AMEOの量が増加すると共にほぼ直線的に増加することを示す。しかしながら、AMEOの量が60質量%に到達すると、コーティングは湿潤欠陥を示し、もはや閉薄膜を形成しない。Durazane(登録商標)のタイプに関しては、ポリマー中の-[Si(H)CH3-NH]-モノマー単位の量が多いほど、ナノインデンターマルテンス硬度が高くなる。
【表5】


【0051】
表4/図1と同様に、表5/図2は、硬度が、AMEO-ダイマーの量が増加すると共にほぼ直線的に増加することを示す。AMEOとは対照的に、ダイマーであるAMEO-ダイマーは、より少ない量で使用するとより高い効果を示す。しかしながら、AMEOの量が60質量%に到達すると、コーティングは湿潤欠陥を示し、もはや閉薄膜を形成しない。より多量の-[Si(CH32-NH]-モノマー単位を含むDurazane(登録商標)(Durazane(登録商標)1066及びDurazane(登録商標)1085)と混合すると、濁った薄膜が形成される。Durazane(登録商標)のタイプに関しては、この場合も、ポリマー中の-[Si(H)CH3-NH]-モノマー単位の量が多いほど、ナノインデンターマルテンス硬度が高くなる。
【表6】
【0052】
表6及び図3は、硬度が、3つのDurazane(登録商標)1033:AMEO比全てで、ナノ粒子の量が増加すると共にほぼ直線的に増加することを示す。しかしながら、ナノ粒子の量が60質量%に到達すると、硬化後にコーティングには亀裂が形成される。
【0053】
まとめると、以下の基本的結論を導き出すことができる:
1. Durazane(登録商標)ポリマー中の-[Si(H)CH3-NH]-モノマー単位の比が高いほど、より硬度が高いコーティングがもたらされる。
2. Durazane(登録商標)ポリマーに対するシランカップリング剤の量が多いほど、より硬度が高いコーティングがもたらされる。しかしながら、シランカップリング剤の量が多すぎると、コーティングは薄膜欠陥を示す。
3. Durazane(登録商標)ポリマー及びシランカップリング剤の合計に対するナノ粒子の量が多いほど、より硬度が高いコーティングがもたらされる。しかしながら、ナノ粒子の量が60%を超えると、コーティングは薄膜欠陥を示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】