(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】湿式原子層エッチングにおける動的調整パージタイミング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/306 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547181
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2022013827
(87)【国際公開番号】W WO2022173591
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファゲ,ジャックス
(72)【発明者】
【氏名】坂▲崎▼ 哲也
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA26
5F043BB18
5F043BB27
5F043EE08
(57)【要約】
本開示は、改善された湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの様々な実施形態を提供する。より詳細には、本開示は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、湿式ALEプロセスを改善する方法の様々な実施形態を提供する。以下により詳細に説明するように、本明細書に開示される方法は、ALEサイクル間、及び/又は個々の表面改質工程と選択的溶解工程との間におけるパージタイミングを調整して、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを用いて基板をエッチングする方法であって、当該方法は、
基板を受容するステップであって、前記基板は、露出された材料を有する、ステップと、
前記湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実施することにより、前記材料を選択的にエッチングするステップであって、
各サイクルは、
a)1つ以上の表面改質工程を実施して、前記材料の露出表面を化学的に改質し、改質された表面層を提供するステップであって、前記1つ以上の表面改質工程は、前記材料の前記露出表面を少なくとも1種の表面改質溶液に晒し、前記材料の前記露出表面を化学的に改質するステップを有する、ステップ、
b)前記1つ以上の表面改質工程の後に第1のパージ工程を実施するステップであって、前記第1のパージ工程は、溶媒を用いて前記基板をリンスするステップを有する、ステップ、
c)前記第1のパージ工程の後に溶解工程を実施し、前記材料の前記改質された表面層を選択的に除去するステップであって、前記溶解工程は、前記改質された表面層を溶解液に晒し、前記改質された表面層を溶解させるステップを有する、ステップ、および
d)前記溶解工程の後に第2のパージ工程を実施するステップであって、前記第2のパージ工程は、溶媒を用いて前記基板をリンスし、またはスピン乾燥工程を実施するステップを有する、ステップ、
を有する、ステップと、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上のサイクル中に、前記第1のパージ工程のパージ時間および/または前記第2のパージ工程のパージ時間を調整し、前記湿式ALEプロセスにおいて、所望のスループット、エッチング速度、および/またはエッチング後の表面粗さを提供するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の表面改質工程を実施するステップは、
第1の表面改質工程において、前記材料の前記露出表面を酸化剤に暴露し、前記材料の前記露出表面を化学的に改質し、前記改質された表面層を提供するステップと、
第2の表面改質工程において、前記改質された表面層を錯化剤に暴露し、前記錯化剤を前記改質された表面層に結合させ、錯体結合型の改質された表面層を提供するステップと、
を有し、
前記溶解工程を実施するステップは、前記錯体結合型の改質された表面層を前記溶解液に暴露し、前記錯体結合型の改質された表面層を溶解させることにより、前記材料の前記錯体結合型の改質された表面層を選択的に除去するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記錯体結合型の改質された表面層を前記溶解液に暴露するステップは、前記錯体結合型の改質された表面層を溶解し、前記材料の新たに露出された表面に、改質された表面層を再形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を調整するステップは、前記湿式ALEプロセスの進行とともに、前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を増加させるステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を調整するステップは、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルの間、前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を短縮して、前記1つ以上の第1のサイクルにおいて達成される前記エッチング速度を上昇させるステップと、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルの間、前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を増加させ、前記1つ以上の第2のサイクル中に得られる前記エッチング後の表面粗さを低減するステップであって、前記1つ以上の第2のサイクルは、前記1つ以上の第1のサイクルの後に実施される、ステップと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を調整するステップは、前記湿式ALEプロセスの各サイクルの間、前記第1のパージ工程の前記パージ時間を短縮し、前記第2のパージ工程を省略して、前記エッチング速度を上昇させ、前記スループットを改善するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間を調整するステップは、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルの間、前記第1のパージ工程および/または前記第2のパージ工程を省略するステップと、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルの間、前記第1のパージ工程および/または前記第2のパージ工程を実施するステップであって、前記1つ以上の第2のサイクルは、前記1つ以上の第1のサイクルの後に実施され、前記1つ以上の第2のサイクルの間実施される前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間は、前記少なくとも1種の表面改質溶液と前記溶解液の間の混合を防ぐには不十分である、ステップと、
前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第3のサイクルの間、前記第1のパージ工程および/または前記第2のパージ工程を実施するステップであって、前記1つ以上の第3のサイクルは、前記1つ以上の第2のサイクルの後に実施され、前記1つ以上の第3のサイクルの間実施される前記第1のパージ工程の前記パージ時間および/または前記第2のパージ工程の前記パージ時間は、前記少なくとも1種の表面改質溶液と前記溶解液の間の混合を防止する、ステップと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを用いて基板をエッチングする方法であって、当該方法は、
基板を受容するステップであって、前記基板は、露出された材料を有する、ステップと、
前記湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実施することにより、前記材料を選択的にエッチングするステップであって、各サイクルは、
a)前記材料の露出表面を化学的に改質して、改質された表面層を提供するステップであって、前記露出表面は、酸化剤を使用した前記材料の酸化によって化学的に改質される、ステップ、
b)前記材料の前記改質された表面層に錯化剤を結合させ、錯体結合型の改質された表面層を提供するステップ、
c)溶媒を用いて前記基板をリンスするステップ、および
d)前記錯体結合型の改質された表面層を溶解液に晒し、前記錯体結合型の改質された表面層を溶解することにより、前記材料の前記錯体結合型の改質された表面層を選択的に除去するステップ、
を有する、ステップと、
を有し、
前記基板をリンスするステップは、前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルの間、第1の期間にわたって実施され、
前記基板をリンスするステップは、前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルの間、第2の期間にわたって実施され、
前記1つ以上の第2のサイクルは、前記1つ以上の第1のサイクルの後に実施され、前記第2の期間は、前記第1の期間よりも長い、方法。
【請求項9】
各サイクルの間、a)およびb)は、少なくとも一部が時間的に重なって実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各サイクルの間、a)およびb)は、時間的に重なることなく連続的に実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各サイクルの間、b)およびd)は、少なくとも一部が時間的に重なって実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記材料の前記露出表面は、前記1つ以上の第1のサイクルの後の第1の表面粗さ値により特徴付けられる表面粗さを有し、
前記表面粗さは、前記1つ以上の第2のサイクルの後、第2の表面粗さまで低減される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記材料は、遷移金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記材料は、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、またはコバルト(Co)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを用いて基板をエッチングする方法であって、当該方法は、
基板を受容するステップであって、前記基板は、露出された材料を有し、前記材料は、多結晶材料を含む、ステップと、
前記湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実施することにより、前記多結晶材料を選択的にエッチングするステップであって、各サイクルは、
a)前記多結晶材料の露出表面を化学的に改質して、改質された表面層を提供するステップであって、前記露出表面は、酸化剤を用いた前記多結晶材料の酸化により化学的に改質される、ステップ、
b)前記多結晶材料の前記改質された表面層に錯化剤を結合させ、錯体結合型の改質された表面層を提供するステップ、
c)溶媒を用いて前記基板をリンスするステップ、および
d)前記錯体結合型の改質された表面層を溶解液に晒し、前記錯体結合型の改質された表面層を溶解することにより、前記多結晶材料の前記錯体結合型の改質された表面層を選択的に除去するステップ、
を有する、ステップと、
を有し、
前記基板をリンスするステップは、前記湿式ALEプロセスの前記複数のサイクルを実施するステップの間に増加する期間にわたって実施される、方法。
【請求項16】
各サイクルの間、a)およびb)は、少なくとも一部が時間的に重なって実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各サイクルの間、a)およびb)は、時間的に重なることなく連続的に実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
各サイクルの間、b)およびd)は、少なくとも一部が時間的に重なって実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記多結晶材料の前記露出表面は、前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルが実施された後の第1の表面粗さ値により特徴付けられる表面粗さを有し、
前記表面粗さは、前記湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルが実施された後に第2の表面粗さまで低減され、
前記1つ以上の第2のサイクルは、前記1つ以上の第1のサイクルの後に実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記多結晶材料は、遷移金属である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記多結晶材料は、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、またはコバルト(Co)を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月11日に出願された「Dynamic Dispense Timing in Wet Atomic Layer Etching」と題する米国仮特許出願第63/148,563号明細書の優先権を主張するものであり、同仮特許出願の開示内容は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、基板の処理に関する。詳細には、本開示は、基板上の層をエッチングする方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
基板の処理において、基板上の様々な層をエッチングするための様々な技法が知られている。プラズマエッチング及び湿式エッチングが、2つの良く知られた技法である。湿式エッチングは、基板の表面上に化学溶液を供給すること、又は基板を化学溶液中に浸漬することを含む。しばしば、化学溶液は、溶媒と、基板表面上の材料と反応するように設計された化学物質と、反応生成物の溶解を促進するための化学物質とを含む。エッチング液に基板表面を曝した結果、基板から材料が除去される。エッチング液の組成及び温度により、エッチング速度、選択性(specificity)、及びエッチング後の基板表面上の残留材料を制御することができる。
【0004】
熱力学及び動力学の両方とも、エッチング液の調製において役割がある。エッチングを成功させるために、熱力学的にも動力学的にも、所望の反応が程よいことが必要である。多結晶材料をエッチングするためには、成功の要件ははるかに厳しくなる。これらの材料の場合、結晶子の形態又は環境に関わりなく、それぞれの個別の結晶子面及び粒界の幾何形状に対する除去速度は、実質的に同様であることが望ましい。ナノスケールのフィーチャの界面品質及び電気特性において、表面粗さは重要な役割を果たす。ナノスケールの多結晶材料をエッチングする場合、異なる結晶面と比較して粒界でのエッチング速度が異なると、エッチングにおいて表面の粗化を引き起こす。更に、材料の除去速度は、巨視的レベル及び微視的レベルで均一であるべきであり、大量生産にも適合する速度で生じることが望ましい。巨視的な均一性は、注意深い操作により対処することができるが、微視的な均一性は、エッチング自体の化学現象に依存する。
【0005】
基板構造の幾何形状が縮小し続け、構造の種類が進化するにつれて、基板のエッチングの課題が増大している。これらの課題に対処するために利用されてきた1つの技法は、原子層エッチング(ALE)である。ALEプロセスは、一般に、1つ以上の自己律速型反応を通じて薄層を連続して除去するプロセスを含むことが知られている。例えば、ALEは通常、原子レベルの精度でエッチングできる技法、すなわち、一度に単層1層又は数層で材料を除去することによる技法を指す。一般に、ALEプロセスは、エッチング対象の表面の化学的改質、及びその後の、改質層の選択的除去に依拠する。したがって、ALEプロセスは、エッチングプロセスを、表面改質と改質された表面の除去という連続した工程に分離することにより、性能を向上させる。このようなプロセスは、多くの場合、複数回繰り返される一連の層改質工程及びエッチング工程を含み、改質工程は露出表面を改質し、エッチング工程は改質層を選択的に除去する。したがって、いくつかのALEプロセスでは、一連の自己律速型反応が発生し得、このサイクルが繰り返し実行され得る。他の実施形態では、ALEプロセスは、1つのサイクルのみを使用し得る。
【0006】
プラズマALE技法、熱ALE技法、及び湿式ALE技法を含む、様々なALEプロセスが知られている。湿式ALEでは、自己律速的反応及び選択的な反応を利用した繰り返しプロセスにおいて材料が表面から除去される。「湿式ALE」という名称は、反応のすべてではないにしても、一部が液相で行われることを示す。湿式ALEプロセスは、酸化、還元、リガンド結合、又はリガンド交換によって実現され得る自己律速型の表面改質工程によって開始する。理想的には、改質層は材料の一番上の単層に限られ、改質反応が更に進行するのを防ぐ不動態化層として機能する。湿式ALEプロセスの第2の工程は、改質層の選択的溶解である。プロセスは、下にある改質されていない材料を除去することなく、改質層を溶解しなければならない。このことは、第2の工程において第1の工程で使用したものとは異なる溶媒を使用すること、pHを変更すること、又は第1の溶媒中の他の成分の濃度を変更することによって実現され得る。
【0007】
湿式ALEでは、パージ工程が、表面改質工程と選択的溶解工程との間において、典型的には、表面改質層をパージ溶液を用いて洗浄して過剰な反応物を除去することによって実行される。パージ工程の目的は、表面改質に使用された溶液と溶解に使用された溶液との間で混合が起こらないことを確保することである。これらの2つの溶液が混合した場合、混合溶液が基板を改質するとともに溶解し得る可能性がある。溶液が混合すると、改質反応が自己律速的ではなくなり、連続的にエッチングが行われることになる。連続的なエッチングは、粒界において優先的にエッチングする傾向があり、その結果、エッチング後の表面が粗くなる。
【0008】
原子層プロセスであるため、湿式ALEは時間がかかる傾向がある。各反応は飽和に至らせるのに十分な時間がなければならず、各パージ工程は表面改質溶液と溶解液とを完全に分離するのに十分でなければならない。このことにより、大量生産(HVM)は低いスループットとなり、湿式ALEが高価なプロセスになり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、改善された湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの様々な実施形態を提供する。より詳細には、本開示は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、湿式ALEプロセスを改善する方法の様々な実施形態を提供する。以下により詳細に説明するように、本明細書に開示される方法は、ALEサイクル間、及び/又は個々の表面改質工程と選択的溶解工程との間におけるパージタイミングを調整して、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供し得る。
【0010】
例えば、湿式ALEプロセスのスループットは、各プロセスに与えられる時間を短縮することによって改善され得るが、これにはなんらかの代償を伴う。表面改質工程又は溶解工程に与えられる時間を短縮すると、反応が飽和に至らなくなくなった場合には1ALEサイクルあたりのエッチング量が減り得る。一方、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間は、表面改質溶液と溶解液との混合を可能にすることによって、プロセスにある程度の連続的なエッチングを導入することにより、短縮されて、1ALEサイクルあたりのエッチング量を増やし得る。湿式ALEの自己律速的な性質のためにエッチングにおいて表面の平滑化がもたらされるが、連続的なエッチングは粒界における反応性が高いことに起因して、多結晶表面を粗くする傾向がある。このように、パージ時間を短縮することによりスループットを改善することは、通常、エッチング後の表面粗さという代償を伴う。
【0011】
本開示の実施形態は、スループット及び全体のエッチング速度の要求とエッチング後の表面粗さを小さくする必要性とのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、既知の湿式ALEプロセスを改善する。いくつかの実施形態では、パージ時間が、(a)湿式ALEプロセスの初期段階においてエッチング速度を上昇させ、(b)湿式ALEプロセスの最終段階においてエッチング速度を低下させるように動的に調整され得る。例えば、パージ時間が、高速エッチング速度を促進するために、湿式ALEプロセスの開始時に実行される1つ以上のサイクルにおいて比較的短くてもよく(又は完全に除去されてもよく)、これにより初期段階におけるサイクル時間が短縮される。次いで、パージ時間は、湿式ALEプロセスの最終段階でエッチング後の表面の粗さを小さくするために、その後のサイクルにおいてエッチングの進行に応じて増やされ得る。いくつかの実施形態では、湿式ALEプロセスの中間段階において使用されるパージ時間は、エッチング速度のニーズと表面粗さのニーズとのバランスをとるために調整され得る。このような実施形態は、湿式ALE処理に関して許容可能なレベルのエッチング後の表面粗さを維持しながら、スループットを同時に改善することができる。
【0012】
他の実施形態では、パージ時間は、エッチングプロセスの拡散制御アスペクト比依存性を補償するように動的に調整され得る。例えば、湿式ALEがリセスエッチングとして使用される場合、パージ時間は、アスペクト比の変化を補償するようにエッチングの進行に応じて動的に調整され得る。例えば、エッチングプロセスの開始時、エッチングプロファイルのアスペクト比はゼロである。露出表面から材料が除去されるにつれて、リセス(又は別のフィーチャ)のアスペクト比は大きくなり、エッチングがエンドポイントに到達すると最大になる。低アスペクト比のフィーチャでは溶液同士が混合する可能性が低いため、エッチング速度を上昇させるために、エッチングプロセスの開始時にはパージ時間を短くすることができる。エッチングが進行し、アスペクト比が大きくなるのに応じて、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間は、動的に増加されて、エッチング溶液の適切な分離を維持し、エッチングの後期段階における連続的なエッチングを回避することによって表面粗さを改善し得る。
【0013】
本明細書では、第1の実施形態による、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするための方法が提供される。第1の実施形態では、本方法は、基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させている、ことと、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって材料を選択的にエッチングすることとを含み、各サイクルが、a)材料の露出表面を化学的に改質し、表面改質層を提供する1つ以上の表面改質工程を実行することであって、1つ以上の表面改質工程が、材料の露出表面を少なくとも1種の表面改質溶液に曝して、材料の露出表面を化学的に改質することを含む、ことと、b)1つ以上の表面改質工程の後に第1のパージ工程を実行することであって、第1のパージ工程が溶媒を用いて基板を洗浄することを含む、ことと、c)第1のパージ工程の後に、材料の表面改質層を選択的に除去する溶解工程を実行することであって、溶解工程が、表面改質層を溶解液に曝して、表面改質層を溶解することを含む、ことと、d)溶解工程の後に第2のパージ工程を実行することであって、第2のパージ工程が、溶媒を用いて基板を洗浄すること、又はスピン乾燥工程を行うことを含む、こととを含む。第1の実施形態で説明される方法はまた、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供するように、湿式ALEプロセスの1つ以上のサイクルにおいて第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を調整することを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記a)1つ以上の表面改質工程を実行することが、第1の表面改質工程において、材料の露出表面を酸化剤に曝して、材料の露出表面を化学的に改質し、表面改質層を提供することと、第2の表面改質工程において、表面改質層を錯化剤に曝して、錯化剤を表面改質層に結合させ、錯体結合型の表面改質層を提供することとを含み得る。このような実施形態では、上記c)溶解工程を実行することが、錯体結合型の表面改質層を溶解液に曝して、錯体結合型の表面改質層を溶解することによって、材料の錯体結合型の表面改質層を選択的に除去することを含み得る。いくつかの実施形態では、錯体結合型の表面改質層を溶解液に上記曝すことが、錯体結合型の表面改質層を溶解し、材料の新たな露出表面上に表面改質層を再形成し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を上記調整することが、湿式ALEプロセスの進行に応じて第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を増加させることを含み得る。
【0016】
他の実施形態では、第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を上記調整することが、湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルにおいて第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を短縮して、1つ以上の第1のサイクルにおいて達成されるエッチング速度を上昇させることと、湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルにおいて第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を増加して、1つ以上の第2のサイクルにおいて達成されるエッチング後の表面粗さを低減することとを含み得る。このような実施形態では、1つ以上の第2のサイクルが、1つ以上の第1のサイクルの後に実行され得る。
【0017】
他の実施形態では、第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を上記調整することが、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて第1のパージ工程のパージ時間を短縮し、第2のパージ工程を省略して、エッチング速度を上昇させ、スループットを改善することを含み得る。
【0018】
他の実施形態では、第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を上記調整することが、湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルにおいて第1のパージ工程及び/又は第2のパージ工程を省略することと、湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルにおいて第1のパージ工程及び/又は第2のパージ工程を実行することであって、1つ以上の第2のサイクルが1つ以上の第1のサイクルの後に実行され、1つ以上の第2のサイクルにおいて実行される第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間が、少なくとも1種の表面改質溶液と溶解液との間の混合を防ぐには不十分である、ことと、湿式ALEプロセスの1つ以上の第3のサイクルにおいて第1のパージ工程及び/又は第2のパージ工程を実行することであって、1つ以上の第3のサイクルが、1つ以上の第2のサイクルの後に実行され、1つ以上の第3のサイクルにおいて実行される第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間が、少なくとも1種の表面改質溶液と溶解液との間の混合を防ぐ、こととを含み得る。
【0019】
本明細書では、第2の実施形態による、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするための別の方法が提供される。第2の実施形態では、本方法は、基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させている、ことと、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって材料を選択的にエッチングすることとを含み、各サイクルが、a)材料の露出表面を化学的に改質して、表面改質層を提供することであって、上記露出表面が、酸化剤を使用した材料の酸化によって化学的に改質される、ことと、b)材料の表面改質層に錯化剤を結合させて、錯体結合型の表面改質層を提供することと、c)溶媒を用いて基板を洗浄することと、d)錯体結合型の表面改質層を溶解液に曝して、錯体結合型の表面改質層を溶解することにより、材料の錯体結合型の表面改質層を選択的に除去することとを含む。第2の実施形態では、基板を上記洗浄することが、湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルにおいて第1の期間にわたって実行されてもよく、基板を上記洗浄することが、湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルにおいて第2の期間にわたって実行されてもよく、1つ以上の第2のサイクルが1つ以上の第1のサイクルの後に実行され、第2の期間が第1の期間よりも長い。
【0020】
本明細書では、第3の実施形態による、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするための更に別の方法が提供される。第3の実施形態では、本方法は、基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させており、材料が多結晶材料を含む、ことと、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって多結晶材料を選択的にエッチングすることとを含み、各サイクルが、a)多結晶材料の露出表面を化学的に改質して、表面改質層を提供することであって、上記露出表面が、酸化剤を使用した多結晶材料の酸化によって化学的に改質される、ことと、b)多結晶材料の表面改質層に錯化剤を結合させて、錯体結合型の表面改質層を提供することと、c)溶媒を用いて基板を洗浄することと、d)錯体結合型の表面改質層を溶解液に曝して、錯体結合型の表面改質層を溶解することにより、多結晶材料の錯体結合型の表面改質層を選択的に除去することとを含む。第3の実施形態では、基板を上記洗浄することが、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを上記実行する際に増加する期間にわたって実行され得る。
【0021】
第2の実施形態及び第3の実施形態では、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて実行される工程a)~d)の順序及び/又はタイミングが場合により異なり得る。いくつかの実施形態では、工程a)~d)は、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて時間的に重なることなく連続して実行され得る。他の実施形態では、工程のうちの1つ以上が実質的に同時に実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、工程a)及びb)が、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて少なくとも部分的に時間的に重なって実行され得る。他の実施形態では、工程b)及びd)が、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて少なくとも部分的に時間的に重なって実行され得る。
【0022】
本明細書で説明される方法は、多結晶材料、単結晶材料、及び非晶質材料を含む多種多様な材料をエッチングするために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、例えば遷移金属などの多結晶金属材料をエッチングするために使用され得る。本明細書に開示される方法を使用してエッチングされ得る遷移金属の例としては、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、及びコバルト(Co)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で説明される方法は、他のエッチング技法に勝る複数の利点を提供する。例えば、本明細書で説明される方法は、エッチング総量の正確な制御、表面粗さの制御、及びウェーハスケールの均一性の改善などの、ALEの利点を提供する。本明細書で説明される方法はまた、エッチングチャンバの簡素化、常温常圧のエッチング条件、及び表面粗さの低減など、湿式エッチングの様々な利点を提供する。時間がかかる傾向がある従来の湿式ALEプロセスとは異なり、本明細書で説明される方法は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、エッチング後の表面粗さを低減し得る。例えば、材料の露出表面は、湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルが実行された後の第1の表面粗さ値によって特徴付けられる表面粗さを有し得る。湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルが実行された後、材料の露出表面の表面粗さは、第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さまで低減され得る。
【0025】
同様の参照番号が同様の特徴を示す添付の図面と併せて解釈される、以下の説明を参照することにより、本発明及びその利点のより完全な理解を得ることができる。しかしながら、添付の図面は、開示される概念の例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、範囲を限定するものとはみなされず、開示される概念は、他の均等に有効な実施形態も許容することができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A-1E】本開示による繰り返し湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの一例を示す。
【
図2A】周囲の誘電体層内に凹設された金属フィーチャであって、金属フィーチャが、金属フィーチャの表面を表面改質溶液、続いてパージ溶液及び溶解液に曝すことによってエッチングされる、金属フィーチャと、表面改質溶液が金属フィーチャの表面から完全に除去される前に溶解液が導入された場合に生じる拡散混合とを示す。
【
図2B】
図2Aにおける表面改質溶液と溶解液との相互拡散によってどのようにして連続的なエッチングが引き起こされるかを示すグラフである。
【
図3A】周囲の誘電体層内に凹設された金属フィーチャであって、金属フィーチャが、金属フィーチャの表面を表面改質溶液、続いてパージ溶液及び溶解液に曝すことによってエッチングされ、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間が、溶解液を導入する前に表面改質溶液を完全に除去するのに十分な長さである、金属フィーチャを示す。
【
図3B】
図3Aに示すようにパージ時間が十分である場合に、どのように相互拡散混合が排除され、連続的なエッチングが防止され得るかを示すグラフである。
【
図4A-4B】本開示による湿式ALEプロセスを使用してエッチングされたパターン化された金属フィーチャの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図5A】本開示による湿式ALEプロセスが基板内のフィーチャをエッチングするのに使用される場合のエッチング時間と、アスペクト比と、拡散タイムスケールとの間の関係を示す。
【
図5B】相対拡散時間対アスペクト比を示すグラフである。
【
図6A】スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとるために、湿式ALEプロセスの初期段階においてエッチング速度を上昇させ、湿式ALEプロセスの後期段階においてエッチング速度を低下させるようにパージ時間を動的に調整する動的な湿式ALEサイクルタイミングスケジュールの一実施形態を示すタイミング図である。
【
図6B】
図6Aに示す異なるパージ条件における1サイクルあたりの予想エッチング量を示すグラフである。
【
図6C】パージなし、完全パージ、及び動的パージで達成され得る例示的なエッチング量(nm)をサイクル数の関数として示すグラフである。
【
図6D】パージなし、完全パージ、及び動的パージで達成され得る例示的なエッチング量(nm)をプロセス時間の関数として示すグラフである。
【
図6E】
図6Aに概略的に示すように、パージなし、完全パージ、及び動的パージを使用してエッチングされたエッチング後の表面の2乗平均平方根(RMS)粗さ(nm)を示す。
【
図7A-7B】表1に詳しく記す湿式ALEプロセス条件を使用してエッチングされたコバルトフィーチャの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【
図8】本明細書で説明される技法を利用する方法の一実施形態を示すフロー図である。
【
図9】本明細書で説明される技法を利用する方法の別の実施形態を示すフロー図である。
【
図10】本明細書で説明される技法を利用する方法の別の実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、改善された湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの様々な実施形態を提供する。より詳細には、本開示は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、湿式ALEプロセスを改善する方法の様々な実施形態を提供する。以下により詳細に説明するように、本明細書に開示される方法は、ALEサイクル間、及び/又は個々の表面改質工程と選択的溶解工程との間におけるパージタイミングを調整して、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、パージ時間が、(a)湿式ALEプロセスの初期段階においてエッチング速度を上昇させ、(b)湿式ALEプロセスの最終段階においてエッチング速度を低下させるように動的に調整され得る。例えば、パージ時間が、高速エッチング速度を促進するために、湿式ALEプロセスの開始時に実行される1つ以上のサイクルにおいて比較的短くてもよく(又は完全に除去されてもよく)、これにより初期段階におけるサイクル時間が短縮される。次いで、パージ時間は、湿式ALEプロセスの最終段階でエッチング後の表面の粗さを小さくするのを助けるために、その後のサイクルにおいてエッチングの進行に応じて増やされ得る。いくつかの実施形態では、湿式ALEプロセスの中間段階において使用されるパージ時間は、エッチング速度のニーズと表面粗さのニーズとのバランスをとるために調整され得る。このような実施形態は、湿式ALE処理に関して許容可能なレベルのエッチング後の表面粗さを維持しながら、スループットを同時に改善することができる。
【0029】
他の実施形態では、パージ時間は、エッチングプロセスの拡散制御アスペクト比依存性を補償するように動的に調整され得る。例えば、湿式ALEがリセスエッチングとして使用される場合、パージ時間は、アスペクト比の変化を補償するようにエッチングの進行に応じて動的に調整され得る。例えば、エッチングプロセスの開始時、エッチングプロファイルのアスペクト比はゼロである。露出表面から材料が除去されるにつれて、リセス(又は別のフィーチャ)のアスペクト比は大きくなり、エッチングがエンドポイントに到達すると最大になる。低アスペクト比のフィーチャでは溶液同士が混合する可能性が低いため、エッチング速度を上昇させるために、エッチングプロセスの開始時にはパージ時間を短くすることができる。エッチングが進行し、アスペクト比が大きくなるのに応じて、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間は、動的に増加されて、エッチング溶液の適切な分離を維持し、エッチングの後期段階における連続的なエッチングを回避することによって表面粗さを改善し得る。
【0030】
本明細書で説明される技法は、他のエッチング技法に勝る複数の利点を提供する。例えば、本明細書で説明される技法は、エッチング総量の正確な制御、表面粗さの制御、及びウェーハスケールの均一性の改善などの、ALEの利点を提供する。本明細書で説明される技法はまた、エッチングチャンバの簡素化、常温常圧のエッチング条件、及び表面粗さの低減など、湿式エッチングの様々な利点を提供する。時間がかかる傾向がある従来の湿式ALEプロセスとは異なり、本明細書で説明される技法は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供する。
【0031】
本明細書で説明される技法は、多種多様な層及びフィーチャが上に形成された多種多様な基板上で実行され得る。一般に、本明細書に開示される技法で用いられる基板は、材料をエッチングすることが望ましい任意の基板であり得る。例えば、基板は、1層以上の半導体処理層(それらのすべてが相まって基板を構成していてよい)が上に形成された半導体基板であってよい。一実施形態では、基板は、多種多様な構造及び層をもたらす複数の半導体処理工程(これらはすべて、基板処理技術において周知である)が施された基板であり得る。一実施形態では、基板は、形成された様々な構造及び層を含む半導体ウェーハであり得る。
【0032】
本明細書で説明される技法はまた、多種多様な材料をエッチングするために使用され得る。このような材料としては、多結晶材料、単結晶材料、及び非晶質材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される技法は、限定されるものではないが遷移金属及び貴金属などの多結晶金属材料をエッチングするために使用され得る。1つの例示的な実施形態では、エッチングされる材料は、多結晶コバルト材料であり得る。以下、本明細書で説明される技法を多結晶コバルト材料のエッチングに関連して論じるが、そのような例は例示に過ぎず、本明細書で説明される技法は他の材料をエッチングするために使用されてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0033】
多くの化学物質が多結晶コバルトをエッチングするために使用され得るが、エッチングにおいて表面粗さを制御することは困難である。特に、孔食及び粒界における優先的エッチングは、多結晶コバルトをエッチングする場合には防ぐことが難しい。ゼロ価のコバルトは一般に不溶性であるため、多結晶コバルト材料の露出表面は、これを溶液に溶解する前に、まず改質されなければならない。1つの例示的な湿式ALEプロセスでは、多結晶コバルト材料の露出表面が表面改質工程において酸化され、酸化種は、その後の溶解工程において溶液に溶解され得る。パージ工程は、表面改質工程と溶解工程との間に実行されてよく、プロセスは、所望の量のエッチングが達成されるまで、周期的に繰り返され得る。
【0034】
図1A~
図1Eは、繰り返し湿式ALEプロセスの一例を示す。より具体的には、
図1A~
図1Eは、限定されるものではないが多結晶材料105などの材料をエッチングするための湿式ALEプロセスの1サイクルを示す。
図1Aに示すように、誘電体材料110によって囲まれた多結晶材料105が、多結晶材料105の露出表面を改質する第1の表面改質工程100において表面改質溶液115と接触させられる。一実施形態では、エッチングされる多結晶材料105は、例えば遷移金属であり得る。1つの例示的な実施形態では、多結晶材料105は、銅(Cu)金属、ルテニウム(Ru)金属、又はコバルト(Co)金属を含み得る。いくつかの実施形態では、
図1Aに示す表面改質溶液115は、酸化剤120を含み得る。一実施形態では、表面改質溶液115は、溶存酸素若しくは別の酸化剤を含有する化学溶液、又は表面の酸化に直接的に関与する溶媒(水など)を含み得る。別の実施形態では、表面改質溶液115は、水、アルコール、又はケトン(アセトンなど)に溶解した酸素を含む酸素飽和化学溶液であり得る。
【0035】
図1Aに示すように、多結晶材料105の露出表面において化学反応が起こって、改質表面層125(例えば、酸化コバルトなどの自然酸化物層)を形成する。この表面改質層125は、酸化生成物、還元生成物、リガンド結合表面原子、又は溶液中に存在するリガンドとリガンドが交換された表面原子であり得る。場合によっては、反応は速く、自己律速的であり得る(すなわち、反応生成物は、多結晶材料105の露出表面の1つ以上の単層を改質し得る)が、表面改質溶液115とその下にある表面との間の更なる反応を妨げ得る。当然のことながら、エッチングされる多結晶材料105も表面改質層125も表面改質溶液115に可溶ではない。場合によっては、
図1Aに示す表面改質工程100は、表面反応が飽和に至るまで継続され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、
図1Aに示す表面改質層125は、
図1Bに示すように、第2の表面改質工程140において非水溶液135に溶解した錯化剤130に曝され得る。
図1Bでは、多結晶材料105の露出表面は、錯化剤130(例えば、カルボン酸塩系リガンド)が表面改質層125(例えば、自然酸化物層)に結合して金属-リガンド錯体145を形成するときに更に改質される。一例では、錯化剤130は、クエン酸塩又はシュウ酸塩などのモノカルボン酸塩又はポリカルボン酸塩を含み得る。カルボン酸塩は、対応するカルボン酸の誘導体である。つまり、溶液中に存在する塩、エステル、及び多原子アニオンである。一例では、
図1Bに示す第2の表面改質工程140は、リガンドは可溶であるが、金属-リガンド錯体145は可溶でない、イソプロピルアルコール又はアセトンなどの非水溶液135中で実行され得る。
【0037】
図1Cに示すように、第1のパージ工程150は、
図1A及び
図1Bに示す表面改質工程の後に実行される。第1のパージ工程150では、表面改質層125を有する多結晶材料105がパージ溶液155を用いて洗浄されて、過剰な反応物が除去される。パージ溶液155は、表面改質層125又は非水溶液135中に存在する試薬と反応するべきではない。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程150は、純溶媒(例えば、パージ溶液155は純粋なイソプロピルアルコール又はアセトンであり得る)を使用して実施されて、非水溶液135から遊離カルボン酸リガンドを除去し、その後、後続の溶解工程160(
図1Dに示す)において溶解液165が使用されて、金属-リガンド錯体145を溶解する。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程150は、ウェーハ表面からすべての過剰な反応物を完全に除去するのに十分な長さであり得る。
【0038】
洗浄した後、多結晶材料105は、
図1Dに示すように、溶解工程160において溶解液165と接触させられて、表面改質層125を溶解又は除去する。表面改質層125は溶解液165に可溶でなければならないが、表面改質層125の下にある改質されていない多結晶材料105は不溶でなければならない。表面改質層125が可溶であることにより、バルク溶解液165に溶解することにより表面改質層125を除去することができる。一実施形態では、水洗浄(例えば、脱イオン水)が溶解液165として使用され得る。このような実施形態では、
図1Dに示す溶解液165は、金属-リガンド錯体145を溶解することと、多結晶材料105の露出表面上に新たな表面改質層125(例えば、酸化コバルトなどの自然酸化物層)を再形成することとの両方に使用され得る。溶解工程160は、表面改質層125が完全に溶解して刷新されるまで継続し得る。
【0039】
表面改質層が溶解されて刷新されると、
図1Eでは、例えば純溶媒又はスピン乾燥工程を使用する第2のパージ工程170を実行することによって、ALEエッチングサイクルが終了する。いくつかの実施形態では、第2のパージ工程170は、第1のパージ溶液155について上に挙げたものと同じ特性を有する第2のパージ溶液(
図1Eには示さず)を用いて表面を洗浄することによって実行され得る。いくつかの実施形態では、第2のパージ工程170は、溶解液165が表面から完全に除去されるまで継続され得る。
【0040】
第1のパージ工程150及び第2のパージ工程170は、通常、表面改質溶液と溶解液との間の混合を防ぐために用いられる。多くの場合、これらの2つの溶液の混合物は、材料表面を改質し、且つ改質された材料を溶解し得る。このことにより、湿式ALEの利点を損なう連続的なエッチングプロセスが発生する。
【0041】
図1A~
図1Eに示す繰り返し湿式ALEプロセスは、本明細書で説明される技法にしたがって多結晶材料をエッチングするために使用され得るエッチングプロセスの一例に過ぎないことを認識されたい。上記のように、上述の繰り返し湿式ALEプロセスは、a)多結晶材料105の露出表面を(例えば、酸化剤を使用した多結晶材料の酸化によって)化学的に改質して、表面改質層125を提供する第1の表面改質工程100(
図1A参照)と、b)錯化剤130を表面改質層125に結合させて、錯体結合型の表面改質層(例えば、金属-リガンド錯体145)を形成する第2の表面改質工程140(
図1B参照)と、c)基板をパージ溶液155(例えば、溶媒)を用いて洗浄して過剰な反応物を除去する第1のパージ工程150(
図1C参照)と、d)錯体結合型の表面改質層を溶解液165に曝して錯体結合型の表面改質層を溶解することによって錯体結合型の表面改質層を溶解又は除去する溶解工程160(
図1D参照)と、e)第2のパージ溶液を用いて基板を洗浄し、基板の表面から溶解液165を除去する第2のパージ工程170(
図1E参照)とを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、工程a)~e)は、
図1A~
図1Eに示し、上で説明したように、繰り返し湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて連続して実行され得る。他の実施形態では、工程のうちの1つ以上が実質的に同時に実行され得る。いくつかの実施形態では、例えば、工程a)及びb)が、繰り返し湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて少なくとも部分的に時間的に重なって実行され得る。或いは、工程b)及びd)が、繰り返し湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて少なくとも部分的に時間的に重なって実行され得る。このように、本明細書で説明される繰り返し湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて実行される工程の順序は、
図1A~
図1Eに示される順序に厳密に限定されない。
【0043】
図1A~
図1Eに示す繰り返し湿式ALEプロセスにおける工程を完了するのにかかる時間は、各サイクルで材料の1つ以上の単層が除去されるという事実と組み合わされて、湿式ALEを遅いプロセスにする。各プロセスを飽和に至らせるようにゆっくりと実行すると、多くの利点が実現される。第一に、プロセスが自己律速的であるため、ウェーハ内均一性が優れる。第2に、プロセスの自己律速的な性質により、エッチングにおいて表面が平滑化される。この平滑化は、表面粗さが大きくなると金属の抵抗率に悪影響をもたらす金属エッチバックの場合に特に重要である。第3に、プロセスのデジタル的な性質により、正確なエッチング時間ではなく、ALEサイクルの数を変えることによって、総エッチング量を十分に制御することができる。
【0044】
図1A~
図1Eに示す繰り返し湿式ALEプロセスにより、エッチングされた表面が平滑化される。受け取った表面の粗さはエッチングプロセスにおいて低減されるが、繰り返し湿式ALEプロセスによって達成される平滑化の量は最終的に最終値に到達する。この点を超えてエッチングしても表面粗さはそれ以上改善されない。1つの例示的なプロセスでは、エッチングされていない多結晶コバルト材料の二乗平均平方根(RMS)粗さは、アズデポ状態で約1.5nmであり得る。多結晶コバルト材料の表面粗さは、上述の湿式ALEプロセスを使用して10nmのコバルトを除去した後、約0.6nmまで低減され得る。30nmのコバルトが除去された後でも、更なるエッチングにおけるRMS粗さは約0.6nmのままである。よって、上述の例示的なALEプロセスにおいて説明した多結晶コバルト材料の場合、10nmのエッチング後に最終的な粗さ値が確認され得る。エッチングサイクルを追加しても、それ以上粗さは改善されない。コバルトに関するこれらの粗さの結果は、湿式ALEプロセス一般において代表的なものである。
【0045】
大量生産(HVM)においては、スループット、ひいてはプロセスコストが常に重要である。湿式ALEプロセスのサイクル時間を短縮するという経済的圧力により、反応時間は反応を概ね飽和に至らせるに足る分しかなく、パージ時間は過剰な反応物の大部分を除去するのに足る分しかないという状況が生じる。これらの妥協によって、均一性及び粗さという代償を伴ってスループットの改善がもたらされる。
【0046】
上記のように、スループットは、ALEサイクル時間を短縮するだけではなく、1ALEサイクルあたりのエッチング速度を上昇させることによっても改善され得る。本開示では、1ALEサイクルあたりのエッチング速度は、湿式ALEプロセスの初期段階においてパージ時間を短縮することによって上昇し得る。パージ時間が短縮されると、表面改質溶液及び溶解液の成分同士が混合することにより、エッチングサイクルにおける一時的な時間窓における少量の連続的なエッチングが可能になる。この連続的なエッチングにより、表面粗さという代償を伴って、湿式ALEプロセスの初期段階におけるエッチング速度が上昇する。次いで、表面粗さは、湿式ALEプロセスの後の段階において、湿式ALEプロセスの後続のサイクルで使用されるパージ時間を増やすことによって改善され得る。エッチングの進行に応じてパージ時間を動的に調整することは、ナノスケールのフィーチャをエッチングする場合に特に有用である。
【0047】
溶液同士の混合がナノスケールのフィーチャのエッチングにどのように影響するかの概略図を
図2A~
図2B及び
図3A~
図3Bに示す。ナノスケールのフィーチャをエッチングする場合、拡散が支配的な物質輸送現象になる。エッチングされるフィーチャの物理的寸法は、対流輸送を可能にするには小さ過ぎる。
図2A~
図2B及び
図3A~
図3Bに示す例では、周囲の誘電体層205内に凹設された金属フィーチャ200(例えば、コバルトフィーチャ)は、金属フィーチャ200の表面を表面改質溶液210(例えば、イソプロピルアルコール「IPA」中のクエン酸)、続いてパージ溶液220(例えば、IPA)及び溶解液215(例えば、脱イオン水、H
2O)に曝すことによってエッチングされる。
【0048】
図2Aの例に示すように、表面改質溶液210が金属フィーチャ200の表面から完全に除去される前に溶解液215が導入されると、2つの溶液の相互拡散(例えば、IPA中のクエン酸及びH
2Oの相互拡散)により、
図2Bに示すように、連続的なエッチングプロセスを可能にする条件がもたらされる。一方、
図3A~
図3Bは、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間が以前のエッチング溶液を完全に除去するのに十分な長さであれば、相互拡散混合が排除され、連続的なエッチングが防止されることを示す。物質輸送はナノスケールのフィーチャにおける拡散に限定されるため、より深いフィーチャでは、表面改質溶液と溶解液との完全な分離を確保するためにより長いパージ時間が必要になる。エッチングの進行に応じてパージ時間を動的に増加させて効果的なパージを維持することは、本明細書で説明される実施形態の一態様である。
【0049】
パージ時間が不十分な場合(例えば、
図2A~
図2B参照)、表面改質溶液210と溶解液215との混合により、一時的な連続的なエッチングが生じる。各エッチングサイクルにおいて除去される材料の量が増加することに加えて、連続的なエッチングはまた、エッチングされる表面の粗さも大きくなる。この一例を
図4A~
図4Bに示す。
【0050】
図4A及び
図4Bは、湿式ALEプロセスを使用してエッチングされたパターン化されたコバルトフィーチャの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
図4Aに示すSEM像では、表面改質溶液と溶解液との混合を防ぎ、連続的なエッチングを避けるために、表面改質工程と溶解工程との間に十分なパージ時間が用いられている。この場合、1サイクルあたりのエッチング量は約0.4nmである。
図4Bは同様の条件を示しているが、表面改質溶液と溶解液との混合を妨げない短縮された又は不十分なパージ時間を用いている。
図4Bに示すSEM像では、1サイクルあたりのエッチング量が0.6nmに増加し、表面粗さが明らかに悪化している。2つのSEM像を比較することにより、パージ時間が1サイクルあたりのエッチング量及び表面粗さにどのように影響し得るかが分かる。中間のパージ時間を使用して、エッチング速度のニーズと表面粗さのニーズとのバランスをとることもできる。
【0051】
本明細書で説明される技法は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、従来の湿式ALEプロセスを改善する。いくつかの実施形態では、パージ時間が、エッチングプロセスの拡散制御アスペクト比依存性を補償するように動的に調整され得る。例えば、湿式ALEがリセスエッチングとして使用される場合、パージ時間は、アスペクト比の変化を補償するようにエッチングプロセスに応じて調整され得る。エッチングプロセスの開始時、エッチングプロファイルのアスペクト比はゼロである。露出表面から金属が除去されるにつれて、リセス(又は別のフィーチャ)のアスペクト比は大きくなり、エッチングがエンドポイントに到達すると最大になる。低アスペクト比のフィーチャでは溶液同士が混合する可能性が低いため、エッチング速度を上昇させるために、エッチングプロセスの開始時にはパージ時間を短くすることができる。エッチングが進行し、アスペクト比が大きくなるのに応じて、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間は、動的に増加されて、エッチング溶液の適切な分離を維持し、エッチングの最終段階における連続的なエッチングを回避することによって表面粗さを改善し得る。この動的なパージタイミングの変更は、本明細書で説明される実施形態の別の態様である。
【0052】
図5A及び
図5Bは、エッチング時間と、アスペクト比と、拡散タイムスケールとの間の関係の詳細を示す。拡散長(d)は、エッチングされるフィーチャ500(例えば、多結晶金属フィーチャ)の深さとして定義され得る。対流輸送はウェーハ表面の上方で支配的であるため、拡散はこの対流ゾーンと金属表面との間のナノスケールのフィーチャにおいてのみ重要である。これらのフィーチャの深さが増加すると、拡散長(d)も増加する。エッチングプロセスの進行に応じた拡散長(d)の増加を
図5Aに示す。
【0053】
図5Bは、相対拡散時間対アスペクト比を示すグラフである。
図5Bに示すように、拡散タイムスケールはアスペクト比又は拡散長(d)の2乗に比例して増加する。典型的な液相の拡散係数及び典型的な半導体の長さスケールの場合、拡散タイムスケールは1秒未満である。しかしながら、すべての反応物を完全に除去するには、拡散タイムスケールよりも数倍長いパージ時間が必要である。それでも、必要なパージ時間は半導体HVM要件と両立し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、パージ時間が、湿式ALEプロセスの初期段階においてエッチング速度を上昇させ、湿式ALEプロセスの最終段階においてエッチング速度を低下させるように動的に調整され得る。例えば、パージ時間は、エッチング後の表面の粗さ要件に応じて、エッチングプロセスの開始時又はプロセス全体を通じて比較的短くする(又は完全になくす)ことができる。湿式ALEプロセスの初期段階においてパージタイミングを短縮することにより、ウェーハ表面上で表面改質溶液と溶解液とがある程度混合することが可能になる。混合により、一時的な連続的なエッチングが行われるため、エッチング速度が速くなり、1エッチングサイクルあたりのエッチング量が増加する。しかしながら、上記のように、連続的なエッチングは、表面粗さの増大ももたらす。エッチングの進行に応じて、パージタイミングが、エッチング速度及び1サイクルあたりのエッチング量を減少させると同時に、エッチングされる表面の粗さを改善するように、湿式ALEプロセスの中間段階及び/又は最終段階においてを増加され得る。この動的パージタイミングの概略図を
図6Aに示し、そのようなタイミングの結果を
図6B~
図6Eに示す。
【0055】
異なるパージ条件(例えば、パージなし、短縮パージ、及び完全パージ)における供給タイミングを
図6Aに概略的に示す。
図6Aに示すように、サイクル時間は、パージ時間が増加するのに応じて大幅に増加する。パージ時間(ひいてはサイクル時間)を長くすると、連続的なエッチングの可能性が減ることにより表面粗さが改善されるが、このことはスループットという代償を伴う。
図6Bは、
図6Aに示す異なるパージ条件における1サイクルあたりの予想エッチング量(nm/サイクル)を示す。
図6Bに示すように、1サイクルあたりのエッチング量(及びエッチング速度)は、パージ時間が短縮されると増加し、パージ時間が増加すると減少する。1サイクルあたりのエッチング量(及びエッチング速度)を増加させるとスループットは改善するが、このことは表面粗さという代償を伴う。
【0056】
いくつかの実施形態では、動的パージが、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとるために使用され得る。
図6Aは、単回のエッチングにおいて「動的パージ」(すなわち、パージタイミングを動的に変えること)を使用して、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的な湿式ALEサイクルタイミングスケジュールの一実施形態を示す。
図6Aに示す実施形態では、エッチングプロセスは、速いエッチング速度を優先するために、表面改質工程と溶解工程との間でパージを行わずに開始され、エッチングが完了に近づくにつれてより平滑なエッチング後の表面を優先するために、エッチングが進行するにつれてパージ時間は増加する。より具体的には、
図6Aに示す実施形態では、表面改質工程と溶解工程との間におけるパージは、エッチングプロセスの初期段階では省略され(「パージなし」)、エッチングプロセスの中間段階では短縮され(「短縮パージ」)、エッチングプロセスの最終段階では完全である(「完全パージ」)。
図6Aに示す各段階は、一般に、1つ以上のALEサイクルを含み得る。
【0057】
図6C及び
図6Dは、上述し、
図6Aに示したように、パージなし、完全パージ、及び動的パージを含む、異なるパージ条件で達成され得るシミュレーションされたエッチング結果を示す。特に、
図6C及び
図6Dは、パージなし、完全パージ、及び動的パージで達成され得る例示的なエッチング量(nm)をサイクル数(
図6C)及びプロセス時間(
図6D)の関数として示す。このように、
図6C及び
図6Dは、本明細書で説明される技法を使用して、エッチングの生産性を向上するために動的に変化するパージ条件を使用し得ることを示す。
【0058】
図6Eは、
図6Aに概略的に示すように、パージなし、完全パージ、及び動的パージを使用してエッチングされたエッチング後の表面のRMS粗さ(nm)を示す。
図6Eに示すように、表面改質工程と溶解工程との間でのパージ工程を省略すると(「パージなし」)、表面粗さという代償を伴ってエッチング量及びエッチング生産性が大幅に増加する。一方、
図6Eは、完全パージにより表面粗さが最小化されるが、エッチング量及びスループットという代償を伴うことを示す。例えば
図6Aに示すように、パージ時間を動的に変えることにより、エッチング速度は、エッチングプロセスの開始時に(例えば、エッチングプロセスの初期段階において)は早く、エッチングプロセスのエンドポイントが近づくにつれて遅くなる。この「動的パージ」により、エッチングの開始時に表面粗さが増加し、エッチングプロセスの中間段階及び最終段階においてパージ時間が増加するにつれて表面粗さが改善される。例示的なレシピを
図6Aに示すが、エッチングの進行に応じてパージ時間がどのように変化するかに関する特定のレシピは、平滑なエッチング後の表面と高いプロセススループットとに関する競合するニーズのバランスをとるために実験的に決定され得る。
【0059】
以下は、本明細書で説明される動的パージタイミング技法が金属リセスエッチングにどのように適用され得るかの一例である。一定のパージタイミングによる金属リセスエッチングプロセスの場合、エッチングが進行するにつれて拡散混合の程度が増加すると予想される。拡散混合が増加するのは、対応するパージ時間の増加なしに拡散長(d)が増加するためである。これにより、粒界エッチングに有利な条件となり、エッチング終了時の表面粗さが大きくなる。また、エッチングの終わり近くでの1サイクルあたりのエッチング量の増加にもつながる。
【0060】
本明細書で説明される動的供給タイミング(すなわち、動的パージタイミング)技法は、プロセス時間を増加させることなくエッチング後の表面粗さを改善する代替的なエッチング方式で使用され得る。例えば、拡散長(d)が短い場合、本明細書で説明される動的パージタイミング技法を使用して、エッチングプロセスの開始時にパージ時間が短縮され得る。場合によっては、パージ時間を強引に減らすと、連続的なエッチングが発生する可能性がある。これにより、1サイクルあたりのエッチング量が増加し、ある程度の粗さが発生する。パージ時間は、エッチングが進行するにつれて増加され得る。これにより、連続的なエッチングが防止され、エッチングプロセス近くで表面粗さが改善される。このエッチング方式は、粗さが発生し得るより速いエッチング速度で開始し、より遅い速度及び表面の平滑化に有利な条件で終了する。よって、本明細書で説明される動的パージタイミング技法は、エッチング時間を増加させることなくエッチング後の粗さを改善するために使用され得る。
【0061】
本明細書で説明される動的パージタイミング技法は、一般に、多種多様な湿式ALEプロセス条件を使用して、多種多様な材料及びフィーチャをエッチングするために使用され得る。本明細書で説明される動的パージタイミング技法の1つの用途は、完全に自己整合したビア用のリセスエッチングにおいて金属表面をエッチングするためのものであり得る。例えば、本明細書で説明される技法は、誘電体材料における金属充填トレンチをエッチングするために使用され得る。1つの例示的な用途では、トレンチは、多結晶コバルト材料又は別の遷移金属で充填され得る。誘電体材料において金属充填トレンチがエッチングされる場合、金属の表面粗さを大きくすることなく、金属の露出表面を選択的にエッチングする必要がある。そのような用途は、単なる例示に過ぎず、本明細書で説明される技法は他の多くの用途に使用できることが認識されよう。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスはスピンチャンバ内で実施することができ、スピンチャンバでは、エッチング溶液が基板表面上に供給される間、基板が回転する。基板の動きにより、基板表面にわたってエッチング液が均等に分散される。各エッチング液(例えば、各表面改質溶液及び溶解液)の供給時間は、基板表面全体にわたって自己律速的な反応の厚さが達成されるように、十分に長くなければならない。供給される化学物質は、所望のエッチングを達成するために、エッチング成分間で切り替えられてもよい。いくつかの実施形態では、表面改質溶液と溶解液との一時的な混合に起因する金属表面の自然発生するエッチングを防ぐために、十分な量のパージ時間にわたって、表面改質溶液と溶解液との間にパージ溶液が供給され得る。他の実施形態では、表面改質工程と溶解工程との間のパージ時間は、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供するために、エッチングの進行に応じて短縮され、省略され、又は動的に調整され得る。表面改質(例えば、酸化/錯体形成)とそれに続く表面改質層の溶解によって規定される単一のエッチングサイクルを、適切な量の材料が除去されるまで、繰り返すことができる。
【0063】
表1は、スピンチャンバを使用して
図7A及び
図7Bに示すコバルトフィーチャをエッチングするために使用され得る例示的な湿式ALEプロセス条件を示す。スピンチャンバの使用は単なる一実施形態に過ぎず、多様な種類の異なるプロセスツールを使用して、本明細書で説明される技法を実施することができることを認識されたい。1つの代替として、例えば、基板を、エッチング液を含む化学浴に浸すことができる。場合によっては、基板を、順番に各エッチング液の浴に連続して浸すことができ、これには、化学物質の交差汚染を防ぐための中間リンス浴を伴う。このプロセスは、適切な量の材料が除去されるまで、繰り返され得る。更に別の実施形態では、プロセスは、各反応物のエアロゾルスプレー、霧、又はミストと共に利用され得る。更に、プロセスの1サイクルの中であっても、反応物を適用するために様々な記載したツールの組み合わせが使用され得ることを認識されたい。
【0064】
表1に示すように、
図7A及び
図7Bに示すコバルトフィーチャをエッチングするために使用される湿式ALEプロセスは、一般に、表面改質工程においてコバルトフィーチャの表面をイソプロピルアルコール(IPA)及び錯化剤(例えば、カルボン酸塩ベースのリガンド)に曝すことによって開始され得る。次に、湿式ALEプロセスは、第1のパージ(「パージ1」)を実行し、溶解工程においてコバルトフィーチャの表面を脱イオン水に曝し、第2のパージ(「パージ2」)を実行し得る。表面改質工程、第1のパージ、溶解工程、及び第2のパージは、スピン速度、流量、サイクル数、サイクル時間などを含むがこれらに限定されない、多種多様なツール設定を使用して実行され得る。表1では、表面改質工程及び第1のパージは、1000rpmのスピン速度及び300ml/分の流量で実行され、溶解工程は、1000rpmのスピン速度及び1500ml/分の流量で実行され、第2のパージは、1000rpmのスピン速度及び0ml/分の流量で実行される(すなわち、第2のパージは乾燥パージである)。表1に示す湿式ALEプロセスでは、表面改質工程、第1のパージ、溶解工程、及び第2のパージが30サイクル繰り返される。
【0065】
【0066】
上述の例示的なプロセス条件に加えて、表1は、完全パージ(「ベースラインパージ」)及び動的に調整されたパージ(「短縮パージ」)を使用して、
図7A及び
図7Bに示されるコバルトフィーチャをエッチングするときに達成される合計エッチング時間(「合計時間」)を比較する。完全パージ(「ベースラインパージ」)の場合では、表面改質溶液と溶解液との混合を防ぐために、第1のパージ工程及び第2のパージ工程(「パージ1」及び「パージ2」)はそれぞれ10秒間実行される。動的に調整されたパージ(「短縮パージ」)の場合では、湿式ALEプロセスの各サイクルにおいて、第1のパージ工程(「パージ1」)は完全パージ(「ベースラインパージ」)と比較して50%(すなわち、5秒)短縮され、第2のパージ工程(「パージ2」)は省略される。表1は、完全パージ(「ベースラインパージ」)の場合から動的に調整されたパージ(「短縮パージ」)の場合に移行すると、1サイクルあたりの時間が50%超短縮されることを示している。このことはより高速な湿式ALEプロセスをもたらすが、より高速なサイクル時間と、1サイクルあたりのエッチング量の25%増加との組み合わせであり、エッチングの生産性が合計3倍向上する。
【0067】
図7A及び
図7Bは、表1に詳しく記す湿式ALEプロセス条件を使用してエッチングされたコバルトフィーチャの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
図7Aは、表面改質溶液と溶解液とが完全に分離された完全パージ(「ベースラインパージ」)の場合を示す。表1に示すように完全パージを使用した場合の1サイクルあたりのエッチング量は約0.45nmであり、エッチング速度は0.83nm/分である。動的に調整されたパージ(「短縮パージ」)の場合について表1に示すように、第1のパージ工程が短縮され、第2のパージ工程が省略される場合、1サイクルあたりのエッチング量は0.57nmに増加し、エッチング速度は2.6nm/分に増加する。これは、完全パージ(「ベースラインパージ」)の場合と比べてエッチング速度が3倍向上したことを表す。
図7A及び
図7Bに示す例では、完全パージ(「ベースラインパージ」)の場合と動的に調整されたパージ(「短縮パージ」)のパージの場合との両方で表面粗さが良好であるため、エッチングの進行に応じてパージタイミングを動的に変更する必要はない。
【0068】
エッチングの際にパージタイミングを動的に調整することにより、湿式エッチング性能を最適化するための別のツールが提供される。表面粗さが優先事項ではない場合、パージ工程を完全に省略することが用いられて、スループットを大幅に改善させることができる。表面粗さを最小化することが優先される場合は、エッチングの進行に応じてパージ時間を増やす動的パージタイミング戦略が使用され得る。このシナリオでは、エッチングの開始時はエッチング速度が優先され、エッチングの終了時は平滑さが優先される。この戦略を使用することにより、エッチング後の表面粗さを良好に維持しながら、スループットを改善させることができる。このように、本明細書で説明される実施形態は、エッチング後の表面粗さのニーズのバランスをとりながら、全体のエッチング生産性を高めるための新しいツールを提供する。エッチング時間が短縮されると化学物質の消費量も削減されるため、プロセスの総所有コストも改善される。
【0069】
図8~
図10は、本明細書で説明される処理技法を使用する例示的な方法を示す。より詳細には、
図8~
図10は、スループット及びエッチング速度とエッチング後の表面粗さとのバランスをとる動的なALEサイクルタイミングスケジュールを提供することによって、湿式ALEプロセスを改善する方法の様々な実施形態を示す。以下により詳細に説明するように、
図8~
図10に示す方法は、ALEサイクル間、及び/又は個々の表面改質工程と選択的溶解工程との間におけるパージタイミングを調整して、改善された湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供し得る。
【0070】
図8~
図10の実施形態は単なる例示であり、追加の方法が、本明細書で説明される技法を利用してもよいことを理解されたい。更に、説明された処理工程は排他的であることを意図していないため、
図8~
図10に示す方法に、追加の工程を追加することができる。更には、工程の順序は、異なる順序が生じる場合があり、且つ/又は様々な工程が組み合わせで若しくは同時に実施されてもよいため、図面に示す順序には限定されない。
【0071】
図8は、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするために使用され得る方法800の一実施形態を示す。
図8に示す方法800は、(工程810において)基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させている、ことを含む。次いで、工程820において、方法800は、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって材料を選択的にエッチングすることを含み、各サイクルが、a)材料の露出表面を化学的に改質し、表面改質層を提供する1つ以上の表面改質工程を実行することであって、1つ以上の表面改質工程が、材料の露出表面を少なくとも1種の表面改質溶液に曝して、材料の露出表面を化学的に改質することを含む、ことと、b)1つ以上の表面改質工程の後に第1のパージ工程を実行することであって、第1のパージ工程が溶媒を用いて基板を洗浄することを含む、ことと、c)第1のパージ工程の後に、材料の表面改質層を選択的に除去する溶解工程を実行することであって、溶解工程が、表面改質層を溶解液に曝して、表面改質層を溶解することを含む、ことと、d)溶解工程の後に第2のパージ工程を実行することであって、第2のパージ工程が、溶媒を用いて基板を洗浄すること、又はスピン乾燥工程を行うことを含む、こととを含む。工程830において、方法800は、湿式ALEプロセスにおいて所望のスループット、エッチング速度、及び/又はエッチング後の表面粗さを提供するように、湿式ALEプロセスの1つ以上のサイクルにおいて第1のパージ工程のパージ時間及び/又は第2のパージ工程のパージ時間を調整することを含む。
【0072】
図9は、基板をエッチングするために使用され得る方法900の別の実施形態を示す。
図9に示す方法900は、(工程910において)基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させている、ことを含む。次いで、工程920において、方法900は、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって材料を選択的にエッチングすることを含み、各サイクルが、a)材料の露出表面を化学的に改質して、表面改質層を提供することであって、上記露出表面が、酸化剤を使用した材料の酸化によって化学的に改質される、ことと、b)材料の表面改質層に錯化剤を結合させて、錯体結合型の表面改質層を提供することと、c)溶媒を用いて基板を洗浄することと、d)錯体結合型の表面改質層を溶解液に曝して、錯体結合型の表面改質層を溶解することにより、材料の錯体結合型の表面改質層を選択的に除去することとを含む。
図9に示す方法900では、洗浄する工程(c)が、湿式ALEプロセスの1つ以上の第1のサイクルにおいて第1の期間にわたって実行され、湿式ALEプロセスの1つ以上の第2のサイクルにおいて第2の期間にわたって実行され、1つ以上の第2のサイクルが1つ以上の第1のサイクルの後に実行され、第2の期間が第1の期間よりも長い。
【0073】
図10は、基板をエッチングするために使用され得る方法1000の別の実施形態を示す。
図10に示す方法1000は、(工程1010において)基板を受け取ることであって、基板が材料を露出させており、材料が多結晶材料を含む、ことを含む。次いで、工程1020において、方法1000は、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを実行することによって多結晶材料を選択的にエッチングすることを含み、各サイクルが、a)多結晶材料の露出表面を化学的に改質して、表面改質層を提供することであって、上記露出表面が、酸化剤を使用した多結晶材料の酸化によって化学的に改質される、ことと、b)多結晶材料の表面改質層に錯化剤を結合させて、錯体結合型の表面改質層を提供することと、c)溶媒を用いて基板を洗浄することと、d)錯体結合型の表面改質層を溶解液に曝して、錯体結合型の表面改質層を溶解することにより、多結晶材料の錯体結合型の表面改質層を選択的に除去することとを含む。
図10に示す方法1000では、洗浄する工程(c)が、湿式ALEプロセスの複数のサイクルを前記実行する際に増加する期間にわたって実行される。
【0074】
本明細書全体を通じて、「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、それらがすべての実施形態に存在することを示すものではないことに留意されたい。したがって、本明細書を通じた様々な箇所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すわけではない。更には、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な形態で組み合わされてもよい。別の実施形態では、様々な追加の層及び/若しくは構造が含まれてもよく、並びに/又は、説明した特徴が省略されてもよい。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「基板」は、材料が上に形成されるベース材料又は構造を意味し且つこれらを含む。基板は、単一材料、様々な材料の複数の層、様々な材料又は様々な構造の領域を内部に有する1層以上の層などを含み得ることを理解されたい。これらの材料は半導体、絶縁体、導体、又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、基板は、半導体基板、支持構造上のベース半導体層、金属電極、又は1つ以上の層、構造、若しくは領域が上に形成された半導体基板であってもよい。基板は、半導電性材料の層を含む、従来のシリコン基板又は他のバルク基板であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「バルク基板」は、シリコンウェーハだけでなく、シリコンオンサファイア(「SOS」)基板及びシリコンオンガラス(「SOG」)基板などのシリコンオンインシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体基板上のシリコンのエピタキシャル層、並びに、他の半導体又は光電子材料、例えばシリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、及びリン化インジウムをも意味し且つそれらを含む。基板は、ドープされていても、ドープされていなくてもよい。
【0076】
基板を処理するためのシステム及び方法が、様々な実施形態で説明されている。基板は、デバイス、特に半導体又は他の電子デバイスの任意の材料部分又は構造を含んでもよく、例えば、半導体基板などのベース基板構造であってもよく、又は薄膜などのベース基板構造上の若しくはその上を覆う層であってもよい。したがって、基板は、パターン化された又はパターン化されていない、任意の特定のベース構造、下地層、又は上地層に限定されることは意図されておらず、むしろ、任意のこのような層又はベース構造、並びに層及び/又はベース構造の任意の組み合わせを含むことが企図されている。
【0077】
当業者であれば理解されるように、様々な実施形態が、具体的詳細のうちの1つ以上を伴わずに、或いは、他の代替的及び/若しくは追加的方法、材料、又は構成要素を伴って実施されてよい。他の例では、周知の構造、材料、又は動作は、本発明の様々な実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、詳細には図示又は説明されていない。同様に、本発明の完全な理解を提供するために、説明の目的で、具体的な数、材料、及び構成が記述される。それにもかかわらず、本発明は、具体的な詳細なしに実施され得る。更に、図面に示される様々な実施形態は例示的表現であり、必ずしも原寸に比例していないことを理解されたい。
【0078】
本明細書を検討すれば、記載されたシステム及び方法の更なる修正形態及び代替実施形態が当業者には明らかになるはずである。したがって、記載されるシステム及び方法は、これらの例示的な構成によって限定されるものではないことが理解されよう。本明細書に図示され記載されるシステム及び方法の形態は、例示的な実施形態と解釈されるべきであることを理解されたい。実装形態に様々な変更を施すことができる。したがって、湿式ALE技法は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明されるが、様々な修正及び変更を、本開示の範囲から逸脱することなく実施できる。したがって、本明細書及び図面は、限定的意味というよりも、むしろ例示的意味でみなされるべきであり、このような修正形態が本開示の範囲に含まれることが意図されている。更に、特定の実施形態に関して本明細書で説明されるいかなる利益、利点、又は課題に対する解決策も、特許請求の範囲のいずれかの又はすべての重要な、必要な、又は必須の特徴又は要素として解釈されることは意図されていない。
【国際調査報告】