IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテグリス・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】有機スズ化合物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/22 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
C07F7/22 M
C07F7/22 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545230
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 US2022014178
(87)【国際公開番号】W WO2022165088
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,849
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エルメルト, デビット エム.
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン, トーマス エム.
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VQ39
4H049VR43
4H049VR53
4H049VS21
4H049VS76
4H049VU24
4H049VV02
4H049VV05
4H049VV16
4H049VW02
4H049VW39
(57)【要約】
アルキル置換基およびアルキルアミノ置換基、またはアルキル置換基およびアルコキシ置換基を有する一定の有機スズ化合物を調製する容易な方法を提供する。本方法は、例えば一定のマイクロエレクトロニクス装置の製造に用いられる極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術における、高純度酸化スズ膜の堆積における前駆体として特に有益な高純度形態の有機スズ化合物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法であって、
方法が、式(A)の化合物
を式L-Rの化合物と接触させることを含み、Lは脱離基であり、Mはナトリウム、リチウム、またはカリウムから選択される、方法。
【請求項2】
Lがハロゲン化物、または置換もしくは非置換の芳香族スルホネートもしくはアルキルスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Lがブロモ、ヨード、またはクロロである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
それぞれのRおよびそれぞれのRが独立してC~Cアルキル基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
が置換または非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
が環状C~C基である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
が不飽和C~C基である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不飽和C~C基がビニル基またはアセチレニル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が1つまたは複数のハロゲン基またはエーテル基で更に置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式Aの化合物がジハロスタンナンと式(B)の化合物
との反応により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ジハロスタンナンがSnClである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法であって、
方法が、式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択される]
を式(RSi-N(R)(R)の化合物[式中、RはC~Cアルキル基から選択される]と接触させることを含む、方法。
【請求項13】
が、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ハロ、トリハロメチル、フェニル、フェノキシ、およびC~Cシクロアルキルから選択される基で1回または複数回置換されたフェニル基から選択される置換フェニル基である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
置換フェニル基が2,6-ジ-t-ブチルフェン-1-イル基または2,4,6-トリメチルフェニル基である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(RSi-N(R)(R)の化合物が(CHSi-N(CHである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
式(II)の化合物が、ジハロスタンナンを式M-ORの化合物[式中、Mはナトリウム、リチウム、またはカリウムから選択される]と反応させて、式(C)の化合物
[式中、nは1以上である]
を得ることにより調製される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
式(C)の化合物が式X-Rの化合物と更に反応して、式(II)の化合物が得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]。
【請求項19】
がイソプロピルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が2,6-ジ-t-ブチルフェン-1-イルまたは2,4,6-テトラメチルフェニルである、請求項18に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機スズ化学の分野に属する。特に、本発明は、一定の有機スズ化合物を調製する容易な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の有機スズ化合物が、一定のマイクロエレクトロニクス装置の製造に用いられる極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術のような用途における高純度酸化スズ膜の堆積に有益であることが示されてきた。
【0003】
アルキルアミノ基およびアルキル基の組み合わせを有する有機スズ化合物が特に関心を引いている。従って、高純度酸化スズ膜の堆積に用いられるそのような有機スズ化合物を高純度形態で製造する改善した方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
アルキル置換基およびアルキルアミノ置換基、またはアルキル置換基およびアルコキシ置換基を有する一定の有機スズ化合物を調製する容易な方法を提供する。1つの実施形態では、上記方法は、高純度形態の有機スズ前駆体化合物、例えばトリス(ジメチルアミド)イソプロピルスズ(CAS No.1913978-89-8)を提供する。従って、上記方法の生成物は、例えばマイクロエレクトロニクス装置の製造に用いられる極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術における、高純度酸化スズ膜の堆積において特に有益である。
【0005】
本発明は、式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法に関する。上記方法は、式(A)の化合物
[式中、Mはナトリウム、リチウム、またはカリウムから選択される]
を式L-Rの化合物[式中、Lは脱離基である]と接触させることを含む。
【0006】
本発明は、更に、式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法に関する。上記方法は、式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択される]
を式(RSi-N(R)(R)の化合物と接触させることを含む。
【0007】
本発明は、更に、式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうでないと示さない限り複数の指示物を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、用語「または」は、通常、内容が明らかにそうでないと示さない限り「および/または」を含む意味で用いられる。
【0009】
用語「約」は、通常、示された値と同等と考えられる(例えば、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を言う。多くの場合、用語「約」は、有効数字単位まで四捨五入した数を含んでよい。
【0010】
終点を用いて表される数値範囲は、その範囲内に含まれる全ての数字を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0011】
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法を提供する。上記方法は、式(A)の化合物
を式L-Rの化合物と組み合わせることを含み、Lは脱離基、例えばハロゲン化物、または置換もしくは非置換の芳香族スルホネートもしくはアルキルスルホネートであり、Mはナトリウム、リチウム、またはカリウムから選択される。例えば、式(A)の化合物は、式L-Rの化合物[式中、Lがブロモ、ヨード、またはクロロである]と接触させることができる。具体例としては、Lがヨードである。
【0012】
上記方法では、それぞれのRおよびそれぞれのRは独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、またはsec-ペンチル基を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基から選択することができる。1つの特定の実施形態では、それぞれのRおよびそれぞれのRは独立してC~Cアルキル基、例えばメチル基、エチル基、またはプロピル基から選択される。更に、上記方法では、RはC~Cアルキル基から選択され、これらは置換または非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることができる。例えば、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、またはsec-ペンチル基を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基であってよい。更に、Rは環状C~C基、例えばシクロプロピル基であることができる。また、Rは不飽和C~C基、例えばビニル基またはアセチレニル基であってよい。これらのRのうちのいずれもが、例えば1つまたは複数のハロゲン基またはエーテル基で更に置換されていてもよい。例えば、Rは式-(CH(CHを有するフッ素化アルキル基であってよく、ここでmは1~5かつm+nは1~5であり、bは1~3かつa+b=3であり、モノフッ素置換C~Cアルキル基、例えば-CHF基または-CHCHF基、および全フッ素置換C~C基、例えば-CF基またはCFCF基を含む。あるいは、Rはアルキルエーテル基であってよく、ここでアルキル部分はC~Cアルキル基である。1つの特定の実施形態では、それぞれのRおよびそれぞれのRはメチルであり、Rはメチル、エチル、またはイソプロピルである。また、Mは好ましくはリチウムであってよい。式(A)の化合物は、式(I)の化合物の合成における有益な中間体である。
【0013】
式Aの化合物
は、ジハロスタンナン、例えばSnClと式(B)の化合物
との反応により調製することができる。
【0014】
この点においては、SnClの量に基づいて少なくとも約3モル当量の式(B)の化合物が用いられ、式(A)の化合物が形成されるが、必要であれば更なる当量が用いられてもよい。例えば、少なくとも約3.25、3.5、または3.75を含む少なくとも約3.1モル当量から、約4当量の式(B)の化合物が用いられてよい。式(B)の化合物の例は、非求核強塩基、例えばリチウムジエチルアミド、リチウムメチルエチルアミド、リチウムジエチルアミド等を含む。反応は、通常、約-15℃から適度に上昇した温度、例えば約60℃の範囲の温度で行うことができるが、例えば反応スケールまたは反応時間に応じて他の温度が用いられてもよい。例えば、反応温度は、約-10℃~約80℃、および約-5℃~約70℃を含む、約-30℃から約90℃の間であることができる。いくつかの実施形態では、反応温度が0℃を上回ることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、アルカン、例えばヘキサン、および芳香族溶媒、例えばトルエンを含む、非プロトン性溶媒、ならびに例えば、ジメトキシエタンおよびテトラヒドロフランを含む、極性非プロトン性溶媒を含む。他の好適な溶媒が当業者により知られているかまたは決定されうる。更に、この方法の工程の1つ以上は、好ましくは、材料および/または生成物の光への暴露を最小限に抑える条件下で行うことができる(例えば、黄褐色ガラス製品の使用)。
【0015】
従って、式(A)の化合物が形成されるとそのまま、式L-Rの化合物(RおよびLは上述したとおりである)と反応することができ、式(I)の化合物が得られる。1つの実施形態では、式(I)の化合物は、特定の構造
を有する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、式(I)の化合物
[式中、それぞれのRおよびRは上述したとおりである]
を調製する方法を提供する。この態様では、上記方法は、式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択される]
を式(RSi-N(R)(R)の化合物[式中、RはC~Cアルキル基から選択される]と組み合わせることを含む。例えば、式(II)の化合物は、式(RSi-N(R)(R)の化合物[式中、Rはメチル基である]と接触させることができる。1つの実施形態では、式(II)の化合物について、Rはメチル、エチル、またはイソプロピルであり、それぞれのRはメチルである。
【0017】
この態様では、式(I)の化合物を形成するために、式(II)の化合物に比べて少なくとも約3モル当量の式(RSi-N(R)(R)の化合物が用いられるが、必要であれば更なる当量が用いられてもよい。1つの具体例では、式(RSi-N(R)(R)の化合物は(CHSiN(CHである。
【0018】
置換フェニル基の例は、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルスルホニル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ハロ、トリハロメチル、フェニル、フェノキシ、C~Cシクロアルキル等から選択される基で1回または複数回置換されたフェニル基を含む。置換フェニル基の具体例は、2,6-ジ-t-ブチルフェン-1-イル、2,4,6-トリメチルフェニル等を含む。
【0019】
更なる態様では、本発明は、驚くべきことに式(I)の化合物の合成の中間体として有益であることが見出された、上述した式(II)の化合物に関する。
【0020】
式(II)の中間体は、ジハロスタンナン、例えばSnClをモル過剰の式M-ORの化合物[式中、MおよびRは上述したとおりである]と反応させて、式(C)の化合物
[式中、nは1以上である]
を得ることにより調製することができる。次いで、この化合物を式X-Rの化合物と反応させて、式(II)の化合物を得ることができる。
【0021】
上記の態様では、nは式(C)のR基の相対サイズに応じて1以上であり、一定の場合、上記に示す繰り返し単位の重合レベルに応じて非常に大きな数であっても不確定の数であってもよい。従って、示されるように、式(C)の化合物は、ダイマー、トリマー、オリゴマー、および不確定の長さからなる非常に長い直線状ポリマーさえも形成する傾向がある。例えば、式(C)の化合物は、構造
を有する。
更に、式(C)の化合物の形成は、常に、例えばダイマー、トリマー等の種類の混合群を生じさせる。式(C)の中間化合物は、SnClと式M-ORの化合物[式中、MおよびRは上述したとおりである]とを反応させることにより調製することができる。モル過剰、例えば約2モル当量の式M-ORの化合物をいくつかの場合に用いることができるが、必要であれば更なる当量が用いられてもよい。例えば、少なくとも約2.25、2.5、または2.75を含む少なくとも約2.1モル当量から、約3当量の式(B)の化合物が用いられてよい。第1の態様については、反応は、約-15℃から適度に上昇した温度、例えば約60℃の範囲の温度で行うことができるが、他の温度が用いられてもよい。例えば、反応温度は、約-10℃~約80℃、および約-5℃~約70℃を含む、約-30℃から約90℃の間であることができる。いくつかの実施形態では、反応温度が0℃を上回ることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、アルカン、例えばヘキサン、および芳香族溶媒、例えばトルエンを含む、非プロトン性溶媒、ならびに例えば、ジメトキシエタンおよびテトラヒドロフランを含む、極性非プロトン性溶媒を含む。他の好適な溶媒が当業者により知られているかまたは決定されうる。更に、この方法の工程の1つ以上は、好ましくは、材料および/または生成物の光への暴露を最小限に抑える条件下で行うことができる(例えば、黄褐色ガラス製品の使用)。
【0022】
別の態様では、本発明は、以下のスキームに示されるような、上記の式(I)の化合物が、例えば室温で式R-OHのアルコールを用いた処理により式(II)の化合物に変換されうる方法を提供する。
式(I)のスズアミドを式(II)のスズアルコキシドに変換することにより、スズアミドを形成する反応により生じるいずれの不純物もまた変換される。例えば、式(I)の化合物が式(Ia)
を有する不純物を含むことがあり、これは特に蒸留により式(I)の化合物から分離するのが非常に困難でありうる。
これらの不純物は、混合物が上記に示されるように対応するアルコキシドに変換される場合、式(II)の化合物から除去するのがはるかに容易なことがある。更に、Rがかさ高く、例えばイソプロピル基である場合、再結晶による精製もまた可能なことがある。精製されると、次いで、式(II)の化合物は上述したように式(RSi-N(R)(R)の化合物と反応することができ、それによりかなりの量の式(Ia)の化合物を低減しつつ式(I)の化合物を再形成し、例えば90%、95%、97%または99%を超えるこの不純物が除去される。従って、この態様は、式(I)の化合物を精製する方法でありうる。
【0023】
上記に示したように、そのようにして生成された式(I)の化合物は、マイクロエレクトロニクス装置の表面上の酸化スズ膜の堆積における前駆体として有益である、
【0024】
本発明は、その一定の実施形態の以下の実施例により更に説明することができるが、これらの実施例は単に説明の目的のために含まれるものであり、別の方法で明確に示されない限り本発明の範囲を制限することを意図されないことが理解される。
【実施例
【0025】
実施例1
塩化スズ(II)(SnCl)(1.0g、5.21mmol)およびリチウムジメチルアミド(LiN(CH)(0.836g、16.4mmol)を、磁気撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルに投入し、テトラヒドロフラン(THF)(10mL)で希釈した。得られた桃色混合物を55℃で60時間加熱した。得られた灰色混合物を0.2μmシリンジフィルターでろ過し、暗赤色溶液を得た。2-ヨードプロパン(0.885g、5.21mmol)を得られた暗赤色溶液に添加し、反応物を60℃で撹拌しながら1時間加熱し、それにより色がより淡いオレンジ色に変化した。得られたそのままの反応混合物のH-NMRおよび119Sn-NMRは、iPrSn(N(CHの形成と一致する(119Sn-NMR、-64.18ppm)。
【0026】
実施例2(RSn(NR)(NR)からのRSn(ORの調製)
iPrSn(N(CH2)3をバイアルに入れ(1.0g、3.4mmol)、ヘキサン(3.5mL)を添加した。メタノール(0.40g、12.5mmol)を室温で混合物に添加し、反応がすぐに生じたことを泡立ちにより確認した。5分後、減圧下で溶媒を除去し、白色固形物を得た(0.76g、2.98mmol、87.7%収率)。1H-NMR (400 MHz, C6D6, 298K) δ 3.81 (s, 9H); 2.38 (m, 1H); 1.48 (d, 6H) ppm.
【0027】
実施例3(RSn(ORからのRSn(NR)(R)の調製)
iPrSn(OCH(2.5g、9.8mmol)を、撹拌子を備えた40mlバイアルに投入し、10mLのトルエンで希釈した。別のバイアルにおいて(CHSiN(CH(3.44g、29.4mmol)を10mLのトルエンに溶解させた。(CHSiN(CH溶液をiPrSn(OCHバイアルに添加し、得られた白色混合物を70℃で撹拌しながら12時間加熱した。1時間後、反応物は透明溶液となった。
【0028】
翌朝、反応物はわずかに濁った無色溶液となった。反応物を室温に冷却し、減圧下で揮発物を除去し、わずかに濁った無色液体を得た(質量:2.44g、粗収率:84.7%)。
【0029】
回収物を、撹拌子を備えた50mL丸底フラスコに入れた。短経路の蒸留ヘッドを温度計および10mL回収フラスコに取り付けた。装置を動的真空下に置いて800Torrのベースラインとし、容器を60℃に加熱した。容器温度が58℃に達したときに800Torrの圧力で回収フラスコ(ヘッド温度:38℃)に無色液体が観察された。凝縮器に液体が観察されなくなったら、加熱マントルを切った。回収0.96g、31.4%収率。生成物のそのままのサンプルについて収集したH-NMRおよび119Sn-NMRはiPrSn(N(CHが合成されたことを裏付けるものであり、以前に収集したNMRデータと一致する。
【0030】
実施例4
反応容器において、SnClは2モル当量のLi-OCHと反応することができた。次いで、得られた化合物[Sn(OCHを単離し、2-ヨードプロパンと反応させ、トリス(メトキシ)イソプロピルスタンナンを得ることができた。次いで、得られたトリス(メトキシ)イソプロピルスタンナンを3モル当量の(CHSi-N(CHと反応させ、イソプロピル(トリス)ジメチルアミノスズを得ることができた。
【0031】
実施例5-MeSn(NMeの合成
LiSn(NMe(2.0g、7.75mmol)を、磁気撹拌子を備えた40mLバイアルに入れ、テトラヒドロフラン(10mL)に溶解させた。別のバイアルにおいて、ヨードメタン(1.31g、9.29mmol)をTHF(2mL)で希釈し、その溶液を撹拌しながらLiSn(NMe2)3溶液に添加し、それにより反応物は濁り、触ると温かくなった。得られた混合物を室温で2日間撹拌した。反応混合物のろ過したアリコートについてH-NMRおよび119Sn-NMRを記録した。
1H-NMR (400 MHz, THF, 298K): δ 0.29 (s, 3H); 2.61 (s, 18H) ppm. 119Sn {1H} -NMR (149 MHz, THF, 298K): δ -15.04 ppm.
【0032】
実施例6-EtSn(NMeの合成
LiSn(NMe(2.0g、7.75mmol)を、磁気撹拌子を備えた40mLバイアルに入れ、テトラヒドロフラン(15mL)に溶解させた。別のバイアルにおいて、ヨードエタン(1.44g、9.29mmol)をTHF(2mL)で希釈し、その溶液を-35℃に冷却した。冷却したらヨードエタン溶液を撹拌しながらLiSn(NMe溶液に添加し、それにより反応物は触ると温かくなった。得られた混合物を室温で20分間撹拌し、反応混合物のろ過したアリコートについてH-NMRおよび119Sn-NMRを記録した。NMRによればEtSn(NMeが存在していた。
1H-NMR (400 MHz, THF, 298K): δ 0.89 (t, 3H); 1.16 (q, 2H); 2.66 (s, 18H) ppm. 119Sn {1H} -NMR (149 MHz, THF, 298K): δ -39.13 ppm.
【0033】
実施例7-CFCHSn(OtBu)の合成
CFCHSn(NMe(2g、5.98mmol)を、磁気撹拌子を備えた黄褐色40mLバイアルに入れ、ヘキサン(3mL)で希釈した。別のバイアルにおいて、tBuOH(1.32g、17.9mmol)をヘキサン(5mL)に溶解させ、撹拌しながら2分間にわたってSn-アミド溶液にゆっくりと滴下した。添加を通してわずかな泡立ちが観察された。添加が完了したら、得られた溶液を室温で10分間撹拌し、次いで、減圧下で乾燥させ、淡黄褐色溶液を得た。C溶液について記録したH-NMR、13C-NMR、19F-NMR、および119Sn-NMRは、CFCHSn(OtBu)の形成を裏付けるものである。NMRによる生成物純度>90%。
1H-NMR (400 MHz, C6D6, 298K): δ 1.31 (s, 27H); 1.76 (q, 2H) ppm. 13C-NMR (100 MHz, C6D6, 298K): 28.49 (q), 33.55, 33.69, 74.41 ppm. 119Sn {1H} -NMR (149 MHz, C6D6, 298K): δ -228.35 (q) ppm. 19F-NMR (376 MHz, C6D6, 298K); δ -51.95 (t) ppm.
【0034】
本発明は、一定のその実施形態を特に参照して詳細に記載されてきたが、本発明の意図内および範囲内でバリエーションおよび変更が生じうることが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法であって、
方法が、式(A)の化合物
を式L-Rの化合物と接触させることを含み、Lは脱離基であり、Mはナトリウム、リチウム、またはカリウムから選択される、方法。
【請求項2】
Lがハロゲン化物、または置換もしくは非置換の芳香族スルホネートもしくはアルキルスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Lがブロモ、ヨード、またはクロロである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
の化合物がジハロスタンナンと式(B)の化合物
との反応により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物
[式中、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、それぞれのRは独立してC~Cアルキル基から選択され、Rは水素またはC~Cアルキル基から選択される]
を調製する方法であって、
方法が、式(II)の化合物
[式中、それぞれのRは独立して直鎖または分岐鎖のC~Cアルキル基、フェニル基、および置換フェニル基から選択される]
を式(RSi-N(R)(R)の化合物[式中、RはC~Cアルキル基から選択される]と接触させることを含む、方法。
【国際調査報告】