IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-ラクチドラセミ体の分離方法 図1
  • 特表-ラクチドラセミ体の分離方法 図2
  • 特表-ラクチドラセミ体の分離方法 図3
  • 特表-ラクチドラセミ体の分離方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ラクチドラセミ体の分離方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/12 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
C07D319/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544400
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2022008085
(87)【国際公開番号】W WO2022260430
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0075600
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0069132
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユジン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンチュル・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・キュ・オ
(57)【要約】
本発明では、L-ラクチドの比率が低い時にも、副反応の恐れなく高収率および高効率にラクチドラセミ体を分離することができる分離方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチドラセミ体にL-ラクチドを投入し混合して混合物を準備する段階;および
前記混合物に抽出溶媒を投入して、前記ラクチドラセミ体からL-ラクチドを選択抽出する段階;を含み、
前記抽出溶媒はアミン系化合物またはアミド系化合物を含む、
ラクチドラセミ体の分離方法。
【請求項2】
前記抽出溶媒は、液状であり、融点が25℃以下であり、沸点が80℃以上である極性溶媒である、請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記抽出溶媒は、非キラル性化合物である、請求項1に記載の分離方法。
【請求項4】
前記アミン系化合物は、下記化学式1で表される3級アミンである、請求項1に記載の分離方法:
【化1】
上記化学式1中、
11~R13は、それぞれ独立してC1-20の直鎖または分枝鎖アルキルである。
【請求項5】
前記アミン系化合物は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn-オクチルアミン、トリドデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリt-ブチルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、またはN,N-ジエチルドデシルアミンである、請求項1に記載の分離方法。
【請求項6】
前記アミン系化合物は、トリエチルアミン、またはトリn-オクチルアミンである、請求項1に記載の分離方法。
【請求項7】
前記アミド系化合物は、ホルムアミド、またはジメチルアセトアミドである、請求項1に記載の分離方法。
【請求項8】
前記抽出溶媒は、前記混合物内存在するL-ラクチド1重量部に対して1~10重量部で使用される、請求項1に記載の分離方法。
【請求項9】
前記L-ラクチドは、ラクチドラセミ体100重量部に対して10~70重量部の量で投入される、請求項1に記載の分離方法。
【請求項10】
前記L-ラクチドは、前記混合物内L-ラクチドの含量が混合物総重量に対して50重量%超であり、80重量%以下になるようにする量で投入される、請求項1に記載の分離方法。
【請求項11】
前記L-ラクチドは、前記混合物内L-ラクチドの含量が混合物総重量に対して50重量%超であり、60重量%未満になるようにする量で投入される、請求項1に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年6月10日付韓国特許出願第10-2021-0075600号および2022年6月7日付韓国特許出願第10-2022-0069132号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、副反応なく高収率および高効率にラクチドラセミ体を分離する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリ乳酸(Polylactic Acid)は生分解性特性を有していると同時に引張強度および弾性率などの機械的物性に優れた素材であって、多様な分野で広く使用されている。ポリ乳酸はホモポリマーであるが、立体規則性によって多様な構造を有することができる。ポリ乳酸は一般にラクチド(Lactide、LT)の開環重合を通じて製造され、ラクチドには光学異性体が存在するため、繰り返し単位内のこのような光学異性体の配列によってポリ乳酸の特性を変化させることが可能である。
【0004】
一方、ラクチドは乳酸(lactic acid;2-hydroxyptopionic acid、LA)の環状ジエステル(cyclic di-ester)である乳酸二量体であって、乳酸を脱水縮合して比較的低い分子量の乳酸オリゴマーを中間体として得て、これを触媒存在下で180℃以上に加熱し減圧して解重合-環化することによってラクチドを形成した後、これを蒸気として反応器外部に排出させる、いわゆる、反応蒸留法によって製造された。
【0005】
前記ラクチドの製造に使用される乳酸は、D-型(または(R)-型)とL-型(または(S)-型)の二つの鏡像異性体(enantiomer)を有する非対称性(chiral)分子であるため、前記乳酸から生成されるラクチドは2つの立体中心(stereocenter)を有する三つの光学異性体、具体的には2分子のL-乳酸から形成されるL-ラクチド(L-lactide(L-LT)または(S,S)-ラクチド)、2分子のD-乳酸から形成されるD-ラクチド(D-lactide(D-LT)または(R,R)-ラクチド)、そして各1分子のL-乳酸とD-乳酸から形成されるメソラクチド(meso-lactide(meso-LT)または(R,S)-ラクチド)として存在する。前記光学異性体の混合物以外にも前記反応蒸留法でラクチドを製造する場合、不純物として反応していない乳酸および乳酸誘導体がまた存在することがある。
【0006】
よって、ラクチドの製造時、選択的合成方法を用いて90%以上の光学純度を有する即ち、L-ラクチドまたはD-ラクチドを90%以上含有するラクチド混合物を製造することができるが、99%以上の高純度に生産することは難しい。また、生成物中に含まれているメソラクチドはL-ラクチドやD-ラクチドに比べて加水分解速度が速いため、生成物中のメソラクチドの含量が高ければ全体的に加水分解が促進されるようになる。また、乳酸や乳酸オリゴマーは、酸性度を高め高品質のポリラクチド形成を阻害する。したがって、使用目的によって、L-ラクチドやD-ラクチドを高純度に含有しながらメソラクチド、乳酸および乳酸誘導体を除去する精製方法が要求された。
【0007】
最近は、乳酸からラクチド製造時に生成されるメソラクチドを活用する方法が多様に研究開発されている。
【0008】
一例として、ラセミ化(racemization)を通じてメソラクチドをL-ラクチドとD-ラクチドに変化させる方法がある。しかし、ラセミ化を通じて変化させたラクチドはL-ラクチドとD-ラクチドの比率が1:1であるラセミ体(racemate)であり、これらは物理的、化学的特性が同一であるため分離するのに困難がある。
【0009】
前記ラセミ体を分離するための方法として、溶融-結晶化方法(melt-crystallization)、シード(seed)投入を用いた同時結晶化方法(simultaneous crystallization)、キラル溶媒(chiral solvent)使用法などが提案された。しかし、前記溶融-結晶化方法の場合、L-ラクチド比率が80%以上である時のみ可能であるという限界点がある。また、前記シード投入とエタノール溶媒を用いた方法であって、L-ラクチドをシードとして投入した後、エタノール溶媒を使用してL-ラクチドを分離する方法があるが、これもL-ラクチド比率が60%以上である時、効率的である。
【0010】
よって、L-ラクチドの比率が低い時にも、副反応の恐れなく高収率および高効率にラクチドラセミ体を分離することができる方法の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、L-ラクチドの比率が低い時にも、副反応の恐れなく高収率および高効率にラクチドラセミ体を分離することができる方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は下記の段階を含むラクチドラセミ体の分離方法を提供する:
ラクチドラセミ体にL-ラクチドを投入し混合して混合物を準備する段階(段階1);および
前記混合物に抽出溶媒を投入して、前記ラクチドラセミ体からL-ラクチドを選択抽出する段階(段階2);を含み、
前記抽出溶媒はアミン系化合物またはアミド系化合物を含む、
ラクチドラセミ体の分離方法。
【0013】
よって、各段階別に本発明を詳しく説明する。
【0014】
(段階1)
本発明のラクチドラセミ体の分離方法において、段階1は、ラクチドラセミ体にL-ラクチドを投入し混合して混合物を準備する段階である。
【0015】
前記ラクチドラセミ体はL-ラクチドとD-ラクチドが同量で混合された光学異性体の混合物であって、具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドを1:1の重量比で含むものである。
【0016】
前記ラクチドラセミ体は、乳酸を用いたラクチド製造時に副反応で生成されて出るメソラクチドに対するラセミ化を通じて製造できる。これにより、本発明は、ラクチドラセミ体に対してL-ラクチドを投入し混合する段階1前に、メソラクチドをラセミ化して、L-ラクチドとD-ラクチドを含むラクチドラセミ体を製造する段階をさらに含むことができる。
【0017】
前記ラクチドラセミ体に対して投入されるL-ラクチドは、ラクチドラセミ体の分離のための抽出反応時、結晶シード(seed)役割を果たす。
【0018】
前記L-ラクチドは、ラクチドラセミ体100重量部に対して10~70重量部の量で投入できる。より具体的には、前記L-ラクチドは、前記ラクチドラセミ体に対するL-ラクチドの投入後に得られる混合物総重量に対してL-ラクチドの含量が50重量%超過であり、80重量%以下、より具体的には50重量%超過、または52重量%以上、または55重量%以上であり、80重量%以下、または75重量%以下、または70重量%以下、または65重量%以下、または60重量%以下、または60重量%未満になるようにする量で投入できる。
【0019】
L-ラクチドの投入量および混合物内L-ラクチドの含量が高いほど、L-ラクチドを高純度に得ることができる。これにより、抽出選択度の改善および不純物含量減少の改善効果という面で、前記L-ラクチドは、前記ラクチドラセミ体に対するL-ラクチドの投入後に得られる混合物総重量に対してL-ラクチドの含量が65重量%以上、または70重量%以上であり、80重量%以下、または75重量%以下になるようにする量で投入できる。しかし、本発明では後続の抽出工程で最適抽出溶媒を使用するため、前記混合物内L-ラクチドの含量が60重量%以下、または60重量%未満と低くても、L-ラクチドの分離が可能である。このような効果面で前記L-ラクチドは、前記混合物内L-ラクチドの含量が混合物総重量に対して50重量%超過、または52重量%以上、または55重量%以上であり、60重量%以下、または60重量%未満、または58重量%以下になるようにする量で投入できる。
【0020】
(段階2)
本発明のラクチドラセミ体の分離方法において、段階2は、前記段階1で準備した混合物に抽出溶媒を投入して、前記ラクチドラセミ体からL-ラクチドを選択抽出する段階である。
【0021】
前記抽出溶媒としては、アミン系化合物、またはアミド系化合物が使用される。前記抽出溶媒はキラル(chiral)特性を有しない非キラル性(non-chiral)化合物であり、極性を有し、またL-ラクチド、D-ラクチド、および抽出溶媒の3成分系上の共融点移動(shift of eutectic point)によって優れた抽出効果を示すことができる。これにより、前記抽出溶媒は従来のラクチドラセミ体の分離時に使用されるアルコールなどに比べて、優れた抽出効率を示し、特にTEAなどのアミン系化合物は混合物内L-ラクチド含量が低い場合にも高い抽出効率を示すことができる。
【0022】
また、前記抽出溶媒は常温(20±5℃)で液状として存在し、融点(melting point)が25℃以下であり、沸点(boiling point)が80℃以上である極性(polor)溶媒であってもよい。より具体的には、前記抽出溶媒は、融点が25℃以下、または10℃以下であり、-150℃以上、または-120℃以上であり、沸点が80℃以上または100℃以上であり、300℃以下、または250℃以下である。前記融点および沸点の条件を充足する時、副反応発生を最小化しながらも、安定的で優れた抽出効率を示すことができる。
【0023】
前記アミン系化合物は、具体的に、下記化学式1で表される3級アミンであってもよい:
【化1】

上記化学式1中、
11~R13は、それぞれ独立してC1-20の直鎖または分枝鎖アルキルである。
【0024】
前記アミン系化合物の具体的な例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn-オクチルアミン、トリドデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリt-ブチルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、またはN,N-ジエチルドデシルアミンなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0025】
この中でも、分離効果の顕著さを考慮する時、前記アミン系化合物は前記化学式1中のR11~R13がそれぞれ独立して C1-9の直鎖アルキルである3級アミンであってもよい。より具体的には、前記アミン系化合物は、トリエチルアミン、またはトリn-オクチルアミンであってもよい。
【0026】
具体的に、前記アミド系化合物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい:
【化2】
上記化学式2中、
21~R23は、それぞれ水素であるか、またはそれぞれ独立してC1-20の直鎖または分枝鎖アルキルである。
【0027】
前記化学式2で表されるアミド系化合物は、R21~R23の置換基条件を満足しないジメチルホルムアミドなどと比較して、より優れた分離効果を示すことができる。より具体的には、R~Rは、それぞれ水素であるか、またはそれぞれ独立してC1-8の直鎖または分枝鎖アルキルであり、よりさらに具体的には、それぞれ水素であるか、またはそれぞれメチルであってもよい。
【0028】
前記アミド系化合物の具体的な例としては、ホルムアミド、またはジメチルアセトアミドなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0029】
前記抽出溶媒は、混合物内に存在するL-ラクチド1重量部に対して1~10重量部で使用できる。抽出溶媒の使用量が過度に小さければ抽出効率が十分でなく、抽出溶媒の使用量が過度に多ければ以後に抽出溶媒の除去のための工程が行われなければならないなど工程性が低下することがある。前記範囲で使用される場合、抽出溶媒除去のための追加工程なしで、優れた抽出効率でラクチドラセミ体を分離することができる。より具体的には、前記抽出溶媒は、混合物内存在するL-ラクチド1重量部に対して、1重量部以上、または2重量部以上、または2.5重量部以上、または3重量部以上、または3.1重量部以上、または3.2重量部以上であり、10重量部以下、または8重量部以下、または6.5重量部以下、または5重量部以下、または4重量部以下、または3.6重量部以下、または3.5重量部以下に使用できる。
【0030】
また、前記混合物に抽出溶媒を投入した後、均一混合およびこれによる分離効率を増加させるための混合工程が選択的にさらに行われてもよい。
【0031】
この時、前記混合工程は攪拌機、混合器など通常の混合方法で行うことができ、混合速度、時間なども適切に選択、行うことができる。
【0032】
また、前記段階2は、10~40℃の温度で行うことができる。具体的には、10℃以上、または15℃以上であり、40℃以下、または30℃以下、または25℃以下の温度で行うことができ、よりさらに具体的には、20±5℃の常温で行うことが行できる。前記温度範囲で行われる場合、副反応発生の恐れなく十分な抽出効率を実現することができる。
【0033】
前記反応の結果として、ラクチドラセミ体からL-ラクチドが抽出されるようになる。
【0034】
具体的に、前記抽出溶媒の投入、およびその後の選択的な混合工程の完了後、得られた反応物において沈殿した固体をろ過によって分離除去し、濾液を得る。
【0035】
前記沈殿した固体は、抽出溶媒に溶解されないD-ラクチドと残部のL-ラクチドである。これらに対する分離工程は通常の方法で行うことができ、具体的には、ろ過を通じて分離する。
【0036】
一方、前記濾液に対するガスクロマトグラフィー分析時、L-ラクチドが高含量、具体的には濾液総重量に対して90重量%以上、または92%以上、または93%以上、または94%以上で含まれている。また、加水分解など副反応による副産物の形成は濾液総重量に対して1重量%未満、または0.95重量%以下であって殆どなかった。
【発明の効果】
【0037】
前述のように、本発明によるラクチドラセミ体の分離方法は、L-ラクチドの比率が低い時にも、副反応の恐れなく高収率および高効率にラクチドラセミ体を分離することができる。これにより、前記方法によって分離された高純度のラクチドは分子量の大きい高級ポリラクチドの生産に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実験例で投入シードおよびL-LT比率による溶媒別L-LT抽出選択度を評価した結果を示したグラフである。
図2】実施例3に対するガスクロマトグラフィー分析結果を示したグラフである。
図3】実施例6に対するガスクロマトグラフィー分析結果を示したグラフである。
図4】比較例3に対するガスクロマトグラフィー分析結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明の実施形態を例示するのに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0040】
実施例1
Rac-LT(L-LT:D-LTの重量比=1:1)0.25gにL-LT0.16g(Rac-LT100重量部基準L-LTの投入量=64重量部)を投入し混合して、L-LT:D-LTの重量比が7:3である混合物(混合物総重量基準L-LT含量=70重量%)を製造した。
【0041】
前記混合物にトリエチルアミン(TEA、融点:-114.70℃、沸点:89.3℃)1.30ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準3.28重量部に該当)を投入し、常温で1時間攪拌(stirring)した。結果として製造された溶液はエマルジョン状態であり、フィルターを通じて固体部分をろ過して、分離除去し、濾液を得た。
【0042】
実施例2
Rac-LT(L-LT:D-LTの重量比=1:1)0.25gにL-LT0.07g(Rac-LT100重量部基準L-LTの投入量=28重量部)を投入してL-LT:D-LTの重量比が6:4(混合物総重量基準L-LT含量=60重量%)になるように混合することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0043】
実施例3
Rac-LT(L-LT:D-LTの重量比=1:1)0.25gにL-LT0.03g(Rac-LT100重量部基準L-LTの投入量=12重量部)を投入して混合物のL-LT:D-LTの重量比が5.5:4.5(混合物総重量基準L-LT含量=55重量%)になるように混合することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0044】
実施例4
トリエチルアミン1.30mlの代わりにホルムアミド(formamide、FA、融点:2℃、沸点:210℃)0.84ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準3.31重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0045】
実施例5
トリエチルアミン1.30mlの代わりにホルムアミド0.84ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準4.95重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例2と同様の方法で行った。
【0046】
実施例6
トリエチルアミン1.30mlの代わりにホルムアミド0.84ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準6.18重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例3と同様の方法で行った。
【0047】
実施例7
トリエチルアミン1.30mlの代わりにトリ-n-オクチルアミン(Tri-n-octylamine、融点:-34.0℃、沸点:367℃)1.17ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準3.31重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0048】
実施例8
トリエチルアミン1.30mlの代わりにトリ-n-オクチルアミン1.17ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準4.87重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例2と同様の方法で行った。
【0049】
実施例9
トリエチルアミン1.30mlの代わりにトリ-n-オクチルアミン1.17ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準6.12重量部に該当)を投入することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行った。
【0050】
比較例1
トリエチルアミン1.30mlの代わりにエタノール(ethanol、EtOH、融点:-114.1℃、沸点:78.4℃)1.204mlを投入することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行った。
【0051】
比較例2
トリエチルアミン1.30mlの代わりにエタノール1.204mlを投入することを除いては、前記実施例2と同様な方法で行った。
【0052】
比較例3
トリエチルアミン1.30mlの代わりにエタノール1.204mlを投入することを除いては、前記実施例3と同様な方法で行った。
【0053】
比較例4
トリエチルアミン1.30mlの代わりに1,4-ジオキサン(1,4-dioxane、融点:11℃、沸点:101℃)0.92mlを投入することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行った。
【0054】
比較例5
トリエチルアミン1.30mlの代わりに1,4-ジオキサン0.92mlを投入することを除いては、前記実施例2と同様な方法で行った。
【0055】
比較例6
トリエチルアミン1.30mlの代わりに1,4-ジオキサン0.92mlを投入することを除いては、前記実施例3と同様な方法で行った。
【0056】
比較例7
Rac-LTに対してシードとしてL-LTを投入しないことを除いては、前記実施例1と同様な方法で行った。
【0057】
具体的には、Rac-LT(L-LT:D-LTの重量比=1:1)にトリエチルアミン1.30ml(混合物内存在するL-ラクチド1重量部基準7.6重量部に該当)を投入し、常温で1時間攪拌(stirring)した。
【0058】
しかし、結果の溶液内D-LTに該当する固体分離は起こらなかった。
【0059】
実験例
(1)L-LT抽出選択度
前記実施例および比較例で得られた濾液中のL-LT:D-LTの重量比を測定し、その結果からL-LT抽出選択度を評価した。
【0060】
具体的に、前記実施例および比較例で得られたそれぞれの濾液に対して約60μlずつを取ってアセトニトリル(MeCN)1mlに希釈することによってガスクロマトグラフィー(GC)測定用サンプルを製造した。製造したサンプルに対して下記条件によりGC分析を行った。GC分析結果として得られたクロマトグラムで全体ピーク面積およびL-LTピーク面積をそれぞれ求め、下記数式1によってL-LT抽出選択度(%)を計算した。
【0061】
[数式1]
L-LT抽出選択度(%)=(L-LTピーク面積/全体ピーク面積)×100
上記数式1中、全体ピーク面積およびL-LTピーク面積はそれぞれのピークに対する積分を通じて求めた。
<GC分析条件>
GC/FID、Shimadzu
Column:CP-Chirasil
希釈溶媒:MeCN(acetonitrile)
Injection volume:1μl
Injection port temperature:200℃
Carrier gas:N
FID(flame photometric detector)Temperature:275℃
Column temperature:
Carrier flow rate(ml/min):1.5ml/min
分析時間:19.60min
その結果を下記表1、および図1~4に示した。
【0062】
図1は実験例で投入シードおよびL-LT比率による溶媒別L-LT抽出選択度を評価した結果を示したグラフであり、図2図4は、それぞれ実施例3、実施例6および比較例3に対するガスクロマトグラフィー分析結果を示したグラフである。
【0063】
図2~4のガスクロマトグラフィー分析グラフで、x軸は分析を開始した0minから始まるが、結果を明確に識別することができるようにピークが観察され始める8minから拡大して示した。
【0064】
(2)不純物含量(%)
前記GC分析結果から、前記実施例および比較例によるラセミ体ラクチドの分離時に発生する不純物の含量を測定した。
【0065】
具体的には、前記GC分析クロマトグラムでmeso-LTピークおよびunknownピークのような不純物に該当するピーク(以下、簡単に「不純物ピーク」と称する)の面積をそれぞれ求め、下記数式2によって不純物含量(%)を計算した。
【0066】
[数式2]
不純物含量(%)=(不純物ピークの総面積/全体ピーク面積)×100
上記数式2で、全体ピーク面積および不純物ピークの面積はそれぞれのピークに対する積分を通じて求め、不純物ピークの総面積は積分を通じて求めたそれぞれの不純物ピーク面積を全て合算した値を意味する。
【0067】
【表1】
【0068】
実験の結果、TEA、FAまたはTri-n-octylamineを抽出溶媒として使用した実施例1-9は、優れたL-LT抽出選択度と共に顕著に減少した不純物含量を示した。
【0069】
具体的には、L-LT投入後の混合物内L-LTの比率が60重量%以上で高い場合、TEA、FAまたはTri-n-octylamineを抽出溶媒として使用した実施例1、2、4、5、7、および8は、EtOHまたは1,4-ジオキサンを抽出溶媒として使用した比較例1、2、4および5と比較して同等水準以上の優れたL-LT抽出選択度を示した。
【0070】
また、L-LT投入後混合物内L-LT含量が60%未満、具体的に55%で低い場合、従来の抽出溶媒であるEtOHはL-LT抽出選択度が86.547%で低まった反面、TEAおよびTri-n-octylamineは抽出選択度がそれぞれ92.045%および92.884%で依然として高いL-LT抽出選択度を示した。
【0071】
一方、抽出溶媒としてFAを使用した実施例6の場合、L-LT抽出選択度が66.069%であって、EtOHを使用した比較例3よりも低いL-LT抽出選択度を示した。しかし、FAを用いたラクチドラセミ体の分離時生成される不純物の量は0.928%である反面、EtOHを用いたラクチドラセミ体の分離時発生する不純物の含量が5.227%であって顕著に高かった。これからL-LT含量が低い場合、抽出溶媒としてFA使用時、EtOHに比べてL-LT抽出選択度は多少低いが、不純物発生量を顕著に減少させることができるため、よりさらに高純度にL-LTを得ることができるのが分かる。
【0072】
また、図2~4でのGC分析グラフに示されているように、TEAを使用した実施例3はGC分析グラフでL-LTおよびD-LT以外のピークが存在しなかった。反面、EtOH溶媒を使用した比較例3の場合、GC分析グラフでL-LTおよびD-LT以外にunknown peakが観察され、これから加水分解などラクチドの副反応可能性を確認した。
【0073】
また、FAを使用した実施例6の場合にも、GC分析グラフでretention time-10分以上の部分で極めて小さいmeso-LTピークが観察され、これから副反応が存在するのを確認した。しかし、その比率が極めて低くて、発生する副反応生成物の含量も極めて小さかった。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】