(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】難燃性熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240124BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20240124BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/521
C08K5/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537521
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021087062
(87)【国際公開番号】W WO2022136413
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,タンヤ
(72)【発明者】
【氏名】シュプレーン,レベッカ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
4J002CK051
4J002EW046
4J002EW047
4J002EW127
4J002EW137
4J002FD136
4J002FD137
4J002GM00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンと、ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)と、ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)とを含む組成物、及びさらに本発明による組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)、
(iii) ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)
を含む、組成物。
【請求項2】
難燃剤(F1)がピペラジンピロホスフェートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
難燃剤(F1)が1質量%未満の水含量を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
難燃剤(F1)が15%を超えるリン含有量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
難燃剤(F1)が0.001~5質量%の範囲の量でシリカを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
難燃剤(F1)が粒度(d98)を5~100μmの範囲に有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
リン含有難燃剤(F2)がホスフィン酸の誘導体からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、リン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F3)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の難燃剤(F2)とリン含有難燃剤(F3)の合計の割合が、全組成物に対して1質量%~30質量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
難燃剤(F1)の割合が前記組成物全体に対して1質量%~40質量%の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリウレタンが50000~500000Daの範囲の平均分子量(M
W)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、全組成物に対して50質量%~94質量%の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンと、ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)と、ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)とを含む組成物、及びさらに本発明による組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性熱可塑性ポリウレタンは広く使用されており、例えばケーブルシースとしてケーブル製造で使用されている。ここでの一般的な要件は、関連する燃焼試験(例:VW1)に合格するだけでなく、適切な機械的特性を備えた薄いケーブルシースを有する薄いケーブルである。
【0003】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ハロゲン含有難燃剤又はハロゲン不含難燃剤のいずれかと混合してよい。ハロゲン不含難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンは一般に、燃焼したときに毒性及び腐食性がより低い煙ガスを発生させるという利点を有する。ハロゲン不含難燃性TPUは例えば、EP0617079A2、WO2006/121549A1又はWO03/066723A2において記載されている。US2013/0059955A1は、ホスフェートベースの難燃剤を含む、ハロゲン不含TPU組成物も開示している。
【0004】
US2013/0081853A1は、TPUポリマー及びポリオレフィン及びリンベースの難燃剤及びさらなる添加剤を含む、ハロゲン不含難燃性組成物に関する。US2013/0081853A1によれば、組成物は、良好な機械的特性を有する。
【0005】
通常、いくつかの難燃剤を組み合わせて組成物の特性を適応させる。US2019/0031829A1は、熱可塑性ポリウレタン樹脂と、メラミンオルトホスフェート、メラミンピロホスフェート、及びメラミンポリホスフェートからなる群より選択される少なくとも1つのメラミン塩と、少なくとも1つのピペラジン塩とを含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を開示している。また、EP2751204B1には、金属水和物、窒素ベースのリン難燃剤、及び液体ホスフェート改質剤を含むTPUベースの樹脂が開示されている。
【0006】
ピペラジンベースの難燃剤の使用は、原則として最新技術から公知である。WO2012/174712A1は、プロピレンポリマー、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むハロゲン不含難燃性ポリマー組成物、及びピペラジン成分を含む膨張性難燃剤系を開示している。EP3135729B1は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び(ポリ)ホスフェート化合物、例えばピペラジンポリホスフェートを含む難燃性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。
【0007】
メラミンシアヌレートも、エンジニアリングプラスチックのための難燃剤として長く知られている。例えば、WO97/00916A1は、脂肪族ポリアミドのための難燃剤として、タングステン酸/タングステン酸塩と組み合わせたメラミンシアヌレートを記載している。EP0019768A1は、メラミンシアヌレートと赤リンとの混合物によってポリアミドを難燃化することを開示している。
【0008】
WO03/066723A1によれば、難燃剤としてメラミンシアヌレートのみを含む材料は、良好な限界酸素指数(LOI(Limiting Oxygen Index))を有さず、例えば薄い壁厚の場合、UL94試験における性能によって判定される良好な難燃性も有しない。同様に、WO2006/121549A1も、難燃剤としてメラミンポリホスフェート、ホスフィネート及びボレートの組み合わせを含む材料を記載している。これらの材料は、薄い壁厚の場合では、高いLOI値を達成しているが、UL94試験においては、良好な結果を達成していない。
【0009】
例えば、メラミンシアヌレートと、リン酸エステル及びホスホン酸エステルとの組み合わせを難燃剤として含む材料は、UL94V試験では良好な結果を示すが、LOI値は非常に低く、例えば25%未満である。メラミンシアヌレートと、リン酸エステル及びホスホン酸エステルとのこのような組み合わせは、特に薄いケーブルのシースの場合、難燃剤として不十分である。高いLOI値は、様々な難燃性用途の規格、例えばDIN EN45545において規定されている。
【0010】
メラミンは有害であり得ることが示唆されている。メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート及びメラミンポリホスフェートのようなメラミンベースの化合物は、少量のメラミンを含有しているので、これらの難燃剤を置き換えることが有利になる可能性がある。
【0011】
さらに、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート及びメラミンポリホスフェートなどのメラミンをベースとする難燃剤を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物は、しばしば不透明な材料をもたらす。多くの用途では、材料が透明又は半透明であることが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP0617079A2
【特許文献2】WO2006/121549A1
【特許文献3】WO03/066723A2
【特許文献4】US2013/0059955A1
【特許文献5】US2013/0081853A1
【特許文献6】US2019/0031829A1
【特許文献7】EP2751204B1
【特許文献8】WO2012/174712A1
【特許文献9】EP3135729B1
【特許文献10】WO97/00916A1
【特許文献11】EP0019768A1
【特許文献12】WO03/066723A1
【特許文献13】WO2006/121549A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって、従来技術から開始して、本発明の目的は、良好な機械的特性、及び良好な難燃特性を有し、その一方で、同時に、良好な機械的及び化学的耐性も有し、そしてUV照射下で、変色が生じたとしてもわずかである、難燃性熱可塑性ポリウレタンを提供することであった。本発明は特に、良好な機械的特性、及び良好な難燃特性を有し、その一方で、同時に、良好な機械的及び化学的耐性、及び高い可撓性を有する、難燃性熱可塑性ポリウレタンを提供することを目的とする。本発明のさらなる目的は、生物分解性難燃剤の使用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)、
(iii) ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)
を含む組成物によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンと、2つのリン含有難燃剤(F1)及び(F2)の組み合わせとを含む。
【0016】
驚くべきことに、本発明の組成物は、本発明の成分の組み合わせの結果として最適化された、特にケーブルシースとして使用するための特性プロファイルを有することが見出された。驚くべきことに、本発明による組成物は、良好な機械的性質と優れた難燃性を有することが見出された。さらに、本発明による組成物は、生物分解性難燃剤を含有し、そして好ましくはメラミン又はメラミン誘導体を含まない。本発明による組成物は、一般に毒性が低く、非腐食性である。
【0017】
特定したように、本発明による組成物は、成分(i)として熱可塑性ポリウレタン、成分(ii)としてピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1のリン含有難燃剤(F1)と、ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)とを含む。
【0018】
本発明によれば、組成物は、好ましくはメラミン又はメラミン誘導体を含まない。本発明の文脈において、「メラミン又はメラミン誘導体を含まない」とは、その組成物が50ppm未満のメラミン又はメラミン誘導体、好ましくは20ppm未満のメラミン又はメラミン誘導体を含むことを意味すると理解される。好ましい実施形態では、組成物は0ppmのメラミン又はメラミン誘導体を含む。
【0019】
本出願の文脈において、メラミン又はメラミン誘導体は、とりわけ、あらゆる慣習的且つ商業的に利用可能な製品品質を意味するものとして理解されるべきである。
【0020】
さらに、本発明による組成物は、好ましくは、ごく少量の多価アルコール、例えば3-、4-、5-及び6価アルコールを含む。本発明による組成物は、より好ましくは多価アルコールを含まず、特に3-、4-、5-、及び6価アルコールを含まない。
【0021】
本発明の文脈において、「3-、4-、5-、及び6価アルコールを含まない」とは、その組成物が50ppm未満の多価アルコール、好ましくは20ppm未満の多価アルコールを含むことを意味すると理解される。好ましい実施形態では、組成物は0ppmの多価アルコールを含む。
【0022】
本発明によれば、難燃剤(F1)は、ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される。本出願の文脈においては、ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートは、とりわけ、あらゆる慣習的且つ商業的に利用可能な製品品質を意味するものとして理解されるべきである。
【0023】
本発明の文脈において、ここで使用する(ポリ)ピペラジンピロホスフェートとは、以下の式(I)又は(II)で表されるピペラジンピロホスフェート、又は式(I)で表されるピペラジンピロホスフェートと式(II)で表されるポリ(ピペラジンピロホスフェート)との混合物を意味し:
【化1】
【化2】
式(II)におけるnは、2~100の整数である。
【0024】
好適であるのは、特にピペラジンピロホスフェートである。従って一実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)がピペラジンピロホスフェートである。
【0025】
本発明の文脈で使用されるピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートは、添加剤などのさらなる成分を含んでよい。好ましくは、難燃剤(F1)は、水含量を1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.25質量%未満で有する。
【0026】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)が1質量%未満の水含量を有する。
【0027】
ピペラジンピロホスフェート又はポリピペラジンピロホスフェートは、さらなる添加剤、例えばシリカを含んでよい。好ましくは、本発明により使用される難燃剤(F1)又はピペラジンピロホスフェートは、さらなる添加剤を0.001~5質量%の範囲の量で含む。好ましくは、本発明により使用される難燃剤(F1)又はピペラジンピロホスフェートは、シリカを0.001~5質量%の範囲の量、より好ましくは0.001~2.5質量%の範囲の量、特に0.001~0.5質量%の範囲の量で含む。従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)が0.001~5質量%の範囲の量でシリカを含む。
【0028】
本発明の文脈において、あらゆる慣習的且つ商業的に利用可能な製品品質を使用してよい。本発明により好適なピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートは、好ましくは、典型的には平均粒径D98を5μm~100μmの範囲、好ましくは10μm~90μm、特に好ましくは20μm~80μm、非常に特に好ましくは30μm~70μmに有する粒子からなる。好適な方法は、この種類の粉末難燃剤を、乾燥した形態、すなわち自由流動型で使用することである。本発明の文脈において、粒度分布は単峰性であるか又は多峰性、例えば二峰性であってよい。
【0029】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)が粒度(d98)を5~100μmの範囲に有する。
【0030】
難燃剤(F1)のリン含有量は変化させてよい。好ましくは、難燃剤(F1)は15%を超える、特に20%を超えるリン含有量を有する。好適なリン含有量は、例えば15~30%の範囲、特に20~30%である。従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)が15%を超えるリン含有量を有する。
【0031】
化合物(F1)は本発明の組成物中に好適な量で存在する。例えば、組成物中の割合(F1)は、全組成物に対して1質量%~40質量%の範囲、特に2質量%~20質量%の範囲、好ましくは全組成物に対して2質量%~10質量%の範囲、特に全組成物に対して5質量%~10質量%の範囲である。
【0032】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物の難燃剤(F1)の割合は、組成物全体に対して1質量%~40質量%の範囲である。
【0033】
組成物の成分の合計は、各場合とも100質量%である。
【0034】
組成物は、ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)をさらに含む。
【0035】
ホスフィン酸の誘導体から選択される難燃剤(F2)が有機又は無機カチオンを含む塩から又は有機エステルから選択される場合が好ましい。有機エステルは、リンに直接結合した少なくとも1つの酸素原子が有機基によってエステル化されているホスフィン酸の誘導体である。好ましい実施形態では、有機エステルはアルキルエステルであり、別の好ましい実施形態ではアリールエステルである。ホスフィン酸のヒドロキシル基がすべてエステル化されている場合が特に好ましい。
【0036】
ホスフィン酸エステルは、一般式R1R2(P=O)OR3を有し、式中、3つの有機基R1、R2、R3はすべて同一であっても異なっていてもよい。基R1、R2、R3は脂肪族又は芳香族であり、炭素原子は1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~3個である。好ましくは、基の少なくとも1つが脂肪族であり、好ましくはすべての基が脂肪族であり、非常に特に好ましくはR1及びR2がエチル基である。R3もエチル基又はメチル基である場合がより好ましい。好ましい実施形態では、R1、R2及びR3は同時にエチル基又はメチル基である。
【0037】
ホスフィネート、すなわちホスフィン酸の塩も好ましい。R1及びR2基は脂肪族又は芳香族であり、そして1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する。好ましくは、基の少なくとも1つが脂肪族であり、好ましくはすべての基が脂肪族であり、非常に特に好ましくはR1及びR2がエチル基である。ホスフィン酸の好ましい塩はアルミニウム塩、カルシウム塩又は亜鉛塩であり、より好ましくはアルミニウム塩又は亜鉛塩である。好ましい実施形態は、ジエチルアルミニウムホスフィネートである。
【0038】
アルカリ金属次亜リン酸塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、チタン塩及び亜鉛塩、特に次亜リン酸アルミニウム塩及び次亜リン酸カルシウム塩も好適である。
【0039】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、リン含有難燃剤(F2)がホスフィン酸の誘導体からなる群より選択される。
【0040】
本発明による難燃剤(F1)と(F2)との組み合わせにより、優れた難燃性を有する組成物が得られる。この組成物は、好ましくは自己消火性である。
【0041】
難燃剤(F1)と難燃剤(F2)との組み合わせにより、難燃性と、導電性及び煙ガスの毒性の良好な値を組み合わせた組成物が得られる。
【0042】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物のリン含有難燃剤(F2)がホスフィネートである。
【0043】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物のホスフィネートが、アルミニウムホスフィネート又は亜鉛ホスフィネートからなる群より選択される。
【0044】
本発明による組成物中の難燃剤(F2)の割合は、例えば、全組成物に対して2質量%~25質量%の範囲、特に全組成物に対して2質量%~20質量%の範囲、好ましくは全組成物に対して3質量%~15質量%の範囲、特に全組成物に対して5質量%~10質量%の範囲である。
【0045】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物中の難燃剤(F2)の割合が、組成物全体に対して2質量%~25質量%の範囲である。
【0046】
組成物中のリン含有難燃剤(F1)とリン含有難燃剤(F2)との合計の割合は、各場合とも全組成物に対して3質量%~50質量%の範囲、より好ましくは5質量%~35質量%の範囲、特に好ましくは10質量%~30質量%の範囲であり、質量%は各場合とも全組成物に対するものである。
【0047】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、組成物中の難燃剤(F1)とリン含有難燃剤(F2)との合計の割合が、全組成物に対して3質量%~50質量%の範囲である。
【0048】
2質量%~10質量%の範囲の量、好ましくは5質量%~10質量%の範囲の量の難燃剤(F1)を、5質量%~25質量%の範囲の量の難燃剤(F2)(質量%は各場合とも全組成物に対する)と組み合わせて使用することが有利であろう。
【0049】
さらなる実施形態によれば、組成物は、5質量%~10質量%の範囲の量の難燃剤(F1)と、5質量%~25質量%の範囲の量の難燃剤(F2)(質量%は各場合とも全組成物に対する)とを組み合わせて含む。
【0050】
本発明の文脈において、難燃剤(F2)を用いることが好ましく、粒子は平均粒径D50を0.1μm~100μmの範囲、好ましくは0.5μm~60μm、特に好ましくは20μm~40μmで有する。粒子は、好ましくは、平均粒径D99を100μm未満、より好ましくは90μm未満で有する。本発明の文脈において、粒子は、好ましくは、0.1μm~100μmの範囲の平均粒径D50、及び100μm未満の平均粒径D99を有する。本発明の文脈において、粒度分布は単峰性であるか又は多峰性、例えば二峰性であってよい。
【0051】
本発明によれば、組成物はさらなる難燃剤、例えば、リン酸エステルなどのさらなるリン含有難燃剤も含んでよい。好ましくは、組成物は、さらなるリン含有難燃剤を1~30質量%の範囲の量で含む。
【0052】
さらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物に関するものであり、組成物中の難燃剤(F2)とリン含有難燃剤(F3)との合計の割合が、全組成物に対して1質量%~30質量%の範囲である。
【0053】
組成物がリン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F3)を含む場合、リン含有難燃剤(F2)は、ホスフィン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群より選択される。
【0054】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物が、リン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F3)を含む。
【0055】
好適であるのは、例えば、リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、又はホスフィン酸の誘導体、又はこれらの誘導体の2つ以上の混合物である。好適なさらなる難燃剤は、例えば21℃で液体であり得る。
【0056】
好ましくは、リン酸、ホスホン酸又はホスフィン酸の誘導体は、有機又は無機カチオンを有する塩又は有機エステルである。有機エステルは、リンに直接結合した少なくとも1つの酸素原子が有機基によってエステル化されているリン含有酸の誘導体である。好ましい実施形態では、有機エステルはアルキルエステルであり、別の好ましい実施形態ではアリールエステルである。より好ましくは、対応するリン含有酸のすべてのヒドロキシル基がエステル化されている。好ましいリン酸エステルの例には、フェニレン1,3-ビス(ジフェニル)ホスフェート、フェニレン1,3-ビス(ジキシレニル)ホスフェート、及び平均オリゴマー化レベルがn=3~6である対応するオリゴマー生成物が含まれる。好ましいレゾルシノールはレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)であり、これは典型的にはオリゴマーに存在する。
【0057】
さらなる好ましいリン含有難燃剤は、典型的にはオリゴマーの形態であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、及びジフェニルクレジルホスフェート(DPK)である。
【0058】
使用する難燃剤(F3)の量は、広い範囲で変化させてよい。組成物は、例えば、難燃剤(F3)を、組成物全体に対して1質量%~30質量%の範囲の量、好ましくは組成物全体に対して2質量%~25質量%の範囲の量、特に組成物全体に対して2質量%~20質量%の範囲の量で含んでよい。
【0059】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、該組成物中の難燃剤(F3)の割合が、組成物全体に対して1質量%~30質量%の範囲である。
【0060】
本発明の組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンをさらに含む。熱可塑性ポリウレタンは、原則として既知である。製造は典型的には、成分(a)イソシアネート及び成分(b)イソシアネート反応性化合物及び任意に成分(c)鎖延長剤を、任意に少なくとも1つの(d)触媒及び/又は成分(e)慣例的な補助剤及び/又は添加剤の存在下で反応させることによって行われる。成分(a)のイソシアネート、成分(b)のイソシアネート反応性化合物、成分(c)の鎖延長剤は、個別に又はひとまとめにしてビルディングブロック成分とも呼ばれる。
【0061】
本発明の文脈において、慣例的に使用されているイソシアネート及びイソシアネート反応性化合物は、原則として好適である。
【0062】
好ましく用いられる有機イソシアネート(a)には、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、より好ましくはトリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び/又は-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートが含まれる。4,4’-MDIを用いることが特に好ましい。
【0063】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする。
【0064】
使用可能なイソシアネート反応性成分(b)には、原則として当業者に既知のあらゆる好適な化合物が含まれる。本発明によれば、少なくとも1つのジオールがイソシアネート反応性化合物(b)として使用される。
【0065】
任意の好適なジオールを本発明の文脈において使用してよく、例えば、ポリエーテルジオール、又はポリエステルジオール、又はそれらの2つ以上の混合物を使用してよい。
【0066】
本発明によれば、任意の好適なポリエステルジオールを原則として用いてよく、本発明の文脈において、ポリエステルジオールという用語はポリカーボネートジオールも含む。
【0067】
本発明の一実施形態は、ポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールを用いる。好適なポリテトラヒドロフランポリオールは、分子量を、例えば500~5000g/モルの範囲、好ましくは500~2000g/モル、特に好ましくは800~1200g/モルに有する。
【0068】
好適なポリカーボネートジオールには、例えばアルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールが含まれる。好適なポリカーボネートジオールは、厳密に二官能のOH-官能性ポリカーボネートジオール、好ましくは厳密に二官能のOH-官能性脂肪族ポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール又は1,6-ヘキサンジオール、特に1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオール又はそれらの混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール又はそれらの混合物をベースとする。本発明の文脈において好ましく用いられるのは、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、及びこれらのポリカーボネートジオールの2つ以上の混合物である。
【0069】
本発明による組成物は、少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンと、少なくとも1つのジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンとからなる群より選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを好ましくは含む。よって本発明による組成物中に存在するポリウレタンの製造は、成分(b)として少なくとも1つのポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールを使用する。
【0070】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンと、少なくとも1つのジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンとからなる群より選択される。従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1つの芳香族ジイソシアネート及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンと、少なくとも1つの芳香族ジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンとからなる群より選択される。
【0071】
さらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。使用されるポリカーボネートジオールが、数平均分子量Mnを、GPCで判定して500~4000g/モルの範囲、好ましくはGPCで判定して650~3500g/モルの範囲、特に好ましくはGPCで判定して800~2500g/モルの範囲に有することが好ましい。
【0072】
さらなる実施形態において、本発明は上記の組成物にさらに関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンであり、そして少なくとも1つのポリカーボネートジオールが、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、及びこれらポリカーボネートジオールの2つ以上の混合物からなる群より選択される。ジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールをベースとし、約2000g/モルの分子量Mnを有するコポリカーボネートジオールも好ましい。
【0073】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物のポリカーボネートジオールが、GPCにより判定して500~5000g/モルの範囲、好ましくはGPCにより判定して650~3500g/モルの範囲、より好ましくはGPCにより判定して800~2500g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0074】
好ましくは、使用可能な鎖延長剤(c)には、0.05kg/モル~0.499kg/モルの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは二官能性化合物、例えばアルキレン基中に2~10個の炭素原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール、3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及び/又はデカアルキレングリコール、特に1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、好ましくは対応するオリゴ-及び/又はポリプロピレングリコールが含まれ、鎖延長剤の混合物を使用してもよい。化合物(c)は、好ましくは、第一級ヒドロキシル基のみを有し、1,4-ブタンジオール、又は1,3-プロパンジオールと1,4-ブタンジオールとの混合物が非常に特に好ましい。
【0075】
本発明によれば、再生可能原料から少なくとも部分的に得られた多価アルコール、例えばプロパンジオール及び/又はさらなるジオールを使用することも可能である。多価アルコールの一部又は全部が再生可能原料から得られたものであることも可能である。本発明によれば、使用される多価アルコールの少なくとも1つは再生可能原料から少なくとも部分的に得られたものであってよい。
【0076】
いわゆるバイオ-1,3-プロパンジオールは、例えばトウモロコシ及び/又は砂糖から得ることができる。さらなる可能性は、バイオディーゼル生産からのグリセロール廃棄物の転化である。1,4-ブタンジオールも再生可能原料から入手可能である。本発明のさらに好ましい実施形態では、多価アルコールは再生可能原料から少なくとも部分的に得られた1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオールである。
【0077】
このように、さらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも30%程度再生可能原料をベースとする。1つの好適な判定方法は、例えばC14法である。
【0078】
好ましい実施形態において、特にジイソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネート反応性化合物(b)及び鎖延長剤(c)のヒドロキシル基との反応を加速させる触媒(d)は、第三級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。別の好ましい実施形態において、触媒(d)は有機金属化合物、例えばチタネートエステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくはスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、好ましくはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、又はビスマスが好ましくは2又は3、特に3の酸化状態であるビスマス塩である。カルボン酸の塩が好ましい。使用されるカルボン酸は、好ましくは6~14個の炭素原子、特に好ましくは8~12個の炭素原子を有するカルボン酸である。好適なビスマス塩の例は、ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエートである。
【0079】
触媒(d)は好ましくは、イソシアネート反応性化合物(b)100質量部当たり0.0001~0.1質量部の量で使用される。スズ触媒、特にスズオクトエートを使用することが好ましい。
【0080】
触媒(d)だけでなく、慣例的な補助剤(e)も、合成成分(a)~(c)に添加してよい。例には、界面活性物質、充填剤、さらなる難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、潤滑及び離型助剤、染料及び顔料、任意に、例えば加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機充填剤、補強剤及び可塑剤が含まれる。好適な補助剤及び添加剤物質は例えば、Kunststoffhandbuch、第VII巻、Vieweg and Hoechtlen編、Carl Hanser Verlag、Munich、1966年(103~113頁)に見出される。
【0081】
熱可塑性ポリウレタンのための製造方法は、例えば、EP0922552A1、DE10103424A1又はWO2006/072461A1に開示されている。製造は典型的には、ベルト装置又は反応押出機内で実施されるが、実験室規模で、例えば手動のキャスティング法で実施することもできる。成分の物理的特性に応じて、すべての成分を互いに直接混合し、又は、例えばプレポリマーを得るために個別の成分を予備混合し、及び/又は予備反応させ、それから重付加に供する。さらなる一実施形態において、ビルディングブロック成分から、任意に触媒と一緒に熱可塑性ポリウレタンをまず製造するが、任意に補助剤を導入してもよい。この場合、少なくとも1つの難燃剤がこの材料中に導入され、均一に分配される。均一な分配は好ましくは、押出機、好ましくは二軸押出機内で行う。TPUの硬度を調節するために、ビルディングブロック成分(b)及び(c)の使用量は、比較的広範なモル比内で変動させてよく、典型的には、鎖延長剤(c)の含量が増大するにつれて硬度が高まる。
【0082】
熱可塑性ポリウレタン、例えば、ショアA硬度95未満、好ましくはショアA95~80、特に好ましくは約85Aを有する熱可塑性ポリウレタンの製造には、実質的に二官能性のポリヒドロキシル化合物(b)及び鎖延長剤(c)を、1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5のモル比で有利に用いてよく、得られたビルディングブロック成分(b)及び(c)の混合物は、ヒドロキシル当量200超及び特に230~450を有し、一方で、より硬いTPU、例えば、ショアA硬度98超、好ましくはショアD55~75を有するTPUの製造には、(b):(c)のモル比は、1:5.5~1:15の範囲、好ましくは1:6~1:12であり、得られた(b)及び(c)の混合物は、ヒドロキシル当量110~200、好ましくは120~180を有するようになる。
【0083】
本発明により用いられる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、DIN ISO7619-1(ショア硬度試験A(3s))に準拠して判定して68A~100Aの範囲、好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して70A~98Aの範囲、より好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して75A~95Aの範囲、特に好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して75A~90Aの範囲、特にDIN ISO7619-1に準拠して判定して78A~85Aの範囲の硬度を有する。別の実施形態では、用いられる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、DIN ISO7619-1(ショア硬度試験A(3s))に準拠して判定して70A~80Aの範囲の硬度を有する。
【0084】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、熱可塑性ポリウレタンが、DIN53505に準拠して判定して80A~100Aの範囲のショア硬度を有する。
【0085】
本発明により使用される熱可塑性ポリウレタンの製造には、ビルディングブロック成分(a)、(b)及び(c)を、好ましくは触媒(d)及び任意に補助剤及び/又は添加剤(e)の存在下で、典型的には、ジイソシアネート(a)のNCO基の、ビルディングブロック成分(b)及び(c)のヒドロキシル基の合計に対する当量比が、0.9~1.1:1、好ましくは0.95~1.05:1、及び特に約1.0~1.04:1になるような量で反応させる。
【0086】
本発明による組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを、全組成物に対して50質量%~95質量%の範囲、特に全組成物に対して60質量%~92質量%の範囲、好ましくは68質量%~90質量%の範囲、より好ましくは70質量%~88質量%の範囲、特に好ましくは70質量%~85質量%の範囲で含み、質量%は各場合とも全組成物に対するものである。
【0087】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、組成物中の熱可塑性ポリウレタンの割合が、全組成物に対して50質量%~95質量%の範囲である。
【0088】
組成物中の全成分の合計は、各場合とも100%に達する。
【0089】
本発明により好ましく用いられる熱可塑性ポリウレタンは、平均分子量(MW)を60000~500000ダルトンの範囲に有する熱可塑性ポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタンの平均分子量(MW)の上限は、一般的に加工性及び所望の特性スペクトルによって決定される。熱可塑性ポリウレタンが、平均分子量(MW)を100,000~300,000Daの範囲、より好ましくは120,000~250,000Daの範囲、特に好ましくは80,000~200,000Daの範囲に有する場合がより好ましい。
【0090】
従ってさらなる実施形態によれば、本発明は上記に開示した組成物にも関するものであり、熱可塑性ポリウレタンが60000~500000Daの範囲の平均分子量(MW)を有する。
【0091】
60000~500000Daの範囲の平均分子量(MW)は、組成物中の熱可塑性ポリウレタン、すなわち組成物の調製後に存在する熱可塑性ポリウレタンを指す。
【0092】
本発明によれば、特に分子量(MW)を100000~300000Daの範囲に有する熱可塑性ポリウレタンを使用すると、特に有利な特性の組み合わせを有する組成物が得られることが見出された。
【0093】
本発明によれば、組成物は、例えば平均分子量又は化学組成が異なる2つ以上の熱可塑性ポリウレタンを含むことも可能である。例えば、本発明による組成物は、第1熱可塑性ポリウレタンTPU-1と第2熱可塑性ポリウレタンTPU-2、例えば脂肪族ジイソシアネートをベースとする熱可塑性ポリウレタンTPU-1と、芳香族ジイソシアネートをベースとするさらなるTPU-2を含んでよい。
【0094】
TPU-1の製造には脂肪族イソシアネートが用いられ、一方でTPU-2の製造には芳香族イソシアネートが用いられる。
【0095】
TPU-1の製造に好ましく用いられる有機イソシアネート(a)は、脂肪族又は脂環式イソシアネート、より好ましくは、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び/又は-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
【0096】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンTPU-1が、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート及びジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンからなる群より選択される少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートをベースとする。
【0097】
TPU-2Rの製造に好ましく使用される有機イソシアネート(a)は、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであり、より好ましくは2,2’-,2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートである。4,4’-MDIを用いることが特に好ましい。
【0098】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物の熱可塑性ポリウレタンTPU-2が、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする。
【0099】
TPU-1及びTPU-2のイソシアネート反応性化合物(b)として好ましく用いられるのは、ポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールである。好適なポリテトラヒドロフランポリオールは、例えば500~5000の範囲、好ましくは500~2000、特に好ましくは800~1200の分子量を有する。
【0100】
本発明によれば、好ましくは、少なくとも1つのポリカーボネートジオール、好ましくは脂肪族ポリカーボネートジオールを、TPU-1及びTPU-2の製造に使用する。好適なポリカーボネートジオールには、例えばアルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールが含まれる。好適なポリカーボネートジオールは、厳密に二官能性のOH-官能性ポリカーボネートジオール、好ましくは厳密に二官能性のOH-官能性脂肪族ポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール又はヘキサンジオール、特に1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオール又はそれらの混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール又はそれらの混合物をベースとする。本発明の文脈において好ましく用いられるのは、ブタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、及びこれらのポリカーボネートジオールの2つ以上の混合物である。
【0101】
TPU-1及びTPU-2の製造に使用されるポリカーボネートジオールが、GPCで判定して500~4000の範囲、好ましくはGPCで判定して650~3500の範囲、特に好ましくはGPCで判定して800~3000の範囲の数平均分子量Mnを有する場合が好ましい。
【0102】
TPU-1及びTPU-2の製造に好ましい使用可能な鎖延長剤(c)には、0.05kg/モル~0.499kg/モルの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは二官能性化合物、例えばアルキレン基中に2~10個の炭素原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール、3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及び/又はデカアルキレングリコール、特に1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、好ましくは対応するオリゴ-及び/又はポリプロピレングリコールが含まれ、鎖延長剤の混合物を使用してもよい。化合物(c)は、好ましくは、第一級ヒドロキシル基のみを有し、そして1,4-ブタンジオールと上記の化合物より選択されるさらなる鎖延長剤との混合物、例えば、1,4-ブタンジオールと第2の鎖延長剤とを、モル比100:1~1:1の範囲、好ましくは95:1~5:1の範囲、特に好ましくは90:1~10:1の範囲で含む混合物を用いることが、非常に特に好ましい。
【0103】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、1,4-ブタンジオール及びさらなる鎖延長剤の混合物を鎖延長剤として使用して、熱可塑性ポリウレタンを製造する。
【0104】
TPU-1又はTPU-2の硬度を調整するために、ビルディングブロック成分(b)及び(c)の使用量を比較的広いモル比にわたって変化させてよく、硬度は、典型的には、鎖延長剤(c)の含有量の増加と共に高まる。
【0105】
本発明によれば、TPU-1の硬度は、好ましくは、DIN ISO7619-1に準拠して判定して85A~70Dの範囲、好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して95A~70Dの範囲、より好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して55D~65Dの範囲である。
【0106】
本発明によれば、TPU-2の硬度は、好ましくは、DIN ISO7619-1に準拠して判定して70A~70Dの範囲、より好ましくはDIN ISO 7619-1に準拠して判定して80A~60Dの範囲、特に好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して80A~90Aの範囲である。
【0107】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、熱可塑性ポリウレタンTPU-1が、DIN ISO7619-1に準拠して判定して85A~65Dの範囲のショア硬度を有する。従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、熱可塑性ポリウレタンTPU-2が、DIN ISO7619-1に準拠して判定して70A~65Dの範囲のショア硬度を有する。
【0108】
TPU-1は、好ましくは100000Daを超える分子量を有し、そしてTPU-2は、好ましくは150000~300000Daの範囲の分子量を有する。熱可塑性ポリウレタンの数平均分子量の上限は、一般的に加工性及び所望の特性スペクトルによって決定される。
【0109】
従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、熱可塑性ポリウレタンTPU-1が、100000Da~400000Daの範囲の分子量を有する。従ってさらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、熱可塑性ポリウレタンTPU-2が、150000Da~300000Daの範囲の分子量を有する。
【0110】
本発明による組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンTPU-1及び少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンTPU-2を総合計で、全組成物に対して50質量%~95質量%の範囲、特に全組成物に対して68質量%~92質量%の範囲、好ましくは70質量%~88質量%の範囲、より好ましくは70質量%~85質量%の範囲で含み、質量%は各場合とも全組成物に対するものである。
【0111】
本発明の文脈において、使用される熱可塑性ポリウレタンの比は、広い範囲で変化させてよい。例えば、熱可塑性ポリウレタンTPU-1及び熱可塑性ポリウレタンTPU-2は、2:1~1:5の範囲の比で使用される。熱可塑性ポリウレタンTPU-1及び熱可塑性ポリウレタンTPU-2は、好ましくは、1:1~1:5の範囲、より好ましくは1:2~1:4の範囲、特に好ましくは1:2.5~1:3の範囲の比で使用される。
【0112】
このように、さらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、該組成物は、脂肪族ジイソシアネートをベースとする熱可塑性ポリウレタンTPU-1及び芳香族ジイソシアネートをベースとする熱可塑性ポリウレタンTPU-2を含む混合物を含む。
【0113】
一実施形態において、本発明による組成物は、熱可塑性ポリウレタン及び難燃剤(F1)及び(F2)を1つの工程で処理することにより製造される。他の好ましい実施形態において、本発明による組成物は、反応押出機、ベルトアセンブリ又は他の好適な装置をまず使用して、熱可塑性ポリウレタンを好ましくは顆粒として製造し、次いでこれに難燃剤(F1)及び(F2)を少なくとも1つのさらなる工程か、或いは複数の工程で導入する。
【0114】
熱可塑性ポリウレタンと他の成分との混合は、好ましくは内部ニーダー又は押出機、好ましくは二軸押出機である混合ユニットで行う。好ましい実施形態において、少なくとも1つのさらなる工程で混合ユニット内に導入される少なくとも1つの難燃剤は液体であり、すなわち21℃の温度で液体である。押出機の使用の別の好ましい実施形態において、導入される難燃剤は、押出機内の材料の流れ方向において、充填箇所の下流における温度で、少なくとも部分的に液体である。
【0115】
本発明によれば、本組成物は、例えばリン含有難燃剤を含む、さらなる難燃剤を含んでよい。例えば、組成物は、さらなるリン含有難燃剤(F3)、例えばリン酸エステルを含んでよい。
【0116】
しかしながら、別の実施形態では、本発明による組成物は、リン含有難燃剤(F1)及び(F2)に加えて、さらなる難燃剤を含まない。
【0117】
本発明の文脈において、本発明による組成物の硬度は、広い範囲で変化させてよい。組成物の硬度は、例えば、DIN ISO7619-1(ショア硬度試験A(3s))に準拠して判定して65A~80Dの範囲、好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して80A~60Dの範囲、より好ましくはDIN ISO7619-1に準拠して判定して80A~95Aの範囲であってよい。
【0118】
機械的性質及び難燃性は、本発明によれば、様々な難燃剤の組み合わせを介して最適化される。
【0119】
本発明によれば、組成物はさらなる構成成分、例えば熱可塑性ポリウレタンの標準的な補助剤及び添加剤物質も含んでよい。組成物が、少なくとも1つのリン含有難燃剤(F1)及び少なくとも1つのリン含有難燃剤(F2)に加えてさらなる難燃剤を含有しない場合が好ましい。本発明による組成物が、アンモニウムホスフェート及びアンモニウムポリホスフェートからなる群より選択される正確に1つのリン含有難燃剤(F1)、及びホスフィン酸の誘導体からなる群より選択される正確に1つのリン含有難燃剤(F2)を含む場合が、より好ましい。
【0120】
本発明による組成物は、例えば充填剤又は染料を、好ましくは、全組成物に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量で含んでよい。このように、さらなる実施形態において、本発明は上記の組成物に関するものであり、組成物は、全組成物に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量の二酸化チタンを含む。
【0121】
本発明は、上記に記載した少なくとも1つの難燃性熱可塑性ポリウレタンを含む本発明による組成物を、コーティング、ダンピング要素、ベローズ、フィルム又は繊維、成形品、建物及び輸送手段のための床、不織布、好ましくはシール、ローラー、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルコネクタ、ケーブルシース、クッション、ラミネート、異形材、ベルト、サドル、フォーム、プラグコネクタ、トレーリングケーブル(trailing cables)、ソーラーモジュール、自動車トリムの製造に使用する方法にも関する。ケーブルシースの製造のための使用方法が好ましい。製造は好ましくは、射出成形、カレンダー加工、粉末焼結又は押出によって顆粒から実施され、及び/又は本発明による組成物のさらなる発泡によって実施される。
【0122】
このように本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンと、ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1のリン含有難燃剤(F1)と、ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)とを含む上記の組成物を、ケーブルシースの製造に使用する方法にも関する。
【0123】
従って、さらなる側面によれば、本発明は、ケーブルシースの製造に上記の組成物を使用する方法にも関する。さらに、本発明は、上記に開示した組成物を含むケーブルシースにも関するものである。
【0124】
本発明による組成物は、特に薄いケーブル、例えば外径2mm未満及び壁厚0.5mm未満のケーブルの製造を可能にする。このようにさらなる実施形態において、本発明は、壁厚が0.1mm~0.5mmの範囲であるケーブルシースを製造するための、上記組成物の使用方法に関する。
【0125】
本発明を、示される従属関係及び後方参照から生じる、以下の一連の実施形態及び実施形態の組み合わせによってさらに例示する。特に、例えば用語「実施形態(1)~(4)のいずれか1つ」などの文脈において実施形態の範囲が言及される場合、この範囲のすべての実施形態は、当業者のために明示的に開示されることが意味される、すなわち、当業者は、この用語の文言を「実施形態(1)、(2)、(3)、及び(4)のいずれか1つ」と同義であると理解することに留意されたい。さらに、以下の一連の実施形態は、保護の範囲を決定する特許請求のセットではなく、本発明の一般的剛好ましい側面に向けた説明の好適に構造化された部分を表すことを明示的に留意されたい。
【0126】
本発明の実施態様(1)は、少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)、
(iii) ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)
を含む、組成物に関する。
【0127】
さらなる好ましい実施形態(2)は実施形態(1)を具現化するものであり、難燃剤(F1)がピペラジンピロホスフェートである前記組成物に関する。
【0128】
さらなる好ましい実施形態(3)は実施形態(1)又は(2)を具現化するものであり、難燃剤(F1)が1質量%未満の水含量を有する前記組成物に関する。
【0129】
さらなる好ましい実施形態(4)は実施形態(1)から(3)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が15%を超えるリン含有量を有する前記組成物に関する。
【0130】
さらなる好ましい実施形態(5)は実施形態(1)から(4)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が0.001~5質量%の範囲の量でシリカを含む前記組成物に関する。
【0131】
さらなる好ましい実施形態(6)は実施形態(1)から(5)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が粒度(d98)を5~100μmの範囲に有する前記組成物に関する。
【0132】
さらなる好ましい実施形態(7)は実施形態(1)から(6)のいずれか1つを具現化するものであり、リン含有難燃剤(F2)がホスフィン酸の誘導体からなる群より選択される前記組成物に関する。
【0133】
さらなる好ましい実施形態(8)は実施形態(1)から(7)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物が、リン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F3)を含む前記組成物に関する。
【0134】
さらなる好ましい実施形態(9)は実施形態(1)から(8)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F2)とリン含有難燃剤(F3)の合計の割合が、全組成物に対して1質量%~30質量%の範囲である前記組成物に関する。
【0135】
さらなる好ましい実施形態(10)は実施形態(1)から(9)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)の割合は、組成物全体に対して1質量%~40質量%の範囲である前記組成物に関する。
【0136】
さらなる好ましい実施形態(11)は実施形態(1)から(10)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F2)の割合が、組成物全体に対して2質量%~25質量%の範囲である前記組成物に関する。
【0137】
さらなる好ましい実施形態(12)は実施形態(1)から(11)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F3)の割合が、組成物全体に対して1質量%~30質量%の範囲である前記組成物に関する。
【0138】
さらなる好ましい実施形態(13)は実施形態(1)から(12)のいずれか1つを具現化するものであり、熱可塑性ポリウレタンが60000~500000Daの範囲の平均分子量(MW)を有する前記組成物に関する。
【0139】
さらなる好ましい実施形態(14)は実施形態(1)から(13)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の熱可塑性ポリウレタンの割合が、全組成物に対して50質量%~95質量%の範囲である前記組成物に関する。
【0140】
さらなる好ましい実施形態(15)は、少なくとも成分(i)~(iii)を含む組成物を製造する方法に関するものであり、該方法は、成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)、
(iii) ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)
を混合する工程を含む。
【0141】
さらなる好ましい実施形態(16)は実施形態(15)を具現化するものであり、難燃剤(F1)がピペラジンピロホスフェートである前記方法に関する。
【0142】
さらなる好ましい実施形態(17)は実施形態(15)又は(16)を具現化するものであり、難燃剤(F1)が1質量%未満の水含量を有する前記方法に関する。
【0143】
さらなる好ましい実施形態(18)は実施形態(15)から(17)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が15%を超えるリン含有量を有する前記方法に関する。
【0144】
さらなる好ましい実施形態(19)は実施形態(15)から(18)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が0.001~5質量%の範囲の量でシリカを含む前記方法に関する。
【0145】
さらなる好ましい実施形態(20)は実施形態(15)から(19)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)が粒度(d98)を5~100μmの範囲に有する前記方法に関する。
【0146】
さらなる好ましい実施形態(21)は実施形態(15)から(20)のいずれか1つを具現化するものであり、リン含有難燃剤(F2)がホスフィン酸の誘導体からなる群より選択される前記方法に関する。
【0147】
さらなる好ましい実施形態(22)は実施形態(14)から(21)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物が、リン酸の誘導体からなる群より選択されるさらなるリン含有難燃剤(F3)を含む前記方法に関する。
【0148】
さらなる好ましい実施形態(23)は実施形態(15)から(22)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F2)とリン含有難燃剤(F3)の合計の割合が、全組成物に対して1質量%~30質量%の範囲である前記方法に関する。
【0149】
さらなる好ましい実施形態(24)は実施形態(15)から(23)のいずれか1つを具現化するものであり、難燃剤(F1)の割合は、組成物全体に対して1質量%~40質量%の範囲である前記方法に関する。
【0150】
さらなる好ましい実施形態(25)は実施形態(15)から(24)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F2)の割合が、組成物全体に対して2質量%~25質量%の範囲である前記方法に関する。
【0151】
さらなる好ましい実施形態(26)は実施形態(15)から(25)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の難燃剤(F3)の割合が、組成物全体に対して1質量%~30質量%の範囲である前記方法に関する。
【0152】
さらなる好ましい実施形態(27)は実施形態(15)から(26)のいずれか1つを具現化するものであり、熱可塑性ポリウレタンが60000~500000Daの範囲の平均分子量(MW)を有する前記方法に関する。
【0153】
さらなる好ましい実施形態(28)は実施形態(15)から(27)のいずれか1つを具現化するものであり、組成物中の熱可塑性ポリウレタンの割合が、全組成物に対して50質量%~95質量%の範囲である前記方法に関する。
【0154】
本発明のさらなる実施形態(29)は、実施形態(1)から(14)のいずれか1つに記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関する。
【0155】
本発明のさらなる実施形態(30)は、ケーブルシースの製造方法に関するものであり、実施形態(1)から(14)のいずれか1つに記載の組成物を成形工程に供する。
【0156】
本発明のさらなる実施形態(31)は、実施形態(1)から(14)のいずれか1つに記載の組成物を含むケーブルシースに関するものである。
【0157】
本発明のさらなる実施形態(32)はケーブルシースに関するものであり、該ケーブルシースは、少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) ピペラジンピロホスフェート及びポリピペラジンピロホスフェートからなる群より選択される第1の難燃剤(F1)、
(iii) ホスフィン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、及びリン酸の誘導体からなる群より選択されるリン含有難燃剤(F2)
を含む。
【0158】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の主題を制限するものではない。
【実施例】
【0159】
これらの実施例は、本発明の混合物と、一般的なメラミンシアヌレートをベースとする難燃性TPUの特性が同等であることを示している。本発明の混合物は、腐食性が低く煙毒性が低いという利点があり、外観がより透明である。
【0160】
1. 実施例1(出発材料)
Elastollan1185A10:ショア硬度85AのTPU、BASF Polyurethanes GmbH社、Elastogranstrasse 60,49448 Lemforde、分子量1000のポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとする。
【0161】
Melapur MC15ED:メラミンシアヌレート(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンとの化合物(1:1))、CAS番号:37640-57-6、BASF SE社、67056 Ludwigshafen、ドイツ、粒度D99%<1=50μm、D50%<=4.5μm、水含量%(w/w)<0.2。
【0162】
Melapur200/70:メラミンポリホスファート(窒素含量42~44質量%、リン含有量12~14質量%、CAS番号:218768-84-4、BASF SE社、67056 Ludwigshafen、ドイツ、粒度D99%</=70μm、平均粒度D50%<=10μm、水含量%(w/w)<0.3。
【0163】
Fyrolflex RDP:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、CAS番号:125997-21-9、Supresta Netherlands B.V.、Office Park De Hoef、Hoefseweg 1、3821AE Amersfoort、オランダ、リン含有量10.7%、25℃における粘度=700mPas、酸価<0.1mgKOH/g、水含量%(w/w)<0.1。
【0164】
Exolit OP1230:アルミニウムジエチルホスフィネート、CAS番号:225789-38-8、Clariant Produkte(Deutschland)GmbH、Chemiepark Knapsack、50351 Huerth、平均粒度D50%=20~40μm、水含量%(w/w)<0.2。
【0165】
Melagard PAP:ピペラジンピロホスフェート、二リン酸、ピペラジンとの化合物(1:1)。CAS番号:66034-17-1、Italmatch Chemicals Spa,via S.Tommaso 13,Spoleto(PG)、イタリア、06049、リン含有量21.5~23.5%、水含量%(w/w)<0.5、粒度D98%:25~50μm。
【0166】
2. 実施例2(組成物)
以下の表は、個々の出発物質の質量部(PW)が記載されている組成物を一覧にしたものである。各場合とも、混合物はBerstorff社製のZE40A二軸押出機(スクリュー長35D、10のバレルセクションに分割)で製造した。顆粒はGala社の水中ペレット化ユニットを用いて得られた。
【0167】
【0168】
【0169】
3. 実施例3(機械的性能)
混合区画(スクリュー比1:3)を備える3区域型スクリューを有するArenz単軸押出機によって材料を押出して、1.6mmの厚さを有するフィルムを得た。対応する試験供試材の密度、ショア硬度、引張強度、引裂伝播抵抗、摩耗及び破断伸びを測定した。すべての組成物は、良好な機械的特性を有していた。結果を、表3~5に要約する。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
4. 実施例4(難燃性)
難燃性を評価するために、ISO5660第1部及び第2部(2002-12)に従って、厚さ5mmの試験供試材を円錐熱量計で水平方向に強度35kW/m2の放射で試験した。寸法が100×100×5mmの円錐測定用の試験供試材は、スクリュー直径30mmのArburg520Sを使用して射出成形した。各材料の円錐測定の主要パラメータを表6及び表7に示す。本発明の実施例は、比較例と比較するとTHE及びPHRRが類似していることを示している。
【0174】
【0175】
【0176】
5. 実施例5(導電性及び煙ガスの毒性)
DIN EN60754-2(2015年)を用いて判定した導電性は、本発明の実施例でははるかに低いことが分かった。従って、本発明の混合物は、比較例混合物と比較してはるかに腐食性が低いと思われる。また、本発明の実施例は、燃焼時の青酸(HCN)の生成が比較例混合物よりも少ないことが分かった。NF X70-100パート1+2(2006年)を用いて判定したITC値は、比較例で得られた値よりも小さい。結果を表8及び表9に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
引用した文献
EP0617079A2
WO2006/121549A1
WO03/066723A2
US2013/0059955A1
US2013/0081853A1
WO97/00916A1
WO03/066723A1
WO2006/121549A1
US4,347,334
US4,467,056
US4,514,328
US4,639,331
Kunststoffhandbuch、第7巻、Vieweg及びHoechtlen編、Carl Hanser Verlag、Munich、1966年(103~113頁)
EP0922552A1
DE10103424A1
WO2006/072461A1
【国際調査報告】