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特表2024-504273ポリブチレンテレフタレート組成物及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240124BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240124BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240124BHJP
   C08K 9/08 20060101ALI20240124BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08L67/00
C08K9/08
H05K9/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539791
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2021085224
(87)【国際公開番号】W WO2022144159
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/140175
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,チェン コー
(72)【発明者】
【氏名】ホー,リー ロン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リー シア
【テーマコード(参考)】
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
4J002CF052
4J002CF062
4J002CF071
4J002CF082
4J002DA016
4J002DA027
4J002DA037
4J002FA046
4J002FB276
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GR01
5E321BB34
5E321GG11
(57)【要約】
本発明は、(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを含むポリブチレンテレフタレート組成物に関し、ここで、それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む。また、本発明は、このポリブチレンテレフタレート組成物から製造されるEMIシールド物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、
(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、
(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び
(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル
を含むポリブチレンテレフタレート組成物であって、
それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、
前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の炭素繊維が、ポリアクリロニトリルベースの炭素繊維、ピッチベースの炭素繊維又はレーヨンベースの炭素繊維、特にポリアクリロニトリルベースの炭素繊維から選択される、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の炭素繊維が、1300℃以下、例えば1100~1300℃の範囲の温度での炭化によって製造される、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項4】
前記繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項5】
前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特にポリエステル樹脂から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の炭素繊維が、5~30μm、好ましくは5~20μm、より好ましくは5~15μmの平均直径、及び3~20mm、好ましくは3~15mm、より好ましくは5~10mmの長さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の炭素繊維が、270~4000、特に400~2000のアスペクト比を有する、請求項6に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の炭素繊維(B)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、20~40質量%、特に25~40質量%の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項9】
前記ポリブチレンテレフタレート(A)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、50~75質量%、例えば50~70質量%、特に50~65質量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項10】
前記固体フィラー(C)が、炭素質又は金属、好ましくは炭素質である、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項11】
前記固体フィラー(C)がカーボンブラックの粉末又はフレークを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項12】
前記固体フィラー(C)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0.1~20質量%、特に1~20質量%、好ましくは5~20質量%の量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物から製造される、EMIシールド物品。
【請求項14】
レドーム、ICチップハウジング又はカメラセンサーハウジングから選択される、請求項13に記載のEMIシールド物品。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物から製造される、レドーム部品。
【請求項16】
レドームが車両レドームである、請求項15に記載のレドーム部品。
【請求項17】
1GHzにおいて35dB以上、例えば35dB~60dB、特に35~55dBのEMIシールド効果を有する、請求項13又は14に記載のEMIシールド物品、又は請求項15又は16に記載のレドーム部品。
【請求項18】
1~10Ω/□の表面抵抗率を有する、請求項13、14又は17のいずれか一項に記載のEMIシールド物品、又は請求項15から17のいずれか一項に記載のレドーム部品。
【請求項19】
請求項1から7のいずれか一項に定義した炭素繊維を、EMIシールドポリブチレンテレフタレート組成物に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)組成物、及びそれから製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、電子デバイスは様々な分野でますます重要な役割を果たすようになり、その使用量も飛躍的に増加している。電子デバイスに付随する問題として、電磁干渉(EMI)がある。電子デバイス中の異なる電子部品間又は電子デバイスと環境との間の電磁波干渉による悪影響を防止又は低減するために、一般的にハウジングがバリアとして使用されている。特定の分野では、ハウジングは、プラスチック複合材料、例えば、充填プラスチック複合材料で作られている。典型的には、充填プラスチック複合材料は、熱可塑性ポリマーマトリックス、電磁波吸収フィラー、及び任意に追加の添加剤からなる。
【0003】
充填プラスチックシールド複合材料のマトリックスとしては、特定の応用分野に応じて種々の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、コポリエステル-カーボネート、ポリアリーレンエーテルサルホン及びケトン、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエンスチレンコポリマー、ポリエーテルイミド及びポリフェニレンエーテルが使用されてもよい。
【0004】
充填プラスチックシールド複合材料に有用な電磁波吸収フィラーは、導電性があることが望ましい。電磁波吸収フィラーとしては、当初は金属粉が使用されていた。充填プラスチックシールド複合材料の発展に伴い、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維及びカーボンナノチューブなどの炭素材料が提案されているが、中でも炭素繊維は電磁波シールド効果、導電性、熱伝導性及び機械特性に関する優れた総合性能により、有力候補であった。
【0005】
例えば、WO2019088062A1には、熱可塑性樹脂及び炭素繊維を含む熱可塑性樹脂組成物を含む電磁波遮蔽/吸収の成形物品が記載されている。炭素繊維は、0.05~8.0mmの範囲の成形体中の質量平均繊維長を有し、成形体中に0.05~45質量%の含有量で存在する。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、プロピレン単位含有コポリマー及びその修飾生成物、スチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートから選択することができる。
【0006】
JP2014133842Aには、熱可塑性樹脂及びカーボンナノチューブ、カーボンブラック及び炭素繊維を含み、1×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する電磁波シールド導電性樹脂組成物が記載されている。熱可塑性樹脂としては、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0007】
CN104004355Aには、(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素繊維、及び(C)フィラーを含むEMIシールド熱可塑性樹脂組成物が記載されている。熱可塑性樹脂(A)は、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリスチレン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0008】
特にレドーム用途において、望ましい電磁波シールド効果及び機械的特性のバランスを有する充填プラスチック複合材料を提供する必要性が継続的に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2019088062A1
【特許文献2】JP2014133842A
【特許文献3】CN104004355A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に熱伝導性及び機械的特性を実質的に補償することなく、改善された電磁波シールド効果及び導電性を有する電磁干渉(EMI)シールドのポリブチレンテレフタレート(PBT)組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、特定の炭素繊維を電磁波吸収性フィラーとして含むポリブチレンテレフタレート(PBT)組成物によって達成された。
【0012】
したがって、本発明は、
(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、
(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、
(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び
(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル
を含むポリブチレンテレフタレート組成物を提供し、
それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、
前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む。
【0013】
また、本発明は、本明細書に記載のポリブチレンテレフタレート組成物から製造されるEMIシールド物品を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む炭素繊維の使用を提供する。
【0015】
驚くべきことには、本明細書に記載されているように、炭素繊維は、EMIシールドPBT組成物中の電磁吸収フィラーとして特に有用であることが見出された。本発明によるEMIシールドPBT組成物から、改善された電磁波シールド効果及び導電性を有する物品が製造された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、多くの異なる方法で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるものではないことは理解される。
【0017】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。「含む」、「含み」などの用語は、「含有する」、「含有し」などと互換的に用いられ、非限定的で開放的に解釈されるものとする。すなわち、例えば、さらなる成分又は要素が存在してもよい。「からなる」又は「本質的にからなる」という表現又はその同義語は、「含む」又はその同義語に包含されてもよい。
【0018】
なお、本明細書において、「ポリブチレンテレフタレート」及び「ポリブチレンテレフタレート組成物」という用語は、それぞれ略称として「PBT」及び「PBT組成物」と称することもある。
【0019】
成分(A)
PBTは、結晶性又は半結晶性の熱可塑性ポリマー材料として知られており、エステル化によって1,4-ブタンジオールとテレフタル酸との重縮合、又はエステル交換によって1,4-ブタンジオールとテレフタル酸のエステルとの重縮合に由来する。
【0020】
本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物に有用なPBTには、特に制限はない。一般には、好適なPBTは、60,000~100,000の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した質量平均分子量(M)を有してもよい。さらに又は代替的に、好適なPBTは、90~170cm/g、好ましくは100~135cm/g、より好ましくは100~120cm/gの範囲の、ISO 1628-5に従って、0.005g/mlのフェノール/1,2-ジクロロベンゼン溶液(質量比1:1)中で測定した粘度数を有してもよい。
【0021】
公知のプロセスを介して調製された任意のPBT、又はエンジニアリングプラスチックとして適した市販のPBT材料は、本発明の目的に使用することができる。市販のPBT材料の例には、BASF社のUltradur(登録商標)シリーズ、Bluestar社のBLUESTAR(登録商標)シリーズ、DuPont社のCrastin(登録商標)シリーズ、Lanxess社のPocan(登録商標)シリーズ、三菱社のNOVADURAN(登録商標)シリーズ、SABIC社のLNP(商標)LUBRICOMP(商標)シリーズ及びVALOX(商標)シリーズ、Polyram社のRAMSTER(登録商標)シリーズ、及びToray社のToraycon(登録商標)シリーズが含まれるが、これらに限定されていない。
【0022】
成分(A)は、本発明によるPBT組成物中に、PBT組成物の総質量に基づいて、50~75質量%、例えば50~70質量%、特に50~65質量%の量で存在することが好ましい。
【0023】
本明細書で言及する場合の成分(A)の量は、それ自体でPBTの量を指すことを意図していることが理解されよう。市販のPBT材料は、色、強度、安定性などの1つ以上の所望の特性を提供するために、しばしば既に意図的に特定の添加剤(単数又は複数)を添加しているが、この添加剤(単数又は複数)は成分(A)の量には含まれない。
【0024】
成分(B)
本発明の目的のために、好適な炭素繊維は、以下の工程:
(1)前駆体繊維を炭化して、炭素含有量が93質量%以上の繊維を製造する工程、及び
(2)エポキシサイジング剤を含まないサイジング剤組成物でこの繊維を処理する工程
を含む方法によって製造されたものであってもよい。
【0025】
成分(B)として好適な炭素繊維は、5~30μm、好ましくは5~20μm、より好ましくは5~15μmの平均直径、及び3~20mm、好ましくは3~15mm、より好ましくは5~10mmの長さを有してもよい。成分(B)として好適な炭素繊維は、270~4000、特に400~2000のアスペクト比(即ち、長さ/直径の比)を有することが好ましい。
【0026】
成分(B)として好適な炭素繊維は、1.7~1.8g/cmの密度を有してもよい。さらに又は代替的に、炭素繊維は、3.4~5.0GPa、特に3.4~4.6GPaの、TY-030-B-01に従って測定された引張強度を有してもよい。
【0027】
従来、炭素繊維の製造方法は、炭化工程の前に、前駆体繊維を加工及び/又は前処理する1つ以上の工程をさらに含んでもよい。本発明で有用な炭素繊維の製造方法における加工及び/又は前処理工程は特に制限されない。
【0028】
前駆体繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ又はレーヨンタイプの紡績繊維から選択することができる。これらの前駆体から得られる炭素繊維は、一般に、ポリアクリロニトリルベース炭素繊維(PANベース炭素繊維)、ピッチベース炭素繊維又はレーヨンベース炭素繊維と称される。特に、ポリアクリロニトリルの紡績繊維は、本発明の目的のための前駆体繊維として好適であり、したがって、ポリアクリロニトリルベース炭素繊維は、成分(B)に特に有用である。
【0029】
工程(1)における前駆体繊維の炭化は、1300℃以下、好ましくは1100~1300℃の範囲、例えば1100℃、1200℃、1300℃の温度で行うことができる。
【0030】
工程(1)の前駆体繊維の炭化から得られる繊維は、93質量%以上、例えば、93質量%、94質量%、95質量%の炭素含有量を有することが好ましい。本発明の目的のためには、93質量%~95質量%の範囲の炭素含有量が考えられる。炭素含有量は、元素分析を介して測定され、例えばGBT 26752-2011に従って、炭素質量とサンプル質量の比によって決定されてもよい。様々な元素分析法の間で結果に差はない。
【0031】
なお、成分(B)について言及した場合の「炭素含有量」は、サイジング前の炭素繊維の炭素含有量を意味することが理解される。
【0032】
工程(2)における繊維の処理において、サイジング組成物は、エポキシサイジング剤以外の任意のサイジング剤を含んでもよい。本発明に有用な炭素繊維のサイジング剤としては、特に、ポリウレタン樹脂(PU)及び/又はポリエステル樹脂を挙げることができる。より好ましくは、熱硬化性ポリエステル樹脂がサイジング剤として使用される。
【0033】
したがって、成分(B)として有用な炭素繊維は、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択されるサイジング剤を含む。
【0034】
サイジング組成物は、1種以上界面活性剤又は他の任意の助剤を含んでもよい、一般に分散液、特にサイジング剤の水分散液の形態でる。サイジング剤は、任意の従来の量、例えば炭素繊維の1~4質量%の量でサイジング組成物中に存在することができる。
【0035】
成分(B)は、本発明によるPBT組成物中に、PBT組成物の総質量に基づいて、20~40質量%、特に25~40質量%の量で存在することが好ましい。
【0036】
成分(C)
本発明によるPBT組成物は、0~20質量%の、炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラーを含んでもよい。固体フィラーは、例えば、炭素質フィラー又は金属フィラーであってもよい。好適な炭素質フィラーには、カーボンブラックの粉末及びフレーク、グラファイトの粉末及びフレーク、カーボンナノチューブ、並びに炭素繊維(B)以外の炭素繊維を含むことができるが、これらに限定されるものではない。好適な金属フィラーは、白金族金属、例えばパラジウム(Pd)及び白金(Pt)、遷移金属、例えばコバルト、鉄、ニッケル、銀、スズ、銅、及びこれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。特に、成分(C)は、カーボンブラックの粉末又はフレークを含んでもよい。グラファイトの粉末又はフレークのみが成分(C)としての固体フィラーを構成しないことが好ましく、グラファイトとカーボンブラックの混合物を成分(C)として使用することがより好ましい。
【0037】
成分(C)は、含まれる場合、PBT組成物の総質量に基づいて、0.1~20質量%、特に1~20質量%、好ましくは5~20質量%の量で、本発明によるPBT組成物に存在することが好ましい。
【0038】
成分(D)
本発明によるPBT組成物は、任意に、PBT以外の1種以上の熱可塑性ポリエステルを含んでもよい。
【0039】
ポリエステルは一般に、少なくとも1種のグリコールと少なくとも1種のジカルボン酸又はその反応性等価物に由来する。少なくとも1種のグリコールは、脂肪族、芳香族又はその組み合わせであってよい。少なくとも1種のジカルボン酸は、芳香族、脂環式ジカルボン酸又はその組み合わせであってもよい。
【0040】
好適な脂肪族グリコールの例には、直鎖、分岐状又は脂環式アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及び1,10-デカンジオールが含まれるが、これらに限定されていない。好適な芳香族グリコールの例には、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロカテコール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、1,4-ナフタレンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル及びビス(4-ヒドロキシフェニル)サルホンが含まれるが、これらに限定されていない。
【0041】
好適な芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が含まれるが、これらに限定されていない。好適な脂環式ジカルボン酸の例には、ノルボルネンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が含まれるが、これらに限定されていない。ジカルボン酸の好適な等価物には、ジカルボン酸のジアルキル又はジアリルエステル、例えばジメチルエステル、無水物、塩及び酸塩化物が含まれるが、これらに限定されていない。
【0042】
成分(D)として、特に有用なポリエステルは、PBT以外のポリアルキレンテレフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタノエート、例えばポリエチレンナフタノエート(PEN)及びポリブチレンナフタノエート(PBN)、ポリシクロアルキレンテレフタレート、例えばポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)を含んでもよい。成分(D)としては、好ましくはPET及びPTT、特にPETを使用することができる。
【0043】
成分(D)は、存在する場合、PBT組成物の総質量に基づいて、約1~約30質量%、例えば約5~約30質量%、又は約5~約20質量%の量であってよい。
【0044】
成分(E)
本発明によるPBT組成物は、1種以上の添加剤(E)、例えば離型剤、衝撃改良剤、熱安定剤、相溶化剤、安定剤、滑剤、補強剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、染料及び/又は顔料等の着色剤、界面活性剤、造核剤、カップリング剤、抗菌剤、帯電防止剤などをさらに含んでも良い。添加剤は、従来の量で使用することができる。例えば、PBT組成物は、PBT組成物の総質量に基づいて0.01~15質量%の量の1種以上の添加剤を含んでもよい。
【0045】
PBT組成物は、例えば、耐衝撃改良剤を含んでもよい。好適な衝撃改良剤には、ポリオレフィンベース、スチレンベース、不飽和カルボン酸ベースの衝撃改良剤を含むことができる。好適な衝撃改良剤は、エポキシ官能性ブロック及び/又は酸無水物ブロックなどの官能性ブロックによって修飾されたものであってもよい。エポキシ官能性ブロックは、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する単位であり得る。酸無水物ブロックは、無水マレイン酸に由来する単位であり得る。
【0046】
好適なポリオレフィンベース衝撃改良剤は、2~10個の炭素原子を有するオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリオレフィンを含むことができる。このようなオレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、1-プロピレン、1-ペンテン、1-オクテン、及びエチレンと1-オクテンの混合物、好ましくはエチレン、1-プロピレン及びエチレンと1-オクテンの混合物が含まれる。
【0047】
好適な不飽和カルボン酸ベース衝撃改良剤は、カルボン酸及びその誘導体、例えばエステル、イミド及びアミドに由来するブロックを含むことができる。好適なカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メチル)アクリレート及びイソブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
また、衝撃改良剤は、バイポリマー又はターポリマー、又はコア-シェル構造のポリマーであってもよい。このような衝撃改良剤の例には、スチレン/エチレン/ブチレンコポリマー(SEBS)、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートターポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、及びエチレン-オクテンコポリマーが含まれる。
【0049】
衝撃改良剤は、存在する場合、PBT組成物の総質量に基づいて、約0.01~約15重量%、又は約1~約15重量%、又は約5~約10重量%の量であってよい。
【0050】
PBT組成物は、例えば、滑剤又は加工助剤を含んでもよい。好適な潤滑剤又は加工助剤は、好ましくは、10~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸のエステル又はアミド、及び/又は2~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコール又はアミンである。滑剤は、好ましくは、10~20個の炭素原子を有する脂肪酸のペンタエリスリトールエステル、より好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0051】
滑剤は、存在する場合、PBT組成物の総質量に基づいて、0~約3質量%、又は約0.01~約2質量%、又は約0.2~約1質量%の量であってよい。
【0052】
PBT組成物は、例えば、酸化防止剤を含んでもよい。好適な酸化防止剤としては、芳香族アミンベースの酸化防止剤、ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤及びホスファイトベースの酸化防止剤、特にヒンダードフェノールベースの酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤の例には、α-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]ポリ(オキシ-1,2-エタンンジイル)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C~C-分岐状アルキルエステル、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が含まれる。
【0053】
酸化防止剤は、存在する場合、PBT組成物の総質量に基づいて、0~約2質量%、又は約0.01~約1質量%、又は約0.2~約0.8質量%の量であってよい。
【0054】
PBT組成物は、例えば、接着補助剤を含んでもよい。好適な接着補助剤としては、エポキシド、例えば、脂肪酸のエポキシ化アルキルエステル、例えばエポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、及びエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA樹脂が挙げられる。
【0055】
接着補助剤は、存在する場合、PBT組成物の総質量に基づいて、0~約2質量%、又は約0.01~約1質量%、又は約0.2~約0.8質量%の量であってよい。
【0056】
1つの好ましい実施形態において、PBT組成物は、
(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、
(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、
(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び
(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル
(E)0.1~2質量%の少なくとも1種の酸化防止剤、0.1~3質量%の少なくとも1種の滑剤、0.01~15質量%の少なくとも1種の衝撃改良剤
を含み、
ここで、それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、
前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む。
【0057】
EMIシールド物品
本発明によるPBT組成物は、従来の方法により種々の構造又は形態に加工して、EMIシールド物品を提供することができる。例えば、PBT(A)、炭素繊維(B)、固体フィラー(C)、任意にPBT以外のポリエステル(D)及び添加剤(E)を混合し、その後、例えば射出及び/又は押出を介して成形して、EMIシールド物品を形成することができる。
【0058】
PBT組成物の全ての成分を同時に混合してもよいことは理解されたい。あるいは、PBT組成物の一部の成分を予め混合し、その後、他の成分と混合してもよい。
【0059】
また、添加剤を別個の成分として組み込んでもよいことは理解されたい。あるいは、市販のPBT材料が既にいくつかの添加剤を含んでいるいくつかの場合では、そのような添加剤はPBT(A)と共に組み込まれること。また、1種以上の添加剤が両方のルートで組み込まれることも可能である。
【0060】
したがって、本発明は、本発明によるPBT組成物から製造されるEMIシールド物品を提供する。驚くべきことには、本発明によるEMIシールド物品は、1GHzにおいて35dB以上のEMIシールド効果を有することが見出された。特に、本発明によるEMIシールド物品は、1GHzにおいて35dB~60dB、特に35~55dB、例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46,47、48、49、50、51、52、53、54、又は55dBのEMIシールド効果を有してもよい。
【0061】
本発明によるEMIシールド物品は、1~10Ω/平方(オーム/□)の表面抵抗率を有することが好ましい。
【0062】
本発明によるEMIシールド物品は、様々な電子機器部品又はハウジングであってもよい。例には、レドーム、集積回路(IC)チップハウジング、及びカメラセンサーハウジングが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
したがって、本発明は、ポリブチレンテレフタレート組成物から製造されるレドーム部品も提供し、ここで、このレドームが、好ましくは車両用レドームである。
【0064】
実施形態
様々な実施形態が以下に列挙されている。以下に列挙される実施形態は、本発明の範囲に従って、すべての態様及び他の実施形態と組み合わされてもよいことが理解されるであろう。
【0065】
1.(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、
(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、
(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び
(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル
を含むポリブチレンテレフタレート組成物であって、
それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、
前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【0066】
2.前記少なくとも1種の炭素繊維が、ポリアクリロニトリルベースの炭素繊維、ピッチベースの炭素繊維又はレーヨンベースの炭素繊維、特にポリアクリロニトリルベースの炭素繊維から選択される、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0067】
3.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1300℃以下、例えば1100~1300℃の範囲の温度での炭化によって製造される、実施形態1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0068】
4.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態1から3のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0069】
5.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態1から4のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0070】
6.前記少なくとも1種の炭素繊維が、5~30μm、好ましくは5~20μm、より好ましくは5~15μmの平均直径、及び3~20mm、好ましくは3~15mm、より好ましくは5~10mmの長さを有する、実施形態1から5のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0071】
7.前記少なくとも1種の炭素繊維が、270~4000、特に400~2000のアスペクト比を有する、実施形態6に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0072】
8.前記少なくとも1種の炭素繊維(B)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、20~40質量%、特に25~40質量%の量で存在する、実施形態1から7のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0073】
9.前記ポリブチレンテレフタレート(A)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、50~75質量%、例えば50~70質量%、特に50~65質量%の量で存在する、実施形態1から8のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0074】
10.前記固体フィラー(C)が、炭素質又は金属、好ましくは炭素質である、実施形態1から9のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0075】
11.前記固体フィラー(C)がカーボンブラックの粉末又はフレークを含む、実施形態1から10のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0076】
12.前記固体フィラー(C)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0.1~20質量%、特に1~20質量%、好ましくは5~20質量%の量で存在する、実施形態1から11のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0077】
13.実施形態1から12のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物から製造される、EMIシールド物品。
【0078】
14.レドーム、ICチップハウジング又はカメラセンサーハウジングから選択される、実施形態13に記載のEMIシールド物品。
【0079】
15.1GHzにおいて35dB以上、例えば35dB~60dB、特に35~55dBのEMIシールド効果を有する、実施形態13又は14に記載のEMIシールド物品。
【0080】
16.1~10Ω/□の表面抵抗率を有する、実施形態13から15のいずれか一項に記載のEMIシールド物品。
【0081】
17.実施形態1から7のいずれか一項に定義した炭素繊維を、EMIシールドポリブチレンテレフタレート組成物に使用する方法。
【0082】
より特に、以下の実施形態が好ましい。
【0083】
1.(A)45~75質量%のポリブチレンテレフタレート、
(B)20~45質量%の少なくとも1種の炭素繊維、
(C)0~20質量%の炭素繊維(B)以外の少なくとも1種の固体フィラー、及び
(D)0~30質量%のポリブチレンテレフタレート以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル
を含むポリブチレンテレフタレート組成物であって、
それぞれは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものであり、
前記少なくとも1種の炭素繊維が、93質量%以上の炭素含有量を有し、エポキシサイジング剤以外のサイジング剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【0084】
2.前記少なくとも1種の炭素繊維が、ポリアクリロニトリルベースの炭素繊維、ピッチベースの炭素繊維又はレーヨンベースの炭素繊維、特にポリアクリロニトリルベースの炭素繊維から選択される、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0085】
3.前記少なくとも1種の炭素繊維がポリアクリロニトリルベースの炭素繊維から選択される、実施形態2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0086】
4.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1300℃以下の温度での炭化によって製造される、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0087】
5.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1300℃以下の温度での炭化によって製造される、実施形態2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0088】
6.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1300℃以下の温度での炭化によって製造される、実施形態3に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0089】
7.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1100~1300℃の範囲の温度での炭化によって製造される、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0090】
8.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1100~1300℃の範囲の温度での炭化によって製造される、実施形態2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0091】
9.前記少なくとも1種の炭素繊維が、1100~1300℃の範囲の温度での炭化によって製造される、実施形態3に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0092】
10.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0093】
11.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0094】
12.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態3に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0095】
13.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態4に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0096】
14.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態5に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0097】
15.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態6に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0098】
16.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態7に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0099】
17.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態8に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0100】
18.前記少なくとも1種の炭素繊維が、93~95質量%の範囲の炭素含有量を有する、実施形態9に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0101】
19.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0102】
20.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0103】
21.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態3に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0104】
22.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態4に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0105】
23.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態5に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0106】
24.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態6に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0107】
25.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態7に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0108】
26.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態8に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0109】
27.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態9に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0110】
28.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態10に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0111】
29.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態11に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0112】
30.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態12に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0113】
31.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態13に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0114】
32.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態14に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0115】
33.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態15に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0116】
34.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態16に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0117】
35.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態17に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0118】
36.前記サイジング剤が、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂、特に熱硬化性ポリエステル樹脂から選択される、実施形態18に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0119】
37.前記少なくとも1種の炭素繊維が、5~30μm、好ましくは5~20μm、より好ましくは5~15μmの平均直径、及び3~20mm、好ましくは3~15mm、より好ましくは5~10mmの長さを有する、実施形態1から36のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0120】
38.前記少なくとも1種の炭素繊維が、270~4000、特に400~2000のアスペクト比を有する、実施形態37に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0121】
39.前記少なくとも1種の炭素繊維(B)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、20~40質量%、特に25~40質量%の量で存在する、実施形態1から38のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0122】
40.前記ポリブチレンテレフタレート(A)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、50~75質量%、例えば50~70質量%、特に50~65質量%の量で存在する、実施形態1から39のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0123】
41.前記固体フィラー(C)が、炭素質又は金属、好ましくは炭素質である、実施形態1から40のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0124】
42.前記固体フィラー(C)がカーボンブラックの粉末又はフレークを含む、実施形態1から41のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0125】
43.前記固体フィラー(C)が、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0.1~20質量%、特に1~20質量%、好ましくは5~20質量%の量で存在する、実施形態1から42のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【0126】
44.実施形態1から43のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物から製造される、EMIシールド物品。
【0127】
45.レドーム、ICチップハウジング又はカメラセンサーハウジングから選択される、実施形態44に記載のEMIシールド物品。
【0128】
46.1GHzにおいて35dB以上、例えば35dB~60dB、特に35~55dBのEMIシールド効果を有する、実施形態44又は45に記載のEMIシールド物品。
【0129】
47.1~10Ω/□の表面抵抗率を有する、実施形態44から46のいずれか一項に記載のEMIシールド物品。
【0130】
48.実施形態1から38のいずれか一項に定義した炭素繊維を、EMIシールドポリブチレンテレフタレート組成物に使用する方法。
【実施例
【0131】
以下の実施例によって、本発明の態様をより完全に説明するが、これらの実施例は、本発明の特定の態様を説明するために設けられたものであり、それを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0132】
実施例では,以下の材料及び試験方法を使用した。
【0133】
材料
(A)PBT:BASF社から市販している、Ultradur(登録商標)B2550、
(B)炭素繊維(CF)、
CF1:AMOS COMPOSITES社から市販しており、2.5質量%のポリウレタンサイジング、1100℃の炭化温度、及び93質量%のサイジング前の炭素含有量を有する、AMOS CD70006-PUY;
CF2:日本ポリマー産業株式会社から市販しており、1.5質量%のエポキシ+ウレタンサイジング、1300℃の炭化温度、及び93質量%のサイジング前の炭素含有量を有する、NPS CFEPU LC C-6;
CF3:Procotex Corporation SA社から市販しており、4質量%のポリウレタンサイジング、1800℃の炭化温度、及び92質量%のサイジング以外の炭素含有量を有する、IM-MLD300 G.U1:
CF4:ZOLTEK株式会社から市販しており、2.8質量%の熱硬化性ポリエステルサイジング、1300℃の炭化温度、及び95質量%のサイジング以外の炭素含有量を有する、ZOLTEK PX35チョップド繊維(タイプ-45)。
【0134】
(C)固体フィラー
カーボンブラック:Imerys Graphite&Carbon社から市販している、ENSACO(登録商標)E260G;
グラファイト:Imerys Graphite&Carbon社から市販している、TIMREX 20*50。
【0135】
(E)添加剤
Emery Oleochemicals社から市販している、LOXIOL(登録商標)P 861/3.5;
BASF社から市販している、Irganox 1010;
Arkema社から市販している、Lotader AX 8900;
Arkema社から市販している、Vikoflex 7190。
【0136】
測定方法:
1.EMIシールド効率は、ASTM D4935-99に従って、長さ150mm、幅150mm、厚さ2mmの板状試料を用いて、Keysight Microwave Network Analyzer N5242B-425により1GHzで測定した。
【0137】
2.表面抵抗(Rs、Ω/□)は、(60×60×2mm)の試料の片面に、長さ(L=60mm)及び距離(d)で平行に2本の銀線を塗り、乾燥した各銀線の中点にプローブを持つマルチメーターで抵抗(R)を決定し、Rs=R×L/dに従い算出した。試料は測定前に、23℃及び50%の相対湿度(RH)で少なくとも4時間調整した。
【0138】
3.ISO527-1-2012に従って、タイプ1Aの試料を用いて、破断強度、破断伸度及び引張弾性率を測定した。
【0139】
4.ISO179-1/1eA-2010に従って、23℃でノッチ付きシャルピー値を測定した。
【0140】
5.ASTM E1461-13に従って、NETZSCH Analyzing&Testing社のLFA 467 HyperFlash(登録商標)で、面内の熱伝導率及び面を通る熱伝導率を測定した。
【0141】
EMIシールド試験試料を調製するための一般手順
表1に示す配合でEMIシールド試料を作製した。PBT及び添加剤を一緒に高速撹拌機Turbula T50Aで混合し、二軸押出機(Coperion ZSK18)に供給した。6mm(L)×7μm(D)の炭素繊維、及び使用する場合の追加の固体フィラーを下流側のフィーダーで押出機に供給し、その後、160℃~270℃の範囲のゾーン温度で、8kg/時の処理量で溶融押出し、ペレット化し、それによってペレットの形態のPBT組成物を得た。
【0142】
130Tの型締力を有する射出成形機(KM130CX、Krauss Maffei社製)で、265℃~275℃の溶融温度でPBT組成物の乾燥ペレットを加工して試料を提供した。
【0143】
得られた試験試料について、前述したような特性の測定を行った。試験結果及び試験試料の調製ため配合を表1にまとめた。
【0144】
【表1】
【0145】
本発明によるPBT組成物から作製された試料は、エポキシ樹脂を含むサイジング組成物で処理された炭素繊維を含むPBT組成物、及び92%の炭素含有量を有する炭素繊維を含むPBT組成物から作製された試料と比べて、より高いEMIシールド効率及びより低い表面抵抗率を示していることが分かる。
【国際調査報告】