(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法及び光学系
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547707
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021080878
(87)【国際公開番号】W WO2022171321
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201258.2
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ヘルヴェーク
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA10
2H197GA23
2H197HA03
2H197HA05
(57)【要約】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法及び光学系に関する。マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法において、加熱装置(25)を用いて光学素子に加熱力が導入され、当該加熱力は設定値に基づき制御され、当該設定値は投影露光装置(1)の動作中に経時的に変更され、加熱力の設定値の変更は、光学素子の熱的挙動のモデルに基づく、その実際値と比べた加熱力の変化の効果のシミュレーションを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法であって、加熱装置(25)を用いて前記光学素子に加熱力が導入され、該加熱力は設定値に基づき制御され、該設定値は前記投影露光装置の動作中に経時的に変更され、前記加熱力の前記設定値の変更は、前記光学素子の熱的挙動のモデルに基づく、その実際値と比べた前記加熱力の変化の各効果のシミュレーションを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記設定値は、前記投影露光装置(1)で現在設定されている照明設定を考慮して変更されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記設定値は、前記投影露光装置で現在使用中のレチクル(7)を考慮して変更されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記設定値は、前記投影露光装置(1)の所定の平面内の現在の強度分布の測定に基づき変更されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記モデルは、前記光学素子の材料のゼロクロス温度の既知の空間分布を考慮して作成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記モデルは、人工知能法を用いて生成され、学習フェーズで複数の訓練データを用いて訓練され、該訓練データはそれぞれ、前記加熱力の値及びこれらの値に割り当てられた前記投影露光装置(1)の波面特性を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記訓練データは、前記投影露光装置(1)の動作条件毎に予想される波面特性のモデルベースシミュレーションに少なくとも部分的に基づき提供されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、前記訓練データは、動作条件毎に前記投影露光装置(1)で測定された波面特性に少なくとも部分的に基づき提供されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子は、該光学素子における温度分布の空間的且つ/又は時間的ばらつきが低減されるように加熱されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子は、前記投影露光装置(1)の他の場所で生じた光学収差が少なくとも部分的に補償されるように加熱されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子はミラー(M1~M6)であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子は、30nm未満、特に15nm未満の動作波長用に設計されることを特徴とする方法。
【請求項13】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系であって、
少なくとも1つの光学素子と、
該光学素子を加熱する加熱装置(25)と、
該加熱装置により前記光学素子に導入される加熱力を設定値に基づき閉ループ制御する制御ユニットであり、前記設定値は光学系の動作中に経時的に変更され、前記加熱力の前記設定値の変更は、前記光学素子の熱的挙動のモデルに基づく、その実際値と比べた前記加熱力の変化の各効果のシミュレーションを含む制御ユニットと
を備えた光学系。
【請求項14】
請求項13に記載の光学系において、該光学系は、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成される光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年2月10日に出願された独国特許出願第10 2021 201 258.2号の優先権を主張する。この独国出願の内容を参照により本願の本文に援用する。
【0002】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系を加熱する方法及び光学系に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明装置及び投影レンズを有するいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照明装置により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像面に配置された基板(例えばシリコンウェハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
EUV領域用に設計した投影レンズでは、すなわち例えば約13nm又は約7nmの波長では、適当な光透過屈折材料が利用可能でないことにより、ミラーを結像プロセス用の光学コンポーネントとして用いる。
【0005】
実際に生じる1つの問題は、理由の中でも特にEUV光源が発する放射線の吸収の結果として、EUVミラーが加熱されることに伴い熱膨張又は変形が生じ、これがさらに光学系の結像特性に悪影響を及ぼし得ることである。
【0006】
EUVミラーへの入熱により生じる表面変形及びこれに伴う光学収差を回避するための様々な手法が知られている。
【0007】
超低熱膨張の材料(「超低膨張材料」)、例えばCorning Inc.によりULE(商標)の名称で販売されているチタンケイ酸ガラスをミラー基板材料として用い、光学有効面付近の領域でいわゆるゼロクロス温度を設定することが特に知られている。例えばULE(商標)ではθ=約30℃にあるこのゼロクロス温度で、熱膨張率はその温度依存性にゼロクロスを有し、その近傍ではミラー基板材料の熱膨張は起こらないか又は無視できる程度でしかない。
【0008】
EUVミラーへの入熱により生じる表面変形を回避するためのさらなる手法として、例えば赤外線に基づく加熱装置の使用が挙げられ得る。このような加熱装置では、EUV使用放射線の吸収が比較的小さい段階で能動的なミラー加熱を行うことができ、当該能動的なミラー加熱は、EUV使用放射線の吸収の増加に対応して低減される。この場合、1つ又は複数の温度センサをEUVミラーに取り付けて、加熱装置により各EUVミラーに導入される加熱力を関連する温度センサの場所で得られた温度の設定値に基づき制御することができる。
【0009】
しかしながら、実際に起こるさらなる問題として、ミラーの光学有効面にわたって強度が変わる照明設定の使用と、各センサの場所で測定された温度が実際の表面温度に「遅れる」という状況とにより、各温度センサの場所で測定された温度がEUVミラーの光学有効面における最終的な該当温度とは異なる結果として、加熱力の上記制御では、不所望の入熱及び表面変形又はこれに伴う光学収差の回避が最終的には不十分にしか行われない。
【0010】
従来技術に関して、単なる例として特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2017 207 862号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2013 204 427号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2017 205 405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、光学素子への入熱により生じる表面変形及びこれに伴う光学収差の効果的な回避を可能にする、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法及び光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立特許請求項の特徴に記載の方法及び光学系それぞれにより達成される。
【0014】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子を加熱する方法において、加熱装置を用いて光学素子に加熱力が導入され、当該加熱力は設定値に基づき制御され、当該設定値は投影露光装置の動作中に経時的に変更され、加熱力の設定値の変更は、光学素子の熱的挙動のモデルに基づく、その実際値と比べた加熱力の変化の各効果のシミュレーションを含む。
【0015】
本発明は、加熱装置によりマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子に導入される加熱力の動的閉ループ制御を、該当する投影露光装置の動作中に経時的に可変に設定される設定値に基づき実現することで、こうして光学系又は投影露光装置の種々の動作状態を考慮するか、又は光学系の動作中にこの点で利用可能な情報を考慮するようにするという概念に特に基づく。
【0016】
本発明は、特に、各(実際)値と比べた加熱装置により光学素子に導入される加熱力の変化の効果をモデルに基づき決定し、続いてこうして決定された効果に応じて、光学系の動作中に上記閉ループ制御のための新たな加熱力設定値を場合によっては指定するという原理を含む。この場合、加熱力の変化の上記効果は特に、光学系の各波面特性(例えば、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影レンズの像面又はウェハ面に与えられる波面)に関係し得る。さらに、各加熱力の変化の効果のモデルに基づく決定は、該当する光学系の光学的順伝播の実施を含み得る。
【0017】
さらに、特定の平面で(例えば、投影レンズのウェハ面で)光学系により与えられた波面を測定することもできる。例えば、対応する測定結果を上記モデルの上記順伝播の較正に用いることができる。
【0018】
結果として、光学系の動作中に経時的に変わる設定値に基づく加熱力の本発明による閉ループ制御を、光学系の実際に存在する変動する動作状態への各加熱プロセスの動的な適合に用いることができ、特に、熱的状態のオンラインシミュレーション及び未来へのその伝播それぞれを実行することができる。
【0019】
一実施形態によれば、設定値は、投影露光装置で現在設定されている照明設定を考慮して変更される。
【0020】
一実施形態によれば、設定値は、投影露光装置で現在使用中のレチクルを考慮して変更される。
【0021】
一実施形態によれば、設定値は、投影露光装置の所定の平面内の現在の強度分布の測定に基づき変更される。
【0022】
一実施形態によれば、モデルは、光学素子の材料のゼロクロス温度の既知の空間分布を考慮して作成される。
【0023】
一実施形態によれば、モデルは、人工知能法を用いて生成され、学習フェーズで複数の訓練データを用いて訓練され、訓練データはそれぞれ、加熱力の値及びこれらの値に割り当てられた投影露光装置の波面特性を含む。
【0024】
一実施形態によれば、これらの訓練データは、投影露光装置の動作条件毎に予想される波面特性のモデルベースシミュレーションに少なくとも部分的に基づき提供される。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、これらの訓練データは、動作条件毎に投影露光装置で予め測定された波面特性に少なくとも部分的に基づき提供される。
【0026】
一実施形態によれば、光学素子は、光学素子における温度分布の空間的且つ/又は時間的ばらつきが低減されるように加熱される。
【0027】
一実施形態によれば、光学素子は、投影露光装置の他の場所で生じた光学収差が少なくとも部分的に補償されるように加熱される。
【0028】
一実施形態によれば、光学素子はミラーである。
【0029】
一実施形態によれば、光学素子は、30nm未満、特に15nm未満の動作波長用に設計される。
【0030】
本発明はさらに、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系であって、少なくとも1つの光学素子と、当該光学素子を加熱する加熱装置と、加熱装置により光学素子に導入される加熱力を設定値に基づき閉ループ制御する制御ユニットであり、上記設定値は光学系の動作中に経時的に変更され、加熱力の設定値の変更は、光学素子の熱的挙動のモデルに基づく、その実際値と比べた加熱力の変化の各効果のシミュレーションを含む制御ユニットとを備えた光学系にも関する。
【0031】
一実施形態によれば、光学系は、上記特徴を有する方法を実行するよう構成される。光学系の利点及びさらなる好ましい構成に関しては、本発明による方法に関連する上記説明を参照されたい。
【0032】
本発明のさらなる構成は、明細書及び従属請求項から明らかである。
【0033】
添付図に示す例示的な実施形態に基づき、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】EUVでの動作用に設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置の考え得る構造の概略図を示す。
【
図2】光学素子を加熱する本発明による方法の考え得る基本手順を説明する非常に簡略化した図を示す。
【
図3】
図2に示す方法で実行された、新たな加熱力設定値を決定するためのモデルベースのオンラインシミュレーションの考え得る手順を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、EUVでの動作用に設計された、例として本発明を実現可能な投影露光装置1の概略図を示す。
【0036】
図1によれば、投影露光装置1は、照明装置2及び投影レンズ10を備える。照明装置2は、照明光学ユニット4により放射源3からの放射線で物体面6の物体視野5を照明する働きをする。ここで、物体視野5に配置されたレチクル7が露光される。レチクル7は、レチクルホルダ8により保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位ドライブ9により特に走査方向に変位可能である。説明のために、直交xyz座標系を
図1に示す。x方向は図の平面に対して垂直に延びる。y方向は水平に延び、z方向は鉛直に延びる。走査方向は
図1ではy方向に沿って延びる。z方向は物体面6に対して垂直に延びる。
【0037】
投影レンズ10は、物体視野5を像面12の像視野11に結像する働きをする。レチクル7上の構造が、像面12の像視野11の領域に配置されたウェハ13の感光層に結像される。ウェハ13は、ウェハホルダ14により保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位ドライブ15により特にy方向に対して長手方向に変位可能である。第1にレチクル変位ドライブ9によるレチクル7の変位と、第2にウェハ変位ドライブ15によるウェハ13の変位とは、相互に同期するように実施され得る。
【0038】
放射源3は、EUV放射源である。放射源3は、特に以下で使用放射線又は照明放射線とも称するEUV放射線を出射する。特に、使用放射線は、5nm~30nmの範囲の波長を有する。放射源3は、例えば、プラズマ源、シンクロトロンベースの放射源、又は自由電子レーザ(FEL)であり得る。放射源3から発生する照明放射線16は、コレクタ17により集束され、中間焦点面18の中間焦点を通って照明光学ユニット4へ伝播する。照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路でその下流に配置された第1ファセットミラー20(概略的に示すファセット21を有する)と、第2ファセットミラー22(概略的に示すファセット23を有する)とを含む。
【0039】
投影レンズ10は、複数のミラーMi(i=1、2、…)を含み、これらには投影露光装置1のビーム経路におけるそれらの配置に従って連続番号を付す。
図1に示す例において、投影レンズ10は、6個のミラーM1~M6を含む。4個、8個、10個、12個、又は任意の他の数のミラーMiでの代替も同様に可能である。最後から2番目のミラーM5及び最終ミラーM6はそれぞれ、照明放射線16のための通過開口を有する。投影レンズ10は、二重遮蔽光学ユニットである。投影レンズ10は、単なる例として0.3を超え得る、特に0.5も超え得る、より詳細には0.6も超え得る像側開口数を有する。
【0040】
マイクロリソグラフィ投影露光装置1の動作中に、ミラーの光学有効面に入射した電磁放射線は、部分的に吸収され、前述のように加熱とそれに伴う熱膨張又は変形とをもたらすことで、さらに光学系の結像特性を損なわせ得る。ここで、上述のように使用EUV放射線の吸収が比較的小さい段階で、プレヒータを用いて能動的なミラー加熱をそれぞれ行うことができ、当該能動的なミラー加熱は、使用EUV放射線の吸収の増加に対応して低減される。
【0041】
本発明によれば、対応する加熱装置によりミラーの少なくとも1つに導入される加熱力は、ここで光学系又は投影露光装置の動作中に経時的に変わる設定値に基づき制御される。光学系の種々の動作状態がこのようにして考慮され、光学系の動作中に利用可能な情報(例えば、投影露光装置で現在設定されている照明設定又は投影露光装置で現在使用中のレチクル)が考慮される。
【0042】
加熱装置は、
図1に概略的に「25」で示されているだけであり、この例では、この加熱装置25を用いてミラーM3に加熱力が導入される。この場合、本発明は、加熱力を導入する方法に関してもこのために用いられる加熱装置の構成に関してもさらに限定されるものではない。純粋に例として、赤外線放射体、又は、加熱される光学素子又はミラーに配置された電圧印加可能な電極、というそれら自体が公知である方法で加熱力を導入することができる。
【0043】
さらに、本発明は、加熱する光学素子又はミラーの数に関してさらに限定されるものではなく、結果として本発明による閉ループ制御を単一の光学素子の加熱にも複数の光学素子の加熱にも適用することができる。
【0044】
図2は、まず、本発明による方法の例示的な実施形態を説明する非常に簡略化した図を示す。
【0045】
図2によれば、光学系により与えられる波面特性に関する各実際値と比べた加熱力の変化の効果は、機能ブロック220においてモデルベースで(すなわち、光学素子又はミラーの熱的状態をシミュレートする「熱モデル」に基づき)、「オンラインで」又は光学系の動作中にシミュレーションにより決定される。加熱力の変化の各効果のシミュレーションによるこの決定は、
図2によれば機能ブロック210において提供された入力データに基づき実行され、当該入力データは、光ビーム経路に関してレチクルの下流にある光分布と、加熱装置により放射される現在の加熱力P(t)との両方を含む。特に、熱モデルは、光学素子の材料のゼロクロス温度(「zero crossing temperature」)の既知の空間分布を考慮して作成することができる。
【0046】
機能ブロック220において実行される各加熱力の変化の効果の決定は、特に光学系におけるモデルベースの光学的順伝播を含むことができ、これに対してさらに、機能ブロック230に従って温度センサデータ(例えば、各光学素子又はミラーに位置付けられた少なくとも1つの温度センサから)及び波面データ(例えば、ウェハ面の領域に位置付けられた波面センサから)に基づきオンライン較正を実行することができる。
【0047】
図3は、本発明による方法の範囲内で実施される、光学系の動作中の新たな加熱力設定値それぞれのモデルベース決定のより詳細な説明の図を示す。
【0048】
図3によれば、各温度分布、結果として生じる変形、さらにその結果として生じる波面影響、及び結果として生じる結像特性は、機能ブロック220による基礎として用いられる熱モデルを用いて、機能ブロック210による上記入力データに基づき決定される。
図3によれば、これは、基準経路240(
図3の上側の経路)及び比較経路250(
図3の下側の経路)の両方で実施される。基準経路240では既存のパラメータ(M
i,x,y,z,t
0)に対する光学的順伝播が実行される一方で、比較経路250では、変更された加熱力設定値のシミュレーションテストに従って、対応して変更されたパラメータ(M
i,x,y,z,t
k)に対する各順伝播が実行される。実行された最適化の結果として、新たな加熱力設定値が出力されて加熱装置の制御の基礎として用いられる。
【0049】
代替として、メリット関数に関して比較経路において最良のパラメータを選択することによってのみ、すなわち基準経路の陽的シミュレーションなしで、最適化を実行することもできる。メリット関数は、例えば、波面収差W、又はコマ収差又は非点収差等の各用途に特に関連する波面の特定の特性を最小化することができる。波面自体が最適化される場合、波面に基づき結像特性を計算するという
図3に示す最終ステップは不要である。しかしながら、波面自体は、多くの場合は最も関連性の高い適用変数ではなく、波面から得られる結像特性である。これらは例えば、ウェハに結像される該当構造の構造サイズに対する効果(「CD」=「限界寸法」(critical dimension)と呼ばれることが多い)又は構造の位置決めに対する効果(すなわち、「オーバーレイ」に対する効果)であり得る。この影響は、シミュレーションモデルを用いて、又は特に、事前に決定された波面収差に対する感度を用いて、波面から計算することができる。通常はこのような収差がメリット関数を用いて最小化される。
【0050】
実施形態において、各加熱力の変化の効果の決定の基礎として用いられる熱モデルは、人工知能法を用いて生成することができ、モデルは、学習フェーズ中に複数の訓練データを用いて訓練される。この訓練データは、加熱力の値及びこれらの値に関連する投影露光装置の波面特性をそれぞれ含むことができ、投影露光装置の動作状態毎に予想される波面特性のモデルベースシミュレーションに基づき、且つ/又は過去の動作状状態毎に投影露光装置で測定された波面特性に基づき提供することができる。投影露光装置での測定により適当な訓練データを生成するために、装置の起動中に例えば目標とする「較正測定」を実行することができ、この測定中に、その後の適用を表すと考えられるパラメータの組み合わせが変更される。特に、十分に正確なシミュレーションが利用可能でない場合、測定を用いた訓練を用いることができる。例えば、これは、利用可能なシミュレーションモデル自体に起因し得るか、又は含まれる条件の精度の限界(例えば、ミラーの実際の材料特性又は熱的環境条件の知識)に起因し得る。これに対して、シミュレーションデータでの訓練は、装置での測定時間が必要なく、訓練の時点で装置において生成できない条件をモデリングできるという点で特に有利である。学習フェーズにおいて、シミュレーションで生成されたデータでの初期訓練と装置からの測定データ自体でのその後の訓練との組み合わせは、特に、両方の訓練法の利点を兼ね備えることができる。本発明における加熱力の最適化が装置の動作中に高スループットで行われること(「オンライン」)が好ましいので、人工知能の使用は特に魅力的である。これにより、最適化に要する時間に関する要件が厳しくなるが、(例えば、複雑な物理的シミュレーションと比べて)人工知能の適用フェーズで典型的な加速の可能性によりこれを満たすことができる。
【0051】
本発明の一用途では、少なくとも1つの光学素子又はミラーの加熱は、光学素子の温度分布の空間的且つ/又は時間的ばらつきを低減するため又はそれに伴う熱変形を低減するために行われるが、本発明はそれに限定されない。したがって、さらに他の実施形態において、少なくとも1つの光学素子又はミラーの加熱は、投影露光装置の他の場所で生じた光学収差を少なくとも部分的に補償するために行うこともできる。
【0052】
本発明は特定の実施形態に基づいて説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多数の変形形態及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、当業者には言うまでもなく、かかる変形形態及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の意味の範囲内にのみ制限される。
【国際調査報告】