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特表2024-504549アルデヒド放出量を低減させたポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】アルデヒド放出量を低減させたポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20240125BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/20
C08G18/48
C08G18/00 F
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532138
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021082467
(87)【国際公開番号】W WO2022112157
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20209817.4
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】トモヴィチ,ツェリコ
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CB04
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DG01
4J034DG14
4J034DG23
4J034DQ04
4J034DQ05
4J034DQ14
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA07
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA10
4J034RA11
4J034RA12
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、ポリウレタンの製造方法であって、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に、触媒、(d)一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物、及び任意に、(e)発泡剤、(f)鎖延長剤及び/又は架橋剤、及び、(g)助剤及び/又は添加剤{式中、W-は、置換されていてもよく、そして窒素原子を介して-Kw-に結合している、環状アミンを表し、-Kw-は、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Oは酸素原子を表し、Hは水素原子を表し、及び、-Qは、シアン化物(-CN)又は一般式-C(O)-Rで表される電気陰性基を表し、及び、Rは、-NH、-NH-R-NR、-OR又は-R(式中、-R、-R、-R、-R及び-Rは、独立して、置換されていてもよい脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族炭化水素からなる群から選択される。)からなる群から選択される基を表す。}を混合し反応混合物を得て、そして前記反混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法に関する。本発明はさらに、本発明による方法によって製造可能なポリウレタン、及び、閉鎖空間における当該ポリウレタンの使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの製造方法であって、
(a) ポリイソシアネート、
(b) イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、
(c) 任意に、触媒、
(d) 一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物、及び任意に
(e) 発泡剤、
(f) 鎖延長剤及び/又は架橋剤、及び、
(g) 助剤及び/又は添加剤
{式中、W-は、置換されていてもよく、そして窒素原子を介して-Kw-に結合している、環状アミンを表し、
-Kw-は、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表し、
Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Oは酸素原子を表し、及びHは水素原子を表し、及び、
-Qは、シアン化物(-CN)又は一般式-C(O)-Rで表される電気陰性基を表し、及び、
は、-NH、-NH-R-NR、-OR又は-R(式中、-R、-R、-R、-R及び-Rは、独立して、置換されていてもよい脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族炭化水素からなる群から選択される。)からなる群から選択される基を表す。}
を混合し反応混合物を得て、そして前記反混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法。
【請求項2】
Wが、置換されていてもよいピロリジン環を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-Kw-が、1~10個の炭素原子を有する直鎖状の非置換の炭化水素基を表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Qが、-C(O)-NH-Kw-W(式中、-Kw-及び-Wは請求項1で定義されたものである。)を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Wが、置換されていてもよいピロリジン環を表し、Kw-が、1~10個の炭素原子を有する直鎖の非置換の炭化水素基を表し、及び、W及びKwがそれぞれ同一である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)が、ポリエーテルオールを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒(c)が、組み込み可能なアミン触媒を含み、前記組み込み可能なアミン触媒が少なくとも1つのイソシアネート反応性基を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される前記組み込み可能な触媒が、イソシアネート反応性基に加えて、1つ以上の脂肪族3級アミノ基を含む化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組み込み可能な触媒の少なくとも1つの3級アミノ基が、メチル基及びエチル基及びまたさらなる有機基から選択される互いに独立した2つの基を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリウレタンが、10~850g/Lの平均密度を有するポリウレタンフォームである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリウレタンが、850g/Lを超える平均密度を有するコンパクトポリウレタンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリウレタンが、マットレス又は家具のアイテムの一部分である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により製造可能なポリウレタン。
【請求項14】
密閉空間における請求項13に記載のポリウレタンの使用方法。
【請求項15】
前記閉鎖空間が、輸送手段の内装である、請求項14に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンの製造方法であって、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に、触媒、(d)一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物、及び任意に、(e)発泡剤、(f)鎖延長剤及び/又は架橋剤、及び、(g)助剤及び/又は添加剤{式中、Wは、置換されていてもよく、そして窒素原子を介してKwに結合している環状アミンを表し、Kwは、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Oは酸素原子を表し、及び、Hは水素原子を表し、及び、Qは、シアン化物(CN)又は一般式-C(O)-Rで表される電気陰性基を表し、及び、Rは、-NH、-NH-R-NR、-OR又は-R(式中、R、R、R、R及びRは、独立して、置換されていてもよい脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族炭化水素からなる群から選択される。)からなる群から選択される基を表す。}を混合し反応混合物を得て、そして前記反混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、ポリウレタンの製造方法に関する。使用される化合物(d)は、特に一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-C(O)-NH-Kw-W(式中、-Kw-及び-Wは、より好ましくはそれぞれ同一である。)で表される化合物である。本発明はさらに、本発明による方法によって製造可能なポリウレタン、及び、閉鎖空間、例えば輸送手段における、当該ポリウレタンの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、例えば、家具産業におけるシートクッションとして又はパーティクルボードのバインダーとして、建設産業における断熱材として、例えばパイプ、貯湯タンク又は冷蔵庫などの断熱材として、及びまた、例えば、自動車製造におけるトリムピースとして、多くの用途がある。ポリウレタンは、特に自動車製造において、例えば、自動車外装トリムにおいて、スポイラー、ルーフエレメント、サスペンションエレメントとして、及び、自動車内装トリムにおいて、ヘッドライナー、フォームカーペットバッキング、ドアトリム、ハンドル、ギアノブ及びシートクッションとしてしばしば使用されている。
【0003】
ポリウレタンは、不快な臭い、あるいは、高濃度の場合には体調不良を引き起こし得る有機物質を放出する性質があることが知られている。密閉された空間、例えば、建物の内部、及び乗り物、例えば自動車は、特に影響を受ける。このような放出物の一例として、アルデヒドの放出が挙げられる。アルデヒドの放出を減らすためのさまざまなアプローチが、すでに存在する。
【0004】
それゆえ、例えば、特許文献1には、1級及び/又は2級アミノ基を有するポリマー物質を後に添加することにより、アルデヒド放出量が低減され得ることが記載されている。ポリマー中のアミン基は、放出量の低減に関与している。これらは、イソシアネートとの反応性があり、そしてイソシアネートとの反応によって非常に大きく不活性化されるので、ポリマー活性物質は、前もって製造された発泡体へ適用されるべきである。この場合の欠点は、フォームの後処理を行う工程を含むという、工程が煩雑であるということである。コンパクトシステム又はクローズドセルフォームへの使用は不可能である。
【0005】
特許文献2には、ポリウレタンフォームのアルデヒド放出量を低減するための物質として、ポリヒドラゾジカルボンアミドの使用が記載されている。しかしながら、アルデヒドの顕著な減少は、ポリオール成分中に2質量%から5.5質量%の多量のポリヒドラゾジカルボンアミドを添加することによってのみ達成される。ポリヒドラゾジカルボンアミドにも触媒作用があるため、この物質のこの規模の添加は反応プロファイルを変化させる。さらに、ポリヒドラゾジカルボンアミドを多量に使用した場合でも、達成されるアルデヒドの減少は、改善する必要がある。
【0006】
特許文献3には、一般式R-CH-R(式中、R及びRは、互いに独立して電子吸引基を表す。)で表される、ホルムアルデヒド放出量を低減するための組み込み可能な触媒と組み合わせたCH-酸性化合物の使用が記載されている。これは、ホルムアルデヒドを効率的に低減させることができるが、依然として、発泡体試料は揮発性有機物質(VOC)の高い放出量を示している。
【0007】
ポリウレタンの製造において触媒として使用され得るアミノクロトン酸エステルは、特許文献4からも公知である。特許文献5には、ピロリジン構造を有する3級アミンに基づくポリウレタン触媒が記載されている。特許文献5にはさらに、記載されている触媒が、アルデヒド放出に関して、特にホルムアルデヒド放出に関して、低放出を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1428847号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第20130203880号明細書
【特許文献3】国際公開第2015082316号公報
【特許文献4】欧州特許第629607号公報
【特許文献5】国際公開第2016020200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、特にホルムアルデヒドなどのアルデヒドの放出特性を改善し、さらに窒素含有放出物及び臭気放出物などのさらなる化合物の放出特性も優れたポリウレタン、特にポリウレタンフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物、(c)任意に、触媒、(d)一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物、及び任意に、(e)発泡剤、(f)鎖延長剤及び/又は架橋剤、及び(g)助剤及び/又は添加剤{式中、Wは、置換されていてもよく、窒素原子を介して-Kw-に結合している環状アミンを表し、Kwは、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Oは酸素原子を表し、及び、Hは水素原子を表し、及び、Qは、シアン化物(CN)又は一般式-C(O)-Rで表される電気陰性基を表し、及び、Rは、-NH、-NH-R-NR、-OR又は-R(式中、R、R、R、R及びRは、独立して、置換されていてもよい脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族炭化水素からなる群から選択される。)からなる群から選択される基を表す。}を混合し反応混合物を得て、そして前記反混合物を反応させてポリウレタンを得ることを含む、製造方法によって製造されるポリウレタンによって解決される。
【0011】
本発明はさらに、密閉された空間、例えば輸送手段における当該ポリウレタンの使用方法に関するものである。
【0012】
本発明の目的のために、用語「ポリウレタン」は、全ての既知のポリイソシアネート重付加生成物を包含するものである。これらは、イソシアネートとアルコールから誘導される付加生成物を包含し、及びまた、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、尿素構造、カルボジイミド構造、ウレトンイミン構造、ビウレット構造、及び他のイソシアネート付加生成物を含み得る修飾ポリウレタンを包含するものである。これらの本発明によるポリウレタンは、特に、デュロマーなどの固体ポリイソシアネート重付加生成物、及び軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム又はインテグラルフォームなどのポリイソシアネート重付加生成物に基づくフォーム、及びまたポリウレタンコーティング及びバインダーからなる。「ポリウレタン」は、さらに、ポリウレタン及びさらなるポリマーとからなるポリマーブレンド、及びまたこれらのポリマーブレンドからなるフォームを意味すると理解されるものである。本発明によるポリウレタンは、好ましくは、本明細書で解明されたポリウレタン単位(a)~(g)の他にさらなるポリマーを含まない、ポリウレタンフォーム又は固体ポリウレタンである。
【0013】
本発明に関し、「ポリウレタンフォーム」は、DIN 7726によるフォームを意味するものと理解されるものである。本発明による軟質ポリウレタンフォームは、DIN 53 421/DIN EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力/圧縮強度が15kPa以下、好ましくは1~14kPa、特に4~14kPaを有するものである。本発明による半硬質ポリウレタンフォームは、DIN 53 421 / DIN EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力が、15kPa以上80kPa未満を有する。DIN ISO 4590によれば、本発明による半硬質ポリウレタンフォーム及び軟質ポリウレタンフォームは、オープンセル含量が好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上を有する。本発明による軟質ポリウレタンフォーム及び半硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第5章に見られ得る。
【0014】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、10%圧縮時の圧縮応力が80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上を示す。さらに、硬質ポリウレタンフォームは、DIN ISO 4590に従う独立気泡含有率が、80%以上、好ましくは90%以上を有する。本発明による硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第6章に見られ得る。
【0015】
本発明に関し、「エラストマーポリウレタンフォーム」は、DIN 53 577に従ってその厚さの50%の短時間の変形後、10分後にその開始厚さの2%を超える持続的な変形を示さない、DIN 7726によるポリウレタンフォームを意味すると理解されるものである。硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォームが該当し得る。
【0016】
「インテグラルポリウレタンフォーム」とは、成形プロセスの結果としてコアよりも高い密度を有するエッジゾーンを有するDIN 7726によるポリウレタンフォームを意味すると理解されるものである。コアとエッジゾーンを平均した全体の見かけの密度は、好ましくは100g/L以上である。本発明に関し、インテグラルポリウレタンフォームは、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム又は軟質ポリウレタンフォームであってもよい。本発明によるインテグラルポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第7章に見られ得る。
【0017】
好ましい態様において、本発明によるポリウレタンは、10~850g/Lの平均密度を有するポリウレタンフォーム、好ましくは、半硬質ポリウレタンフォーム又は軟質ポリウレタンフォーム又は硬質ポリウレタンフォーム、特に好ましくは、エラストマー軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム又はエラストマーインテグラルポリウレタンフォームである。エラストマーインテグラルポリウレタンフォームは、好ましくは、コアとエッジゾーンを平均した密度が、150g/L~500g/Lである。軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは、10~100g/Lの平均密度を有する。半硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは、70~150g/Lの平均密度を有する。本発明に関し、ポリウレタンフォームの平均密度は、例えば、ポリウレタン部分、例えば、フォームのセル壁及びラメラ、及びポリウレタンフォーム体によって含まれるガスの、平均されたフォームの密度を意味すると理解されるものである。
【0018】
別の好ましい態様では、ポリウレタンは、密度が、好ましくは850g/L以上、好ましくは900~1400g/L、及び特に好ましくは1000~1300g/Lの固体ポリウレタンである。固体ポリウレタンは、ここでは、発泡剤の添加なしで得られる。本発明の目的のために、少量の発泡剤、例えば製造プロセスの結果としてポリオール中に存在する水は、ここでは発泡剤の添加を構成するものとは解釈しない。コンパクトポリウレタンの製造のための反応混合物は、好ましくは0.2質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満、特に0.05質量%未満の水を含むものである。
【0019】
本発明によるポリウレタンは、好ましくは、輸送手段の内装、例えば船舶、航空機、ローリー、乗用車又はバス、特に乗用車又はバス、及び特に自動車の内装に使用される。乗用車及びバスの内装は、本明細書において、自動車内装部品と称される。軟質ポリウレタンフォームは、シートクッションとして、半硬質ポリウレタンフォームは、ドアトリムエレメント又はインストルメントパネルのバックフォームとして、インテグラルポリウレタンフォームは、ハンドル、シフトノブ又はヘッドレストとして、及び、固体ポリウレタンは、例えばケーブルシースとして使用され得る。
【0020】
本発明によるポリウレタンの製造に使用されるポリイソシアネート成分(a)は、ポリウレタンの製造に知られている全てのポリイソシアネートを包含するものである。これらは、先行技術から知られている脂肪族、環状脂肪族及び芳香族の二価又は多価イソシアネート、及びそれらの任意の所望の混合物を含む。例えば、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び4,4’-ジイソシアネート、単量体ジフェニルメタンジイソシアネートとより多くの環の数を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体の混合物(ポリマーMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びそのオリゴマー、トルイレン2,4-又は2,6-ジイソシアネート(TDI)及びこれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート及びそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアネート(NDI)及びこれらの混合物である。
【0021】
好ましいものは、2,4-及び/又は2,6-トルイレンジイソシアネート(TDI)又はその混合物、モノメリックジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートの高核同族体(ポリマーMDI)及びその混合物である。さらに可能なイソシアネートは、例えば、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第3.2章及び第3.3.2章に記載されている。
【0022】
ポリイソシアネート成分(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用され得る。これらのポリイソシアネートプレポリマーは、上記のポリイソシアネート(構成成分(a-1))の過剰量を、イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)(構成成分(a-2))及び/又は鎖延長剤(f)(構成成分(a-3))と、例えば30℃~100℃、好ましくは約80℃の温度で反応させて、イソシアネートプレポリマーを得ることで得られる。
【0023】
イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(a-2)及び鎖延長剤(a3)は、当業者に公知であり、及び、例えば、「Kunststoffhandbuch(プラスチックハンドブック)」,第7巻、「Polyurethane(ポリウレタン)」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第3.1章に記載されている。このように、イソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(a-2)としても、後述する(b)のイソシアネート反応性基を有するポリマー化合物が使用可能である。
【0024】
使用可能なイソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)は、少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を有する全ての公知の化合物、例えば2~8の官能価及び400~15000g/molの数平均分子量を有するものを含む。したがって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物を使用することが可能である。
【0025】
ポリエーテルオールは、エポキシド、例えば、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドから、又は、テトラヒドロフランと水素活性スターター化合物、例えば、脂肪族アルコール、フェノール、アミン、カルボン酸、水及び天然物質に基づく化合物、例えばスクロース、ソルビトール又はマンニトールとから、触媒を用いて生成される。これらは、例えば国際特許出願第EP2005/010124号、欧州特許第90444号公報又は国際公開第05/090440号公報に記載されているような、塩基性触媒又は二重金属シアン化物触媒を含み得る。
【0026】
ポリエステルオールは、一例として、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と、多価アルコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエステルアミド、ヒドロキシル化ポリアセタール及び/又はヒドロキシル化脂肪族ポリカーボネートから、好ましくはエステル化触媒の存在下で、製造される。さらに可能なポリオールは、例えば、「Kunststoffhandbuch、第7巻、 Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、(1993年)、第3.1章に記載されている。
【0027】
また、記載されたポリエーテルオール及びポリエステルオールに加えて、ポリマーポリエーテルオール又はポリマーポリエステルオールとしても知られるフィラー含有ポリエーテルオール及びポリエステルオールも使用可能である。このような化合物は、好ましくは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、メタクリレート、メタクリル酸及び/又はアクリルアミドなどのオレフィン系モノマーから構成される熱可塑性プラスチックの分散粒子を含む。このようなフィラー含有ポリオールは既知であり、市販されている。それらの製造は、例えば、ドイツ国特許第111 394号公報、米国特許第3 304 273号明細書、米国特許第3 383 351号明細書、米国特許第3 523 093号明細書、ドイツ国特許第1 152 536公報、ドイツ国特許第1 152 537号公報、国際公開第2008/055952号公報及び国際公開第2009/128279号公報に記載されている。本発明によるイソシアネート反応性基を有するポリマー化合物(b)として、酸成分とアルコール成分との重縮合によって得られる少なくとも1種のポリエステルオールを用いることがさらに可能であり、ここで、酸成分は、マロン酸及び/又はその誘導体であり、及び、アルコール成分は4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアルコールである。その製造は、例えば、国際公開第2019/149583号公報に記載されている。
【0028】
本発明の特に好ましい態様において、成分(b)はポリエーテルオールを含んでおり、及び、より好ましくはポリエステルオールを含まない。
【0029】
一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物(d)の触媒効果は、さらなるポリウレタン触媒の使用を減少させることを可能にする。さらなる触媒(c)が使用される場合、全ての慣用のポリウレタン触媒が使用され得る。使用される場合は、触媒(c)は、好ましくは、取り込み可能なアミン触媒を含み、特に好ましくは、取り込み可能なアミン触媒から構成されるものである。触媒(c)は、一般式W-Kw-NH-C(O)-CH -Qで表される化合物(d)の定義の下に既に含まれているいかなる化合物も含んでいない。
【0030】
製造のために使用可能な代表的な触媒としては、例えば、アミジン類、例えば2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-メチル-、N-エチル-及びN-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)ウレア、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-アザビシクロ[3.3.0]オクタン、及び、好ましくは、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及び、アルカノールアミン化合物、例えば
トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチル-及びN-エチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンが挙げられる。また、有機金属化合物、好ましくは有機スズ化合物、例えば、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、酢酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)(tin(II)octoate)、スズ(II)エチルへキソエート(tin(II)ethylhexoate)及びラウリン酸スズ(II)、及び、有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテート、及びまた、ビスマスカルボキシレート、例えば、ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエート、又はこれらの混合物も挙げられる。有機金属化合物は、単独で、又は好ましくは強塩基性アミンと組み合わせて、使用され得る。成分(b)がエステルである場合、専らアミン触媒を使用することが好ましい。
【0031】
組み込み可能なアミン触媒は、少なくとも1個、好ましくは1~8個、及び特に好ましくは1~2個のイソシアネート反応性基、例えば、1級アミン基、2級アミン基、ヒドロキシル基、アミド基又はウレア基、好ましくは、1級アミン基、2級アミン基、ヒドロキシル基を有する。組み込み可能なアミン触媒は、特に、自動車内装に使用される低放出ポリウレタンの製造に、主に使用される。このような触媒は公知であり、例えば、欧州特許第1888664号公報に記載されている。これらは、イソシアネート反応性基(複数可)に加えて、好ましくは、1つ以上の3級アミノ基を含む化合物からなる。組み込み可能な触媒の3級アミノ基の少なくとも1つが、少なくとも2つの脂肪族炭化水素基を有し、好ましくは基あたり1~10個の炭素原子を有し、より好ましくは基あたり1~6個の炭素原子の炭化水素を有することが好ましい。三級アミノ基が、メチル基及びエチル基及びさらなる有機基から選択される互いに独立した2つの基を有することが特に好ましい。使用され得る組み込み可能な触媒の例は、ビス(ジメチルアミノプロピル)ウレア、ビス(N,N-ジメチルアミノエトキシエチル)カルバメート、ジメチルアミノプロピルウレア、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノプロピルエーテル)、N,N,N-トリメチル-N-ヒドロキシエチルビス(アミノエチルエーテル)、ジエチルエタノールアミン、ビス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)アミン、 1-(3-アミノプロピル)ピロリジン、ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピル-N,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、ジメチル-2-(2-アミノエトキシエタノール)、(1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン-2-オール)、N.N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-ヒドロキシエチルアミン、N,N,N-トリメチル-N-(3-アミノプロピル)-ビス(アミノエチルエーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、及び、3-ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン又はそれらの混合物である。
【0032】
触媒(c)が使用される場合、これらは、例えば、成分(b)の総質量に基づき、触媒/触媒の組み合わせとして、0.001質量%~5質量%、特に0.05質量%~2質量%の濃度で使用され得る。
【0033】
式W-Kw-NH-C(O)-CH-Qで表される化合物(d)として使用されるものは、以下の化合物である。Wは、置換されていてもよく、及び、式中、窒素原子を介して-Kw-に結合している環状アミンを表す。W-は、好ましくは、窒素原子を介して-Kw-に結合しているピロリジン基を表す。ピロリジン基の水素原子は、置換されていてもよいが、好ましくは、ピロリジン基は無置換である。-Kw-は、好ましくは、1~20個、特に好ましくは1~10個、より好ましくは2~5個、特に3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖、好ましくは直鎖の炭化水素基を表す。式中、N、C、O及びHは、化学元素の窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)及び水素(H)の原子を表す。Qは、シアン化物(CN)又は一般式-C(O)-Rの電子吸引性基を表し、Rは、-NH、-NH-R-NR、OR又はRからなる群から選択される基であり、R、R、R、R及びRは、独立して、置換されていてもよい脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族炭化水素からなる群より選ばれる。好ましい態様において、Rは、-CH、-OCH、-C、-OC、-C、-OC、-C2l+1、-OC2l+1、-O-C2lOH、-O-(CO)H、-O-(CO)H、-O-(CO)H、-NHCH、-NH-C2l+1、-NH-(CO)mH、-NH-(CO)H、-NH-C2l-NH、-NH-C2l-OH、-NH-(CO)-CNH、-NH-(CO)-CNH、-NH-(CO)-CNH、-NH-NH-C2l+1、-NH-NH-C2lOH、-NH-NH-C2lNH、-NH-NH-(CO)H、-NH-NH-(CO)-CNH、-NH-NH-(CO)H、-NH-NH-(CO)-CNH、-NH 、式中、lは1~20、好ましくは1~10の整数を表し、及び、mは1~50、好ましくは1~25の整数を表し、及び、特に好ましくは-NH-NH又は-NH-Kw-W、式中、-Kw-及び-Wは上記の通りであり、この場合Rは、NH-Rを表し、及び、Rは、置換された、脂肪族炭化水素Kw-Wを表す。使用される化合物(d)は、特に、一般式W-Kw-NH-C(O)-CH-C(O)-NH-Kw-Wで表される化合物であり、式中、-Kw-及び-Wは、より好ましくはそれぞれ同一である。
【0034】
特に好ましい化合物(d)は、以下の通りである:
【化1】
及び、

【化2】
であり、特に、式(I)で表される化合物である。
【0035】
化合物(d)は、好ましくは、成分(b)の質量に基づき、0.001質量%~5質量%、特に0.05質量%~2質量%の量で使用される。
【0036】
本発明によるポリウレタンがポリウレタンフォームの形態となる場合、本発明による反応混合物は、さらに発泡剤(e)を含む。ポリウレタンの製造のために知られている任意の発泡剤が、使用され得る。これらは、化学的及び/又は物理的な発泡剤から構成され得る。このような発泡剤は、例えば、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「ポリウレタン」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第3.4.5章に記載されている。「化学発泡剤」は、イソシアネートとの反応によりガス状生成物を形成する化合物を意味すると理解されるものである。このような発泡剤の例は、水又はカルボン酸がある。「物理的発泡剤」とは、ポリウレタン製造の投入材料中に溶解又は乳化され、そして、ポリウレタン形成の条件下で気化する化合物を意味すると理解されるものである。その例としては、炭化水素、ハロゲン化炭化水素及び他の化合物、例えば、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロヘキサン、クロロフルオロ炭化水素、及びエーテル、エステル、ケトン、アセタール及び/又は液体二酸化炭素がある。発泡剤は、任意の所望の量で使用され得る。発泡剤は、好ましくは、得られるポリウレタンフォームが10~850g/L、特に好ましくは20~800g/L、及び、特に25~500g/Lの密度を有するような量において使用される。水を含む発泡剤を使用することが、特に好ましい。
【0037】
使用可能な鎖延長剤及び架橋剤(f)は、少なくとも2個のイソシアネート反応性基を有し、及び、分子量が400g/mol以下の化合物を包含し、ここで、イソシアネート反応性水素原子を2個有する分子は、鎖延長剤と称され、イソシアネート反応性水素を2個より多く有する分子は、架橋剤と称されるものである。ただし、鎖延長剤又は架橋剤を省くことも可能である。しかし、鎖延長剤、架橋剤、又は任意でそれらの混合物の添加は、機械的特性、例えば硬度を変化させるのに有利であることが証明され得る。
【0038】
鎖延長剤及び/又は架橋剤が使用される場合、これらは、成分(b)~(f)の総質量に基づき、それぞれの場合に、通常0.5~60質量%、好ましくは1~40質量%、及び、特に好ましくは1.5~20質量%の量で使用される。
【0039】
鎖延長剤及び/又は架橋剤(f)が使用される場合、ポリウレタンの製造に良く知られる鎖延長剤及び/又は架橋剤が使用され得る。これらは、好ましくは、イソシアネート反応性官能基を有する低分子量化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、グリコール及びジアミンである。さらに考えられる低分子量鎖延長剤及び/又は架橋剤は、例えば、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第3.2章及び第3.3.2章に列挙されている。
【0040】
助剤及び/又は添加剤(g)も、使用され得る。ここで、ポリウレタンの製造のために知られている全ての助剤及び添加剤物質が、使用され得る。例えば、表面活性物質、発泡安定剤、細胞調整剤、離型剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、酸化防止剤、加水分解安定剤、防カビ剤、静菌剤などが挙げられる。このような物質は公知であり、例えば 「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第3.4.4章及び第3.4.6章~第3.4.11章に記載されている。
【0041】
特に、化合物(d)と酸化防止剤の組み合わせは、アルデヒド類のような有機物質の放出をさらに低減することにつながる。酸化防止剤の例としては、フェノール系物質、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ベンゼンプロパノール酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分枝アルキルエステル、アミン系酸化防止剤、例えばN,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、チオジナジスト、例えばジラウリル5-チオジプロピオネート、フォスファイト及びホスホナイト、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、ベンゾフラノン及びインドリノン、他の酸化防止剤、例えばO-、N-及びS-ベンジル化合物、トリアジン化合物、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、置換及び非置換安息香酸のエステル類、ニッケル化合物及びβ10-チオジプロピオン酸のエステル、又はこれらの2以上の酸化防止剤の混合物のようなものである。このような酸化防止剤は、例えば国際公開第2017125291号公報に記載されており、及び、例えば、Irganox 1076、Irganox 245、Irganox 2000、Irganox E201(ビタミンE)、Irganox 5057又はIrgafos 38という商品名で市販されている。
【0042】
一般に、本発明によるポリウレタンの製造は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、触媒(c)、化合物(d)及び、使用される場合には、発泡剤(e)及び鎖延長剤(f)及び/又は架橋剤(g)を、ポリイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)、(c)、(d)及び任意に(e)、(f)及び(g)の反応性水素原子の合計との等量比が、0.75~1.5:1、好ましくは0.80~1.25:1となる量で、これらを反応させることからなる。発泡プラスチックが、少なくとも部分的にイソシアヌレート基を含む場合、ポリイソシアネート(a)のNCO基と。成分(b)、(c)、(d)及び任意に(e)、(f)及び(g)の反応性水素原子の合計との比率は、1.5~20:1、好ましくは1.5~8:1が典型的に用いられる。1:1の比率は、イソシアネートインデックスが100に相当する。
【0043】
本発明によるポリウレタンを製造するための特定の出発物質(a)~(g)は、製造される本発明のポリウレタンが熱可塑性ポリウレタン、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム又はインテグラルフォームである場合で、それぞれのケースで定量的及び定性的にわずかな程度に相違する。したがって、例えば、固体ポリウレタンの製造は、発泡剤を使用せず、そして、熱可塑性ポリウレタンの製造は、主に厳密に2官能性の出発物質を使用する。さらに例として、少なくとも2つの反応性水素原子を有する高分子量の化合物の官能価及び鎖長によって、本発明のポリウレタンの弾性及び硬度を変化させることが可能である。このような変更は、当業者に公知である。
【0044】
固体ポリウレタンを製造するための反応物は、例えば、欧州特許第0989146号公報又は欧州特許第1460094号公報に、軟質フォームを製造するための反応物は、例えば、国際特許出願第EP2005/010124号及び欧州特許第1529792号公報に、半硬質フォームを製造するための反応物は、例えば、「Kunststoffhandbuch、第7巻、Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版(1993年)、第5.4章に、硬質フォームを製造するための反応物は、国際特許出願第EP2005/010955号に、及び、インテグラルフォームを製造するための反応物は、例えば、欧州特許第364854号公報、米国特許第5506275号明細書又は欧州特許第897402号公報に記載されている。化合物(d)は、次に、それぞれの場合に、これらの文献に記載された反応物に添加される。
【0045】
本発明は、本発明のプロセスだけでなく、本発明のプロセスによって得られ得るポリウレタンも提供する。本発明によるポリウレタンは、好ましくは、密閉された空間において、例えば、パイプや冷蔵庫の断熱材のような住宅建築における断熱材として、家具の構造において、例えば、装飾要素又はシートクッションとして、マットレスとして、及び、乗り物の内装において、例えば、自動車の内装、例えば、ハンドル、ダッシュボード、ドアトリム、カーペットフォームバッキング、音響フォーム、例えばヘッドライナー、及びまたヘッドレスト又はギアノブとして用いられる。本発明によるポリウレタンにおいて、特にホルムアルデヒドの放出が、添加剤を含まない対照製品と比較してだけでなく、アルデヒド反応のための先行技術の添加剤と比較しても顕著に減少している。本発明によるポリウレタンは、さらに、VDA278及びVDA277による揮発性有機化合物(VOC)を非常に少量しか放出しない。最後に、本発明によるポリウレタンは、卓越した老化挙動及び耐熱性を示す。
【実施例
【0046】
以下に、実施例を参照しながら本発明を説明する。
【0047】
本発明化合物A1の製造:
【化3】
マロン酸ジメチル12.6g及びN-(アミノプロピル)ピロリジン25.1gを、ガラスフラスコ内で150℃にて6時間加熱した。この温度で慎重に真空状態にかけ、そして、10mbarで1時間かけて揮発成分(出発物質(N-(アミノプロピル)ピロリジンは82℃、27mbarで沸点に達する)及び生成したメタノール)を留去した。透明な赤色液体を得た。マロン酸ジメチルの完全な変換を、NMR分光法によって確認した。室温に冷却した後、生成物をさらに精製することなく使用した。
【0048】
比較物質V1の製造:
【化4】
マロン酸ジメチル48.49g及び3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン93.75gを、ガラスフラスコ中で120℃にて6時間加熱した。この温度で慎重に真空状態にかけ、そして、12mbarで1時間かけて揮発成分を留去した。透明な橙色液体を得た。マロン酸ジメチルの完全な変換を、NMR分光法によって確認した。室温まで冷却した後、生成物をさらに精製することなく使用した。
【0049】
ポリウレタン材料は、以下のように製造した:
出発原料:
ポリオール1:平均OH数が27mgKOH/g、平均官能価が2.5、及びポリエーテルの総質量に基づくプロピレンオキシド含有量が78質量%を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくグリセロール開始型ポリエーテルポリオール。
ポリオール2:平均OH数が35mgKOH/g、平均官能価が2.7、及びポリエーテルの総質量に基づくプロピレンオキシド含有量が85質量%を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくグリセロール開始型ポリエーテルポリオール。
ポリオール3:平均OH数が42mgKOH/g、平均官能価が2.7、及びポリエーテルの総質量に基づくプロピレンオキシド含有量が25質量%を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくグリセロール開始型ポリエーテルポリオール。
ポリオール4:平均OH数が55mgKOH/gを有する、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びモノエチレングリコールからなるポリエステルポリオール。
TEOA:トリエタノールアミン
イソプール SU-12021:ISL-Chemie社製の黒色カラーペースト
乳化剤:マレイン酸-オレフィンコポリマーのハーフエステル
Jeffcat(登録商標)ZF10:ハンツマン社製の触媒
Iso1:NCO含有量が31.5質量%、及び平均官能価が2.7を有する、重合性ジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)。
Iso2:平均OH数が250mgKOH/g、官能価が2、ポリエーテルの総質量に基づくプロピレンオキシド含有量が83質量%、NCO含有量が23質量%、及び平均官能価が2を有する、メチレンジフェニルジイソシアネート、ジプロピレングリコール及びポリエーテルポリオールのプレポリマー。
Iso3:NCO含有量が29.5質量%、及び平均官能価が2.2を有する、メチレンジフェニルジイソシアネート及び対応するカルボジイミドの混合物。
【0050】
以下の化合物(d)を使用した:
【化5】
【0051】
混合物Aは、以下の成分を混合することにより製造した:
ポリオール1 50.0質量部
ポリオール2 34.3質量部
ポリオール3 2.0質量部
ポリオール4 6.0質量部
TEOA 0.5質量部
乳化剤 0.5質量部
イソプールSU-12021 0.5質量部
水 2.9質量部
ジェフキャット(登録商標)ZF10 0.3質量部
化合物V1、V2、A1又はA2(各場合において、触媒活性を有する3級窒素に基づき、等モル量) 0.5~0.8質量部
【0052】
イソシアネート成分は、以下の成分を混合することで製造した:
Iso1 30.0質量部
Iso2 35.0質量部
Iso3 35.0質量部
【0053】
化合物V1、V2、A1又はA2を含む混合物A及びイソシアネート成分を、イソシアネートインデックス100でそれぞれ混合し、そして、密閉された型に加えて、平均密度120g/Lの成形体を得た。
【0054】
ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを、ASTM D-5116-06に類似した手順により測定した。チャンバーサイズは、4.7リットルであった。使用したポリウレタンサンプルは、フォームの内部から110mm x 100mm x 25mmの大きさの断片を使用した。測定中の測定チャンバー内の温度は、65℃、相対湿度は50%であった。空気の入れ替え率は、3.0リットル/時であった。ポリウレタンからの揮発性アルデヒドを含む排気流を、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンでコーティングしたシリカを含むカートリッジに120分かけて通過させた。その後、DNPHカートリッジをアセトニトリルと水の混合液で溶出した。溶出液中のホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの濃度を、HPLCで測定した。この設定により、ホルムアルデヒドの放出量の検出限界は、≦11μg/mであり、アセトアルデヒドの放出量は、≦6μg/mである。
【0055】
表1:各添加剤V1~V2及びA1~A2を所定の濃度で添加した場合の半硬質フォームのチャンバー内測定ホルムアルデヒド値(各場合とも上記混合物Aの質量部で表される)。
【0056】
【表1】
【0057】
表1は、各場合における混合物Aにおける本発明の成分(d)の使用が、比較化合物V1及びV2と比較して、ホルムアルデヒド放出量を非常に顕著に低減することを示している。
【国際調査報告】