(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】高スループット堆積方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240129BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240129BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544522
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022012995
(87)【国際公開番号】W WO2022164698
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フィリップ エス.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】コンド, エリック
(72)【発明者】
【氏名】カイパー, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ディメオ, スーザン ヴィー.
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA29
4K030BA35
4K030FA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA11
4K030JA16
4K030LA15
5F058BA08
5F058BA09
5F058BB02
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC02
5F058BC04
5F058BC08
5F058BC10
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5F058BF07
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF36
5F058BF37
5F058BF39
(57)【要約】
本発明は、エッチング耐性SiOCN膜を堆積させるためのPEALD方法を提供する。これらの膜は、改良された成長速度、改良された段差被覆性、ならびにウェットエッチング剤およびO
2共反応物を含有する堆積プラズマ後処理に対する優れたエッチング耐性を提供する。一実施態様において、このPEALD方法は、SiOCNのエッチング耐性薄膜を堆積させるために、水素プラズマと共に、単一の前駆体-ビス(ジアルキルアミノ)テトラアルキルジシロキサンに依存する。膜は単一の前駆体を用いて堆積され得るため、方法全体が改良されたスループットを発現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイス表面上へのシリコン酸炭窒化物膜の蒸着のための方法であって、
a.少なくとも1つの下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および
b.膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガスまたは酸化性ガス
から選択される反応物を反応ゾーン内に導入することを含む、方法。
【請求項2】
各R
1がエチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各R
2がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元性ガスが、水素、ヒドラジン;メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
還元性ガスが水素である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸化性ガスが、酸素、酸素プラズマ、オゾン、水、および亜酸化窒素から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
所望の厚さの膜が得られるまで、a.およびb.を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マイクロ電子デバイス表面上へのシリコン酸炭窒化物膜の蒸着のための方法であって、
a.少なくとも1つの下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および
b.膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガス
から選択される反応物を反応ゾーン内に導入することを含む、方法。
【請求項9】
各R
1がエチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各R
2がメチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
還元性ガスが、水素、ヒドラジン;メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
還元性ガスが水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
所望の厚さの膜が得られるまで、a.およびb.を繰り返すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により形成されたシリコン酸炭窒化物膜が、250ワットでの酸素プラズマに60秒間暴露された際に、窒化ケイ素基準サンプル上に、最少で約2.5オングストロームのアッシングダメージ差を発現する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物。
【請求項16】
各R
1がエチルであり、各R
2がメチルであり、および各R
3がエチルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
各R
1がイソプロピルであり、各R
3が水素であり、および各R
2がメチルである、請求項15に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全体として、本発明は、マイクロ電子デバイス表面上にシリコン酸炭窒化物(SiOCN)の薄膜を堆積させるための材料および方法に関する。これらの膜は、優れたウェットエッチング耐性およびドライエッチング耐性ならびにアッシング耐性を有する低誘電率絶縁体として作用する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素(SiN)は、その高いウェットエッチング耐性および酸素(O2)アッシング耐性に起因して、電界効果トランジスタ(FinFET)および全周ゲート(GAA)構造用のソースおよびドレインスペーサー(S/Dスペーサー)に利用されてきた。しかしながら、SiNは、約7.5の高い誘電率(k)を有する。炭素および窒素がドープされた二酸化ケイ素(SiO2)SiOCNスペーサーは、誘電率を低下させ、そして優れたエッチング耐性およびアッシング耐性を維持させるために開発されてきた。現在、最も良好なエッチング耐性およびアッシング耐性SiOCN誘電体のk値はおよそ4.0である。k値が<3.5であるエッチング耐性およびアッシング耐性誘電体が次世代デバイスに必要とされている。
【0003】
加えて、マイクロ電子デバイスの製造における、特にSiOCN膜の形成に利用される低温蒸着技術を利用する方法における、ケイ素含有膜の形成のための改良された有機シリコン前駆体の需要が依然存在する。特に、良好な熱安定性、高い揮発性、および基材表面との反応性を有する液体のケイ素前駆体の需要が存在する。
【0004】
デバイス性能の向上は、トランジスタおよび相互接続回路の双方を隔離する能力を高めるための新たな材料を要する。これらの膜は、多くの場合、低い誘電率特性(すなわち、<4)を要する一方で、ウェットエッチング耐性およびドライエッチング耐性を含むデバイス作製の間の後続の加工工程への耐性も要する。さらに、堆積された絶縁体は、堆積後処理に暴露された際に変化してはならない。これらの膜がフロント・エンド・オブ・ラインで堆積された際、膜は、FinFETデバイスでみられるように、全体の構造にわたって均一な誘電性特性を示しながらも、3D構造を等角的に被覆するものでなければならない。膜はデバイス内に残るため、電気的性能は、堆積後処理で変化させることはできない。プラズマベースの堆積方法は、多くの場合、不均一な電気的特性を有する膜をもたらし、膜の最上部が、強化されたプラズマ衝撃により改変される。同時に、同一の膜で被覆された3D構造の側壁は、堆積の間に低減された電子衝撃の結果、多様な特性を示し得る。にもかかわらず、膜は、酸化雰囲気または還元雰囲気下のウェットエッチングおよび/またはプラズマ後処理を耐えるものでなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、エッチング耐性SiOCN膜を堆積させるためのプラズマ励起原子層堆積(PEALD)方法を提供する。これらの膜は、改良された成長速度、改良された段差被覆性、ならびにウェットエッチング剤およびO
2共反応物を含有する堆積プラズマ後処理に対する改良されたエッチング耐性を提供する。このPEALD方法は、SiOCNのエッチング耐性薄膜を堆積させるために、水素プラズマと共に、単一の前駆体、例えばビス(ジアルキルアミノ)テトラアルキルジシロキサンに依存する。膜は単一の前駆体を用いて堆積され得るため、方法全体が改良されたスループットを発現する。膜は、堆積後および堆積プラズマ後処理の後の両方において、薄いフッ化水素酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングに対する耐性を示す。従って、これらの膜は、デバイスの製造および組み立ての間に利用される堆積後の作製工程に対して優れた安定性を示すことが期待される(参照
図2および
図3)。
【0006】
第一の態様において、本発明は、マイクロ電子デバイス表面上にSiOCN膜を蒸着させるための方法であって、以下から選択される反応物:
a.少なくとも1つの下記式
b.[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガスまたは酸化性ガス
を前記反応ゾーン内に導入することを含む方法を提供する。
【0007】
本開示は、添付の図面と関連付けて以下の各種例示的な実施形態の説明を考慮することでより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】PEALDサイクル数に対するオングストロームでのSiOCN厚さを示した図である。このデータは、ビス(ジエチルアミノ)テトラメチルジシロキサンを使用して、265℃、ケイ素前駆体の2秒パルスの後に、250ワットでの水素プラズマの5秒パルスを行う原子層堆積(ALD)条件を使用して生成された。方法は、1サイクルあたり約0.2Åの膜形成をもたらした。
【
図2】エッチング時間に対する酸化物の厚さを示した図であり、50:1希釈フッ化水素酸(DHF)を用いた、1分あたり0.1Å未満のウェットエッチング耐性(WER)を図示している。本発明のSiOCN膜は、熱酸化と比較されている。
【
図3】本発明のSiOCN膜の、堆積直後と、100から400ワットに及ぶアッシングプラズマ出力に暴露された後のエッチング深さとを比較した、エッチング深さの差を示した図である。このデータは、100ワットで1分あたり約7Åのアッシング深さを図示している。このデータは、SiNと比較した同等のアッシング耐性を図示している。
【
図4】膜の各種深さでの実施例1のSiOCN膜の構成原子の原子パーセンテージのXPSを示した図である。膜のバルクでは、組成は下記のとおりである:炭素16.6原子パーセンテージ、窒素19.3原子パーセンテージ、酸素を24.7原子パーセンテージ、およびケイ素を39.4原子パーセンテージ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているとおり、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は、その内容に明確に言及されていない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているとおり、用語「または(or)」は通常、その内容に明確に言及されていない限り、「および/または」を含むその意味で用いられる。
【0010】
用語「約(about)」は、通常、引用された値(例えば、同一の機能または結果を有するもの)と同等であると考えられる数の範囲を指す。多くの例において、用語「約(about)」は、最も近い有効数字に四捨五入される数も含み得る。
【0011】
端点を使用して表現された数値範囲は、その範囲内に包含された全ての数を含む(例えば、1から5は、1,1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0012】
第一の態様において、本発明は、反応ゾーンにおいてマイクロ電子デバイス表面上にSiOCN膜を蒸着させるための方法であって、以下から選択される反応物:
a.少なくとも1つの下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および
b.膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガスまたは酸化性ガス
を前記反応ゾーン内に導入することを含む方法を提供する。
【0013】
方法工程において、a.およびb.は、1つのサイクルを含むパルスシーケンスを表す。このサイクルは、堆積された膜が所望の厚さに到達するまで繰り返してもよい。
【0014】
この方法において、式(I)の化合物は、R
1が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択され、R
2が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択され、ならびにR
3が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択されるものを含む。この方法において、R
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである。一実施形態において、各R
1および各R
3がエチルであり、各R
2がメチルであり、すなわち、下記式の化合物である。
【0015】
本明細書において使用されているとおり、用語「SiOCN」膜は、ケイ素、酸素、炭素、および窒素を各種比率で含有する膜を指す。一つの実施形態において、本発明は、およそ
(i)ケイ素を30から50原子パーセンテージ;
(ii)窒素を5から30原子パーセンテージ;
(iii)炭素を2から25原子パーセンテージ;および
(iv)酸素を20から40原子パーセンテージ
有する膜を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、およそ
(i)ケイ素を25から45原子パーセンテージ;
(ii)窒素を10から25原子パーセンテージ;
(iii)炭素を5から20原子パーセンテージ;および
(iv)酸素を25から35原子パーセンテージ
有する膜を提供する。
【0017】
特定の実施形態において、本発明のSiOCN膜は、窒素を約15から約20原子パーセンテージ有し、および他の実施形態において、炭素を約8から約18原子パーセンテージ有する。
【0018】
一般に、式(I)の化合物は、第一級または第二級アミンを有する、対応するハロジシロキサンの処理により調製することができる。
【0019】
化合物は、あらゆる好適なALD技術、およびパルスプラズマ方法により高純度のケイ素含有薄膜を形成するために採用され得る。このような蒸着方法は、約200℃から約550℃の堆積温度を利用することにより、マイクロ電子デバイス上にケイ素含有膜を形成するために利用することができ、厚さが約20オングストロームから約200オングストロームである膜を形成することができる。
【0020】
本発明の方法において、式(I)の化合物は、あらゆる好適な手法で、例えば、単一のウエハチャンバ内、または複数のウエハを含有する炉内で、所望のマイクロ電子デバイス基材と共に反応させてもよい。
【0021】
あるいは、本発明の方法は、ALD様の方法のように実施することもできる。本明細書中で用いられる用語「ALDまたはALD様の」は、それぞれの反応物を単一のウエハALD反応器、セミバッチALD反応器、もしくはバッチ炉ALD反応器等の反応器内に連続的に導入する方法、または、反応器の各種セクションに基材を移動または回転させることにより、そしてそれぞれのセクションが不活性ガスカーテンにより隔離されている、すなわち、空間的ALD反応器またはロール・ツー・ロールALD反応器で、それぞれの反応物が基材またはマイクロ電子デバイス表面に対して暴露される方法を指す。
【0022】
一つの実施形態において、本発明は、プラズマ形態の還元性ガスと共に、式(I)の化合物を使用してSiOCN膜を堆積させるためのPEALDに関する。窒素プラズマは、式(I)の化合物および本明細書で教示されたとおりのプラズマ形態の還元性ガスを利用する間に、より高い窒素原子パーセンテージを有する膜の形成に有用であり得る。したがって、別の態様において、本発明は、反応ゾーンにおいてマイクロ電子デバイス表面上にSiOCN膜を蒸着させるための方法であって、以下から選択される反応物:
a.少なくとも1つの下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および
b.膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガス
を前記反応ゾーン内に連続的に導入することを含む方法を提供する。
【0023】
本明細書において使用されているとおり、用語「プラズマ形態の還元性ガス」は、N2、ヘリウムもしくはアルゴン等の不活性ガス単独、またはH2と組み合わせたその不活性ガスから形成されたプラズマと組み合わせて利用される、水素(H2)、ヒドラジン(N2H4);メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジン等のC1-C4アルキルヒドラジンから選択されるガスからなるプラズマ形態の還元性ガスを意味する。例えば、アルゴン等の不活性ガスの連続的なフローが利用されると同時に無線周波数電磁場(Rf)電磁場が投入され、その後、水素の投入によりプラズマH2を供給する。通常、利用されるプラズマ出力は13.6MHzで約50から500ワットに及ぶ。
【0024】
同様に、酸化性ガスは、膜の酸素含有量を増加させ、かつ炭素含有量を低下させるために、膜の堆積の各種サイクルにおいて利用してもよい。好適な酸化性ガスは、O2、O2プラズマ、オゾン(O3)、水(H2O)、および亜酸化窒素(N2O)を含む。酸化性ガスパルスを利用する実施形態は、他のパルスシーケンスでの還元性ガスの使用と共に、順次使用してもよい。
【0025】
特定の実施形態において、上記で表された反応物(すなわち、式(I)の化合物およびプラズマ形態の還元性ガス)のパルス時間(すなわち、基材に対する暴露時間)は、約1から10秒の間に及ぶ。パージ工程が利用される際、時間は約1から10秒または2から5秒である。他の実施形態において、それぞれの反応物のパルス時間は約2から約5秒に及ぶ。
【0026】
本明細書に開示された方法は、1つまたは複数のパージガスを要する。未消費の反応物および/または反応副生成物を一掃するために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスには、これらに限定されないが、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、およびそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、Ar等のパージガスは、反応器内に約10から約2000sccmに及ぶ流量で約0.1から1000秒間供給され、未反応の材料および反応器内に残存し得るあらゆる副生成物をパージする。
【0027】
式(I)の化合物、プラズマ形態の還元性ガス、および/または他の前駆体、ソースガス、および/または試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するシーケンスを変更する、および/または結果的に得られる誘電性膜の化学量論的組成を変化させることにより実施してもよい。
【0028】
本発明の方法において、エネルギーは、反応を誘導し、かつマイクロ電子デバイス基材上にSiOCN膜を形成するために各種反応物に対して与えられる。エネルギーは、これらに限定されないが、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合型プラズマ、リモートプラズマ方法、およびそれらの組み合わせにより提供されてもよい。特定の実施形態において、第二のRF周波数源は、基材表面におけるプラズマ特性を変更するために使用してもよい。堆積がプラズマを要する実施形態において、プラズマ生成方法は、プラズマが反応器内で直接的に生成されるダイレクトプラズマ生成方法、または代替的に、プラズマが反応ゾーンの「遠隔で」生成され、かつ基材が反応器内に供給されているリモートプラズマ生成方法を含んでいてもよい。
【0029】
本明細書において使用されているとおり、用語「マイクロ電子デバイス」は、メモリセルが複数の層(3D NAND)構造内で垂直方向に積層された1つの不揮発性フラッシュメモリ、フラットパネルディスプレイ、およびマイクロ電子、集積回路、またはコンピューターチップ用途の使用のために製造される微小電気機械システム(MEMS)を含む半導体基材に相当する。用語「マイクロ電子デバイス」は、いかなる方法によっても限定することを意図するものではないが、n型金属酸化物半導体(nMOS)および/またはp型金属酸化物半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロ電子デバイスまたはマイクロ電子部品になり得るあらゆる基材を含むものであると理解すべきである。そのようなマイクロ電子デバイスは、例えば、ケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化された炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化された窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化された炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止被覆、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、柔軟な基材、多孔性無機材料、銅およびアルミニウム等の金属、ならびに、これらに限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、またはWN等の拡散バリア層から選択され得る少なくとも1つの基材を含有する。膜は、例えば、化学機械研磨(CMP)および異方性エッチング方法等の様々な後続の加工工程と適合性がある。
【0030】
これらの膜はウェットエッチング剤およびO
2プラズマに対する低いエッチング耐性を提供する。O
2プラズマアッシング方法は、340℃および3Torr圧で500sccmO
2フローならびに100、250および400Wのプラズマ出力で1分間実施された。この点に関し、
図3を参照すると、本発明は、別の態様において、250ワットの酸素プラズマに60秒間暴露された際に、窒化ケイ素基準試料上にわずか約2.5オングストロームのアッシングダメージ差を発現するSiOCN膜を提供する。
【0031】
上述のとおり、特定の実施形態において、本発明のSiOCN膜は、窒素を約15から約25原子パーセンテージ、および炭素を約16原子パーセンテージ有する。本発明の方法を利用することにより、誘電率(k)が約5未満であるそのようなSiOCN膜を調製することができる。
【0032】
一般に、このように調製されたSiOCN膜の所望の厚さは約20Åから約200Åである。
【0033】
式(I)前駆体間の相互作用を介した、窒素を用いたkの低いSiCO膜のドーピング、および後続のH2プラズマを用いた反応は、結果的に得られるSiOCN膜のウェットエッチング耐性およびO2プラズマアッシング耐性を劇的に改善する。
【0034】
本発明の方法において、式(I)前駆体の流量は、PEALD1サイクルあたり約10から50mgであってもよい。
【0035】
別の態様において、本発明は、下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物を提供する。
【0036】
そのような化合物は、ケイ素含有膜の堆積における前駆体として有用である。一つの実施形態において、各R1がエチルであり、各R2がメチルであり、および各R3がエチルである。別の実施形態において、各R1がイソプロピルであり、各R3が水素であり、および各R2がメチルである。
【0037】
本発明は、本発明の特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に説明のために含まれるものであり、特に指示しない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではないと理解されるであろう。
【実施例】
【0038】
実施例1
単一の前駆体としてビス(ジエチルアミノ)テトラメチルジシロキサンを使用した堆積
【0039】
PEALDのSiCON堆積は、300℃のサセプタ温度、170℃のシャワーヘッド温度、3Torrのチャンバ圧力、および500sccmの周囲の不活性ガスフローでPEALDシステムを使用して実施された。堆積中のクーポン温度はおおよそ265℃であった。
【0040】
H2プラズマは、シャワーヘッドとサセプタ/ウエハとの間にプラズマを発生させるダイレクトプラズマシステムを使用して発生させた。プラズマ出力は250Wで固定され、プラズマパルス時間は5秒で固定された。
【0041】
SiOCNのPEALDのパルススキームは、下記から構成された:
1. 2秒間の[ビス(ジエチルアミノ)テトラメチルジシロキサン]前駆体パルス
2. 5秒間の不活性ガスパージ
3. 5秒間のH2プラズマパルス
4. 5秒間の不活性ガスパージ
【0042】
実施例2
1,3-ビス(ジエチルアミド)テトラメチルジシロキサンの合成
【0043】
機械撹拌機、熱電対、ガス/真空入口アダプター、およびチューブ入口を有するコンデンサーを備えた4つ口5L丸底フラスコに、400mLのジエチルアミン(3.87モル、4.4当量)および3Lの無水ジエチルエーテルを加えた。ガス/真空入口弁を有する1Lフラスコに、600mL無水ヘキサン中の1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを173mL(0.885モル、1.0当量)充填した。両方のフラスコをブライン浴中で約-5℃まで冷却した後、PTFEチューブと接続した。内部温度が0℃未満で保持されるように、撹拌されたアミン溶液に、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン溶液を一部分ずつ加えた。追加が完了した際に、反応物を常温まで徐々に温め、48時間撹拌した。ジエチルアミン塩酸塩を大量に含有していた反応混合物を不活性雰囲気下で5Lフラスコ内にろ過し、2×1.5Lアリコートの無水ジエチルエーテルで塩を洗浄した。真空中で濾液から溶媒を除去し、結果的に得られた透明な黄色油状物(230.7g)を短経路蒸留ヘッド内で100mtorr圧で蒸留し、156.5gの生成物(収率64%、純度>98%)を得た。1H NMR (d6-ベンゼン): d 2.85 (q, 2H), 1.09 (t, 3H), 0.19 (s, 2H). 13C NMR (d6-ベンゼン): d 40.5, 16.7, 0.7. 29Si NMR (d6-ベンゼン) -13.4
【0044】
実施例3
1,3-ビス(イソプロピルアミド)テトラメチルジシロキサンの合成
【0045】
機械撹拌機、熱電対、ガス/真空入口アダプター、およびチューブ入口を有するコンデンサーを備えた4つ口5L丸底フラスコに、イソプロピルアミン(4.4当量)および3Lの無水ジエチルエーテルを加えた。ガス/真空入口弁を有する1Lフラスコに、600mL無水ヘキサン中の1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを173mL(0.885モル、1.0当量)充填した。両方のフラスコをブライン浴中で約-5℃まで冷却した後、PTFEチューブと接続した。内部温度が0℃未満で保持されるように、撹拌されたアミン溶液に、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン溶液を一部分ずつ加えた。追加が完了した際に、反応物を常温まで徐々に温め、48時間撹拌した。イソプロピルアミン塩酸塩を大量に含有していた反応混合物を不活性雰囲気下で5Lフラスコ内にろ過し、2×1.5Lアリコートの無水ジエチルエーテルで塩を洗浄した。真空中で濾液から溶媒を除去し、結果的に透明な黄色油状物が得られた。この油状物を後続の真空蒸留により精製した。
【0046】
このように、本開示のいくつかの例示的な実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲内で、さらに他の実施形態を作成し、使用できることを容易に理解するであろう。本明細書により包含される本開示の多数の利点が、前述の説明において明記されている。しかしながら、本開示は、多くの点で、例示に過ぎないことが理解されるであろう。当然ながら、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイス表面上へのシリコン酸炭窒化物膜の蒸着のための方法であって、
a.少なくとも1つの下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物;および
b.膜を次の反応物に暴露させる前のそれぞれの反応物とパージさせたプラズマ形態の還元性ガスまたは酸化性ガス
から選択される反応物を反応ゾーン内に導入することを含む、方法。
【請求項2】
各R
1がエチルであ
り、各R
2
がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元性ガスが、水素、ヒドラジン;メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の方法により形成されたシリコン酸炭窒化物膜が、250ワットでの酸素プラズマに60秒間暴露された際に、窒化ケイ素基準サンプル上に、最少で約2.5オングストロームのアッシングダメージ差を発現する、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
下記式
[式中、各R
1が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され、各R
2が水素およびC
1-C
4アルキルから独立して選択され;ならびに各R
3が水素およびC
1-C
4アルキルから選択され、但しR
3が水素である場合、R
1はC
1-C
4アルキルである]の化合物。
【国際調査報告】