(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】金属有機構造体含有体及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20240201BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240201BHJP
B32B 37/24 20060101ALI20240201BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240201BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20240201BHJP
【FI】
B29C64/165
B01J20/30
B32B37/24
B33Y10/00
B33Y70/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544488
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022013525
(87)【国際公開番号】W WO2022164753
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スターム, エドワード エー.
(72)【発明者】
【氏名】バイル, オレグ
(72)【発明者】
【氏名】リービー, モントレー
(72)【発明者】
【氏名】グダティ, スバシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペルマール, ティネス ケー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4F213
4G066
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AH08A
4F100AH08B
4F100AK01A
4F100AK01B
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4G066FA02
4G066FA31
4G066FA38
(57)【要約】
金属有機構造体吸着剤材料を含有し、積層造形技術によって調製される三次元構造体、並びに積層造形方法によって当該構造体を調製する方法が記載される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法であって、
表面上に第1の原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第1の原料層を形成すること、
第1の原料層の一部の上に固化した原料を選択的に形成すること、
第1の原料層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第2の原料層を形成すること、及び、
第2の原料層の一部に金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を選択的に形成すること、を含み、
第1及び第2の原料層の組み合わせによって、非変性金属有機構造体吸着剤を含む多層複合材が形成される、方法。
【請求項2】
表面上に原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤を含有する原料を含む、原料層を形成すること、
原料層の一部において、原料層に液体を選択的に塗布して、固化した原料を生成すること、
固化した原料を含有する層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の層が金属有機構造体吸着剤を含有する原料を含む、第2の原料層を形成すること、
第2の原料層の一部において、第2の原料層に液体を選択的に塗布して、金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を形成すること、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面上に原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含有する原料を含む、原料層を形成すること、
原料層の一部において、原料層に放射線を選択的に照射して、固化した原料を生成すること、
固化した原料を含有する層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の層が金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含有する原料を含む、第2の原料層を形成すること、
第2の原料層の一部において、第2の原料層に放射線を選択的に照射して、金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を形成すること、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多層MOF複合材が、
少なくとも60重量パーセントの金属有機構造体吸着剤と、
15から40重量パーセント重量パーセントのバインダ組成物と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原料が、選択的に固化させて固化した原料を形成することができるバインダ組成物の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バインダ組成物の成分が無機粒子を含み、
液体が、水、有機溶媒、ポリマー、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体がバインダ組成物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
原料層が、原料層の総重量に基づいて少なくとも80重量パーセントの金属有機構造体吸着剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バインダ組成物がサーモポリマーを含み、
バインダ組成物をサーモポリマーの溶融温度より高い温度まで加熱して、液体バインダ組成物を形成すること、
液体バインダ組成物を原料層の一部に選択的に塗布すること、及び、
液体バインダ組成物を溶融温度未満まで冷却することによって液体バインダ組成物を固化させること、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法であって、
金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含む原料を用意すること、
原料を表面に選択的に塗布して表面上に原料のパスを形成することであって、パスが上部パス表面を有する、原料のパスを形成すること、
パスの原料を固化させること、次いで、
原料を上部表面に塗布して第2の表面上に原料の第2のパスを形成すること、を含む方法。
【請求項11】
原料が、原料の総重量に基づいて、
40から90重量パーセントの金属有機構造体吸着剤と、
0から30重量パーセントの非金属有機構造体吸着剤と、
10から30重量パーセントのバインダ組成物と、を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バインダ組成物がサーモポリマーを含み、
バインダ組成物をサーモポリマーの溶融温度より高い温度まで加熱して、液体バインダ組成物を形成すること、及び、
液体バインダ組成物を溶融温度未満まで冷却することによって液体バインダ組成物を固化させること、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
バインダ組成物が放射線硬化性ポリマーを含み、液体バインダ組成物を放射線に曝露することによって液体バインダ組成物を固化させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
積層造形に使用するための原料であって、
金属有機構造体吸着剤と、
ポリマーを含むバインダ組成物と、
を含む原料。
【請求項15】
ポリマーが、サーモポリマー及び放射線硬化性ポリマーのうちの一方を含む、請求項14に記載の原料。
【請求項16】
原料の総重量に基づいて、
40から90重量パーセントの金属有機構造体吸着剤と、
0から30重量パーセントの非金属有機構造体吸着剤と、
10から30重量パーセントのバインダ組成物と、を含む、
請求項15に記載の原料。
【請求項17】
原料の総重量に基づいて、
少なくとも70重量パーセントのMOF粒子と、
15から30重量パーセントのポリマー、無機粒子、水及び有機溶媒と、を含む、
請求項14に記載の原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載される発明は、金属有機構造体吸着剤材料を含有し、積層造形技術によって調製される三次元構造体、並びに積層造形方法によって当該構造体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業的に「金属有機構造体」(「MOF」)材料と呼ばれる材料は、ガス状化学物質を貯蔵及び選択的に分配するためにガス状化学物質を吸着することができる固体吸着材料として有用であることが知られている。金属有機構造材料は、これらのタイプの吸着剤型ガス貯蔵システムに有効な様々な一般的なクラス又はタイプの吸着剤材料の1つである。他の種類の吸着剤材料としては、とりわけ、活性炭系吸着剤材料、ゼオライト吸着剤材料、ポリマー吸着媒体、シリカが挙げられる。吸着剤型貯蔵システムでは、吸着剤材料は、典型的には、ガス「試薬ガス」が添加される貯蔵シリンダなどの貯蔵容器に収容される。試薬ガスは、その後容器から放出されるために吸着材料の表面に吸着される。吸着された試薬ガスは、凝縮形態又はガス形態でも存在する試薬ガスの量と平衡状態で容器に収容され得、貯蔵容器の内部は、大気圧、大気圧より上、又は大気圧より下であり得る。
【0003】
吸着材料に貯蔵されたガスは、様々な産業及び産業用途で使用することができる。いくつかの例示的なガスとしては、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィ、洗浄、及びドーピングなどによって半導体材料又はマイクロ電子デバイスを処理する際に使用されるガスが挙げられ、これらの使用は、とりわけ、半導体、マイクロ電子、光起電力、及びフラットパネルディスプレイデバイス及び製品を製造するための方法に含まれる。
【0004】
半導体材料及びデバイスの製造、並びに様々な他の産業プロセス及び用途において、安全な貯蔵システムに提供される高純度試薬ガスの信頼性の高い供給源が必要とされている。試薬ガスの例としては、シラン、ゲルマン、アンモニア、ホスフィン、アルシン、ジボラン、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、ジゲルマン、アセチレン、メタン、及び対応する及び他のハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)化合物が挙げられる。ガス状水素化物アルシン(AsH3)及びホスフィン(PH3)は、イオン注入におけるヒ素(As)及びリン(P)の供給源として一般的に使用されている。それらの極端な毒性及び比較的高い蒸気圧のために、これらのガスの使用、輸送、又は貯蔵は、重大な安全上の懸念を生じさせる。これらのガスは、高度なケア及び多くの安全上の注意を伴って貯蔵、輸送、取り扱い、及び使用されなければならない。吸着剤ベースの貯蔵システムは、多くの場合、これらの種類の試薬ガスを貯蔵及び送達するために使用される。
【0005】
近年、金属有機構造体吸着剤材料は、ガス捕捉、ガス精製、並びにガス貯蔵及び送達用途において大きな関心を集めている。科学者らは、過去20年間に何千もの化学的に異なるMOF材料を合成しており、これらの多くは、非常に高い表面積と、イオン注入及び半導体及びマイクロ電子デバイス製造に使用される他のプロセスで使用されるガスなどの、大量の一般的に使用される試薬ガスを可逆的に吸着する能力とを有する。
【0006】
MOF吸着剤は吸着剤型貯蔵用途に有効であるが、MOFの特定の特徴は、他の種類の吸着剤材料の特徴と比較して有利ではない。例えば、MOFは、他の種類の吸着剤材料、例えばゼオライトと比較して、物理的な安定性が低く、劣化(例えば、熱劣化)しやすいことが知られており、また、取り扱い及び輸送時に物理的に劣化しやすい可能性がある。
【0007】
別の欠点として、MOFは、他の吸着剤材料と比較して、より低い充填密度(例えば、MOF吸着剤材料の体積あたりのグラムMOF)を示すことが知られている。MOFは、一般に、様々な他の種類の吸着剤材料と比べて、比較的低い密度を有し、例えば、モノリシック(「パック状」)炭素系吸着剤材料の密度の4分の1から3分の1の密度を有する。結果として、MOFの測定された重量吸着容量が炭素の重量吸着容量よりも大きくても、より低密度のMOF構造では、一定容積の容器内に、多くの炭素系吸着剤材料の作業能力に等しい十分な量(密度に基づく)を収容することができない。
【0008】
多くのMOFは、非常に粉末又は緩く結合した脆弱な押出ペレット構造としてのみ合成することができる。これらの構造は、輸送及び使用中に、例えば、小さな微粒子がはがれ落ちることよって、物理的に劣化しやすい可能性がある。結果として、MOF吸着剤材料を収容する貯蔵容器内にMOF材料の微粒子が存在し得る。MOF粒子は、容器から供給された試薬ガスと共に貯蔵容器から出て、下流に流れて試薬ガスが使用される場所に至る可能性があり、下流のバルブ及び流量制御器の動作を妨げる可能性があり、又は代わりに、粒子の下流の流れを防止するように設計されたフィルタを詰まらせる可能性がある。
【0009】
MOFの体積容量を増加させ、粒子がはがれ落ちる可能性を最小限に抑えることによって、これらの結晶性材料の潜在的な利点を実現するために、より高密度のMOFを製造する試みがなされてきた。研究者らは、圧縮圧密、バインダ又は溶媒支援押出、ポリマー結合、及びMOFバインダ足場を使用してMOFを緻密化しようと試みてきた。これらの手法はすべて、明らかな欠点を有する。例えば、圧縮力の使用によるMOFの高密度化の試みは、当該MOFの開ケージ構造が高い圧縮荷重下で変形又は崩壊する傾向によって妨げられてきた。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本発明は、積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法に関する。本方法は、表面上に第1の原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第1の原料層を形成すること、第1の原料層の一部の上に固化した原料を選択的に形成すること、第1の原料層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第2の原料層を形成すること、及び、第2の原料層の一部に金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を選択的に形成すること、を含み、第1及び第2の原料層の組み合わせによって、非変性金属有機構造体吸着剤を含む多層複合材が作成される。
【0011】
別の態様では、本発明は、積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法に関する。本方法は、金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含む原料を用意すること、原料を表面に選択的に塗布して表面上に原料のパスを形成することであって、パスが上部パス表面を有する、原料のパスを形成すること、パスの原料を固化させること、次いで、原料を上部表面に塗布して第2の表面上に原料の第2のパスを形成すること、を含む。
【0012】
更に別の態様では、本発明は、積層造形に使用するための原料に関する。原料は、金属有機構造体吸着剤と、ポリマーを含むバインダ組成物とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図1B】
図1Bは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図2A】
図2Aは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図2B】
図2Bは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図3A】
図3Aは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図3B】
図3Bは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する上述の方法の例示的な工程を示す。
【
図4A-4C】
図4A、
図4B、及び
図4Cは、積層造形技術によって多層MOF複合材を形成する記載の方法の例示的な工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、一般に「3D印刷」技術と呼ばれる方法などの積層造形法によってMOF含有三次元構造を調製するのに有用な方法の説明である。様々な積層造形技術が知られている。具体的な例は、一般に「粉末床」積層造形法と呼ばれるものであり、様々な「バインダジェット印刷」技術を含む。他の例としては、ステレオリソグラフィ技術(SLS)及び「原料吐出方法」(FDM)が挙げられる。本明細書に記載の方法及び材料は、これらの例示的な種類に関して記載されている。
【0015】
本方法は、固化したバインダ組成物の中に分散したMOF粒子を含む固化した原料組成物の複数の層(例えば、「パス」)を個別に順次形成する積層造形工程を含み、固化したバインダ組成物は、固化した原料組成物内でMOF粒子を一緒に保持する構造として作用する。一連の積層造形工程を使用して、固化した原料の複数の層が順次形成されて、固化した原料の層から作られた多層MOF複合材になる。
【0016】
多層MOF複合材(又は略して「MOF複合材」又は「複合材」)は、吸着剤ベースの貯蔵システムの一部として試薬ガスを吸着及び脱着するように適合されたMOF粒子を含む。
【0017】
原料として、MOF粒子は、粉末などの粒子形態であり、所望の吸着及び脱着機能を示す。しかし、MOF複合材の形態では、MOF粒子は他の材料と組み合わされている。積層造形工程から最初に生じる多層MOF複合材は、一般に「グリーン体」と呼ばれることがある構造である。グリーン体の形態の多層MOF複合材は、積層造形工程に有用な又は必要とされる材料、例えば、バインダ組成物の様々な成分を含む。MOF複合材を調製するために使用された、ただし吸着材料としてのMOF粒子の所望の機能には必要のないMOF複合材のいくつかの材料は、多層MOF複合材から除去されてもよく、あるいは、代わりに他の方法で処理されて更に強化され又は硬化されてもよい。MOF複合材のこれらの材料を除去又は処理することにより、吸着剤型貯蔵システムで使用するための吸着剤材料としてのMOF粒子の機能が改善される。
【0018】
したがって、積層造形技術によって最初に形成されたMOF複合材は、固化したバインダ組成物を除去するために、機械的特性、例えば、限定するものではないが、多層MOF複合材の機械的強度、曲げ強度、幾何学的安定性、及び/又は耐摩耗性を改善するために、あるいはその両方のために更に処理することができる。多層MOF複合材を処理する例示的な工程では、本複合材は、固化したバインダ又はその一部を除去することとしても知られる脱バインダ工程、溶媒との接触、ガス(例えば、ガスエッチング用)との接触、又は複合材を高温に曝露してバインダ若しくは複合材を強化、硬化若しくは焼結させること、のうちのいずれか1つ以上によって処理することができる。
【0019】
記載の多層MOF複合材を調製するために、関連技術において周知の特定の種類の積層造形方法が有用又は有利であることが分かっている。一般に、積層造形プロセスは、多様な形状及びサイズを示す構造を調製するのに有用であることが知られている。積層造形はまた、圧力降下を制御することでガス浸透を高めるための微細なチャネルを潜在的に有する複雑な微細構造の印刷を可能にすることができる。積層造形プロセスはまた、高度に自動化され得、比較的効率的かつ費用効果的であり得る。
【0020】
更に、特定の種類の積層造形法は、MOF粒子の有用な機能性(例えば、吸着剤としての)を保持する多層MOF複合材を製造するのに有効であり得、すなわち、MOFは、積層造形工程中に物理的に変化又は「変性」せず、試薬ガスを可逆的に吸着及び脱着するためのMOFの使用を可能にする元の物理(化学、分子)形態を保持する。
【0021】
任意選択で、好ましくは、特定の有用な又は好ましい例によれば、記載の方法は、MOF複合材の体積当たりのMOF粒子の重量(すなわち、「MOF密度」)が比較的高いMOF複合材を製造することができる。記載の方法によって達成され得る例示的なMOF密度は、MOF複合材を更に処理して、過去の方法によって調製された以前のMOF吸着剤材料のMOF密度よりも比較的高いMOF密度を示すMOF吸着剤材料を製造することを可能にし得る。有用で好ましいMOF複合材は、MOF複合材の1立方センチメートルあたり少なくとも0.65グラムのMOF粒子、好ましくはMOF複合材の1立方センチメートルあたり少なくとも0.85グラムのMOF粒子、最も好ましくは、MOF複合材の1立方センチメートルあたり少なくとも1.00グラムのMOF粒子の量でMOF粒子を含有するように形成され得る。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、積層造形技術を記載のように使用して、MOF粒子の所望の機能性を保持する態様で、つまり、吸着型貯蔵システムの一部として機能するように必要に応じて試薬ガスを吸着及び脱着するMOF粒子の能力を低下させる形でMOF粒子を実質的に変性させることなく、多層MOF複合材を製造することができる。所望の積層造形プロセスの工程の間、MOF材料は、MOF材料が吸着材料として機能することを可能にする物理、化学、及び分子構造を保持する。すなわち、積層造形工程は、MOFを変性させず、吸着材料として不活性化させない。本発明においては、MOF材料は、当技術分野で公知のすべての有機金属構造体を含むことができる。
【0023】
MOFの変性、すなわち、MOF分子の物理的、化学的、又は分子的分解、及びMOF粒子の所望の機能性の喪失を防止するために、積層造形技術によって多層複合材を調製する好ましい工程は、MOF粒子を125℃から350℃、好ましくは180℃から325℃、最も好ましくは250℃から300℃の範囲、又は摂氏300度以上であり得る温度に曝露することを回避する工程を含み得る。更に、MOF粒子を摂氏250度又は200度を超える温度に曝露しないことが好ましい。また、積層造形プロセス中に、MOF吸着剤粒子を室内空気及び湿気へ曝露することを防止し、又は最小限に抑えることが望ましい場合がある。
【0024】
有用な金属有機構造体(MOF)吸着剤材料は、様々な物理的及び分子的形態を示す。金属-有機構造体は、有機「リンカー」分子に囲まれた正に帯電した金属イオンの規則的な繰り返し配列を含む分子構造を有する有機-無機ハイブリッド結晶性多孔質材料である。金属イオンは、有機リンカー分子のアームを互いに結合して、中空ケージ様の繰り返し構造を形成するノードを形成する。この中空構造により、MOFは、吸着剤型貯蔵システムにおいて試薬ガスを吸着(及び選択的に脱着)するための使用に適合し得る非常に大きな内部表面積を有する。MOF分子のこれらの特徴は、多層MOF複合材を形成するための有用な積層造形プロセス中に、実質的に妨げられたり損なわれたりすることなく保持されなければならない。
【0025】
MOF吸着剤は、任意の既知の又は将来開発されるMOF吸着剤であってもよい。金属有機構造体吸着媒体は公知であり、炭素系吸着媒体、ポリマー吸着媒体、ゼオライト、シリカなどの他の種類の吸着媒体とは異なる。金属有機構造体(MOF)は、結晶構造中の金属イオンに配位した有機リンカーからなるナノポーラス材料である。ゼオライト性イミダゾレート構造体(ZIF)として知られるMOFのサブクラスは、イミダゾレートリンカーの窒素原子によって架橋された金属(主に四面体Zn2)からなる。試薬ガス、試薬ガス貯蔵、及びガス分離の技術分野では、様々なMOF吸着剤材料が知られている。MOF材料の特定の例は、米国特許第9,138,720号に、また米国特許出願公開第2016/0130199号にも記載されており、これらの各文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
記載のMOFは、多層複合材の吸着材料として単独で含まれていてもよく、又は1つ以上の他のタイプの吸着材料と組み合わせて存在していてもよい。様々なタイプの吸着剤材料のいずれも、複合材の吸着剤材料として、MOFと組み合わせて有用であり得る。例示的な非MOF吸着剤としては、炭素系材料(例えば、活性炭)、シリカライト、ポリマー構造体(PF)材料、多孔質有機ポリマー(POP)などが挙げられる。吸着剤は、任意のサイズ、形状、又は形態例えば、顆粒、微粒子、ビーズ、ペレット、又は成形モノリスであってもよい。
【0027】
特定の例では、多層MOF複合材は、存在する唯一の種類の吸着材料としてMOFを含有し得る。特定の例示的な方法及びMOF複合材では、多層MOF複合材は、吸着媒体の総量に基づいて、実質的に少なくとも50、80、90、95、若しくは97%のMOF吸着媒体を含むことができ、又は完全にMOF吸着媒体を含むことができる。他の(非MOF)タイプの吸着媒体は必要とされず、本明細書の材料及びMOF複合材から除外され得る。言い換えれば、プロセスの材料(例えば、原料)又は多層MOF複合材に含まれる吸着材料の総量は、MOF型吸着媒体を含むか、本質的にMOF型吸着媒体からなるか、又はMOF型吸着媒体からなる場合がある。
【0028】
本明細書によれば、特定の材料又は材料の組み合わせから本質的になる組成物は、特定の1つ又は複数の材料と、せいぜいわずかな量の任意の他の材料、例えば、2、1、0.5、0.1、又は0.05重量パーセント以下の任意の他の材料とを含む組成物である。例えば、MOF吸着媒体(例えば、MOF粒子)から本質的になる吸着剤材料を含有するMOF複合材は、MOF吸着媒体(例えば、MOF粒子)と、MOF複合材中の吸着媒体の総重量に基づいて、2、1、0.5、0.1、又は0.05重量%以下の他のタイプの吸着媒体とを含有するMOF複合材を指す。
【0029】
他の例では、複合材は、少なくとも1つのMOF型吸着剤を含む複数の異なる種類の吸着剤を含んでいてもよい。例えば、複合材は、異なる細孔サイズ要件を満たすかなり均一に充填された複合材内に存在する複数の吸着材料の組み合わせを含むことができる。異なる複数の吸着剤材料は、表面積、細孔径分布、又は他の技術的パラメータが異なり得る。例えば、異なるMOF複合材間の細孔径の比は、約1.5:1から10:1の範囲であり得、他の用途では、2:1又は3:1の細孔径の比が必要とされ得る。例示的な複合材は、第1のMOF(「MOF A」)を、第2のMOF(「MOF B」)、更には任意選択の第3のMOF(「MOF C」)と組み合わせて含有していてもよい。他の例は、第1のMOF(「MOF A」)及び任意選択の第2のMOF(「MOF B」)を、任意選択で第2の炭素系吸着材料(「炭素B」)を有する炭素系吸着材料(「炭素A」)などの1つ以上の非MOF吸着材料と組み合わせて含有していてもよい。他の組み合わせは、ゼオライトを有する1つ以上のMOF吸着剤、ポリマー構造体(PF)吸着剤材料、多孔質有機ポリマー吸着剤材料(POP)、又はこれらのうちの2つ以上を含む。そのようなMOF吸着剤の例としては、Zr-MOF(酸化ジルコニウムノードを有する金属-有機構造体)、ZIF様MOF(ゼオライト性イミダゾレート構造体)、及び/又は亜鉛系MOFが挙げられるが、これらに限定されない。MOF吸着剤と非MOF吸着剤との組み合わせは、任意の有用な相対量、例えば、90:10から10対90(wt:wt MOF対非MOF)、又は75:25から25対75(wt:wt MOF対非MOF)、又は60:40から40対60(wt:wt MOF対非MOF)で使用され得る。複数の吸着材料の異なる組み合わせは、限定するものではないが、動力学、安定性、熱吸着、送達効率及び同様のパラメータなどの、所望の吸着又は脱着性能に依存する。
【0030】
多層MOF複合材を形成するための積層造形プロセスは、MOF吸着媒体(例えば、MOF粒子)を含む成分及び結合してバインダ組成物を形成する1つ以上の成分を必要とする。バインダ組成物は、MOF粒子と組み合わせることができ、バインダ組成物を固化(強化、硬化など)して、MOF粒子の物理的支持構造(マトリックス)として作用する固化したバインダ組成物を含む固化した原料組成物を生成することができる。MOF粒子をバインダ組成物と組み合わせ、バインダ組成物をMOF複合材の層として固化させる工程は、異なる種類の積層造形技術によって異なり得、例えば、MOF粒子をバインダ組成物と組み合わせる工程は、粉末床技術及び粉末床技術の異なるバージョンでは、ステレオリソグラフィ及び原料吐出方法と比べて異なり得る。バインダ組成物の成分もまた、異なる種類の積層造形技術によって異なり得る。
【0031】
一般に、バインダ組成物は、原料組成物の一部として、又は原料層に添加されることによって固化して、原料層の一部で固化した原料を選択的に形成することができる任意の材料を含んでいてもよい。例としては、一般に、ポリマー(例えば、合成ポリマー又は天然ポリマー、いずれも任意選択で化学的に硬化可能であり得る)などの有機材料、粘土及び他の無機粒子などの無機材料、一過性の材料などが挙げられる。特定の実施形態では、合成ポリマーとしては、ナイロン、ポリエチレン、及びPLA(ポリ乳酸、及びPVA(ポリビニルアルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
バインダ組成物又はその成分として有用であり得る種類の材料の一例は、液体に懸濁し、液体の除去によって乾燥させて固体材料を形成することができる粘土などの非ポリマー無機粒子である。有用な粘土又は他の無機粒子型バインダ成分は、無機粒子及びMOF粒子がポリマーと共に液体(例えば、水、有機溶媒、又は両方の組み合わせ)に一緒に懸濁され、続いて、例えば蒸発によって液体を除去することができる形で、MOF粒子及びポリマー(例えば、水溶性又は水分散性ポリマー)と組み合わせることができる。液体を除去すると、無機粒子及びポリマーは、固化した原料組成物の一部としてMOF粒子を支持する固化したバインダ組成物を形成する。
【0033】
他のバインダ組成物としては、硬化性ポリマーバインダ材料が挙げられる。液体の形態の硬化性ポリマーバインダは、液体としてMOF粒子と組み合わせることができる。原料層は、液体ポリマーバインダ及びMOF粒子から形成されてもよく、バインダは、原料層を形成する前又は原料層を形成している間にMOF粒子と組み合わされる。原料層に含まれる硬化性高分子バインダは、固化されていてもよい。例としては、可逆的に加熱されて液体を形成し、次いで冷却されて固体(例えば、可逆的に溶融及び固化されてもよい)を形成し得る熱可塑性ポリマーが挙げられる。代替的又は追加的に、ポリマーバインダ材料は、例えば、高温への暴露(熱硬化性)によって、又はレーザ(例えばUVレーザ)などからの電磁放射線への暴露によって、化学的に硬化可能であり得る。ポリマーバインダの他の例は、液体溶媒内で液体として塗布されてもよく、次いでその溶媒を蒸発させて、MOF粒子を支持する構造としてポリマーバインダを残してもよい。ポリマーは、任意選択でその後、熱(高温)、放射線への曝露、又は別の反応機構によって開始される化学反応によって硬化されてもよい。
【0034】
硬化性液体バインダ組成物は、化学モノマー、オリゴマー、ポリマー、架橋剤などを含む硬化性材料を含んでいてもよく、硬化性バインダ組成物の流動又は硬化を可能にするか又は促進する少量の機能性成分又は添加剤を更に含んでいてもよい。これらは、流動助剤、界面活性剤、乳化剤、粒子凝集を防止するための分散剤、及び電磁(例えば、紫外線)放射線又は高温に曝露されたときにポリマーの硬化を開始するための開始剤のいずれかを含み得る。
【0035】
「バインダジェット印刷」技術と呼ばれる様々な技術を含む「粉末床」技術と呼ばれる積層造形技術では、MOF粒子は、「原料層」として知られる均一な層に形成することができる「原料」の床に含まれる。原料層は、MOF粒子を含有し、任意選択で、1つ以上の追加の成分、例えば、バインダ組成物の1つ以上の成分を含んでいてもよい。他の任意の成分としては、流動助剤又はポリマースペーサー粒子が挙げることができる。これらの方法は、その1つ以上の成分が原料層に含まれるか、又は原料層の一部に選択的に適用され得るバインダ組成物を固化させて、原料層の選択された部分(領域)に固化したバインダ組成物を形成させる。バインダ組成物(又はその個別の部分)が原料層の選択された部分に位置するようになる機構と、原料層の選択された部分のバインダ組成物が固化する機構は、異なり得る。
【0036】
粉末床積層造形技術は、一般的に、複数の個々の層形成工程のシーケンスを含むことができ、各工程は、多層MOF複合材の単一の断面層を形成するために使用される。第1の(底部)層を形成した後、各後続層は先行層の上面に形成される。この一連の複数の個別の層形成工程は、固化した原料の複数の個別に形成された層からなる多層MOF複合材を形成するのに有効である。
【0037】
これらの技術は、他の積層造形技術と同様に、CAD(コンピュータ支援設計)ファイルなどのデジタルデータによって記述又は定義された物体を生成する。三次元物体は、固化した原料からなる多数の薄い断面層で作られた複合材(「多層MOF複合材」)を生成するために組み合わされる一連の個々の工程を使用して、層ごとに順次構築される。各層形成工程は、表面上に、MOF粒子を含有する原料を含む単一の原料層を形成することを含んでいてもよい。いくつかの例示的な方法では、原料層は、バインダ組成物又はその成分を含有していてもよい。他の例示的な方法では、原料層は、バインダ組成物又はバインダ組成物の成分を含有せず、これらの方法では、バインダ組成物は、原料層の一部に選択的に添加される。記載された方法のいずれにおいても、複合材の複数の層は、複合材のすべての層において1つの単一のタイプの吸着剤又は2つ以上の異なるタイプの吸着剤(1つ以上のMOF、又は別のタイプの吸着剤を有する1つ以上のMOF)の組み合わせを使用することによって、あるいは代わりに異なる層において異なる吸着剤材料を使用することによって形成され得る。同様に、複数の層は、各層で同じ非吸着剤成分又は異なる層で異なる非吸着剤成分を使用して、例えば、MOF複合材の異なる層で同じバインダ組成物を使用することによって、又は異なる層で異なるバインダ組成物を使用することによって、形成され得る。
【0038】
一例では、ローラ又は他の伸展装置は、単一のパスで同一量の粉末原料組成物を塗布するか、又は複数のパスで複数の別個の量の粉末原料を表面上に塗布するかのいずれかによって、粉末形態の原料組成物のある量を表面上に均一に塗布する。「原料層」は、粉末原料組成物を表面に塗布し、ローラ又は他の塗布方法を使用して所望の有用な深さを有する滑らかで均一な原料層を形成する1つ又は複数の工程によって、原料組成物から形成され得る。
【0039】
原料層の有用な深さ(厚さ)は、様々な要因、例えば、原料層中のMOF粒子の粒径、固化した原料層の所望の特性(品質、例えば、表面仕上げ、層密度、寸法精度)、及び原料層に液体材料を塗布するために使用される印刷ヘッド又は他の装置の解像度に依存し得る。望ましくは、原料層の厚さは、原料中のMOF粒子の直径(D50)の少なくとも2倍又は3倍であってもよい。有用な原料層の典型的な厚さは、25ミクロン~200ミクロンの範囲であり得る。
【0040】
原料層を形成した後、原料層の一部を選択的に処理して固化した原料層を形成する。固化した原料組成物を形成するためのこれらの工程に続いて、粉末原料組成物の追加の薄層が完成した層の上面の上に広がり、これはある量の固化していない(元の)原料組成物に囲まれた固化した原料を含む。
【0041】
このプロセスは、固化した原料を含む複数の層を形成するために繰り返され、(第1の層以降の)固化した原料の新しい層はそれぞれ、固化した原料の前の層の上に形成されて、その層に付着する。複数の原料層が堆積され、固化した原料の複数の層が、各完成した層の上に1つずつ連続して形成され、多層MOF複合材を形成する。多層MOF複合材のすべての層が堆積された後、固化した原料を調製するために使用されなかった元の原料材料を含む原料層の部分は、多層MOF複合材から分離されてもよい。
【0042】
必要に応じて又は有用であれば、粉末床積層造形技術で使用される原料層は、バインダ組成物の一部であるか、あるいはその逆で、固化した原料層の一部として有用であるかのいずれかである、1つ以上の任意選択の成分を含んでいてもよい。これらは、例えば、プリンタベッド内の原料の流れを改善し、均一な(一様な、平らな、均質な)原料層を形成する原料の能力を改善するための流動助剤を含むことができる。代替的又は追加的に、原料層は、任意選択で、MOF粒子間のスペーサとして作用する、例えば「細孔形成」材料として作用する固体ポリマー材料を含有していてもよい。そのような固体ポリマーは、熱可塑性(室温では固体形態の)細孔形成ポリマーであってもよく、原料層中に任意の所望の量で、例えば、原料の総重量に基づいて0.5から25重量パーセント、例えば、原料の総重量に基づいて1から20又は2.5から15重量パーセントの量で存在していてもよく、原料の残部(重量基準)はMOF粒子である。あるいは、体積基準で、好ましい割合は3~30%、又は5~25%、又は10~20%である。
【0043】
より詳細には、粉末床技術の一具体例は、「ジェットバインダ印刷」と呼ばれる。これらの方法では、原料層はMOF粒子を含み、バインダ組成物又はバインダ組成物の成分を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0044】
固化した原料層は、原料層の一部に液体材料を選択的に塗布して、原料層の一部に固化した原料組成物を選択的に形成することによって形成される。所望の量の液体を選択的に吐出して原料層に塗布するのに有効なプリントヘッド又は他の装置は、原料層の上部表面の上を移動する。プリントヘッド又は他の有用な装置は、液体を吐出し、原料層の上面の選択された部分に液体を塗布する。液体は、原料層に流入し、液体が選択的に適用される原料層の位置で固化したバインダ組成物を形成するのに有用である。固化した原料組成物は、固化したバインダ組成物全体に分散したMOF粒子を含む。
【0045】
ジェットバインダ技術のこの一般的な説明の中には、様々な変形例も存在する。一変形例によれば、原料層は、MOF粒子及びバインダ組成物又はバインダ組成物の一部を含み、原料層に選択的に塗布される液体は、原料層内のバインダ組成物又はその成分を固化させる工程に有用な液体である。
【0046】
より例示的な詳細では、本明細書を限定するものではないが、このタイプの方法は、MOF粒子と、吐出された液体と接触したときに溶解、懸濁、又は他の方法で活性化されるバインダ組成物の成分とを含む原料を使用することができ、その後、結合されたバインダ組成物は、MOF粒子を取り囲むマトリックスとして固化することができる。
【0047】
原料に含まれるバインダ組成物の成分は、ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)又はフェノール樹脂などの有機であってもよく、又は無機粒子などの無機、例えば、粘土であってもよい。液体は、原料層に当初から存在するバインダ組成物と溶解、分散、又は化学的に反応するのに有効な液体であってもよい。いくつかの例では、後に液体又は液体の一部を除去(例えば、蒸発)させて、MOF粒子を取り囲んで支持するマトリックス構造として固化したバインダ組成物を含む固化した原料組成物を残すことができる。
【0048】
この種の系の非常に具体的な一例によれば、原料層は、MOF粒子、ある量のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)と組み合わせた、粘土、例えばベントナイト粘土などの分散性無機粒子を含み得る。原料層の一部に選択的に塗布される液体は、MOF粒子、無機粒子、及びポリマーを分散させ、次いで蒸発又は他の方法で除去するのに有効な液体を含み得る。この液体は、有機溶媒、例えば、エタノール、水、又はこれらの組み合わせであってもよい1つ以上の溶媒であってもよく、又はそれらを含んでいてもよい。原料層は、熱エネルギー又は放射エネルギーの印加によって固化されてもよい。液体が塗布された後の原料層中の異なる成分の例示的な量は、原料及び添加された液体の総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセントのMOF粒子(例えば、70、80、85、又は85重量パーセントを超えるMOF粒子)、及び15から30重量パーセントのポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、ベントナイトクレー、水、及び有機溶媒(例えば、エタノール)であってもよい。
【0049】
粉末床積層造形技術の異なる変形例として、原料層は、バインダ組成物の一部である成分を含まない(又は必要としない)。この変形例では、原料層に選択的に塗布される液体は、液体形態の熱可塑性又は化学硬化性ポリマーの形態であり得るバインダ組成物のすべての必要な成分を含み得る。この変形例では、液体バインダ組成物は、原料層に選択的に塗布され、その場で固化され得、又は固化されて、固化した原料層を生成する。
【0050】
この種のシステムの例によれば、原料層は吸着材料(例えば、任意選択で1つ以上の非MOF吸着剤と組み合わせた1つ以上の種類のMOF粒子)を含有していてもよく、他の材料を含有する必要はない。例えば、原料層は、少なくとも70、80、90、又は95%(重量基準)のMOF粒子を含有していてもよい。あるいは、原料層は、1つ以上の非MOF吸着材料粒子と組み合わせて、1つ以上のMOF吸着材料粒子の一部を含む、少なくとも70、80、90、又は95%(重量基準)の吸着材料を含んでいてもよい。MOF吸着剤と非MOF吸着剤との組み合わせは、任意の有用な相対量、例えば、90:10から10対90(wt:wt MOF対非MOF)、又は75:25から25対75(wt:wt MOF対非MOF)、又は60:40から40対60(wt:wt MOF対非MOF)であり得る。ただし、本明細書に記載されるように、細孔形成粒子、流動助剤などの他の成分が望ましい場合がある。
【0051】
原料層に塗布される液体バインダ組成物は、液体形態のバインダ組成物を選択的に吐出して原料層に塗布するのに必要な、また液体バインダ組成物が固化した原料組成物の一部として固化するのに必要なバインダ組成物のすべての成分を含むことができる。液体バインダは、例えば、化学硬化機構(電磁放射線への曝露による)、温度の低下、又は蒸発による溶媒の除去のいずれかによって固化することができるポリマー材料を含むことができる。
【0052】
更に別の様々な積層造形技術は、ステレオリソグラフィと呼ばれる。この方法は、粉末床技術と同様の工程及び機器を使用する。これらの技術により、原料層は、硬化性液体バインダ組成物中に分散されたMOF粒子を含有する。原料層は、バインダジェット技術と同様に、浅い床に含まれ得る。固化した原料組成物の複数の層は、各層が紫外線(UV)放射などの電磁放射への曝露によって選択的に硬化(固化)されることによって連続的に形成される。(ジェットバインダ技術に関して上述したように)粉末原料層に液体を選択的に塗布して原料層を固化させることと比較して、ステレオリソグラフィ技術は、原料層の一部を電磁放射線に曝露することによって液体原料層のそれらの部分を選択的に固化(硬化)させ、これにより化学硬化が誘発される。
【0053】
本明細書に記載の有用であり得る更に別の積層造形プロセスは、「選択的レーザ照射」又は「SLI」と呼ばれる。このプロセスは、ステレオリソグラフィに類似しているが、ステレオリソグラフィで使用される液体硬化性原料の代わりに、選択的レーザ照射方法は、MOF粒子と組み合わせて、固体材料、例えば粉末の形態のバインダを含有する原料を使用する。バインダは、熱可塑性ポリマー又は放射線硬化性ポリマーであってもよい。サーモポリマーの場合、バインダは、レーザによって加熱されて溶融し、その後冷却されて固化した原料として再固化することができる。あるいは、原料に含まれる固体(粉末)バインダは、レーザによって照射されると反応及び重合して固化した原料を形成する放射線硬化性ポリマーを含むことができる。
【0054】
粉末床及びステレオリソグラフィ積層造形技術に加えて、他の積層造形技術もまた、多層MOF組成物を調製するのに有用であり得、他の積層造形技術として非粉末床技術も挙げられる。一例は、「原料吐出方法」(FDM)と呼ばれる。この技術により、原料層はベッド内で調製されず、その場合、液体との選択的接触(ジェットバインダ技術による)又は選択的照射(光造形法)によって選択的に固化される。代わりに、MOF粒子とバインダ組成物の両方を含有する流動性(液体)原料材料がパス又は層として表面に選択的に塗布され、複数の連続した塗布によって、固化した原料組成物の一連の連続層が形成される。
【0055】
原料は、ポリマー(例えば、硬化性又は熱可塑性)、無機(例えば、無機粒子)などであり得る本明細書に記載のバインダを含有し得る。バインダが放射線硬化性ポリマーを含有する場合、原料は、バインダを電磁放射線に曝露することによって固化され得る。バインダが無機である場合、原料は、例えば溶媒を除去するために、高温に曝露することによって固化され得る。
【0056】
例えば、プリントヘッド又は他の効果的な装置を介して吐出することによって表面に選択的に塗布される原料は、固化した原料層のすべての成分を含む。液体原料材料のバインダ組成物は、例えば、光若しくは照射への曝露、高温への曝露など化学硬化機構によって、又は別法として、液体原料材料から溶媒を除去することによって、固化することができるポリマー材料を含んでいてもよい。他の例では、液体原料材料のバインダ組成物は、溶融温度を超えて加熱されて原料のパス又は層として形成され、その後冷却されて固化した原料組成物を生成する熱可塑性材料であってもよい。例示的な原料組成物は、バインダ成分及びポリマーを含有することができ、半固体原料又は粘性液体とみなされ得る流動性材料である。
【0057】
原料の吐出方法において有用であり得る1つの種類の原料の1つの非限定的な例として、有用な原料は、MOF粒子、無機粒子、ポリマー、並びに水及び有機溶媒を含む液体の組み合わせを含み得るが、これは、これらの異なる成分のそれぞれが本明細書の他の箇所に一般的かつ具体的に記載されている通りである。原料は、原料の総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセントのMOF粒子(例えば、70、最大80、85、又は85重量パーセントを超えるMOF粒子)、及び(合計で、組み合わされて)15から30重量パーセントのポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、無機粒子(例えば、ベントナイト粘土)、水、及び有機溶媒(例えば、エタノール)を含有する流動性材料であってもよい。
【0058】
多層MOF複合材を調製する際に使用するための本明細書に記載のこれらの様々な種類の積層造形技術はそれぞれ、バインダ組成物、(例えば、粉末又は粒子の集合体の形態の)MOF粒子、及び積層造形工程を実行するための有用な装置を必要とする。この装置は、粉末床技術(一般的に)、ジェットバインダ印刷技術、光造形印刷技術、フィラメント堆積法、又は別の有用な積層造形法によってMOF複合材を形成することができる自動3Dプリンタであってもよい。有用な装置及び関連する方法は、固化した原料の複数の層を連続的に先行する層の上に1つずつ配置して、多層MOF複合材を形成するのに有効である。重要なことに、多層MOF複合材を調製する方法は、例えば、高温への曝露などによる物理的又は化学的劣化によって、MOF粒子を吸着剤型ガス貯蔵システムの吸着剤材料として無効にするであろうMOF粒子の処理を回避するように選択される。
【0059】
多層MOF複合材を調製するのに有用なバインダジェット印刷積層造形技術(100)の例を
図1A及び
図1Bに示す。
【0060】
図1Aは、有用なバインダジェット印刷積層造形技術の一連の工程を示しており、積層造形システムのプリンタベッドに装填された異なる形態の原料102を用い、積層造形システムのプリントヘッドに装填された異なる液体104を用いて、本方法を独立して使用できることを示している。
【0061】
原料102は、MOF粒子及び任意の追加の成分を含有する粉末である。例示的な方法では、原料102はバインダ組成物又はその成分を含有せず(例えば、バインダ組成物又はその成分を必要としない)、液体104がバインダ組成物を含有する。他の例示的な方法では、原料102はバインダ組成物又はバインダ組成物の成分を含有し、液体104は、原料中のバインダ組成物を固化させるのに有効な液体成分を含有する。
【0062】
以下では、硬化性ポリマー材料を含有するバインダ組成物が、原料層の選択された部分で印刷ヘッドから吐出されて、原料層の選択された部分の固化を達成するシステム及び方法について説明する。このプロセスは、市販のバインダジェット印刷装置、本明細書に記載のMOF粒子を使用し、装置のプリントヘッドから吐出された液体(加熱された熱可塑性)ポリマーバインダ(104)を用いて実施することができる。
【0063】
本方法(
図1A)の例示的な工程によれば、原料(102)は、粉末床積層造形システムのベッドに装填され、装置のビルドプレート上に所望の深さの均一な原料層として形成される(110)。次の工程(112)において、印刷ヘッドは、液体バインダ(104)を第1の層の一部に選択的に堆積させる。液体バインダ(104)は、原料層上に配置された後に固化されてもよい。例えば、液体バインダ(104)は、ポリマーを固化させるために除去することができる液体溶媒に溶解又は分散されたポリマーを含むことができる。液体バインダ(104)が原料層に選択的に塗布された後、液体バインダ(104)は、例えば、液体バインダに熱を加えて、バインダから溶媒を除去し、その部分に固化した原料を形成することによって、固化させることができる。あるいは、液体バインダ(104)は、溶融され、原料層に塗布され、次いで冷却されて固化することができる熱可塑性物質であってもよい。あるいは、液体バインダ(104)は、液体形態の原料層に塗布され、次いで化学的に反応して固化することができる硬化性ポリマーであってもよい。
【0064】
液体バインダは、原料層のMOF粒子の位置を固定するのに有効な量で原料層に塗布される。本方法は、液体バインダを原料のMOF粒子間の空間を満たす量又は態様で塗布することを必要としないが、原料層の空隙を必ずしも満たすことなく、粉末原料層内の隣接する又は近傍の粒子を接続又は「架橋」して、それらの粒子の位置を他のMOF粒子に対して固定する量で塗布してもよい。「固化した」原料は、MOF粒子の位置を支持及び維持する構造として作用するのに十分に補強され、硬く、又は強化されているという意味で「固体」であるが、接続された粒子間に開口部、空隙、又は細孔も含み得る。固化した原料は、例えば、固化した原料構造内のMOF粒子の位置を接続し維持する乾燥した、硬化した、又はその他の状態で連続した(ただし、必ずしも固体ではなく、細孔がないことを意味する)ポリマー材料によって接続されたMOF粒子を含むことができる。
【0065】
適用された原料層の、固化した原料が形成されていない部分は、元の粉末原料として残る。
【0066】
ビルドプレートが下方に移動させられ(114)、原料の第2の層が、固化した原料の一部を含む第1の原料層の上に第2の均一な原料層として形成される(116)。次いで、プリントヘッドは、第2の量の液体ポリマーバインダ(104)を第2の原料層の一部に選択的に堆積させ(118)、第2の量の液体バインダは、例えば、熱を使用して溶媒を除去し、乾燥(固化)ポリマーバインダを形成することによって、又はバインダ組成物の種類に応じた別の関連機構によって固化して、第2の層から固化した原料を形成する。
【0067】
固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の粉末原料として残る。
【0068】
工程114、116及び118が繰り返され(120)、元の粉末原料(102又は104)に囲まれた完成した多層MOF複合材(グリーン体)が形成される。多層MOF複合材は、形成された各層の固化した原料を含み、固化した(固体)バインダ中に分散したMOF粒子からなる多層体である。任意選択で、ポリマーバインダが熱硬化性である場合、多層MOF複合材は、任意選択で周囲の元の粉末原料の存在下、加熱して、液体ポリマーバインダを架橋及び硬化させてもよい(122)。元の(はがれた)粉末原料(102又は104)は、多層複合材から除去して分離することができる(124)。
【0069】
多層複合材は、MOF複合材のグリーン体の形態をMOF型吸着剤などの誘導体生成物に変換するのに有用又は所望であり得る任意の後続の種類の処理のための場所に移動させることができる。
【0070】
図1Bは、関連するプロセス装置及び原料を有する技術100の工程を概略的に示す。
【0071】
図1Bを参照すると、例示的なプロセスは、市販のバインダジェット印刷装置(130)、本明細書に記載の原料(132)、及び装置(130)のプリントヘッド(136)から吐出された液体(133)を使用して実行することができる。本方法の例示的な工程によれば、原料(132)は、装置(130)のビルドプレート(138)上に均一な厚さ及び高さの原料層(134)として形成される。原料層(134)は、ローラ又は他のレベリング装置を使用して形成することができ、単一パス又は複数パスを使用して、所望の深さの原料(132)を均一に形成して分配する。印刷ヘッド(136)は、第1の層(134)の一部に液体(133)を選択的に堆積させる。
【0072】
液体133は、例えば、(
図1Bに関して記載した)液体バインダ組成物であってもよく、又は本明細書に記載の別の液体であってもよい。液体バインダ組成物の形態の液体(133)は、例えば、熱による乾燥によって固化されてバインダの溶媒を蒸発させ、その部分に固体ポリマーを含有する第1の固化した原料(140)を形成する。
【0073】
固化した原料(140)が形成されていない原料層134の部分は、元の粉末原料(132)として残る。ビルドプレート(136)が下方に移動させられ(114)、第2の又は後続の原料層(142)が第1の層(134)及び第1の固化した原料(140)の上に形成される。次いで、プリントヘッド(136)は、第2の量の液体ポリマーバインダ(133)を第2の層(142)の一部に選択的に堆積させ、第2の量の液体ポリマーバインダ(133)を固化させて、第2の層から固化した原料を形成する。固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の粉末原料として残る。
【0074】
前の層の上に原料層を塗布し、新しい原料層にバインダを塗布して新しい原料層の固化した原料を生成するこの一連の工程は、元の粉末原料(132)に囲まれた完成した多層MOF複合材(「最終部材」)(152)を形成するために繰り返される(150)。多層MOF複合材(152)は、形成された各層の固化した原料を含む集合体であり、固化した(固体)ポリマーバインダ中に分散した原料からのMOF粒子から成る。必要に応じて、多層MOF複合材を更に処理して、MOF複合材のグリーン体形態をMOF型吸着剤材料などの有用な材料に変換することができる。
【0075】
例えば、図示のように、多層MOF複合材(152)を、任意選択で周囲の元の粉末原料(132)の存在下で、加熱して、液体ポリマーバインダを硬化させることができる(122)。
【0076】
元の(はがれた)粉末原料(132)は、多層MOF複合材(152)から除去して分離することができる。多層複合材(152)は、固化したバインダを多層複合材(152)から除去する(脱バインダ)のに有効な温度に加熱するためにオーブンに移動させることができる。
【0077】
ステレオリソグラフィ(SLA)と呼ばれる技術は、本出願人によって理解され、本明細書に記載されるように、多層MOF複合材を層ごとに形成するために使用することができ、光(電磁放射線)を使用して、液体原料の層の化学モノマー及びオリゴマー(共に「ポリマー」又は「液体ポリマーバインダ」と呼ばれる)を選択的に重合、架橋、又は他の方法で化学的に反応させて、原料層の固化した原料の硬化ポリマー反応生成物(「固化ポリマー」)を形成する光化学プロセスを使用する積層造形技術のバージョンである。液体ポリマーバインダは、紫外線(UV)光などの電磁放射線への曝露によって選択的に硬化可能である。原料は液体形態であり、MOF粒子と組み合わせて硬化性液体ポリマー(「液体ポリマーバインダ」)を含有する。
【0078】
多層MOF複合材は、より大きな三次元構造(MOF複合材)の多数の薄い断面(本明細書における「層」の「固化した原料」)を生成する一連の工程によって構築される。電磁放射線源(例えば、レーザ)は、液体原料の層の一部(本発明によれば、電磁放射線への曝露時に化学的に硬化することによって固化させることができるMOF粒子及び液体ポリマーバインダを含有する)の上に電磁放射線を選択的に印加する。レーザは、層の表面で液体原料の層の一部を選択的に照射する。電磁放射線は、液体ポリマーバインダを化学反応によって固化(すなわち、硬化)させて、MOF粒子及び固化(硬化)ポリマーを含有する固化した原料を形成する。
【0079】
固化した原料の最初の層が形成された後、固化した原料を含む完成した層の上面の上に液体原料の追加の薄層が堆積され、このプロセスが繰り返されて、前の層の上面の上に複数の層が形成され、その層に付着する。各層の上に1つずつ連続して複数の層が堆積され、固化した原料の各層の複合材である多層MOF複合材を形成する。多層MOF複合材のすべての層が形成された後、固化した原料を調製するために使用されなかった元の液体原料を含む層の部分は、多層MOF複合材から分離される。その後、多層MOF複合材は、必要に応じて、例えば、固化した(硬化した)ポリマーをMOF粒子から除去することを含む工程(すなわち、「脱バインダ」)によって処理されて、MOF型吸着剤材料などの誘導体構造を形成することができる。
【0080】
本明細書に記載の多層MOF複合材を調製するのに有用なステレオリソグラフィ積層造形技術(200)の一例を
図2Aに示す。原料202は、液体硬化性ポリマーバインダと組み合わせてMOF粒子を含有する液体である。
【0081】
このプロセスは、市販の光造形積層造形装置及びMOF粒子と組み合わせて原料を形成する液体ポリマーバインダを使用して実施することができる。例示的な方法の例示的な工程(
図2Aに示すように、工程は括弧で番号付けされている)によれば、SLA積層造形装置に含まれる液体原料(202)は、装置のビルドプレート上に均一な層として形成される(204、206)。次の工程(208)において、電磁放射線源(例えば、UV(紫外線)レーザ)は、原料の液体ポリマーバインダを化学的に硬化させて固化させることができる波長の放射線をこの第1の層の一部に選択的に照射する。固化した液体ポリマーバインダは、照射された部分で固化した原料を形成する。
【0082】
固化した原料が形成されていない層の部分は、元の液体原料として残る。
【0083】
ビルドプレートが下方に移動させられ(210)、第1の原料層の上及び第1の原料層の固化した原料の上に第2の均一層として液体原料の第2の層が形成される(212)。次いで、電磁放射線源は、第2の層の一部を選択的に照射して(214)、第2の層の液体原料の一部を固化(硬化)させて、第2層の一部に固化した原料を形成する。固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の液体原料として残る。工程212、214及び216が繰り返されて(218)、元の液体原料(202)に囲まれた完成した多層固化した原料複合材(「最終部材」)が形成される。
【0084】
多層固化した原料複合材は、形成された各層の固化した原料を含む集合体であり、液体原料の固化した(固体)ポリマーバインダ中に分散したMOF粒子から成る。元の液体原料(202)は、多層複合材から除去して分離することができる(218)。次いで、多層MOF複合材を更に処理して、MOF型吸着剤材料などの誘導体構造を形成することができる。
【0085】
図2Bを参照すると、例示的なプロセスは、市販のSLA装置(230)を使用し、本明細書による液体原料(232)を使用して実行することができる。本方法の例示的な工程によれば、液体原料(232)は、装置(230)のビルドプレート(238)上に均一な原料層(234)として形成される。レーザ(236)は、第1の層(234)の一部に電磁放射線(233)を照射して、その部分に第1の固化した原料(240)を形成する。固化した原料(240)が形成されていない原料層(234)の部分は、元の液体原料(232)として残る。ビルドプレート(238)が下方に移動させられ(214)、第1の層(234)及び第1の固化した原料(240)の上に第2の又は後続の液体原料層(242)が形成される。次いで、レーザ(236)は、第2の層(242)の一部に電磁放射線(233)を選択的に照射して、第2の層から固化した原料を形成する。固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の液体原料として残る。このシーケンスを繰り返し(250)、元の液体原料(232)に囲まれた完成した多層固化した原料複合材(「最終部材」)(252)を形成する。多層固化した原料複合材(252)は、形成された各層の固化した原料を含む集合体であり、原料の固化(固体)硬化ポリマー中に分散した原料からのMOF粒子から成る。
元の液体原料(232)は、多層複合材(252)から除去して分離することができる。次いで、多層複合材(252)を更に処理して、MOF型吸着剤材料などの誘導体構造を形成することができる。
【0086】
粉末床及び同等の工程も使用する積層造形方法の異なる例として、本明細書で選択的レーザ照射(SLI)と呼ばれる技術を使用して、多層複合材を層ごとに形成することができる。選択的レーザ照射は、レーザエネルギーを使用して、原料層の一部を選択的に固化させる。
【0087】
より具体的には、多層複合材は、より大きな三次元構造(複合材)の多数の薄い断面(本明細書における「層」の「固化した原料」)を生成する一連の工程によって構築することができる。固体(例えば、粉末)原料の層は、ポリマーバインダと組み合わされて記載のMOF粒子を含むように形成され、例えば、これらの成分が組み合わされて粉末を形成する。レーザエネルギーは、原料層に対して、その層の一部の上に選択的に印加される。レーザエネルギーは、レーザエネルギーに曝露される原料の部分で高分子バインダを固化させる。粒子は、レーザエネルギーによって加熱及び溶融され、次いで再固化することによって、又はレーザエネルギーによって開始される化学反応によって固化し得る。
【0088】
このようにして固化した原料の初期層が形成された後、固化した原料を含む完成した層の上面の上に原料の追加の薄層が堆積される。このプロセスは、固化した原料の複数の層を形成するために繰り返され、各層は前の層の上面に形成され、その層に付着する。各層の上に1つずつ連続して複数の層が堆積され、固化した原料の各層の複合材である多層複合材を形成する。複数の層は、同じ組成及び厚さであってもよく、又は異なる組成及び異なる層厚であってもよい。
【0089】
記載の多層複合材を調製するのに有用な選択的レーザ照射積層造形技術(300)の一例を
図3Aに示す。このプロセスは、市販の積層造形装置並びに原料を形成するバインダ及び粒子を使用して実施することができる。原料302は、MOF粒子の集合体と、放射線硬化性バインダを含むバインダとを含む。
図3Aに示す例示的な工程によれば、積層造形装置に含まれる原料(302)は、装置のビルドプレートの上に均一な層として形成される(304、306)。次の工程(308)では、電磁放射線源(例えば、レーザ)が、この原料の第1の層の一部を、原料の放射線硬化性バインダを反応及び強化(「固化」)させる波長及びエネルギーの放射線で選択的に照射する。固化したバインダ及びMOF粒子は、照射部分で固化した原料を形成する。固化した原料が形成されていない原料層の部分は、元の液体原料として残る。
【0090】
ビルドプレートが下方に移動させられ(310)、第1の原料層の上及び第1の原料層の固化した原料の上に第2の均一層として原料の第2の層が形成される(312)。次いで、電磁放射線源は、第2の層の一部を選択的に照射し(314)、これにより、その部分の原料の放射線硬化性ポリマーが反応及び固化して、第2の層のその一部に固化した原料を形成する。固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の粉末原料として残る。工程312、314及び316が繰り返されて(318)、元の原料(302)に囲まれた完成した多層固化した原料複合材が形成される。
【0091】
多層固化した原料複合材は、形成された各層の固化した原料を含む集合体であり、反応したポリマーバインダの材料及び原料のMOF粒子から作製された複数の連続層から成る。元の原料(302)は、多層複合材から除去して分離することができる(318)。
【0092】
図3Bを参照すると、例示的なプロセスは、市販の積層造形装置(330)、及び本明細書による硬化性ポリマーバインダ及びMOF粒子を含有する粉末の形態の原料(332)を使用して実行することができる。本方法の例示的な工程によれば、原料(332)は、装置(330)のビルドプレート(338)の上に均一な原料層(334)として形成される。レーザ(336)は、電磁放射線(333)を第1の層(334)の一部に照射し、これにより、原料の放射線硬化性ポリマーが反応し、その部分で固化した原料(340)を形成する。固化した原料(340)が形成されていない原料層(334)の部分は、元の原料(332)として残る。ビルドプレート(338)が下方に移動させられ(314)、第2の又は後続の原料層(342)が第1の層(334)及び第1の固化した原料(340)の上に形成される。次いで、レーザ(336)は、電磁放射線(333)を第2の層(342)の部分に選択的に照射し、原料の放射線硬化性ポリマーを反応させて第2の層から固化した原料を形成させる。固化した原料が形成されていない第2の層の部分は、元の粉末原料として残る。このシーケンスを繰り返し(350)、元の原料(332)に囲まれた完成した多層固化した原料複合材(352)が形成される。多層固化した原料複合材(352)は、形成された各層の固化した原料を含む集合体であり、反応した重合性ポリマーの材料及び原料のMOF粒子から成る。元の原料(332)は、多層複合材(352)から除去して分離することができる。本明細書に記載の多層MOF複合材を調製するのに有用な「原料吐出」積層造形技術(400)の一例を
図4A、
図4B、及び
図4Cに示す。原料402は、流動性(例えば、液体、高粘度液体、又は「半固体」の流動性材料)であり、液体硬化性ポリマーバインダと組み合わせてMOF粒子を含有する。
【0093】
このプロセスは、市販の積層造形装置及びMOF粒子と組み合わせて半固体原料を形成する液体ポリマーバインダを用いて実施することができる。例示的な方法の例示的な工程によれば、半固体原料(402)は、プリントヘッド(又は他の有用な装置)(404)によって第1の原料層として塗布され、固化して第1の固化した原料層(410)を形成する。半固体原料は、1つ以上のMOF吸着剤材料、任意選択で他の吸着剤材料(例えば、炭素系吸着材料)、及びバインダ組成物の組み合わせを含有する「スラリー」又は「ペースト」の形態であってもよい。スラリー又はペーストの形態の原料は、微粒子又は粉末(MOF粒子)を溶媒と混合して半液体形態にし、粉末の微細な固体粒子の流動性を高めることによって作製される。
【0094】
この種の方法に有用な例示的な原料材料では、原料はポリマーと組み合わせてMOFを含有する。ポリマーの例は、サーモポリマー又は放射線硬化性ポリマーであり得る。
【0095】
原料は、有用な量のMOF及びポリマーを含有し得、例えば、原料の総重量に基づいて、40から90重量パーセントの範囲の量の金属有機構造体吸着剤、0から30重量パーセントの範囲の量の非金属有機構造体吸着剤、10から30重量パーセントの範囲の量のポリマーバインダを含有し得る。
【0096】
原料は、液体原料材料中の液体の種類に応じて、任意の有用な機構によって固化させることができる。液体が化学的に硬化可能なポリマーを含む場合、硬化性ポリマーを硬化させる照射又は熱に硬化性ポリマーを曝すことによって原料層を固化させることができる。液体が、低温に曝されることによって固化するサーモポリマーを含む場合、液体は、低温に曝されることによって固化し得る。
【0097】
第2の工程では、
図4Bに示すように、第2の固化した原料層(412)が第1の固化した原料層(410)上に形成される。後続の工程を使用して、最終固化した原料層(450)を含む所望の数の追加層を形成し、多層MOF複合材460(
図4C参照)を形成する。
【0098】
多層複合材(452)は、必要に応じて更に処理されて、MOF型吸着剤材料などの誘導体構造を形成することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法であって、
表面上に第1の原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第1の原料層を形成すること、
第1の原料層の一部の上に固化した原料を形成すること、
第1の原料層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の原料層が金属有機構造体吸着剤を含む原料を含む、第2の原料層を形成すること、及び、
第2の原料層の一部
の上に金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を形成すること、を含み、
第1及び第2の原料層の組み合わせによって、非変性金属有機構造体吸着剤を含む多層複合材が形成される、方法。
【請求項2】
表面上に原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤を含有する原料を含む、原料層を形成すること、
原料層の一部において、原料層に液体を塗布して、固化した原料を生成すること、
固化した原料を含有する層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の
原料層が金属有機構造体吸着剤を含有する原料を含む、第2の原料層を形成すること、
第2の原料層の一部において、第2の原料層に液体を塗布して、金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を形成すること、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面上に原料層を形成することであって、原料層が金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含有する原料を含む、原料層を形成すること、
原料層の一部において、原料層に放射線を照射して、固化した原料を生成すること、
固化した原料を含有する層の上に第2の原料層を形成することであって、第2の
原料層が金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含有する原料を含む、第2の原料層を形成すること、
第2の原料層の一部において、第2の原料層に放射線を照射して、金属有機構造体吸着剤を含む第2の固化した原料を形成すること、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多層
金属-有機-構造体複合材が、
少なくとも60重量パーセントの金属有機構造体吸着剤と、
15から40重量パーセント重量パーセントのバインダ組成物と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原料が、
原料の一部に選択的に
塗布して、選択された固化した原料
の一部を形成することができるバインダ組成物の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バインダ組成物の成分が無機粒子
及び液体を含み、
液体が、水、有機溶媒、ポリマー、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
積層造形によって多層金属-有機-構造体複合材を形成する方法であって、
金属有機構造体吸着剤及びバインダ組成物を含む原料を用意すること、
原料を表面
の選択された部分に塗布して表面上に原料のパスを形成することであって、パスが上部パス表面を有する、原料のパスを形成すること、
パスの
前記原料を固化させること、次いで、
パスの前記原料を固化した後に、原料を上部
パス表面に塗布して
上部パス表面上に原料の第2のパスを形成すること、を含む方法。
【請求項8】
原料が、原料の総重量に基づいて、
40から90重量パーセントの金属有機構造体吸着剤と、
0から30重量パーセントの非金属有機構造体吸着剤と、
10から30重量パーセントのバインダ組成物と、を含む、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
バインダ組成物が
熱可塑性ポリマーを含み、
前記方法が、
バインダ組成物を
熱可塑性ポリマーの溶融温度より高い温度まで加熱して、液体バインダ組成物を形成すること、及び、
液体バインダ組成物を溶融温度未満まで冷却することによって液体バインダ組成物を固化させること、を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
バインダ組成物が放射線硬化性ポリマーを含み、
前記方法が、液体バインダ組成物を放射線に曝露することによって液体バインダ組成物を固化させることを含む、請求項
7に記載の方法。
【国際調査報告】