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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
C08J3/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547128
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2022018380
(87)【国際公開番号】W WO2023096283
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163717
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0155321
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヒュク・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンキ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】クァンイン・シン
(72)【発明者】
【氏名】テビン・アン
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070AC23
4F070DA42
4F070DA48
4F070DB04
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC05
4F070DC07
(57)【要約】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関し、より具体的には、表面架橋剤として陽イオン性高分子を含み、優れた吸水関連諸物性を実現できる、高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤および内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤および陽イオン性高分子の存在下、前記ベース樹脂粉末の表面を架橋して表面架橋層を形成する表面架橋段階を含み;
前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む、
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記陽イオン性高分子は、アンモニウムイオンが連結されたエチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の環状アンモニウムイオンを含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記陽イオン性高分子は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートメチルクロライド4級塩)、およびポリ(アクリルアミド-ジメチルアミノエチルアクリレート4級塩)から構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記陽イオン性高分子は、重量平均分子量が50,000g/mol~700,000g/molである、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記陽イオン性高分子は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部~0.9重量部で含まれる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記表面架橋剤は、多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ハロエポキシ化合物、またはアルキレンカーボネート系化合物を含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.001重量部~5重量部で使用される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、
前記表面架橋層は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む陽イオン性高分子を含む、
高吸水性樹脂。
【請求項10】
前記陽イオン性高分子は、アンモニウムイオンが連結されたエチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を含む、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項11】
前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の環状アンモニウムイオンを含む、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項12】
前記陽イオン性高分子は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートメチルクロライド4級塩)、およびポリ(アクリルアミド-ジメチルアミノエチルアクリレート4級塩)から構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項13】
前記表面架橋剤は、多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ハロエポキシ化合物、またはアルキレンカーボネート系化合物を含む、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項14】
前記高吸水性樹脂の通液性は、18秒以下である、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項15】
前記高吸水性樹脂のEDANA法WSP241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)は、25g/g~40g/gである、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項16】
前記高吸水性樹脂のEDANA法WSP242.3により測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)は、10g/g~30g/gである、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項17】
前記高吸水性樹脂のVortexは、40秒以下である、
請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年11月24日付の韓国特許出願第10-2021-0163717号および2022年11月18日付の韓国特許出願第10-2022-0155321号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けられている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、子供用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水剤、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。このような衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に拡散した状態で含まれることが一般的である。しかし、最近では、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少したり、一歩進んで、パルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれ、このような高吸水性樹脂粒子が衛生材内に多層含まれることが必至である。このように多層含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に尿などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能および吸水速度を示す必要がある。このために、高吸水性樹脂の表面を架橋する方法が使用されている。
【0006】
高吸水性樹脂の表面架橋は、高吸水性樹脂の表面に存在するカルボキシ基などの官能基を結合するようにして表面架橋層を形成することで、これにより高吸水性樹脂の物性を改善することができる。しかし、このような方法の表面架橋層を形成する場合、物理的強度が増加できるが、高吸水性樹脂の吸水率が低下しうる。したがって、高吸水性樹脂本来の物性を阻害することなく表面架橋層を形成する方法が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高吸水性樹脂の表面架橋層を形成するにあたり、特定の成分の高分子物質を使用することによって、上述した問題点を解決できる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重合開始剤および内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および表面架橋剤および陽イオン性高分子の存在下、前記ベース樹脂粉末の表面を架橋して表面架橋層を形成する表面架橋段階を含み;前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、前記表面架橋層は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む陽イオン性高分子を含む、高吸水性樹脂を提供する。
【0010】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別するための目的でのみ使用される。
【0011】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0012】
単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、これらの組み合わせまたは付加の可能性を排除するものではない。
【0014】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0015】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0016】
本明細書全体において、生理食塩水とは、生理食塩水(0.9wt%NaCl(s))を意味する。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の一側面によれば、重合開始剤および内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および表面架橋剤および陽イオン性高分子の存在下、前記ベース樹脂粉末の表面を架橋して表面架橋層を形成する表面架橋段階を含み;前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む、高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の発明者らは、高吸水性樹脂製造の一工程である、表面架橋時、既存の一般に使用されていた表面架橋剤のほか、陽イオン性高分子を含む場合、長い高分子鎖および分子中に陽イオンを有する物理的、化学的特性により既存の表面架橋剤の表面架橋層の形成に寄与して、製造された高吸水性樹脂の保水能および吸水速度を維持しながら、同時に高加圧吸水能と通液性を改善できるということを見出して、本発明を完成した。
【0020】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法を各段階別により具体的に説明する。
【0021】
参照として、本明細書において、「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、すべての水分含有量範囲、すべての粒径範囲、すべての表面架橋状態または加工状態を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができる。また、前記重合体のうち、粒径が150μm以下の重合体を「微粉」と称することができる。
【0022】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈により前記重合体自体を意味したり、または前記重合体に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0023】
(重合)
まず、含水ゲル重合体を形成する段階であって、重合開始剤および内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0024】
前記高吸水性樹脂の原料物質である単量体混合物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体、より具体的には、アクリル酸系単量体および重合開始剤を含むことができる。
【0025】
(単量体)
前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式1で表される化合物である:
【0026】
[化学式1]
-COOM
【0027】
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0028】
前記アクリル酸系単量体は、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0029】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質で部分的に中和させたものが使用できる。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、約70モル%未満、あるいは約40~約69モル%、あるいは約50~約65モル%に調節される。
【0030】
前記中和度が過度に高ければ、中和された単量体が析出して重合が円滑に行われにくく、一歩進んで、表面架橋開始後の追加中和による効果が実質的になくなって、表面架橋層の架橋程度が最適化されず、高吸水性樹脂の通液性などが十分でなくなりうる。逆に、中和度が過度に低ければ、高分子の吸水力が大きく低下するだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0031】
前記単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体混合物に対して、約20~約60重量%、あるいは約30~約55重量%、あるいは約40~約50重量%になってもよく、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節可能である。
【0032】
前記単量体の濃度が過度に低くなると、高吸水性樹脂の収率が低くなって経済性に問題が生じ、逆に、単量体の濃度が過度に高くなると、単量体の一部が析出したり、重合された含水ゲル重合体の粉砕時の粉砕効率が低くなるなど工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下しうる。
【0033】
(重合開始剤)
前記一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法で使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0034】
具体的には、前記重合開始剤は、重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生できるので、追加的に熱重合開始剤を含んでもよい。
【0035】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用可能である。
【0036】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される1つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著の「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0037】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例には、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例には、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」、p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0038】
このような重合開始剤は、前記単量体混合物の全体重量に対して、約0.001~1重量%、好ましくは約0.1~約0.9重量%の濃度で添加される。前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出されうるので、好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下しうるので、好ましくない。
【0039】
(内部架橋剤)
発明の一実施形態によれば、前記単量体混合物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤を含む。このような内部架橋剤は、アクリル酸系単量体が重合された重合体、つまり、ベース樹脂の内部を架橋させるためのものであって、前記重合体の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別される。
【0040】
このような内部架橋剤の種類は特に限定されず、以前から高吸水性樹脂の製造に使用可能なもので任意の内部架橋剤を使用することができる。このような内部架橋剤の具体例としては、炭素数2~20のポリオールのポリ(メタ)アクリレート系化合物、炭素数2~20のポリオールのポリグリシジルエーテル系化合物または炭素数2~20のアリル(メタ)アクリレート系化合物などが挙げられる。
【0041】
これら内部架橋剤のより具体的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、その他にも多様な多官能化合物を内部架橋剤として使用することができる。
【0042】
このような内部架橋剤は、前記単量体混合物の全体重量に対して、約0.01~約1重量%、あるいは約0.05~約0.8重量%、あるいは約0.2~約0.7重量%の濃度で含まれて、含水ゲル重合体およびこれから形成されるベース樹脂粉末の内部に架橋構造を導入することができる。
【0043】
前記内部架橋剤の濃度が過度に低い場合、高吸水性樹脂の吸水速度が低くなり、ゲル強度が弱くなりうるので、好ましくない。逆に、前記内部架橋剤の濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の吸水力が低くなって吸水体としては好ましくないことがある。
【0044】
(その他の添加剤および単量体混合物)
そして、前記単量体混合物は、その他、発泡剤および気泡安定剤などを、場合によって、さらに含んでもよい。
【0045】
前記発泡剤は、重合時、単量体混合物内で、発泡によって含水ゲル重合体内に気孔を形成し、これによって含水ゲル重合体の表面積を増やす役割を果たす。
【0046】
前記発泡剤は、炭酸塩を使用することができ、一例として、ナトリウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ナトリウムカーボネート(sodium carbonate)、カリウムバイカーボネート(potassium bicarbonate)、カリウムカーボネート(potassium carbonate)、カルシウムバイカーボネート(calcium bicarbonate)、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、マグネシウムバイカーボネート(magnesium bicarbonate)またはマグネシウムカーボネート(magnesium carbonate)などを使用することができる。
【0047】
また、前記発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して1500ppmw以下、または約1300ppmw以下で使用することが好ましい。発泡剤の使用量が過度に多い場合、気孔が過度に多くなって高吸水性樹脂のゲル強度が低下し、密度が小さくなって、流通と保管に問題をもたらすことがある。また、前記発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して500ppmw以上、または1000ppmw以上で使用することが好ましい。
【0048】
一方、上述した一実施形態の製造方法において、前記単量体混合物は、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0049】
上述した単量体混合物、重合開始剤、内部架橋剤、および少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体と、選択的に、その他の添加剤を含む単量体混合物は、溶媒に溶解した単量体混合物溶液の形態で用意される。
【0050】
この時、使用可能な前記溶媒は、上述した成分を溶解できれば、その構成の限定なく使用可能であり、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
前記溶媒は、単量体混合物の総含有量に対して、各成分が上述した濃度範囲に調節されるように、残量で含まれる。
【0052】
(重合)
一方、このような単量体混合物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する方法も、通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0053】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源により、大きく、熱重合および光重合に分けられる。
【0054】
通常、熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明が必ずしも上述した重合方法に限定されない。
【0055】
一例として、上述のように、撹拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱する方法で、熱重合をして得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた撹拌軸の形態により、数センチメートル~数ミリメートルの形態であってもよい。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度などに応じて多様に現れるが、通常、重量平均粒径が2~50mm、あるいは3~30mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0056】
また、上述のように移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で光重合を進行させる場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状であってもよい。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度に応じて異なり、通常、0.5~5cm、あるいは1~3cmの厚さを有するシート状の含水ゲル重合体が得られるように単量体混合物を供給することが好ましい。
【0057】
シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体混合物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起こらないことがある。
【0058】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、約40~約80重量%、あるいは約50~約70重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。
【0059】
具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、約180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階約5分を含む約20分に設定して、含水率を測定する。
【0060】
(乾燥)
次に、得られた含水ゲル重合体を乾燥する段階を行う。
【0061】
この時、必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0062】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0063】
この時、粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が約2~約10mm、あるいは約3~約8mmとなるように粉砕することができる。このような含水ゲル重合体の粒径は、含水ゲル重合体の表面の任意の点を結ぶ直線距離のうち最長距離と定義される。
【0064】
粒径が約2mm未満に粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集される現象が現れることもある。一方、粒径が約10mm超過で粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかである。
【0065】
前記のように粉砕されるか、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。
【0066】
この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、約150~約250℃であってもよい。乾燥温度が約150℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。乾燥温度が約250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥して、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、前記乾燥は、約150~約200℃の温度で、さらに好ましくは、約160~180℃の温度で行われる。
【0067】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20~約90分、あるいは約30~約70分間行われるが、これに限定されない。
【0068】
前記乾燥段階の乾燥方法も、含水ゲル重合体の乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく使用可能である。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。
【0069】
このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%、あるいは約1~約8重量%であってもよい。乾燥後の含水率が過度に低くなると、乾燥過程で含水ゲル重合体が劣化して高吸水性樹脂の物性が低下し、逆に、含水率が過度に高くなると、高吸水性樹脂内の多量の水分により吸水性能が低下したり、後の工程の進行が難しくなりうる。
【0070】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する段階を行う。
【0071】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が約150~約850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、上述した例に発明が限定されるものではない。
【0072】
そして、このような粉砕段階の後、最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径により分級する別途の過程を経ることができ、前記重合体粉末を粒径範囲により一定の重量比となるように分級することができる。
【0073】
(表面架橋)
前記表面架橋段階は、表面架橋剤を含む表面架橋液の存在下、前記粉砕された重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕および分級されたベース樹脂粉末の表面には表面架橋層が形成される。
【0074】
一般に、表面架橋剤は、ベース樹脂粉末の表面に塗布されるので、表面架橋反応は、ベース樹脂粉末の表面で起こり、これは粒子の内部には実質的に影響を及ぼすことなく粒子の表面上での架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋された高吸水性樹脂粒子は、ベース樹脂粉末表面の架橋重合体が追加架橋されて内部でより表面付近でより高い架橋度を有する。
【0075】
一方、前記表面架橋剤としては、ベース樹脂が有する官能基と反応可能な化合物を使用し、一例として、多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ハロエポキシ化合物、またはアルキレンカーボネート系化合物などを特別な制限なくすべて使用可能である。
【0076】
具体的には、多価アルコール系化合物の例としては、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,2-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0077】
また、多価エポキシ系化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル(triethyleneglycol diglycidyl ether)、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル(tetraethyleneglycol diglycidyl ether)、グリセリンポリグリシジルエーテル(glycerin polyglycidyl ether)、およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0078】
そして、ハロエポキシ化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリンを使用することができる。一方、モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物としては、例えば、2-オキサゾリジノンなどを使用することができる。
【0079】
そして、アルキレンカーボネート系化合物としては、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどを使用することができる。これらをそれぞれ単独で使用するか、互いに組み合わせて使用してもよい。
【0080】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法は、上述した一般的な表面架橋剤のほか、陽イオン性高分子をさらに含む。前記陽イオン性高分子は、分子の主鎖または側鎖に陽イオンを有する物質を意味する。陽イオン性高分子を表面架橋剤と共に添加して表面架橋反応を進行させる場合、高分子内に存在するイオンと既存の表面架橋剤との相互作用により、高い架橋密度でも保水能を有しながらも高加圧吸水能を維持できる。また、ベース樹脂の表面を均一に表面処理して通液性も改善できる。
【0081】
一方、前記陽イオン性高分子は、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウム、およびスルホニウムから構成される群より選択される1種以上の陽イオンを有することができる。好ましくは、前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の陽イオンを含み、より好ましくは、繰り返し単位内のアンモニウムイオングループを含む。前記アンモニウムイオンは、アンモニウムイオン内の水素が有機基に置換された数に応じて1級~4級アンモニウムイオンに分類することができる。一例として、陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含むことができるが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記陽イオン性高分子は、アンモニウムイオンが連結されたエチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。一例として、エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルアセテート、エチレン、プロピレン、ブタジエン、およびスチレンであってもよい。また、前記アンモニウムイオンは、エチレン性不飽和単量体由来繰り返し単位と直接結合するか、またはC1-10アルキレンにより結合することができる。
【0083】
また、本発明の一実施形態によれば、前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の環状アンモニウムイオンを含むことができる。環状アンモニウムイオンとは、アンモニウムイオンで置換された少なくとも2以上の有機基が互いに結合して環状をなす構造を意味する。さらに、前記環状アンモニウムイオンは、陽イオン性高分子の単量体が重合過程で環状に転換された形態であってもよく、陽イオン性高分子の単量体が環状アンモニウムイオンを含んでもよい。
【0084】
前記陽イオン性高分子は、具体的には、例えば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートメチルクロライド4級塩)、およびポリ(アクリルアミド-ジメチルアミノエチルアクリレート4級塩)から構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む。一方、前記ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)は、下記の化学式1で表される繰り返し単位を含み、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)は、下記の化学式2で表される繰り返し単位を含む化合物である。
【0085】
【化1】
【0086】
好ましくは、前記陽イオン性高分子は、重量平均分子量が50,000g/mol~700,000g/mol、より好ましくは、80,000g/mol~600,000g/mol、または100,000g/mol~500,000g/molであってもよい。陽イオン性高分子の重量平均分子量が前記範囲を満足する場合、既存の表面架橋剤と相互作用によりベース樹脂をコーティングするのに適切で吸水諸物性を向上させることができる。
【0087】
好ましくは、前記陽イオン性高分子は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部~0.9重量部で含まれる。より好ましくは、ベース樹脂100重量部に対して0.3重量部~0.8重量部、または0.05重量部~0.5重量部で含まれる。陽イオン性高分子が前記範囲に含まれる場合、ベース樹脂の表面処理に適して高加圧吸水能および通液性を同時に向上させることができる。
【0088】
一方、前記表面架橋剤の含有量は、具体的には、追加される表面架橋剤の種類や反応条件に応じてより適切に選択可能であるが、通常、ベース樹脂粉末約100重量部に対して、約0.001重量部~約5重量部、あるいは約0.005重量部~約2重量部、あるいは約0.01重量部~約1重量部、あるいは約0.02重量部~約0.5重量部を使用することができる。表面架橋剤の含有量が過度に少なければ、表面架橋反応がほとんど起こらず、表面架橋剤の含有量が過度に多い場合、過度な表面架橋反応の進行により保水能などの基本的な吸水特性の低下が現れることがある。
【0089】
前記表面架橋剤の添加時、追加的に水を共に混合して表面架橋液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂に均一に分散できるという利点がある。この時、追加される水の含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、ベース樹脂粉末のかたまり現象を防止すると同時に、表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で、ベース樹脂100重量部に対して、約1重量部~約10重量部の比率で添加されることが好ましい。
【0090】
一方、上述した表面架橋液は、前記陽イオン性高分子のほか、シリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群より選択された1種以上の無機物質などを追加的に添加して表面架橋反応を行うことができる。前記無機物質は、粉末形態または液状形態で使用することができ、特に、アルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液で使用することができる。また、前記無機物質は、ベース樹脂100重量部に対して、約0.05重量部~約2重量部の含有量で使用できる。
【0091】
また、前記表面架橋工程では、前記無機物質の代わりにあるいは無機物質と共に、多価の金属陽イオンを添加して表面架橋を進行させることによって、高吸水性樹脂の表面架橋構造をさらに最適化することができる。これはこのような金属陽イオンが高吸水性樹脂のカルボキシ基(COOH)とキレートを形成することによって、架橋距離をさらに低減できるためと予測される。
【0092】
また、必要に応じて、前記無機物質および/または多価の金属陽イオンをベース樹脂粉末に添加する方法については、その構成の限定はない。例えば、無機物質および/または多価の金属陽イオンを含む表面架橋剤とベース樹脂粉末などを反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に無機物質および/または多価の金属陽イオンを含む表面架橋剤などを噴射する方法、連続的に運転されるミキサにベース樹脂粉末と無機物質および/または多価の金属陽イオンを含む表面架橋剤などを連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0093】
前記表面架橋剤の添加時、追加的に水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂粉末に均一に分散できるという利点がある。この時、追加される水およびメタノールの含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、ベース樹脂粉末のかたまり現象を防止すると同時に、表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するために適切に調節可能である。
【0094】
一方、前記ベース樹脂粉末、および表面架橋液の混合物に熱を加えて昇温することによって、前記ベース樹脂粉末に対して表面改質段階を行う。
【0095】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の種類によってよく知られた条件下で行うことができ、例えば、約140℃~約200℃の温度で約20分~約60分間行うことができる。より具体的な一例において、前記表面架橋段階は、約20℃~約80℃の初期温度を有するベース樹脂粉末に対して、表面架橋剤などを付加し、約10分~約30分かけて約140℃~約200℃、あるいは約175℃~約195℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を約5分~約60分間維持して熱処理することによって行われる。
【0096】
前記表面架橋条件により、高吸水性樹脂の保水能などの基本的な吸水特性と、通液性および/または加圧吸水能が共に最適化できる。
【0097】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの高温の流体などを使用することができるが、これに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択可能である。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法があるが、上述した例に本発明が限定されるものではない。
【0098】
(高吸水性樹脂)
一方、前記製造方法は、前記表面架橋層が形成された架橋重合体からなるベース樹脂を分級する段階を追加的に含むことができる。
【0099】
前記表面架橋層が形成された架橋重合体からなるベース樹脂を粒径により分級する段階を経て、最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理することができる。このような粉砕および分級などの工程により、これから得られる高吸水性樹脂は、約150~850μmの粒径を有するように製造および提供されることが適切である。より具体的には、前記表面架橋層が形成されたベース樹脂の約90重量%、好ましくは95重量%以上が約150~850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満になる。
【0100】
このように、前記高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、最終製造された高吸水性樹脂が優れた吸水諸物性を示すことができる。したがって、前記分級段階では、粒径が約150~約850μmの重合体を分級して、製品化することができる。
【0101】
一方、本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、前記表面架橋層は、繰り返し単位内の4級アンモニウムイオンを含む陽イオン性高分子を含む、高吸水性樹脂を提供する。
【0102】
上述のように、本発明の製造方法による高吸水性樹脂は、表面架橋段階で陽イオン性高分子を添加して、ベース樹脂の表面の表面架橋構造内に陽イオン性高分子が分布した表面架橋層を含む。表面架橋層をなす陽イオン性高分子を含む表面架橋剤に関する説明は上述した通りである。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、前記陽イオン性高分子は、アンモニウムイオンが連結されたエチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。一例として、エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルアセテート、エチレン、プロピレン、ブタジエン、およびスチレンであってもよい。また、前記アンモニウムイオンは、エチレン性不飽和単量体由来繰り返し単位と直接結合するか、またはC1-10アルキレンにより結合することができる。
【0104】
また、本発明の一実施形態によれば、前記陽イオン性高分子は、繰り返し単位内の環状アンモニウムイオンを含むことができる。環状アンモニウムイオンとは、アンモニウムイオンで置換された少なくとも2以上の有機基が互いに結合して環状をなす構造を意味する。さらに、前記環状アンモニウムイオンは、陽イオン性高分子の単量体が重合過程で環状に転換された形態であってもよく、陽イオン性高分子の単量体が環状アンモニウムイオンを含んでもよい。
【0105】
好ましくは、前記陽イオン性高分子は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートメチルクロライド4級塩)、およびポリ(アクリルアミド-ジメチルアミノエチルアクリレート4級塩)から構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0106】
好ましくは、前記表面架橋剤としては、ベース樹脂が有する官能基と反応可能な化合物を使用し、一例として、多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ハロエポキシ化合物、またはアルキレンカーボネート系化合物などを特別な制限なくすべて使用可能である。
【0107】
具体的な多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ハロエポキシ化合物、またはアルキレンカーボネート系化合物の例は上述した通りであり、一例として、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリン、2-オキサゾリジノン、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートなどであってもよい。
【0108】
これに基づき、本発明の高吸水性樹脂は、このようなベース樹脂上に形成される表面架橋層により、保水能を維持しながら加圧吸水能を向上させることができ、高い架橋密度でも優れた高加圧吸水能および通液性を実現することができる。
【0109】
本発明で使用する用語「CRC(Centrifugal Retention Capacity)」は、遠心分離保水能ともいい、無荷重下で吸収できる溶液の量を意味する。前記CRCは、EDANA WSP241.3により測定することができ、具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。好ましくは、前記高吸水性樹脂のCRCは、25g/g~40g/g、または30g/g~35g/gである。
【0110】
本発明で使用する用語「AUP(Absorbency Under Pressure)」は、加圧下吸水能ともいい、一定の圧力(0.7psi)下で吸収できる溶液の量を意味する。前記AUPは、EDANA法WSP242.3により測定することができ、具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。好ましくは、前記高吸水性樹脂のAUPは、10g/g~30g/gである。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のAUPは、13g/g~25g/gである。
【0111】
本発明で使用する用語「EFFC」は、有効吸水能ともいい、前記保水能(CRC)と0.7psiの加圧吸水能(AUP)を下記式3に代入して有効吸水能(EFFC)が求められる:
【0112】
[式3]
有効吸水能={保水能(CRC)+0.7psiの加圧吸水能(AUP)}/2
【0113】
好ましくは、前記高吸水性樹脂のEFFCは、22g/g~30g/gである。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のEFFCは、23g/g~28g/g、または25g/g~28g/gである。
【0114】
本発明で使用する用語「Vortex」は、吸水速度ともいい、溶液を高吸水性樹脂内に吸収する速度を意味する。前記Vortexの具体的な測定方法は、以下の実施例に詳述した。好ましくは、前記高吸水性樹脂のVortexは、40秒以下である。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のVortexは、35秒以下、30秒以下、または25秒以下である。一方、前記vortexはその値が小さいほど優れていて、理論的な下限は0秒であるが、一例として、前記高吸水性樹脂のvortexは、10秒以上、15秒以上、または20秒以上である。
【0115】
本発明で使用する用語「通液性(permeability)」は、高吸水性樹脂に吸収された溶液を他の高吸水性樹脂に迅速に伝達する能力を意味し、言い換えれば、高吸水性樹脂内における溶液の移動性を意味する。一方、通液性の具体的な測定方法は、以下の実施例に詳述した。好ましくは、前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は、18秒以下である。より好ましくは、前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は、17秒以下、16秒以下、または15秒以下である。一方、前記通液性(permeability)はその値が小さいほど優れていて、理論的な下限は0秒であるが、一例として、前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は、3秒以上、5秒以上、または10秒以上である。
【0116】
また、本発明の高吸水性樹脂は、先に説明した保水能(CRC)、加圧吸水能(AUP)、有効吸水能(EFFC)、吸水速度(vortex)、および通液性(permeability)の物性範囲の少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上を満足し、より好ましくはすべての物性範囲を同時に満足できる。
【発明の効果】
【0117】
上述した本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、表面架橋時、陽イオン性高分子を添加して高い架橋密度でも優れた吸水諸物性を有する高吸水性樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0118】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0119】
<ベース樹脂の製造>
製造例
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、MW=523)3.0g、光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.008g、熱開始剤としてナトリウムペルスルフェート(sodium persulfate;SPS)0.08g、31.5%苛性ソーダ(NaOH)128g、水63.5gを混合してモノマー水溶液組成物を製造した。
【0120】
前記モノマー水溶液組成物を光重合反応を進行させて重合されたシートを得た。重合されたシートを取り出して3cm×3cmの大きさに切断した後、ミートチョッパ(meat chopper)を用いてチョップ工程(chopping)を実施して粉(crumb)を製造した。前記粉(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥した。185℃のホットエア(hot air)を15分は下方から上方に、15分は上方から下方に流れるようにして均一に乾燥し、乾燥後、乾燥体の含水量は2%以下となるようにした。
【0121】
乾燥後、粉砕機で粉砕した後、Amplitude1.5mmで10分分級(分級mesh組み合わせ:#20#30#50#100)し、各分級粉(10%/65%/22%/3%)を収集して、粒径約150μm~850μmのベース樹脂粉末を得た。
【0122】
<高吸水性樹脂の製造>
比較例1
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水5重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.06重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0123】
実施例1
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水5重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.06重量部、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(製造会社:SINOFLOC、Mw:150,000g/mol)0.1重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0124】
実施例2
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水5重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.06重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.1重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0125】
比較例2
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.025重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0126】
実施例3
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.025重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.05重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0127】
実施例4
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.025重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.1重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0128】
実施例5
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.025重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.2重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0129】
実施例6
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.035重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.2重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0130】
実施例7
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.035重量部、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)0.3重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0131】
比較例3
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水5重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.06重量部、ポリエチレンイミン(製造会社:Polysciences,Inc.、Mw:100,000g/mol)0.1重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、シリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
比較例4
前記製造例で製造したベース樹脂粉末100重量部に、表面架橋液(水7重量部、メタノール3重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s、n=1)0.035重量部)を均一に混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を進行させた。以後、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol、0.3重量部)およびシリカ(Aerosil200、0.1重量部)を添加して混合した。前記表面処理完了後、篩(sieve)を用いて平均粒径850μm以下の高吸水性樹脂を製造した。
【0133】
実験例
前記実施例および比較例で得られた高吸水性樹脂に対して、下記の方法で各物性を測定した。
【0134】
他に表記しない限り、高吸水性樹脂の物性評価は、ASTM規格の篩で分級した150μm~850μmの粒径を有する樹脂に対して行った。
【0135】
(1)CRC
各樹脂の無荷重下吸水倍率による保水能をEDANA WSP241.3により測定した。
【0136】
具体的には、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温(23℃~25℃)で生理食塩水(0.9重量%)に浸した。30分経過後、遠心分離機を用いて、250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を切り、封筒の質量W(g)を測定した。また、高吸水性樹脂を用いずに同一の操作をした後に、その時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次の式1によりCRC(g/g)を算出した。
【0137】
[式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0138】
(2)0.7AUP
高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法WSP242.3により測定した。
【0139】
まず、加圧吸水能の測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級粉を使用した。
【0140】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400meshの金網を装着させた、常温(23℃~25℃)および湿度50%の条件下、金網上に高吸水性樹脂W(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0141】
直径150mmのペトロ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置き、0.9重量%の塩化ナトリウムからなる生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルとなるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0142】
得られた各質量を用いて、次の式2により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0143】
[式2]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0144】
(3)EFFC
前記(1)で測定した保水能(CRC)と、前記(2)で測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)とを下記式3に代入して有効吸水能(EFFC)を求めた。
【0145】
[式3]
有効吸水能={保水能(CRC)+0.7psiの加圧吸水能(AUP)}/2
【0146】
(4)Vortex
吸水速度は日本標準方法(JIS K7224)により測定した。
【0147】
具体的には、25℃の50mLの生理食塩水に高吸水性樹脂2gを入れて、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで撹拌して、渦流(vortex)が無くなるまでの時間を秒単位で測定して算出した。
【0148】
(5)通液性(Permeability)
通液性は次の式4で測定した。
【0149】
[式4]
Perm=[20mL/T1(秒)]×60秒
【0150】
前記式4において、
Permは高吸水性樹脂の通液性であり、
T1は、シリンダに高吸水性樹脂0.2gを入れて、前記高吸水性樹脂が完全に浸るように生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いで、前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた後、0.3psiの圧力下、20mLの生理食塩水が膨潤した高吸水性樹脂を通過するのにかかる時間(秒)である。測定は常温(23℃~25℃)で進行させた。
【0151】
具体的には、シリンダとピストンを用意した。前記シリンダとしては、内径が20mmであり、下端にガラスフィルタ(glass filter)とストップコック(stopcock)が備えられたものが使用された。前記ピストンとしては、外径が20mmより若干小さくて前記シリンダを上下に自由に動けるスクリーンが下端に配置され、錘(weight)が上端に配置され、スクリーンと錘(weight)が棒によって連結されたものが使用された。前記ピストンには、ピストンの付加によって0.3psiの圧力を加えられる錘(weight)が設けられた。
【0152】
前記シリンダのストップコック(stopcock)を閉じた状態で高吸水性樹脂0.2gを入れて、前記高吸水性樹脂が完全に浸るように過剰の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いだ。そして、前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた。以後、膨潤した高吸水性樹脂上に0.3psiの荷重が均一に与えられるようにピストンを付加した。
【0153】
次に、シリンダのストップコック(stopcock)を開けて、生理食塩水20mLが膨潤した高吸水性樹脂を通過するのにかかる時間を秒単位で測定した。この時、シリンダに生理食塩水が40mL満たされている場合のメニスカスをマーキングし、シリンダに生理食塩水が20mL満たされている場合のメニスカスをマーキングしておけば、40mLに相当するレベルから20mLに相当するレベルまで到達するのにかかる時間を測定して前記計算式4のT1を測定できる。
【0154】
前記結果を表1および表2に示した。
【0155】
【表1】
【0156】
*PDADMAC:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(製造会社:SINOFLOC、Mw:150,000g/mol)
*PMETAMS:ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)(製造会社:Senka、Mw:400,000g/mol)
【0157】
【表2】
【0158】
前記表1に示されているように、本発明により製造された実施例の高吸水性樹脂は、表面架橋時、表面架橋液の組成物として陽イオン性高分子をさらに含み、比較例に比べて吸水諸物性に優れていることを確認することができた。
【0159】
また、前記表2に示されているように、表面架橋剤の含有量を減少させて架橋密度を下げた組成で高吸水性樹脂を製造した場合でも、本発明により製造された実施例の高吸水性樹脂は、比較例に比べて他の物性は同等水準を維持しながらも高加圧吸水能および通液性が非常に優れていることを確認できた。
【国際調査報告】