(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ポリウレタン製造用の新規触媒
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20240124BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240124BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240124BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240124BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20240124BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/76
C08G18/00 L
C08L75/04
C08K5/3465
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538762
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021086325
(87)【国際公開番号】W WO2022136132
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ムーロネン,ミッコ,ユーアニ,アルットゥリ
(72)【発明者】
【氏名】シュッテ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ルッター,ハインツ-ディーター
(72)【発明者】
【氏名】フェーメル,マヌエラ
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハイドル,アレクサンダー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】デグルマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ボルドゥアン,パトリク
(72)【発明者】
【氏名】ジーベルト,マクス ユリアン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002EU136
4J002FD206
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA14
4J034QB11
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
本発明は、(a)芳香族ポリイソシアネートを、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、(d)触媒、(e)成分(a)~(f)の総質量に対して0.1質量%~5質量%の一般式1
【化1】
(式中、-X-は置換又は非置換の、3員基を表し、そしてRは置換又は非置換のアルキル又はヘテロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルキル-アリール基又はヘテロアルキル-アリール基より選択される基を表す)で表される少なくとも1つの環状尿素構造、(f)任意に発泡剤及び(g)任意に添加剤と混合して反応混合物を得、そしてその反応混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法に関する。本発明はさらに、このような方法によって得ることができるポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームに関し、そしてこのようなポリウレタンフォームをクッション、シートパッド及びマットレスの製造に使用する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの製造方法であって、
(a)芳香族ポリイソシアネートを、
(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、
(c)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d)触媒、
(e)成分(a)~(f)の総質量に対して0.1質量%~5質量%の一般式1
【化1】
(式中、-X-は置換又は非置換の、3員基を表し、そしてRは置換又は非置換のアルキル又はヘテロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルキル-アリール基又はヘテロアルキル-アリール基より選択される基を表す)で表される少なくとも1つの環状尿素構造、
(f)任意に発泡剤、及び
(g)任意に添加剤と混合して反応混合物を得、そして該反応混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、方法。
【請求項2】
基Xの員が、-NR
1-、-O-、-CR
2R
3-、-N=及び-CR
4=からなる群より選択され、基R
1~R
4がそれぞれ互いに独立して、水素、アルキル基、好ましくはエチル又はメチル、又はハロゲンを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが-(CH
2)
3-を表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Xが-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-を表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
成分(b)~(f)に対する水の含量が1質量%~6質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分(a)~(e)、及び存在する場合は(f)及び(g)を反応させて、50~95のイソシアネート指数でポリウレタンを得る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水(f1)に加えてさらなる発泡剤が存在しない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、式1で表される化合物に加えてアミン触媒を含み、前記アミン触媒は第三級窒素原子を有し、且つ前記アミン触媒中の第三級窒素原子の含有量が開始成分(a)~(f)の質量に対して0.0001~0.003モル/発泡体100gとなるような量で用いられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アミン触媒の第三級アミノ基の第三級窒素原子が、メチル基(H
3C-)及びエチル基(HC-H
32C-)より選択される互いに独立した2つの基、及びさらなる有機基を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アミン触媒が、ビスジメチルアミノプロピル尿素、ビス(N,N-ジメチルアミノエトキシエチル)カルバメート、ジメチルアミノプロピル尿素、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノプロピルエーテル)、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノエチルエーテル)、ジエチルエタノールアミン、ビス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)アミン、ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピル-N,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、ジメチル-2-(2-アミノエトキシエタノール)、及び(1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン-2-オール)、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-ヒドロキシエチルアミン、N,N,N-トリメチル-N-(3アミノプロピル)ビス(アミノエチルエーテル)、3-ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン、N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]-N-メチル-1,3-プロパンジアミン及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、アミン触媒に加えて金属触媒を含み、前記金属触媒は好ましくはスズ(IV)触媒である、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体及び同族体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応混合物の製造が、芳香族ポリイソシアネート(a)を含むイソシアネート成分(A)と、イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)、触媒(d)、及び水を含む発泡剤(e)を含む混合物を含むポリオール成分(B)とを混合することを伴う、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
軟質ポリウレタンフォームを得るための前記反応混合物の反応が型内で行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得ることができたポリウレタン。
【請求項16】
クッション、シートパッド及びマットレスを製造するための、請求項15に記載のポリウレタンフォームの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)芳香族ポリイソシアネートを、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、(d)触媒、(e)成分(a)~(f)の総質量に対して0.1質量%~5質量%の一般式1
【化1】
(式中、-X-は置換又は非置換の、3員基を表し、そしてRは置換又は非置換のアルキル又はヘテロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルキル-アリール基又はヘテロアルキル-アリール基より選択される基を表す)で表される少なくとも1つの環状尿素構造、(f)任意に発泡剤及び(g)任意に添加剤と混合して反応混合物を得、そしてその反応混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法に関する。本発明はさらに、このような方法によって得ることができるポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームに関し、そしてこのようなポリウレタンフォームをクッション、シートパッド及びマットレスの製造に使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びポリウレタン触媒は既知である。ポリウレタンの製造において、イソシアネートとポリオールとの反応は、典型的には、触媒、特に第三級窒素原子を含む強塩基性アミン触媒又は金属触媒の存在下で行われる。金属触媒は、重金属を含んでいるので環境にあまり優しくないことが欠点である。金属触媒はまた、水の存在下で加水分解を起こし、その触媒活性を失う傾向もある。このため、反応前混合物、例えばいわゆるポリオール成分へは、限られた程度でしか使用できず、それ故多くの金属化合物は除外される。
【0003】
強塩基性アミン触媒は、よりはるかに安定しているが、完成したポリウレタンから移行する傾向があるので、揮発性有機化合物の望ましくない排出、及び臭気排出が生じるという欠点がある。既知の強塩基性触媒も、有機化合物、例えばアルデヒドのさらなる排出を引き起こすことが多い。これは、特にポリウレタンを密閉された空間、例えばシートパッド、マットレス又は自動車の内装に使用する場合に望ましくない。
【0004】
従って、イソシアネート反応性基を含み、ポリウレタン化時にポリウレタン構造に共組み込みされる組み込み可能な触媒を用いることが多い。これは触媒の望ましくない排出を低減することが可能である一方で、組み込み可能な触媒は逆反応も触媒するので、連鎖的に劣化するという欠点がある。従って、組み込み可能な触媒を伴ったポリウレタンは、エージング特性が損なわれることが多い。アルデヒドの排出も、組み込み可能な触媒では回避できない。
【0005】
従って、これらの欠点を有しない触媒が必要とされている。その一例がラクタムである。ラクタムは低い活性しか持たず、非常に多量に使用しなければならないという欠点がある。しかし、このことは、ポリウレタンにおける機械的特性に悪影響を及ぼす。従って、ラクタムは典型的には、強塩基性アミン触媒と一緒に使用される。
【0006】
従来の強塩基性アミン触媒のさらなる欠点は、これらの触媒を大量に軟質ポリウレタンフォームの製造において、特に水含量が1質量%を超え、且つイソシアネート指数が100未満の場合に使用すると、芳香族アミン、特にトルエンジアミン(TDA)及びメチレンジアミン(MDA)が10~200ppmの濃度範囲で検出可能となることである。これらは、特に成形発泡体の表面で発生する。芳香族アミンは、その発がん性及び遺伝毒性の可能性により、何世紀にもわたって多くの内外の研究対象になってきた。芳香族アミンの含有量を低減するための既知の対策として、反応性スカベンジャー化合物、例えばカルボン酸無水物又は脂肪族イソシアネートの使用が挙げられる。
【0007】
WO2020/161010は、このような発泡体中の芳香族アミンを低減するためのラクタムの使用について記載している。このような有害な芳香族アミンは、特に100未満のイソシアネート指数で発生する。このことの1つの可能な説明は、ポリウレタンフォームの形成中に、イソシアネート-水反応によって形成されたMDAとさらに反応して尿素結合を得るのに利用できるイソシアネート基が不十分であるという事実である。こうして形成されたMDAは、特に、成形発泡体の製造中に結露によって比較的低温の型表面との界面に蓄積される。しかしながら、WO2020/161010に記載の解決策の1つの欠点は、比較的多量のラクタムの使用を伴い、金属触媒及び強塩基性アミン触媒の存在も不可欠なことである。
【0008】
WO2015050876は、アルデヒドで汚染されたアミン触媒中のアルデヒド含有量を低減するための5員ポリ尿素の使用を記載している。WO2016005479は、ポリウレタンの製造におけるアルデヒドスカベンジャーとしての、イソシアネート反応性基を有する環状尿素の使用を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2020/161010
【特許文献2】WO2015050876
【特許文献3】WO2016005479
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明の目的は、強塩基性アミン触媒及び金属触媒の上述の欠点を示さず、そして既知のラクタムと比較してより活性であるポリウレタン反応用の触媒を提供することであり、それにより、得られたポリウレタンの機械的特性に悪影響を与えることなく上述の触媒のかなりの割合が置き換えられる。これは特に、有機揮発性化合物の排出を低減することを意図している。本発明のさらなる目的は、環境に優しい発泡剤である水の高い含有量、及び95未満の低いイソシアネート指数にもかかわらず、特に成形発泡体の表面において芳香族アミンの含有量が著しく低減された発泡体をもたらすポリウレタンフォームの製造を可能にする、ポリウレタン触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、(a)芳香族ポリイソシアネートを、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、(d)触媒、(e)成分(a)~(f)の総質量に対して0.1質量%~5質量%の一般式1
【化2】
(式中、-X-は置換又は非置換の、3員基を表し、そしてRは置換又は非置換のアルキル又はヘテロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルキル-アリール基又はヘテロアルキル-アリール基より選択される基を表す)で表される少なくとも1つの環状尿素構造、(f)任意に発泡剤及び(g)任意に添加剤と混合して反応混合物を得、そしてその反応混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法によって達成される。本発明の目的は、このような方法によって得ることができるポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームによっても達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の文脈におけるポリウレタンという用語は、あらゆる既知の発泡ポリイソシアネート重付加生成物を含む。これらは、イソシアネート及びアルコールの付加生成物を含み、また、イソシアヌレート、アロファネート、尿素、カルボジイミド、ウレトンイミン又はビウレット構造を含み得る変性ポリウレタン、及び他のイソシアネート付加生成物も含む。本発明によるこれらのポリウレタンは、特に、固体ポリイソシアネート重付加生成物、例えばデュロマー、及びポリイソシアネート重付加生成物をベースとする発泡体、例えば軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム又は成形発泡体、さらにはポリウレタンコーティング及びバインダーを含む。「ポリウレタン」はさらに、ポリウレタン及びさらなるポリマーを含むポリマーブレンド、及びこれらのポリマーブレンドから作られた発泡体も意味すると理解される。本発明によるポリウレタンは、好ましくは、以下に明らかにするポリウレタンユニット(a)~(g)に加えてさらなるポリマーを含まないポリウレタンフォーム又は固体ポリウレタンである。
【0013】
本発明の文脈では、「ポリウレタンフォーム」は、DIN7726に準拠した発泡体を意味すると理解される。本発明による軟質ポリウレタンフォームは、10%圧縮時の圧縮応力/DIN53 421/DIN EN ISO604による圧縮強度が15kPa以下、好ましくは1~14kPa、及び特に4~14kPaである。本発明による半硬質ポリウレタンフォームは、DIN53 421/DIN EN ISO604による10%圧縮時の圧縮応力が15超~80kPa未満である。DIN ISO4590によれば、本発明による半硬質ポリウレタンフォーム及び軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは85%を超える、特に好ましくは90%を超える開放セル含量を有する。本発明による軟質ポリウレタンフォーム及び半硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第5章に見出される。
【0014】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上の10%圧縮時の圧縮応力を示す。さらに、硬質ポリウレタンフォームは、DIN ISO4590によると、80%を超える、好ましくは90%を超える独立気泡含量を有する。本発明による硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第6章に見出される。
【0015】
本発明の文脈では、「エラストマーポリウレタンフォーム」とは、DIN7726に準拠したポリウレタンフォームであり、DIN53 577に準拠してその厚さの50%の短時間変形を行った後、10分後にその開始厚さの2%を超える持続的変形を示さないものを意味すると理解される。これは、例えば軟質ポリウレタンフォームであってよい。
【0016】
ポリウレタン成形発泡体は、DIN7726によるポリウレタンフォームであり、成形プロセスの結果として、コアよりも高い密度を有する外皮又は端部区域を有する。コアと端部区域を平均した全体の見かけの密度は、好ましくは15~800g/Lの範囲である。100g/Lを超える密度を有する成形発泡体は、典型的には一体型スキン発泡体と呼ばれる。本発明の文脈では、ポリウレタン成形発泡体は、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム又は軟質ポリウレタンフォームであってもよい。本発明によるポリウレタン一体型スキン発泡体に関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第7章に見出される。本発明によるポリウレタンは、好ましくはポリウレタンフォーム、特に好ましくは硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム又は軟質ポリウレタンフォーム、特に軟質ポリウレタンフォーム、非常に特に好ましくは成形軟質ポリウレタンフォームである。
【0017】
本発明によるポリウレタンは、好ましくは、輸送手段、例えば船舶、航空機、ローリー、乗用車又はバス、特に乗用車又はバス、及び特に自動車の内装に用いられる。乗用車及びバスの内装は、以下に自動車内装部品と称される。例えば、軟質ポリウレタンフォームはシートクッションとして、半硬質ポリウレタンフォームはドアトリム要素又はインストルメントパネルのバックフォームとして、一体型ポリウレタンフォームはステアリングホイール、シフトノブ又はヘッドレストとして、そして固体ポリウレタンはケーブルシースとして用いることができる。
【0018】
本発明によるポリウレタンの製造に使用されるポリイソシアネート成分(a)は、ポリウレタンの製造に既知のあらゆるポリイソシアネートを含む。これらは、先行技術から公知の脂肪族、脂環式及び芳香族の二価又は多価イソシアネート、及びそれらの任意の所望の混合物を含む。例えば、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び4,4’-ジイソシアネート、モノマージフェニルメタンジイソシアネートとより多数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体との混合物(ポリマーMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びそのオリゴマー、トリレン2,4-又は2,6-ジイソシアネート(TDI)及びそれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート及びそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアネート(NDI)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
これらは、好ましくは、トルエンジイソシアネート異性体(TDI異性体)、メチレンジフェニレンジイソシアネートの異性体及びその高級多環式同族体(MDIと称する)を含む。使用される芳香族ポリイソシアネートは、特に好ましくは、2,4’-MDI、4,4’-MDI及びMDIの高級多環式同族体を含む混合物である。さらに、変性イソシアネート、例えばポリイソシアネート中のイソシアネート基に由来する基の組み込みによって形成されるイソシアネートを使用することも可能である。このような基の例としては、アロファネート基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、尿素基及びビウレット基が挙げられる。好ましい実施形態において、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートの割合は、好ましくは5質量%~30質量%、そしてジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートの割合は、好ましくは40質量%~80質量%であり、質量%は各場合とも芳香族ポリイソシアネート(a)の総質量に対するものである。好ましい実施形態において、ジフェニルメタンジイソシアネートの高級多環式同族体の割合は、3質量%~30質量%、特に好ましくは5質量%~25質量%である。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートは、プレポリマーの形態で使用してもよい。そのためには、上述の芳香族ポリイソシアネート(a1)を、イソシアネート反応性化合物(a2)を含む化合物と過剰に反応させる。ここで用いられる化合物(a2)は、好ましくは、(b)で述べたイソシアネート反応性基を有するポリマー化合物である。イソシアネートプレポリマーを芳香族イソシアネート(a)として使用する場合、これらは、好ましくはNCO含有量16質量%~31質量%を有する。
【0021】
イソシアネート反応性基(b)を有するポリマー化合物は、少なくとも450g/モル、特に好ましくは460~12000g/モルの数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を有する。考慮され得るイソシアネート反応性基(b)を有する好ましいポリマー化合物は、2~8、特に2~6、好ましくは2~4の官能価、及び400~3000g/モルの範囲、好ましくは1000~2500g/モルの平均当量分子量を有するポリエステルアルコール、及び/又はポリエーテルアルコールである。ポリエーテルアルコールが特に使用される。
【0022】
ポリエーテルアルコールは、既知の方法で製造することができ、通常、アルキレンオキシド、特にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのH-官能性開始物質への触媒的付加により、又はテトラヒドロフランの縮合により、製造することができる。アルキレンオキシドを付加する場合、ポリアルキレンオキシドポリオールという用語も使用される。使用できるH-官能性開始物質は、特に多官能性アルコール及び/又はアミンである。水、二価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、又はブタンジオール、三価アルコール、例えばグリセロール又はトリメチロールプロパン、及び高級多価アルコール、例えばペンタエリスリトール、糖アルコール、例えばスクロース、グルコース又はソルビトールの使用が好ましい。好ましく使用されるアミンは、10個以下の炭素原子を有する脂肪族アミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、及びアミノアルコール、例えばエタノールアミン又はジエタノールアミンである。使用されるアルキレンオキシドは、好ましくはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであり、軟質ポリウレタンフォームの製造に使用されるポリエーテルアルコールの場合、鎖端にエチレンオキシドブロックが付加されることが多い。アルキレンオキシドを付加する際に使用される触媒は、特に塩基性化合物であり、ここでは水酸化カリウムが最も工業的に重要である。ポリエーテルアルコール中の不飽和構成成分の含有量を低くすることが意図される場合、使用する触媒は、ジ-又はマルチ-メタルシアニド化合物、いわゆるDMC触媒であってもよい。二官能及び/又は三官能ポリアルキレンオキシドポリオールは、特に粘弾性軟質ポリウレタンフォームの製造に使用される。
【0023】
さらに、使用される少なくとも2つの活性水素原子を有する化合物は、例えば、2~12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸、好ましくは8~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸及び2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有する多価アルコール、好ましくはジオールから生成可能なポリエステルポリオールとすることができる。有用なジカルボン酸の例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及び異性体ナフタレンジカルボン酸が含まれる。アジピン酸の使用が好ましい。ここでジカルボン酸は、個別に、又は互いに混合して使用する。遊離ジカルボン酸の代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えば1~4個の炭素原子を有するアルコールのジカルボン酸エステル又はジカルボン酸無水物を使用することも可能である。
【0024】
ジ-及び多価アルコール、特にジオールの例として、エタンジオール、ジエチレングリコール、プロパン-1,2-及び-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール、グリセロール及びトリメチロールプロパンが挙げられる。エタンジオール、ジエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール又は言及したジオールの少なくとも2つの混合物、特にブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール及びヘキサン-1,6-ジオールの混合物を使用することが好ましい。ラクトン、例えばε-カプロラクトン、又はヒドロキシカルボン酸、例えばω-ヒドロキシカプロン酸及びヒドロキシ安息香酸から形成されるポリエステルポリオールを使用することも可能である。ジプロピレングリコールの使用が好ましい。
【0025】
使用される鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)は、400g/モル未満、好ましくは60~350g/モルの分子量を有する物質であり、鎖延長剤は2個のイソシアネート反応性水素原子を有し、そして架橋剤は少なくとも3個のイソシアネート反応性水素原子を有する。これらは個別に、又は混合物の形で使用してよい。分子量が400未満、特に好ましくは60~300、特に60~150であるジオール及び/又はトリオールを用いることが好ましい。開始分子の有用な例には、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジオール、及び2~14個、好ましくは2~10個の炭素原子を有する、芳香族構造を含むジオール、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、デカン-1,10-ジオール、o-、m-、p-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及び好ましくはブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール及びビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、トリオール、例えば1,2,4-、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパン、及びエチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシド及び前記ジオール及び/又はトリオールをベースとする低分子量ヒドロキシル基含有ポリアルキレンオキシドが含まれる。使用される鎖延長剤(c)は、特に好ましくは、モノエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール及び/又はグリセロールである。
【0026】
鎖延長剤、架橋剤又はそれらの混合物を使用する場合、これらは、成分(b)及び(c)の質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%及び特に0.8質量%~5質量%の量で、有利に使用される。
【0027】
本発明によるポリウレタンフォームを製造するのに好適な触媒(d)には、あらゆる既知のポリウレタン触媒が含まれる。これらには、金属触媒及び/又は第三級窒素原子を有するアミン触媒が含まれる。本発明によれば、一般式1で表される環状尿素構造を少なくとも1つ有する化合物(e)は、触媒(d)とはみなされない。触媒(d)は、好ましくはアミン触媒を含み、アミン触媒は、第三級窒素原子を含む。
【0028】
アミン触媒を用いる場合、本発明の文脈では、トリエチレンジアミンに対して少なくとも5%の相対反応性を有する第三級窒素原子を有する化合物を用いることが好ましい。ここで、相対反応性は、試験対象化合物の速度定数を、0.50モル/リットルの濃度のブタノール-フェニルイソシアネートモデル系において、各場合とも50℃で溶媒アセトニトリル中で確認し、そしてそれを1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)のものと比較することにより、確認する。試験対象触媒の速度定数が、同一条件下で1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン使用時の速度定数より最大で20倍小さい場合、少なくとも5%の相対反応性が生じる。速度定数の判定に関する詳細は、Schwetlick et.Al.Im J.Chem.Soc Perkin Trans.2、1994年、第599~608頁(記述条件下の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの速度定数kb=2.68dm6モル-2s-1)に記載されている。
【0029】
アミン触媒は、好ましくは反応性アミン触媒、すなわちイソシアネート反応性基を含むものである。これらは、少なくとも1個、好ましくは1~8個、及び特に好ましくは1~2個のイソシアネート反応性基、例えば第一級アミン基、第二級アミン基、ヒドロキシル基、アミド基又は尿素基、好ましくは第一級アミン基、第二級アミン基又はヒドロキシル基、及び特に好ましくは第一級アミン基又はヒドロキシル基を有する。組み込み可能なアミン触媒は、特に自動車内装で使用される低排出ポリウレタンの製造に主に使用される。このような触媒は公知であり、例えばEP1888664に記載されている。これらは、イソシアネート反応性基(複数可)に加えて、1個以上、好ましくは2個の第三級アミノ基を有する化合物を含む。
【0030】
組み込み可能な触媒の第三級アミノ基が、少なくとも2個の脂肪族炭化水素基、好ましくは基あたり1~10個の炭素原子を有する、特に好ましくは基あたり1~6個の炭素原子を有するものを有する場合が好ましい。第三級アミノ基が、メチル基(H3C-)及びエチル基(H3C-H2C-)及びさらなる有機基より選択される互いに独立した2つの基を有する場合が、特に好ましい。本発明の好ましい実施形態で使用される組み込み可能な触媒の例は、ビスジメチルアミノプロピル尿素、ビス(N,N-ジメチルアミノエトキシエチル)カルバメート、ジメチルアミノプロピル尿素、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノプロピルエーテル)、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノエチルエーテル)、ジエチルエタノールアミン、ビス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)アミン、ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピル-N,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、ジメチル-2-(2-アミノエトキシエタノール)、及び(1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン-2-オール)、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-ヒドロキシエチルアミン、N,N,N-トリメチル-N-(3アミノプロピル)ビス(アミノエチルエーテル)、3-ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン、N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]-N-メチル-1,3-プロパンジアミン及びそれらの混合物からなる群より選択される。N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]-N-メチル-1,3-プロパンジアミンの使用が特に好ましい。
【0031】
組み込み可能なアミン触媒に加えて、ポリウレタンを製造するためにさらなるアミン触媒を使用することが可能である。これらは、好ましくは、2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-メチル-、N-エチル-、N-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-アザビシクロ[3.3.0]オクタン、及び好ましくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0032】
アミン触媒は、好ましくは、第三級窒素原子の含有量が、0.0001~0.003モル/発泡体100g、好ましくは発泡体100gあたり0.0004~0.002、及び特に0.0005~0.001モルとなるような量で用いられる。アミン触媒は、好ましくは、専ら組み込み可能なアミン触媒を含む。
【0033】
使用される金属触媒は、任意の慣用的な金属触媒とすることができる。これらには、有機金属化合物、好ましくは有機スズ化合物、例えば有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えばスズ(II)アセテート、スズ(II)オクトエート、スズ(II)エチルヘキサノエート及びスズ(II)ラウレート、及び有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズジネオデカノエート、及びさらにビスマスカルボキシレート、例えばビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート、及びビスマスオクタノエート、又はそれらの混合物が含まれる。選択される金属触媒は、好ましくは、加水分解に対して安定な金属触媒、例えばスズ(IV)化合物である。特に、ジブチルスズジネオデカノエートが金属触媒として使用される。
【0034】
使用される触媒及び触媒量は、好ましくは、第三級窒素の本発明による量の制限を考慮して、ポリウレタン反応混合物が、好ましくは、30~150秒、特に好ましくは40~110秒、及び特に50~105秒の立ち上がり時間を有するように選択される。立ち上がり時間は、ポリオール成分100g及びイソシアネート成分50gの質量でのビーカー試験において最大高さに達する時間であると理解される。クリーム時間は、好ましくは10~30秒の範囲、特に好ましくは12~25秒、及び特に14~22秒であり、そしてゲル又は繊維時間は、好ましくは60~180秒、特に好ましくは70~160秒、及び特に75~145秒である。ここで、クリーム時間及びゲル時間は、DIN EN14315-1:2013に従って、ポリオール成分100g及びイソシアネート成分50gの質量で、25℃におけるビーカー試験で判定される。
【0035】
本発明による成分(e)として用いられるのは、式1
【化3】
で表される環状尿素構造であり、
この構造は、成分(a)~(f)の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.2質量%~3質量%、及び特に0.3質量%~2質量%の量であり、式中、-X-は置換されていてもよい3員基を表す。これは、式1で表される環状尿素構造を形成し、その環は、尿素構造-NH-C(O)-NR-を含む6員を有する。基Xの員は、好ましくは、-NR
1-、-O-、-CR
2R
3-、-N=及び-CR
4=からなる群より選択される。基-CR
4=又は-N=の場合、隣接する員は当然同様に-CR
4=又は-N=より選択される員からなり、2つの員の間に二重結合を形成する。基R
1~R
4は、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル基、好ましくはエチル又はメチル、又はハロゲン、例えばフッ化物基又は塩化物基を表す。非常に特に好ましい実施形態では、Xは、-(CH
2)
3-又は-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-、特に-(CH
2)
3-である。式1の基Rは、置換又は非置換のアルキル又はヘテロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルキル-アリール基又はヘテロアルキル-アリール基を表す。好適な置換基には、例えば、ハロゲン化物基、アルキル基、ヒドロキシル基又はアミン基が含まれる。本発明の好ましい実施態様において、Rは、少なくとも1つのイソシアネート反応性水素原子、例えば-OH又は-NH
2基を含む。Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、1つ以上のアルキレンオキシド単位、例えばオキシエチレン、オキシプロピレン又はオキシエチレンとオキシプロピレンとの混合物、及びフェニル、又はフェニルエーテルを表す。Rは、特に好ましくは、メチル、エチル、オキシエチレン、オキシプロピレン又はフェニルメトキシエステルを表し、非常に特に好ましくはメチルである。環状尿素化合物(e)として、2つの環状尿素構造が基Rを介して架橋された架橋環状尿素構造も使用可能である。環状尿素構造は好ましくは同一であり、架橋は好ましくは置換されていてもよい1~3員炭化水素である。
【0036】
一実施形態において、Rはイソシアネート反応性基であり、好ましくは、末端-OH又はNH2基より選択される反応性基である。特に好ましい実施形態では、Rは非置換である。
【0037】
Rは、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ペンチル及びヘキシルより選択される直鎖の非置換炭化水素基であり、特にRはメチル基である。
【0038】
式1で表される環状尿素構造は公知であり、例えばUS2013281451で既に何度も記載されている。合成は、例えば、N-ハロアルキル-3-アルキル尿素、例えば1-(2-クロロエチル)-3-メチル尿素から開始して行ってよい。これらの尿素化合物は、水素化ナトリウムの存在下で環化される。この合成は、US2013281451にも記載されている。合成は、代替的に、尿素及びジアミンから開始して(例えばEP976796に記載)、又はジアルキルカーボネートとジアミンとの反応によって(例えばEP2548869に記載)行ってよい。
【0039】
本発明によるプロセス生成物としてポリウレタンフォームを得る場合、発泡剤(f)が用いられる。使用可能な発泡剤(f)には、化学的に作用する発泡剤及び/又は物理的に作用する化合物が含まれる。化学的発泡剤とは、イソシアネートとの反応によりガス状生成物を形成する化合物、例えば水又はギ酸を意味すると理解される。物理的発泡剤とは、ポリウレタン製造のための出発材料に溶解又は乳化し、ポリウレタン形成条件下で気化する化合物を意味するものと理解される。これらには、例えば炭化水素、ハロゲン化炭化水素、例えばハロゲン化飽和炭化水素、及び他の化合物、例えばパーフルオロアルカン、例えばパーフルオロヘキサン、クロロフルオロカーボン、及びエーテル、エステル、ケトン及び/又はアセタール、例えば4~8個の炭素原子を有する(シクロ)脂肪族炭化水素、又はヒドロフルオロカーボン、例えばSolkane(登録商標)365mfc、又は二酸化炭素などの気体が含まれる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、用いられる発泡剤(f)は、(f1)水、特に好ましくは専ら水を含む発泡剤の混合物である。特に、軟質ポリウレタンフォームを得ようとする場合、用いられる発泡剤(f)は水であり、好ましくは水のみである。
【0041】
発泡剤の量は、好ましくは、所望の密度が得られるように調整する。軟質ポリウレタンフォームを製造するために、発泡剤の量は、好ましくは、本発明によるポリウレタンフォームの密度が30~70g/lの範囲、好ましくは40~60g/l、及び特に45~55g/lであるように選択する。特に、水のみを、成分(b)~(f)の総質量に対して1質量%~6質量%、好ましくは2質量%~5質量%、より好ましくは2.5質量%~4.5質量%、及び特に3.0%~4.5質量%の量で使用する。
【0042】
用いられる補助剤及び/又は添加剤(g)の例には、表面活性物質、フォーム安定剤、セル制御剤、外部及び内部離型剤、充填剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤、芳香族アミン低減物質、例えばラクタム、加水分解安定剤、防菌物質及び静菌物質が含まれる。特に、ラクタム、例えばε-カプロラクタムを、式Iで表される本発明の環状尿素と一緒に使用すると、ポリウレタン中の芳香族アミンが低減される。
【0043】
使用される出発材料のさらなる詳細は、例えば、Kunststoffhandbuch[プラスチックハンドブック]、第7巻、Polyurethane[ポリウレタン]、Guenter Oertel編、Carl-Hanser-Verlag,Munich、第3版、1993年、第5章、Polyurethanweichschaumstoffe[軟質ポリウレタンフォーム]に見出される。
【0044】
本発明によるポリウレタン、例えば特に好ましい軟質ポリウレタンフォームを製造する場合、イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)、任意に用いられる鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)、触媒(d)、環状尿素構造(e)及び任意に共使用される発泡剤(f)及び任意に補助剤及び/又は添加剤(g)を、典型的には混合していわゆるポリオール成分を得、そしてこの形態でポリイソシアネートa)と反応させる。
【0045】
成分(b)、(d)、(e)及び任意に(c)及び(f)の反応性水素原子の合計との当量比は、一般に0.75~1.5:1、好ましくは0.80~1.25:1である。発泡プラスチックが少なくとも部分的にイソシアヌレート基を含む場合、ポリイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)、(d)、(e)及び任意に(c)及び(f)の反応性水素原子の合計との比は、1.5~20:1、好ましくは1.5~8:1が、典型的には使用される。ここで1:1の比率は、100のイソシアネート指数に相当する。軟質ポリウレタンフォームが製造される場合、混合比は、好ましくは、ポリイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)、(e)及び(f)、及び存在する場合、(c)及び(d)の反応性水素原子の合計との当量比が、好ましくは0.5~0.95:1、特に好ましくは0.6~0.8:1、及び特に0.65~0.75:1となるように選択される。
【0046】
本発明によるポリウレタンの製造は、好ましくはワンショット法により、例えば高圧又は低圧技術を使用して行われる。本発明によるポリウレタンは、ベルト上で、又は好ましくは型内で製造される。成形されたポリウレタンフォームは、開放型又は閉鎖型、例えば金属製の型内で製造することができる。
【0047】
2成分法と呼ばれる方法で進めるのが特に有利であり、この方法では、上述のように、ポリオール成分を製造し、ポリイソシアネート(a)で発泡させる。成分は、好ましくは、15~120℃の範囲、好ましくは20~80℃の温度で混合し、そして型内又はコンベヤーベルト上に導入する。型内の温度は、通常は15~120℃の範囲、好ましくは30~80℃である。
【0048】
こうして得られたポリウレタン、例えば本発明による軟質ポリウレタンフォームは、同様に、本発明の主題の一部を形成する。本発明による軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは開放セルであり、そして加工することなく使用できる。これは、好ましくはタックフリーの表面も有する。
【0049】
本発明によるポリウレタンは、あらゆる慣用的なポリウレタン用途に使用される。本発明によるポリウレタンは、特に好ましくは、有利に低いその排出特性が理由で、建物又は輸送手段の内装に用いられる。本発明によるポリウレタンフォームは、好ましくは、車両構造において、例えば、カーペットの裏張りとして、パッド付きの座席用又は寝椅子用(lounging)家具、マットレス又はクッションに使用される。さらなる使用分野は、自動車安全構成要素、家具部門及び自動車製造における安静用表面、アームレスト及び同様の部品である。
【0050】
特に成形ポリウレタンフォームの製造において、式1の成分を、第三級窒素原子の含有量が0.0001~0.003モル/発泡体100gとなるような量のアミン触媒と組み合わせて使用することにより、100を顕著に下回るイソシアネート指数及び1質量%を顕著に上回る水含量においてさえ、特に成形発泡体の表面で芳香族アミンの含有量を顕著に低減し、そしてこれを好ましくは検出限界未満まで低下させるのを可能にすることが見出された。
【0051】
さらなる利点は、本発明によるポリウレタン、特に軟質ポリウレタンフォームの場合、成分(e)を添加しない従来の触媒ポリウレタンと比較して、完全に反応したポリウレタンで測定したアルデヒドの含有量を、顕著に低減する、多くの場合50%を超えて低減することが可能なことである。
【0052】
最後に、本発明によるポリウレタンフォームの機械的特性、例えば圧縮残留ひずみ、特に高温多湿の保管後(湿潤圧縮残留ひずみ)、及び通気性、それ故快適性も改善される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を参照しながら本発明を解明する:
1-メチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オンの製造(式1で表される環状尿素構造1、式中、nは3に等しく、そしてRはメチル基である):
N-メチルプロパン-1,3-ジアミン(800g、9.1モル、1.0当量)及びNaOMe(40.2g、744ミリモル、5質量%)の撹拌溶液に、ジメチルカーボネート(865g、9.6モル、1.5当量)を7時間かけて55℃で滴下し添加した。混合物を還流下でさらに7時間撹拌した後、冷却して濾過した。揮発性物質を除去し、純度>95%の粗生成物(1020g、8.9ミリモル、98%)をVigreuxカラムで減圧分留してさらに精製し、99%を超える純度の所望の目標物質(935g、8.2モル、90%;結晶化して室温で無色固体となる無色オイル)を得た。
【0054】
得られた生成物は、以下の特性を有していた:
沸点:108℃/16mbar
融点:92℃。
【0055】
1-アミノプロピルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オンの製造(式1による環状尿素構造2、式中、nは3に等しく、そしてRは1-アミノプロピル基である):
製造は、環状尿素構造1と同様に行ったが、9.1モルのN-メチルプロパン-1,3-ジアミンの代わりに、9.1モル(1194g)の3,3’-ジアミノジプロピルアミンを使用した。
【0056】
ポリオール1:グリセロール開始ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン、アルキレンオキシドの含有量に対して13質量%のポリオキシエチレン含有量、28mgKOH/gのヒドロキシル価、及び主に第一級ヒドロキシル基を有する。
ポリオール2:2:1の比のスチレン及びアクリロニトリルをベースとするポリマーポリオール、固形分44質量%及びヒドロキシル価20mgKOH/g。
ポリオール3:グリセロール開始ポリオキシプロピレンポリオキシエチレン、アルキレンオキシドの含有量に対して74質量%のポリオキシエチレン含有量、及び42mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
ポリオール4:グリセロール開始ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン、アルキレンオキシドの含有量に対して13質量%のポリオキシエチレン含有量、35mgKOH/gのヒドロキシル価及び約85%の第一級ヒドロキシル基を有する。
ポリオール5:2:1(m:m)のスチレン/アクリロニトリルのコポリマーを有するポリマーポリオール/グラフトポリオール、OH価20、及び固形分45質量%を有する。
ポリオール6:グリセロール開始ポリオキシプロピレン、ヒドロキシル価42mgKOH/g及び専ら第二級OH基を有する。
触媒1:ジプロピレングリコール中33質量%のトリエチレンジアミン溶液。
触媒2:N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシル]-N-メチル-1,3-プロパンジアミン、組み込み可能、Evonik社の第三級アミン触媒、商品名Dabco(登録商標)NE300で入手可能。
触媒3:N,N-ジメチル-N’,N’-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-1,3-プロパンジアミン、Huntsman社から商品名Jeffcat(登録商標)DPAで入手可能。
触媒4:3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン開始ポリオキシプロピレン、77質量%のポリオキシプロピレン含有量、ヒドロキシル価250mgKOH/gを有する。
触媒5:ポリオール1中10質量%のジメチルスズジネオデカノエート溶液、商品名Fomrez(登録商標)UL28で入手可能、Momentive社のPU触媒。
触媒6:3-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)
イソシアネート1:MDIとMDIの高級多環式同族体の混合物、25℃における粘度210mPas、及びNCO含有量31.5質量%を有する。
イソシアネート2:49質量部の4,4’-MDI、48.6質量部の2,4’-MDI及び2.4質量部の2,2’-MDIの混合物、NCO含有量は33.5質量%である。
イソシアネート3:33.5質量%のNCO含量を有するモノマー4,4’-MDI。
安定剤1:Evonik社の低排出シリコーン安定剤、商品名Tegostab B8715LF2として入手可能。
安定剤2:Evonik社の低排出シリコーン安定剤、商品名Tegostab B8716LF2として入手可能。
【0057】
表1に報告する出発材料から進めて、18.5×19.5×3.8cmの寸法を有する試験パネルを、閉鎖型内で50℃の型温度で製造した。この目的のために、表に報告する組成物によるポリオール成分を製造し、特定のイソシアネート指数で35℃の高圧混合ヘッドで特定のイソシアネート成分と混合し、そして得られた混合物を60℃に加熱した型に導入した。入力材料の報告量は、質量部を指す。MDA濃度はppmで報告する。成形品は、5分後に型から取り出した。密度はおよそ50g/dm3であった。
【0058】
【0059】
【0060】
比較例1は、従来の触媒を用いた発泡体に相当する。速い反応時間が達成されたが、高レベルの芳香族アミンが発生し、且つアルデヒドの排出量も高かった。アミン触媒(cat3)を環状尿素構造1に置き換えると、同様の反応プロファイルが得られたが、発泡体のアルデヒド排出量は顕著に減少した(実施例1)。芳香族アミンの含有量も顕著に減少した。アミン触媒の含有量をさらに減少させると、芳香族アミンの含有量もさらに減少した(実施例2)。実施例3は、この効果が類似の環状尿素でも達成されたことを示している。
【0061】
比較実験2及び3は、環状尿素の代わりに多量のε-カプロラクタムを使用した場合でも、金属触媒を追加的に使用した場合にのみ発泡体が得られ(Cat5)、それ以外では発泡体が崩壊することを示した。対照的に、少量の環状尿素1(1.5部の代わりに0.3部)の使用により、金属触媒を使用しなくても発泡体を得ることが可能となった(実施例4)。最後に、ε-カプロラクタムと共に本発明の環状尿素を追加的に使用すると(比較例4と比較して実施例5及び6)、芳香族アミンの含有量の減少と相まって、反応時間が顕著に速くなった。
【0062】
芳香族アミン:
軟質ポリウレタンフォーム製の成形部品中の芳香族アミン濃度の判定は、ISOPA I.I.I.試験法に基づいて行った:MDA検出法ISOPA I.I.I.ref.11399、「Robust method for the determination of the diaminodiphenylmethane content of flexible polyurethane foams(軟質ポリウレタンフォームのジアミノジフェニルメタン含有量測定のためのロバスト法)」を用いた。この目的のため、試験片を製造後に製材し、直ちにアルミホイル及びビニール袋で梱包した。脱型から包装までの時間は30分であった。
【0063】
成形発泡体の表面を、厚さ0.5cmのパネルの形状に切り取った。これらのパネルから、寸法3cm×3cmの試験片をそれぞれ切り出し、積み重ねて3×3×3cmの立方体を形成し、測定した。この軟質フォームの立方体を、1%酢酸(質量%で報告)10mlの入ったビーカーに入れた。ラム(直径約4cm)を用いて立方体を20回絞り出し、溶液を50mlのフラスコに移した。次に、圧縮工程を、各回10mlの1%酢酸で2回繰り返し、この酢酸も圧縮工程後にフラスコに移した。得られた抽出物を合わせた後、この混合物を1%酢酸で50mlにした。この溶液を0.45μmのフィルターで濾過し、HPLC分析に備えた。あらゆる場合で二重判定を実施した。MDAの含有量はppmで報告する。
【0064】
排出値:
比較例8及び実施例9の発泡体試験片を、チャンバー法に続いてHPLCを使用して分析した。ホルムアルデヒドは、ASTM D-5116-06に類似した手順で測定した。チャンバーの大きさは4.7リットルであった。使用したポリウレタン試験片は、発泡体の芯から110mm×100mm×25mmの大きさを有する発泡体であった。測定中の測定チャンバー内の温度は65℃、相対湿度は50%であった。空気交換量は毎時3.0リットルであった。ポリウレタンからの揮発性アルデヒドを含む排気の流れを、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを塗装したシリカを含むカートリッジに120分にわたって通過させた。その後、DNPHカートリッジをアセトニトリルと水の混合液で溶出した。溶出液中のホルムアルデヒドの濃度はHPLCにより測定した。この設定では、ホルムアルデヒド排出の検出限界は≦11μg/m3であった。
【0065】
表2は、本発明の環状尿素構造1の使用と、本発明によるものではない類似の5員環状尿素構造(1-メチル-2-イミダゾリドン)の使用を比較したものである。
【0066】
【0067】
本発明による6員環状尿素構造は、本発明によるものではない類似の5員環状尿素構造と比較して高い触媒活性を示すため、使用量が少ないにもかかわらず、開始時間、ゲル時間及び立ち上がり時間を短縮することができた。本発明による6員環状尿素構造の使用により、VDA277による揮発性有機化合物VOCが低減された。芳香族アミンの含有量も、本発明の実施例ではわずかに減少した。
【国際調査報告】