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特表2024-504759薬物送達デバイスのための電子システムおよび薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのための電子システムおよび薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240125BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61M5/315 550J
A61M5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545763
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022051672
(87)【国際公開番号】W WO2022161971
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21315011.3
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・チャールズ・ガゼレイ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アシュレイ・メイソン
(72)【発明者】
【氏名】アイダン・マイケル・オヘア
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】モーリス・トポレック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066QQ32
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
薬物送達デバイス(1)のための電子システム(1000)が提供され、電子システムは、用量動作、たとえば薬物送達デバイスによって送達予定の薬物の用量を設定するための用量設定動作、および/または設定された用量を送達するための用量送達動作を実行するために使用者によって操作されるように構成された少なくとも1つのユーザインターフェース部材(1600)と、電子システムの動作を制御するように構成された電子制御ユニット(1100)とを含み、電子システムは、第1の状態および第2の状態を有し、電子システムは、第1の状態に比べて第2の状態で大きい電力消費を有し、ここで、ユーザインターフェース部材は、用量動作のために使用者によってタッチされるように配置された外部動作面(1620)を含み、ユーザインターフェース部材は、使用者近接検出ユニット(1300、1670)を含み、使用者近接検出ユニットは、使用者が外部動作面に近づいたとき、または外部動作面にタッチしたとき、電気信号を生成するように構成され、使用者近接検出ユニットは、可動部材(1670)を含み、可動部材は、使用者が外部動作面に到達する前に、使用者によって外部動作面に対して初期位置から離れて動作位置の方へ動かされるように配置され、使用者近接検出ユニットは、電気信号送信ユニット(1300)をさらに含み、使用者近接検出ユニットは、可動部材が初期位置から離れる方へ動かされたとき、たとえば可動部材が動作位置にあるとき、または初期位置から離れて動作位置に向かう動きの間、電気信号を提供するように構成され、電子システムは、電子制御ユニットが電気信号に応答して電子システムを第1の状態から第2の状態に切り換えるように構成される。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)のための電子システム(1000)であって:
用量動作、たとえば薬物送達デバイスによって送達予定の薬物の用量を設定するための用量設定動作、および/または設定された用量を送達するための用量送達動作を実行するために使用者によって操作されるように構成された少なくとも1つのユーザインターフェース部材(1600)と、
該電子システムの動作を制御するように構成された電子制御ユニット(1100)とを含み、該電子システムは、第1の状態および第2の状態を有し、該電子システムは、第1の状態に比べて第2の状態で大きい電力消費を有し、ここで、
ユーザインターフェース部材は、用量動作のために使用者によってタッチされるように配置された外部動作面(1620)を含み、
ユーザインターフェース部材は、使用者近接検出ユニット(1300、1670)を含み、該使用者近接検出ユニットは、使用者が外部動作面に近づいたとき、または外部動作面にタッチしたとき、電気信号を生成するように構成され、
使用者近接検出ユニットは、可動部材(1670)を含み、該可動部材は、使用者が外部動作面に到達する前に、使用者によって外部動作面に対して初期位置から離れて動作位置の方へ動かされるように配置され、
使用者近接検出ユニットは、電気信号送信ユニット(1300)をさらに含み、使用者近接検出ユニットは、可動部材が初期位置から離れる方へ動かされたとき、たとえば可動部材が動作位置にあるとき、または初期位置から離れて動作位置に向かう動きの間、電気信号を提供するように構成され、
該電子システムは、電子制御ユニットが電気信号に応答して該電子システムを第1の状態から第2の状態に切り換えるように構成される、前記電子システム。
【請求項2】
ユーザインターフェース部材(1600)は、ユーザインターフェース部材本体(1605)を含み、該ユーザインターフェース部材本体は、外部動作面(1620)を画成し、該外部動作面は、少なくとも1つの開口部の境界を定め、可動部材の一部分は、開口部を通って突出する、
請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
外部動作面(1620)は、複数の別個の開口部の境界を定め、可動部材の一部分は、各開口部を通って突出し、該一部分は、ユーザインターフェース部材本体の内部に設けられた可動部材の共通の本体を起点とする、
請求項2に記載の電子システム。
【請求項4】
可動部材(1670)の初期位置で、可動部材の使用者接触領域(1675)は、外部動作面(1620)に対して高くなっており、可動部材の動作位置で、使用者接触領域は、外部動作面に対して同一平面未満である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項5】
電気信号は、信号送信ユニット(1300)に対する可動部材(1670)の動きに応答して生成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項6】
信号送信ユニット(1300)は、電気スイッチ(1310)を含み、該スイッチは、初期位置から動作位置への動きの間にトリガされるように配置される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項7】
可動部材(1670)は、動作位置にあるとき、部材付勢機構(1680)によって初期位置の方へ付勢される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項8】
外部動作面(1620)は、用量動作として用量送達動作を実行するために使用者によってタッチされる送達面である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項9】
可動部材(1670)が動作位置にあるとき、たとえば用量動作中に、使用者によって可動部材にかけられる力は、信号送信ユニット(1300)および/または電子制御ユニット(1100)を迂回する力伝達経路を介して、ユーザインターフェース部材本体(1605)によって分解される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項10】
ユーザインターフェース部材(1600)は、外部動作面(1620)から機構部材へ力を伝達することができるように、薬物送達デバイスの用量設定および駆動機構の機構部材に接続され、または接続されるように構成される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項11】
電子システム(1000)は、シャトル部材(1730)を含み、該シャトル部材は、外部動作面(1620)に対して可動であり、電子システムは、シャトル部材付勢システム(1740)を含み、該シャトル部材付勢システムは、シャトル部材を外部動作面および/または可動部材(1670)から離れる方へ付勢するように構成される、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項12】
電子システム(1000)は、ユーザインターフェース部材(1600)が、用量動作中の機構部材の動きを駆動するために、用量動作インターフェースを介して機構部材に動作可能に接続可能になるように構成され、電子システムは、用量動作インターフェースを確立するために、外部動作面(1620)を機構部材に対する第1の位置から機構部材に対する第2の位置へ変位させなければならないように構成され、シャトル部材付勢システム(1740)は、第1の位置から第2の位置への動きの間に付勢されるように構成される、
請求項10または11に記載の電子システム。
【請求項13】
用量動作は用量送達動作であり、機構部材は第2の部材であり、用量設定および駆動機構は、第1の部材を含み、該第1の部材および第2の部材は、用量設定および駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるために、たとえばクラッチ連結の状態を切り換えることによって、互いに対して可動になるように構成され、電子システムは、用量設定および駆動機構が用量設定構成から用量送達構成に切り換えられる前に信号が生成されるように構成される、
請求項10~12のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項14】
電子システム(1000)は、薬物送達デバイスユニット(1)のための付属モジュールとして構成される、
請求項1~13のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項15】
外部動作面(1620)の平面視または上面視で、外部動作面に含まれる面積は、可動部材(1670)に含まれる面積より大きく、可動部材に含まれる面積と外部動作面の面積との間の比は、0.4以下である、
請求項1~14のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項16】
可動部材(1670)が動作位置にあるとき、可動部材は、初期位置から離れる方へ依然としてさらに動かすことができる、
請求項1~15のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項17】
信号送信ユニット(1300)は、外部動作面から離れる方および/または外部動作面に向かう方へ動かないように、外部動作面(1620)に対して固定される、
請求項1~16のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項18】
可動部材(1670)は、使用者が外部動作面にタッチすることができるようになるまでに可動部材を動かさなければならないように、外部動作面(1620)に対して構成および配置される、
請求項1~17のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の電子システム(1000)と、薬物を有するリザーバ(14)とを含む薬物送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイスのための電子システムに関する。本開示はさらに、薬物送達デバイス、好ましくは電子システムを含む薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界において、ならびに使用者または患者に、ますます普及してきている。しかし、特にデバイスが自立型になるように設計された場合、すなわちデバイスの動作のための電力を提供するために必要な外部電源に接続するためのコネクタがない場合、システムの確実な操作性を維持しながら、電源の資源の管理をデバイスに一体化することが特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、新規な、好適には改善された、電子システムまたは薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の主題によって実現される。有利な実施形態および改良形態は、従属請求項に準拠する。本開示は、本明細書に主張する内容に制限されるものではなく、特許請求の範囲に準拠しうる説明にのみ主題を含むことができることに留意されたい。
【0005】
本開示の一態様は、薬物送達デバイスのための電子システムに関する。本開示の別の態様は、薬物送達デバイス、好ましくは電子システムを含む薬物送達デバイスに関する。したがって、薬物送達デバイス、またはその、もしくはそのためのユニットに関連して開示する構成は、電子システムにも当てはまり、逆も同様である。
【0006】
一実施形態では、電子システムは、少なくとも1つのユーザインターフェース部材を含む。ユーザインターフェース部材は、使用者、たとえば患者などの薬物送達デバイスの使用者によって、操作、たとえばタッチおよび/または移動されるように配置または構成することができる。ユーザインターフェース部材は、用量動作、たとえば薬物送達デバイスによって送達予定の薬物の用量を設定するための用量設定動作、および/または設定された用量、好ましくは用量設定動作中に事前に設定された用量を送達するための用量送達動作を実行するために提供することができる。用量動作は、用量送達動作または用量設定動作にかかわらず、薬物送達デバイスによって送達予定の用量に関係する動作とすることができる。用量動作は、用量設定動作に加えて、ユーザインターフェース部材を操作することによって、好適にはまだ送達されていない、事前に設定された用量を増大または減少させる用量調整動作を含むことができる。用量動作を実行することは、動作全体にわたって、使用者がユーザインターフェース部材に、特にその外部動作面(以下参照)に、連続して接触することを必要とすることができる。用量動作は、薬物送達デバイスのハウジング、たとえば電子システムを接続することができる薬物送達デバイスユニットのハウジング、または薬物送達デバイスのハウジングに対するユーザインターフェース部材の動きを伴うことができる。
【0007】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材は、外部動作面を含む。外部動作面は、ユーザインターフェース部材の外面とすることができる。外部動作面は、特に用量動作のために、使用者によってタッチされるように配置および/または構成することができる。用量動作を実行するために、たとえば動作を開始するために、および/または用量動作全体にわたって外部動作面との接触を維持して用量動作を完了するために、表面にタッチすることが必要である。外部動作面は、用量設定動作のための設定面および/または用量送達動作のための送達面とすることができる。設定面および送達面は、異なる方向を向くことができる。設定面は、径方向を向くことができる。送達面は、軸方向、たとえば近位方向を向くことができる。設定面は、ユーザインターフェース部材の軸、たとえばユーザインターフェース部材が用量設定動作のために回転可能な回転軸の周りを円周方向に延びることができる。送達面は、軸に対して斜めまたは垂直に配置することができる。設定面はまた、用量調整動作にも使用することができる。
【0008】
一実施形態では、電子システムは、電子制御ユニットを含む。電子制御ユニットは、電子システムの動作を制御するように構成することができる。電子制御ユニットは、たとえばマイクロコントローラもしくはASICなどの電子プロセッサとすることができ、またはそのような電子プロセッサを含むことができる。電子システムは、たとえばシステムが休止状態または遊休状態にある第1の状態と、たとえばシステムが動作状態にある第2の状態とを有することができる。電子システムは、第1の状態に比べて第2の状態で大きい電力消費を有することができる。第1の状態で、電子システムの1つまたはそれ以上の電気または電子ユニットは、ほとんど電力を消費しないように、または電力を消費しないように、スリープモードとすることができ、または電源を遮断することができる。たとえば、第2の状態では、運動感知ユニットを活動状態にすることができ、すなわち動作させることができ、または動作しており、第1の状態では、このユニットは非活動状態であり、すなわち動作させることができず、または動作していない。運動感知ユニットについては、以下でより詳細に説明する。別法または追加として、通信ユニットは、第1の状態で非活動状態とすることができ、第2の状態で活動状態とすることができる。通信ユニットについては、以下でより詳細に説明する。
【0009】
一実施形態では、電子システム、好ましくはユーザインターフェース部材は、使用者近接検出ユニットを含む。使用者近接検出ユニットは、電子制御ユニットに動作可能に接続することができる。使用者近接検出ユニットは、使用者がユーザインターフェース部材の外部動作面に近づいたとき、または外部動作面にタッチしたとき、電気信号、たとえば使用信号を生成するように構成することができる。電気信号は、用量動作を開始するところであることを示すことができ、またはそのように示すと、たとえば電子制御ユニットが見なすことができる。
【0010】
一実施形態では、電子システムは、可動部材を含む。可動部材は、ユーザインターフェース部材の一部とすることができる。可動部材は、使用者近接検出ユニットの一部とすることができる。ユーザインターフェース部材の外部動作面は、ユーザインターフェース部材本体によって形成することができる。可動部材は、たとえば少なくとも初期位置で、ユーザインターフェース部材の外部動作面から突出することができ、および/または可動部材の接触領域をユーザインターフェース部材の外部動作面より高くすることができる。可動部材は、使用者がたとえば親指で外部動作面にタッチすることができるようになるまで、可動部材を動かさなければならないように、外部動作面に対して構成および配置することができる。
【0011】
一実施形態では、使用者が外部動作面に到達する前に、可動部材を外部動作面に対して初期位置から離れて動作位置の方へ、好ましくは動作位置へ動かさなければならない。
【0012】
一実施形態では、電子システムは、電気信号送信ユニットを含む。信号送信ユニットは、電子制御ユニットに動作可能に接続することができる。信号送信ユニットは、使用者近接検出ユニットの一部とすることができる。可動部材は、たとえば機械的に信号送信ユニットと協働して、電気信号の生成をトリガするように設計することができる。信号送信ユニットは、電気信号、たとえば使用者近接検出ユニットが生成するように構成された電気信号を提供するように構成することができ、この信号は、使用者が外部動作面に近づいたこと、または外部動作面にタッチしたことを示す。
【0013】
一実施形態では、信号送信ユニットは、たとえば外部動作面から離れる方および/または外部動作面に向かう方へ動かないように、外部動作面に対して固定される。信号送信ユニットは、外部動作面に対して回転不能および軸方向に固定することができる。
【0014】
一実施形態では、使用者近接検出ユニットは、可動部材が初期位置から離れる方へ、たとえば動作位置の方へ動かされたとき、好ましくはそのときのみ、信号を提供するように構成される。使用者近接検出ユニットは、初期位置から離れる可動部材の動きに応答して、信号を提供するように構成することができる。使用者近接検出ユニットは、可動部材が動作位置にあるとき、好ましくはそのときのみ、または初期位置から離れて動作位置に向かう動きの間に、信号を提供するように構成することができる。可動部材および信号送信ユニットは、可動部材が信号送信ユニットと協働して信号送信ユニットをトリガし、初期位置から離れる動きに応答して信号を提供するように配置することができる。可動部材は、外部動作面および/または信号送信ユニットに対して可動とすることができる。可動部材が動作面に対して動作位置の方へまたは動作位置内へ動かされない限り、信号送信ユニットによって信号が生成されることはない。
【0015】
一実施形態では、可動部材は、動作位置では初期位置ほど外部動作面から突出しない。すなわち、初期位置から動作位置への方向は、外部動作面から離れて可動部材の外部に配置される可動部材の端部から見て、外部動作面に向かう方向とすることができる。運動方向は、たとえば特に外部動作面が送達面である場合、遠位方向とすることができる。
【0016】
一実施形態では、電子制御ユニットは、たとえば対応するコマンドまたは信号を発行することによって、電子システムを第1の状態から第2の状態に切り換えるように構成される。電子制御ユニットは、少なくとも1つの電気信号に応答して、好ましくは初期位置から離れる可動部材の動きに応答して生成される信号に直接応答して、電子システムを第1の状態から第2の状態に切り換えるように構成することができる。使用者近接検出ユニットによって提供される信号は、電子制御ユニットによって処理することができ、電子制御ユニットは、この信号に応答して、電子システムを電力消費が少ない第1の状態から電力消費がより高い第2の状態に切り換えることができる。使用者近接検出ユニットによって提供される信号は、用量動作、たとえば用量送達動作を示すことができる。電子制御ユニットは、たとえば対応するコマンドまたは信号を発行することによって、信号の受信、たとえば1つのみの信号パルスの受信、または電気特性、たとえば電圧もしくは電流の1つのみの変化に直接および/または即時応答して、システムを第2の状態に切り換えるように構成することができる。このようにして、後続の信号の複雑な信号パターン、または第2の状態への切換えを開始するための特性の変化を回避することができる。信号は、電子制御ユニットによって検出される電圧または電流の変化とすることができる。
【0017】
使用者が外部動作面にタッチすることができるようになるまで使用者が動かさなければならない物体または障害物として可動部材を提供することは、使用者が表面に近づいたかどうか、または表面にタッチしたかどうかに関するインジケータとして、外部動作面に対する可動部材の位置を使用することができるという利点がある。このようにして、用量動作の準備中の非常に早い段階で、たとえば用量動作が開始される直前、および/または用量動作を実行するために外部動作面にタッチする前、もしくは用量動作を実行するために外部動作面にタッチするとき、第1の状態から第2の状態への電子システムの切換えをトリガする電気信号を提供することができる。したがって、動作が実際に開始される前に、実行予定の動作を示す信号を生じさせることができる。用量動作を開始することは、外部動作面にタッチしている間に、ユーザインターフェース部材をハウジングに対して、または薬物送達デバイスもしくは薬物送達デバイスユニットの他の構成要素に対して、たとえば遠位軸方向に動かすことを必要とすることができる。信号は、好ましくは、使用者が用量動作のためにユーザインターフェース部材を動かす前に、信号送信ユニットによって生成される。他方では、可動部材の動きを必要とすることで、たとえば動きなく動作することができる非接触スイッチに比べて、意図しない電力消費のリスクが低減される。
【0018】
一実施形態では、電子制御ユニットは、初期位置から動作位置への可動部材の単方向運動に応答して、たとえば遠位運動または外部動作面に向かう可動部材の使用者接触領域の動きに応答して、電子システムを第2の状態に切り換えるように構成される。
【0019】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材は、ユーザインターフェース部材本体を含む。ユーザインターフェース部材本体は、外部動作面を画成または形成することができる。可動部材の一部分をユーザインターフェース部材本体内に配置することができ、好ましくは可動に保持することができる。可動部材のこの部分は、使用者が外部動作面にタッチする前に初期位置から動作位置の方へ変位される部分とすることができる。ユーザインターフェース部材(本体)の内部には、信号送信ユニットおよび/または電子制御ユニットを配置することができ、たとえば本体に対して軸方向および回転不能に固定することができる。ユーザインターフェース部材本体の内部は、好ましくは少なくとも電子システムが薬物送達デバイス内で動作状態にあるとき、外部から封止された封止区画を含むことができる。
【0020】
一実施形態では、外部動作面は、少なくとも1つの開口部の範囲を横方向または円周方向に定める。言い換えれば、外部動作面は、少なくとも1つの開口部によって遮ることができる。可動部材の一部分が、たとえばユーザインターフェース部材(本体)の内部から外部へ、開口部を通って突出することができる。可動部材は、ユーザインターフェース部材本体の内部の要素に、特に外部動作面の下に設けることができる信号送信ユニットに、動作可能に接続可能とすることができる。可動部材は、使用者が可動部材をユーザインターフェース部材本体に対して動かすことなどによって、外部から作動可能とすることができる。可動部材のうち開口部を通って突出する部分は、可動部材をユーザインターフェース部材本体に対して動かすために使用者がタッチすることができる使用者接触領域または接触面を画成することができる。使用者接触面は、外部動作面と同じ方向、たとえば近位を向くことができる。可動部材の初期位置および可動部材の動作位置は、ユーザインターフェース部材本体に対する使用者接触領域の位置、たとえば軸方向にずれた位置とすることができる。可動部材は、ユーザインターフェース部材本体に対して軸方向に案内することができる。すなわち、可動部材は、ユーザインターフェース部材本体に対して軸方向にのみ動かすことができ、回転することはできない。
【0021】
一実施形態では、外部動作面は、複数の別個の開口部の境界を定める。ユーザインターフェース部材本体または外部動作面によって、これらの開口部の範囲を円周方向に円周全体にわたって定めることができる。すなわちこれらの開口部は連結されない。開口部は、外部動作面にわたって分散させることができる。可動部材の一部分は、外部動作面内の複数の開口部のうちの各開口部から突出することができる。これにより、様々な接触領域を外部動作面にわたって使用者と可動部材との間で分散させることが有効になる。
【0022】
一実施形態では、可動部材のそれぞれの部分は、可動部材の本体を起点とすることができる。複数の部分の場合、本体は共通の本体とすることができる。本体は、ユーザインターフェース部材本体の内部に配置することができる。その本体から、それぞれの部分がそれぞれの開口部を通って外部動作面の方へ外部動作面を越えて延びることができる。本体は、ユーザインターフェース部材本体の内部に可動に保持することができる。
【0023】
一実施形態では、初期位置で外部動作面から突出するまたはその面から盛り上がっている可動部材の突出部分、およびユーザインターフェース部材本体の内部にある可動部材の内部部分に突出部分を連結するために可動部材が通る開口部は、特に可動部材が初期位置から動作位置へ動かされたとき、突出部分全体を開口部内に受け入れることができるように調整される。これにより、可動部材が動作位置にあるときに外部動作面と同一平面もしくは同一平面未満になること、および/または可動部材が動作位置にあるときに外部動作面への使用者の接触を容易にすることが容易になる。
【0024】
一実施形態では、可動部材は、使用者が用量動作のために外部動作面にタッチしようとするとき、特に開口部を通って突出する部分を動かすことによって、使用者が可動部材を初期位置から動作位置の方へ動かすように配置される。可動部材の動作位置において、使用者は、外部動作面、好ましくは可動部材にタッチすることができる。可動部材の初期位置において、使用者は、好ましくは可動部材にタッチするとき、外部動作面から離れることができる。
【0025】
一実施形態では、動作位置は、初期位置から見て、たとえば外部動作面を平面視で、外部動作面に向かう方向に初期位置からずれる。動作位置で、可動部材は、初期位置ほど外部動作面から突出せず、または外部動作面に対して同一平面もしくは同一平面未満とすることができる。動作位置は、初期位置に対して軸方向に、たとえば遠位にずらすことができる。
【0026】
一実施形態では、用量動作中、可動部材は、好ましくは用量動作全体にわたって、動作位置に存在することができる。使用者は、用量動作中、可動部材を外部動作面に対して動作位置で維持することができる。
【0027】
一実施形態では、可動部材の初期位置で、可動部材の使用者接触領域、好適には開口部を通って突出する部分の表面、たとえば外部動作面から離れた表面は、外部動作面に対して、および/または外部動作面もしくはユーザインターフェース部材本体の外部輪郭によって画成される包絡面に対して、高くなっている。したがって、使用者が外部動作面にタッチする前に使用者に接触するために、可動部材によって高くなった接触領域を提供することができる。包絡面は、開口部を覆うことができ、開口部が設けられていない領域内の外部動作面によって形成することができる。開口部の領域では、包絡面は、外部動作面の輪郭を継続することができる。可動部材の動作位置では、可動部材の使用者接触領域、好ましくはすべての使用者接触領域を、好適には初期位置から離れる方向に、外部動作面および/または包絡面に対して凹ませることができる。言い換えれば、使用者接触領域は、動作位置で外部動作面に対して同一平面未満とすることができる。使用者接触領域は、初期位置における使用者接触領域と外部動作面との間の距離より大きい距離だけ、外部動作面の下に配置することができ、または初期位置からずらすことができる。使用者接触領域の凹ませた配置は、使用者の指が柔軟に部分的に開口部内へ延びることによって実現することができる。可動部材が動作位置で外部動作面に対して凹んでいる場合、用量動作を実行するためにユーザインターフェース部材にかけなければならない用量動作力の大部分を、ユーザインターフェース部材本体を通って案内することができ、システムの電子ユニットに機械的に接触するために提供することができる可動部材を介さないことが有利である。これにより、力が可動部材を介して使用者からユニットへ伝達されることによって、電子制御ユニットまたはシステム内の他の電子もしくは電気ユニットもしくは構成要素を損傷するリスクが低減される。
【0028】
一実施形態では、電気信号は、信号送信ユニットに対する可動部材の動きに応答して生成される。可動部材は、信号送信ユニットに対して非信号送信位置から信号送信位置へ動かすことができ、信号送信位置で信号生成がトリガされる。信号送信位置で、可動部材は、外部動作面に対して動作位置に存在することができ、または動作位置からたとえば初期位置の方へずらすことができる。
【0029】
一実施形態では、システムは、外部動作面に対する初期位置から動作位置への可動部材の動きの間に電気信号が生成されるように構成される。したがって、信号送信位置および非信号送信位置は、それぞれ動作位置および初期位置と同じ位置とすることができる。この場合、信号送信ユニットは、外部動作面に対して固定して取り付けることができる。
【0030】
一実施形態では、電気信号は、好ましくは可動部材が外部動作面に対して動作位置にあるときのみ、信号送信ユニットに対する外部動作面および可動部材の動きに応答して生成される。相対運動は、信号送信ユニットに向かう動き、たとえば遠位方向の動きとすることができる。この場合、信号の生成をトリガするために、まず可動部材が初期位置から動作位置へ動かされなければならず、その後、外部動作面および可動部材が信号送信ユニットの方へ変位される。この場合、外部動作面は、信号送信ユニットに対して可動とすることができる。
【0031】
一実施形態では、信号送信ユニットは、可動部材が信号送信ユニットと協働して電気信号の生成をトリガするように構成される。信号送信ユニットと協働するために、可動部材を初期位置から離して、好ましくは動作位置へ動かさなければならない。すなわち、電気信号の生成をトリガするために、可動部材は動作位置に存在しなければならない。
【0032】
一実施形態では、信号送信ユニットは、電気スイッチを含む。スイッチは、たとえば可動部材が非信号送信位置から信号送信位置へ動かされたとき、可動部材によってトリガされるように配置することができる。スイッチは、トリガされると、電気信号の生成を引き起こすことができる。
【0033】
一実施形態では、可動部材は、可動部材が動作位置にあるとき、部材付勢機構または付勢部材によって初期位置の方へ付勢される。したがって、初期位置は、外部動作面に対する可動部材の標準位置とすることができる。部材付勢機構は、たとえば使用者によって提供される力によって、初期位置から動作位置への可動部材の動きの間に付勢することができ、または負荷をかけることができる。
【0034】
一実施形態では、初期位置から離れる可動部材の動きおよび/または動作位置に向かう可動部材の動きに逆らって作用する部材付勢機構が提供される。部材付勢機構は、前段落のものと同じ機構とすることができる。部材付勢機構は、初期位置が可動部材の標準位置であること、および/または可動部材が初期位置で外部動作面から突出することを確実にすることができる。可動部材を動作位置へ動かすには、付勢機構の付勢力に打ち勝たなければならない。
【0035】
一実施形態では、部材付勢機構は、ばね、たとえば圧縮ばねを含む。
【0036】
一実施形態では、用量動作は用量送達動作である。
【0037】
一実施形態では、外部動作面は、用量送達動作を実行するために使用者によってタッチされるように配置された送達面である。送達面は、ユーザインターフェース部材本体の近位を向いている表面とすることができる。表面に印加される用量送達力は、用量送達動作を実行するために必要とされる力、たとえば使用者からユーザインターフェース部材を介して、用量設定および駆動機構の1つまたはそれ以上の機構部材を介して、用量設定および駆動機構のピストンロッドへ伝達される力とすることができる。この力は、投薬動作を駆動してリザーバから液体を投薬するために提供することができる。
【0038】
一実施形態では、用量動作を実行するために、用量動作力、たとえば用量送達動作のための遠位に向けられた力が、使用者によってユーザインターフェース部材にかけられなければならない。ユーザインターフェース部材は、用量動作中、用量動作力のうち外部動作面に作用する部分が、動作力のうち可動部材に作用する部分より大きくなるように設計することができる。使用者は、用量動作中、外部動作面および可動部材の両方に接触することができる。用量動作力は、初期位置から動作位置への動きと同じ方向に向けることができる。たとえば、用量動作が実行されるとき、および/または可動部材の動作位置にあるとき、指、たとえば使用者の親指と外部動作面との間の接触面積を、指と可動部材との間の接触面積より大きくすることによって、可動部材より外部動作面を優先することを支援することができる。
【0039】
一実施形態では、可動部材が動作位置にあるとき、可動部材は、初期位置から離れる方へ、たとえば部材付勢機構の力に逆らって、さらに動かすことができる。言い換えれば、電子システムには、動作位置を画成するための端部止め具がなくてもよい。端部止め具は、初期位置および動作位置からさらに離れる可動部材の動きを制限するはずである。端部止め具がなく、動作位置で可動部材を初期位置から離れる方へ依然としてさらに動かすことが可能であるため、外部動作面ではなく可動部材を介してシステムへ伝達される力は、好適には小さい。これは、外部動作面を介した力の伝達を優先し、可動部材を介した過度の力の伝達を防止することを助けることができ、またはそれを担うことができる。
【0040】
一実施形態では、動作位置で、可動部材は、部材付勢機構の付勢に逆らって、たとえば初期位置から離れる方へ、依然として可動である。したがって、動作位置で、この機構によって提供される付勢力は、可動部材を介してシステムへ伝達される力である。使用者は、動作位置で付勢力に反応することができる。動作位置の付勢力は、1N以下とすることができる。電子システムは、付勢力が、用量動作力の残余部分(RP)より小さくなるように、すなわち可動部材が動作位置へ動かされた後に用量動作を実行するために使用者が依然としてユーザインターフェース部材にかけなければならない力より小さくなるように構成することができる。この力の残余部分は、駆動力(DF)、すなわち用量動作を駆動するために必要とされる力、ならびに/またはクラッチ切換え力(CSF)、すなわちクラッチの状態を切り換えるために、および/もしくは用量設定および駆動機構を設定構成から送達構成に切り換えるためにかけなければならない力の寄与を含むことができる。付勢力は、RP/5、RP/6、RP/7、RP/8、RP/9、RP/10、DF/5、DF/6、DF/7、DF/8、DF/9、DF/10、CSF/5、CSF/6、CSF/7、CSF/8、CSF/9、CSF/10の値のうちの1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる。
【0041】
一実施形態では、外部動作面の平面視または上面視で、外部動作面に含まれる(好ましくは、可動部材には含まれない)面積は、可動部材、たとえばその使用者接触領域に含まれる面積より大きい。たとえば、可動部材に含まれる面積と、外部動作面の面積との間の比は、0.4、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01、0.005、0.004の値のうちのいずれか1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる。別法または追加として、この比は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.007、0.01の値のうちのいずれか1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる。
【0042】
一実施形態では、外部動作面の平面視または上面視で、可動部材の突出部分および外部動作面は、初期位置および動作位置で重複しない。
【0043】
一実施形態では、外部動作面は、1つまたはそれ以上の開口部のみによって遮られた連続する表面である。
【0044】
一実施形態では、可動部材が動作位置にあるとき、使用者によって可動部材にかけられる力は、特に信号送信ユニットおよび/または電子制御ユニットを迂回する力伝達経路を介して、ユーザインターフェース部材本体によって分解される。言い換えれば、可動部材が動作位置にあるとき、可動部材と、ユーザインターフェース部材本体、または本体に堅く、たとえば軸方向および/もしくは回転不能に固定された構成要素との間に、当接が存在することができる。たとえば用量動作のために、可動部材または動作面にかけられる力は、好適には、たとえばこの場合はユーザインターフェース部材本体によって分解または反応されるため、電子ユニット、信号送信ユニット、および/またはこれらのユニットのためのキャリア、たとえば導体キャリアへ案内されない。
【0045】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材または電子システムは、薬物送達デバイスの用量設定および駆動機構の機構部材、たとえば用量および/もしくは注射ボタン、または駆動部材、たとえば駆動スリーブに接続されており、またはそのような機構部材に接続されるように構成され、たとえば回転不能および/もしくは軸方向にロックされるように構成される。ユーザインターフェース部材または電子システムは、力、特に外部動作面に作用する力、たとえば用量動作力を、外部動作面から機構部材へ伝達することができるように、機構部材に動作可能に接続することができる。この力は、遠位に向けられた力とすることができ、かつ/または用量動作は、用量送達動作とすることができる。電子システムまたはユーザインターフェース部材、たとえばインターフェース部材本体、またはインターフェース部材本体にたとえば堅くもしくは可動に接続された部材は、機構部材に接続するための接続機能を有することができる。
【0046】
一実施形態では、電子システムまたはユーザインターフェース部材は、シャトル部材を含む。シャトル部材は、外部動作面に対して可動とすることができる。シャトル部材は、ユーザインターフェース部材本体内に可動に保持することができる。シャトル部材は、ユーザインターフェース部材本体に対して軸方向に可動とすることができる。シャトル部材とユーザインターフェース部材本体との間の相対回転運動は防止することができる。シャトル部材は、シャトル部材とユーザインターフェース部材本体との間の(たとえば制限された)相対軸方向運動は可能であるが、相対回転運動は防止されるように、ユーザインターフェース部材本体にスプライン連結することができる。シャトル部材は、たとえばシャトル部材をユーザインターフェース部材本体から取り外すことができないように、ユーザインターフェース部材本体内で保持することができる。
【0047】
一実施形態では、電子システムは、シャトル部材付勢システムを含む。シャトル部材付勢システム、たとえば圧縮ばねは、シャトル部材を外部動作面および/または可動部材から離れる方へ付勢するように配置することができる。
【0048】
一実施形態では、電子システムは、導体キャリアなどのキャリア、たとえば回路基板を含む。電子制御ユニットおよび/または信号送信ユニットは、キャリア上に配置することができ、好ましくはキャリア上に取り付けることができる。キャリアは、ユーザインターフェース部材本体に、たとえば軸方向および/または回転不能に固定することができる。この場合、動作位置は、信号送信位置とすることができる。別法として、キャリアは、キャリアが常にシャトル部材とともに外部動作面に対して動くように、シャトル部材に固定することができる。
【0049】
一実施形態では、シャトル部材は、特に用量送達動作中、外部動作面から機構部材への力伝達経路内に配置される。外部動作面は、力をシャトル部材から機構部材へ伝達することができるようになるまで、シャトル部材に対して動かされなければならない。シャトル部材付勢システムは、用量動作のために機構部材が動かされる前に、または動かすことができるようになるまで、付勢されなければならない。
【0050】
一実施形態では、電子システムは、用量動作中の機構部材の動きを駆動するために、ユーザインターフェース部材が用量動作インターフェースを介して機構部材に動作可能に接続可能になるように構成される。電子システムは、用量動作インターフェースを確立するために、外部動作面を機構部材および/またはシャトル部材に対する第1の位置から機構部材および/またはシャトル部材に対する第2の位置へ変位させなければならないように構成することができる。第1の位置から第2の位置への方向は、軸方向、たとえば遠位方向、および/または初期位置から動作位置への可動部材の運動方向とすることができる。第2の位置では、たとえばインターフェース部材本体またはインターフェース部材本体に固定された構成要素がシャトル部材に軸方向に当接することによって、外部動作面とシャトル部材との間の力伝達経路内に当接を確立することができ、この力伝達経路は、シャトル部材を外部動作面またはユーザインターフェース部材本体へたとえば軸方向に連動する。シャトル部材付勢システムは、第1の位置から第2の位置への動きの間に付勢されるように構成することができる。シャトル部材は予圧することができ、外部動作面を第2の位置へ動かすためには、この予圧に打ち勝たなければならない。電子システムは、可動部材が外部動作面に対して動作位置にある場合にのみ、たとえばその位置でのみ可動部材が信号送信ユニットのスイッチをトリガすることができるため、信号が生成されるように構成することができる。この信号は、外部動作面が第2の位置の方へ動かされる前に、またはその後にのみ、生成することができる。信号は、ユーザインターフェース部材本体の外部動作面が第2の位置に到達する前に、または第2の位置に到達したときに生成することができる。機構部材が、たとえばシャトル部材を介して、ユーザインターフェース部材本体または外部動作面に連動されているとき、使用者が外部動作面を介して機構部材を動かすことによって、用量動作を実行することができる。シャトル部材付勢システムを有するシャトル部材を電子システムに一体化することで、用量動作のために機構部材が動作される前、またはピストンロッドが動く前に、すべての公差条件で信号が生成されることが確実になる。シャトル部材付勢システムによって、画成された予圧を提供することができ、したがって用量設定および駆動機構が用量送達構成に切り換えられる前に常に信号を生成することができることが確実になる。
【0051】
一実施形態では、機構部材は第2の部材である。用量設定および駆動機構は、第1の部材、たとえば数字スリーブまたはダイヤルスリーブを含むことができる。第1の部材および第2の部材は、用量設定および駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるために、クラッチ連結の状態をたとえば係合状態から係合解除状態にまたはその逆に切り換えることなどによって、互いに対して可動になるように構成することができる。係合されたクラッチ連結は、第1の部材を第2の部材に回転不能にロックすることができる。クラッチ連結が解放されると、第2の部材は、第1の部材に対して回転可能になることができる。電子システムは、たとえばユーザインターフェース部材を介して、用量設定および駆動機構が用量設定構成から用量送達構成に切り換えられる前に、信号が生成されるように構成することができる。これにより、用量送達動作中の行動を実行するのに十分なほど適時に電子システムがオンに切り換えられることが容易になる。電気信号を生成するために、たとえば部材付勢機構の付勢力に打ち勝つために、使用者がかけなければならない力は、好適には、用量設定および駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるためにユーザインターフェース部材または外部動作面にかける必要のある力、たとえばクラッチ切換え力より小さい。
【0052】
一実施形態では、可動部材は剛性を有する。この場合、可動部材が動作位置にあるときに可動部材をその初期位置の方へ付勢するために、別個の部材付勢システムを設けなければならない。
【0053】
一実施形態では、可動部材は弾性変形可能である。この場合、弾性回復力を使用して、可動部材が動作位置にあるときに可動部材をその初期位置の方へ付勢することができる。
【0054】
一実施形態では、可動部材は、ユーザインターフェース部材本体の内部を外部から封止するために、封止インターフェースを確立するように構成される。封止インターフェースを形成するために、ユーザインターフェース部材の2つの部材間に、たとえば外部動作面を画成する本体とさらなる部材との間に、可動部材の封止部分を保持することができ、たとえば締め付けることができる。封止部分を弾性または塑性変形させて、これらの部材のうちの一方または両方との封止係合を提供することができる。
【0055】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材本体は剛性を有する。
【0056】
一実施形態では、可動部材の本体は、ユーザインターフェース部材の内部に可動に保持される。たとえば剛性を有する本体に、ユーザインターフェース部材の内壁に封止係合するための封止部材を設けることができる。本体は、たとえばユーザインターフェース部材本体の内部を外部から封止することができる。
【0057】
一実施形態では、それぞれの封止は、防水性を有し、かつ/または汚れの侵入を防止する。
【0058】
一実施形態では、信号送信ユニットを介して信号が生成可能となるために必要とされうる初期位置から動作位置への外部動作面に対する可動部材の動きは、単方向である。このようにして、信号生成のための複雑な多方向の動きを回避することができる。
【0059】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材は、たとえばシステムまたは薬物送達デバイスのハウジングなどのハウジングに対して、第1の位置から第2の位置へ、たとえば軸方向に可動である。第1の位置は、たとえば用量設定動作および/または用量送達動作が開始される前に、ユーザインターフェース部材がハウジングに対して有する初期位置とすることができる。第2の位置は、たとえば用量送達動作のために、使用者の力、たとえば遠位に向けられた力がユーザインターフェース部材に印加され、ユーザインターフェース部材が第1の位置から離れる方へ動かされたときに、ユーザインターフェース部材が呈する位置とすることができる。第1の位置および第2の位置は、軸方向にずらすことができる。第1の位置から第2の位置への動きは、軸方向運動のみを伴うことができる。
【0060】
一実施形態では、電子システムまたは薬物送達デバイスは、用量設定および駆動機構を含む。第1の部材および/または第2の部材は、用量設定動作および/または用量送達動作中に、電子システムまたは薬物送達デバイスのハウジングに対して動くように構成することができる。第1の部材は、用量設定および/または駆動機構の用量部材またはダイヤル部材、たとえばダイヤルスリーブまたは数字スリーブとすることができ、用量を設定するように動かされる。第2の部材は、駆動部材、たとえば用量ノブおよび/または注射ボタンなど、用量設定および/もしくは駆動機構のピストンロッドまたはデバイスユーザインターフェース部材に係合された部材とすることができる。第1の部材および/または第2の部材は、ハウジング内に可動に連結または保持することができる。用量設定動作で、第1の機構部材および/または第2の機構部材をハウジングに対して軸方向に、たとえばハウジングの近位端から離れる方へ変位させることができる。用量設定動作中に第1の部材および/または第2の部材がハウジングに対して、たとえば軸方向に変位させられる距離は、設定された用量のサイズによって決定することができる。言い換えれば、薬物送達デバイスはダイヤル延長型とすることができ、すなわちデバイスは、用量設定動作中、設定された用量のサイズに比例する量で、その長さを増大させる。
【0061】
一実施形態では、用量設定動作および/または用量送達動作において、第1の部材は、第2の部材に対して動き、たとえば回転しおよび/または軸方向に動く。たとえば、第1の部材は、用量送達動作中、たとえば用量送達動作中にのみ、第2の部材に対して回転することができる。第1の部材および第2の部材はどちらも、用量送達動作中に軸方向に動くことができる。第1の部材は、用量設定動作および/または用量送達動作中に、第2の部材およびハウジングに対して回転することができる。第2の部材は、用量送達動作中に、たとえば送達クラッチによって、ハウジングに対して回転不能にロックすることができ、または回転可能に案内することができる。第1の部材および第2の部材は、用量設定動作中に、互いに対して回転不能にロックすることができる。それに応じて、第1の部材および第2の部材は、用量設定動作において、ハウジングに対して回転することができる。用量設定動作中、たとえば連結インターフェース、たとえば設定クラッチを介して、第1の部材および第2の部材を互いに連結することができる。連結インターフェースは、用量設定動作中に、第1の部材および第2の部材を互いに回転不能にロックすることができる。連結インターフェースが係合または確立されたとき、連結インターフェース機能の直接係合などによって、第1の部材および第2の部材を互いに回転不能にロックすることができる。第1の部材および第2の部材は、嵌合する連結インターフェース機能を含むことができる。用量送達動作中、たとえば第1の部材に対して第2の部材を軸方向に変位させることによって、連結インターフェースを解放することができる。したがって、用量送達中は、第2の部材をハウジングに対して回転不能にロックすることができ、用量送達中は、第1の部材がハウジングに対して回転することができる。用量設定および/または駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるとき、連結インターフェースを解放することができる。これは、ユーザインターフェース部材が第1の位置から第2の位置へ動かされるときに実現することができる。第1の位置で、この機構は用量設定構成とすることができる。第2の位置で、この機構は用量送達構成とすることができる。
【0062】
一実施形態では、第1の部材および第2の部材は、用量設定動作および用量送達動作のうちの一方の間のみ、互いに対して回転する。第1の部材および第2の部材のうちの一方、たとえば第1の部材は、両方の動作中にハウジングに対して回転することができる。第1の部材および第2の部材のうちの一方、たとえば第2の部材は、これらの動作のうちの一方の間のみ、たとえば用量設定中または用量送達中に、ハウジングに対して回転することができる。
【0063】
一実施形態では、用量設定動作は、ハウジング、たとえば薬物送達デバイスのハウジングに対して、用量設定方向へのユーザインターフェース部材の回転運動を伴う。すなわち、可動部材およびユーザインターフェース部材本体の両方が、用量設定中に回転することができる。
【0064】
一実施形態では、用量設定動作で用量を設定するために、ユーザインターフェース部材をハウジングに対して、たとえば用量設定方向に回転させなければならない。この回転は、単位設定増分角度の整数倍の回転とすることができる。単位設定増分は、薬物送達デバイスによって送達されるように設定することができる最小の用量とすることができる。単位設定増分角度は、たとえば可能な限り最小の用量を設定するために、ハウジングに対してユーザインターフェース部材を回転させなければならない角度とすることができる。
【0065】
一実施形態では、電子システムは、以下のユニットまたは構成要素のうちの少なくとも1つ、任意に選択された複数、またはすべてを含む:
- 電気運動感知ユニット。運動感知ユニットについては、以下でより詳細に説明する。
- 通信ユニット。通信ユニットは、電子システムと、別のデバイス、たとえば携帯型デバイス、たとえば携帯型もしくは非携帯型のコンピュータ、移動電話、またはタブレットなどの電子デバイスとの間に、通信インターフェースを確立するために提供することができる。通信ユニットは、無線ユニット、たとえばBluetoothユニットなどのRF通信ユニットとすることができる。通信ユニットは、用量データ、たとえば送達動作においてデバイスによって送達された薬物の量に関する情報を、電子システムから他のデバイスへ伝送するために提供することができる。
- メモリユニット。メモリユニットは、電子システムによって計算された用量情報に関する実行可能なプログラムコードおよび/またはデータ、好ましくは送達された1つまたはそれ以上の用量に関する用量データを記憶するために提供することができる。用量データは、運動感知ユニットを介して判定することができる。このデータは、たとえば通信ユニットを介して別のデバイスへ伝送するために、メモリユニットから回収可能とすることができる。
【0066】
一実施形態では、運動感知ユニットは、1つまたはそれ以上の電気運動信号を生成するように構成される。運動信号は、たとえば用量設定動作または用量送達動作中に、たとえば送達された用量のサイズなどの用量データを取得するために、第1の部材と第2の部材との間の相対運動を定量化するのに適している。第1の部材および/または第2の部材は、上記でさらに論じたように、電子システムおよび/または薬物送達デバイス、たとえば用量設定および/または駆動機構の部材とすることができる。相対運動は、相対回転運動とすることができる。たとえば、第1の部材は、用量送達中に、第2の部材に対して回転することができる。
【0067】
一実施形態では、電子システムは、運動感知ユニットが、たとえば電子制御ユニットによって、かつ/または信号送信位置への第1の部分の動きに応答して信号送信ユニットによって提供される信号に応答して、第1の状態から第2の状態に切り換えられるように構成される。第1の状態で、運動感知ユニットは、第2の部材に対する第1の部材の動きを感知するように動作しないようにすることができる。第2の状態で、運動感知ユニットは、動作可能にすることができる。第2の状態で、運動感知ユニットは、第1の状態より大きい電力消費を有することができる。運動感知ユニットの電力消費の増大は、第2の状態における電子システムの電力消費の増大に寄与し、またはそれを画成する。
【0068】
一実施形態では、運動感知ユニットは、用量送達動作中に、好ましくは用量送達動作中にのみ、動作するように構成される。運動感知ユニットは、用量送達動作、たとえば第2の部材に対する第1の部材の回転を監視するように構成することができる。したがって、運動信号から、第1の部材と第2の部材との間の相対位置に関する位置情報を集めることができる。別法または追加として、用量設定動作において2つの部材間の位置情報を集めることも可能である。しかし、用量送達動作中の用量送達に関する用量情報またはデータを計算するために、運動感知ユニットによって、用量送達動作中の動きを監視することが有利である。
【0069】
一実施形態では、電子制御ユニットまたは電子システムは、運動感知ユニットによって生成された運動信号を利用して、用量情報またはデータを計算するように構成される。前述のように、用量情報は、好ましくは、用量送達動作において送達された用量のサイズに関する情報である。
【0070】
一実施形態では、運動感知ユニットは、1つもしくはそれ以上のセンサおよび/または1つもしくはそれ以上のエミッタ、たとえば1つもしくはそれ以上の光電子放射センサもしくは検出器および/または1つもしくはそれ以上の光電子放射エミッタを含む。これらのセンサは、第2の部材に対する第1の部材の動きに応答して、運動信号を生成するように構成することができる。エミッタは、センサ信号を励起することができる。
【0071】
一実施形態では、用量設定動作中、たとえば設定可能な最小用量と設定可能な最大用量との間で、用量を設定することができる。用量は、好ましくは1単位投与量増分の整数倍に対応する数量で設定することができる。
【0072】
一実施形態では、たとえばハウジングに対するユーザインターフェース部材の第1の位置と第2の位置との間の離隔距離、たとえば軸方向の離隔距離は、切換え距離、たとえばクラッチ解放距離によって決定され、たとえばそのような切換え距離に等しい。切換え距離は、用量設定および駆動機構を機構の用量設定構成から機構の用量送達構成へ切り換えるために、用量設定および駆動機構の第2の部材を用量設定および駆動機構の第1の部材に対して動かさなければならない距離とすることができる。第1の位置で、用量設定および駆動機構は用量設定構成とすることができる。第2の位置で、用量設定および駆動機構は用量送達構成とすることができる。たとえば、用量設定構成または第1の位置では、上記でさらに論じたように、用量設定および駆動機構の部材を回転不能にロックすることができる。用量送達構成または第2の位置では、相対回転が可能になり、たとえば第1の部材は、用量送達中に、第2の部材およびハウジングに対して回転することができる。用量送達動作中、第2の部材は、ハウジングに対して回転不能にロックすることができる。
【0073】
一実施形態では、第1の位置と第2の位置との間の離隔距離、たとえば軸方向の離隔距離は、回転ロックを解放するために、第2の部材を第1の部材に対してたとえば軸方向に動かさなければならない距離より大きくまたはそれに等しい。具体的には、第1の位置から第2の位置へのユーザインターフェース部材の動きの間、第2の部材を第1の部材に対して軸方向に、たとえば遠位に変位させることによって、回転ロックを解放することができる。回転ロックを解放するための距離は、切換え距離に対応することができ、またはそれより大きくすることができる。部材が第1の位置から第2の位置へ動かされるとすぐに、信号を提供することができ、かつ/または電子システムを第2の状態に切り換えることができる。
【0074】
一実施形態では、電子システムは、電源、たとえば再充電可能または再充電不能の電池を含む。
【0075】
一実施形態では、第2の状態において、電子システムは、送達動作中に、たとえば運動感知ユニットを介して、現在投薬または送達されている用量のサイズに関係する情報またはデータを集めるように構成される。その結果、運動感知ユニットは、送達動作で送達された用量、たとえば用量送達動作中に現在送達されている用量に関する用量データを回収することに寄与するように構成することができる。
【0076】
一実施形態では、第2の状態において、電子システムは、用量データを電子システムの用量メモリまたはメモリユニット内に記憶するように構成される。メモリは、一時的または非一時的とすることができる。用量データは、好適には、運動感知ユニットの測定値または信号を使用して導出される。
【0077】
一実施形態では、第2の状態において、電子システムは、通信ユニットによって、コンピューティングデバイス、たとえば移動電話または携帯型もしくは非携帯型のコンピューティングユニットなどの別のデバイスまたはシステムへ、用量データ、たとえばメモリから回収された用量データを伝送するように構成される。
【0078】
一実施形態では、電子システムは、用量設定動作および用量送達動作のために1つのユーザインターフェース部材、たとえば1つの一体部材を含み、または2つの異なるユーザインターフェース部材を含み、これらの部材のうちの一方が用量設定のためのユーザインターフェース部材であり、他方が用量送達のためのユーザインターフェース部材である。2つの異なる部材は、好適には、たとえば用量設定構成および用量送達構成を切り換えるために、互いに対して可動である。1つのインターフェース部材が用量設定および用量送達に使用される場合、このインターフェース部材は、設定面および送達面を有することができ、設定面および送達面は互いに対して可動でないことが好ましく、特に用量送達のためもしくは用量送達中および/または用量設定のためもしくは用量設定中に互いに対して可動でない。2つの異なるユーザインターフェース部材が使用される場合、設定面および送達面は、異なる部材上に位置することができ、用量送達のためもしくは用量送達中および/または用量設定のためもしくは用量設定中に互いに対して可動とすることができる。
【0079】
一実施形態では、電子システムは、タイマユニットを含む。タイマユニットは、所定の期間が経過した後、好ましくはこの期間内に運動信号が生成されないとき、電子システムの運動感知ユニットおよび/または他の電動式ユニットを停止状態にするように構成することができる。タイマユニットは、電子システムが第2の状態から再び第1の状態に切り換えられることをトリガすることができ、または引き起こすことができる。言い換えれば、電子システムは、好ましくは所定の時間の間、運動信号が電子制御ユニットによって生成および/または受信されないとき、第2の状態から再び第1の状態に切り換わるように構成することができる。
【0080】
一実施形態では、ユーザインターフェース部材は、薬物送達デバイスのまたは薬物送達デバイスのための用量設定および/または注射ボタンである。
【0081】
一実施形態では、電子システムは、フィードバックユニットを含む。フィードバックユニットは、使用者が知覚できるフィードバックを生成するように構成することができる。フィードバックは、システムが第1の状態にあるかそれとも第2の状態にあるかを使用者が判定することを有効にすることができる。好ましくは、第1の状態では、知覚可能なフィードバックが提供されず、フィードバックは第2の状態を示す。フィードバックは、たとえば光信号などのフィードバック信号とすることができる。フィードバック信号は、発光ダイオードなどの光源によって提供することができる。光源は、フィードバックを提供するために、パルスまたはフラッシュ状で動作することができる。
【0082】
一実施形態では、デバイスは、手動駆動式のデバイスであり、たとえば使用者によって駆動される。
【0083】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、薬物を有するリザーバ、たとえばカートリッジを保持するためのリザーバ保持器を含み、かつ/またはデバイスは、薬物を有するリザーバを含む。リザーバは、薬物送達デバイスによって送達予定の複数の用量、好ましくは使用者が設定可能な用量に十分な薬物を含むことができる。
【0084】
一実施形態では、薬物送達デバイスはペン型デバイスである。
【0085】
一実施形態では、電子システムは、薬物送達デバイスユニットのための付属物、好ましくは再利用可能な付属物として構成される。システムは、薬物送達デバイスユニットに取り付けられるように構成することができる。すなわち、電子システムは、複数の薬物送達デバイスユニットとともに使用されるように構成することができる。それぞれの薬物送達デバイスユニットは、使い捨ての薬物送達デバイスユニットとすることができ、かつ/またはそれぞれの薬物送達デバイスユニットは、用量設定動作および用量送達動作を実行するために完全に動作状態とすることができる。薬物送達デバイスユニットは、リザーバを含むことができる。
【0086】
一実施形態では、電源は交換不能である。
【0087】
一実施形態では、薬物送達デバイスのためのキットが、薬物送達デバイスユニットおよび電子システムを含む。デバイスユニットにシステムを取り付けて、薬物送達デバイスを形成することができる。薬物送達デバイスに関して以上および以下に開示する構成、特に電子システムに直接関係しない構成は、薬物送達デバイスユニットにも当てはまるはずであり、逆も同様である。
【0088】
本明細書において、「遠位」とは、薬物送達デバイスもしくはその構成要素の投薬端を向くまたは指すように配置されもしくは配置予定であり、かつ/または近位端から離れる方を指し、近位端から離れる方を向くように配置され、もしくは近位端から離れる方を向く、方向、端部、または表面を指定するために使用される。他方では、「近位」とは、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端および/または遠位端から離れる方を向くまたは指すように配置されまたは配置予定である、方向、端部、または表面を指定するために使用される。遠位端は、投薬端に最も近い端部、および/または近位端から最も離れた端部とすることができ、近位端は、投薬端から最も離れた端部とすることができる。近位面は、遠位端から離れる方および/または近位端に向かう方を向くことができる。遠位面は、遠位端に向かう方および/または近位端から離れる方を向くことができる。投薬端は、針の端部とすることができ、たとえばニードルユニットがデバイスに取り付けられており、または取付け予定である。
【0089】
特に有利な実施形態では、薬物送達デバイスのための電子システムは:
- 用量動作、たとえば薬物送達デバイスによって送達予定の薬物の用量を設定するための用量設定動作、および/または設定された用量を送達するための用量送達動作を実行するために、使用者によって操作されるように構成された少なくとも1つのユーザインターフェース部材と、
- 電子システムの動作を制御するように構成された電子制御ユニットとを含み、電子システムは、第1の状態および第2の状態を有し、電子システムは、第1の状態に比べて第2の状態で大きい電力消費を有し、ここで、
- ユーザインターフェース部材は、用量動作のために使用者によってタッチされるように配置された外部動作面を含み、
- ユーザインターフェース部材は、使用者近接検出ユニットを含み、使用者近接検出ユニットは、使用者が外部動作面に近づいたとき、または外部動作面にタッチしたとき、電気信号を生成するように構成され、
- 使用者近接検出ユニットは、可動部材を含み、可動部材は、使用者が外部動作面に到達する前に、使用者によって外部動作面に対して初期位置から離れて動作位置の方へ動かされるように配置され、
- 使用者近接検出ユニットは、電気信号送信ユニットをさらに含み、使用者近接検出ユニットは、可動部材が初期位置から離れる方へ動かされたとき、たとえば可動部材が動作位置にあるとき、または初期位置から離れて動作位置に向かう動きの間に、電気信号を提供するように構成され、
- 電子システムは、電子制御ユニットが電気信号に応答して電子システムを第1の状態から第2の状態に切り換えるように構成される。
【0090】
異なる態様および実施形態に関連して開示する構成は、そのような組合せが以上または以下で明示的に論じられていない場合でも、互いに組み合わせることができる。さらなる態様、実施形態、および利点は、図面と併せて例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】薬物送達デバイスの一実施形態を示す図である。
図2】薬物送達デバイス、たとえば図1の薬物送達デバイスのための電子システムを概略的に示す図である。
図3】薬物送達デバイス、たとえば図1の薬物送達デバイスのための電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図4図4A図4Cは、電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図5図5A図5Cは、電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図6図6A図6Cは、電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図7図7A図7Cは、電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図8図8A図8Cは、電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図9】電子システムの一実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図面では、同一の構成、同じ種類の構成、または同一もしくは同様に作用する構成に、同じ参照番号を提供することができる。
【0093】
以下、いくつかの概念について、インスリン注射デバイスを参照して説明する。本明細書に記載するシステムは、このデバイス内で実装することができ、またはこのデバイスへの付属モジュールとして使用することができる。しかし本開示は、そのような用途に限定されるものではなく、他の薬剤を排出するように構成された注射デバイス、または一般的な薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイスおよび/もしくは注射デバイスのために、またはそのような注射デバイスにおいても、等しく良好に使用することができる。
【0094】
以下、送達された用量に関するデータを記録および/または追跡する注射デバイス、特に可変用量注射デバイスに関連する実施形態が提供される。これらのデータは、選択された用量のサイズおよび/または実際に送達された用量のサイズ、投与日時、投与の継続時間などを含むことができる。本明細書に記載する構成は、電力管理技法(たとえば、小型電池の促進および/または効率的な電力使用の有効化)を含むことができる。
【0095】
本明細書では、たとえばSanofiのALLSTAR(登録商標)デバイスと同様に、注射ボタンおよびグリップ(用量設定部材または用量設定器)が組み合わされた注射デバイスに関する特定の実施形態を例示する。注射ボタンは、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。グリップまたはノブは、用量設定動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。デバイスはダイヤル延長型とすることができ、すなわち用量設定中にデバイスの長さが増大する。用量設定および用量排出動作モード中にダイヤル延長およびボタンの同じ運動学的挙動を有する他の注射デバイスは、たとえば、Eli Lillyによって販売されているKwikpen(登録商標)またはSavvio(登録商標)デバイス、およびNovo Nordiskによって販売されているFlexPen(登録商標)、FlexTouch(登録商標)またはNovopen(登録商標)デバイスとして知られている。したがって、これらのデバイスに一般原理を適用することは簡単であると考えられ、さらなる説明は省略する。しかし、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されるものではない。別個の注射ボタンおよびグリップ構成要素/用量設定部材が設けられた注射デバイス、たとえばSanofiのSoloSTAR(登録商標)への適用に関して、特定の他の実施形態が考えられる。したがって、本開示はまた、用量設定動作および用量送達動作に1つずつ、2つの別個のユーザインターフェース部材を有するシステムに関する。デバイスの用量設定構成および用量送達構成を切り換えるために、用量送達のためのユーザインターフェース部材を用量設定のためのユーザインターフェース部材に対して動かすことができる。1つのユーザインターフェース部材が提供される場合、このユーザインターフェース部材をハウジングに対して遠位に動かすことができる。それぞれの動きの過程では、デバイスの用量設定および駆動機構の2つの部材間のクラッチが、たとえば係合状態から解放状態へその状態を変化させ、または逆も同様である。たとえば2つの部材上の数組の噛合歯によって形成されたクラッチが係合されたときは、2つの部材を互いに回転不能にロックすることができ、クラッチが係合解除または解放されたときは、これらの部材のうちの一方が2つの部材のうちの他方に対して回転することを可能にすることができる。これらの部材のうちの一方は、用量設定および駆動機構のピストンロッドに係合する駆動部材または駆動スリーブとすることができる。駆動スリーブは、用量設定中にはハウジングに対して回転するように設計することができ、用量送達中にはハウジングに対して回転不能にロックすることができる。駆動スリーブとピストンロッドとの間の係合は、ねじ係合とすることができる。したがって、駆動スリーブは用量送達中に回転することができないため、ハウジングに対する駆動スリーブの軸方向運動により、ピストンロッドが回転する。この回転は、送達動作中に、ピストンロッドとハウジングとの間のねじ連結によって、ピストンロッドの軸方向変位に変換することができる。
【0096】
図1の注射デバイス1は注射ペンであり、ハウジング10を含み、容器14、たとえばインスリン容器、またはそのような容器のためのレセプタクルを収容する。容器は、薬物、たとえばインスリンを収容することができる。容器は、カートリッジまたはカートリッジのためのレセプタクルとすることができ、レセプタクルは、カートリッジを収容することができ、またはカートリッジを受けるように構成することができる。容器またはレセプタクルに針15を取り付ける。容器をカートリッジとすることができ、レセプタクルをカートリッジホルダとすることができる。針は、内側ニードルキャップ16によって保護され、外側ニードルキャップ17または別のキャップ18のいずれかによってさらに保護される。注射デバイス1から排出予定のインスリン用量は、投与量ノブ12を回すことによって設定、プログラム、または「ダイヤル設定」することができ、次いで現在プログラムまたは設定されている用量が、投与量窓13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。単位は、ハウジング10に対するノブ12の相対回転を可能にすることができる用量設定機構によって、1投与量増分を画成することができる1単位設定増分の整数倍のみで決定することができる。これは、たとえば適当なラチェットシステムによって実現することができる。窓に表示される印は、数字スリーブまたはダイヤルスリーブ70上に設けることができる。たとえば、注射デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成される場合、投与量をいわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは純結晶インスリンの約45.5マイクログラム(1/22mg)に生物学的に同等である。アナログインスリンまたは他の薬剤を送達するための注射デバイスでは、他の単位を用いることもできる。図1の投与量窓13に示すものとは異なる方法でも、選択された用量を等しく良好に表示することができることに留意されたい。
【0097】
投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャ、またはハウジングのアパーチャに挿入された透明な別個の構成要素の形態とすることができ、別個の構成要素は、拡大レンズを組み込むことができる。投与量窓13は、現在プログラムされている用量の視覚インジケーションを提供するために、投与量ノブ12が回されると動くように構成されたダイヤルスリーブ70の制限された部分を使用者が見ることを可能にする。投与量ノブ12は、プログラム中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転させられる。
【0098】
この例では、投与量ノブ12は、データ収集デバイスまたは電子システムの取付けを容易にするための1つまたはそれ以上の形成物71a、71b、71cを含む。ユーザインターフェース部材(ノブ12および/またはボタン11)、または一般に薬物送達デバイス1の用量設定および駆動機構の要素もしくは部材に取付け可能とすることができる電子システムについては、以下でより詳細に説明する。電子システムは、たとえばユーザインターフェース部材内に設けることができる。以下でより詳細に説明する電子システムは、薬物送達デバイスユニット、たとえば図1に示すユニットのための付属物として構成することもできる。この場合、電子システムは、好ましくは、複数の薬物送達デバイスユニットとともに使用されるように構成される。それぞれの薬物送達デバイスユニットは、好適には使い捨てである。
【0099】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで、機械クリック音が生じて使用者に音響フィードバックを提供するように構成することができる。この実施形態では、投与量ノブまたは用量ボタン12もまた、注射ボタン11として作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、次いで投与量ノブ12/注射ボタン11が軸方向に押されたとき、表示または投与量窓13に表示されたインスリン用量が注射デバイス1から排出される。投与量ノブ12が押し戻された後、注射デバイス1の針15が、ある時間の間、皮膚部分に留まったとき、用量は患者の体内に注射されている。インスリン用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができるが、この音は、用量のダイヤル設定中に投与量ノブ12を回転させたときに生じた音とは異なる。
【0100】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、投与量ノブ12は、回転ではなく軸方向運動によってその初期位置へ戻され、ダイヤルスリーブ70または数字スリーブ70は、回転してその初期位置へ戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。前述のように、本開示は、インスリンに制限されるものではなく、薬物容器14内のすべての薬物、特に液体薬物または薬物調合物を包含するべきである。
【0101】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、いくつかの注射プロセスに使用することができる。
【0102】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、流体がインスリン容器14および針15から正確に流れていることを確実にするために、たとえばインスリンの2単位を選択し、針15を上に向けた状態で注射デバイス1を保持しながら投与量ノブ12を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要になることがある。提示を簡単にするために、以下、排出された量が注射された用量に実質的に対応し、したがってたとえば注射デバイス1から排出される薬剤の量が、使用者によって受け取られる用量に等しいと仮定する。
【0103】
上記で説明したように、投与量ノブ12はまた、注射ボタン11としても機能し、したがって用量のダイヤル設定/設定および用量の投薬/送達に同じ構成要素が使用される。この場合も、好ましくは制限された形でのみ互いに対して可動である2つの異なるユーザインターフェース部材を有する構成も可能であることに留意されたい。しかし、以下の議論では、用量設定および用量送達機能を提供する単一のユーザインターフェース部材に注目する。言い換えれば、用量設定動作のために使用者によってタッチされる部材の設定面と、用量送達動作のために使用者によってタッチされる用量送達面とが、不動に接続される。別法として、異なるユーザインターフェース部材が使用される場合、これらを互いに対して可動とすることができる。それぞれの動作中、ユーザインターフェース部材は、好ましくは、デバイスの本体またはハウジングに対して動かされる。用量設定中、ユーザインターフェース部材は、ハウジングに対して近位に動き、かつ/または回転する。用量送達中、ユーザインターフェース部材は、軸方向に、たとえば遠位に動き、好ましくはハウジングまたは本体に対して回転しない。
【0104】
以下、薬物送達デバイスのための電子システムに対する概略的な設定を開示する。
【0105】
図2は、薬物送達デバイス、たとえば上記でさらに論じたデバイスもしくはデバイスユニット1内で、もしくはそのような薬物送達デバイスのために、または異なるデバイス内で、もしくは異なるデバイスのために、使用することができる電子システム1000の要素の概略的な構成を示す。
【0106】
電子システム1000は、電子制御ユニット1100を含む。制御ユニットは、プロセッサ、たとえばマイクロコントローラまたはASICを含むことができる。また、制御ユニット1100は、プログラムメモリおよび/またはメインメモリなどの1つまたは複数のメモリユニットを含むことができる。プログラムメモリは、システムによって実施されるとシステムおよび/または電子制御ユニットの動作を制御するプログラムコードを記憶するように設計することができる。制御ユニット1100は、好適には、電子システム1000の動作を制御するように設計される。制御ユニット1100は、有線インターフェースまたは無線インターフェースを介して、電子システム1000のさらなるユニットと通信することができる。制御ユニット1100は、コマンドおよび/もしくはデータを含む信号をそれぞれのユニットへ伝送することができ、かつ/またはそれぞれのユニットから信号および/もしくはデータを受信することができる。これらのユニットと電子制御ユニット1100との間の接続を図2に線で示す。しかし、ユニット間にも接続が存在することができ、これは明示的に示されていない。制御ユニット1100は、導体キャリア、たとえば(プリント)回路基板(図3の符号3000を参照されたい)上に配置することができる。電子システムの他のユニットは、同様に導体キャリア上に配置された、または場合によって追加の導体キャリア上に配置された、1つまたはそれ以上の構成要素を含むことができる。
【0107】
電子システム1000は、電気運動感知ユニット1200をさらに含む。運動感知ユニット1200は、1つのセンサ、たとえば1つのセンサのみ、または複数のセンサを含むことができる。運動感知ユニットは、好適には、電子システムまたは薬物送達デバイスの1つの部材の別の部材に対する動き、たとえば上記でさらに論じたデバイスにおける駆動スリーブまたはボタン/ノブに対するダイヤルスリーブまたは数字スリーブの動きを示す電気信号などの運動信号を生成するように設計され、センサは、部材のうちの1つ、たとえばノブまたはボタンに固定して接続することができる。相対運動は、好適には、用量送達動作中に発生する。それぞれのセンサは、光電子センサとすることができる。光電子センサは、センサに対して動く部材から出てセンサに当たる放射を感知して、センサ、たとえば光学エンコーダ構成要素内でセンサ信号または運動信号を励起することができる。放射は、光電子放射源、たとえばLEDなどの放射源から出て部材によって反射されてこの部材に当たる放射とすることができる。放射源は、IR源(IR-LED、赤外発光ダイオード)とすることができる。放射源は、少なくとも1つのセンサを含むセンサ配置の一部とすることができる。センサの1つの可能な実施形態は、赤外光を検出するように構成されたIRセンサである。光源およびセンサは、同じ構成要素または部材上に配置することができる。本明細書に論じる電子システムに適した光電子センサ配置の一般機能は、WO2019/101962A1に開示されており、開示内容全体をあらゆる目的で、特に異なるセンサ配置および構成に関して、参照によって本明細書に明示的に組み入れる。しかし、他のセンサ配置、たとえば磁気センサを使用した配置も同様に用いることができることに留意されたい。電動センサならびに/またはセンサを刺激する電動源、たとえば放射エミッタおよび関連センサを有する運動感知ユニットでは、電力消費が特に大きいことがあり、したがってシステムに電力供給するために利用可能な電力の適当な電力管理が特に影響を及ぼす可能性がある。運動感知ユニット1200は、用量送達動作中、薬物送達デバイスの用量設定および駆動機構または薬物送達デバイスのための用量設定および駆動機構の1つの部材の、用量設定および駆動機構の別の部材またはハウジング10に対する相対運動を検出し、好ましくは測定または定量化するように設計することができる。たとえば、運動感知ユニットは、用量設定および駆動機構の2つの可動の部材の互いに対する相対回転運動を測定または検出することができる。ユニット1200の信号から受信または計算した運動データに基づいて、電子システム、たとえば制御ユニットは、用量データ、たとえば現在送達されている用量に関するデータを計算することができる。運動感知ユニット1200は、好適には、電子システムまたは薬物送達デバイスの第1の部材と第2の部材との間の相対運動を定量化するように構成される。相対運動は、送達された用量を示すことができる。相対運動は、相対回転運動とすることができる。たとえば、用量送達中などに、第1の部材は第2の部材に対して回転することができる。運動感知ユニットは、好適には、相対運動を1単位設定増分角度の整数倍で定量化するのに適している。単位設定増分は、5°、10°の値のうちの1つより大きいもしくはそれに等しい角度とすることができ、またはそのような角度によって画成することができる。単位設定増分は、25°、20°の値のうちの1つより小さいもしくはそれに等しい角度とすることができ、またはそのような角度によって画成することができる。単位設定増分は、たとえば5°~25°とすることができる。単位設定増分は、たとえば15°の相対回転に対応することができる。単位設定増分角度は、デバイスによって送達されるように設定可能な最小用量を設定するために必要とされる回転とすることができる。増分は、たとえばラチェットシステムによって画成することができる。上記で説明したように、運動感知ユニットによって判定される第1および第2の部材間の相対(回転)運動の量または距離は、用量設定動作における現在設定されている用量、または用量送達動作における現在投薬されている用量に特有である。送達された用量のサイズは、用量設定および駆動機構のピストンロッドが用量送達動作中にハウジングに対して遠位に変位させられる距離によって判定することができ、またはそのような距離に対応することができる。
【0108】
電子システム1000は、信号送信ユニット1300をさらに含む。信号送信ユニットは、1つまたはそれ以上のユーザインターフェース部材(上記で論じたデバイス内のノブ12またはボタン11)に関連付けることができる。信号送信ユニット1300を介して、用量を設定および/または送達するための部材の操作を検出するまたは示すことができる。信号送信ユニットは、ユーザインターフェース部材、たとえばその本体の外部動作面がタッチされていること、または使用者がこの表面に近接していることを示す電気信号を生成するように構成される。ユーザインターフェース部材は、用量設定動作を実行するために使用者によってタッチされるように配置された設定面、および/または用量送達動作を実行するために使用者によってタッチされるように配置された送達面を有することができる。設定面は、径方向を向くことができ、送達面は、軸方向、たとえば近位方向を向くことができる。信号生成には、ユーザインターフェース部材の少なくとも一部分の、たとえばユーザインターフェース部材の別の部分および/またはハウジング10に対する動きを必要とする。信号送信ユニットは、使用者がユーザインターフェース部材の外部動作面、たとえば設定動作のための設定面および/または送達動作のための送達面にタッチしたとき、好ましくはそのときのみ、電気信号を提供するように構成された使用者近接検出ユニットの一部とすることができる。使用者近接検出ユニットは、それに対する使用者の近接が検出されるべきであり、好適にはその表面から盛り上がっているその外面で、アクセス可能な可動部材をさらに含む。可動部材に対する例については、以下でさらに記載する。可動部材および信号送信ユニットは、好適には、可動部材が外部動作面に対して初期位置から離れて(たとえば、表面から突出して)、その表面の方へ、たとえば動作位置、すなわち外部動作面を介してインターフェース部材の操作によって実行される動作中に呈する位置の方へ、またはそのような動作位置内へ、変位された場合のみ、信号送信ユニットが信号を提供することができるように調整される。好適には、可動部材は、使用者が外部動作面にタッチすることができるようになるまで、および/または信号送信ユニットによって信号を提供することができるようになるまで、動かされなければならないように配置される。したがって、可動部材を動作位置の方へ、または動作位置内へ動かすことなく、ユーザインターフェース部材の操作が実行された場合、信号送信ユニットによって信号を生成することはできない。信号を生成するためには、可動部材が動作位置に存在しなければならず、または動作位置に到達する前に信号を生成することができる。可動部材は、動作、たとえば用量設定または送達を行うために、使用者によって実行される操作全体にわたって、動作位置に留まることができる。可動部材を有する実施形態については、以下でより詳細に説明する。信号を生成するまたは信号の生成を引き起こす要素は、たとえばマイクロスイッチなどの電気センサまたはスイッチとすることができる。操作に応答して信号送信ユニットによって生成された信号は、使用者によって操作されるユーザインターフェース部材の異なる表面を区別することを可能にすることができる。この場合、複数のスイッチを設けることができ、設定面に1つ、送達面に1つを設けることができる。信号送信ユニットは、好適には、信号送信ユニットが操作に応答して生成するように構成されている電気信号が、どの動作が現在実行されているか、または実行されることが意図されているか、たとえば用量設定動作または用量送達動作に関する情報を集めることを可能にするように構成される。信号送信ユニット1300によって生成される信号は、起動プロンプト信号または使用信号とすることができる。信号送信ユニット1300は、たとえば電子制御ユニット1100に動作可能に接続される。信号送信ユニットによって提供される信号は、電子制御ユニット1100によって受信および/または処理することができる。
【0109】
電子システム1000は、通信ユニット1400、たとえばRF、WiFi、および/またはBluetoothユニットをさらに含む。通信ユニットは、システムまたは薬物送達デバイスと、他の電子デバイス、たとえば移動電話、パーソナルコンピュータ、ラップトップなどの外部デバイスとの間の通信インターフェースとして提供することができる。たとえば、通信ユニットによって、用量データを外部デバイスへ伝送することができ、かつ/またはデバイスと同期させることができる。用量データは、外部デバイス内に確立された用量ログまたは用量履歴のために使用することができる。通信ユニットは、無線通信のために提供することができる。
【0110】
信号送信ユニット1300によって生成される信号の発生により、電子制御ユニット1100は、たとえば運動感知ユニット1200および/または通信ユニット1400を起動することによって、電子システム1000を第1の状態または静止状態(たとえば、必要とされていないときのシステムの状態、たとえば休止状態。静止状態は低い電力消費に関して最適化されている)を、より高い電力消費の第2の状態に切り換えることができる。この目的で、制御ユニット1100は、それぞれのユニットに起動信号を送信することができる。第2の状態で、運動感知ユニットおよび/または通信ユニットは動作可能になることができる。第1の状態では、好ましくは、運動感知ユニットおよび/または通信ユニットを動作させることができない。このようにして、必要なときに、電動ユニットの機能を利用可能とすることができる。第1の状態で信号送信ユニットが動作状態になるために必要とされる電力消費は、通信ユニットおよび/または運動感知ユニットが動作可能であるときの電力消費より小さいことが有利である。起動プロンプトまたは使用信号は、ユーザインターフェース部材の一部分、たとえば可動部材の操作に応答して生成することができる。操作は、可動部材の単方向運動、たとえば用量送達動作のための遠位運動のみを伴うことができる。操作は、外部動作面に対する可動部材の線形および/または軸方向運動のみを伴うことができる。
【0111】
電子システム1000は、再充電可能または再充電不能の電池などの電源1500をさらに含む。電源1500は、電子システムのそれぞれのユニットに電力を提供することができる。
【0112】
一実施形態では、第1の状態、たとえば使用または起動プロンプト信号の生成前の電子システムの電力消費、特に最大電力消費は、300nA、250nA、200nAの値のうちの1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる(nA:ナノアンペア)。別法または追加として、電子システムの第2の状態において、電力消費、特に最小電力消費は、0.5mA、0.6mA、0.8mAの値のうちの1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる(mA:ミリアンペア)。この差は、電子システム1000の第2の状態において活動状態または動作可能になり、第1の状態においてオフまたはスリープ状態に切り換えられる運動感知ユニット1200および/または通信ユニット1400の電力消費に起因しうる。
【0113】
一実施形態では、第2の状態における電力消費P2、たとえば最小または最大電力消費は、2*P1、3*P1、4*P1、5*P1、10*P1、20*P1、30*P1、40*P1、50*P1、100*P1、500*P1、1000*P1、2000*P1、5000*P1、10000*P1の値のうちの少なくとも1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができ、ここでP1は、第1の状態における電力消費である。第2の状態において、運動感知ユニットを活動状態とすることができ、かつ/または通信ユニットをたとえば無線通信のために活動状態とすることができる。
【0114】
システムが第1の状態にあるとき、たとえば運動感知ユニットも通信ユニットも活動状態にないとき、電流消費を200nAとすることができる。運動感知ユニット(のみ)が活動状態にあるとき、電力消費を0.85mAとすることができる。たとえば運動感知ユニットに加えて通信ユニットが活動状態にあるとき、または通信ユニットのみが活動状態にあるとき、電力消費を1.85mAとすることができる。
【0115】
明示的に示されていないが、電子システムは、好ましくはたとえば恒久的および/または不揮発性の記憶またはメモリユニットを含み、記憶またはメモリユニットは、たとえば用量(履歴)データなどの薬物送達デバイスの動作に関係するデータを記憶することができる。
【0116】
一実施形態では、電子制御ユニット1100は、それぞれのユニットの電力消費を低減させるように、すなわちユニットを再び第1の状態に切り換えるように構成される。これは、たとえば、ユニットが第1の状態から第2の状態に切り換えられた後、かつ/または使用信号が生成された後に、そのユニットに関連する事象、たとえば運動感知ユニットに対する運動感知事象(運動信号)が、所定の時間間隔内に発生しなかった場合に適している。時間間隔の監視は、電子制御ユニットに動作可能に接続されたタイマユニットによって実現することができる(明示的に図示せず)。使用または起動プロンプト信号後、所定の時間間隔内に運動感知ユニットによって信号が生成されなかった場合、システム全体を再び第1の状態に切り換えることができる。この時間間隔は、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒の値のうちの1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる。別法または追加として、時間間隔は、180秒、150秒、120秒、90秒、80秒、70秒、60秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒の値のうちの1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる。時間間隔は、5~180秒、たとえば30秒または180秒とすることができる。所定の時間間隔内に運動信号が生成されなかった場合、システム全体を再び第1の状態に切り換えることができる。所定の時間間隔は、好適には一定である。
【0117】
一実施形態では、電子システムは、フィードバックユニットを含む(明示的には図示せず)。フィードバックユニットは、使用者が知覚できるフィードバックを生成するように構成される。フィードバックは、システムが第1の状態にあるかそれとも第2の状態にあるかを使用者が判定することを有効にすることができる。好ましくは、第1の状態では、知覚可能なフィードバックが提供されず、かつ/またはフィードバックは第2の状態を示す。フィードバックは、たとえば光信号などのフィードバック信号とすることができる。フィードバック信号は、発光ダイオードなどの光源によって提供することができる。光源は、フィードバックを提供するために、パルスまたはフラッシュ状で動作することができる。
【0118】
上述したそれぞれのユニットは、様々な実施形態に関連して以下でさらに詳細に論じる電子システムのユーザインターフェース部材に一体化することができる。
【0119】
言うまでもなく、電子システム1000は、運動感知ユニットが検出する相対運動とは異なる数量または事象を感知または検出する他の感知ユニットなどの示されているユニット以外のさらなる電子ユニットを含むことができる。
【0120】
以下、電子システムのいくつかのより詳細な実施形態について説明する。上記で論じた構成は、これらの実施形態にも当てはまることに留意されたい。
【0121】
図3は、電子システム1000の一実施形態を概略的に示す。システム1000は、ユーザインターフェース部材1600を含む。ユーザインターフェース部材は、用量設定動作および/または用量送達動作中に、使用者によって動作させられるように設計される。ユーザインターフェース部材1600は、異なる外部動作面を有する。これらの動作面は、好ましくはユーザインターフェース部材が薬物送達デバイスユニットに接続されたとき、またはユニットもしくは図1に関連して論じたデバイスなどのデバイスに一体化されたとき、ユーザインターフェース部材のハウジングまたは本体1605の外部からアクセス可能な外面によって画成することができる。ユーザインターフェース部材1600は、用量設定のために、使用者によって、たとえば人差し指および親指などの2本の指で把持されるように配置された設定面1610を有する。設定面は、径方向を向いている表面であり、外部に対するユーザインターフェース部材1600の範囲を、好ましくは円周方向に定める。ユーザインターフェース部材1600はまた、送達面1620を有する。送達面は、用量送達のために、使用者によって接触され、たとえば押下され、かつ/または遠位に動かされるように配置される。送達面1620は、軸方向に向けられた表面、たとえば近位を向いている表面である。上述したように、本開示の実施形態は、設定および送達のために異なるユーザインターフェース部材を用いることができる。
【0122】
ユーザインターフェース部材1600内、たとえばユーザインターフェース部材本体1605によって画成される内部中空内に、電子システムのいくつかの追加の要素またはユニットが収容される。具体的には、電子システムは、電子制御ユニット1100を含む。システムはまた、導体キャリア3000、たとえばプリント回路基板などの回路基板を含む。導体キャリア上の導体は、電子制御ユニットをシステムのさらなる電気または電子ユニットまたは部材に導電接続することができる。キャリアは、ユーザインターフェース部材本体1605に、本体1605に対して接続することができ、たとえば本体1605に対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。
【0123】
電子システム1000は、信号送信ユニット1300を含む。電子制御ユニットおよび/もしくは信号送信ユニット、またはこれらの少なくとも構成要素は、導体キャリアに配置され、たとえばキャリアに取り付けられる。図示の実施形態では、信号送信ユニットは、少なくとも1つのセンサもしくはスイッチまたは複数のセンサもしくはスイッチ1310を有する。図示の実施形態では、少なくとも1つのスイッチ1310は設定面1610に付随する。別法または追加として、少なくとも1つのスイッチ1310は送達面1620に付随する(スイッチは、この実施形態では概略的にのみ示されている)。それぞれのスイッチは、好適には、使用者が用量設定動作(センサまたはスイッチが好適には設定面に付随する)を実行するために設定面に、または用量送達動作(センサまたはスイッチが好適には送達面に付随する)のために送達面にタッチしたとき(のみ)、電気使用信号またはスイッチ信号を生成するように構成される。本開示の信号は、信号送信ユニット1300、たとえばスイッチ1310をトリガすることによって引き起こされる、1つのみの信号パルス、たとえば電圧もしくは電流パルス、または電気特性の1つのみの変化、たとえば電圧もしくは電流の変化からなることができる。用量設定動作の場合、ユーザインターフェース部材1600をハウジング10に対して回転させることができる。用量送達動作の場合、たとえば用量設定のためにダイヤルスリーブおよび駆動部材が回転不能にロックされた状態から、用量送達のために相対回転が可能である状態などへ、クラッチを切り換えるために、ユーザインターフェース部材を軸方向にハウジングの方へ動かすことができる。ユーザインターフェース部材は、好ましくは、たとえばクラッチばね(図示せず)によって、および/またはハウジング10に対して、用量設定のために有する位置へ付勢され、この位置は、用量送達のための位置に対してクラッチ切換え距離だけ近位にずらすことができる。クラッチ切換え距離(クラッチを切り換えるためにユーザインターフェース部材が動かされなければならない距離)は、たとえば1.5mm以上である。
【0124】
信号送信ユニットによって生成される電気信号、すなわち使用または起動プロンプト信号は、電子制御ユニット1100を直接トリガして、システムを第1の状態から第2の状態に切り換えることができる。この信号の生成をトリガする動きは、好適には単方向であり、すなわちシステムを第2の状態に切り換えるために、1つの方向の動きのみが必要とされる。このようにして、システムを第2の状態に切り換えるためのユーザインターフェース部材1600またはその要素、たとえば以下でさらに論じる可動部材の複雑な操作を回避することができる。
【0125】
システムは、概略的にのみ表されている運動感知ユニット1200をさらに含み、運動感知ユニット1200は、好ましくは、1つもしくはそれ以上の光電子センサおよび/または1つもしくはそれ以上の付随する放射エミッタ、たとえばIRセンサおよびIRエミッタを含む。運動感知ユニットは、2重矢印によって示唆するように、電子制御ユニット1100に双方向に導電接続することができる。一方の方向は、起動信号が電子制御ユニットから運動感知ユニットへ伝送される方向とすることができる。他方の方向では、運動信号を運動感知ユニットから制御ユニットへ送信することができ、制御ユニットは、たとえば用量情報またはデータを計算するために、信号をさらに処理することができる。運動感知ユニット1200は、導体キャリア3000のうち、制御ユニット1100または送達面1620から離れる方を向いている側に配置することができる。
【0126】
さらに、システム1000は、電源1500、たとえばコイン電池などの電池を含む。電源は、約1.4~3Vの電圧で約25~500mAhの全電荷を提供するように構成することができる。これは、たとえば複数のコイン電池を積み重ねることによって実現または支援することができる。電源1500は、動作のための電力を必要とする電子システムの他の構成要素に導電接続されており、または接続可能である。導電接続は、図3に明示的に示されていない。電源1500を導体キャリア3000に接続するために、金属プレスを提供することができ、導体キャリア3000は、キャリア上の導体を介して電力をさらなる要素に分散させることができる(明示的には図示せず)。しかし電源は、図示のように導体キャリア3000の1つの主表面に沿って延びるように配置することができる。電源は、図示の実施形態では、導体キャリア3000と送達面1620との間に配置される。これにより、ユーザインターフェース部材1600の小型の形成が容易になる。
【0127】
部材の外部から見た、たとえば送達面の上面図におけるユーザインターフェース部材1600の径方向の幅または直径は、2cm、1.5cmの値のうちの1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる。別法または追加として、ユーザインターフェース部材の径方向の幅または直径は、0.5cm、0.7cmの値のうちの1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる。径方向の延長は、用量設定中のユーザインターフェース部材の回転軸またはユーザインターフェース部材の主長手方向軸に対して判定することができ、これらの軸は一致することができる。ユーザインターフェース部材1600の長さまたは軸方向の延長は、2.5cm、2cm、1.5cmの値のうちの1つより小さいまたはそれに等しいものとすることができる。別法または追加として、ユーザインターフェース部材1600の長さまたは軸方向の延長は、0.5cm、0.7cmの値のうちの1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる。
【0128】
電子システム1000は、付属ユニットまたはモジュールである薬物送達デバイスユニットに接続されるように構成され、好ましくは解放可能に接続されるように構成される。薬物送達デバイスユニットは、電子機器を含まないものとすることができる。それに応じて、すべての電子機器および/またはすべての導電するもしくは導電性の構成要素を、電子システム内に設けることができる。薬物送達デバイスユニットは、使い捨てとすることができる。すなわち、ユニットおよびシステム1000を含む薬物送達デバイスを使用してユニットのリザーバが空になった後、ユニットを廃棄することができる。電子システム1000は、別の薬物送達デバイスユニットに再利用することもできる。薬物送達デバイスユニットは、好ましくは、単独で完全に機能するものとして構成され、すなわち送達予定の用量の設定および設定された用量の送達のために動作させることができる。1つの例示的なユニットは、図1に示すユニットである。電子システムは、それ以外は完全に機能するユニットへの純粋な付属物とすることができる。別法として、薬物送達デバイスは、電子システムを一体部材として、すなわちデバイスの残り部分とともに廃棄される部分、ならびに/または薬物の用量を設定および送達するためにデバイスを動作させることができるように必要な部分として含むことができる。なぜなら、たとえば電子システムがなければ、薬物送達デバイスユニットは、用量設定動作または用量送達動作を行うために使用者がアクセス可能な表面を欠くからである。薬物送達デバイスユニットへの接続のために、電子システム1000は、1つまたはそれ以上の接続機能1615、たとえばスナップ機能を含むことができる。それぞれの接続機能は、ユーザインターフェース部材1600の遠位部分内、たとえば部材の内部に配置される。
【0129】
システム1000は、好適には、用量設定および駆動機構の部材、たとえば図1に関連して論じたユニットの駆動スリーブもしくは用量ノブおよび/または注射ボタンなどの薬物送達デバイスユニットの部材に、恒久的または取外し可能/解放可能に機械的に接続されるように構成される。システムは、たとえばユーザインターフェース部材本体1605を介して、薬物送達デバイスユニットの部材に回転不能かつ軸方向にロックすることができる。システムが接続される部材は、用量設定および/または用量送達中にハウジング10に対して可動とすることができ、たとえば設定中は回転可能かつ/または軸方向に可動とすることができ、送達中はたとえば軸方向にのみ可動とすることができる。部材は、ピストンロッドに係合することができ、たとえばねじ係合することができる。図1のユニットの用量ノブおよび駆動スリーブは、一体形成することができ、または用量設定および用量送達中に単一の部材として作用することができる。用量設定中、駆動スリーブは、用量設定中にたとえばクラッチによってダイヤルスリーブおよび駆動スリーブが同速度で回転し、用量送達中にダイヤルスリーブが駆動スリーブに対して回転するように、用量設定および駆動機構のダイヤルスリーブに選択的に回転不能にロックすることができる。ダイヤルスリーブは、数字スリーブとすることができる。用量送達中のダイヤルスリーブと駆動スリーブとの間の相対回転は、運動感知ユニットによって測定することができる。しかし、開示する概念は、異なる動作方法および/または異なる構成を有する用量設定および駆動機構としても機能することが、当業者には容易に明らかであろう。
【0130】
以下の実施形態は、信号送信ユニット1300および可動部材1670を含む使用者近接検出ユニットの実装例を示す。いずれの場合も、信号送信ユニット1300は、信号、たとえば使用信号または起動プロンプト信号を提供または生成するように構成される。これらの実施形態は、動作面が使用者によって接触される前に、可動部材を外部動作面、特に送達面に対して動かすことに依拠する。信号は、可動部材が動作位置にあるとき、または可動部材が使用者によって外部動作面に対して初期位置から離れて動作位置へ動かされたときのみに提供することができる。信号は、たとえばスイッチ1310をトリガすることによって、初期位置から動作位置への外部動作面に対する可動部材の動きの間に生成することができる。スイッチおよび/または信号送信ユニットは、この場合は外部動作面に対して固定の位置を有することができる。別法として、動作位置にある可動部材は、信号生成をトリガするように、たとえばスイッチをトリガすることによって、外部動作面とともに動かすことができる。この場合、信号送信ユニットと外部動作面との間の相対位置は、好ましくは指定された限度内で、可変とすることができる。システムは、好適には、用量設定および駆動機構が用量設定構成から用量送達構成へ切り換えられる前に、すなわちクラッチが解放される前に、信号が生成されるように構成される。以下の実施形態に論じる使用者近接検出ユニットは、送達面を外部動作面として使用する。しかし、対応する構造はまた、設定面に対して実装されてもよいことを理解されたい。
【0131】
図4A図4Cは、可動部材1670を有するそのような使用者近接検出ユニットを利用する電子システムの一実施形態を概略的に示す。図4Aは、ユーザインターフェース部材1600を有する薬物送達デバイス1、またはその、もしくはそのための、電子システム1000の近位セクションの断面図を概略的に示す。図示の実施形態では、可動部材1670は、図4Aに示す初期位置で、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620からユーザインターフェース部材本体1605内の開口部を通って近位に突出する。送達面は、ユーザインターフェース部材本体1605によって形成される。記載のように、送達面1620は、外部動作面の単なる一例であり、提案される概念は、設定面を外部動作面としても機能するはずである。したがって、送達面の参照は、限定的であると解釈されるべきではない。しかし、電子システム1000が用量送達動作中に動作するように設計された場合、送達動作のためにはその表面にタッチする必要があるため、送達面への使用者の近接を監視または保証することによってシステムをウェークアップすることが好適である。表面がタッチされる前に可動部材1670を動かさなければならないことで、使用者が表面にタッチする前に、またはそのときに、好ましくは外部動作面がハウジング10またはデバイスの別の構成要素に対して動かされる前に、信号生成のための要件、およびそれに応じてシステムを第2の状態に切り換えることによってシステムをウェークアップするための要件が満たされることが確実になる。可動部材1670は、ユーザインターフェース部材本体1605内の開口部を通ってユーザインターフェース部材本体の内部から外部へ延びる。図4Aで、突出部分1672は、送達面または送達面の外側輪郭によって画成されるユーザインターフェース部材本体の包絡面から盛り上がっている。したがって、可動部材1670の接触面1675が送達面より高くなっている。
【0132】
送達面1620を上面視で見たとき、可動部材1670によって提供される接触表面積(たとえば、突出部分の近位面)は、送達面1620の表面積より小さい。言い換えれば、可動部材は、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620によって形成される表面積より小さい表面積を占めることができる。送達面の面積は、好ましくは、可動部材1670によって形成または画成される合計接触表面積CA以上である。送達面1620の面積は、3CA、5CA、7CA、10CA、15CA、20CA、30CA、40CA、50CA、75CA、100CA、200CAのうちの1つより大きいまたはそれに等しいものとすることができる。合計表面積は、送達面でアクセス可能な可動部材の2つ以上の突出部分が存在することができ、合計接触表面積は、送達面でアクセス可能な可動部材の部分のすべての接触表面積の和を含むことを考慮する。対応する関係は、この面積のうち、可動部材がそこを通ってユーザインターフェース部材本体の内部と連通することができる開口部に含まれる合計開口部面積に対しても有効である。送達面が平面であり、直径15mmの円形の形状を有し、直径1mmの平面の円形接触面を有する1つの可動部材が設けられ、可動部材が送達面を通って可動部材と同じ直径の開口部を通って突出する場合、送達面は、合計接触表面積、すなわち可動部材に含まれる面積の224倍である。利用可能な接触面の数に応じて、他の構成も可能であることが理解されよう。
【0133】
図4Aに示す第1の位置または初期位置で、可動部材1670は外部動作面1620から突出する。初期位置は、可動部材が使用者によって変位される前に可動部材が送達面に対して有する位置である。可動部材1670は、初期位置で、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm.0.9mm、1mm、1.5mmの値のうちの1つより大きいまたはそれに等しい距離だけ、送達面1620から突出することができる。可動部材1670は、第1の位置で、2mm、1.5mm、1mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mmの値のうちの1つより小さいまたはそれに等しい距離だけ、送達面から突出することができる。
【0134】
可動部材1670は、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620に対して初期位置から遠位方向(図4Aの下方)に第2の位置または動作位置の方へ可動である(図4Bおよび図4C参照)。動作位置で、可動部材のうち送達面1620から初期位置に突出する部分(これは、使用者接触面1675を提供する部分である)は、好適には、送達面と同一平面であり(すなわち、軸方向に位置合わせされる)、または送達面1620および/もしくは本体1605のうち可動部材の一部分がそこを通って突出する開口部に隣接する領域によって画成されるユーザインターフェース部材本体の包絡面に対して凹んでおり、もしくは同一平面未満である。複数の部分が開口部を通って突出する場合、すべての部分を送達面の隣接領域に対して凹ませることができ、または同一平面未満にすることができる。可動部材の一部分が動作位置で同一平面未満になることは、可動部材を押下する使用者の指における使用者の皮膚の弾性だけで、その表面に力をかけるために、たとえば用量送達動作を駆動するために、送達面との接触を維持しながら可動部材のその部分を送達面より下へ動かすのに足りるように、開口部を寸法設定することによって実現することができる。したがって、動作位置で、接触面1675は、送達面から遠位にずらすことができる。これは、同一平面の配置を示す図4Bおよび図4Cには明示的に示されていない。しかし、それにもかかわらず、同一平面未満の配置を実現することもできる。第2の位置または動作位置で、可動部材1670の近位端および/またはその接触面1675は、送達面から遠位方向に、および/または初期位置から離れる方へ、0mmより大きく、たとえば0.05mmより大きく、かつ0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mmの値のうちの1つより小さいまたはそれに等しい距離だけずらして配置することができる。
【0135】
図示の実施形態では、可動部材1670は略ピン形である。可動部材はまた、ユーザインターフェース部材本体上の機能に当接するように配置された1つまたはそれ以上の径方向に突出する機能1671を有し、それにより可動部材がユーザインターフェース部材本体から取り外されることを防止する。しかし、他の構成も可能であることに留意されたい。また、可動部材1670は、図示の実施形態では、1つの場所のみで送達面1620から突出する。可動部材は、複数の、好ましくは異なるおよび/または別個の場所で、送達面から突出することもできることに留意されたい。可動部材1670は、好適には、使用者が送達面に接触する前に使用者が可動部材に接触するように構成および配置される。システムは、使用者が送達面に接触することができるようになるまで、可動部材を遠位方向に第1の位置から離れる方へ動かさなければならないように構成される。システムは、ユーザインターフェース部材本体内に保持された、たとえばその本体1605に対して固定されたスイッチ1310が、初期位置から動作位置への可動部材の動きによってトリガされ、電子制御ユニットへ使用信号が提供され、たとえば好ましくはシステムが電子制御ユニットに運動感知ユニットの電源を投入させるようにさらに構成される。センサまたはスイッチ1310は、図4Aに概略的に示されている。スイッチ1310は、瞬時スイッチ、たとえば軸方向マイクロスイッチとすることができる。図4Bの位置で、スイッチはトリガされている。
【0136】
システム1000は、可動部材1670が第1の位置の方へ付勢されるように構成される。すなわち、可動部材1670が第2の位置にあるとき、付勢により部材を第1の位置へ動かす傾向があり、したがって第1の位置は、力が加えられていないときの標準位置である。この目的で、付勢部材1680、図示の実施形態ではばね、たとえばつる巻き圧縮ばねが設けられる。初期位置から離れる方への可動部材の動きの間、付勢を増大させることができ、または部材に負荷をかけることができる。可動部材を介して付勢部材1680にかけられる力には、ユーザインターフェース部材本体1605の内面によって反応することができる。可動部材を外部動作面に対して初期位置から動作位置へ動かすために必要とされる力は、好適には、用量送達動作のためにユーザインターフェース部材または送達面を軸方向に動かすために必要とされる力より小さい。これにより、ユーザインターフェース部材が動かされる前に可動部材を動作位置へ動かすことが容易になる。動作位置で、好適には、可動部材を初期位置からより離れる方へ、すなわち遠位に動かすことがさらに可能である。システムは、可動部材のための遠位端止め具を含んでおらず、付勢部材1680は、動作位置でさらにより付勢または圧縮されうる。しかし、使用者の皮膚は、可動部材がそこを通って突出する開口部のサイズおよび形状に応じて、特定の程度にまでのみ偏向または変形するため、動作位置での可動部材のそのような(遠位)運動は生じない。開口部のサイズは、使用者の皮膚が開口部内へ突出することができる距離を制限する。
【0137】
この実施形態では、ユーザインターフェース部材1600/電子システム1000が、薬物送達デバイスユニットに取り付けられたまたは薬物送達デバイス内に一体化された状態で示されている。薬物送達デバイス(ユニット)は、デバイス(ユニット)の用量設定および駆動機構のハウジング10または部材1710とすることができる要素によって示されている。しかし、図4の表現はかなり概略的であり、ユーザインターフェース部材本体は、解放可能な接続のための接続機能によって薬物送達デバイスユニットへの付属物として設けることもできることを理解されたい。駆動機構とユーザインターフェース部材との間の接続は、その接続の性質が本明細書に記載するシステムの概略的な動作にとって重要でないため、本明細書に明示的に示されていない。しかし接続は、用量設定力もしくはトルクまたは送達力もしくはトルクをそれぞれの動作面から部材1710へ伝達するように構成される。
【0138】
電子システム1000は、好適には、用量設定および駆動機構の部材の互いに対する動きが生じる前に、使用信号が生成されるように、および/またはシステムが第2の状態に切り換えられるように構成され、この動きは、投薬動作を駆動して容器から薬剤を投薬するためのピストンロッドの遠位運動を生じさせる用量送達動作を実行するために必要とされる。用量送達動作に必要とされる動きは、たとえば、上記でさらに論じたデバイスのダイヤルスリーブと駆動スリーブとの間の相対回転運動とすることができる。
【0139】
使用信号は、ユーザインターフェース部材本体が送達面を介して少しでも動かされる前に生成することができる。たとえば、使用信号は、用量送達動作を開始するためにユーザインターフェース部材1600がハウジング10または部材1710に対して動かされる前に生成することができる。別法として、使用信号は、ハウジング10または部材1710に対するユーザインターフェース部材の動きが開始された後、たとえば遠位方向の動きの後であるが、用量設定動作中に用量設定および駆動機構の2つの部材を互いに連結する、たとえば回転不能にロックするクラッチインターフェースが用量送達動作のために解放される前に、生成することができる。クラッチインターフェースは、送達面から用量設定および駆動機構のピストンロッドへの力伝達チェーン内に配置された用量設定および駆動機構の少なくとも1つの部材と、別の構成要素、たとえばハウジング10または用量設定および駆動機構の別の部材との間に形成することができる。図4Aで、クラッチインターフェースを確立することができる。ユーザインターフェース部材は、クラッチインターフェースを図4Aに示す状況から、たとえば確立状態から解放状態へ切り換えるために、ハウジング10または部材1710に対して距離dだけ動かさなければならない。クラッチインターフェースを1つの状態、たとえば確立状態または解放状態で維持する傾向のあるクラッチ付勢部材1690、たとえばつる巻き圧縮ばねなどのばねが設けられる。図示の実施形態では、クラッチインターフェースによって接続された2つの部材は、駆動スリーブなどの薬物送達デバイスの駆動機構部材1700、および部材1710、たとえば数字スリーブまたはダイヤルスリーブ(現在設定されている用量を示す数字などのマーキングを有する部材)によって表されている。部材1700は、ユーザインターフェース部材と一体化された部分として示されている。これは、電子システムがデバイスに一体化された状況を示す。しかし、ユーザインターフェース部材はまた、部材1700に接続することができ、たとえばその部材に対して軸方向および回転不能にロックすることができることに留意されたい。これは、たとえば製造上の理由で、付属物として提供される電子システム、またはデバイスに一体化されたシステムにも当てはまる。図4Aに示す位置で、部材1700および1710は、互いに回転不能にロックすることができる。他の部材1710に対する部材1700のdの軸方向運動は、回転ロックを解放することができ、したがってハウジング(示されていないが、この場合は部材1710を横方向に取り囲むことができる)、用量設定および駆動機構のさらに別の部材、ならびに/またはユーザインターフェース部材1600に対して、部材1710の回転運動が可能になる。
【0140】
図示の実施形態では、使用者が可動部材1670にかける力は、使用者が送達面1620にタッチする前でも、駆動機構部材1700および/またはクラッチ付勢部材1690へ伝達される。その結果、好ましくは使用者近接検出の目的だけで実行される可動部材の動きによって、駆動機構部材1700が著しく動かされるリスクがある。たとえば遠位方向における駆動機構部材1700の動きが大きくなりすぎるリスクを低減させるために、クラッチ付勢部材1690が付勢部材1680より大きいばね強度またはばね力を有するように、クラッチ付勢部材1690および付勢部材1680を互いに調整することができる。クラッチ付勢部材1690は、圧縮されたとき、たとえばクラッチが状態を切り換えたとき、力が1Nより大きくなるように、たとえば1N~3Nの範囲内になるように設計することができる。可動部材を動作位置に動かすまたはその位置で保持するための力は、より小さくすることができ、たとえば0.5Nとすることができる。
【0141】
システムを適当に構成することによって、2つの部材1700および1710の距離dの動きが生じる前に、スイッチ1310がトリガされること/使用信号が生成されることを確実にすることができる。したがって、2つの部材が互いに対してすでに動き始めたが、クラッチ係合を解放するために必要とされる距離に満たないとき、使用信号を生成することができる。
【0142】
システムは、好適には、用量送達動作を実行するために送達面にかけなければならない最小の力が、使用信号をトリガするために可動部材にかけなければならない力より大きくなるように設計される。
【0143】
図4A図4Cは、動作の異なる段階を示すことによって、図4Aに関連して説明したシステムの動作を示す。図4Aで、システムは、用量送達動作を開始することができ、たとえば前の用量設定動作で用量が設定された構成にある。ダイヤル延長タイプのデバイスの場合、ユーザインターフェース部材1600は、設定された用量のサイズに比例する距離だけ、ハウジング(図示せず)に対して近位に変位されている。非ダイヤル延長部タイプのデバイスでは、ユーザインターフェース部材は、ハウジング10に対して、用量設定動作が開始された前の段階と同じ軸方向の位置に存在することができる。したがって、図4Aで、システム/デバイスは、使用者が送達動作を実行することを意図する前の状態にある。使用者が用量送達動作を開始しようとしたとき、使用者は、送達動作のためにユーザインターフェース部材1600を(少なくとも距離dだけ)動かすために、送達面1620に接近する。この動きが実行される前に、使用者は可動部材1670に到達し、接触面1675にタッチし、可動部材を送達面1620に対して第1の位置または初期位置から第2の位置または動作位置へ動かし、図4Bに動作位置が示されている。可動部材が変位されている間、ハウジング10または用量設定および駆動機構の別の構成要素1710に対するユーザインターフェース部材の動きまたは少なくとも著しい動きはない。用量設定および駆動機構は依然として用量設定構成にある。可動部材1670を動作位置の方へまたは動作位置内へ動かしている間に、閉センサまたはスイッチ記号1310によって示されている使用信号が生成される。また、付勢部材1680が付勢され、可動部材を近位にまたは初期位置の方へ動かす傾向がある。可動部材のうち使用者によって接触された部分は、送達面に対して同一平面または同一平面未満とすることができ、したがって少なくとも送達動作のための使用者の力の大部分が、送達面にかけられ、送達面によって反応される(これにより、システム内の電子機器を損傷するリスクが低減される)。可動部材が動作位置へ動かされたとき、使用者は送達面にタッチし、可動部材およびユーザインターフェース部材を遠位に動かし、機構を用量送達構成に切り換えることによって送達動作を開始することができる。この動きは、距離dだけ生じた10、1710へのユーザインターフェース部材本体および可動部材の動きによる図4Cに示すクラッチ係合の解放を伴う。クラッチ付勢部材1690は、この動きの間に圧縮される。図4Cの状況から、用量設定および駆動機構を介して使用者の力をユーザインターフェース部材(本体)からピストンロッド(明示せず)に伝達することによって、用量送達動作を実行することができる。たとえば設定された用量に対する送達動作を完了した後、使用者がユーザインターフェース部材1600、特にその送達面を解放したとき、可動部材1670は、付勢部材1680によって送達面に対してその初期位置の方へ近位に戻され、図4Aに示すように、再び送達面1620から近位に突出する。また、クラッチ付勢部材1690は弛緩し、クラッチインターフェースを再確立し、システム/デバイスはもう一度図4Aの状況になる。次いで、電子システムの電源を遮断することができ、信号送信ユニット(スイッチ1310)を介して次の送達動作のために再びウェークアップする準備ができる。
【0144】
図5A図5Cは、電子システムの別の実施形態を示す。このシステムは、図4A図4Cに関連して上記で論じたシステムに非常によく類似している。したがって、以下の議論では違いに注目する。図5Aの表現は図4Aの表現に対応し、可動部材1670は、ユーザインターフェース部材1600およびその送達面1620に対して第1の位置または初期位置にある。図5Bは、可動部材は第2の位置または動作位置へ動かされたが、用量設定および駆動機構は依然として用量設定構成にある状況を示す。図5Cは、機構が用量送達構成に切り換えられた状況を示す。
【0145】
図5A図5Cに示す実施形態では、システムは、機構部材1700および可動部材1670が互いからデカップリングされるように構成され、したがって送達面1620に対する初期位置から動作位置への可動部材1670の動き、またはその動きのための力が、可動部材から駆動機構部材1700へ伝達されず、または伝達可能でない。この目的で、たとえば機構部材1700がそこを通って突出するユーザインターフェース部材本体内の開口部によって、ユーザインターフェース部材本体1605と機構部材1700との間の相対運動、たとえば軸方向運動を可能にすることができる。付勢部材1680が部材1700を取り囲むことができ、または開口部の境界を定める本体1605の縁部上に付勢部材1680を支持することができる。
【0146】
図5Aの初期位置から開始して、まず可動部材1670が、送達面1620に対して初期位置から図5Bに示す動作位置へ動かされる。この動きの間、上記で論じたように使用信号が生成され、システムは、電子制御ユニットによって電力消費がより高い状態に切り換えることができ、この実施形態では、図4A図4Cと同様に、電子制御ユニットは明示的に示されていない。動作位置で、可動部材1670は、たとえば当接を介して、機構部材1700に動作可能に接続することができる。用量設定および駆動機構を用量送達構成に切り換えるためのユーザインターフェース部材1600のさらなる動きは、たとえば可動部材が再び送達面1620から突出するように、ユーザインターフェース部材本体1605と可動部材との間のたとえば遠位方向の相対運動を伴うことができる。この相対運動中、スイッチ1310がたとえば閉状態から開状態にその状態を再び変化させることができるように、スイッチ1310は可動部材1670に対して動かされ、それによりシステムの電力消費を低減させることができる。可動部材1670が再び送達面1620から近位方向に突出する図5Cに示す状況から、遠位方向に力がかけられた場合、用量送達動作を行うことができる。可動部材は、用量設定および駆動機構の用量送達構成で再び送達面から突出する。これにより、システムまたは機構を用量送達構成にうまく切り換えたという触覚フィードバックが使用者に与えられる。可動部材および/またはユーザインターフェース部材が使用者によって解放された後、たとえば前述のように付勢部材が弛緩するため、図5Aに示すシステムの部材間の元の状況を再確立することができる。
【0147】
図5Bに示すように機構部材1700を使用して可動部材1670に当接する代わりに、ハウジング10または部材1710に軸方向に固定される軸方向止め具を使用して、用量送達構成への切換え中の可動部材の動きを制限し、用量送達構成で可動部材を再び送達面から突出させた場合と同じ効果を実現することができることに留意されたい。
【0148】
したがって、この実施形態は、可動部材が送達面に対して動作位置に動かされて信号を生成し、ユーザインターフェース部材本体が用量設定および駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるように動かされたとき、ユーザインターフェース部材本体は可動部材に対して遠位に動き、したがって送達面に対してその初期位置につくシステムを提供する。記載のように、これによりシステムの状態に関するフィードバックが使用者に与えられ、信号送信ユニット/スイッチ1310の電力消費を低減させることもできる。
【0149】
図6A図6Cは、電子システムの別の実施形態を示す。このシステムは、図4A図5Cに関連して上記で論じたシステムに非常によく類似している。したがって、以下の議論では違いに注目する。
【0150】
図6Aに、ユーザインターフェース部材1600が送達面1620の斜視図で示されている。図6Aは、可動部材1670を送達面1620から盛り上がったその初期位置で示す。この実施形態では、可動部材1670は、表面上の異なる場所で送達面1620から突出する複数の部分1672を有する。各部分は、ユーザインターフェース部材本体1605内の専用の開口部を通って突出し、この開口部は円周方向に閉じた縁部または境界を有する。例示的なセクションを図6Aに1670a~1670cで示す。これらのセクションはすべて、同じ可動部材1670に属する。具体的には、これらのセクションは、ユーザインターフェース部材本体1605の内部に設けられた共通の本体1673に接続される。それに応じて、使用者がセクションのうちの1つにタッチし、このセクションを送達面に対して動かした場合、可動部材全体が送達面の方へ動かされる。この場合も、この動きを使用して、信号送信ユニット、たとえばスイッチ1310内で、使用信号の生成をトリガすることができる。可動部材1670は、好適には剛性を有する。したがって、可動部材は、初期位置から動作位置に動かされたときに弾性変形されない。送達面またはその面を形成するユーザインターフェース部材本体1605も同様に、好適には剛性を有する。
【0151】
可動部材のこれらの部分は、送達面1620の様々な場所に配置される。送達面1620の中心からより離れた部分は、特に円周または角度方向において、中心により近い部分より大きい延長を有することができる。図示の配置では、部分1670cの角度方向または円周方向の延長は、部分1670bおよび/または部分1670aの延長より大きい。それぞれの部分の径方向の延長は、角度方向の延長に沿って一定とすることができ、かつ/または異なる径方向位置であるが同じ角度方向の場所に配置されたセクション間で等しくすることができる。送達面1620の中心には、部分1672aを配置することができる。部分1672bおよび1672cのいくつかの角度方向に分離された行または線は、中心部分1672aから始まり、径方向に向けられる。当然ながら、突出部分1672の他の構成も、使用者が表面にタッチする前に可動部材が確実に動かされることを保証することが可能である。
【0152】
電子システム1000またはユーザインターフェース部材1600は、この場合も、デバイスユニットへの付属物とすることができ、またはデバイスに一体化することができる。この実施形態では、ユーザインターフェース部材1600または電子システム1000は、薬物送達デバイスユニットのための付属物であり、薬物送達デバイスユニットの部材、たとえば用量ノブまたは用量ボタンと相互作用して、ユーザインターフェース部材をデバイスの部材に堅く、好ましくは軸方向および回転不能にロックするように設計された接続機能1615を含む。接続機能1615を、たとえばスナップ嵌め接続するように設計することができる。接続は、電子システムを2つ以上の薬物送達デバイスとともに使用することができるように解放可能とすることができ、またはシステムがデバイスとともに1回の使用サイクル後に廃棄予定であるときは恒久的とすることができる。接続機能1615は図6Bに示されており、図6Bは、図6Aに示すものと同じ状況にある電子システムの概略断面図を示す。接続機能1615は、好適には、ユーザインターフェース部材本体1605の内部に配置される。ユーザインターフェース部材本体1605は、システムが用量設定および駆動機構の部材に接続されているとき、好ましくは部材に接続されて、力またはトルクを部材に伝達する。
【0153】
ユーザインターフェース部材1600またはシステムは、ユーザインターフェース部材部分1720をさらに含む。ユーザインターフェース部材部分1720は、たとえばスナップ嵌めまたは溶接によって、ユーザインターフェース部材本体に堅く、好適には回転不能および軸方向に接続または固定される。ユーザインターフェース部材部分は、カップ状とすることができる。ユーザインターフェース部材部分1720は、システム内の1つまたはそれ以上の電子または電気構成要素のためのキャリアとして働く。それぞれの構成要素は、部分1720の外壁によって範囲が定められた空間内に配置することができる。非限定的かつ非網羅的な例として、電子制御ユニット(図示せず)が配置された導体キャリア3000および電源1500が、図6Bに示されている。それぞれの構成要素は、ユーザインターフェース部材部分1720、たとえばその近位面に配置することができ、好ましくはそこに固定することができる。電気相互接続は図示されていないが、所望される場合、ユーザインターフェース部材本体内に設けることができる。接続機能1615は、ユーザインターフェース部材部分1720に設けられており、遠位方向に突出することができる。接続機能は、ユーザインターフェース部材本体によって画成される中空内に配置することができる。
【0154】
図6Bの断面図から明らかなように、信号送信ユニット1300、特にスイッチング機構1310が、可動部材1670に付随する。スイッチング機構は、力スイッチなどのスイッチとすることができる。信号送信ユニットは、導体キャリア3000とは異なる導体キャリア3010、たとえば回路基板に配置することができる。電源は、導体キャリア3000および3010間に配置することができる。導体キャリア3010は、好適には、導体キャリア3000より外部動作面の近くに配置される。どちらの導体キャリアも、剛性を有することができる。それぞれの導体キャリア3000、3010は、ユーザインターフェース部材本体1605、たとえば部分1720に対して、軸方向および回転不能に固定することができる。信号送信ユニット1300は、好適には、導体キャリア3000に設けることができる電子制御ユニット1100に導電接続される。
【0155】
図示の実施形態における遠位方向の動きに対応して、使用者が可動部材1670を送達面1620の方へ動かした場合、スイッチ1310がトリガされる。スイッチ1310をトリガするために、可動部材1670、たとえば遠位に向けられたその突起と、スイッチ1310との間に機械的接触が確立される。
【0156】
可動部材1670の部分1672によって画成される包絡面の形状は、この実施形態における送達面1620の包絡面の形状に整合する。それぞれの部分1672の径方向の延長は、好適には、可動部材1670が送達面1620に対して動かされた場合、使用者の指が主に送達面に接触するように、および/またはユーザインターフェース部材に作用する使用者の主な負荷が、好ましくは可動部材1670ではなく、送達面1620によって反応され、送達面1620へ伝達されるように選択される。別法または追加として、すでに上述したようにシステム内で動作位置を画成するための遠位端止め具は存在しない。
【0157】
可動部材1670が動作位置(図6C参照)へ遠位に動かされた状況で、スイッチ1310はトリガされている。可動部材は、スイッチ1310と相互作用するように本体1673の内面から遠位に突出するスイッチング機能1674を有することができる。スイッチは、トリガされると、上記でさらに略述したように、電子制御ユニット1100(この図では示されていない)にシステムを電力消費がより高い第2の状態に切り換えさせる使用信号を提供する。動作位置で、可動部材と使用者との間の接触面1675(すなわち、可動部材の部分のうち送達面1620から突出するまたは盛り上がっている近位を向いている表面)は、たとえば少なくとも0.1mmもしくは少なくとも0.2mmおよび/または多くとも0.8mmもしくは多くとも0.7mm、たとえば0.5mmだけ、送達面1620に対して凹んでいる。これにより、好適には端部止め具なしで、送達動作のための主な負荷を可動部材1670ではなく送達面にかけることを支援する。これを図6Cに見ることができる。この場合も、可動部材は、たとえば図6には明示的に示されていないが存在することができる付勢部材によって、図6Aに示すその初期位置の方へ付勢することができる。
【0158】
送達面から突出する可動部材1670のそれぞれの部分1672の範囲を、送達面から突出する可動部材のすべての他の部分から定めることができる。言い換えれば、突出部分は、好適には、ユーザインターフェース部材(本体)の外部で分離され、好ましくはユーザインターフェース部材(本体)の内部で本体1673に接続される。
【0159】
本体は、ユーザインターフェース部材の内壁、たとえばインターフェース部材本体1605および/またはインターフェース部材部分1720の壁との封止インターフェースを有することができる。この目的で、本体1673の外周全体に沿って、封止部材(図示せず)、たとえばoリングを設けることができる。このようにして、送達面の開口部を介して可動部材が設けられるにもかかわらず、電気または電子構成要素またはユニットを保持するユーザインターフェース部材内部の区画を外部に対して、たとえば湿気または汚れの侵入から封止することができる。相互に排他的な解決策に関係しない限り、異なる実施形態の構成を互いに組み合わせることができることが概して想定されるが、本明細書に論じる他の実施形態では、そのような封止部材を可動部材、たとえばその本体に設けることもできることにもはっきりと留意されたい。
【0160】
この実施形態では、スイッチ1310は、可動部材の下に取り付けられ、好ましくはユーザインターフェース部材本体1605に対して軸方向および/または回転不能に固定される。スイッチ1310は、好ましくは、すでに論じた用量設定および駆動機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるためのクラッチインターフェースの軸方向の係合解除の前にスイッチが動作することを確実にするために、非常に軽い動作力を有する。弱い力のマイクロスイッチを、スイッチ1310として使用することができる。可動部材に作用してスイッチをトリガするために必要とされる力は、クラッチインターフェースをたとえば確立状態(クラッチ機能が係合される)から解放状態(クラッチ機能が係合解除される)にまたはその逆に切り換えるために打ち勝たなければならない力より小さくすることができる。上述したように、クラッチインターフェースを切り換えるための力は、1~3Nとすることができる。スイッチをトリガするため、または可動部材を変位させるための力はより小さくすることができ、たとえば0.5Nとすることができる。
【0161】
その初期位置または第1の位置で、可動部材1670は、ユーザインターフェース部材本体1605の頂面または送達面1620から盛り上がった複数の接触面1675を呈する。その動作位置または第2の位置で、これらの接触面1675は、送達面または本体1605に対して同一平面未満になる。各接触面1675は、好ましくは、可動部材が軸方向に移動して信号送信ユニットを動作させた後(スイッチ1310をトリガすることによる)、次いで使用者の指、たとえば親指が、接触面ではなく送達面のみまたは主に送達面を押さえ付けるほど十分に小さい。これにより、使用者の指からユーザインターフェース部材へ、次に用量設定および駆動機構への主な負荷経路が、電子構成要素、たとえばスイッチを通過せず、代わりにデバイスを動作させて送達動作を行うために必要とされる送達力を伝達するように設計された剛性の本体またはその中に保持された構成要素を通過することを保証または支援する。
【0162】
図7A図7Cは、電子システムの別の実施形態を示す。この実施形態は、図4A図6Cに関連して上記で論じたシステムに非常によく類似している。したがって、以下の議論では違いに注目する。
【0163】
図7Aは、ユーザインターフェース部材1600の送達面1620の斜視図を示す。この場合も、前述の実施形態と同様に、可動部材1670が設けられる。具体的には、その少なくとも1つの部分1672(図示の実施形態では1つの部分のみであるが、複数の部分も可能である)が、送達面1620の開口部を通って突出し、使用者が接触するための接触面1675またはパッドを提供する。初期位置(図7Aおよび図7B)における接触面1675は、送達面1620から盛り上がっており、かつ/または近位にずれている。前述の実施形態は、剛性の可動部材1670に依拠する。それとは対照的に、この実施形態は、変形可能な、特に弾性変形可能な可動部材1670を利用する。この実施形態では、可動部材1670はエラストマーとすることができる。可動部材は、動作位置(図7C参照)につくように送達面1620に対して同一平面または同一平面未満になる前、またはそのときに、スイッチ1310に接触するように変形または屈曲させることができる。したがって、使用者が送達面に接触するとき、可動部材は動作位置にあり、スイッチ1310を含む信号送信ユニット1300によって使用信号が提供される。
【0164】
可動部材1670は、好適には、弾性変形可能な部材である。したがって、この部材は弾性変形することができ、変形されたときは、弾性回復力のため、その変形されていない形状を回復する傾向がある。それに応じて、弾性変形可能な可動部材1670が使用される場合、別個の付勢部材(上記でさらに論じた付勢部材1680参照)を省くことができ、弾性回復力を使用して、可動部材の初期位置を確立することができる。たとえば、部材1670は単体である。言い換えれば、すべての部分を同じ材料のものとすることができる。
【0165】
図7Bの断面図から明らかなように、可動部材1670は、接触面1675を形成することができる突出接触部分1676を有する。接触部分1676は、好ましくは、初期位置で部材1670の1つまたはそれ以上の他の部分、たとえばユーザインターフェース部材本体内の1つまたはそれ以上の内部部分より、軸方向に沿ってより大きい剛性および/または厚さを有する。軸方向は、可動部材の初期位置と動作位置をたとえば遠位方向に分離する方向とすることができる。接触部分1676には、たとえば隣接して、たとえば径方向に隣接して、可動部材の1つまたはそれ以上の弾性変形可能部分1677が接続される。変形可能部分1677は常に、ユーザインターフェース部材本体1605の内部に、すなわち可動部材またはその接触面1675の動作位置および初期位置に配置することができる。可動部材が動作位置の方へ動かされたとき、変形可能部分は、接触部分1676より大きい程度に屈曲および変形させることができる。接触部分1676は、その内面または遠位面によって、好適には送達面1620に対して軸方向に固定された導体キャリア3000に配置されたスイッチ1310と協働するように配置される。たとえば図6A図6Cと同様に、信号送信ユニットに対する他の配置も可能である。したがって、接触部分1676は、信号を提供するために、部材1670が図7Cに示す動作位置の方へ変位されたとき、スイッチ1310をトリガすることができる。可動部材1670を弾性変形させて部材1670を動作位置へ動かすために必要とされる力は、好適には機構を用量設定構成から用量送達構成に切り換えるために必要とされる力より小さい。
【0166】
可動部材にたとえばゴムまたは類似の材料のエラストマー部材を使用することで、この可動部材を使用してシステム内に電子構成要素をぴったりと封止し、封止を確立する可能性が提供される。この目的で、可動部材1670は、ユーザインターフェース部材(本体)の1つまたはそれ以上の内面に封止係合することができる。封止係合は、ぴったりとした封止を維持するための圧縮力の影響下で内面と可動部材との間の接触領域を維持する機械的な力によって強化することができる。封止は、電子構成要素などの内部構成要素を水および汚れの侵入から保護することができる。図示の実施形態では、可動部材は、封止部分1678を含む。封止部分1678は、好適には横方向または径方向に可動部材1670の境界を定める可動部材の縁部である。封止部分1678は、好ましくは、可動部材の径方向端部である。図示の実施形態では、封止部分1678は、可動部材の周りに円周方向に延びる。変形可能部分1677は、接触部分1676の周りに円周方向に延びることができる。封止部分1678は、変形可能部分1677を介して接触部分1676に接続される。封止部分1678は、好ましくは、ユーザインターフェース部材(本体)の2つの部材1601および1602間に締め付けられる。部材1601および1602は、可動部材がユーザインターフェース部材本体に組み立てられたとき、封止部分1678を変形または締付け状態で維持することができる。部材1601および1602は、たとえば図7Bおよび図7Cに示唆するねじ山を介して、互いに接続することができる。どちらの部材も、ユーザインターフェース部材本体に属することができる。この場合、どちらの部材も、ユーザインターフェース部材の外面の少なくとも一部分を形成することができる。この実施形態では、部材1601が送達面1620(場合により、設定面1610の一部)を形成し、部材1602が設定面1610(少なくともその一部)を形成する。別法として、一方の部材をユーザインターフェース部材の内部部材とすることができ、または両方の部材を内部部材とすることができる。したがって、可動部材のうち送達面1620から離れた側に配置されたユーザインターフェース部材1600の内部の区画が、送達面に対して封止される。この場合も、可動部材がそこを通って突出する送達面1620内の開口部は、好適には、少なくとも用量送達動作中に使用者が提供する力の大部分が、可動部材ではなく送達面によって反応されるほど、十分に小さくなるように構成される。これにより、ユーザインターフェース部材の内部の構成要素がより大きい負荷から保護される。
【0167】
この実施形態では、接触面1675、好ましくは小さい表面は、初期位置で送達面から盛り上がっている。接触面は、好ましくはこの場合も小さい力で変位し、スイッチ1310、たとえばマイクロ-スイッチを動作させるように設計される。完全に偏向されたとき、可動部材は、ユーザインターフェース部材本体の送達面1620と同一平面未満になるように設計される。可撓性の表面積は、好適には、可動部材が同一平面未満のその表面に対して同一平面未満になるように偏向された後、使用者の指、たとえば使用者の親指が周辺の剛性送達面に当たるのに十分に小さい。接触面積は、好ましくは、偏向された後、使用者が次いで可動部材の接触面ではなくユーザインターフェース部材本体の送達面のみまたは少なくとも主に送達面を押さえ付けるのに十分に小さい。これにより、送達中に使用者によって生成される主な負荷経路が、電子機器、たとえばスイッチを通過せず、代わりにデバイスの用量設定および駆動機構への剛性の本体を通過することが確実になる。エラストマー可動部材は、封止アセンブリを形成し、oリングなどの別個の封止部材を必要とすることなく、電子構成要素およびその周辺、たとえばプリント回路基板または導体を水および/または汚れの侵入などから保護する機会をさらに与える。
【0168】
図8A図8Cは、電子システム1000の別の実施形態を示す。このシステムは、図4A図7Cに関連して上記で論じたシステムに非常によく類似している。したがって、以下の議論では違いに注目する。
【0169】
図8Aは、送達面1620の斜視図を示す。可動部材1670は、図8Aに示す初期状態で複数の突出部分(図示の実施形態では8つの部分)を含む。部分1670aおよび1670bが、異なる方向に向けられているため、強調表示されている。部分1670aは角度方向に向けられている。部分1670bは径方向に向けられている。可動部材1670の径方向および角度方向に向けられた部分は、円周方向または角度方向に交互に位置することができる。可動部材1670のうち送達面1620から突出する部分の配置はまた、その数と同様に異なってもよいことを理解されたい。
【0170】
上記で論じた実施形態とは異なり、この実施形態では、シャトル部材1730が設けられる。シャトル部材1730は、好ましくは、電子システムの一部であり、ユーザインターフェース部材本体1605および/または外部動作面もしくは送達面1620に可動に接続される。シャトル部材1730は、ユーザインターフェース部材本体内で恒久的に保持することができる。この目的で、ユーザインターフェース部材本体に対するシャトル部材の遠位端止め具を制限する遠位運動を提供することができる。シャトル部材1730は、好適には、外部動作面(送達面1620)と、用量設定および駆動機構の部材、たとえば駆動スリーブまたは注射ボタンなどの上記でさらに論じた機構部材との間の力伝達経路内に配置されるように設けられる。電子システムが薬物送達デバイスユニットのための付属モジュールである場合、シャトル部材1730は、電子システムのうち電子システムを薬物送達デバイスユニットに接続するための接続機能1615を有するように構成された部材とすることができる。別法として、シャトル部材は、特に電子システムが薬物送達デバイスに一体化された場合、機構部材とすることができる。シャトル部材1730は、用量設定および駆動機構に動作可能に接続されたとき、シャトル部材1730が接続された用量設定および駆動機構の部材に対して軸方向に、好ましくは回転不能にロックされる。特に、外部動作面1620からシャトル部材1730へ伝達される軸方向の力の結果、特に用量送達動作のために、シャトル部材を介して、力を用量設定および駆動機構へ伝達することができる。シャトル部材は、好ましくは、ユーザインターフェース部材本体1605に回転不能にロックされる。このようにして、ダイヤルトルクを設定面1610から機構部材へ伝達することができる。シャトル部材は、連続する遠位面を有することができる。シャトル部材1730とユーザインターフェース部材本体1605の内壁との間のインターフェースは、好ましくは、たとえばoリングを介して封止される。
【0171】
用量設定および駆動機構との電子システムのインターフェースと、外部動作面(送達面1620)または可動部材1670との間には、シャトル付勢部材1740が動作可能に配置される。シャトル付勢部材1740、たとえばつる巻きばねなどの圧縮ばねは、力を送達面1620から用量設定および駆動機構へ送達動作のために伝達することができるようになるまで、付勢、たとえば圧縮されなければならないように配置することができる。これにより、用量設定および駆動機構を動作させることができるようになるまで、たとえば用量設定構成から用量送達構成に切り換えられる前に、可動部材1670が常に動作位置へ変位されること、または信号が生成されることが容易になる。たとえば、付勢部材1740は、シャトル部材1730と外部動作面(送達面1620)との間に動作可能に連結することができる。たとえば完全に圧縮されたとき、および/または可動部材が動作位置にあるとき、シャトル付勢部材1740の付勢力または予圧は、好適には、たとえばクラッチインターフェースが解放されたときに用量設定および駆動機構内のクラッチ付勢部材によって提供される力より小さい(上記のさらなる説明を参照されたい)。図示の実施形態では、図8Bから明らかなように、付勢部材1740は、ユーザインターフェース部材部分またはキャリア1720とシャトル部材1730との間に動作可能に配置される。キャリア1720は、システムの1つまたはそれ以上の電子構成要素またはユニットのためのキャリアとして提供することができる。図示の実施形態では、キャリアは、導体キャリア3000(電子制御ユニット1100を有する)、電源1500、および/またはスイッチ1310によって表される信号送信ユニット1300を有する導体キャリア3010のためのキャリアとして働くことができる。記載の構成要素またはユニットは、キャリア1720に軸方向に固定することができる。キャリア1720は、ユーザインターフェース部材本体1605に軸方向および回転不能に固定することができる。キャリア1720は、図7A図7Cに関連して説明した実施形態のユーザインターフェース部材部分に対応する。
【0172】
図8Bは、可動部材1670が動作位置へ動かされた状況を示す。部材は、上記で論じたその初期位置の方へ付勢することができ、この実施形態では付勢部材は示されていない。動作位置は、ユーザインターフェース部材本体または外部動作面に対する可動部材1670の当接または軸方向端部止め具によって画成することができる。この実施形態では、この端部止め具は、キャリア1720によって提供される。しかし、端部止め具を別の構成要素またはシステムによって設けることもできることに留意されたい。接触面1675は、動作位置で依然として送達面から盛り上がっているが、初期位置ほどその表面から突出していない。別法として、接触面1675は、送達面1620に対して同一平面または同一平面未満とすることができる。用量設定および駆動機構が用量設定構成から用量送達構成に切り換えられる前のこの位置で、付勢部材1740は依然として、たとえば領域1750(キャリアと図8Bのシャトル部材および図8Cの当接との間の自由空間を参照されたい)内のキャリア1720とシャトル部材1730との間の軸方向の当接を介して、外部動作面にかけられる力をシャトル部材へ伝達することができるようになるまで付勢される必要がある。したがって、図8Bと同様に、可動部材が動作位置にあるとき、用量設定および駆動機構がその構成を用量送達構成に切り換えて用量送達動作を駆動することができるようになるまで、付勢部材1740は依然として付勢されなければならない。付勢部材1740は、機構を用量送達構成に切り換えることができるようになるまでに使用者が打ち勝たなければならない、知られている予圧を提供することができる。付勢部材は、可動部材の初期位置ですでに付勢することができる。付勢部材1740は、可動部材の初期位置で送達面1620をシャトル部材から離れる方へ付勢することができる。付勢部材は、機構が用量送達構成に切り換えられる前に使用信号が生成される/スイッチ1310がトリガされるように寸法設定または構成することができる。しかし、使用者は、シャトル部材および/または機構部材によって駆動係合または用量送達インターフェースを確立することができるようになるまで、付勢部材1740に逆らって作用しなければならない。
【0173】
キャリア1720は、運動感知ユニットの光電子光源を起点とし、運動感知ユニットによって動きが監視されるべき機構部材上の感知面またはエンコーダ面に向かう光を案内するためのライトガイドとして働くことができ、またはそのようなライトガイドを含むことができる。運動感知ユニットは、好適には、導体キャリア3000に配置される。電源ならびに導体キャリア3000および3010の配置は、ユーザインターフェース部材内に構成要素を配置する1つの可能な実装例の単なる一例であることに留意されたい。この実装例は、構成要素がユーザインターフェース部材1600に、たとえば上記でさらに指定した寸法のうちの1つに適合することができるように、空間要件に対して最適化することができる。
【0174】
図8Bの状況から、送達面がシャトル部材に対して遠位に変位されたとき、付勢部材1740がさらに付勢、たとえば圧縮されて、図8Cに示す状況が現れ、キャリア1720がシャトル部材1730に当接して送達力を送達面から用量設定および駆動機構へ伝達することによって、力伝達係合が確立される。
【0175】
すべての公差条件(用量設定および駆動機構ならびに電子システムの公差を考慮する)で、用量送達動作が開始される前に、たとえば1つの機構部材が他の機構部材に対して動かされてクラッチインターフェースを切り換える前に、または少なくともクラッチインターフェースが切り換えられる前に、信号が生成されることが保証されるため、使用者の力(付勢部材1740を付勢するために必要とされる)の増大を許容することができる。付勢部材の付勢ばね力に打ち勝った後、使用者によって提供されるあらゆる追加の力は、用量送達動作を駆動するように作用する。
【0176】
前述の実施形態と同様に、スイッチ1310は、システムの電子構成要素のうちの1つまたはそれ以上に対して、たとえば使用者が送達面1620に遠位負荷を印加するときのスイッチに対して、移動するように設計された可動部材1670の下に取り付けられる。スイッチ、たとえばマイクロスイッチは、好適には、デバイス内のクラッチの係合解除または解放前にスイッチが動作することを確実にするために、非常に軽い動作力を有する。前述の実施形態とは異なり、デバイスの用量設定および駆動機構の注射ボタンまたは別の構成要素を軸方向に変位させるための力より小さい力でスイッチが確実に動作することができることを保証するために、シャトル部材1730および付勢部材が追加される。
【0177】
シャトル部材1730は、用量設定および駆動機構に接続されたとき、送達面1620に対して遠位方向に(この実施形態では付勢部材1740によって)軸方向に付勢することができる。付勢部材1740は、すべての公差条件で予圧を提供して、ユーザインターフェース部材本体1605、キャリア1720、および/または電子構成要素を、知られている力によって近位に付勢するように構成することができる。システムは、好適には、すべての公差条件で、用量設定および駆動機構、たとえばその用量ボタンへの電子システムの接続が、付勢部材1740に対するシャトル部材のある程度の圧縮を生じさせ、それによって(知られている)予圧を生成するように設計される。
【0178】
ユーザインターフェース部材1600は、予圧を超過するまで、軸方向に動いて駆動機構を動作させることができない。機構部材を動かすことによって用量設定および駆動機構を動作させないシャトル部材に対するユーザインターフェース部材の動きは可能である。可動部材1670は、予圧より小さい力でスイッチ1310に係合するように確実に設計することができ、それによりスイッチが動作されるまで用量送達動作が始動または開始されないことが保証される。この概念は、エラストマーまたは剛性の可動部材によって実現することができる。
【0179】
シャトル部材がユーザインターフェース部材本体に対して可動であり、信号送信ユニットがユーザインターフェース部材本体に対して固定されることに対する代替として、機構を用量送達構成に切り換えるためにユーザインターフェース部材本体が動かされるとき、外部動作面が信号送信ユニットに対して可動とすることができる。この場合、シャトル部材は、ユーザインターフェース部材本体に固定された部材とすることができる。付勢部材1740は、キャリア1720を動作面1620の方へ付勢することができる。スイッチ1310を介して信号を生成するために、可動部材1670は動作位置にある必要がある。加えて、信号送信ユニットまたはスイッチ1310に向かう外部動作面の動きを必要とすることができる。
【0180】
前述の実施形態は、多くの場合、可動部材1670のうち初期位置で外部動作面から突出する部分を使用したものであり、これらの部分は、送達面1620を上面視で見たとき、ユーザインターフェース部材の表面の連続する区域を含んだ。すなわち、その表面を上面視で見たとき、可動部材のいずれの部分も送達面1620の領域を取り囲まなかった。
【0181】
図9は、送達面の上面図を使用して、送達面1620上の可動部材1670の突出部分1672がリング状の構成を有する一実施形態を示す。したがって、この部分は、送達面の領域を全体的に取り囲む。これは、突出部分の異なる構成が可能であることを強調したものである。前述した残りの動作原理は、この実施形態でも存続する。
【0182】
上記で開示した実施形態が可能な実施形態のすべてではないことに留意されたい。上述した実施形態は、可動部材が動作位置に到達したとき、または少なくとも用量設定および駆動機構が用量送達構成に切り換えられる前、場合により外部動作面および/または可動部材が信号送信ユニットおよび/または機構部材に対して遠位方向に変位された後、電力消費がより高い状態へのシステムの切換えをトリガするための信号の生成を有効にする。
【0183】
異なる実施形態からの構成の様々な組合せは、特にその組合せが実施形態間の矛盾によって明示的に除外されない限り、本開示の範囲内であることが、当業者には理解されよう。
【0184】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0185】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0186】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0187】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0188】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0189】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0190】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0191】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0192】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0193】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0194】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0195】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0196】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0197】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0198】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0199】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0200】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0201】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製法、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正例およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0202】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されている針ベースの注射システムを含むことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数用量の容器システムおよび単一用量(一部または完全排出)の容器システムに広く区別することができる。容器は、交換可能な容器または一体化された交換不能の容器とすることができる。
【0203】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定または可変(使用者によって事前設定される)とすることができる。別の複数用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定または可変(使用者によって事前設定される)とすることができる。
【0204】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単一用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。そのようなシステムに対する一例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部分が排出される(一部排出)。やはりISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単一用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。そのようなシステムに対する一例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部分が排出される(一部排出)。
【0205】
保護範囲は、本明細書に上述した例に限定されるものではない。本明細書に開示する発明は、各々の新規な特性および各々の特性の組合せで実施され、そのような特性は特に、その構成または構成の組合せが特許請求の範囲または例に明示的に記載されていない場合でも、特許請求の範囲に記載する構成のすべての組合せを含む。
【符号の説明】
【0206】
1 注射デバイス、薬物送達デバイス、またはデバイスユニット
10 ハウジング
12 投与量ノブ
11 注射ボタン
13 窓
14 容器
15 針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 キャップ
70 ダイヤルまたは数字スリーブ
71a~71c 形成物
1000 電子システム
1100 電子制御ユニット
1200 運動感知ユニット
1300 信号送信ユニット
1310 スイッチ
1400 通信ユニット
1500 電源
1600 ユーザインターフェース部材
1605 ユーザインターフェース部材本体
1610 設定面
1615 接続機能
1620 送達面
1670 可動部材
1671 機能
1672 部分
1672a 部分
1672b 部分
1672c 部分
1673 本体
1674 スイッチング機能
1675 接触面
1676 接触部分
1677 変形可能部分
1678 封止部分
1680 付勢部材
1690 クラッチ付勢部材
1700 部材
1710 部材
1720 ユーザインターフェース部材部分
1730 シャトル部材
1740 付勢部材
1750 領域
3000 導体キャリア
3010 導体キャリア
距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】