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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】用量計数システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240130BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61M5/315
A61M5/315 550R
A61M5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547786
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022052802
(87)【国際公開番号】W WO2022171549
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21315019.6
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アラディングス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL30
4C066QQ32
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ79
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
注射デバイスまたは注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システムであって、用量計数システムは:第1の信号を出力するように構成された第1のセンサおよび第2の信号を出力するように構成された第2のセンサを含むセンサ装置であり、第1のセンサおよび第2のセンサは、互いに対して角度オフセットを有し、センサ装置は、薬剤の投与中にセンサ装置に対する回転エンコーダシステムの動きを検出するように構成される、センサ装置と;プロセッサとを含み、プロセッサは:第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算し;第1および第2の微分信号値が所定の閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出し;第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークが同時であり、第1の信号の微分値内のピークが第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有し、かつ第1の信号の微分値内のピークが第1の信号の微分値内の前のピークに対して異なる符号を有するとき、薬剤の単位が投与されたと判定し;投与された薬剤の単位を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定するように構成される。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(1)または注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システム(700)であって:
第1の信号を出力するように構成された第1のセンサ(215a)および第2の信号を出力するように構成された第2のセンサ(215b)を含むセンサ装置(215)であって、第1のセンサ(215a)および第2のセンサ(215b)は、互いに対して角度オフセットを有し、センサ装置(215)は、薬剤の投与中にセンサ装置(215)に対する回転エンコーダシステム(500、900)の動きを検出するように構成される、センサ装置(215)と;
プロセッサ(23)とを含み、該プロセッサ(23)は:
第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算し;
第1および第2の微分信号値が所定の閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出し;
第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークが同時であり、第1の信号の微分値内のピークが第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有し、かつ第1の信号の微分値内のピークが第1の信号の微分値内の前のピークに対して異なる符号を有するとき、薬剤の単位が投与されたと判定し;
投与された薬剤の単位を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定するように構成される、前記用量計数システム。
【請求項2】
プロセッサ(23)は、第1の信号および第2の信号の一連の値の移動平均値を計算するようにさらに構成される、請求項1に記載の用量計数システム(700)。
【請求項3】
移動平均値は、同じセンサの第1の組の値の平均値から第2の組の値の平均値を引いた値を含み、第1および第2の組は、同じ数の値を含む、請求項2に記載の用量計数システム(700)。
【請求項4】
第1および第2の組は、重複している、請求項3に記載の用量計数システム(700)。
【請求項5】
プロセッサ(23)は、第1の信号および第2の信号の一連の値の移動中央値を計算するようにさらに構成される、請求項2に記載の用量計数システム(700)。
【請求項6】
移動中央値は、第1の組の値の中央値から第2の組の値の中央値を引いた値を含み、第1および第2の組は、同じ数の値を含む、請求項5に記載の用量計数システム(700)。
【請求項7】
注射デバイス(1)は、該注射デバイスから薬剤の用量を投与するために押下されるように構成された注射ボタン(12)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の用量計数システム(700)。
【請求項8】
プロセッサ(23)は、第1の信号および第2の信号内のピークが同じ符号を有するとき、注射ボタン(12)が押下または解放されたと判定するようにさらに構成される、請求項7に記載の用量計数システム(700)。
【請求項9】
プロセッサ(23)は、注射ボタン(12)が押下されたと判定したことに応答して、外部デバイスとの通信ペアリングを開始するように、または外部デバイスとのデータ同期を実行するようにさらに構成される、請求項8に記載の用量計数システム(700)。
【請求項10】
通信ペアリングは、Bluetoothペアリングである、請求項9に記載の用量計数システム(700)。
【請求項11】
プロセッサ(23)は、注射ボタン(12)が解放されたと判定したことに応答して、手動データ同期を開始するようにさらに構成される、請求項7~10のいずれか1項に記載の用量計数システム(700)。
【請求項12】
プロセッサ(23)は、注射ボタン(12)が解放されたと判定したことに応答して、用量終了インジケーションを出力させるようにさらに構成される、請求項7~11のいずれか1項に記載の用量計数システム(700)。
【請求項13】
回転エンコーダシステム(500、900)は、エンコーダリング(700、400、1006)を含み、該エンコーダリング(700、400、1006)は、所定の角度周期性に従ってエンコーダリングの周りに円周方向に配置された複数の実質的に光反射性のフラグ(70a)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の用量計数システム(700)。
【請求項14】
注射デバイス(1)または注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システム(700)を動作させる方法であって、用量計数システムは:
第1の信号を出力するように構成された第1のセンサ(215a)および第2の信号を出力するように構成された第2のセンサ(215b)を含むセンサ装置(215)であって、第1のセンサ(215a)および第2のセンサ(215b)は、互いに対して角度オフセットを有し、センサ装置(215)は、薬剤の投与中にセンサ装置に対する回転エンコーダシステム(500、900)の動きを検出するように構成される、センサ装置(215)と;
プロセッサ(23)とを含み;
ここで、該方法は:
第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算することと;
第1および第2の微分信号値が所定の閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出することと;
第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークが同時であり、第1の信号の微分値内のピークが第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有し、かつ第1の信号の微分値内のピークが第1の信号の微分値内の前のピークに対して異なる符号を有するとき、薬剤の単位が投与されたと判定することと;
投与された薬剤の単位を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定することとを含む前記方法。
【請求項15】
第1の信号および第2の信号の一連の値の移動平均値を計算することをさらに含む、請求項14に記載の注射デバイス(1)または注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システム(700)を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射デバイスまたは注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システム、および用量計数システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在する。そのような注射は、医療従事者または患者自身によって適用される注射デバイスを使用することによって実行することができる。一例として、1型および2型糖尿病は、たとえば1日1回または数回のインスリン用量の注射によって、患者自身が治療することができる。たとえば、充填済みの使い捨てインスリンペンを注射デバイスとして使用することができる。別法として、再利用可能なペンを使用することもできる。再利用可能なペンでは、空の薬剤カートリッジを新しいものに交換することが可能である。どちらのペンにも1組の使い捨て針が付随しており、この針は使用前に毎回交換される。次いでたとえば、投与量ノブを回して、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、注射予定のインスリン用量をインスリンペンによって手動で選択することができる。次いで、好適な皮膚部分に針を挿入し、インスリンペンの注射ボタンを押下することによって、用量が注射される。インスリン注射を監視すること、たとえばインスリンペンの誤った取扱いを防止すること、またはすでに適用された用量を追跡することが可能になるように、たとえば注射済みインスリン用量に関する情報など、注射デバイスの状態および/または使用に関係する情報を測定することが望ましい。
【0003】
特許文献1は、所定の角度周期性を有する回転エンコーダシステムを含む可動投与量プログラム構成要素と、センサ装置とを含む注射デバイスについて記載しており、センサ装置は、薬剤の投与中にセンサ装置に対する可動投与量プログラム構成要素の動きを検出するように構成された第1の光センサと、第2の光センサに対する回転エンコーダシステムの動きを検出するように構成された第2の光センサとを含む。第1の光センサは、第1の周波数においてストロボサンプリングモードで動作するように構成され、第2の光センサは、第1の周波数より低い第2の周波数においてストロボサンプリングモードで動作するように構成される。注射デバイスはまた、前記検出された動きに基づいて、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定するように構成されたプロセッサ装置を含む。特許文献1は、2つのセンサのうちの第1のセンサの信号および2つのセンサのうちの第2のセンサの信号が逆位相になるように、2つの光センサが180°のシフトで配置されたセンサ装置によって生成される信号を処理する方法についてさらに記載している。この方法は、それぞれ第1のセンサの信号および第2のセンサの信号に対して高い閾値および低い閾値を設定する工程と、第2のセンサの信号が高い閾値を超え、その後低い閾値を超え、その後第1のセンサの信号が低い閾値を超え、その後高い閾値を超えた場合、可動投与量プログラム構成要素によって選択された用量の単位を計数する工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2019/101962A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する第1の態様は、注射デバイスまたは注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システムを必要とし、用量計数システムは:
第1の信号を出力するように構成された第1のセンサおよび第2の信号を出力するように構成された第2のセンサを含むセンサ装置であって、第1のセンサおよび第2のセンサは、互いに対して角度オフセットを有し、センサ装置は、薬剤の投与中にそれぞれのセンサ装置に対する回転エンコーダシステムの動きを検出するように構成される、センサ装置と;
プロセッサとを含み、プロセッサは:
第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算し;
第1および第2の微分信号値が所定の閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出し;
第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークが同時であり、第1の信号の微分値内のピークが第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有し、かつ第1の信号の微分値内のピークが第1の信号の微分値内の前のピークに対して異なる符号を有するとき、薬剤の単位が投与されたと判定し;
投与された薬剤の単位を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定するように構成される。
【0006】
プロセッサは、第1の信号および第2の信号の一連の値の移動平均値を計算するようにさらに構成することができる。
【0007】
移動平均値は、同じセンサの第1の組の値の平均値から第2の組の値の平均値を引いた値を含むことができ、第1および第2の組は、同じ数の値を含む。第1および第2の組は、重複することができる。
【0008】
別法として、プロセッサは、第1の信号および第2の信号の一連の値の移動中央値を計算するようにさらに構成することができる。移動中央値は、第1の組の値の中央値から第2の組の値の中央値を引いた値を含むことができ、第1および第2の組は、同じ数の値を含む。第1および第2の組は、重複することができる。
【0009】
注射デバイスは、注射デバイスから薬剤の用量を投与するために押下されるように構成された注射ボタンを含むことができる。プロセッサは、第1の信号および第2の信号内のピークが同じ符号を有するとき、注射ボタンが押下または解放されたと判定するようにさらに構成することができる。
【0010】
プロセッサは、注射ボタンが押下されたと判定したことに応答して、外部デバイスとの通信ペアリングを開始するように、または外部デバイスとのデータ同期を実行するようにさらに構成することができる。通信ペアリングは、Bluetoothペアリングとすることができる。
【0011】
プロセッサは、注射ボタンが解放されたと判定したことに応答して、手動データ同期を開始するようにさらに構成することができる。
【0012】
プロセッサは、注射ボタンが解放されたと判定したことに応答して、用量終了インジケーションを出力させるようにさらに構成することができる。
【0013】
回転エンコーダシステムは、エンコーダリングを含むことができ、エンコーダリングは、所定の角度周期性に従ってエンコーダリングの周りに円周方向に配置された複数の実質的に光反射性のフラグを含む。
【0014】
本明細書に開示する第2の態様は、注射デバイスまたは注射デバイスとともに使用されるようにもしくは注射デバイスに適用されるように構成されたモジュールの用量計数システムを動作させる方法を必要とし、用量計数システムは:
第1の信号を出力するように構成された第1のセンサおよび第2の信号を出力するように構成された第2のセンサを含むセンサ装置であり、第1のセンサおよび第2のセンサは、互いに対して角度オフセットを有し、センサ装置は、薬剤の投与中にそれぞれのセンサ装置に対する回転エンコーダシステムの動きを検出するように構成される、センサ装置と;
プロセッサとを含み;
ここで、この方法は:
第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算することと;
第1および第2の微分信号値が所定の閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出することと;
第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークが同時であり、第1の信号の微分値内のピークが第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有し、かつ第1の信号の微分値内のピークが第1の信号の微分値内の前のピークに対して異なる符号を有するとき、薬剤の単位が投与されたと判定することと;
投与された薬剤の単位を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定することとを含む。
【0015】
第2の態様の方法は、第1の信号および第2の信号の一連の値の移動平均値を計算することをさらに含むことができる。
【0016】
前節に記載した一般概念をより完全に理解することができるように、その実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態による注射デバイスを示す図である。
図2】用量計数システムの概略ブロック図である。
図3A】第1のタイプのエンコーダシステムの拡大側面図である。
図3B図3Aに示すエンコーダシステムの平面図である。
図4A】第2のタイプのエンコーダシステムの拡大側面図である。
図4B図4Aに示すエンコーダシステムの平面図である。
図5A】8タイプのエンコーダシステムの拡大側面図である。
図5B図5Aに示すエンコーダシステムの平面図である。
図6】エンコーダシステムの詳細図である。
図7】投与量が注射デバイスによって投薬されたときのセンサ装置に対する可動投与量プログラム構成要素の動きの間のセンサ装置の2つの光センサによって生成される信号電圧の推移、ならびに微分信号を示す図である。
図8】用量がダイヤル設定されていない状態で用量ボタンの押下および解放中にセンサ装置の2つの光センサによって生成される信号電圧の推移、ならびに微分信号を示す図である。
図9】代替配置を有する光学式用量計数システムによるグレーコード出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態についてインスリン注射デバイスを参照して説明する。しかし本開示は、そのような応用例に限定されるものではなく、他の薬剤を排出する注射デバイスでも等しく適当に配備することができる。
【0019】
それによって送達された用量に関するデータを記録および/または追跡する注射デバイス、特に可変用量注射デバイスに関連する実施形態が提供される。これらのデータは、選択された用量のサイズ、投与の日時、投与の継続時間などを含むことができる。本明細書に記載する構成は、効率的な電力使用を有効にするために、感知要素の配置、電力管理技法(小さい電池を容易にするため)、およびトリガスイッチの配置を含む。
【0020】
本明細書における特定の実施形態は、注射ボタンおよびグリップが組み合わされたSanofiの注射デバイスに関して示されている。そのような注射デバイスの機械構造は、参照により本明細書に組み入れる、国際特許出願WO2014/033195A1に詳細に記載されている。用量設定および用量排出動作モード中にダイヤル延長およびトリガボタンの同じ運動学的挙動を有する他の注射デバイスも、たとえば、Eli Lillyによって市販されているKwikpen(登録商標)デバイス、およびNovo Nordiskによって市販されているNovopen(登録商標)デバイスとして知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は容易であると考えられ、さらなる説明は省略する。しかし、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されるものではない。WO2004078239に記載されているデバイスのように、注射デバイスへの応用例として、別個の注射ボタンおよびグリップ構成要素が存在する特定の他の実施形態を考えることもできる。本明細書に記載されている実施形態は特に、参照により本明細書に組み入れる、WO2019/101962A1に記載されている実施形態に基づくことができる。
【0021】
以下の議論では、「遠位の」、「遠位に」、および「遠位端」という用語は、針が設けられる注射デバイスの端部を指す。「近位の」、「近位に」、および「近位端」という用語は、注射ボタンまたは投与量ノブが設けられる注射デバイスの反対の端部を指す。
【0022】
WO2019/101962A1からの図1は、薬剤送達デバイスの分解図である。この例で、薬剤送達デバイスは、WO2014/033195A1に記載されている注射ペンなどの注射デバイス1である。
【0023】
図1の注射デバイス1は、充填済みの使い捨て注射ペンであり、ハウジング10およびインスリン容器14を含み、インスリン容器14に針15を取り付けることができる。針は、内側ニードルキャップ16および外側ニードルキャップ17または他のキャップ18によって保護される。注射デバイス1から排出予定のインスリン用量は、投与量ノブ12を回すことによって、プログラムまたは「ダイヤル設定」することができ、次いで現在プログラムされている用量が、投与量窓13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。たとえば、注射デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成された場合、いわゆる国際単位(IU)で投与量を表示することができ、1IUは約45.5マイクログラム(1/22mg)の純結晶インスリンに生物学的に同等である。アナログインスリンまたは他の薬剤を送達するための注射デバイスでは、他の単位を用いることもできる。選択された用量は、図1の投与量窓13に示すものとは異なる方法でも、等しく適当に表示することができることに留意されたい。
【0024】
投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができ、現在プログラムされている用量の視覚インジケーションを提供するために、投与量ノブ12が回されると動くように構成されたダイヤルスリーブ70の制限された部分を使用者が見ることを可能にする。投与量ノブ12は、プログラム中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転させられる。
【0025】
この例では、投与量ノブ12は、データ収集デバイスの取付けを容易にするための1つまたはそれ以上の形成物71a、71b、71cを含む。
【0026】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械クリック音が生じ、使用者に音響フィードバックを提供するように構成することができる。ダイヤルスリーブ70は、インスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する。この実施形態では、投与量ノブ12が注射ボタンとしても作用する。投与量ノブは、別個の押下可能なボタンを収容ことができ、または使用者が投与プロセスを行うために押下する単体の構成要素とすることができる。針15が患者の皮膚部分に刺されて、次いで投与量ノブ12が軸方向に押されると、表示窓13に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から排出される。投与量ノブ12が押された後に注射デバイス1の針15が特定の時間にわたって皮膚部分に残ると、用量の大部分が実際に患者の体内に注射される。インスリン用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができるが、この音は、用量のダイヤル設定中に投与量ノブ12を回転させたときに生じた音とは異なる。
【0027】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、投与量ノブ12は、回転ではなく軸方向運動でその初期位置へ戻され、ダイヤルスリーブ70は回転してその初期位置へ戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。
【0028】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、いくつかの注射プロセスに使用することができる。
【0029】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、インスリン容器14および針15から空気を除去するために、たとえばインスリンの2単位を選択し、針15を上に向けた状態で注射デバイス1を保持しながら投与量ノブ12を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要なことがある。提示を簡単にするために、以下、排出された量が注射された用量に実質的に対応し、したがってたとえば注射デバイス1から排出された薬剤の量が、使用者によって受け取られる用量に等しいと仮定する。それにもかかわらず、排出された量と注射された用量との間の差(たとえば、損失)を考慮に入れることが必要になることもある。
【0030】
上記で説明したように、投与量ノブ12は注射ボタンとしても機能し、したがって同じ構成要素がダイヤル設定および投薬に使用される。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、特定の実施形態によるエンコーダシステム500を示す。エンコーダシステムは、上述した注射デバイス1とともに使用されるように構成することができる。図3Aおよび図3Bに示すように、1次センサ215aおよび2次センサ215bが、ダイヤルスリーブ70の近位端にある特別に適合された領域を標的とするように構成される。この実施形態では、1次センサ215aおよび2次センサ215bは、赤外線(IR)反射センサである。したがって、ダイヤルスリーブ70の特別に適合された近位領域は、反射区域70aおよび非反射(または吸収)区域70bに分割される。ダイヤルスリーブ70のうち反射区域70aおよび非反射(または吸収)区域70bを含む部分を、エンコーダリングと呼ぶことができる。
【0032】
2つのセンサを有することで、後述する電力管理技法が容易になる。1次センサ215aは、特定の薬物または投与方式、たとえば1IUに該当する用量履歴要件に必要とされる分解能に相応の周波数で、交互に位置する一連の反射領域70aおよび非反射領域70bを標的とするように配置される。2次センサ215bは、1次センサ215aに比べて低減された周波数で、交互に位置する一連の反射領域70aおよび非反射領域70bを標的とするように配置される。エンコーダシステム500は、投薬された用量を測定するために、1次センサ215aのみで機能することもできることを理解されたい。2次センサ215bは、後述する電力管理技法を容易にする。
【0033】
2組の符号化領域70a、70bが図3Aおよび図3Bに同心円状に示されており、一方が外側に位置し、他方が内側に位置する。しかし、2つの符号化領域70a、70bの任意の好適な配置が可能である。領域70a、70bは、キャスタレーション領域(castellated region)として示されているが、他の形状および構成も可能であることに留意されたい。
【0034】
用量計数システム700が図2に概略的に示されている。用量計数システム700は、注射デバイス1の一体部材、または注射デバイス1に取り付けられるように構成されたモジュールの部材とすることができる。用量計数システム700は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサを含むプロセッサ装置23を、プロセッサ装置23によって実行するためのソフトウェアを記憶することができるプログラムメモリ24およびメインメモリ25を含むメモリユニット24、25とともに含む。
【0035】
用量計数システム700は、1つまたはそれ以上のセンサ215a、215bを含むセンサ装置215を制御する。
【0036】
出力27が設けられており、出力27は、Wi-FiもしくはBluetooth(登録商標)などの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェースとすることができ、またはユニバーサルシリアルバス(USB)、mini-USB、もしくはmicro-USBコネクタを受け取るためのソケットなどの有線通信リンクのためのインターフェースとすることができる。たとえば、デバイス1に取り付けられたデータ収集デバイスへデータを出力することができる。
【0037】
電源スイッチ28も、電池29とともに設けられる。
【0038】
電力管理
デバイス1内に収容する必要のある電池29のサイズを最小にすることができるように、用量計数システム700の電力使用を最小にすることが可能であることが有利である。この実施形態で使用されるセンサ215a、215bは、動作するために特定の量の電力を必要とする。この実施形態は、制御された周波数(すなわち、ストロボサンプリングモード)で、センサ215a、215bをオンおよびオフに断続的に切り換えることができるように配置される。本質的に、エイリアシングが生じる前にサンプリングされるエンコーダシステムによって計数することができる最大回転速度には制限がある。エイリアシングは、感知領域がセンサを通過する速度よりサンプリング速度が小さくなる現象であり、これは領域変化を逃したときに計数の間違いが生じやすいことを意味する。1次周波数215aに比べて低減された周波数を有する2次センサ215bは、エイリアシングが大きくなりすぎるまでに、より速い回転速度に耐えることができる。2次センサ215bは、投薬された用量を1次センサ215aと同じ分解能に分解することは可能でないが、2次センサ215bの出力は、より速い速度でも高い信頼性を維持する。したがって、両方のセンサ215a、215bを組み合わせて使用することで、第1の閾値回転(投薬)速度までに送達される用量を正確に判定することが可能になる。次いで、センサ215a、215bを使用して、第2の(より高い)閾値投与速度までに送達される近似用量を判定することができる。第2の閾値速度を上回る速度になると、センサ215a、215bは、送達される用量を正確または近似的に判定することが可能でなくなり、したがって第2の閾値は、注射デバイス1で物理的に可能でない速度を上回るように設定される。
【0039】
第1の速度閾値は、1次センサ215aのサンプリング速度およびエンコーダ領域遷移の周波数によって判定され、エンコーダ領域遷移の周波数は、意図される薬物または投与方式(たとえば、1IUにつき1遷移)によって必要とされる分解能で固定される。第2の速度閾値は、2次センサ215bのサンプリング速度およびエンコーダ領域遷移の周波数によって判定される。第1の閾値は、投薬された用量の正確な報告のために、システムが最大の投薬速度範囲に及ぶことができるように設定される。
【0040】
図3Bに示す例示的な実施形態は、送達される用量の1IU当たり1遷移で領域遷移を標的とする1次センサ215aと、送達される用量の6IU当たり1遷移で領域遷移を標的とする2次センサ215bとを有する。2IU当たり1遷移、4IU当たり1遷移、8IU当たり1遷移、およびIU単位当たり1遷移を含む他の選択肢も可能である。これらの選択肢は各々、図3Bに示すエンコーダシステム500内に1回転当たり24個の別個の領域70a、70bが存在することから可能である。概して、1回転当たりの別個の領域70a、70bの数がn単位であった場合、m単位当たり1領域遷移の選択肢が存在するはずであり、ここでmは、1より大きくnより小さいnの任意の整数因数である。
【0041】
両方のセンサ215a、215bのサンプリング周波数が遅ければ遅いほど、必要とされる電力消費はより小さくなり、したがって電池29の必要とされるサイズもより小さくなる。したがって、設計によって、サンプリング周波数を現実的に可能な限り最小にすることが最適である。
【0042】
以下の実施形態は、デバイス1から投薬された薬剤単位の数を判定する代替感知技法に関する。
【0043】
上述した実施形態と同様に、注射ボタン12内に2つのセンサ215が取り付けられており、用量の投薬中に注射ボタンに対するダイヤルスリーブ70の相対回転位置を感知するように構成される。この相対回転は、投薬された用量のサイズに等しいものと見なすことができ、用量履歴情報を生成および記憶または表示する目的で使用することができる。
【0044】
図4Aに示すように、この実施形態からの2つのセンサ215は、ダイヤルスリーブ70の特別に適合された領域70a、70bを標的とするように構成される。この実施形態では、IR反射センサが使用され、したがってダイヤルスリーブ70の領域が反射および吸収区分70a、70bに分割される。本明細書では、区分70a、70bをフラグと呼ぶこともある。
【0045】
図3Aおよび図3Bに関連して上述したエンコーダシステム500とは異なり、図4Aおよび図4Bに示すエンコーダシステム900はどちらも、同じタイプの領域70a、70bを標的とするIRセンサ215を有する。言い換えれば、これらのセンサ215は、同時にどちらも反射領域70aに面し、またはどちらも吸収領域70bに面するように配置される。用量の投薬中、ダイヤルスリーブ70は、薬剤単位が投薬されるたびに、注射ボタン12に対して反時計回りに15°回転する。交互に位置するフラグ要素は、30°(または2単位)のセクションである。センサ215は、互いに位相がずれるように配置され、したがってセンサ215間の角度は、図4Bに示すように、単位の奇数(たとえば、15°、45°、75°など)に等しい。
【0046】
図4Bに示すエンコーダシステム900は、1回転当たり12単位を有し、すなわち交互に位置する12個の領域70a、70bを有する。概して、実施形態は、1回転当たり4単位の任意の倍数で機能する。センサ215間の角度αは、等式1によって表すことができ、ここでmおよびnはどちらも任意の整数であり、1回転当たり4m単位が投薬される。
α=(2n-1)360
4m
等式1―センサ間の角度
【0047】
図10は、ダイヤルスリーブ70が薬剤の投薬中に反時計回りに回転するとセンサAおよびセンサBに対する出力がどのように変化するかを示す。
【0048】
組み合わせて、2つのセンサA、Bは、2ビットのグレーコード出力(11、01、00、10)を生じさせる。2ビットのコードシーケンスは、4単位が投薬されるたびに繰り返される。このコード化された出力により、正(反時計回り)および負(時計回り)の回転の検出が容易になる。たとえば、センサが「11」を読み取ったとき、「01」への変化が正の回転であり、「10」への変化が負の回転であるはずである。この方向感知システムには、純粋な増分システムに比べて、負の回転が起こりうる場合に本当の投薬された用量体積を正確に判定することが可能であるという利点がある。たとえば、使用者が注射ボタン12を解放したとき、用量止め具の終了時に回転し過ぎてから「後退」する機構がある。
【0049】
さらなる実施形態によるエンコーダシステムについて、図5Aおよび図5Bを参照して次に説明する。このエンコーダシステムを使用して、注射デバイスから送達された用量を記録することができる。このエンコーダシステムの概念は、インジケータフラグの状態をフラグから物理的に離れて位置する反射センサに伝えるために使用される光ガイドに基づいている。図5Aおよび図5Bに示す実施形態は、注射デバイスに取り付けられるように構成された光学アドオンモジュールを使用する。簡単にするために、アドオンモジュールのハウジングは省略されており、センサおよび光学構成要素のみが図5Aおよび図5Bに示されている。アドオンモジュールはまた、図2に示すものなどの用量計数システム700を含む。そのようなアドオンモジュールは、デバイスからダイヤル設定および送達された用量を記録する目的で、好適に構成されたペン注射デバイスに加えられるように構成することができる。アドオンモジュールは、注射ペンのダイヤル設定ノブ/注射ボタンに取って代わるように構成することができ、または別法として、既存のダイヤル設定ノブ/注射ボタンに適合することができる。これらの実施形態では、インジケータフラグは、数字スリーブまたはダイヤルスリーブと、アドオンモジュールとの相対回転によって形成され、アドオンモジュールは、少なくとも1つの光センサを含む。この機能は、メモリ支援として、または用量履歴の詳細なロギングに対応するために、多種多様なデバイス使用者に有用となりうる。アドオンモジュールは、用量履歴がモジュールから定期的にダウンロードされることを有効にするために、スマートフォンまたはタブレットPCなどの外部デバイスに接続可能になるように構成することができる。しかし、エンコーダシステムの概念は、インジケータフラグおよびセンサの分離を伴う任意のデバイス、たとえば図1の注射デバイス1にも適用可能であり、モジュールは、投与量ノブ12内で実装することができ、投与量ノブ12は取り外し可能とすることができる。
【0050】
エンコーダシステムの概念によれば、IR反射センサとすることができる少なくとも1つの光センサの活動面と、可動投与量プログラム構成要素との間に、コリメート光学系が配置される。コリメート光学系は、1つまたはそれ以上の個別のコリメートレンズと、1つまたはそれ以上の光導体とを含むことができる。レンズの幾何形状は、光導体を通って少なくとも1つのセンサと標的、すなわちインジケータフラグとの間で伝送する前に、少なくとも1つの光センサによって放出される発散放射を平行化(「コリメート」)するように選択することができる。
【0051】
図5Aは、このエンコーダの概念を実装するモジュール1000の一実施形態の本質的な部材を示し:回転軸1010の周りの数字スリーブ1006の相対回転によって、インジケータフラグ1008を形成することができ、インジケータフラグ1008は、図示の実施形態では、たとえば注射デバイス1の数字スリーブまたはダイヤルスリーブ70の頂部に形成された径方向に突出する歯によって実装され;光センサ215cおよびコリメート光学系が含まれ、コリメート光学系は、2つのコリメートレンズ1004a、1004bと、インジケータフラグ1008の状態をフラグから離れて位置するセンサ215cに伝えるための光導体1002の形態の光誘導部とを含む。コリメート光学系1002、1004a、1004bおよび光センサ215cは、注射デバイス内の周辺の構成要素に対して位置することができ、特にアドオンモジュールに関連付けることができる。見ることができるように、レンズ1004a、1004bおよび光導体1002を含むコリメート光学系は、光センサ215cの活動側、すなわちIR放出および受光側と、数字スリーブ1006によって形成されたインジケータフラグ1008との間に配置される。
【0052】
図5Bは、モジュール1000の一実施形態による2つの光センサ215c(太い線の長方形によって示すシャーシ1012内の場所によって表される)およびそれぞれのコリメートレンズ1004a、1004bを収容するシャーシ1012を示す。コリメートレンズ1004a、1004bは、ここでは個別のレンズによって実装されており、シャーシ1012内の機能として存在するクレードルまたは他の位置決め幾何形状によって、光センサ215cおよび光導体の近位面に対して保持されると想定される。
【0053】
根本的に、上記の点はすべて、より頑強な符号化機械システムに関し、光(反射)センサが光エンコーダ内の活動要素を形成する。用量ボタンに対する数字スリーブの運動がより効率的に捕捉される場合、光センサの低減されたエミッタ電力、およびより少ないマイクロコントローラ動作を必要とするアルゴリズムの使用を利用することができ、エネルギー消費を低減させ、電池寿命を延ばすことができる。本明細書に記載するエンコーダシステムは、使い捨てもしくは再利用可能な注射デバイス、または類似の光導体アーキテクチャを有する光エンコーダ配置を含む任意のデバイスへの包含にも等しく適用可能である。
【0054】
図6は、数字スリーブ400および数字スリーブ上の歯またはフラグ402の配置の部分図を示す。フラグ402は、実質的に光反射性を有する。たとえば、フラグ402は、反射性材料から作ることができ、もしくは反射性材料によって被覆することができ、またはフラグ402の表面に反射性材料を印刷することができる。フラグ402は、互いから30度の角度で隔置されており、したがって12個のフラグ402が数字スリーブ400の円周に均一に隔置される。図6はまた、1および2の符号を付けた楕円形によって示すそれぞれの光センサに関連付けられた2つの光導体の例示的な位置を示す。光導体は、45度の角度で分離されており、したがって光導体の角度方向の間隔と、フラグ402の角度方向の間隔との差は15度であり、2つのセンサからの信号は互いに位相がずれている。注射デバイスのいくつかの実施形態では、数字スリーブ400は、薬剤の単位がダイヤル設定または送達されるたびに15度回転するように構成される。したがって、図6に示す配置により、2つのセンサからの信号を使用して、ダイヤル設定または送達された薬剤単位の数を測定することが可能になる。この実施形態は、光学感知および反射フラグの点から説明されているが、いくつかの他の実施形態では、誘導、容量、または磁気感知を使用することもできる。たとえば、フラグ402は、数字スリーブ400の回転量を判定するために、誘導、容量、または磁気センサの下を通る導電または磁気領域を含むことができる。
【0055】
次に、注射デバイスおよびモジュールに関連して上述したセンサ装置の光センサによって生成される信号、特に信号電圧を処理するためのアルゴリズムの実施形態について説明する。アルゴリズムは、たとえば図2に示す用量計数システム700に含まれるプロセッサ装置23の1つまたはそれ以上のプロセッサによって実行するためのコンピュータプログラムとして実装される。
【0056】
アルゴリズムは、1つまたはそれ以上の光センサ215a、215b、215cによって送達される信号を処理するために、すなわち注射デバイスによって送達予定または送達済みの選択された薬剤投与量を復号するために実装される。アルゴリズムは、好ましくは、上述したモジュールなど、光導体によるインジケータフラグおよびセンサの分離を伴うデバイスに適用可能である。
【0057】
用量ボタンと数字スリーブとの間の相対回転は、増分エンコーダ、たとえば直交エンコーダを使用して光学的に符号化することができ、2つまたはそれ以上の光センサ、特に反射IRセンサが、数字スリーブの頂面に形成されたキャスタレーションまたは径方向に突出する歯もしくはフラグを軸方向に見ている。エンコーダシステムは、アドオンモジュールとして実装することができ、これは、モジュールが適合される注射デバイスの製造プロセスの変動のため、モジュールを較正した後でも、検出されているキャスタレーションまたは歯の位置が光センサの位置に対してデバイスごとに変動しうることを意味する。したがって、典型的な使用中にデバイス間に信号の変動が存在する可能性が高い。加えて、用量ボタンが押し下げられて解放される間に、光センサの軸方向位置もキャスタレーションに対して変動しうる。
【0058】
以下に説明するアルゴリズムは、特に注射デバイスから送達された用量を記録する目的で、注射デバイスまたはアドオンモジュール内に実装することができる。この機能は、メモリ支援として、または用量履歴の詳細なロギングに対応するために、多種多様な注射デバイス使用者に有用となりうる。アルゴリズムを実装する電子機器は、用量履歴が電子機器から定期的にダウンロードされることを有効にするために、スマートフォンなどの移動デバイスに接続可能になるように構成することができることが想定される。
【0059】
アルゴリズムは、用量ボタンなどの非回転構成要素に対する数字スリーブ上のキャスタレーションまたは歯の相対回転を検出するように構成される。キャスタレーションまたは歯機能の存在などは、バイナリコードを提供し、このバイナリコードを使用して、注射デバイスから投薬された単位の数を計数することができる。光センサの電圧出力は、典型的には、正弦曲線に近似することができる。アルゴリズムは、すべてのデバイスにわたってキャスタレーションまたは歯機能の存在などを検出することが可能であり、そのようなデバイスは、物理的な機能の幾何学的公差のあらゆる組合せを有することがある。
【0060】
加えて、用量排出の開始および終了時に、用量ボタンがキャスタレーションまたは歯機能の方へまたはそこから離れる方へ軸方向に動くとき、光センサによって生成される信号の変化は、キャスタレーションまたは歯機能の回転として不正確に解釈されるべきではない。したがって、アルゴリズムは、光センサによって生成される信号の大幅な振幅変調に対応することができる。
【0061】
アルゴリズムは、2つの光センサが180°の位相シフトで配置されたシステムに関し、したがって両センサによって生成される信号電圧は逆位相である。
【0062】
アルゴリズムの一実施形態は、改善された耐ノイズ性および偽陽性の低減を提供し、オフセットドリフト(振幅変調)およびセンサ振幅変動による影響を受けない。
【0063】
図7の第1の画像は、用量が投与されているときに2つの光センサによって生成される信号電圧の典型的な推移を示す。第1のセンサの信号電圧が太い線で示されており、第2のセンサの信号電圧が細い線で示されている。2つの光センサは、互いに異なるゲインプロファイルを有することができる。信号電圧は振幅変調される。異なるゲインプロファイルにより、2つの光センサによって大幅に異なる信号電圧が生成され、信号電圧を処理するためのプロセッサへ送信される。異なるゲインプロファイルは、たとえば、電子構成要素に関連する公差によって生じることがある。このシステムでは、2つの光センサは、180°の位相シフトで配置され、したがって両センサによって生成される信号電圧は逆位相である。
【0064】
図7の第2の画像は、第1の画像の信号推移の数値微分値を示す。第1および第2の信号電圧の微分値内に同時ピーク(正および負)が存在する場合、投与された薬剤の単位の検出がアルゴリズムによって行われる。微分値グラフの始めの小さい一連のピーク(第1のセンサ信号内のみ)は、注射ボタンの押下および付随する軸方向運動によって引き起こされる。第2のセンサ信号内に逆の符号の対応するピークが存在しないため、これは投与された薬剤単位として計数されない。微分値グラフの終わりの第1および第2の両センサの微分値内のピークは、注射ボタンの解放によって引き起こされる。この場合も、2つのセンサ内のピークが逆の符号を有していないため、これらのピークは投与される薬剤単位として計数されない。
【0065】
図8の第1の画像は、用量が注射デバイスにダイヤル設定されていないときに注射ボタンが押下されたときに2つの光センサによって生成される信号電圧の典型的な推移を示す。第1のセンサ信号電圧が太い線で示されており、第2のセンサ信号電圧が細い線で示されている。
【0066】
図8の第2の画像は、第1の画像の信号推移の微分値を示す。微分値グラフの始めの第1および第2の両センサ信号内の一連の正のピークは、注射ボタンの押下によって引き起こされる。したがって、注射ボタンの押下がアルゴリズムによって検出されるが、薬剤の単位の投与として計数されない。微分値グラフの終わりの第1および第2の両センサ信号内の一連の負のピークは、注射ボタンの解放によって引き起こされる。したがって、注射ボタンの解放がアルゴリズムによって検出されるが、薬剤の単位の投与として計数されない。したがって、注射ボタンの押下および解放によって引き起こされる信号が投与事象として誤って識別されることはない。
【0067】
注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定するために、アルゴリズムは、第1の信号および第2の信号の数値導関数を計算する。次いでアルゴリズムは、2つのセンサ信号の微分値内の最大値および最小値を識別する。アルゴリズムは、微分ピーク値のサイズがピークとして確認する必要があると判定する微分ピーク閾値を定義する。微分ピーク閾値は、製造中のセンサの較正中に設定することができる。アルゴリズムは、ゲインプロファイルの差のため、第1および第2のセンサに対する異なる微分ピーク閾値を定義することができる。アルゴリズムは、第1および第2の微分信号値が微分ピーク閾値またはそれぞれの微分ピーク閾値を超過したとき、第1の信号の微分値内のピークおよび第2の信号の微分値内のピークを検出する。
【0068】
アルゴリズムは、以下の3つの基準が満たされたとき、薬剤の単位が投与されたと判定する:
(a)第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内の検出されたピークは同時である。2つの微分信号内の検出されたピークが同時にならなければならない範囲は、アルゴリズムで事前に定義することができる。たとえば、これらのピークは、用量計数システムの製造公差のため、厳密に同時に発生するわけではないと予期することができる。したがってアルゴリズムは、同時性閾値を定義することができ、第1の信号の微分値および第2の信号の微分値内のピークがこの閾値範囲内で発生した場合、これらのピークは同時であると見なされる;
(b)第1の信号の微分値内のピークは、第2の信号の微分値内のピークとは異なる符号を有する。2つのセンサは、それらの信号が逆位相になるように配置される。したがって、第2のセンサからの信号が増大すると第1のセンサからの信号は低減するはずであり、逆も同様であり、その結果、それぞれの微分値に対する符号が逆になる;
(c)第1の信号の微分値内のピークは、第1の信号の微分値内の前のピークとは異なる符号を有する。この基準は、微分値内のピークが、ボタンの押下または解放ではなく、センサの前のフラグの通過を表すことを確実にすることに寄与する。
【0069】
次いでアルゴリズムは、投与された薬剤の単位の数を計数することによって、注射デバイスによって投与された薬剤投与量を判定する。
【0070】
ピーク検出工程の頑強性をさらに改善するために、アルゴリズムは、第1および第2の信号の一連の値の移動平均値または移動中央値を計算することができる。
【0071】
移動平均値が使用される場合、移動平均値は、第1の組のセンサ値の平均値から第2の組のセンサ値の平均値を引いた値を含むことができ、第1および第2の組は同じ数の値を含み、重複することができる。簡単な例では、8つの値の移動平均値、たとえば平均値=...、平均値(1~8)、平均値(2~9)、平均値(3~10)などを計算することができる。各センサの最初7つのサンプルおよび最後7つのサンプルは、平均化なしで使用することができ、またはたとえば平均値=1、平均値(1~2)、平均値(1~3)、平均値(1~4)、...、平均値(1~7)、平均値(1~8)、平均値(2~9)、平均値(3~10)など、利用可能な情報によって平均化することができる。別法として、最初7つの値は完全に無視することもできる。センサのサンプル速度はkHz範囲であり、この結果、遅延は1秒の1/100未満になるはずであり、したがって用量を見逃すことはないはずである。別の例では、平均値の計算においてより大きい重複が使用される。平均値は、センサ値6~13の平均値からセンサ値2~9の平均値を引いた値として計算することができる。この平均値は、8の平均値および4の距離を有すると考えることができる。上述したように平均値が計算された後、平均信号の導関数が計算される。
【0072】
移動中央値が使用される場合、移動中央値は、第1の組のセンサ値の中央値から第2の組のセンサ値の中央値を引いた値を含むことができ、第1および第2の組は同じ数の値を含み、重複している。たとえば、平均値は、ピーク6~12の中央値からピーク3~9の中央値を引いた値として計算することができる。この平均値は、7の平均値および3の距離(または重複)を有すると考えることができる。上述したように平均値が計算された後、平均信号の導関数が計算される。
【0073】
上記で論じたアルゴリズムは、生のセンサデータがまず平均化されてから微分が適用されるため、オフセットドリフト(振幅変調)およびセンサ振幅変動による影響を受けない。
【0074】
すでに論じたように、注射デバイスは、注射デバイスから薬剤の用量を投与するために使用者によって押下されるように構成された注射ボタンを含む。アルゴリズムは、注射ボタンの押下および解放が薬剤の用量の投与として誤って識別されることのないように構成される。アルゴリズムは、図7および図8の第2の画像に見ることができるように、第1の信号および第2の信号内のピークが同じ符号を有するとき、注射ボタンが押下または解放されたと判定することによって、これを実現する。
【0075】
用量計数システムのプロセッサは、注射ボタンが押下または解放されたことを検出したことに応答して、さらなる行動が行われるように構成することができる。たとえば、注射ボタンが押下されたと判定したことに応答して、プロセッサは、注射デバイスまたはモジュールの無線トランシーバユニット(図示せず)を使用して、外部デバイスとの通信ペアリングを開始することができる。通信ペアリングは、Bluetoothペアリングとすることができる。
【0076】
注射ボタンが解放されたと判定したことに応答して、プロセッサは、手動データ同期を開始することができる。典型的には、各投与事象の終わりに、用量データは自動で同期される。用量が送達されていない状態で、アルゴリズムがボタンの押下および解放を検出した場合、このときもデータが同期される。
【0077】
さらなる例として、注射ボタンが解放されたと判定したことに応答して、プロセッサは、用量終了インジケーションを出力させることができる。これは、可聴アラート、または注射デバイスもしくはモジュールのディスプレイ上の情報の視覚表示の形態をとることができる。用量終了インジケーションに先行して、ボタン解放の検出によって滞留時間のカウントダウンをトリガすることができ、これは、注射デバイスがゼロ単位に到達した後、使用者が注射の針を皮膚の中に保持するべき時間を示す。
【0078】
すでに論じたように、回転エンコーダシステムは、円周方向に配置された複数の実質的に光反射性のフラグを有するエンコーダリングを含むことができる。これらのフラグの各々は、凹面または凸面の形状を有することができる。そのような形状により、第1および第2のセンサが受け取る信号の信号勾配が増大し、したがってこれらの信号の導関数の振幅が増大する。
【0079】
上記の実施形態について、インスリン注射ペンからデータを収集することに関連して説明したが、本発明の実施形態は、他の薬剤の注射の監視などの他の目的でも使用することができることに留意されたい。
【0080】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0081】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0082】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0083】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0084】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0085】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0086】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0087】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0088】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0089】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0090】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0091】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0092】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0093】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0094】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0095】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0096】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0097】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製法、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】